JP2022102492A - ころ軸受の評価方法、及び評価装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストでころ軸受の評価を行うことができる技術を提供する。【解決手段】ころ軸受の評価方法は、外周に内輪軌道2aを有する内輪2と、外輪3と、内輪2及び外輪3との間に転動可能に配設された複数の円すいころ4と、を備えたころ軸受1の評価方法であって、円すいころ4の転動面4cの母線長さL2は、内輪軌道2aの母線長さL1よりも短く、内輪軌道2aは、円すいころ4が転走する転走面M1と、円すいころ4が転走しない非転走面M2と、を含み、所定時間使用された後のころ軸受1の転走面M1の半価幅を測定するステップと、所定時間使用された後のころ軸受1の前非転走面M2の半価幅を測定するステップと、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較するステップと、を含む。【選択図】 図3
Description
本発明は、ころ軸受の評価方法、及び評価装置に関する。
特許文献1には、金属材料に対してX線回折分析を行い、半価幅、残留応力、残留オーステナイトといったX線パラメータを取得し、これらX線パラメータに基づいて前記金属材料の疲労度を求めることが開示されている。
X線パラメータを用いて金属材料の疲労度を評価する場合、未使用の金属材料から得られたX線パラメータと、使用後の金属材料から得られたX線パラメータとを比較することで行われる。
ところで、X線パラメータ、特に半価幅は、未使用状態でのX線パラメータ及び使用後のX線パラメータを同じ部品で測定する必要がある。つまり、半価幅は、絶対的な値ではなく、相対的な値であるため、一つの部品の使用前後での測定結果を相対比較する必要がある。
例えば、半価幅を用いて、ころ軸受の軌道の疲労度評価する場合、以下のような手法が考えられる。まず、未使用状態の軌道に対してX線回折分析を行うことで半価幅を取得し、その後、ころ軸受として組み立てる。そして、所定期間使用された後、ころ軸受を分解し、当該軌道に対して再度X線回折分析を行うことで半価幅を取得する。次いで、得られた未使用の軌道の半価幅と、使用後の軌道の半価幅とを比較することで、ころ軸受の軌道の疲労度を評価する。
しかし、ころ軸受において、未使用状態の軌道のX線パラメータを取得するためには、ころ軸受の製造工程の中にX線回折分析を組み込むことになり、高コストの原因となる。
上記課題は、半価幅による疲労度の評価だけでなく、他のX線パラメータを用いてころ軸受の経時変化について評価する場合や、X線回折分析以外の他の分析手法を用いて使用前後における物理量の測定を行い、その測定結果の相対比較に基づいてころ軸受の経時変化について評価する場合においても存在する。
実施形態である評価方法は、外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受の評価方法であって、前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定する転走面測定ステップと、前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定する非転走面測定ステップと、前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する比較ステップと、を含む。
また、他の実施形態である評価装置は、外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受を評価する評価装置であって、前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定した転走面測定結果と、前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定した非転走面測定結果と、を受け付け、前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する処理を行う処理部を備える。
本発明によれば、低コストでころ軸受の評価を行うことができる。
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
(1)実施形態であるころ軸受の評価方法は、外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受の評価方法であって、前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定する転走面測定ステップと、前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定する非転走面測定ステップと、前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する比較ステップと、を含む。
[実施形態の概要]
(1)実施形態であるころ軸受の評価方法は、外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受の評価方法であって、前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定する転走面測定ステップと、前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定する非転走面測定ステップと、前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する比較ステップと、を含む。
上記構成によれば、所定時間使用された後のころ軸受の内側軌道に含まれる非転走面を測定し物理量を得るので、ころが転走していないことにより未使用状態と同じ状態である内側軌道の物理量を得ることができる。よって、未使用状態のころ軸受の内側軌道の物理量を予め測定せずとも、使用前後の物理量の比較に基づく評価を行うことができ、ころ軸受の製造工程に物理量の測定工程を追加する必要がない。この結果、低コストで物理量に基づくころ軸受の経時変化についての評価が可能となる。
