JP2022094473A - リチウムイオン二次電池用正極活物質 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質 Download PDF

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Abstract

【課題】体積あたりのエネルギー密度とレート特性とをともに充分に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)下記式(a)で表される粒子 60質量%~90質量%
LiNiaCobMnc1 w2・・・(a)
(B)下記式(b)で表される粒子 7質量%~36質量%
LifMngFeh2 xPO4・・・(b)
(C)下記式(c)で表される粒子 1質量%~12質量%
LijFek3 yPO4・・・(c)
を含有し、かつ成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))が2~9であるリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【選択図】なし

Description

本発明は、体積あたりのエネルギー密度が高く、かつレート特性に優れるリチウムイオン二次電池を得るための、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
層状型リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NMC)等の層状型リチウム複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属原子層とが、酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造となっている。かかる層状型リチウム複合酸化物は、高出力及び高容量のリチウムイオン二次電池を構成できる正極活物質として使用されている。
こうした層状型リチウム複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、リチウムイオンが層状型リチウム複合酸化物に脱離・挿入されることによって充電・放電が行われるが、充放電サイクルを重ねるにつれて容量低下が生じ、特に長期間使用すると、電池の容量低下が著しくなるおそれがある。これは、充電時にリチウム複合酸化物の遷移金属成分が電解液へ溶出することにより、かかる結晶構造の崩壊が生じやすくなることが原因であると考えられている。特に高温になるほど遷移金属の溶出量は多くなり、サイクル特性に与える影響は大きい。また、リチウム複合酸化物の結晶構造の崩壊が生じると、リチウム複合酸化物の遷移金属成分が周囲の電解液へ溶出し、熱的安定性が低下して安全性が損なわれるおそれもある。
このような状況下、有用性の高い層状型リチウム複合酸化物を用いつつ、従来より種々の開発がなされている。例えば、特許文献1には、エネルギー密度に優れた二次電池を得るべく、コバルト原子の数を特定したリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物と、マンガン原子の数を特定したリン酸マンガン鉄リチウムとを含む二次電池用正極が開示されており、初期クーロン効率の向上を図っている。また、特許文献2には、ニッケルマンガンコバルト酸リチウムやLiPO4等の、平均粒径が互いに異なる2つの正極活物質粉体の混合物である正極活物質が開示されており、実用に耐えうる出力を有する電池を作製する試みがなされている。
特開2011-159388号公報 特開2010-67499号公報
しかしながら、いずれの文献に記載の技術であっても、体積あたりのエネルギー密度とレート特性とを充分に高めるには至らず、未だ改善の余地がある。
したがって、本発明の課題は、体積あたりのエネルギー密度とレート特性とをともに充分に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することにある。
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の式で表される特定の3種の粒子を各々特定の量かつ質量比で含有することにより、得られるリチウムイオン二次電池において、体積あたりのエネルギー密度とレート特性とをともに充分に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質を見出した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)下記式(a)で表される粒子 60質量%~90質量%
LiNiaCobMnc1 w2・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、wは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦w≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×w=3を満たす数を示す。)
(B)下記式(b)で表される粒子 7質量%~36質量%
LifMngFeh2 xPO4・・・(b)
(式(b)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.15≦g≦1.1、0.08≦h≦0.9、0≦x≦0.3、及び0.2≦g/h≦9を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M2の価数)×x=3を満たす数を示す。)
(C)下記式(c)で表される粒子 1質量%~12質量%
LijFek3 yPO4 ・・・(c)
(式(c)中、M3はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd、及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。j、y及びkは、0<j≦1.2、0≦y≦0.3、0.5<k≦1.2、及びj+(Feの価数)×k+(M3の価数)×y=3を満たす数を示す。)
を含有し、かつ成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))が2~9であるリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供するものである。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質によれば、体積あたりのエネルギー密度を有効に高められるとともに、レート特性にも優れるリチウムイオン二次電池を実現することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、次の成分(A)、(B)、及び(C):
(A)下記式(a)で表される粒子 60質量%~90質量%
LiNiaCobMnc1 w2・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、wは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦w≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×w=3を満たす数を示す。)
(B)下記式(b)で表される粒子 7質量%~36質量%
LifMngFeh2 xPO4・・・(b)
(式(b)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.15≦g≦1.1、0.08≦h≦0.9、0≦x≦0.3、及び0.2≦g/h≦9を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M2の価数)×x=3を満たす数を示す。)
(C)下記式(c)で表される粒子 1質量%~12質量%
LijFek3 yPO4 ・・・(c)
(式(c)中、M3はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd、及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。j、y及びkは、0<j≦1.2、0≦y≦0.3、0.5<k≦1.2、及びj+(Feの価数)×k+(M3の価数)×y=3を満たす数を示す。)
