JP2022092549A - 歯車加工方法及び歯車加工装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、歯車加工方法及び歯車加工装置に関する。
従来より、歯車に対する仕上げ加工として、例えばホーニング加工等が知られている。この加工においては、加工対象となるワーク(被加工歯車)と砥石用歯車とを互いにかみ合わせた状態で、回転させて仕上げ加工を行っている。
例えば、特許文献1,2には、ホーニング加工を行う歯車加工装置が記載されている。この装置では、ワークを、主軸台と心押し台とを有するワーク支持ユニットにより軸方向の両端から挟むことで支持し、これらの間に配置された、内歯車状の工具を有する環状の工具支持ユニットをワークに噛合させている。そして、この状態で工具支持ユニットの工具を回転させることにより、ワークと工具とを連れ周りさせ、ワークの加工を行っている。
ところで、加工対象となるワークは、ホーニング加工で除去される取り代分の厚みを有しているが、ホーニング工程前に熱処理が行われるため歪みが生じてしまうので、その厚みの形状は一様ではなく、例えば、ロット毎で形状が大きく相違することがある。このような状況で、同じ加工条件で全てのワークを加工しようとすると、加工精度にばらつきが生じるおそれがある。
これに対して、特許文献1には、加工中に発生している実際の負荷を測りながら、その値に応じた切込量でワークを加工する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、切削した後に、切り込み量の補正を行うため、仕上げ精度の向上には限界があり、また加工時間も長くなるおそれがある。また、歯形形状によってはオシレーション時の負荷が高くなる場合も考えられる。さらには、回転軸に使われるベアリングの磨耗によって負荷が高くなった場合、適切な切込量を設定できないことが考えられる。
また、特許文献2には、予め設定した加工条件でワークをテスト加工し、その加工条件にもとづいた収束研削負荷を割り出し、この収束研削負荷を考慮した新たな加工条件によってワークを加工する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、最初の加工条件を設定するのに熟練性が求められる。そのため、加工条件が甘ければ(負荷を掛けたくなければ)テスト加工の時間が長くなる一方、条件が厳しければ、機械(工具)に負担を掛ける。また、テスト品は無駄になるという問題もある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ワークの形状にばらつきがある場合でも、ワークの加工精度を向上することができ、さらに、オペレータの熟練度を問わず機械の能力を最大限に生かしつつ加工時間が短く仕上げ精度を高めることが可能な、加工方法及び加工装置を提供することを目的とする。
本発明に係る歯車加工方法は、歯面の歯形方向の輪郭データ、歯面の歯筋方向の輪郭データ、及び歯のピッチデータの少なくとも1つに基づく、被加工歯車の形状パラメータを、入力する、入力ステップと、計測された前記形状パラメータに基づいて、前記被加工歯車を加工する工具の切り込み速度、加工時間、前記被加工歯車と前記工具との接触角、及び前記被加工歯車の加工時の回転速度の少なくとも1つを含む加工条件を決定する、加工条件決定ステップと、を備えている。
上記歯車加工方法においては、前記形状パラメータが、前記歯面の歯形方向及び前記歯筋方向の輪郭データに基づくときには、前記加工条件を、前記切り込み速度とし、前記加工条件決定ステップでは、前記工具の加工初期位置から終了位置に至る間で、前記歯形方向および前記歯筋方向の輪郭に基づいた切削面積を算出して、当該面積が所定の基準よりも大きくなった時点から前記切り込み速度を遅くするように加工することができる。
上記歯車加工方法においては、前記加工条件決定ステップでは、前記工具の加工初期位置では前記歯面の歯筋方向の輪郭に対応するように前記接触角を設定し、終了位置に近づくにつれて理想歯筋と平行になるように前記工具を移動させることができる。
本発明に係る歯車加工装置は、被加工歯車を支持する、ワーク支持ユニットと、当該被加工歯車を連れ周りさせながら加工を行う歯車状の工具を有し、前記被加工歯車に近接離間可能に構成された、工具支持ユニットと、前記被加工歯車に関する、歯面の歯形方向の輪郭データ、歯面の歯筋方向の輪郭データ、及び歯のピッチデータの少なくとも1つに基づく形状パラメータとして記憶する、記憶部と、前記形状パラメータに基づいて、被加工歯車を加工する工具の切り込み速度、加工時間、前記被加工歯車と前記工具との接触角、及び前記被加工歯車の加工時の回転速度の少なくとも1つを含む加工条件を決定する、制御部と、を備えている。
