JP2022096818A - 液体吐出ヘッドとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は液体吐出ヘッドとその製造方法に関する。
一般的な液体吐出装置の液体吐出ヘッドは、吐出口およびエネルギー発生素子が設けられている素子基板を有し、エネルギー発生素子に駆動用の電気信号を供給するために、電気配線基板が素子基板に電気的に接続されている。素子基板と電気配線基板とは、通常はフライングリードやボンディングワイヤーを用いて接続され、この電気接続部が、吐出される液体(例えばインク)に触れないように絶縁保護される。一般的な絶縁保護方法では、電気接続部の上方から液状の封止剤を塗布して硬化させ、電気接続部を封止剤によって封止する。さらに、フライングリードやボンディングワイヤー等の下方と上方とに封止剤が万遍なく十分に行き渡るようにするために、低粘度の封止剤からなる下層と高粘度の封止剤からなる上層との2層構造の封止剤で電気接続部を封止する場合がある。
特許文献1に記載されている発明では、低粘度の封止剤が電気接続部から周囲に拡がって電気接続部の封止が不十分になることを防ぐために、素子基板と、素子基板が搭載される支持部材とにおける封止剤の塗布位置を規定している。
多数の吐出口が高密度に並べて配置された長尺の液体吐出ヘッドでは、複数の素子基板が密接に並べて配置される。仮に、素子基板が搭載されている支持部材が、平面的に、すなわち板面に直交する方向に見て、素子基板の外周部よりも外側にはみ出していると、支持部材のはみ出し部分の影響で、隣り合う素子基板間の間隔が大きくなり、吐出口の高密度化の妨げになる。それを回避するために、平面的に見て素子基板の一部が支持部材の外周部よりも外側にせり出すように素子基板の寸法および位置が設定される場合がある。その場合、素子基板の裏面、すなわち支持部材側の面の一部が、支持部材に覆われずに露出する。しかし、露出している素子基板の支持部材側の面に液体(例えばインク)が接触すると、その面に存在する構成部材の膨潤変形や溶出などを引き起こすおそれがある。
特許文献1に記載の発明によると、素子基板と電気配線基板との電気接続部を良好に保護することができるが、素子基板の支持部材側の面が露出している場合にその露出している部分を十分に保護することが求められる。
そこで、本発明の目的は、複数の吐出口が高密度に並べて配置されており、素子基板と電気配線基板との電気接続部が封止されて保護されており、かつ素子基板の支持部材側の面も保護されている液体吐出ヘッドとその製造方法を提供することにある。
本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出する素子基板と、前記素子基板に電気的に接続される電気配線基板と、前記電気配線基板の一部および前記素子基板を支持する支持部材と、前記素子基板と前記電気配線基板との電気接続部を封止する封止剤と、硬化前の前記封止剤の一部を前記素子基板の前記支持部材側の面へ導く封止剤流通溝と、を含むことを特徴とする。
本発明によると、複数の吐出口が高密度に並べて配置されており、素子基板と電気配線基板との電気接続部が封止されて保護されており、かつ素子基板の支持部材側の面も保護されている液体吐出ヘッドとその製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの基本構成を示す平面図である。図2は、図1に示す液体吐出ヘッドを構成する1つの素子ユニット1の平面図である。図3は図2のA-A線断面図、図4は図2のB-B線断面図である。図5(a)は図2に示す素子ユニット1の支持部材201および支持部材203の平面図、図5(b)は図5(a)のC部分の拡大図である。図6(a)はこの素子ユニット1の側面図、図6(b)は図6(a)のD部分の拡大図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、多数の素子基板101が並べて配置された長尺のヘッドである。各素子基板101にはそれぞれ電気配線基板301が接続されている。各素子基板101と、その素子基板101に電気的に接続される電気配線基板301の一端部とは、支持部材201上に配置されて支持されている。図2に示すように、1つの支持部材201と、その支持部材201上に搭載された1つの素子基板101と、その素子基板101に接続されている2つの電気配線基板301とが1つのユニットを構成している。便宜上、このユニットを素子ユニット1と称する。