を含有し、かつ成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))が2~9である。
このように、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上記特定の式で表される特定の3種の粒子を各々特定の量で含有することから、得られるリチウムイオン二次電池において、体積あたりのエネルギー密度を不要に低下させることなくレート特性を高めることができるとともに、粒子間の空隙を効果的に減じて体積あたりのエネルギー密度(以下、「エネルギー密度」とも略する。)を一層高めることも可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、成分(A)として、下記式(a)で表される粒子を60質量%~90質量%含有する。
LiNiaCobMnc1 w2・・・(a)
(式(a)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、wは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦w≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×w=3を満たす数を示す。)
成分(A)の上記式(a)で表される粒子は、リチウム複合酸化物粒子(いわゆるLi-Ni-Co-Mn酸化物粒子(NCM粒子)であり、以下「粒子(A)」とも称する。)であり、層状型岩塩構造を有する粒子であって、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子である。特定の平均粒径を有するかかる成分(A)を上記量で含有することにより、優れたレート特性を保持しつつ、エネルギー密度の向上に寄与することができる。
式(a)中のM1は、Mg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。
また、上記式(a)中のa、b、c、wは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦w≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×w=3を満たす数である。
上記式(a)で表される粒子(A)において、Ni、Co及びMnは、電子伝導性に優れ、電池容量及び出力特性に寄与することが知られている。また、レート特性の観点からは、かかる遷移元素の一部が他の金属元素M1により置換されていてもよい。これら金属元素M1により置換されることにより、式(a)で表される粒子(A)の結晶構造が安定化されるため、充放電による結晶構造の破壊が抑制でき、優れたレート特性が実現し得ると考えられる。
上記式(a)で表されるNCM粒子としては、具体的には、例えばLiNi0.33Co0.33 Mn0.342、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、LiNi0.6Co0.2Mn0.22、LiNi0.2Co0.4Mn0.42、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032、又はLiNi0.33Co0.31Mn0.33Zn0.032等が挙げられる。なかでも、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、LiNi0.6Co0.2Mn0.22、LiNi0.33Co0.33 Mn0.342、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032からなる粒子が好ましい。
さらに、互いに組成が異なる2種以上の上記式(a)で表される粒子(A)は、コア部(内部)とシェル部(表層部)とを有するコア-シェル構造を形成していてもよい。このコア-シェル構造を形成してなる粒子(A)とすることによって、電解液に溶出しやすいNi濃度の高いNCM系複合酸化物粒子をコア部に配置し、電解液に接するシェル部にはNi濃度の低いNCM系複合酸化物粒子を配置することができるので、レート特性の低下の抑制をより向上させることができる。このとき、コア部は1相であってもよいし、組成の異なる2相以上で構成していてもよい。コア部を2相以上で構成する態様として、同心円状に複数の相が層状となって積層された構造でもよいし、コア部の表面から中心部に向けて遷移的に組成が変化する構造でもよい。
さらに、シェル部は、コア部の外側に形成されてなるものであればよく、コア部同様に1相であってもよいし、組成の異なる2相以上で構成していてもよい。
このような組成が異なる2種以上のNCM粒子によってコア-シェル構造を形成してなる粒子(A)として、具体的には(コア部)-(シェル部)が、例えば(LiNi0.8Co0.1Mn0.12)-(LiNi0.2Co0.4Mn0.42)、(LiNi0.8Co0.1Mn0.12)-(LiNi0.33Co0.33Mn0.342)、又は(LiNi0.8Co0.1Mn0.12)-(LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032)等からなる粒子が挙げられる。
さらに、上記式(a)で表される粒子(A)は、金属酸化物、金属フッ化物又は金属リン酸塩で被覆されていてもよい。これら金属酸化物、金属フッ化物又は金属リン酸塩でNCM粒子を被覆することによって、電解液へのNCM粒子からの金属成分(Ni、Mn、Co、M1)の溶出を抑制することができる。かかる被覆物としては、CeO2、SiO2、MgO、Al23、ZrO2、TiO2、ZnO、RuO2、SnO2、CoO、Nb25、CuO、V25、MoO3、La23、WO3、AlF3、NiF2、MgF2、LiF、Li3PO4、Li427、LiPO3、Li2PO3F、及びLiPO22から選択される1種又は2種以上、或いはこれらの複合化物を用いることができる。
上記式(a)で表される粒子(A)の一次粒子としての平均粒径は、リチウムイオンの挿入及び脱離に伴う上記一次粒子の膨張収縮量を抑制することができ、粒子割れを有効に防止する観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは50nm~500nm以下であり、より好ましくは50nm~300nmである。
また、上記一次粒子が凝集して形成する二次粒子である粒子(A)の平均粒径(単に「粒子(A)の平均粒径」という)は、レート特性に優れた電池を得る観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは3μm~20μmであり、より好ましくは5μm~15μmである。
ここで、粒子(A)における「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
上記式(a)で表される粒子(A)のタップ密度は、サイクル特性に優れた電池を得る観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは1.5g/cm3~3.5g/cm3であり、より好ましくは2.0g/cm3~3.0g/cm3である。
なお、タップ密度とは、以下同様、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法により測定される「タップかさ密度」を意味する。
上記式(a)で表される粒子(A)の安息角は、レート特性に優れた電池を得る観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは30°~60°であり、より好ましくは35°~55°である。
なお、安息角とは、以下同様、粉体を落下・堆積させたときに形成される山の稜線の角度であり、JIS R 9301-2-2「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に規定される方法により測定される値(°)を意味する。用い得る具体的な測定装置しては、粉体特性評価装置、例えばパウダテスタPT-X(ホソカワミクロン社製)が挙げられる。