(2)上記ころ軸受の評価方法において、前記ころ軸受は、円すいころ軸受であってもよい。
この場合、ころ軸受の使用時において、ころは内側軌道部材の大径側に設けられる大鍔部に押し付けられながら転走する。このため、前記非転走面は、前記内側軌道における軸方向小径側の端部に位置することとなる。
よって、この場合、内側軌道における非転走面と、転走面との特定が容易となる。
この場合、ころ軸受の使用時において、ころは内側軌道部材の大径側に設けられる大鍔部に押し付けられながら転走する。このため、前記非転走面は、前記内側軌道における軸方向小径側の端部に位置することとなる。
よって、この場合、内側軌道における非転走面と、転走面との特定が容易となる。
(3)上記ころ軸受の評価方法において、前記内側軌道部材は、前記内側軌道の軸方向大径側の端部に径方向外方に突出する大鍔部を有し、前記ころの大端面が前記内側軌道部材の大鍔部に当接したときの、前記内側軌道の母線方向における前記ころの小端面の位置が、前記内側軌道の小径側の端縁よりも大径側であることが好ましい。
この場合、内側軌道の小径側の端部に非転走面を確実に設けることができる。
この場合、内側軌道の小径側の端部に非転走面を確実に設けることができる。
(4)また、上記ころ軸受の評価方法において、前前記内側軌道の母線方向における前記非転走面の長さは、1mm以上、2mm以下であることが好ましい。
非転走面の長さが1mmよりも小さいと、物理量を精度良く測定するための測定範囲を確保することが困難になる。非転走面の長さが2mmよりも大きいと、ころと内側軌道との間の面圧が過度に増加するおそれがある。非転走面の長さを1mm以上、2mm以下とすることで、面圧を過度に増加させることなく、精度よく物理量を測定することができる。
非転走面の長さが1mmよりも小さいと、物理量を精度良く測定するための測定範囲を確保することが困難になる。非転走面の長さが2mmよりも大きいと、ころと内側軌道との間の面圧が過度に増加するおそれがある。非転走面の長さを1mm以上、2mm以下とすることで、面圧を過度に増加させることなく、精度よく物理量を測定することができる。
(5)上記ころ軸受の評価方法において物理量を測定するためのホルダに前記内側軌道部材を保持させるステップと、前記内側軌道部材を保持させた後、前記ホルダを移動させ、前記転走面又は前記非転走面のいずれか一方の物理量を測定するための位置決めを行うステップと、をさらに含み、前記転走面測定ステップと、前記非転走面測定ステップと、の間に、前記ホルダを移動させ、前記転走面又は前記非転走面のいずれか他方の物理量を測定するための位置決めを行うステップをさらに含んでいてもよい。
この場合、所定時間使用された後のころ軸受の内側軌道には、非転走面と、転走面とが含まれるので、一度内側軌道部材をホルダに保持すれば、非転走面及び転走面の物理量の測定を連続的に行うことができる。よって、非転走面及び転走面の両方の物理量の測定を速やかに行うことができる。
この場合、所定時間使用された後のころ軸受の内側軌道には、非転走面と、転走面とが含まれるので、一度内側軌道部材をホルダに保持すれば、非転走面及び転走面の物理量の測定を連続的に行うことができる。よって、非転走面及び転走面の両方の物理量の測定を速やかに行うことができる。
(6)上記ころ軸受の評価方法において、前記物理量は、X線回折によって得られるパラメータ、超音波を伝搬させたときの伝搬時間、及び超音波を伝搬させたときの伝搬速度の少なくとも一つを含むことが好ましい。
この場合、物理量として、X線回折によって得られるパラメータ、及び、超音波を伝搬させたときの伝搬時間、伝搬速度を用いることで、ころ軸受の経時変化の評価を適切に行うことができる。
この場合、物理量として、X線回折によって得られるパラメータ、及び、超音波を伝搬させたときの伝搬時間、伝搬速度を用いることで、ころ軸受の経時変化の評価を適切に行うことができる。
(7)また、他の実施形態に係る評価装置は、外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受を評価する評価装置であって、前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定した転走面測定結果と、前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定した非転走面測定結果と、を受け付け、前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する処理を行う処理部を備える。
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔ころ軸受について〕
図1は、実施形態に係る評価対象であるころ軸受の一例を示す断面図である。
図1中、ころ軸受1は、円すいころ軸受であり、内輪2と、内輪2の径方向外側に設けられている外輪3と、複数の円すいころ4と、保持器7とを備えている。内輪2と、複数の円すいころ4は、内輪2と外輪3との径方向の間に転動自在に配置されている。保持器7は、複数の円すいころ4の周方向の間隔を保持している。
図1は、実施形態に係る評価対象であるころ軸受の一例を示す断面図である。
図1中、ころ軸受1は、円すいころ軸受であり、内輪2と、内輪2の径方向外側に設けられている外輪3と、複数の円すいころ4と、保持器7とを備えている。内輪2と、複数の円すいころ4は、内輪2と外輪3との径方向の間に転動自在に配置されている。保持器7は、複数の円すいころ4の周方向の間隔を保持している。
内輪2は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その外周には、複数の円すいころ4が転走するテーパー状の内輪軌道2aが設けられている。