図1は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの基本構成を示す平面図である。図2は、図1に示す液体吐出ヘッドを構成する1つの素子ユニット1の平面図である。図3は図2のA-A線断面図、図4は図2のB-B線断面図である。図5(a)は図2に示す素子ユニット1の支持部材201および支持部材203の平面図、図5(b)は図5(a)のC部分の拡大図である。図6(a)はこの素子ユニット1の側面図、図6(b)は図6(a)のD部分の拡大図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、多数の素子基板101が並べて配置された長尺のヘッドである。各素子基板101にはそれぞれ電気配線基板301が接続されている。各素子基板101と、その素子基板101に電気的に接続される電気配線基板301の一端部とは、支持部材201上に配置されて支持されている。図2に示すように、1つの支持部材201と、その支持部材201上に搭載された1つの素子基板101と、その素子基板101に接続されている2つの電気配線基板301とが1つのユニットを構成している。便宜上、このユニットを素子ユニット1と称する。
素子基板101は、液体を吐出する吐出口102(図2参照)と、吐出口102に連通する流路105(図4参照)と、支持部材201側の面に位置して流路105をシールする膜(樹脂膜)104(図4参照)と、を有する。さらに、流路105の一部(例えば圧力室)の内部に、各吐出口102にそれぞれ対応して設けられて吐出口102から液体を吐出するためのエネルギー(例えば熱エネルギー)を発生するエネルギー発生素子103(図2参照)が配置されている。
本実施形態の素子基板101は、列をなすように並べて配置された複数の素子基板101に亘って高密度に吐出口102を配置するために、互いに隣り合う辺が同様に傾斜した直線である四角形の平面形状を有している。すなわち、素子基板101の平面形状は、鈍角の内角と鋭角の内角とを有する四角形であり、好ましくは平行四辺形である。支持部材201には、液体吐出装置本体の容器(図示せず)から流入した液体を素子基板101に供給するための液体供給路202(図5参照)が設けられている。
電気配線基板301は、素子基板101と図示しない液体吐出装置本体とを電気的に接続させるための部材である。電気配線基板301と液体吐出装置本体との電気的な接続は、コンタクトピンやコネクター302等を用いて行われることが一般的である。図3,4に示すように、素子基板101と電気配線基板301は支持部材201に接着剤401によって接合されている。電気配線基板301は、他の支持部材203によっても支持されている。
図5に示す支持部材201の、前述した通り鈍角の内角と鋭角の内角とを有する四角形(好ましくは平行四辺形)の平面形状を有する素子基板101を支持する部分が、素子基板101と相似の平面形状を有している。ただし、支持部材201の一部が吐出口の高密度配置の妨げにならないように、支持部材201の素子基板101を支持する部分は、素子基板101の配列方向において、素子基板101よりも一回り小さい。従って、素子基板101の一部(素子基板101の配列方向の両端部)は、支持部材201の外周縁部よりも外側にせり出している。支持部材201の、素子基板101を支持する面には、素子基板101の平面形状の鈍角の部分に対応する位置に溝701が設けられている。この溝701は封止剤流通溝である。
図3に示すように、電気配線基板301の一端部であって支持部材201上に位置する部分には、端子303が設けられている。素子基板101の、電気配線基板301の一端部に近接して対向する部分には、端子106が設けられている。この電気配線基板301の端子303と素子基板101の端子106とが、ボンディングワイヤー501によって電気的に接続されている。そして、ボンディングワイヤー501を含む、素子基板101と電気配線基板301との電気接続部が、2層の封止剤、すなわち下層の低粘度の封止剤601と上層の高粘度の封止剤602によって封止されている。なお、ボンディングワイヤー501に代えて、図示しないフライングリード等を用いてもよい。その場合にも前述したのと同様に、フライングリードの下方を低粘度の封止剤601で封止し、フライングリードの上方を高粘度の封止剤602で封止する。ただし、ボンディングワイヤー501またはフライングリードの上方と下方での封止剤601,602の使い分けは厳密なものではない。すなわち、低粘度の封止剤601の一部がボンディングワイヤー501またはフライングリードの上方に位置していてもよく、高粘度の封止剤602の一部がボンディングワイヤー501またはフライングリードの下方に位置していてもよい。
図4に示すように、本実施形態においては、平面的に見て、すなわち素子基板101および支持部材201の板面に直交する方向(図4の上下方向)に見て、素子基板101の一部が支持部材201の外周縁部の外側にせり出している。素子基板101の裏面(支持部材201側の面)には、種々の構成部材が設けられているとともに、少なくとも一部が樹脂膜104で覆われている。素子基板101のせり出している部分の支持部材201側の面は、樹脂膜104を含めて、低粘度の封止剤601によって覆われて保護されている。支持部材201の外周縁部の少なくとも一部の素子基板側の面に、面取りが施されていることが好ましい。この面取り部204によって、素子基板101のせり出している部分の支持部材201側の面に低粘度の封止剤601が保持され易い。