成分(A)(粒子(A))の含有量は、高いエネルギー密度と優れたレート特性との両立を有効に図る観点から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質中に、60質量%~90質量%であって、好ましくは65質量%~85質量%であり、より好ましくは70質量%~80質量%である。
なお、粒子(A)は、例えば、以下の製造方法により得ることができる。
具体的には、ニッケル化合物、コバルト化合物、マンガン化合物、及び水を添加してスラリー水aを調製し、かかるスラリー水aをろ過・乾燥して混合物Aを得る工程(Ia)、得られた混合物Aにリチウム化合物を添加して混合し、次いで焼成する工程(IIa)を備える製造方法である。
工程(Ia)において用いるニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸ニッケルが好ましい。
コバルト化合物としては、酢酸コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸コバルトが好ましい。
マンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸マンガンが好ましい。
なお、これらニッケル化合物、コバルト化合物、及びマンガン化合物とともに、これらの化合物以外の金属(M1)化合物を用いてもよい。
リチウム化合物としては、水酸化物(例えばLiOH・H2O、LiOH)、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩が挙げられる。なかでも、炭酸塩が好ましい。
工程(Ia)において、スラリー水aを得るにあたり、pH8~13に調整するのが好ましく、例えばアンモニア水を滴下することにより調整すればよい。
工程(IIa)において、焼成する際、まず500℃~1000℃、好ましくは600℃~900℃にて1時間~15時間、好ましくは1時間~6時間で仮焼成した後、500℃~1000℃、好ましくは600℃~900℃にて1時間~15時間、好ましくは5時間~13時間で本焼成するのがよい。また、仮焼成後に解砕してから本焼成に付すのがよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、成分(B)として、下記式(b)で表される粒子を7質量%~36質量%含有する。
LifMngFeh2 xPO4・・・(b)
(式(b)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.15≦g≦1.1、0.08≦h≦0.9、0≦x≦0.3、及び0.2≦g/h≦9を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M2の価数)×x=3を満たす数を示す。)
成分(B)の上記式(b)で表される粒子は、少なくとも遷移金属としてマンガン(Mn)及び鉄(Fe)の双方を含むオリビン型リン酸遷移金属リチウム化合物(いわゆるLMFP粒子であり、以下「粒子(B)」とも称する。)であって、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子である。かかる成分(B)は、特定の平均粒径を有しつつ他の成分よりも比較的変形しやすい粒子であることも要因となって、これを上記量で含有することにより、上記成分(A)とも相まって、エネルギー密度を不要に低下させることなく、レート特性を有効に高めることができる。
上記粒子(B)としては、平均放電電圧の観点から、fについては、0.6≦f≦1.2が好ましく、0.65≦f≦1.15がより好ましく、0.7≦f≦1.1がさらに好ましい。gについては、0.3≦g≦0.9が好ましく、0.4≦g≦0.8がより好ましく、0.5≦g≦0.8がさらに好ましい。hについては、0.1≦h≦0.7が好ましく、0.2≦h≦0.6がより好ましく、0.3≦h≦0.5がさらに好ましい。xについては、0≦x≦0.2が好ましく、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.1がさらに好ましい。そして、g/hは、いわゆる粒子(B)を構成するMnとFeとのモル比であり、1≦g/h≦9が好ましく、1.2≦g/h≦5.7がより好ましく、1.5≦g/h≦4がさらに好ましい。
具体的には、例えばLiMn0.3Fe0.7PO4、LiMn0.7Fe0.3PO4、LiMn0.9Fe0.1PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.75Fe0.15Mg0.1PO4、LiMn0.75Fe0.19Zr0.03PO4、LiMn0.6Fe0.4PO4、LiMn0.5Fe0.5PO4、Li1.2Mn0.63Fe0.27PO4、Li0.6Mn0.84Fe0.36PO4等が挙げられる。なかでもLiMn0.3Fe0.7PO4、LiMn0.7Fe0.3PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.6Fe0.4PO4、Li1.2Mn0.63Fe0.27PO4、又はLi0.6Mn0.84Fe0.36PO4が好ましい。
さらに、粒子(B)は、コア部(内部)とシェル部(表層部)を有するコア-シェル構造を形成していてもよい。このコア-シェル構造を有する粒子(B)とすることによって、電解液に溶出しやすいMn含有量のより一層多いLMFP粒子をコア部に配置し、電解液に接するシェル部にはコア部よりもMn含有量の少ないLMFP粒子を配置することによって、粒子(B)に起因するレート特性の低下を抑制することができる。このとき、コア部は1相であってもよいし、組成の異なる2相以上で構成していてもよい。コア部を2相以上で構成する態様として、同心円状に複数の相が層状となって積層された構造でもよいし、コア部の表面から中心部に向けて遷移的に組成が変化する構造でもよい。
さらに、シェル部は、コア部の外側に形成されてなるものであればよく、コア部同様に1相であってもよいし、組成の異なる2相以上で構成していてもよい。
このような組成が異なる2種以上のLMFP粒子によってコア-シェル構造を形成してなる粒子(B)として、具体的には(コア部)-(シェル部)が、例えばLiMn0.9Fe0.1PO4-LiMn0.6Fe0.4PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4-Li1.2Mn0.63Fe0.27PO4等からなる粒子が挙げられる。
上記式(b)で表される粒子(B)の一次粒子としての平均粒径は、リチウムイオンの挿入及び脱離に伴う上記一次粒子の膨張収縮量を抑制することができ、粒子割れを有効に防止する観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは70nm~200nmであり、より好ましくは50nm~180nmである。
また、上記一次粒子が凝集して形成する二次粒子である粒子(B)の平均粒径(単に「粒子(B)の平均粒径」という)は、レート特性に優れた電池を得る観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは10μm~30μmであり、より好ましくは11μm~25μmであり、さらに好ましくは12μm~20μmである。
ここで、粒子(B)における「平均粒径」とは、粒子(A)と同様、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
上記式(b)で表される粒子(B)のタップ密度は、粒子の電子伝導性や電極スラリーにおけるハンドリングを向上させて、得られる電極での均一性や電極密度を効果的に高める観点、また、他の成分よりも二次粒子が比較的変形しやすい観点から、粒子(A)よりも粒子(B)のタップ密度が低いことが好ましく、具体的には、好ましくは0.7g/cm3~1.3g/cm3であり、より好ましくは0.8g/cm3~1.2g/cm3であり、さらに好ましくは0.9g/cm3~1.1g/cm3である。
なお、タップ密度とは、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法により測定される「タップかさ密度」を意味する。
