JP2022143506A - リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物 Download PDF

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Abstract

【課題】リン酸マンガン鉄リチウム系粒子を用いつつ、リチウムイオン二次電池において容量とともに安全性を充分に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物を提供する。【解決手段】下記式(A):LiaMnbFecM1xPO4・・・(A)(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)で表され、タップ密度が0.3g/cm3~1.2g/cm3であり、かつ細孔径10nm~3000nmにおける細孔容積が0.2mL/g~0.7mL/gである粒子(A)と、式(B):LiNidCoeMnfM2yO2で表される粒子(B)と、式(C):LiNigCohMniM3zO2で表される粒子(C)とからなるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。【選択図】なし

Description

本発明は、高容量で安全性に優れるリチウムイオン二次電池を得るための、リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物に関する。
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。こうしたリチウムイオン二次電池の正極材料として、その安全性の高さや容量の大きさから、LiMnxFe1-xPO4のようなリン酸マンガン鉄リチウム系粒子が有望視されている。その一方で、リン酸マンガン鉄リチウム系粒子は導電性が低く、得られるリチウムイオン二次電池において充分に電池特性を高めるには、依然として改善を要することから、従来より種々の開発がなされている。
例えば、特許文献1には、エネルギー密度に優れた二次電池を得るべく、リン酸マンガン鉄リチウムとともにリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物を含む二次電池用正極が開示されており、リン酸マンガン鉄リチウムを単独で含む場合よりも、リチウムイオン二次電池における初期クーロン効率の向上に効果を発揮している。
特開2011-159388号公報
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、得られるリチウムイオン二次電池において高容量を発現させるべく、リン酸マンガン鉄リチウムとともに併用するリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物のニッケル含有量を高めようとすると、安全性(熱的安定性、以下同義)を確保するのが困難であり、依然として改善を要する状況にある。
したがって、本発明の課題は、リン酸マンガン鉄リチウム系粒子を用いつつ、リチウムイオン二次電池において容量とともに安全性を充分に高めることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物を提供することにある。
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、粒子内部に多くの空隙を有する特定のリン酸マンガン鉄リチウム系粒子とともに、ニッケル含有量が高低異なる2種のリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン系粒子を併用することにより、高容量でありながら優れた安全性を発現するリチウムイオン二次電池を実現することのできる正極材料が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、下記式(A):
LiaMnbFec1 xPO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表され、タップ密度が0.3g/cm3~1.2g/cm3であり、かつ細孔径10nm~3000nmにおける細孔容積が0.2mL/g~0.7mL/gである粒子(A)と、
下記式(B):
LiNidCoeMnf2 y2・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.6≦d≦0.95、0<e≦0.4、0<f≦0.4、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
で表される粒子(B)と、
下記式(C):
LiNigCohMni3 z2・・・(C)
(式(C)中、M3はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。g、h、i、zは、0.3≦g<0.6、0<h≦0.7、0<i≦0.7、0≦z≦0.3、かつ3g+3h+3i+(M3の価数)×z=3を満たす数を示す。)
で表される粒子(C)
とからなるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物を提供するものである。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物によれば、粒子内部に空隙を多く有し、電池製造工程中のプレス工程の際に良好な崩壊性を示すリン酸マンガン鉄リチウム系粒子である粒子(A)を含むため、ニッケル含有量が高低異なる2種のリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン系粒子である粒子(B)及び粒子(C)とも密接かつ効果的に絡み合い、有効に容量を高めつつ安全性(熱的安定性)にも優れるリチウムイオン二次電池を実現することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物は、下記式(A):
