<第1実施形態>
(ダイカストマシンによる成形の概要)
図1は、第1実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。図1、又は一部に断面を含む他の図においては、便宜上、必ずしも同一の平面内に位置しない2以上の断面が共に示されることがある。図1の紙面上下方向は、例えば、鉛直方向である。
ダイカストマシン1は、例えば、金型101の内部(キャビティ107)に溶融状態の成形材料を射出(充填)することによって、凝固した成形材料からなる製品(成形品、ダイカスト品)を製造する装置として構成されている。なお、図1では、キャビティ107の内面の一部(後述する移動型105によって構成される部分)は、2点鎖線で示されている。
成形材料は、例えば、アルミニウム等の金属である。溶融状態の金属は、溶湯と呼ばれることがある。なお、溶融状態の成形材料に代えて、固液共存状態(半凝固状態又は半溶融状態)の成形材料がキャビティ107に射出されてもよい。
金型101は、例えば、固定型103と、固定型103と対向する移動型105とを有している。図1では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面が1種類のハッチングで示されている。ただし、これらの金型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。固定型103は、移動しない型である。移動型105は、固定型103との対向方向において移動する型であり、実線で示された位置と、2点鎖線で示された位置との間を移動可能である。固定型103及び移動型105の対向方向は、例えば、水平方向である。
移動型105が型閉方向(移動型105に対して固定型103の側となる方向。以下、同様。)へ移動することによって、移動型105を固定型103に近接させる型閉じがなされる。型閉じは、一般には、型接触(移動型105の固定型103への当接)によって完了する。型接触によって、固定型103と移動型105との間にキャビティ107が構成される。
型閉じ後、金型101には、固定型103及び移動型105をその対向方向に締め付ける力(型締力)が付与される。型締め後、キャビティ107に成形材料が射出される。金型101は、キャビティ107に射出された溶湯から金型101を開く方向の圧力が付与される。しかし、型締力が付与されていることから、金型101は、閉じられた状態が維持される。
キャビティ107に射出された成形材料は、凝固して成形品となる。その後、移動型105が型開方向(移動型105に対して固定型103とは反対側の方向。以下、同様。)へ移動することによって、移動型105を固定型103から離反させる型開きがなされる。これにより、成形品が取り出し可能となる。なお、型閉方向及び型開方向の組み合わせを型開閉方向ということがある。
成形品を取り出すために型開きを行ったとき、成形品は、固定型103又は移動型105の一方の型から離れ、他方の型に残る。その後、成形品は、前記他方の型に挿通されている押出ピン(後述)によって前記他方の型から前記一方の型の側へ押し出される。成形品は、移動型105及び固定型103の形状等によって、型開きのときに固定型103及び移動型105のいずれに残るかが規定される。本実施形態に係るダイカストマシン1では、型開きによって、成形品が移動型105に残ることが想定されている。
金型101は、中子109(可動中子)を含んでいてもよい。中子109は、型開閉方向に交差(例えば直交)する方向(図示の例では上下方向)に移動可能となっている。中子109は、型閉じの前、又は型閉じに並行して、固定型103と移動型105との間へ向かう方向へ移動し、ひいては、一部がキャビティ107内に位置する。また、中子109は、型開きに並行して、又は型開き後、かつ成形品の押出し前に、固定型103と移動型105との間から退避する方向へ移動し、ひいては、成形品から引き抜かれる。このような中子109によって、例えば、成形品に、型開閉方向に交差する方向に開口する凹部又は貫通孔が形成される。
(ダイカストマシンの構成の概要)
ダイカストマシン1は、機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の制御を行う制御装置5とを有している。マシン本体3は、例えば、以下の装置を有している。金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置7。キャビティ107に溶湯を射出する射出装置9。溶湯が凝固することによって形成された成形品を移動型105から押し出す押出装置11。中子109を駆動する中子装置13。
マシン本体3の構成及び動作は、押出装置11の構成及び動作を除いて、公知の構成及び動作を含む種々の構成及び動作とされてよい。ただし、本実施形態の説明では、公知の構成及び動作とされてよい構成及び動作に関して、新規な構成及び/又は動作が例示されることがある。例えば、中子装置13の構成及び動作については、新規なものが例示される。また、押出装置11及び/又は中子装置13に作動液(例えば油)を供給する液圧装置の構成(特にその配置)について新規なものが例示される。
以下では、まず、型締装置7の構成、射出装置9の構成、及び制御装置5の構成について例示する。次に、押出装置11の構成について述べる。次に、新規な中子装置13の構成について述べる。次に、押出装置11及び中子装置13に作動液を供給する液圧装置の構成について述べる。その後、型締装置7及び押出装置11による成形品の押出しの動作について説明する。以下の説明では、公知の構成及び動作と同様とされてよい構成及び動作の説明については、適宜に省略する。
なお、押出装置11及び他の装置(型締装置7及び射出装置9等)に共用される構成(例えば制御装置5及び後述する液圧装置67)は、ダイカストマシン1の一部として捉えられてよいし、押出装置11の一部として捉えられてもよい。
(型締装置)
型締装置7は、例えば、ベース14と、ベース14上にて互いに対向している固定ダイプレート15及び移動ダイプレート17と、当該2つのダイプレートに架け渡される1以上(通常は複数。例えば4本)のタイバー19とを有している。
固定ダイプレート15は、ベース14に固定されており、移動ダイプレート17に対向する面に固定型103を保持する。移動ダイプレート17は、ベース14上にて固定ダイプレート15との対向方向(型開閉方向)に移動可能とされており、固定ダイプレート15に対向する面に移動型105を保持する。タイバー19は、少なくとも型締めのときにおいて、固定ダイプレート15及び移動ダイプレート17の一方のダイプレート(図示の例では固定ダイプレート15)に固定され、また、他方のダイプレート(図示の例では移動ダイプレート17)に対して軸方向に相対移動可能に挿通される。
移動ダイプレート17の型開閉方向の移動によって金型101の型開閉がなされる。タイバー19は、金型101の型閉じ(型接触)がなされた状態で、上記他方のダイプレート(移動ダイプレート17)の側の部分が上記他方のダイプレートに対して前記一方のダイプレートとは反対側(図示の例では紙面左側)へ引っ張られる。これにより、タイバー19の伸張量に応じた型締力が得られる。
上記のような型開閉及び型締めを実現するための型締装置7の駆動部は、種々の構成とされてよい。図示の例では、駆動部として、電動式かつトグル式の型締駆動部21が例示されている。型締駆動部21は、例えば、ベース14上にて移動ダイプレート17の背後(固定ダイプレート15とは反対側)に位置するリンクハウジング23と、リンクハウジング23と移動ダイプレート17とに連結されているリンク機構25と、リンク機構25に駆動力を付与する型締電動機27とを有している。
なお、型締電動機27に代えて、又は加えて、リンク機構25に駆動力を付与する液圧シリンダ(例えば油圧シリンダ)が設けられてもよい。すなわち、トグル式(又は他の方式)の型締装置7の駆動部は、液圧式のものであってもよいし、電動式と液圧式とを組み合わせたハイブリッド式のものであってもよい。
また、型締装置7の駆動部は、トグル式以外のものとされてもよい。例えば、型締装置は、型開閉用の駆動部と、型締用の駆動部とを別個に有しているものであってもよい。そのような態様において、型開閉用の駆動部は、例えば、液圧シリンダとされてもよいし、回転式の電動機及び当該電動機の回転を直線運動に変換する変換機構(例えばねじ機構)を有するものとされてもよい。型締用の駆動部は、例えば、タイバー19に固定されたピストンを有する型締シリンダとされてよい。
(射出装置)
射出装置9は、例えば、金型101内に通じるスリーブ35と、スリーブ35内を摺動可能なプランジャ37と、プランジャ37を駆動する射出駆動部39とを有している。成形材料がスリーブ35内に配置された状態で、プランジャ37が金型101に向かって移動することによって、成形材料が金型101内に押し出される(射出される)。なお、スリーブ35及びプランジャ37は、消耗品として捉えることができるから、射出駆動部39のみを射出装置として捉えてもよい。
図示の例では、射出装置9は、いわゆるコールドチャンバマシンに対応したものとなっている。すなわち、成形材料は、不図示の供給装置(給湯装置)によってスリーブ35の上面に開口する供給口35aからスリーブ35内に供給される。ただし、射出装置9は、いわゆるホットチャンバマシンに対応する構成とされても構わない。射出駆動部39は、液圧式(例えば油圧式)、電動式、又は液圧式と電動式とを組み合わせたハイブリッド式とされてよい。
(制御装置)
制御装置5は、例えば、特に図示しないが、コンピュータを含んで構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び外部記憶装置を含んで構成されてよい。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算(制御を含む)を行う種々の機能部が構築される。また、制御装置5は、一定の動作を実行する論理回路を含んでいてもよいし、電源回路を含んでいてもよいし、ドライバを含んで概念されてもよい。制御装置5は、ハードウェア的に1カ所に纏められていてもよいし、複数個所に分散されていてもよい。
制御装置5の制御によって、例えば、成形品を作製するための既述の一連の動作(成形サイクル)が繰り返し行われる。確認的に記載すると、成形サイクルは、型締装置7による型開閉及び型締め、射出装置9による射出、押出装置11による押出し、中子装置13による中子の出し入れを含む。本実施形態で説明するダイカストマシン1の動作は、特に断りがない限り、また、技術常識に照らして特異でない限り、制御装置5によって制御されると解釈されてよい。
(押出装置)
図2は、金型101及びその周辺の要部構成を示す模式図である。当該模式図は、一部に断面図を含む側面図である。図3は、移動ダイプレート17及びその周辺の要部構成を示す模式図である。当該模式図は、一部に断面図を含む上面図である。
移動型105は、ダイベース105aを有している(本開示においては、ダイベース105aは、移動型105の一部であるものとして言及する。)。ダイベース105aは、移動型105の移動ダイプレート17に対する取付けに寄与するとともに、押出装置11の一部を収容するための空間105sを構成することに寄与している。ダイベース105aの構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。例えば、ダイベース105aは、概略、中空の直方体状に構成されており、移動型105の本体の側(紙面右側)が開放されている。空間105sの移動ダイプレート17側の面は、図示のように移動型105の一部によって構成されていてもよいし、図示とは異なり、移動ダイプレート17の一部によって構成されていてもよい。
押出装置11は、例えば、以下の構成を有している。成形品を押すための複数の押出ピン41。複数の押出ピン41を保持するための押出板43。押出ピン41の移動に際して押出板43を案内するための複数のガイドピン45。押出板43を介して押出ピン41に駆動力を伝達するために押出板43に連結されている複数の押出ロッド47。押出ロッド47に駆動力を伝達するために押出ロッド47に連結されている可動部材49。押出ピン41を駆動する駆動力を生じ、当該駆動力を可動部材49に付与する液圧駆動部51及び電動駆動部61(図3)。
