JP2022074205A - 非水電解質二次電池用正極活物質 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた出力特性を有する非水電解質二次電池を構成可能な非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造方法を提供する。【解決手段】非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウムと、ニッケルと、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方の金属元素M1とを含む層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMに対する比D50/DSEMが1以上4以下であり、リチウム以外の金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比が0.3以上1未満であり、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素M1のモル数の比が0.025以下である組成を有する。【選択図】図1

Description

本開示は、非水電解質二次電池用正極活物質に関する。
ニッケルを含むニッケルコバルトマンガン酸リチウムを含む非水電解質二次電池用正極活物質は、電気自動車等の大型動力機器に用いられており、それら正極活物質には、出力特性の向上が求められている。高い出力特性を得るには、多くの一次粒子が凝集した二次粒子(以下、凝集粒子ともいう)の構造を有する正極活物質が有効とされている。しかしながら、凝集粒子を含む正極活物質では、正極を形成する際の加圧処理、充放電時における正極活物質の膨張収縮等により、凝集粒子に割れが生じて所望の出力特性が得られなくなる場合があった。これに関連して単一粒子又は1つの二次粒子を構成する一次粒子の数を少なくするようにしたリチウム遷移金属複合酸化物粒子(以下、単粒子ともいう)を含む正極活物質の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特開2017-188443号公報 特開2017-188444号公報
本開示の一態様は、優れた出力特性を有する非水電解質二次電池を構成可能な非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造方法を提供することを目的とする。
第一態様は、リチウムと、ニッケルと、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方の金属元素Mとを含む層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMに対する比D50/DSEMが1以上4以下であり、リチウム以外の金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比が0.3以上1未満であり、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比が0.025以下である組成を有する非水電解質二次電池用正極活物質である。
本開示の一態様によれば、優れた出力特性を有する非水電解質二次電池を構成可能な非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造方法を提供することができる。
実施例1に係る正極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の一例である。 実施例2に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 実施例3に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例1に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例2に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例3に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例4に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 実施例4に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 実施例5に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 実施例6に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例5に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例6に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例7に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 比較例8に係る正極活物質のSEM画像の一例である。 交流インピーダンス測定における等価回路モデルである。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す非水電解質二次電池用正極活物質及びその製造方法に限定されない。
非水電解質二次電池用正極活物質
リチウムと、ニッケルと、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方の金属元素Mとを含む層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMに対する比D50/DSEMが1以上4以下であり、リチウム以外の金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比が0.3以上1未満であり、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比が0.025以下である組成を有する非水電解質二次電池用正極活物質である。