LiaMnbFec1 xPO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表され、タップ密度が0.3g/cm3~1.2g/cm3であり、かつ細孔径10nm~3000nmにおける細孔容積が0.2mL/g~0.7mL/gである粒子(A)と、
下記式(B):
LiNidCoeMnf2 y2・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.6≦d≦0.95、0<e≦0.4、0<f≦0.4、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
で表される粒子(B)と、
下記式(C):
LiNigCohMni3 z2・・・(C)
(式(C)中、M3はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。g、h、i、zは、0.3≦g<0.6、0<h≦0.7、0<i≦0.7、0≦z≦0.3、かつ3g+3h+3i+(M3の価数)×z=3を満たす数を示す。)
で表される粒子(C)
とからなる。
このように、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物は、上記式(A)で表される、いわゆるリン酸マンガン鉄リチウム系粒子である粒子(A)を含むとともに、ニッケル含有量が高いリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン系粒子である粒子(B)と、ニッケル含有量が低いリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン系粒子である粒子(C)を含む、3種の粒子が混在してなる粒子混合物である。
粒子(A)は、タップ密度及び細孔容積が上記特定の範囲内の値を示すように、その粒子内部に空隙を多く有するため、電池製造工程中のプレス工程の際に適度に崩壊して、粒子(B)や粒子(C)とも良好かつ均一に混在して粒子同士が密接かつ効果的に絡み合うこととなり、得られるリチウムイオン二次電池において、有効に容量を高めながら、充放電を繰り返しても各粒子の結晶構造の破壊を効果的に抑制することができ、優れた安全性をも兼ね備えることを可能とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物は、粒子(A)として、下記式(A):
LiaMnbFec1 xPO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
で表される粒子を含む。
上記式(A)で表される粒子(A)は、少なくともマンガン(Mn)又は鉄(Fe)を含むオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム系粒子であって、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子である。式(A)中、M1は、Mg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示し、好ましくはMg、又はZrである。aは、0<a≦1.2であって、好ましくは0.6≦a≦1.2であり、より好ましくは0.65≦a≦1.15であり、さらに好ましくは0.7≦a≦1.1である。bは、0≦b≦1.2であって、好ましくは0.25≦b≦0.8であり、より好ましくは0.35≦b≦0.8である。cは、0≦c≦1.2であって、好ましくは0.2≦c≦0.75であり、より好ましくは0.2≦c≦0.65である。そして、これらb及びcは、b+c≠0を満たす。xは、0≦x≦0.3であって、好ましくは0≦x≦0.15であり、より好ましくは0≦x≦0.1である。そして、これらa、b、c及びxは、a+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×x=3を満たす数である。
かかる粒子(A)としては、より具体的には、例えばLiMnPO4、LiFePO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.1Fe0.9PO4、LiMn0.8Fe0.1Mg0.1PO4、LiMn0.8Fe0.1Zr0.05PO4等が挙げられる。
粒子(A)のタップ密度は、金属の不要な溶出を有効に抑制しつつ、良好な崩壊性を発現する観点から、0.3g/cm3~1.2g/cm3であって、好ましくは0.3g/cm3~1.0g/cm3であり、より好ましくは0.3g/cm3~0.8g/cm3である。
なお、タップ密度とは、以下同様、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法により測定される「タップかさ密度」を意味する。
粒子(A)の細孔径10nm~3000nmにおける細孔容積は、上記タップ密度と相まって、粒子(A)に良好な崩壊性を発現させ、得られる電池において有効に安全性を高める観点から、0.2mL/g~0.7mL/gであって、好ましくは0.3mL/g~0.7mL/gであり、より好ましくは0.4mL/g~0.7mL/gである。
なお、細孔容積とは、水銀圧入式ポロシメータにより測定される値を意味する。
粒子(A)の平均粒径は、電池製造工程中のプレス工程の際に適度に崩壊して、リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物に含まれる他の粒子とも良好かつ均一に混在させる観点から、好ましくは6μm~20μmであり、より好ましくは8μm~20μmであり、さらに好ましくは10μm~20μmである。
なお、平均粒径とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
なお、粒子(A)は、優れた容量を確保する観点から、その粒子の表面に、適宜セルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持されてなる粒子としてもよい。
セルロースナノファイバーの繊維径は、1nm~1000nmであり、水への良好な分散性も有しており、電子導電パスの低下を有効に抑制して、得られる電池において優れた容量の発現を確保することができる。
