JP2020069621A - 歯車加工装置及び歯車加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯切り工具で工作物を加工するときの振動を高精度に解析できる簡易な構成の歯車加工装置及び歯車加工方法を提供すること。【解決手段】歯車加工装置1は、歯切り工具42が装着される回転可能な回転主軸40と、工作物Wを回転可能に支持する回転テーブル70と、歯車加工装置1より発生する振動を検出する振動検出部90と、振動検出部90で検出した振動を周波数解析する振動解析部170と、回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動の周波数解析結果に基づいて、歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動の周波数解析結果を評価する振動評価部180と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、歯車加工装置及び歯車加工方法に関する。
例えば、特許文献1には、予め測定された工作物の振動(縞模様)と、歯切り工具で工作物を加工するときの振動との相互相関関数によって振動を解析する装置が記載されている。
特許文献1に記載の装置では、相互相関関数によって振動を解析しており、振動センサで実測する場合と比較して精度が低下する傾向にある。よって、この振動解析を歯車加工に適用した場合、工作物の加工の良否を高精度に評価できないおそれがある。
本発明は、歯切り工具で工作物を加工するときの振動を高精度に解析して工作物の加工の良否を高精度に評価できる歯車加工装置及び歯車加工方法を提供することを目的とする。
本発明の歯車加工装置は、歯切り工具と工作物とを同期回転させながら、前記工作物の回転軸線方向に前記歯切り工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物に歯車を創成する歯車加工装置であって、前記歯車加工装置は、前記歯切り工具が装着される回転可能な回転主軸と、前記工作物を回転可能に支持する回転テーブルと、前記歯車加工装置より発生する振動を検出する振動検出部と、前記振動検出部で検出した前記振動を周波数解析する振動解析部と、前記回転主軸及び前記回転テーブルの空転時の前記振動の周波数解析結果に基づいて、前記歯切り工具による前記工作物の加工時の前記振動の周波数解析結果を評価する振動評価部と、を備える。
本発明の歯車加工方法は、歯切り工具を工作物と同期回転させながら、前記工作物の回転軸線方向に前記歯切り工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物に歯車を創成する歯車加工方法であって、前記歯車加工方法は、前記歯車の加工により発生する振動を検出する振動検出工程と、前記振動検出工程で検出した前記振動を周波数解析する振動解析工程と、前記歯切り工具が装着される回転可能な回転主軸及び前記工作物を回転可能に支持する回転テーブルの空転時の前記振動の周波数解析結果に基づいて、前記歯切り工具による前記工作物の加工時の前記振動の周波数解析結果を評価する振動評価工程と、を備える。
本発明の歯車加工装置及び歯車加工方法によれば、振動を実測して周波数解析しているので、当該振動を高精度に解析できる。そして、回転主軸及び回転テーブルを空転させたときの振動の周波数解析結果に基づいて、歯切り工具で工作物を加工するときの振動の周波数解析結果を振動評価するため、歯車加工全体の加工状況を把握でき、工作物の加工の良否を高精度に評価できる。
<1.第一実施形態>
(1−1.歯車加工装置の概略構成)
本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、第一実施形態の歯車加工装置の概略構成を図1−図3を参照して説明する。
(1−1.歯車加工装置の概略構成)
本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、第一実施形態の歯車加工装置の概略構成を図1−図3を参照して説明する。
図1に示すように、歯車加工装置1は、相互に直交する3つの直進軸(X軸、Y軸及びZ軸)と2つの回転軸(A軸及びC軸)を駆動軸として有するマシニングセンタである。歯車加工装置1は、ベッド10と、コラム20と、サドル30と、回転主軸40と、テーブル50と、チルトテーブル60と、回転テーブル70と、保持部80と、振動センサ90(振動検出部)と、制御装置100と、を主に備える。
ベッド10は、床上に配置される。このベッド10の上面には、コラム20が設けられる。コラム20は、ベッド10内に収容されるX軸モータ21及びX軸モータ21に連結されるボールねじ22により、X軸線方向(水平方向)へ移動可能に設けられる。さらに、コラム20の側面には、サドル30が設けられる。
サドル30は、コラム20内に収容されるY軸モータ11(図3参照)及びY軸モータ11に連結されるボールねじ(図示省略)によりY軸線方向(鉛直方向)に移動可能に設けられる。回転主軸40は、サドル30内に収容される主軸モータ41(図3参照)によりZ軸線回りに回転可能に設けられる。回転主軸40の先端には、歯切り工具42が装着され、歯切り工具42は、回転主軸40の回転に伴って回転する。
ここで、図2を参照しながら、歯切り工具42について説明する。図2に示すように、歯切り工具42は、外周面に複数の刃42aを備えるスカイビングカッタであり、各々の刃42aの端面は、すくい角γを有するすくい面を構成する。各々の刃42aのすくい面は、歯切り工具42の中心軸線を中心としたテーパ状としてもよく、刃42aごとに異なる方向を向く面状に形成してもよい。
図1に戻り、説明を続ける。ベッド10の上面には、テーブル50が設けられる。テーブル50は、ベッド10内に収容されるZ軸モータ12(図3参照)及びZ軸モータ12に連結されるボールねじ(図示省略)によりZ軸線方向(水平方向)に移動可能に設けられる。テーブル50の上面には、チルトテーブル60を支持するチルトテーブル支持部61が設けられる。そして、チルトテーブル支持部61には、チルトテーブル60がA軸線(X軸線と平行)回りに揺動可能に設けられる。
チルトテーブル60の底面には、回転テーブル70及びテーブル用モータ62(図3参照)が設けられる。回転テーブル70は、テーブル用モータ62によりA軸線に直交するC軸線回りに回転可能に設けられる。回転テーブル70には、工作物Wを保持する保持部80が装着される。工作物Wを歯切り工具42で加工する際には、加工点に供給されるクーラントが飛散し、また加工点から切粉が飛散するため、サドル30及びテーブル50の各移動範囲を覆うようにハウジング2が設けられる。すなわち、ハウジング2の内部は、外部と仕切られた加工室2aとなる。
ここで、従来の歯車加工装置では、歯切り工具で工作物を加工するときに振動センサで検出した振動を周波数解析し、周波数変化量に基づいてびびり振動を判定する(例えば、特許第5674491号公報参照)。しかし、この歯車加工装置では、加工点に近い回転主軸に振動センサが設けられるため、クーラントに対する振動センサの防水対策や発熱に対する振動センサの耐熱対策、さらに振動センサの配線と切粉との接触による断線の防止対策が必要となり、装置コストが上昇する傾向にある。