液圧駆動部51及び電動駆動部61が設けられていることから理解されるように、押出装置11は、電動式と液圧式とを組み合わせたハイブリッド式のものとされている。上記の構成要素の一部(例えば押出ピン41及び押出板43)は、金型101の交換に伴って交換されることから、当該一部の構成要素を除いて押出装置11が定義されてもよい。
押出ピン41は、例えば、概略、後端にフランジ部を有する軸状部材である。押出ピン41は、移動型105(より厳密にはダイベース105aよりも紙面右側の部分)に対して型開閉方向に挿通されており、移動型105に対してその挿通方向に相対移動可能である。複数の押出ピン41は、金型101内の形状(キャビティ107だけでなく、ランナ等を含む空間の形状)等に応じて適宜な位置及び本数で設けられてよい。なお、理論上は、押出ピン41は、1本とすることも可能である。
押出ピン41は、例えば、キャビティ107に成形材料が射出されるとき、その先端面が移動型105のキャビティ107を構成する内面に一致するように配置される。そして、成形材料が凝固して型開きがなされると、移動型105の内面から突出するように固定型103側へ駆動される。これにより、成形品が押し出される。
なお、押出ピン41は、キャビティ107に成形材料が射出されるとき、移動型105の内面よりも内側に位置してもよい。そして、押出ピン41は、成形材料が凝固する過程においてキャビティ107に向かって駆動されることによって、スクイズピンのように成形材料の局部加圧に寄与してもよい。
押出ピン41は、例えば、フルストロークで駆動されてよい。すなわち、成形材料が射出されるとき、押出ピン41は、後退限(型開方向の駆動限)に位置してよく、成形品を押し出すとき、押出ピン41は、前進限(型閉方向の駆動限)まで駆動されてよい。駆動限は、物理的に移動が制限される位置である(以下、特に断りがない限り、同様。)。ただし、押出ピン41は、フルストロークで駆動されなくてもよい。押出ピン41の駆動限は、適宜に規定されてよく、後述のように、押出板43、ピストンロッド59(ピストン57)及び/又は電動駆動部61の駆動限によって規定されてよい。
押出板43は、例えば、前側板43aと、前側板43aに対して後方に重ねられて固定されている後側板43bとを有している。押出ピン41は、例えば、前側板43aに挿通されるとともに、後端に設けられたフランジ部が前側板43aと後側板43bとに挟まれることにより、押出板43に固定されている。なお、押出板43は、後側板43bの前側板43aとは反対側に、後側板43bに重なり、押出ロッド47と固定される不図示の板を更に有する構成であってもよい。押出板43は移動型105の空間105sに収容されている。複数の押出ピン41は、押出板43に共通して固定されていることから、押出板43の移動型105に対する相対移動に伴って、共に移動型105に対して相対移動する。
押出板43は、移動型105に対して不動の適宜なストッパ(例えば移動型105の空間105sを構成する内面のうち紙面右側の面)に対する型閉方向への当接によって型閉方向への駆動限が規定されてよい。この駆動限は、押出ピン41の前進限を規定してもよいし、規定しなくてもよい。また、押出板43は、移動型105に対して不動の適宜なストッパ(例えば移動ダイプレート17の移動型105の側の面)に対する型開方向への当接によって型開方向への駆動限が規定されてよい。この駆動限は、押出ピン41の後退限を規定してもよいし、規定しなくてもよい。
ガイドピン45は、例えば、その配置位置及び具体的な寸法を除いて、概略、押出ピン41と同様の構成である。すなわち、ガイドピン45の概略形状は、後端にフランジ部を有する軸状である。ガイドピン45は、移動型105(ダイベース105aよりも前側の部分)に対して型開閉方向に挿通されており、移動型105に対してその挿通方向に相対移動可能である。また、ガイドピン45は、例えば、押出ピン41と同様にして、後端のフランジ部が押出板43に固定されている。複数のガイドピン45は、例えば、押出ピン41とは異なり、型開閉方向に見たときに、キャビティ107の外側に位置している。複数のガイドピン45の位置及び本数は適宜に設定されてよい。例えば、ガイドピン45は、移動型105の4隅に位置している。なお、理論上は、ガイドピン45は、省略可能であり、また、1本とされることも可能である。
押出ロッド47は、移動ダイプレート17に型開閉方向に挿通されており、移動ダイプレート17に対して型開閉方向に移動可能である。押出ロッド47の先端(紙面右側の端部)は、押出板43に固定されている。従って、押出ロッド47に対して軸方向の駆動力を付与することによって、押出板43を前後方向に移動させることができる。複数の押出ロッド47は、押出板43の形状及び大きさ等に応じて適宜な位置及び本数で設けられてよい。例えば、押出ロッド47は、押出板43の4隅に位置している。なお、理論上は、押出ロッド47は、1本とされることも可能である。また、押出ロッド47と押出板43との固定方法は公知の方法を含む種々の方法とされてよい。
可動部材49は、移動ダイプレート17の背面(固定ダイプレート15とは反対側)に対して対向するように配置され、押出ロッド47に連結されている。従って、可動部材49に型開閉方向の駆動力を付与することによって、押出ロッド47を型開閉方向に移動させることができる。可動部材49の形状及び寸法等は、液圧駆動部51及び電動駆動部61との連結態様等に応じて適宜に設定されてよい。図示の例では、可動部材49は、概略平板状であり、また、図3に示すように、移動ダイプレート17の幅よりも広い幅を有している。可動部材49と押出ロッド47との固定方法は公知の方法を含む種々の方法とされてよい。
可動部材49は、当該可動部材49を型開閉方向に案内するガイド53によって支持されてよい。ガイド53は、例えば、移動ダイプレート17に固定されており、型開方向(移動型105とは反対側)に延びる軸状である。そして、可動部材49は、ガイド53が挿通されることによって、型開閉方向の移動のみが許容され、また、その荷重が支持されている。なお、押出ロッド47が可動部材49の支持及び案内を担ってもよい。また、可動部材49は、ベース14に設けられたガイドに支持されてもよい。別の観点では、ガイド53は省略可能である。
ガイド53の本数及び配置は、適宜に設定されてよい。図示の例では、4本のガイド53が設けられている。4本のガイド53は、例えば、図3に示すように、型開閉方向及び上下方向に平行な仮想平面を対称面として面対称に配置されている。また、例えば、図2に示すように、4本のガイド53は、型開閉方向及び水平方向に平行な仮想平面を対称面として面対称に配置されている。また、上下方向に平行な対称面の位置及び/又は水平方向に平行な対称面の位置には、例えば、可動部材49の重心及び/又は液圧駆動部51の中心(例えば後述するピストンロッド59の軸心。以下、同様。)が位置している。なお、ガイド53の本数は、1本、2本、3本又は5本以上であってもよい。4本以外の本数のガイド53は上記と同様に面対称に配置されてよい。
(押出装置の液圧駆動部)
液圧駆動部51は、液圧シリンダを有している。なお、実施形態の説明では、液圧駆動部51の語は、この液圧シリンダ(押出シリンダ)を指す用語として用いられることがある。液圧駆動部51は、例えば、シリンダ部材55と、シリンダ部材55内を軸方向に摺動可能なピストン57と、シリンダ部材55の内部から外部へ延び出ているピストンロッド59とを有している。
シリンダ部材55の内部は、ピストン57によって、ピストンロッド59が延び出る側のロッド側室55rと、その反対側のヘッド側室55hとに区画されている(2つのシリンダ室に区画されている。)。その2つのシリンダ室の一方のシリンダ室に作動液(例えば油)を供給することによって、ピストン57がシリンダ部材55に対して他方のシリンダ室の側へ相対移動する。例えば、図示の例では、ロッド側室55rに作動液を供給することによって、ピストン57は、シリンダ部材55に対してヘッド側室55hの側へ相対移動する。この相対移動を移動ダイプレート17と可動部材49とに伝えることによって、押出ピン41を移動型105に対して相対移動させることができる。
液圧駆動部51は、一般的な押出装置の液圧シリンダとは異なり、2つのシリンダ室のうち他方(図示の例ではヘッド側室55h)は、大気開放されている。すなわち、液圧駆動部51は、ピストン57を一方向(図示の例ではロッド側室55rからヘッド側室55hへの方向)にのみ駆動力を生じる構成とされている。これは、後述するように、本実施形態では、液圧駆動部51は、押出ピン41を移動型105に対して固定型103の側へ移動させることにのみ利用され、反対側への移動には利用されないこと、及びピストン57の他方向(図示の例ではヘッド側室55hからロッド側室55rへの方向)への移動は、電動駆動部61からの駆動力によってなされることからである。
大気開放のための構成は、適宜なものとされてよい。図示の例では、シリンダ部材55は、軸方向の両側の端面のうち、大気開放されるシリンダ室(図示の例ではヘッド側室55h)の側の端面を有していない。この他、端面は構成されつつも、適宜な位置に開口(ポート)が形成されてもよい。
なお、液圧駆動部は、本実施形態とは異なり、2つのシリンダ室の双方に液体が満たされる構成であっても構わない。この場合、2つのシリンダ室は、いずれも、作動液が供給されて(圧力が付与されて)ピストン57の駆動に供されてよい。又は、一方のシリンダ室(本実施形態ではヘッド側室55h)は、単にタンクの一部又は全部の代わりとされるだけであってもよい。また、本実施形態のように大気開放されているシリンダ室(ヘッド側室55h)は、ピストン57の潤滑等がなされるように、当該シリンダ室に作動液が満たされない程度の量で作動液を蓄えていてもよい。
液圧駆動部51は、一般的な押出装置の液圧シリンダとは異なり、シリンダ部材55のロッド側室55rの側の端部は開放されており、可動部材49によって塞がれている。すなわち、液圧シリンダ(別の観点では液圧駆動部51)は、可動部材49の一部を含んで構成されている。ただし、シリンダ部材55自体が可動部材49とは別にロッド側室55rの側の端部を塞ぐ部位を有していても構わない。
液圧駆動部51は、一般的な押出装置の液圧シリンダとは異なり、ピストン57とピストンロッド59とが固定されていない。すなわち、ピストン57とピストンロッド59とは、軸方向における相対移動が許容されている。また、ピストン57は、ピストンロッド59に対して軸方向の一方側へ相対移動して所定の相対位置に到達すると、ピストンロッド59に対する上記一方側への更なる相対移動が規制される。上記一方側は、押出ピン41を移動型105に対して固定型103の側へ移動させるために作動液が供給されるシリンダ室(図示の例ではロッド側室55r)から残りのシリンダ室(図示の例ではヘッド側室55h)への方向である。以下の説明では、前者のシリンダ室を第1シリンダ室ということがあり、後者のシリンダ室を第2シリンダ室ということがある。
具体的には、例えば、ピストンロッド59は、ピストン57に対して軸方向に挿通されているロッド本体59aと、ロッド本体59aに固定されている係合部59bとを有している。ロッド本体59aは、ピストン57に対して軸方向に摺動可能である。係合部59bは、第2シリンダ室(図示の例ではヘッド側室55h)に位置し、ピストン57に対してヘッド側室55hから第1シリンダ室(図示の例ではロッド側室55r)への方向へ係合可能である。従って、係合部59bが係合していない状態において、ピストン57とピストンロッド59との相対移動が許容される。係合部59bがピストン57に係合することによって、ピストン57のピストンロッド59に対するヘッド側室55hの側への相対移動が規制される。
このような構成により、例えば、ロッド側室55rに作動液を供給してピストン57をヘッド側室55hの側へ移動させたときに、ピストン57によってピストンロッド59をヘッド側室55hの側へ移動させることができる。また、例えば、ピストンロッド59が外部からの駆動力によってヘッド側室55hの側へ移動するときに、ピストン57を停止させたままとすることができる。この停止により、例えば、ピストン57の移動に伴って容積が拡大するロッド側室55rへの作動液の補給を不要とすることができる。
