JP2022073598A - 環状ペプチド誘導体の製造方法及び環状ペプチド化合物の製造方法 - Google Patents

環状ペプチド誘導体の製造方法及び環状ペプチド化合物の製造方法 Download PDF

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Tetsuo Shinada
陽子 保野
Yoko Yasuno
幸一 鈴木
Koichi Suzuki
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Yoriyoshi Ehata
慎一 石黒
Shinichi Ishiguro
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Abstract

【課題】環状ペプチド化合物を製造するために使用できる環状ペプチド誘導体を効率よく製造する方法の提供。【解決手段】式(1)TIFF2022073598000022.tif48170で表される環状ペプチド誘導体の製造方法であって、式(2)TIFF2022073598000023.tif50170で表される化合物の酸化反応により得られる生成物を、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物、若しくは、その化合物の塩又はエステルと縮合反応させる。【選択図】図1

Description

本発明は、環状ペプチド誘導体の製造方法及び環状ペプチド化合物の製造方法に関する。
下記一般式(A)
Figure 2022073598000002
で表される環状ペプチド化合物は、哺乳類の脳を構成する細胞の一種であるアストロサイト(星状膠細胞)に対し、特異的な増殖活性を示すことが知られている(特許文献1を参照)。
この環状ペプチド化合物は、カイコ(Bombyx mori)蛹を宿主とする冬虫夏草菌ハナサナギタケ(Isaria japonica)の子実体と、感染した宿主とを含む全体を粉末化し、これを抽出材料として、熱水抽出、逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー、逆相HPLCと精製を重ねることにより単離され得る。
特許第6182274号公報
しかしながら、特許文献1に記載の環状ペプチド化合物は天然物からの抽出物であることから、必ずしも当該環状ペプチド化合物を安定的に供給できるものではなく、生産性の観点から課題を有していた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、環状ペプチド化合物を製造するために使用することができる環状ペプチド誘導体を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物を使用した酸化反応及び縮合反応を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
下記一般式(1)
Figure 2022073598000003
(式(1)中、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は-O-R51(R51は水素原子または保護基を示す)を示し、
61は-O-R(Rは水素原子、炭化水素基または保護基を示す)を示し、
は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
10は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
11は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
12は水素原子または保護基を示し、
14は-(CH-COOR13(R13は水素原子または保護基を示し、nは1以上の数である)を示し、
ただし、R51、R、R12、及びR13のうちの少なくとも一つは水素原子以外であり、
mは1である)
で表される環状ペプチド誘導体の製造方法であって、
下記一般式(2)
Figure 2022073598000004
(式(2)中、R、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmはそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmと同義である)
で表される化合物の酸化反応により得られる生成物を、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物、若しくは、その化合物の塩又はエステルと縮合反応させる工程を含む、製造方法。
項2
前記カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物はアミノ酸である、項1に記載の製造方法。
項3
前記アミノ酸は、グルタミン酸又はアスパラギン酸である、項2に記載の製造方法。
項4
前記酸化反応は、Dess-Martin酸化及びPinnick酸化を含む、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5
前記縮合反応ではリン系縮合剤が使用される、項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6
前記式(1)中、Rはアルキニル基である、項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
項7
式(1)中、R14が-(CH-COOR13(R13は前記式(1)のR13と同義である)である、項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8
項1~7のいずれか1項に記載の製造方法で得られた環状ペプチド誘導体を、水素化還元反応をすることで環状ペプチド化合物を得る工程を含む、環状ペプチド化合物の製造方法。
項9
前記環状ペプチド化合物は、下記一般式(10)
Figure 2022073598000005
(式(10)中、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびR11と同義である)
で表される化合物である、項8に記載の製造方法。
本発明によれば、環状ペプチド誘導体を高い収率で得ることができ、また、環状ペプチド誘導体から環状ペプチド化合物を簡便な方法にて高収率で得ることができる。
