JP2022085249A - 保冷剤用増粘剤、保冷剤、保冷具、貨物、輸送機器、保冷具の製造方法、輸送方法及び保冷方法 - Google Patents

保冷剤用増粘剤、保冷剤、保冷具、貨物、輸送機器、保冷具の製造方法、輸送方法及び保冷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】保冷剤用増粘剤に係る技術の豊富化を図る。【解決手段】保冷剤用増粘剤は、タピオカを含んでいる。【選択図】図1

Description

本開示は、保冷剤用増粘剤、保冷剤、保冷具、貨物、輸送機器、保冷具の製造方法、輸送方法及び保冷方法に関する。
食品等を保冷した状態で輸送することに利用される保冷剤(蓄冷剤又はアイスパック等と呼称されることもある。)が知られている(例えば特許文献1)。なお、慣用的に、保冷剤の語は、保冷剤だけでなく、保冷剤を封入している容器を含む全体を指す場合があるが、本開示においては、保冷剤は、保冷剤自体を指し、保冷剤及び当該保冷剤を封入している容器の全体については、保冷具と呼称するものとする。
一般に市販されている保冷具において、保冷剤は、水に種々の添加剤を添加して構成されている。添加剤としては、例えば、防腐剤、凝固点降下剤、増粘剤、不凍液及び着色剤が挙げられる。保冷具は、例えば、冷蔵庫又は冷凍庫によって冷却される。その後、保冷具は、例えば、保冷対象物(例えば食品)とともに梱包されたり、人体の冷却に利用されたりする。
なお、保冷剤に関する技術分野ではなく、食品に関する技術分野において、食品の粘度を増加させる増粘剤としてタピオカが知られている。
特開2017-128622号公報
保冷剤用増粘剤に係る技術の豊富化が図られることが望まれる。
本開示の一態様に係る保冷剤用増粘剤は、タピオカを含んでいる。
本開示の一態様に係る保冷剤は、上記保冷剤用増粘剤と、水と、を含んでいる。
一例において、上記保冷剤は、塩化物を含んでいる。
一例において、上記保冷剤は、前記塩化物としてCaClを含んでいる。
一例において、上記保冷剤は、CaClの濃度が20%以上であり、CaCl以外の塩化物の合計の濃度が0%以上5%以下であり、前記タピオカの濃度が3%以上である。
本開示の一態様に係る保冷具は、上記保冷剤と、前記保冷剤が封入されている封入容器と、を有している。
本開示の一態様に係る貨物は、上記保冷具と、保冷対象物と、前記保冷具と前記保冷対象物とを共に収容している収容容器と、を有している。
本開示の一態様に係る輸送機器は、上記保冷具と、保冷対象物と、前記保冷具と前記保冷対象物とを共に収容している収容容器と、を有している。
本開示の一態様に係る上記保冷具の製造方法は、前記水と前記タピオカとの混合物を糊化させる糊化ステップと、前記糊化ステップによって糊化された前記混合物の温度が5℃よりも低くなる前に、前記水と前記タピオカとを前記封入容器に封入する封入ステップと、を有している。
本開示の一態様に係る輸送方法は、上記保冷具と保冷対象物とを共に収容容器に収容するステップと、前記保冷具及び前記保冷対象物を共に収容している前記収容容器を移送するステップと、を有している。
一例において、前記収容するステップにおける前記保冷具の温度が前記保冷剤の凝固点以下である。
本開示の一態様に係る保冷方法は、上記保冷具と保冷対象物とを共に収容容器に収容するステップを有している。
上記の構成又は手順によれば、保冷剤用増粘剤に係る技術の豊富化が図られる。
実施形態に係る、塩化物の種類が互いに異なる保冷剤の漏出量に関する実験結果を示す図表。 実施形態に係る、塩化物を含まない保冷剤の漏出量に関する実験結果を示す図表。 実施形態に係る、2種以上の塩化物を含む保冷剤の漏出量に関する実験結果を示す図表。 実施形態に係る、タピオカの濃度が互いに異なる保冷剤の漏出量に関する実験結果を示す図表。 実施形態に係る保冷剤の保冷能力に関する実験結果を示す図。 実施形態に係る保冷剤の保冷能力に関する実験結果を示す他の図。 実施形態に係る保冷剤の保冷能力に関する実験結果を示す更に他の図。 図8(a)、図8(b)及び図8(c)は保冷剤の応用例を説明する模式図。 実施形態に係る保冷具の製造方法及び利用方法の手順を示すフローチャート。
(保冷剤の概要)
本開示の実施形態に係る保冷剤は、少なくとも、水と、増粘剤としてのタピオカとを含んでいる。タピオカは、例えば、水(水溶液の溶媒としての水を含む。以下、矛盾等が生じない限り、同様。)と混合される前において粉末状である。確認的に記載すると、タピオカは、キャッサバの根茎から製造されるデンプンである。タピオカは、食品として製造されたものであってもよいし、アルコール製造等の工業用に製造されたものであってもよい。また、タピオカは、キャッサバの根茎を単に乾燥させたものであってもよいし、エステル化又はアセチル化等の処理が施されたものであってもよい。
水とタピオカとを混合するとともに加熱すると、糊化(換言すればアルファ化)によって、水とタピオカとを含む混合物(換言すれば保冷剤)の粘度が増加する。その後、混合物を冷却すると、老化(換言すればベータ化又はretrogradation)によって、混合物の粘度は更に増加する、及び/又は混合物は固形化する。タピオカ粉末として、冷水可溶なものも存在する(例えば、三晶株式会社の商品名「PTA-03」。)。この場合、糊化のための加熱は不要である。
なお、以下の説明では、便宜上、固形化についての言及を省略することがある。従って、老化による増粘に関する記載は、適宜に固形化に関する記載に読み替えられてよい。タピオカを含む保冷剤は、糊化(又は老化)を経たか否かに関わらずに、少なくとも水とタピオカとを含む混合物を指してもよいし、糊化(又は老化)を経た混合物(粘度が増加した混合物)のみを指してもよい。本実施形態の説明においては、特に断りが無い限りは、前者とする。
