JP2022113102A - 油脂組成物 - Google Patents

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佳輝 岡
Yoshiteru Oka
朋憲 池原
Tomonori Ikehara
貴之 樋口
Takayuki Higuchi
朋之 磯貝
Tomoyuki Isogai
麻子 坂上
Asako Sakagami
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【課題】パンとの相性を向上させた油脂組成物を得ることを課題とする。【解決手段】ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を含有する油脂組成物により、前記課題を解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、油脂組成物、油脂組成物とパンとの相性を向上させる剤、及び油脂組成物のパンとの相性の向上方法に関する。本発明は、油脂組成物の製造方法にも関する。
マーガリンをはじめとする油脂組成物は、パンと一緒に食べることにより、または製菓製パン原料として用いることにより、バター風味など任意の風味を付与し、パンの風味を豊かにすることができる。パンに塗布して喫食する油脂組成物では、パンの風味と油脂組成物の風味の相性が重要である。
過去、パンの風味を向上させるために様々な方法が試されてきた。例えば特許文献1では、パン生地中の穀粉や乳固形分の割合やラクトン類と遊離脂肪酸類の重量比を調整することで焼きたてのバター様の風味とコクを増強でき、良好な風味を付与するパン生地が提案されている。
特開2015-37393
しかしながら、パンと油脂組成物の相性に関するものはなく、その開発が望まれていた。
本発明は、パンとの相性を向上させた油脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題の解決を目指し鋭意研究を進めたところ、油脂組成物中にピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物を含有させることで、パンの良好な風味を引き立て、パンと油脂組成物の相性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明とは下記のピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類(以下、単に化合物類と呼ぶことがある)を含有するものであり、本発明には、以下の構成が含まれる。
<1>ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を含有する油脂組成物。
<2>上記ピロール類の含有量が、油脂組成物全量基準で、0.1重量ppq~1,000重量ppmであり、上記ピラジン類の含有量が、油脂組成物全量基準で、0.1重量ppq~1,000重量ppmであり、上記ケトン類の含有量が、油脂組成物全量基準で、0.1重量ppq~1,000重量ppmであることを特徴とする<1>に記載の油脂組成物。
<3>パンに使用するための、<1>または<2>に記載の油脂組成物。
<4>チーズである、<1>~<3>のいずれかに記載の油脂組成物。
<5>ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を含む、油脂組成物とパンとの相性を向上させる剤。
<6>油脂組成物が、チーズである、<5>に記載の剤。
<7>ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を、油脂組成物の原料、油脂組成物の原料混合物、又は油脂組成物に添加する工程
を含む、油脂組成物のパンとの相性の向上方法。
<8>油脂組成物が、チーズである、<7>に記載の油脂組成物のパンとの相性の向上方法。
<9>原料及び/又は原料混合物にピロール類、ピラジン類、ケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を添加する添加工程
を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の油脂組成物の製造方法。
<10>原料油脂を含む油相と水相とを混合する混合工程と、
混合工程によって得られた原料混合物を加熱する加熱工程と、
加熱工程後の混合物を冷却する冷却工程と
さらに含むことを特徴とする、<9>に記載の油脂組成物の製造方法。
<11>油脂組成物が、チーズである、<9>に記載の油脂組成物の製造方法。
本発明によれば、パンとの相性を向上させた油脂組成物を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書においては、発明の態様に分けて説明をしているが、それぞれの態様に記載の事項、語句の定義、及び実施形態は、他の態様においても適用可能である。
1.油脂組成物
(油脂組成物)