内輪軌道2aの母線B1に沿う方向(母線方向)両端には、逃げ部2dが設けられている。よって、内輪軌道2aの母線長さL1は、両逃げ部2d間の長さである。内輪軌道2aの表面は研磨面とされている。なお、母線長さL1は、内輪軌道2aの母線方向における当該内輪軌道2aの長さである。
また、内輪2は、内輪軌道2aの軸方向一方側(図1における右側:小径端面2c側)に設けられ径方向外方に突出する小鍔部5と、内輪軌道2aの軸方向他方側(図1における左側:大径端面2b側)に設けられ径方向外方に突出する大鍔部6とを有している。
内輪軌道2aの母線B1に沿う方向(母線方向)両端には、逃げ部2dが設けられている。よって、内輪軌道2aの母線長さL1は、両逃げ部2d間の長さである。内輪軌道2aの表面は研磨面とされている。なお、母線長さL1は、内輪軌道2aの母線方向における当該内輪軌道2aの長さである。
また、内輪2は、内輪軌道2aの軸方向一方側(図1における右側:小径端面2c側)に設けられ径方向外方に突出する小鍔部5と、内輪軌道2aの軸方向他方側(図1における左側:大径端面2b側)に設けられ径方向外方に突出する大鍔部6とを有している。
外輪3も、内輪2と同様、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成された環状の部材であり、その内周には、内輪軌道2aに対向し複数の円すいころ4が転走するテーパー状の外輪軌道3aが設けられている。
内輪2及び外輪3には、浸炭焼入れ及び焼戻し(以下、「浸炭焼入れ等」ともいう)といった熱処理が施されている。
内輪2及び外輪3には、浸炭焼入れ及び焼戻し(以下、「浸炭焼入れ等」ともいう)といった熱処理が施されている。
円すいころ4は、軸受鋼等を用いて形成された部材であり、内輪軌道2a及び外輪軌道3aを転走する。内輪2又は外輪3が図外の軸と共に回転すると、各円すいころ4は、内輪軌道2a及び外輪軌道3aに沿って、ころ中心線回りに自転しながら、軸受中心線回りに公転する。
円すいころ4は、軸方向一方側に直径の小さい小端面4aを有し、軸方向他方側に直径の大きい大端面4bを有している。
円すいころ4の側面には、テーパー状の転動面4cが設けられている。転動面4cは、円すいころ4の軸方向両端に設けられた面取り部4dの間に設けられている。よって、転動面4cの母線長さL2は、両面取り部4d間の長さである。転動面4cの表面は研磨面とされている。なお、母線長さL2は、転動面4cの母線B2に沿う方向(母線方向)における当該転動面4cの長さである。
円すいころ4は、軸方向一方側に直径の小さい小端面4aを有し、軸方向他方側に直径の大きい大端面4bを有している。
円すいころ4の側面には、テーパー状の転動面4cが設けられている。転動面4cは、円すいころ4の軸方向両端に設けられた面取り部4dの間に設けられている。よって、転動面4cの母線長さL2は、両面取り部4d間の長さである。転動面4cの表面は研磨面とされている。なお、母線長さL2は、転動面4cの母線B2に沿う方向(母線方向)における当該転動面4cの長さである。
本実施形態において、転動面4cの母線長さL2は、内輪軌道2aの母線長さL1よりも短い。
このため、内輪軌道2aは、円すいころ4が接触し転走する転走面M1と、円すいころ4が転走しない非転走面M2とを含む。
円すいころ軸受であるころ軸受1の円すいころ4は、その使用時において、大鍔部6に押し付けられながら内輪軌道2aを転走する。よって、非転走面M2は、内輪軌道2aにおける軸方向小径側の端部に位置している。
このように、ころ軸受1が円すいころ軸受である場合、非転走面M2は、内輪軌道2aにおける軸方向小径側の端部に現れるので、内輪軌道2aにおける非転走面M2と、転走面M1との特定が容易である。
このため、内輪軌道2aは、円すいころ4が接触し転走する転走面M1と、円すいころ4が転走しない非転走面M2とを含む。
円すいころ軸受であるころ軸受1の円すいころ4は、その使用時において、大鍔部6に押し付けられながら内輪軌道2aを転走する。よって、非転走面M2は、内輪軌道2aにおける軸方向小径側の端部に位置している。
このように、ころ軸受1が円すいころ軸受である場合、非転走面M2は、内輪軌道2aにおける軸方向小径側の端部に現れるので、内輪軌道2aにおける非転走面M2と、転走面M1との特定が容易である。
また、円すいころ4の大端面4bが大鍔部6に当接したときの、内輪軌道2aの母線方向における円すいころ4の小端面4aの位置が、内輪軌道2aの小径側の端縁2a1よりも大径側となっている。
より詳細には、円すいころ4の大端面4bが大鍔部6に当接したときの、内輪軌道2aの母線方向における円すいころ4の小端面4aの端部4a1の位置が、内輪軌道2aの小径側の端縁2a1よりも大径側となっている。
小端面4aの端部4a1は、小端面4aの端縁であって、転動面4cの小端面4a側の端縁である。
このため、内輪軌道2aの小径側の端部に非転走面M2を確実に設けることができる。
より詳細には、円すいころ4の大端面4bが大鍔部6に当接したときの、内輪軌道2aの母線方向における円すいころ4の小端面4aの端部4a1の位置が、内輪軌道2aの小径側の端縁2a1よりも大径側となっている。
小端面4aの端部4a1は、小端面4aの端縁であって、転動面4cの小端面4a側の端縁である。
このため、内輪軌道2aの小径側の端部に非転走面M2を確実に設けることができる。
なお、内輪軌道2aの母線方向における非転走面M2の長さは、1mm以上、2mm以下とされている。
内輪軌道2aの母線長さL1や、転動面4cの母線長さL2、内輪軌道2aに対する大鍔部6の位置等は、非転走面M2の長さが1mm以上、2mm以下となるように適宜設定される。
内輪軌道2aの母線長さL1や、転動面4cの母線長さL2、内輪軌道2aに対する大鍔部6の位置等は、非転走面M2の長さが1mm以上、2mm以下となるように適宜設定される。