本実施形態の振動センサ90は、3次元加速度センサモジュールであり、コラム20の上面(上部)に設けられ、回転主軸40(歯切り工具42)の回転及び回転テーブル70(工作物W)の回転により発生する振動を検出する。振動センサ90は、加工室2aの外部に設けられるので、クーラントに対する防水対策や発熱に対する耐熱対策、さらに切粉との接触による断線の防止対策が不要となり、装置コストの上昇を抑制できる。
また、振動センサ90は、回転主軸40及び回転テーブル70の各回転に伴う振動を高精度に検出する必要がある。そこで、モーダル解析を実施したところ、コラム20の上部が他の部位、例えばコラム20の中央部やベッド10と比較して大きな振幅の振動vcが発生し、S/Nが良好であるため周波数解析によるピーク値の判別が容易であることが判明した。コラム20の上部には、コラム20の下部に設けられるボールねじ22の中心軸線回りの振動vbが拡大されて出てくるからである。
(1−2.制御装置の構成)
次に、制御装置100の構成について説明する。ここで、制御装置100の第一の機能として、制御装置100は、スカイビング加工により工作物Wに歯車を創成する。
次に、制御装置100の構成について説明する。ここで、制御装置100の第一の機能として、制御装置100は、スカイビング加工により工作物Wに歯車を創成する。
具体的には、図5に示すように、制御装置100は、チルトテーブル60をA軸線回りまわりに揺動させることにより、工作物Wの回転軸線Cを、歯切り工具42の回転軸線Oに対して傾斜させる。この工作物Wの回転軸線Cに対する歯切り工具42の回転軸線Oの傾斜角度を交差角δと称す。そして、工作物Wと歯切り工具42とを同期回転させながら、歯切り工具42を工作物Wの回転軸線C方向へ送る(相対移動させる)ことにより、工作物Wに歯車を創成する。
制御装置100は、スカイビング加工において、工作物Wの回転速度V1、歯切り工具42の回転速度V2、及び歯切り工具42の工作物Wに対する工作物Wの回転軸線(中心軸線C)方向への送り速度V4を制御する。工作物Wの回転速度V1は、切削速度V3と交差角δに基づいて決定され、歯切り工具42の回転速度V2は、工作物Wの回転速度V1と同期させる。そして、切削速度V3及び送り速度V4は、歯車加工に要する加工時間(サイクルタイム)、歯切り工具42の諸元、工作物Wの材質、及び、工作物Wに形成する歯車のねじれ角等に基づいて設定される。
すなわち、切削速度V3及び送り速度V4は、歯車加工を行う際の加工能率及び歯切り工具42の工具寿命等を勘案し、最適な速度に設定される。スカイビング加工においては、切削速度V3及び送り速度V4を速くするほど、加工能率が向上する一方、面性状等の品質が低下する傾向がある。
第一実施形態では、制御装置100は、最適な切削速度V3及び交差角δに基づいて、基準回転速度Nwを決定する。そして、工作物Wの回転速度V1を基準回転速度Nwで一定とし、歯切り工具42の回転速度V2を工作物Wの回転速度V1と同期させる。そして、最適な送り速度V4で歯切り工具42を工作物Wの回転軸線C方向へ送る。
また、制御装置100の第二の機能として、制御装置100は、回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動、及び歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動を振動センサ90で検出して周波数解析し、空転時の振動の周波数解析結果に基づいて、加工時の振動の周波数解析結果を評価する。振動を振動センサ90で実測して周波数解析しているので、当該振動を高精度に解析できる。そして、歯車加工装置1全体の加工状況を把握でき、工作物Wの加工の良否を高精度に評価できる。
なお、空転時の振動は、回転主軸40に歯切り工具42が装着された状態及び回転テーブル70(保持部80)に工作物Wが保持された状態で発生する振動である。加工時は、回転主軸40に歯切り工具42が装着された状態であるとともに、回転テーブル70(保持部80)に工作物Wが保持された状態であるため、振動評価の精度を高めることができるからである。
この振動評価は、具体的に、周波数解析結果に対し基準化処理を行ってノイズの除去を行い、回転主軸40の異常の有無を判断する。この基準化処理とは、次式(1)で表されるびびり振動検出ロジックであり、周波数iにおける歯切り工具42による工作物Wの加工時のパワースペクトルXiと、周波数iにおける回転主軸40及び回転テーブル70の空転時のパワースペクトルの平均値aiとの差を、周波数iにおける基準化した変量(基準化スペクトル)Diとして求める処理である。これにより、加工時に発生する振動の周波数ピークを際立たせることができる。なお、σiは、周波数iにおける空転時のパワースペクトルの標準偏差である。
例えば、図6は、歯切り工具42による工作物Wの加工時に得られた振動を解析したときの加速度Aと周波数Fとの関係を示す。図7は、回転主軸40及び回転テーブル70の空転時に得られた振動を解析したときの加速度Aと周波数Fとの関係を示す。図8は、図6の加工時に得られた振動の周波数解析結果及び図7の空転時に得られた振動の周波数解析結果に基づいて、式1から求まる基準化スペクトルSと周波数Fとの関係を示す。
図8から明らかなように、周波数Fa付近で大きな基準化スペクトルSaを示している。つまり、周波数Fa付近のびびり振動が発生していることになる。この基準化スペクトルSの大きさは、工作物Wを加工したときの面粗と関係しており、基準化スペクトルSが大きいほど、工作物Wを加工したときの面粗は粗くなる傾向にある。
そこで、面粗の上限許容値に対応する基準化スペクトルStを閾値として予め設定しておく。図8の場合、得られた基準化スペクトルSaは、閾値である基準化スペクトルStを超えているため、周波数Fa付近に大きなびびり振動が発生しており、工作物Wは加工不良であると評価する。
以上のように、制御装置100は、第一の機能としてスカイビング加工により工作物Wに歯車を創成する制御と、第二の機能として検出した振動を周波数解析して工作物Wを評価する制御を行う。このため、図3に示すように、制御装置100は、基準回転速度設定部110と、基準送り速度設定部120と、工作物回転速度制御部130と、工具回転速度制御部140と、送り速度制御部150と、振動解析部170と、振動評価部180と、を備える。
基準回転速度設定部110は、切削速度V3及び交差角δに基づいて決定される基準回転速度Nwを設定する。基準送り速度設定部120は、歯車加工を行う際の加工能率及び歯切り工具42の工具寿命等を勘案して決定される基準送り速度Fwを設定する。工作物回転速度制御部130は、テーブル用モータ62を駆動制御し、工作物Wの回転速度V1を一定の基準回転速度Nwとして維持する。
工具回転速度制御部140は、主軸モータ41を駆動制御し、歯切り工具42の回転速度V2を工作物Wの回転速度V1に同期させる。送り速度制御部150は、Y軸モータ11及びZ軸モータ12を駆動制御し、送り速度V4を一定の基準送り速度Fwとして維持しつつ、歯切り工具42と工作物Wとの相対距離を調整する。
