特許文献1のような従来の装置では、配設体を配設体支持具の支持部に対して掛け止める際、掛合部材の下端縁の開放部を開放させるために、裏面側から掛合板を手で操作し、掛合板を配設体の底壁から離間させるように維持することが必要であった。このような操作は、例えば、配設体の前面側のみに壁材が立設され、裏面側の壁材が立設されていない作業空間では、ユーザーが配設体の裏面側から掛合板を操作することは容易であった。しかしながら、配設体の後面側に壁材が立設され、後面側の作業スペースが限定され、かつ、操作対象を目視できないような作業空間では、ユーザーが手探りで操作することが必要となる。ユーザーが手探りで掛合板を配設体の裏面側から操作することは、一般的に困難であり、作業の失敗や非効率化につながってしまう。したがって、ユーザーが手探りであっても配設体を支持具に取着可能とすることが課題として挙げられる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、造営材への配設体の配置操作をより容易なものとする配設体配置装置、取着部材、および、配設装置を提供することにある。
請求項1に記載の配設体配置装置は、造営材に対して配設体本体を配置するための配設体配置装置であって、
前記造営材に固定される固定部、および、当該固定部から前記造営材の側方に延設されて前記配設体本体を前面側に支持するための支持部を備えた配設体支持具と、
前記配設体本体を前記支持部に取着するための取着部材と、を備え、
前記取着部材は、
前記支持部の延設方向に直交する幅方向に延在し、前記支持部の後面側に配置され、前記配設体本体との間に前記支持部を挟み込むように構成された本体部と、
前記本体部の幅方向一端側および他端側にそれぞれ形成され、前記支持部の幅方向の両外側で前記配設体本体の被結合部に結合するための第1および第2結合部と、を備え、
前記取着部材は、前記第1結合部のみが前記配設体本体の第1被結合部に結合した仮取着状態において、前記本体部の他端側の端部に向かうにつれて前記配設体本体から離間するように構成され、
前記取着部材は、前記仮取着状態で前記本体部と前記配設体本体との間に前記支持部を挿通するための受入口を形成する離間位置と、前記受入口が閉鎖され、前記第2結合部が前記配設体本体の第2被結合部に結合される結合位置とに変位可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の配設体配置装置は、請求項1に記載の配設体配置装置において、前記仮取着状態において、前記支持部が前記配設体本体に幅方向に係合し、前記支持部が前記第1結合部から幅方向に離間した位置に係止されることを特徴とする。
請求項3に記載の配設体配置装置は、請求項1または2に記載の配設体配置装置において、前記本体部の前記第1結合部と前記第2結合部との間の部位には、前記支持部を配置するための配置空間を形成する収容凹部が設けられ、前記収容凹部の前記第1結合部側には、前記支持部が前記収容凹部を越えて前記第1結合部に近接することを規制する規制部が形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の配設体配置装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の配設体配置装置において、前記本体部の前記第1結合部と前記第2結合部との間の部位には、前記支持部を配置するための配置空間を形成する収容凹部が設けられ、
前記収容凹部内には、前記支持部と係合して、前記支持部の前記本体部に対する幅方向の相対位置を定める位置決め手段が形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の配設体配置装置は、請求項4に記載の配設体配置装置において、前記位置決め手段は、前記収容凹部の幅方向に対向する内面に形成され、前記支持部の幅方向の端縁に当接することで前記支持部の位置決めをする端縁係合部を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の配設体配置装置は、請求項4または5に記載の配設体配置装置において、前記支持部は、幅方向に段差を形成するとともに延設方向に沿って延びる1または複数の段部を備え、
前記位置決め手段は、前記段部に当接することで前記支持部の位置決めをする段部係合部を備えることを特徴とする。
請求項7に記載の配設体配置装置は、請求項6に記載の配設体配置装置において、前記段部係合部は、前記収容凹部の底部に形成され、前後方向に弾性変形する弾性片と、前記弾性片に設けられ、前記収容凹部の配置空間に突出する突片とを備え、前記突片は、前記弾性片の弾性変形により前記収容凹部の配置空間に出没することを特徴とする。
請求項8に記載の配設体配置装置は、請求項1から7のいずれか一項に記載の配設体配置装置において、前記第1被結合部は貫通孔からなり、
前記第1結合部は、前記配設体本体の後面側から前記第1被結合部に挿入され、前記本体部の前面側に突出する弾性変位可能な第1挿入片からなり、前記第1挿入片は、前記配設体本体の前面側に延び出て、前記第1被結合部の周縁に前面側から係合する第1係合爪を有し、
前記取着部材は、前記第1結合部とともに前記第1被結合部に挿入され、前記第1係合爪が前記配設体本体の前面側に延び出る向きとは反対側の前記第1被結合部の内周面に当接する第1当接片をさらに備えることを特徴とする。
請求項9に記載の配設体配置装置は、請求項1から8のいずれか一項に記載の配設体配置装置において、前記第2被結合部は貫通孔からなり、
前記第2結合部は、前記配設体本体の後面側から前記第2被結合部に挿入され、前記本体部の前面側に突出する弾性変位可能な第2挿入片からなり、前記第2挿入片は、前記配設体本体の前面側に延び出て、前記第2被結合部の周縁に前面側から係合する第2係合爪を有し、
前記第2係合爪は、前記配設体本体の前面側において前記第1結合部側に延び出ることを特徴とする。
請求項10に記載の配設体配置装置は、請求項1から9のいずれか一項に記載の配設体配置装置において、前記取着部材の前記本体部は、弾性変形可能であり、前記結合位置に変位されたときに弾性変形して前記結合位置から前記離間位置へ向けて戻ろうとする弾性復帰力を発揮することを特徴とする。
請求項11に記載の取着部材は、造営材に固定される固定部、および、前記固定部から前記造営材の側方に延設されて前記配設体本体を前面側に支持するための支持部を有する配設体支持具に対して、前記配設体本体を取着するための取着部材であって、
前記支持部の延設方向に直交する幅方向に延在し、前記支持部の後面側に配置され、前記配設体本体との間に前記支持部を挟み込むように構成された本体部と、
