JP2022078681A - 抗菌・抗ウイルス剤組成物、抗菌・抗ウイルス性構造体、及び、抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法 - Google Patents

抗菌・抗ウイルス剤組成物、抗菌・抗ウイルス性構造体、及び、抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構造体に付着した場合に抗菌性及び抗ウイルス性を発揮するとともに、風合いの粗硬化や折り曲げた際の白化を抑制することが可能な組成物を開示する。【解決手段】下記式(1)で表される第4級アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有する水系ポリウレタン樹脂と、を含む、抗菌・抗ウイルス剤組成物。式(1)において、R1は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)pHで表される基、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイド、pは1~10の整数、R3はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基、nは1又は2、mは1又は2、n+mは3、lは1又は2、Zはモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。TIFF2022078681000014.tif2991【選択図】なし

Description

本願は抗菌・抗ウイルス剤組成物、抗菌・抗ウイルス性構造体、及び、抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法を開示する。
新型コロナウイルスの世界的感染拡大によって、人が接触する部材(構造体)に対する抗ウイルス加工に注目が集まっている。例えば、部材の表面に抗ウイルス作用のある組成物を付着させることが有効である。そのような組成物として、特許文献1には、金属及びチタン含有組成物と4級化合物とを含むものが記載されている。
また、抗菌作用を有する部材として下記の例がある。特許文献2には、抗菌性燐酸塩とポリウレタンエラストマーとが保持された抗菌性皮革が記載されている。特許文献3には、ポリウレタンフィルム表皮層を有する合成皮革であって、前記ポリウレタンフィルム表皮層がZn、Cu及びAgからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む抗菌性を有する金属化合物を含有するものが記載されている。特許文献2、3に記載された部材の抗ウイルス作用については不明である。
特開2018-002597号公報 特開平5-171572号公報 特開2007-031851号公報
本発明者の知見によると、従来の抗菌・抗ウイルス剤組成物を用いて抗菌・抗ウイルス性構造体を得た場合、組成物によって構造体の風合いが粗硬化するという問題や、構造体を折り曲げた際に白化して外観不良が発生するという問題が生じ易い。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、抗菌・抗ウイルス剤と樹脂とを含み、
前記抗菌・抗ウイルス剤が、下記式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含み、
前記樹脂が、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有する水系ポリウレタン樹脂を含む、
抗菌・抗ウイルス剤組成物
を開示する。
Figure 2022078681000001
式(1)において、
は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)Hで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、xは1~10の整数であり、
はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
nは1又は2であり、
mは1又は2であり、
n+mは3であり、
lは1又は2であり、
Zはモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、前記抗菌・抗ウイルス剤と前記樹脂とに加えて、水溶性有機高分子を含んでいてもよい。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、前記水溶性有機高分子が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ウレタン変性ポリエーテル、キサンタンガム、並びに、ポリオキシアルキレングリコール鎖を有し、カルボキシル基及びカルボキシレート基を有しない第2のウレタン樹脂、からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子であってもよい。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、前記水系ポリウレタン樹脂が、前記カルボキシル基及び前記カルボキシレート基のうちの少なくとも一方を、0.5質量%以上4.0質量%以下含んでいてもよい。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
抗菌・抗ウイルス性構造体であって、基材と組成物とを備え、
前記組成物が、前記基材の表面に付着しており、
前記組成物が、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物である、
抗菌・抗ウイルス性構造体
を開示する。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
基材の表面に、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させること、
を含む、抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法
を開示する。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、様々な基材に対して抗菌性及び抗ウイルス性を付与可能である。また、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が付着してなる抗菌・抗ウイルス性構造体は、風合いが軟らかく良好であり、折り曲げられたとしても白化が生じ難い。
1.抗菌・抗ウイルス剤組成物
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、抗菌・抗ウイルス剤と樹脂とを含む。前記抗菌・抗ウイルス剤は、下記式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含む。前記樹脂は、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有する水系ポリウレタン樹脂を含む。
Figure 2022078681000002
式(1)において、
は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)Hで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、xは1~10の整数であり、
はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
nは1又は2であり、
mは1又は2であり、
n+mは3であり、
lは1又は2であり、
Zはモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
1.1 抗菌・抗ウイルス剤
抗菌・抗ウイルス剤は、上記式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含む。上記式(1)で表される第4級アンモニウム塩は、様々な基材に対して抗菌性及び抗ウイルス性を付与可能である。
式(1)において、Rの炭素数が小さ過ぎても、大き過ぎても、抗菌性及び抗ウイルス性が低下し易い。Rの炭素数は10以上又は12以上であってもよく、20以下又は18以下であってもよい。
式(1)において、Rがメチル基である場合、抗菌性及び抗ウイルス性に一層優れる。
式(1)において、Rが炭素数2~4のヒドロキシアルキル基、特にヒドロキシエチル基である場合、抗菌性及び抗ウイルス性に一層優れる。或いは、Rがメチル基である場合も、抗菌性及び抗ウイルス性に一層優れる。
式(1)において、Zとなり得る芳香族アニオンとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸又はアルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
式(1)において、Zがモノアルキルリン酸又はジアルキルリン酸である場合、抗菌性及び抗ウイルス性に一層優れる。モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸のアルキル基としては炭素数1~12のアルキル基を挙げることができる。その中でも炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましい。或いは、Zがメチル硫酸又はエチル硫酸である場合も、抗菌性及び抗ウイルス性に一層優れる。
式(1)で表される化合物の具体例としては、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩、テトラデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-エチルリン酸エステル塩等が挙げられる。中でも、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を採用した場合、抗菌性及び抗ウイルス性が一層向上するとともに、防錆性の発現が期待できる。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の式(1)で表される第4級アンモニウム塩に加えて、他の抗菌・抗ウイルス剤を含んでいてもよい。或いは、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、抗菌・抗ウイルス剤として上記の式(1)で表される第4級アンモニウム塩のみを含んでいてもよい。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、式(1)で表される第4級アンモニウム塩の含有量は、特に限定されるものではない。例えば、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、前記第4級アンモニウム塩を0.01質量%以上又は0.02質量%以上含んでいてもよく、50質量%以下又は20質量%以下含んでいてもよい。また、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が水等の溶媒で希釈して使用される場合、希釈後の組成物は、前記第4級アンモニウム塩を0.001質量%以上、0.002質量%以上、0.01質量%以上又は0.02質量%以上含んでいてもよく、5質量%以下又は4質量%以下含んでいてもよい。