本発明における油脂組成物とは、油脂を含む食品である。好ましくは、油脂および必要に応じた油溶性副原料からなる油脂組成物、油脂および必要に応じた油溶性副原料からなる油相と水および必要に応じた水溶性副原料からなる水相を混合し、乳化させた油脂組成物、並びにチーズである。本明細書において、「チーズ」には、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、及びチーズフードが含まれる。乳化させた油脂組成物には、上記油相を連続相とする油中水型と上記水相を連続相とする水中油型とがある。特に制限はないが、油中水型油脂組成物ではバター、マーガリン、乳又は乳製品を主要原料とする食品などが例示され、水中油型油脂組成物では、クリーム、乳飲料、乳又は乳製品を主要原料とする食品、ドレッシング(マヨネーズを含む)などが例示される。ナチュラルチーズ、及びプロセスチーズは乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に定められるものである。チーズフードは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフードの表示に関する公正競争規約の第3条において定められるものである。
上記油脂組成物は特に形態は問わず、固体、液体、粉体、或いはこれらの混合体であってもよい。本発明における油脂組成物は、好ましくは、クリーム、バター、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、又は乳又は乳製品を主要原料とする食品である。
本発明で使用する油脂としては、通常食用として用いられているものであれば植物油脂、動物油脂のいずれでもよく、例えば乳脂、牛脂、豚脂、大豆油、綿実油、米油、コーン油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等が挙げられ、これら或いはこれらを混合、硬化、分別、エステル交換したものを単独或いは2種以上を混合して用いることが出来る。
本発明の油脂組成物を調製するための油相および水相には必要に応じて副原料を混合することができる。上記副原料は、通常食品に使用されるものであれば特に制限はないが、例えば、食塩や全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルク粉、ホエーパウダー、練乳、チーズ、食物繊維、ゼラチン、コーヒー、チョコレート、果汁などが挙げられる。
副原料としては、全脂粉乳又は脱脂粉乳を、油脂組成物全量基準で、0~2重量%含むことが好ましい。また、全脂粉乳又は脱脂粉乳に変えて、クリームパウダー、ホエーパウダー、たんぱく質濃縮ホエーパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳および調製粉乳を、油脂組成物全量基準で、0~2重量%含んでもよい。これらの用語の定義は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の第二条において規定されるとおりである。
また、本発明の油脂組成物には風味や物性を損なわない限りにおいて乳化剤、色素、安定剤、調味料、酸味料、甘味料、pH調整剤、ビタミン類、香料、スパイス等を適宜添加し用いることができる。乳化剤、色素、安定剤、調味料、酸味料、甘味料、pH調整剤、ビタミン類、香料、スパイス等は、入手可能な市販のものを制限なく使用することができる。
乳化剤としては、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、グリセリン脂肪酸エステル、サポニン等が挙げられる。乳化剤の添加量は、油脂組成物全量基準で、0.01重量%~3重量%、或いは添加しなくてもよい。
安定剤としては、例えば、寒天、ゼラチン、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアガム、カラギーナン、メチルセルロース、デキストリン、加工デンプン、食物繊維等が挙げられる。安定剤の添加量は、油脂組成物全量基準で、0.001重量%~3重量%、或いは添加しなくてもよい。
調味料としては、例えば、砂糖、塩、各種アミノ酸等が挙げられる。調味料の添加量は、油脂組成物全量基準で、0.1重量%~5重量%、或いは添加しなくてもよい。
調味料として、塩を油脂組成物全量基準で、0~2重量%含むことが好ましい。
香料としては、ミルクフレーバー、バターフレーバー、クリームフレーバー、乳製品抽出物、バニラ抽出物、コーヒーフレーバー、フルーツフレーバーなどが挙げられる。香料の添加量は、油脂組成物全量基準で、0.001重量%~3重量%、或いは添加しなくてもよい。
本発明の油脂組成物において、水分は、限定されるものではないが、組成物全量基準において、0重量%、1重量%以下、5重量%以下、10重量%以下、30重量%以下、50重量%以下、70重量%以下、90重量%、99重量%以下であることができる。なお、前記「水分」とは、油脂組成物において、水が占める割合(重量%)を意味する。
本発明の油脂組成物において、油脂の含有量は、限定されるものではないが、組成物全量基準において、下限は、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、38重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上であることができ、上限は、100重量%、99重量%以下、95重量%以下、92重量%以下、90重量%以下、88重量%以下、85重量%以下、83重量%以下、80重量%以下、65重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、10重量%以下であることができ、具体的な範囲としては、100重量%、20重量%~99重量%、25重量%~95重量%、30重量%~90重量%、35重量%~85重量%、又は38重量%~83重量%である。
(ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類)