リチウムと、ニッケルと、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方の金属元素Mとを含み、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比が所定値以下の組成を有する比D50/DSEMが所定の範囲内である単粒子形態のリチウム遷移金属複合酸化物粒子を含んでなる正極活物質は、これを含んで構成される非水電解質二次電池において、優れた出力特性を有する。これは例えば、組成にチタン及びジルコニウムを含まない単粒子形態のリチウム遷移金属複合酸化物粒子と比べて、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方を含むことによりリチウム伝導性が向上するため出力特性が向上すると考えられる。
正極活物質を構成するリチウム遷移金属複合酸化物粒子は、比D50/DSEMが1以上4以下であってよい。比D50/DSEMが1の場合、単一粒子であることを示し、1に近づくほど、複合酸化物粒子を構成する一次粒子の数が少ないことを示す。比D50/DSEMは、出力特性の観点から、3.5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましく、特に2以下が特に好ましい。また比D50/DSEMの下限は、例えば1.1以上とすることができる。
リチウム遷移金属複合酸化物粒子においては、電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、耐久性の観点から、例えば0.1μm以上20μm以下である。電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMの下限は、出力特性の観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、また上限は、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が更に好ましく、5μm以下が特に好ましい。
電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、粒径に応じて1000倍以上10000倍以下の範囲で観察し、粒子の輪郭が確認できる一次粒子を100個選択し、選択された粒子について画像処理ソフトウエアを用いて球換算径を算出し、得られた球換算径の算術平均値として求められる。
リチウム遷移金属複合酸化物粒子の50%粒径D50は、例えば1μm以上30μm以下であり、1.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、また出力特性の観点から10μm以下が好ましく、5.5μm以下がより好ましい。
50%粒径D50は、レーザー回折式粒径分布測定装置を用いて、湿式条件で測定される体積基準の累積粒度分布において、小径側からの体積累積50%に対応する粒径として求められる。同様に、後述する90%粒径D90及び10%粒径D10は、それぞれ小径側からの体積累積90%及び体積累積10%に対応する粒径として求められる。
リチウム遷移金属複合酸化物粒子の体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90の10%粒径D10に対する比は、例えば、粒度分布の広がりを示し、比の値が小さいほど粒子の粒径がそろっていることを示す。比D90/D10は、例えば4.5以下であってよい。比D90/D10は、出力特性の観点から、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.9以下である。また、比D90/D10の下限は、例えば1.2以上とすることができる。
リチウム遷移金属複合酸化物は、組成にリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)の少なくとも一方の金属元素Mとを含み、層状構造を有する。リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム以外の金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比(以下、単に[ニッケル比]ともいう)が、例えば0.3以上1未満であってよい。ニッケル比の下限は、好ましくは0.31以上であり、より好ましくは0.32以上である。ニッケル比の上限は、好ましくは0.98以下であり、より好ましくは0.8以下であり、特に好ましくは0.6以下である。
リチウム遷移金属複合酸化物は、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方の金属元素Mを含む。リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比が、例えば0.025以下であり、出力特性の点から、好ましくは0.0001以上0.022以下であり、より好ましくは0.0003以上0.021以下である。金属元素Mがチタンの場合、出力特性の点から好ましくは0.0004以上0.015以下であり、より好ましくは0.0009以上0.011以下である。金属元素Mがジルコニウムの場合、出力特性の点から好ましくは0.004以上0.022以下であり、より好ましくは0.009以上0.021以下である。
リチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素Mを更に含んでいてもよい。リチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト、マンガン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素Mを含む場合、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比は、例えば0より大きく0.75以下である。金属元素Mがコバルトを含む場合、好ましくは0.05以上0.5以下であり、より好ましくは0.1以上0.4以下である。金属元素Mがマンガンを含む場合、好ましくは0.05以上0.5以下であり、より好ましくは0.1以上0.4以下である。金属元素Mがアルミニウムを含む場合、好ましくは0.05以上0.5以下であり、より好ましくは0.1以上0.4以下である。
リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム、ニッケル、金属元素M及び金属元素M以外の金属元素Mを更に含んでいてもよい。金属元素Mとしては、例えば、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、リン(P)、イオウ(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。リチウム遷移金属複合酸化物は、金属元素Mを含む場合、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比は、例えば0より大きく0.1以下であり、好ましくは0.005以上0.05以下であり、より好ましくは0.01以上0.04以下である。
リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム以外の金属の総モル数に対するリチウムのモル数の比は、例えば0.95以上1.5以下であり、好ましくは1以上1.3以下である。
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば下記式(1)で表される組成を有していてもよい。
LiNi 2+α (1)
(式(1)中、p、w、x、y、z及びαは、0.95≦p≦1.5、0.3≦w<1、0<x≦0.025、0≦y≦0.75、0≦z≦0.1、w+x+y+z≦1、-0.1≦α≦0.1を満たし、Mは、Ti及びZrの少なくとも一方を示し、Mは、Co、Mn及びAlから選択される少なくとも一つを示し、Mは、B、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、V、Cr、Zn、Sr、Y、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu及びGdからなる群より選択される少なくとも1種を示す。)
非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、特開2017-188443号公報(米国公開特許2017-0288221)、特開2017-188444号公報(米国公開特許2017-0288222)、特開2017-188445号公報(米国公開特許2017-0288223)等を参照することができるが、具体的には以下のようにして調製することができる。リチウム遷移金属複合酸化物の調製方法は、例えば、前駆体を準備する前駆体準備工程と、リチウム遷移金属複合酸化物を合成する合成工程とを含んでいてよい。
前駆体準備工程では、ニッケル含む酸化物を含む前駆体を準備する。前駆体は、市販品から適宜選択して準備してもよい。ニッケルを含む酸化物を得る方法としては、ニッケル塩を溶媒に溶解し、温度調整、pH調整、錯化剤投入等で目的の組成を有する沈殿物を得て、それら沈殿物の熱処理によってニッケルを含む酸化物を得る共沈法などを挙げることができる。以下ニッケルを含む酸化物の製造方法の一例について説明する。
共沈法によりニッケルを含む酸化物を得る方法には、ニッケル溶液のpH等を調整して種晶を得る種生成工程と、生成した種晶を成長させてニッケルを含む水酸化物を得る晶析工程と、得られるニッケルを含む水酸化物を熱処理してニッケルを含む酸化物を得る酸化工程とを含むことができる。このようなニッケルを含む酸化物を得る方法の詳細については、例えば、特開2003-292322号公報、特開2011-116580号公報(米国公開特許2012-270107)等を参照することができる。
種生成工程では、ニッケルイオンを含む溶液のpHを、例えば11から13に調整することで種晶を含む液媒体を調製する。種晶はニッケルを含む水酸化物を含むことができる。ニッケルイオンを含む溶液としては、ニッケルの硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。種生成工程における槽内温度は例えば20℃から80℃とすることができる。種生成工程における雰囲気は、低酸化性雰囲気とすることができ、例えば酸素濃度を10体積%以下に維持することができる。
種生成工程おける種晶は、ニッケル以外に必要に応じて上述の金属元素M、金属元素M及び金属元素Mを含む水酸化物を含むことができる。その場合、ニッケルイオンを含む溶液の代わりに、ニッケルイオンと必要に応じて金属元素Mのイオンを含む溶液、金属元素Mのイオンを含む溶液及び金属元素Mのイオンを含む溶液を混合した混合溶液のpHを、例えば11から13に調整することで種晶を含む液媒体を調製する。混合溶液は、ニッケル塩、金属元素M塩、金属元素M塩及び金属元素M塩を所望の割合で水に溶解することで調製できる。金属元素M塩、金属元素M塩及び金属元素M塩としては例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。種生成工程における槽内温度は例えば20℃から80℃とすることができる。種生成工程における雰囲気は、低酸化性雰囲気とすることができ、例えば酸素濃度を10体積%以下に維持することができる。
晶析工程では、生成した種晶を成長させてニッケルを含む沈殿物を得る。種晶の成長は例えば、種晶を含む液媒体に、そのpHを例えば7から12.5、好ましくは7.5から12に維持しつつ、ニッケルイオンを含む溶液を添加することで行うことができる。ニッケルイオンを含む溶液の添加時間は、例えば1時間から24時間であり、好ましくは3時間から18時間である。晶析工程における槽内温度は例えば20℃から80℃とすることができる。晶析工程における雰囲気は種生成工程と同様である。種生成工程及び晶析工程におけるpHの調整は、硫酸水溶液、硝酸水溶液等の酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などを用いて行うことができる。
