以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による医薬品ピッキング業務支援システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の医薬品ピッキング業務支援システムは、複数の収納庫を有する複数の薬品棚SR1,SR2,・・・SRnから処方箋に基づいて複数種類の医薬品を取り出すピッキング業務を支援するシステムである。
図1に示すように、本実施形態の医薬品ピッキング業務支援システム100は、サーバ101、タブレット102および薬局端末103を備えて構成される。サーバ101とタブレット102と薬局端末103との間は、アクセスポイント110を介して有線LANまたは無線LANで接続される。ここではサーバ101を有線LANで接続する構成を示しているが、インターネットおよび携帯電話網等の通信ネットワーク300を介して接続する構成としてもよい。
本実施形態の医薬品ピッキング業務支援システム100は、薬局端末103が通信ネットワーク300を介して調剤予約システム200と接続され、調剤予約システム200と連動している。患者は、調剤薬局に訪問して調剤を依頼したり、図示しない患者端末から調剤予約システム200にアクセスして調剤を依頼(予約)したりすることが可能である。調剤薬局に訪問して調剤を依頼する場合、患者は処方箋を調剤薬局のスタッフに手渡す。一方、患者端末から調剤予約システム200にアクセスして調剤を依頼する場合、患者は患者端末で処方箋を撮影し、その処方箋画像を調剤予約システム200に送信する。調剤予約システム200は、処方箋画像を薬局端末103に送信する。
調剤薬局のスタッフは、患者から手渡された処方箋または調剤予約システム200から薬局端末103に送信された処方箋画像に基づいて、処方箋の内容を示す情報(以下、処方箋情報という)を薬局端末103に入力する。薬局端末103に入力された処方箋情報は、サーバ101に送信される。サーバ101は、薬局端末103から送信された処方箋情報に基づいて、医薬品のピッキング指示に関する情報(以下、ピッキング指示情報という)を生成し、タブレット102に送信する。ピッキング指示情報は、基本的に、複数の薬品棚SR1,SR2,・・・SRnのどの位置の収納庫にある医薬品を取り出すかを示した情報である。
タブレット102は、複数の薬品棚SR1,SR2,・・・SRnから医薬品をピッッキングする調剤者が使用する端末であり、サーバ101にて生成されたピッキング指示情報がこのタブレット102に表示される。調剤者は、タブレット102に表示されたピッキング指示情報を見ながら、処方箋に含まれる複数種類の医薬品のピッキングを順次行い、1つの収納庫から医薬品のピッキングが終わるごとにそのことを示す情報をタブレット102に入力する。タブレット102は、調剤者による入力に基づき生成されたピッキング結果に関する情報(以下、ピッキング結果情報という)をサーバ101に送信する。
サーバ101は、タブレット102から送信されたピッキング結果情報に基づいて出庫履歴情報を記録する。そして、サーバ101は、蓄積した出庫履歴情報に基づいて所定の処理を行うことにより、棚割り変更に関する提案情報を生成し、薬局端末103に提示する。棚割り変更に関する提案情報は、調剤者が医薬品をピッキングする際における移動距離をより短くすることができる可能性を示すものとして、医薬品を収納する収納庫の変更を示唆する情報である。この所定の処理を含むサーバ101の処理の詳細を以下に詳しく説明する。
図2は、本実施形態によるサーバ101の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態のサーバ101は、機能構成として、処方箋情報入力部11、ピッキング指示情報生成部12、ピッキング指示部13、ピッキング結果情報入力部14、出庫検出部15、出庫履歴情報記録部16、集計部17、移動候補抽出部18および移動候補提示部19を備えている。また、サーバ101は、記憶媒体として、棚割り情報記憶部20Aおよび出庫履歴DB記憶部20Bを備えている。なお、これらの構成を薬局端末103が備えるようにし、サーバ101を省略するようにしてもよい。
上記各機能ブロック11~19は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~19は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
