JP2022078491A - 成形体、成形体の製造方法、金属樹脂複合体、および、樹脂組成物 - Google Patents

成形体、成形体の製造方法、金属樹脂複合体、および、樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い機械的強度を維持しつつ、沿面距離が短い成形体、成形体の製造方法、金属樹脂複合体、および、樹脂組成物の提供。【解決手段】 ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された成形体であって、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である、成形体。【選択図】 なし

Description

本発明は、成形体、成形体の製造方法、金属樹脂複合体、および、樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その優れた特性から電気・電子機器部品などに広く用いられている。従来からこの樹脂に関しては、要求特性を満足させるべく様々な処方が開発され、それにより高機能化と高性能化を実現してきた。
ここで、ポリブチレンテレフタレート樹脂から形成された成形体は、電気・電子機器部品において、絶縁体として機能しうる。そして、電気・電子機器部品に付与される電圧が高くなると、熱を発生し、金属部材の周囲に存在する絶縁体(ポリブチレンテレフタレート樹脂から成形された成形体)にも伝わり、乾燥し帯電するため、絶縁体の表面には埃が付着しやすくなる。その埃が空気中の水分を吸収し、吸収された水分により材料の表面抵抗が低下し、漏洩電流が増加する。そのため、前記絶縁体には、高電圧を付加しても、トラッキングを引き起こしにくい性能が求められる。ここで、トラッキングとは、絶縁体の表面での微小放電が繰り返されることにより、絶縁体の表面に導電性の経路が生成され、絶縁破壊に至る現象をいう。このようなトラッキングを引き起こしにくくする性能を示す指標として、CTI(Comparative Tracking Index、比較トラッキング指数)が知られている。そして、特許文献1~3では、ポリブチレンテレフタレート樹脂のCTI値を高くすることが検討されている。
特開2010-106078号公報 特開2010-248351号公報 特開平9-272791号公報
上述の通り、CTI値が高い樹脂組成物は知られているが、近年、沿面距離をより短くすることが求められている。沿面距離とは、製品において、最小の空気を介した表面絶縁距離のことである。この沿面距離を短くすると、製品をさらに小型化・薄肉化することが可能となる。また、沿面距離が短くても、成形体の機械的強度が低ければ、沿面距離を短くすることが困難になる場合がある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、高い機械的強度を維持しつつ、沿面距離が短い成形体、成形体の製造方法、金属樹脂複合体、および、樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記課題のもと、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された成形体であって、
IEC60112に従ったCTI値が800V以上である、成形体。
<2>前記樹脂組成物を射出率18~62cm3/secで射出成形した成形体である、<1>に記載の成形体。
<3>前記樹脂組成物が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、<1>または<2>に記載の成形体。
<4>前記樹脂組成物が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とホウ酸亜鉛を含む、<1>または<2>に記載の成形体。
<5>前記樹脂組成物が、ホスフィン酸金属塩を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成形体。
<6>前記樹脂組成物が、タルクおよび/またはシリコーンパウダーを含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の成形体。
<7>前記樹脂組成物が、ガラス繊維および/またはエラストマーを含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の成形体。
<8>前記樹脂組成物が、着色剤を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の成形体。
<9>前記樹脂組成物が、オレンジ着色剤および/またはオレンジ着色剤組成物を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の成形体。
<10>ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物を、射出率18~62cm3/secで射出成形することを含む、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である成形体の製造方法。
<11>前記成形体が、<1>~<9>のいずれか1つに記載の成形体である、<10>に記載の成形体の製造方法。
<12>金属部材と、前記金属部材に接している、<1>~<9>のいずれか1つに記載の成形体とを有する、金属樹脂複合体。
<13>前記金属樹脂複合体がインサート成形体である、<12>に記載の金属樹脂複合体。
<14>コネクタまたはスイッチである、<12>または<13>に記載の金属樹脂複合体。
<15>ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物であって、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である、樹脂組成物。
<16>コネクタカバーまたはスイッチカバー用である、<15>に記載の樹脂組成物。
<17>前記樹脂組成物が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、ホウ酸亜鉛、ホスフィン酸金属塩、タルク、シリコーンパウダー、ガラス繊維、エラストマー、および、着色剤の少なくとも1種を含む、<15>または<16>に記載の樹脂組成物。
本発明により、高い機械的強度を維持しつつ、沿面距離が短い成形体、成形体の製造方法、金属樹脂複合体、および、樹脂組成物を提供可能になった。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
ISO等の規格については、特に述べない限り、本出願時点における規格をいう。
本実施形態の成形体は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された成形体であって、IEC60112に従ったCTI値が800V以上であることを特徴とする。このような構成とすることにより、高い機械的強度を維持しつつ、沿面距離が短い成形体とすることができる。すなわち、CTI値を800V以上とすることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂が本来的に有する高い機械的強度を維持しつつ、あるいは、ポリブチレンテレフタレート樹脂に一般的に配合される強化材を配合することによって達成される高い機械的強度を維持しつつ、沿面距離を短くすることができる。