水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。
粒子(A)の表面にセルロースナノファイバー由来の炭素及び水溶性炭素材料由来の炭素が担持してなる場合、セルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量の合計、すなわちセルロースナノファイバー由来の炭素の担持量及び水溶性炭素材料由来の炭素の担持量の合計は、粒子(A)100質量%中に、好ましくは0.8質量%~10.0質量%であり、より好ましくは1.0質量%~7.0質量%であり、さらに好ましくは1.2質量%~5.0質量%である。
なお、粒子(A)中に存在するセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量(担持量)、及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量(担持量)は、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により求められる値を意味する。
粒子(A)の含有量は、得られる電池において高容量かつ優れた安全性を発現させる観点から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物中に、好ましくは10質量%~30質量%であり、より好ましくは10質量%~25質量%であり、さらに好ましくは10質量%~20質量%である。
なお、粒子(A)が、その表面にセルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持してなる場合、粒子(A)の含有量には、これらの炭素の担持量も含むものとする。
粒子(A)は、例えば、以下の製造方法により得ることができる。具体的には、次の工程(I)~(III):
(I)リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を混合して得たスラリー水i、或いはリン酸三リチウム粒子、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、並びに水を混合して得たスラリー水i'を水熱反応に付して、粉末aを得る工程、
(II)得られた粉末a、発泡剤及び水を添加及び混合して得られたスラリー水iiを噴霧乾燥して、造粒体bを得る工程、
(III)得られた造粒体bを焼成する工程
を備える製造方法により得ることができる。
工程(I)は、リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を混合して得たスラリー水i、或いはリン酸三リチウム粒子、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、並びに水を混合して得たスラリー水i'を水熱反応に付して、粉末aを得る工程、すなわちスラリー水i又はスラリー水i'を水熱反応に付して、粉末aを得る工程である。
工程(I)においてスラリー水iを用いる場合、リチウム化合物としては、水酸化物(例えばLiOH・H2O、LiOH)、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、が挙げられる。なかでも、炭酸塩が好ましい。
マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物としては、マンガン化合物及び鉄化合物のほか、金属(M1)化合物を用いることができる。
マンガン化合物としては、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸マンガンが好ましい。
鉄化合物としては、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸鉄が好ましい。
金属(M1)化合物としては、上記式(A)中のM1と同義の金属を含む硫酸塩や硝酸塩等が挙げられる。
リン酸化合物としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでもリン酸を用いるのが好ましく、70質量%~90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
工程(I)においてスラリー水iを調製するにあたり、リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水の添加順序は特に限定されず、リチウム化合物、リン酸化合物、並びに水を添加した後、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を添加してもよく、或いはこれらリチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を一括して添加してもよい。
リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を混合して得たスラリー水iにおけるリチウム化合物の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは5質量部~50質量部であり、より好ましくは7質量部~45質量部である。
例えば、工程(I)において、リン酸化合物としてリン酸を用いる場合、リチウム化合物及び水を添加したスラリー水にリン酸を添加した後、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を添加して、スラリー水iを得るのが好ましい。この際、リン酸化合物を添加する前に、予めスラリー水を撹拌しておくのが好ましい。かかるスラリー水の撹拌時間は、好ましくは1分~15分であり、より好ましくは3分~10分である。また、スラリー水の温度は、好ましくは20℃~90℃であり、より好ましくは20℃~70℃である。