既述の説明から理解されるように、ロッド側室55rは密閉される。密閉性を向上させるために、適宜な位置にOリング等のパッキンが設けられてよい。例えば、ピストン57とシリンダ部材55との間、ピストン57とピストンロッド59との間、及びピストンロッド59と可動部材49との間には、それぞれパッキンが介在してよい。なお、例えば、ピストン57がシリンダ部材55に摺動するというとき、両者の間にパッキンが介在することによって両者は直接に当接していなくてもよい。他の部材についても同様である。
液圧駆動部51(液圧シリンダ)は、軸方向を型開閉方向に向けて配置される。シリンダ部材55及びピストンロッド59の一方の部材(図示の例ではピストンロッド59)は、移動ダイプレート17に固定される。他方の部材(図示の例ではシリンダ部材55)は、可動部材49に固定される。従って、ピストンロッド59のシリンダ部材55に対する軸方向の一方側(以下において当該一方側を第1方向と呼称することがある。)への相対移動によって、可動部材49が移動ダイプレート17に対して型閉方向へ相対移動し、ひいては、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ相対移動する。
液圧駆動部51は、第1シリンダ室(図示の例ではロッド側室55r)から第2シリンダ室(図示の例ではヘッド側室55h)への方向が上記の第1方向となるように構成及び配置される。第1シリンダ室から第2シリンダ室への方向は、既述のように、ピストン57がピストンロッド59(係合部59b)に対して係合する方向である。従って、第1シリンダ室に作動液が供給されると、ピストン57が第2シリンダ室の側へ移動し、ひいては、ピストンロッド59が第1方向に移動する。このようにして、押出ピン41は、液圧駆動部51の駆動力によって固定型103の側へ駆動される。
上記のような動作を実現するための液圧駆動部51の位置及び向き等は種々可能である。
図示の例では、シリンダ部材55は、可動部材49に対して移動ダイプレート17とは反対側に配置され、可動部材49に対して固定されている。ピストンロッド59は、シリンダ部材55から可動部材49側(別の観点では型閉方向)へ延び出ており、可動部材49を貫通して移動ダイプレート17に固定されている。この構成では、上述の説明で括弧内に示したように、ロッド側室55rに作動液が供給されてピストン57がシリンダ部材55に対してヘッド側室55hの側(第1方向)へ相対移動することによって、可動部材49が移動ダイプレート17に対して型閉方向へ相対移動し、ひいては、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ相対移動する。
図示の例以外の液圧駆動部51の位置及び向き等として、特に図示しないが、例えば、以下の態様を例示できる。
液圧駆動部51の向き(紙面左右方向の向き)を図示の例のままとし、シリンダ部材55を可動部材49に対して移動ダイプレート17側に配置し、シリンダ部材55を可動部材49に固定し、ピストンロッド59を移動ダイプレート17に固定してもよい。この態様では、ロッド側室55rの紙面右側は、可動部材49に代えて、シリンダ部材55自体の部位によって塞がれる(作動液が満たされるシリンダ室の密閉に可動部材49を利用できない他の態様においても同様。)。この態様における第1方向は、図示の例と同じ型開方向(紙面左側)である。すなわち、ピストンロッド59がシリンダ部材55に対して型開方向へ相対移動することによって、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ相対移動する。この態様では、実施形態と同様に、ピストン57に対して紙面右側に位置するロッド側室55r(第1シリンダ室)に作動液が供給される。また、ピストンロッド59の係合部59bは、実施形態と同様に、ピストン57に対して紙面左側に位置するヘッド側室55h(第2シリンダ室)に位置する。
液圧駆動部51の向き(紙面左右方向の向き)を図示の例とは逆にして、シリンダ部材55を可動部材49に対して移動ダイプレート17側に配置し、シリンダ部材55を移動ダイプレート17に固定し、ピストンロッド59を可動部材49に固定してもよい。この態様では、第1方向は、図示の例とは逆に、型閉方向(紙面右側)である。すなわち、ピストンロッド59がシリンダ部材55に対して型閉方向へ相対移動することによって、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ相対移動する。この態様では、ピストン57に対して紙面左側(図示の例とは逆側)に位置するロッド側室55r(第1シリンダ室)に作動液が供給される。また、ピストンロッド59の係合部59bは、ピストン57に対して紙面右側(図示の例とは逆側)に位置するヘッド側室55h(第2シリンダ室)に位置する。
液圧駆動部51の向き(紙面左右方向の向き)を図示の例のままとし、シリンダ部材55を可動部材49に対して移動ダイプレート17とは反対側に配置し、シリンダ部材55を、可動部材49に挿通される、又は可動部材49の外側を経由する連結部材によって、移動ダイプレート17に固定し、ピストンロッド59を可動部材49に固定してもよい。この態様では、第1方向は、図示の例とは逆に、型閉方向(紙面右側)である。すなわち、ピストンロッド59がシリンダ部材55に対して型閉方向へ相対移動することによって、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ相対移動する。この態様では、ピストン57に対して紙面左側に位置するヘッド側室55h(第1シリンダ室)に作動液が供給される。ロッド側室55r(第2シリンダ室)は、実施形態とは異なり、大気開放されてよい。また、ピストンロッド59の係合部59bは、ピストン57に対して紙面右側に位置するロッド側室55rに位置する。別の観点では、係合部59bは、ピストンロッド59のうち、シリンダ部材55から延び出る側とは反対側の端部ではなく、ピストン57に挿通される部分と、シリンダ部材55から延び出ている部分との間に位置する。
なお、液圧駆動部51の配置及び向き等は、上記のとおり、種々可能であるが、以下の説明は、便宜上、図示の例における液圧駆動部51の配置及び向き等を前提として行われることがある。
液圧駆動部51は、ピストン57のシリンダ部材55に対するロッド側室55rの側への駆動限を規定するストッパ(例えば可動部材49のロッド側室55rを構成する面)、及び/又はピストン57のシリンダ部材55に対するヘッド側室55hの側への駆動限を規定するストッパ(不図示)を有していてもよいし、有していなくてもよい。有している場合において、これらの駆動限は、押出ピン41の前進限又は後退限を規定していてもよいし、規定していなくてもよい。別の観点では、ピストン57は、フルストロークで利用されてもよいし、利用されなくてもよい。
図示の例では、ピストン57がロッド側室55rの側への駆動限に位置するとき、押出ピン41は後退限に位置している。また、本実施形態では、後述の動作の説明から理解されるように、ピストン57とピストンロッド59との相対移動が許容されていることから、押出ピン41の前進限(固定型103の側への駆動限)は、ピストン57の駆動限によっては規定されない。
押出ピン41が前進するときのピストン57の駆動限(図示の例ではヘッド側室55hの側への駆動限)を規定するストッパが設けられ、ひいては、ピストン57のストロークが規定されている場合、当該ストロークは、例えば、押出ピン41のストローク(別の観点ではピストンロッド59のストローク及び/又は電動駆動部61のストローク)よりも短くされてよい。例えば、前者は、後者に対して、1/2以下、1/5以下又は1/10以下とされてよい。
(押出装置の電動駆動部)
押出装置11は、例えば、2つの電動駆動部61を有している。2つの電動駆動部61は、例えば、型開閉方向及び上下方向に平行な仮想平面を対称面として面対称に配置されている。その対称面の位置には、例えば、可動部材49の重心及び/又は液圧駆動部51の中心が位置している。また、上下方向において、2つの電動駆動部61の位置(より詳細には例えば可動部材49に駆動力を付与する位置の中心(後述するねじ軸63aの軸心))と、液圧駆動部51の中心とは、同じ高さに位置している。別の観点では、型開閉方向に見て、2つの電動駆動部61の可動部材49に対する連結位置は、液圧駆動部51の可動部材49に対する連結位置に対して点対称となっている。
2つの電動駆動部61の構成は、例えば、同一である。以下に述べる電動駆動部61の説明は、特に断りが無い限り、また、矛盾等が生じない限り、いずれの電動駆動部61の説明と捉えられてもよい。
電動駆動部61は、例えば、回転式の押出電動機62と、押出電動機62の回転運動を直線運動に変換する変換機構63とを有している。変換機構63の直線運動は、移動ダイプレート17に対して可動部材49を型開閉方向に相対移動させるように可動部材49に伝達される。これにより、押出ピン41が移動型105に対して型開閉方向に駆動される。
特に図示しないが、押出電動機62と変換機構63との間には、押出電動機62の回転を変換機構63に伝達する伝達機構が設けられてよい。伝達機構としては、例えば、歯車機構、巻掛け伝動機構(プーリ・ベルト機構又はスプロケット・チェーン機構)又はこれらの組み合わせを挙げることができる。伝達機構は、傘歯車を含む歯車機構のように、回転の向きを変化させるものであってもよい。
押出電動機62は、特に図示しないが、電機子又は界磁の一方を構成するステータと、電機子又は界磁の他方を構成するロータとを有している。ロータはステータに対して軸回りに回転する。押出電動機62の具体的な構成は、適宜なものとされてよい。例えば、押出電動機62は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。ブレーキを有していてもよいし、有していなくてもよい。押出電動機62は、オープンループにおいて設けられた定速電動機として機能するものであってもよいし、クローズドループにおいて設けられたサーボモータとして機能するものであってもよい。
押出電動機62の配置位置及び向き等は適宜に設定されてよい。押出電動機62の回転を変換機構63に伝達する伝達機構(プーリ・ベルト機構等)が設けられてよいことから明らかなように、押出電動機62の配置位置及び向き等は任意である。図示の例では、押出電動機62は、移動ダイプレート17に支持されている。その配置位置は、移動ダイプレート17の側方(側面)とされている。押出電動機62の向きは、出力軸(図示の例では後述するねじ軸63aと一体化されている。)が本体部分(ステータ)から延び出る方向が型開方向(紙面左側)となる向きとされている。押出電動機62は、変換機構63に対して同軸的に配置されており、伝達機構を介さずに、直接に回転を変換機構63に入力する。
特に図示しないが、図示の例とは異なり、押出電動機62は、移動ダイプレート17の上方(上面)に位置してもよいし、移動ダイプレート17の背後(背面)に位置してもよい。出力軸は、上方、下方、側方又は型閉方向に向けられてもよい。押出電動機62の回転を変換機構63に伝達する伝達機構が設けられる場合、押出電動機62の回転は、伝達機構によって適宜に変速(増速又は減速)されて伝達されてよい。また、押出電動機62(別の観点では電動駆動部61)は、移動ダイプレート17ではなく、可動部材49に支持されてもよい。この場合の押出電動機62の位置も任意である。
変換機構63は、図示の例では、ねじ機構(例えばボールねじ機構又はすべりねじ機構)によって構成されている。ねじ機構は、ねじ軸63aと、ねじ軸63aに螺合しているナット63bとを有している。ねじ軸63a及びナット63bの一方の部材(図示の例ではねじ軸63a)は、例えば、押出電動機62を支持する部材(図示の例では移動ダイプレート17)に対する軸方向(紙面左右方向)の移動が規制されるとともに、軸回りの回転が許容されている。ねじ軸63a及びナット63bの他方の部材(図示の例ではナット63b)は、例えば、押出電動機62を支持する部材(移動ダイプレート17)に対する軸方向の移動が許容されるとともに、軸回りの回転が規制されている。従って、上記一方の部材が回転されることによって、上記他方の部材が軸方向に移動する。
