JP2022100060A - モノ重水素化ジハロゲン化メタン、重水素化シクロプロパン化合物及びそれらの製造方法 - Google Patents

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愛一郎 永木
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Abstract

【課題】ヨウ素原子又は臭素原子を有するモノ重水素化ジハロゲン化メタン、重水素化シクロプロパン化合物、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】マイクロリアクター1を用い、ヨウ素原子又は臭素原子を有するジハロゲン化メタンと有機リチウム化合物とを反応させ、ジハロゲン化メチルリチウムを得た後、マイクロリアクター1において、前記ジハロゲン化メチルリチウムと、分子中に重水素を含む求電子剤とを反応させ、ヨウ素原子又は臭素原子を有するモノ重水素化ジハロゲン化メタンを得る。【選択図】図1

Description

本発明は、モノ重水素化ジハロゲン化メタン、重水素化シクロプロパン化合物及びそれらの製造方法に関する。
重水素化化合物は、化学反応機構の解明や体内動態解析に有用である。医薬農薬分野では、薬品の生理活性や薬物相互作用の制御に有用であることから、重水素を分子骨格に組み込んだ重水素化医薬品が近年注目を集めている。
また、ハロゲンを有する合成ビルディングブロック、なかでもジハロゲン化メタンは、ハロゲンの持つ特異な性質により、医薬、農薬などをデザインする際には不可欠である。なかでも、良好な脱離基であるヨウ素原子又は臭素原子を有するジハロゲン化メタンは、S2置換反応やカップリング反応などへの汎用性が高く、ビルディングブロックとしての価値が特に高い。これらのことから、ヨウ素原子又は臭素原子を有する重水素化ジハロゲン化メタンは有用である。
重水素化ジハロゲン化メタンの製造に用いる重水、重水素化メタノール等の重水素原料は高価である。そのため、効率良くモノ重水素化ジハロゲン化メタンを製造できれば、ジ重水素化ジハロゲン化メタンよりも安価な重水素化ビルディングブロックとなる。重水素化化合物の製造方法としては、水素-重水素(H-D)交換反応を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法は過剰反応によるジ重水素化体の生成を抑制できず、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造は困難である。
ジハロゲン化メタンに有機リチウム化合物を作用させてジハロゲン化メチルリチウム種を生成させ、これを重水素化メタノール等と反応させてモノ重水素化ジハロゲン化メタンを得る方法も知られている(例えば非特許文献1)。しかし、この方法は、中間体であるハロゲン置換リチウム種は非常に不安定で分解しやすいため、リチウム種中間体が比較的安定であるモノ重水素化クロロヨードメタンの合成例しかない。
特許第5464395号公報
Org. Lett. 2020, 22, 3623-3627.
本発明は、ヨウ素原子又は臭素原子を有するモノ重水素化ジハロゲン化メタン、前記モノ重水素化ジハロゲン化メタンを用いて得られる重水素化シクロプロパン化合物、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記式(1)で表されるモノ重水素化ジハロゲン化メタン。
Figure 2022100060000002
(ただし、前記式(1)中、X及びYは、それぞれ独立にヨウ素原子又は臭素原子である。)
[2][1]に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンを製造する方法であって、
マイクロリアクターにより、下記式(2)で表されるジハロゲン化メタンと有機リチウム化合物とを反応させ、ジハロゲン化メチルリチウムを得る工程と、
前記マイクロリアクターにおいて、前記ジハロゲン化メチルリチウムと、分子中に重水素を含む求電子剤とを反応させてモノ重水素化ジハロゲン化メタンを得る工程と、
を含む、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
Figure 2022100060000003
(ただし、前記式(2)中、X及びYは、それぞれ独立にヨウ素原子又は臭素原子である。)
[3]前記ジハロゲン化メタンがジヨードメタンであり、
マイクロリアクター内の前記ジヨードメタンと前記有機リチウム化合物とを反応させる流路の温度T(℃)と滞留時間t(秒)とが、下記式(III)を満たす、[2]に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
-6.9t-39.3≦T≦-4.5t-14.5 ・・・(III)
[4]前記温度Tが-50℃~-30℃である、[3]に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
[5]前記ジハロゲン化メタンに対する前記有機リチウム化合物の当量比が2.1~10当量である、[2]~[4]のいずれかに記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
[6]下記式(3)で表される重水素化シクロプロパン化合物。
Figure 2022100060000004
(ただし、前記式(3)中、Rは及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基、又は炭素数5以下のハロゲン化アルキル基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基である。)
[7]下記式(4)で表される化合物と、下記式(5)で表される化合物とを反応させて前記式(3)で表される重水素化シクロプロパン化合物を得る、重水素化シクロプロパン化合物の製造方法。