1.2 樹脂
樹脂は、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有する水系ポリウレタン樹脂を含む。
1.2.1 水系ポリウレタン樹脂
水系ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有するジオール化合物と、を反応して得られるイソシアネート基末端プレポリマーの中和物を、水中に乳化分散(以下、分散又は乳化することを「乳化分散」という。)させたのち、アミン系鎖伸長剤を用いて水中で鎖伸長反応して得られたものであってよい。尚、本願にいう水系ポリウレタン樹脂とは、水に対して乳化分散性を有するポリウレタン樹脂を意味する。具体的には、本願にいう水系ポリウレタン樹脂は、当該ポリウレタン樹脂の濃度が35質量%である乳化分散液(溶媒:水)を調製した後に、当該乳化分散液を、大気圧にて、20℃で12時間静置しても、分離や沈降が観察されないものである。
水系ポリウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート化合物に特に制限はなく、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物などを挙げることができる。芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)など を挙げることができる。脂環式ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどを挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなポリイソシアネートの中でも、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネート化合物は、基材に対して無黄変性を与えることができる。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのうちの少なくとも1種が好適である。
水系ポリウレタン樹脂を構成するポリオール化合物に特に制限はなく、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。これらのポリオール化合物は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、ポリカーボネートポリオールを用いた場合、耐摩耗性が良好となる。ポリオール化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、1,000以上3,000以下であってもよい。数平均分子量がその範囲であると外観品位と耐摩耗性とが良好となる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びテトラメチレンオキサイドなどの炭素数2~4のアルキレンオキサイドの単独付加重合物又は共付加重合物(ブロック共重合でも、ランダム共重合でもかまわない)であるポリオールなどを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール類とカーボネート類との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。ポリオール類は、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等から選ばれる1種または2種以上であってよい。カーボネート類は、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から選ばれる1種または2種以上であってよい。上記ポリカーボネートポリオールは、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と、上述のポリオール類との重縮合反応により得られるものが挙げられる。二塩基酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等から選ばれる1種または2種以上であってよい。上記ポリエステルポリオールは、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
水系ポリウレタン樹脂を構成するカルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有するジオール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、及びこれらの塩を挙げることができる。さらに、このようなジオール化合物として、カルボキシル基を有するジオール化合物と、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等とを反応させて得られるペンダント型カルボキシル基を有するポリエステルポリオールを用いることもできる。なお、前記カルボキシル基を有するジオール化合物に、ジオール成分としてカルボキシル基を有しないジオール化合物を混合して反応させても良い。これらのジオール化合物は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
水系ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基及びカルボキシレート基の少なくとも一方の含有量は、特に限定されるものではない。例えば、抗菌・抗ウイルス剤の固着性又は抗菌・抗ウイルス剤との相溶性の観点から、水系ポリウレタン樹脂は、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を、0.5質量%以上4.0質量%以下含んでいてよい。また、水系ポリウレタン樹脂が、カルボキシル基及びカルボキシレート基の双方を有する場合、当該カルボキシル基及びカルボキシレート基の合計の含有量が、0.5質量%以上4.0質量%以下であってよい。尚、カルボキシル基及びカルボキシレート基の含有量は、ポリウレタン樹脂100gあたりのCOO量を原料仕込み量から計算することで求めることができる。カルボキシル基及びカルボキシレート基の含有量が4.0質量%以下であることで、風合いが一層軟らかくなり、また、屈曲時の白化の問題を一層抑制し易い。また、カルボキシル基及びカルボキシレート基の0.5質量%以上であることで、水系ポリウレタン樹脂の貯蔵安定性が向上し、より安定的な加工が可能となる。
上述のイソシアネート基末端プレポリマーを調製する際、ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコールなどの低分子量多価アルコールを用いてもよい。
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、4,4'-ジアミノジシクロへキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボランジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンなどの低分子量ポリアミン(1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を1分子中に2個以上含有するポリアミン化合物)などを挙げることができる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、水系ポリウレタン樹脂は、例えば、特開2006-206839号公報に開示されたリン系化合物を難燃成分として含む難燃剤ブレンドウレタン系樹脂であってもよい。
次に、上記水系ポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。
上述のイソシアネート基末端プレポリマーを製造する具体的な方法としては特に制限はなく、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等により製造することができる。この時の反応温度は、40~150℃であることが好ましい。また、反応中又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。反応中には、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジ-2-エチルヘキソエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)等の反応触媒、あるいは燐酸、燐酸水素ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加してもよい。
イソシアネート基末端プレポリマーにおける残存イソシアネート基の含有率は、0.2~4.5質量%であることが好ましい。この範囲であると、その後ポリアミンにより鎖伸張して得られる水系ポリウレタン樹脂組成物の成膜性が良好となり、また、形成されるフィルムが柔らかくなり適度な柔軟性を示す。尚、残存イソシアネート基含有率は以下の方法で求めることができる。
得られたウレタンプレポリマー0.3gを三角フラスコに採取し、0.1N ジブチルアミントルエン溶液10mlを配合し、溶解させる。次いで、ブロモフェノールブルー液を数滴加え、0.1N塩酸メタノール溶液で滴定し、下記式により遊離イソシアネート基含有量NCO%を求めることができる。
NCO%=(a-b)×0.42×f/x
a:0.1N ジブチルアミントルエン溶液10mlのみを滴定した場合の0.1N塩酸メタノール液の滴定量
b:反応中の組成物を滴定した場合の0.1N塩酸メタノール液の滴定量
f:0.1N 塩酸メタノール液のファクター
x:サンプリング量。
残存イソシアネート基の含有率を上記範囲とするには、プレポリマー製造時の、原料のイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比を100/80~100/60に調整することが好ましい。イソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比をこの範囲に調整することで、イソシアネート基末端プレポリマーが適度な粘度を有し、乳化し易くなる。また、抗菌・抗ウイルス剤組成物で処理した構造体において、風合いを一層軟らかくすることができ、屈曲時における白化を一層防止し易くなる。