上記歯車加工装置においては、前記形状パラメータが、前記歯面の歯形方向および前記歯筋方向の輪郭データに基づくときには、前記加工条件を、前記切り込み速度とし、前記制御部は、前記工具の加工初期位置から終了位置に至る間で、前記歯形方向および前記歯筋方向の輪郭に基づいた切削面積を算出して、当該面積が所定の基準よりも大きくなった時点から前記切り込み速度を遅くするように、前記被加工歯車の加工を行うように構成することができる。
上記歯車加工装置においては、前記制御部は、前記工具の加工初期位置では前記歯面の歯筋方向の輪郭に対応するように、前記接触角を設定し、終了位置に近づくにつれて理想歯筋と平行になるように前記工具を移動させるように構成することができる。
本発明によれば、ワークの形状にばらつきがある場合でも、ワークの加工精度を向上することができる。
以下、本発明に係る加工装置を歯車加工装置に適用した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1はこの歯車加工装置の正面図、図2は図1のA-A線断面図、図3は図1のB-B線矢視図である。なお、以下の説明では、図1の左右方向をX軸方向、図1の上下方向をZ軸方向、図2の左右方向をY軸方向と称する。そして、X,Y,Z軸の標記とともに示されている向きの表示(上下前後左右)を基準に説明をしていく。但し、これらの向きは、本発明の一態様におけるものであり、他の配置も可能であるため、これらの向きに限定されない。
<1.歯車加工装置の概要>
図1~図3に示すように、本実施形態に係る歯車加工装置は、基台1と、その上に配置された工具支持ユニット2及びワーク支持ユニット3と、装置の駆動等を制御する制御部4と、を備えている。工具支持ユニット2は、支持体21と、この支持体21の前方に連結され、内歯車状の工具(砥石)222が取付けられた工具ハウジング22とを有しており、工具222の軸方向が、概ねX軸方向に向くように配置されている。これにより、工具222がワークWである被加工歯車と噛合するようになっている。
図1~図3に示すように、本実施形態に係る歯車加工装置は、基台1と、その上に配置された工具支持ユニット2及びワーク支持ユニット3と、装置の駆動等を制御する制御部4と、を備えている。工具支持ユニット2は、支持体21と、この支持体21の前方に連結され、内歯車状の工具(砥石)222が取付けられた工具ハウジング22とを有しており、工具222の軸方向が、概ねX軸方向に向くように配置されている。これにより、工具222がワークWである被加工歯車と噛合するようになっている。
一方、ワーク支持ユニット3は、ワークWを支持する主軸台31と心押し台32とで構成されており、これらは、工具支持ユニット2を挟んで、基台1の両側に配置されている。以下、各ユニット2,3及び制御部4について、詳細に説明する。
<2.工具支持ユニット>
まず、工具支持ユニット2について、説明する。図2に示すように、上述した支持体21には、Y軸方向に延びる軸部材211が設けられており、この軸部材211の前側に工具ハウジング22が取り付けられている。軸部材211は、Y軸周りに回転可能に支持されているため、軸部材211が回転すると工具ハウジング22がY軸周りに回転するようになっている。これによりワークWに交差角を付与することができる。
まず、工具支持ユニット2について、説明する。図2に示すように、上述した支持体21には、Y軸方向に延びる軸部材211が設けられており、この軸部材211の前側に工具ハウジング22が取り付けられている。軸部材211は、Y軸周りに回転可能に支持されているため、軸部材211が回転すると工具ハウジング22がY軸周りに回転するようになっている。これによりワークWに交差角を付与することができる。
また、図示を省略するが、支持体21は、基台1上でY軸方向に往復動可能となっており、これによって、ワークWに対し工具222が切り込みを施すことができるようになっている。支持体21を移動させる手段は特には限定されないが、例えば、支持体21を基台1に配置されたY軸方向に延びるレール上に移動可能に支持し、ボールネジ、ナット、及びモータなどの公知の手段でレールに沿って移動させることができる。
