JP2022079857A - Dpp-4阻害用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)阻害ペプチドを高含有する組成物の新規製造方法を提供する。【解決手段】タンパク質又はタンパク質を含む原料と、PepX(N末端から2番目にプロリンを持つ構造を有するペプチドを分解するエキソペプチダーゼ)活性が低い乳酸菌とを含有する発酵ミックスを調製する工程と、前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させてDPP-4阻害ペプチドを得る工程と、を含むことを特徴とするDPP-4阻害ペプチドの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、タンパク質と、PepX活性が低い乳酸菌とを含有する発酵ミックスを調製する工程と、前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させてDPP-4阻害ペプチドを得る工程と、を含むことを特徴とするDPP-4阻害剤の製造方法およびその方法により調製される飼料、医薬品、及び飲食品に関する。本発明は、前記DPP-4阻害剤の製造方法に用いる乳酸菌にも関する。また、本発明は、発酵飲食品の製造方法にも関する。
ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)はタンパク質やペプチドのN末端から2番目のアラニンまたはプロリンを認識し、N末端のジペプチドを切り出す酵素である。食後の血糖調節に重要なホルモンであるGLP-1やGIPは、DPP-4によって速やかに分解され生理活性を失う。DPP-4を阻害することで、GLP-1やGIPの分解が抑制される。DPP-4を阻害することにより、食後血糖の上昇を抑制できるため、DPP-4阻害剤が糖尿病治療薬として上市されている。
DPP-4阻害剤は、糖尿病治療薬のような医薬品だけでなく、食品としても数多く報告されている。例えば特許文献1では小豆、インゲン豆発酵物が、特許文献2では大豆発酵物が、また特許文献3ではチーズがそれぞれDPP-4阻害活性をもつことが示されている。医薬品と違い、副作用が少なく日常的に摂取可能であるため、DPP-4阻害剤としての食品は糖尿病等の疾患に対する予防効果が期待される。
食品中でDPP-4阻害活性を示す有効成分として報告されているものの多くは、競合阻害作用を示すペプチドである。例えば特許文献3では、DPP-4活性を阻害するチーズ由来ペプチドを種々例示しているが、すべてN末端から2番目にプロリンまたはアラニンを持つ構造を持つ。これらのペプチドは、DPP-4によって認識されるため、DPP-4によるGLP-1やGIPの分解を競合的に阻害する作用を持つと考えられる。すなわち、N末端から2番目にプロリンまたはアラニンを持つ構造を持つ競合阻害ペプチドを高含有する食品の製造方法を確立すれば、糖尿病予防食品が製造可能となる。
食品における種々のペプチドを安価に且つ高効率に増加させる工程として、古来より発酵が用いられてきた。発酵に使用される菌として最も一般的なものの一つが乳酸菌である。乳酸菌は、チーズや発酵乳などの発酵乳製品、または生ハムなどの畜肉製品の製造に広く使用されており、発酵過程で独特のペプチドやアミノ酸を産生する。これらのペプチドやアミノ酸は、乳酸菌が保有するプロテアーゼやペプチダーゼによって生じるものであり、乳酸菌の菌種、菌株で保有する酵素の種類や活性の強さが異なることが知られている。そのため、ペプチドを高含有する発酵食品を製造するために、プロテアーゼ活性やペプチダーゼ活性の高い乳酸菌を選抜するアプローチがとられてきた(非特許文献1)。
一方、特定のペプチドを高含有する食品を製造する目的においては、望ましくない活性を持つ酵素も存在する。例えば、乳酸菌の持つPepXという酵素は、N末端から2番目にプロリンを持つ構造を有するペプチドを分解するエキソペプチダーゼである。PepXは前述のDPP-4競合阻害ペプチドを分解してしまうため、PepX活性が高い菌株は、発酵食品のDPP-4阻害活性を低下させてしまうという問題点があった。すなわち、発酵によりDPP-4競合阻害ペプチドが産生されたとしても、該乳酸菌株が有するPepX活性により、産生されたDPP-4競合阻害ペプチドが分解されるという問題があった。しかしながら、非特許文献1に記載のように、従来では、PepXを含む種々のペプチダーゼ活性が高い株が、発酵性能の良い株として選抜されることもあった。
特許5916387号 特許5984512号 特許4915833号
Journal of Dairy Research(1995)、62、601-610
本発明は、DPP-4阻害ペプチドの新規製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、PepX活性が非常に低い乳酸菌を見出し、これらの乳酸菌を用いてタンパク質を発酵することでDPP-4阻害活性を持つペプチドが高効率で得られることを見出した。
本発明は、具体的には以下のとおりである。
<1>
DPP-4阻害ペプチドの製造方法であって、
タンパク質又はタンパク質を含む原料と、PepX活性が低い乳酸菌とを含有する発酵ミックスを調製する工程と、
前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させてDPP-4阻害ペプチドを得る工程と、を含むことを特徴とするDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<2>
乳酸菌の粗酵素のPepX活性が、1000RLU/min/μg protein以下であることを特徴とする<1>に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<3>