イソシアネート基末端プレポリマーのカルボキシル基の中和は、イソシアネート基末端プレポリマーの調製前、調製中又は調製後に適宜公知の方法を用いて行うことができる。このようなカルボキシル基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和に用いる化合物には特に制限はなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルモノエタノールアミン、N,N-ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等を挙げることができる。中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン類が特に好ましい。
イソシアネート基末端プレポリマーの中和物を水に乳化分散させる際に用いる乳化分散機器に特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等を挙げることができる。また、イソシアネート基末端プレポリマーの中和物を水に乳化分散させる際には、イソシアネート基末端プレポリマーの中和物を、0~40℃の温度範囲で水に乳化分散させて、イソシアネート基と水との反応を極力抑えることが好ましい。さらに、このように乳化分散させる際には、必要に応じて、燐酸、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加することができる。
水に乳化分散させたイソシアネート基末端プレポリマーは、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を1分子中に2個以上含有するポリアミン化合物を用いて鎖伸長させてよい。イソシアネート基末端プレポリマーとポリアミン化合物との反応は、20~50℃の反応温度で、通常、30~120分間で完結する。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際に前述の有機溶剤を使用した場合には、例えば、鎖伸長反応又は乳化分散後に、減圧下、30~80℃で当該有機溶剤を留去することが望ましい。このような調製方法によって水系ポリウレタン樹脂の乳化分散液が得られる。水系ポリウレタン樹脂の乳化分散液中の樹脂固形分(不揮発分)濃度は、例えば、20%以上60%以下であってよい。樹脂固形分濃度は、水を追加または留去することで調整することも可能である。
1.2.2 その他の樹脂
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の水系ポリウレタン樹脂に加え、水系ポリウレタン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。水系ポリウレタン樹脂とアクリル系樹脂との質量比率は、特に限定されるものではないが、例えば、水系ポリウレタン樹脂100質量部に対して、アクリル系樹脂が10質量部以上100質量部以下であってよい。アクリル系樹脂を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸誘導体;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のアクリルアミド類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド等のビニル化合物;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。また、このようなモノマーは、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、水系ポリウレタン樹脂やアクリル系樹脂の各々の含有量は、特に限定されるものではない。例えば、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、前記水系ポリウレタン樹脂を0.01質量%以上又は0.02質量%以上含んでいてもよく、50質量%以下又は20質量%以下含んでいてもよい。また、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が水等の溶媒で希釈して使用される場合、希釈後の組成物は、前記水系ポリウレタン樹脂を0.001質量%以上、0.005質量%以上又は0.1質量%以上含んでいてもよく、20質量%以下又は10質量%以下含んでいてもよい。
1.3 その他の成分
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、上記の抗菌・抗ウイルス剤と樹脂とに加えて、水溶性有機高分子を含んでいてもよい。本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物において、水溶性有機高分子は、分散剤又は相溶化剤として機能し得る。尚、本願にいう水溶性有機高分子とは、1質量%の水溶液(乳化分散液を含む)を、大気圧にて、20℃で12時間静置しても、分離や沈降が観察されない有機高分子をさす。
水溶性有機高分子は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ウレタン変性ポリエーテル、キサンタンガム、並びに、ポリオキシアルキレングリコール鎖を含みカルボキシル基及びカルボキシレート基を含まない第2のウレタン樹脂、からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子であってよい。メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン及びキサンタンガムについては、公知のものを用いればよい。ウレタン変性ポリエーテルや第2のウレタン樹脂については、例えば、以下のものを用いることができる。
ウレタン変性ポリエーテルは、末端に疎水基を有し、分子鎖中にウレタン結合を有するウレタン変性ポリエーテルであってよい。例えば、特許第3972234号、または、特許第4528908号に記載された以下のウレタン変性ポリエーテルが挙げられる。
R11-X-(PEG-X-R12-X)α-PEG-X-R11'
ここで、
R11、R11'は、炭素数8~36のアルキル基又は芳香環を有する炭化水素基であり、
R11とR11'とは、同一であっても異なっていてもよく、
R12は、NCO基を除く炭素数6~36のジイソシアネート残基であり、
Xは、ウレタン結合であり、
PEGは、分子量1,500以上33,000以下のポリエチレングリコール残基であり、
αは、0以上の整数である。
R11-Y-R12-(X-PEG-X-R13)α-X-PEG-X-R12-Y-R11'
ここで、
R11、R11'は、炭素数8~36のアルキル基又は芳香環を有する炭化水素基であり、
R11とR11'とは、同一であっても異なっていてもよく、
R12、R13は、NCO基を除く炭素数6~36のジイソシアネート残基であり、
R12とR13とは、同一であっても異なっていてもよく、
Xは、ウレタン結合であり
Yは、ウレタン結合又はウレア結合であり、
PEGは、分子量1,500以上33,000以下のポリエチレングリコール残基であり、
αは、0以上の整数である。
R11-(OA)β-X-R12-(X-PEG-X-R13)α-X-(AO)γ-R11'
ここで、
R11、R11'は、炭素数8~36のアルキル基又は芳香環を有する炭化水素基であり、
R11とR11'とは、同一であっても異なっていてもよく、
R12、R13は、NCO基を除く炭素数6~36のジイソシアネート残基であり、
R12とR13とは、同一であっても異なっていてもよく、
Xは、ウレタン結合であり、
Aは、炭素数2~4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基であり、
αは0以上の整数であり、
β、γは、1~200の整数であり、
βとγとは、同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2022078681000003
ここで、
R11、R11'、R11"は、炭素数8~36のアルキル基又は芳香環を有する炭化水素基であり、
R11とR11'とR11"とは、同一であっても異なっていてもよく、
R14は、NCO基を除く多官能ポリイソシアネート残基であり、
Aは、炭素数2~4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基であり、
Xはウレタン結合であり
i、j、kは、0以上の整数であり、
i+j+kは、3以上の整数であり、
p、q、rは、1~200の整数であり、
pとqとrとは、同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2022078681000004
ここで、
R11、R11'、R11"は、炭素数8~36のアルキル基又は芳香環を有する炭化水素基であり、
R11とR11'とR11"とは、同一であっても異なっていてもよく、
R14は、NCO基を除く多官能ポリイソシアネート残基であり、
Aは、炭素数2~4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基であり、
Xは、ウレタン結合であり、
Yは、ウレタン結合又はウレア結合であり、
i、j、kは、0以上の整数であり、
i+j+kは、3以上の整数であり、
p、qは、1~200の整数であり、
pとqとは、同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2022078681000005
ここで、
R11、R11'、R11"は、炭素数8~36のアルキル基又は芳香環を有する炭化水素基であり、
R11とR11'とR11"とは、同一であっても異なっていてもよく、
R15は、活性水素を除く多官能ポリオール又はポリアミン残基であり、
Aは、炭素数2~4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基であり、
Xは、ウレタン結合であり、
i、j、kは、0以上の整数であり、
i+j+kは、3以上の整数であり、
p、q、rは、1~200の整数であり
pとqとrとは、同一であっても異なっていてもよい。
下記の一般式(2)で示される重量平均分子量10,000以上40,000未満の化合物Aが20質量%以上80質量%未満と、下記の一般式(3)で示される重量平均分子量40,000以上140,000未満の化合物Bが20質量%以上80質量%未満とを必須成分として含有することを特徴とする組成物
