JP2022117263A - 光電変換素子用対向電極、色素増感型太陽電池及び太陽電池モジュール - Google Patents

光電変換素子用対向電極、色素増感型太陽電池及び太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】色素増感型太陽電池の変換効率及び高温耐久性を高め得る光電変換素子用電極を提供する。【解決手段】光電変換素子用対向電極は、支持体と、支持体上に形成された触媒層とを有する。触媒層は、有機金属錯体と、カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料とを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、光電変換素子用対向電極、色素増感型太陽電池及び太陽電池モジュールに関するものである。
近年、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、太陽電池が注目されている。中でも、色素増感型太陽電池は、広い照射範囲で安定して発電できることや、大掛かりな設備を必要とすることなく、比較的安価な材料を用いて製造し得ることから、注目されている。
例えば、特許文献1では、安価な材料及び簡便な製造法により作製でき、かつ、電解質中に含まれる酸化還元対の酸化体を速やかに還元することのできる触媒電極、及びこれを備えた色素増感型太陽電池が提案されている。ここで、特許文献1の触媒電極は、光増感作用を有する色素を含む光透過性の半導体電極と、酸化還元対となる化学種を少なくとも含む電解質層と、を少なくとも有する色素増感型太陽電池に備えられており、前記電解質層を介して前記半導体電極に対向配置される。そして、該触媒電極の一態様として、電極基板と、導電性高分子と、有機金属錯体と、を少なくとも含んでおり、有機金属錯体が導電性高分子中に分散、担持されている触媒電極が記載されている。
特開2006-202562号公報
しかしながら、従来の色素増感型太陽電池は、エネルギー変換効率(以下、単に「変換効率」と称することがある。)に一層の向上の余地があった。また、特許文献1に記載の色素増感型太陽電池では、電解質層は一般に酸化還元対等が溶解した溶媒からなるが、有機金属錯体が該溶媒に溶出し、特に高温耐久性が著しく劣化するという問題があることが明らかになった。
そこで、本発明は、色素増感型太陽電池の変換効率及び高温耐久性を高め得る光電変換素子用対向電極の提供を目的とする。
また、本発明は、変換効率及び高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池と、この色素増感型太陽電池を用いた太陽電池モジュールの提供を目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、有機金属錯体と、カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料とを含む触媒層を有する光電変換素子用対向電極を用いれば、色素増感型太陽電池の変換効率及び高温耐久性を高め得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の光電変換素子用対向電極は、支持体と、前記支持体上に形成された触媒層とを有し、前記触媒層は、有機金属錯体と、カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料とを含むことを特徴とする。このように、有機金属錯体と、カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料とを含む触媒層を有する光電変換素子用対向電極を用いれば、色素増感型太陽電池に優れた変換効率及び高温耐久性を発揮させることができる。
ここで、本発明の光電変換素子用対向電極は、前記有機金属錯体の配位子が、下記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物及び下記一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機金属錯体の配位子が下記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物及び下記一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であれば、色素増感型太陽電池の変換効率を高めることができる。
Figure 2022117263000001
なお、上記一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、R~R12はそれぞれ独立に、水素原子、又はフェニル基を示す。
上記一般式(2)中、R~Rは、上記一般式(1)中のR~Rと同様である。
また、本発明の光電変換素子用対向電極は、前記有機金属錯体の中心金属原子が、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、レニウム、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。有機金属錯体の中心金属原子が、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、レニウム、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種であれば、色素増感型太陽電池の変換効率を更に高めることができる。
さらに、本発明の光電変換素子用対向電極において、前記有機金属錯体の含有量が、前記カーボンナノチューブ及び前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料の合計含有量100質量部当たり30質量部以下であることが好ましい。有機金属錯体の含有量が、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料の合計含有量100質量部当たり30質量部以下であれば、触媒層の触媒活性を向上させるととともに、色素増感型太陽電池の曲線因子及び高温耐久性を一層優れたものとすることができる。
そして、本発明の光電変換素子用対向電極は、前記カーボンナノチューブが、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すカーボンナノチューブであることが好ましい。t-プロットが上に凸な形状を示すカーボンナノチューブを用いれば、色素増感型太陽電池の変換効率をより一層高めることができる。
また、本発明の光電変換素子用対向電極は、前記導電性炭素材料がカーボンブラックであることが好ましい。導電性炭素材料としてカーボンブラックを用いれば、触媒層の膜状態が良好に維持され、色素増感型太陽電池の曲線因子をより一層優れたものとすることができる。
さらに、本発明の光電変換素子用対向電極は、前記カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料との含有割合が、質量比(カーボンナノチューブ/カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料)で35/65~90/10であることが好ましい。カーボンナノチューブと導電性炭素材料との含有割合が質量比で上記範囲内であれば、触媒層での電子の授受が効率的に行われるとともに、触媒層の膜状態が良好に維持され、色素増感型太陽電池の曲線因子を更に良好にすることができる。