図示の例では、変換機構63は、軸方向が型開閉方向に平行になるように配置されている。上記一方の部材としてのねじ軸63aは、軸方向に移動不可能かつ軸回りに回転可能に移動ダイプレート17に支持されている。上記他方の部材としてのナット63bは、可動部材49に固定されている。従って、押出電動機62が回転され、その回転がねじ軸63aに入力されると、ナット63bが型開閉方向に移動し、ひいては、可動部材49が型開閉方向に駆動される。
ねじ軸63a及びナット63bの支持及び固定等は適宜になされてよい。図示の例では、ねじ軸63aは、押出電動機62の出力軸と一体的に構成されている。押出電動機62の本体部分(ステータ)は、移動ダイプレート17に固定されている。出力軸は、本体部分によって軸方向に移動不可能かつ軸回りに回転可能に支持されている。これにより、ねじ軸63aは、軸方向に移動不可能かつ軸回りに回転可能に移動ダイプレート17に支持されている。また、図示の例では、ナット63bは、可動部材49の一部によって構成されることによって、可動部材49に固定されている。
図示の例とは異なり、ねじ軸63aは、押出電動機62の出力軸と一体的に構成されずに、カップリングを介して出力軸と連結されたり、出力軸との間に伝達機構(プーリ・ベルト機構等)を介在させたりしてよい。この場合において、ねじ軸63aは、例えば、適宜な軸受を介して移動ダイプレート17に支持されてよい。また、ナット63bは、可動部材49とは別個の部材によって構成され、係合、締結及び/又は接合等によって可動部材49に固定されていてもよい。
また、図示の例とは逆に、ナット63bが回転してねじ軸63aが軸方向に駆動されても構わない。既に、押出電動機62が可動部材49に支持されてもよいことについて言及した。この場合は、図示の例とは逆に、ねじ軸63a及びナット63bのうち、可動部材49に支持される部材が回転され、移動ダイプレート17に支持される部材の回転が規制される。また、変換機構63として、ねじ機構に代えて、他の変換機構(例えばラックアンドピニオン機構又はリンク機構)が設けられてもよい。
ナット63bのストローク(別の観点では前進限又は後退限)は、変換機構63単体では、例えば、ねじ軸63aにおけるねじ溝が切られている範囲の長さによって規定される。このストローク(駆動限)は、押出ピン41の前進限又は後退限を規定していてもよいし、規定していなくてもよい。別の観点では、変換機構63は、フルストロークで利用されてもよいし、利用されなくてもよい。
(中子装置)
図1に戻って、中子装置13の取付位置は、固定型103又は移動型105に対して、上方(図示の例)、下方及び側方のいずれとされてもよい。また、中子109の移動方向は、型開閉方向に見て、上下方向(図示の例)、水平方向、及びこれらの方向に対して傾斜する方向のいずれとされてもよい。ただし、以下の説明は、便宜上、図示の例のように、中子装置13が移動型105の上方に位置し、中子109が上下方向に駆動される態様を前提として行われることがある。
中子装置13は、例えば、取付部65によって固定型103及び移動型105の一方(図示の例では移動型105)に固定されている。取付部65の構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。図示の例では、取付部65は、移動型105の上面から上方へ延びるロッド状の部材を有している。中子装置13は、そのロッド状の部材の上端に固定されている。
図4~図6は、中子装置13の構成を示す断面図である。なお、これらの図では、中子装置13に作動液を供給する液圧装置67の一部の構成も示されている。これらの図において、紙面上下方向は、図1の紙面上下方向に対応している。図4は、中子109が固定型103と移動型105との間から退避しているときの状態を示している。図5は、中子109が固定型103と移動型105との間に挿入されているときの状態を示している。図6は、中子109を固定型103と移動型105との間から退避させる際の初期の状態を示している。
中子装置13は、取付部65によって移動型105に固定される支持部材69と、支持部材69に対して中子109の移動方向(図示の例では上下方向)に駆動される駆動部材71とを有している。駆動部材71の先端(図示の例では下端)は、中子109と連結される連結部71aとなっている。また、中子装置13は、駆動部材71を駆動するために、電動駆動部73と、液圧駆動部75とを有している。すなわち、中子装置13は、電動式と液圧式とを組み合わせたハイブリッド式の駆動部を有している。電動駆動部73及び/又は液圧駆動部75の駆動力が駆動部材71に伝達され、駆動部材71が支持部材69に対して移動することによって、中子109は、固定型103と移動型105との間に出し入れされる。中子装置13の各部の具体的な構成は、例えば、以下のとおりである。
支持部材69の形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、支持部材69は、液圧駆動部75(液圧シリンダ)のシリンダ部材を兼ねるように構成されている。具体的には、支持部材69は、例えば、上下に延びる筒状部69aと、筒状部69aを下方から塞ぐ前端部69bと、筒状部69aを上方から塞ぐ後端部69cとを有している。
筒状部69aの横断面(水平面に平行な断面)の形状は、例えば、円形である。前端部69bは、筒状部69a内に作動液(例えば油)を封入するために筒状部69aの下方を密閉している。前端部69bは、例えば、概略板状の部材とされてよく、また、筒状部69aの外周面よりも径方向外側へ突出するフランジを有してよい。前端部69bのフランジは、取付部65のロッド状の部材の上端が連結される部位とされてよい。後端部69cは、前端部69bとは異なり、筒状部69aの上方側を密閉しなくてよい。後端部69cは、例えば、概略板状の部材とされてよく、また、筒状部69aの外周面よりも径方向外側へ突出するフランジを有してよい。後端部69cのフランジは、電動駆動部73の一部の支持に利用されてよい。
駆動部材71の形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、駆動部材71は、液圧駆動部75のピストンロッドを兼ねるように構成されている。従って、駆動部材71の外形(外面の形状)は、支持部材69(シリンダ部材)の前端部69bの開口を摺動可能な概略軸状とされている。また、図示の例では、駆動部材71は、電動駆動部73の一部を収容可能に中空状とされている。駆動部材71の連結部71aの構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。例えば、連結部71aは、先端にフランジを有する形状であり、カップリングを介して中子109と連結される。
駆動部材71のストローク(別の観点では前進限及び後退限)は、適宜に設定されてよい。例えば、前進限は、駆動部材71の係合部71b(後述)がピストン81(後述)に後方(図示の例では上方)から係合するとともに、ピストン81が前進限に到達することによって規定されてよい。また、例えば、特に図示しないが、後退限は、駆動部材71に設けられた係合部が支持部材69に設けられたストッパに対して前方から後方へ係合することによって規定されてよい。また、前進限及び/又は後退限は、後述するねじ軸79aのねじ溝が切られている範囲の前端及び後端(後述するナット79bの移動可能な範囲の前端及び後端)によって規定されてもよい。
(中子装置の電動駆動部)
電動駆動部73は、例えば、回転式の中子電動機76と、中子電動機76の回転を伝達する伝達機構77と、伝達機構77からの回転運動を直線運動に変換する変換機構79とを有している。そして、変換機構79の直線運動が駆動部材71に伝達されることによって、駆動部材71が駆動される。
中子電動機76の構成については、矛盾等が生じない限り、既述の押出電動機62の構成についての説明が援用されてよい。もちろん、両者は役割が異なるから、具体的な構成及び性能は、両者で異なっている。中子電動機76の配置及び向きは適宜に設定されてよい。図示の例では、中子電動機76は、出力軸が駆動部材71の後端側(連結部71aとは反対側、図示の例では上方)を向くように変換機構79に並列に配置されている。これにより、例えば、電動駆動部73の短小化が図られる。
伝達機構77は、例えば、プーリ・ベルト機構によって構成されている。具体的には、伝達機構77は、中子電動機76の出力軸に固定されている第1プーリ77aと、変換機構79のねじ軸79a(後述)に固定されている第2プーリ77bと、これらのプーリに掛け渡されているベルト77cとを有している。従って、中子電動機76が回転されると、その回転は、第1プーリ77a、ベルト77c及び第2プーリ77bを順に経由して変換機構79に入力される。伝達機構77は、変速を行ってもよいし、変速を行わなくてもよい。図示の例では、第2プーリ77bの径が第1プーリ77aの径よりも大きく、伝達機構77は、増速を行う。
なお、伝達機構77は、他の巻掛け伝動機構(例えばスプロケット・チェーン機構)とされてもよいし、巻掛け伝動機構以外の機構(例えば歯車機構)とされてもよい。伝達機構は、傘歯車を含む歯車機構のように、回転の向きを変化させるものであってもよい。また、伝達機構77が設けられず、直接的に中子電動機76の回転が変換機構79に入力されてもよい。例えば、中子電動機76の出力軸がねじ軸79aに同軸に連結されてもよい。
中子装置13の変換機構79の構成については、矛盾等が生じない限り、押出装置11の変換機構63の構成についての説明が援用されてよい。このとき、ねじ軸63aの語は、ねじ軸79aの語に置換し、ナット63bの語はナット79bに置換する。もちろん、変換機構79及び変換機構63は、役割が互いに異なるから、両者の具体的な構成及び性能は異なっている
図示の例では、変換機構79は、軸方向が中子109の移動方向(上下方向)に平行になるように配置されている。ナット79bは、駆動部材71に連結されている。また、ナット79bは、スプライン溝等によって駆動部材71の軸回りの回転が規制されていることによって軸回りの回転が規制されている。ねじ軸79aは、支持部材69に設けられた軸受によって、軸方向に移動不可能に且つ軸回りに回転可能に支持されており、既述のように中子電動機76の回転が入力される。従って、中子電動機76が回転されると、ナット79bが上下方向に移動し、ひいては、中子109が固定型103と移動型105との間に出し入れされる。
ナット79b及びねじ軸79aの具体的な配置位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、変換機構79は、基本的に支持部材69の内部に収容されている。ねじ軸79aは、後端側部分が支持部材69の後端部69cに軸受を介して支持されている。ナット79bは、中空状の駆動部材71の後端に対して軸心同士が一致するように固定されている。駆動部材71は、ナット79bの移動によって、ねじ軸79aの少なくとも一部(例えばねじ溝が切られている部分の軸方向の長さの8割以上)を収容する位置(図4)と、ねじ軸79aを収容する長さを減じた位置(図6)との間で移動可能である。換言すれば、駆動部材71は、変換機構79に対して同心状に設けられている。このような配置によって、例えば、中子装置13の小型化が図られている。
ナット79bのストローク(別の観点では前進限又は後退限)は、変換機構79単体では、例えば、ねじ軸79aにおけるねじ溝が切られている範囲の長さによって規定される。ただし、駆動部材71のストロークがストッパ等によって規定されることによって、駆動部材71に固定されているナット79bの前進限及び/又は後退限が規定されてもよい。
特に図示しないが、ナット79bが回転してねじ軸79aが軸方向に駆動されても構わない。駆動部材71は、変換機構79に対して、同心状ではなく、同軸状に設けられても構わない。ねじ機構に代えて、他の変換機構(例えばラックアンドピニオン機構)が設けられてもよい。
(中子装置の液圧駆動部)