上記のようなタピオカを増粘剤として含む保冷剤は、種々の効果を奏する。例えば、以下のとおりである。
保冷剤の粘度が高い場合、保冷剤を容器に封入して保冷具を作製するときに、その作業性が低下したり、保冷剤を容器の隅々に行き渡らせることが困難になったりする。一方、保冷剤の粘度が低い場合、保冷剤を封入している容器が破損したときに、保冷剤が容器から漏出しやすい。漏出した保冷剤は、例えば、保冷対象物及びその周辺を汚損する。
タピオカを増粘剤として用いた場合においては、老化前又は老化がさほど進んでいないときに保冷剤を容器に封入することによって、上記のような粘度が高いことに起因する封入時の不都合が低減される。一方、保冷剤を容器に封入してなる保冷具を使用するために保冷具が冷却されると、老化によって保冷剤の粘度が更に増加する。これにより、保冷剤が漏出する蓋然性が低減され、及び/又は漏出量が低減される。
仮に保冷剤が漏出しても、老化後の保冷剤は、流動性が低く、保冷対象物等を濡らしにくい(付着しにくい。)。さらに、漏洩した保冷剤の除去方法にもよるが、保冷剤の固形化によって保冷対象物等からの保冷剤の除去が容易化される。
また、タピオカが食品として用いられていることから明らかなように、タピオカの添加は保冷剤の危険性に影響を及ぼさない。従って、例えば、保冷剤の他の成分にもよるが、使用済みの保冷剤は、食品と同様に、生ごみとして処分することができる。また、漏洩したときに、危険物としての取扱いは不要である。
(保冷剤の成分)
保冷剤は、水及びタピオカのみを含んでいてもよいし、更に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、防腐剤、凝固点降下剤、融点降下剤(凝固点降下剤を兼ねてよい。)、増粘剤(タピオカ以外)、不凍液及び着色剤が挙げられる。なお、保冷剤等において、融点と凝固点とは同等の値であってもよいし、異なる値であってもよい。本実施形態の説明において、融点及び凝固点は、矛盾等が生じない限り、相互に読み替えられてよい。
タピオカの濃度、及びタピオカ以外の成分の濃度は適宜に設定されてよい。なお、本実施形態の説明における濃度は、特に断りが無い限り、質量パーセントであるものとする。また、本実施形態の説明において、小数を含まない数値は、小数第1位を四捨五入した値を含むものとする。例えば、10%以上という範囲は、9.5%を含む。40%以下という範囲は、40.4%を含む。少数を含む数値は、値が示された最も小さい桁よりも1つ小さい桁の値を四捨五入した値を含むものとする。例えば、0.5%以上という範囲は、0.45%を含む。
濃度の例を挙げる。タピオカの濃度は、1%以上10%以下、3%以上10%以下、又は3%以上5%以下とされてよい。融点降下剤(例えば後述する塩化物及び/又は塩)の濃度は、10%以上40%以下とされてよい。防腐剤の濃度は、0.005%以上0.02%以下とされてよい。着色剤の質量は、0.05%以上0.2%以下とされてよい。
別の観点では、水の質量が保冷剤の質量に占める割合は、50%以上、60%以上、90%以上又は97%以上とされてよい。換言すれば、水以外の成分(タピオカを含む)の質量は、例えば、50%以下、40%以下、10%以下又は3%以下とされてよい。なお、水以外の成分が3%以下の場合、当該成分は、タピオカのみを含んでいてもよいし、更に他の成分を含んでいてもよい。
(融点降下剤)
上記のように、保冷剤は、融点降下剤を含んでよい。融点の降下によって、例えば、水の融点よりも低い温度域において潜熱を利用して保冷を行うことができる。
融点降下剤の具体的な材料は、公知のものも含め、種々のものとされてよい。例えば、融点降下剤は、塩化物及び/又は塩とされてよい。確認的に記載すると、塩化物は、塩素が、当該塩素より陽性な元素又は原子団と形成する化合物である。また、ここでいう塩は、化学でいう塩、すなわち、酸由来の陰イオン(アニオン)と塩基由来の陽イオン(カチオン)とがイオン結合した化合物である。塩化物及び/又は塩の品質(グレード)は問わない。塩化物及び/又は塩として、一般用、工業用、食品添加用等の種々の用途のものが利用されてよく、1級又は特級等であるか否かも問わない。
塩化物及び/又は塩としては、例えば、以下のものを挙げることができる。NaHCO、NaHSO、NaHPO、NaHPO、MgCl(OH)、MgCl・Mg(OH)、NaCl、CaCl、NHCl、CHCOONa、CuSO4、MgCl、MgSO、CaSO及びKCl。なお、本実施形態の説明では、上記のうち、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)に着目することがある。
融点降下剤(例えば塩化物及び/又は塩)の保冷剤における濃度は適宜に設定されてよい。例えば、当該濃度は、融点降下剤のみを溶質とする水溶液において融点が最も下がる融点降下剤の濃度又は当該濃度に近い濃度とされてよい。保冷剤は、融点降下剤以外に他の成分(例えばタピオカ)を含むが、他の成分を多量に添加しない限り、保冷剤において最も融点が下がる融点降下剤の濃度は、融点降下剤のみを溶質とする水溶液において最も融点が下がる融点降下剤の濃度と大きく相違しない。
具体的には、CaClの場合は、30%を中心として、20%以上40%以下、又は25%以上35%以下の濃度とされてよい。MgClの場合は、35%を中心として、25%以上45%以下、又は30%以上40%以下の濃度とされてよい。NaClの場合は、23.5%(約24%)を中心として、14%以上34%以下、又は19%以上29%以下の濃度とされてよい。KClの場合は、21%を中心として、11%以上31%以下、又は16%以上26%以下の濃度とされてよい。