本実施形態では、ころ軸受1の内輪軌道2aの物理量としてX線回折分析によって得られるパラメータの一つである半価幅を測定し、その半価幅に基づいて、ころ軸受1(の内輪2)の疲労度等の評価を行う。
〔評価システムについて〕
図2は、内輪軌道2aの半価幅を測定し、評価するための評価システムの一例を示す図である。
図2中、評価システム20は、X線回折装置21と、制御装置22とを有する。
X線回折装置21は、X線発生装置や、回折X線強度を検出する検出器、測定対象である内輪2を保持するホルダ等を備えている。
X線回折装置21は、ホルダに保持された内輪2の内輪軌道2aに対してX線を照射し、検出器によって検出される回折X線の検出結果を測定結果として制御装置22へ与える。
図2は、内輪軌道2aの半価幅を測定し、評価するための評価システムの一例を示す図である。
図2中、評価システム20は、X線回折装置21と、制御装置22とを有する。
X線回折装置21は、X線発生装置や、回折X線強度を検出する検出器、測定対象である内輪2を保持するホルダ等を備えている。
X線回折装置21は、ホルダに保持された内輪2の内輪軌道2aに対してX線を照射し、検出器によって検出される回折X線の検出結果を測定結果として制御装置22へ与える。
制御装置22は、X線回折装置21の制御を行う機能を有するとともに、ころ軸受1の経時変化についての評価を行う評価装置としての機能を有する。制御装置22は、ころ軸受1の経時変化として、内輪軌道2aの疲労度についての評価を行う。
制御装置22は、プロセッサからなる処理部22aと、メモリやハードディスクからなる記憶部22bとを備えたコンピュータによって構成されている。
記憶部22bには、処理部22aが実行するためのコンピュータプログラム等が記憶されている。処理部22aは、記憶部22bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録された前記コンピュータプログラムを読み込むことで、制御装置22が有する各種機能を実現する。
制御装置22は、プロセッサからなる処理部22aと、メモリやハードディスクからなる記憶部22bとを備えたコンピュータによって構成されている。
記憶部22bには、処理部22aが実行するためのコンピュータプログラム等が記憶されている。処理部22aは、記憶部22bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録された前記コンピュータプログラムを読み込むことで、制御装置22が有する各種機能を実現する。
処理部22aは、内輪2の内輪軌道2aの測定結果がX線回折装置21から与えられると、測定結果から半価幅を求め、求めた半価幅に基づいて内輪2の疲労度の推定値を求め、評価を行う機能を有する。
また、記憶部22bには、疲労度データベースDBが記憶されている。疲労度データベースDBは、半価幅に基づいて内輪2の疲労度を求めるためのデータベースである。疲労度データベースDBの内容については、後に説明する。
また、記憶部22bには、疲労度データベースDBが記憶されている。疲労度データベースDBは、半価幅に基づいて内輪2の疲労度を求めるためのデータベースである。疲労度データベースDBの内容については、後に説明する。
〔評価方法について〕
図3は、内輪2の疲労度に関する評価方法の一例を示すフローチャートである。
内輪2の疲労度評価を行うために、まず、所定時間使用されたころ軸受1の内輪2をX線回折装置21のホルダに保持させ(図3中、ステップS1)、X線が転走面M1へ照射されるようにホルダを移動させホルダの位置決めを行う(図3中、ステップS2)。
ホルダの位置決めの後、転走面M1にX線を照射し、回折X線の検出(測定)を行う(図3中、ステップS3)。得られる転走面測定結果は、制御装置22へ与えられる。
図3は、内輪2の疲労度に関する評価方法の一例を示すフローチャートである。
内輪2の疲労度評価を行うために、まず、所定時間使用されたころ軸受1の内輪2をX線回折装置21のホルダに保持させ(図3中、ステップS1)、X線が転走面M1へ照射されるようにホルダを移動させホルダの位置決めを行う(図3中、ステップS2)。
ホルダの位置決めの後、転走面M1にX線を照射し、回折X線の検出(測定)を行う(図3中、ステップS3)。得られる転走面測定結果は、制御装置22へ与えられる。
図4は、ホルダにセットされた内輪2を示す断面図である。
図4に示すように、内輪2はX線回折装置21のホルダ30にセットされ、ホルダ30は、X線の照射位置が転走面M1となるように位置決めされる。
なお、転走面M1に対する測定は、図4に示すように、内輪軌道2aの母線方向に沿って一定の間隔で複数の照射位置を設定し、複数の照射位置それぞれについて位置決め及び測定を行い、複数の照射位置それぞれの測定結果が制御装置22へ与えられる。
よって、ステップS2及びステップS3は、照射位置の数に応じて繰り返し行われる。
図4に示すように、内輪2はX線回折装置21のホルダ30にセットされ、ホルダ30は、X線の照射位置が転走面M1となるように位置決めされる。
なお、転走面M1に対する測定は、図4に示すように、内輪軌道2aの母線方向に沿って一定の間隔で複数の照射位置を設定し、複数の照射位置それぞれについて位置決め及び測定を行い、複数の照射位置それぞれの測定結果が制御装置22へ与えられる。
よって、ステップS2及びステップS3は、照射位置の数に応じて繰り返し行われる。
図3に示すように、転走面M1の測定を終えると、次いで、X線が非転走面M2へ照射されるようにホルダの位置決めを行う(図3中、ステップS4)。
ホルダの位置決めの後、非転走面M2にX線を照射し、回折X線の検出(測定)を行う(図3中、ステップS5)。得られる非転走面測定結果は、制御装置22へ与えられる。
ホルダの位置決めの後、非転走面M2にX線を照射し、回折X線の検出(測定)を行う(図3中、ステップS5)。得られる非転走面測定結果は、制御装置22へ与えられる。