上記式(b)で表される粒子(B)の安息角は、かかる値を他の粒子よりも小さめ、粒子の電子伝導性や電極スラリーにおけるハンドリングを向上させて、得られる電極での均一性や電極密度を効果的に高める観点から、好ましくは30°~45°であり、より好ましくは30°~43°であり、さらに好ましくは30°~40°である。
なお、安息角とは、粉体を落下・堆積させたときに形成される山の稜線の角度であり、JIS R 9301-2-2「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に規定される方法により測定される値(°)を意味する。用い得る具体的な測定装置しては、粉体特性評価装置、例えばパウダテスタPT-X(ホソカワミクロン社製)が挙げられる。
粒子(B)は、優れた放電容量を確保する観点から、その粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持されてなる粒子としてもよい。
セルロースナノファイバーとは、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維である。かかるセルロースナノファイバーの繊維径は1nm~1000nmであり、水への良好な分散性も有している。また、セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子鎖では、炭素による周期的構造が形成されている。そのため、かかるセルロースナノファイバーが炭化されて炭素となり、これが上記粒子(B)の表面に堅固に担持してなると、粒子(B)として押し潰されやすい物性を発現しながらも、容易に変形して崩壊を回避しつつ過度な微粉化も抑制する適度な強度を有することとなり、電子導電パスの低下を有効に抑制して圧密度を有効に高め、得られる電池において優れた放電容量の発現を確保することができる。
水溶性炭素材料とは、セルロースナノファイバーと同様、炭化されて炭素となり、これが粒子(B)の表面に担持してなると、セルロースナノファイバーと同様、電子導電パスの低下を有効に抑制し、得られる電池において優れた放電容量の発現を確保することができる。
かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて炭素材料として効果的に機能させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリンが好ましく、グルコースがより好ましい。
これらセルロースナノファイバー由来の炭素、及び水溶性炭素材料由来の炭素は、セルロースナノファイバー由来の炭素のみを担持、水溶性炭素材料由来の炭素のみを担持、或いはセルロースナノファイバー由来の炭素と水溶性炭素材料由来の炭素とを双方とも担持させてもよい。なかでも、セルロースナノファイバー由来の炭素が粒子(B)の表面に存在しながら、粒子(B)が形成するパッキング構造の粒子間空隙を充填しつつ、水溶性炭素材料由来の炭素を粒子の表面に均一に堆積させて、一層効果的に放電容量を高める観点から、セルロースナノファイバー由来の炭素を担持させるのが好ましい。
粒子(B)の表面にセルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素が担持してなる場合、セルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量の合計、すなわちセルロースナノファイバー由来の炭素の担持量及び水溶性炭素材料由来の炭素の担持量の合計は、粒子(B)100質量%中に、好ましくは0.7質量%~3.5質量%であり、より好ましくは0.9質量%~3.0質量%であり、さらに好ましくは1.0質量%~2.5質量%である。
成分(B)(粒子(B))の含有量は、高いエネルギー密度と優れたレート特性との両立を有効に図る観点から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質中に、7質量%~36質量%であって、好ましくは10質量%~30質量%であり、より好ましくは12質量%~25質量%である。
なお、成分(B)(粒子(B))が、その表面にセルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持してなる場合、成分(B)(粒子(B))の含有量には、これらの炭素の担持量も含むものとする。
また、粒子(B)中に存在するセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量(担持量)、及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量(担持量)は、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により求められる値を意味する。
なお、粒子(B)は、例えば、以下の製造方法により得ることができる。具体的には、次の工程(Ib)~(IVb):
(Ib)リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物、リン酸化合物、セルロースナノファイバー、並びに水を添加してスラリー水bを得た後、水熱反応に付して、複合体Bを得る工程
(IIb)得られた複合体B、並びに水を添加してスラリー水cを得る工程
(IIIb)得られたスラリー水cを噴霧乾燥に付して造粒体Zを得る工程
(IVb)得られた造粒体Zを焼成する工程
を備える製造方法である。
上記工程(Ib)は、リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物、リン酸化合物、セルロースナノファイバー、並びに水を添加してスラリー水bを得た後、水熱反応に付して、複合体Bを得る工程である。
リチウム化合物としては、上記粒子(A)と同様のものを用い得るが、なかでも水酸化物が好ましい。
マンガン化合物としては、上記粒子(A)と同様のものを用い得る。
鉄化合物としては、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸鉄が好ましい。
なお、これらマンガン化合物及び鉄化合物とともに、マンガン化合物及び鉄化合物以外の金属(M2)化合物を用いてもよい。
リン酸化合物としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでもリン酸を用いるのが好ましく、70質量%~90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
なお、セルロースナノファイバー由来の炭素を担持させる場合、工程(Ib)においてリチウム化合物等とともにセルロースナノファイバーを添加し、スラリー水bを得ればよい。
工程(Ib)は、より具体的には、リチウム化合物を含むスラリー水b'に、リン酸化合物を混合して複合体B'を得る工程(ib-1)、
得られた複合体B'、及び少なくともマンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物を含有するスラリー水bを水熱反応に付して、複合体Bを得る工程(ib-2)
を備えるのが好ましい。
なお、セルロースナノファイバーを用いる場合、リチウム化合物とセルロースナノファイバーを含むスラリー水b'を調製すればよい。
工程(ib-1)において、スラリー水b'におけるリチウム化合物の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは7~45質量部である。
セルロースナノファイバーを用いる場合、スラリー水b'におけるその含有量は、水100質量部に対し、炭化処理の残渣量換算で、好ましくは0.2~10.6質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、さらに好ましくは0.8~5.3質量部である。
スラリー水b'にリン酸化合物を添加する前に、予めスラリー水b'を撹拌しておくのが好ましい。かかるスラリー水b'の撹拌時間は、好ましくは1分~15分であり、より好ましくは3分~10分である。また、スラリー水b'の温度は、好ましくは20℃~90℃であり、より好ましくは20℃~70℃である。
