JP2022078876A - 金属-繊維強化樹脂積層板 - Google Patents
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Abstract
【課題】内部応力が緩和され金属-繊維強化樹脂積層板を提供する。【解決手段】金属材シート層12と樹脂一体化繊維シート層13を含む積層板11であって、樹脂一体化繊維シート層13は、炭素繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む。前記積層板は、前記金属材シート層と前記樹脂一体化繊維シート層の間に配置された熱可塑性樹脂シート層14を含み、熱可塑性樹脂シート層14は応力緩和層である。熱可塑性樹脂シート層14に含まれる熱可塑性樹脂は、好ましくは、ガラス転移温度が40℃未満の熱可塑性樹脂、または40℃未満で損失正接tanδのピーク有する熱可塑性樹脂である。【選択図】図1
Description
本発明は、金属層と樹脂一体化繊維シート層とを含む非対称の積層板に関する。
電子機器用の構成部材をはじめ、多くの用途において、高剛性かつ軽量の薄物材料が求められている。パソコンやスマートフォンなどの電子機器の構成部材の材料として、より軽量化された薄物材料が求められている。金属材料においては、アルミニウム合金からマグネシウム合金へ、樹脂材料においては、樹脂単体から短繊維を含む繊維強化複合材料へシフトする流れがある。繊維強化複合材料としては、例えば、連続繊維である炭素繊維を含むカーボン繊維強化樹脂(CFRP)なども使用されてきている。CFRPは、軽量面では金属材料よりもが有利であるが、外観や触感についてはプラスチック感が強いため、高級感(金属質、光沢、冷たさ等)に欠ける。
そのため、表面に薄い金属材料を配置し、補強材として繊維強化複合材料を積層することで、高級感と軽量・高剛性とを両立可能とした、非対称積層構造の材料(積層板)が注目されている。しかし、当該積層板は、その製造のための加熱プレス後の冷却によって、金属と繊維強化複合材料に含まれる樹脂の線膨張係数の差に起因する反りを生じるという問題があり、この問題は、積層板の厚みが薄いと顕著であった。この反りは、例えば、リブを設けることにより緩和できるが、内部には応力が常に生じていることになり、この内部応力が、想定よりも小さな力で剥離や変形等の問題を発生させることがあった。
特許文献1には、金属板と繊維強化樹脂組成物とを、エポキシ樹脂を含む特定組成の発泡樹脂組成物を介して接合することで、金属板と繊維強化樹脂組成物との線膨張係数の差に起因して生じる熱硬化後の反りの発生を抑制した、金属樹脂複合体が提案されている。
特許文献2には、金属で構成される第1部材と繊維強化プラスチックで構成される第2部材とを簡易に接合するための熱溶着性フィルムであって、一方側の表面および他方側の表面がいずれも酸変性ポリオレフィンを含有する溶着性樹脂層で構成されている熱溶着性フィルムが開示されている。当該熱溶着性フィルムは、中間層や熱可塑性樹脂層を含む複層構造をしていてもよく、特許文献2には、中間層は、熱溶着の高温環境おける熱収縮率を低減し、剪断応力を高めるように作用する旨、記載されている。また、溶着性樹脂層に粘着成分が含まれる場合、粘着成分を含む層が熱可塑性樹脂層を介して中間層に積層されると、層間の接着強度が安定化される旨、記載されている。
しかし、前記特許文献1に開示の金属樹脂複合体は、発泡樹脂組成物を含むため、厚さ方向の圧縮応力に弱いことや、曲げ変形時のコア材(発泡樹脂組成物)の変形破壊に懸念がある。特許文献2は、内部応力や、当該内部応力に起因して生じる反りの問題については着目していない。
本発明は、内部応力が緩和された金属-繊維強化樹脂積層板を提供する。
本発明の金属-繊維強化樹脂積層板は、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層とが一体化された積層板であって、
前記樹脂一体化繊維シート層は、炭素繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含み、
前記積層板は、前記金属材シート層と前記樹脂一体化繊維シート層の間に配置された熱可塑性樹脂シート層を含み、前記熱可塑性樹脂シート層は応力緩和層である。
前記樹脂一体化繊維シート層は、炭素繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含み、
前記積層板は、前記金属材シート層と前記樹脂一体化繊維シート層の間に配置された熱可塑性樹脂シート層を含み、前記熱可塑性樹脂シート層は応力緩和層である。
本発明の金属-繊維強化樹脂積層板は、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層の間に配置された熱可塑性樹脂シート層が応力緩和層であることにより、内部応力が緩和された金属-繊維強化樹脂積層板を提供できる。
本発明者らは、金属材シートと樹脂一体化繊維シート(繊維強化樹脂層)とこれらの間に配置された熱可塑性樹脂シートとを加熱プレスし、その後これらを冷却プレスすることにより得られた金属-繊維強化樹脂積層板に生じる反りが、各材料の弾性率と線膨張係数から求められる反り(理論式から算出した計算値)よりも軽減したことから、冷却プレスによる温度低下による線膨張係数に起因する内部応力が、冷却プレス時間の経過により緩和されることがあるという新たな知見を見出した。そこで、本発明者らは、上記知見から下記の本発明を完成させるに至った。
計算値よりも反りが軽減された原因は、高分子の応力緩和であり、この応力緩和は、高分子鎖が内部応力(線膨張係数の差異により発生する応力)を低減するように動いたことによることが分かった。高分子鎖が応力に対して動けば、高分子全体に加わる応力が減少する。前記熱可塑性樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂は、冷却プレスの最中に高分子鎖が動く樹脂であるであることを要し、例えば、DSCによるガラス転移温度又は動的粘弾性による損失正接(tanδ)のピーク温度が、例えば200℃(加熱プレス温度)よりも低い樹脂であり、好ましくは加熱プレス温度よりも20℃以上低い樹脂であり、より好ましくは冷却プレス時の脱型温度Tpsよりも低い樹脂である。