本実施形態において、低粘度の封止剤601によって、ボンディングワイヤー501の下方の封止と、素子基板101の支持部材201側の面の被覆とを行うための構成について説明する。本実施形態では、支持部材201の、素子基板101と電気配線基板301との電気接続部の近傍であって、素子基板101の平面形状の鈍角の部分に対応する位置に、封止剤流通溝701が設けられている。また、素子基板101と支持部材201との間に介在する接着剤401が厚く、素子基板101と支持部材201との間に段差部が設けられている。
本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法について、図7のフローチャートを参照して説明する。吐出口102とエネルギー発生素子103と端子106とが設けられた素子基板101と、コネクター302と端子303とが設けられた2つの電気配線基板301の各端部を支持部材上に配置し、接着剤401によって固定する(ステップS1)。そして、ボンディングワイヤー501の一端部を電気配線基板301の端子303に固定し、他端部を素子基板101の端子106に固定して、ボンディングワイヤー501によって電気配線基板301と素子基板101とを電気的に接続する(ステップS2)。例えば、外径30μmのボンディングワイヤー501を100μmのピッチで配置し、隣り合うボンディングワイヤー同士の間に70μmの隙間を設ける。ボンディングワイヤー501の上方から液状の樹脂を塗布する。本実施形態では、封止剤として、硬化剤を混合する2液混合硬化、加熱による熱硬化、紫外線照射によるUV硬化等の方法により硬化可能なエポキシ樹脂、アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂等を用いる。好ましくは、熱硬化型のエポキシ樹脂を用いる。
本実施形態では2種類の封止剤601,602を用い、先に低粘度の封止剤601を塗布する(ステップS3)。封止剤601は、ボンディングワイヤー501間の隙間を通過してボンディングワイヤー501の下方に位置する。この封止剤601は、ボンディングワイヤー501の上方に留まらずにボンディングワイヤー501間の隙間を円滑に通過するように、液体の状態で0.1~100Pa・s程度の粘度、より好ましくは1~80Pa・s程度の粘度を有している。その結果、低粘度の封止剤601をボンディングワイヤー501の下方に保持する(ステップS4)。また、低粘度の封止剤601の一部を、素子基板101の、支持部材201の外周縁部の外側にせり出している部分の、支持部材201側の面に導いて、その面を被覆する(ステップS5)。このステップS5の詳細については後述する。その後に、ボンディングワイヤー501の上方から高粘度の封止剤602を塗布する(ステップS6)。封止剤602は低粘度の封止剤601と同様な樹脂であるが、ボンディングワイヤー501の下方に流れていかずボンディングワイヤー501の上方に留まるように、100~800Pa・s程度、より好ましくは100~400Pa・s程度の粘度を有している。こうして、ボンディングワイヤー501の下方と上方とにそれぞれ低粘度の封止剤601と高粘度の封止剤602とを付与し、支持部材201の外周縁部の外側にせり出している部分の、支持部材201側の面を低粘度の封止剤601で被覆する。その後に、各所の封止剤601,602を一括して熱硬化させる(ステップS7)。これにより、2層の封止剤によってボンディングワイヤー501を含む電気接続部を封止して絶縁保護する。
素子基板101の支持部材201側の面を低粘度の封止剤601で被覆するステップS5について改めて説明する。前述して、かつ図4に示すように、素子基板101の一部は、平面的に(素子基板101の板面に直交する方向に)見て、支持部材201の外周縁部から外側にせり出している。素子基板101の裏面(支持部材201側の面)の少なくとも一部には、流路105を保護する樹脂膜104が形成されている。素子基板101が支持部材201の外周縁部から外側にせり出している部分においては、素子基板101の支持部材201側の面の樹脂膜104が露出している。この露出している樹脂膜104が外力などの影響で剥離したり変形したりすると、液体の漏れ等を生じるおそれがある。また、素子基板101の支持部材201側の面に存在する各種の構成部材が、吐出する液体に接することなどにより変性するおそれがある。そこで、本実施形態では、素子基板101のせり出している部分の支持部材201側の面を、樹脂膜104を含めて、低粘度の封止剤601で被覆して保護している(ステップS5)。そして、低粘度の封止剤601と高粘度の封止剤602を一括して熱硬化させる(ステップS7)。