また、本発明の光電変換素子用対向電極は、前記支持体が透明樹脂からなることが好ましい。透明樹脂からなる支持体を用いれば、変換効率に優れる色素増感型太陽電池を効率よく形成することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の色素増感型太陽電池は、光電極、電解質層、及び対向電極をこの順に有する色素増感型太陽電池であって、前記対向電極が、上述したいずれかの光電変換素子用対向電極であることを特徴とする。上述した本発明の光電変換素子用対向電極を対向電極として備える色素増感型太陽電池は、変換効率及び高温耐久性に優れる。
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池モジュールは、上述した色素増感型太陽電池が直列及び/又は並列に接続されてなることを特徴とする。本発明によれば、変換効率及び高温耐久性に優れた太陽電池モジュールを提供することができる。
本発明によれば、色素増感型太陽電池の変換効率及び高温耐久性を高め得る光電変換素子用対向電極を提供することができる。
また、本発明によれば、変換効率及び高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池と、当該色素増感型太陽電池を用いた太陽電池モジュールを提供することができる。
色素増感型太陽電池の一例の概略構成を示す図である。
本発明の光電変換素子用対向電極は、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池、又はペロブスカイト太陽電池等の光電変換素子の対向電極として用いることができる。中でも、色素増感型太陽電池の対向電極として用いるのが好適である。本発明の色素増感型太陽電池は、光電極、電解質層及び対向電極をこの順に有する色素増感型太陽電池であって、対向電極として本発明の光電変換素子用対向電極を有するものである。また、本発明の太陽電池モジュールは、本発明の色素増感型太陽電池が直列及び/又は並列に接続されてなるものである。
以下、本発明の一実施形態を、光電変換素子用対向電極、色素増感型太陽電池及び太陽電池モジュールの順に、詳細に説明する。
(光電変換素子用対向電極)
本発明の光電変換素子用対向電極(以下、単に「対向電極」ともいう。)は、支持体と、この支持体上に形成された触媒層とを有する。
<支持体>
支持体は、触媒層を担持する役割を担うものである。なお、本発明において触媒層に含まれるカーボンナノチューブ及び導電性炭素材料は導電性を有するため、支持体と触媒層との間には必ずしも導電層は必要ではない。ただし、より良好な通電を確保する観点からは、少なくとも触媒層と接し得る支持体の表面部分には導電膜が形成されていることが好ましい。
対向電極の支持体としては、既知のものを用いることができる。具体的には、対向電極の支持体としては、透明樹脂からなる支持体やガラスからなる支持体を用いることができる。中でも、変換効率に優れる色素増感型太陽電池を効率よく形成することができることから、透明樹脂からなる支持体を用いることが好ましい。透明樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)等の合成樹脂が挙げられる。
支持体の厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、10μm以上10000μm以下である。
また、支持体の光透過率(測定波長:500nm)は、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。
<触媒層>
触媒層は、色素増感型太陽電池において、対向電極から電解質層に電子を渡すときの触媒として機能する。そして、本発明にかかる触媒層は、有機金属錯体と、カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料とを含むことを必要とする。
本発明の対向電極が、色素増感型太陽電池の変換効率及び高温耐久性を高め得る理由は定かではないが、触媒層中、カーボンナノチューブとカーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料との相互作用により有機金属錯体の分散性が向上し、有機金属錯体の還元活性の利用効率が向上することから、電解質中の酸化還元対(例えば、I3-/I等)の酸化体を還元体に還元する還元反応(I3-をIに還元する還元反応)を速やかに進行させることができ、その結果、触媒層に含まれる有機金属錯体の量が少ない場合でも、色素増感型太陽電池の変換効率が相乗的に高まり、一方、有機金属錯体の電解質層への溶出が抑えられ、高温耐久性が高まるものと推察される。
なお、本発明にかかる触媒層は、任意に、有機金属錯体、カーボンナノチューブ及び導電性炭素材料以外の成分(以下、「その他の成分」という。)を更に含み得る。
[有機金属錯体]
触媒層に含まれる有機金属錯体は、特に限定されないが、色素増感型太陽電池の変換効率を高める観点から、有機金属錯体の配位子は、下記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物及び下記一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
Figure 2022117263000002
上記一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、R~R12はそれぞれ独立に、水素原子、又はフェニル基を示す。
上記一般式(2)中、R~Rは、上記一般式(1)中のR~Rと同様である。
前記アルキル基としては、炭素数1~6のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、炭素数1~6のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6~12のものが好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。前記アリールオキシ基としては、炭素数6~12のものが好ましく、例えば、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
なお、上記一般式(1)又は一般式(2)においてR~R12で示される各基は、例えば、炭素数1~3のアルキル基等で置換されていてもよい。
また、上記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物、又は、上記一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物には、任意に、溶解性、分散性等を高める目的で、官能基が付加されていてもよい。このような官能基としては、例えば、酸性官能基、塩基性官能基、酸素原子を有する中性官能基、疎水性官能基などが挙げられる。なお、このような官能基を付加する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
そして、有機金属錯体の中心金属原子は、特に限定されず、例えば、マグネシウム、スズ、鉛、プラチナ、水素、ナトリウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、レニウム、マンガン、モリブデン及びタングステンなどを挙げることができ、中でも、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、レニウム、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。そして、色素増感型太陽電池の変換効率を更に向上させる観点からは、中心金属原子は、鉄であることがより好ましい。