振動解析部170は、振動センサ90で検出した振動を周波数解析する。振動評価部180は、回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動の周波数解析結果に基づいて、歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動の周波数解析結果を評価する。振動評価部180は、空転時の振動の周波数解析結果及び加工時の振動の周波数解析結果の差に対し基準化処理を行い、基準化処理の結果から工作物Wの加工の良否を評価する。
(1−3.制御装置による振動解析及び振動評価の処理)
次に、制御装置100による振動解析及び振動評価の処理(歯車加工方法)を説明する。なお、回転主軸40には、歯切り工具42が装着され、回転テーブル70(保持部80)には、工作物Wが保持され、また、工作物Wの回転軸線Cに対する歯切り工具42の回転軸線Oの傾斜角度は、交差角δに設定され、歯切り工具42は、工作物Wの加工開始位置に位置決めされているものとする。
次に、制御装置100による振動解析及び振動評価の処理(歯車加工方法)を説明する。なお、回転主軸40には、歯切り工具42が装着され、回転テーブル70(保持部80)には、工作物Wが保持され、また、工作物Wの回転軸線Cに対する歯切り工具42の回転軸線Oの傾斜角度は、交差角δに設定され、歯切り工具42は、工作物Wの加工開始位置に位置決めされているものとする。
制御装置100は、回転テーブル70を回転させて工作物Wの回転速度V1を基準回転速度Nwで一定に維持するとともに、回転主軸40を回転させて歯切り工具42の回転速度V2を工作物Wの回転速度V1に同期させる(図4のステップS1)。そして、振動センサ90で回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動を検出し、検出した空転時の振動を周波数解析する(図4のステップS2、振動検出工程、振動解析工程)。
次に、制御装置100は、工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を維持したままで、テーブル50及びサドル30を移動して歯切り工具42を工作物Wの回転軸線C方向へ送って工作物Wに歯車を創成する(図4のステップS3)。そして、振動センサ90で歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動を検出し、検出した加工時の振動を周波数解析する(図4のステップS4、振動検出工程、振動解析工程)。
次に、制御装置100は、歯切り工具42による工作物Wの加工時に得られた振動の周波数解析結果及び回転主軸40及び回転テーブル70の空転時に得られた振動の周波数解析結果の差に対し基準化処理を行う(図4のステップS5、振動評価工程)。そして、基準化処理により得られる基準化スペクトルが所定の閾値を超えているか否かを判断する(図4のステップS6、振動評価工程)。
基準化スペクトルが所定の閾値を超えていない場合は、工作物Wは加工良と評価し(図4のステップS7、振動評価工程)、基準化スペクトルが所定の閾値を超えている場合は、工作物Wは加工不良と評価する(図4のステップS8、振動評価工程)。そして、次の工作物Wの有無を判断し(図4のステップS9)、次の工作物Wが有るときは、ステップS1に戻って上述の処理を繰り返し、次の工作物Wが無いときは、全ての処理を終了する。
<2.第二実施形態>
(2−1.歯車加工装置の概略構成)
本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した第二実施形態について、図面を参照しながら説明する。この第二実施形態の歯車加工装置1の概略構成は、制御装置200(図9参照)の構成を除いて第一実施形態の歯車加工装置1の概略構成と同一構成であるため、歯車加工装置1の概略構成の詳細な説明は省略し、制御装置200の構成及び制御装置200による振動解析及び振動評価の処理について説明する。
(2−1.歯車加工装置の概略構成)
本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した第二実施形態について、図面を参照しながら説明する。この第二実施形態の歯車加工装置1の概略構成は、制御装置200(図9参照)の構成を除いて第一実施形態の歯車加工装置1の概略構成と同一構成であるため、歯車加工装置1の概略構成の詳細な説明は省略し、制御装置200の構成及び制御装置200による振動解析及び振動評価の処理について説明する。
(2−2.制御装置の構成及び制御装置による振動解析及び振動評価の処理)
第一実施形態の制御装置100では、工作物Wの回転速度V1を一定の基準回転速度Nwに維持して歯車加工を行っているが、第二実施形態の制御装置200では、基準回転速度Nwを基準として工作物Wの回転速度V1を変動させながら歯車加工を行う。これに伴い、制御装置200は、歯切り工具42の回転速度V2を変動させ、工作物Wの回転速度V1と同期させる。
第一実施形態の制御装置100では、工作物Wの回転速度V1を一定の基準回転速度Nwに維持して歯車加工を行っているが、第二実施形態の制御装置200では、基準回転速度Nwを基準として工作物Wの回転速度V1を変動させながら歯車加工を行う。これに伴い、制御装置200は、歯切り工具42の回転速度V2を変動させ、工作物Wの回転速度V1と同期させる。
さらに、制御装置200は、基準送り速度Fwを基準として、工作物Wの回転速度V1と同期するように送り速度V4を変動させる。この制御によれば、歯切り工具42が工作物Wに接触する周期が不規則となるため、歯切り工具42及び工作物Wの回転速度が変動せずに一定である場合と比べて、工作物Wに発生するびびり振動の増幅が抑制される。
次に、図3に対応させて示す図9を参照して、制御装置200について詳細に説明する。なお、図3の制御装置100の構成部と同一構成部は同一番号を付す。制御装置200は、基準回転速度設定部110と、基準送り速度設定部120と、工作物回転速度制御部130と、工具回転速度制御部140と、送り速度制御部150と、増減率設定部260と、振動解析部170と、振動評価部180と、を備える。
工作物回転速度制御部130は、テーブル用モータ62を駆動制御し、工作物Wの回転速度V1を変動させる。工具回転速度制御部140は、主軸モータ41を駆動制御し、歯切り工具42の回転速度V2を変動させると共に、歯切り工具42の回転速度V2を工作物Wの回転速度V1に同期させる。送り速度制御部150は、Y軸モータ11及びZ軸モータ12を駆動制御し、送り速度V4と工作物Wの回転速度V1とが同期するように送り速度V4を変動させつつ、歯切り工具42と工作物Wとの相対距離を調整する。
増減率設定部260は、工作物Wの回転速度V1の速度増減率及び周波数増減率を設定する。工作物Wの回転速度V1の速度増減率は、後述する振動解析及び振動評価の処理に基づいて、工作物Wのびびり振動等の発生を抑制可能な増減率に設定される。また、工作物Wの回転速度V1の周波数増減率は、歯切り工具42の回転速度V2や、工作物Wの回転速度V1、工作物Wの切削力等に基づいたシミュレーションやハンマリング等による計測により求められる工作物Wの固有振動数に基づいて設定される。