前記本体部の幅方向一端側および他端側にそれぞれ形成され、前記支持部の幅方向の両外側で前記配設体本体の被結合部に結合するための第1および第2結合部と、を備え、
前記本体部は、前記第1結合部のみが前記配設体本体の第1被結合部に結合した仮取着状態において、前記本体部の他端側の端部に向かうにつれて前記配設体本体から離間するように構成され、
前記取着部材は、仮取着状態で前記本体部と前記配設体本体との間に前記支持部を挿通するための受入口を形成する離間位置と、前記受入口が閉鎖され、前記第2結合部が前記配設体本体の第2被結合部に結合される結合位置とに変位可能であることを特徴とする。
請求項12に記載の配設装置は、造営材に対して配置される配設体本体と、
前記造営材に固定される固定部、および、当該固定部から前記造営材の側方に延設されて前記配設体本体を前面側に支持するための支持部を備えた配設体支持具と、
前記配設体本体を前記支持部に取着するための取着部材と、を備え、
前記取着部材は、
前記支持部の延設方向に直交する幅方向に延在し、前記支持部の後面側に配置され、前記配設体本体との間に前記支持部を挟み込むように構成された本体部と、
前記本体部の幅方向一端側に形成され、前記支持部の幅方向の一端側で前記配設体本体に接続される接続部と、
前記本体部の幅方向他端側に形成され、前記支持部の幅方向の他端側で前記配設体本体の被結合部に結合するための結合部と、を備え、
前記取着部材は、前記結合部が前記被結合部に結合されていない仮取着状態において、前記本体部の他端側の端部に向かうにつれて前記配設体本体から離間するように構成され、
前記取着部材は、前記仮取着状態で前記本体部と配設体本体との間に前記支持部を挿通するための受入口を形成する離間位置と、前記受入口が閉鎖され、前記結合部が前記被結合部に結合される結合位置とに変位可能であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、配設体配置装置は、配設体支持具の支持部の後面側に配置され、配設体本体との間に支持部を挟み込むように構成された取着部材を備える。取着部材は、その一端側で、第1結合部のみが配設体本体の第1被結合部に結合することにより、配設体本体に仮取着可能である。そして、取着部材は、仮取着状態において、本体部の他端側の端部に向かうにつれて配設体本体から離間し、前記本体部と配設体本体との間に前記支持部を挿通するための受入口を形成する離間位置と、受入口が閉鎖され、第2結合部が配設体本体の第2被結合部に結合される結合位置とに変位可能である。すなわち、取着部材が配設体本体に仮取着した状態で離間位置にあるとき、本体部の他端側の端部に向かうにつれて配設体本体から離間するように受入口が開放されていることから、ユーザーは、取着部材を開放操作することなく、配設体本体を支持部に対して幅方向にスライドさせるだけで、支持部を受入口に容易に挿通することが可能である。そして、支持部を配設体本体と取着部材との間に配置した後、ユーザーが取着部材を結合位置へと変位させ、第2結合部を配設体本体の第2被結合部に結合させることにより、配設体本体を配設体支持具に支持させることが可能である。これら操作は、取着部材が配設体本体に仮取着された状態で行われることから、ユーザーは手探りで取着操作することが可能である。したがって、本発明の配設体配置装置は、ユーザーが手探りであっても配設体本体を配設体支持具に取着可能とするものであり、造営材への配設体の配置操作を改善するものである。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、仮取着状態において、支持部が配設体本体に幅方向に係合することにより、支持部が配置予定位置よりも大きく行き過ぎることを防止したり、支持部が第1結合部に近接または当接して取着部材の操作が妨げられることを防止したりすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、支持部が本体部の収容凹部に収容されたときに規制部によって第1結合部に近接することを規制することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加えて、支持部を収容凹部に収容し、収容凹部内の位置決め手段を支持部に係合させることによって、支持部を幅方向の所定位置に位置決めすることが可能である。
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、位置決め手段として収容凹部の幅方向に対向する内面に形成された端縁係合部が、支持部の幅方向の端縁に当接することで支持部の位置決めを容易に行うことが可能である。
請求項6に記載の発明によれば、請求項4または5の発明の効果に加えて、段部係合部に支持部の段部を係合させることにより、支持部の位置決めを容易に行うことが可能である。特には、支持部の幅が変動した場合であっても、優先的に段部係合部を段部に係合させることで、支持部の段部を基準とした位置決めを行うことが可能である。
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて、支持部が支持部材の収容凹部に配置されたとき、収容凹部の底部から前方に突出する突片が支持部の段部に係合することで、支持部の位置決めを行うことができる。また、突片が弾性片の弾性変位により収容凹部の底部から出没可能であることから、支持部が突片に当接したときに後退可能である。これにより、収容凹部内で突片が支持部に干渉して支持部の移動を妨げることを防止することできる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1から7のいずれかの発明の効果に加えて、第1被係合部(貫通孔)の周縁に前面側から係合し、かつ、第1当接片が第1挿入片の延び出る向きとは反対側の第1被結合部(貫通孔)の内周面に当接することにより、第1被係合部から第1結合部が簡単に抜け落ちて、仮取着が不意に解除されることを抑えることができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項1から8のいずれかの発明の効果に加えて、取着部材を結合位置に変位させて第2挿入片を第2被結合部に結合する際、第2係合爪が本体部の内方を向いていることから、第2挿入片の撓み変形量を減らして、簡単に取り付けることができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1から9のいずれかの発明の効果に加えて、第2結合部が第2被係合部に結合されるときに本体部が弾性変形し、これに伴う弾性復帰力が支持部を配設体本体に対して付勢するように作用することで、配設体本体を支持部に対して安定的に支持させることが可能である。