反りのある積層板を、リブや固定、逆反り形状の賦与などの手段で平坦にした場合でも、熱可塑性樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度又は損失正接のピーク温度が、下記の雰囲気温度Taよりも低ければ、成形後の残留応力や無負荷では反る積層板を平坦化することにより生じた剪断力が時間経過により徐々に緩和できる。さらに、後述するホットメルト接着剤および樹脂一体化繊維シートに含まれるマトリックス樹脂のうちの一方又は双方についても、前記熱可塑性樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂と同様の条件を満たしていれば、より高い応力緩和の効果が得られる。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、示差操作熱量計(DSC)により測定できる。tanδ(=E"/E')は、損失弾性率E"を貯蔵弾性率E'で除した値である。E"およびE'の温度依存性は、いずれも動的粘弾性測定装置を用いて測定でき、それらの結果からtanδのピーク温度Tpを算出できる。
そこで、本発明の金属-繊維強化樹脂積層板(以下「金属-繊維強化樹脂積層板」を「積層板」と略称する場合もある。)の一実施形態は、例えば200℃(加熱プレス温度)よりも低い温度で応力緩和挙動を示す熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂シート層、即ち、応力緩和層を介して、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層とが接合された積層板である。加熱プレスにより積層板を構成する各層の材料は、それぞれの線膨張係数に従ってバラバラに伸収縮する。冷却プレスに移行すると、層間が接着するので、各層の材料がそれぞれの線膨張係数に従って伸収縮するときに層間に応力が発生する。しかし、前記熱可塑性樹脂シート層が、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層の間に配置されているので、冷却プレス最中に前記内部応力が逐次緩和されている。熱可塑性樹脂シート層は、好ましくは冷却プレス時の脱型温度Tps以下、より好ましくは脱型温度Tpsよりも低い温度で応力緩和挙動を示す熱可塑性樹脂を含む。
また、本発明の積層板の他の実施形態は、下記の雰囲気温度Taよりも低い温度において応力緩和挙動を示す熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂シート層、即ち、応力緩和層を介して、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層とが接合された積層体である。そのため、その製造過程で、冷却プレス最中に前記内部応力が緩和されており、更に、本発明の積層板を、雰囲気温度Ta下に置けば、時間経過により、熱可塑性樹脂シート層が前記内部応力を徐々に緩和する。前記雰囲気温度Taは、本発明の積層板が製造後に保管される部屋の室温Tr、または本発明の積層板が、例えば、電子機器の構成部材の材料として使用されている場合は、使用中の電子機器の構成部材の雰囲気温度Tuである。一般的にはTuはTrよりも高い。応力緩和挙動は、TgやTpが、例えば、使用中の電子機器の構成部材の雰囲気温度Tuよりも低ければ、使用中に内部応力の緩和が進み、使用時間の経過と共に、剥離や変形等が抑制されるため、電子機器の耐久性が高まると考えられる。また、TgやTpが、本発明の積層板が製造後に保管される部屋の室温Trよりも低ければ、本発明の積層板は、製造後においても、内部応力の緩和が徐々に進むと考えられる。
脱型温度Tpsは、一般的に40℃以下である場合が多く、使用中の電子機器の構成部材の雰囲気温度Tuも40℃以下である場合が多い。故に、本発明の積層板を構成する熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂が応力緩和挙動を示す温度は、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下、更により好ましくは10℃以下である。具体的には、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgまたは損失正接tanδのピーク温度は、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下、更により好ましくは10℃以下である。ガラス転移温度Tgの下限ついて特に制限はないが、例えば、-125℃以上である。tanδのピーク温度Tpの下限について特に制限ないが、例えば、-100℃以上である。
熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリプロピレン(Tg=0℃)、ポリエチレン(Tg=-125℃)、またはこれらのモノマーを含むコポリマー等のポリオレフィン系樹脂(Tgが40℃未満のもの)、ポリカーボネート(PC、tanδのピーク温度-100℃)、PC-ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等のポリマーアロイ(tanδのピーク温度-80、150℃)、ABS樹脂(tanδのピーク温度-80、100℃)等が挙げられる。
応力緩和挙動は、例えば、高分子鎖の主分散や副分散等の分子運動等により引き起こされると考えられるが、応力緩和挙動の発生メカニズムはこれに限定されない。
応力緩和挙動の有無は、例えば、被加熱プレス体(加熱プレスされる対象)との対向面が水平面である一対のプレス板を用いて平板状の積層板を作製し、熱プレス後の冷却プレスにより生じた前記積層板の「反り高さ」の実測値と、材料の線膨張係数と弾性率から計算によって求められる反り高さの理論値(計算値)の差異で確認できる。
本発明の積層板は、一方の最外層として金属材シート層を含み、樹脂一体化繊維シート層を含む積層板である。樹脂一体化繊維シート層は、他方の最外層であってもよいし、金属材シート層と他方の最外層の間に配置された中間層であってもよい。樹脂一体化繊維シート層は、炭素繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む繊維強化樹脂層である。そのため、本発明の積層板は、高級感と軽量・高剛性とを兼ね備えている。