棚割り情報記憶部20Aは、薬品棚SR1,SR2,・・・SRnの棚割りを示す情報(以下、棚割り情報という)を記憶する。棚割り情報とは、どの収納棚のどの収納庫の中にどの医薬品が収納されているかを示す情報である。図1に示す例では、薬品棚SR1,SR2,・・・SRnは何れも5行×6列の収納庫を有しており、1つの収納庫の中に1種類の医薬品が収納される。どの位置の収納庫にどの医薬品を収納するかは調剤薬局のスタッフが決める。そして、その決めた位置に従って、各医薬品が収納されている収納庫の位置を示す棚割り情報を薬局端末103にて生成し、生成した棚割り情報をサーバ101に送信して棚割り情報記憶部20Aに記憶させる。
処方箋情報入力部11は、処方箋の内容を示す処方箋情報を薬局端末103から入力する。上述したように、調剤薬局のスタッフは、来局した患者から手渡された処方箋または遠方にいる患者の患者端末から調剤予約システム200を介して薬局端末103に送信された処方箋画像に基づいて、処方箋情報を薬局端末103に入力する。薬局端末103は、入力した処方箋情報をサーバ101に送信し、この送信された処方箋情報を処方箋情報入力部11が入力する。
ピッキング指示情報生成部12は、処方箋情報入力部11が入力した処方箋情報に基づいて、複数の薬品棚SR1,SR2,・・・SRnのどの位置の収納庫にある医薬品をピッキングするかを示したピッキング指示情報を生成する。このピッキング指示情報は、例えば、医薬品名、出庫数、薬品棚の識別情報、収納庫の識別情報などを医薬品ごとに示した一覧情報とすることが可能である。薬品棚の識別情報は、例えば1,2,・・・nなどの番号で表すことが可能である。収納庫の識別情報は、例えば行番号と列番号との組み合わせで表すことが可能である。例えば、薬品棚SR1の3行4列の位置にある収納庫は、薬品棚の識別情報が“1”で、収納庫の識別情報が“3-4”で表される。以下では説明の便宜上、このような収納庫の位置情報を“1:3-4”と表記することにする。また、当該位置の収納庫を「収納庫“1:3-4”」と表記することもある。
ピッキング指示情報は、複数の薬品棚SR1,SR2,・・・SRnのレイアウト図形において、ピッキングする医薬品が収納されている収納庫の位置を他と識別可能な態様で描画したものとしてもよい。例えば、該当する位置の収納庫をハイライト表示し、その収納庫の位置に医薬品名と出庫数を表示したものをピッキング指示情報として生成することが可能である。このようなレイアウト図形によるピッキング指示情報を生成する場合、ハイライト表示する収納庫の位置に対して薬品棚の識別情報および収納庫の識別情報を関連付けておく。例えば、薬品棚SR1の3行4列の位置にある収納庫をレイアウト図形上でハイライト表示させた場合、ハイライト表示させた位置に対して、その収納庫の位置を表す位置情報“1:3-4”を関連付けておく。
ピッキング指示情報は、複数種類の医薬品を複数の収納庫からピッキングする際の順番を示したものとしてもよい。例えば、一覧情報によってピッキング指示情報を生成する場合、ピッキングする順番に沿って昇順に複数種類の医薬品を並べたものとすることが可能である。また、薬品棚SR1,SR2,・・・SRnのレイアウト図形によってピッキング指示情報を生成する場合、ハイライト表示させた収納庫の位置にピッキングの順番を示す番号を表示させたものとすることが可能である。
ピッキングの順番は、例えば、処方箋に含まれる複数種類の医薬品を全てピッキングする際の調剤者のトータルの移動距離を最短化するという観点から決定される。例えば、同じ薬品棚の中にある複数種類の医薬品は連続してピッキングするように、かつ、一方向への移動のみでピッキングするように、ピッキングの順番が決定される。
ピッキング指示部13は、ピッキング指示情報生成部12により生成されたピッキング指示情報をタブレット102に送信してディスプレイに表示させることにより、調剤者に対するピッキング指示を行う。調剤者は、タブレット102に表示されたピッキング指示情報を見ながら、処方箋に含まれる複数種類の医薬品のピッキングを順番に行う。そして、1つの収納庫から医薬品のピッキングが終わるごとに、ピッキングが終了したことを示す情報をタブレット102に入力する。
例えば、一覧情報によって生成されたピッキング指示情報がタブレット102に表示されている場合、調剤者は、1つの収納庫から医薬品のピッキングを行ったときに、一覧情報の中の該当する医薬品のチェック欄をタッチ操作することにより、当該医薬品のピッキングが終了したことを示す情報を入力する。また、薬品棚SR1,SR2,・・・SRnのレイアウト図形によって生成されたピッキング指示情報がタブレット102に表示されている場合、調剤者は、1つの収納庫から医薬品のピッキングを行ったときに、レイアウト図形の中の該当する収納庫の位置をタッチ操作することにより、当該収納庫に収納されている医薬品のピッキングが終了したことを示す情報を入力する。