また、有機金属錯体のモル質量は、1500g/mоl以下であることが好ましく、1000g/mоl以下であることがより好ましく、900g/mоl以下であることが更に好ましい。有機金属錯体のモル質量が上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の曲線因子を良好にすることができる。
そして、本発明の対向電極において、有機金属錯体の含有量は、カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料の合計含有量100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましく、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。有機金属錯体の含有量が上記下限値以上であれば、触媒層の触媒活性を向上させることができる。また、有機金属錯体の含有量が上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の高温耐久性とともに曲線因子を一層優れたものとすることができる。
ここで、本発明で用いる有機金属錯体は、特に限定されないが、入手がし易く、かつ還元活性に優れ、色素増感型太陽電池の変換効率をより一層高め得ることから、フタロシアニン鉄(PcFe)が好ましい。
<カーボンナノチューブ>
触媒層に含まれるカーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する。)は、特に限定されないが、色素増感型太陽電池の変換効率を高める観点から、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。中でも、開口処理が施されておらず、かつ、t-プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。
ここで、一般に、吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象であり、その原因から、物理吸着と化学吸着に分類される。そして、t-プロットの取得に用いられる窒素ガス吸着法では、物理吸着を利用する。なお、通常、吸着温度が一定であれば、CNTに吸着する窒素ガス分子の数は、圧力が大きいほど多くなる。また、横軸に相対圧(吸着平衡状態の圧力Pと飽和蒸気圧P0の比)、縦軸に窒素ガス吸着量をプロットしたものを「等温線」といい、圧力を増加させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「吸着等温線」、圧力を減少させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「脱着等温線」という。
そして、t-プロットは、窒素ガス吸着法により測定された吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得られる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、CNTのt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する試料では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となり、上に凸な形状を示す。かかるt-プロットの形状は、CNTの全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、CNTに多数の開口が形成されていることを示している。
なお、CNTのt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0を満たす範囲にあることが更に好ましい。t-プロットの屈曲点の位置が上記範囲であると、CNTの特性(特に、導電性)が更に向上するため、CNTの配合量が少量であっても触媒層に十分な導電性を付与することができる。したがって、柔軟性の低下を抑制しつつ、導電性を十分に向上させことができる。ここで、「屈曲点の位置」とは、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
さらに、CNTは、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。S2/S1が0.05以上0.30以下であれば、CNTの特性(特に、導電性)を更に向上させることができるので、触媒層の柔軟性の低下を抑制しつつ、導電性を十分に向上させことができる。
また、CNTの全比表面積S1及び内部比表面積S2は、特に限定されないが、個別には、S1は、600m/g以上1400m/g以下であることが好ましく、800m/g以上1200m/g以下であることが更に好ましい。一方、S2は、30m/g以上540m/g以下であることが好ましい。
ここで、CNTの全比表面積S1及び内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
因みに、CNTの吸着等温線の測定、t-プロットの作成、及び、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
なお、CNTとしては、特に限定されることなく、単層CNT及び/又は多層CNTを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのCNTであることが好ましく、単層CNTであることがより好ましい。単層CNTを使用すれば、多層CNTを使用した場合と比較し、導電性を更に向上させることができるからである 。
また、CNTとしては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.80未満のCNTを用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超のCNTを用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超のCNTを用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.80未満のCNTを使用すれば、CNTの配合量が少量であっても導電性を十分に高めることができる。したがって、CNTの配合により触媒層の硬度が上昇する(すなわち、柔軟性が低下する)のを抑制して、導電性及び柔軟性を十分に高いレベルで両立させた触媒層を得ることができる。
なお、「CNTの平均直径(Av)」及び「CNTの直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTの平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、CNTとしては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
さらに、CNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層CNTのみからなるCNTのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、CNTの配合量が少量であっても導電性を十分に高めることができる。したがって、CNTの配合により触媒層の硬度が上昇する(すなわち、柔軟性が低下する)のを抑制して、導電性及び柔軟性を十分に高いレベルで両立させた触媒層を得ることができる。