なお、上記の範囲の例は、保冷剤における融点降下剤の濃度(融点降下剤の質量が保冷剤の質量に占める割合)の範囲の例として示された。ただし、上記の範囲の例は、融点降下剤の質量が、保冷剤中における、融点降下剤の質量と水の質量との合計質量に占める割合の範囲に適用されてもよい。
(塩化物がタピオカの増粘作用に及ぼす影響)
水、タピオカ及び塩化物を含む保冷剤について、容器からの保冷剤の漏出量を計測する実験を行った。その結果、塩化物がタピオカの増粘作用に影響を及ぼすこと、塩化物の種類によって当該影響の大きさが異なることが分かった。具体的には、以下のとおりである。なお、本実験及び後述する実験において、保冷剤は、言及のある成分のみを含み、言及のない成分については含んでいない。
実験方法は、以下のとおりである。水、タピオカ及び塩化物からなり、塩化物の種類が互いに異なる複数種類の保冷剤を作製した。タピオカとしては、冷水可溶なものを用いた。すなわち、加熱を経ずに保冷剤を糊化状態とした。保冷剤の種類別に、400gの糊化状態の保冷剤を袋に封入して保冷具を作製した。袋は、矩形状かつ可撓性の2枚の樹脂フィルムを互いに対向させ、各フィルムの4辺を互いに接合することによって作製されたものとした。この保冷具を保冷剤の種類毎に2つ作製した。2つの保冷具のうち1つ(以下、「Aタイプ」ということがある。)は、作製後(糊化状態の保冷剤の封入後)、常温の雰囲気下に放置された。残りの1つ(以下、「Bタイプ」ということがある。)は、保冷剤の凍結及び解凍を経て(すなわち老化を経て)常温とされた。その後、各保冷具の一方の短辺を保持して保冷具を吊り下げた。吊り下げられた保冷具の下方の短辺と一の長辺とがなす角付近に2cmの切れ込みを入れた。そして、切れ込みから漏出して落下した保冷剤の量を1分毎に計測した。
タピオカの濃度は3%とした。保冷剤における塩化物の濃度(塩化物の質量が保冷剤全体の質量に占める割合)は、溶質として塩化物のみを含む塩化物水溶液の融点が最も下がる塩化物の濃度と同じとした。塩化物の種類及び濃度は、以下のとおりとした。CaCl:30%、MgCl:35%、NaCl:23.5%、KCl:21%。タピオカとして、三晶株式会社の商品名「PTA-03」を用いた(後述する他の実験も同様。)。
図1は、計測結果を示す図表である。「t(min)」の欄は、経過時間(単位:分)を示している。他の欄は、塩化物の種類毎の漏出量を示している。「Qa(g)」の欄は、Aタイプの保冷具の漏出量(単位:g)を示している。「Qb(g)」の欄は、Bタイプの保冷具の漏出量(単位:g)を示している。漏出量Qaについては、塩化物の種類による相違が殆どなかったことから、複数種類の塩化物を代表してCaClの計測結果のみを示している。各行は、1分から10分までの1分毎の漏出量を示している。ここで示されている漏出量は、0分からの漏出量の総量である。
この図に示されているように、Aタイプ(漏出量Qa)に関しては、1分で保冷剤の全量の95%(=380g/400g)が漏出し、2分で保冷剤の略全量が漏出している。既述のように、これは、CaClの場合だけでなく、他の塩化物の場合も同様である。
一方、Bタイプ(漏出量Qb)に関しては、いずれの塩化物の場合においても、Aタイプに比較して、経過時間毎の漏出量が低減されている。すなわち、保冷剤が漏出しにくくなっている。例えば、1分後の漏出量Qbは、保冷剤の全量の50%未満であり、別の観点では、1分後の漏出量Qaの半分未満である。また、保冷剤の全量の95%が漏出する時間は、3分以上となっている。
漏出量Qbは、塩化物の種類によって異なっている。経過時間毎の漏出量Qbが少ない順は、CaCl、MgCl、KCl、NaClとなっている。例えば、1分後の漏出量Qbの、保冷剤の全量に対する割合は、順に、0%(CaCl)、約23%(MgCl)、約45%(KCl)、約46%(NaCl)となっている。ただし、KCl及びNaClの差は、微差であり、また、5分以降からは、KClの漏出量Qbは、NaClの漏出量Qb以上となっている。
塩化物がCaClである場合においては、漏出量Qbは0gとなっている。すなわち、保冷剤は、袋の切れ込みから落下しなかった。なお、切れ込み付近において袋の外面に付着した保冷剤の重量は1gであった。
なお、Bタイプの保冷剤に関して、老化に際して生じる離水は観察されなかった。後述する他の実験においても同様である。
(塩化物を含まない保冷剤)
水及びタピオカのみを含む(塩化物を含まない)保冷剤についても、上記と同様の実験を行った。その結果、当該保冷剤についても漏出量が少ないことを確認できた。また、塩化物は、融点を降下させる作用だけでなく、タピオカの増粘作用を大きくする作用を奏し得ることがわかった。具体的には、以下のとおりである。
実験方法は、図1と同様である。ただし、既述のように、保冷剤は、水及びタピオカのみからなる。また、タピオカの濃度は、図1に係るタピオカの濃度(3%)よりも高い5%とした。また、Bタイプ(保冷剤を凍結及び解凍をさせたもの)のみについて、実験を行った。
図2は、漏出量Qbの計測結果を示す図表であり、図1と同様のものである。
この図に示されているように、塩化物が添加されていない場合においても、漏出量Qbは比較的少なくなっている。例えば、1分後の漏出量Qbは、保冷剤の全量(400g)の20%未満である。また、10分経過しても、漏出量Qbは、保冷剤の全量の95%に至っていない。
また、図1と図2とを比較すると、CaClを添加した場合においては、塩化物が添加されていない場合と比較して、タピオカの濃度が低いにも関わらず、漏出量Qbが少なくなっている(無くなっている)ことが分かる。すなわち、CaClは、タピオカの増粘作用を大きくする。
(塩化物の組み合わせ)
塩化物として、CaClと他の塩化物(MgCl、NaCl又はKCl)とを含む保冷剤について、図1と同様の実験を行った。その結果、他の塩化物を添加した場合であっても、タピオカの増粘作用がCaClによって大きくなる作用が維持されることが分かった。具体的には、以下のとおりである。