本発明における油脂組成物は上記油相及び/又は上記水相に化合物を添加することで調製することができる。上記化合物とはピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類である。化合物類は、限定されるものではないが、以下の化合物類を用いることができる。
ピロール類:1-メチルピロール(CAS番号:96-54-8)、2-アセチルピロール(CAS番号:1072-83-9)から選ばれる少なくとも1種類以上。
ピラジン類:ピラジン(CAS番号:290-37-9)、2-メチルピラジン(CAS番号:109-08-0)、2,3-ジメチルピラジン(CAS番号:5910-89-4)、2,5-ジメチルピラジン(CAS番号:123-32-0)、2,6-ジメチルピラジン(CAS番号:108-50-9)、2-エチルピラジン(CAS番号:13925-00-3)、2,3,5-トリメチルピラジン(CAS番号:14667-55-1)、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン(CAS番号:18138-04-0)、2-エチル-3-メチルピラジン(CAS番号:15707-23-0)、2-アセチルピラジン(CAS番号:22047-25-2)から選ばれる少なくとも1種類以上。
ケトン類:2-ペンタノン(CAS番号:107-87-9)、2-ヘプタノン(CAS番号:110-43-0)、2-ノナノン(CAS番号:821-55-6)、2-ウンデカノン(CAS番号:112-12-9)から選ばれる少なくとも1種類以上。
本発明の油脂組成物は、ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される化合物類を2種類含むことが好ましく、3種類含むことがより好ましい。なお、前記「2種類」は、異なる化合物類の種を2種類含むこと、例えば、ピロール類を1種類、そしてピラジン類を1種類含むことを意味し、2種類のピラジン類を含むことを意味するものではない。化合物類を2種類、又は3種類含むことにより、パンとの相性をより向上させた油脂組成物を得ることができる。
ピロール類に属する化合物、ピラジン類に属する化合物、及びケトン類に属する化合物は、それぞれ、特有の芳香を有している。ピロール類に属する化合物は、例えばナッツ様の香りやスモーキーな香りを有する。また、ピラジン類に属する化合物は、例えばローストナッツやチョコレートのようなロースト香を有する。さらにケトン類に属する化合物は、例えばフルーツやシトラス様の香りあるいはやや油様のにおいを有する。このような芳香が、油脂組成物において、パンとの相性を向上させることに寄与していると考えられる。
ピロール類、ピラジン類、又はケトン類の含有量は、油脂組成物全量基準で、独立して、下限として0.1重量ppq以上、1重量ppq以上、10重量ppq以上、100重量ppq以上、1重量ppt以上、10重量ppt以上、100重量ppt以上、1重量ppb以上、10重量ppb以上、100重量ppb以上又は1重量ppm以上、上限として、1000重量ppm以下、100重量ppm以下、10重量ppm以下、又は1重量ppm以下であってもよい。
ピロール類、ピラジン類、又はケトン類の含有量は、油脂組成物全量基準で、独立して、好ましくは、10重量ppb~10重量ppmであり、さらに好ましくは100重量ppb~1重量ppmである。
化合物類は、通常のガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)を用いて測定することができる。油脂組成物中の化合物類を定量するためには、標準添加法或いは絶対検量線法を用いることができる。標準添加法においては、油脂組成物に既知濃度の化合物類を段階的に添加し、或いは添加せず検体とすることができる。上記検体をGC-MSを用いて測定し、各検体の測定値から油脂組成物中の化合物類を定量することができる。
絶対検量線法においては、既知濃度の化合物類を含む標準検体を用いることができる。上記標準検体をGC-MSを用いて測定した結果によって検量線を描く。上記検量線および油脂組成物をGC-MSで測定した結果を用いて油脂組成物中の化合物類を定量することができる。
含有量が高濃度(例えば、1重量ppm以上)の油脂組成物においては、化合物類の捕集方法としてDHS-MVM(ゲステル株式会社)を使用することができる。10mLバイアルに上記検体を0.1g量り採る。その後、下記文献に記載の方法で上記化合物類を測定することができる。
含有量が低濃度(例えば、1重量ppm未満)の油脂組成物においては、油脂組成物に含有される化合物類を溶媒で抽出することができる。化合物類を抽出した溶媒を0.1~1mL程度まで濃縮する。化合物の抽出に用いる油脂組成物の重量および溶媒の重量はGC-MSで検出できる濃度まで濃縮できれば特に制限なく使用することができる。濃縮した溶媒は、例えば濃縮した溶媒をゲステル株式会社が提案するSE-FEDHS法によって捕集することができる。SE-FEDHS法の条件はゲステル株式会社のマニュアルに沿って設定することができる。捕集した化合物類は下記文献に記載のGC-MS条件によって測定することができる。
Multi―volatile method for aroma analysis using sequential dynamicheadspace sampling with an application to brewed coffee. Journal of Chromatography A, 1371 (2014) 65-73.