さらに、CNTの平均直径(Av)は、2nm以上であることが好ましく、2.5nm以上であることがより好ましく、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましい。CNTの平均直径(Av)が2nm以上であれば、CNTの凝集を抑制してCNTの分散性を高めることができる。また、CNTの平均直径(Av)が10nm以下であれば、触媒層の導電性及び柔軟性を十分に高めることができる。
また、CNTは、合成時におけるCNTの平均長さが100μm以上であることが好ましい。なお、合成時のCNTの長さが長いほど、分散時にCNTに破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時のCNTの平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
そして、CNTのアスペクト比(長さ/直径)は、10を超えることが好ましい。CNTのアスペクト比が10を超えていれば、触媒層の膜状態を効果的に維持することができる。なお、CNTのアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本の直径及び長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
さらに、CNTのBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることが更に好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることが更に好ましい。CNTのBET比表面積が600m/g以上であれば、触媒層での電子授受が効率的に行われる。また、CNTのBET比表面積が2500m/g以下であれば、CNTの凝集を抑制して触媒層中のCNTの分散性を高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
また、CNTは、後述するスーパーグロース法によれば、CNT成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としてのCNTの質量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm以下であれば、CNT同士の結びつきが弱くなるので、触媒層中でCNTを均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm以上であれば、CNTの一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
さらに、CNTは、複数の微小孔を有することが好ましい。CNTは、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。CNTが上記のようなマイクロ孔を有することで、CNTの凝集が抑制され、CNTが高度に分散した触媒層を得ることができる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、CNTの調製方法および調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、CNTの液体窒素温度(77K)での窒素吸着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cm3である。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
そして、上述した性状を有するCNTは、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるCNTを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造したCNTは、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、導電性を有する非円筒形状のCNTとから構成されていてもよい。具体的には、CNTには、内壁同士が近接又は接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層又は多層の扁平筒状のCNT(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
なお、本明細書において「テープ状部分を全長に亘って有する」とは、「長手方向の長さ(全長)の60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%に亘って連続的に又は断続的にテープ状部分を有する」ことを指す。
ここで、GNTは、その合成時から内壁同士が近接又は接着したテープ状部分が全長に亘って形成されており、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成された物質であると推定される。そして、GNTの形状が扁平筒状であり、かつ、GNT中に内壁同士が近接又は接着したテープ状部分が存在していることは、例えば、GNTとフラーレン(C60)とを石英管に密封し、減圧下で加熱処理(フラーレン挿入処理)して得られるフラーレン挿入GNTを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、GNT中にフラーレンが挿入されない部分(テープ状部分)が存在していることから確認することができる。
<カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料>
触媒層に含まれるCNT以外の導電性炭素材料としては、フラーレン、グラフェン等のグラファイト系炭素材料;カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラックなど)、フラーレン煤等のアモルファス系炭素材料などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
触媒層に含まれ得るCNT以外の導電性炭素材料としては、カーボンブラックが好ましく、アセチレンブラックがより好ましい。前記のとおり、本発明に用いられる支持体には導電層を設けても良いが、導電性炭素材料としてカーボンブラックを用いると、触媒層と導電層との界面抵抗を低くすることができ、また、触媒層の膜状態が良好に維持され、色素増感型太陽電池の曲線因子を更に一層優れたものとすることができる。
また、CNT以外の導電性炭素材料の平均1次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、70nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。CNT以外の導電性炭素材料の平均1次粒子径が上記下限値以上であれば、光電変換素子用対向電極の成形性が優れたものとなる。また、CNT以外の導電性炭素材料の粒子平均1次粒子径が上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の接触抵抗を効率的に低下させることができる。
なお、CNT以外の導電性炭素材料の平均1粒子径は、透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択された100個のCNT以外の導電性炭素材料の粒子の画像に基づいて粒子径を測定し、その平均値から求めることができる。
また、CNT以外の導電性炭素材料の比表面積は、20m/g以上であることが好ましく、30m/g以上であることがより好ましく、900m/g以下であることが好ましく、150m/g以下であることがより好ましく、70m/g以下であることが更に好ましい。CNT以外の導電性炭素材料の比表面積が上記下限値以上であれば、対向電極の成形性を更に優れたものとすることができる。また、CNT以外の導電性炭素材料の比表面積が上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の接触抵抗を更に効率的に低下させることができる。