タブレット102は、医薬品のピッキングが終了したことを示す情報が入力されると、ピッキング結果情報を生成してサーバ101に送信する。タブレット102は、例えば、調剤者によってピッキング終了のタッチ操作が行われるごとに、ピッキング結果情報を生成してサーバ101に送信する。ピッキング結果情報は、例えば、医薬品名、出庫数、薬品棚の識別情報、収納庫の識別情報、ピッキング終了時の日時情報を含む。このうち、ピッキング終了時の日時情報以外は、ピッキング指示情報に含まれるものが用いられる。ピッキング終了時の日時情報は、調剤者がタッチ操作をしたときの時計情報が用いられる。
ピッキング結果情報入力部14は、以上のようにしてタブレット102から送信されるピッキング結果情報を入力する。なお、ピッキング指示情報がピッキングの順番を含む情報の場合、ピッキング結果情報入力部14により順次入力されるピッキング結果情報を利用して、ピッキング指示部13が対話的にピッキング指示情報をタブレット102に送信するようにしてもよい。例えば、ピッキング指示部13は、処方箋に含まれる複数種類の医薬品のうち、直近の順番でピッキングすべき医薬品のピッキング指示情報だけをタブレット102に送信し、それに応答してピッキング結果情報入力部14がピッキング結果情報を入力したときに、次の順番でピッキングすべき医薬品のピッキング指示情報だけをタブレット102に送信する。これを繰り返すことにより、処方箋に含まれる複数種類の医薬品のピッキング指示を順次行うようにする。
なお、ピッキング指示情報がピッキングの順番を含まず、ピッキング指示部13が対話的にピッキング指示情報をタブレット102に送信するようにしない場合、タブレット102は、調剤者によってピッキング終了のタッチ操作が行われるごとにピッキング結果情報をサーバ101に送信するようにせず、1つの処方箋に関する複数種類の医薬品のピッキングが全て終わったときに、各医薬品のピッキング結果情報をまとめてサーバ101に送信するようにしてもよい。
出庫検出部15は、ピッキング結果情報入力部14により入力されるピッキング結果情報に基づいて、処方箋ごとに、当該処方箋に含まれる複数種類の医薬品が取り出された複数の収納庫の位置および取り出し時間をそれぞれ検出する。収納庫の位置は、ピッキング結果情報に含まれる薬品棚の識別情報および収納庫の識別情報に基づいて検出される。医薬品の取り出し時間は、ピッキング結果情報に含まれるピッキング終了時の日時情報に基づいて検出される。
出庫履歴情報記録部16は、出庫検出部15により検出された複数の収納庫の位置および取り出し時間を示す情報を処方箋ごとの出庫履歴情報として、出庫履歴DB記憶部20Bのデータベースに記録する。図3は、出庫履歴DB記憶部20Bに記憶される出庫履歴情報の一例を示す図である。図3に示すように、出庫履歴情報は、ピッキング番号、医薬品の取り出し時間(年月日および時刻)、医薬品名、収納庫の位置(薬品棚の識別情報および収納庫の識別情報)、出庫数の情報を含む。ピッキング番号は、処方箋ごとに付される番号である。図3は、1つの処方箋に関する3つの医薬品の出庫履歴情報を示している。出庫履歴DB記憶部20Bには、複数の処方箋に関する出庫履歴情報が、処方箋に基づくピッキングが行われるごとに逐次記録されていく。
集計部17は、出庫履歴情報記録部16により出庫履歴DB記憶部20Bに記録された出庫履歴情報に基づいて、複数の収納庫ごとに、医薬品の出庫の多さを示す累計値を算出するとともに、自収納庫での医薬品の取り出し時間と当該自収納庫から1つずれた順番(例えば、1つ前の順番)で医薬品が取り出された1以上の他収納庫(以下、これを前収納庫ということがある)での取り出し時間との差分時間をそれぞれ算出する。
集計部17は、医薬品の出庫の多さを示す累計値の一例として、収納庫からピッキングされた医薬品の総数である累計出庫数を算出する。また、集計部17は、差分時間の一例として、自収納庫で医薬品のピッキングが終了した時間と、当該自収納庫より1つ前の順番の他収納庫で医薬品のピッキングが終了した時間との差分時間を算出する。