製造例1の合成スキームを示す。 製造例1で得られたカテコール体のNMRスペクトルであり、(a)はH-NMR、(b)は13C-NMRである。 製造例2の第一段階の合成スキームを示す。 製造例2の第二段階の合成スキームを示す。 製造例2の第三段階の合成スキームを示す。 製造例2で得られたメチルエステルのNMRスペクトルであり、(a)はH-NMR、(b)は13C-NMRである。 製造例3の合成スキームを示す。 製造例3で得られた環化前駆体のNMRスペクトルであり、(a)はH-NMR、(b)は13C-NMRである。 実施例1の合成スキーム(マクロラクタム構造の合成スキーム)を示す。 実施例1で得られた環化前駆体のNMRスペクトルであり、(a)はH-NMR、(b)は13C-NMRである。 実施例1の合成スキーム(グルタミン酸との連結の合成スキーム)を示す。 実施例1で得られた縮合体のH-NMRである。 実施例2の合成スキームを示す。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.環状ペプチド誘導体の製造方法
本発明の環状ペプチド誘導体の製造方法では、下記一般式(1)で表される環状ペプチド誘導体が製造される。
Figure 2022073598000006
ここで、式(1)中、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は水素原子または炭化水素基を示し、
は-O-R51(R51は水素原子または保護基を示す)を示し、
61は-O-R(Rは水素原子、炭化水素基または保護基を示す)を示し、
は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
10は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
11は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
12は水素原子または保護基を示し、
14は-(CH-COOR13(R13は水素原子または保護基を示し、nは1以上の数である)を示し、
ただし、R51、R、R12、及びR13のうちの少なくとも一つは水素原子以外あり、
mは1である。
特に本発明の製造方法は、下記一般式(2)で表される化合物の酸化反応により得られる生成物を、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物、若しくは、その化合物の塩又はエステルと縮合反応させる工程(以下、この工程を本明細書において「工程A」と略記する)を含む。
Figure 2022073598000007
ここで、式(2)中、R、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmはそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmと同義である。特には、式(2)におけるR、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmはそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmはと同一である。
本発明において、炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基のいずれであってもよい。炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば、1~10であり、1~5であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1~3であることが特に好ましい。具体的には、炭化水素基として、メチル基、エチル基、ビニル基、アセチニル基、プロピル基、イソプロピル基、プロペニル基等を挙げることができる。炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
本発明において、保護基とは、前記炭化水素基以外であって、芳香族基;複素環基;アルコキシアルキル基、カルボニル基、エステル等を有する含酸素官能基;シリル基等のケイ素原子を有する基等を挙げることができる。
保護基が芳香族基である場合、例えば、フェニル基、ベンジル基、オキシベンジル基(-O-CH-Ph)、2-ニトロベンゼンスルホニル基(ノシル基)等を挙げることができる。保護基が含酸素官能基である場合、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)を挙げることができる。保護基がケイ素原子を有する基である場合、tert-ブチルジメチルシリル基(-Si(t-Bu)(CH)、tert-ジフェニルシリル基(-Si(t-Bu)Ph)等を挙げることができる。
式(1)及び(2)において、Rが炭化水素基である場合、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、Rが炭化水素基である場合、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基又は炭素数2~5のアルキニル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基又は炭素数2~3のアルキニル基であることがさらに好ましく、アセチニル基(-C≡C)であることが特に好ましい。特に式(2)において、Rがアセチニル基である場合、エチル基等に比べて立体障害が小さいので、後記する縮合反応が進行しやすくなる。
式(1)及び(2)において、Rが炭化水素基である場合、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、Rが炭化水素基である場合、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、Rは、-O-R51(R51は水素原子または保護基を示す)であり、R51は保護基であることが好ましく、中でも、芳香族基であることがより好ましく、オキシベンジル基(-O-CH-Ph)であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、R61は-O-R(Rは水素原子、炭化水素基または保護基を示す)であり、Rは炭化水素基または保護基であることが好ましく、Rが炭化水素基である場合はアリル基であることが好ましく、保護基である場合は、tert-ブチルジメチルシリル基(-Si(t-Bu)(CH)、tert-ジフェニルシリル基(-Si(t-Bu)Ph)、ベンジル基、メトキシメチル基(MOM)等を挙げることができる。Rはtert-ブチルジメチルシリル基であることが好ましい。