PepX活性が低い前記乳酸菌で、タンパク質又はタンパク質を含む原料を発酵したときの水溶性画分(1mg protein/ml)が、純水を添加したコントロールのサンプルと比較して、DPP-4活性を50%以上阻害することを特徴とする<1>または<2>に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<4>
PepX活性が低い前記乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びラクトコッカス(Lactococcus)属から成る群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする<1>~<3>のいずれかに記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<5>
Lactobacillus属またはLactococcus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus brevis及びLactococcus lactisから成る群から選択される少なくとも1つ以上であることを特徴とする<4>に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<6>
Lactobacillus属またはLactococcus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)、Lactobacillus brevis SBT10966(NITE P-03245)及びLactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373(NITE P-03246)から成る群から選択される少なくとも1つ以上であることを特徴とする<4>に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<7>
食品添加物グレードのエンド型プロテアーゼまたはペプチダーゼを併用した<1>~<6>のいずれか一項に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
<8>
<1>~<7>のいずれか一項に記載の方法により調製される、DPP-4阻害ペプチド含有飼料、DPP-4阻害ペプチド含有医薬品、又はDPP-4阻害ペプチド含有飲食品。
<9>
新規乳酸菌Lactobacillus brevis SBT10966(NITE P-03245)
<10>
新規乳酸菌Lactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373(NITE P-03246)
<11>
発酵飲食品の製造方法であって、
タンパク質又はタンパク質を含む原料と、PepX活性が低い乳酸菌とを含有する発酵ミックスを調製する工程と、
前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させて発酵飲食品を得る工程と、
を含み、
前記乳酸菌の粗酵素のPepX活性が、1000RLU/min/μg protein以下であることを特徴とする発酵飲食品の製造方法。
本発明によればDPP-4阻害活性を持つペプチドを効率良く製造することができる。
分解時に化学発光するPepX基質と、乳酸菌の粗酵素とを混和し、30分間反応させたときの化学発光強度を、時間(分)および粗酵素タンパク質重量(μg protein)にて除算した値を示したグラフである。
(原材料に用いるタンパク質)
本発明の製造方法における発酵ミックス調製工程の原材料としては、動物由来、植物由来いずれのタンパク質でも使用することもできる。そのような原材料として、例えば、肉類、魚介類、乳類、大豆、小麦等が挙げられるが、その中でも、食経験が豊かで安全な乳酸菌の生育に適した乳類、大豆又はそれらの加工品が好ましい。乳類としては、食品製造に通常用いられる乳であればいずれの乳を使用してもよく、例えば全乳、脱脂調製乳、還元乳、濃縮乳、バターミルク、クリーム、脱脂粉乳、乳蛋白、豆乳等又はこれらの混合物を挙げることができる。
(ラクトバチルス属またはラクトコッカス属に属する乳酸菌)
本発明の製造方法における発酵ミックス調製工程においては、粗酵素のX-Proジペプチダーゼ活性(PepX活性)が1000RLU/min/μg protein以下の乳酸菌を用いることが好ましい。乳酸菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属又はラクトコッカス(Lactococcus)属に分類される乳酸菌が好ましい。なお、本明細書において「粗酵素」とは、乳酸菌を破砕して、遠心分離などを行うことにより得られた抽出物を意味する。
具体的にはラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリクスデルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusdelbrueckii)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
本発明の製造方法における発酵ミックス調製工程においては、Lactobacillus属またはLactococcus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)、Lactobacillus brevis SBT10966(NITE P-03245)及びLactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373(NITE P-03246)を使用することが好ましい。