すなわち、集計部17は、収納庫“1:1-1”について、医薬品の累計出庫数を算出する。また、集計部17は、当該収納庫“1:1-1”(自収納庫)での医薬品の取り出し時間と、それより1つ前の順番で医薬品が取り出された1以上の収納庫(他収納庫)での取り出し時間との差分時間をそれぞれ算出する。集計部17は、収納庫“1:1-2”、収納庫“1:1-3”、・・・・収納庫“n:5-6”の他の全ての収納庫についても同様に、医薬品の累計出庫数と差分時間とをそれぞれ算出する。
ここで、1以上の他収納庫(前収納庫)とは、1以上の処方箋において1つ前の順番で医薬品が取り出された収納庫という意味である。例えば、図3に示す1つの処方箋に関する出庫履歴情報に関して言うと、B薬品が取り出された収納庫を自収納庫“2:2-5”として見た場合、A薬品が取り出された収納庫“1:1-2”が前収納庫となる。しかし、B薬品より1つ前の順番で取り出された医薬品がX薬品となっている他の処方箋が存在する場合がある。この場合、集計部17は、B薬品の取り出し時間とそれより1つ前のA薬品の取り出し時間との差分時間、および、B薬品の取り出し時間とそれより1つ前のX薬品の取り出し時間との差分時間をそれぞれ算出する。なお、自収納庫と前収納庫との組み合わせが同じ出庫履歴情報が複数存在する場合、集計部17は、差分時間の平均値を算出する。
差分時間は、1つ前の収納庫(他収納庫)において医薬品をピッキングし終わってから、次の収納庫(自収納庫)において医薬品をピッキングし終わるまでにかかった時間を表している。この差分時間の中には、前収納庫の位置から自収納庫の位置まで調剤者が移動するのに要する移動時間と、自収納庫から医薬品を取り出すのに要するピッキング時間とが含まれている。ここでは、どの収納庫でも医薬品を取り出すピッキング時間に大きな違いはないとの想定を置いている。すなわち、前収納庫の位置から自収納庫の位置までの移動時間が長くなるほど差分時間も長くなり、移動時間が短くなるほど差分時間も短くなるものと想定している。
移動候補抽出部18は、集計部17により算出された累計出庫数が多く且つ差分時間が長い自収納庫を移動元候補として抽出するとともに、集計部17により算出された累計出庫数が少ない自収納庫を移動先候補として抽出する。ここで、移動候補抽出部18は、移動元候補の収納庫と移動先候補の収納庫とをそれぞれ複数抽出する。累計出庫数が多いとは、累計出庫数の多さに関して所定の条件を満たすことをいう。同様に、累計出庫数が少ないは、累計出庫数の少なさに関して所定の条件を満たすことをいう。また、差分時間が長いとは、差分時間の長さに関して所定の条件を満たすことをいう。
上述のように、差分時間が長い自収納庫は、前収納庫からの移動時間が長いことを示しており、この自収納庫に収納されている医薬品を別の収納庫に移動させると、差分時間が短くなる可能性があると言える。特に、差分時間が長く且つ累計出庫数が多い自収納庫に収納されている医薬品を別の収納庫に移動させた場合は、日々の調剤業務で実施されるピッキングにおけるトータルの差分時間が効果的に短くなる可能性があると言える。移動候補抽出部18は、そのような自収納庫を移動元候補として抽出する。一方、累計出庫数が少ない自収納庫は、これに収納されている医薬品を別の収納庫に移動させた場合に、差分時間が長くなる可能性もあるが、累計出庫数が少ないため、日々の調剤業務で実施されるピッキングにおけるトータルの差分時間が極端に長くなるリスクは低いと言える。移動候補抽出部18は、そのような自収納庫を移動先候補として抽出する。
図4は、移動候補抽出部18の処理内容の一例を説明するための図である。図4(a)は移動元候補の抽出例を示し、図4(b)は移動先候補の抽出例を示している。図4(a)に示すように、移動候補抽出部18はまず、累計出庫数が多い方から所定数(図4(a)の例では4個)の自収納庫を抽出する。抽出した所定数の自収納庫には、それぞれ1以上の前収納庫が存在することが出庫履歴情報に記録されており、前収納庫での医薬品の取り出し時間と自収納庫での医薬品の取り出し時間との差分時間が集計部17により算出されている。
移動候補抽出部18は、累計出庫数が多い方から抽出した所定数の自収納庫の中から、差分時間が所定時間より長いものを更に絞り込んで、これを移動元候補として抽出する。図4(a)に示す例では、所定時間を2分とし、1以上の前収納庫のうち少なくとも1つについて差分時間が2分を越える自収納庫を移動元候補として抽出している。例えば、位置“2:5-1”の自収納庫は、位置“5:3-1”の前収納庫との差分時間が2分を超えているので、移動元候補として抽出される。一方、位置“4:2-5”の自収納庫は、位置“4:1-3”の前収納庫および位置“3:3-6”の前収納庫との差分時間が何れも2分を超えていないので、移動元候補として抽出されない。