本発明の積層板のさらに別の実施態様は、被加熱プレス体との対向面が水平面である一対のプレス板を用いて形成された積層板であり、ガラス転移温度または損失正接tanδのピーク温度が、雰囲気温度Taよりも低い熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂シート層を介して、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層とが接合された積層板である。故に、本発明の積層板の一実施態様は、加熱プレス後の冷却プレスの最中に内部応力が緩和されているので、成形直後の反り高さは、熱可塑性樹脂シート層を備えない従来の積層板のそれよりも低減されている。冷却プレス後に反りのある積層板は、金型に入れて熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも高い温度でアニールすれば、前記反りを矯正できるが、工程が増え、しかもアニールの時間が長いことから生産性が低下する。本実施形態の積層板は、雰囲気温度Ta下での時間経過により、内部応力の緩和が徐々に進むので、更なる反りの低減も期待できる。
前記熱可塑性樹脂シート層の両主面のうちの少なくとも一方の面にホットメルト接着剤からなる接着層が積層され、例えば、当該接着層を介して、熱可塑性樹脂シート層の、一方の主面が金属材シート層と、他方の主面が樹脂一体化繊維シート層と接合されていてもよい。この場合、ホットメルト接着剤を適切に選択することにより、接着強度を高め、または積層板の製造時の加熱プレス温度の自由度を高めることができる。特に、熱可塑性樹脂シート層と金属材シート層は、熱プレス温度の自由度を高めるという理由から、接着層を介して接合されていると好ましい。
前記熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂は、樹脂一体化繊維シートのマトリックス樹脂と同一または相溶性のある樹脂であることが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂シート層と樹脂一体化繊維シートとの接合強度を高めることができる。前記熱可塑性樹脂と前記マトリックス樹脂の溶解度パラメーターの差(ΔSP)の絶対値は、接合強
度向上の観点から、好ましくは3以下である。
度向上の観点から、好ましくは3以下である。
熱可塑性樹脂シート層と接着層に含まれる樹脂材料は、接着強度向上の観点から、共に、ポリオレフィン系樹脂であると好ましい。
接着層に含まれる樹脂材料および樹脂一体化繊維シートに含まれるマトリックス樹脂のうちの一方又は双方についても、内部応力緩和の観点から、そのガラス転移温度Tgまたは損失正接tanδのピーク温度が、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下、更により好ましくは10℃以下の樹脂であると好ましい。
マトリックス樹脂の融点Tm1と接着層の樹脂材料の融点Tm3の関係は、Tm1>Tm3であると好ましく、融点Tm1は、加熱プレスの際に、マトリックス樹脂がホットメルト接着剤と共に流れ出ることを防ぐ観点から、融点Tm3よりも20℃以上高いと好ましい。
熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm2と接着層の樹脂材料の融点Tm3の関係は、Tm2>Tm3であると好ましく、融点Tm2は、加熱プレスの際に、前記熱可塑性樹脂がホットメルト接着剤と共に流れ出ることを防ぐ観点から、融点Tm3よりも20℃以上高いと好ましい。
マトリックス樹脂の融点Tm1と熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm2との関係は、Tm1≧Tm2であると好ましく、加熱プレスの際に、熱可塑性樹脂とマトリックス樹脂がホットメルト接着剤と共に流れ出ることを防ぐ観点から、Tm1>Tm2>Tm3であると好ましい。
金属材シート層の材料は、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽金属、鉄鋼材料、鉄系合金、チタン合金等が好ましく、その厚さは100~600μmが好ましい。形状は、平板状の板材が好ましい。
樹脂一体化繊維シート層は、炭素繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む。樹脂一体化繊維シート層の材料は、長繊維炭素シートと熱可塑性樹脂を含むセミプレグ、例えば、炭素繊維トウを開繊した長繊維炭素シート表面に熱可塑性樹脂ドライパウダーを付与し、圧力フリーで溶着させたセミプレグシートが好ましい。長繊維炭素シートの代わりに炭素繊維織物を用いたものであってもよい。熱可塑性樹脂ドライパウダーは、ポリアミド、ポリカーボネート、フェノキシ、ポリカーボネート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PC-ABS)、ABS、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が好ましい。セミプレグシートにおける繊維割合(Vf)は、30~70体積%が好ましく、より好ましくは40~60体積%である。セミプレグシートの厚さは、50~500μmが好ましく、セミプレグシートの単位面積当たりの質量は、50~150g/m2が好ましい。樹脂一体化繊維シート層は、1枚又は複数枚のセミプレグシートを用いて形成される。
1枚のセミプレグシートは、表面の熱可塑性樹脂を繊維シート内に含侵(充填)させプリプレグシートとしてから隣接する層に接合する。複数枚のセミプレグシートを用いる場合は、複数枚のセミプレグシートを積層し、層内および層間に熱可塑性樹脂を含侵(充填)させて一体化した樹脂一体化繊維シートとしてから隣接する層に接合する。又は、複数枚のセミプレグシートを各々プリプレグシートとし、それらを積層し、一体化して樹脂一体化繊維シートとしてから、又は一体化せずにそのまま積層板の成形に用いる。
樹脂一体化繊維シート層の厚さは、軽量・高剛性の観点から、好ましくは50~500μmであり、より好ましくは80~400μmである。樹脂一体化繊維シート層の単位面積当たりの質量は、100~400g/m2が好ましい。
熱可塑性樹脂シート層の厚さは、内部応力低減の観点から、好ましくは100~1000μm、より好ましくは100~400μmである。
接着層の樹脂材料としては、シート状ホットメルト接着剤が好ましく、熱可塑性シート状ホットメルト接着剤がより好ましい。この接着剤を構成する樹脂材料は、ポリオレフィン系樹脂、またはポリアミド系樹脂等が好ましい。接着層の厚さは、50μm以上100μm未満が好ましい。樹脂材料の融点は、80~265℃が好ましく、熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の融点または流動開始温度よりも20℃以上低いことが好ましい。
本発明の積層板の厚さは、300~1500μmが好ましく、より好ましくは400~1000μmである。上記範囲内の厚さであれば、本発明の積層板は、パソコンやスマートフォンなど、軽量・薄型を求められるモバイル性の電子機器の構成部材(例えば、筐体)の材料として好適である。上記範囲内の厚さの本発明の積層板の剛性は、同じ厚さの金属シートの同等以上となる。