晶析工程におけるニッケルを含む沈殿物は、ニッケル、金属元素M、金属元素M及び金属元素Mを所望の比率で含んでいてもよい。ニッケル、金属元素M、金属元素M及び金属元素Mを所望の比率で含む沈殿物は、晶析工程におけるニッケルイオンを含む溶液の代わりに、ニッケルイオンと必要に応じて金属元素Mのイオンと、金属元素Mのイオン及び金属元素Mのイオンを含む混合溶液を添加することで作製することができる。また、ニッケルイオンを含む溶液を添加するのに並行して、必要に応じて金属元素Mのイオンを含む溶液、金属元素Mのイオンを含む溶液及び金属元素Mのイオンを含む溶液をそれぞれ添加することで作製することができる。
ニッケルを含む酸化物を得る酸化工程では、晶析工程で得られるニッケルを含む沈殿物を、熱処理することによりニッケルを含む酸化物を得る。ニッケルを含む酸化物を得る工程における熱処理温度の上限は例えば500℃以下であり、好ましくは350℃以下である。また熱処理の温度は例えば下限は100℃以上であり、好ましくは200℃以上である。熱処理の時間は例えば0.5時間から48時間であり、好ましくは5時間から24時間である。熱処理の雰囲気は、大気中であっても、酸素を含む雰囲気であってもよい。熱処理は、例えばボックス炉やロータリーキルン炉、プッシャー炉、ローラーハースキルン炉等を用いて行うことができる。
酸化工程では、ニッケルを含む沈殿物の代わりにニッケル、金属元素M、金属元素M及び金属元素Mを所望の比率で含む沈殿物を用いることによりニッケル、金属元素M、金属元素M及び金属元素Mを含む複合酸化物(以下「複合酸化物」ともいう)を得ることもできる。
ニッケルを含む酸化物又は複合酸化物の平均粒径は、例えば2μm以上30μm以下であり、好ましくは3μm以上25μm以下である。複合酸化物の平均粒径は、体積平均粒径であり、レーザー散乱法によって得られる体積基準の粒度分布における小粒径側からの体積積算値が50%となる値である。
合成工程では、ニッケルを含む酸化物と、リチウム化合物と、チタン化合物及びジルコニウム化合物の少なくとも一方とを混合して得られるリチウム混合物を熱処理して熱処理物を得る。得られる熱処理物は、層状構造を有し、ニッケルと、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方とを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含む。
ニッケルを含む酸化物と混合するリチウム化合物としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化リチウム等を挙げることができる。混合に用いるリチウム化合物の粒径は、体積基準による累積粒度分布の50%平均粒径として、例えば0.1μm以上100μm以下であり、2μm以上20μm以下が好ましい。
ニッケルを含む酸化物と混合するチタン化合物としては、例えば、水酸化チタン、酸化チタンを挙げることができる。混合に用いるチタン化合物の粒径は、体積基準による累積粒度分布の50%平均粒径として、例えば0.1μm以上100μm以下であり、2μm以上20μm以下が好ましい。
ニッケルを含む酸化物と混合するジルコニウム化合物としては、例えば、水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウムを挙げることができる。混合に用いるジルコニウム化合物の粒径は、体積基準による累積粒度分布の50%平均粒径として、例えば0.1μm以上100μm以下であり、2μm以上20μm以下が好ましい。
リチウム混合物におけるリチウム以外の金属元素の総モル数に対するリチウムの総モル数の比は例えば、0.95以上1.5以下であり、リチウム以外の金属元素の総モル数に対するチタン及びジルコニウムの合計のモル数の比は、0より大きく、0.025以下である。また、混合は、例えば、高速せん断ミキサー等を用いて行うことができる。
リチウム混合物は、コバルト、マンガン及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素Mをさらに含んでいてもよい。金属元素Mを含むリチウム混合物は、金属元素Mの金属の単体又は金属元素Mを含む化合物を更に混合することにより得ることができる。金属元素Mを含む化合物としては、酸化物、水酸化物、塩化物、窒化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等を挙げることができる。混合物が、金属元素Mを含む場合、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比は、例えば0より大きく0.75以下である。
リチウム混合物は、金属元素Mを更に含んでいてもよい。金属元素Mとしては、例えば、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、リン(P)、イオウ(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。金属元素Mを含むリチウム化合物は、金属元素Mの金属の単体又は金属元素Mを含む化合物を更に混合することで、混合物を得ることができる。金属元素Mを含む化合物としては、酸化物、水酸化物、塩化物、窒化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、蓚酸塩等を挙げることができる。混合物が、金属元素Mを含む場合、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比は、例えば0より大きく0.1以下である。
合成工程においては、ニッケルを含む酸化物の代わりに、酸化工程で得られる複合酸化物を用いても良い。複合酸化物とリチウム化合物と、必要に応じてチタン化合物及びジルコニウム化合物の少なくとも一方を混合して混合物が得られる。
リチウム混合物の熱処理温度は、例えば550℃以上1100℃以下であるが、600℃以上1080℃以下が好ましく、700℃以上1070℃以下がより好ましい。混合物の熱処理は、単一の温度で行ってもよいが、複数の温度で行なってもよい。複数の温度で熱処理する場合、例えば、第一温度を所定時間で保持した後、さらに昇温し、第二温度を所定時間で保持することが望ましい。第一温度は、例えば800℃以上900℃以下であり、第二温度は、例えば900℃以上1000℃以下である。