次に、工具ハウジング22について、説明する。図2及び図3に示すように、工具ハウジング22は、上述した軸部材211に連結される環状の支持部221を備えており、この支持部221は、その軸方向が、概ねX軸方向に向くように配置されている。また、支持部221の内周面には、ベアリング23を介して、環状の内歯車状の工具222が回転自在に取付けられている。そして、この工具222に内側からワークWが噛み合い、連れ回りしながら、ワークWが加工される。また、工具222の外周面には駆動用歯車223が取付けられており、この駆動用歯車223は、支持部221の上部に固定されたモータ224によって回転する。すなわち、モータ224と駆動用歯車223との間に減速機(図示省略)が設けられており、これによって、モータ224が駆動すると、所定の減速比によって、駆動用歯車223が工具222とともに回転する。
<3.ワーク支持ユニット>
次に、ワーク支持ユニット3について説明する。図1及び図3に示すように、ワーク支持ユニット3は、上述した主軸台31と、心押し台32とで構成されており、工具ハウジング22を挟んで、X軸方向の左側に主軸台31が配置され、右側に心押し台32が配置されている。そして、これら主軸台31と心押し台32は、X軸方向に互いに近接離間し、ワークWを回転自在に支持するようになっている。主軸台31は、ワークWに係合し、X軸方向に延びる第1軸部材311が設けられており、この第1軸部材311は、主軸台31に内蔵されたモータ312によってX軸周りに回転するようになっている。
次に、ワーク支持ユニット3について説明する。図1及び図3に示すように、ワーク支持ユニット3は、上述した主軸台31と、心押し台32とで構成されており、工具ハウジング22を挟んで、X軸方向の左側に主軸台31が配置され、右側に心押し台32が配置されている。そして、これら主軸台31と心押し台32は、X軸方向に互いに近接離間し、ワークWを回転自在に支持するようになっている。主軸台31は、ワークWに係合し、X軸方向に延びる第1軸部材311が設けられており、この第1軸部材311は、主軸台31に内蔵されたモータ312によってX軸周りに回転するようになっている。
また、主軸台31は、基台1上に配置されX軸方向に延びる第1ガイドレール15上に配置されており、この第1ガイドレール15に沿って移動する。主軸台31の下部にはナット(図示省略)が固定されており、このナットにボールネジ(図示省略)が螺合している。ボールネジは、X軸方向に延びており、基台1に固定されたモータ(図示省略)に連結されている。したがって、モータが駆動することで、ボールネジが回転し、これに伴って、主軸台31がX軸方向に移動するようになっている。
心押し台32も、主軸台31と同様に構成されている。すなわち、心押し台32は、主軸台31の第1軸部材311と係合し、X方向に延びる第2軸部材321が設けられており、この第2軸部材321は、X軸周りに回転自在に支持されている。心押し台32は、基台1上に配置されX軸方向に延びる第2ガイドレール16上に配置されており、この第2ガイドレール16に沿って移動する。心押し台32も、主軸台31と同様に、図示を省略するナット、ボールネジ、及びモータにより駆動し、X軸方向に移動するようになっている。
そして、ワークWは、図3に示すように、主軸台31と心押し台32によって支持され、主軸台31と心押し台32が同期してX軸方向に移動することで、ワークWもX軸方向に移動するようになっている。
<4.制御部>
続いて、制御部4について、図4を参照しつつ説明する。図4に示すように、制御部4は、CPU41,RAM(図示省略)、及び記憶部42を有するPLCや汎用のコンピュータによって構成することができ、歯車加工装置の各種の駆動を制御するようになっている。加工時においてワークに作用する実負荷はモータ224の電流値を検知することで得られる。あるいは、主軸台31の振動や変異を計測することでも、ワークに作用する実負荷を得ることができる。
続いて、制御部4について、図4を参照しつつ説明する。図4に示すように、制御部4は、CPU41,RAM(図示省略)、及び記憶部42を有するPLCや汎用のコンピュータによって構成することができ、歯車加工装置の各種の駆動を制御するようになっている。加工時においてワークに作用する実負荷はモータ224の電流値を検知することで得られる。あるいは、主軸台31の振動や変異を計測することでも、ワークに作用する実負荷を得ることができる。
一般に、加工時に作用する実負荷が増加していくとワークWや工具222を支持する部位が撓みはじめ、各部位の振動も増加していく。実負荷が、機械固有の所定値を越えると歯面精度のばらつきが更に酷くなり、加工精度の低下が許容できなくなる。そして、最悪の場合は、工具222である砥石の損傷や、工具支持ユニット2、ワーク支持ユニット3の損傷が発生し、メンテナンス対応が必要となり生産性が悪化する。