液圧駆動部75は、例えば、液圧シリンダによって構成されている。なお、実施形態の説明では、液圧駆動部75の語は、この液圧シリンダ(中子シリンダ)を指す用語として用いられることがある。液圧駆動部75は、具体的には、例えば、シリンダ部材としての支持部材69と、支持部材69内をその軸方向に摺動可能なピストン81とを有している。ピストン81は、支持部材69の内部を駆動部材71の先端側(図示の例では下方)の前側室69dと、その反対側の後側室69eとに区画している。前側室69dに作動液を供給することによって、ピストン81を後側室69eの側へ移動させることができる。後側室69eは、一般的な液圧シリンダとは異なり、大気開放されている。すなわち、後側室69eは、ピストン81を前側室69dの側へ移動させることに利用されない。ただし、液圧駆動部75は、一般的な液圧シリンダと同様に、作動液によってピストン81を前側室69dの側へ駆動可能に構成されても構わない。
駆動部材71は、ピストン81に対して軸方向へ摺動可能に挿通されている。また、駆動部材71は、ピストン81に対して後側室69eから前側室69dへの方向へ係合する係合部71bを有している。
従って、例えば、係合部71bがピストン81に係合していない状態では、ピストン81を停止させたまま、駆動部材71を移動させることができる。また、例えば、係合部71bがピストン81に係合している状態で、ピストン81を後側室69eの側へ駆動することによって、駆動部材71を後方(図示の例では上方)へ移動させることができる。また、例えば、係合部71bがピストン81に係合している状態で、電動駆動部73によって駆動部材71を前方(図示の例では下方)へ移動させることによって、ピストン81を前側室69dの側へ移動させることができる。
ピストン81のストロークSt1(図5)は、支持部材69の内部に適宜な形状のストッパが形成されることによって規定されている。図示の例では、ピストン81の前進限(下方側の駆動限)は、図5に示すように、ストッパとしての前端部69bによって規定されている。ピストン81の後退限(上方側の駆動源)は、図4及び図6に示すように、支持部材69の内径が縮径されることによって構成されたストッパ(符号省略)によって規定されている。
ピストン81のストロークSt1は、例えば、駆動部材71のストローク(別の観点では電動駆動部73のストローク)のうちの連結部71a側の一部のみとされている。例えば、前者の長さは、後者の長さの1/2以下、1/5以下又は1/10以下とされてよい。なお、図示の例とは異なり、ストロークSt1は、駆動部材71のストローク又は電動駆動部73のストロークと一致していてもよい。
液圧駆動部75に作動液を供給する液圧装置67は、例えば、作動液を送出する液圧源83と、作動液を貯留するタンク85と、これらの要素と前側室69dとの間の作動液の流れを制御する中子用バルブ87とを有している。
液圧源83は、例えば、ポンプであり、詳細は後述する。中子用バルブ87は、例えば、液圧源83から前側室69dへの作動液の流れの許容及び禁止と、前側室69dからタンク85への作動液の流れの許容及び禁止とを行う。中子用バルブ87の具体的な構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。中子用バルブ87は、2以上のバルブから構成されていても構わない。図示の例では、中子用バルブ87は、3ポート2位置の切換弁によって構成されており、液圧源83及びタンク85の一方を選択的に前側室69dに接続する。その駆動方式は、例えば、ソレノイドによってばねの力に抗して弁体を移動させるものである。中子用バルブ87は、流量を制御する機能を有していてもよい。また、中子用バルブ87は、前側室69dを液圧源83及びタンク85の双方から遮断可能であってもよい(後述の押出用バルブ91を参照。)。
(中子装置の動作)
中子装置13の動作は、例えば、以下のとおりである。
型閉じ開始前において、駆動部材71(別の観点ではナット79b)は、例えば、図4に示すように、後退限(図示の例では上方の駆動限)に位置している。これにより、中子109は、固定型103と移動型105との間から退避している。ピストン81は、後退限に位置する駆動部材71の位置決めに関与していないから、適宜な位置にあってよい。別の観点では、前側室69dは、液圧源83及びタンク85のいずれに接続されていてもよい。図示の例では、ピストン81は、後退限に位置している。また、前側室69dは、タンク85に接続されている。
型閉じ完了前(例えば、型閉じ開始前、又は型閉じ中)において、制御装置5は、図5に示すように、中子電動機76を駆動して、駆動部材71を前進限まで移動させる。これにより、中子109は、固定型103と移動型105との間に配置される。また、駆動部材71の前進限への移動の途中においては、駆動部材71の係合部71bがピストン81に後方から係合する。これにより、中子電動機76の駆動力がピストン81に付与され、ピストン81も前進限まで移動する。この際、前側室69dの作動液は、中子用バルブ87を介してタンク85に排出される。なお、駆動部材71の位置を検出するセンサの検出値に基づいて駆動部材71を所望の位置に停止させ、駆動部材71を前進限まで移動させないようにしても構わない。
その後、型締め及び射出が完了し、キャビティ107内の成形材料が凝固すると、型開きが行われ、さらには押出しが行われる。型開き開始後(例えば型開き中、又は型開き完了後)、かつ押出し前において、制御装置5は、中子109が固定型103と移動型105との間から退避するように電動駆動部73及び液圧駆動部75を制御する。
具体的には、まず、制御装置5は、液圧源83から前側室69dへ作動液を供給するように中子用バルブ87(及び/又は液圧源83)を制御する。これにより、ピストン81が後側室69e側へ移動する。駆動部材71は、ピストン81に対して後方から係合しているから、ピストン81の後側室69eへの移動に伴って後方(図示の例では上方)へ移動する。ひいては、中子109が固定型103と移動型105との間から退避する方向へ移動を開始し、成形品から離れる。
上記のように液圧駆動部75によってピストン81を駆動するとき、電動駆動部73(中子電動機76)は、例えば、液圧駆動部75とともに駆動部材71を後方へ移動させる駆動力を生じてよい。この場合、液圧駆動部75が駆動部材71に付与する駆動力と、電動駆動部73が駆動部材71に付与する駆動力とは、いずれが大きくてもよく、その差も適宜に設定されてよい。例えば、前者は、後者に対して、2倍以上、1倍以上、1/2以上又は1/2未満とされてよい。また、電動駆動部73は、駆動部材71に後方への駆動力を殆ど付与しないように、かつ電動駆動部73の慣性力及び摩擦抵抗等が液圧駆動部75による駆動部材71の駆動の妨げにならないように、適宜な速度でナット79bを移動させてもよい。また、変換機構79の構成によっては、中子電動機76は、トルクフリーの状態とされてもよい。
ピストン81が後退限まで移動すると、制御装置5は、電動駆動部73によって駆動部材71に後方(図示の例では上方)への駆動力を付与する制御を継続し、又は開始し、駆動部材71を後退限まで移動させる。これにより、中子109は、後退を継続し、固定型103と移動型105との間から退避する。なお、液圧駆動部75から駆動部材71に駆動力を付与しているときにも電動駆動部73によって駆動部材71に駆動力を付与する場合、電動駆動部73の制御は、ピストン81が後退限に到達する前と後とで、同じであってもよいし、変化してもよい。
上記のように、中子装置13は、ハイブリッド式であることから、例えば、中子109を成形品から離すときに大きな力を中子109に付与することが容易化される。これは、例えば、中子109を成形品から離すときに利用される液圧駆動部75は、電動駆動部73に比較して大きな力を得ることが容易であること、及び/又は中子109を成形品から離すときに液圧駆動部75と電動駆動部73とを協働させることができることによる。その一方で、中子109が成形品から離れた後は、液圧駆動部75及び電動駆動部73の一方(例えば電動駆動部73)のみを利用することによって、消費エネルギーを節約することができる。
また、中子装置13において、ピストン81のストロークは、電動駆動部73による駆動部材71の先端側(連結部71a側)のストロークの一部のみとされている。これにより、例えば、中子109を成形品から離すときに液圧駆動部75を利用して大きな駆動力を得ることができる。その一方で、前側室69dに供給する作動液の量を少なくすることができる。ひいては、液圧装置67を小型化することができる。
(液圧装置)
図7(a)は、押出装置11(より詳細には液圧駆動部51のロッド側室55r)に作動液を供給する液圧装置67の構成の一例を示す回路図である。
液圧装置67は、作動液を送出する液圧源としてのポンプ89と、作動液を貯留するタンク85とを有している。図示の例では、ポンプ89及びタンク85は、押出装置11(より詳細には液圧駆動部51)及び中子装置13(より詳細には液圧駆動部75)に共用されている。液圧装置67は、既述の中子用バルブ87を有している。また、液圧装置67は、ポンプ89及びタンク85と押出装置11との間の作動液の流れを制御する押出用バルブ91を有している。
ポンプ89は、ロータの回転により作動液を吐出するロータリポンプであってもよいし、ピストンの往復により作動液を吐出するプランジャポンプであってもよい。ポンプ89は、ロータ又はピストンの1周期の運動における吐出量が固定された定容量ポンプによって構成されていてもよいし、当該吐出量が可変とされた可変容量ポンプによって構成されていてもよい。また、ポンプ89は、1方向に作動液を吐出できれば十分であるが、双方向(2方向)ポンプと構造が同一であってもよい。
ポンプ89は、例えば、回転式のポンプ電動機93によって駆動される。このポンプ電動機93は、直流モータでも交流モータでもよいし、誘導モータでも同期モータでもよい。ポンプ電動機93は、オープンループにおいて設けられた定速電動機として機能するものであってもよいし、クローズドループにおいて設けられたサーボモータとして機能するものであってもよい。ポンプ電動機93(ポンプ89)は、例えば、必要なとき(例えばロッド側室55r又は前側室69dに作動液を供給するとき)のみ駆動される。これにより、消費エネルギーが低減される。ただし、ポンプ電動機93は、常時駆動されても構わない。
タンク85は、例えば、開放タンクである。すなわち、タンク85は、大気圧下で作動液を保持している。従って、例えば、ロッド側室55r又は前側室69dがタンク85に接続されると、これらのシリンダ室の圧力は、大気圧又はこれに近い圧力まで低下する。
押出用バルブ91は、例えば、液圧源83(ここではポンプ89)からロッド側室55rへの作動液の流れの許容及び禁止と、ロッド側室55rからタンク85への作動液の流れの許容及び禁止とを行う。押出用バルブ91の具体的な構成は、公知の構成を含む種々の構成とされてよい。押出用バルブ91は、2以上のバルブから構成されていても構わない。図示の例では、押出用バルブ91は、3ポート3位置の切換弁によって構成されており、ロッド側室55rを液圧源83又はタンク85に接続する2つの位置と、ロッド側室55rを液圧源83及びタンク85の双方から遮断する1つの位置との間で切り換えられる。その駆動方式は、例えば、ソレノイドによってばねの力に抗して弁体を移動させるものである。押出用バルブ91は、流量を制御する機能を有していてもよい。押出用バルブ91は、中子用バルブ87のように2位置で切り換えられるものであってもよい。
図2に示すように、液圧装置67は、その全体が移動ダイプレート17に搭載(支持)されてよい。図2では、液圧装置67は、ユニット67aと、ユニット67aとロッド側室55rとを接続する流路67bとが模式的に示されている。
ユニット67aは、例えば、液圧装置67の流路以外の全ての構成要素を含んでいる。当該構成要素は、例えば、既述のように、ポンプ89、ポンプ電動機93、タンク85、押出用バルブ91及び中子用バルブ87である。これらの構成要素は、例えば、1カ所に纏められてユニット化され、ユニット67aを構成している。ただし、これらの構成要素は、ユニット化されずに、移動ダイプレート17に対して適宜に分散して配置されていてもよい。
ユニット67a(又は分散配置される上記構成要素。本段落において同様。)の配置位置は、適宜に設定されてよい。図示の例では、ユニット67aは、移動ダイプレート17の背面のうち下方に配置されている。ただし、ユニット67aは、移動ダイプレート17の背面のうち、側方又は上方に位置してもよいし、移動ダイプレート17の上面又は側面に位置してもよい。ユニット67aの移動ダイプレート17に対する固定方法は、ねじ等を利用するものなど、適宜な方法とされてよい。