Figure 2022100060000005
(ただし、前記式(5)中、Rは及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基、又は炭素数5以下のハロゲン化アルキル基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基である。)
本発明によれば、ヨウ素原子又は臭素原子を有するモノ重水素化ジハロゲン化メタン、前記モノ重水素化ジハロゲン化メタンを用いて得られる重水素化シクロプロパン化合物、及びそれらの製造方法を提供できる。
本発明のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法に用いるマイクロリアクターの一例を示した概略構成図である。
[モノ重水素化ジハロゲン化メタン]
本発明のモノ重水素化ジハロゲン化メタンは、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2022100060000006
ただし、前記式(1)中、X及びYは、それぞれ独立にヨウ素原子又は臭素原子である。X及びYは、両方がヨウ素原子であってもよく、両方が臭素原子であってもよく、一方がヨウ素原子で、他方が臭素原子であってもよい。本発明のモノ重水素化ジハロゲン化メタンを後述する重水素化シクロプロパン化合物の製造に用いる場合は、X及びYは両方ともヨウ素原子であることが好ましい。
本発明のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法は、下記の工程(a)及び工程(b)を含む。
(a)マイクロリアクターにより、下記式(2)で表されるジハロゲン化メタン(以下、「ジハロゲン化メタンA」とも記す。)と有機リチウム化合物とを反応させ、ジハロゲン化メチルリチウム(以下、「ジハロゲン化メチルリチウムB」とも記す。)を得る工程。
(b)前記マイクロリアクターにおいて、ジハロゲン化メチルリチウムBと、分子中に重水素を含む求電子剤とを反応させてモノ重水素化ジハロゲン化メタンを得る工程。
Figure 2022100060000007
ただし、前記式(2)中、X及びYは、それぞれ独立にヨウ素原子又は臭素原子である。本発明のモノ重水素化ジハロゲン化メタンを後述する重水素化シクロプロパン化合物の製造に用いる場合は、X及びYは両方ともヨウ素原子であることが好ましい。
本発明では、工程(a)及び工程(b)においてマイクロリアクターを用いる。これにより、ヨウ素原子又は臭素原子を有する重水素化ジハロゲン化メタンを製造する場合でも、目的物の生成を妨げる副反応を充分に抑制することができ、目的物である重水素化ジハロゲン化メタンを製造できる。これは、マイクロリアクターを用いることで効率的に反応熱を除熱できるため、反応液中の温度ムラがなくなることが要因であると考えられる。また、マイクロリアクターを用いれば、ジハロゲン化メタン、有機リチウム化合物及び求電子剤を効率的に混合できるため使用する材料に無駄がなく、反応材料を逐次的に添加することでモノ重水素化ジハロゲン化メタンを効率的に製造できる。
(マイクロリアクター)
マイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な微小な流路(反応流路)を備えるリアクターである。マイクロリアクターは、必要に応じて、反応流路に連通する、液体を導入するための導入路を備えていてもよく、反応流路及び導入路以外の構成を含んでもよい。
反応流路は、複数の液体を拡散によって混合させる機能、及び、反応熱を除熱する機能を有する。反応流路内における液体の混合方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、層流による混合、乱流による混合を例示できる。なかでも、より効率的に反応制御や除熱を行える点では、層流による混合(静的混合)が好ましい。
反応流路は、内径が小さい方が分子の拡散距離が短くなるため、短時間で効率良く混合できる。また、反応流路の内径が小さいほど体積に対する表面積の比が大きくなるため、反応熱の除熱等、液体の温度制御が容易になる。一方、反応流路の内径が小さ過ぎると、液体を流す時の圧力損失が増加するため、送液に高耐圧の特別なポンプが必要となるため、製造コストが高くなる。また、送液流量が制限されるため、マイクロミキサーの構造が制限されることがある。
反応流路の内径は、適宜設計でき、50μm~4mmが好ましく、100μm~3mmがより好ましく、250μm~2mmがさらに好ましく、500μm~1mmが特に好ましい。反応流路の内径が前記範囲の下限値以上であれば、圧力損失を低減しやすい。反応流路の内径が前記範囲の上限値以下であれば、流路内の単位体積当たりの表面積が小さくなるため、液の混合及び反応熱の除熱が容易になる。なお、マイクロリアクターが複数の反応流路を有する場合、それぞれの反応流路の内径は互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。
反応流路の長さは、特に限定されず、反応時間に応じて適宜調整できる。
導入路は、各々の液体を反応流路に導入する流路であり、反応流路に連通する側と反対側は、通常、導入する液体を含む容器に繋がっている。
導入路の内径は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。なお、マイクロリアクターが複数の導入路を有する場合、それぞれの導入路の内径は互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。
反応流路及び導入路以外の構成としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択でき、例えば、送液に使用するポンプ、温度調整手段、反応促進手段、センサー、製造された化合物を貯蔵するタンクを例示できる。