さらにリン酸を添加するにあたり、スラリー水を撹拌しながらリン酸を滴下するのが好ましい。リン酸の上記スラリー水への滴下速度は、好ましくは15mL/分~50mL/分であり、より好ましくは20mL/分~45mL/分であり、さらに好ましくは28mL/分~40mL/分である。また、リン酸を滴下しながらのスラリー水の撹拌時間は、好ましくは0.5時間~24時間であり、より好ましくは3時間~12時間である。さらに、リン酸を滴下しながらのスラリー水の撹拌速度は、好ましくは200rpm~700rpmであり、より好ましくは250rpm~600rpmであり、さらに好ましくは300rpm~500rpmである。
なお、スラリー水を撹拌する際、さらにスラリー水の沸点温度以下に冷却するのが好ましい。具体的には、80℃以下に冷却するのが好ましく、20℃~60℃に冷却するのがより好ましい。
リン酸化合物を混合した後のスラリー水は、リン酸1モルに対し、リチウムを2.0モル~4.0モル含有するのが好ましく、2.0モル~3.1モル含有するのがより好ましく、このような量となるよう、上記リチウム化合物とリン酸化合物を用いればよい。より具体的には、リン酸化合物を混合した後のスラリー水は、リン酸1モルに対し、リチウムを2.7モル~3.3モル含有するのが好ましく、2.8モル~3.1モル含有するのがより好ましい。
リン酸化合物を混合した後のスラリー水に対して窒素をパージすることにより、かかるスラリー水中での反応を完了させて、粒子(A)の前駆体である粉末a'をスラリーとして得る。窒素がパージされると、スラリー水中の溶存酸素濃度が低減された状態で反応を進行させることができ、また得られる粉末a'を含有するスラリー水の溶存酸素濃度も効果的に低減されるため、次いで添加する金属化合物の酸化を抑制することができる。かかる粉末a'を含有するスラリー水中において、粒子(A)の前駆体は、微細な分散粒子であるリン酸三リチウム(Li3PO4)として存在する。
次いで、上記スラリー水にマンガン化合物及び鉄化合物を添加すればよい。かかるマンガン化合物及び鉄化合物の使用モル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、好ましくは90:10~50:50であり、より好ましくは85:15~55:45であり、さらに好ましくは80:20~60:40である。また、これら金属化合物の合計添加量は、上記スラリー水中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは0.99モル~1.01モルであり、より好ましくは0.995モル~1.005モルである。
なお、スラリー水iを調製するにあたり、リチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を一括して添加する場合、これらリチウム化合物、マンガン化合物及び/又は鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水が上記のような量的関係を有していればよく、必ずしもスラリー水i中に、粒子(A)の前駆体としてのリン酸三リチウム(Li3PO4)が存在しなくともよい。
工程(I)においてスラリー水i'を用いる場合、リン酸三リチウム粒子及び水を混合して得たスラリー水に、マンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物を添加すればよい。スラリー水i'中におけるリン酸三リチウム粒子の含有量は、好ましくは7質量%~60質量%であり、より好ましくは9質量%~50質量%である。マンガン化合物及び鉄化合物の使用モル比、及び金属化合物の合計添加量は上記と同様である。
マンガン化合物、鉄化合物及び金属(M1)化合物の添加順序は特に制限されない。また、これらの金属化合物を添加するとともに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。かかる酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水等を使用することができる。酸化防止剤の添加量は、マンガン化合物、鉄化合物及び必要に応じて用いる金属(M1)化合物の合計1モルに対し、好ましくは0.01モル~1モルであり、より好ましくは0.03モル~0.5モルである。
スラリー水i'を用いる場合において、マンガン化合物、鉄化合物及び金属(M1)化合物を添加し、必要に応じて酸化防止剤等を添加することにより得られるスラリー水i中における粉末a'の含有量は、好ましくは10質量%~50質量%であり、より好ましくは15質量%~45質量%であり、さらに好ましくは20質量%~40質量%である。
次いで工程(I)では、得られた粉末a'、及び少なくともマンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物を含有するスラリー水i、或いはスラリー水i'を水熱反応に付して、粉末aを得る。
水熱反応に付する際に用いる水の使用量は、金属化合物の溶解性、撹拌の容易性、及び合成の効率等の観点から、スラリー水i(又はスラリー水i')中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは10モル~50モルであり、より好ましくは12.5モル~45モルである。
水熱反応は、100℃以上であればよく、130℃~200℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130℃~200℃で反応を行う場合、この時の圧力は0.3MPa~1.6MPaであるのが好ましく、140℃~160℃で反応を行う場合の圧力は0.3MPa~0.6MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は0.1時間~48時間が好ましく、さらに0.2時間~24時間が好ましい。
得られた粉末aは、ろ過後、水で洗浄し、乾燥することにより単離する。乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられる。