なお、CNT以外の導電性炭素材料の比表面積は、CNTと同様にBET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
そして、触媒層中のCNTとCNT以外の導電性炭素材料との合計の含有量は、特に限定されないが、20質量%以上であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。
また、CNTとCNT以外の導電性炭素材料との含有割合は、質量比(CNT/CNT以外の導電性炭素材料)で、35/65~90/10であることが好ましく、40/60~80/20であることがより好ましく、45/55~55/45であることが更に好ましい。CNTとCNT以外の導電性炭素材料との含有割合が上記範囲内であれば、触媒層での電子の授受が効率的に行われるとともに、触媒層の膜状態が良好に維持され、色素増感型太陽電池の曲線因子を更に良好にすることができる。
[その他の成分]
触媒層に任意に含まれ得るその他の成分としては、特に限定されず、例えば、分散剤や増粘剤等が挙げられる。
分散剤としては、例えば、スチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数は、好ましくは8以上20以下である。)、ポリオキシエチレン=アルキルフェニルエーテル(アルキル基の炭素数は、好ましくは8以上9以下である。)が挙げられる。なお分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、触媒層の膜強度を高めるとともに、得られる色素増感型太陽電池の変換効率を一層高める観点からは、分散剤としては、非イオン性ポリマーが好ましく、スチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体、ポリビニルピロリドンがより好ましく、スチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体が更に好ましい。
なお、スチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体は、触媒層の導電性及び触媒活性を一層向上させつつ、色素増感型太陽電池の変換効率を更に高める観点から、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートに由来する繰り返し単位のエチレングリコール鎖の部分「(CH-CH-O))」のn(整数)が5以上50以下であることが好ましく、20以上30以下であることがより好ましい。
また、スチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体は、触媒層の導電性及び触媒活性を一層向上させつつ、太陽電池の変換効率を更に高める観点から、重量平均分子量が10000以上30000以下であることが好ましい。
増粘剤としては、例えば、セルロース系ポリマー(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコールが挙げられる。増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、導電膜の膜強度、及び、色素増感型太陽電池の変換効率を更に向上させる観点から、増粘剤としては、非イオン性ポリマー(ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロースなど)が好ましい。
そして、触媒層中のその他の成分の含有量は、特に限定されないが、CNT100質量部当たり250質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることが更に好ましい。その他の成分の含有量が上記上限値以下であれば、触媒層の導電性、膜強度、及び触媒活性を一層向上させつつ、色素増感型太陽電池の変換効率を更に高めることができる。
<対向電極の製造方法>
本発明の対向電極の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した有機金属錯体と、CNTと、CNT以外の導電性炭素材料と、任意のその他の成分とを含む分散液を支持体上に塗布する工程と、塗布した分散液を乾燥させて触媒層を形成する工程を経て製造することができる。
前記分散液に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、水を含むのが好ましく、水の他、水と混和する溶媒が用いられる。水と混和する溶媒としては、例えば、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジアセトンアルコール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記分散液の調製方法は特に限定されず、例えば、水を含む溶媒に上述した各種成分を添加し、既知の混合・分散処理を施すことで調製することができる。既知の混合・分散処理としては、例えば、ナノマイザーやアルティマイザーなど湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミルなどを用いる方法が挙げられる。
混合・分散処理を行う際の温度は、特に限定されないが、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。
(色素増感型太陽電池)
本発明の色素増感型太陽電池は、光電極、電解質層、及び対向電極をこの順に有し、この対向電極として、本発明の光電変換素子用対向電極を有する。本発明の色素増感型太陽電池は、上述した本発明の光電変換素子用対向電極を有しているので、優れた変換効率及び高温耐久性を発揮することができる。
以下、本発明の色素増感型太陽電池の概略構造について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に示すように、本発明に係る色素増感型太陽電池100は、光電極10と、電解質層20と、対向電極30とを有している。
光電極10は、支持体10aと、支持体10a上に形成された導電層10bと、半導体微粒子よりなる多孔質半導体微粒子層10cと、多孔質半導体微粒子層10cの半導体微粒子の表面に吸着した増感色素よりなる増感色素層10dとを備えており、多孔質半導体微粒子層10c及び増感色素層10dは導電層10b上に形成されている。また、対向電極30は、支持体30aと、支持体30a上に任意に形成された導電層30bと、導電層30b上に形成された触媒層30cとを備えている。さらに、光電極10の導電層10bと、対向電極30の導電層30bとは外部の回路40を介して接続されている。
<光電極>
光電極10は、光を受けることで、外部の回路に電子を放出し得る電極である。
光電極の支持体10aとしては、既知のものを用いることができる。具体的に、光電極の支持体10aとしては、「対向電極の支持体」として上述したものと同様のものを用いることができる。
光電極の導電層10bとしては、既知の導電膜を用いることができる。既知の導電膜としては、インジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の酸化物よりなる導電膜、PEDOT〔ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)〕/PSS(ポリスチレンスルホン酸)などの、ポリチオフェン類やポリアニリン類などの導電性高分子よりなる導電膜、天然黒鉛、活性炭、人造黒鉛、グラフェン、CNTなどの導電性カーボンを含有する導電膜を用いることができる。