従来、CTI値は、600Vまでが測定されていた。CTI実力の分類(PLC、Performance Level Category)においても、最もPLCレベルが高いものでも、600V≦CTIであった。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、電圧が高くなると金属の周りに存在する成形体に、今まで以上に熱が発生することが分かった。そして、CTI値が600V迄では、機械的強度を維持しつつ、沿面距離が短い成形体とすることが困難であることが分かった。そして、本発明者は、CTI値を800V以上とすることにより、機械的強度を維持しつつ、沿面距離が短い成形体とできるようにしたものである。
CTI値を800V以上とする手段は、特に定めるものではないが、例えば、以下の手段によって達成される。
CTI値を800V以上とする手段の1つとして、成形体を射出成形する際の、射出率を低めに調整することが挙げられる。射出率を低めに調整することにより、成形体中のガラス繊維の配向を抑制したり、成形体中のエラストマーの形状の変化を抑制でき、CTI値を高くすることができると推測される。
CTI値を800V以上とする手段の1つとして、ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合する添加剤を調整することも挙げられる。具体的には、変性したポリオレフィン樹脂を配合することが挙げられ、酸変性したポリオレフィン樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。ポリプロピレンを変性する酸として、無水マレイン酸を用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性が良くなり、樹脂中のポリプロピレンの分散性が向上し、CTI値を高くすることができると推測される。
CTI値を800V以上とする手段の1つとして、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとホウ酸亜鉛を併用することも挙げられる。無水マレイン酸変性ポリプロピレンとホウ酸亜鉛を併用することにより、炭化導電経路が形成されにくくなり、CTI値を高くすることができると推測される。
CTI値を800V以上とする手段の1つとして、ホスフィン酸金属塩を配合することも挙げられる。ホスフィン酸金属塩は、熱によって発泡しやすい物質である。そのため、耐トラッキング試験において、高圧がかかり、熱が発生したとき、ホスフィン酸金属塩が発泡する。この発泡によって、ポリブチレンテレフタレート樹脂中でトラッキング破壊が広がることを効果的に抑制できると推測される。
CTI値を800V以上とする手段の1つとして、ホウ酸亜鉛やホスフィン酸金属塩の粒径を小さくすることも挙げられる。すなわち、ホウ酸亜鉛やホスフィン酸金属塩を用いる場合、同じ質量を含んでいても、粒径が小さい方が成形体内に数多く点在することとなる。トラッキングは、例えば、樹脂が炭化して起こるが、数多くのホウ酸亜鉛やホスフィン酸金属塩が成形体中に点在することにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂など他の成分の含有割合を変えずに(すなわち、機械的強度への影響を最小限にとどめ)、より効果的に樹脂の炭化を抑制できると推測される。
CTI値を800V以上とする手段の1つとして、タルクおよび/またはシリコーンパウダーを配合することも挙げられる。特に、タルクおよび/またはシリコーンパウダーの粒径を小さくすることによって達成される。すなわち、タルクおよび/またはシリコーンパウダーを用いる場合、同じ質量を含んでいても、粒径が小さい方が成形体内に細かく点在することとなる。トラッキングは、例えば、樹脂が炭化して起こるが、粒径の小さい細かいタルクおよび/またはシリコーンパウダーが成形体中に点在することにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂など他の成分の含有割合を変えずに、より効果的に樹脂の炭化を抑制できると推測される。
これらの手段は2つ以上を組み合わせてもよい。
以下、本発明の詳細について説明する。
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である。本実施形態の樹脂組成物は、さらに、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(好ましくは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)、ホウ酸亜鉛、ホスフィン酸金属塩、タルク、シリコーンパウダー、ガラス繊維、エラストマー、および、着色剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。このような構成とすることにより、CTI値を800V以上としつつ、ポリブチレンテレフタレート樹脂が本来的に有する高い機械的強度を維持した成形体、あるいは、ポリブチレンテレフタレート樹脂に一般的に配合される強化材を配合することによって達成される高い機械的強度を維持した成形体が得られやすくなる。本実施形態の樹脂組成物は、さらに、これら以外の成分を含んでいてもよい。本実施形態の樹脂組成物は、金属部材の絶縁体として機能する。そのため、本実施形態の樹脂組成物は、コネクタカバーまたはスイッチカバー用として好ましく用いられる。
以下、各成分の詳細について説明する。
<<ポリブチレンテレフタレート樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることにより、成形体の絶縁性を確保し、さらに、機械的強度に優れた成形体が得られる。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性、耐トラッキング性が向上しやすい傾向にあり、好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が抗向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/ton以上である。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5~2dL/gであるのが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6~1.5dL/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度を0.5dL/g以上とすることにより、得られる樹脂組成物の機械強度がより向上する傾向にある。また、2dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形性が向上する傾向にある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、0.5~2dL/gであるのが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6~1.5dL/gの範囲の極限粘度を有するものがより好ましい。極限粘度を0.5dL/g以上とすることにより、得られる樹脂組成物の機械強度がより向上する傾向にある。また、2dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形性が向上する傾向にある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度は、テトラクロロエタンフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃においてウベローデ粘度計を用いて測定される値である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