式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(1)及び(2)において、R10は、前記保護基であることが好ましく、2-ニトロベンゼンスルホニル基(ノシル基)であることが特に好ましい。
式(1)において、R11は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(1)において、R12は保護基であることが好ましく、芳香族基であることがさらに好ましく、ベンジル基であることが特に好ましい。
式(1)において、R14は-(CH-COOR13(nは1~4)であることが好ましく、-(CH-COOR13であることがより好ましい。R13は保護基であることが好ましく、芳香族基であることがさらに好ましく、ベンジル基であることが特に好ましい。
式(1)及び式(2)において、Rの結合位置は特に限定されず、例えば、下記式(1’)で表される結合位置とすることができる。
Figure 2022073598000008
ここで、式(1’)中、R~R、R~R12及びR14は前記式(1)のR~R、R~R12及びR14と同義であり、R61は前記式(1)のR61と同義である。
工程Aでは、式(2)で表される化合物の酸化反応を含む。具体的に当該酸化反応は、アルコールをカルボン酸に酸化させるための反応である。これにより、式(2)で表される化合物中の矢印で示される水酸基がカルボキシ基に変化する。
工程Aにおいて、酸化反応の種類は特に限定されず、例えば、公知のアルコール化合物の酸化反応を広く採用することができる。酸化反応は、例えば、アルコールをアルデヒドに酸化し、次いで、このアルデヒドをカルボン酸に酸化する、二段階の反応であってもよい。このように酸化反応を二段階で行う場合は、意図しない官能基の酸化反応が起こることを防止しやすい。
工程Aにおいて、前記酸化反応は、Dess-Martin酸化及びPinnick酸化を含むことが好ましい。これにより、ラセミ化を抑制しやすく、また、温和な反応条件で酸化が起こりやすい。例えば、Dess-Martin酸化により、前記水酸基はアルデヒドに酸化され、次いで、Pinnick酸化によりアルデヒドがカルボン酸へと酸化される。
工程Aにおいて、前記酸化反応を行う場合、酸化剤を式(2)で表される化合物1モルあたり、1~5モル使用することが好ましい。酸化剤の種類は特に限定されず、酸化反応で使用される公知の酸化剤を広く使用することができる。
Dess-Martin酸化では、酸化剤として1,1,1-Triacetoxy-1,1-dihydro-1,2-benziodoxol-3(1H)-one(DMP)を用いることが好ましい。Dess-Martin酸化の場合、式(2)で表される化合物1モルあたり、酸化剤を1~5モル使用することが好ましく、1~3モル使用することがより好ましい。
Pinnick酸化では、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いることが好ましい。Pinnick酸化の場合、式(2)で表される化合物1モルあたり、酸化剤を1~5モル使用することが好ましく、2~5モル使用することがより好ましい。
前記酸化反応は、その他の酸化剤を使用することもでき、例えば、2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl等のニトロキシルラジカル種とiodosobenzene diacetateとを組み合わせた酸化剤を例示することができる。
工程Aにおいて、前記酸化反応では必要に応じて溶媒を使用することもできる。酸化反応における溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の含塩素化合物、アセトリトリル、tert-ブタノールを使用できる。
工程Aにおいて、前記酸化反応の反応温度は特に限定されず、例えば、-20~60℃で行うことができ、0~30℃で行うことが好ましい。
工程Aでは、前記酸化反応後、当該酸化反応で得られた生成物(カルボン酸化合物)と、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物、若しくは、その化合物の塩又はエステルと縮合反応させる。以下、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物、若しくは、その化合物の塩又はエステルを「化合物C」と略記する。
化合物Cのうち、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物は特に限定されず、例えば、アミノ酸を挙げることができ、中でもグルタミン酸又はアスパラギン酸であることが好ましい。
特に、工程Aでは、前記酸化反応で得られた生成物(カルボン酸化合物)と、グルタミン酸エステル又はアスパラギン酸エステルと縮合反応させることが好ましい。縮合反応でグルタミン酸エステルを使用することで、得られる環状ペプチド誘導体、すなわち、一般式(1)で表される環状ペプチド誘導体は、式(1)のR14が-(CH-COOR13となる。縮合反応でアスパラギン酸エステルを使用する場合、得られる環状ペプチド誘導体、すなわち、一般式(1)で表される環状ペプチド誘導体は、式(1)のR14が-(CH)-COOR13である。いずれの場合も、R13としては、保護基であることが好ましく、芳香族基であることがより好ましく、ベンジル基であることが特に好ましい。
工程Aの縮合反応では、酸化反応で得られたカルボン酸化合物1モルあたり、化合物Cの使用量は1~5モルであることが好ましく、2~5モルであることがより好ましく、3~4モルであることがさらに好ましい。
例えば、工程Aにおいて、前記酸化反応で得られた生成物(カルボン酸化合物)と、グルタミン酸エステルとを縮合反応させた場合、得られる式(1)で表される環状ペプチド誘導体は、下記一般式(1A)で表される。
Figure 2022073598000009
ここで、式(1A)中、R~R、R61、R~R13及びmは前記式(1)のR~R及び、R61、R~R13及びmと同義である。
工程Aにおいて、縮合反応の方法は特に限定されず、例えば、公知の縮合反応の条件を広く採用することができる。ラセミ化を抑制しやすく、また、温和な反応条件で酸化を促進させる観点から、縮合反応では縮合剤を使用するもできる。