光電極の多孔質半導体微粒子層10cは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物の粒子(半導体微粒子)を用いて形成することができる。金属酸化物の粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、多孔質半導体微粒子層10cは、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、バインダーフリーコーティング法等により、形成することができる。
さらに、多孔質半導体微粒子層10cの半導体微粒子の表面に吸着して増感色素層10dを形成する増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素等の有機色素;鉄、銅、ルテニウム等の金属のフタロシアニン錯体やポルフィリン錯体等の金属錯体色素;等が挙げられる。増感色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、増感色素層10dは、例えば、増感色素の溶液中に多孔質半導体微粒子層10cを浸漬する方法や、増感色素の溶液を多孔質半導体微粒子層10c上に塗布する方法等により、形成することができる。
<電解質層>
電解質層20は、通常、支持電解質、酸化還元対(酸化還元反応において可逆的に酸化体及び還元体の形で相互に変換しうる一対の化学種)、溶媒等を含有している。
ここで、支持電解質としては、リチウムイオン、イミダゾリウムイオン、4級アンモニウムイオン等の陽イオンを含む塩が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、酸化還元対としては、酸化された増感色素を還元し得るものであればよく、塩素化合物-塩素、ヨウ素化合物-ヨウ素、臭素化合物-臭素、タリウムイオン(III)-タリウムイオン(I)、ルテニウムイオン(III)-ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)-銅イオン(I)、鉄イオン(III)-鉄イオン(II)、コバルトイオン(III)-コバルトイオン(II)、バナジウムイオン(III)-バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン-過マンガン酸イオン、フェリシアン化物-フェロシアン化物、キノン-ヒドロキノン、フマル酸-コハク酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、溶媒としては、特に限定されるものではないが、非プロトン性極性物質を用いることができる。非プロトン性極性物質としては、例えば、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)等の5員環環状カーボネート;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の5員環環状エステル;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、及びメトキシアセトニトリル等の脂肪族ニトリル;ジメトキシエタン及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル等の脂肪族鎖状エーテル;テトラヒドロフラン及びジオキサン等の脂肪族環状エーテル;エチルイソプロピルスルホン等の脂肪族スルホン;スルホラン等の環状スルホン;ジメチルスルホキシド等の脂肪族スルホキシド;ジメチルホルムアミド;エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド;が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そしてこれらの中でも、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、3-メトキシプロピオニトリル、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
電解質層の溶媒として非プロトン性極性物質を用いると、対向電極の触媒層に分散剤として前記例示した物質が含まれた場合、分散剤が電解液中に溶出し、抵抗成分となる分散剤が触媒層から除去され得るため、色素増感型太陽電池の変換効率が高まり好ましい。一方、対向電極の触媒層に増粘剤として前記例示した物質が含まれた場合、分散剤と異なり電解液中に溶出せず触媒層中に留まるため、結着能を発揮して触媒層の支持体からの脱離を抑制し、結果的に、色素増感型太陽電池の変換効率を向上させることができ好ましい。
なお、少なくともアセトニトリル、γ-ブチロラクトン、3-メトキシプロピオニトリルに対して溶解性の分散剤としては、例えば、上述したスチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数は、好ましくは8以上20以下である。)、ポリオキシエチレン=アルキルフェニルエーテル(アルキル基の炭素数は、好ましくは8以上9以下である。)が挙げられる。
また、少なくともトリエチレングリコールモノメチルエーテルに対して溶解性の分散剤としては、例えば、スチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
また、少なくともアセトニトリルに対して非溶解性の増粘剤としては、例えば、セルロース系ポリマー(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、少なくともγ-ブチロラクトン、3-メトキシプロピオニトリルに対して非溶解性の増粘剤としては、例えば、セルロース系ポリマー(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコールが挙げられる。
さらに、少なくともトリエチレングリコールモノメチルエーテルに対して非溶解性の増粘剤としては、例えば、セルロース系ポリマー(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリエチレンオキサイドが挙げられる。
なお、本明細書において、ある化合物(分散剤、増粘剤)が溶媒(非プロトン性極性物質)に対して「溶解性」であるとは、温度23℃において当該溶媒に1質量%の濃度で溶解する(不溶分が目視で確認できない)ことをいい、「非溶解性」であるとは、温度23℃において当該溶媒に1質量%の濃度で、24時間撹拌後も溶解しない(不溶分が目視で確認できる)ことをいう。
電解質層20は、その構成成分を含有する溶液(電解液)を光電極10上に塗布したり、光電極10と対向電極30とを有するセルを作製し、その隙間に電解液を注入したりすることで形成することができる。
<対向電極>
対向電極30は、本発明の光電変換素子用対向電極であり、支持体30a上に任意に形成された導電層30bと、導電層30b上に形成された触媒層30cとからなる。
対向電極の支持体30aとしては、「対向電極の支持体」として上述したものと同様のものを用いることができる。また、対向電極の導電層30bとしては、「光電極の導電層」として上述したものと同様のものを用いることができる。
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法としては、特に限定されるものではないが、変換効率に優れた色素増感型太陽電池を効率的に製造可能であることから、本発明の対向電極を用い、光電極と対向電極との間に、非プロトン性極性物質を溶媒として含有する電解液を用いて、電解質層を形成する工程を含む方法が好ましい。