請求項11に記載の発明によれば、取着部材は、配設体支持具の支持部の後面側に配置され、配設体本体との間に支持部を挟み込むように構成されている。取着部材は、その一端側で、第1結合部のみが配設体本体の第1被結合部に結合することにより、配設体本体に仮取着可能である。そして、取着部材は、仮取着状態において、本体部の他端側の端部に向かうにつれて配設体本体から離間し、前記本体部と配設体本体との間に前記支持部を挿通するための受入口を形成する離間位置と、受入口が閉鎖され、第2結合部が配設体本体の第2被結合部に結合される結合位置とに変位可能である。すなわち、取着部材が配設体本体に仮取着した状態で離間位置にあるとき、本体部の他端側の端部に向かうにつれて配設体本体から離間するように受入口が開放されることから、ユーザーは、取着部材を開放操作することなく、配設体本体を支持部に対して幅方向にスライドさせるだけで、支持部を受入口に容易に挿通することが可能である。そして、支持部を配設体本体と取着部材との間に配置した後、ユーザーが取着部材を結合位置へと変位させ、第2結合部を配設体本体の第2被結合部に結合させることにより、配設体本体を配設体支持具に支持させることが可能である。これら操作は、取着部材が配設体本体に仮取着された状態で行われることから、ユーザーは手探りで取着操作することが可能である。したがって、本発明の取着部材は、ユーザーが手探りであっても配設体本体を配設体支持具に取着可能とするものであり、造営材への配設体の配置操作を改善するものである。
請求項12に記載の発明によれば、配設装置は、配設体支持具の支持部の後面側に配置され、配設体本体との間に支持部を挟み込むように構成された取着部材を備える。取着部材は、その一端側で、回動接続部を介して配設体本体に回動可能に部分的に仮取着されている。そして、取着部材は、仮取着状態において、本体部の他端側の端部に向かうにつれて配設体本体から離間し、前記本体部と配設体本体との間に前記支持部を挿通するための受入口を形成する離間位置と、受入口が閉鎖され、結合部が配設体本体の被結合部に結合される結合位置とに変位可能である。すなわち、取着部材が配設体本体に仮取着した状態で離間位置にあるとき、本体部の他端側の端部に向かうにつれて配設体本体から離間するように受入口が開放されていることから、ユーザーは、取着部材を開放操作することなく、配設体本体を支持部に対して幅方向にスライドさせるだけで、支持部を受入口に容易に挿通することが可能である。そして、支持部を配設体本体と取着部材との間に配置した後、ユーザーが取着部材を結合位置へと変位させ、結合部を配設体本体の被結合部に結合させることにより、配設体本体を配設体支持具に支持させることが可能である。これら操作は、取着部材が配設体本体に仮取着された状態で行われることから、ユーザーは手探りで取着操作することが可能である。したがって、本発明の配設装置は、ユーザーが手探りであっても配設体本体を配設体支持具に取着可能とするものであり、造営材への配設体の配置操作を改善するものである。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、上下左右方向は、相互に入れ替えて解釈されてもよい。
本発明の一実施形態の配設体配置装置101は、壁裏の間柱などの造営材に対して、スイッチやコンセントなどの機器等を配設可能とする配設体本体を配置するための装置である。本実施形態では、配設体本体はボックス110として例示されるが、本発明の配設体はボックスに限定されるものではない。また、配設装置100は、機器等を配設するための設置構造10を構築するための装置であり、配設体配置装置101(ボックス110および取着部材150)と、配設体本体であるボックス110と、を備える。換言すると、配設装置100(ボックス110、配設体支持具130および取着部材150のアセンブリ)が造営材Pに対して設置されることにより、設置構造10が構築される。さらには、ボックス(配設体本体)110と取着部材150との組み合わせ(またはアセンブリ)が、配設体として解釈されてもよい。
図1は、本発明に係る一実施形態の配設装置100(または配設体配置装置101)の分解斜視図である。図1に示すとおり、配設装置100は、壁裏に配置される配設体本体としてのボックス110と、(間柱として例示される)造営材に固定されるとともにボックス110を前面側に支持する配設体支持具130と、ボックス110を配設体支持具130に取着するための取着部材150とを備える。ここで、配設体配置装置101は、配設体支持具130と、取着部材150とを備えてなり、ボックス110を含まない装置である。以下、各構成部材について詳細に説明する。
図2乃至図4を参照して、造営材に対して配置される配設体本体としてのボックス110について説明する。図2(a),(b)は、ボックス110の前面および後面からの概略斜視図である。図3(a)~(d)は、該ボックス110の平面図、正面図、背面図および側面図である。図4は、該ボックス110のA-A断面図である。
図2乃至図4に示すとおり、ボックス110は、有底箱状をなし、縦横に延在する矩形状の底壁111と、該底壁111内面から立設した側壁112とを備える。ここで、縦軸方向が、正面視における上下方向を示すとともに、支持部132の幅方向(またはボックス110の配設時の垂直方向)に対応し、横軸方向が、正面視における左右方向を示すとともに、支持部132の延設方向(またはボックス110の配設時の水平方向)に対応する。底壁111の反対面には、側壁112の先端縁に縁取られた開口部が設けられている。また、側壁112の先端には、造営材の前面に構築された壁材の内面に当接するように、開口部から外方に延びるフランジが設けられている。また、ボックス110の底壁111には、当該ボックス110を配設体支持具130の支持部132にビス(またはタッピングビス)で固着するための2つの固定孔114が穿設されている。これら2つの固定孔114は、底壁111の略中心を挟んで横軸方向に並んで配置されている。また、開口部の上下両側の縁部端面には、配線器具を取り付けるための一対の孔として器具取付部115が形成されている。また、底壁111の後面には、横軸方向に亘って延在し、かつ、前面側に後退するように形成された凹部113が形成されている。凹部113は、底壁111の縦軸方向の略中央に位置し、配設体支持具130の支持部132を配置可能に構成されている。凹部113の縦軸方向の幅は、支持部132の幅よりも大きい。