本発明の積層板の成形(製造)に使用するセミプレグシートは、一方向連続繊維と交錯する方向の架橋繊維(多方向性繊維)を含み、かつ熱可塑性樹脂が、一方向連続繊維と架橋繊維とを一体化していると好ましい。セミプレグシートを構成する繊維の主成分は、開繊され一方向に並列状に配列された一方向連続炭素繊維である。繊維の副成分は、一方向連続繊維と交錯する方向に配列された架橋繊維であることが好ましい。架橋繊維は、開繊工程で、未開繊トウ(フィラメント群)に張力かけることによりフィラメント群から発生させることができる。熱可塑性樹脂は、粉体の状態で一方向連続繊維及び架橋繊維を含む炭素繊維シートの上から付着させ、一方向連続繊維の少なくとも表面に熱融着させ、かつ一方向連続繊維と架橋繊維とを一体化していることが好ましい。このセミプレグシートは、一方向連続繊維と架橋繊維とが、炭素繊維シートに熱融着した熱可塑性樹脂により一体化しているため、取り扱い性が良好で、加熱成形する際の操作性が良い。また、セミプレグシートを加熱プレスすると、表面の熱可塑性樹脂が繊維シート内に充填される。これにより、賦形性(成形性)に優れ、ボイドを低減させた樹脂一体化繊維シートが得られる。
一方向連続繊維と架橋繊維の合計を100質量%としたとき、一方向連続繊維は75~99質量%が好ましく、より好ましくは80~97質量%、さらに好ましくは85~97質量%である。また、架橋繊維は1~25質量%が好ましく、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%である。前記の範囲であれば、一体性が高く、幅方向(一方向連続繊維の長手方向と直交する方向)の引張強度の高いセミプレグシートとなる。架橋繊維の平均長さは、1mm以上が好ましく、より好ましくは5mm以上である。架橋繊維の平均長さの上限は1000mm以下が好ましく、より好ましくは500mm以下である。架橋繊維の平均長さが前記の範囲であれば、幅方向の強度が高く、取り扱い性に優れたセミプレグシートとなる。
次に、本発明の積層板の製造方法の一例について説明する。本発明の積層板の製造方法は、好ましくはセミプレグシートを複数枚使用し、次の工程を含む。
(1)セミプレグシートを金属材シート層の大きさに合わせてカットし、それを複数枚用意する。
(2)カットしたセミプレグシートの繊維方向を揃えて複数枚重ね、セミプレグシート表面に融着している熱可塑性粉体樹脂の融点以上の温度で加熱プレスした後、冷却して、樹脂一体化繊維シートを得る。
(3)金属材シート/シート状ホットメルト接着剤/熱可塑性樹脂シート/シート状ホットメルト接着剤/樹脂一体化繊維シートの順に重ね合わせる。
(4)前記(3)にて得られた被加熱プレス体を、前記シート状ホットメルト接着剤の融点以上の温度で加熱プレスする。
(5)前記(4)にて加熱プレスしたものを冷却して、金属材シート層、接着層、熱可塑性樹脂シート層、接着層、樹脂一体化繊維シート層がこの順で積層および一体化された積層板を得る。
なお、複数枚のセミプレグシート使用することに代えて、例えば、市販の複数枚のプリプレグシートを使用して、樹脂一体化繊維シートを作製しても良い。
(1)セミプレグシートを金属材シート層の大きさに合わせてカットし、それを複数枚用意する。
(2)カットしたセミプレグシートの繊維方向を揃えて複数枚重ね、セミプレグシート表面に融着している熱可塑性粉体樹脂の融点以上の温度で加熱プレスした後、冷却して、樹脂一体化繊維シートを得る。
(3)金属材シート/シート状ホットメルト接着剤/熱可塑性樹脂シート/シート状ホットメルト接着剤/樹脂一体化繊維シートの順に重ね合わせる。
(4)前記(3)にて得られた被加熱プレス体を、前記シート状ホットメルト接着剤の融点以上の温度で加熱プレスする。
(5)前記(4)にて加熱プレスしたものを冷却して、金属材シート層、接着層、熱可塑性樹脂シート層、接着層、樹脂一体化繊維シート層がこの順で積層および一体化された積層板を得る。
なお、複数枚のセミプレグシート使用することに代えて、例えば、市販の複数枚のプリプレグシートを使用して、樹脂一体化繊維シートを作製しても良い。
本発明の積層板の別の製造方法としては、次の工程を含む。
(1)前記セミプレグシートを金属材シート層の大きさに合わせてカットする。
(2)前記セミプレグシートを加熱プレスし、表面付近に付着した樹脂を内部に含侵させてプリプレグシートとする。
(3)金属材シート/シート状ホットメルト接着剤/熱可塑性樹脂シート/シート状ホットメルト接着剤/プリプレグシートの順に重ね合わせる。
(4)前記(3)にて得られた被加熱プレス体を、前記シート状ホットメルト接着剤の融点以上の温度で加熱プレスする。
(5)前記(4)にて加熱プレスしたものを冷却して、金属材シート層、接着層、熱可塑性樹脂シート層、接着層、樹脂一体化繊維シート層がこの順で積層および一体化された積層板を得る。前記プリプレグシートは、隣接する層と接合されることにより樹脂一体化繊維シート層となる。
なお、工程(1)においてセミプレグシートに代えて、プリプレグシートを使用してもよい。
(1)前記セミプレグシートを金属材シート層の大きさに合わせてカットする。
(2)前記セミプレグシートを加熱プレスし、表面付近に付着した樹脂を内部に含侵させてプリプレグシートとする。
(3)金属材シート/シート状ホットメルト接着剤/熱可塑性樹脂シート/シート状ホットメルト接着剤/プリプレグシートの順に重ね合わせる。
(4)前記(3)にて得られた被加熱プレス体を、前記シート状ホットメルト接着剤の融点以上の温度で加熱プレスする。
(5)前記(4)にて加熱プレスしたものを冷却して、金属材シート層、接着層、熱可塑性樹脂シート層、接着層、樹脂一体化繊維シート層がこの順で積層および一体化された積層板を得る。前記プリプレグシートは、隣接する層と接合されることにより樹脂一体化繊維シート層となる。
なお、工程(1)においてセミプレグシートに代えて、プリプレグシートを使用してもよい。
前記加熱プレス時および冷却時のプレス圧は、いずれも0.5~5MPaが好ましく、前記加熱プレス時の成形温度(成形装置による設定温度)は、80~300℃が好ましい。本発明の積層板が、前記接着層を含む場合、前記加熱プレス時の成形温度(1対の金型の設定温度)は、接着層の材料であるホットメルト接着剤の融点以上であって、当該融点+20℃以下であると好ましく、またはホットメルト接着剤の流動開始温度以上であって、当該流動開始温度+20℃以下であると好ましい。冷却は、例えば、冷却専用のプレス装置(または冷却盤)に移動して行われるか、または加熱と冷却を切り替えられる機構を有する金型を用いる場合は、加熱プレスを行ったあと、プレスをしたままその金型を冷却することで行う。冷却プレス温度(冷却専用のプレス装置による設定温度、冷却盤又は金型の設定温度、脱型温度とも言う)は、一般的に40℃以下である場合が多く、20~40℃が好ましい。加熱プレス時間は、成形装置に依存するが、通常、1~5分が好ましい。冷却プレス時間は、成形装置に依存するが、通常、1~10分が好ましく、1~5分が好ましい。