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の色素増感型太陽電池が直列及び/又は並列に接続されてなるものである。
ここで、太陽電池モジュールは、例えば、本発明の色素増感型太陽電池を平面状又は曲面状に配列し、各電池間に非導電性の隔壁を設けるとともに、各電池の光電極や対向電極を導電性の部材を用いて電気的に接続することで得ることができる。
なお、太陽電池モジュールの形成に用いる色素増感型太陽電池の数は特に限定されず、目的の電圧に応じて適宜決定することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。本実施例における測定及び評価は、以下の方法によって行った。
<ペースト分散性>
ペースト分散性はペースト作製24時間後にJIS K5600-2-5による粒ゲージ法により評価した。粒ゲージ法で評価した値が低いほど、ペーストの分散性が高いことを示す。
A:10μm未満
B:10μm以上20μm未満
C:20μm以上
<触媒層の外観(ピンホール)>
対向電極の触媒層について、任意の1cmの箇所を目視観察し、下記のサイズのピンホールの発生の有無を確認した。そして、以下の基準に従って評価した。よりサイズの大きいピンホールの発生が無いほど、触媒層の強度が高いことを意味する。
A:0.5mm以上のピンホールの発生無し
B:0.5mm以上1.0mm未満のピンホールの発生有り
C:1.0mm以上のピンホールの発生有り
<変換効率>
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC-L11型、ペクセル・テクノロジーズ社製)を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mW/cm(JIS C8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、以下の電流電圧特性の測定を行なった。
1sunの光照射下、バイアス電圧を0Vから0.8Vまで0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化させた後、0.05秒後から0.15秒後までの値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまで変化させる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流とした。
上記の電流電圧特性の測定結果より、開放電圧(Voc;単位は[V])、短絡電流密度(Jsc;単位は[mA/cm])、曲線因子(FF;無単位量)、及びエネルギー変換効率(η;単位は%)を算出し、特に、短絡電流、曲線因子及びエネルギー変換効率について、それぞれ以下の基準に従って評価した。
<<短絡電流>>
A:10.0以上
B:9.0以上10.0未満
C:9.0未満
<<曲線因子>>
A:0.60以上
B:0.55以上0.60未満
C:0.50以上0.55未満
D:0.45以上0.50未満
E:0.45未満
<<変換効率>>
A:4.0以上
B:3.5以上4.0未満
C:3.0以上3.5未満
D:2.5以上3.0未満
E:2.5未満
<高温耐久性>
作製した色素増感型太陽電池の高温耐久性は、アルミラミジップ内に電池を封入した後に60℃で168h後の短絡電流値を初期値と比較することによって評価した。
A:90%以上
B:85%以上90%未満
C:80%以上85%未満
D:75%以上80%未満
E:75%未満
(実施例1)
<ペーストの調製>
500mLのポリビンに、単層CNT(日本ゼオン社製SGCNT、製品名「SG101」;BET比表面積:1264m/g)3.0g、アセチレンブラック(デンカ社製、デンカブラック(登録商標)、「HS-100」、平均1次粒子径:35nm、BET比表面積:68m/g)3.0g、分散剤としてのスチレンとメトキシポリエチレングリコールメタクリレートとの共重合体(楠本化成社製、製品名「ディスパロン(登録商標)AQ-380」、アセトニトリルに対して溶解性、重量平均分子量15000、エチレングリコール鎖の部分「(CH-CH-O))」のn=23)の純分として6.0g(単層CNT100部当たり200部)、増粘剤としてのヒドロキシエチルセルロース(ダイセルファインケム社製、製品名「SP600」、アセトニトリルに対して非溶解性)1.0g(単層CNT100部当たり33部)、有機金属錯体としてのフタロシアニン鉄(モル質量:568g/mоl)0.3g、及び純水400gを投入し、混合物を得た。
得られた混合物を、ホモミキサーで6000rpm、30分間、水浴でポリビンを25℃に冷却しながら撹拌して粗分散液を得た。
得られた粗分散液を湿式ジェットミル(吉田機械興業社製、製品名「ナノヴェイタ(登録商標)」)で、分散液を25℃に冷却しながら、100MPaで10Pass処理をし、ペーストを得た。得られたペーストについてペースト分散性を評価した。結果を表1に示す。
<対向電極の作製>
上述のようにして調製したペーストを、ITO-PENフィルム(50mm×50mm、15Ω/□)上に、100メッシュのスクリーンを用いたスクリーン印刷法により塗布して、イナートオーブン(ヤマト科学社製)で、大気雰囲気にて、125℃で15分間乾燥させて、塗膜を形成した。この塗膜を60℃、減圧下、2時間の条件で乾燥して、支持体上に厚さ3μmの触媒層が形成された対向電極を得た。この対向電極を用いて、触媒層の外観(膜強度)を評価した。結果を表1に示す。
<光電極の作製>
増感色素としてルテニウム錯体(ソラロニクス社製:商品名N719)を用い、溶媒としてエタノールを用いて、増感色素溶液(濃度0.3mM)を準備した。
ITO-PENフィルム(50mm×50mm 15Ω/□)上に、濃度5mMのチタンイソプロポキシドのイソプロピルアルコール溶液をバーコート法により塗布し、イナートオーブン(ヤマト科学社製)で、150℃、15分間乾燥させた。熱硬化性のAgペースト(トーヨーケム株式会社製)を用いて、スクリーン印刷機(セリア製SFA-PC610CTN)を用いて印刷し、イナートオーブン(ヤマト科学社製)で、130℃、30分間加熱し取り出し電極(厚み8μm)を形成し、さらに、水系の酸化チタンペースト(ペクセル・テクノロジーズ株式会社製、PECC-AW1-01)を使用し、スクリーン印刷機で、塗布し、イナートオーブン(ヤマト科学株式会社製)で150℃、15分間乾燥させ、多孔質半導体層を形成した(酸化チタン層の厚みは、8μm、面積は38.47cmであった)。
この多孔質半導体層を形成したITO-PENフィルムを、上述のようにして調製した増感色素溶液(50cm各のバット)に入れ、40℃、2時間浸漬した。浸漬後、エタノール溶液で洗浄し、40℃/24時間、減圧下で乾燥をして、光電極を作製した。
<太陽電池の製造>
ヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.1mol/L、t-ブチルピリジン0.5mol/L、及び1,2-ジメチル-3プロピルイミダゾリウムヨージド0.6mol/Lとなるように、これらを溶媒としてのアセトニトリルに溶解して、電解液を得た。
真空貼り合せ装置にて、上記光電極上に、シール剤(ポリブチレン系光硬化性樹脂と8質量%の25μmの絶縁性スペーサー樹脂)を貼り合せ後のシール剤幅が0.9mm、高さが30μmになるようにディスペンサーで、1周囲むように塗布した後、上述のようにして得られた電解液を光電極に塗布した。上記対向電極を真空貼り合せ装置に設置し、真空中で重ねあわせを行い、メタルハライドランプによりUV照射を積算光量3000mJ/cmで行って封止材を硬化させて、貼り合せを行った。真空中から大気圧に開放して、太陽電池としての色素増感型太陽電池を製造した。そして、この色素増感型太陽電池を用いて短絡電流、曲線因子、変換効率及び高温耐久性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