実験方法は、図1と同様である。ただし、保冷剤は、水、タピオカ、CaCl及び他の塩化物からなる。CaClの濃度及び他の塩化物の濃度の合計は40%とした。CaCl及び他の塩化物の個別の濃度(別の観点では上記40%に占めるCaCl又は他の塩化物の割合)が互いに異なる複数の保冷剤を作製した。また、Bタイプ(保冷剤を凍結及び解凍をさせたもの)のみについて、実験を行った。
図3は、実験結果を示す図表である。この図において、1行目は、CaClの濃度を示している。2行目は、他の塩化物の濃度を示している。3行目は、漏出量の評価結果を示している。各列(欄)は、CaCl及び他の塩化物の個別の濃度が互いに異なる複数の保冷剤のそれぞれに対応している。
評価は、10分後の時点での漏出量Qbに基づいて行った。当該漏出量Qbが10g以下の場合は評価Aとし、11g以上50g以下の場合は評価Bとし、それ以外の場合は評価Cとした。今回の実験では、CaCl以外の他の塩化物の種別は、上記のような段階的な評価に対して殆ど影響を及ぼさなかったことから、図3では、他の塩化物の種別を問わずに結果を示している。
この図に示されているように、CaClの濃度が25%以上、かつ他の塩化物の濃度が10%以下であれば、評価はAである。また、CaClの濃度が20%以上、かつ他の塩化物の濃度が15%以下であれば、評価はB以上である。なお、特に図示しないが、CaClの濃度が20%、かつ他の塩化物の濃度が15%の場合であっても、タピオカの濃度を3%よりも高くすると、評価はAとなる。以上のことから、CaClがタピオカの増粘作用を大きくする作用を得る観点における濃度の範囲の一例として、CaClの濃度が20%以上、かつ他の塩化物の濃度が15%以下を挙げることができる。
(タピオカの濃度)
タピオカの濃度が互いに異なる複数の保冷剤について、図1と同様の実験を行った。その結果、タピオカの濃度が1%以上であれば、有意な効果が奏されることが分かった。具体的には、以下のとおりである。
実験方法は、図1と同様である。ただし、保冷剤は、水、タピオカ及びCaClからなる。CaClの濃度は30%とした。また、Bタイプ(保冷剤を凍結及び解凍をさせたもの)のみについて、実験を行った。
図4は、漏出量Qbの計測結果を示す図表であり、図1と同様のものである。ただし、各欄は、タピオカの濃度毎の漏出量Qbを示している。
この図に示されているように、タピオカの濃度が1%以上あれば、タピオカの増粘作用を得ることができる。また、タピオカの濃度が3%以上であれば、漏出量Qbを略0にすることができる。この結果は、タピオカの増粘作用を大きくすることができるCaClが添加されている場合の結果である。従って、適切に水及びタピオカ以外の添加物を選択することによって、タピオカの濃度を3%又は1%まで低くできることが分かる。
(タピオカが保冷に及ぼす影響)
タピオカを含む保冷剤の保冷能力を調べる実験を行った。その結果、タピオカを含む保冷剤の保冷能力は、タピオカとは異なる増粘剤を含む保冷剤の保冷能力と同等であることを確認できた。具体的には、以下のとおりである。
実験方法は、以下のとおりである。タピオカを含む保冷剤と、タピオカとは異なる増粘剤を含む保冷剤とを作製した。保冷剤の種類毎に、600gの保冷剤を可撓性の樹脂フィルムからなる袋に封入して保冷具を作製した。次に、増粘剤の種類が互いに異なる2つの保冷具を-130℃に維持された冷凍庫内に十分な時間に亘って配置した。これにより、保冷剤を凍結させるとともに、保冷剤の温度を冷凍庫内の温度と同等にした。その後、冷凍庫から2つの保冷具を取り出し、室温下に置かれた発泡性の容器に個別に収容した。容器は、内寸が300mm×200mm×120mmであり、保冷具を収容した後に略密閉された。保冷具は、容器内の空間の中央に位置するように、容器内に配置された紙製の箱の上に載置された。そして、保冷具の温度と、容器内部の雰囲気の温度とを継続的に計測した。
保冷剤は、水と、増粘剤と、濃度30%のCaClとからなるものとした。タピオカとは異なる増粘剤としては、ポリアクリルアミド系かつアニオン性の吸水性ポリマー(増粘剤として市販されているもの)を用いた。タピオカの濃度は3.0%とした。吸水性ポリマーの濃度は1.5%とした。
図5~図7は、計測結果を示す図である。上記の実験は、3回行われており、各図は、各回の実験結果を示している。これらの図において、横軸tは、経過時間を示し、単位は、時(h)及び分である。縦軸Tは、温度(単位:℃)を示している。図中の複数の線は、計測によって得られた、時間経過と温度との関係を示している。
凡例において、「PL0」は、吸水性ポリマーを含む保冷剤の温度を示している。「PL1」は、吸水性ポリマーを含む保冷剤が配置された容器内の温度を示している。「TA0」は、タピオカを含む保冷剤の温度を示している。「TA1」は、タピオカを含む保冷剤が配置された容器内の温度を示している。「EN」は、環境温度(容器の周囲の雰囲気の温度)を示している。なお、各図において「EN」が1つのみ示されていることから理解されるように、「PL0」及び「PL1」と、「TA0」及び「TA1」とは、同一の環境温度下で並行して計測されている。
図5~図7に示されているように、タピオカを含む保冷剤の温度変化(TA0)と、吸水性ポリマーを含む保冷剤の温度変化(PL0)とは概ね同じである。また、タピオカを含む保冷剤が配置された容器内の温度変化(TA1)と、吸水性ポリマーを含む保冷剤が配置された容器内の温度変化(PL1)とは概ね同じである。すなわち、両保冷剤の保冷能力に大きな差異はなく、タピオカが保冷剤用の増粘剤として利用可能であることが確認できた。