工程(II)は、工程(I)で得られた粉末a、発泡剤及び水を添加及び混合して得られたスラリー水iiを噴霧乾燥して、造粒体bを得る工程である。ここで発泡剤を用いることによりガスが発生し、かかるガスを造粒体bに内在することとなる。造粒体bに内在するガスは、後述する工程(III)を経ることにより焼失し、得られる粒子(A)内に空隙として存在させることができる。
発泡剤としては、具体的には、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、及び炭酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、粒子(A)内部に多くの空隙を効果的に内在させる観点から、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが好ましい。
発泡剤の添加量は、粒子(A)内部に多くの空隙を効果的に内在させる観点から、100質量部の粉末aに対し、好ましくは0.005質量部~1.25質量部であり、より好ましくは0.006質量部~0.6質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部~0.3質量部である。
スラリー水iiの固形分濃度は、タップ密度及び細孔容積が上記特定の範囲内の値を示すよう、発泡剤によって粒子(A)内部に多くの空隙を効果的に内在させる観点から、好ましくは35質量%~65質量%であり、より好ましくは40質量%~65質量%であり、さらに好ましくは45質量%~65質量%である。
水を添加した後、噴霧乾燥に付す前にスラリー水iiを予め撹拌するのが好ましい。かかるスラリー水iiの撹拌時間は、好ましくは3分~60分であり、より好ましくは5分~30分である。また、スラリー水iiの温度は、好ましくは10℃~60℃であり、より好ましくは20℃~40℃である。
なお、優れた容量を確保する観点から、粒子(A)の粒子の表面にセルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持させる場合、スラリー水i(又はスラリー水i')及び/又はスラリー水iiに、上記炭素の担持量となるような量で、セルロースナノファイバー及び/又は水溶性炭素材料を添加すればよい。
次いで、得られたスラリー水iiを噴霧乾燥に付して造粒体bを得る。噴霧乾燥では、用いる装置に応じて適宜運転条件を設定すればよい。
例えば、4流体ノズルを備えたマイクロミストドライヤー(藤崎電気(株)製 MDL-050M)での処理条件としては、熱風温度が110℃~300℃であるのが好ましく、110℃~180℃であるのがより好ましい。また、熱風の供給量とスラリー水の供給量の容積比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)が、500~10000であるのが好ましく、1000~9000であるのがより好ましい。
工程(III)は、工程(II)で得られた造粒体bを焼成する工程である。これにより、粒子(A)を得ることができる。
かかる工程(III)の焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中であるのが好ましく、焼成温度は、好ましくは500℃~1000℃であり、より好ましくは550℃~900℃であり、焼成時間は、好ましくは0.5時間~12時間であり、より好ましくは1時間~6時間である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物は、粒子(B)として、下記式(B):
LiNidCoeMnf2 y2・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.6≦d≦0.95、0<e≦0.4、0<f≦0.4、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
で表される粒子を含み、かつ粒子(C)として、下記式(C):
LiNigCohMni3 z2・・・(C)
(式(C)中、M3はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。g、h、i、zは、0.3≦g<0.6、0<h≦0.7、0<i≦0.7、0≦z≦0.3、かつ3g+3h+3i+(M3の価数)×z=3を満たす数を示す。)
で表される粒子を含む。
上記粒子(B)及び粒子(C)は、双方とも少なくともニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)を含む層状岩塩構造を有し、電子伝導性に優れるリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン系粒子(いわゆるLi-Ni-Co-Mn酸化物粒子(NCM粒子)であって、一次粒子が凝集することにより形成される二次粒子であり、粒子(B)はニッケル含有量が高く、粒子(C)はニッケル含有量が低い粒子である。このように、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物は、ニッケル含有量が高低異なる2種の粒子(B)及び粒子(C)を併用することにより、これらの粒子が電池製造工程中のプレス工程の際に適度に崩壊した微細な粒子(A)と均一に混在することと相まって、得られる電池において容量を高めるのに大いに寄与することができる。
粒子(B)を表す上記式(B)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示し、dは、0.6≦d≦0.95であって、好ましくは0.7≦d≦0.9である。e、f、yは、0<e≦0.4、0<f≦0.4、0≦y≦0.3であり、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。
上記式(B)で表される粒子(B)としては、具体的には、例えばLiNi0.94Co0.03Mn0.032、LiNi0.9Co0.05Mn0.052、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、LiNi0.6Co0.2Mn0.22等が挙げられる。なかでも、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、LiNi0.6Co0.2Mn0.22が好ましい。