単一の温度で熱処理する場合の熱処理時間は、例えば1時間以上20時間以下であり、5時間以上10時間以下が好ましい。また、複数の温度で熱処理する場合、第一温度での熱処理時間は、例えば1時間以上20時間以下であり、第二温度での熱処理時間は、例えば1時間以上20時間以下である。第一温度での熱処理時間と第二温度での熱処理時間とは同じであっても、異なっていてもよい。第一温度での熱処理時間と第二温度での熱処理時間とが異なる場合、例えば第一温度での熱処理時間を第二温度での熱処理時間よりも長くすることができる。ここで第一温度での熱処理及び第二温度での熱処理は連続して行ってもよく、それぞれ独立して行ってもよい。第一温度での熱処理及び第二温度での熱処理を連続して行う場合、第一温度から第二温度への昇温速度は例えば、5℃/分とすることができる。
熱処理の雰囲気は、大気中であっても、酸素を含む雰囲気であってもよい。熱処理は、例えばボックス炉、ロータリーキルン炉、プッシャー炉、ローラーハースキルン炉等を用いて行うことができる。
熱処理物には、必要に応じて分散処理が行われる。強い剪断力や衝撃を伴う粉砕処理ではなく、分散処理によって焼結した一次粒子の解離を行うことで粒度分布が狭く、粒度の揃ったリチウム遷移金属複合酸化物粒子が得られる。分散処理は乾式で行っても、湿式で行ってもよく、乾式で行うことが好ましい。分散処理は、例えばボールミル、ジェットミル等を用いて行うことができる。分散処理の条件は、例えば分散処理後のリチウム遷移金属複合酸化物粒子のD50/DSEMが所望の範囲、例えば1以上4以下となるように設定することができる。
例えば分散処理をボールミルで行う場合、樹脂メディアを用いることができる。樹脂メディアの材質としては、例えばウレタン樹脂やナイロン樹脂等を挙げることができる。一般的にボールミルのメディアの材質としては、アルミナ、ジルコニア等が用いられ、これらのメディアによって粒子が粉砕される。これに対して樹脂メディアを用いることで、粒子が粉砕されることなく、焼結した一次粒子の解離が行われる。樹脂メディアの大きさは、例えばφ5mmから30mmとすることができる。また胴体(シェル)としては、例えばウレタン樹脂、ナイロン樹脂等を用いることができる。分散処理の時間は、例えば3から60分間であり、10から30分間が好ましい。ボールミルによる分散処理の条件としては、所望のD50/DSEMが達成できるように、メディア量、回転もしくは振幅速度、分散時間、メディア比重等を調整すればよい。
例えば分散処理をジェットミルで行う場合、一次粒子が粉砕されずに、所望のD50/DSEMが達成できるように、供給圧、粉砕圧等を調整すればよい。供給圧は、例えば0.1から0.5MPaとすることができ、粉砕圧は、例えば0.1から0.6MPaとすることができる。以上の調製方法により、単粒子のリチウム遷移金属複合酸化物を効率よく製造することができる。
非水電解質二次電池用正極
非水電解質二次電池用正極は、集電体と、集電体上に配置され、前記製造方法で製造される非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極活物質層とを備える。係る正極を備える非水電解質二次電池は、高い初期効率及び高い耐久性を達成することができる。
集電体の材質としては例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等が挙げられる。正極活物質層は、上記の正極活物質、導電材、結着剤等を溶媒と共に混合して得られる正極合剤を集電体上に塗布し、乾燥処理、加圧処理等を行うことで形成することができる。導電材としては例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。結着剤としては例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドアクリル樹脂等が挙げられる。
非水電解質二次電池
非水電解質二次電池は、上記非水電解質二次電池用正極を備える。非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池用正極に加えて、非水電解質二次電池用負極、非水電解質、セパレータ等を備えて構成される。非水電解質二次電池における、負極、非水電解質、セパレータ等については例えば、特開2002-075367号公報、特開2011-146390号公報、特開2006-12433号公報(これらは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)等に記載された、非水電解質二次電池のためのものを適宜用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず以下の実施例及び比較例における物性の測定方法について説明する。
D50、D10、D90については、レーザー回折式粒径分布測定装置((株)島津製作所製SALD-3100)を用いて、体積基準の累積粒度分布を測定し、小径側からの体積累積50%に対応する粒径として求めた。また電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMについては、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、1000倍から10000倍で観察した画像において、粒子の輪郭が確認できる粒子を100個選択し、選択された粒子について画像処理ソフトウエア(ImageJ)を用いて球換算径を算出し、得られた球換算径の算術平均値として求めた。
(実施例1)
(種生成工程)
まず、反応槽内に、水を10kg入れて撹拌しながら、アンモニウム水溶液を投入し、アンモニウムイオン濃度が1.8質量%になるよう調整した。槽内温度を25℃に設定し、窒素ガスを流通させ、反応槽内空間の酸素濃度を10体積%以下に保持した。この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、槽内の溶液のpH値を13.5以上に調整した。次に、硫酸ニッケル溶液、硫酸コバルト溶液および硫酸マンガン溶液を混合してモル比で55:20:25の混合水溶液を調製した。前記混合水溶液を、溶質が4モル分になるまで加え、水酸化ナトリウム水溶液で反応溶液中のpH値を12.0以上に制御しながら種生成を行った。
(晶析工程)
前記種生成工程後、晶析工程終了まで槽内温度を25℃以上に維持した。また溶質12