Figure 2022078681000006
式(2)において、
X1、X2は、炭素数15~24の炭化水素基であり、
Yは、ジイソシアネート化合物から導かれる2価の有機残基であり、
OR、OR’、OR”は炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、
a、b、dは1~500の整数であり、
aとbとdとは、同一であっても異なっていてもよく、
cは1以上の整数である。
Figure 2022078681000007
式(3)において、
X3、X4は、炭素数4~24の炭化水素基であり、
Yは、ジイソシアネート化合物から導かれる2価の有機残基であり、
OR、OR’、OR”は、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、
a、b、dは、1~500の整数であり、
aとbとdとは、同一であっても異なっていてもよく、
cは、1以上の整数である。
第2のウレタン樹脂は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖を30質量%以上94質量%以下有するウレタン樹脂であってよい。第2のウレタン樹脂は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応して得られるヒドロキシル基末端ポリウレタン樹脂(以下、「ウレタン樹脂I」という場合がある)であってもよい。或いは、第2のウレタン樹脂は、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるイソシアネート基末端プレポリマーを、水中に乳化分散させたのち、鎖伸長剤で鎖伸長反応して得られるもの(以下、「ウレタン樹脂II」という場合がある)であってもよい。ウレタン樹脂I及びウレタン樹脂IIのいずれについても、ポリオキシアルキレン鎖と、ポリイソシアネートに由来する構造とを有し得る。第2のウレタン樹脂は、1種のみが単独で、又は、2種以上が組み合わされて用いられてよい。
ポリオキシアルキレン鎖は、アルキレンオキサイドが重合した構造(-AO-)(Aはアルキレン基であり、hは任意の整数である)を有し得る。ポリオキシアルキレン鎖におけるアルキレン基の炭素数は特に限定されるものではない。例えば、ポリオキシアルキレン鎖は炭素数2~4のアルキレン基を有してもよい。また、第2のウレタン樹脂において、一のポリオキシアルキレン鎖におけるアルキレン基の炭素数と、他のポリオキシアルキレン鎖におけるアルキレン基の炭素数とが、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、一のポリオキシアルキレン鎖において、炭素数の異なるアルキレン基が含まれていてもよい。
ポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、またはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイドなどの炭素数2~4のアルキレンオキサイドのブロックもしくはランダム共重合からなるポリオールなどを挙げることができる。第2のウレタン樹脂においては、ポリオキシアルキレン鎖を構成するアルキレン基が、炭素数2~4のアルキレン基のみからなってもよい。また、第2のウレタン樹脂は、ポリオキシアルキレン鎖として、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とのみを有していてもよい。第2のウレタン樹脂が、ポリオキシエチレン(POE)鎖とポリオキシプロピレン(POP)鎖とを有する場合、POE鎖及びPOP鎖の比率は特に限定されるものではない。例えば、第2のウレタン樹脂中のPOE鎖とPOP鎖との合計に対するPOP鎖の質量比(POP鎖/(POE鎖+POP鎖))は、0.70以下、0.65以下、又は0.60以下であってもよく、0.30以上、0.35以上、又は0.40以上であってもよい。
ポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、1,000以上又は1,200以上であってよく、4,000以下又は3,000以下であってよい。
第2のウレタン樹脂において、ポリオキシアルキレン鎖の割合は、30質量%以上94質量%以下であってよい。当該割合の下限は40質量%以上、50%以上又は60質量%以上であってもよいし、上限は93質量%以下であってもよい。
第2のウレタン樹脂においては、例えば、上記のポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによってウレタン結合が形成され得る。ポリイソシアネートの種類は特に限定されるものではない。例えば、ポリイソシアネートは、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネート及び炭素数6~16のアリーレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種を含んでよい。また、ポリイソシアネートは、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネート及び炭素数6~16のアリーレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種のみからなってもよい。ポリイソシアネートの具体例については上述した通りである。
第2のウレタン樹脂において、ポリイソシアネートに由来する構造の割合は、特に限定されるものではないが、例えば、5質量%以上又は6質量%以上であってよく、15質量%以下又は10質量%以下であってよい。或いは、第2のウレタン樹脂は、上記ポリオキシアルキレン鎖を除いた部分が、ポリイソシアネートに由来する構造からなってもよい。
上記のポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールと、上記のポリイソシアネートとを反応させてウレタン樹脂Iを得る場合、ポリオールに含まれるヒドロキシル基の総数と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の総数との比率(OH/NCO)が、モル比で、1.0以上又は1.1以上であってよく、2.5以下又は2.0以下であってよい。
第2のウレタン樹脂は、炭素数2~4のアルキレン基を有するポリオキシアルキレン鎖と、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネート及び炭素数6~16のアリーレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する構造と、を有してもよく、少なくともポリオキシプロピレン鎖と、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネート及び炭素数6~16のアリーレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する構造と、を有してもよく、少なくともポリオキシプロピレン鎖と、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネートに由来する構造と、を有してもよく、ポリオキシエチレン鎖と、ポリオキシプロピレン鎖と、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネート及び炭素数6~16のアリーレンジイソシアネートのうちの少なくとも1種のポリイソシアネートに由来する構造と、を有してもよく、ポリオキシエチレン鎖と、ポリオキシプロピレン鎖と、炭素数4~10のアルキレンジイソシアネートに由来する構造と、を有してもよい。
第2のウレタン樹脂は、ポリオキシアルキレン鎖とポリイソシアネートに由来する構造とに加えて、その他の成分に由来する構造を有していてもよい。第2のウレタン樹脂は、例えば、共重合成分として、上述したような、ポリカーボネートポリオールやポリエステルポリオール、低分子多価アルコールなどを有し得る。第2のウレタン樹脂におけるその他の成分に由来する構造の割合は、0質量%以上又は0.1質量%以上であってもよく、60質量%以下又は50質量%以下であってもよい。また、第2のウレタン樹脂は、ポリオキシアルキレン鎖とポリイソシアネートに由来する構造とウレタン結合とに加えて、種々の官能基を有していてもよい。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際に用いるポリオール及びポリイソシアネートとしては、上記のウレタン樹脂Iを製造する際に用いることができるものと同じものを使用することができる。
鎖伸長剤については、上述した通りである。第2のウレタン樹脂は、例えば、特開2006-206839号公報に開示されたリン系化合物を難燃成分として含む難燃剤ブレンドウレタン系樹脂であってもよい。
第2のウレタン樹脂の製造方法の一例について説明する。
ヒドロキシル基末端ポリウレタン樹脂又はイソシアネート基末端プレポリマーは、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等により製造することができる。この時の反応温度は、40~150℃であることが好ましい。また、反応中又は反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。反応中には、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジ-2-エチルヘキソエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)等の反応触媒、あるいは燐酸、燐酸水素ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加してもよい。
イソシアネート基末端プレポリマーにおける残存イソシアネート基の含有率は、0.2~4.0質量%であってもよい。この範囲であると、その後ポリアミンにより鎖伸張して得られる第2のウレタン樹脂が適度な柔軟性を示す。残存イソシアネート基含有率の求め方については上述した通りである。
残存イソシアネート基の含有率を上記範囲とするには、プレポリマー製造時の、原料のヒドロキシル基/イソシアネート基のモル比を調整することが好ましい。具体的には、原料のヒドロキシル基の総数と、原料のイソシアネート基の総数との比率(OH/NCO)が、モル比で、0.6以上0.8以下となるように調整するとよい。ヒドロキシル基/イソシアネート基のモル比をこの範囲に調整することで、イソシアネート基末端プレポリマーの粘度が適切な範囲となって、乳化し易くなる。また、抗菌・抗ウイルス剤組成物で処理した構造体において、風合いを一層軟らかくすることができ、屈曲時における白化を一層防止し易くなる。