本発明では、合成又は分離された化合物類を油脂組成物に添加することもでき、化合物類を含む原料を油脂組成物に添加することもでき、その両方であることもできる。本発明では、合成された化合物類又は上記原料より任意の手段で分離された化合物類を油脂組成物に添加することが好ましい。上記の合成又は分離された化合物類は、自ら合成又は分離したものを使用してもよく、市販のものを購入してもよい。例えば、シグマアルドリッチ社製造のものを使用することができる。合成又は分離した化合物類を油脂組成物に添加する場合、合成又は分離した化合物類のみを添加してもよく、後述するように、他の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤等とともに油脂組成物に添加してもよい。また、合成又は分離した化合物類は、他の成分を含んだ香料組成物の形態として油脂組成物に添加してもよい。
前記の分離の手段としては動物又は植物組織に由来する成分の分離に用いられる通常の方法、例えばこれらに限定されるものではないが、水蒸気蒸留法、溶剤抽出法、圧搾法(直接、高温、若しくは低温)、又は超臨界抽出法等を用いることができる。
合成又は分離された化合物類は、化合物類と他の化合物との混合物の状態で使用してもよい。例えば、化学合成して、純度を高くするための精製を行っていないものを用いてもよい。
2.油脂組成物の製造方法
(油脂組成物の製造方法)
本発明の油脂組成物の製造方法は、原料及び/又は原料混合物にピロール類、ピラジン類、ケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を添加する添加工程を含む。本発明の油脂組成物は、上記添加工程に、従来公知の工程・方法を組み合わせて調製することができる。
以下に本発明の油脂組成物の製造方法を例示するが、本発明は特にこれらに限定されることはない。
油脂および必要に応じた油溶性副原料からなる油相に化合物類を添加し、かきとり式冷却器で急冷可塑化するなど常法で用いられる工程を経て、油相のみを含む油脂組成物を得ることができる。
油中水型油脂組成物は、上記油相と水および必要に応じた水溶性副原料からなる水相を徐々に混合し、原料混合物を調製し、加熱し、乳化する。このとき、油脂組成物の目標とする風味や物性を損なわない限りにおいて、乳化剤、色素、安定剤、調味料、香料等を添加することができる。上記原料混合物に化合物類を添加し、かきとり式冷却器で急冷可塑化するなど常法で用いられる工程を経て上記油中水型油脂組成物を得ることができる。
水中油型油脂組成物は、上記水相と上記油相を混合し、原料混合物を調製し、化合物類を添加する。このとき、油脂組成物の目標とする風味や物性を損なわない限りにおいて、乳化剤、色素、安定剤、調味料、香料等を添加することができる。その後、均質、殺菌、冷却など常法で用いられる工程を経て上記水中油型油脂組成物を得ることができる。
バターの製造方法は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に規定される成分規格等に当てはまる方法であればいずれでもよく、すなわち生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳から得られた脂肪粒を練圧することで得ることができる。バターの製造工程中の任意の箇所あるいは製造後に化合物類を添加し、油脂組成物を得ることができる。
クリームの製造方法は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に規定される成分規格等に当てはまる方法であればいずれでもよく、すなわち、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去することで得ることができる。クリームの製造工程中の任意の箇所あるいは製造後に化合物類を添加し、油脂組成物を得ることができる。
ナチュラルチーズの製造方法は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に規定される成分規格等に当てはまる方法であればいずれでもよく、すなわち、乳、バターミルク、クリーム又はこれらを混合したもののほとんどすべて又は一部のたんぱく質を酵素その他の凝固剤により凝固させた凝乳から乳清の一部を除去する又はこれらを熟成することで得ることができる。ナチュラルチーズの製造工程中の任意の箇所あるいは製造後に化合物類を添加し、油脂組成物を得ることができる。例えば、ナチュラルチーズの製造工程中に、原料又は原料混合物に対して化合物類を添加してもよく、ナチュラルチーズの製造後に、ナチュラルチーズを、化合物類を含有する溶液に浸漬させてもよい。
プロセスチーズの製造方法は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に規定される成分規格等に当てはまる方法であればいずれでもよく、すなわち、ナチユラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化することで得ることができる。プロセスチーズの製造工程中の任意の箇所あるいは製造後に化合物類を添加し、油脂組成物を得ることができる。例えば、化合物類を含むナチュラルチーズを原料として用いてもよく、プロセスチーズの製造工程中において、原料又は原料混合物に対して化合物類を添加してもよく、プロセスチーズの製造後に、プロセスチーズを、化合物類を含有する溶液に浸漬させてもよい。
化合物類は、加熱後または加熱前に添加しておいてもよく、原料及び/又は加熱前の原料混合物に添加しておいてもよい。
本発明の油脂組成物の製造方法は、適切な容器に油脂組成物を充填する充填工程、及び/又は適切な包装材料で油脂組成物を包装する包装工程を含むことができる。
(パンに使用すること)
本発明の油脂組成物は、パンとの相性がよく、パンに使用することに適している。本明細書において「パンに使用する」とは、パンとともに食するために、油脂組成物をパンに添加又は塗布することである。パンに添加するとは、パンの製造工程中において、パンに油脂組成物を含ませることを意味し、パンに塗布するとは、完成したパンの表面に、油脂組成物を塗ることを意味する。添加又は塗布する場所は限定されることはなく、パンが製造される工場であってもよく、パンを食する各家庭であってもよい。すなわち、添加又は塗布は、パンに製造工程の途中で添加されてもよく、パンが製造された後、店舗又は家庭において、食される直前に塗布されてもよい。
本発明の油脂組成物が、パンが製造された後、店舗又は家庭において、食される直前に塗布される場合は、パンをトーストしたまたは電子レンジ等で加熱した後に油脂組成物を塗り、食べる、トーストしていないまたは電子レンジ等で加熱していないパンに油脂組成物を塗り、食べる、及び、パンと油脂組成物とを一緒にトーストしてまたは電子レンジ等で加熱して食べるという実施形態を全て含む。パンをトーストした後に油脂組成物を塗り、食べることが好ましい。
本発明の油脂組成物が、パン製造工程の途中で、原料としてパンに添加される場合は、小麦粉等、そして本発明の油脂組成物を混合してパン生地を作り、このパン生地を焼いてパンを作る実施形態を含む。
本発明の油脂組成物には、上記のような油脂組成物の用途が表示されていてもよい。上記の「表示」は、消費者に前記の用途を知らしめる全てが含まれ、表示される対象は、包装、容器、カタログ、パンフレット、及びインターネットホームページなどその媒体を問わない。