縮合剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の縮合剤を広く使用することができる。特に、工程Aの縮合反応では、縮合剤としてリン系縮合剤が使用されることが好ましい。このような縮合剤としては、例えば、3-(Diethoxyphosphoryloxy)-3H-benzo[d][1,2,3]triazin-4-one(DEPBT)、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide Hydrochloride, 4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium Chloride、1-[Bis(dimethylamino)methylene]-1H-1,2,3-triazolo[4,5-b]pyridinium 3-oxid hexafluorophosphate, 1-[Bis(dimethylamino)methylene]-1H-benzotriazolium 3-Oxide Hexafluorophosphate、 N-[1-(Cyano-2-ethoxy-2-oxoethylideneaminooxy)dimethylamino(morpholino)]uronium hexafluorophosphate等が例示される。リン系縮合剤は、リン酸アジド化合物が好ましく、DEPBTであることが特に好ましい。
縮合剤を使用する場合、その使用量は特に限定されず、例えば、酸化反応で得られたカルボン酸化合物1モルあたり、縮合剤の使用量は1~3モルであることが好ましく、1.2~2.5モルであることがより好ましい。
工程Aの縮合反応では必要に応じて溶媒を使用することができる。この溶媒としては特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびt-ブタノール等のアルコール;N,N-ジメチルアクリルアミド等のアミド系溶媒;等が挙げられる。
縮合反応は、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等の塩基触媒の存在下で行ってもよい。
工程Aにおいて、前記縮合反応の反応温度は特に限定されず、例えば、-20~60℃で行うことができ、0~30℃で行うことが好ましい。
工程Aにて、酸化反応及びこれに次ぐ縮合反応をすることで、式(1)で表される環状ペプチド誘導体が高収率で生成し得る。従来は、β-ヒドロキシドーパユニットと、β-ヒドロキシイソロイシンユニットのような非天然型アミノ酸由来の構造を含むマクロラクタム構造と、グルタミン酸誘導体等のアミノ酸誘導体とが縮合して連結された環状ペプチド誘導体を立体選択的に反応させる方法は知られていなかった。これに対し、本発明では、式(2)で表される化合物を使用する工程Aを採用したことにより、式(1)で表される環状ペプチド誘導体を可能としている。従って、式(1)で表される環状ペプチド誘導体は、β-ヒドロキシドーパユニット及びβ-ヒドロキシイソロイシンユニットを含む構造を有する。
一般的に、生合成ではペプチドを全て結合してから環化することで、環状ペプチド誘導体が製造されることが知られている。これに対し、本発明の環状ペプチド誘導体の製造方法では、環化構造を有する化合物に対して化合物C(例えば、グルタミン酸エステル)を結合させるものである。つまり、本発明の環状ペプチド誘導体の製造方法では、最後に化合物Cを結合させるものであるので、化合物Cの種類に応じて、種々のアミノ酸等が結合した環状ペプチド誘導体を得ることができるという利点を有する。また、本発明のように、あらかじめ環構造を構築し、その後に側鎖(化合物C)を導入する経路は、保護基の脱着にかかる工程の簡略化をもたらすことを可能とし、目的物を高い収率で与えることができるという利点も有する。
2.環状ペプチド化合物の製造方法
本発明の環状ペプチド化合物の製造方法では、前記環状ペプチド誘導体の製造方法で得られた環状ペプチド誘導体を、水素化還元反応をすることで環状ペプチド化合物を得る工程を含む。つまり、本発明の環状ペプチド化合物の製造方法は、環状ペプチド誘導体の製造方法における工程Aの縮合反応の後、水素化還元反応をする工程を含む。
環状ペプチド化合物の製造方法において、水素化還元反応の方法は特に限定されず、例えば、公知の水素化還元反応条件を広く採用することができる。例えば、触媒の存在下、水素を使用することで、水素化還元反応を行うことができる。触媒としては、例えば、水素化還元反応で使用される公知の触媒を使用することができ、具体的にはパラジウム炭素を挙げることができる。水素化還元反応では必要に応じて溶媒を使用することもできる。この溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールを挙げることができる。
工程Aの縮合反応で得られた式(1)で表される環状ペプチド誘導体が、例えば、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)、tert-ブチルジメチルシリル基(TBS基)、2-ニトロベンゼンスルホニル基(ノシル基)等の保護基を有する場合は、あらかじめ当該保護基を脱保護してから、水素化還元反応を行うこともできる。脱保護の方法は特に限定されず、例えば、公知の脱保護の方法を広く採用することができる。例えば、TBS基の脱保護及びノシル基の脱保護をこの順に行うことができる。
式(1)で表される環状ペプチド誘導体がアルキニル基を有する場合(例えば、式(1)のR)、前記水素化還元反応によりアルキニル基はアルキル基へと変化し得る。例えば、式(1)で表される環状ペプチド誘導体中にアセチニル基が存在する場合、前記水素化還元反応によりエチル基へと変化し得る。
本発明の環状ペプチド化合物の製造方法の一態様では、例えば、工程Aの縮合反応で得られた式(1)で表される環状ペプチド誘導体を脱保護し、その後、水素化還元反応をする。これにより、例えば、下記式(10)で表される化合物が生成し、具体例としては下記式(A)で表される化合物が生成し得る。
Figure 2022073598000010
式(10)中、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびR11と同義である。この場合、R61は水酸基であることが好ましい。