粒子(B)の平均粒径は、粒子(C)とともに、電池製造工程中のプレス工程の際に適度に崩壊する粒子(A)と良好かつ均一に混在させる観点から、好ましくは4μm~13μmであり、より好ましくは6μm~13μmであり、さらに好ましくは8μm~13μmである。
なお、平均粒径とは、粒子(A)と同様、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
粒子(B)の含有量は、得られる電池において高容量かつ優れた安全性を発現させる観点から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物中に、好ましくは50質量%~80質量%であり、より好ましくは60質量%~80質量%であり、さらに好ましくは70質量%~80質量%である。
粒子(C)を表す上記式(C)中、M3はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。gは、0.3≦g<0.6であって、好ましくは0.32≦g≦0.5である。h、i、zは、0<h≦0.7、0<i≦0.7、0≦z≦0.3であり、かつ3g+3h+3i+(M3の価数)×z=3を満たす数を示す。
上記式(C)で表される粒子(C)としては、具体的には、例えばLiNi0.33Co0.33 Mn0.342、LiNi0.4Co0.3Mn0.32、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Zn0.032等が挙げられる。なかでも、LiNi0.33Co0.33 Mn0.342、LiNi0.33Co0.31Mn0.33Mg0.032が好ましい。
粒子(C)の平均粒径は、粒子(B)とともに、電池製造工程中のプレス工程の際に適度に崩壊する粒子(A)と良好かつ均一に混在させる観点から、好ましくは4μm~13μmであり、より好ましくは4μm~11μmであり、さらに好ましくは4μm~9μmである。
なお、平均粒径とは、粒子(A)及び粒子(B)と同様、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
粒子(C)の含有量は、得られる電池において高容量かつ優れた安全性を発現させる観点から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物中に、好ましくは10質量%~40質量%であり、より好ましくは10質量%~30質量%であり、さらに好ましくは10質量%~20質量%である。
なお、上記粒子(B)及び粒子(C)は、いずれも上記粒子(A)と同様、その粒子の表面に、適宜セルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素を担持されてなる粒子としてもよい。また、これら粒子(B)及び粒子(C)は、公知の方法により製造すればよく、例えば実施例に記載の方法により製造することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物は、上記粒子(A)とともに、上記粒子(B)及び粒子(C)を常法にしたがって混合することにより得ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物を正極材料として適用し、正極と負極と電解液とセパレータ、又は正極と負極と固体電解質を必須構成とするリチウムイオン二次電池を構築することができる。具体的には、例えばリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物と、アセチレンブラックやケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデン、N-メチル-2-ピロリドン等とを混練して正極スラリーを調製した後、集電体に塗工し、次いでプレス成形して正極を作製する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物であれば、上記粒子(A)が適度に崩壊し、リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物に含まれる上記粒子(B)や粒子(C)と密接かつ効果的に絡み合って良好かつ均一に混在し、これらの粒子を被覆するように崩壊して微細化した粒子(A)が散在することとなり、高容量で優れた安全性を発現し得る有用性の高い正極を得ることができる。
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト、シリコン系(Si、SiOx)、チタン酸リチウム又は非晶質炭素等の炭素材料等を用いることができる。そしてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。さらに、2種以上の上記の負極材料を併用してもよく、たとえばグラファイトとシリコン系の組み合わせを用いることができる。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43、Li7La3Zr212、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.30.46、Li3.6Si0.60.44、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO43、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO43、Li10GeP212、Li3.25Ge0.250.754、30Li2S・26B23・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P25、50Li2S・50GeS2、Li7311、Li3.250.954を用いればよい。
