JP2022110384A - 鋼桁上フランジの防錆方法 - Google Patents

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【課題】工期の短縮に大きく寄与する鋼桁上フランジの防錆構造を提供する。【解決手段】この鋼桁上フランジ21の防錆構造は、鋼桁上フランジ21の防錆構造であって、鋼桁上フランジ21上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む導電性粘着層を有する犠牲防食型シート4を貼り付けたものである。【選択図】図3

Description

本発明は、例えば道路橋などにおける鋼桁上フランジの防錆構造及び防錆方法に関する。
鋼桁上のコンクリート床版の劣化に対する更新工事がある。かかる既設床版を鋼桁上フランジから剥離・撤去した後、鋼桁上フランジ表面にはコンクリート床版の一部や劣化した塗装が残っており、新たなコンクリート床版を設置する前にこれらの残存物を撤去し、鋼桁上フランジ表面に防錆処理を行う必要がある。防錆処理では、塗料が使用され、塗料が乾燥するまでは、次工程(鋼桁上フランジと新床版との隙間を埋めるモルタルの充填に必要な型枠の設置作業等)に進むことができない。
鋼桁上フランジ上面の防錆処理方法として、防錆顔料を使用した有機ジンクリッチペイントと呼ばれる塗料を用いる方法が知られる(特許文献1等)。これは、鉄よりもイオン化傾向の高い亜鉛粉末の使用による犠牲防食機能により鉄が腐食するのを防止する方法である。
特開2020-179569号公報(段落[0083])
ところで、防錆塗装においては、規定された防錆性能を満足するため多重塗布を行うことが一般である。しかし、この場合、塗布回毎に乾燥期間を挟む必要があるため、工程上のロスが生じるという問題があった。また、この種の塗料の多くは第4類第2石油類に該当する引火性液体であるため防火管理上のコストがかかる、塗装完了後の膜厚検査を必要とする、などのデメリットがあった。また、作業条件が厳しいという難もある。例えば、気温5℃以上、湿度85%以下の条件が必要とされ、かつ雨天等による湿潤面への塗布は不可とされているため、工程計画への影響が大きい。さらに、火気厳禁、適切な換気などの、作業環境の留意が必要である。
本発明の目的は、上記の課題を解決し得る鋼桁上フランジの防錆方法及び防錆構造を提供するものであり、特に工期の短縮に大きく寄与することのできる鋼桁上フランジの防錆方法及び防錆構造を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る一形態の鋼桁上フランジの防錆構造は、
鋼桁上フランジ上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを貼り付けたものである。
また、本発明に係る他の形態の鋼桁上フランジの防錆方法は、
鋼桁上フランジの上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを貼り付けることを有する。
本発明に係るコンクリート床版更新工事を示す斜視図である。 貼付前犠牲防食型シート40の断面図である。 犠牲防食型シート4による上フランジ21の防錆構造を示す断面図である。 貼付前犠牲防食型シート40から離型フィルム43を剥す様子を示す側面図である。 犠牲防食型シート4の貼り付けプロセスを示す側面図である。 無収縮モルタル漏出防止用の型枠6の設置プロセスを示す断面図である。 新設コンクリート床版3の設置プロセスを示す断面図である。 新設コンクリート床版3の高さ調整手段を示す断面図である。 接合用スタッド7の取り付けプロセスを示す断面図である。 無収縮モルタル5の充填プロセスを示す断面図である。 スタッド孔8への収縮補償用コンクリートの充填プロセスを示す断面図である。
次に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態にかかるコンクリート床版更新工事を示す斜視図である。
同図において、符号2は道路橋1の鋼桁である。同図に示すように、鋼桁にはI桁が用いられることが多いが、箱桁、トラス桁の場合もある。更新対象であるコンクリート床版3は鋼桁2の上フランジ21の上に設置される。コンクリート床版3の更新工事が行われる際、上フランジ21上面に防錆機能を付与するために、その上面に犠牲防食型シート4が貼り付けられる。