イソシアネート基末端プレポリマーを水に乳化分散させる場合に用いられる乳化機器に特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等を挙げることができる。また、イソシアネート基末端プレポリマーを水に乳化分散させる際には、イソシアネート基末端プレポリマーを、0~40℃の温度範囲で水に乳化分散させて、イソシアネート基と水との反応を極力抑えることが好ましい。さらに、このように乳化分散させる際には、必要に応じて、乳化剤を用いてもよい。また、燐酸、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応抑制剤を添加することができる。
このように水に乳化分散させたウレタンプレポリマーは、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を1分子中に2個以上含有するポリアミン化合物を用いて鎖伸長されてもよい。末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミン化合物との反応は、20~50℃の反応温度で、通常、30~120分間で完結し得る。
イソシアネート基末端プレポリマーを製造する際に前述の有機溶剤を使用した場合には、鎖伸長反応後又は乳化分散後に、減圧下、30~80℃で当該有機溶剤を留去することが望ましい。このような調製方法によるウレタン樹脂は、ウレタン樹脂IIの乳化分散液として得ることができる。ウレタン樹脂の乳化分散液中の樹脂固形分(不揮発分)濃度は、例えば、20%以上60%以下であってよい。乳化分散液中の樹脂固形分濃度は、水を追加または留去することで調整することも可能である。
尚、ウレタン樹脂Iについても、乳化分散液として得られたものであってよく、この場合も水を追加または留去することで乳化分散液中の樹脂固形分濃度を調整することができる。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物には、各種の添加剤等が含まれていてもよい。例えば、乳化剤、増粘剤、防腐剤、緩衝材、pH調整剤等が含まれていてもよい。
2.抗菌・抗ウイルス性構造体
本開示の抗菌・抗ウイルス性構造体は、基材と組成物とを備える。ここで、前記組成物は、前記基材の表面に付着している。また、前記組成物は、上記の本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物である。構造体を構成する基材としては、種々のものが挙げられる。例えば、基材は、プラスチック、ガラス、金属、木材又は合成皮革等であってよい。基材の形状は特に限定されるものではなく、構造体の用途に応じて適宜決定されればよい。
基材に対する抗菌・抗ウイルス剤組成物の付着量は、特に限定されるものではない。例えば、基材に対する抗菌・抗ウイルス剤の付着量は、0.01g/m以上又は0.02g/m以上であってよく、20g/m以下又は10g/m以下であってよい。抗菌・抗ウイルス剤の付着量が0.01g/m以上である場合、一層高い抗菌効果及び抗ウイルス効果が得られる。抗菌・抗ウイルス剤の付着量が20g/m以下である場合、水滴による際付き発生をより少なくすることができる。また、基材に対する水系ポリウレタン樹脂の付着量は、0.01g/m以上又は0.06g/m以上であってよく、20g/m以下又は10g/m以下であってよい。水系ポリウレタン樹脂の付着量が0.01g/m以上である場合、抗菌・抗ウイルス剤の耐久性が一層向上する。水系ポリウレタン樹脂の付着量が20g/m以下である場合、風合いを一層柔らかくすることができる。
抗菌・抗ウイルス性構造体は、さらなる添加剤等を有していてもよい。このような添加剤等としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、柔軟剤、架橋剤や他の熱可塑性樹脂等が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤を併用することで耐摩耗性、耐水性を向上することができる。
3.抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法
本開示の抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法は、基材の表面に、上記本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させること、を含む。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は、抗菌・抗ウイルス剤と水系ポリウレタン樹脂と水溶性有機高分子とを含む処理液(分散液)からなっていてもよく、この場合、当該処理液を基材に接触させることで、基材に抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させることができる。例えば、抗菌・抗ウイルス剤を、固形分(不揮発分)が10~80重量%の水系分散体、水/アルコール溶液、或いは乳化液とし、水系ポリウレタン樹脂を、固形分(不揮発分)が10~50重量%である水系分散体又は乳化液としたうえで、これらと、水溶性有機高分子とを、アルコール及び/又は水で、所定の濃度になるように希釈することで、基材に抗菌性及び抗ウイルス性を付与するための処理液とすることができる。
処理液における抗菌・抗ウイルス剤の濃度(抗菌・抗ウイルス剤の有効成分濃度)は、例えば、0.001質量%以上、0.002質量%以上、0.01質量%以上又は0.02質量%以上であってよく、5質量%以下又は4質量%以下であってよい。0.001質量%以上4質量%以下であると性能及びコストのバランスに優れる。処理液は、水及び/又は有機溶媒(例えば、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル)、又はこれらの混合物を溶媒として用いることができる。また、処理液における水系ポリウレタン樹脂の濃度(樹脂の有効成分濃度)は、例えば、0.001質量%以上、0.005質量%以上又は0.1質量%以上であってよく、20質量%以下又は10質量%以下であってよい。0.001質量%以上20質量%以下であると性能及びコストのバランスに優れる。さらに、処理液における水溶性有機高分子の濃度(水溶性有機高分子の有効成分濃度)は、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上又は0.1質量%以上であってよく、20質量%以下又は10質量%以下であってよい。0.001質量%以上20質量%以下であると性能及びコストのバランスに優れる。
いずれの場合も、まず、上述の抗菌・抗ウイルス剤、水系ポリウレタン樹脂及び水溶性有機高分子を、所定の濃度になるように、アルコール及び/又は水で希釈して処理液を調製する。続いて、当該処理液と基材とを接触させて、抗菌・抗ウイルス性を有する構造体を製造する。
処理液と基材とを接触させる方法としては、例えばコーティング法、スプレー法等が挙げられる。
コーティング法で処理を行う場合、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を適切な粘度を有するように調整し、組成物(処理液)を基材にコーティングした後乾燥させて、抗菌・抗ウイルス剤を基材に固定化することができる。コーティング方法としては、特に限定されるものではないが、例えばグラビアロール加工、スプレー加工、ロールコーター加工、ジェットプリント加工、転写プリント加工、スクリーンプリント加工等が挙げられる。
抗菌・抗ウイルス剤、水系ポリウレタン樹脂及び水溶性有機高分子を含む処理液で基材を処理した後は、必要に応じて洗浄し、自然乾燥させてもよいし、加熱乾燥を行うこともできる。加熱乾燥の場合、例えば、ループ式乾燥機、ネット式ドライヤー、オーブン、ヒートセッターなどの装置を用いることができる。抗菌・抗ウイルス剤、水系ポリウレタン樹脂及び水溶性有機高分子を含む処理液を付与した基材の乾燥・熱処理温度は、80~190℃とすることができ、100~160℃であることが好ましい。処理時間は30秒以上又は1分以上、10分以下又は30分以下であってよい。
尚、本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物は2液型であってもよい。すなわち、水系ポリウレタン樹脂を含む第1液と、抗菌・抗ウイルス剤を含む第2液とを用意し、基材に対して第1液を接触させて水系ポリウレタン樹脂を付着させた後に、第2液を接触させて抗菌・抗ウイルス剤を付着させることで、抗菌・抗ウイルス性構造体を製造してもよい。この場合も、基材の表面に本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させることができる。抗菌・抗ウイルス剤組成物を2液に分ける場合、水溶性有機高分子は必ずしも必要でない。
本開示の抗菌・抗ウイルス剤組成物が水溶性有機高分子を含むものである場合、水溶性有機高分子が分散剤又は相溶化剤として機能し、水系ポリウレタン樹脂と抗菌・抗ウイルス剤とを一つの処理液に分散及び相溶化させることができることから、水系ポリウレタン樹脂と抗菌・抗ウイルス剤とを同浴で処理することができる。
以下、実施例を示しつつ本開示の技術による効果等について、より詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
1.抗菌・抗ウイルス剤の合成
合成例A及びBに係る抗菌・抗ウイルス剤の化学構造は以下の通りである。
合成例A:下記一般式(1)において、Rが炭素数12のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがヒドロキシエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Zがジブチルリン酸である化合物1と、下記一般式(2)において、Rが炭素数12のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがヒドロキシエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが2であり、Zがブチルリン酸である化合物2との混合物(化合物1と化合物2とのモル比は1:1)。
合成例B:下記一般式(1)において、Rが炭素数16のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Zがメチル硫酸である化合物。
