JP2022110668A - ヘッドライト制御装置及びヘッドライト制御方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、夜間雨天時には、自車両のヘッドライトから照射された照射光が路面上の水膜により鏡面反射され、照射光が路面で拡散反射或いは再帰反射されることから、乗員の視認性、特に車線の境界線に対する視認性が低下することも知られている。
特許文献1の車両用灯具システムは、第1灯具ユニットと、この第1灯具ユニットよりも遠方を照らすための第2灯具ユニットと、この第2灯具ユニットを通常天候用の第1照射方向と悪天候用の第2照射方向とを選択的に切替え設定可能な回転駆動部と、回転駆動部を制御する制御部とを備え、制御部は、天候状態に基づき回転駆動部を制御している。
悪天候用の配光パターンは、照射光の乱反射を抑制するため、中央領域が側方領域に比べて低い照度に設定される。
瞳孔反応は、照明等周囲の環境光の変化に対応した対光反応と、注視対象(注視点)までの距離に対応した近見反応とに分類される。近見反応では、注視対象までの距離が短い程縮瞳する。光刺激による対光反応や注視対象距離に応じた近見反応の他に、瞳孔は音刺激、電気或いは機械による痛覚刺激にも反応する。
しかし、特許文献1の技術では、雨粒や霧粒による照射光の乱反射は抑制されるものの、自車両が走行する車線の境界線の前方視認距離を十分に確保することができず、乗員が運転に対して不安感を覚える虞がある。
一方、車線の境界線からの反射光(輝度)は、当然、前方方向に離隔する程低くなる。
それ故、夜間雨天時には、乗員が、精神的及び技量的に運転に必要とする前方の視界情報、所謂進行方向前方の車線境界線について十分に視認することができないことがある。
運転するために必要な車線前方の境界線の視認距離(以下、必要視認距離という)を確保することができない場合、乗員は、精神的及び技量的に不安感を覚える。
しかし、瞳孔径を常時強制的に散瞳状態にする散瞳装置は物理的に困難であり、その制御も非常に複雑になることが懸念される。しかも、乗員が視認する注視対象が車両近傍に位置する場合、乗員の近見反応が阻害される虞があり、安全性に問題が生じる虞がある。
即ち、瞳孔反応への影響を最小限に抑えつつ必要な前方視認距離を確保することは容易ではない。
前記ヘッドライト制御手段は、前記視認可能距離が必要視認距離よりも小さいとき、前記視認可能距離が前記必要視認距離以上になるように前記ヘッドライトを制御するため、瞳孔反応への影響を最小限に抑えつつ対光反応を利用して乗員の視認可能距離を必要視認距離以上にすることができる。
この構成によれば、実際の境界線の輝度情報を用いて乗員の視認可能距離を高精度に検知することができ、第1,第2特性を用いて視認可能距離と必要視認距離とを容易に比較することができる。
この構成によれば、既知の第3特性を用いて必要視認距離を検知することができる。
この構成によれば、グレア錯視を用いて乗員の瞳孔を対光反応として散瞳させることができ、乗員の視感度を瞳孔反応を用いて向上することができる。
この構成によれば、視感度の調節を用いて車線の境界線を視認できる状況に限りヘッドライトを制御することができ、制御実行期間を制限することができる。
この構成によれば、請求項1の発明と同様の効果を奏することができる。
以下の説明は、本発明を車両のヘッドライト制御に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
図1は、本実施例1に係る制御装置により制御される左右1対のヘッドライト4を有する車両1を示す。この車両1は四輪自動車であり、不図示の駆動装置により、4つの車輪2のうち左右対称に位置する2輪、例えば、左右1対の前輪を駆動する。これにより、車両1は走行移動する。以下、車両1を運転する乗員から視て、前方を前側とし、左方を左側とし、上方を上側として説明する。また、以下の説明は、ヘッドライト制御方法の説明を含むものである。
LEDアレイ6aにおけるLED光源6bの配列は、LED光源5bの配列と同じであっても良く、異なっていても良い。