流路67bは、押出用バルブ91と液圧駆動部51のロッド側室55rとを接続している。本実施形態のように液圧駆動部51のうちシリンダ部材55が可動部材49に固定されている態様では、ロッド側室55rと移動ダイプレート17とは相対移動するから、流路67bは、例えば、少なくとも一部が可撓性の部材(例えばホース)によって構成される。
なお、本実施形態とは異なり、シリンダ部材55と移動ダイプレート17とが固定されている態様においては、流路67bは、剛体とみなせる部材(例えばパイプ及びブロック)によって構成されてよい。また、図示の例とは異なり、ユニット67aを可動部材49に搭載して、可動部材49に固定されているシリンダ部材55とユニット67aとを接続する流路67bを剛体とみなせる部材によって構成してもよい。
図2での図示は省略するが、ユニット67a(中子用バルブ87)と液圧駆動部75の前側室69dとを接続する流路67c(図7(a))も設けられている。液圧駆動部75は、移動ダイプレート17に(移動型105を介して)支持されているから、移動ダイプレート17に支持されているユニット67aと、液圧駆動部75とを接続する流路67cは、剛体とみなせる部材によって構成されてもよいし、可撓性を有する部材によって構成されてもよい。
(液圧装置の変形例)
図7(b)は、変形例に係る液圧装置67Aの構成を示す回路図である。なお、ここでは、基本的に、液圧装置67との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、液圧装置67と同様とされたり、液圧装置67から類推されたりしてよい。
液圧装置67Aは、液圧源83がアキュムレータ95とされている。ポンプ89は、例えば、アキュムレータ95の充填に利用される。アキュムレータ95は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ95は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ95内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧される。
ポンプ89とアキュムレータ95との間には、アキュムレータ95からポンプ89へ作動液が逆流する蓋然性を低減するためのバルブ97が設けられてよい。バルブ97の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、バルブ97は、ポンプ89からアキュムレータ95への作動液の流れを許容し、その反対方向の流れを禁止するチェック弁とされている。
(センサ等)
特に図示しないが、ダイカストマシン1は、制御装置5がマシン本体3の動作を制御可能に、種々のセンサを有してよい。そして、制御装置5は、種々のセンサの検出値に基づいて、型締装置7、射出装置9、押出装置11及び中子装置13等を制御してよい。
上記のようなセンサの例を挙げる。例えば、可動部材49の移動ダイプレート17に対する位置(別の観点では押出ピン41の移動型105に対する位置)を検出する位置センサが設けられてよい。位置センサの具体的な態様としては、例えば、リニアエンコーダ又はレーザ測長器が挙げられる。駆動対象(可動部材49)の位置を検出する位置センサに加えて、又は代えて、駆動源におけるセンサが設けられてよい。そのようなセンサとしては、例えば、押出電動機62の回転を検出するセンサ(例えば、エンコーダ又はレゾルバ)、及びピストンロッド59のシリンダ部材55に対する位置を検出する位置センサが挙げられる。また、駆動源が生じる駆動力を検出可能なセンサが設けられてよい。そのようなセンサとしては、例えば、押出電動機62のトルクを検出するセンサ、及び液圧シリンダのシリンダ室の圧力を検出するセンサが挙げられる。
(成形品の押出し)
図8(a)~図10は、押出装置11による成形品の押出しの動作を説明するための模式図である。これらの図は、図3を更に模式的にし、かつ図3では不図示の固定型103及び固定ダイプレート15を図示した図となっている。押出しの動作は、図8(a)から順に図10へ進む。
図8(a)は、型締めされている金型101内の成形材料が凝固して成形品111が形成されている状態を示している。
この状態では、押出ピン41の移動型105に対する相対位置は、初期位置とされている。初期位置は、例えば、既述のように、押出ピン41の先端がキャビティ107の内面に一致する位置、及び/又は押出ピン41の移動型105に対する後退限とされてよい。ピストンロッド59のシリンダ部材55に対する相対位置は、押出ピン41の初期位置に対応する位置とされている。例えば、当該相対位置は、ロッド側室55rの側の駆動限に位置しているピストン57に対してピストンロッド59がヘッド側室55hの側から係合する位置である。ナット63b(可動部材49)のねじ軸63aに対する相対位置は、押出ピン41の初期位置に対応する位置とされている。例えば、当該相対位置は、ナット63bのねじ軸63aに対する紙面左側の駆動限又は当該駆動限に近い位置である。
また、この状態では、制御装置5は、例えば、液圧装置67から液圧駆動部51への作動液の供給を停止している。より詳細には、例えば、制御装置5は、ポンプ電動機93を停止している、及び/又は押出用バルブ91によってロッド側室55rへの作動液の供給を禁止している(ロッド側室55rをタンク85に接続している、又はロッド側室55rを液圧源83及びタンク85の双方から遮断している。)。同様に、制御装置5は、例えば、液圧装置67から中子装置13への作動液の供給も停止している。より詳細には、例えば、制御装置5は、ポンプ電動機93を停止している、及び/又は中子用バルブ87によってロッド側室55rへの作動液の供給を禁止している。また、制御装置5は、押出電動機62及び中子電動機76を停止させている。停止されている状態は、トルクフリーの状態であってもよいし、ブレーキが機能している状態であってもよいし、停止を維持する位置制御がなされている状態であってもよい。
次に、図8(b)に示すように、型開きが行われる。
具体的には、制御装置5は、型締めのときとは逆方向に型締電動機27を回転させる。これにより、移動ダイプレート17が型開方向へ移動し、移動ダイプレート17に保持されている移動型105が固定型103から離れる。成形品111は、移動型105と共に型開方向へ移動し、固定型103から離れる。このとき、射出装置9は、プランジャ37によって成形品を移動型105の側へ押し出してもよい。
移動ダイプレート17の型開方向への移動に伴って、可動部材49及び押出装置11(液圧駆動部51及び電動駆動部61)も型開方向へ移動する。より詳細には、例えば、可動部材49は、移動ダイプレート17から、移動型105、成形品111、押出ピン41、押出板43及び押出ロッド47を介して型開方向への駆動力を受ける。また、可動部材49は、変換機構63の構成によっては、移動ダイプレート17から電動駆動部61を介して型開方向への駆動力を受ける。シリンダ部材55及びピストン57は、例えば、移動ダイプレート17から可動部材49を介して型開方向への駆動力を受ける。ピストンロッド59は、移動ダイプレート17から直接に型開方向への駆動力を受ける。
なお、ロッド側室55rは、例えば、ピストン57とシリンダ部材55とが相対移動する蓋然性を低減するために、押出用バルブ91によって液圧源83及びタンク85の双方と遮断されていてよい。また、押出電動機62は、ナット63bとねじ軸63aとが相対移動する蓋然性を低減するために、ブレーキが作動されたり、停止を維持する位置制御がなされたりしてよい。
その後、制御装置5は、例えば、移動ダイプレート17の位置を検出する位置センサ(不図示)、又は型締電動機27の回転を検出するセンサ(不図示)の検出値に基づいて、移動ダイプレート17が所定の位置に到達したと判定すると、型締電動機27を停止させ、ひいては、移動ダイプレート17を停止させる。このとき、固定型103と移動型105との間には、押出装置11による成形品111の押出しが可能なスペースが確保されている。
制御装置5は、移動ダイプレート17が型開方向へ移動しているとき、又は上記のように停止した後において、中子109を成形品111から引き抜くように中子装置13を制御する。この制御については、既に述べたとおりである。
次に、図9(a)に示すように、成形品111の押出しに係る初期動作が行われる。
押出しの初期動作では、押出しのその後の動作(図9(b))に比較して、大きな駆動力が必要とされる。これは、例えば、移動型105に密着していた成形品111を移動型105から剥がす(離型させる)力が必要なことなどからである。制御装置5は、押出しの初期動作においては、液圧駆動部51及び電動駆動部61の双方によって押出ピン41を駆動する。これにより、いずれか一方の駆動部が利用される場合に比較して、大きな駆動力が得られる。具体的には、以下のとおりである。
制御装置5は、液圧源83からロッド側室55rへ作動液が供給されるように液圧装置67を制御する。この作動液の供給の開始は、ポンプ電動機93の駆動の開始によってなされてもよいし、及び/又は押出用バルブ91のロッド側室55rを液圧源83に接続する動作によってなされてもよい。
ロッド側室55rへの作動液の供給によって、ピストン57がシリンダ部材55に対して型開方向へ相対移動し、ひいては、ピストン57に係合しているピストンロッド59がシリンダ部材55に対して型開方向へ相対移動する。この相対移動によって、可動部材49が移動ダイプレート17に対して型閉方向へ相対移動する。また、上記と並行して、制御装置5は、可動部材49の移動ダイプレート17に対する型閉方向への相対移動に対応する回転方向へ押出電動機62を回転させる。以上のようにして、液圧駆動部51及び電動駆動部61の双方によって、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ駆動される。
ロッド側室55rへ作動液を供給するとき、制御装置5は、例えば、押出ピン41が成形品に付与する力を検出する不図示の力センサの検出値に基づいて液圧装置67(例えばポンプ電動機93又は流量制御弁)及び押出電動機62を制御する圧力制御を行ってもよいし、並びに/又は押出ピン41の移動型105に対する位置を検出する不図示の位置センサの検出値に基づいて液圧装置67(例えばポンプ電動機93又は流量制御弁)及び押出電動機62を制御する位置制御及び/若しくは速度制御を行ってもよい。
制御装置5は、所定の条件が満たされると、ロッド側室55rへの作動液の供給を停止するように液圧装置67を制御し、液圧駆動部51による押出ピン41の駆動を終了する。この作動液の供給の停止は、ポンプ電動機93の停止によってなされてもよいし、及び/又は押出用バルブ91の動作によってなされてもよい。ここでの押出用バルブ91の動作は、例えば、ロッド側室55rを液圧源83及びタンク85の双方から遮断する動作、又はロッド側室55rをタンク85に接続する動作である。また、作動液の供給の停止と同時、又はその前に、ピストン57は、シリンダ部材55に設けられた不図示のストッパに当接して停止しても構わない。
ロッド側室55rへの作動液の供給を停止するときの上記所定の条件は、例えば、不図示の位置センサによって検出される押出ピン41(別の観点では成形品111)の移動量が所定の距離d1に達したこと、又は不図示の力センサによって検出される押出ピン41に付与される力が所定の閾値を下回ったこととされてよい。なお、後者の条件で停止した結果、距離d1の移動量が得られてもよい。
上記の説明では、移動ダイプレート17を停止させた後、押出装置11によって押出ピン41を駆動している。ただし、移動ダイプレート17を型開方向へ移動させているとき(別の観点では移動ダイプレート17が図8(b)の位置に到達する前)に押出装置11によって押出ピン41を駆動してもよい。
次に、図9(b)に示すように、押出しの残りの動作が行われる。
この押出しの残りの動作では、例えば、液圧駆動部51及び電動駆動部61のうち、電動駆動部61のみによって押出ピン41が駆動される。これにより、例えば、消費エネルギーが低減される。具体的には、以下のとおりである。