その他、ポリブチレンテレフタレート樹脂の詳細は、国際公開第2010/010669号の段落0019~0051の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、靭性(耐衝撃性(ノッチ無シャルピー衝撃強さ)、耐薬品性、流動性)がより向上する傾向にある。また、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であってもよく、さらには、50質量%未満であってもよい。前記上限値以下とすることにより、剛性(引張弾性率)、耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<変性ポリオレフィン樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、変性ポリオレフィン樹脂、好ましくは酸変性ポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。変性ポリオレフィン樹脂を含むことにより、耐トラッキング性がより効果的に発揮される。本実施形態では、特に、変性ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。無水マレイン酸変性のものを用いることによりCTI値をより高くすることが可能になる。酸変性ポリオレフィン樹脂は、また、酸変性ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂を用いることにより、炭化導電経路が形成されにくくなる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物における酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、35質量部以上であることが一層好ましく、40質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐トラッキング性がより向上する傾向にある。また、前記酸変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、55質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが一層好ましく、50質量部未満であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性や機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<エラストマー>>
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーを含んでいてもよい。エラストマーを含むことにより、得られる成形体の衝撃強度を向上させることができる。エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えば、ゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いることができる。
エラストマーの詳細は、特開2020-19950号公報の段落0025~0029の記載、特開2016-132772号公報の段落0043~0067を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物におけるエラストマーの含有量は、エラストマーを含む場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記エラストマーの含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の剛性や難燃性、流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、エラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<その他の樹脂>>
本実施形態の樹脂組成物は、上記以外の樹脂成分を含んでいてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上であってもよい。ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2016-132772号公報の段落0023~0031の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、また、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、他の熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<ホウ酸亜鉛>>
本実施形態の樹脂組成物は、ホウ酸亜鉛を含んでいてもよい。ホウ酸亜鉛を含むことにより、より高い耐衝撃性を達成することが可能になる。さらに、本実施形態の樹脂組成物においては、酸変性ポリオレフィン樹脂、特に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂と併用することにより、高いCTI値を達成可能になる。
ホウ酸亜鉛は、酸化亜鉛とホウ酸とから得ることができ、例えば、ZnO・B23・2H2Oおよび2ZnO・3B23・3.5H2O等の水和物や無水物が挙げられる。
本実施形態では、ホウ酸亜鉛は、その粒径が小さい方が好ましいが、平均粒径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが一層好ましく、0.5μm以下であることがより一層好ましい。前記ホウ酸亜鉛の粒径の下限は、例えば、0.01μm以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物がホウ酸亜鉛を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることが一層好ましく、33質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、CTI値がより高くなる傾向にある。また、前記ホウ酸亜鉛の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ホウ酸亜鉛を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が、酸変性ポリオレフィン樹脂(好ましくは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)とホウ酸亜鉛の両方を含む場合、その合計含有量は、樹脂組成物中、20~40質量%であることが好ましく、25~35質量%であることが好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、酸変性ポリオレフィン樹脂(好ましくは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)とホウ酸亜鉛の合計で、70~90質量部であることが好ましく、75~85質量部であることがより好ましい。このような構成とすることにより、より高いCTI値を有する成形体が得られる。