図2は貼付前犠牲防食型シート40の断面図、図3は犠牲防食型シート4による上フランジ21の防錆構造を示す断面図である。
なお、図2において、40は離型フィルム43を含めた貼付前犠牲防食型シートを示し、4は貼付前犠牲防食型シート40から離型フィルム43が剥されて残った部分であり、上フランジ21の上面に貼り付けられる部分としての犠牲防食型シート4である。
上フランジ21の上面に貼り付けられる犠牲防食型シート4は、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末44を含む導電性粘着層41を有する。導電性粘着層41は上フランジ21の上面に直接貼り付けられる部分であり、その厚さは例えば600μm程度である。導電性粘着層41に含まれる金属粉末44には、亜鉛のほか、例えばアルミ二ウムなど、自然電極電位が鉄より卑なる金属の粉末を採用し得る。導電性粘着層41の、上フランジ21の上面に直接貼り付けられる面の反対面には、新設のコンクリート床版3の下面との隙間を埋める無収縮モルタル5と導電性粘着層41との接触による金属粉末44のアルカリ腐食を防止するために保護層42が設けられている。粘着剤の種類は特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらは単独で使用してよいし、組み合わせて使用してもよい。保護層の種類は特に限定されず、種々の材質のフィルムなどを用いることができ、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムなどが挙げられる。これら以外にも、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルムなどを基材として用いてもよい。
また、図3に示すように、上フランジ21の上面に貼り付けられた犠牲防食型シート4は、新設のコンクリート床版3の下面との間に間詰めされた無収縮モルタル5によって上から全面的に押さえられることにより、上フランジ21の上面への密着状態が経年的に確保され、所定の防錆機能が維持され得る。
なお、符号6は無収縮モルタル5の横からの漏れを止めるための型枠であり、独立発泡体などが利用できる。
次に、本実施形態の上フランジ防錆方法を説明する。
ここでは、既設の道路橋1のコンクリート床版更新工事に伴って行われる上フランジ21の防錆方法について説明するが、新規に道路橋を建造する場合の上フランジ21の防錆処理にも応用できる。
まず、撤去する既設コンクリート床版のカッターによる切断、ブレーカーによる破砕、上フランジ21に溶接されたずれ止め用スタッドや鉄筋などの金具類の切断を行った後、グラインダーなどによって上フランジ21の上面の素地調整を行う。
次に、上フランジ21の上面に犠牲防食型シート4を貼り付ける。図2に示したように、貼付前犠牲防食型シート40は、導電性粘着層41、保護層42及び離型フィルム43の3層構造で構成され、この3層構造のシートをロール状にした形態で搬入される。図4、図5に示すように、貼り付け直前、貼付前犠牲防食型シート40から離型フィルム43を剥し、露出した導電性粘着層41の表面を上フランジ21の上面に直接貼り付ける。
犠牲防食型シート4の貼り付け後、図6に示すように、フランジ21の上面に貼り付けられた犠牲防食型シート4の上に無収縮モルタル漏出防止用の型枠6を設置する。
続いて、図7、8に示すように、上フランジ21上に新設コンクリート床版3を設置する。このとき図8に示すように、高さ調整ボルト9の調整によって新設コンクリート床版3の下面と上フランジ21の上面との間に型枠6の高さ寸法前後の隙間ができる。なお、高さ調整ボルト9は新設コンクリート床版3に鋼桁方向において略均等な間隔を置いて設けられ、高さ調整ボルト9を回転させることによって高さ調整ボルト9の下端位置が上下し、新設コンクリート床版3の高さ位置を調整するための手段である。なお、図8は図7と鋼桁方向において異なる位置の断面図である。図8において、91は、新設コンクリート床版3に一体に固定された高さ調整ネジである。高さ調整ボルト9は高さ調整ネジ91のネジ穴に螺合され、先端は上フランジ21の上面に当接するように配置される。