図1に示すように、ボディ系ECU(Electrical Control Unit)20は、ヘッドライト4の点灯中、運転する乗員の視感度を向上させるようにヘッドライト4の照射光の輝度を制御可能に構成されている。ここで、視感度とは、一般に、人間の目が波長毎に光を感じ取る強さの度合を意味する。本実施形態では、特に、乗員が視認できる進行方向前方の車線境界線の明るさ(輝度)の度合として明所比視感度を対象としている。
これら複数のセンサは、車内カメラ11(瞳孔径検出手段)と、複数の車外カメラ12と、ヘッドライトスイッチ13と、車両1の走行速度を検出可能な車速センサ14(車速検出手段)と、車両1の現在位置情報や周囲の地理情報等を外部サーバから受信可能なGPS(Global Positioning System)センサ15等を含むものである。
ヘッドライトスイッチ13は、例えば、ウインカーレバーに設けられている。ヘッドライトスイッチ13がオン操作されたとき、後述するヘッドライト制御部25が作動して、車両1の前方にヘッドライト4から照射光が照射される。
ECU20は、車内カメラ11で撮影した乗員画像及び複数の車外カメラ12で撮影した車外環境画像を画像処理する。このECU20は、画像処理された乗員画像に基づき乗員の瞳孔径を時系列的に順次検出している。ECU20は、車両1の前側近傍位置から進行方向前方に亙って車線の境界線の撮像情報を画像処理して車線の境界線の輝度情報を作成可能である。
走行シーン判定部21は、複数の車外カメラ12により撮影された車外環境情報に基づき車両1が走行している走行時間帯(日中、夜間)、現在の走行位置(直進路、交差点、市街地、郊外)、天候(晴れ、雨、曇り、雪)、道路状態(路面が濡れている、雪が積もっている)、周囲の環境(店舗や街灯等からの環境光の有無等)を特定する。
この走行シーン判定部21は、車速センサ14で検出された車速に基づき車両1が走行中か否か判定する。また、走行シーン判定部21は、複数の車外カメラ12により撮影された車外環境情報及びGPSセンサ15に基づき後述する必要視認距離Drよりも手前側にカーブが存在するか否か判定する。
記憶部22は、3つの第1~第3特性F1~F3を記憶している。
図5に示すように、第1特性F1は、乗員の視認可能距離Dpと乗員が視認可能な車線の境界線輝度との関係が予め設定されている。第1特性F1は、双曲線関数に類似したグラフとして表される。それ故、視認可能距離Dpが大きくなる程境界線から反射された反射光の輝度は低くなる。また、第1,第2特性F1,F2が本発明の視覚特性に相当している。
それ故、瞳孔径が大きい場合、輝度が低い境界線であっても乗員は視認することができる。
乗員は、運転中のドライバ特性として、ハンドル操作や急制動によって危険を回避できる地点として3秒先の到達地点を注視する傾向がある。本実施形態では、ドライバ特性を考慮し、現在位置から3秒先の到達地点までの距離を必要視認距離Drと設定している。
視認可能距離検知部23は、運転中に検出された乗員の瞳孔径と第1,第2特性F1,F2とを用いて視認可能距離Dpを演算している。具体的には、視認可能距離検知部23は、車内カメラ11で撮影した画像情報から求めた乗員の瞳孔径R1と第2特性F2とを用いて、乗員が視認可能な車線の境界線最小輝度B1を検知する(図6参照)。車線境界線の輝度がB1以上であれば、瞳孔径R1である車線境界線を視覚能力的に視認することができる。
必要視認距離検知部24は、車速と第3特性F3とを用いて必要視認距離Drを演算している。具体的には、図7に示すように、必要視認距離検知部24は、車速センサ14で検出した車速と第3特性F3とを用いて、乗員が不安感を覚えることがない必要視認距離Dr(Dr1)を検知する。例えば、時速60km/hのとき、必要視認距離Dr1は50mである。
ヘッドライト制御部25は、ヘッドライト4の照射光において、視感度増加制御を実行可能に構成されている。乗員の視感度は、グレア錯視、具体的には、車両遠方側部分の輝度と車両近傍側部分の輝度との差である輝度勾配によって調整することが可能である。
視感度を向上する場合、車両近傍側部分の輝度を高くし、車両遠方側部分の輝度を低くする。一方、視感度を減少させる場合、車両遠方側部分の輝度を高くし、車両近傍側部分の輝度を低くする。