また、ボックス110の底壁111の縦軸方向の一端(上)側および他端(下)側の両側には、対となる貫通孔116,117が設けられている。貫通孔116,117は、後述する取着部材150の結合部153,155が結合される被結合部である。各貫通孔116,117は、ボックス110の中心を通る縦軸から横軸方向にずれた位置で、横軸方向の2箇所に並設されている。また、各貫通孔116,117は、L字溝状に延在し、その両端で幅広になっている。そして、底壁111の上側に位置する貫通孔の組を第1貫通孔116(第1被結合部)とし、かつ、下側に位置する貫通孔の組を第2貫通孔117(第2被結合部)として定めた。第1貫通孔116および第2貫通孔117は、凹部113に収容された支持部132に重合しないように凹部113から上下に離隔した位置にそれぞれ配置されている。すなわち、第1被結合部および第2被結合部は、支持部132の延設方向を直交する方向の支持部132の幅よりも互い離間した位置に形成されている。
ボックス110の側壁112には、ケーブル貫挿孔および当該ケーブル貫挿孔を塞ぐノック部が形成されている。さらに、ボックス110の略中央には、底壁111から開口部に向かって磁気検知部119が突出している。当該磁気検知部119は磁石を保持可能であり、探知器を使用することで、壁材を介して壁表からボックス110の位置を検知可能である。当該磁気検知部119は穿孔後に必要に応じて除去可能である。
なお、本実施形態では、ボックス110は硬質の合成樹脂材料から形成されたが、本発明はこれに限定されず、例えば、金属材料等から形成されてもよい。
次に、図5乃至図7を参照して、配設体支持具130について説明する。図5(a),(b)は、配設体支持具130の前面および後面からの概略斜視図である。図6(a)~(d)は、該配設体支持具130の平面図、正面図、背面図および側面図である。図7は、該配設体支持具130のB-B断面図である。図8は、該配設体支持具130のC-C断面図である。
図5乃至図7に示すとおり、配設体支持具130は、その基端から先端まで延びる平面視L字形状の長板である。配設体支持具130は、その基端に位置し、造営材の側面に固定される固定部131と、当該固定部131からその先端(又は造営材の側方)に向けて長手状に延設された支持部132とからなる。換言すると、当該配設体支持具130はL字形状に屈曲しており、短片状の固定部131と長片状の支持部132とが略直角に連結されている。この固定部131は、ボックス110の側壁112の高さとほぼ等しい長さで形成されている。支持部132は、延設方向に直交する方向に幅方向を有する。延設方向は、配設体支持具130の造営材への固定時の水平方向に対応し、幅方向は、配設体支持具130の造営材への固定時の垂直(鉛直)方向に対応する。
固定部131には、複数の固定孔131aが穿設されており、当該複数の固定孔131aを介して造営材の側面に固定可能である。また、配設体支持具130の固定部131には、別体として樹脂製の取付台座135が装着されている。なお、取付台座135の固定部131への装着は任意である。この取付台座135は、固定部131に装着される取付部と、該取付部から側方に突出した突出部とを備える。取付台座135を固定部131に装着することにより、取付部を造営材の前面に当接させると共に、突出部を造営材の側面に当接させて、配設体支持具130の位置決めおよび固定作業をより一層簡単のものとすることができる。
支持部132は、図7に示す横断面視において、その幅方向の中央で後面側に隆起するように屈曲している。すなわち、支持部132には、延設方向の基端近傍から先端に亘って延在する突条部位133が設けられている。そして、当該突条部位133の頂部には、ボックス110を固定するための複数の長孔状の取付孔134が穿設されている。取付孔134は、支持部132の幅方向に段差をなす段部134aを形成する。つまり、取付孔134の内面には、後述する構成部材の相対的な位置決めのための段部134aが形成される。さらに、当該突条部位133の上下には、幅方向に延びる長孔および延設方向に延びる長孔がそれぞれ形成されている。これら長孔は、ボックス110を固定するためには使用されないが、例えば、クリップ状の配設体などの他形態の配設体本体に変更した際に使用され得る。
なお、本実施形態の配設体支持具130は、SUS材を屈曲および穿設加工することにより得られたが、本発明は、一実施形態の製法および材質に限定されるものではない。例えば、SUS材などの金属材料の替わりに、硬質樹脂等を成形加工して配設体支持具を形成することも可能である。
次いで、図8乃至図10を参照して、取着部材150について説明する。図8(a),(b)は、取着部材150の前面および後面からの概略斜視図である。図9(a)~(d)は、該取着部材150の平面図、正面図、背面図および側面図である。図10(a)~(c)は、該取着部材150のD-D,E-E,F-F断面図である。
図8乃至図10に示すとおり、取着部材150は、長円状または小判状の合成樹脂材料により形成されている。ただし、取着部材150は、金属材料等の他の材料で形成されてもよい。取着部材150は、縦軸方向に長軸を有する弾性変形可能な薄板状の本体部151を備える。本体部151は、縦軸方向(支持部132の幅方向)に延在し、支持部132の後面側に配置され、ボックス110との間に支持部132を挟み込むように構成されている。つまり、取着部材150は、縦軸方向が支持部132の幅方向に合致するように、ボックス110および支持部132に取着される。そして、取着部材150の縦幅は、支持部132の幅よりも大きい。
また、本体部151は、図10(a)に示すように、直状に延在する上側部位と、直状に延在する下側部位とがその縦軸方向の中央部位で所定の傾斜角で結合したものである。すなわち、本体部151は、上側部位を略垂直に配置したときに、下端に向かうにつれてその前面が後退するように、その側面視において所定の傾斜角で屈折している。本体部151は、後面側に傾斜角を有し、その傾斜角は、180度よりも小さく、かつ、鈍角をなしている。そして、本体部151は、弾性変形することで、上側部位および下側部位が側面視において略直線状となる(つまり、傾斜角が略180度に近づく)ことが可能である。中央部位は、図10(a)に示すように、本体部151の弾性変形を補助するように、その上下の部位よりも相対的に薄肉に形成されている。より具体的には、縦軸に沿った断面視において、中央部位には、円弧状の凹曲面が形成されている。この凹曲面には、支持部132の突条部位133が配置され得る。