なお、保冷剤の温度は、約-50℃で一時的に一定となっている。これは、保冷剤が固体から液体へ変化するときの潜熱によるものである。すなわち、実験に用いられた保冷剤の融点は、約-50℃である。また、本実験におけるCaClの濃度30%は、概ね、融点降下剤としてCaClを用いた場合に最も融点が低くなる濃度である。従って、約-50℃は、融点降下剤としてCaClを用いた場合における最も低い融点である。
(保冷剤用増粘剤及び保冷剤の作用)
以上のとおり、本実施形態に係る保冷剤用増粘剤は、タピオカを含んでいる。また、別の観点では、本実施形態に係る保冷剤は、上記の保冷剤用増粘剤と、水とを含んでいる。
従って、既述の効果が奏される。例えば、保冷剤を容器に封入して保冷具を作製するときは保冷剤の流動性を確保して封入を好適に行うことができる。一方で、保冷具の使用時には保冷剤の粘度を高くして(若しくは保冷剤を固形化して)、保冷剤が漏出する蓋然性を低減したり、及び/又は漏出量を低減したりできる。また、保冷剤の生ごみとしての処分を可能としたり、危険物としての取り扱いの必要性を低減したりできる。
保冷剤は、塩化物を含んでよい。
この場合、例えば、保冷剤の融点(及び/又は凝固点)を下げることができる。これにより、例えば、水の融点よりも低い温度域で潜熱を利用したり、水の融点よりも低い温度域(ただし、保冷剤の融点よりも高い温度域)で軟らかい保冷具を実現したりできる。
市販の増粘剤は、塩化物を含む保冷剤に利用できない場合がある。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)は、Ca2+又はMg2+のような2価のイオンを含む溶液に添加しても増粘作用が発揮されない。一方、図1に示したように、タピオカは、そのような2価のイオンを含む溶液に対しても増粘作用を発揮する。従って、タピオカによって保冷剤用増粘剤の技術の豊富化が図られることによって、粘度が要求される保冷剤に利用可能な塩化物の選択の自由度も向上する。
保冷剤は、塩化物としてCaClを含んでよい。
この場合、例えば、既述のように、タピオカの増粘作用を大きくすることができ、ひいては、保冷剤が漏出する蓋然性を低減したり、漏出量を低減したりできる。別の観点では、所望の粘度を実現するためのタピオカの添加量を少なくすることができる。
CaClの濃度は20%以上とされてよい。CaCl以外の塩化物の合計の濃度は0%以上5%以下とされてよい。タピオカの濃度は3%以上とされてよい。
この場合、例えば、図3を参照して説明したように、保冷剤が漏出する蓋然性を低減したり、漏出量を低減したりする効果が十分に得られる。
(保冷具、貨物、輸送機器、保冷具の製造方法、輸送方法及び保冷方法)
以下、本実施形態に係る、保冷具、貨物、輸送機器、保冷具の製造方法、輸送方法及び保冷方法について説明する。
図8(a)は、保冷剤1を利用している保冷具3の一例を示している斜視図である。なお、保冷具3の一部は破断して示されている。
保冷具3は、保冷剤1と、保冷剤1が封入されている封入容器5とを有している。保冷剤1は、本実施形態に係る保冷剤であり、保冷剤用増粘剤としてタピオカを含むものである。保冷具3は、繰り返し使用されるタイプのものであってもよいし、使い捨てタイプのものであってもよい。なお、封入容器5には、保冷剤1と共に気体(例えば空気)が封入されていても構わない。
封入容器5の大きさ、形状及び材料は、適宜に設定されてよい。例えば、封入容器5として、公知の種々の保冷具の封入容器が利用されてよい。具体的には、例えば、封入容器5は、可撓性の材料(樹脂等)によって構成された袋状のものであってもよいし、可撓性を有さない材料(樹脂等)によって構成されたハードタイプ容器(図示の例)であってもよい。また、例えば、封入容器5は、注入口を有さない(封入容器5の破壊無しでは保冷剤1を取り出すことができない)ものであってもよいし、図示の例のようにキャップによって塞がれた注入口を有するものであってもよい。また、例えば、封入容器5の形状は、概略直方体状であってもよいし(図示の例)、用途に応じた特異な形状を有していてもよい。また、例えば、封入容器5の容積(可撓性の場合は最大容積)は、10ml以上1リットル以下とされてよい。
図8(b)は、保冷剤1を利用している貨物11の一例を示している断面図である。
貨物11は、例えば、1以上の保冷対象物13と、1以上の保冷具3と、これらを共に収容している箱15とを有している。なお、箱15は、収容容器の一例である。
保冷対象物としては、例えば、食品を挙げることができる。食品としては、例えば、冷凍食品、冷凍菓子、生菓子、乳製品及び生鮮食品を挙げることができる。冷凍食品は、長期保存を目的に冷凍されている食品であり、冷凍前において、無加熱のもの、加熱されたもの、調理前のもの、調理後のものなどがある。冷凍菓子としては、例えば、アイスクリームを挙げることができる。生菓子としては、例えば、ケーキを挙げることができる。乳製品としては、例えば、ヨーグルトを挙げることができる。生鮮食品としては、例えば、鮮魚(魚介類)、精肉(肉類)及び青果を挙げることができる。図8(b)では、保冷対象物13として、カップ入りのアイスクリームを例示している。
保冷対象物としては、食品・飲料の他、例えば、移植用臓器及びワクチン(移植用臓器又はワクチンが封入された容器)を挙げることができる。保冷の語は、一般に食料品に用いられるが、前記の例示から理解されるように、本開示では、保冷対象物は食料品に限られない。
箱15の大きさ、形状及び材料は、適宜に設定されてよく、例えば、公知の種々の箱が適用されてよい。代表的なものとしては、例えば、発泡スチロール又は段ボールからなる比較的小型(例えば1m以下×1m以下×1m以下)の箱が挙げられ、また、プラスチックケースに断熱材を組み合わせたクーラーボックス(アイスボックス)が挙げられる。なお、箱15の材料は、比較的断熱性が高いものであってもよいし、断熱性が低いものであってもよい。