本明細書において、「パンとの相性がいい」とは、パンと油脂組成物とを同時に食べた時に、油脂組成物を含まない標準品に比べて、パンと油脂組成物の風味の一体感が向上していること、および/または、パンのおいしさを引き立てていること、を意味する。油脂組成物とパンとの相性がいいかどうかは、パネルによる官能評価により評価することができる。具体的には、例えば、評価したパネルの半数以上が、好ましくは全員が、パンと油脂組成物とを同時に食べた時に、化合物類を含まない標準品に比べて、パンと油脂組成物の風味の一体感が向上している、または、パンのおいしさを引き立てていると評価することを意味する。
本発明の油脂組成物を使用するパンには、食パン、ロールパン、フランスパン、菓子パン、デニッシュペストリー、バラエティブレッド、調理パン、イーストドーナツ、ホットケーキ、蒸しパン、クロワッサン、及びカレーパンなどが含まれる。パンは、好ましくは食パンである。本発明の油脂組成物を使用するパンの主原料は、小麦粉、ライ麦粉、大麦粉、麦芽粉、トウモロコシ粉、エンバク粉、米粉、片栗粉、くず粉、タピオカ粉、緑豆粉等の穀物粉糖であることができる。本発明の油脂組成物を使用するパンには、必要に応じて、油脂、糖類、乳成分、卵成分、増粘多糖類、乳化剤、酵素製剤、食塩、カルシウム塩、ビタミン類、イースト、イーストフード、膨張剤などが添加されてもよい。
3.油脂組成物とパンとの相性を向上させる剤
本発明の油脂組成物とパンとの相性を向上させる剤(以下、単に本発明の剤と称することがある)は、ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を含む。本発明の剤は、任意の形態であることができ、具体的には、液状、固形状、粉末状、又は細粒状であることができる。
本発明の剤は、化合物類から成るものであってもよく、本発明の効果を有する限り、他の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、又は懸濁化剤などを含むこともできる。
本発明の剤は、本発明の効果を損なわない限り、ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類に加えて他の成分を含めることにより、他の成分を含んだ香料組成物の形態としてもよい。他の成分については、本発明の剤の形態等に応じて適宜選択できるが、例えば、各種の合成香料、天然香料、天然精油、植物エキス、保留剤、溶剤、懸濁化剤、溶解補助剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等が挙げられる。
本発明の剤は、パン、パンの原料、パンの原料ミックス、油脂組成物、油脂組成物の原料、又は油脂組成物の原料混合物に添加することができ、例えば、小麦粉、パン生地、パン、クリーム、バター、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳又は乳製品を主要原料とする食品、油脂組成物の原料となる油脂、工程中の油相、工程中の水相等に添加することができる。
本発明の剤と油脂組成物とをパン、パンの原料、又はパンの原料ミックスの原料に添加して、パンを製造する場合、本発明の剤の効果が得られる限りにおいて、その順序は問わない。すなわち、本発明の剤を油脂組成物の添加前に添加してもよく、油脂組成物と予め混合して、一緒に添加してもよく、又は油脂添加物の後に添加してもよい。本発明の剤は、好ましくは、油脂組成物と予め混合して、パン生地、パン、又はパンの原料に添加する。
本発明の剤には、油脂組成物、例えば、クリーム、バター、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳又は乳製品を主要原料とする食品、ドレッシング(マヨネーズを含む)とパンとの相性を向上させる、パンと油脂組成物、例えば、クリーム、バター、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳又は乳製品を主要原料とする食品、ドレッシング(マヨネーズを含む)との風味の一体感を向上させる、パンのおいしさを引き立てる等の表示を付してもよい。
本発明の剤は、油脂組成物を含んでいないパン、又はパン生地に対しても添加又は塗布することができる。油脂組成物を含んでいないパン、又はパン生地に本発明の剤を含んでいても、同様に、後に油脂組成物をパンに添加又は塗布することで、パンと油脂組成物の風味の一体感が向上し、および/または、パンのおいしさが引き立てられる。本発明の剤は、パン又はその原料に添加する場合好ましくは油脂組成物と共に食するパン又はその原料に使用し、さらに好ましくはトーストをして油脂組成物と共に食するパン又はその原料に使用する。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に説明がない場合、%は、重量%を示す。
(実施例1)
北海道フレッシュクリーム47(雪印メグミルク株式会社製)100kgに、2-メチルピラジンを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品1)を得た。また、上記北海道フレッシュクリーム47に2-メチルピラジンを添加しないものを標準品1とした。
(実施例2)
融点38℃に調合したエステル交換油を13.2kg、パーム油を8.8kg、大豆白絞油を35.1kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを1.5kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳0.8kg、食塩3.0kg、水87.8kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,5-ジメチルピラジンを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品2)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,5-ジメチルピラジンを添加しない油脂組成物(標準品2)を別途作製した。
(実施例3)
融点38℃に調合したエステル交換油を18kg、パーム油を12kg、大豆白絞油を48kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.4kgを配合して油相を調製した。これに、食塩1.8kg、水39.8kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,6-ジメチルピラジンを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品3)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,6-ジメチルピラジンを添加しない油脂組成物(標準品3)を別途作製した。
(実施例4)