なお、ここに示した移動元候補の抽出方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、まず差分時間が2分を超えている自収納庫または差分時間が長い方から所定数の自収納庫を抽出し、その抽出した自収納庫のうち、累計出庫数が多い方から所定数の自収納庫を移動元候補として抽出するようにしてもよい。また、累計出庫数が多い方から所定数の自収納庫を抽出することに代えて、累計出庫数が所定値以上の自収納庫を抽出するようにしてもよい。
また、移動候補抽出部18は、図4(b)に示すように、累計出庫数が少ない方から所定数(図4(b)の例では4個)の収納庫を移動先候補として抽出する。ここでは、図4(a)のように累計出庫数が多い方から収納庫を抽出する際の数と同数の移動先候補を抽出しているが、同数であることは必須ではない。
移動候補提示部19は、移動候補抽出部18により抽出された移動元候補の収納庫と移動先候補の収納庫とを棚割り変更に関する提案情報として薬局端末103に提示する。例えば、移動候補提示部19は、移動元候補の収納庫と移動先候補の収納庫とをそれぞれ一覧情報として薬局端末103に提示する。調剤薬局のスタッフは、何れかの移動元候補の収納庫に収納されている医薬品と、何れかの移動先候補の収納庫に収納されている医薬品とを入れ替えて収納するようにすることが可能である。医薬品の収納場所を入れ替えた場合、スタッフは、入れ替えた部分の棚割り情報を薬局端末103にて生成し、生成した棚割り情報をサーバ101に送信することにより、棚割り情報記憶部20Aの情報を更新する。
図5は、移動候補提示部19のより具体的な機能構成例を示すブロック図である。図5に示すように、移動候補提示部19は、より具体的な機能構成として、移動先差分時間算出部19Aおよび組み合わせ提示部19Bを備えている。
移動先差分時間算出部19Aは、まず、移動候補抽出部18により抽出された移動元候補の収納庫との差分時間が長い前収納庫を長差分他収納庫(長差分前収納庫)として特定する。差分時間が長い前収納庫とは、例えば差分時間が2分を越える前収納庫である。図4(a)に示した例の場合、移動先差分時間算出部19Aは、移動元候補として抽出された位置“2:5-1”の自収納庫に対して、差分時間が2分を越える前収納庫“5:3-1”を長差分前収納庫として特定する。同様に、移動先差分時間算出部19Aは、移動元候補として抽出された位置“1:1-3”の自収納庫および位置“3:4-6”の自収納庫に対して、差分時間が2分を越える前収納庫“4:5-3”および前収納庫“1:2-3”をそれぞれ長差分前収納庫として特定する。
なお、図4(a)に示す例では、1つの移動元候補の収納庫に対して、差分時間が2分を越える前収納庫が1つのみ存在するが、2つ以上存在する場合もある。この場合、移動先差分時間算出部19Aは、例えば、差分時間が2分を越える2つ以上の前収納庫のうち、差分時間が最も長い前収納庫を長差分前収納庫として特定する。
また、移動先差分時間算出部19Aは、移動候補抽出部18により抽出された複数の移動先候補の収納庫(図4(b)参照)のうち、上記のように特定した長差分前収納庫から1つずれた順番(1つ後の順番)で医薬品が取り出されたことが出庫履歴DB記憶部20Bのデータベースに記録されている収納庫を履歴有り移動先候補の収納庫として特定する。
図6は、この履歴有り移動先候補の収納庫を特定する例および後述する移動先差分時間を算出する例を示す模式図である。この図6では、移動元候補の収納庫“2:5-1”に関する処理例を示しているが、他の移動元候補の収納庫“1:1-3”、“3:4-6”についても同様の処理を実行する。
図6の例では、移動候補抽出部18により移動先候補として抽出された4つの収納庫のうち、3つの移動先候補の収納庫“4:6-5”、“3:3-5”、“2:4-1”については、長差分前収納庫“5:3-1”にて医薬品をピッキングした1つ後に当該移動先候補の収納庫から医薬品をピッキングしたという出庫履歴が出庫履歴DB記憶部20Bに記録されている一方、1つの移動先候補の収納庫“4:5-6”については、長差分前収納庫“5:3-1”にて医薬品をピッキングした1つ後に当該移動先候補の収納庫から医薬品をピッキングしたという出庫履歴が出庫履歴DB記憶部20Bに記録されていない。この場合、移動先差分時間算出部19Aは、3つの移動先候補の収納庫“4:6-5”、“3:3-5”、“2:4-1”を履歴有り移動先候補の収納庫として特定する。