図4に示すように、転走面M1と非転走面M2とは、内輪軌道2aに含まれている。よって、内輪2をホルダ30から外すことなく、転走面M1に対する複数の照射位置の位置決め及び測定と同様の手順で非転走面M2に対する位置決め及び測定を連続的に行うことができる。
このため、非転走面M2及び転走面M1の両方の測定を速やかに行うことができる。
このため、非転走面M2及び転走面M1の両方の測定を速やかに行うことができる。
転走面M1及び非転走面M2の測定を終え、制御装置22に転走面測定結果及び非転走面測定結果の両方が与えられると、制御装置22は、半価幅減少度を求め(図3中、ステップS6)、この半価幅減少度に基づいて、内輪2の疲労度の推定値を求め、内輪2の疲労度に関する評価を行う(図3中、ステップS7)。
制御装置22は、半価幅減少度を求めるために、与えられた測定結果から転走面M1の半価幅、及び非転走面M2の半価幅を求める。半価幅は、内輪軌道2aから測定される物理量であり、X線回折分析によって得られるパラメータの一つである。半価幅は、測定結果から得られる回折強度曲線に現れる回折ピークにおいて当該ピークの半分の強度値における両端2点の幅である。
制御装置22は、転走面M1の半価幅、及び非転走面M2の半価幅を用いて半価幅減少度を求める。
半価幅減少度は、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較することで求められる値であり、ころ軸受の使用前後における半価幅の減少の度合いを示す値である。
つまり、半価幅減少度を求めるステップS6は、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較するステップを構成する。
半価幅減少度は、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較することで求められる値であり、ころ軸受の使用前後における半価幅の減少の度合いを示す値である。
つまり、半価幅減少度を求めるステップS6は、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較するステップを構成する。
ここで、半価幅減少度と、金属材料の疲労度との間には相関があることが判っている。
制御装置22は、半価幅減少度と、疲労度データベースDBとを用いて内輪2の疲労度推定値を求める。
制御装置22は、半価幅減少度と、疲労度データベースDBとを用いて内輪2の疲労度推定値を求める。
図5は、疲労度と半価幅減少度との関係を示すグラフである。
図5中、横軸は疲労度、縦軸は半価幅減少度を示している。疲労度は、円すいころ軸受1の基本定格寿命L10に対する比率である計算寿命比である場合や、転動疲労によって損傷に至るまでの時間を100%としたときの疲労の進行度合いを表す値である場合がある。
図5中、横軸は疲労度、縦軸は半価幅減少度を示している。疲労度は、円すいころ軸受1の基本定格寿命L10に対する比率である計算寿命比である場合や、転動疲労によって損傷に至るまでの時間を100%としたときの疲労の進行度合いを表す値である場合がある。
半価幅減少度は、上述のように、ころ軸受の使用前後における半価幅の減少の度合いを示す値である。半価幅減少度は、使用前の内輪軌道2aの半価幅(以下、使用前半価幅ともいう)と、使用後の内輪軌道2aの半価幅(以下、使用後半価幅ともいう)との間の差を使用前半価幅で除算することで求められる。つまり、半価幅減少度は、下記式によって求められる。
半価幅減少度=(使用前半価幅-使用後半価幅)/使用前半価幅
半価幅減少度=(使用前半価幅-使用後半価幅)/使用前半価幅
図5中の丸印は、使用前半価幅が既知のころ軸受1の試験サンプルを複数作成し、耐久試験、使用後半価幅測定、組み立て、耐久試験を破損まで繰り返すことで、これら試験サンプルの内輪軌道2aの半価幅減少度と疲労度との関係を求めてプロットしたものである。
これらをみると、疲労度は、半価幅減少度が大きくなるほど大きくなっており、半価幅減少度と疲労度との間に相関があることが判る。
これらをみると、疲労度は、半価幅減少度が大きくなるほど大きくなっており、半価幅減少度と疲労度との間に相関があることが判る。
図5中、疲労度データベースDBは線図D1として表される。
疲労度データベースDBは、疲労度と半価幅減少度との関係を示しており、上述の試験サンプル等による測定結果に基づいて作成される。疲労度データベースDBは、疲労度と半価幅減少度との関係を示す数値データであってもよいし近似式であってもよい。
疲労度データベースDBは、疲労度と半価幅減少度との関係を示しており、上述の試験サンプル等による測定結果に基づいて作成される。疲労度データベースDBは、疲労度と半価幅減少度との関係を示す数値データであってもよいし近似式であってもよい。
制御装置22は、ころ軸受1の半価幅減少度を求め(図3中、ステップS6)、疲労度データベースDBを参照し、求めた半価幅減少度に対応する疲労度を得る。制御装置22は、得られた疲労度を疲労度推定値とし、疲労度推定値に基づいて内輪2の疲労度に関する評価を行う(図3中、ステップS7)。
ここで、制御装置22は、ころ軸受1の半価幅減少度を求めるために、使用前半価幅として、非転走面M2の半価幅を用い、使用後半価幅として、転走面M1の半価幅を用いる。
使用前半価幅は、使用前、すなわち、円すいころ4が転動する前の状態の内輪軌道2aの半価幅である。
使用前半価幅は、上述の試験サンプル等では、耐久試験前後で半価幅を測定すれば、容易に得ることができる。
一方、例えば、市場回収品であるころ軸受1の疲労度推定値を求めるようとする場合については、予めころ軸受1の製造過程において、使用前半価幅を測定しておく必要があり、ころ軸受1の製造工程に半価幅の測定工程を設ける必要があり、コスト上の問題がある。
使用前半価幅は、使用前、すなわち、円すいころ4が転動する前の状態の内輪軌道2aの半価幅である。