融点38℃に調合したエステル交換油を19.6kg、パーム油を13.1kg、大豆白絞油を52.3kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.3kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1kg、食塩2kg、水11.7kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2-アセチルピロールを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品4)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-アセチルピロールを添加しない油脂組成物(標準品4)を別途作製した。
(実施例5)
融点38℃に調合したエステル交換油を27.7kg、パーム油を18.5kg、大豆白絞油を73.8kgを配合して油相を調製し、80℃で10分間加熱した。これに、2-ノナノンを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品5)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-ノナノンを添加しない油脂組成物(標準品5)を別途作製した。
(実施例6)
融点38℃に調合したエステル交換油を22.5kg、パーム油を15kg、大豆白絞油を60kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.5kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1.5kg、食塩3kg、水47.6kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2-ウンデカノンを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品6)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-ウンデカノンを添加しない油脂組成物(標準品6)を別途作製した。
(実施例7)
融点38℃に調合したエステル交換油を15kg、パーム油を10kg、大豆白絞油を40kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.3kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1kg、食塩1.5kg、水32.2kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,6-ジメチルピラジンを1,000重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品7)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,6-ジメチルピラジンを添加しない油脂組成物(標準品7)を別途作製した。
(実施例8)
融点38℃に調合したエステル交換油を10.5kg、パーム油を7kg、大豆白絞油を28.1kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを1.2kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳2.4kg、食塩1.2kg、水69.6kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2-アセチルピロールを1,000重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品8)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-アセチルピロールを添加しない油脂組成物(標準品8)を別途作製した。
(実施例9)
融点38℃に調合したエステル交換油を27.7kg、パーム油を18.5kg、大豆白絞油を73.8kgを配合して油相を調製し、80℃で10分間加熱した。これに、2-ウンデカノンを1,000重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品9)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-ウンデカノンを添加しない油脂組成物(標準品9)を別途作製した。
(実施例10)
融点38℃に調合したエステル交換油を18kg、パーム油を12kg、大豆白絞油を48kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.4kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1.2kg、食塩1.2kg、水39.2kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,6-ジメチルピラジンを0.25重量ppm、2-アセチルピロールを2.5重量ppm、2-ウンデカノンを0.5重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品10)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,6-ジメチルピラジン、2-アセチルピロール、2-ウンデカノンを添加しない油脂組成物(標準品10)を別途作製した。
(実施例11)
融点38℃に調合したエステル交換油を8.8kg、パーム油を5.8kg、大豆白絞油を23.4kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを1kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1kg、食塩0.5kg、水59.5kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,5-ジメチルピラジンを0.5重量ppm、2-アセチルピロールを2.5重量ppm、2-ノナノンを1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品11)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,5-ジメチルピラジン、2-アセチルピロール、2-ノナノンを添加しない油脂組成物(標準品11)を別途作製した。
(実施例12)
融点38℃に調合したエステル交換油を29.4kg、パーム油を19.6kg、大豆白絞油を78.5kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.5kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳3kg、食塩0.8kg、水18.3kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,6-ジメチルピラジンを0.25重量ppm、2-ウンデカノンを1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品12)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,6-ジメチルピラジン、2-ウンデカノンを添加しない油脂組成物(標準品12)を別途作製した。
(実施例13)