ポンプとしては、特に限定されず、工業的に使用され得るものを適宜選択でき、送液時に脈動を生じないものが好ましい。具体的には、例えば、プランジャーポンプ、ギアーポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプを例示できる。
マイクロリアクターの具体例としては、工程(a)及び工程(b)の反応を実施できる反応流路を備えているものであれば、特に制限なく使用でき、例えば、マイクロミキサー(管継手型又は基板型のマイクロミキサー)、分岐したチューブを備えるものを例示できる。
管継手型のマイクロミキサーは、内部に流路(反応流路)を備え、必要に応じて前記流路をチューブに接続する接続手段を備える。前記接続手段における接続方式としては、特に限定されず、公知のチューブ接続方式を適宜選択できる。本発明のマイクロリアクターが管継手型のマイクロミキサーを備える場合、その内部には、反応流路に連通する導入路が形成されていることが好ましい。すなわち、反応流路の上流側が2つの導入路に分岐された構成のマイクロミキサーが好ましい。管継手型のマイクロミキサーとしては、例えばT字型やY字型を用いることができる。
マイクロミキサーの材質としては、特に限定されず、耐熱性、耐圧性、耐溶剤性、加工容易性等の要求に応じて適宜選択でき、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、シリコン、及び、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)等のフッ素樹脂を例示できる。マイクロミキサーとしては、市販品を利用することができ、例えば、島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ)、スウェージロック社製ユニオンティー、三幸精機工業社製T字型マイクロミキサーを例示できる。
マイクロリアクターとしては、マイクロミキサーを単独で使用してもよく、マイクロミキサーの下流にチューブリアクターを連結し、反応流路を延長する構成としてもよい。チューブリアクターをマイクロミキサーの下流に連結することで、反応流路を任意の長さに調節できる。混合された液体の滞留時間(反応時間)は、反応流路の長さに比例する。
チューブリアクターは、マイクロミキサーによって混合された混合液の反応に必要な時間(滞留時間)を精密に制御するためのリアクターである。チューブリアクターとしては、特に制限はなく、例えば、所望する反応に応じて内径、外径、長さを適宜設計したチューブを使用できる。チューブの材質は特に限定されず、例えば、マイクロミキサーの材質として例示したものと同じものを例示できる。チューブリアクターとしては、市販品を利用することができ、例えば、ジーエルサイエンス社製のステンレスチューブ(外径1/16インチ、内径250μm、500μm及び1000μmから選択可能、チューブ長さは適宜調整可能)を例示できる。
マイクロミキサーの内部に形成される流路の内径は、50μm~1000μmが好ましく、100μm~800μmがより好ましく、250μm~500μmがさらに好ましい。
チューブリアクターの内径は、50μm~4mmが好ましく、100μm~2mmがより好ましく、500μm~1mmがさらに好ましい。
本発明に用いるマイクロリアクターとしては、例えば、図1に例示したマイクロリアクター1を例示できる。マイクロリアクター1は、第1導入チューブ10と、第2導入チューブ12と、第3導入チューブ14と、第1チューブリアクター16と、第2チューブリアクター18と、第1マイクロミキサー20と、第2マイクロミキサー22と、を備えている。
第1マイクロミキサー20の上流側に第1導入チューブ10と第2導入チューブ12が接続され、第1マイクロミキサー20の下流側に第1チューブリアクター16が接続されている。第2マイクロミキサー22の上流側には第1チューブリアクター16と第3導入チューブ14が接続され、第2マイクロミキサー22の下流側には第2チューブリアクター18が接続されている。
マイクロリアクター1においては、第1導入チューブ10内の流路と、第1マイクロミキサー20内の第1導入チューブ10と接続された流路の合流部までが、ジハロゲン化メタンAを導入する第1導入路である。第2導入チューブ12内の流路と、第1マイクロミキサー20内の第2導入チューブ12と接続された流路の合流部までが、有機リチウム化合物を導入する第2導入路である。第1マイクロミキサー20内の合流部から下流側の流路と、第1チューブリアクター16内の流路と、第2マイクロミキサー22内の第1チューブリアクター16と接続された流路の合流部までが、ジハロゲン化メタンAと有機リチウム化合物を反応させる第1反応流路である。第3導入チューブ14内の流路と、第2マイクロミキサー22内の第3導入チューブ14と接続された流路の合流部までが、求電子剤を導入する第3導入路である。第2マイクロミキサー22内の合流部から下流側の流路と、第2チューブリアクター18内の流路とが、ジハロゲン化メチルリチウムBと求電子剤を反応させる第2反応流路である。
(工程(a))
ジハロゲン化メタンA及び有機リチウム化合物は、溶媒に溶解した液体の状態でマイクロリアクター1に導入する。
溶媒としては、特に限定されず、ジハロゲン化メタンA及び有機リチウム化合物の種類に応じて適宜選択でき、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒を例示できる。具体的には、炭化水素系溶媒としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、iso-オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体を例示できる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトシキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジグライムを例示できる。これらの中でも、ジハロゲン化メタンAの溶解性、対カチオンに対する溶媒和の強さ、収率の点から、THFが好ましい。導入液に使用する溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