合成例C:下記一般式(1)において、Rが炭素数16のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Rがエチル基であり、nが1であり、mが2であり、lが1であり、Zがエチル硫酸である化合物。
Figure 2022078681000008
合成例A~Cの合成条件は以下の通りとした。尚、以下の合成条件から明らかなように、合成例A~Cについては、上記の化合物を15重量%含む溶液として使用した。
1.1 合成例A
n-ブタノール3モルと無水リン酸1モルとから調整したモノ体/ジ体の混合比が約1/1のアルキルリン酸エステル143部と水500部とを反応容器に仕込み、ドデシルジメチルアミン260部を加えて中和した。この中和物の中にエチレンオキサイド100部を仕込み、100℃で3時間反応させ、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩を50.0質量%含む組成物1000部を得た。これをドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-ブチルリン酸エステル塩が15重量%となるように調整した。
1.2 合成例B
反応容器にヘキサデシルジメチルアミン205部を仕込んだ。反応容器を50℃に冷却しながら、ジメチル硫酸95部を滴下しながら徐々に添加した。滴下終了後に1時間50℃にて反応させた後、水684部を加えて、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム-メチル硫酸塩を30質量%含む組成物1000部を得た。これをヘキサデシルトリメチルアンモニウム-メチル硫酸塩が15重量%となるように調整した。
1.3 合成例C
反応容器にヘキサデシルジメチルアミン192部を仕込んだ。反応容器を50℃に冷却しながら、ジメチル硫酸108部を滴下しながら徐々に添加した。滴下終了後に1時間50℃にて反応させた後、水700部を加えて、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウム-エチル硫酸塩を30質量%含む組成物1000部を得た。これをヘキサデシルエチルジメチルアンモニウム-エチル硫酸塩が15重量%となるように調整した。
上記合成例A~Cのほか、以下の通り、比較合成例A~Dに係る抗菌・抗ウイルス剤を調製した。
1.4 比較合成例A
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド60%水溶液530部と蒸留水370部を反応器に仕込み、80℃にて、過硫酸ナトリウム17.5部を蒸留水82.5部に溶解したものを60分かけて分割添加した。85℃にて3時間反応させたのち、水を加えて4級カチオンポリマーの濃度を30質量%に調整した。得られた4級カチオンポリマーの重量平均分子量は200,000であった。
1.5 比較合成例B
蒸留水100mLに6g(100部)のルチル型酸化チタンA(昭和電工セラミックス株式会社製)を懸濁させ、0.0805g(銅換算で0.5部)のCuC12・2HO(関東化学株式会社製)を添加して、10分撹拌した。pHが10になるように、1mol/Lの水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)水溶液を添加し、30分間撹拌混合を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過し、得られた粉体を純水で洗浄し、80℃で乾燥し、ミキサーで解砕し、試料を得た。得られた試料をフッ酸溶液中で加熱して全溶解し、抽出液をICP発光分光分析により定量した。その結果、酸化チタン100部に対して、銅イオンが0.5部であった。
1.6 比較合成例C
上記の酸化チタン粉体を銀ジルコニア粉体ノバロンIV1000(東亜合成株式会社製)に代え、比較合成例Bと同様の製法にて、銀ジルコニア10質量%を含む水分散物を得た。
1.7 比較合成例D
上記の酸化チタン粉体を銀粉体ノバロンAG300(東亜合成株式会社製)に代え、比較合成例Bと同様の製法にて、銀10質量%を含む水分散物を得た。
2.水系ポリウレタン樹脂の合成
本実施例で用いた水系ポリウレタン樹脂は以下の通りである。尚、以下の合成例1~6に係る水系ポリウレタン樹脂は、当該ポリウレタン樹脂の濃度が35質量%である乳化分散液(溶媒:水)を調製した後に、当該乳化分散液を、大気圧にて、20℃で12時間静置しても、分離や沈降が観察されないものであった。
2.1 合成例1
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(分子量1,000)251.9部、DMPA(ジメチロールプロピオン酸)10.3部、1,4-BD(ブタンジオール)3.4部、溶媒としてメチルエチルケトン 114.5部を量り取り、均一に混合した後、ポリイソシアネートとしてとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)77.0部を加え、80±5℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が1.68質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。その後60℃でトリエチルアミン7.3部を加え中和反応を行った。次に水643.2部を徐々に加えて攪拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。この乳化分散液に、ヒドラジン一水和物を9.2部及びジエチレントリアミン1.9部を水33.1部に溶解したポリアミン水溶液を添加し、40±5℃で90分間攪拌した後、減圧下に40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、得量:1kg、不揮発分35%の水系ポリウレタン樹脂組成物1を得た。
2.2 合成例2
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(分子量1,000)230.0部、DMPA(ジメチロールプロピオン酸)10.3部、1,4-BD(ブタンジオール)3.5部、溶媒としてメチルエチルケトン 114.0部を量り取り、均一に混合した後、ポリイソシアネートとしてとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)96.9部を加え、80±5℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が4.26質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。その後60℃でトリエチルアミン7.4部を加え中和反応を行った。次に水640.2部を徐々に加えて攪拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。この乳化分散液に、ヒドラジン一水和物を11.5部及びジエチレントリアミン2.4部を水41.7部に溶解したポリアミン水溶液を添加し、40±5℃で90分間攪拌した後、減圧下に40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、得量:1kg、不揮発分35%の水系ポリウレタン樹脂組成物2を得た。
2.3 合成例3
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(分子量1,000)263.2部、DMPA(ジメチロールプロピオン酸)5.1部、1,4-BD(ブタンジオール)3.4部、溶媒としてメチルエチルケトン 114.4部を量り取り、均一に混合した後、ポリイソシアネートとしてとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)71.4部を加え、80±5℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が1.56質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。その後60℃でトリエチルアミン3.7部を加え中和反応を行った。次に水639.7部を徐々に加えて攪拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。この乳化分散液に、ヒドラジン一水和物を8.5部及びジエチレントリアミン1.8部を水30.7部に溶解したポリアミン水溶液を添加し、40±5℃で90分間攪拌した後、減圧下に40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、得量:1kg、不揮発分35%の水系ポリウレタン樹脂組成物3を得た。
2.4 合成例4
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(分子量3,000)287.4部、DMPA(ジメチロールプロピオン酸)10.2部、1,4-BD(ブタンジオール)3.4部、溶媒としてメチルエチルケトン 115.2部を量り取り、均一に混合した後、ポリイソシアネートとしてとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)44.1部を加え、80±5℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が0.96質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。その後60℃でトリエチルアミン7.3部を加え中和反応を行った。次に水647.2部を徐々に加えて攪拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。この乳化分散液に、エチレンジアミンを3.8部及びジエチレントリアミン1.1部を水14.6部に溶解したポリアミン水溶液を添加し、40±5℃で90分間攪拌した後、減圧下に40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、得量:1kg、不揮発分35%の水系ポリウレタン樹脂組成物4を得た。
2.5 合成例5