かかる工程(Ib)では、スラリー水b'にリン酸を混合するにあたり、スラリー水を撹拌しながらリン酸を滴下するのが好ましい。リン酸の上記スラリー水b'への滴下速度は、好ましくは15mL/分~50mL/分であり、より好ましくは20mL/分~45mL/分であり、さらに好ましくは28mL/分~40mL/分である。また、リン酸を滴下しながらのスラリー水bの撹拌時間は、好ましくは0.5時間~24時間であり、より好ましくは3時間~12時間である。さらに、リン酸を滴下しながらのスラリー水の撹拌速度は、好ましくは200rpm~700rpmであり、より好ましくは250rpm~600rpmであり、さらに好ましくは300rpm~500rpmである。
なお、スラリー水b'を撹拌する際、さらにスラリー水b'の沸点温度以下に冷却するのが好ましい。具体的には、80℃以下に冷却するのが好ましく、20℃~60℃に冷却するのがより好ましい。
リン酸化合物を混合した後のスラリー水b'は、リン酸1モルに対し、リチウムを2.0モル~4.0モル含有するのが好ましく、2.0モル~3.1モル含有するのがより好ましく、このような量となるよう、上記リチウム化合物とリン酸化合物を用いればよい。より具体的には、リン酸化合物を混合した後のスラリー水b'は、リン酸1モルに対し、リチウムを2.7モル~3.3モル含有するのが好ましく、2.8モル~3.1モル含有するのがより好ましい。
リン酸化合物を混合した後のスラリー水b'に対して窒素をパージすることにより、かかるスラリー水中での反応を完了させて、粒子(B)の前駆体である複合体B'をスラリーとして得る。窒素がパージされると、スラリー水b'中の溶存酸素濃度が低減された状態で反応を進行させることができ、また得られる複合体B'を含有するスラリー水の溶存酸素濃度も効果的に低減されるため、次の工程で添加する金属化合物の酸化を抑制することができる。かかる複合体B'を含有するスラリー水b'中において、粒子(B)の前駆体は、微細な分散粒子として存在する。かかる複合体B'は、リン酸三リチウム(Li3PO4)とセルロースナノファイバーの複合体として得られる。
次いで工程(ib-2)では、工程(ib-1)で得られた複合体B'、及び少なくともマンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物を含有するスラリー水bを水熱反応に付して、複合体Bを得る。
マンガン化合物及び鉄化合物の使用モル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、好ましくは95:5~20:80であり、より好ましくは90:10~30:70であり、さらに好ましくは85:15~40:60である。また、これら金属化合物の合計添加量は、スラリー水A中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは0.99モル~1.01モルであり、より好ましくは0.995モル~1.005モルである。
水熱反応に付する際に用いる水の使用量は、金属化合物の溶解性、撹拌の容易性、及び合成の効率等の観点から、スラリー水b中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは10モル~50モルであり、より好ましくは12.5モル~45モルである。
マンガン化合物、鉄化合物及び金属(M2)化合物の添加順序は特に制限されない。また、これらの金属化合物を添加するとともに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。かかる酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水等を使用することができる。酸化防止剤の添加量は、マンガン化合物、鉄化合物及び必要に応じて用いる金属(M2)塩の合計1モルに対し、好ましくは0.01モル~1モルであり、より好ましくは0.03モル~0.5モルである。
マンガン化合物、鉄化合物及び金属(M2)化合物を添加し、必要に応じて酸化防止剤等を添加することにより得られるスラリー水b中における複合体B'の含有量は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~45質量%であり、さらに好ましくは20~40質量%である。
水熱反応は、100℃以上であればよく、130℃~200℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130℃~200℃で反応を行う場合、この時の圧力は0.3MPa~1.6MPaであるのが好ましく、140℃~160℃で反応を行う場合の圧力は0.3MPa~0.6MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は0.1時間~48時間が好ましく、さらに0.2時間~24時間が好ましい。
得られた複合体Bは、ろ過後、水で洗浄し、乾燥することにより単離する。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
上記工程(IIb)は、工程(Ib)により得られた複合体B、並びに水を添加してスラリー水cを得る工程である。
スラリー水cの固形分濃度は、好ましくは5質量%~30質量%であり、より好ましくは5質量%~20質量%であり、さらに好ましくは5質量%~15質量%である。
水を添加した後、工程(IIIb)へ移行する前にスラリー水cを予め攪拌するのが好ましい。かかるスラリー水cの撹拌時間は、好ましくは3分~60分であり、より好ましくは5分~30分である。また、スラリー水cの温度は、好ましくは10℃~60℃であり、より好ましくは20℃~40℃である。
上記工程(IIIb)は、工程(IIb)により得られたスラリー水cを噴霧乾燥に付して造粒体Zを得る工程である。噴霧乾燥では、用いる装置に応じて適宜運転条件を設定すればよい。
例えば、4流体ノズルを備えたマイクロミストドライヤー(藤崎電気(株)製 MDL-050M)での処理条件としては、熱風温度が110℃~300℃であるのが好ましく、150℃~250℃であるのがより好ましい。また、熱風の供給量とスラリー水の供給量の容積比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)が、500~10000であるのが好ましく、1000~9000であるのがより好ましい。
上記工程(IVb)は、工程(IIIb)により得られた造粒体Zを焼成する工程である。かかる工程(IVb)の焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中であるのが好ましく、焼成温度は、好ましくは500℃~1000℃であり、より好ましくは550℃~900℃であり、焼成時間は、好ましくは0.5時間~12時間であり、より好ましくは1時間~6時間である。
なお、上記工程(IVb)により得られた焼成後の造粒体Zのタップ密度や平均粒径は、上記工程(IIb)から工程(IVb)を経る間に、適宜上記条件を制御することによって調整することができるが、造粒体Zのタップ密度の値を他の粒子よりも高め、或いは安息角の値を他の粒子よりも小さめて、得られる電極での均一性や電極密度を効果的に高め、レート特性の向上を効果的に図る観点から、粒子(B)を得るための製造方法は、さらに次の工程(Vb)~工程(VIb)を備える製造方法であってもよい。
すなわち、上記工程(Ib)~(IVb)を備え、さらに
(Vb)上記工程(IVb)により得られた焼成後の造粒体Zに、乾式ミキサーにより積算エネルギー0.15kJ/g~0.30kJ/gの負荷をかけて、圧密体Z'を得る工程
(VIb)得られた圧密体Z'を焼成する工程
を備える製造方法であるのが望ましい。
上記工程(Vb)は、上記工程(IVb)により得られた焼成後の造粒体Zに、乾式ミキサーにより積算エネルギー0.15kJ/g~0.30kJ/gの負荷をかけて、圧密体Z'を得る工程である。工程(IVb)を経た焼成後の造粒体Zにこのような負荷をかけることにより、焼成後の造粒体Zを一旦締め固めたのちに、後述する工程(VIb)へ移行する。
用い得る乾式ミキサーとしては、特に制限されないが、例えばMPミキサー(日本コークス社製)等を用いることができる。
焼成後の造粒体Zにかける積算エネルギーは、0.15kJ/g~0.30kJ/gであって、好ましくは0.17kJ/g~0.30kJ/gであり、より好ましくは0.20kJ/g~0.30kJ/gである。
得られる圧密体Z'の平均粒径は、好ましくは4μm~30μmであり、より好ましくは8μm~26μmである。