ペーストの調製に際し、単層CNTを多層CNT(ナノシル社製、製品名「NC7000」;BET比表面積:275m/g)に変更した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
ペーストの調製に際し、単層CNTとアセチレンブラックとの配合比が質量比(単層CNT/アセチレンブラック)で90/10になるように調整した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
ペーストの調製に際し、単層CNTとアセチレンブラックとの配合比が質量比(単層CNT/アセチレンブラック)で35/65になるように調整した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
ペーストの調製に際し、触媒層中のフタロシアニン鉄の含有量が単層CNT及びアセチレンブラックの合計含有量100部当たり30部になるように調整した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
ペーストの調製に際し、触媒層中のフタロシアニン鉄の含有量が単層CNT及びアセチレンブラックの合計含有量100質量部当たり1質量部になるように調整した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
ペーストの調製に際し、フタロシアニン鉄をフタロシアニン銅(モル質量:576g/mоl)に変更した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
ペーストの調製に際し、フタロシアニン鉄に替えて、特許第5629473号の実施例1に従って得たNi(II)トリス-ブチル-アセトアミド-フタロシアニン(モル質量:805g/mоl)を使用した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
ペーストの調製に際し、アセチレンブラックを使用しなかった以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
ペーストの調製に際し、単層CNTを使用せず、アセチレンブラックをケッチェンブラック(ライオン社製、製品名「ECP」、平均1次粒子径:39.5nm、BET比表面積:800m/g)に変更した以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
ペーストの調製に際し、フタロシアニン鉄を使用しなかった以外は、実施例1と同様の各種操作及び評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2022117263000003
表1中、
「CNT」はカーボンナノチューブを示し、
「SWCNT」は単層カーボンナノチューブを示し、
「MWCNT」は多層カーボンナノチューブを示し、
「PcFe」はフタロシアニン鉄を示し、
「PcCu」はフタロシアニン銅を示す。
表1より、実施例1~8で得られた対向電極を用いれば、変換効率及び高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池が得られることがわかる。
本発明によれば、色素増感型太陽電池の変換効率及び高温耐久性を高め得る光電変換素子用対向電極を提供することができる。
また、本発明によれば、変換効率及び高温耐久性に優れた色素増感型太陽電池と、この色素増感型太陽電池を用いた太陽電池モジュールを提供することができる。
10 光電極
30 対向電極
20 電解質層
10a,30a 支持体
10b,30b 導電層
10c 多孔質半導体微粒子層
10d 増感色素層
30c 触媒層
40 回路
100 色素増感型太陽電池

Claims (10)

  1. 支持体と、前記支持体上に形成された触媒層とを有し、
    前記触媒層は、有機金属錯体と、カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料とを含む、光電変換素子用対向電極。
  2. 前記有機金属錯体の配位子が、下記一般式(1)で表されるポルフィリン化合物及び下記一般式(2)で表されるフタロシアニン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の光電変換素子用対向電極。
    Figure 2022117263000004
    上記一般式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、又はスルホン酸基を示し、R~R12はそれぞれ独立に、水素原子、又はフェニル基を示す。
    上記一般式(2)中、R~Rは、上記一般式(1)中のR~Rと同様である。
  3. 前記有機金属錯体の中心金属原子が、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、コバルト、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、レニウム、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の光電変換素子用対向電極。
  4. 前記有機金属錯体の含有量が、前記カーボンナノチューブ及び前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料の合計含有量100質量部当たり30質量部以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光電変換素子用対向電極。
  5. 前記カーボンナノチューブが、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すカーボンナノチューブである、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子用対向電極。
  6. 前記導電性炭素材料がカーボンブラックである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光電変換素子用対向電極。
  7. 前記カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料との含有割合が、質量比(カーボンナノチューブ/カーボンナノチューブ以外の導電性炭素材料)で35/65~90/10である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光電変換素子用対向電極。
  8. 前記支持体が透明樹脂からなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換素子用対向電極。
  9. 光電極、電解質層、及び対向電極をこの順に有する色素増感型太陽電池であって、前記対向電極が、請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換素子用対向電極である色素増感型太陽電池。
  10. 請求項9に記載の色素増感型太陽電池が直列及び/又は並列に接続されてなる太陽電池モジュール。
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