本体部151には、該本体部151の幅方向一端側および他端側にそれぞれ形成され、支持部132の幅方向の両外側でボックス110の第1貫通孔116および第2貫通孔117に結合するための第1および第2結合部(153,155)が設けられている。第1および第2結合部は、第1貫通孔116および第2貫通孔117に対応する位置に配置され、その縦軸方向の間に支持部132を配置可能であるように離間している。
第1結合部は、本体部151の縦軸方向上端側に形成され、本体部151の前面側に突出する第1挿入片153からなる。第1挿入片153は、細長い板状に形成され、弾性変位可能である。第1挿入片153は、ボックス110の底壁111の後面側から第1貫通孔116に挿入されるように構成されている。また、第1挿入片153は、その先端から下向きに延び出る第1係合爪153aを有する。第1係合爪153aは、底壁111の前面側に延び出て、第1貫通孔116の周縁に前面側から係合するように構成されている。なお、第1挿入片153は、第1貫通孔116と同様に、本体部151の中心を通る縦軸から横軸方向にずれた位置で、横軸方向の2箇所に並設されている。また、横軸方向に隣接する第1挿入片153,153は、互いに平行になることなく、その間隔が下側で広がるようにハ字状に傾斜して配列している。
第2結合部は、本体部151の縦軸方向下端側に形成され、本体部151の前面側に突出する第2挿入片155からなる。第2挿入片155は、細長い板状に形成され、弾性変位可能である。第2挿入片155は、ボックス110の底壁111の後面側から第2貫通孔117に挿入されるように構成されている。また、第2挿入片155は、その先端から上向きに延び出る第2係合爪155aを有する。第2係合爪155aは、底壁111の前面側に延び出て、第2貫通孔117の周縁に前面側から係合するように構成されている。なお、第2挿入片155は、第2貫通孔117と同様に、本体部151の中心を通る縦軸から横軸方向にずれた位置で、横軸方向の2箇所に並設されている。また、横軸方向に隣接する第2挿入片155,155は、互いに平行になることなく、その間隔が上側で広がるようにハ字状に傾斜して配列している。
すなわち、第1結合部および第2結合部は、本体部151の中心を通る横軸に対して線対称となるように形成され、第1係合爪153aおよび第2係合爪155aが互いに縦軸方向に向かい合うように縦軸および横軸方向の内向きに延在している。また、取着部材150は、第1挿入片153のみがボックス110の第1貫通孔116に結合されることにより、ボックス110に仮取着されるように構成されている。そして、取着部材150の第1挿入片153および第2挿入片155の両方がボックス110の第1貫通孔116および第2貫通孔117に結合されることにより、取着部材150がボックス110により確実に取着される。
また、取着部材150は、本体部151の4隅で、各第1挿入片153および第2挿入片155に近接して設けられ、前面側に突出する第1当接片154および第2当接片156をさらに備える。第1当接片154は、第1挿入片153とともに第1貫通孔116(第1被結合部)に挿入され、第1係合爪153aが底壁111の前面側に延び出る向き(下向き)とは反対側の第1貫通孔116の内周面(上側の面)に当接するように構成されている。他方、第2当接片156は、第2挿入片155とともに第2貫通孔117(第2被結合部)に挿入され、第2係合爪155aが底壁111の前面側に延び出る向き(上向き)とは反対側の第2貫通孔117の内周面(下側の面)に当接するように構成されている。なお、各貫通孔116,117において挿入片153,155および当接片154,156が協働することにより、挿入片153,155が貫通孔116,117から簡単に抜け出ることを抑えることができる。つまり、第1および第2当接片154,156は、第1および第2結合部による結合を補助する結合補助部として機能する。
また、本体部151の第1結合部(第1挿入片153)と第2結合部(第2挿入片155)との間の部位には、支持部132を配置するための配置空間を形成する収容凹部152が設けられている。収容凹部152は、本体部151の縦軸方向の中央部位に形成され、その前面が段差状に後退するように形成された。つまり、収容凹部152は、底部152a、および、底部152aから内面が前面側に張り出した段差部152bを有する。段差部152bは、収容凹部152の縦軸方向に対向する内面を有する。上下の段差部152bの内面の間に支持部132を配置するための配置空間が画定される。上側の段差部152bは、配置空間に配置された支持部132が収容凹部152を越えて第1結合部に近接することを規制する規制部として機能し得る。また、段差部152bは、支持部132の幅方向の端縁に当接することで支持部132の位置決めをする端縁係合部(位置決め手段)としても機能し得る。本実施形態では、端縁係合部(段差部152b)は、支持部132の延設方向に延びているが、支持部132の延設方向にずれた複数位置に形成されてもよい。
さらに、取着部材150は、支持部132の段部134aに当接することで支持部132の位置決めをする段部係合部(位置決め手段の1つ)をさらに備える。段部係合部は、本体部151の中央部位において横軸方向に沿った2箇所に並設されている。より具体的には、段部係合部は、収容凹部152の底部152aに形成され、前後方向に弾性変形する弾性片157と、弾性片157に設けられ、前方に突出する突片158とを備える。弾性片157は、本体部151の肉部に連結された基端から自由端へと底部152aと略平行に延在する弾性の板片である。また、弾性片157の基端から自由端への延びる方向が、第1結合部および第2結合部の並び方向(縦軸)に沿っている。そして、左右一対の段部係合部は、弾性片157の基端と自由端の位置が互いに逆になるように配置されている。
突片158は、原形状では収容凹部152の配置空間内に突出しており、弾性片157の弾性変形により収容凹部152の配置空間に出没可能である。つまり、突片158は、前面側から押圧されると弾性片157が弾性変形して収容凹部152の窪み方向に後退する。換言すると、段部係合部(弾性片157および突片158)は、支持部132に対する接離方向に撓み移動するように構成されている。突片158が後退し、配置空間への突出量を減少させることで所定厚の支持部132の通過を許容する。そして、弾性片157の弾性復帰力によって原位置に戻ろうとすることで、突片158および段部134aが互いに対して効果的に係止され得る。さらに、突片158の基端側および自由端側には、スライドによる支持部132の進入によって弾性片157の後面側への弾性変形を案内する傾斜案内面158aが形成されている。傾斜案内面158aは、突片158の先端部位の上側および下側の2箇所において、角部が面取りされて形成されてなる。