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型、角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
《粒子(二次粒子)の平均粒径の測定》
粒子の粒度分布は、レーザー回折装置(マイクロトラックMT3000II、MicrotracBEL社製)を用いて測定した。
測定条件は、粒子透過性:透過、粒子形状:非球形、粒子屈折率:1.52とした。溶媒にはエタノールを用い、溶媒屈折率:1.36とした。
《タップ密度(g/cm3)の測定》
JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法にしたがってタップかさ密度を測定し、これをタップ密度(g/cm3)とした。
《細孔容積(mL/g)の測定》
粒子の細孔容積は、水銀圧入式ポロシメーター(AutoPoreIV9520、micrometritics社製)を用いて水銀圧入法により測定を行った。粉末用試料セルを用い、測定圧力範囲は大気圧~414MPaとした。得られた細孔径分布から細孔径10nm~3000nmにおける細孔容積を求めた。
[製造例1:粒子(A-1)の製造]
LiOH・H2O 1272g、及び水4Lを混合してスラリー水xiを得た。次いで、得られたスラリー水xiを、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(セリッシュKY-100G、ダイセルファインケム社製、繊維径4nm~100nm)1650gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌し、Li3PO4を含むスラリー水yiを得た。得られたスラリー水yiに窒素パージして、スラリー水yiの溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリー水yi全量に対し、MnSO4・5H2O 1610g、FeSO4・7H2O 834gを添加してスラリー水ziを得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
次いで、得られたスラリー水ziをオートクレーブに投入し、180℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は1.0MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して粉末a1を得た。得られた粉末a1を1000g分取し、これに炭酸アンモニウム0.3g(100質量部の粉末a1に対し、0.03質量部)、及び水800mLを添加して、スラリー水ziiを得た。得られたスラリーziiを超音波撹拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL-050M、藤崎電機株式会社製)を用いてスプレードライ(ノズルエアー流量40L/min、給気温度160℃)に付して造粒体b1を得た。得られた造粒体b1を、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、粒子(A-1)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
得られた粒子(A-1)のタップ密度は1.0g/cm3、細孔容積は0.3mL/g、平均粒径は14μm、炭素の担持量は4.5質量%であった。
[製造例2:粒子(A-2)の製造]
粉末a1に添加する炭酸アンモニウムを12.2gとした(100質量部の粉末a1に対し、1.22質量部)以外、製造例1と同様にして、粒子(A-2)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
得られた粒子(A-2)のタップ密度は0.3g/cm3、細孔容積は0.7mL/g、平均粒径は15μm、炭素の担持量は4.5質量%であった。
[製造例3:粒子(A-3)の製造]
粉末a1に添加する炭酸アンモニウムを0.06gとした(100質量部の粉末a1に対し、0.006質量部)以外、製造例1と同様にして、粒子(A-3)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
得られた粒子(A-3)のタップ密度は1.2g/cm3、細孔容積は0.2mL/g、平均粒径は13μm、炭素の担持量は4.5質量%であった。
[製造例4:粒子(A-4)の製造]
粉末a1に添加する炭酸アンモニウムを15.2gとした(100質量部の粉末a1に対し、1.52質量部)以外、製造例1と同様にして、粒子(A-4)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
得られた粒子(A-4)のタップ密度は0.2g/cm3、細孔容積は0.8mL/g、平均粒径は15μm、炭素の担持量は4.5質量%であった。
[製造例5:粒子(A-5)の製造]
粉末a1に添加する炭酸アンモニウムを0.03gとした(100質量部の粉末a1に対し、0.003質量部)以外、製造例1と同様にして、粒子(A-5)(LiMn0.7Fe0.3PO4)を得た。
得られた粒子(A-5)のタップ密度は1.4g/cm3、細孔容積は0.1mL/g、平均粒径は13μm、炭素の担持量は4.5質量%であった。
[製造例6:粒子(B-1)の製造]
Ni:Co:Mnのモル比が8:1:1となるように、硫酸ニッケル六水和物631g、硫酸コバルト七水和物84g、硫酸マンガン五水和物72g、及び水3Lを混合した後、かかる混合液に25%アンモニア水を、滴下速度300mL/分で滴下して、pHが11の金属複合水酸化物を含むスラリーを得た。
次いで、得られたスラリーをろ過、乾燥して、金属複合水酸化物の混合物を得た後、かかる混合物に炭酸リチウム111gをボールミルで混合して粉末混合物を得た。得られた粉末混合物を、空気雰囲気下で800℃×4時間仮焼成して解砕した後、本焼成として空気雰囲気下で800℃×11時間焼成し、粒子(B-1)(LiNi0.8Co0.1Mn0.12、平均粒径:10μm)を得た。
[製造例7:粒子(C-1)の製造]