以下、図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。図1は本発明の一実施形態の積層板の模式的断面図である。この金属-繊維強化樹脂積層板11は、金属材シート層12と樹脂一体化繊維シート層13を各々最外層として含み、金属材シート層12と樹脂一体化繊維シート層13の間に、熱可塑性樹脂シート層14が配置されている。熱可塑性樹脂シート層14の両主面上には、各々、接着層15a,15bが積層されており、熱可塑性樹脂シート層14は、接着層15a,15bを介して、金属材シート層12および樹脂一体化繊維シート層13と接合されている。なお、本実施形態においては、樹脂一体化繊維シート層13は複数枚のセミプレグシートを用いて形成している。
図2A-Bは、応力緩和の機構を説明する模式的断面図である。
[積層板の成形過程]
加熱プレスによる加熱加圧が終わった段階から、冷却プレスへ移行直後の状態は、図2Aに示すように、冷却盤(図示せず)に近い金属シート層12と樹脂一体化繊維シート層13が、冷却により収縮し始める。このとき熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂(高分子)は、温度が高く動きやすい状態である。この状態から、徐々に外から内へと温度が下がるに従って、最外層の金属シート層12と樹脂一体化繊維シート層13がますます収縮することで、中央の熱可塑性樹脂シート層にX1、X2の収縮力が内部応力として作用していく。この内部応力により、熱可塑性樹脂シート層14の高分子鎖14aは、応力緩和の方向に動くようになる。その状態が図2Bである。これに伴い、応力X1とX2は弱まり、X3とX4になる。冷却プレス時の温度変化は、ホットメルト接着剤の流動開始温度から、脱型時の温度Tps(およそ40℃以下)までである。よって、無負荷では冷却による収縮差から反ることを、冷却プレスによって、反らないようにしたことで、冷却プレス間に、層間には内部応力が発生している。冷却プレス時の温度(温度変化中のいずれかの温度)が、TgまたはTpより高ければ、冷却プレスの間にも応力緩和が進むのである。なお、図2A-Bでは、接着層は省略している。
[積層板の成形過程]
加熱プレスによる加熱加圧が終わった段階から、冷却プレスへ移行直後の状態は、図2Aに示すように、冷却盤(図示せず)に近い金属シート層12と樹脂一体化繊維シート層13が、冷却により収縮し始める。このとき熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂(高分子)は、温度が高く動きやすい状態である。この状態から、徐々に外から内へと温度が下がるに従って、最外層の金属シート層12と樹脂一体化繊維シート層13がますます収縮することで、中央の熱可塑性樹脂シート層にX1、X2の収縮力が内部応力として作用していく。この内部応力により、熱可塑性樹脂シート層14の高分子鎖14aは、応力緩和の方向に動くようになる。その状態が図2Bである。これに伴い、応力X1とX2は弱まり、X3とX4になる。冷却プレス時の温度変化は、ホットメルト接着剤の流動開始温度から、脱型時の温度Tps(およそ40℃以下)までである。よって、無負荷では冷却による収縮差から反ることを、冷却プレスによって、反らないようにしたことで、冷却プレス間に、層間には内部応力が発生している。冷却プレス時の温度(温度変化中のいずれかの温度)が、TgまたはTpより高ければ、冷却プレスの間にも応力緩和が進むのである。なお、図2A-Bでは、接着層は省略している。
[積層板の成形後]
積層体11は、加熱プレス後の冷却プレス中に発生した内部応力が、上記の通り成形過程において緩和されているとしても、依然として残留応力を保有し、例えば、積層体11には、金属材シート層12が凹面となるような反りが生じている。積層体11を、例えば、熱可塑性樹脂シート層14に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgまたは損失正接tanδのピーク温度Tpよりも高い雰囲気温度Ta下に所定時間置くことによって、熱可塑性樹脂シート層14に含まれる熱可塑性樹脂の高分子鎖が動くことにより、金属材シート層12と樹脂一体化繊維シート層13の線膨張係数の差による収縮の影響(残留応力の強度)が徐々に緩和され、反り高さが徐々に低減する。前記所定時間は、熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の種類、雰囲気温度Ta等によって異なる。
積層体11は、加熱プレス後の冷却プレス中に発生した内部応力が、上記の通り成形過程において緩和されているとしても、依然として残留応力を保有し、例えば、積層体11には、金属材シート層12が凹面となるような反りが生じている。積層体11を、例えば、熱可塑性樹脂シート層14に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgまたは損失正接tanδのピーク温度Tpよりも高い雰囲気温度Ta下に所定時間置くことによって、熱可塑性樹脂シート層14に含まれる熱可塑性樹脂の高分子鎖が動くことにより、金属材シート層12と樹脂一体化繊維シート層13の線膨張係数の差による収縮の影響(残留応力の強度)が徐々に緩和され、反り高さが徐々に低減する。前記所定時間は、熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の種類、雰囲気温度Ta等によって異なる。
次に、本発明の一実施形態の積層板の製造に使用するセミプレグシートについて説明する。