<<難燃剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤を含むことにより、得られる成形体の難燃性をより向上させることができる。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン等)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミン等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)等があるが、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤が好ましい。リン系難燃剤としては、ホスフィン酸金属塩がより好ましい。ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤がより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、また、70質量部以下であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含む場合、ホスフィン酸金属塩を含むことが好ましい。ホスフィン酸金属塩を含むことにより、難燃性を向上させることができると共に、CTI値を高くすることが可能になる。
ホスフィン酸金属塩とは、アニオン部分が式(2)または(3)で表され、カチオン部分の金属イオンがカルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたは亜鉛のいずれかであることが好ましい。
Figure 2022078491000001
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1同士は同一でも異なっていてもよく、R3は炭素数1~10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、またはこれらの組み合わせからなる基を表し、R3同士は同一でも異なっていてもよく、nは0~2の整数を表す。)
本実施形態では、式(2)で表されるホスフィン酸金属塩が好ましい。また、本実施形態では、ホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
ホスフィン酸金属塩の詳細は、国際公開第2010/010669号の段落0052~0058の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が、ホスフィン酸金属塩を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性および高CTIがより効果的に達成される傾向にある。また、前記ホスフィン酸金属塩の含有量の上限は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましく、25質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ホスフィン酸金属塩を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含む場合、臭素系難燃剤を含むことも好ましい。臭素系難燃剤を含むことにより、難燃性を向上させることができる。臭素系難燃剤としては、臭素系エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレンが例示され、臭素化ポリスチレンがより好ましい。臭素系難燃剤の詳細は、特開2018-195561号公報の段落0029~0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が、臭素系難燃剤(好ましくは、臭素化ポリスチレン)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、30質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましく、45質量部以上であることが一層好ましく、50質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより効果的に達成される傾向にある。また、前記臭素系難燃剤の含有量の上限は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、65質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、臭素系難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<難燃助剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を含んでいてもよい。難燃助剤を含むことにより、成形体の難燃性をより向上させることができる。難燃助剤は、ハロゲン系難燃剤を含む場合に特に好ましく用いられる。本実施形態で用いる難燃助剤は、アンチモン化合物が例示され、三酸化アンチモン(Sb23)、五酸化アンチモン(Sb25)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、耐衝撃性の点から酸化アンチモン、特に、三酸化アンチモンが好ましい。
難燃助剤を配合する場合、マスターバッチとして配合してもよい。マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は、好ましくは30~85質量%であり、より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~75質量%である。
本実施形態の樹脂組成物が、難燃助剤(好ましくはアンチモン化合物)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより効果的に発揮する傾向にある。また、前記難燃助剤の含有量の上限は、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<滴下防止剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤を含んでいてもよい。滴下防止剤を含有することにより、成形体の難燃性をより向上させることができる。特に、難燃剤を配合する場合に、滴下防止剤も併用することが好ましい。
滴下防止剤としては、フルオロポリマーが好ましい。フルオロポリマーとしては、フッ素を有する公知のポリマーを任意に選択して使用できるが、中でもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂としては、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体や共重合体が挙げられる。その具体例を挙げると、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられる。中でもテトラフルオロエチレン樹脂等が好ましい。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