使用前半価幅は、上述の試験サンプル等では、耐久試験前後で半価幅を測定すれば、容易に得ることができる。
一方、例えば、市場回収品であるころ軸受1の疲労度推定値を求めるようとする場合については、予めころ軸受1の製造過程において、使用前半価幅を測定しておく必要があり、ころ軸受1の製造工程に半価幅の測定工程を設ける必要があり、コスト上の問題がある。
この点、本実施形態では、所定時間使用後のころ軸受1の内輪軌道2aに含まれる非転走面M2を測定し半価幅を得るので、円すいころ4が転走していないことにより未使用状態と同じ状態である内輪軌道2aの半価幅を得ることができる。つまり、非転走面M2の半価幅は、使用前半価幅とほぼ同じ半価幅である。
この非転走面M2の半価幅を、使用前半価幅として用いるので、未使用状態のころ軸受1の内輪軌道2aの半価幅を予め測定せずとも、使用前後の半価幅の比較に基づく評価を行うことができ、ころ軸受1の製造工程に半価幅の測定工程を追加する必要がない。この結果、市場回収品であるころ軸受1であっても、低コストで半価幅に基づくころ軸受の評価が可能となる。
この非転走面M2の半価幅を、使用前半価幅として用いるので、未使用状態のころ軸受1の内輪軌道2aの半価幅を予め測定せずとも、使用前後の半価幅の比較に基づく評価を行うことができ、ころ軸受1の製造工程に半価幅の測定工程を追加する必要がない。この結果、市場回収品であるころ軸受1であっても、低コストで半価幅に基づくころ軸受の評価が可能となる。
〔非転走面の長さについて〕
上述したように、本実施形態では、転動面4cの母線長さL2は、内輪軌道2aの母線長さL1よりも短い。
このため、転動面4cの母線長さL2と、内輪軌道2aの母線長さL1とが同じ長さである場合と比較して、円すいころ4の転動面4cと内輪軌道2aとの間の接触面が減少し、面圧の増加が懸念される。
上述したように、本実施形態では、転動面4cの母線長さL2は、内輪軌道2aの母線長さL1よりも短い。
このため、転動面4cの母線長さL2と、内輪軌道2aの母線長さL1とが同じ長さである場合と比較して、円すいころ4の転動面4cと内輪軌道2aとの間の接触面が減少し、面圧の増加が懸念される。
図6は、内輪軌道2aの母線方向における非転走面M2の長さと、内輪軌道2aと円すいころ4との間の面圧との関係の一例を示したグラフである。
図6中、横軸は、内輪軌道2aの母線方向における非転走面M2の長さを示しており、縦軸は、面圧を示している。
なお、図6に示すグラフは、内輪軌道2aの母線長さL1が約43mmである円すいころ軸受を用いて測定した値を示している。
図6中、横軸は、内輪軌道2aの母線方向における非転走面M2の長さを示しており、縦軸は、面圧を示している。
なお、図6に示すグラフは、内輪軌道2aの母線長さL1が約43mmである円すいころ軸受を用いて測定した値を示している。
図6中、非転走面M2の長さが「0」の場合の面圧は、非転走面M2がない状態の面圧を示している。
図6では、非転走面M2がない状態の面圧と、非転走面M2の長さが1mm、2mm、3mmのときの面圧とを示している。
図6では、非転走面M2がない状態の面圧と、非転走面M2の長さが1mm、2mm、3mmのときの面圧とを示している。
非転走面M2の長さが1mmであるときの面圧は、非転走面M2がない状態の面圧に対して、約1.4%上昇している。
また、非転走面M2の長さが2mmであるときの面圧は、非転走面M2がない状態の面圧に対して、約2.2%上昇している。
非転走面M2の長さが3mmであるときの面圧は、非転走面M2の長さが2mmである場合よりもさらに上昇している。
また、非転走面M2の長さが2mmであるときの面圧は、非転走面M2がない状態の面圧に対して、約2.2%上昇している。
非転走面M2の長さが3mmであるときの面圧は、非転走面M2の長さが2mmである場合よりもさらに上昇している。
面圧は、2%程度の増加であれば、ころ軸受1の性能に影響は現れない。しかし、それ以上になると、ころ軸受1の性能に影響を及ぼすおそれがある。
つまり、非転走面M2の長さが2mmよりも大きいと、面圧が過度に増加し、ころ軸受1の性能に影響を及ぼすおそれがある。このため、非転走面M2の長さは、2mm以下であることが好ましい。
つまり、非転走面M2の長さが2mmよりも大きいと、面圧が過度に増加し、ころ軸受1の性能に影響を及ぼすおそれがある。このため、非転走面M2の長さは、2mm以下であることが好ましい。
また、非転走面M2は、半価幅を測定するための測定個所となる。このため、非転走面M2には、半価幅を精度よく測定することができる程度の測定範囲を確保可能な広さが必要である。
例えば、X線回折分析の場合、X線のスポット径を考慮すると、1mm以上であることが好ましい。非転走面M2の長さが1mmよりも小さいと、半価幅を精度よく測定するためのX線の照射範囲(測定範囲)を確保することが困難になる。このため、非転走面M2の長さは、1mm以上であることが好ましい。
例えば、X線回折分析の場合、X線のスポット径を考慮すると、1mm以上であることが好ましい。非転走面M2の長さが1mmよりも小さいと、半価幅を精度よく測定するためのX線の照射範囲(測定範囲)を確保することが困難になる。このため、非転走面M2の長さは、1mm以上であることが好ましい。
このように、非転走面M2の長さを1mm以上、2mm以下とすることで、面圧を過度に増加させることなく、精度よく半価幅を測定することができる。
〔その他〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。
例えば、上記実施形態において、転走面M1及び非転走面M2の物理量として、X線回折分析によって得られるパラメータの一つである半価幅を測定し、さらに、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較して、内輪2の疲労度推定値を求めた場合を例示したが、X線回折分析によって得られるパラメータとして、ピークの回折角のシフト量や、マルテンサイトのピークプロファイルの面積とオーステナイトのピークプロファイルの面積との面積比を測定することができる。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。