そのため、この制御部4では、前述したような加工精度の低下が許容できるところの負荷の所定値を設定し、この所定値を越えない範囲で、後述するように、加工対象となる、熱処理された加工前ワークWの素材形状に基づいて、加工条件を決定するように構成されている。そのため、記憶部42には、加工条件を決定するための加工プログラム421、計測されたワークWの形状に関する形状パラメータ422、及び、決定された加工条件に関する加工条件データ423が記憶されている。その他、この制御部4の記憶部42には、ワークWの加工を始め、歯車加工装置を駆動するための各種のデータが記憶されている。
加工条件を決定するためのワークWの形状は、種々のものがあるが、例えば、ワークWの歯面の歯形方向の輪郭、歯面の歯筋方向の輪郭、歯のピッチの誤差(隣接ピッチ誤差、単一ピッチ誤差、累積ピッチ誤差)、歯溝のフレ等を挙げることができる。これらの情報は、例えば、熱処理加工したワークWを納入した際に、熱処理業者が作成した歯車精度検査成績書が添付されていれば、その書類から知ることができる。そのような場合には、それらの数値をキーボード等の入力手段で入力し、記憶部42に記憶させることができる。
あるいは、ワークWの現物形状を計測することで入力することもできる。具体的には、例えば、ワークWの歯面の歯形方向の輪郭は、図5に示すように、歯幅方向の中央を通過するAからDまでの経路に沿って、接触式の計測器(例えば、市販の歯車測定器)で輪郭の形状を計測することができる。また、ワークWの歯面の歯筋方向の輪郭は、図5に示すように、ピッチ点を通過するGからJまでの経路に沿って、接触式の計測器を用いて輪郭の形状を計測することができる。
計測の結果、歯形方向の輪郭(A~D)としては、例えば、図6のような形状が得られる。歯形方向の輪郭は、一般的には、インボリュート曲線により構成されているが、これが図6に示す理想歯形となる。これに対して、実測歯形が計測によって得られる。この図では、歯元側では、実測歯形が、理想歯形よりも膨らんでいること(凸)を示し、歯先側では、実測歯形が、理想歯形よりも凹んでいることを示している。このうち、A-B間及びC-D間は、動力伝達面から逸脱した部分を計測しているため理想歯形と大きく離れた値が現れたものであるから、B-C間のデータを、動力伝達上での利用範囲の実測歯形の値として用いる。そして、この利用範囲での実測歯形から直線状の平均線を算出し、この平均線を形状パラメータとして利用する。但し、形状パラメータは、このような平均線ではなく、実測歯形の曲線上の任意の複数の点を抽出し、これらを形状パラメータとすることができる。この点は、次に説明する歯筋方向の輪郭においても同様である。
また、歯筋方向の輪郭としては、例えば、図7のような形状が得られる。歯面の歯筋方向の輪郭は、一般的には、直線により構成されているが、これが図7に示す理想歯筋となる。これに対して、実測歯筋が計測の結果得られる。この図では、軸方向の一方の面側(G側)では、実測歯筋が、理想歯筋よりも膨らんでいること(凸)を示し、他方の面側(J側)では、実測歯筋が、理想歯筋よりも凹んでいることを示している。このうち、G-H間及びI-I間のデータは、動力伝達面から逸脱した部分を計測しているため理想歯筋と大きく離れた値が現れたものであるから、H-I間のデータを利用範囲の実測歯筋として用いる。そして、この利用範囲での実測歯筋の値から直線状の平均線を算出し、この平均線を形状パラメータとして利用する。
また、このような形状パラメータの取得のためには、ワークの複数箇所で計測を行い、その平均を用いることができる。例えば、図8に示すように、90度おきに配置された4つの歯(R1~R4)を選択し、各歯の2つの歯面において、計測を行う。そして、合計8つのデータを取得し、その平均を形状パラメータとして利用することができる。但し、これは一例であり、形状パラメータの取得に当たっては、歯の数、歯の位置、歯面の数(一方の面のみ、または両面)は、適宜設定することができる。また、計測対象となるワークWの数も特には限定されず、例えば、各ロットのワークWから1以上のワークWを選択し、それらの平均を算出することで、ロット毎に形状パラメータを設定することができる。