移動先差分時間算出部19Aは、出庫履歴DB記憶部20Bに記録された出庫履歴情報に基づいて、以上のようにして特定した長差分前収納庫での取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫での取り出し時間との差分時間(以下、これを移動先差分時間という)を算出する。移動先差分時間算出部19Aは、図6に示すように、長差分前収納庫“5:3-1”から医薬品をピッキングした取り出し時間と、3つの履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”、“3:3-5”、“2:4-1”から医薬品をピッキングした取り出し時間とのそれぞれの差分時間を移動先差分時間として算出する。
組み合わせ提示部19Bは、移動候補抽出部18により抽出された複数の移動先候補の収納庫(図4(b)参照)のうち、長差分他収納庫と履歴有り移動先候補の収納庫との関係で移動先差分時間算出部19Aにより算出された移動先差分時間が、長差分他収納庫と移動元候補の自収納庫との関係で集計部17により算出された差分時間(以下、これを移動元差分時間という)よりも短くなる移動先候補の収納庫と、移動元候補の収納庫とを組み合わせて提示する。
図6に示す例において、長差分前収納庫“5:3-1”と3つの履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”、“3:3-5”、“2:4-1”との関係で移動先差分時間算出部19Aにより算出された移動先差分時間は、それぞれ0分50秒、1分40秒、2分30秒である。一方、長差分他収納庫“5:3-1”と移動元候補の自収納庫“2:5-1”との関係で集計部17により算出された移動元差分時間は、図4(a)に示す通り2分21秒である。
この場合、移動元差分時間よりも移動先差分時間の方が短くなる履歴有り移動先候補の収納庫は、収納庫“4:6-5”および収納庫“3:3-5”の2つである。よって、組み合わせ提示部19Bは、移動元候補の収納庫“2:5-1”と移動先候補の収納庫“4:6-5”との組み合わせ、および、移動元候補の収納庫“2:5-1”と移動先候補の収納庫“3:3-5”との組み合わせを薬局端末103に提示する。なお、ここでは2つの組み合わせを提示する例について説明したが、移動元差分時間と移動先差分時間との差分が最も大きい組み合わせのみを提示するようにしてもよい。
図7は、図5のように構成した移動候補提示部19により提示される組み合わせの例を示す図である。図7では、左側に移動元候補の収納庫を示し、右側に移動先候補の収納庫を示した表により、移動元候補の収納庫と移動先候補の収納庫との組み合わせを提示している。
図7に示す表の2行目では、上述したように、移動元候補の収納庫“2:5-1”と、移動元差分時間と移動先差分時間との差分が最も大きくなるものとして特定された移動先候補の収納庫“4:6-5”との組み合わせが提示されている。表の1行目では、移動元候補の収納庫“3:4-6”と移動先候補の収納庫“2:2-1”との組み合わせが提示されている。もう1つの移動元候補の収納庫“1:1-3”については、移動元差分時間よりも移動先差分時間の方が短くなる履歴有り移動先候補の収納庫がなかったため、移動先候補の収納庫との組み合わせが提示されていない。
図7の例では、移動元候補の収納庫に収納されている医薬品と、移動先候補の収納庫に収納されている医薬品とを入れ替えて収納するようにした場合に、差分時間の短縮効果が大きくなる順に組み合わせが提示されている。すなわち、図4(a)に示すように、累計出庫数では移動元候補の収納庫“3:4-6”よりも移動元候補の収納庫“2:5-1”の方が多いが、移動元差分時間と移動先差分時間との差分は移動元候補の収納庫“3:4-6”の方が大きくなるという計算結果であったため、移動元候補の収納庫“3:4-6”の方が移動元候補の収納庫“2:5-1”よりも上位となるように表が生成されている。
移動候補提示部19を図5のように構成することは一例に過ぎず、これを必須とするものではない。ただし、図5のように構成することにより、移動候補抽出部18により抽出された1以上の移動元候補の収納庫と1以上の移動先候補の収納庫とを単に並べて提示するだけの場合に比べて、医薬品の収納場所を入れ替えることによって差分時間が短くなる組み合わせを提示することができるので、どの移動元候補の収納庫と、どの移動先候補の収納庫とを入れ替えて医薬品を収納するのが効果的かをスタッフが把握しやすくすることができる。