また、式(A)中、R、R及びRは、前記式(1)のR、R及びRと同義である。具体的に式(A)で表される化合物は、式(1)におけるRが水酸基(ただし、mは1としている)であり、R12が水素原子であり、R14は-(CH-COOHである。なお、式(A)において、Rはエチル基、R61はOH、R、R、R及びR11は水素原子、R10はメチル基としているが、これに限定されるものではない。
水素化還元反応において、式(1)で表される環状ペプチド誘導体がアルキニル基を有する場合はアルキル基へと変化する他、例えば、化合物Cに由来するエステル部位はカルボン酸に変化する。また、Rが保護基を有する場合(例えば、オキシベンジル基等のエーテル構造を含有する基である場合)は、水素化還元反応によってRは水酸基に変化し得る(前記式(A)を参照)。
水素化還元反応で得られる環状ペプチド化合物は、式(1)で表される化合物が水素化還元されて生成され得る化合物である限りは特に制限されず、好ましくは、式(1)中のRが水酸基であり、R12が水素原子であり、R14のCOOR13中のR13が水素原子である化合物である。この場合において、Rがエチル基であることも好ましい。環状ペプチド化合物は、R14が-(CH-COOH又は-CH-COOHであることがさらに好ましい。最も好ましくは、水素化還元反応で得られる環状ペプチド化合物は、前記一般式(A)で表される化合物において、R、R及びRがいずれもメチル基である化合物である。
本発明の環状ペプチド化合物の製造方法では、前述の環状ペプチド誘導体の製造方法で得られた環状ペプチド誘導体を、水素化還元反応をすることで環状ペプチド化合物を得ることができることから、高収率で環状ペプチド化合物得ることができる。その上、環状ペプチド誘導体の製造方法で使用する化合物Cの種類に応じて、種々のアミノ酸等が結合した環状ペプチド化合物を得ることができる。
3.本発明で使用する原料の調製方法
以下、本発明の環状ペプチド誘導体の製造方法において、工程Aで使用する式(2)で表される化合物の製造方法の一例について説明する。式(2)で表される化合物の製造方法は特に制限されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。
式(2)で表される化合物の製造方法は、Rが保護基である場合、例えば、下記式(21a)で表される環化前駆体の分子内環化反応によって下記式(22a)で表される化合物を得る工程(以下、環化工程という)を備えることができる。
Figure 2022073598000011
式(21a)中、R~R及びm前記式(1)のR~R及びmと同義である。式(21a)中、MOMはメトキシメチル基(以下、同じ)を表す。TBSは、tert-ブチルジメチルシリル基を表す。
Figure 2022073598000012
式(22a)中、R~R及びm前記式(1)のR~R及びmと同義である。
環化工程では、式(21a)で表される環化前駆体の分子内環化反応により、β-ヒドロキシイソロイシンユニットと、β-ヒドロキシドーパユニットの間にアミド結合が形成し、式(22a)で表される化合物が形成される。
前記分子内環化反応について、従来公知の方法(例えば、P.Li,C.D.Evans,M.M.Joullie,Org.Lett.,2005,7,5325)に記載の方法)では、その収率は10~20%に留まり、環化前駆体の2量体が多く副生することが知られていた。また、他の方法(例えば、P.Li,C.D.Evans,Y.Wu,B.Cao,E.Hamel,M.M.Joullie,J.Am.Chem.Soc.,2008,130,2351)では、収率が30~40%に向上するものの、依然として収率40%を超えることはなかった。
この点、本発明では、環化工程において、結合剤を含む溶媒中に、希薄な基質溶液を滴下することにより、基質(つまり、式(21a)で表される化合物)の濃度を薄め、分子間での反応の進行を抑えるとともに、分子内での環化反応の進行を促進することで、従来よりも高い収率で分子内環化反応を行うことができる。このような分子内環化反応を行うことで、分子間の反応を抑制できることから、目的の環化化合物(つまり、式(22a)で表される化合物)の収率が高くなるものと推察される。
環化工程において結合剤の種類は特に限定されず、分子内環化反応で使用される結合剤を広く使用することができる。結合剤としては、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)を挙げることができる。
環化工程において結合剤および基質の溶解に用いる溶媒としては特に限定されず、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびt-ブタノール等のアルコール;N,N-ジメチルアクリルアミド等のアミド系溶媒;等の極性溶媒であることが好ましい。溶媒は、1種単独もしくは2種以上を併用してもよい。
結合剤の濃度としては、例えば、使用する溶媒を基準として、1mM~15mMの範囲とすることができる。また、基質の濃度は、使用する溶媒を基準として、0.1mM~1.5mMの範囲とすることができる。
分子内環化反応における温度は特に限定されず、例えば、-20~60℃で行うことができ、0~30℃で行うことが好ましい。反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定することができ、例えば、基質を6~24時間かけて滴下した後、6~24時間反応を続けることができるが、これに限定されるわけではない。特に、低温下で時間をかけて反応させることにより、分子内での環化反応が促進され、環化化合物(式(22a)で表される化合物)の収率を、従来の環化反応に比べて1.5~2.5倍程度向上させることができる。
分子内環化反応により式(22a)で表される化合物を得た後、MOMの脱保護をすることで、式(2)で表される化合物を得ることができる。MOMの脱保護の方法は特に限定されず、例えば、公知のMOMの脱保護の方法と同様の条件とすることができる。MOMの脱保護をする前に、例えば、式(22a)で表される化合物における保護基を他の保護基で置換(例えば、N原子に置換されているBoc基をノシル基に置換)することもできる。さらに、MOMの脱保護をする前に、ノシル基等の保護基が結合しているN原子をメチル化することもできる。メチル化は例えば公知の方法を広く採用でき、p-ニトロベンゼンスルホン酸メチルにメチル化が例示される。
環化工程で使用する式(21a)で表される化合物を得るための製造方法は特に限定されず、例えば、公知の反応によって式(21a)で表される化合物を得ることができる。一例として、下記式(7a)で表される化合物と、下記式(8a)で表される化合物とを反応させる工程を経て、式(21a)で表される化合物を得ることができる。