制御装置5は、押出しの初期動作に引き続いて、可動部材49の移動ダイプレート17に対する型閉方向への相対移動に対応する回転方向へ押出電動機62を回転させる。これにより、押出ピン41が移動型105に対して固定型103の側へ相対移動する。そして、移動型105に対して上述した距離d1で離れていた成形品111は、さらに距離d2を移動して移動型105から離れる。このとき、制御装置5は、例えば、不図示の位置センサによって検出される押出ピン41の移動型105に対する位置に基づいて押出電動機62を制御する位置制御及び/又は速度制御を行ってよい。
ピストンロッド59は、移動ダイプレート17に固定され、シリンダ部材55は、可動部材49に固定されている。従って、上記のように押出電動機62によって可動部材49が移動ダイプレート17に対して型閉方向へ駆動されると、ピストンロッド59は、シリンダ部材55に対して型開方向へ相対移動する。ここで、既述のように、ピストンロッド59は、ピストン57に対する型開方向への相対移動が許容されている。従って、ピストン57は、シリンダ部材55に対して相対移動せずに留まることができる。別の観点では、液圧装置67は、ロッド側室55rへの作動液の供給を停止した状態を維持できる。
その後、所定の条件が満たされると、制御装置5は、押出電動機62の駆動を停止する。所定の条件は、例えば、不図示の位置センサによって検出される押出ピン41(成形品111)の移動量が距離d1+d2に到達したこととされてよい。押出電動機62を停止させる制御と同時、又はその前に、押出ピン41(別の観点では押出板43、可動部材49及び/又はナット63b)は、駆動限に到達して停止しても構わない。換言すれば、押出ピン41が駆動限に到達して停止した結果、距離d1+d2の移動量が確保されても構わない。
距離d1及び距離d2は、適宜に設定されてよい。例えば、距離d1の移動は、移動型105に密着している成形品111を移動型105から離すことを主たる目的とされてよい。この場合、距離d1は、極力短くされてよい。例えば、距離d1は、5mm以下とされてよい。一方で、距離d2の移動は、成形品111の移動型105からの距離を確保することを主たる目的とされてよい。距離が確保されることによって、例えば、不図示の装置による成形品111の取り出しが容易化される。距離d1は、例えば、距離d2よりも短くされてよく、距離d2の1/2以下、1/5以下又は1/10以下とされてよい。
次に、図10に示すように、押出ピン41(別の観点では移動ダイプレート17)の初期位置への復帰が行われる。換言すれば、次のサイクルの準備が行われる。
具体的には、制御装置5は、例えば、可動部材49の移動ダイプレート17に対する型開方向への相対移動に対応する回転方向に押出電動機62を回転させる。これにより、押出ピン41が初期位置へ向かって移動する。
シリンダ部材55は、可動部材49に固定されており、ピストンロッド59は、移動ダイプレート17に固定されている。従って、可動部材49の移動ダイプレート17に対する型開方向への相対移動に伴って、ピストンロッド59は、シリンダ部材55に対して型閉方向へ相対移動する。その過程において、ピストンロッド59の係合部59bがピストン57に係合する。そして、ピストン57は、ピストンロッド59とともにシリンダ部材55に対して型閉方向へ相対移動する。その後、ピストンロッド59及びピストン57は、押出ピン41の初期位置に対応する位置(図8(a)参照)へ到達する。
ピストン57がシリンダ部材55に対して型閉方向へ相対移動するとき、容積が縮小されるロッド側室55rから排出される作動液は、例えば、タンク85に排出される。液圧源83がアキュムレータ95である場合、ロッド側室55rから排出される少なくとも一部の作動液がアキュムレータ95に充填されてもよい。
制御装置5は、例えば、押出ピン41の移動型105に対する相対位置(別の観点では可動部材49の移動ダイプレート17に対する相対位置)を検出する不図示の位置センサによって、押出ピン41の初期位置への復帰を検知する。そして、制御装置5は、初期位置への復帰を検知すると、押出電動機62を停止させる。
以上のとおり、本実施形態に係る押出装置11は、固定型103及び移動型105の一方の型(本実施形態では移動型105)に対して型開閉方向に挿通される押出ピン41を駆動するものである。押出装置11は、液圧駆動部51と、電動駆動部61とを有している。液圧駆動部51及び電動駆動部61は、いずれも押出ピン41に固定される押出板43を、上記一方の型を保持するダイプレート(本実施形態では移動ダイプレート17)に対して駆動する。押出板43は、移動型105のダイベース105aによって構成される空間105sに位置する。
また、別の観点では、本実施形態に係る成形機(ダイカストマシン1)は、上記のような押出装置11と、型締装置7と、射出装置9とを有している。型締装置7は、固定型103を保持する固定ダイプレート15、及び移動型105を保持する移動ダイプレート17を有している。射出装置9は、移動型105及び固定型103によって構成されるキャビティ107に成形材料を射出する。
従って、液圧駆動部51及び電動駆動部61によってダイベース105aの空間105sに位置する押出板43を駆動する新たな押出装置11(ダイカストマシン1)が提供され、技術の豊富化が図られる。このような押出装置11では、液圧駆動部が移動ダイプレートに対して押出板を駆動するとともに、電動駆動部が押出板に対して押出ピンを駆動する態様(特許文献3参照)とは異なり、2つの駆動部が直列に押出ピンに連結されるのではなく、2つの駆動部(51及び61)が並列に押出ピンに連結される。従って、例えば、2つの駆動部を協働させることによって、2つの駆動部が直列に押出ピンに連結されている態様に比較して、大きな駆動力を押出ピン41に付与することができる。また、本実施形態では、押出板43は、空間105sに位置し、押出ピン41は、移動型105のみを貫通する。すなわち、押出板43が移動ダイプレート17の背後に位置する態様(特許文献1参照)とは異なり、押出ピン41は、移動ダイプレート17を貫通する長さを有していない。従って、上記のように大きな駆動力が押出ピン41に付与されたときに、押出ピン41に座屈などの変形が生じる蓋然性が低減される。
また、液圧駆動部51と電動駆動部61とが組み合わされることから、例えば、液圧駆動部51のみによって押出を行う態様に比較して、液圧駆動部51の負担を軽減できる。ひいては、例えば、作動液の量を低減したり、消費エネルギーを低減したりできる。その一方で、例えば、液圧駆動部51によって、安価に大きな駆動力を得ることが容易である。
押出装置11は、押出ロッド47と、可動部材49とを有してよい。押出ロッド47は、ダイプレート(移動ダイプレート17)に型開閉方向に挿通されていてよく、押出板43に連結されていてよい。可動部材49は、移動ダイプレート17に対して押出板43とは反対側に位置していてよく、押出ロッド47に連結されていてよい。液圧駆動部51及び電動駆動部61は、移動ダイプレート17に対して可動部材49を移動させて、可動部材49及び押出ロッド47を介して押出板43に駆動力を付与してよい。
上記の構成とは異なる態様としては、例えば、液圧駆動部51及び/又は電動駆動部61を押出板43に対して直接に連結する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)が挙げられる。このような態様では、例えば、押出板43がダイベース105aの空間105sに位置していることから、液圧駆動部51及び/又は電動駆動部61は、空間105s又は移動ダイプレート17の内部に配置される。その結果、液圧駆動部51及び/又は電動駆動部61の大きさ等に制限が生じる。あるいは、移動型105を特殊なものとしなければならない。しかし、押出ロッド47及び可動部材49を設けることによって、そのような不都合が解消される。別の観点では、液圧駆動部51及び電動駆動部61の設計の自由度が向上する。また、可動部材49は、液圧駆動部51及び電動駆動部61の双方と連結されることから、大きな部材となりやすい。しかし、移動ダイプレート17の背後に位置していることから、そのような大きな部材とされることが許容される。また、別の観点では、可動部材49を比較的大きな部材とすることによって、電動駆動部61を液圧駆動部51から離れた位置(例えば移動ダイプレート17の側面又は上面)に位置させることができるなど、液圧駆動部51及び/又は電動駆動部61の配置の自由度が向上する。
押出装置11は、ダイプレート(移動ダイプレート17)から一方の型(移動型105)とは反対側へ延びており、可動部材49を支持するとともに可動部材49を型開閉方向に案内するガイド53を有していてよい。
この場合、例えば、可動部材49の移動が安定する。また、例えば、可動部材49を大きくすることが容易化される。可動部材49を大きくすることにより、上記のように、液圧駆動部51及び/又は電動駆動部61の配置の自由度が向上する。
液圧駆動部51は、1つのみ設けられてよい。電動駆動部61は、2つのみ設けられてよい。型開閉方向に見て、2つの電動駆動部61の可動部材49に対する連結位置は、液圧駆動部51の可動部材49に対する連結位置に対して点対称とされてよい。
この場合、例えば、可動部材49に付与される駆動力のバランスが向上し、意図されていないモーメントが生じる蓋然性が低減される。その結果、例えば、部材間の摺動抵抗(例えば可動部材49とガイド53との間の摺動抵抗)を低減することができる。ひいては、高速に押出ピン41を駆動したり、部材の摩耗を低減したりすることができる。また、2つの電動駆動部61を用いていることから、1つの電動駆動部61のみを用いる態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、各電動駆動部61の負担を軽減することができる。その結果、例えば、大型のダイカストマシン1において、押出電動機62として、汎用の電動機又はそれに近いものを採用できる蓋然性が高くなり、ひいては、コスト削減が期待される。
液圧駆動部51は、シリンダ部材55と、ピストン57と、ピストンロッド59とを有してよい。シリンダ部材55は、ダイプレート(移動ダイプレート17)及び押出板43の一方の部材(本実施形態では押出板43)に対して直接又は間接に(本実施形態では可動部材49及び押出ロッド47を介して間接に)固定されて、押出板43と共に移動してよい。ピストン57は、シリンダ部材55の内部を第1シリンダ室(本実施形態ではロッド側室55r)と第2シリンダ室(本実施形態ではヘッド側室55h)とに区画してよい。ピストンロッド59は、シリンダ部材55の内部からシリンダ部材55の外部へ延びていてよく、移動ダイプレート17及び押出板43の他方の部材(本実施形態では移動ダイプレート17)に対して直接又は間接に(本実施形態では直接に)固定されて、移動ダイプレート17と共に移動してよい。ピストン57は、少なくとも、ピストンロッド59に対するロッド側室55rの側からヘッド側室55hの側への相対移動が規制されてよい。ロッド側室55rは、押出ピン41を一方の型(移動型105)に対して他方の型(固定型103)の側へ駆動するときに作動液が供給されるシリンダ室であってよい。ヘッド側室55hは、大気開放されてよい。
この場合、例えば、液圧駆動部51の作動液を低減する効果が向上する。すなわち、押出ピン41の初期位置への復帰、及びピストン57のロッド側室55rの側への移動は、図10を参照して説明したように、電動駆動部61によって行うことができるから、ヘッド側室55hに作動液を満たす必要性を無くすことができる。
ピストンロッド59は、ロッド本体59aと、係合部59bとを有していてよい。ロッド本体59aは、ピストン57の軸方向にピストン57に対して摺動可能にピストン57に挿通されていてよい。係合部59bは、第2シリンダ室(ヘッド側室55h)に位置し、ロッド本体59aに固定され、ピストン57に対してヘッド側室55hの側から第1シリンダ室(ロッド側室55r)の側へ係合可能であってよい。
この場合、図9(a)に示したように、ロッド側室55rに作動液を供給してピストン57をヘッド側室55hの側へ移動させ、ピストン57を係合部59bに係合させ、ピストンロッド59をヘッド側室55hの側へ移動させることによって、押出ピン41を移動型105に対して固定型103の側へ移動させることができる。すなわち、液圧駆動部51(本実施形態では更に電動駆動部61)によって押出ピン41を駆動できる。その後、図9(b)に示したように、電動駆動部61によって押出ピン41を移動型105に対して型閉方向へ移動させるときに、ピストン57をシリンダ部材55に対して停止させたまま、ピストンロッド59をシリンダ部材55に対してヘッド側室55hの側へ移動させることができる。