融点38℃に調合したエステル交換油を15kg、パーム油を10kg、大豆白絞油を40kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.3kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳2kg、食塩0.5kg、水32.2kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,6-ジメチルピラジンを0.1重量ppqとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品13)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,6-ジメチルピラジンを添加しない油脂組成物(標準品13)を別途作製した。
(実施例14)
融点38℃に調合したエステル交換油を13.2kg、パーム油を8.8kg、大豆白絞油を35.1kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを1.5kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳3kg、食塩2.3kg、水86.3kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2-アセチルピロールを0.1重量ppqとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品14)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-アセチルピロールを添加しない油脂組成物(標準品14)を別途作製した。
(実施例15)
融点38℃に調合したエステル交換油を29.4kg、パーム油を19.6kg、大豆白絞油を78.5kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.5kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳3kg、食塩1.5kg、水17.6kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2-ウンデカノンを0.1重量ppqとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品15)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2-ウンデカノンを添加しない油脂組成物(標準品15)を別途作製した。
(実施例16)
スライスチーズ(雪印メグミルク株式会社製:プロセスチーズ)100kgに、2-アセチルピロールを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品16)を得た。また、上記スライスチーズに2-アセチルピロールを添加しないものを標準品21とした。
(実施例17)
スライスチーズ(雪印メグミルク株式会社製:プロセスチーズ)100kgに、2,6-ジメチルピラジンを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品17)を得た。また、上記スライスチーズに2,6-ジメチルピラジンを添加しないものを標準品22とした。
(実施例18)
スライスチーズ(雪印メグミルク株式会社製:プロセスチーズ)100kgに、2-ウンデカノンを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品18)を得た。また、上記スライスチーズに2-ウンデカノンを添加しないものを標準品23とした。
(実施例19)
雪印北海道100 とろけるチーズクッキング用(雪印メグミルク株式会社製:ナチュラルチーズ)100kgに、2-アセチルピロールを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品19)を得た。また、上記スライスチーズに2-アセチルピロールを添加しないものを標準品24とした。
(実施例20)
雪印北海道100 とろけるチーズクッキング用(雪印メグミルク株式会社製:ナチュラルチーズ)100kgに、2,6-ジメチルピラジンを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品20)を得た。また、上記スライスチーズに2,6-ジメチルピラジンを添加しないものを標準品25とした。
(実施例21)
雪印北海道100 とろけるチーズクッキング用(雪印メグミルク株式会社製:ナチュラルチーズ)100kgに、2-ウンデカノンを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(実施例品21)を得た。また、上記スライスチーズに2-ウンデカノンを添加しないものを標準品26とした。
(比較例1)
北海道フレッシュクリーム47(雪印メグミルク株式会社製)100kgに、2,3-ブタンジオンを0.1重量ppmとなるように添加し、油脂組成物(比較例品1)を得た。また、上記北海道フレッシュクリーム47に2,3-ブタンジオンを添加しないものを標準品16とした。
(比較例2)
融点38℃に調合したエステル交換油を18kg、パーム油を12kg、大豆白絞油を48kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.4kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1.2kg、食塩2.4kg、水38kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、イソバレルアルデヒドを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品2)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物にイソバレルアルデヒドを添加しない油脂組成物(標準品17)を別途作製した。
(比較例3)
融点38℃に調合したエステル交換油を8.8kg、パーム油を5.8kg、大豆白絞油を23.4kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを1kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳1kg、食塩2kg、水58kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、バレリックアシッドを0.1重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品3)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物にバレリックアシッドを添加しない油脂組成物(標準品18)を別途作製した。
(比較例4)
融点38℃に調合したエステル交換油を23.5kg、パーム油を15.7kg、大豆白絞油を62.8kg、モノグリセリド脂肪酸エステルを0.4kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳2.4kg、食塩6.0kg、水9.2kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、2,3-ブタンジオンを0.5重量ppm、イソバレルアルデヒドを0.25重量ppm、バレリックアシッドを0.01重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品4)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,3-ブタンジオン、イソバレルアルデヒド、バレリックアシッドを添加しない油脂組成物(標準品19)を別途作製した。