上記工程(VIb)は、工程(Vb)で得られた圧密体Z'を焼成する工程である。
工程(VIb)における焼成温度は、好ましくは200℃~750℃であり、より好ましくは200℃~600℃であり、さらに好ましくは200℃~400℃である。また焼成時間は、好ましくは15分~180分であり、より好ましくは30分~120分である。さらに焼成雰囲気は、還元雰囲気又は不活性雰囲気であるのがよい。
ここで、工程(IVb)における焼成と工程(VIb)における焼成との少なくとも一方の焼成が、600℃~750℃の温度であるのが望ましい。これにより、圧密体Z'を一層堅固に圧密させつつ、工程を経るにしたがって、一部に生じ得る粒子(B)やセルロースナノファイバー由来の炭素等の結晶化度における欠陥を修復又は復活させて、他の粒子よりもタップ密度の値が高く、或いは安息角の値が小さい粒子であるとともに、適度な強度を発現する粒子(B)を製造することができる。
かかる観点から、工程(IVb)における焼成での温度よりも工程(VIb)における焼成での温度が低いのが好ましく、より具体的には、例えば工程(IVb)における焼成温度が600℃~750℃であり、かつ工程(VIb)における焼成温度が200℃~400℃であるのがよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、成分(C)として、下記式(c)で表される粒子を1質量%~12質量%含有する。
LijFek3 yPO4 ・・・(c)
(式(c)中、M3はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd、及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。j、y及びkは、0<j≦1.2、0≦y≦0.3、0.5<k≦1.2、及びj+(Feの価数)×k+(M3の価数)×y=3を満たす数を示す。)
成分(C)の上記式(c)で表される粒子は、少なくとも遷移金属として鉄(Fe)を含み、かつマンガン(Mn)は含まない、いわゆるオリビン型リン酸遷移金属リチウム化合物(LFP粒子、以下「粒子(C)」とも称する。)であって、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子である。特定の平均粒径を有するかかる粒子(C)を上記量で含有することにより、優れたレート特性を保持しつつ、上記成分(A)及び成分(B)との粒子間におけるの空隙を効果的に減じて、エネルギー密度を有効に高めることができる。
上記式(c)で表される粒子(C)としては、効果的にレート特性を高める観点から、具体的には、LiFePO4、LiFe0.99Mg0.01PO4、LiFe0.97Zn0.03PO4、LiFe0.98Ni0.02PO4を用いることができる。なかでも、LiFePO4が好ましい。
上記式(c)で表される粒子(C)の一次粒子としての平均粒径は、優れたレート特性を確保する観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは100nm~300nmであり、より好ましくは120nm~250nmである。
また、上記一次粒子が凝集して形成する二次粒子である粒子(C)の平均粒径(単に「粒子(C)の平均粒径」という)は、優れたレート特性を確保しつつ、高いエネルギー密度との両立を有効に図る観点、及びハンドリングの観点から、粒子(C)の平均粒径と粒子(B)の平均粒径との比((C)r/(B)r)は、好ましくは0.2~0.5であり、より好ましくは0.25~0.4以下である。かかる粒子(C)の平均粒径は、具体的には、好ましくは5μm~15μmであり、より好ましくは5μm~12μmであり、
ここで、粒子(C)における「平均粒径」とは、粒子(A)と同様、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
上記式(c)で表される粒子(C)のタップ密度は、粒子の電子伝導性や電極スラリーにおけるハンドリングを向上させて、得られる電極での均一性や電極密度を効果的に高める観点から、好ましくは0.8g/cm3~1.3g/cm3であり、より好ましくは1.1g/cm3~1.3g/cm3である。
上記式(c)で表される粒子(C)の安息角は、粒子の電子伝導性や電極スラリーにおけるハンドリングを向上させて、得られる電極での均一性や電極密度を効果的に高める観点から、好ましくは30°~50°であり、より好ましくは30°~45°である。
成分(C)(粒子(C))の含有量は、高いエネルギー密度と優れたレート特性との両立を有効に図る観点から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質中に、1質量%~12質量%であって、好ましくは2質量%~10質量%であり、より好ましくは3質量%~8質量%である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質において、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、高いエネルギー密度と優れたレート特性との両立を有効に図る観点から、2~9であって、好ましくは2.5~8であり、より好ましくは3~7であり、さらに好ましくは3.5~6である。
なお、粒子(C)は、例えば、上記粒子(B)における上記工程(Ib)~(IVb)を備える製造方法と同様の製造方法により得ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上記成分(A)、(B)、及び(C)の粒子を各々上記含有量となる量に調整した後、常法により混合して得ることができる。なお、成分(A)、(B)、及び(C)の粒子の添加順についても、特に制限はない。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を正極材料として適用し、正極と負極と電解液とセパレータ、又は正極と負極と固体電解質を必須構成とするリチウムイオン二次電池を構築することができる。具体的には、例えば本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質と、アセチレンブラックやケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデン、N-メチル-2-ピロリドン等とを混練して正極スラリーを調製した後、集電体に塗工し、次いでプレス成形して正極を作製する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質であれば、上記特定の3種の粒子(A)~(C)が密に関わり合い、プレス成形の際にも崩壊することなく容易に圧密されて電極密度を増大させ、エネルギー密度とレート特性とを有効に高め得る有用性の高い正極を得ることができる。
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト、シリコン系(Si、SiOx)、チタン酸リチウム又は非晶質炭素等の炭素材料等を用いることができる。そしてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。さらに、2種以上の上記の負極材料を併用してもよく、たとえばグラファイトとシリコン系の組み合わせを用いることができる。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43、Li7La3Zr212、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.30.46、Li3.6Si0.60.44、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO43、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO43、Li10GeP212、Li3.25Ge0.250.754、30Li2S・26B23・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P25、50Li2S・50GeS2、Li7311、Li3.250.954を用いればよい。