例えばマイクロリアクター1を用いる場合、第1導入チューブ10を通じてジハロゲン化メタンAを含む第1導入液を導入し、第2導入チューブ12を通じて有機リチウム化合物を含む第2導入液を導入し、第1マイクロミキサー20内でそれらを混合する。導入液の導入方法としては、特に限定されず、例えば、シリンジポンプを例示できる。第1導入液に使用する溶媒と第2導入液に使用する溶媒は、同じでもよく、異なっていてもよい。
工程(a)では、第1反応流路内において下記の反応式(6)で表される脱プロトン化反応が起こり、ジハロゲン化メチルリチウムBが生成する。
Figure 2022100060000008
ただし、前記式(6)におけるX及びYは、式(2)中のX及びYと同じである。Rは有機基である。
第1導入液中のジハロゲン化メタンAのモル濃度は、適宜設定でき、0.01M~4.0M(Mはmol/Lを意味する。以下同じ。)が好ましく、0.05M~2.0Mがより好ましく、0.10M~0.50Mが特に好ましい。ジハロゲン化メタンAのモル濃度が前記範囲の下限値以上であれば、単位時間あたりのモノ重水素化ジハロゲン化メタンの生成量が向上する。ジハロゲン化メタンAのモル濃度が前記範囲の上限値以下であれば、反応熱を効率良く除去できる。
第1導入チューブ10から導入する第1導入液の流量は、適宜設定でき、0.10mL/min~50mL/minが好ましく、0.50mL/min~25mL/minがより好ましく、1.0mL/min~10mL/minが特に好ましい。第1導入液の流量が前記範囲の下限値以上であれば、第2導入液と迅速に混合しやすく、収率が向上する。第1導入液の流量が前記範囲の上限値以下であれば、圧力損失を低減でき、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの収率への悪影響が抑制される。
有機リチウム化合物としては、求核性が低く、ジハロゲン化メタンのプロトンを引き抜くのに十分な塩基性を有する範囲であれば特に限定されず、例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウム-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(LTMP)、リチウムヘキサメチルジシラジン(LHMDS)を例示できる。なかでも、LDA、LTMP、LHMDSが好ましい。これらは、求核性が高いリチウム種(ブチルリチウム等)に比べて、リチウム種とジハロゲン化メタン間のハロゲン-リチウム交換反応や、リチウム種によるジハロゲン化メタンのハロゲンへのS2求核置換反応といった副反応を抑制しやすい点で有利である。
第2導入液中の有機リチウム化合物のモル濃度は、特に限定されず、有機フッ素化合物の種類に応じて適宜選択でき、0.001M~3.0Mが好ましく、0.005M~0.75Mがより好ましく、0.01M~0.50Mが特に好ましい。有機リチウム化合物のモル濃度が前記範囲の下限値以上であれば、有機リチウム化合物が溶媒中に含まれる水などによって分解されることを抑制しやすい。有機リチウム化合物のモル濃度が前記範囲の上限値以下であれば、有機リチウム化合物の溶解性に優れる。
第2導入チューブ12から導入する第2導入液の流量は、特に限定されず、適宜設定でき、0.10mL/min~10mL/minが好ましく、0.50mL/min~5.0mL/minがより好ましく、1.0mL/min~3.0mL/minが特に好ましい。第2導入液の流量が前記範囲の下限値以上であれば、第1導入液と迅速に混合しやすく、収率が向上する。第2導入液の流量が前記範囲の上限値以下であれば、圧力損失を低減でき、モノ重水素化ジヨードメタンの収率が向上する。
ジハロゲン化メタンAに対する有機リチウム化合物の当量比は、特に限定されず、1.2当量~10当量が好ましく、2.1当量~10当量がより好ましく、2.1当量~4.2当量がさらに好ましく、2.1当量が特に好ましい。前記当量比が前記範囲の下限値以上であれば、ジハロゲン化メタンAと有機リチウム化合物との反応速度が速く、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの収率が向上する。前記当量比が前記範囲の上限値以下であれば、ジハロゲン化メタンAの過剰なリチオ化によるジ重水素化を抑制しやすく、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの収率が向上する。
マイクロリアクター1内のジハロゲン化メタンAと有機リチウム化合物とを反応させる反応流路(第1反応流路)の温度をT(℃)、反応流路内を流れる混合液(反応液)の滞留時間(反応時間)をt(秒)とする。このとき、モノ重水素化ジヨードメタンの収率が向上する点から、工程(a)は下記式(I)を満たしていることが好ましく、下記式(II)を満たしていることがより好ましく、下記式(III)を満たしていることがさらに好ましい。
-90t-51≦T≦-4.2t+2.4 ・・・式(I)
-16.5t-48.4≦T≦-5.2t+1.6 ・・・式(II)
-6.9t-39.3≦T≦-4.5t-14.5 ・・・式(III)
ヨウ素原子及び臭素原子は反応性が高いことから、ジ重水素化を充分に抑制してモノ重水素化ジヨードメタンの収率を高める点では、第1反応流路の温度Tは、-50℃~-30℃が好ましい。
滞留時間tは、0.1秒~10秒が好ましく、0.2秒~4.0秒がより好ましく、0.5秒~2.0秒が特に好ましい。滞留時間tが前記範囲の下限値以上であれば、反応が充分に進行しやすい。滞留時間tが前記範囲の上限値以下であれば、生成されるジハロゲン化メチルリチウムBの分解を抑制しやすい。