(比較例5)
融点38℃に調合したエステル交換油を34.6kg、パーム油を23.1kg、大豆白絞油を92.3kgを配合して油相を調製し、80℃で10分間加熱した。これに、2,3-ブタンジオンを1重量ppm、イソバレルアルデヒドを0.01重量ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品5)を得た。また、上記油脂組成物と同じ混合物に2,3-ブタンジオン、イソバレルアルデヒドを添加しない油脂組成物(標準品20)を別途作製した。
表1および2に実施例品1~15、比較例品1~5および標準品1~20の、表2に実施例品16~21および標準品21~26の原料配合を記載する。
Figure 2022113102000001
Figure 2022113102000002
Figure 2022113102000003
表4に実施例品1~12の、表5に実施例品13~15の、表6に比較例品1~5の、表7に実施例品16~21の各化合物の濃度を記す。
Figure 2022113102000004
Figure 2022113102000005
Figure 2022113102000006
Figure 2022113102000007
(試験例)
実施例品1~21および比較例品1~5について、訓練されたパネル4名により、「パンとの相性」を評価項目として、各実施例品および比較例品と同じ油脂組成物配合の標準品との比較評価を行った。評点範囲は-3点~+3点とし、0.1点刻みで評価した。「パンとの相性」の定義および評点の大まかな基準は以下の通りとした。またパネル4名の中で「相性がよい」と選んだ人数と「相性がよくない」と選んだ人数から、記号による判定を行った。記号の定義は以下の通りとした。パンは市販の食パンを用い、評価の際はトースターで焼成した。焼成した食パンに実施例品1~21、比較例品1~5または標準品1~26を塗布し、評価した。
(定義)
パンと油脂組成物を同時に食べた時に、標準品に比べてパンと油脂組成物の風味の一体感が向上し、またはパンのおいしさを引き立てることでパンと油脂組成物の相性を向上していること。
(評点基準)
+3:標準品に比べてとても相性がよい
+2:標準品に比べてやや相性がよい
+1:標準品に比べてわずかに相性がよい
0:どちらともいえない
-1:標準品に比べてわずかに相性がよくない
-2:標準品に比べてやや相性がよくない
-3:標準品に比べてとても相性がよくない
(記号による判定)
◎:パネル全員が「パンとの相性」の向上効果を認めた
〇:パネル4名中2名以上が「パンとの相性」の向上効果を認めた
×:パネル4名中3名以上が「パンとの相性」の向上効果を認めなかった
表8に実施例品1~15および比較例品1~5の、表9に実施例品16~21の評点平均および判定結果を記す。
Figure 2022113102000008
Figure 2022113102000009
表4~表9より、ピロール類を0.1重量ppq~1,000重量ppm含む実施例品4、8、14、16及び19、ピラジン類を0.1重量ppq~1,000重量ppm含む実施例品1~3、7、13、17及び20、ケトン類を0.1重量ppq~1,000重量ppm含む実施例品5、6、9、15、18及び21、上記ピロール類、上記ピラジン類、上記ケトン類のうち2種類以上を含む実施例品10~12において、「パンとの相性」の向上効果が認められた。特に、実施例品2~4、6、及び10~12における「パンとの相性」の向上効果が顕著であった。一方、2,3-ブタンジオンを含む比較例品1、イソバレルアルデヒドを含む比較例品2、バレリックアシッドを含む比較例品3、2,3-ブタンジオン、イソバレルアルデヒド、バレリックアシッドのうち2種類以上を含む比較例品4及び5においては「パンとの相性」の向上効果が認められなかった。
ピロール類に属する化合物、ピラジン類に属する化合物、及びケトン類に属する化合物は、それぞれ、特有の芳香を有している。ピロール類に属する化合物のナッツ様の香り又はスモーキーな香りが、パンに合わせた時に小麦の風味や香ばしさを引き立たせる効果を有し、ピラジン類に属する化合物のローストナッツやチョコレートのようなロースト香が、パンを焼いた時の香ばしい風味を増強させ、そしてさらにケトン類に属する化合物のフルーツやシトラス様の香りあるいはやや油様のにおいが、パンと合わせた時に乳や小麦の風味および/または甘い風味を引き立たせる効果を有すると考えられた。ピロール類に属する化合物、ピラジン類に属する化合物、及びケトン類に属する化合物のこれらの特有の風味が、パンとの相性を向上させることに寄与していると考えられた。
本発明の油脂組成物によれば、パンの良好な風味を引き立てることができる。

Claims (11)

  1. ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を含有する油脂組成物。
  2. 上記ピロール類の含有量が、油脂組成物全量基準で、0.1重量ppq~1,000重量ppmであり、上記ピラジン類の含有量が、油脂組成物全量基準で、0.1重量ppq~1,000重量ppmであり、上記ケトン類の含有量が、油脂組成物全量基準で、0.1重量ppq~1,000重量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の油脂組成物。
  3. パンに使用するための、請求項1または2に記載の油脂組成物。
  4. チーズである、請求項1~3のいずれかに記載の油脂組成物。
  5. ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を含む、油脂組成物とパンとの相性を向上させる剤。
  6. 油脂組成物が、チーズである、請求項5に記載の剤。
  7. ピロール類、ピラジン類及びケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を、油脂組成物の原料、油脂組成物の原料混合物、又は油脂組成物に添加する工程
    を含む、油脂組成物のパンとの相性の向上方法。
  8. 油脂組成物が、チーズである、請求項7に記載の油脂組成物のパンとの相性の向上方法。
  9. 原料及び/又は原料混合物にピロール類、ピラジン類、ケトン類から選択される少なくとも1つ以上の化合物類を添加する添加工程
    を含む、請求項1~4のいずれかに記載の油脂組成物の製造方法。
  10. 原料油脂を含む油相と水相とを混合する混合工程と、
    混合工程によって得られた原料混合物を加熱する加熱工程と、
    加熱工程後の混合物を冷却する冷却工程と
    をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の油脂組成物の製造方法。
  11. 油脂組成物が、チーズである、請求項9に記載の油脂組成物の製造方法。
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