図3は本発明の一実施形態の積層板の製造に使用するセミプレグシート1の模式的斜視図、図4は同、セミプレグシート1の幅方向の模式的断面図である。開繊された一方向炭素繊維2の表面には架橋繊維3が様々な方向に配置している。また一方向炭素繊維2の表面付近に熱可塑性樹脂4のドライパウダーが溶融固化して付着しており、同樹脂4は一方向炭素繊維2の内部には含浸していないか又は一部含浸している程度である。同樹脂4は架橋繊維3を一方向炭素繊維2の表面に接着固定している。図4に示すように、一方向炭素繊維2の表面には架橋繊維3a,3bが存在する。架橋繊維3aはその全体が一方向炭素繊維2の表面にある。架橋繊維3bは一部が一方向炭素繊維2の表面にあり、一部は内部に入って炭素繊維2と交錯した状態である。同樹脂4は架橋繊維3を一方向炭素繊維2の表面に接着固定している。また、セミプレグシート1の表面には、同樹脂4が付着している部分と、樹脂4が付着していない部分5がある。樹脂が付着していない部分5は、セミプレグシート1を加熱および加圧して他のシートと積層する際に、セミプレグシート内部の空気がこの部分から抜ける通路となり、表面の樹脂がセミプレグシート内全体に含浸しやすくなる。これにより同樹脂4は樹脂一体化繊維シートのマトリックス樹脂となる。なお、前記セミプレグシート1の製造方法は特開2020-131466号公報等に記載されているので具体的説明は省略する。
図3は本発明の一実施形態の積層板の製造に使用するセミプレグシート1の模式的斜視図、図4は同、セミプレグシート1の幅方向の模式的断面図である。開繊された一方向炭素繊維2の表面には架橋繊維3が様々な方向に配置している。また一方向炭素繊維2の表面付近に熱可塑性樹脂4のドライパウダーが溶融固化して付着しており、同樹脂4は一方向炭素繊維2の内部には含浸していないか又は一部含浸している程度である。同樹脂4は架橋繊維3を一方向炭素繊維2の表面に接着固定している。図4に示すように、一方向炭素繊維2の表面には架橋繊維3a,3bが存在する。架橋繊維3aはその全体が一方向炭素繊維2の表面にある。架橋繊維3bは一部が一方向炭素繊維2の表面にあり、一部は内部に入って炭素繊維2と交錯した状態である。同樹脂4は架橋繊維3を一方向炭素繊維2の表面に接着固定している。また、セミプレグシート1の表面には、同樹脂4が付着している部分と、樹脂4が付着していない部分5がある。樹脂が付着していない部分5は、セミプレグシート1を加熱および加圧して他のシートと積層する際に、セミプレグシート内部の空気がこの部分から抜ける通路となり、表面の樹脂がセミプレグシート内全体に含浸しやすくなる。これにより同樹脂4は樹脂一体化繊維シートのマトリックス樹脂となる。なお、前記セミプレグシート1の製造方法は特開2020-131466号公報等に記載されているので具体的説明は省略する。
図1を用いて説明した本発明の積層板の一実施形態は、被加熱プレス体との対向面が水平面である一対のプレス板を用いて成形された平板状の積層板であり、成形直後は、積層板の金属材シート層12側の表面が凹面となるような反りが生じているが、本発明の積層板は、成形直後に反りが発生するものに限定されない。本発明の積層板は、別の一実施形態として、成形直後に反りが発生しないように、被加熱プレス体の金属材シート層12側表面が凸面となるような対向面を有する一対のプレス板を用いて成形されたものであってもよい。このようなプレス板を用いて成形された積層板の成形直後に反りが発生していなくても、その内部には応力が蓄積された状態にある。所定の雰囲気温度Ta下での時間経過によって、熱可塑性樹脂シート層の応力緩和挙動により前記内部応力が緩和されれば、剥離や変形等が発生する恐れを低減できる。
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<曲げ弾性率、剛性>
(1)下記条件の測定サンプルを作製した。
・寸法:長さ60mm、幅15mm、厚さは表1および表2に記載。
・長手方向を繊維方向とした。
(2)測定方法
積層板の曲げ弾性率および剛性は、JIS K 7074-1988に準拠し、下記の測定装置を用いて測定した。具体的には、図5に示す3点曲げ試験を行い、荷重と圧支点の変位量を測定し、これらの値を用いて曲げ弾性率と剛性を算出した。支点間距離Lは40mmとした。Bは、サンプルの幅で15mm、厚さHは各サンプルで異なり、表1および表2に示す。サンプル長さは60mmとした。
・測定装置:AUTOGRAPH AG-X plus(島津製作所社製)
<曲げ弾性率、剛性>
(1)下記条件の測定サンプルを作製した。
・寸法:長さ60mm、幅15mm、厚さは表1および表2に記載。
・長手方向を繊維方向とした。
(2)測定方法
積層板の曲げ弾性率および剛性は、JIS K 7074-1988に準拠し、下記の測定装置を用いて測定した。具体的には、図5に示す3点曲げ試験を行い、荷重と圧支点の変位量を測定し、これらの値を用いて曲げ弾性率と剛性を算出した。支点間距離Lは40mmとした。Bは、サンプルの幅で15mm、厚さHは各サンプルで異なり、表1および表2に示す。サンプル長さは60mmとした。
・測定装置:AUTOGRAPH AG-X plus(島津製作所社製)
(実施例1~4、比較例1~3)
各実施例、比較例の積層板の製造に使用した材料は次のとおりである。
各実施例、比較例の積層板の製造に使用した材料は次のとおりである。
<金属材シート>
シート状アルミニウム合金(A1050)
シート状マグネシウム合金(AZ31B:日本金属社製)
シート状アルミニウム合金(A1050)
シート状マグネシウム合金(AZ31B:日本金属社製)
<セミプレグシート>
下記の通りセミプレグシートを作製した。
開繊シートの作製に、三菱ケミカル社製の炭素繊維未開繊トウ(品番:PYROFILE TR 50S15L、形状:レギュラートウ フィラメント15K(15,000本)、単繊維直径7μm)を使用した。この炭素繊維未開繊トウの炭素繊維にはエポキシ系化合物がサイジング剤として付着されている。
前記炭素繊維未開繊トウを、ロール開繊手段を使用して開繊した。開繊工程において、炭素繊維フィラメント群(トウ)の張力は15,000本あたり15Nとした。このようにして炭素繊維フィラメント構成本数15K、開繊幅500mm、単位面積当たりの質量80g/m2であり、炭素繊維フィラメント群から架橋繊維を発生させた開繊シートを得た。架橋繊維の割合は3.3質量%であった。架橋繊維の割合は、特開2020-131466号公報等に記載の方法より測定した。
ドライパウダー樹脂として、フェノキシ樹脂(流動開始温度180℃)粉体を、炭素繊維開繊シート1m2に対して平均片面26g、両面で52g付与した。ドライパウダー樹脂の付与は片面ずつ行い、各付与の後、加熱装置を通過させてドライパウダー樹脂を溶融させた。加熱装置内の温度は、各々180℃、加熱装置内への滞留時間は各々2秒とした。得られたセミプレグシートの質量は132g/m2、セミプレグシートにおける炭素繊維の割合Vfは50体積%である。
下記の通りセミプレグシートを作製した。
開繊シートの作製に、三菱ケミカル社製の炭素繊維未開繊トウ(品番:PYROFILE TR 50S15L、形状:レギュラートウ フィラメント15K(15,000本)、単繊維直径7μm)を使用した。この炭素繊維未開繊トウの炭素繊維にはエポキシ系化合物がサイジング剤として付着されている。