従って、例えば、液圧駆動部51によって押出ピン41を駆動することができ、かつピストン57とピストンロッド59とが固定されている態様(後述の第2実施形態参照)に比較して、ロッド側室55rに供給される作動液の量を低減することができる。ヘッド側室55hを大気開放する構成と、ピストンロッド59をピストン57に対して相対移動させる構成とが組み合わされると、例えば、液圧駆動部51における作動液の必要量を低減する効果が飛躍的に向上する。なお、ピストンロッド59をピストン57に対して相対移動させる構成は、本実施形態とは異なり、ヘッド側室55hに作動液が満たされている構成と組み合わされても構わない。
押出装置11は、液圧駆動部51に作動液を供給する液圧源83を更に有してよい。押出ピン41が挿通される一方の型を保持するダイプレートは、移動型105を保持する移動ダイプレート17であってよい。液圧源83は、移動ダイプレート17に支持されてよい。
移動ダイプレート17の型開閉に伴う移動量(ベース14に対する移動量)は、可動部材49の移動ダイプレート17に対する相対移動量(押出ピン41の移動型105に対する相対移動量)に比較して大きい。従って、本実施形態とは異なり、液圧源83がベース14に直接に支持されている態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)においては、液圧源83と液圧駆動部51とは、概略、移動ダイプレート17の移動量で相対移動する。一方、本実施形態では、液圧源83と液圧駆動部51とは、可動部材49の移動ダイプレート17に対する相対移動の移動量で相対移動する。従って、本実施形態では、液圧源83と液圧駆動部51との相対移動量が小さくなる。その結果、両者を接続する流路(例えば流路67b)を短くすることができる。ひいては、作動液を低減したり、流路内の作動液の圧縮等が液圧駆動部51の制御に及ぼす影響を低減したりできる。
電動駆動部61は、回転式の電動機(押出電動機62)と、押出電動機62の回転を型開閉方向の直線運動に変換する変換機構63と、を有してよい。変換機構63は、ねじ軸63aと、ナット63bとを有してよい。ねじ軸63aは、型開閉方向に延びていてよく、ダイプレート(移動ダイプレート17)に対する軸方向の移動が規制されていてよく、軸回りの回転が許容されていてよく、押出電動機62の回転が(直接又は間接に)入力されてよい。ナット63bは、ねじ軸63aに螺合されていてよく、移動ダイプレート17に対する軸方向の移動が許容されていてよく、軸回りの回転が規制されていてよく、押出板43に固定されていてよい。
この場合、例えば、回転式の電動機の採用によって、リニアモータを用いる態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、安価に電動駆動部61を構成することができる。また、ねじ軸63aのリードの調整によって、大きな駆動力を得たり、又は高速で可動部材49を駆動したりすることができる。
押出装置11は、液圧駆動部51及び電動駆動部61を制御する制御装置5を有していてよい。制御装置5は、一方の型(移動型105)に成形品111が接触しているときに、液圧駆動部51及び電動駆動部61の双方によって、成形品111を移動型105から離す方向へ、押出板43をダイプレート(移動ダイプレート17)に対して相対移動させるように構成されていてよい。また、制御装置5は、上記の相対移動の後、液圧駆動部51及び電動駆動部61のうち電動駆動部61のみによって、前記離す方向へ、押出板43を移動ダイプレート17に対して更に相対移動させる制御を行うように構成されていてよい。
この場合、例えば、既に触れたように、押出しの初期動作に必要な大きな駆動力を得ることが容易である。その一方で、初期動作の後の動作においては電動駆動部61によって液圧駆動部51の負担を軽減することできる。ひいては、消費エネルギーの低減及び作動液の低減を図ることができる。
成形機(ダイカストマシン1)は、上記のような押出装置11と、押出装置11の液圧駆動部51に作動液を供給する液圧源83と、固定型103と移動型105との間に中子109を出し入れする中子装置13と、を有してよい。中子装置13は、中子109に伝達される駆動力を生じる液圧式の中子シリンダ(液圧駆動部75)と、中子109に伝達される駆動力を生じる中子電動機76と、を有してよい。液圧源83は、液圧駆動部51だけでなく、液圧駆動部75にも作動液を供給してよい。
すなわち、ハイブリッド式の押出装置11に作動液を供給する液圧源83は、ハイブリッド式の中子装置13に兼用されてよい。液圧源83の兼用によって液圧装置67の小型化が図られる。押出装置11及び中子装置13の双方が作動液を低減可能なハイブリッド式であることから、液圧装置67の小型化の効果が向上する。
また、別の観点では、成形機(ダイカストマシン1)は、上記のような押出装置11と、押出装置11の液圧駆動部51に作動液を供給する液圧源83と、固定型103と移動型105との間に中子109を出し入れする中子装置13と、を有してよい。中子装置13は、中子109に伝達される駆動力を生じる液圧式の中子シリンダ(液圧駆動部75)を有してよい。液圧駆動部75は、直接又は間接に(本実施形態では移動型105を介して間接に)移動ダイプレート17に支持されてよい。移動ダイプレート17に支持され、押出装置11に液圧駆動部51に作動液を供給する液圧源83は、中子装置13の液圧駆動部75にも作動液を供給してよい。
液圧駆動部75は、移動ダイプレート17に支持されているから、液圧駆動部51と同様に、液圧源83がベース14に直接に支持されている態様に比較して、液圧源83と液圧駆動部75とを接続する流路(例えば流路67c)を短くすることができる。また、剛体とみなせる部材によって流路を構成することもできる。従って、液圧源83を移動ダイプレート17に設けたことによる既述の効果(例えば作動液の低減)の効果が向上する。さらに、液圧源83が液圧駆動部51と液圧駆動部75とに共用されるから、例えば、液圧装置67の小型化が図られる。小型化によって移動ダイプレート17を移動させるときの慣性力が低減される。
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態に係るダイカストマシン201(押出装置211)の構成を示す図であり、第1実施形態の図2に対応している。
以下の第2実施形態の説明では、基本的に、第1実施形態との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、第1実施形態と同様とされたり、第1実施形態から類推されたりしてよい。また、第1実施形態の構成要素と対応する構成要素については、両者に相違点があっても、便宜上、同一の符号を用いることがある。
本実施形態に係るダイカストマシン201は、押出装置の液圧駆動部の構成のみが第1実施形態のダイカストマシン1と相違する。具体的には、本実施形態に係る押出装置211の液圧駆動部251においては、ピストン257とピストンロッド259とが固定されている。
図12(a)~図14は、ダイカストマシン201における成形品の押出しの動作を説明するための模式図であり、第1実施形態の図8(a)~図10に対応している。
図12(a)は、図8(a)に対応している。図12(b)は、図8(b)に対応している。これらの図に示す動作について、第1実施形態と第2実施形態とで基本的に相違はない。ただし、移動ダイプレート17の型開方向への移動に伴って液圧駆動部251が型開方向へ移動するとき、ピストン257は、可動部材49に加えて、又は代えて、ピストンロッド259から型開方向への力を受ける。
図13(a)は、図9(a)に対応している。この図に示す動作について、第1実施形態と第2実施形態とで基本的に相違はない。ただし、ピストン257がシリンダ部材55に対してヘッド側室55hの側へ相対移動するとき、ピストンロッド259は、ピストン257に係合していることによりピストン257と共に移動するのではなく、ピストン257に固定されていることによりピストン257と共に移動する。
図13(b)は、図9(b)に対応している。この図に示す動作では、第1実施形態と同様に、電動駆動部61によって可動部材49が移動ダイプレート17に対して型閉方向へ駆動される。ただし、第1実施形態とは異なり、ピストン257は、ピストンロッド259に固定されていることから、ピストンロッド259と共に、シリンダ部材55に対してヘッド側室55hの側へ移動する。
ピストン257のシリンダ部材55に対するヘッド側室55hの側への移動によってロッド側室55rの容積は拡大する。このとき、ロッド側室55rへは適宜に作動液が補給されてよい。例えば、ロッド側室55rとタンク85とが接続され、ロッド側室55rの容積の拡大に伴って生じる負圧によってタンク85の作動液がロッド側室55rに補給されてよい。また、液圧源83からロッド側室55rへ作動液が供給されてもよい。液圧源83がポンプ89である場合、ロッド側室55rの圧力は、タンク圧程度とされてもよいし、タンク圧よりも大きくされてもよい。すなわち、液圧駆動部251は、電動駆動部61による押出しをアシストしなくてもよいし、アシストしてもよい。
図14は、図10に対応している。この図に示す動作について、第1実施形態と第2実施形態とで基本的に相違はない。ただし、ピストンロッド259がシリンダ部材55に対してロッド側室55rの側へ相対移動するとき、ピストン257は、ピストンロッド259が係合していることによりピストンロッド259と共に移動するのではなく、ピストンロッド259に固定されていることによりピストンロッド259と共に移動する。
以上の押出装置211(ダイカストマシン201)においても、押出ピン41は、ダイベース105aの空間105sに位置する押出板43が液圧駆動部251及び電動駆動部61によって駆動されることによって、移動型105に対して相対移動する。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
以上の第1及び第2実施形態において、ダイカストマシン1及び201は、それぞれ成形機の一例である。移動型105は、押出ピンが挿通される一方の型の一例である。固定型103は、他方の型の一例である。移動ダイプレート17は、一方の型を保持するダイプレートの一例である。ロッド側室55rは第1シリンダ室の一例である。ヘッド側室55hは第2シリンダ室の一例である。中子装置13の液圧駆動部75は中子シリンダの一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。
金型は、中子を有していなくてもよい。換言すれば、成形機は、中子装置を有していなくてもよい。成形機が中子装置を有している態様において、中子装置は、ハイブリッド式のものではなく、液圧式又は電動式のものであってもよい。液圧式の中子装置は、押出装置と液圧装置を共用していなくてもよい。
押出電動機、中子電動機及び/又はその他の電動機(例えば型締電動機)は、回転式のものではなく、リニアモータとされてもよい。この場合、回転を伝達する伝達機構、及び回転運動を直線運動に変換する変換機構は不要である。また、回転式の電動機は、実施形態でも述べたように、伝達機構を介して変換機構に連結されてもよいし、伝達機構を介さずに変換機構に連結されてもよい。
押出装置の電動駆動部は、1つのみとされてもよい。また、押出装置の電動駆動部は、1つの電動機と、1つの電動機の回転を2箇所へ伝達する2つの伝達機構と、2つの伝達機構からの回転が個別に入力される2つの変換機構とを有する構成であってもよい。そして、2つの変換機構が面対称に配置されてもよい。また、実施形態では、2つの電動駆動部は、その全体が面対称に配置されたが、可動部材に駆動力を付与する部分(ねじ機構の軸心)のみが、可動部材の重心及び/又は液圧駆動部の中心に対して、線対称又は回転対称に配置されてもよい。
押出装置において、液圧駆動部及び電動駆動部の役割分担は適宜に設定されてよい。例えば、押出しの初期において、液圧駆動部及び電動駆動部の一方(例えば液圧駆動部)のみが駆動されてもよい。