Figure 2022073598000013
式(7a)中、R及びmは前記式(1)のR及びmと同義である。式(7a)で表される化合物は、β-ヒドロキシドーパユニットである。
Figure 2022073598000014
式(8a)中、R及びRは、前記式(1)のR及びRと同義である。式(8a)で表される化合物は、アジリジン化合物である。
式(7a)で表される化合物と、式(8a)で表される化合物との反応は、例えば、公知の開環反応と同様の条件を採用することができる。この開環反応では、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)の存在下で行うことができる。
式(8a)において、Rがアセチニル基である場合、求核反応速度が極めて速く、これにより、β-ヒドロキシドーパユニットとアジリジンとの求核付加反応が速やかに進行し、その反応生成物の収率も高くなる。従って、本発明の製造方法では、アミノ酸と反応していないアジリジンを用いることができる点にも利点を有する。
式(7a)で表される化合物と、式(8a)で表される化合物との反応の後、保護基(MOM)を導入する反応を経て、下記式(13a)で表される化合物が合成される。保護基を導入する反応条件は特に限定されず、公知の方法と同様とすることができる。
Figure 2022073598000015
式(13a)中、R、R、R及びmは、前記式(1)のR、R、R及びmと同義である。
その後、式(13a)で表される化合物の脱保護反応及びエステル化反応を経ることで、下記式(18a)で表される化合物を得ることができる。脱保護反応及びエステル化反応条件は特に限定されず、公知の方法と同様とすることができる。
Figure 2022073598000016
式(18a)中、R、R、R及びmは、前記式(1)のR、R、R及びmと同義である。
得られた式(18a)で表される化合物のTroc基(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基)の脱保護をした後、例えば、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を有するバリン化合物と縮合反応を行い、さらに脱保護を行うことで、式(21a)で表される化合物(環化前駆体)が製造される。この縮合反応では、適宜の縮合剤を使用することができる。
なお、Rがアセチニル基である場合は、必要に応じて還元をすることができる。この還元は、前述のように工程Aの縮合反応の後、水素化還元反応をする工程で行うことができ、あるいは、前記アジリジンとの求核付加反応の後である限りは任意の時点で行うことができる。この点、Rがアセチニル基である場合、アセチニル基は、アルキル基と比較して比較的嵩高くないため、反応を阻害しにくいことから、水素化還元反応までアセチニル基を還元せずに維持しておくことができる。
なお、式(7a)で表される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、下記式(1a)で表される化合物及び下記式(2a)で表される化合物を出発原料とする反応により製造することができる。
Figure 2022073598000017
Figure 2022073598000018
式(2a)中、R及びmは、前記式(1)のRと同義である。
一方、式(8a)で表される化合物は、例えば、公知の製造方法で得ることができ、あるいは、市販品から入手することも可能である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(製造例1;β-ヒドロキシドーパユニットの合成)
図1に示すスキームに従って、β-ヒドロキシドーパユニット(式(7a)で表される化合物)を合成した。本発明者らは、これまでに、ガーナーアルデヒド1(化合物名の後の数字は図中の構造式に付した番号に対応する。以下同じ)に対し、アリールブロミド2を付加させるとS体のアルコールが82:18の選択性で得られることを見出している。このS体のアルコールを利用し、2級のヒドロキシ基の立体を反転させ、R体のアルコールへ4と導くことで、所望のカテコール体(β-ヒドロキシドーパユニット)5を選択的に合成した。以下、詳述する。
具体的には、まず、2当量のアリールブロミド2に対してn-BuLiによりハロゲン-リチオ交換を行った後、ガーナーアルデヒド1にTHF中、-78℃条件下で付加させることでS体のアルコールを86%収率、4:1のジアステレオ選択性で得た。S体のアルコールに対するSwern酸化により、ケトン3を収率86%で与えた。ケトン3が合成できたので、続いて立体選択的な還元を行った。THF中2当量のK-Selectrideで反応させたところ、-15℃条件下で反応は速やかに進行し、R体のアルコール4を5.6:1の立体選択性で主生成物として与えた。
続いて、ケトンを還元し得られたアルコール4の水酸基をTBS基で保護し、化合物5へと誘導した。アルコール4の立体選択性は、この段階でH-NMRのSi-Meのスペクトルピークの積分比により決定した。続いてジオキサン部を加水分解することでアルデヒド6を得た。アルデヒド6を精製することなく、Dakin酸化を行うことで目的のカテコール体7(β-ヒドロキシドーパユニット7)へと導くことができた。得られたβ-ヒドロキシドーパユニット7の物性を、比旋光度測定法及び高分解能質量分析法で確認したところ、「[α] 20=-40.8(c1.20,CHCl);HRMS(ESI)calcd for C1318Na、m/z 566.2914[M+Na]+,found 566.2914」であった。
図2(a)、(b)にはそれぞれ、カテコール体7のH-NMR(300MHz,CDCl)及び13C-NMR(100MHz,CDCl)の結果を示している。これらのNMRの結果から目的の化合物が合成できていることを確認した。
(製造例2;β-ヒドロキシイソロイシンユニットの合成)
製造例1でβ-ヒドロキシドーパユニット7を合成することができたので、続いてアミノ酸フラグメントの連結を行い、β-ヒドロキシイソロイシンユニットの合成を試みた。この反応は、図3に示した第一段階と、図4に示した第二段階、そして図5に示した第三段階とに分けて行った。