上述のように、工作物回転速度制御部130及び工具回転速度制御部140は、工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させているため、振動評価部180は、当該変動範囲内で複数の工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を予め選択しておく。そして、振動評価部180は、選択した複数の工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2のそれぞれにおいて、回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動の周波数解析結果を求める。
そして、振動評価部180は、各周波数解析結果に基づいて、変動する歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動の周波数解析結果を評価する。そして、振動評価部180は、空転時の振動の各周波数解析結果及び加工時の振動の周波数解析結果の差に対し基準化処理を行い、基準化処理の結果から工作物Wの加工の良否を評価する。そして、この評価結果に基づいて、増減率設定部260には、工作物Wのびびり振動等の発生を抑制可能な工作物Wの回転速度V1の増減率が設定される。
(2−3.制御装置による歯車加工処理)
次に、図10及び図11を参照して、制御装置200により実行される歯車加工処理について説明する。なお、歯車加工処理を実行するにあたり、基準回転速度設定部110には基準回転速度Nwが、基準送り速度設定部120には基準送り速度Fwが、それぞれ設定される。また、増減率設定部260には、工作物Wの回転速度V1の速度増減率及び周波数増減率が設定される。
次に、図10及び図11を参照して、制御装置200により実行される歯車加工処理について説明する。なお、歯車加工処理を実行するにあたり、基準回転速度設定部110には基準回転速度Nwが、基準送り速度設定部120には基準送り速度Fwが、それぞれ設定される。また、増減率設定部260には、工作物Wの回転速度V1の速度増減率及び周波数増減率が設定される。
歯車加工処理は、工作物回転速度制御部130による制御に基づき、工作物Wの回転速度V1を設定する(図10のステップS11)。具体的には、工作物回転速度制御部130は、図11に太線で示されるように、基準回転速度Nwと速度増減率及び周波数増減率の値とに基づき、工作物Wの回転速度V1を一定の周期で反復的に増減する。
なお、工作物Wの回転速度V1の速度上側値及び速度下側値は、基準回転速度Nwに速度増減率を乗じた値となる。例えば、基準回転速度Nwを1000min-1、速度増減率を±15%に設定した場合に、速度上側値は、1150min-1となり、速度下側値は、850min-1となる。
そして、工作物Wの回転速度V1は、各変動周期において、速度上側値以下の回転速度と速度下側値以上の回転速度との間で周期的に変動する。つまり、工作物Wの回転速度V1は、少なくとも300min-1の速度変動幅を有し、少なくとも850min-1〜1150min-1の範囲で周期的に増減する。なお、図11に示すグラフの変動振幅は、工作物Wの回転速度V1の速度変動幅に相当する。
さらに、工作物Wの回転速度V1の変動周波数は、工作物Wの基準回転速度Nwの値に工作物Wの回転速度V1の周波数増減率の値を乗じた値となる。例えば、基準回転速度Nwが1200min-1(20Hz)、工作物Wの回転速度V1の周波数増減率が5%であれば、変動周波数(Hz)は、20Hz×5%=1Hzとなる。
歯車加工処理は、工具回転速度制御部140による制御に基づき、歯切り工具42の回転速度V2を設定する(図10のステップS12)。具体的には、工具回転速度制御部140は、工作物Wに形成する歯車と歯切り工具42との歯数比と、工作物回転速度制御部130により設定された工作物Wの回転速度V1等とに基づき、歯切り工具42の回転速度V2と工作物Wの回転速度V1とが同期するように、歯切り工具42の回転速度V2を設定する。
例えば、基準回転速度Nwが1000min-1、速度増減率が±15%であり、工作物Wに形成される歯車と歯切り工具42との歯数比の比が3:1であるとする。この場合、工具回転速度制御部140は、2550min-1〜3450min-1の範囲で歯切り工具42の回転速度V2を周期的に変動させる。
この場合、工具回転速度制御部140は、歯切り工具42の回転速度V2の変動周波数が1Hzとなるように(工作物Wの回転速度V1の変動周波数と同一となるように)、歯切り工具42の回転速度V2を反復的に増減させる。これにより、歯切り工具42の回転速度V2は、工作物Wの回転速度V1と同期しながら周期的に増減する。
歯車加工処理は、送り速度制御部150による制御に基づき、送り速度を設定する(図10のステップS13)。具体的には、送り速度制御部150は、基準送り速度Fwと工作物Wの回転速度V1の変動周波数とに基づき、送り速度V4が工作物Wの回転速度V1の変動周波数と同期するように、送り速度V4を変動させる。これにより、送り速度V4は、一定の周期で反復的に増減する。以上の処理により、歯切り工具42は、工作物Wに噛合しながら、工作物Wに連続的な歯車加工を行い、工作物Wに歯面形状を創成する。
この歯車加工処理によれば、歯切り工具42,242により工作物Wに歯車を形成する際に、歯切り工具42,242が工作物Wを切削する切削力(切削断面積)が不均一となる。これにより、歯切り工具42,242及び工作物Wの回転速度V1が変動せずに一定である場合と比べて、工作物Wに発生するびびり振動の増幅が抑制される。その結果、工作物Wに発生するびびり振動の発生を抑制しつつ、工作物Wに対する歯切り工具42の切込量を大きく設定することができる。よって、工作物Wに形成された加工面の面性状の向上と加工能率の向上との両立を図れる。
(2−4.工作物の回転速度の変動と工作物に発生するびびり振動との関係)
図12A及び図12Bを参照しながら、工作物Wの回転速度V1の変動と、歯車加工時において工作物Wに発生するびびり振動との関係について説明する。図12A及び図12Bは、所定の速度増減率及び所定の変動周波数率で歯車加工を行う場合における工作物Wの回転速度V1(基準回転速度Nw)と歯切り工具42による切込量の増加率(安定限界増加率)との関係を示すグラフである。
図12A及び図12Bを参照しながら、工作物Wの回転速度V1の変動と、歯車加工時において工作物Wに発生するびびり振動との関係について説明する。図12A及び図12Bは、所定の速度増減率及び所定の変動周波数率で歯車加工を行う場合における工作物Wの回転速度V1(基準回転速度Nw)と歯切り工具42による切込量の増加率(安定限界増加率)との関係を示すグラフである。
図12A及び図12Bにおいて、横軸は、工作物Wの回転速度V1(基準回転速度Nw)を、縦軸は、基準回転速度Nwを維持したまま回転速度V1を変動させずに歯車加工を行った場合と比較したときの安定限界増加率を、それぞれ示している。また、このグラフに示す安定限界増加率は、工作物Wの回転数、歯切り工具42の回転数、工作物Wの切削力(抵抗)等に基づくシミュレーションやハンマリング等により算出した工作物Wの固有振動数に基づいて求められる。