以上のようにして得られた形状パラメータに基づいて、加工条件を決定することができる。この点について、図6及び図7を参照しつつ説明する。まず、図6について説明する。図6は歯面方向においてワークWに対する工具222の加工開始前の状態を示している。加工の際は矢印の方向(切込方向)に工具222を移動させる。実際に加工する場合は次のような状態が起こる。工具222が移動していくなかで、まずは理想歯形よりも最も膨らんでいるB周辺の凸部を削り始め、工具222とワークWとが一回転する毎に削り取る面積が段階的に増えていく。途中、凹部にさしかかれば削り取る面積は増えない。P-X1間の凸部に差し掛かかれば、これを削り始め、工具222は最終的に点線部まで進む。この近辺では切削面積は最大になる。所定の切り込み速度に対して切削面積の増加する割合が大きくなるほど切削量が増えて大きな負荷が作用する。このような大きい負荷は振動を大きくし加工精度に影響を及ぼすおそれがある。そこで、本実施形態では加工パラメータ422に基づいて、工具222の所定の切り込み速度における切削面積の変動を推定し、予め設定した切削面積の閾値(所定の基準)に対して、その閾値を越えないときは切り込み速度を早くし、越えるときは遅くするような加工プログラムを構成する。これにより過大な負荷を抑制することができる。このような切り込み速度の設定が、加工条件となる。なお、切り込み速度を徐々に低くすることもできる。
したがって、制御部4の記憶部42には、形状パラメータ422に対応する加工条件を、加工条件データ423として記憶しておき、形状パラメータ422が入力されると、対応する加工条件を出力することができる。あるいは、完全に対応する加工条件がない場合には、近似する加工条件に基づいて、最適な加工条件を算出することができる。この点は、他の形状パラメータにおいても同様である。
次に、図7について説明する。図7は歯筋方向においてワークWに対する工具222の加工開始前の状態を示している。加工の際は矢印の方向(切削後の形状)に工具222を移動させる。実際に加工する場合は次のような状態が起こる。工具222が移動していくなかで、まずは理想歯筋よりも最も膨らんでいるG-H周辺の凸部を削り始め、工具222とワークWとが一回転する毎に削り取る面積が段階的に増えていく。途中、凹部にさしかかれば削り取る面積は増えない。次の膨らみに差し掛かかれば、これを削り始め、工具222は、最終的に点線部まで進む。この近辺では切削面積は最大になる。所定の切り込み速度に対して切削面積の増加する割合が大きくなるほど切削量が増えて大きな負荷が作用する。このような大きい負荷は、上記の通り振動を大きくし加工精度に影響を及ぼすおそれがある。そこで、本実施形態では加工パラメータ422に基づいて、工具222の所定の切り込み速度における切削面積の変動を推定し、予め設定した切削面積の閾値(所定の基準)に対して、その閾値を越えないときは切り込み速度を早くし、越えるときは遅くするような加工プログラムを構成する。これにより過大な負荷を抑制することができる。
なお、加工初期においては、形状パラメータの歯筋方向の輪郭(傾き)に対し平行に近くなるように工具222とワークWの接触角を設定し、加工終期には理想歯筋に平行となるようにその接触角を調整するようにしてもよい。なお、この調整に際し歯面方向の工具222の切削姿勢には影響しない。加工時に接触角の調整を行えば効率よく加工できるうえ工具222やワークWに過大な切削負荷が作用することは避けられる。
また、ピッチ誤差が大きい場合には、例えば、加工時間を長くし、工具222の形状がワークに十分に転写されるようにする。
次に、上述した形状パラメータの設定方法について説明する。その方法は、特には限定されず、以下の方法を例示することができる。
(1)計測器で計測した実測歯形等の実測データを制御部4に送信し、制御部4において、形状パラメータを算出する。
(2)計測器で計測した実測歯形等の実測データに基づいて、計測器で形状パラメータを算出し、これを制御部4に送信する。あるいは、操作パネル5において、形状パラメータを入力する。
(1)計測器で計測した実測歯形等の実測データを制御部4に送信し、制御部4において、形状パラメータを算出する。
(2)計測器で計測した実測歯形等の実測データに基づいて、計測器で形状パラメータを算出し、これを制御部4に送信する。あるいは、操作パネル5において、形状パラメータを入力する。
<5.歯車加工装置の動作>
次に、上記のように構成された歯車加工装置の動作について、図9も参照しつつ説明する。図9はワークの加工にかかるフローチャートである。図9に示すように、まず、加工対象となるワークWの形状を計測し、実測されたデータから、計測器あるいは制御部4において、形状パラメータを算出する(ステップS11)。計測器で算出した場合には、有線または無線により制御部4に形状パラメータを送信してもよいし、操作パネル5に作業者が入力することもできる。この場合、制御部4に入力される形状パラメータは、上述したうちの1つだけ、例えば、歯面方向の輪郭に関するもののみであってもよく、複数種の形状パラメータを入力してもよい。なお、形状パラメータは、記憶部42に記憶しておく。