素子基板101の支持部材201側の面の構成部材および樹脂膜104を被覆する層は、吐出する液体(例えばインク)などに対する十分な耐性を持っていることが望ましい。そのような観点から、前述したようにボンディングワイヤー501を含む電気接続部を封止する封止剤が、素子基板101のせり出している部分の支持部材201側の面を保護するのに適している。特に、ボンディングワイヤー501の下方に位置する低粘度の封止剤601を、素子基板101のせり出している部分の支持部材201側の面に導いてその面を被覆すると、低いコストかつ高い作業効率で良好な保護ができる。
本実施形態において、ボンディングワイヤー501の下方に位置する低粘度の封止剤601によって、素子基板101の支持部材201側の面を被覆するための構成について説明する。本実施形態では、支持部材201の、素子基板101と電気配線基板301との電気接続部の近傍であって、素子基板101の平面形状の鈍角の部分に、封止剤流通溝701が設けられている。また、素子基板101と支持部材201との間に介在する接着剤401の厚さにより、素子基板101と支持部材201との間に段差部が設けられている。
このような構成において、0.1~100Pa・s程度、好ましくは1~80Pa・sという低粘度の硬化前の封止剤601が、ボンディングワイヤー501の上方から塗布されると、ボンディングワイヤー501間の隙間を通過して素子基板101に到達する。この低粘度の封止剤601は流動性が良いため、大量に供給されると、素子基板101の側面を伝わって流れようとする。本実施形態では支持部材201に封止剤流通溝701が設けられているため、硬化前の低粘度の封止剤601が素子基板101の側面から封止剤流通溝701内に向かって流れる。その結果、封止剤601が素子基板101の支持部材201側の面に回り込む。供給される封止剤601の量が多いと、封止剤流通溝701内に収まりきれず、さらに素子基板101と支持部材201とが接着剤401で接合されている部分には進入し難いため、素子基板101の支持部材201側の面を覆うように拡がる。特に、本実施形態では素子基板101と支持部材201との間に段差部が設けられているため、封止剤601は表面張力によって素子基板101の支持部材201側の面に容易に回り込む。その後に、封止剤601,602が付与された素子ユニット1を加熱して、各所の封止剤601,602を一括して硬化させる。
こうして、ボンディングワイヤー501を含む電気接続部を2層の封止剤601,602によって良好に封止し、かつ封止剤601によって、素子基板101の、支持部材201の外周縁部の外側にせり出している部分の支持部材201側の面を覆う。電気接続部のボンディングワイヤー501の下方は低粘度の封止剤601によって空隙が生じないように十分に封止する。そして、ボンディングワイヤー501の上方には高粘度の封止剤602を保持して十分に封止する。それにより、ボンディングワイヤー501を含む電気接続部を、吐出する液体に触れないように絶縁保護することができる。さらに、ボンディングワイヤー501の下方に付与された封止剤601の一部を用いて、素子基板101の、支持部材201の外周縁部の外側にせり出している部分の支持部材201側の面を覆っている。それにより、その面にある構成材料や樹脂膜104を保護することができる。この構成によると、素子基板101の、支持部材201の外周縁部の外側にせり出している部分の支持部材201側の面を覆うために、素子基板101と電気配線基板301との電気接続部を封止する封止剤601,602以外の裏面封止剤を用いる必要がない。
以上説明した構成の液体吐出ヘッドにおいて、ボンディングワイヤー501の下方に位置する硬化前の低粘度の封止剤601を、素子基板101のせり出している部分の支持部材側の面に導く封止剤流通溝701について説明する。図5に示す実施形態では、支持部材201の、素子基板101と電気配線基板301との電気接続部の近傍であって、素子基板101の平面形状の鈍角の部分の位置に、封止剤流通溝701が設けられている。図6にはこの素子ユニット1の側面図が示されている。図6に示すように、素子基板101の配列方向に直交する方向(図6の上下方向)においては、支持部材201が素子基板101の外周縁部よりも外側にはみ出している。この方向において、封止剤流通溝701は、支持部材201の、素子基板101の外側の位置から素子基板の一部の下方の位置まで延びている。すなわち、封止剤流通溝701は、素子基板101の外側から素子基板101の下側に潜り込むように設けられている。前述したように、この封止剤流通溝701が形成された支持部材201に接合された素子基板101と電気配線基板301との電気接続部のボンディングワイヤー501の下方に、低粘度の封止剤601が塗布される。塗布された低粘度の封止剤601は、ボンディングワイヤー501の下方の空間を満たし、表面張力によって、その空間から素子基板101の側面を伝わり、さらに素子基板101と支持部材201との接合面を流動する。素子基板101と支持部材201との接合面を流動する封止剤601は、封止剤流通溝701により素子基板101の支持部材201側の面に導かれる。素子基板101の支持部材201側の面において、封止剤601は素子基板101と電気配線基板301との間には進入し難いが、素子基板101が支持部材201の外周縁部の外側にせり出して支持部材201に覆われずに露出している部分に拡がる。こうして、封止剤601が、素子基板101の、支持部材201の外周縁部の外側の部分の支持部材201側の面を被覆する。その後に熱処理を行って封止剤601,602を硬化させ、信頼性の高い液体記録ヘッドを得ることができる。必要に応じて、封止剤601,602を硬化させた後に外観検査を行ってもよい。