特にジハロゲン化メタンAがジヨードメタンの場合、式(I)を満たすことが好ましく、式(II)を満たすことがより好ましく、式(III)を満たすことがさらに好ましく、反応流路の温度Tが-50℃~-30℃で式(III)を満たすことが特に好ましい。
(工程(b))
求電子剤は、溶媒に溶解した液体の状態でマイクロリアクター1に導入する。例えば第3導入チューブ14を通じて求電子剤を含む第3導入液を導入し、第1チューブリアクター16から供給される混合液と第2マイクロミキサー22内で混合する。
第3導入液に用いる溶媒としては、特に限定されず、求電子剤の種類に応じて適宜選択でき、例えば、工程(a)で例示した溶媒と同じ溶媒を例示できる。第3導入液に使用する溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。第3導入液に使用する溶媒は、第1導入液及び第2導入液に使用する溶媒と同じでもよく、異なっていてもよい。
工程(b)では、第2反応流路内において、工程(a)の反応生成物であるジハロゲン化メチルリチウムBのリチウム原子が重水素原子に置換され、モノ重水素化ジハロゲン化メタンが生成する。
求電子剤としては、分子中に重水素を含み、ジハロゲン化メチルリチウムBに対して求電子作用を有しており、ジハロゲン化メチルリチウムBの交換性プロトンを重水素に置換して重水素化できる求電子剤であれば特に限定されない。求電子剤の具体例としては、例えば、重水素化メタノール等の重水素化アルコール類、重水、重水素化アミン類、重水素化カルボン酸類を例示できる。
第3導入液中の求電子剤のモル濃度は、特に制限はなく、適宜設定でき、0.01M~4.0Mが好ましく、0.05M~2.0Mがより好ましく、0.10M~0.50Mが特に好ましい。求電子剤のモル濃度が前記範囲の下限値以上であれば、単位時間あたりのモノ重水素化ジハロゲン化メタンの生成量が向上する。求電子剤のモル濃度が前記範囲の上限値以下であれば、反応熱を充分に除去しやすい。
第3導入チューブ14から導入する第3導入液の流量は、特に限定されず、適宜設定でき、0.10mL/min~50mL/minが好ましく、0.50mL/min~25mL/minがより好ましく、1.0mL/min~10mL/minが特に好ましい。第3導入液の流量が前記範囲の下限値以上であれば、第1チューブリアクター16から供給される混合液との迅速な混合が容易になる。第3導入液の流量が前記範囲の上限値以下であれば、圧力損失を低減でき、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの収率への悪影響を抑制しやすい。
ジハロゲン化メタンAに対する求電子剤の当量比は、特に限定されず、適宜設定でき、1.2当量~2.3当量が好ましく、1.4当量が特に好ましい。前記当量比が前記範囲内であれば、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの収率が向上する。
モノ重水素化ジヨードメタンの収率が向上する点では、ジハロゲン化メチルリチウムBを重水素化する反応流路(第2反応流路)の温度は、-50℃~-30℃が好ましい。
第2反応流路内の混合液(反応液)の滞留時間は、0.1秒以上が好ましく、1秒以上がより好ましく、2秒以上が特に好ましい。前記滞留時間が前記範囲の下限値以上であれば、反応が充分に進行しやすい。前記滞留時間の上限値については特に限定されず、適宜設定できるが、滞留時間が10秒以上となるような長い反応流路では、圧力損失が増加し閉塞が起こりやすくなるため好ましくない。
[重水素化シクロプロパン化合物]
本発明の重水素化シクロプロパン化合物は、下記式(3)で表される重水素化シクロプロパン化合物(以下、「重水素化シクロプロパン化合物C」とも記す。)である。
Figure 2022100060000009
ただし、前記式(3)中、Rは及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基、又は炭素数5以下のハロゲン化アルキル基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基である。
は及びRは、同じであってもよく、異なっていてもよい。Rは及びRは、いずれか一つ以上が炭素数5以下でヘテロ原子もしくはハロゲン原子を有するアルキル基であることが好ましく、いずれか一つ以上が炭素数1のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1のハロゲン化アルキル基であることが特に好ましい。
は及びRの1価の有機基としては、特に限定されず、例えば、アルキル基、アリール基を例示できる。Rは及びRのアルキル基及びアリール基は、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
は及びRは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
本発明の重水素化シクロプロパン化合物の製造方法は、下記式(4)で表される化合物と(以下、「化合物D」とも記す。)、下記式(5)で表される化合物(以下、「化合物E」とも記す。)とを反応させて重水素化シクロプロパン化合物Cを得る方法である。前記した本発明のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法によって化合物Dを製造し、化合物Dと化合物Eとを反応させることで重水素化シクロプロパン化合物Cが得られる。
Figure 2022100060000010
ただし、前記式(5)中のR~Rは、前記式(3)中のR~Rと同じである。
化合物Dと化合物Eとを反応させることで、下記の反応式(7)で表される反応によって重水素化シクロプロパン化合物Cが生成する。
Figure 2022100060000011