また、ヘッドライト制御部25は、視認性改善が必要であると判定されても、乗員による近見反応に悪影響を与える可能性がある場合、例えば、体調不良や0.2(cd/m2)を超える境界線輝度の増加等に該当する場合、視感度増加制御を禁止している。
S2の判定の結果、ヘッドライトスイッチ13がオン操作されて点灯要求が有った場合、車外環境が暗い状況であるため、S3に移行する。S2の判定の結果、ヘッドライトスイッチ13がオン操作されずに点灯要求がない場合、車外環境が明るく、視感度増加制御が要求されるシーンではないため、リターンする。
S3の判定の結果、車両1が走行中の場合、S4に移行する。
S3の判定の結果、車両1が走行中ではない場合、S7に移行する。
S4では、現在、視認性向上が必要なシーンか否か判定する視認性判定処理を実行して、S5に移行する。
乗員の視認性改善が必要な場合でも、乗員の近見反応に悪影響を与える可能性がある状況では、視感度増加制御は禁止される。尚、他の視界改善制御は実行可能である。
S5の判定の結果、視感度増加制御を実行する場合、S6に移行する。S6では、視感度を増加するため、ヘッドライト4を用いて車両近傍の輝度を上昇した後、リターンする。
S5の判定の結果、視感度増加制御を実行しない場合、S7に移行する。S7では、視感度を増加しないため、ヘッドライト4の現在の輝度を維持して、リターンする。
S13の判定の結果、路面が濡れている場合、ヘッドライト4の照射光や環境光等が水膜に反射されるため、S14に移行する。S13の判定の結果、路面が濡れていない場合、ヘッドライト4の照射光や環境光等が水膜に反射されないため、S17に移行する。
S14の判定の結果、必要視認距離Drよりも手前にカーブが存在していない場合、視界が良ければ、乗員が要視認距離Drよりも前方領域を見通せるため、S15に移行する。
S14の判定の結果、必要視認距離Drよりも手前にカーブが存在している場合、視界が良くても、乗員がカーブよりも前方領域を見通すことが物理的に困難であるため、S17に移行する。
S15の判定の結果、視認可能距離Dpが必要視認距離Drよりも小さい場合、視認可能距離Dpを必要視認距離Drまで延ばす必要があるため、視認性改善要と判定し(S16)、終了する。S15の判定の結果、視認可能距離Dpが必要視認距離Dr以上の場合、視認可能距離Dpが必要視認距離Drを超えているため、視認性改善不要と判定し(S17)、終了する。
作用、効果の説明にあたり、実車A,Bを準備し、乗員の瞳孔径及び視認可能距離について検証実験を夫々行った。実車Aは、視感度増加制御を実行しない車両、実車Bは、視感度増加制御を実行した車両であり、n数は3である。尚、視感度増加制御の実行有無を除き、車線境界線の輝度、環境光、車速(60km/h)等の諸条件は同じ値に設定した。
図10に示すように、車両Bに乗車した乗員の瞳孔径が、車両Aに乗車した乗員の瞳孔径よりも0.33mm大きいことが知見された。これにより、グレア錯視により乗員の眼に瞳孔反応(散瞳)が発現することが確認された。
図11に示すように、車両Bに乗車した乗員の視認可能距離Dpが、車両Aに乗車した乗員の視認可能距離Dpよりも5m大きいことが知見された。これにより、瞳孔径が大きい程網膜に入射する光が増加し、視認可能距離Dpの増加が確認された。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
図12(a)に示すように、少なくとも2個所の注視点P1,P2を通る双曲線を作成し、第1特性F1aとして設定する。視認可能距離検知部23は、第2特性F2から求めた境界線最小輝度B1と第1特性F1aとを用いて、乗員が視認することができる車線前方の境界線の視認可能距離Dpを検知する。
図12(b)に示すように、予め標準双曲線Lを設定しておき、最も前方に位置する1個所の注視点P3における境界線の輝度を検出する。標準双曲線Lを注視点P3を通るように移行して第1特性F1bを設定している。これにより、実際に計測された境界線の輝度情報を用いて乗員の視認可能距離Dpを高精度に検知することができ、第1特性F1a(F1b)と第2特性F2を用いて視認可能距離Dpと必要視認距離Drとを容易に比較することができる。