滴下防止剤の詳細は、特開2016-132772号公報の段落0079~0080の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が滴下防止剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより向上する傾向にある。また、前記滴下防止剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の外観や機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<タルク>>
本実施形態の樹脂組成物は、タルクを含んでいてもよい。タルクを配合することにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂の核剤や充填剤として機能する。
本実施形態では、タルクは、そのサイズが小さい方が好ましいが、平均粒子径が20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが一層好ましく、5μm以下であることがより一層好ましい。前記タルクの数平均粒子径の下限は、例えば、1μm以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物がタルクを核剤として配合する場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形サイクル性がより向上する傾向にある。また、前記タルクの含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がタルクを充填剤として配合する場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、CTI値がより高くなる傾向にある。また、前記タルクの含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、75質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、タルクを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<シリコーンパウダー>>
本実施形態の樹脂組成物は、シリコーンパウダーを含んでいてもよい。シリコーンパウダーを配合することにより、耐トラッキング性がより効果的に発揮される。
シリコーンパウダーは、球状シリコーンゴムパウダーの表面をシリコーンレジンで被覆した球状粉末であることが好ましい。このようなシリコーンパウダーを用いることにより、優れた耐衝撃性を達成できる。さらに、分散性に優れているため、CTI値をより高くできる傾向にある。
本実施形態では、シリコーンパウダーは、その粒径が小さい方が好ましいが、平均粒径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが一層好ましく、0.5μm以下であることがより一層好ましい。前記シリコーンパウダーの粒径の下限は、例えば、0.01μm以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物がシリコーンパウダーを含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、CTI値がより高くなる傾向にある。また、前記シリコーンパウダーの含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的特性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、シリコーンパウダーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<ガラス繊維>>
本実施形態の樹脂組成物は、ガラス繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維を含むことにより、本実施形態の樹脂組成物から形成される成形体の機械的強度を向上させることができる。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる成形体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
ガラス繊維は、本実施形態の樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
本実施形態の樹脂組成物がガラス繊維を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましく、45質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記ガラス繊維の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましく、75質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品外観が向上し、かつ、溶融樹脂の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、また、樹脂組成物中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、また、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、成形品外観が向上し、かつ、溶融樹脂の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ガラス繊維を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<着色剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤を含むことにより、成形体に色味を持たせることができる。着色剤は、有彩色着色剤であっても、無彩色着色剤であってもよい。着色剤は、顔料であっても、染料であってもよい。
有彩色着色剤としては、赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、緑色着色剤、オレンジ着色剤が挙げられる。また、2種以上の着色剤を混合して、赤色とした赤色着色剤組成物等であってもよい。本実施形態では、オレンジ着色剤および/またはオレンジ着色剤組成物を含むことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が有彩色着色剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、着色性がより向上する傾向にある。また、前記有彩色着色剤の含有量の上限値は、1質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にある。