上記の菌株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(日本、千葉県、木更津市)から入手することができる。
(ラクトバチルス属またはラクトコッカス属に属する菌の調製)
本発明の製造方法における発酵工程において使用する乳酸菌は、各菌の培養の常法に従って培養し、所望の量を調製すればよい。調製の一例を以下に示す。ラクトバチルス属に属する乳酸菌はMRS培地(Difco)を用いて、ラクトコッカス属に属する乳酸菌はM17培地(Difco)を用いてそれぞれ培養し、得られた培養物を遠心分離により集菌することにより菌体を得る。得られた菌体をそのまま用いてもよいし、濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体を用いることもできる。ビーズショッカー、超音波破砕機、フレンチプレス等の破砕装置により破砕した菌体をそのまま用いてもよいし、破砕した菌体を遠心分離して上清の粗酵素抽出物を用いることもできる。
本発明の製造方法においては、培養前の発酵ミックスにおいて、生菌が1×10cfu/g~1×1010cfu/g、1×10cfu/g~1×10cfu/g、又は1×10cfu/g1×10cfu/gとなるように調整することができる。粗酵素抽出物を用いる場合は、実施例の手順により調製したものを、培養前の発酵ミックスにおいて、0.01質量%~20質量%、0.05質量%~10質量%、0.05質量%~10質量%、又は0.1質量%~5%となるように調整することができる。
(PepX活性の評価方法)
実施例に記載の方法、すなわち、DPPIV-GloTM Protease Assay(Promega)を用いた方法で評価が可能である。具体的には、以下のとおりである。
(1)菌体粉末を1mg/mlになるように緩衝液(50mM HEPES、15mM CaCl)に懸濁し、SONIFIER SFX150HH(BRANSON)を用いて氷上にて超音波破砕する(on time 5sec、off time 5sec、total 30min、Amplitude 30%)。
(2)破砕後、4℃にて15,000×gで10分間遠心分離し、上清を回収する。
(3)キットの説明書に従ってDPPIV-GloTM Reagentを調製する。
(4)384 well white plate(Perkin Elmer)の各wellに、DPPIV-GloTM Reagentを25μl、緩衝液(50mM HEPES、15mM CaCl)または実施例品1を20μl加え、ピペッティングにてよく混合し、暗所で室温にて30分間インキュベートする。
(5)インキュベート後、VICTOR Nivo Multimode Microplate Reader(Perkin Elmer)を用いて1000msecにて発光強度(RLU)を測定する。
(6)タンパク質濃度を、PierceTM BCA Protein Assay Kitにて測定する。
(7)RLUを、反応時間(30min)、反応液量(45μl)およびタンパク質濃度(mg/ml)にて補正し、PepX活性単位(RLU/min/μg protein)として算出する。
本明細書において、「PepX活性が低い」とは、好ましくは、上記工程(1)~(7)により乳酸菌の粗酵素のPepX活性を評価した時に、PepX活性単位(RLU/min/μg protein)が1000以下となることを意味する。本明細書の製造方法における発酵ミックス調製工程に用いられる乳酸菌の粗酵素のPepX活性は、好ましくは600RLU/min/μg protein以下、より好ましくは300RLU/min/μg protein以下である。
(利用方法)
本発明の製造方法により得られる飲食品としては、例えば、発酵乳食品、発酵豆乳食品、漬物、納豆、酒類等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、PepX活性が低い菌に加えて、N末端から2番目にプロリンまたはアラニンを持つ構造を認識しないエンド型プロテアーゼやペプチダーゼを併用してもよい。これらの酵素は、DPP-4阻害ペプチドを分解しないため、本発明の効果をより高めることができる。PepX活性が低い菌と併用する酵素としては、例えば、食品添加物グレードのペプシン、トリプシン、キモトリプシン等が挙げられる。
乳類を含有する原材料にPepX活性が低い菌を複数種接種して発酵する際にも、用いる菌の増殖や酵素反応等に好適な条件を設定すればよい。条件は、一般に10~42℃で1~3日発酵すればよい。このようにして得られた食品はDPP-4阻害ペプチドを含有する発酵乳食品である。
乳類を含有する原材料を用いることにより、良好に発酵し、発酵時間を短くすることが
でき、得られる発酵乳食品の風味及び香り等は非常に良好なものとなる。このような発酵
乳食品の例としては、チーズ、ヨーグルトや豆乳等が挙げられる。
本発明の製造方法では、PepX活性が低い前記乳酸菌で、タンパク質又はタンパク質を含む原料を発酵したときの水溶性画分(1mg protein/ml)が、純水を添加したコントロールのサンプルと比較して、DPP-4活性を、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上阻害する。
本発明の方法により得られる医薬品としては、例えば、得られるDPP-4阻害ペプチド含有物をそのまま用いてもよいし、また乾燥した粉末を有効成分としてもよい。乾燥方法に特に制限はないが、成分の変質を抑制できる凍結乾燥法が好ましい。これらの粉末は乳糖等の適当な賦形剤と混合し、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤又はシロップ剤等として製剤化することができる。