反応式(7)で表される反応は、一般にSimons-Smith反応と呼ばれる。反応式(7)では、まず化合物Dと金属反応剤が反応して有機金属中間体が生成される(反応式(7)の(i))。さらに前記有機金属中間体と化合物Eとの協奏的な付加及びハロゲン脱離が起こり、モノ重水素化シクロプロパン化合物Cが生成する(反応式(7)の(ii))。
金属反応剤としては、特に限定されず、Simons-Smith反応に一般に使用されるものを使用できる。具体的には、例えば、ジエチル亜鉛(ZnEt)等のアルキル亜鉛、亜鉛-銅の合金、亜鉛-銀の合金、トリメチルアルミニウム(AlMe)等のアルキルアルミニウム、金属サマリウムを例示できる。反応に使用する金属反応剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
反応式(7)で表される反応には、ルイス酸を添加してもよい。これにより、Simons-Smith反応が促進される。ルイス酸としては、特に限定されず、Simons-Smith反応に一般に使用されるものを使用できる。具体的には、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリフルオロボラン-エーテル錯体(BF-EtO)を例示できる。反応に使用するルイス酸は、1種でもよく、2種以上でもよい。
反応式(7)で表される反応には、溶媒を使用してもよい。反応式(7)で表される反応に使用する溶媒としては、特に限定されず、一般的な有機溶媒を使用できる。具体的には、例えば、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、ヘキサン、トルエン等の無極性溶媒を例示できる。
化合物Dの使用量は、化合物Eに対して、化学量論量以上が好ましく、2.0~4.0当量がより好ましい。化合物Dの使用量が前記範囲内であれば、反応を充分に進行させつつ、コストを低減できる。
金属反応剤の使用量は、化合物Eに対して、化学量論量以上が好ましく、2.0~4.0当量がより好ましい。金属反応剤の使用量が前記範囲内であれば、反応を充分に進行させつつ、コストを低減できる。
ルイス酸を添加する場合、ルイス酸の使用量は、化合物Eに対して、化学量論量以上が好ましく、1.5~2.0当量がより好ましい。ルイス酸の使用量が前記範囲内であれば、反応を充分に進行させつつ、コストを低減できる。
反応式(7)の(i)の反応条件は、特に限定されず、(i)の反応を確実に進行させつつ、生成した有機金属中間体の分解を抑制できる範囲で適宜設定すればよく、例えば反応温度を0℃、反応時間を10分~6時間程度とすることができる。反応式(7)の(ii)の反応条件は、特に限定されず、適宜設定でき、例えば反応温度を0℃~室温(25℃)、反応時間を40分~6時間程度とすることができる。
以上説明したように、本発明では、マイクロリアクターを用いてモノ重水素化ジハロゲン化メタンを製造する。これにより、ヨウ素原子又は臭素原子を有するジハロゲン化メタンと有機リチウム化合物との反応を精密に制御でき、副反応を抑制できるため、ヨウ素原子又は臭素原子を有するモノ重水素化ジハロゲン化メタンを効率良く製造できる。
また、シクロプロパン環を有する化合物は、生理活性物質及び医薬農薬に数多く存在する。H-D交換反応等の従来法では、重水素化の位置選択性の制御は難しく、位置選択的にモノ重水素化されたシクロプロパン化合物を得ることは困難であった。しかし、本発明では、本発明の製造方法で製造したモノ重水素化ジハロゲン化メタンを用いることで、医薬品における重要骨格であるシクロプロパン環に対して位置選択的に重水素が導入された有用な重水素化シクロプロパン化合物が得られる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[例1]
図1に例示したマイクロリアクター1を用いてモノ重水素化ジヨードメタンを製造した。
第1マイクロミキサー20及び第2マイクロミキサー22としては、管継手型であるT字型マイクロミキサー(三幸精機工業社製、内径250μm)を使用した。第1マイクロミキサー20内の流路は、第1導入路の一部、第2導入路の一部、及び第1反応流路の一部からなり、それらの内径は同一である。第2マイクロミキサー22内の流路は、第1反応流路の一部、第3導入路の一部、及び第2反応流路の一部からなり、それらの内径は同一である。第1導入チューブ10、第2導入チューブ12及び第3導入チューブ14としては、ジーエルサイエンス社製のステンレスチューブ(外径1/16インチ、内径1000μm)を長さ100cmとして使用した。第1チューブリアクター16及び第2チューブリアクター18としては、ジーエルサイエンス社製のステンレスチューブ(外径1/16インチ)を使用した。第2チューブリアクター18の長さは50cmとした。各導入チューブへの送液用のポンプとしては、ハーバード社製シリンジポンプModel 11 Plusを使用した。
ジヨードメタン(東京化成工業社製)をTHFで希釈して濃度が0.1Mである第1導入液を調製した。LDA(関東化学社製)をTHFで希釈して濃度が0.42Mである第2導入液を調製した。メタノール-D4(メルク株式会社製、重水素化率99.9atom%D)をTHFで希釈して濃度が0.3Mである第3導入液を調製した。
第1導入チューブ10を通じて第1導入液を導入し、第2導入チューブ12を通じて第2導入液を導入し、第1マイクロミキサー20で第1導入液と第2導入液を混合して第1チューブリアクター16内で連続的な反応を行わせた。さらに、第3導入チューブ14を通じて第3導入液を導入し、第1マイクロミキサー20で第1チューブリアクター16から供給される混合液と混合し、第2チューブリアクター18内で反応させてモノ重水素化ジヨードメタンを得た。各導入液の導入は、各々ガスタイトシリンジに吸い上げた後、ハーバード社製シリンジポンプを用いて行った。第2チューブリアクター18から得られる反応液は、反応が安定化するまでの数十秒間は廃棄し、その後にサンプリング管に30秒間採取した。