例えば、上記実施形態において、転走面M1及び非転走面M2の物理量として、X線回折分析によって得られるパラメータの一つである半価幅を測定し、さらに、転走面M1の半価幅と、非転走面M2の半価幅とを比較して、内輪2の疲労度推定値を求めた場合を例示したが、X線回折分析によって得られるパラメータとして、ピークの回折角のシフト量や、マルテンサイトのピークプロファイルの面積とオーステナイトのピークプロファイルの面積との面積比を測定することができる。
前記面積比からは、残留オーステナイト量を求めることができる。
ピークの回折角のシフト量からは、残留応力を求めることができる。
また、残留オーステナイト量を用いれば、半価幅減少度と同様、内輪2の疲労度の推定値を求めることができる。
ピークの回折角のシフト量からは、残留応力を求めることができる。
また、残留オーステナイト量を用いれば、半価幅減少度と同様、内輪2の疲労度の推定値を求めることができる。
図7は、疲労度と残留オーステナイト量との関係の一例を示すグラフである。図7中、横軸は疲労度、縦軸は残留オーステナイト量を示している。
図7中の丸印は、使用前残留オーステナイト量が既知のころ軸受1の試験サンプルを複数作成し、耐久試験、使用後残留オーステナイト量測定、組み立て、耐久試験を破損まで繰り返すことで、これら試験サンプルの内輪軌道2aの残留オーステナイト量と疲労度との関係を求めてプロットしたものである。
これらをみると、疲労度は、残留オーステナイト量が小さくなるほど大きくなっており、残留オーステナイト量と疲労度との間に相関があることが判る。
図7中、線図D2は、試験サンプルの測定結果から得られる疲労度と残留オーステナイト量との関係を示す近似直線である。この線図D2を疲労度データベースDBとして用いることで、残留オーステナイト量から疲労度の推定値を求めることができる。
図7中の丸印は、使用前残留オーステナイト量が既知のころ軸受1の試験サンプルを複数作成し、耐久試験、使用後残留オーステナイト量測定、組み立て、耐久試験を破損まで繰り返すことで、これら試験サンプルの内輪軌道2aの残留オーステナイト量と疲労度との関係を求めてプロットしたものである。
これらをみると、疲労度は、残留オーステナイト量が小さくなるほど大きくなっており、残留オーステナイト量と疲労度との間に相関があることが判る。
図7中、線図D2は、試験サンプルの測定結果から得られる疲労度と残留オーステナイト量との関係を示す近似直線である。この線図D2を疲労度データベースDBとして用いることで、残留オーステナイト量から疲労度の推定値を求めることができる。
残留応力、残留オーステナイト量、及び残留オーステナイト量から得られる疲労度の推定値は、使用前後での値を相対比較し、内輪2の経時変化に関する評価に用いることができる。つまり、ピークの回折角のシフト量や、前記面積比を物理量として求めた場合においても、転走面M1の値と、非転走面M2の値とを比較し、ころ軸受1の経時変化に関する評価が行われる。
よって、上記実施形態と同様、低コストで物理量(ピークの回折角のシフト量や、ピークプロファイルの面積比)に基づくころ軸受の評価が可能となる。
よって、上記実施形態と同様、低コストで物理量(ピークの回折角のシフト量や、ピークプロファイルの面積比)に基づくころ軸受の評価が可能となる。
さらに、上記実施形態において、転走面M1及び非転走面M2の物理量として、X線回折分析によって得られるパラメータを用いたが、例えば、超音波探傷器を用いて、内輪軌道2aに対して超音波を伝搬させたときの伝搬時間や、伝搬速度を、転走面M1及び非転走面M2の物理量として測定することもできる。
前記伝搬時間及び伝搬速度からは、内輪2の疲労度の推定値を求めることができる。
図8は、疲労度と伝搬速度との関係の一例を示すグラフである。図8中、横軸は疲労度、縦軸は伝搬速度を示している。
図8中の丸印は、耐久試験を行うことで疲労度が既知であるころ軸受1の試験サンプルを作成し、これら試験サンプルの内輪軌道2aの伝搬速度を求めてプロットしたものである。
これらをみると、疲労度は、伝搬速度が小さくなるほど大きくなっており、伝搬速度と疲労度との間に相関があることが判る。
図8中、線図D3は、試験サンプルの測定結果から得られる疲労度と伝搬速度との関係を示す近似直線である。この線図D3を疲労度データベースDBとして用いることで、伝搬速度から疲労度の推定値を求めることができる。
図8は、疲労度と伝搬速度との関係の一例を示すグラフである。図8中、横軸は疲労度、縦軸は伝搬速度を示している。
図8中の丸印は、耐久試験を行うことで疲労度が既知であるころ軸受1の試験サンプルを作成し、これら試験サンプルの内輪軌道2aの伝搬速度を求めてプロットしたものである。
これらをみると、疲労度は、伝搬速度が小さくなるほど大きくなっており、伝搬速度と疲労度との間に相関があることが判る。
図8中、線図D3は、試験サンプルの測定結果から得られる疲労度と伝搬速度との関係を示す近似直線である。この線図D3を疲労度データベースDBとして用いることで、伝搬速度から疲労度の推定値を求めることができる。
前記伝搬時間、伝搬速度、及びこれらから得られる疲労度の推定値も、残留応力や、残留オーステナイト量と同様に、使用前後での値を相対比較し、内輪2の経時変化に関する評価に用いることができる。
よって、上記実施形態と同様、低コストで物理量(伝搬時間及び伝搬速度)に基づくころ軸受の評価が可能となる。
よって、上記実施形態と同様、低コストで物理量(伝搬時間及び伝搬速度)に基づくころ軸受の評価が可能となる。