突片158は、支持部132の幅方向の略中央に形成された段部134aに係合して位置決めするように、本体部151の縦軸方向の略中央位置に配置されている。また、弾性片157の周囲三方には、コ字状のスリット159が形成されている。スリット159は、弾性片157から横軸方向外側に延びる拡張部159aを有する。この横長の拡張部159aは、タッピングビスが底壁111を貫通して支持具130の取付孔134にねじ込まれたときに、タッピングビスを逃がすように機能する。
図11は、仮取着状態のボックス110および取着部材150を示す概略断面図である。図11に示すような仮取着状態の配設体では、第1挿入片153のみがボックス110の第1貫通孔116に結合している。より具体的には、第1挿入片153が底壁111の第1貫通孔116に後面側から挿通され、第1係合爪153aが底壁111前面側で下方に延在し、かつ、底壁111前面の第1貫通孔116の周縁の下側部分に当接している。このとき、第1当接片154も第1貫通孔116に配置され、第1貫通孔116の内面の上側部分に当接している。そして、取着部材150は、仮取着状態において、本体部151の他端側の端部に向かうにつれてボックス110の底壁111から離間し、本体部151と底壁1111との間に支持部132を挿通するための受入口103を形成している。すなわち、仮取着状態において、取着部材150は離間位置にある。この離間位置において、第2挿入片155とボックス110の底壁111との間の距離が、支持部132の(挟まれる方向の)厚みよりも大きい。当該離間位置から本体部151の下側部位が底壁111側に押圧されることで、本体部151の下側部位が前方に弾性変形し得る。そして、取着部材150は、受入口103が閉鎖され、第2挿入片155(第2結合部)がボックス110の第2貫通孔(第2被結合部)に結合され得る結合位置に変位可能である。すなわち、取着部材150は、離間位置と結合位置との間で弾性変位可能である。なお、本実施形態では、第1貫通孔116が第1挿入片153よりも大きいので、第1挿入片153が第1貫通孔116内に遊挿または遊嵌された状態で結合されている。これにより、本体部151の弾性変形に加えて、取着部材150が第1挿入片153を中心に回動可能である。つまり、取着部材150が第1挿入片153を軸に優先的に回動した上で、本体部151の中央部位の(相対的に)弾性変形容易な箇所を中心として本体部151の下側部位が上側部位に対してさらに弾性的に回動し得る。その結果、取着部材150の離間位置から結合位置への操作が容易となる。なお、取着部材150が第1挿入片153を軸に回動しないように第1挿入片153および第1貫通孔116が互いに嵌着されている場合には、本体部151の中央部位の弾性変形容易な箇所のみが回動軸であってもよい。あるいは、本体部151が弾性変形しないまたは弾性変形が困難である場合、本体部151の第1挿入片153(第1結合部)のみが回動軸であってもよい。
続いて、図12乃至図17を参照して、一実施形態の配設装置100が造営材Pに対して固定された設置構造10について説明する。図12は、設置構造10の概略斜視図である。図13は、設置構造10の背面図である。図14は、設置構造10の平面図である。図15から図17は、設置構造10のG-G,H-H,I-I,J-J断面図である。なお、設置構造10では、造営材Pの前後に立設される壁材、ビスやタッピングビスなどの固定部材、および、ボックス110に取り付けられる配線器具は、図示されていないが、これら他の要素が追加されてもよいことは云うまでもない。
図12乃至図14に示すように、設置構造10では、間柱としての造営材Pに配設体支持具130の固定部131が固定されており、支持部132が造営材Pの側方に延在している。そして、支持部132の長手方向の略中央部に取着部材150を介してボックス110が支持されている。より具体的には、支持部132が取着部材150の本体部151およびボックス110の底壁111によって前後方向に挟み込まれることにより、ボックス110が支持部132に支持されている。このとき、ボックス110の開口部が壁表側を臨むように配置され、かつ、ボックス110の底壁111裏面(凹部113)が支持部132表面に当接している。また、支持部132の延設方向に対して、ボックス110および取着部材150の横軸方向が整列するように各構成部材が配置されている。そして、当該設置構造10では、ボックス110が配設体支持具130の支持部132上をスライド可能に配置されている。
図15に示すように、設置構造10において、支持部132がボックス110の凹部113に配置されているとともに、取着部材150の収容凹部152に配置されている。つまり、凹部113および収容凹部152が協働して支持部132の配置空間を形成している。凹部113の段差部(縦軸方向に対向する内面)および収容凹部152の段差部152bによって、支持部132の上下が閉鎖されていることから、支持部132が配置空間から上下に移動して抜け出すことが規制されている。また、設置構造10では、ボックス110の固定孔114が支持部132の取付孔134に合致するように、支持部132の幅方向において位置決めされている。そして、取着部材150の第1挿入片153および第2挿入片155が、支持部132と重合しないように幅方向の上下両側に配置されている。
図15および図17(a)に示すように、支持部132の幅方向の両外側において、取着部材150の第1挿入片153が第1貫通孔116を後側から貫通して、第1係合爪153aが底壁111前面に係合しているとともに、第2挿入片155が第2貫通孔117を後側から貫通して、第2係合爪155aが底壁111前面に係合している。第1係合爪153aおよび第2係合爪155aが支持部132の幅方向において互いに向かい合うように配置されていることにより、第1および第2挿入片153,155が第1および第2貫通孔116,117から外れにくい状態が維持されている。
また、図16に示すように、第1当接片154が、第1挿入片153とともに第1貫通孔116内に配置され、第1貫通孔116の内周面の上側部分に当接しているとともに、第2当接片156が、第2挿入片155とともに第2貫通孔117内に配置され、第1貫通孔116の内周面の上側部分に当接している。挿入片153,155および当接片154,156が協働することで、ボックス110および取着部材150間の結合が簡単に解除されることが補助的に抑えられている。