第1導入液の流量は4.0mL/min、第2導入液の流量は2.0mL/min、第3導入液の流量は4.0mL/minとした。第1反応流路の温度Tと第1反応流路の混合液の滞留時間tは表1に示すとおりに調節した。第1反応流路の温度T(第2反応流路の温度も同じ)は、マイクロリアクター1全体を恒温槽に浸漬することで調節した。滞留時間tは、第1チューブリアクター16の内径及び長さを表1のように変更することによって調節した。
ガスクロマトグラフィー(GC-2014、島津製作所社製)を用いた内部標準法により、採取した反応液中のジヨードメタン類(ジヨードメタン、モノ重水素化ジヨードメタン及びジ重水素化ジヨードメタンの合計)の物質量を測定し、反応に使用したジヨードメタンの物質量に対するジヨードメタン類の物質量の比率として回収率を求めた。
また、質量分析計によって、ジヨードメタン、モノ重水素化ジヨードメタン及びジ重水素化ジヨードメタンのそれぞれ比率を測定し、モノ重水素化ジヨードメタンの選択率を求めた。測定にはGCMS-QP2010 SE(島津製作所社製)を用い、ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化法:Electrospray ionization)での測定におけるピーク強度から、特開2006-8666号公報の実施例2と同様の計算方法で選択率を求めた。
モノ重水素化ジヨードメタンの収率は、回収率とモノ重水素化ジヨードメタンの選択率から、下記式(IV)に従って算出した。
(モノ重水素化ジヨードメタンの収率)=(回収率)×(モノ重水素化ジヨードメタンの選択率) ・・・(IV)
各条件の反応条件及び測定結果を表1に示す。
Figure 2022100060000012
表1に示すように、マイクロリアクターを用いることでモノ重水素化ジヨードメタンが得られた。特に、第1反応流路の温度Tが-40℃、滞留時間tが0.98秒の条件で94%という高い収率でモノ重水素化ジヨードメタンが得られた。これは、温度Tと滞留時間tが適切な範囲に制御されることで、温度Tが高く滞留時間tが長い条件でジヨードメタン類が分解することや、温度Tが低く滞留時間tが短い条件でジヨードメタンのリチオ化が不充分となって重水素化反応が充分に進行しないといった不具合が抑制されることが要因であると考えられる。なお、いずれの条件でもジ重水素化ジヨードメタンの生成は見られなかった。
[例2(比較例)]
例1と同様の反応を、下記の手順(x)及び手順(y)に従ってバッチ型反応器(フラスコ)を用いて行った。
手順(x):50mLのフラスコに入ったジヨードメタンとメタノール-D4のTHF混合溶液(ジヨードメタン濃度:0.10M、メタノール-D4濃度:0.30M、4.0mL)に、LDAのTHF溶液(0.42M、2.0mL)を温度T’℃で添加した。反応混合物を10分間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。
手順(y):50mLのフラスコに入ったジヨードメタンのTHF溶液(ジヨードメタン0.10M、4.0mL)に、LDAのTHF溶液(0.42M、2.0mL)を温度T’℃で添加した。反応混合物をt’分間撹拌した後、直ちにメタノール-D4のTHF溶液(0.30M、4.0mL)を添加した。反応混合物を10分間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。
例1と同様の方法で、モノ重水素化ジヨードメタンとジ重水素化ジヨードメタンの選択率を算出した。反応条件及び選択率の測定結果を表2に示す。
Figure 2022100060000013
表2に示すように、バッチ型反応器ではジ重水素化ジヨードメタンの生成を充分に抑制しながら高い選択率でモノ重水素化ジヨードメタンを得ることができなかった。
[例3]
下記の反応装置及び反応試薬を使用し、マイクロ波照射による触媒的水素-重水素(H-D)交換反応によってジヨードメタンを重水素化した。
マイクロ波反応装置:Initiator+(Biotage製)
ジヨードメタン(東京化成工業社製)
プラチナ-活性アルミナ(5質量%、メルク社製)
重水(重水素化率99.9 atom%D、メルク社製)
具体的には、ジヨードメタン0.20g(2.48mmol)、及びプラチナ-活性アルミナ0.484gに表3に示す量の重水を加え、200℃で180分間マイクロ波照射した。放冷後、ジエチルエーテルで抽出し、例1と同様の方法で、モノ重水素化ジヨードメタンとジ重水素化ジヨードメタンの選択率を算出した。反応条件及び選択率の測定結果を表3に示す。
Figure 2022100060000014
表3に示すように、マイクロ波照射によるH-D交換反応ではジ重水素化ジヨードメタンの生成を制御できず、モノ重水素化ジヨードメタンは得られなかった。
[例4]
図1に例示したマイクロリアクター1を用い、以下に示す条件以外は例1と同様にしてモノ重水素化ジヨードメタンを製造し、例1と同様の方法で、モノ重水素化ジヨードメタンとジ重水素化ジヨードメタンの選択率を算出した。第2導入液の流量を1~4mL/minの範囲で変化させ、ジヨードメタンに対するLDA当量を表4に示すとおりに調節した。反応温度は-40℃、第1チューブリアクター16の内径は1000μm、長さは3.5cmとした。反応条件及び選択率の測定結果を表4に示す。
Figure 2022100060000015
表4に示すように、ジヨードメタンに対するLDA当量が2.1当量以上では、ほぼ化学当量通りである1.1当量の条件に比べて、モノ重水素化ジヨードメタンの選択率が高かった。このようにLDA当量が2.1当量以上でも、過剰なリチオ化でジ重水素化体が多く生成することによってモノ重水素化体の選択率が下がることはなく、高い選択率でモノ重水素化ジヨードメタンが得られた。これは、LDA当量が化学当量を上回る場合でも、副反応が起こるよりも速くジヨードメチルリチウム種が発生し、モノ重水素化反応が速やかに進行しているためであると考えられる。