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型,角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各製造例の記載にしたがって、各成分の粒子を製造した。
得られた粒子の各物性について、表1に示す。
《一次粒子の平均粒径の測定》
X線回折装置(D8 ADVANCE A-25、BrukerAXS社製)を用いて測定を行った。
測定条件は、ターゲットCuKα、管電圧50kV、管電流350mA、走査範囲10~80°(2θ)、ステップ幅0.0234°、及びスキャンスピード0.13°/stepとした。XRD/ルベール法を用いてXRDパターンを解析して結晶子径を算出し、この値を一次粒子としての平均粒径とした。
《粒子(二次粒子)の平均粒径の測定》
粒子の粒度分布は、レーザー回折装置(マイクロトラックMT3000II、MicrotracBEL社製)を用いて測定した。
測定条件は、粒子透過性:透過、粒子形状:非球形、粒子屈折率:1.52とした。溶媒にはエタノールを用い、溶媒屈折率:1.36とした。
《タップ密度(g/cm3)》
JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法にしたがってタップかさ密度を測定し、これをタップ密度(g/cm3)とした。
《安息角(°)》
粉体特性評価装置パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン社製)を用い、JIS R 9301-2-2「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に規定される方法にしたがって、安息角(°)を測定した。
[製造例1:粒子(A-1)(NCM粒子)の製造]
Ni:Co:Mnのモル比が6:2:2となるように、硫酸ニッケル六水和物473g、硫酸コバルト七水和物169g、硫酸マンガン五水和物145g、及び水3Lを混合した後、かかる混合液に25%アンモニア水を、滴下速度300mL/分で滴下して、pHが11の金属複合水酸化物を含むスラリーa1を得た。
次いで、スラリーa1をろ過、乾燥して、金属複合水酸化物の混合物b1を得た後、かかる混合物b1に炭酸リチウム37gをボールミルで混合して粉末混合物c1を得た。得られた粉末混合物c1を、空気雰囲気下で800℃×4時間仮焼成して解砕した後、本焼成として空気雰囲気下で800℃×11時間焼成し、粒子(A-1)(LiNi0.6Co0.2Mn0.22)を得た。
[製造例2:粒子(B-1)(LMFP粒子)の製造]
LiOH・H2O 1272g、及び水4Lを混合してスラリーx1を得た。次いで、得られたスラリーx1を、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma-10002、スギノマシン社製、繊維径4~20nm)4124gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌し、Li3PO4を含むスラリーy1を得た。得られたスラリーy1に窒素パージして、スラリーy1の溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリーy1全量に対し、MnSO4・5H2O723g、FeSO4・7H2O1946gを添加してスラリーz1を得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、30:70であった。
次いで、得られたスラリーz1をオートクレーブに投入し、180℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は1.0MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して複合体Cz1を得た。得られた複合体Cz1を1000g分取し、これに水1Lを添加して、スラリーEz1を得た。得られたスラリーEz1を超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL-050M、藤崎電機株式会社製)を用いてスプレードライ(ノズルエアー流量35L/min、給気温度190℃)に付して造粒体Fz1を得た。得られた造粒体Fz1を、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-1)(LiMn0.3Fe0.7PO4)を得た。
[製造例3:粒子(B-2)(LMFP粒子)の製造]
スラリーx1を得るための水を25L、添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を90:10、セルロースナノファイバーの添加量を20.62kgとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-2)(LiMn0.9Fe0.1PO4)を得た。
[製造例4:粒子(B-3)(LMFP粒子)の製造]
添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を70:30、セルロースナノファイバーの添加量を9427gとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-3)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例5:粒子(B-4)(LMFP粒子)の製造]
添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を70:30、セルロースナノファイバーの添加量を7070g、スプレードライのノズルエアー流量を45L/minとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-4)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例6:粒子(B-5)(LMFP粒子)の製造]
添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を70:30、セルロースナノファイバーの添加量を8249g、スプレードライのノズルエアー流量を25L/min、給気温度を160℃とした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-5)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例7:粒子(B-6)(LMFP粒子)の製造]
添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を70:30、水熱反応を190℃で2時間、セルロースナノファイバーの添加量を7070gとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-6)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例8:粒子(B-7)(LMFP粒子)の製造]
スラリーx1を得るための水を20L、添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を70:30、水熱反応を130℃で1時間、セルロースナノファイバーの添加量を17.17kgとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-7)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例9:粒子(B-8)(LMFP粒子)の製造]
添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を70:30、セルロースナノファイバーの添加量を11.78kg、スプレードライの給気温度を170℃とした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-8)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例10:粒子(B-9)(LMFP粒子)の製造]