さらに、本発明の方法により得られる飼料としては、例えば、得られるDPP-4阻害ペプチド含有物をどのような飼料に配合しても良く、その製造工程中に原料に添加しても良い。
また、本発明の方法により得られる飲食品は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は美容用食品として使用することも可能である。
以下、本発明を試験例、比較例、実施例をもとにさらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例等に限定されて解釈されるものではない。なお、特に説明のない限り、%の表示は質量%を示す。
[試験例1]
PepX活性が低い乳酸菌を選抜するため、下記の評価を行った。
下記(1)の各供試菌を、Lactobacillus属はMRS培地(Difco)、Lactococcus属はM17培地(Difco)にそれぞれ植菌し、30~37℃にて16~24時間静置培養を行った。培養物を、生理食塩水にて2回、滅菌水にて1回洗浄し、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体を凍結乾燥して菌体粉末を得た。菌体粉末を1mg/mlになるように緩衝液(50mM HEPES、15mM CaCl)に懸濁し、SONIFIER SFX150HH(BRANSON)を用いて氷上にて超音波破砕した(on time 5sec、off time 5sec、total 30min、Amplitude 30%)。破砕後、4℃にて15,000×gで10分間遠心分離し、上清を回収した。回収した上清を乳酸菌粗酵素抽出物とした。
(1)供試菌
Lactobacillus helveticus JCM1120、Lactobacillus helveticus A株、Lactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)、Lactobacillus fermentum B株、Lactobacillus brevis SBT10966(NITE P-03245)Lactobacillus brevis C株、Lactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373(NITE P-03246)、Lactococcus lactis subsp. lactis D株、及びLactococcus lactis subsp. lactis E株を供試菌とした。
上記の菌株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(日本、千葉県、木更津市)から入手することができる。
乳酸菌粗酵素抽出物のPepX活性は、N末端から2番目にプロリンを持つ基質(Gly-Pro-Aminoluciferine)を含有するDPPIV-GloTM Protease Assay(Promega)を用いて評価した。キットの説明書に従ってDPPIV-GloTM Reagentを調製した。384well white plate(Perkin Elmer)の各wellに、DPPIV-GloTM Reagentを25μl、緩衝液(50mM HEPES、15mM CaCl)または乳酸菌粗酵素抽出物を20μl加え、ピペッティングにてよく混合し、暗所で室温にて30分間インキュベートした。インキュベート後、VICTOR Nivo Multimode Microplate Reader(Perkin Elmer)を用いて1000msecにて発光強度(RLU)を測定した。
乳酸菌粗酵素抽出物中のタンパク質濃度は、PierceTM BCA Protein Assay Kitにて測定した。
乳酸菌粗酵素抽出物のPepX活性の単位は、RLUを、反応時間(30min)、反応液量(45μl)およびタンパク質濃度(mg/ml)にて補正し、RLU/min/μg proteinとして算出した。
乳酸菌粗酵素抽出物のPepX活性を図1に示した。PepX活性は菌種や菌株によって異なり、PepX活性が高い株として知られているLactobacillus helveticus JCM1120は9000RLU/min/μg protein以上の活性を示した。一方、Lactobacillus fermentum SBT1859、Lactobacillus brevis SBT10966及びLactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373は、いずれも活性が1000RLU/min/μg protein以下であった。Lactobacillus fermentum SBT1859は221RLU/min/μg protein、Lactobacillus brevis SBT10966は231RLU/min/μg protein、Lactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373は542RLU/min/μg proteinであった。すなわち、Lactobacillus fermentum SBT1859、Lactobacillus brevis SBT10966及びLactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373をPepX活性が低い菌として見出した。
(比較例1)
PepX活性が高い菌としてLactobacillus helveticus JCM1120を用いて、発酵乳Aを製造した。すなわち10%脱脂乳を85℃にて20秒間殺菌した後、37℃まで冷却した。その後、試験例1で調製したLactobacillus helveticus JCM1120の粗酵素抽出物を1%または生菌を1×10 cfu/gとなるように添加し、37℃にて72時間反応させた。ついで、80℃にて30分間加熱することで、酵素反応を停止した。遠心分離で沈殿を除いた上清を、ろ紙(ADVANTEC)および限外ろ過フィルター(Millipore)にてろ過し、透過液を得た。得られた透過液のタンパク質濃度を測定し、1mg protein/mlとなるように超純水にて希釈して、DPP4-阻害活性を測定した。