封止剤流通溝701が存在しない場合には、単に封止剤601の塗布量を増やすことだけで素子基板101の支持部材側の面まで流動させることも考えられる。しかし、塗布された大量の封止剤601は、例えば電気配線基板301の表面にも流動してしまい、素子基板101の支持部材側の面を十分に被覆できない可能性がある。これに対し、本実施形態では、支持部材201に封止剤流通溝701が形成されているため、ボンディングワイヤー501の下方の硬化前の封止剤601が、素子基板101の支持部材201側の面に容易かつ円滑に導かれる。この封止剤601は低粘度であるため、ボンディングワイヤー501の下方を封止し易く、かつ素子基板101の支持部材201側の面に導かれ易い。
さらに、本実施形態では、支持部材201に設けられる封止剤流通溝701は、素子ユニット1の形態において素子基板101の平面形状の鈍角の部分の近傍に形成されている。素子基板101の平面形状が正方形でない場合には、その平面形状に沿って流動する液体は、鈍角方向へ優先して流動する(図2の矢印参照)。この現象を利用して効率良く封止剤601を流動させて封止剤流通溝701へ進入させて素子基板101の支持部材側の面に導くためには、封止剤流通溝701を素子基板101の平面形状の鈍角の部分に設けることが有効である。それにより、封止剤流通溝701の数を少なくして、製造の煩雑さおよびコストを抑えることもできる。また、本実施形態では、素子基板101と支持部材201との接合部に段差があるため、封止剤601は表面張力によって円滑に流動し易く、その結果、素子基板101の支持部材201側の面を被覆し易い。
支持部材201に形成される封止剤流通溝701は、素子基板101の、支持部材201の外側にせり出す部分の支持部材側面など、封止剤601により封止することが必要な個所に、適切な寸法および適切な数だけ設けられる。通常は1つの素子基板101に対して複数個の封止剤流通溝701が設けられることが好ましいと思われる。ただし、封止剤流通溝701は、素子基板101の支持部材側の面で、必要な接着剤401の塗布領域を確保するために、過剰な大きさにすることは好ましくない。また、封止剤流通溝701は、図5に示す液体供給路202と干渉しないように液体供給路202との間に十分な間隔を置きつつ、素子基板101の下方に潜り込む位置に形成されることが望ましい。
第1の実施形態では、図5に示すように、封止剤流通溝701が、支持部材201の、素子基板101の平面形状の2箇所の鈍角の部分に対応する位置に形成されている。前述したように、平面形状が正方形また長方形でない基板では鋭角方向よりも鈍角方向へ液体が流動し易い。従って、素子基板101の鈍角の部分に対応する位置に封止剤流通溝701が形成されていると、封止剤601を、素子基板101の所望の位置(せり出している部分の支持部材側の面)に効率良く導くことができる。ただし、本発明はこのような構成に限定されない。
図8に示す第2の実施形態では、封止剤流通溝701が、支持部材201の、素子基板101の平面形状の鈍角の部分と鋭角の部分とを含む4つの角部に対応する位置の全てに形成されている。この実施形態では、封止剤流通溝701の数を増やすことで、大量の封止剤601を素子基板101のせり出している部分の支持部材側の面に導くことができ、作業の効率化が図れる。第1の実施形態のように封止剤流通溝701の数を減らして支持部材の製造や加工を簡略化することと、本実施形態のように封止剤流通溝701の数を増やして大量の封止剤601を流動させることとの、どちらを優先するかを適宜に判断して選択すればよい。なお、第1の実施形態のように封止剤流通溝701の数を減らす場合には、前述した通り封止剤流通溝701は、素子基板101の鈍角の部分に対応する位置に形成することが好ましい。本実施形態のその他の構成や製造方法は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