無彩色着色剤としては、カーボンブラックが例示される。カーボンブラックを含むことにより、耐候性がより向上する傾向にある。カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒径には特に制限はないが、5~60nm程度であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が無彩色着色剤(好ましくはカーボンブラック)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形体の耐候性もより向上する傾向にある。また、前記無彩色着色剤の含有量の上限値は、4.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、無彩色着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
なお、カーボンブラックは、予めカーボンブラックを高濃度で含有するマスターバッチとして配合することが、樹脂組成物の製造時のハンドリング性、樹脂組成物における均一分散性を高める上で好ましい。この場合、カーボンブラックのマスターバッチに用いる樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよく、これ以外の樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、スチレン系樹脂(例えばAS樹脂等)、ポリエチレン樹脂等であってもよい。カーボンブラックマスターバッチのカーボンブラック濃度は、通常10~60質量%程度である。
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤は、公知の離型剤を広く用いることができ、脂肪族カルボン酸のエステル化物、脂肪酸金属塩、ケトンワックス、パラフィンワックスおよびポリオレフィンワックスが好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2013-007058号公報の段落0115~0120の記載、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤をポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上含むことが好ましく、0.08質量部以上含むことがより好ましく、0.2質量部以上含むことがさらに好ましい。また、前記離型剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<安定剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を含んでいてもよい。安定剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系安定剤等が例示される。これらの中でも、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。また、ヒンダードフェノール系化合物とリン系化合物を併用することも好ましい。
安定剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載、特開2020-147662号公報の段落0051~0060を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤をポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上含むことが好ましく、0.10質量部以上含むことがより好ましい。また、前記安定剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<他の成分>>
本実施形態の樹脂組成物は、上述した成分以外の樹脂成分や添加剤を含んでいてもよい。
他の樹脂成分としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。
他の添加剤としては、流動助剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤が例示される。
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、機械的強度に優れている。本実施形態の樹脂組成物は、得られる成形体に求められる性能に応じた機械的強度が高く維持されるように調整される。
例えば、本実施形態の樹脂組成物は、引張弾性率が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO多目的試験片に成形し、ISO527に準拠した引張弾性率が2500MPa以上であることが好ましく、8000MPa以上であることがより好ましい。前記引張弾性率の上限は、特に定めるものではないが、例えば、13000MPa以下であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、また、降伏応力が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO多目的試験片に成形し、ISO527に準拠した降伏応力が30MPa以上であることが好ましい。また、前記降伏応力の上限値は、特に定めるものではないが、例えば、100MPa以下であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、また、破壊呼び歪みが高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO多目的試験片に成形し、ISO527に準拠した破壊呼び歪みが、30%以上であることが好ましい。また、前記破壊呼び歪みの上限値は、特に定めるものではないが、例えば、250%以下であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、また、破壊応力が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO多目的試験片に成形し、ISO527に準拠した破壊応力が、60MPa以上であることが好ましい。また、前記破壊応力の上限値は、特に定めるものではないが、例えば、200MPa以下であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、また、破壊歪みが高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を4mm厚さのISO多目的試験片に成形し、ISO527に準拠した破壊歪みが、1%以上であることが好ましい。また、前記破壊歪みの上限値は、特に定めるものではないが、例えば、5%以下であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、また、曲げ特性が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物をISO引張り試験片(4mm厚)に成形し、ISO178に準拠した曲げ強さが、50MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。また、前記曲げ強さの上限値は、特に定めるものではないが、例えば、250MPa以下であることが実際的である。