1〕前記実施形態においては、車両近傍側部分に光を照射するロービームユニット5のLED光源5bの輝度を、車両遠方側部分に光を照射するハイビームユニット6のLED光源6bの輝度よりも高くした例を説明したが、制御前後で乗員視界における照射輝度を一定にしても良い。具体的には、車両近傍側部分に光を照射するロービームユニット5のLED光源5bの輝度を上昇すると共に車両遠方側部分に光を照射するハイビームユニット6のLED光源6bの輝度を下降させて、車両近傍側部分の輝度と車両遠方側部分の輝度の合計を制御の前後に亙り一定とする。これにより、ヘッドライト4の消費エネルギを抑制できる。
例えば、ヘッドライト制御と並行して、突然、音刺激を与えても良く、また、照明色の変更によっても瞳孔反応として散瞳を生じさせることができる。
また、第1特性F1と第2特性F2をグラフの形ではなく、表の形で保有しても良く、第3特性F3を表の形ではなく、一次関数のグラフの形で保有することも可能である。
4 ヘッドライト
11 車内カメラ
12 車外カメラ
20 ECU
23 視認可能距離検知部
24 必要視認距離検知部
25 ヘッドライト制御部
F1,F1a,F1b 第1特性
F2 第2特性
F3 第3特性
Claims (6)
- 車線を走行する車両前方を照射可能なヘッドライトの輝度を制御するヘッドライト制御装置において、
車両を運転する乗員の瞳孔径を検出する瞳孔径検出手段と、
車両の走行速度を検出する車速検出手段と、
予め設定された視覚特性を用いて前記検出された瞳孔径に基づき乗員が視認可能な車線前方の視認可能距離を検知する視認可能距離検知手段と、
前記検出された車速に基づき乗員による車両の運転に必要な車線前方の必要視認距離を検知する必要視認距離検知手段と、
前記ヘッドライトを制御するヘッドライト制御手段とを有し、
前記ヘッドライト制御手段は、前記視認可能距離が必要視認距離よりも小さいとき、前記視認可能距離が前記必要視認距離以上になるように前記ヘッドライトを制御することを特徴とするヘッドライト制御装置。 - 前方に延びる車線の境界線を撮像する撮像手段と、
前記車線の境界線の撮像情報を画像処理して車線の境界線の輝度情報を作成する輝度情報作成手段とを有し、
前記視覚特性が、車線の境界線の輝度と視認可能距離との関係が予め設定された第1特性と車線の境界線の最小輝度と瞳孔径との関係が予め設定された第2特性とを含み、
前記視認可能距離検知手段は、前記第1特性と第2特性とを用いて前記視認可能距離を検知することを特徴とする請求項1に記載のヘッドライト制御装置。 - 前記必要視認距離検知手段は、車速と必要視認距離との関係が予め設定された第3特性を用いて前記必要視認距離を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドライト制御装置。
- 前記ヘッドライト制御手段は、前記車線の境界線における車両に対し遠方側の部分の輝度に対して車両に対し近傍側の部分の輝度を高くするように前記ヘッドライトを制御することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のヘッドライト制御装置。
- 前記ヘッドライト制御手段は、路面が乾燥しているとき又は必要視認距離よりも手前にカーブが存在するときを除いて、前記ヘッドライトの制御を実行することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のヘッドライト制御装置。
- 車線を走行する車両前方を照射可能なヘッドライトの輝度を制御するヘッドライト制御方法において、
車両を運転する乗員の瞳孔径を検出する瞳孔径検出工程と、
車両の走行速度を検出する車速検出工程と、
予め設定された視認距離特性を用いて前記検出された瞳孔径に基づき乗員が視認可能な車線前方の視認可能距離を検知する視認可能距離検知工程と、
前記検出された車速に基づき乗員による車両の運転に必要な車線前方の必要視認距離を検知する必要視認距離検知工程と、
前記視認可能距離が必要視認距離よりも小さいとき、前記視認可能距離が前記必要視認距離以上になるように前記ヘッドライトを制御するヘッドライト制御工程と、
を有することを特徴とするヘッドライト制御方法。
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