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(分子量3,000)207.2部、DMPA(ジメチロールプロピオン酸)41.6部、1,4-BD(ブタンジオール)3.5部、溶媒としてメチルエチルケトン113.6部を量り取り、均一に混合した後、ポリイソシアネートとしてとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)88.0部を加え、80±5℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が1.94質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。その後60℃でトリエチルアミン29.8部を加え中和反応を行った。次に水664.6部を徐々に加えて攪拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。この乳化分散液に、エチレンジアミンを7.6部及びジエチレントリアミン2.2部を水29.1部に溶解したポリアミン水溶液を添加し、40±5℃で90分間攪拌した後、減圧下に40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、得量:1kg、不揮発分35%の水系ポリウレタン樹脂組成物5を得た。
2.6 合成例6
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(分子量3,000)143.7部、ポリテトラメチレングリコール(分子量3,000)143.7部、DMPA(ジメチロールプロピオン酸)10.2部、1,4-BD(ブタンジオール)3.4部、溶媒としてメチルエチルケトン 115.2部を量り取り、均一に混合した後、ポリイソシアネートとしてとしてHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)44.1部を加え、80±5℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が0.96質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。その後60℃でトリエチルアミン7.3部を加え中和反応を行った。次に水647.2部を徐々に加えて攪拌し、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを乳化分散させた。この乳化分散液に、エチレンジアミンを3.8部及びジエチレントリアミン1.1部を水14.6部に溶解したポリアミン水溶液を添加し、40±5℃で90分間攪拌した後、減圧下に40℃で脱溶剤(脱メチルエチルケトン)を行い、得量:1kg、不揮発分35%の水系ポリウレタン樹脂組成物6を得た。
2.7 比較合成例1
攪拌機、環流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量1000)244.2部、トリメチロールプロパン4.7部、ジブチル錫ジラウレート0.099部及びメチルエチルケトン150部を仕込み、均一に混合した後、H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)97.1部を加え、80℃で300分間反応させ、イソシアネート基の含有量が1.26質量%である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を30℃以下に冷却してデシルリン酸エステル0.3部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)15.0部を添加し、均一に混合した後、ディスパー羽根を用いて水638.7部を徐々に加え転相乳化、分散を行い、分散液を得た。そして、ピペラジン6水和物4.8部と、ジエチレントリアミン1.9部を水20.2部に溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、90分間鎖伸長反応させた後、減圧下、35℃にて脱溶剤を行い、得量:1kg、不揮発分36.5%の水系ポリウレタン樹脂組成物7を得た。
尚、合成例1~6においては不揮発分として樹脂が含まれ、比較合成例1においては不揮発分として樹脂のほか乳化剤が含まれる。
以下の表1には、上記の合成例1~6及び比較合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂組成物1~6におけるCOO基の量、NCO/OH比、ポリオールの種類が要約されている。表中のPCDはポリカーボネートジオールを、PEDはポリエーテルジオールを示している。
Figure 2022078681000009
3.アクリル樹脂の合成
本実施例で用いたアクリル樹脂は以下の通りである。
温度計、撹拌機、滴下装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応装置に、イオン交換水28部を秤量し、窒素を封入して内温を80℃まで昇温させた。そして、その温度に保ちながら、10%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液2部を添加し、直ちに、別に準備しておいた、下記のようにして調製した単量体乳化物を連続的に4時間滴下して乳化重合した。上記で用いた単量体乳化物は、メタクリル酸メチル25部及びアクリル酸ブチル75部の単量体混合物に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE-118B)4部とイオン交換水30部を混合し、乳化することで調製した。また、この単量体乳化物の滴下に並行して、5%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液4部を滴下した。滴下終了後、80℃で4時間熟成し、その後、室温まで冷却した。最後に、アンモニア水で中和し、水で調整して、不揮発分60%である水系アクリル樹脂組成物を得た。
4.水溶性有機高分子の合成
本実施例で用いた水溶性有機高分子は以下の通りである。尚、以下の水溶性有機高分子は、1質量%の水溶液を、大気圧にて、20℃で12時間静置しても、分離や沈降が観察されないものであった。
4.1 合成例a
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール6000(分子量6000)を500部、n-ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを5モル付加したポリエーテルモノオールを13.5部入れ低圧下(500~1500Pa)にて80~90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。ついで70℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネートを16.8部加え、窒素気流下85~90℃でイソシアネート含量が0%になるまで反応させ(3時間)、室温にて冷却後、淡黄色粘稠固体のウレタン変性ポリエーテルaを得た。当該ウレタン変性ポリエーテルaを水で調整してウレタン変性ポリエーテルaの水分散物(不揮発分30%)を得た。
4.2 合成例b
温度計、窒素導入管および高粘度用攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(分子量2000)を149部、ポリプロピレングリコールグリセロールトリエーテルを10部、ポリエチレングリコール(分子量1540)を97部入れ、低圧下(500~1500Pa)にて80~90℃で3時間脱水し、系の水分含量を0.03%とした。ついで70℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネートを18部加え、窒素気流下85~90℃でイソシアネート含量が0%になるまで反応させ(3時間)、冷却後、ソルフィットを24部、水を703部加え、ポリオキシアルキレングリコール鎖を含み、カルボキシル基及びカルボキシレート基を含まないウレタン樹脂bの水分散物(不揮発分30%)を得た。
4.3 ウレタン変性ポリエーテルc~e
水溶性有機高分子として、以下のウレタン変性ポリエーテルを用意した。
ウレタン変性ポリエーテルc:ネオステッカー N(日華化学株式会社製)
ウレタン変性ポリエーテルd:SNシックナー603(サンノプコ株式会社製)
ウレタン変性ポリエーテルe:エレミノールN62(三洋化成工業株式会社製)
4.4 キサンタンガム
水溶性有機高分子として、以下のキサンタンガムを用意し、水を加えて5%水溶液として使用した。
キサンタンガム:KELZAN(三晶株式会社製)
5.添加剤
本実施例で用いた添加剤は以下の通りである。
フィラー:ACEMATT TS-100(Evonik Industries AG製、平均粒子径:10μm)
消泡剤:フォームレックス747(日華化学株式会社製)
レベリング剤:BYK DYNWET800N(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
6.抗菌・抗ウイルス剤組成物の調製
上記の抗菌・抗ウイルス剤の溶液と、水系ポリウレタン樹脂組成物と、水系アクリル樹脂組成物と、水溶性有機高分子の分散物と、その他の添加剤等とを、下記表2~4に示される質量比にて混合し、実施例1~20及び比較例1~4に係る抗菌・抗ウイルス剤組成物を得た。尚、実施例1~3については、(1)抗菌・抗ウイルス剤の溶液と、(2)水系ポリウレタン樹脂組成物及びその他の添加剤等を含む溶液と、を別々に用意して、2液型の組成物として用いた。
7.皮革状積層体の作製
7.1 表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物の調製
水系ポリウレタン樹脂と、会合型増粘剤と、消泡剤とを、下記組成を有するように調液し、調液後、1日間25℃にて静置して表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物を得た。得られた組成物の粘度は3200mPa・s(BM型粘度計、4号ローター、60rpm)であった。
7.2 表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物の組成
エバファノールHA-107C(日華化学株式会社製、水性ポリウレタン樹脂)100g
ネオステッカーN(日華化学株式会社製、会合型増粘剤)3g
NXH-6022(日華化学株式会社製、消泡剤)0.1g
7.3 表皮層の作製
離型紙(朝日ロール株式会社、アサヒリリースAR-148)上に、表皮層形成用水性ポリウレタン樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が30μmとなるように塗布し、ピンテンターを用いて温度80℃で2分間乾燥させた後、さらに温度120℃で時間1分の条件で乾燥し、離型紙上に表皮層を形成した。次いで、表皮層上に、下記接着剤を乾燥後の厚さが50μmとなるよう塗布し、ピンテンターを用いて温度80℃で1分間乾燥し、更に温度110℃、時間1分の条件で乾燥した。乾燥後、直ちに、基材となるポリエステルニットと貼り合わせ、更にカレンダーを用いて温度150℃及び圧力30kg/cmの条件でラミネートを行った。その後、温度45℃及び湿度40%RHの条件に調整した恒温恒湿器中で2日熟成を行い、離型紙を剥がして皮革状積層体を得た。