箱15内における保冷対象物13及び保冷具3の配置位置も適宜に設定されてよい。例えば、保冷具3は、保冷対象物13に対して、側方に位置していてもよいし(図示の例)、上に位置していてもよいし、下に位置していてもよいし、これらの2以上の組み合わせで配置されてもよい。なお、保冷対象物13の種類、その包装及び/又は箱15の構成等によっては、保冷具3を箱15に収容するのではなく、保冷剤1を直接に(封入容器5に封入せずに)箱15に収容することも可能である。
図8(c)は、保冷剤1を利用している輸送機器21の一例を示している側面図である。
輸送機器21は、例えば、1以上の貨物11と、当該貨物11を収容している1以上のコンテナ23とを有している。なお、コンテナ23も、箱15と同様に、収容容器の一例である。
輸送機器21としては、例えば、自動車(図示の例)、航空機、列車、船舶及び二輪車を挙げることができる。図8(c)では、備え付けのコンテナ23を有する保冷車又は冷凍車が図示されている。
コンテナ23内における貨物11の配置は適宜に設定されてよい。また、貨物11をコンテナ23に収容するのではなく、保冷対象物13及び保冷具3が直接に(箱15に収容されずに)コンテナ23に収容されていてもよい。なお、保冷対象物13の種類、その包装及び/又はコンテナ23の構成等によっては、保冷剤1を直接に(封入容器5に封入せずに)コンテナ23に収容することも可能である。
ここでは、箱15及びその内容物を貨物11として説明している。換言すれば、1人又は少人数で(人力で)運搬できるような比較的小型のものを貨物として例示した。ただし、貨物は、そのような大きさのものよりも大きくてもよい。例えば、図8(c)では、コンテナ23は、自動車に備え付けのものとしたが、コンテナ船、トラック及び/又は列車に積みおろしされるものであってもよく、このコンテナ及びその内容物が貨物と捉えられてもよい。
収容容器(箱15若しくはコンテナ23)は、単に断熱されているだけであってもよいし、チラー等の冷却装置によって積極的に低温に保たれてもよい。後者の場合、保冷対象物の温度は、例えば、冷却装置の目標温度と、当該目標温度よりも低い保冷剤の温度との中間の温度に維持される。
図9は、保冷具の製造方法、輸送方法及び保冷方法の手順を示すフローチャートである。なお、図8(a)~図8(c)は、実施形態に係る輸送方法及び保冷方法も示しており、図9と併せて参照することがある。
ステップST1では、少なくとも水とタピオカとを含む混合物を糊化させる。保冷剤が水及びタピオカ以外の他の成分を含む場合、当該他の成分は、適宜な時期に添加されてよい。例えば、他の成分は、タピオカの添加の前又は後であって、糊化の前に添加されてよい。この場合、糊化によって他の成分の分散が妨げられる蓋然性が低減される。
タピオカが糊化に加熱が必要なものである場合、加熱の際の温度及び時間等は適宜に設定されてよい。例えば、特段の処理が施されていないタピオカを含む混合物の糊化開始温度は、他の成分にもよるが、50℃以上70℃以下である。従って、混合物の温度は、50℃以上、60℃以上又は70℃以上とされてよい。
また、タピオカが糊化に加熱が不要なものである場合、混合物の温度は、糊化が生じる限り、適宜な温度とされてよい。例えば、混合物の温度は、常温よりも高くてもよいし、常温とされてもよいし、常温未満かつ0℃以上とされてもよいし、常温未満かつ混合物の凝固点以上とされてもよい。なお、常温は、例えば、5℃以上35℃以下(日本産業規格)、又は15℃以上25℃以下(日本薬局方)である(以下、同様。)。
なお、いずれにせよ、混合物の糊化は、糊化が生じ得る糊化温度範囲においてなされているということができる。糊化に加熱が必要な混合物の糊化温度範囲は、例えば、50℃以上又は60℃以上である。糊化に加熱が不要な混合物の糊化温度範囲は、例えば、0℃以上、5℃以上又は10℃以上である。
ステップST2では、糊化状態の保冷剤1を封入容器5に封入して保冷具3を作製する。このときの保冷剤1の温度は適宜な温度とされてよい。例えば、常温よりも高い温度であってもよいし、常温であってもよいし、常温よりも低くてもよい。
ここで、糊化に加熱が必要な混合物は、一般に、温度が低くなるほど粘度が増す。また、老化は、0℃付近において最も進行する。従って、保冷剤1が糊化に加熱が必要なものである場合は、ステップST1で所定温度(例えば50℃)以上とされた保冷剤1の温度が、所定温度(例えば50℃)よりも低くなる前、常温の上限(例えば35℃又は25℃)になる前、又は常温の下限(例えば5℃又は15℃)よりも低くなる前に、保冷剤1は、封入容器5に封入されてよい。
また、糊化に加熱が不要な混合物は、例えば、凍結及び解凍を経て老化する(粘度が高くなる。)。従って、保冷剤1が糊化に加熱が不要なものである場合は、ステップST1で糊化された保冷剤1の温度が保冷剤1の凝固点に到達する前に、保冷剤1は、封入容器5に封入されてよい。また、糊化に加熱が不要であるからといって、糊化及び封入に際して、常温よりも低い温度環境で保冷剤1を作製する必要性は基本的に無い。従って、封入は、保冷剤1の温度が常温であるときに行われてよい。
なお、いずれにせよ、封入は、ステップST1によって糊化された混合物(保冷剤1)の温度が常温の下限(例えば5℃又は15℃)よりも低くなる前に行われてよい、ということができる。
ステップST3では、保冷具3を冷却する。このときの保冷具3(保冷剤1)の温度は、例えば、少なくとも常温の下限(例えば5℃又は15℃)よりも低い温度とされる。保冷具3の温度が環境の温度と同等以上であると、保冷具3は、保冷の機能を果たさないからである。例えば、保冷具3の温度は、0℃以下、-50℃以下、-100℃以下若しくは-130℃以下とされてよい。別の観点では、保冷具3の温度は、保冷剤1の融点以下とされなくてもよいし、融点以下とされてもよい。すなわち、保冷剤1は、凍結されなくてもよいし、凍結されてもよい。