00モルの混合水溶液を用意し、アンモニア水溶液と共に、溶液中のアンモニウムイオン
濃度を2000ppm以上に維持しながら、反応槽内に新たに種生成が起こらないよう5
時間以上かけて同時に投入した。反応中は水酸化ナトリウム水溶液で反応溶液中のpH値を
10.5~12.0に維持するように制御した。反応中に逐次サンプリングを行い、複合
水酸化物粒子のD50が約4.5μmとなった所で投入を終了した。次に生成物を水洗、濾過、乾燥させて複合水酸化物粒子を得た。得られた水酸化物前駆体を大気雰囲気下、300℃で20時間、熱処理を行い、Ni/Co/Mn=0.55/0.20/0.25組成比率を有し、D10=3.8μm、D50=4.6μm、D90=5.7μm、D90/D10=1.5である複合酸化物を得た。
(合成工程)
得られた複合酸化物と炭酸リチウムと酸化チタンを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、TiがNi+Co+Mnに対して0.1mol%となるように混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を大気中850℃で9.5時間焼成の後、950℃で6時間焼成し、焼結体を得た。得られた焼結体を解砕し、樹脂製ボールミルにて15分間の分散処理を行い乾式篩にかけて粉状体を得た。以上により、電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMが2.1μmであり、D10=2.8μm、D50=4.7μm、D90=7.5μm、平均粒径DSEMに対するD50の比D50/DSEMが2.2であり、粒度分布における比D90/D10が2.7であり、組成式:Li1.08Ni0.55Co0.20Mn0.25Ti0.001で表されるリチウム遷移金属複合酸化物粒子を得た。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図1に示す。
(実施例2)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化チタンを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、TiがNi+Co+Mnに対して0.5mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図2に示す。
(実施例3)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化チタンを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、TiがNi+Co+Mnに対して1mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図3に示す。
(比較例1)
合成工程において酸化チタンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図4に示す。
(比較例2)
合成工程において得られた原料混合物を大気中850℃で9.5時間焼成し、焼結体を得た。得られた焼結体を解砕し、樹脂製ボールミルにて10分間の分散処理を行い乾式篩にかけて粉状体を得たこと以外は比較例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図5に示す。
(比較例3)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化チタンを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、TiがNi+Co+Mnに対して0.5mol%となるように混合したこと以外は比較例2と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図6に示す。
(比較例4)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化チタンを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、TiがNi+Co+Mnに対して1mol%となるように混合したこと以外は比較例2と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表1に、SEM画像を図7に示す。
Figure 2022074205000002
(実施例4)
合成工程において酸化チタンの代わりに酸化ジルコニウムを用いたことと複合酸化物と炭酸リチウムと酸化ジルコニウムを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、ZrがNi+Co+Mnに対して0.5mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図8に示す。
(実施例5)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化ジルコニウムを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、ZrがNi+Co+Mnに対して1mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図9に示す。
(実施例6)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化ジルコニウムを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、ZrがNi+Co+Mnに対して2mol%となるように混合したこと以外は実施例1と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図10に示す。
(比較例5)
合成工程において酸化ジルコニウムを使用しなかったこと以外は実施例4と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図11に示す。
(比較例6)