図12A及び図12Bに示すグラフは、所定の基準回転速度Nwで回転する工作物Wに対する切込量(安定限界)が、線図A〜Hで示す切込量の値よりも小さく設定されていれば、工作物Wにびびり振動を発生させることなく、安定した歯車加工を行うことができることを示す。また、図12A及び図12Bに示すグラフでは、安定限界増加率が高くなるほど加工能率が向上することを示す。
図12Aに示す線図Aは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±5%、回転速度の変動周波数率を20%としたときの安定限界増加率を示す。線図Bは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±10%、回転速度V1の変動周波数率を10%としたときの安定限界増加率を示す。
線図Cは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±10%、回転速度V1の変動周波数率を20%としたときの安定限界増加率を示す。線図B及び線図Cは、線図Aと比べて、安定限界増加率が高いことから、工作物Wの回転速度V1の速度増減率が±10%の場合には、工作物Wの回転速度V1の速度増減率が±5%である場合と比べて、安定限界増加率が高くなると考えられる。
線図Dは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±15%、回転速度V1の変動周波数率を10%としたときの安定限界増加率を示す。線図Eは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±15%、回転速度V1の変動周波数率を30%としたときの安定限界増加率を示す。線図D及び線図Eは、線図B及び線図Cと比べて、安定限界増加率が高いことから、工作物Wの回転速度V1の速度増減率が±15%の場合には、工作物Wの回転速度V1の速度増減率が±10%である場合と比べて、安定限界増加率が高くなると考えられる。
図12Bに示す線図Fは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±20%、回転速度V1の変動周波数率を1%としたときの安定限界増加率を示す。線図Gは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±20%、回転速度V1の変動周波数率を5%としたときの安定限界増加率を示す。線図Hは、基準回転速度Nwに対する工作物Wの回転速度V1の速度増減率を±20%、回転速度V1の変動周波数率を20%としたときの安定限界増加率を示す。
線図G及び線図Hは、線図Fと比べて、安定限界増加率がマイナスとなる工作物Wの回転速度V1の範囲が小さい。これにより、工作物Wの回転速度V1の変動周波数率が5%以上である場合には、工作物Wの回転速度V1の変動周波数率が1%である場合と比べて、びびり振動の発生が抑制されると考えられる。
図13は、回転速度V1を変動させずに歯車加工を行う場合の安定限界と、回転速度V1の速度増減率を±15%、且つ、回転速度V1の変動周波数率を5%に設定した場合の安定限界とを比較したグラフである。図13に示すように、例えば、基準回転速度が1200min-1であるとき、工作物Wの回転速度V1を変動させた場合には、回転速度V1を変動させない場合と比べて、安定限界増加率を約2倍上昇させることができる。
なお、歯車加工装置1による歯車加工では、工作物Wの回転速度V1と安定限界との関係に基づき、工作物Wに応じた基準回転速度Nwを基準回転速度設定部110に設定する。そして、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させ、工具回転速度制御部140は、歯切り工具42の回転速度V2を工作物Wの回転速度V1に同期させながら増減させる。この場合、制御装置200は、歯切り工具42の基準回転速度Nwを設定する場合と比べて、歯切り工具42と工作物Wとの歯数比を考慮することが不要である分、基準回転速度Nwの設定を容易に行うことができる。
また、工作物回転速度制御部130は、各変動周期において、工作物Wの回転速度V1の速度上側値が10%以上、好ましくは15%以上に到達し、且つ、工作物Wの回転速度V1の速度下側値が−10%以下、好ましくは−15%以下に到達するように、工作物Wの回転速度V1の速度増減率を設定する。
これに加え、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1の変動周波数率を5%以上に設定し、各変動周期において、速度上側値以下の回転速度V1と速度下側値以上の回転速度V1との間で、工作物Wの回転速度V1を増減させる。これにより、歯車加工装置1は、工作物Wに対する歯車加工において、安定限界を効果的に増加させることができる。
ここで、歯切り工具42の送り速度を一定にした状態で、工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させると、工作物Wに形成された加工面にうねり等が発生しやすく、加工面の面性状が低下する。これに対し、送り速度制御部150は、1つの工作物Wを加工するサイクルタイムにより設定される基準送り速度Fwに対し、送り速度V4を増減させる。そして、送り速度制御部150は、送り速度V4の増減周期を工作物Wの回転速度V1の変動周波数に同期させる。
これにより、歯切り工具42により工作物Wに形成される歯面は、送り速度V4を変動させずに工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を増減させる場合と比べて、歯面の面性状を向上させることができる。また、歯車加工装置1は、スカイビング加工による歯車加工を行う場合において、工作物Wに形成された加工面の面性状の向上と加工能率の向上との両立を図ることができる。
なお、工作物Wを保持する保持部80や回転テーブル70、チルトテーブル60は、歯切り工具42と比べて保持剛性が低く、びびり振動が発生しやすい。この点に関し、歯車加工装置1では、工作物回転速度制御部130が工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させ、工具回転速度制御部140が、歯切り工具42の回転速度V2を、工作物Wの回転速度V1に同期させながら増減させる。これにより、歯車加工装置1は、歯切り工具42を高速回転させつつ、工作物Wに発生するびびり振動の発生を効果的に抑制できる。
また、工作物Wがはすば歯車である場合、工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2は、工作物Wの歯すじ方向に合わせてずらすことにより歯車を形成(創成)することができる。このとき、工作物Wの回転速度V1の変動範囲(変動周波数や速度変動幅)は、工作物Wであるはすば歯車の歯すじ方向に合わせて調整される。
(2−5:第二実施形態の変形例)
ここで、第二実施形態の変形例を説明する。上記実施形態において、工作物回転速度制御部130が、工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させる場合について説明した。これに対し、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1を直線的に加速又は減速させてもよい。