7.4 接着剤の組成
エバファノールHO-38(日華化学株式会社製、二液型水性ポリウレタン樹脂系接着剤の主剤)100g
バイヒジュール3100(住化バイエルウレタン株式会社製、架橋剤)10g
ネオステッカーN(日華化学株式会社、会合型増粘剤)1g
8.皮革状積層体に対する抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定化処理
8.1 実施例1~3
皮革状積層体の表面に、水系ポリウレタン樹脂組成物及びその他成分の混合物を20g/mとなるよう均一に塗布し、120℃で2分乾燥を行った後、その上に抗菌・抗ウイルス剤がそれぞれ下記実施例4~6と同量が付着するよう、抗菌・抗ウイルス剤の溶液を均一に塗布し、120℃で2分乾燥を行った。
8.2 実施例4~20、比較例1~4
皮革状積層体の表面に、表3及び4に示す各組成物を20g/mとなるよう均一に塗布した後、120℃で2分乾燥を行い、抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定化処理を行った。
9.評価条件
9.1 折り曲げ試験
抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定処理後の皮革状積層体を折り曲げ、10kgの荷重をかけて24時間静置した後、折り曲げた部分の塗膜状態を目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
5級:折り曲げ部の表面樹脂層に割れや白化が見られない
4級:折り曲げ部の表面樹脂層が僅かに白化
3級:折り曲げ部の表面樹脂層が白化
2級:折り曲げ部の表面樹脂層が白化、割れ・剥がれが一部見られる(全体の70%未満)
1級:折り曲げ部の表面樹脂層に割れ・剥がれが見られる(全体の70%以上)
9.2 風合いの評価
ISO17235:2015(IULTCS/IUP 36)に従って、ソフトネステスター(皮革ソフトネス計測装置ST300:英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いて、抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定処理後の皮革状積層体の剛軟度を測定した。なお、数値は侵入深さを表し、数値が大きいほど柔軟であることを表す。評価基準は以下の通りである。
3:柔軟な風合い
2:やや柔軟な風合い
1:粗硬な風合い
9.3 液安定性(相溶性)試験
上記の抗菌・抗ウイルス剤、添加剤、分散剤を組み合わせて、表2~4に示す各組成物を調製した。そして、これらの各組成物について、調製1時間後および72時間後の組成物中の樹脂カスの有無を目視により判断した。評価基準は以下の通りである。尚、上述の通り、実施例1~3については、抗菌・抗ウイルス剤の溶液と、水系ポリウレタン樹脂組成物及びその他の成分を含む溶液と、の各々の液安定性を評価した。
◎:樹脂カス発生無し
○:樹脂カス発生わずかに有り
△:樹脂カス発生有り
×:多量の樹脂カス発生有り
9.4 耐摩耗性の評価
抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定処理後の皮革状積層体について、平面摩耗試験機を用い、2kgの加重で綿帆布(JIS L 3102[1952年制定]の9号)により摩耗を行った後、試験片の状態を観察し、表皮層の下の基布が見られるか、表皮層に破れが見られた回数を確認した。
9.5 抗ウイルス性の評価
ISO21702:2019に準じて抗ウイルス活性値を測定し、抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定処理後の皮革状積層体の抗ウイルス性能を評価した。使用ウイルスとして、A型インフルエンザウイルス(H3N2) ATCC VR-1679を使用した。抗ウイルス活性R=(Ut-U0)-(At-U0)とした。U0は接種直後の未加工試料から回収したプラーク数の平均常用対数(PFU/cm)であり、Utは24時間後の未加工試料から回収したプラーク数の平均常用対数(PFU/cm)であり、Atは24時間後の加工処理した試料から回収したプラーク数の平均常用対数(PFU/cm)である。活性値が高いもの程、抗ウイルス性に優れる。本実施例においては、抗ウイルス活性Rが1.5以上である場合に抗ウイルス性が良好であると判断した。
9.6 抗菌性の評価
JIS Z2801:2010により抗菌活性値を測定し、抗菌・抗ウイルス剤組成物の固定処理後の皮革状積層体の抗菌性能を評価した。使用菌として黄色ぶどう球菌Staphylococcus aureus NBRC12732および、大腸菌Escherichia coli NBRC 3972を用いた。活性値が高いもの程、抗菌性に優れる。本実施例においては、抗菌活性値が2.0以上である場合に抗菌性が良好であると判断した。
10.評価結果
以下に評価結果を示す。
Figure 2022078681000010
Figure 2022078681000011
Figure 2022078681000012
表2~4に示される結果から以下のことが分かる。
実施例1~20のように、上記式(1)で表される第4級アンモニウム塩である抗菌・抗ウイルス剤と、カルボキシル基/カルボキレート基を有する水系ポリウレタン樹脂とを含む抗菌・抗ウイルス剤組成物を用いた場合、基材である皮革に対して高い抗菌性及び抗ウイルス性を付与することができるとともに、風合いの粗硬化の問題や折り曲げ時の白化の問題も生じ難い。また、当該組成物の液安定性にも優れることから、抗菌・抗ウイルス加工の作業性も良好である。さらに、当該組成物によって皮革をコーティングすることで、耐摩耗性に優れる構造体となり得る。
一方で、比較例1~3のように、抗菌・抗ウイルス剤組成物において、上記式(1)で表される第4級アンモニウム塩以外の抗菌・抗ウイルス剤を用いた場合、基材である皮革に対してある程度の抗菌性及び抗ウイルス性を付与することができるものの、風合いの粗硬化の問題や折り曲げ時の白化の問題が生じ易い。また、液安定性にも劣る。
また、比較例4のように、抗菌・抗ウイルス剤組成物において、カルボキシル基/カルボキシレート基を有さないポリウレタン樹脂を用いた場合、基材である皮革に対して高い抗菌性及び抗ウイルス性を付与することができるものの、折り曲げ時の白化の問題が生じ易い。また、構造体において十分な耐摩耗性が確保できない。
以上のことから、以下の要件を満たす抗菌・抗ウイルス剤組成物によって、基材に対して優れた抗ウイルス性を付与することが可能であり、且つ、風合いの粗硬化の問題や折り曲げ時の白化の問題を抑制できるといえる。
(1)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、抗菌・抗ウイルス剤として、上記式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含むこと。
(2)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、カルボキシル基/カルボキレート基を有する水系ポリウレタン樹脂を含むこと。
また、実施例1~3と実施例4~20との結果から、以下の要件を満たす抗菌・抗ウイルス剤組成物によって、液安定性に優れる1液型の組成物が得られるといえる。
(3)抗菌・抗ウイルス剤組成物が、上記の抗菌・抗ウイルス剤と水系ポリウレタン樹脂とに加えて、水溶性有機高分子を含むこと。

Claims (6)

  1. 抗菌・抗ウイルス剤組成物であって、抗菌・抗ウイルス剤と樹脂とを含み、
    前記抗菌・抗ウイルス剤が、下記式(1)で表される第4級アンモニウム塩を含み、
    前記樹脂が、カルボキシル基及びカルボキシレート基のうちの少なくとも一方を有する水系ポリウレタン樹脂を含む、
    抗菌・抗ウイルス剤組成物。
    Figure 2022078681000013
    式(1)において、
    は炭素数10~20のアルキル基又はアリール基であり、
    はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は(AO)Hで表される基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキサイドであり、xは1~10の整数であり、
    はメチル基、エチル基、ベンジル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、
    nは1又は2であり、
    mは1又は2であり、
    n+mは3であり、
    lは1又は2であり、
    Zはモノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、ハロゲン、メチル硫酸、エチル硫酸又は芳香族アニオンである。
  2. 前記抗菌・抗ウイルス剤と前記樹脂とに加えて、水溶性有機高分子を含む、
    請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
  3. 前記水溶性有機高分子が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ウレタン変性ポリエーテル、キサンタンガム、並びに、ポリオキシアルキレングリコール鎖を含みカルボキシル基及びカルボキシレート基を含まない第2のウレタン樹脂、からなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子である、
    請求項2に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
  4. 前記水系ポリウレタン樹脂が、前記カルボキシル基及び前記カルボキシレート基のうちの少なくとも一方を、0.5質量%以上4.0質量%以下含む、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物。
  5. 抗菌・抗ウイルス性構造体であって、基材と組成物とを備え、
    前記組成物が、前記基材の表面に付着しており、
    前記組成物が、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物である、
    抗菌・抗ウイルス性構造体。
  6. 基材の表面に、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌・抗ウイルス剤組成物を付着させること、
    を含む、抗菌・抗ウイルス性構造体の製造方法。
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