合成工程において得られた原料混合物を大気中850℃で9.5時間焼成し、焼結体を得た。得られた焼結体を解砕し、樹脂製ボールミルにて10分間の分散処理を行い乾式篩にかけて粉状体を得たこと以外は比較例5と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図12に示す。
(比較例7)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化ジルコニウムを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、ZrがNi+Co+Mnに対して0.5mol%となるように混合したこと以外は比較例6と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図13に示す。
(比較例8)
合成工程において複合酸化物と炭酸リチウムと酸化ジルコニウムを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.08、ZrがNi+Co+Mnに対して1mol%となるように混合したこと以外は比較例6と同様に行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の物性値を表2に、SEM画像を図14に示す。
Figure 2022074205000003
評価用電池の作製
上記で得られた正極活物質を用いて、以下の手順で評価用電池を作製した。
正極の作製
正極活物質92質量部、アセチレンブラック3質量部、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させて正極合剤を調製した。得られた正極合剤を、集電体としてのアルミニウム箔に塗布し、乾燥後ロールプレス機で圧縮成形した後、所定のサイズに裁断することにより、正極を作製した。
負極の作製
人造黒鉛97.5質量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)1.0質量部を純水に分散、溶解させて負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥後ロールプレス機で圧縮成形し、所定のサイズに裁断することにより、負極を作製した。
評価用電池の作製
正極及び負極の集電体に各々リード電極を取り付けた後、正極と負極との間にセパレータを配し、袋状のラミネートパックにそれらを収納した。次いで、これを65℃で真空乾燥させて、各部材に吸着した水分を除去した。その後、アルゴン雰囲気下でラミネートパック内に電解液を注入し、封止して評価用電池を作製した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを体積比3:7で混合し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度が1モル/Lになるように溶解させたものを用いた。こうして得られた評価用電池を25℃の恒温槽に入れ、微弱電流でエージングを行った後に、以下の評価を行った。評価結果を表3又は表4に示す。実施例1から実施例3および比較例1から比較例4で得られた正極活物質を用いた評価結果については表3に示し、実施例4から実施例6および比較例5から比較例8で得られた正極活物質を用いた評価結果については表4に示す。
(常温直流内部抵抗測定)
エージング後の評価用電池を25℃の環境下に置き、直流内部抵抗の測定を行った。
満充電電圧4.2Vにおける充電深度50%まで定電流充電を行った後、特定の電流i
によるパルス放電を10秒間行い、10秒目の電圧Vを測定した。横軸に電流i、縦軸に
電圧Vをとって交点をプロットし、交点を結んだ直線の傾きを直流内部抵抗(DC-IR
)とした。なお、電流i=0.03A、0.05A、0.08A、0.105A及び0.
13Aとした。DC-IRが低いことは、出力特性が良好であることを意味する。
(低温直流内部抵抗測定)
エージング後の評価用電池を-25℃の環境下に置き、直流内部抵抗の測定を行った。
満充電電圧4.2Vにおける充電深度50%まで定電流充電を行った後、特定の電流i
によるパルス放電を10秒間行い、10秒目の電圧Vを測定した。横軸に電流i、縦軸に
電圧Vをとって交点をプロットし、交点を結んだ直線の傾きを直流内部抵抗(DC-IR
)とした。なお、電流i=0.03A、0.05A、0.08A、0.105A及び0.
13Aとした。DC-IRが低いことは、出力特性が良好であることを意味する。
(抵抗増加率の算出)
エージング
得られた評価用電池に充電電圧4.3V(対極C)、充電電流0.1Cでの定電圧定電流充電と、放電電圧2.75V(対極C)、放電電流0.2Cの定電圧定電流放電からなる充放電を1回行った。その後、充電電流を0.2Cに変更して充放電を2回行い、正極及び負極に非水電解液をなじませた。
交流インピーダンスの測定
エージング後、充電電圧4.3V、充電電流0.2Cでの定電圧定電流充電で、充電率(SOC)100%まで充電した。インピーダンス測定装置(1470Eおよび1455A、いずれもSOLARTRON社製)を用いて、交流インピーダンス法で1MHzから0.1Hzの範囲で抵抗測定を行い、ナイキストプロットを得た。上記の抵抗測定の後、放電電圧2.75V、放電電流0.2Cで定電圧定電流放電した。次いで、評価用電池を、45℃定温下で、充電電圧4.3V、充電電流1Cでの定電圧定電流充電と、放電電圧2.75V、放電電流1Cでの定電圧定電流放電を1サイクルとし、200サイクルの充放電を行った。200サイクルの充放電後、充電電圧4.3V、充電電流0.2Cでの定電圧定電流充電でSOC100%まで充電し、上記インピーダンス測定装置を用いて同様に抵抗測定を行い、ナイキストプロットを得た。
得られたナイキストプロットに基づき、図15の等価回路モデルを組み、フィッティング計算を行った。測定により得られたインピーダンスの円弧成分の頂点周波数の高いほうを負極由来の抵抗とし、頂点周波数の低いほうを正極由来の抵抗Rとした。サイクル前の正極由来の抵抗値をR(p)、サイクル後の正極由来の抵抗値をR(a)として、R(a)/R(p)×100(%)を抵抗増加率として算出した。








Figure 2022074205000004