また、本実施形態の樹脂組成物をISO引張り試験片(4mm厚)に成形し、ISO178に準拠した曲げ弾性率が、1000MPa以上であることが好ましく、2000MPa以上であることがより好ましく、5000MPa以上であることがさらに好ましく、8000MPa以上であることが一層好ましい。また、前記曲げ強さの上限値は、特に定めるものではないが、例えば、15000MPa以下であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、耐衝撃性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物をISO引張り試験片(4mm厚)に成形し、ISO179に準拠したノッチ無シャルピー衝撃強さが、10kJ/m2以上であることが好ましく、50kJ/m2以上であることがより好ましい。上限値は、NB(非破壊)である。
また、本実施形態の樹脂組成物をISO引張り試験片(4mm厚)に成形し、ISO179に準拠したノッチ有シャルピー衝撃強さが、4kJ/m2以上であることが好ましい。上限値は、NB(非破壊)が理想であるが、15kJ/m2以下であっても十分に要求性能を満たす。
<樹脂組成物の製造>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の樹脂組成物の製造方法によって製造でき、通常、各成分を混合し溶融混練して製造することができる。具体的には、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、必要により配合する各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本実施形態の樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって所望の樹脂組成物を製造することもできる。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると樹脂の劣化が進んだり、分解ガスが発生しやすくなる恐れがあるため、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の造形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
<成形体>
本実施形態の成形体は、上述の通り、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形体であって、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である。このような成形体は、機械的強度を維持しつつ、沿面距離を短くすることができる。そのため、金属部材の周囲を被覆することにより、金属部材の絶縁体として好ましく用いられる。
本実施形態の成形体は、上述の通り、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である。このように従来よりも格段に高いCTI値とすることにより、沿面距離を短くすることができる。CTI値は、825V以上であることが好ましく、850V以上であることがより好ましく、875V以上であることがさらに好ましく、900V以上であることが一層好ましく、925V以上であることがより一層好ましく、950V以上であることがさらに一層好ましく、975V以上であることがよりさらに一層好ましい。前記CTI値の上限値は、特に制限はないが、1200V以下、さらには、1100V以下、特には、1000V以下であっても十分に要求性能を満たすものである。
CTI値は、後述する実施例の記載に従って測定される。
また、本実施形態の樹脂組成物のCTI値も、実施例に記載の方法に従って測定したときのCTI値が上記範囲を満たすことが好ましい。
<金属樹脂複合体>
本実施形態の金属樹脂複合体は、金属部材と、金属部材に接している本実施形態の成形体とを有する。ここでの接しているとは、金属部材の少なくとも一部と本実施形態の成形体の少なくとも一部とが接していることを意味する。本実施形態の金属樹脂複合体は、金属部材の一部を被覆していることが好ましい。また、本実施形態の金属樹脂複合体は、金属部材と接している本実施形態の成形体のうち、最薄肉部の厚さが、3mm以下であっても、さらには1.5mm以下であっても、十分に絶縁性能を有するものとすることができる。前記最薄肉部の厚さの下限値は、例えば、0.1mm以上である。金属部材は、例えば、800~900Vの電圧が印加されるものであってもよく、さらには、900~1000Vの電圧が印加されるものであってもよい。そのため、本実施形態の金属樹脂複合体は、コネクタまたはスイッチとして好ましく用いられる。その他、ブレーカー、リレー、コイル、トランス、ランプ、センサー等にも好ましく用いられる。
前記金属樹脂複合体の成形方法は、公知の方法を採用できるが、インサート成形によるものであることが好ましい。すなわち、本実施形態の金属樹脂複合体は、インサート成形体であることが好ましい。インサート成形においても、射出率を調整することにより、CTI値の高い成形体が得られる。
<成形体の製造方法>
本実施形態の成形体の製造方法は、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である成形体の製造方法であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物を、射出率18~62cm3/secで射出成形することを含む。このような射出率とすることにより、例えば、ガラス繊維を含む樹脂組成物では、ガラス繊維の配向が抑制され、また、エラストマーを含む樹脂組成物では、エラストマーの変形が抑制され、さらにまた、他の添加剤成分を含む樹脂組成物では、添加剤が効果的に分散され、CTI値がより高い成形体が得られる。
射出率とは、単位時間あたりに射出される溶融樹脂の体積を示す値であり、スクリュー内直径をXcm、射出速度(スクリューの最大前進速度)をYcm/secとしたとき、(X/2)2×π×Yで表される値である(単位:cm3/sec)。射出率は、18cm3/sec以上であることが好ましい。また、射出率は、62cm3/sec以下であることが好ましい。
また、射出速度は、3cm/sec以上であることが好ましく、また、10cm/sec以下であることが好ましい。
さらに、シリンダー内直径は、1.0cm以上であることが好ましく、1.8cm以上であることがより好ましい。また、射出率は、5.0cm以下であることが好ましく、3.8cm以下であることがより好ましい。
樹脂組成物の詳細は、上述の本実施形態の樹脂組成物の記載を参酌できる。
本実施形態の成形体は、金属部材に対して、インサート成形(インサート射出成形)によって成形してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.原料
以下の原料を用いた。
Figure 2022078491000002
Figure 2022078491000003
2.実施例1~4、比較例1、2
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
表3、表4に示すように、各成分をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、噛み合い型同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX-30α」、スクリュー径32mm、L/D=42)にメインフィード口から供給した。第一混錬部のバレル設定温度を260℃に設定して可塑化し、ガラス繊維は表3、表4に示す割合でサイドフィーダーより供給し、ガラス繊維を添加した後のバレル温度を250℃に設定し、吐出量40kg/h、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混錬し、ノズル数4穴(円形(φ4mm)、長さ1.5cm)の条件でストランドとして押出した。押出したストランドを水槽に導入して冷却し、ペレタイザーに挿入してカットすることで樹脂組成物(ペレット)を得た。