DPP-4活性は、DPPIV-GloTM Protease Assay(Promega)を用いて評価した。キットの説明書に従ってDPPIV-GloTM Reagentを調製した。ヒトリコンビナントDPP-4(Bio Vision)は、氷上にて解凍したのち、PBS(-)で10ng/mlとなるように希釈した。384well white plate(Perkin Elmer)の各wellに、DPPIV-GloTM Reagentを25μl、サンプルまたは1mg protein/mlとなるように超純水にて希釈した脱脂乳培地を20μl加え、ピペッティングにてよく混合し、暗所で室温にて30分間インキュベートした。インキュベート後、VICTOR Nivo Multimode Microplate Reader(Perkin Elmer)を用いて1000msecにて発光強度(RLU)を測定した。発光強度は、DPP-4を含まないBlank(DPP-4の代わりにPBS(-)を添加したwell)の測定値にて補正したのち、Control(サンプルの代わりに超純水を添加したwell)の値を100%としたときの相対値として示した。
PepX活性が低い菌としてLactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)を用いて、発酵乳Bを製造した。すなわち10%脱脂乳を85℃にて20秒間殺菌した後、37℃まで冷却した。その後、試験例1で調製したLactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)の粗酵素抽出物を1%または生菌を1×10cfu/gとなるように添加し、37℃にて72時間反応させた。ついで、80℃にて30分間加熱することで、酵素反応を停止した。遠心分離で沈殿を除いた上清を、ろ紙(ADVANTEC)および限外ろ過フィルター(Millipore)にてろ過し、透過液を得た。得られた透過液のタンパク質濃度を測定し、1mg protein/mlとなるように超純水にて希釈して、比較例1と同様の方法でDPP4-阻害活性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2022079857000002
表1に示される結果から、PepX活性が高いLactobacillus helveticus JCM1120で製造した発酵乳Aと比較して、PepX活性が低いLactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)で製造した発酵乳Bは強くDPP-4活性を阻害することが示された。したがって、PepX活性が低い乳酸菌を用いて発酵を行うことで、DPP-4阻害ペプチドが効率的に製造可能であることが示された。
(比較例2)
PepX活性が高い乳酸菌を用いてゴーダチーズを製造した。原料乳(脂肪分3.5%)100kgを75℃で15秒間加熱殺菌した後、PepX活性が高いLactobacillus helveticus JCM1120を含む混合スターターを1%添加し、31℃で発酵し、凝乳酵素のレンネットを添加した。カッティングを行った後、撹拌しながらホエーを排除し、最終温度が37℃になるように80℃の温水を徐々に加えた。その後さらに30分撹拌した後、生成したカードを沈降させてスチールの板でプレスした。カードが固化したらホエーを排除し、型詰、圧搾、加塩の行程を経てワックスでコーティングし、12ヶ月熟成した。熟成後、このチーズを細かく切断し、10倍量の水を加え、ホモジナイザで粉砕して懸濁した後、遠心分離で沈殿を除いた上清を、ろ紙(ADVANTEC)および限外ろ過フィルター(Millipore)にてろ過し、透過液を得た。得られた透過液のタンパク質濃度を測定し、1mg protein/mlとなるように超純水にて希釈して、比較例1と同様の方法でDPP4-阻害活性を測定した。
PepX活性が低い乳酸菌を用いてゴーダチーズを製造した。原料乳(脂肪分3.5%)100kgを75℃で15秒間加熱殺菌した後、PepX活性が低いLactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)を含む混合スターターを1%添加し、31℃で発酵し、凝乳酵素のレンネットを添加した。カッティングを行った後、撹拌しながらホエーを排除し、最終温度が37℃になるように80℃の温水を徐々に加えた。その後さらに30分撹拌した後、生成したカードを沈降させてスチールの板でプレスした。カードが固化したらホエーを排除し、型詰、圧搾、加塩の行程を経てワックスでコーティングし、12ヶ月熟成した。熟成後、このチーズを細かく切断し、10倍量の水を加え、ホモジナイザで粉砕して懸濁した後、遠心分離で沈殿を除いた上清を、ろ紙(ADVANTEC)および限外ろ過フィルター(Millipore)にてろ過し、透過液を得た。得られた透過液のタンパク質濃度を測定し、1mg protein/mlとなるように超純水にて希釈して、比較例1と同様の方法でDPP4-阻害活性を測定した。その結果、比較例2で製造したゴーダチーズと比較して、PepX活性が低いLactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)で製造したゴーダチーズは強くDPP-4活性を阻害した。