さらに、転走面M1及び非転走面M2の物理量としては、渦電流探傷装置によって得られる電流値やインピーダンス、色彩輝度計によって得られる輝度や色彩、表面粗さ測定装置から得られる表面粗さ、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)や、SIMS(Secondary-ion Mass Spectrometry)等による定量又は定性分析結果等が挙げられる。
また、上記実施形態では、図3に示すように、転走面M1に対する測定(図3中、ステップS2、S3)を行った後、非転走面M2に対する測定を行う場合を例示したが、非転走面M2に対する測定を行った後、転走面M1に対する測定を行ってもよい。
また、上記実施形態では、ころ軸受1に円すいころ軸受を用いた場合を例示したが、例えば、ころ軸受1は円筒ころ軸受であってもよい。この場合、ころ軸受1が有する円筒ころの軸方向の位置を、保持器によって制限し、内輪軌道2aの軸方向の一端部が非転走面M2となるようにすることができる。
また、上記実施形態では、ころ軸受1に円すいころ軸受を用いた場合を例示したが、例えば、ころ軸受1は円筒ころ軸受であってもよい。この場合、ころ軸受1が有する円筒ころの軸方向の位置を、保持器によって制限し、内輪軌道2aの軸方向の一端部が非転走面M2となるようにすることができる。
本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
1 軸受
2 内輪
2a 内輪軌道
2a1 端縁
2b 大径端面
2c 小径端面
2d 逃げ部
3 外輪
3a 外輪軌道
4a 小端面
4a1 端部
4b 大端面
4c 転動面
4d 面取り部
5 小鍔部
6 大鍔部
7 保持器
20 評価システム
21 X線回折装置
22 制御装置
22a 処理部
22b 記憶部
30 ホルダ
B1 母線
B2 母線
D1 線図
D2 線図
D3 線図
M1 転走面
M2 非転走面
2 内輪
2a 内輪軌道
2a1 端縁
2b 大径端面
2c 小径端面
2d 逃げ部
3 外輪
3a 外輪軌道
4a 小端面
4a1 端部
4b 大端面
4c 転動面
4d 面取り部
5 小鍔部
6 大鍔部
7 保持器
20 評価システム
21 X線回折装置
22 制御装置
22a 処理部
22b 記憶部
30 ホルダ
B1 母線
B2 母線
D1 線図
D2 線図
D3 線図
M1 転走面
M2 非転走面
Claims (7)
- 外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受の評価方法であって、
前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、
前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、
所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定する転走面測定ステップと、
前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定する非転走面測定ステップと、
前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する比較ステップと、を含む
ころ軸受の評価方法。 - 前記ころ軸受は、円すいころ軸受である
請求項1に記載のころ軸受の評価方法。 - 前記内側軌道部材は、前記内側軌道の軸方向大径側の端部に径方向外方に突出する大鍔部を有し、
前記ころの大端面が前記内側軌道部材の大鍔部に当接したときの、前記内側軌道の母線方向における前記ころの小端面の位置が、前記内側軌道の小径側の端縁よりも大径側である
請求項2に記載のころ軸受の評価方法。 - 前記内側軌道の母線方向における前記非転走面の長さは、1mm以上、2mm以下である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のころ軸受の評価方法。 - 物理量を測定するためのホルダに前記内側軌道部材を保持させるステップと、
前記内側軌道部材を保持させた後、前記ホルダを移動させ、前記転走面又は前記非転走面のいずれか一方の物理量を測定するための位置決めを行うステップと、をさらに含み、
前記転走面測定ステップと、前記非転走面測定ステップと、の間に、前記ホルダを移動させ、前記転走面又は前記非転走面のいずれか他方の物理量を測定するための位置決めを行うステップをさらに含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のころ軸受の評価方法。 - 前記物理量は、X線回折によって得られるパラメータ、超音波を伝搬させたときの伝搬時間、及び超音波を伝搬させたときの伝搬速度の少なくとも一つを含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のころ軸受の評価方法。 - 外周に内側軌道を有する内側軌道部材と、外輪と、前記内側軌道部材及び前記外輪との間に転動可能に配設された複数のころと、を備えたころ軸受を評価する評価装置であって、
前記ころの転動面の母線長さは、前記内側軌道の母線長さよりも短く、
前記内側軌道は、前記ころが転走する転走面と、前記ころが転走しない非転走面と、を含み、
所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記転走面の物理量を測定した転走面測定結果と、前記所定時間使用された後の前記ころ軸受の前記非転走面の物理量を測定した非転走面測定結果と、を受け付け、前記転走面の物理量と、前記非転走面の物理量とを比較する処理を行う処理部を備える
評価装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020217261A JP2022102492A (ja) | 2020-12-25 | 2020-12-25 | ころ軸受の評価方法、及び評価装置 |
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