Ni:Co:Mnのモル比が5:2:3となるように、硫酸ニッケル六水和物394g、硫酸コバルト七水和物169g、硫酸マンガン五水和物217g、及び水3Lを混合した後、かかる混合液に25%アンモニア水を、滴下速度300mL/分で滴下して、pHが11の金属複合水酸化物を含むスラリーを得た。
次いで、得られたスラリーをろ過、乾燥して、金属複合水酸化物の混合物を得た後、かかる混合物に炭酸リチウム111gをボールミルで混合して粉末混合物を得た。得られた粉末混合物を、空気雰囲気下で800℃×4時間仮焼成して解砕した後、本焼成として空気雰囲気下で800℃×11時間焼成し、粒子(C-1)(LiNi0.5Co0.2Mn0.32、平均粒径:10μm)を得た。
[実施例1~6、比較例1~6]
表1~2に示す処方にしたがって、乳棒及び乳鉢を用いて所定の粒子を混合し、正極活物質粒子混合物を得た。
次いで、下記方法にしたがってリチウムイオン電池を作製し、電池特性について測定及び評価を行った。
結果を表1~2に示す。
《リチウムイオン電池の電池特性》
得られた各正極活物質粒子混合物を正極材料として用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた各正極活物質粒子混合物、ケッチェンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、ロールプレスを用いて20kNでプレスし、φ14mmの円盤状に打ち抜いて正極とした。
次いで、上記正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、高分子多孔フィルムを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR-2032)を得た。
得られたコイン型二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ-1001SD8、北斗電工社製)にて気温30℃環境での、0.2C(34mA/g)の放電容量を測定した。
また、下記式(x)により、電極密度を算出した。
電極密度(g/cm3)=
正極中の正極活物質粒子混合物の質量(mg)/電極体積(φ14mm×厚さ(μm))
・・・(x)
さらに得られたコイン型二次電池を、気温30℃環境で0.2C(34mA/g)、上限電圧4.3Vで定電流充電した後、コイン型二次電池を解体し、炭酸ジメチル及びエタノールを用いて正極を洗浄した。次いで、洗浄した正極から正極合材層を剥離し、得られた正極合材を用いて示差走査熱量計(DSC、NETZSCH社製DSC3100SR)により熱安定性を測定した。DSCの測定条件は、昇温 4℃/min、測定範囲30~400℃とした。
得られたDSCプロファイルにおいて発熱が始まる熱分解開始温度(℃)を求めた。
Figure 2022143506000001
Figure 2022143506000002

Claims (6)

  1. 下記式(A):
    LiaMnbFec1 xPO4・・・(A)
    (式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びxは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦x≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(M1の価数)×x=3を満たす数を示す。)
    で表され、タップ密度が0.3g/cm3~1.2g/cm3であり、かつ細孔径10nm~3000nmにおける細孔容積が0.2mL/g~0.7mL/gである粒子(A)と、
    下記式(B):
    LiNidCoeMnf2 y2・・・(B)
    (式(B)中、M2はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。d、e、f、yは、0.6≦d≦0.95、0<e≦0.4、0<f≦0.4、0≦y≦0.3、かつ3d+3e+3f+(M2の価数)×y=3を満たす数を示す。)
    で表される粒子(B)と、
    下記式(C):
    LiNigCohMni3 z2・・・(C)
    (式(C)中、M3はMg、Ti、Nb、Fe、Cr、Si、Al、Ga、V、Zn、Cu、Sr、Mo、Zr、Sn、Ta、W、La、Ce、Pb、Bi及びGeから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。g、h、i、zは、0.3≦g<0.6、0<h≦0.7、0<i≦0.7、0≦z≦0.3、かつ3g+3h+3i+(M3の価数)×z=3を満たす数を示す。)
    で表される粒子(C)
    とからなるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。
  2. 粒子(A)の含有量が、10質量%~30質量%である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。
  3. 粒子(B)の含有量が、50質量%~80質量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。
  4. 粒子(A)の平均粒径が、6μm~20μmである請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。
  5. 粒子(B)の平均粒径が4μm~13μmであり、かつ粒子(C)の平均粒径が4μm~13μmである請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。
  6. 粒子(A)の粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素及び/又は水溶性炭素材料由来の炭素が担持してなる請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子混合物。
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