次に、上記のように構成された歯車加工装置の動作について、図9も参照しつつ説明する。図9はワークの加工にかかるフローチャートである。図9に示すように、まず、加工対象となるワークWの形状を計測し、実測されたデータから、計測器あるいは制御部4において、形状パラメータを算出する(ステップS11)。計測器で算出した場合には、有線または無線により制御部4に形状パラメータを送信してもよいし、操作パネル5に作業者が入力することもできる。この場合、制御部4に入力される形状パラメータは、上述したうちの1つだけ、例えば、歯面方向の輪郭に関するもののみであってもよく、複数種の形状パラメータを入力してもよい。なお、形状パラメータは、記憶部42に記憶しておく。
続いて、制御部4に入力された形状パラメータから加工条件を決定する(ステップS12)。上述したように、制御部4は、形状パラメータに対応する加工条件を記憶部42から抽出する。あるいは、上述したように、形状パラメータから対応する加工条件を算出する。こうして、加工条件が決定されると、この加工条件に基づいて加工を開始する(ステップS13)。具体的には、以下の通りである。
まず、図2に示すように、ワークWを主軸台31の軸部材311に取り付けた後、主軸台31及び心押し台32を互いに近接させ、工具ハウジング22の内方でワークWを挟持する。この状態で、主軸台31の軸部材311をワークWとともに回転させる。これと並行して、モータ(図示せず)を駆動し工具支持ユニット2の工具222をワークWと同期するように、回転させる。続いて、主軸台31及び心押し台32を一体的にY軸方向に移動させ、ワークWを工具222に近接させる。そして、ワークWと工具222とを噛み合わせ、連れ廻りさせることで、ワークWの加工を行う。また、加工時にワークWに接触した工具222が切削状態を引き起こすため工具ハウジング22をY軸周りに傾倒させ、ワークWに対する交差角を付与する。この交差角については、上述した歯筋方向の輪郭に関する形状パラメータが設定された場合で加工効率を上げる必要があるときには、加工中に、この交差角を基準としてY軸周りに傾倒させ接触角を調整することができる。また、このような加工作業と同時に、工具222とワークWとの噛み合わせ部分に切削油を噴射し、加工部位の冷却、潤滑、切り屑除去を行う。こうして、所定時間加工を行った後、各モータの駆動を停止し、加工されたワークWを取り外す。
<6.特徴>
本実施形態によれば、ワークWの形状を予め計測することで、個々のワークWの形状に応じた加工を行うことができる。したがって、例えば、上記のような歯面方向の形状を取得した場合、ワークの形状にばらつきがあっても、加工時の過大な負荷を抑制でき、個々のワークWの形状に応じた精度の高い加工を行うことができる。したがって、オペレータの熟練度を問わず、機械の能力を最大限に生かしつつ、加工精度のばらつきを低減することができる。その結果、例えば、上述したように、加工時間の効率化、及び振動を低減した加工等を行うこともできる。
本実施形態によれば、ワークWの形状を予め計測することで、個々のワークWの形状に応じた加工を行うことができる。したがって、例えば、上記のような歯面方向の形状を取得した場合、ワークの形状にばらつきがあっても、加工時の過大な負荷を抑制でき、個々のワークWの形状に応じた精度の高い加工を行うことができる。したがって、オペレータの熟練度を問わず、機械の能力を最大限に生かしつつ、加工精度のばらつきを低減することができる。その結果、例えば、上述したように、加工時間の効率化、及び振動を低減した加工等を行うこともできる。
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。
(1)ワーク支持ユニット3の構成は、特には限定されず、例えば、主軸台31のみでワークWを支持することもできる。
(2)工具支持ユニット2の構成は、特には限定されず、少なくとも、ワークWと工具の一方を駆動させ、他方が連れ回りしつつ加工できるように構成されていればよい。
(3)上記各実施形態において、例えば、工具支持ユニット2の支持体21または工具支持ユニット2の少なくとも一方をZ軸周りに回転するように構成すれば、ワークWに対してクラウニング加工を行うことができる。また、上記実施形態では、工具支持ユニット2をY軸方向に移動させているが、ワーク支持ユニットをY軸方向に移動させてもよい。また、工具ハウジング22がY軸周りに回転可能にしているが、これを固定して所定の交差角のみ形成できるようにしておき、回転ができないように構成することもできる。