なお、移動先差分時間算出部19Aおよび組み合わせ提示部19Bは、以下のような処理を行うようにしてもよい。すなわち、移動先差分時間算出部19Aは、長差分他収納庫での医薬品の取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫での医薬品の取り出し時間との差分時間に加え、長差分他収納庫以外の前収納庫での医薬品の取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫での医薬品の取り出し時間との差分時間をそれぞれ移動先差分時間として算出する。そして、組み合わせ提示部19Bは、移動候補抽出部18により抽出された複数の移動先候補の収納庫のうち、移動先差分時間算出部19Aにより算出された1以上の移動先差分時間の全てが移動元差分時間よりも短くなる移動先候補の収納庫と、移動元候補の収納庫とを組み合わせて提示する。
図8は、この場合の移動先差分時間算出部19Aおよび組み合わせ提示部19Bの処理例を示す模式図である。移動先差分時間算出部19Aは、図8に示すように、図6に示した方法により特定した長差分他収納庫“5:3-1”での医薬品の取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”での医薬品の取り出し時間との差分時間に加え、長差分他収納庫“5:3-1”以外の前収納庫“3:2-4”、“2:3-2”での医薬品の取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”での医薬品の取り出し時間との差分時間をそれぞれ移動先差分時間として算出する。
この図8の例では、前収納庫“2:3-2”にて医薬品をピッキングした1つ後に移動先候補の収納庫“4:6-5”から医薬品をピッキングしたという出庫履歴が出庫履歴DB記憶部20Bに記録されている一方、前収納庫“3:2-4”にて医薬品をピッキングした1つ後に移動先候補の収納庫“4:6-5”から医薬品をピッキングしたという出庫履歴は出庫履歴DB記憶部20Bに記録されていない。ここで、移動先候補の収納庫“4:6-5”に関して、移動元候補の収納庫“2:5-1”とそれに対する前収納庫“5:3-1”、“2:3-2”との関係で算出された1以上の移動先差分時間の全て(0分50秒、2分10秒)が、移動元差分時間(2分21秒)よりも短くなる。よって、組み合わせ提示部19Bは、移動元候補の収納庫“2:5-1”と移動先候補の収納庫“4:6-5”とを組み合わせて提示する。
仮に、前収納庫“2:3-2”での医薬品の取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”での医薬品の取り出し時間との差分時間が移動元差分時間(2分21秒)よりも長かった場合、組み合わせ提示部19Bは、移動元候補の収納庫“2:5-1”と移動先候補の収納庫“4:6-5”との組み合わせは提示しない。この場合、移動元差分時間よりも移動先差分時間が短くなるもう1つの移動先候補の収納庫“3:3-5”についても同様の処理を行って、1以上の移動先差分時間の全てが移動元差分時間よりも短くなる場合に、移動元候補の収納庫“2:5-1”と移動先候補の収納庫“3:3-5”との組み合わせを提示するようにしてもよい。
別の例として、移動先差分時間算出部19Aおよび組み合わせ提示部19Bは、以下のような処理を行うようにしてもよい。すなわち、移動先差分時間算出部19Aは、図8に示した例と同様に、長差分前収納庫“5:3-1”での取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”での取り出し時間との差分時間に加え、長差分他収納庫“5:3-1”以外の前収納庫“2:3-2”(出庫履歴DB記憶部20Bに出庫履歴情報が記録されているもの)での取り出し時間と履歴有り移動先候補の収納庫“4:6-5”での取り出し時間との差分時間を算出する。
そして、移動先差分時間算出部19Aは、このようにして算出した1以上の差分時間(0分50秒、2分10秒)の合計を移動先差分時間として算出する。組み合わせ提示部19Bは、移動候補抽出部18により抽出された複数の移動先候補の収納庫のうち、移動先差分時間算出部19Aにより算出された移動先差分時間(1以上の差分時間の合計値)が移動元差分時間よりも短くなる移動先候補の収納庫と、移動元候補の収納庫とを組み合わせて提示する。図8の例の場合、1以上の差分時間(0分50秒、2分10秒)を合計した移動先差分時間は3分であり、移動元差分時間(2分21秒)よりも長くなる。よって、組み合わせ提示部19Bは、移動元候補の収納庫“2:5-1”と移動先候補の収納庫“4:6-5”との組み合わせは提示しない。