ここで、第二実施形態の変形例を説明する。上記実施形態において、工作物回転速度制御部130が、工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させる場合について説明した。これに対し、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1を直線的に加速又は減速させてもよい。
例えば、工作物回転速度制御部130は、図14Aに示す第一変形例のように、工作物Wの回転速度V1を一定の加速度で加速させてもよい。同様に、工作物回転速度制御部130は、図14Bに示す第二変形例のように、工作物の回転速度V1を一定の減速度で減速させてもよい。
これらの場合において、基準回転速度設定部110は、歯車加工に要する加工時間(サイクルタイム)、歯切り工具42の諸元、工作物Wの材質、及び、工作物Wに形成する歯車のねじれ角等に基づき、最適な切削速度を算出する。そして、基準回転速度設定部110は、算出した切削速度から導出される工作物Wの回転速度V1を基準回転速度Nwに設定する。
さらに、工作物回転速度制御部130は、工具寿命の観点から許容される切削速度の範囲を算出し、許容される工作物Wの回転速度V1である上限値及び下限値である限界速度上限値及び限界速度下限値を算出する。そして、工作物回転速度制御部130は、回転速度V1の限界速度上限値及び限界速度下限値と加工時間とに基づき、歯車加工時の回転速度V1が限界速度上限値及び限界速度下限値を超えないように、回転速度V1の加速度又は減速度、及び、歯車加工の開始時及び終了時における回転速度V1を設定する。
この場合においても、歯車加工装置1は、歯車加工時において、工作物Wに発生する再生びびり振動の増幅を抑制できる。よって、歯車加工装置1は、工作物Wに形成された加工面の面性状の向上と加工能率の向上との両立を図れる。
また、工作物回転速度制御部130は、一定の加速度又は減速度で工作物Wの回転速度V1を変動させる。この場合、加速度又は減速度を変えながら工作物Wの回転速度V1を変動させる場合と比べて、工作物Wの回転速度V1と歯切り工具42の回転速度V2との同期誤差を抑制できる。さらに、歯車加工を開始してから終了するまでの間、工作物Wの回転速度V1を変動させるので、再生びびり振動の増幅を効果的に抑制できる。
またこの場合に、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させる場合と比べて、回転速度V1を緩やかに変動させることができる。よって、工作物Wの回転速度V1と、歯切り工具42の回転速度V2及び送り速度V4との同期誤差を抑制できる。その結果、工具回転速度制御部140による歯切り工具42の回転速度V2の同期制御、及び、送り速度制御部150による送り速度V4の同期制御を簡素化できる。
さらに、工作物回転速度制御部130は、図14Cに示す第三変形例のように、工作物Wの回転速度V1を一定の加速度で加速させた後、回転速度V1が限界速度上限値に到達した場合に、回転速度V1を一定にしてもよい。同様に、工作物回転速度制御部130は、図14Dに示す第四変形例のように、工作物Wの回転速度V1を一定の減速度で減速させた後、回転速度V1が限界速度下限値に到達した場合に、回転速度V1を一定にしてもよい。
これらの場合、工作物回転速度制御部130は、第一変形例及び第二変形例と同様に、一定の加速度又は減速度で工作物Wの回転速度V1を変動させる。よって、工作物Wの回転速度V1と歯切り工具42の回転速度V2の回転速度V2との同期誤差を抑制できる。
また、工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させる場合と比べて、回転速度V1を緩やかに変動させることができるので、工作物Wの回転速度V1と、歯切り工具42の回転速度V2及び送り速度V4との同期誤差を抑制できる。よって、工具回転速度制御部140による歯切り工具42の回転速度V2の同期制御、及び、送り速度制御部150による送り速度V4の同期制御を簡素化できる。
これに加え、第三変形例及び第四変形例では、回転速度V1が限界速度(限界速度上限値又は限界速度下限値)に到達した場合に、回転速度V1を一定にすることにより、歯切り工具42の工具寿命の低下を抑制できる。またその結果、加工時間が長い場合であっても、回転速度V1を最適な加速度又は減速度で変動させることができる。従って、歯車加工装置1は、工作物Wに形成された加工面の面性状の向上と加工能率の向上との両立を図れる。また、第三変形例の場合は、回転速度V1が限界速度上限値に到達した場合に、回転速度V1を限界速度上限値に設定した状態で歯車加工を行うので、歯車加工に要する時間の短縮を図れる。
なお、第三変形例及び第四変形例では、工作物回転速度制御部130が、歯車加工の開始時から回転速度V1を変動させ、回転速度V1が限界速度に到達した場合に、回転速度V1を一定の速度とする場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、工作物回転速度制御部130は、歯車加工の開始時の回転速度V1を一定としつつ、所定時間経過後に回転速度V1の変動を開始してもよい。
これにより、例えば、歯車加工を開始してから所定時間経過後に回転速度V1を一定の減速度で減速させる場合に、歯車加工装置1は、回転速度V1が低速となる時間が長くなることを回避できるので、歯車加工に要する時間が長くなることを抑制できる。
また、図14Eに示す第五変形例のように、工作物回転速度制御部130は、回転速度V1が限界速度上限値に到達した場合に、回転速度V1を一定の減速度で減速させ、回転速度V1が限界速度下限値に到達した場合に、回転速度V1を一定の加速度で加速させてもよい。
この場合、回転速度V1を反復して増減させる場合であっても、加速度又は減速度を変化させながら工作物Wの回転速度V1を変動させる場合と比べて、工作物Wの回転速度V1と歯切り工具42の回転速度V2との同期誤差を抑制できる。さらにこの場合、加工を開始してから終了するまでの間、工作物Wの回転速度V1を変動させるので、再生びびり振動の増幅を効果的に抑制できる。
なお、第五変形例では、第二実施形態で説明した歯車加工処理(図10参照)と比べて、回転速度V1の変動周期をはるかに長くすることにより、回転速度V1を緩やかに変動させることができる。さらにこの場合、回転速度V1の加速から減速、又は、減速から加速への切り替え回数を少なくできる。よって、工作物Wの回転速度V1と歯切り工具42の回転速度V2との同期誤差を抑制できる。
以上のように、第一変形例から第五変形例において、工作物回転速度制御部130は、少なくとも一時的に、工作物Wの回転速度V1を一定の加速度又は減速度で変動させる。これに伴い、工具回転速度制御部140は、歯切り工具42の回転速度V2を、工作物Wの回転速度V1に同期させながら一定の加速度又は減速度で変動させる。よって、歯車加工時において、歯切り工具42を高速回転させつつ、工作物Wに発生する再生びびり振動の増幅を抑制できるので、工作物Wに形成された加工面の面性状の向上と加工能率の向上との両立を図れる。