さらに、取着部材150がボックス110に対して結合位置にあるとき、取着部材150の本体部151が縦軸方向において弾性変形し、支持部132の幅方向に沿って略直状に延在している。この結合姿勢において、図16および図17(b)に示すように、取着部材150の突片158が、支持部132の突条部位133に圧接している。突片158が突条部位133によって後面側に押圧されることにより、弾性片157が弾性変形し、突片158が原位置から後方に引っ込むように変位している。そして、取着部材150が弾性変形した状態でボックス110に結合されていることにより、取着部材150の弾性復帰力が常時発生している。この弾性復帰力は、第1係合爪153aおよび第2係合爪155aの底壁111との当接を強めるように作用し、かつ、支持部132をボックス110に押し付けるように作用する。すなわち、設置構造10において、取着部材150の弾性復帰力により、ボックス110および取着部材150の間の十分な結合力が確保されている。
続いて、図18および図19を参照して、配設装置100を造営材Pに対して設置した設置構造10を構築する方法について説明する。ここで、造営材Pは、壁裏空間に立設する間柱であり、当該造営材Pの後側に壁材Wが予め立設され、ボックス110の後方に十分な作業空間がない場合の方法について例示する。
最初に、ボックス110の設置位置(高さ)に合わせて配設体支持具130を造営材Pに固定する高さを設定して、配設体支持具130の固定部131を配置する位置を造営材P表面に罫書く。当該罫書きに沿って配設体支持具130を造営材Pに宛がい、造営材Pの側部に配設体支持具130の固定部131に設けられた固定孔131aにビスを貫通させることにより、配設体支持具130を造営材Pに固定する。
次いで、ボックス110を支持部132に掛け止めるべく、ボックス110の底壁111後面に取着部材150を仮取着させる。すなわち、第1貫通孔116に後面側から第1挿入片153および第1当接片154を差し込んで両者を結合することにより、図11に示す仮取着状態のボックス110および取着部材150の組立体を準備する。なお、第1挿入片153は、第1貫通孔116に差し込まれるときに弾性変形し、第1係合爪153aが第1貫通孔116を通過すると弾性復帰する。その結果、第1係合爪153aが第1貫通孔116の周縁(底壁111前面)に係合可能となる。
次に、図18に示すように、仮取着状態のボックス110を壁表から保持し、支持部132の前方でボックス110を下方にスライドさせる。ボックス110の後方で下方に開口する受入口103を介して、支持部132をボックス110および取着部材150との間の空間に導入する。このとき、取着部材150の本体部151の下端側の端部に向かうにつれてボックス110から離間しているので、ユーザーは手探りであっても、取着部材150を開放操作することなく、受入口103に支持部132を通過させることが容易である。また、本体部151の前面に対して支持部132の幅方向端縁を摺接させるように、ボックス110を下方に操作すると、本体部151前面に支持部132がガイドされるので操作がより容易となる。
そして、図19に示すように、受入口103の奥まで支持部132を相対的に進行させると、支持部132が収容凹部152の前面側の収容空間に進入する。支持部132を受入口103の奥に進行させる際、突片158が支持部132の端縁等に当接したとしても、傾斜案内面158aを介して突片158が後退動作するので、支持部132の進入操作を滑らかに行うことができる。そして、支持部132が配置空間の所定位置まで進入すると、取着部材150の配置空間に突出する突片158が、支持部132の突条部位133の取付孔134の段部134aに係合し、または段部134aによって係止される。突片158および段部134aの係合は、ユーザーにカチリという感触を伝達し、ボックス110の縦軸方向の中央位置が支持部132の幅方向の中央位置にあることを示す。すなわち、位置決め手段または段部係合部としての突片158を段部134aの係合させることによって、ユーザーが手探りであっても、支持部132およびボックス110の幅方向の相対位置を容易に位置決めすることができる。なお、突片158および段部134aの係合が上手くいかず、支持部132がさらに奥まで進んだ場合であっても、ボックス110の凹部113および/または取着部材150の段差部152b(端縁係合部)に支持部132の端縁が係合して、これ以上の移動が規制される。これにより、再度の位置決めが容易となる。
なお、異なる寸法形状の支持部132’が用いられた場合、取着部材150の段差部152bを端縁係合部として利用することで位置決めすることも可能である。より具体的には、図20に示すように、支持部132’の幅が大きく、かつ、その中央に取付孔(段部)が存在しないような場合、支持部132’の上側を向く端縁を、段差部152bに当接させることによって、支持部132’のボックス110に対する位置決めを行ってもよい。
続いて、位置決めした状態で、取着部材150の下側部位をボックス110に対して押し付けることにより、受入口103が閉鎖する方向に本体部151が傾動および/または弾性変形し、第2挿入片155および第2当接片156が第2貫通孔117に挿入され、両者が結合される。このとき、第2係合爪155aが本体部151の内方を向いていることから、(外方を向いている場合と比べて)第2挿入片155の撓み変形量を減らして、簡単に取り付けることができる。すなわち、ユーザーは、取着部材150を後面側から前面側に押圧するだけで、第2挿入片155および第2貫通孔117を結合可能であることから、当該工程も手探りで作業することが可能である。以上の工程を経て、設置構造10が構築され得る。
設置構造10の構築後、ボックス110を支持部132の延設方向の所定位置にスライドさせて位置決めし、タッピングビス等でボックス110および支持部132を本固定することができる。また、本固定の前後に、ボックス110の前面側に壁材を立設し、前面側の壁材に壁孔を形成してボックス110の開口部を壁孔から露出させることができる。そして、コンセントやスイッチなどの器具をボックス110の器具取付部115にビスで取り付けることにより、器具を構造物(壁材)に設置することができる。
なお、本実施形態では、取着部材150を仮取着したボックス110を鉛直下方にスライドさせて、支持部132に掛け止めるように操作したが、支持部132の延設状況に応じて、鉛直上方や水平方向にボックス110をスライドさせて支持部132に支持させてもよい。また、本実施形態の配設体配置装置101において、取着部材150の第1結合部および第2結合部を逆とみなして使用してもよい。
以下、本発明に係る一実施形態の配設体配置装置101(または配設装置100)の作用効果について説明する。