次に、図9に示すように、上フランジ21の上面の決められた位置に新設コンクリート床版3との接合用スタッド7を溶接により接合する。新設コンクリート床版3には、接合用スタッド7が挿入されるスタッド孔8が所々に設けられており、これらスタッド孔8の内部の上フランジ21の上面に接合用スタッド7が溶接される。この際、接合用スタッド7が接合される部分の犠牲防食型シート4が熱による傷害を受けないように、接合用スタッド7の溶接部周りはカッターなどにより除去しておく。
次に、図10に示すように、上フランジ21の上面に貼り付けられた犠牲防食型シート4と新設コンクリート床版3の下面と間の型枠6内に無収縮モルタル5を充填する。このモルタル充填は、新設コンクリート床版3に上下貫通して設けられたスタッド孔8を使って行われる。無収縮モルタル5の充填後、図11に示すように、スタッド孔8を収縮補償用コンクリート10で埋める。
上記のように、本実施形態では、上フランジ21の上面の防錆処理を防錆塗料の塗布ではなく、犠牲防食型シート4の貼り付けにより行うことによって、塗料の乾燥期間が不要となって、工期の短縮を図れる。また犠牲防食型シート4は軽量であるため運搬が容易であり、消防法上の危険物にあたらないため、気温や換気などの厳しい作業条件が不要である。さらには、廃棄処分コストも抑えられ、膜厚検査が不要であり、有機溶剤作業主任者などの資格が不要であるなどの、数々の利点がある。
犠牲防食型シート4には、例えば、積水化学工業株式会社、大日本塗料株式会社製の「メタモルシート」(商願2019-119901号)などを用いることができる。「メタモルシート」は亜鉛粉末を含有する厚さ600μmの導電性粘着層を有する犠牲防食型シート4である。導電性粘着層の片側面には保護層となるバリアフィルムが貼着され、導電性粘着層の逆側面には離型フィルムが貼着されている。また、「メタモルシート」は消防法上の危険物に該当しない。
犠牲防食型シート4は鋼桁の上フランジ21の幅全体に貼り付けられる。しかし、上フランジ21の全幅にわたって犠牲防食型シート4を一回で貼り付けるようにすると、上フランジの上面と犠牲防食型シート4との間に空気の巻き込み部分が生じるなど、密着性が悪くなり、良好な犠牲防食機能が得られない場合がある。そこで犠牲防食型シート4の離型フィルム43を3つの幅に分断しておき、はじめに中間の幅部分の離型フィルム43を剥がして犠牲防食型シート4の中間の幅部分を貼り付け、続いて左右の幅部分の離型フィルム43を剥がして貼り付けることによって、空気を巻き込むことなく良好に犠牲防食型シート4の貼り付けを行うことができる。
1…道路橋
2…鋼桁
3…新設コンクリート床版
4…犠牲防食型シート
5…無収縮モルタル
6…型枠
7…接合用スタッド
8…スタッド孔
9…高さ調整ボルト
10…収縮補償用コンクリート
21…上フランジ
41…導電性粘着層
42…保護層
43…離型フィルム
44…金属粉末
上記の課題を解決するために、本発明に係る一形態の鋼桁上フランジの防錆構造は、
橋梁鋼桁上フランジ上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む、犠牲防食のための導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを、前記橋梁鋼桁上フランジ上面に前記導電性粘着層の一方面を直接接触させた状態で貼り付けた鋼桁上フランジ上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを貼り付けたものである。
また、本発明に係る他の形態の鋼桁上フランジの防錆方法は、
橋梁鋼桁上フランジの上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む、犠牲防食のための導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを、前記橋梁鋼桁上フランジ上面に前記導電性粘着層の一方面を直接接触させた状態で貼り付けることを有する。

Claims (2)

  1. 鋼桁上フランジ上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを貼り付けた
    鋼桁上フランジの防錆構造。
  2. 鋼桁上フランジの上面に、自然電極電位が鉄より卑なる金属粉末を含む導電性粘着層を有する犠牲防食型シートを貼り付けることを有する
    鋼桁上フランジの防錆方法。
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