また、第一変形例から第五変形例では、工作物Wの回転速度V1を一定の加速度又は減速度で変動させることにより、工具回転速度制御部140による歯切り工具42の回転速度V2の同期制御、及び、送り速度制御部150による送り速度V4の同期制御を簡素化できる。その結果、工作物Wの回転速度V1と、歯切り工具42の回転速度V2及び送り速度V4との同期誤差を抑制できる。
さらに、基準回転速度設定部110は、工作物Wの材質及び歯切り工具42の諸元に基づいて基準回転速度Nwを設定し、工作物回転速度制御部130は、その基準回転速度Nwを基準として、前記工作物の回転速度を一定の加速度又は減速度で変動させる。これにより、歯切り工具42の工具寿命の低下を抑制できる。
また、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させ、工具回転速度制御部140は、歯切り工具42の回転速度V2を、工作物Wの回転速度V1に同期させながら一定の加速度又は減速度で変動させる。この場合、歯切り工具42の基準回転速度Nwを設定する場合と比べて、歯切り工具42と工作物Wとの歯数比を考慮することが不要である分、基準回転速度Nwの設定を容易に行うことができる。
<3.第三実施形態>
(3−1.制御装置による振動解析及び振動評価の処理)
本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した第三実施形態について説明する。この第三実施形態の歯車加工装置1の概略構成及び制御装置200の構成は、第二実施形態の歯車加工装置1の概略構成及び制御装置200の構成と同一構成であるため、詳細な説明は省略し、振動解析及び振動評価の処理について説明する。
(3−1.制御装置による振動解析及び振動評価の処理)
本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した第三実施形態について説明する。この第三実施形態の歯車加工装置1の概略構成及び制御装置200の構成は、第二実施形態の歯車加工装置1の概略構成及び制御装置200の構成と同一構成であるため、詳細な説明は省略し、振動解析及び振動評価の処理について説明する。
第二の実施形態の制御装置200では、工作物回転速度制御部130及び工具回転速度制御部140は、工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させているため、振動評価部180は、当該変動範囲内で予め選択した複数の工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を用いて処理を行っている。しかし、第三の実施形態では、振動評価部180は、加工時と同様に工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させて回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動の周波数解析結果を求める。
そして、振動評価部180は、当該周波数解析結果に基づいて、変動する歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動の周波数解析結果を振動評価する。そして、振動評価部180は、空転時の振動の各周波数解析結果と加工時の振動の周波数解析結果の基準化処理を行い、基準化処理の結果から工作物Wの加工の良否を評価する。そして、この評価結果に基づいて、増減率設定部260には、工作物Wのびびり振動等の発生を抑制可能な工作物Wの回転速度V1の増減率が設定される。
<4.第四実施形態>
次に、図15を参照して、第四実施形態について説明する。第一から第三実施形態において、歯切り工具42がスカイビングカッタであり、歯車加工装置1は、スカイビング加工による歯車加工を行う場合について説明した。これに対し、第四実施形態では、歯切り工具242がホブカッタであり、歯車加工装置1が、ホブ加工による歯車加工を行う場合を説明する。なお、上記した第一実施形態と同一の部品には同一の符号を付し、その説明を省略する。
次に、図15を参照して、第四実施形態について説明する。第一から第三実施形態において、歯切り工具42がスカイビングカッタであり、歯車加工装置1は、スカイビング加工による歯車加工を行う場合について説明した。これに対し、第四実施形態では、歯切り工具242がホブカッタであり、歯車加工装置1が、ホブ加工による歯車加工を行う場合を説明する。なお、上記した第一実施形態と同一の部品には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図15に示すように、歯切り工具242は、ホブカッタである。歯車加工装置1は、歯切り工具242の回転軸線Oと工作物Wの回転軸線であるC軸とが交差するように、歯切り工具242及び工作物Wを配置する。なお、図15には、歯切り工具242の回転軸線Oと工作物Wの回転軸線であるC軸とが直交するように、歯切り工具242及び工作物Wが配置されている。そして、歯車加工装置1は、歯車加工時において、工作物W及び歯切り工具42をそれぞれ回転させながら、歯切り工具42を工作物Wの中心軸線であるZ軸方向へ送る(相対移動させる)ことにより、工作物Wに歯車を創成する。
このとき、歯車加工装置1は、歯車加工時において、工作物回転速度制御部130による制御に基づいて工作物Wの回転速度V1を変動させ、工具回転速度制御部140による制御に基づいて、歯切り工具242の回転速度V2を工作物Wの回転速度V1に同期させる。これにより、歯車加工装置1は、歯切り工具42を高速回転させつつ、工作物Wに発生する再生びびり振動の増幅を抑制できるので、工作物Wに形成された加工面の面性状の向上と加工能率の向上との両立を図れる。
そして、第二の実施形態と同様に、工作物回転速度制御部130及び工具回転速度制御部140は、工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させているため、振動評価部180は、当該変動範囲内で予め選択した複数の工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を用いて処理を行う。また、第三の実施形態と同様に、振動評価部180は、加工時と同様に工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させて回転主軸40及び回転テーブル70の空転時の振動の周波数解析結果を求める。
そして、振動評価部180は、当該周波数解析結果に基づいて、変動する歯切り工具42による工作物Wの加工時の振動の周波数解析結果を振動評価する。そして、振動評価部180は、空転時の振動の各周波数解析結果と加工時の振動の周波数解析結果の基準化処理を行い、基準化処理の結果から工作物Wの加工の良否を評価する。そして、この評価結果に基づいて、増減率設定部260には、工作物Wのびびり振動等の発生を抑制可能な工作物Wの回転速度V1の増減率が設定される。
<5.その他>