(4)ワークの実測値を作業者が入力する態様において、操作ミスで異常値が入力された場合、この異常値に基づいて形状パラメータを算出して加工を行うと、異常に高い負荷が作用し工具や機械が損傷することが予測される。したがって、異常値が入力されたと判断された場合には、入力エラーをディスプレイに表示して再入力を促すと共に、それまでは加工工程に移れないようにしてもよい。
(5)上記各実施形態では、いわゆるホーニング加工について説明したが、本発明は、外歯車状の工具を用いるシェービング加工等、歯車の加工全般に適用することができる。
2 ワーク支持ユニット
3 工具支持ユニット
4 制御部
W ワーク
3 工具支持ユニット
4 制御部
W ワーク
Claims (6)
- 歯面の歯形方向の輪郭データ、歯面の歯筋方向の輪郭データ、及び歯のピッチデータの少なくとも1つに基づく、被加工歯車の形状パラメータを入力する入力ステップと、
入力された前記形状パラメータに基づいて、前記被加工歯車を加工する工具の切り込み速度、加工時間、前記被加工歯車と前記工具との接触角、及び前記非加工歯車の加工時の回転速度の少なくとも1つを含む加工条件を決定する、加工条件決定ステップと、
を備えている、歯車加工方法。 - 前記形状パラメータが、前記歯面の歯形方向および前記歯筋方向の輪郭データに基づくときには、前記加工条件を、前記切り込み速度とし、
前記加工条件決定ステップでは、前記工具の加工初期位置から終了位置に至る間で、前記歯形方向および前記歯筋方向の輪郭に基づいた切削面積を算出して、当該切削面積が所定の基準よりも大きくなった時点から前記切り込み速度を遅くする、請求項1に記載の歯車加工方法。 - 前記加工条件決定ステップにおいて、前記工具の加工初期位置では前記歯面の歯筋方向の輪郭に対応するように前記接触角を設定し、終了位置に近づくにつれて理想歯筋と平行になるように前記工具を移動させる、請求項2に記載の歯車加工方法。
- 被加工歯車を支持する、ワーク支持ユニットと、
当該被加工歯車を連れ周りさせながら加工を行う歯車状の工具を有し、前記被加工歯車に近接離間可能に構成された、工具支持ユニットと、
前記被加工歯車に関する、歯面の歯形方向の輪郭データ、歯面の歯筋方向の輪郭データ、及び歯のピッチデータの少なくとも1つに基づく形状パラメータを記憶する、記憶部と、
前記形状パラメータに基づいて、被加工歯車を加工する工具の切り込み速度、加工時間、前記被加工歯車と前記工具との接触角、及び前記被加工歯車の加工時の回転速度の少なくとも1つを含む加工条件を決定する、制御部と、
を備えている、歯車加工装置。 - 前記形状パラメータが、前記歯面の歯形方向および前記歯筋方向の輪郭データに基づくときには、前記加工条件を、前記切り込み速度とし、
前記制御部は、前記工具の加工初期位置から終了位置に至る間で、前記歯形方向および前記歯筋方向の輪郭に基づいた切削面積を算出して、当該切削面積が所定の基準よりも大きくなった時点から前記切り込み速度を遅くするように、前記被加工歯車の加工を行うように構成されている、請求項4に記載の歯車加工装置。 - 前記制御部は、前記工具の加工初期位置では前記歯面の歯筋方向の輪郭に対応するように前記接触角を設定し、終了位置に近づくにつれて理想歯筋と平行になるように前記工具を移動させるように構成されている、請求項5に記載の歯車加工装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020205429A JP2022092549A (ja) | 2020-12-10 | 2020-12-10 | 歯車加工方法及び歯車加工装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2020205429A Pending JP2022092549A (ja) | 2020-12-10 | 2020-12-10 | 歯車加工方法及び歯車加工装置 |
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Country | Link |
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-
2020
- 2020-12-10 JP JP2020205429A patent/JP2022092549A/ja active Pending
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