図3に示すスキームに従って、第一段階として、TBD(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン)存在下、トルエン中室温にてカテコール体7と既知のアジリジン8のカップリングを行った。反応は位置選択的に進行し、エーテル9を得た。エーテル9に対して1.5当量のTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)を0℃下で作用させることで1級のTBS基のみを選択的に脱保護し、アルコール10を2段階82%収率で得た。続いて、バリンとの連結の前段階として保護基の架け替えを試みた。まず、アルコール10に対してノシル基を脱保護し、得られたアミン11をTroc(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)保護した。続いてTroc体12の1級アルコールをMOM(メトキシメチル)保護した。
図4に示すように、第二段階として上記第一段階で得られたアセトナイド13に対して、CeClを用いることで選択的に脱保護し、アルコール14を収率63%で得た。このとき、2級TBS基も同時に脱保護されたジオール15が13%収率で得られた。得られたジオール15に対してはTBS保護し、1級のTBS基のみを脱保護することでアルコール14へと導いた。
次いで、図5に示すように、第三段階としてアルコール14を、公知のDess-Martin酸化及びPinnick酸化によってカルボン酸17へと誘導し、この後、ジアゾメタンをジエチルエーテル中で作用させることにより、メチルエステル18へと91%収率で変換した。得られたメチルエステル18の物性を比旋光度測定法及び高分解能質量分析法で確認したところ、「[α] 20=-38.9(c 0.20,CHCl);HRMS(ESI)calcd for C3955ClNa11、m/z 883.2509[M+Na]+,found 883.2520」であった。
図6(a)、(b)にはそれぞれ、メチルエステル18のH-NMR(400MHz,CDCl)及び13C-NMR(100MHz,CDCl)の結果を示している。これらのNMRの結果から目的の化合物が合成できていることを確認した。
(製造例3;環化前駆体の合成)
図7に示すスキームに従い、メチルエステル18に対してTro基をZnにより脱保護し、精製することなくFmoc-Val(N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-バリン)と縮合した。縮合剤として3-(Diethoxyphosphoryloxy)-3H-benzo[d][1,2,3]triazin-4-one(DEPBT)を用いた。得られた縮合体20に対してLiOHでメチルエステルとFmoc基を同時に脱保護することで、環化前駆体21(式(21a)で表される化合物)を合成した。
得られた環化前駆体21の物性を比旋光度測定法及び高分解能質量分析法で確認したところ、「[α] 20=-31.4(c 0.10,CHCl)FTIR(neat)cm-1;HRMS(ESI)calcd for C4061Na10、m/z 794.4024[M+Na]+,found 794.4030」であった。
図8(a)、(b)にはそれぞれ、環化前駆体21のH-NMR(400MHz,MeOD)及び13C-NMR(100MHz,MeOD)の結果を示している。これらのNMRの結果から目的の化合物が合成できていることを確認した。
(実施例1)
マクロラクタム構造の合成
図9に示されるスキームに従い、製造例3で得た環化前駆体21の環化反応を行った。
縮合剤をCHCl中10mMの濃度となるよう調製するとともに、基質として環化前駆体21をCHCl中1mMとなるよう調製し、結合剤を含む溶媒中に、希薄な基質溶液を滴下することで環化前駆体21の分子内環化反応を行った。このように基質の濃度を薄めることにより、分子間での反応の進行を抑え、かつ分子内での環化反応の進行を促した。なお、この環化反応は、用いる試薬類を室温下で22時間かけておこなった。低温下でゆっくり反応させることにより、分子内での環化反応が促進され、環化体22(式(22a)で表される化合物)の収率が59%に達することを確認した。
得られた環化体22の物性を比旋光度測定法及び高分解能質量分析法で確認したところ、「[α] 20=-48.7(c 0.10,CHCl);HRMS(ESI)calcd for C4059Na、m/z 776.3918[M+Na]+,found 776.3914」であった。
図10(a)、(b)にはそれぞれ、環化体22のH-NMR(400MHz,CDCl)及び13C-NMR(100MHz,CDCl)の結果を示している。これらのNMRの結果から目的の化合物が合成できていることを確認した。
グルタミン酸との連結
次に、図11に示されるスキームに従い、得られた環化体22を用いて、N-メチル化とグルタミン酸との連結とを試みた。
まず、得られた環化体22に対し、TMSOTf(トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル)と2,2’-bipyridylの存在下、CHCl中室温で反応を行うことでBoc基を脱保護した。生じたアミンをノシル保護することで、ノシル体23を78%収率で得た。ノシル体23をトルエン中、p-ニトロベンゼンスルホン酸メチルと作用させることで、N-メチル体24を定量的に合成した。
続いてグルタミン酸との連結行うため、事前にMOM基をカテコールボランブロミドで脱保護し、アルコール25(式(2)で表される化合物)を98%収率で得た。アルコール25を公知のDess-Martin酸化及びPinnick酸化によりカルボン酸26へと誘導した。得られたカルボン酸26は精製することなく、グルタミン酸ジベンジルエステルと縮合を行い、縮合体27を3段階66%収率で合成した。これにより、式(1)で表される化合物である環状ペプチド誘導体の保護体の合成を高収率で達成することができた。
図12には、得られた縮合体27のH-NMR(400MHz,CDCl)の結果を示している。このNMRの結果から目的の化合物が合成できていることを確認した。
(実施例2;脱保護による環状ペプチド誘導体の合成)
図13に示されるスキームに従い、得られた縮合体27を用いて、脱保護による環状ペプチド誘導体の合成を行った。
縮合体27に対してTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)を作用させることでTBS基を脱保護し、アルコール28を96%収率で得た。続けて、アルコール28に対してPhSH,CsCOを作用させることでノシル基を脱保護し、環状ペプチド誘導体の前駆体29を得た。前駆体29に対して、水素雰囲気下でPd/C触媒を用いてアルキンを還元し、57%収率で環状ペプチド誘導体(A)(式(A)で表される環状ペプチド誘導体)を合成した。