尚、表3および表4における各成分の配合量は、質量部で示している。
<CTI値>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度(スクリューの最大前進速度を意味する、以下同じ。)65mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:40cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、試験片(厚さ3mm、大きさ60mm×60mmの平板)を製造した。
得られた試験片について、国際規格IEC60112に定める試験法によりCTIを決定した。CTIは固体電気絶縁材料の表面に電界が加わった状態で湿潤汚染されたとき、100Vから25V刻みの電圧におけるトラッキングに対する対抗性を示すものであり、数値が高いほど良好であることを意味する。
単位は、Vで示した。
<引張弾性率>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO多目的試験片を製造した。
得られたISO多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して、引張弾性率を測定した。
単位は、MPaで示した。
<降伏応力>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO多目的試験片を製造した。
得られたISO多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して、降伏応力を測定した。
単位は、MPaで示した。
<破壊呼び歪み>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO多目的試験片を製造した。
得られたISO多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して、破壊呼び歪みを測定した。
単位は、%で示した。
<破壊応力>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO多目的試験片を製造した。
得られたISO多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して、破壊応力を測定した。
単位は、MPaで示した。
<破壊歪み>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO多目的試験片を製造した。
得られたISO多目的試験片を用いて、ISO527に準拠して、破壊歪みを測定した。
単位は、%で示した。
<曲げ特性>
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO引張り試験片を製造した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
<シャルピー衝撃強さ(ノッチ無、ノッチ有)
得られた樹脂組成物(ペレット)から、射出成形機(住友重機械工業社製 型式SE50)を用い、射出成形速度30mm/sec、スクリュー径28mm(射出率:18.5cm3/sec)、樹脂温度260℃、金型温度80℃で、4mm厚さのISO引張り試験片を製造した。
ISO179に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、シャルピー衝撃強さ(ノッチ無およびノッチ有)の測定を行った。尚、NBは、非破壊を意味する。
単位は、kJ/m2で示した。
Figure 2022078491000004
Figure 2022078491000005

Claims (17)

  1. ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物から形成された成形体であって、
    IEC60112に従ったCTI値が800V以上である、成形体。
  2. 前記樹脂組成物を射出率18~62cm3/secで射出成形した成形体である、請求項1に記載の成形体。
  3. 前記樹脂組成物が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1または2に記載の成形体。
  4. 前記樹脂組成物が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とホウ酸亜鉛を含む、請求項1または2に記載の成形体。
  5. 前記樹脂組成物が、ホスフィン酸金属塩を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形体。
  6. 前記樹脂組成物が、タルクおよび/またはシリコーンパウダーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の成形体。
  7. 前記樹脂組成物が、ガラス繊維および/またはエラストマーを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の成形体。
  8. 前記樹脂組成物が、着色剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の成形体。
  9. 前記樹脂組成物が、オレンジ着色剤および/またはオレンジ着色剤組成物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の成形体。
  10. ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物を、射出率18~62cm3/secで射出成形することを含む、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である成形体の製造方法。
  11. 前記成形体が、請求項1~9のいずれか1項に記載の成形体である、請求項10に記載の成形体の製造方法。
  12. 金属部材と、前記金属部材に接している、請求項1~9のいずれか1項に記載の成形体とを有する、金属樹脂複合体。
  13. 前記金属樹脂複合体がインサート成形体である、請求項12に記載の金属樹脂複合体。
  14. コネクタまたはスイッチである、請求項12または13に記載の金属樹脂複合体。
  15. ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物であって、IEC60112に従ったCTI値が800V以上である、樹脂組成物。
  16. コネクタカバーまたはスイッチカバー用である、請求項15に記載の樹脂組成物。
  17. 前記樹脂組成物が、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、ホウ酸亜鉛、ホスフィン酸金属塩、タルク、シリコーンパウダー、ガラス繊維、エラストマー、および、着色剤の少なくとも1種を含む、請求項15または16に記載の樹脂組成物。
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