[例5]
ジハロゲン化メタンAとしてブロモヨードメタン(東京化成工業社製)を用い、図1に例示したマイクロリアクター1を用いて、以下に示す条件以外は例1と同様にしてモノ重水素化ブロモヨードメタンを製造した。ブロモヨードメタンを濃度0.1MとなるようにTHFに溶解して第1導入液とした。反応温度は-40℃、第1チューブリアクター16の内径は1000μm、長さは12.5cmとした。その結果、モノ重水素化ブロモヨードメタンの収率は94%であった。
[例6]
下記の反応式(8)で表されるSimons-Smith反応によって重水素化シクロプロパン化合物を製造した。
Figure 2022100060000016
具体的には、シュレンク管でジエチル亜鉛0.4mL(東京化成工業社製、0.4mmol)とTFA46mg(東京化成工業社製、0.4mmol)をジクロロメタン溶媒4mLに溶解し、シュレンク管を氷浴に浸けながら撹拌した。次いで、例1で製造したモノ重水素化ジヨードメタン108mg(0.4mmol、モノ重水素化体比率94%)を添加し、10分間撹拌した。さらにシンナミルアルコール27mg(東京化成工業社製、0.2mmol)を添加し、氷浴を外して室温まで昇温させながら40分間反応させた。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてクエンチし、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去した後、カラムクロマトグラフィーで精製して目的の重水素化シクロプロパン化合物を30mg得た。例1のモノ重水素化ジヨードメタンの選択率の測定と同様の方法で重水素化シクロプロパン化合物の選択率を測定したところ、94%であった。
[例7]
下記の反応式(9)で表されるSimons-Smith反応によって重水素化シクロプロパン化合物を製造した。
Figure 2022100060000017
化合物Eをシンナミルアルコールから4-アリル-1,2-ジメトキシベンゼン36mg(東京化成工業社製、0.2mmol)に変更した以外は、例6と同様の方法で39mgの重水素化シクロプロパン化合物を得た。例1のモノ重水素化ジヨードメタンの選択率の測定と同様の方法で重水素化シクロプロパン化合物の選択率を測定したところ、94%であった。
1…マイクロリアクター、10…第1導入チューブ、12…第2導入チューブ、14…第3導入チューブ、16…第1チューブリアクター、18…第2チューブリアクター、20…第1マイクロミキサー、22…第2マイクロミキサー。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表されるモノ重水素化ジハロゲン化メタン。
    Figure 2022100060000018
    (ただし、前記式(1)中、X及びYは、それぞれ独立にヨウ素原子又は臭素原子である。)
  2. 請求項1に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンを製造する方法であって、
    マイクロリアクターにより、下記式(2)で表されるジハロゲン化メタンと有機リチウム化合物とを反応させ、ジハロゲン化メチルリチウムを得る工程と、
    前記マイクロリアクターにおいて、前記ジハロゲン化メチルリチウムと、分子中に重水素を含む求電子剤とを反応させてモノ重水素化ジハロゲン化メタンを得る工程と、
    を含む、モノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
    Figure 2022100060000019
    (ただし、前記式(2)中、X及びYは、それぞれ独立にヨウ素原子又は臭素原子である。)
  3. 前記ジハロゲン化メタンがジヨードメタンであり、
    マイクロリアクター内の前記ジヨードメタンと前記有機リチウム化合物とを反応させる流路の温度T(℃)と滞留時間t(秒)とが、下記式(III)を満たす、請求項2に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
    -6.9t-39.3≦T≦-4.5t-14.5 ・・・(III)
  4. 前記温度Tが-50℃~-30℃である、請求項3に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
  5. 前記ジハロゲン化メタンに対する前記有機リチウム化合物の当量比が2.1~10当量である、請求項2~4のいずれか一項に記載のモノ重水素化ジハロゲン化メタンの製造方法。
  6. 下記式(3)で表される重水素化シクロプロパン化合物。
    Figure 2022100060000020
    (ただし、前記式(3)中、Rは及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基、又は炭素数5以下のハロゲン化アルキル基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基である。)
  7. 下記式(4)で表される化合物と、下記式(5)で表される化合物とを反応させて下記式(3)で表される重水素化シクロプロパン化合物を得る、重水素化シクロプロパン化合物の製造方法。
    Figure 2022100060000021
    (ただし、前記式(3)及び前記式(5)中、Rは及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数5以下のヒドロキシアルキル基、又は炭素数5以下のハロゲン化アルキル基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の有機基である。)
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