表3より実施例1から3の正極活物質のように、比D50/DSEMが1以上4以下(単粒子)であって、リチウム以外の金属の総モル数に対するチタンのモル数の比(以下チタンのモル数の比)が0.025以下である正極活物質を含んで構成される電池は、チタンを含まない比較例1(単粒子)と比べて、優れた常温出力特性、低温出力特性、抵抗増加率を有することを確認できた。また、チタンのモル数の比が0.005である実施例2およびチタンのモル数の比が0.01である実施例3は、チタンのモル数の比が0.001である実施例1と比べて、相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率が高くなることを確認できた。なお表3の実施例1から3における相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率は、各実施例の各特性の値を比較例1の各特性の値で除した値を100倍したものである。
表3よりリチウム以外の金属の総モル数に対するチタンのモル数の比が0.025以下である比較例3および比較例4(凝集粒子)は、チタンを含まない比較例2(凝集粒子)と比べて、常温出力特性、低温出力特性、抵抗増加率はあまり改善しなかった。また、比較例3、4においては、相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率があまり改善しなかった。これらのことから、チタンのモル数の比が0.025以下であることの効果は、比D50/DSEMが1以上4以下(単粒子)である正極活物質の効果であることを確認できた。なお表3の比較例3および4における相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率は、各実施例の各特性の値を比較例2の各特性の値で除した値を100倍したものである。
Figure 2022074205000005


表4より実施例4から6の正極活物質のように、比D50/DSEMが1以上4以下(単粒子)であって、リチウム以外の金属の総モル数に対するジルコニウムのモル数の比(以下ジルコニウムのモル数の比)が0.025以下である正極活物質を含んで構成される電池は、ジルコニウムを含まない比較例5(単粒子)と比べて、優れた常温出力特性、低温出力特性、抵抗増加率を有することを確認できた。また、ジルコニウムのモル数の比が0.01である実施例5およびジルコニウムのモル数の比が0.02である実施例6は、ジルコニウムのモル数の比が0.005である実施例4と比べて相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率が高くなることを確認できた。なお表4の実施例4から6における相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率は、各実施例の各特性の値を比較例5の各特性の値で除した値を100倍したものである。
表4よりリチウム以外の金属の総モル数に対するジルコニウムのモル数の比が0.025以下である比較例7および比較例8(凝集粒子)は、ジルコニウムを含まない比較例6(凝集粒子)と比べて、常温出力特性、低温出力特性、抵抗増加率はあまり改善しなかった。また、比較例7、8においては、相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率があまり改善しなかった。これらのことから、ジルコニウムのモル数の比が0.025以下であることの効果は、比D50/DSEMが1以上4以下(単粒子)である正極活物質の効果であることを確認できた。なお表4の比較例7および8における相対常温出力特性改善率、相対低温出力特性改善率、相対抵抗増加改善率は、各実施例の各特性の値を比較例6の各特性の値で除した値を100倍したものである

Claims (5)

  1. リチウムと、ニッケルと、チタン及びジルコニウムの少なくとも一方の金属元素Mとを含む層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物は、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50の電子顕微鏡観察に基づく平均粒径DSEMに対する比D50/DSEMが1以上4以下であり、
    リチウム以外の金属の総モル数に対するニッケルのモル数の比が0.3以上1未満であり、
    リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比が0.025以下である組成を有する非水電解質二次電池用正極活物質。
  2. 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム以外の金属の総モル数に対する金属元素Mのモル数の比が0.0001以上0.022以下である組成を有する非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 前記リチウム遷移金属複合酸化物が下記式(1)で表される組成を有する請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
    LiNi 2+α (1)
    (式(1)中、p、w、x、y、z及びαは、0.95≦p≦1.5、0.3≦w<1、0<x≦0.025、0≦y≦0.75、0≦z≦0.1、w+x+y+z≦1、-0.1≦α≦0.1を満たし、Mは、Ti及びZrの少なくとも一方を示し、Mは、Co、Mn及びAlから選択される少なくとも一つを示し、Mは、B、Na、Mg、Si、P、S、K、Ca、V、Cr、Zn、Sr、Y、Nb、Mo、In、Sn、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu及びGdからなる群より選択される少なくとも1種を示す。)
  4. 集電体と、前記集電体上に配置され、請求項1から3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極活物質層とを備える非水電解質二次電池用正極。
  5. 請求項4に記載の非水電解質二次電池用正極を備える非水電解質二次電池。
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