本実施形態の配設体配置装置101(または配設装置100)は、配設体支持具130の支持部132の後面側に配置され、配設体本体としてのボックス110との間に支持部132を挟み込むように構成された取着部材150を備える。取着部材150は、その一端側で、第1結合部としての第1挿入片153のみがボックス110の第1被結合部としての第1貫通孔116に結合することにより、ボックス110に仮取着可能である。そして、取着部材150は、仮取着状態において、本体部151の他端側の端部に向かうにつれてボックス110の底壁111後面から離間し、本体部151と底壁111後面との間に支持部132を挿通するための受入口103を形成する離間位置と、受入口103が閉鎖され、第2結合部としての第2挿入片155がボックス110の第2被結合部としての第2貫通孔117に結合される結合位置とに変位可能である。すなわち、取着部材150がボックス110に仮取着した状態で離間位置にあるとき、本体部151の他端側の端部に向かうにつれて底壁111後面から離間するように受入口103が下方に開放されていることから、ユーザーは、取着部材150を開放操作することなく、ボックス110を支持部132に対して幅方向にスライドさせるだけで、支持部132を受入口103に容易に挿通することが可能である。そして、支持部132をボックス110と取着部材150との間に配置した後、ユーザーが取着部材150を結合位置へと変位させることにより、ボックス110を配設体支持具130に支持させることが可能である。これら操作は、取着部材150がボックス110に仮取着された状態で行われることから、ユーザーは手探りで取着部材150を操作することが可能である。したがって、本実施形態の配設体配置装置101(または配設装置100)は、ユーザーが手探りであってもボックス110を配設体支持具130に取着可能とするものであり、ボックス110の後方の作業空間が限られている場合であっても、壁裏の造営材Pへのボックス110の配置操作を改善するものである。
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲の下で、種々の実施形態や変形例を取り得る。別実施形態において、下二桁の符番が共通する構成要素は、特定のない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
(1)本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。例えば、図21は、ボックス210および取着部材250からなる配設体を示す概略断面図である。すなわち、配設装置は、当該配設体(ボックス210および取着部材250)と、配設体支持具(配設体支持具130と共通であってもよい)を備える。本実施形態の配設体では、ボックス210の第1被結合部および取着部材250の第1結合部が一体的に連結されている。すなわち、取着部材250は、支持部の延設方向に直交する幅方向に延在し、支持部の後面側に配置され、ボックス210との間に支持部を挟み込むように構成された本体部251と、該本体部251の幅方向一端側に形成され、支持部の幅方向の一端側でボックス210の軸支部216(第1被結合部)に回動軸を介して接続された回動接続部253(第1結合部、接続部)と、本体部251の幅方向他端側に形成され、支持部の幅方向の他端側でボックス210の貫通孔217(第2被結合部)に結合するための挿入片255(結合部)と、を備える。本形態の配設体は、一端側の結合部のみが結合され、他端側で挿入片255が貫通孔217に結合されていない仮取着状態にある。当該仮取着状態において、本体部251の他端側の端部に向かうにつれてボックス210の底壁211後面から離間している。そして、取着部材250は、仮取着状態で本体部251と底壁211後面との間に支持部を挿通するための受入口203を形成する離間位置と、受入口203が閉鎖され、挿入片255が貫通孔217に結合される結合位置とに変位可能である。取着部材250が底壁211に対して回動または傾動操作可能であることから、取着部材250およびボックス210の操作性を確保しつつ、取着部材250およびボックス210が完全に離脱することが防止される。そして、本形態もまた、上述した一実施形態と同様に、本発明の課題を解決するものであることはいうまでもない。
(2)本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、配設体支持具は、固定部を介して片持ち状態で造営材に固定されるように構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、配設体支持具は、支持部の両端に当接部が設けられ、配設体支持具が2本の柱状の造営材の間に両持ち状態で固定されるように構成されてもよい。
(3)本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、配設体本体は、ボックスによって例示されたが、本発明はこれに限定されない。配設体本体は、取着部材の結合部が結合される被結合部を備えていればよく、他の形態をとってもよい。例えば、配設体本体は、管クリップやケーブルホルダなどであってもよい。
(4)本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、取着部材の結合部が係合爪を有する挿入片であり、配設体本体の被結合部が貫通孔として形成されたが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、結合部および被結合部の関係が逆になるように、結合部が貫通孔であり、被結合部が挿入片であってもよい。また、第1結合部および第1被結合部は、着脱式でなくてもよく、回動軸による結合、ビスによる結合、接着による結合、一体成型による結合等の他の結合手段が用いられてもよい。
(5)本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、
取着部材の本体部に形成された収容凹部の段差部が規制部として定められたが、本発明はこれに限定されない。例えば、取着部材から収容凹部および段差部が省略されてもよく、その場合、配設体本体(ボックス)の凹部の段差が規制部として機能し得る。すなわち、配設体本体の第1被結合部と第2被結合部との間の部位には、支持部を配置するための配置空間を形成する凹部が設けられ、凹部の第1被結合部側には、支持部が凹部を越えて第1被結合部に近接することを規制する規制部が形成されてもよい。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。