上記各実施形態では、歯車加工装置1は、コラム20がX軸線方向へ移動可能な構成を説明したが、コラム20の代わりにテーブル50がX軸線方向へ移動可能に構成されてもよい。また、テーブル50がZ軸線方向へ移動可能な構成を説明したが、テーブル50の代わりにコラム20がZ軸線方向へ移動可能に構成されていてもよい。また、歯車加工装置1として横型のマシニングセンタについて説明したが、縦型のマシニングセンタにも本発明は適用可能である。また、歯車加工装置1によるスカイビング加工に本発明を適用する場合について説明したが、工作機械全般に本発明を適用可能である。
上記各実施形態では、歯車加工装置1は、コラム20がX軸線方向へ移動可能な構成を説明したが、コラム20の代わりにテーブル50がX軸線方向へ移動可能に構成されてもよい。また、テーブル50がZ軸線方向へ移動可能な構成を説明したが、テーブル50の代わりにコラム20がZ軸線方向へ移動可能に構成されていてもよい。また、歯車加工装置1として横型のマシニングセンタについて説明したが、縦型のマシニングセンタにも本発明は適用可能である。また、歯車加工装置1によるスカイビング加工に本発明を適用する場合について説明したが、工作機械全般に本発明を適用可能である。
上記第二、第三実施形態において、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1を一定の周波数で増減させる場合を例に挙げて説明したが、少なくとも工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させればよく、必ずしも一定の周波数で増減させなくてもよい。また、工作物回転速度制御部130は、工作物Wの回転速度V1の変動周波数を不規則に変えてもよい。さらに、上記各実施形態では、各変動周期における工作物Wの回転速度V1の周波数が、変動周波数と一致する場合について説明したが、これに限られるものではなく、各変動周期における工作物Wの回転速度V1が、変動周波数以上の周波数で増減するように設定されていればよい。
上記第二、第三実施形態では、工作物回転速度制御部130が工作物Wの回転速度V1を反復的に増減させ、工具回転速度制御部140が、歯切り工具42の回転速度V2を、工作物Wの回転速度V1に同期させながら増減させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、工具回転速度制御部140が歯切り工具42の回転速度V2を反復的に増減させ、工作物回転速度制御部130が、工作物Wの回転速度V1を、歯切り工具42の回転速度V2に同期させながら増減させてもよい。また、工具回転速度制御部140は、歯切り工具42の回転速度V2の変動周波数を不規則に変えてもよい。
上記第二、第三実施形態では、送り速度制御部150が、送り速度V4が工作物Wの回転速度V1と同期するように送り速度V4を変動させる場合について説明した。しかしながら、送り速度制御部150は、必ずしも送り速度V4を変動させる必要はない。すなわち、歯車加工装置1は、少なくとも工作物Wの回転速度V1と歯切り工具42の回転速度V2とが同期するように工作物Wの回転速度V1及び歯切り工具42の回転速度V2を変動させることにより、工作物Wに発生するびびり振動(再生型など)の増幅を抑制できる。また、送り速度制御部150は、送り速度V4を不規則に変動させてもよい。
なお、歯車加工装置1は、工作物Wの回転軸線又は歯切り工具42の回転軸線の何れかに直交する駆動軸を追加して設けることにより、工作物Wの回転軸線と歯切り工具42の回転軸線との相対角度を調整可能な構成としてもよい。さらに、歯車加工装置1は、加工工程(粗加工工程、仕上げ加工工程等)に合わせて歯切り工具42を交換するための工具交換装置を備えていてもよい。
1:歯車加工装置、 20:コラム、 40:回転主軸、 42:歯切り工具、 70:回転テーブル、 90:振動センサ(振動検出部)、 100,200:制御装置、 170:振動解析部、 180:振動評価部、 W:工作物
Claims (7)
- 歯切り工具と工作物とを同期回転させながら、前記工作物の回転軸線方向に前記歯切り工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物に歯車を創成する歯車加工装置であって、
前記歯車加工装置は、
前記歯切り工具が装着される回転可能な回転主軸と、
前記工作物を回転可能に支持する回転テーブルと、
前記歯車加工装置より発生する振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部で検出した前記振動を周波数解析する振動解析部と、
前記回転主軸及び前記回転テーブルの空転時の前記振動の周波数解析結果に基づいて、前記歯切り工具による前記工作物の加工時の前記振動の周波数解析結果を評価する振動評価部と、
を備える、歯車加工装置。 - 前記振動評価部は、前記回転主軸に前記歯切り工具が装着された状態及び前記回転テーブルに前記工作物が支持された状態で振動評価する、請求項1に記載の歯車加工装置。
- 前記振動評価部は、前記加工時の前記振動の周波数解析結果及び前記空転時の前記振動の周波数解析結果に対し基準化処理を行った結果が所定の閾値を超えたとき、加工不良と評価する、請求項1又は2に記載の歯車加工装置。
- 前記歯車加工装置は、前記歯切り工具による前記工作物の加工が行われ、外部と仕切られた加工室、を備え、
前記振動検出部は、前記加工室の外部に設けられる、請求項1−3の何れか一項に記載の歯車加工装置。 - 前記振動検出部は、前記回転主軸を回転可能に支持するコラムの上部に設けられる、請求項4に記載の歯車加工装置。
- 前記歯切り工具は、スカイビングカッタであり、
前記歯車加工装置は、前記工作物の回転軸線を前記歯切り工具の回転軸線に対して傾斜させた状態で、前記歯切り工具を前記工作物に対して前記工作物の回転軸線方向に相対移動させることにより、前記工作物に歯車のスカイビング加工を行う、請求項1−5の何れか一項に記載の歯車加工装置。 - 歯切り工具を工作物と同期回転させながら、前記工作物の回転軸線方向に前記歯切り工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物に歯車を創成する歯車加工方法であって、
前記歯車加工方法は、
前記歯車の加工により発生する振動を検出する振動検出工程と、
前記振動検出工程で検出した前記振動を周波数解析する振動解析工程と、
前記歯切り工具が装着される回転可能な回転主軸及び前記工作物を回転可能に支持する回転テーブルの空転時の前記振動の周波数解析結果に基づいて、前記歯切り工具による前記工作物の加工時の前記振動の周波数解析結果を評価する振動評価工程と、
を備える、歯車加工方法。
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JP2018207421A JP2020069621A (ja) | 2018-11-02 | 2018-11-02 | 歯車加工装置及び歯車加工方法 |
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WO2022071209A1 (ja) * | 2020-10-02 | 2022-04-07 | ファナック株式会社 | 工作機械の制御装置 |
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