前記炭素繊維未開繊トウを、ロール開繊手段を使用して開繊した。開繊工程において、炭素繊維フィラメント群(トウ)の張力は15,000本あたり15Nとした。このようにして炭素繊維フィラメント構成本数15K、開繊幅500mm、単位面積当たりの質量80g/m2であり、炭素繊維フィラメント群から架橋繊維を発生させた開繊シートを得た。架橋繊維の割合は3.3質量%であった。架橋繊維の割合は、特開2020-131466号公報等に記載の方法より測定した。
ドライパウダー樹脂として、フェノキシ樹脂(流動開始温度180℃)粉体を、炭素繊維開繊シート1m2に対して平均片面26g、両面で52g付与した。ドライパウダー樹脂の付与は片面ずつ行い、各付与の後、加熱装置を通過させてドライパウダー樹脂を溶融させた。加熱装置内の温度は、各々180℃、加熱装置内への滞留時間は各々2秒とした。得られたセミプレグシートの質量は132g/m2、セミプレグシートにおける炭素繊維の割合Vfは50体積%である。
<熱可塑性樹脂シート>
ポリプロピレンシート(HPP,DSC曲線に示す融点が165℃のもの、ガラス転移温度は-0℃(文献値))
ポリプロピレンシート(HPP,DSC曲線に示す融点が165℃のもの、ガラス転移温度は-0℃(文献値))
<ホットメルトタイプのフィルム状接着剤>
ホットメルトタイプのフィルム状接着剤として、"クランベター"(商品名、倉敷紡績社製、タイプP-6700、オレフィン系接着フィルム、厚み60μm)を使用した。
ホットメルトタイプのフィルム状接着剤として、"クランベター"(商品名、倉敷紡績社製、タイプP-6700、オレフィン系接着フィルム、厚み60μm)を使用した。
積層板の成形条件は次のとおりである。
(1)複数枚のセミプレグシートの一体化
セミプレグシートを複数枚使用して樹脂一体化繊維シートを成形する場合は下記のとおりとした。まず、複数枚のセミプレグシートの夫々を、加熱プレスし、その後、冷却プレスをして、樹脂が内部に含侵されたプリプレグシートとした。加熱プレスは、温度180℃、5分間、圧力4MPa、冷却プレスは、20℃(脱型温度)、10分間、圧力4MPaの条件で行った。
得られた複数枚のプリプレグシートの一体化には、熱プレス機、プレス板(SUS5mm金型 離型加工済み)を使用した。
プリプレグを構成する一方向性連続炭素繊維の長さ方向を合わせて、プリプレグシート2~4枚を積層した。SUS板を事前に熱プレス機にて180℃に加熱し、そのSUS板に、複数枚のプリプレグシートからなる積層体を挟み、加熱プレス温度180℃、加熱プレス時間5分、圧力4MPaで加熱プレスした後、10分間、圧力4MPaおよび20℃で冷却プレスした。このプレス成形した積層シートを樹脂一体化繊維シートとした。
なお、セミプレグシートを1枚のみ使用する場合も、樹脂が内部に含侵されたプリプレグシートとしてから、積層板の成形に用いた。
(1)複数枚のセミプレグシートの一体化
セミプレグシートを複数枚使用して樹脂一体化繊維シートを成形する場合は下記のとおりとした。まず、複数枚のセミプレグシートの夫々を、加熱プレスし、その後、冷却プレスをして、樹脂が内部に含侵されたプリプレグシートとした。加熱プレスは、温度180℃、5分間、圧力4MPa、冷却プレスは、20℃(脱型温度)、10分間、圧力4MPaの条件で行った。
得られた複数枚のプリプレグシートの一体化には、熱プレス機、プレス板(SUS5mm金型 離型加工済み)を使用した。
プリプレグを構成する一方向性連続炭素繊維の長さ方向を合わせて、プリプレグシート2~4枚を積層した。SUS板を事前に熱プレス機にて180℃に加熱し、そのSUS板に、複数枚のプリプレグシートからなる積層体を挟み、加熱プレス温度180℃、加熱プレス時間5分、圧力4MPaで加熱プレスした後、10分間、圧力4MPaおよび20℃で冷却プレスした。このプレス成形した積層シートを樹脂一体化繊維シートとした。
なお、セミプレグシートを1枚のみ使用する場合も、樹脂が内部に含侵されたプリプレグシートとしてから、積層板の成形に用いた。
(2)積層板の成形
・積層板の寸法:長さ200mm、幅50mm(厚さは表1に記載)
・積層板の長手方向と、セミプレグを構成する一方向性連続炭素繊維の長さ方向を同方向とした。
・積層板の厚さ:0.6~0.8mmとなるように設定。
・実施例の積層板の層構成:金属材シート層(第1層)/接着層(第2層)/熱可塑性樹脂シート層(第3層)/接着層(第4層)/樹脂一体化繊維シート層(第5層)
・比較例の積層板の層構成は、各々表1に示すとおりとした。
・成形方法:厚さ5mmの1対のSUS304板により上下から挟んでプレス成形を実施
・成形条件
加熱:180℃,4MPa,5分
冷却:20℃,4MPa,10分
以上の条件と結果を表1及び表2にまとめて示す。
・積層板の寸法:長さ200mm、幅50mm(厚さは表1に記載)
・積層板の長手方向と、セミプレグを構成する一方向性連続炭素繊維の長さ方向を同方向とした。
・積層板の厚さ:0.6~0.8mmとなるように設定。
・実施例の積層板の層構成:金属材シート層(第1層)/接着層(第2層)/熱可塑性樹脂シート層(第3層)/接着層(第4層)/樹脂一体化繊維シート層(第5層)
・比較例の積層板の層構成は、各々表1に示すとおりとした。
・成形方法:厚さ5mmの1対のSUS304板により上下から挟んでプレス成形を実施
・成形条件
加熱:180℃,4MPa,5分
冷却:20℃,4MPa,10分
以上の条件と結果を表1及び表2にまとめて示す。
上記表2から次のことが確認できた。
実施例1,2と比較例1との比較から、アルミニウム合金単体よりも実施例1,2の積層板では、剛性を各々13%,37%上昇、質量を各々41%,33%低減できた。
実施例3と4、比較例2との比較から、マグネシウム合金単体よりもよりも実施例3,4の積層板では、剛性を各々4%,19%上昇、質量を各々20%,23%低減できた。
実施例3と4、比較例3との比較から、比較例3の積層板よりも実施例3,4の積層板では、剛性が各々10%,3%上昇、質量が各々12%,16%低減できた。
実施例1,2と比較例1との比較から、アルミニウム合金単体よりも実施例1,2の積層板では、剛性を各々13%,37%上昇、質量を各々41%,33%低減できた。
実施例3と4、比較例2との比較から、マグネシウム合金単体よりもよりも実施例3,4の積層板では、剛性を各々4%,19%上昇、質量を各々20%,23%低減できた。
実施例3と4、比較例3との比較から、比較例3の積層板よりも実施例3,4の積層板では、剛性が各々10%,3%上昇、質量が各々12%,16%低減できた。