第1および第2の実施形態の封止剤流通溝701は、細長い長方形状の平面形状を有しているが、図9に示す第3の実施形態のように三角形状の平面形状を有する封止剤流通溝701を形成してもよい。また、図10に示す第4の実施形態のように半円状の平面形状を有する封止剤流通溝701を形成してもよい。さらに、その他の平面形状を有する封止剤流通溝701を形成してもよい。なお、このように様々な平面形状を有する封止剤流通溝701を、第1の実施形態と同様に、素子基板101の鈍角の部分に対応する2箇所のみに形成することも可能である。第3および第4の実施形態のその他の構成や製造方法は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
前述した第1~4の実施形態では、支持部材201に封止剤流通溝701が形成されているが、素子基板101に封止剤流通溝702を形成することもできる。図11(a)は本実施形態の素子ユニットの側面図、図11(b)は図11(a)のD部分の拡大図である。図11に示す第5の実施形態では、第1~4の実施形態と同様に支持部材201に形成された封止剤流通溝701に繋がるように、素子基板101の側面に封止剤流通溝(他の封止剤流通溝)702が設けられている。素子基板101に封止剤流通溝702が設けられていると、支持部材201の封止剤流通溝701へ封止剤601を導き易く、ひいては、素子基板101の所望の位置(せり出している部分の支持部材側の面)に封止剤601を効率良く導くことができる。封止剤流通溝702は素子基板101の上面(支持部材と反対側の面)に設けることもできる。なお、支持部材201には封止剤流通溝701を設けず、素子基板101のみに封止剤流通溝702を設けることも可能である。すなわち、封止剤流通溝701,702は、素子基板101と支持部材201の少なくとも一方に設けられていればよい。第5の実施形態のその他の構成や製造方法は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
第1~5の実施形態を例示して説明した通り、本発明によると、素子基板101と電気配線基板301との電気接続部を絶縁保護するための封止剤601を流動させて、素子基板101のせり出している部分の支持部材側の面を被覆して保護することができる。当該面に封止剤を直接塗布して表面張力で流動させる場合に比べて、本発明によると、容易かつ効率的に封止剤601による適切な被覆および保護を行うことができる。特に、電気接続部のボンディングワイヤー501の下方に配置される低粘度の封止剤601を、素子基板101の支持部材201側の面に流動させるため、流動距離が短く、しかも低粘度であるため流動性が良く、適切な被覆および保護が容易に行える。
特に、この封止剤601を素子基板101のせり出している部分の支持部材側の面に導くために、支持部材201に封止剤流通溝701を設けておく場合には、封止剤601をより容易かつ円滑に流動させることができる。封止剤流通溝701を、支持部材201の、少なくとも素子基板101の平面形状の鈍角の部分に対応する位置に形成すると、封止剤601を効率良く流動させることができる。ただし、封止剤流通溝701を、素子基板101の平面形状の鋭角の部分に対応する位置にも形成してもよい。また、素子基板101に封止剤流通溝702を形成することも可能である。このように、本発明によると、支持部材201の外周縁部より外側にせり出した素子基板101の支持部材側の面を、封止剤601で容易に被覆できる。従って、耐久性が良好な液体記録ヘッドを提供することができる。
101 素子基板
301 電気配線基板
201 支持部材
601 封止剤
701 封止剤流通溝
301 電気配線基板
201 支持部材
601 封止剤
701 封止剤流通溝
Claims (16)
- 液体を吐出する素子基板と、前記素子基板に電気的に接続される電気配線基板と、前記電気配線基板の一部および前記素子基板を支持する支持部材と、前記素子基板と前記電気配線基板との電気接続部を封止する封止剤と、硬化前の前記封止剤の一部を前記素子基板の前記支持部材側の面へ導く封止剤流通溝と、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
- 前記素子基板の板面に直交する方向に見て、前記素子基板の一部が前記支持部材の外周縁部より外側にせり出しており、
前記封止剤の一部が、前記素子基板の、前記支持部材の外周縁部より外側にせり出している部分の前記支持部材側の面の少なくとも一部を覆っている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。 - 前記封止剤流通溝は、硬化前の前記封止剤の一部を、前記素子基板の、前記支持部材の外周縁部より外側にせり出している部分の前記支持部材側の面へ導く、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記封止剤流通溝は、前記支持部材の、前記素子基板の板面に直交する方向に見て、前記素子基板の外側の位置から前記素子基板の下方の位置まで延びている、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記素子基板は鈍角と鋭角とを有する四角形の平面形状を有し、前記封止剤流通溝は、前記支持部材の、前記素子基板の平面形状の鈍角の部分に対応する位置に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記素子基板は四角形の平面形状を有し、前記封止剤流通溝は、前記支持部材の、前記素子基板の平面形状の4つの角部に対応する位置に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記素子基板の側面に、前記支持部材の前記封止剤流通溝に繋がる他の封止剤流通溝が設けられている、請求項5または6に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記素子基板は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口に連通する流路と、前記支持部材側の面に位置して前記流路をシールする膜と、を有し、前記封止剤の一部が、前記膜を含めて、前記素子基板の、前記支持部材の外周縁部より外側にせり出している部分の前記支持部材側の面の少なくとも一部を覆っている、請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記支持部材は、外周縁部の少なくとも一部の前記素子基板側の面に面取り部を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記素子基板と前記電気配線基板との電気接続部は、下層の低粘度の封止剤と上層の高粘度の封止剤とからなる2層構造の封止剤によって封止され、低粘度の前記封止剤の一部が、前記素子基板の、前記支持部材の外周縁部より外側にせり出している部分の前記支持部材側の面の少なくとも一部を覆っている、請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 液体を吐出する素子基板と電気配線基板の一部とを支持部材上に固定するステップと、
前記素子基板と前記電気配線基板とを電気的に接続するステップと、
前記素子基板と前記電気配線基板との電気接続部に封止剤を塗布するステップと、
前記電気接続部に前記封止剤を保持するステップと、
前記封止剤の一部を、封止剤流通溝を介して前記素子基板の前記支持部材側の面に導いて当該面の少なくとも一部を被覆するステップと、
前記封止剤を硬化させるステップと、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 前記封止剤の一部を、前記素子基板と前記支持部材の少なくとも一方に設けられた封止剤流通溝を通して流動させて、前記素子基板の、前記支持部材の外周縁部より外側にせり出している部分の前記支持部材側の面に導いて当該面を被覆する、請求項11に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記封止剤流通溝は、前記素子基板の板面に直交する方向に見て、前記素子基板の外側の位置から前記素子基板の下方の位置まで延びている、請求項12に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記素子基板は鈍角と鋭角とを有する四角形の平面形状を有し、前記封止剤流通溝は、前記支持部材の、前記素子基板の平面形状の鈍角の部分に対応する位置に設けられている、請求項12または13に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記素子基板は四角形の平面形状を有し、前記封止剤流通溝は、前記支持部材の、前記素子基板の平面形状の4つの角部に対応する位置に設けられている、請求項12または13に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
- 前記素子基板と前記電気配線基板との電気接続部は、下層の低粘度の封止剤と上層の高粘度の封止剤とからなる2層構造の封止剤によって封止され、低粘度の前記封止剤の一部を、前記素子基板の、前記支持部材の外周縁部より外側にせり出している部分の前記支持部材側の面に導いて当該面を被覆する、請求項11から15のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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JP2020210017A JP2022096818A (ja) | 2020-12-18 | 2020-12-18 | 液体吐出ヘッドとその製造方法 |
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- 2020-12-18 JP JP2020210017A patent/JP2022096818A/ja active Pending
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