LiOH・H2O 1272g、及び水4Lを混合してスラリーaを得た。次いで、得られたスラリーaを、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma-10002、スギノマシン社製、繊維径4nm~20nm)7070gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌し、Li3PO4を含むスラリーbを得た。得られたスラリーbに窒素パージして、スラリーbの溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリーb全量に対し、MnSO4・5H2O 1688g、FeSO4・7H2O 834gを添加してスラリーcを得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
次いで、得られたスラリーcをオートクレーブに投入し、180℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して複合体dを得た。得られた複合体dを1000g分取し、これに水1Lを添加して、スラリーeを得た。得られたスラリーeを超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL-050M、藤崎電機株式会社製)を用いてスプレードライ(ノズルエアー流量35L/min、給気温度190℃)に付して造粒体S1を得た。
得られた造粒体S1を、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)にて650℃で30分焼成して、焼結体X1を得た。得られた焼結体X1を300g分取し、MPミキサー(日本コークス社製)を用いて、粉体にかかる負荷量0.4kWで2分間の圧縮力及びせん断力を付加し(負荷した積算エネルギー:0.16kJ/g)、圧密体Y1を得た。次いで、得られた圧密体Y1をアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)にて200℃で30分焼成して、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(B-9)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
[製造例11:粒子(C-1)(LFP粒子)の製造]
FeSO4を添加するのみでMnSO4を添加せず、セルロースナノファイバーの添加量を7070g、スプレードライのノズルエアー流量を50L/minとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(C-1)(LiFePO4)を得た。
[製造例12:粒子(C-2)(LFP粒子)の製造]
FeSO4を添加するのみでMnSO4を添加せず、セルロースナノファイバーの添加量を7070gとした以外、製造例2にしたがって、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持された粒子(C-2)(LiFePO4)を得た。
Figure 2022094473000001
[実施例1~11、比較例1~3]
表2に示す配合にしたがい、プラネタリーミキサー(PLM-2、井上製作所社製)を用いて各成分の粒子を混合し、正極活物質を得た。
次いで、得られた正極活物質を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表2に示す。
《電池特性(レート特性)の評価》
得られた各正極活物質を正極材料として用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた各正極活物質、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、高分子多孔フィルムを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR-2032)を得た。
得られたコイン型二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ-1001SD8、北斗電工社製)にて気温30℃環境での、0.2C(34mAh/g)、3C(510mAh/g)の放電容量を測定し、下記式(x)によるレート特性の値を求めた。
レート特性=(3Cにおける放電容量)/(0.2Cにおける放電容量)・・(x)
《体積あたりのエネルギー密度の算出》
得られたコイン型二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ-1001SD8、北斗電工社製)にて気温30℃環境での、0.2C(34mAh/g)の放電容量を測定した。次いで、下記式(y)による電極密度を算出し、これを下記式(z)に導入して体積あたりのエネルギー密度を算出した。
電極密度(g/cm3)=
正極中の正極活物質質量(g)/電極体積(cm3)(φ14mm×厚さ(μm))
・・・(y)
30℃環境下の正極体積エネルギー密度(Wh/L)=
30℃における放電容量(mAh/g)×平均電圧(V)×電極密度(g/cm3) ・・・(z)
Figure 2022094473000002

Claims (7)

  1. 次の成分(A)、(B)、及び(C):
    (A)下記式(a)で表される粒子 60質量%~90質量%
    LiNiaCobMnc1 w2・・・(a)
    (式(a)中、M1はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。a、b、c、wは、0.3≦a<1、0<b≦0.7、0<c≦0.7、0≦w≦0.3、かつ3a+3b+3c+(M1の価数)×w=3を満たす数を示す。)
    (B)下記式(b)で表される粒子 7質量%~36質量%
    LifMngFeh2 xPO4・・・(b)
    (式(b)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f、g、h及びxは、0<f≦1.2、0.15≦g≦1.1、0.08≦h≦0.9、0≦x≦0.3、及び0.2≦g/h≦9を満たし、かつf+(Mnの価数)×g+(Feの価数)×h+(M2の価数)×x=3を満たす数を示す。)
    (C)下記式(c)で表される粒子 1質量%~12質量%
    LijFek3 yPO4・・・(c)
    (式(c)中、M3はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd、及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。j、y及びkは、0<j≦1.2、0≦y≦0.3、0.5<k≦1.2、及びj+(Feの価数)×k+(M3の価数)×y=3を満たす数を示す。)
    を含有し、かつ成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))が2~9である
    リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 成分(B)の平均粒径が、10μm~30μmである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 成分(B)のタップ密度が、成分(A)のタップ密度よりも低く、0.7g/cm3~1.3g/cm3である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 成分(C)の平均粒径と成分(B)の平均粒径との比((C)r/(B)r)が、0.2~0.5である請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  5. 成分(A)の平均粒径が、3μm~20μmである請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  6. 成分(B)の安息角が、30°~45°である請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  7. 成分(B)の粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
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