次に、実施例3の積層板と、比較例3の積層板の反りの高さを観察した。
実施例3と比較例3の構成は、ともに金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層とが接着層を介して一体化した構成であるが、熱可塑性樹脂シート層の有無が異なる。図6は、本発明の実施例3の積層板の構成を示す説明図(分解斜視図)である。図7は、比較例3の積層板の構成を示す説明図(分解斜視図)である。図8は、本発明の実施例3と比較例3の積層板の反りの高さを示すグラフである。図9は、本発明の実施例3と比較例3の積層板の反りを比較する写真である。図8および図9から、金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層の間に熱可塑性樹脂シート層が配置された実施例3の積層板の方が、比較例3の積層体よりも、反り高さが小さいことが確認できる。
また、積層板の大きさ、各材料の弾性率と線膨張係数と厚さから、自重によるたわみを加味し、理論式を用いて反り高さの計算値を得た。図10には、比較例3の反り高さについての、前記計算値、実測値、およびCAE解析値を示し、図11には、実施例3の反り高さについての、前記計算値と実測値を示している。図10において、計算値とCAE解析値とが、ほぼ一致しており、理論式に誤りがないことを確認した。
図10から、比較例3の反り高さについて、実測値と計算値に大さ差はないことが分かる。一方、図11から、熱可塑性樹脂シート層を含む実施例3の反り高さについて、実測値の方が計算値よりも顕著に小さいことが分かる。
また、実施例1,2,4の積層板についても同様に反り最大高さを測定し、その結果を表2に示した。実施例4の積層板の方が、比較例3の積層体よりも、反り高さが小さいことが確認できた。
これらの結果から、熱可塑性樹脂シート層が内部応力の低減に寄与していることが確認できた。
以上から明らかな通り、本実施例の積層板は金属板と比較して、軽量および高剛性であった。また、本実施例の積層板は、熱可塑性樹脂シート層を含むことにより、含まない積層板と比較して、剛性および質量についておおよそ同等とした上で、反り(内部応力)を低減できた。また、表2に示された、曲げ強度、曲げ弾性率の値から、実施例1~4の積層板は、実用上十分な性能を有していることがわかった。
本発明の積層板は、パソコン、スマホなどの電気製品、航空、宇宙、自動車、スポーツ、三次元プリンタ、産業用途、建築部材、風車、自転車、鉄道、船舶、などの用途等において広く応用できる。
1 セミプレグシート
2 一方向炭素繊維
3,3a,3b 架橋繊維
4 樹脂
5 樹脂が付着していない部分
11 金属-繊維強化樹脂積層板
12 金属材シート層
13 樹脂一体化繊維シート層
14 熱可塑性樹脂シート層
14a 樹脂一体化繊維シート層樹脂のポリマー分子鎖
15a,15b ホットメルト接着フィルム層
2 一方向炭素繊維
3,3a,3b 架橋繊維
4 樹脂
5 樹脂が付着していない部分
11 金属-繊維強化樹脂積層板
12 金属材シート層
13 樹脂一体化繊維シート層
14 熱可塑性樹脂シート層
14a 樹脂一体化繊維シート層樹脂のポリマー分子鎖
15a,15b ホットメルト接着フィルム層
Claims (12)
- 金属材シート層と樹脂一体化繊維シート層とが一体化された積層板であって、
前記樹脂一体化繊維シート層は、炭素繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含み、
前記積層板は、前記金属材シート層と前記樹脂一体化繊維シート層の間に配置された熱可塑性樹脂シート層を含み、前記熱可塑性樹脂シート層は応力緩和層である、金属-繊維強化樹脂積層板。 - 前記熱可塑性樹脂シート層に含まれ前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が40℃未満の熱可塑性樹脂、または40℃未満で損失正接tanδのピークを有する熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記熱可塑性樹脂シート層の両主面のうちの少なくとも一方の面に接着層が積層されている、請求項1または2に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記熱可塑性樹脂シート層の両主面のうちの前記金属材シート層側の主面に前記接着層が積層されている、請求項3に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記熱可塑性樹脂シート層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、前記マトリックス樹脂と同一もしくは相溶性のある樹脂である、請求項1~4のいずれか項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記マトリックス樹脂の融点および前記熱可塑性樹脂シート層に含まれる熱可塑性樹脂の融点は、前記接着層に含まれるホットメルト接着剤の融点よりも20℃以上高い、請求項3~5のいずれかの項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記接着層の厚さは、50μm以上100μm未満である、請求項3~6のいずれかの項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記熱可塑性樹脂シート層の厚さは、100~1000μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記金属材シート層の厚さは100~600μmである、請求項1~8のいずれかの項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記樹脂一体化繊維シート層の厚さは50~500μmであり、単位面積当たりの質量は100~400g/m2である、請求項1~9のいずれかの項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 前記金属-繊維強化樹脂積層板の厚さは、300~1500μmである、請求項1~10のいずれかの項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板。
- 請求項1~11のいずれかの項に記載の金属-繊維強化樹脂積層板を用いて形成された電子機器の筐体。
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