ステップST4では、ステップST3で冷却された保冷具3と保冷対象物13とを共に箱15に収容する(図8(b))。このときの保冷具3(保冷剤1)の温度は、適宜な温度とされてよい。例えば、ステップST3の説明で例示した各種の温度は、ステップST4に適用されてよい。ステップST3の完了時の温度と、ステップST4の開始時又は完了時の温度とは、異なっていてもよいし、概ね同じであってもよい。
ステップST5では、保冷具3及び保冷対象物13を共に収容している箱15を移送する(図8(c))。
なお、ステップST1及びST2は、実施形態に係る保冷具3の製造方法を示している。保冷具3の製造方法は、ステップST3を含むように定義されてもよい。ステップST3~ST5は、実施形態に係る輸送方法及び保冷方法を示している。輸送方法及び保冷方法は、ステップST3を含まないように定義されてもよい。保冷方法では、輸送せずに単に保冷を行うだけであってもよい(保冷方法はステップST3及びST4のみを有してよい。)。ステップST1からST5まで(又はST4まで)は、保冷剤用増粘剤の利用方法として捉えられてよい。
ステップST3は、保冷のために(ステップST4以降のために)保冷具3を冷却している。このとき、保冷剤1は老化してよい(粘度が増加してよい。)。すなわち、保冷のための冷却は、保冷剤1の粘度を増加させるための冷却を兼ねてよい。この場合の保冷具3の温度は適宜に設定されてよい。例えば、保冷剤1が糊化に加熱を要するものである場合においては、既述の保冷のための温度の例示がそのまま適用されてよい。保冷剤1が糊化に加熱を要しないものである場合においては、例えば、保冷剤1の温度は、0℃以下又は保冷剤1の凝固点以下の温度とされてよい。
ステップST2とST3との間には保冷具3を流通させる流通ステップが介在してよい。このような場合において、ステップST2の直後(別の観点では保冷具3の流通前)に、保冷剤1の老化のみを目的とした冷却が行われてもよい。その後、保冷剤1が流通され、流通先でステップST3が行われてもよい。この場合のステップST3は、老化に寄与してもよいし、寄与しなくてもよい。流通の際、保冷具3の温度は、一旦上昇してもよい(例えば常温になってよい。)。
上記のような老化のみを目的とした冷却における保冷剤1の温度は、適宜に設定されてよい。例えば、老化のみを目的とした冷却における保冷剤1の温度は、ステップST3における保冷剤1の温度に対して、高くてもよいし、同等でもよいし、低くてもよい。ステップST3が、保冷だけでなく、老化のための冷却を兼ねる場合の上述した温度の例示は、老化のみを目的とした冷却がなされるときの保冷剤1の温度に援用されてよい。
ステップST2とST3との間に保冷具3を流通させる流通ステップが介在する場合において、上記とは異なり、老化のみを目的とした冷却が行われずに、保冷具3の流通が行われてもよい。別の観点では、ステップST2とST3との間の流通における漏出は、例えば、糊化によって増加した粘度によって低減されてよい。また、糊化に加熱が必要な保冷剤1においては、保冷剤1の温度が常温まで低下することによって増加した粘度によって、ステップST2とST3との間の流通における漏出が低減されてよい。
また、上記のいずれとも異なり、ステップST2と、ステップST3との間に流通ステップが介在しなくてもよい。例えば、保冷対象物が生産若しくは卸される場所、又は宅配を担う業者の各営業所において、ステップST1~ST5(又はST4)までの全てが行われてもよい。
なお、上記の説明では、図示のステップST3を保冷のためのステップとして説明した。ただし、ステップST3は、老化のみを目的とした冷却及び保冷のための冷却の双方を含むステップ、又は両者の上位概念を示していると捉えられてもよい。
保冷具3を極めて低い温度まで冷却するには、例えば、株式会社エイディーディー社製の「超低温チラー コールドウェーブ」を用いてよい。この超低温チラーは、多段蒸発器及び混合冷媒を用いることによって、供給された気体(例えば、空気、フロンガス、液体窒素又はアルゴンガス)を-130℃程度の温度まで冷却することができる。そして、例えば、保冷具3の周囲に前記のチラーによって冷却された気体を供給することによって、保冷具3(保冷剤1)を上記に例示した種々の温度まで冷却することができる。
確認的に記載すると、チラーは、フリーザの概念を含むものである。また、特に図示しないが、チラーは、例えば、基本的な構成として、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を冷却する凝縮器、冷却された冷媒の圧力を下げて送る膨張弁及び圧力が下げられた冷媒によって冷却対象(保冷剤又は保冷剤の周囲に供給される気体)を冷却する蒸発器を有している。チラーは、例えば、保冷対象物が生産若しくは卸される場所に設置されたり、宅配を担う業者の各営業所に設置されたりしてよい。
以上のとおり、本実施形態に係る保冷具3の製造方法は、糊化ステップ(ST1)と、封入ステップ(ST2)とを有してよい。糊化ステップでは、水とタピオカとの混合物を糊化させてよい。封入ステップでは、糊化ステップによって糊化された上記混合物の温度が5℃(又は15℃。換言すれば常温の下限)よりも低くなる前に、水とタピオカとを封入容器5に封入してよい。