PepX活性が低い乳酸菌を用いて豆乳を製造した。原料の大豆を浸漬した後、PepX活性が低いLactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)を添加した。次いで、原料を磨砕、加熱、圧搾して豆乳を製造した。なお、この方法に用いた微生物以外の原料、使用量、各工程における温度、時間等の条件は、通常の豆乳の製造に用いる条件と同様とした。
本発明によれば、タンパク質と、PepX活性が低い乳酸菌を含有する発酵ミックスを調製する工程と、前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させてDPP-4阻害ペプチドを得る工程と、を含むことを特徴とするDPP-4阻害ペプチドの製造方法を提供することができる。
[寄託生物材料への言及]
(1)SBT1859
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
令和1年6月26日(原寄託日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02996
(2)SBT10966
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
令和2年7月14日(原寄託日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P―03245
(3)SBT11373
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
令和2年7月14(原寄託日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-03246

Claims (11)

  1. DPP-4阻害ペプチドの製造方法であって、
    タンパク質又はタンパク質を含む原料と、PepX活性が低い乳酸菌とを含有する発酵ミックスを調製する工程と、
    前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させてDPP-4阻害ペプチドを得る工程と、を含むことを特徴とするDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  2. 乳酸菌の粗酵素のPepX活性が、1000RLU/min/μg protein以下であることを特徴とする請求項1に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  3. PepX活性が低い前記乳酸菌で、タンパク質又はタンパク質を含む原料を発酵したときの水溶性画分(1mg protein/ml)が、純水を添加したコントロールのサンプルと比較して、DPP-4活性を50%以上阻害することを特徴とする請求項1または2に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  4. PepX活性が低い前記乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びラクトコッカス(Lactococcus)属から成る群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  5. Lactobacillus属またはLactococcus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus brevis及びLactococcus lactisから成る群から選択される少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項4に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  6. Lactobacillus属またはLactococcus属に属する乳酸菌が、Lactobacillus fermentum SBT1859(NITE P-02996)、Lactobacillus brevis SBT10966(NITE P-03245)及びLactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373(NITE P-03246)から成る群から選択される少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項4に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  7. 食品添加物グレードのエンド型プロテアーゼまたはペプチダーゼを併用した請求項1~6のいずれか一項に記載のDPP-4阻害ペプチドの製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により調製される、DPP-4阻害ペプチド含有飼料、DPP-4阻害ペプチド含有医薬品、又はDPP-4阻害ペプチド含有飲食品。
  9. 新規乳酸菌Lactobacillus brevis SBT10966(NITE P-03245)
  10. 新規乳酸菌Lactococcus lactis subsp. cremoris SBT11373(NITE P-03246)
  11. 発酵飲食品の製造方法であって、
    タンパク質又はタンパク質を含む原料と、PepX活性が低い乳酸菌とを含有する発酵ミックスを調製する工程と、
    前記発酵ミックスを前記乳酸菌により発酵させて発酵飲食品を得る工程と、
    を含み、
    前記乳酸菌の粗酵素のPepX活性が、1000RLU/min/μg protein以下であることを特徴とする発酵飲食品の製造方法。
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