得られた環状ペプチド誘導体(A)の物性を比旋光度測定法及び高分解能質量分析法で確認したところ、「[α] 25=-42.5(c 0.10,HO)natural product、[α] 28=-44.3(c 0.20,HO);HRMS(FAB)calcd for C263710、m/z 565.2515[M-H]-,found 565.2512」であった。環状ペプチド誘導体(A)のH-NMR(400MHz,CDCl)及び13C-NMR(300MHz,DO)の結果を以下に示す。
H NMR (300 MHz, DO) δ7.16 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1 H), 7.04 (d, J = 8.5 Hz, 1 H), 6.94 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 4.74-4.84 (m, 2 H), 4.17 (m, 1 H), 4.08 (d, J = 10.5 Hz, 1 H), 3.90 (d, J = 9.6 Hz, 1 H), 2.71 (s, 3 H), 2.26 (brt, J = 7.7 Hz, 2 H), 2.16-2.02 (m, 2 H), 1.92-1.80 (m, 2 H), 1.72 (s, 3 H), 1.66 (m, 1 H), 1.08 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 0.82 (d, J = 6.6 Hz, 3 H), 0.70 (d, J = 6.6 Hz, 3 H); 13C NMR (150 MHz, DO) δ182.1, 180.1, 173.0, 172.5, 168.3, 153.0, 144.9, 132.7, 125.8, 124.7, 121.1, 88.2, 75.3, 71.1, 62.2, 61.7, 57.4, 41.4, 34.6, 34.5, 31.1, 30.3, 23.4, 20.6, 20.2, 10.1」
得られた環状ペプチド誘導体(A)は、天然物由来の環状ペプチド誘導体と同様のNMRスペクトルを有していることを確認した。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2022073598000019
    (式(1)中、
    は水素原子または炭化水素基を示し、
    は水素原子または炭化水素基を示し、
    は水素原子または炭化水素基を示し、
    は水素原子または炭化水素基を示し、
    は-O-R51(R51は水素原子または保護基を示す)を示し、
    61は-O-R(Rは水素原子、炭化水素基または保護基を示す)を示し、
    は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
    は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
    は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
    10は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
    11は水素原子、炭化水素基または保護基を示し、
    12は水素原子または保護基を示し、
    14は-(CH-COOR13(R13は水素原子または保護基を示し、nは1以上の数である)を示し、
    ただし、R51、R、R12、及びR13のうちの少なくとも一つは水素原子以外であり、
    mは1である)
    で表される環状ペプチド誘導体の製造方法であって、
    下記一般式(2)
    Figure 2022073598000020
    (式(2)中、R、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmはそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびmと同義である)
    で表される化合物の酸化反応により得られる生成物を、カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物、若しくは、その化合物の塩又はエステルと縮合反応させる工程を含む、製造方法。
  2. 前記カルボキシ基及びアミノ基の両方を有する化合物はアミノ酸である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アミノ酸は、グルタミン酸又はアスパラギン酸である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記酸化反応は、Dess-Martin酸化及びPinnick酸化を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記縮合反応ではリン系縮合剤が使用される、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記式(1)中、Rはアルキニル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 式(1)中、R14が-(CH-COOR13(R13は前記式(1)のR13と同義である)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法で得られた環状ペプチド誘導体を、水素化還元反応をすることで環状ペプチド化合物を得る工程を含む、環状ペプチド化合物の製造方法。
  9. 前記環状ペプチド化合物は、下記一般式(10)
    Figure 2022073598000021
    (式(10)中、R、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびR11はそれぞれ、前記式(1)のR、R、R、R、R61、R、R、R、R10およびR11と同義である)
    で表される化合物である、請求項8に記載の製造方法。
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