この場合、例えば、保冷剤1が加熱によって糊化するものである場合においては、老化が急速に進む(粘度が急激に高くなる)温度になる前に保冷剤1を封入容器5に封入できる。また、保冷剤1が糊化に加熱を要しないものである場合においても、当然に、老化が急速に進む前に保冷剤1を封入容器に封入できる。従って、作業性の向上が図られ、及び/又は封入容器5の隅々まで保冷剤1を行き渡らせることができる。一方で、保冷具3は、通常、その使用態様に照らして、常温よりも低い温度又は保冷剤1の凝固点以下の温度に冷却されるから、その後、保冷剤1の粘度は増加する。これにより、保冷剤1が漏出する蓋然性が低減され、及び/又は保冷剤1の漏出量が低減される。
本実施形態に係る輸送方法において、収容するステップ(ST4)において保冷具3の温度は保冷剤1の凝固点以下とされてよい。なお、通常、保冷剤1の凝固点は、0℃以下である。
この場合、例えば、保冷の用途のために、保冷剤1の温度は、老化が急速に進む温度とされていることになる。従って、保冷剤1を封入容器5に封入した後、確実に老化によって保冷剤1の粘度を増加させることができる。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
タピオカを含む保冷剤は、既述のように、老化によって粘度が増加する前に容器への封入を行うことによって、封入の容易化と漏出の低減とを両立できる。ただし、タピオカを含む保冷剤は、老化後に容器に封入されても構わない。この場合であっても、例えば、漏出の低減の効果は得られるし、生ごみとして処理できる蓋然性の向上、及び/又は危険物としての取扱いの必要性の低減が図られる。
水及びタピオカは、糊化前に容器に収容(又は封入。以下、本段落において同様。)されてもよい。換言すれば、保冷剤は、容器内で糊化されてよい。例えば、糊化に加熱が必要な場合、水及びタピオカの混合物を容器に収容した後、容器ごと水及びタピオカを加熱して糊化を行ってもよい。また、糊化に加熱を要するか否かに関わらず、水及びタピオカは、混合されずに容器に収容されてもよい。例えば、水及びタピオカを順に容器に収容し、その後、容器に振動を付与することによって水及びタピオカを攪拌してもよい。
なお、本実施形態に係る保冷具の製造方法において、「糊化ステップによって糊化された混合物の温度が5℃(又は15℃)よりも低くなる前に、水とタピオカとを封入容器に封入する封入ステップ」という場合、上記のように、容器内で水及びタピオカの混合及び/又は加熱によって糊化が行われ、そのときの温度が5℃以上である態様を含む。
保冷剤用増粘剤は、例えば、タピオカのみから構成されてよい。ただし、製造上、不可避な不純物が含まれていてもよいことは当然である。また、保冷剤用増粘剤は、タピオカ以外の他の成分(意図的に添加されたもの)を含んでいてもよい。
例えば、タピオカと、タピオカの増粘作用を大きくする成分(例えばCaCl)との混合物が保冷剤用増粘剤として流通されても構わない。ただし、例えば、タピオカの増粘作用を大きくする成分がCaClである場合においては、上記の混合物のうち、タピオカのみを増粘剤として捉え、CaClを融点降下剤として捉え、増粘剤及び融点降下剤の混合物が保冷剤用の多機能性添加剤として流通されていると捉えられても構わない。
また、例えば、保冷剤用増粘剤は、タピオカの意図されていない変質を低減する成分(例えば防腐剤)を含んでいてもよい。このような成分としての防腐剤は、保冷剤の作製後、保冷剤の腐敗を低減する防腐剤としても機能してもよいし、機能しなくてもよい。
いずれにせよ、タピオカと、他の成分とを含む混合物が流通されている場合、その混合物全体を保冷剤用増粘剤として捉えてもよいし、混合物全体を保冷剤用の添加剤として捉えつつ、その一部としてタピオカからなる保冷剤用増粘剤が流通されていると捉えてもよい。
1…保冷剤、3…保冷具、5…封入容器、11…貨物、13…保冷対象物、21…輸送機器。

Claims (12)

  1. タピオカを含んでいる保冷剤用増粘剤。
  2. 請求項1に記載の保冷剤用増粘剤と、
    水と、
    を含んでいる保冷剤。
  3. 塩化物を含んでいる
    請求項2に記載の保冷剤。
  4. 前記塩化物としてCaClを含んでいる
    請求項3に記載の保冷剤。
  5. CaClの濃度が20%以上であり、
    CaCl以外の塩化物の合計の濃度が0%以上5%以下であり、
    前記タピオカの濃度が3%以上である
    請求項4に記載の保冷剤。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の保冷剤と、
    前記保冷剤が封入されている封入容器と、
    を有している保冷具。
  7. 請求項6に記載の保冷具と、
    保冷対象物と、
    前記保冷具と前記保冷対象物とを共に収容している収容容器と、
    を有している貨物。
  8. 請求項6に記載の保冷具と、
    保冷対象物と、
    前記保冷具と前記保冷対象物とを共に収容している収容容器と、
    を有している輸送機器。
  9. 請求項6に記載の保冷具の製造方法であって、
    前記水と前記タピオカとの混合物を糊化させる糊化ステップと、
    前記糊化ステップによって糊化された前記混合物の温度が5℃よりも低くなる前に、前記水と前記タピオカとを前記封入容器に封入する封入ステップと、
    を有している保冷具の製造方法。
  10. 請求項6に記載の保冷具と保冷対象物とを共に収容容器に収容するステップと、
    前記保冷具及び前記保冷対象物を共に収容している前記収容容器を移送するステップと、
    を有している輸送方法。
  11. 前記収容するステップにおいて前記保冷具の温度が前記保冷剤の凝固点以下である
    請求項10に記載の輸送方法。
  12. 請求項6に記載の保冷具と保冷対象物とを共に収容容器に収容するステップ
    を有している保冷方法。
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