なお、以上に説明した集計部17、移動候補抽出部18および移動候補提示部19の処理は、例えば調剤薬局のスタッフが薬局端末103を操作して指示したときに実行する。あるいは、スタッフがあらかじめ設定した時間になったときに自動的に実行するようにしてもよい。あるいは、所定のインターバル期間ごとに繰り返し自動的に実行するようにしてもよい。
以上詳しく説明したように、本実施形態では、処方箋に含まれる複数種類の医薬品が取り出された複数の収納庫の位置および取り出し時間を示す情報が処方箋ごとに記録された出庫履歴DB記憶部20Bの出庫履歴情報に基づいて、複数の収納庫ごとに、累計出庫数を算出するとともに、自収納庫での医薬品の取り出し時間と当該自収納庫から1つ前の順番で医薬品が取り出された1以上の他収納庫での取り出し時間との差分時間をそれぞれ算出する。そして、累計出庫数が多く且つ差分時間が長い自収納庫を移動元候補として抽出するとともに、累計出庫数が少ない自収納庫を移動先候補として抽出し、当該移動元候補の収納庫と移動先候補の収納庫とを提示するようにしている。
調剤薬局には、日々実施される調剤業務の状況に応じて、累計出庫数が多い収納庫と少ない収納庫とが存在する。また、医薬品を順番に取り出す際における2つの収納庫の組み合わせについて、ある収納庫から医薬品を取り出してから次の収納庫から医薬品を取り出すまでの差分時間が長い組み合わせと短い組み合わせとが存在する。上記のように構成した本実施形態によれば、累計出庫数が多く且つ他収納庫との差分時間が長い自収納庫が移動元候補として抽出されて提示される。このように提示される移動元候補の収納庫は、調剤者の移動距離が長く、且つそのような長距離の移動を伴うピッキングが数多く繰り返されているものであり、ピッキング効率、ひいては調剤業務の作業効率を低下させている要因となっている可能性のある収納庫であると言える。また、本実施形態によれば、累計出庫数が少ない自収納庫が移動先候補として抽出されて提示される。このように提示される移動先候補の収納庫は、ピッキングがあまり多く行われていない収納庫であり、この収納庫に収納している医薬品を他の医薬品に変えたとしても、それによってそれ以降に生じる差分時間の変動が全体のピッキング業務に与える影響は大きくないものと考えられる。よって、このように提示された移動元候補の収納庫に収納されている医薬品と、移動先候補の収納庫に収納されている医薬品とを入れ替えて収納することにより、調剤薬局における日々の調剤業務の全体において調剤者の移動距離を医薬品の入れ替え前よりも短くすることが可能である。このように、本実施形態によれば、調剤薬局ごとの調剤業務の状況に応じて、調剤者の移動距離を短くすることができる。
なお、上記実施形態では、自収納庫での医薬品の取り出し時間と当該自収納庫より1つ前の順番で医薬品が取り出された1以上の前収納庫での取り出し時間との差分時間を算出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、自収納庫での医薬品の取り出し時間と当該自収納庫より1つ後の順番で医薬品が取り出された1以上の後収納庫での取り出し時間との差分時間を算出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、医薬品の出庫の多さを示す累計値として、収納庫からピッキングされた医薬品の総数である累計出庫数を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、収納庫から医薬品ピッキングされた回数(1つの処方箋について1つの収納庫から複数の医薬品がピッキングされた場合でも出庫回数は1回としてカウント)である累計出庫回数を用いるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、収納庫での医薬品のピッキングが終了するたびにタブレット102をタッチ操作し、自収納庫で医薬品のピッキングが終了した時間と、当該自収納庫より1つ前の順番の他収納庫で医薬品のピッキングが終了した時間との差分時間を算出する例について説明した。つまり、自収納庫に関しても他収納庫に関しても取り出し時間がピッキング終了時間である例について説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。
例えば、収納庫での医薬品のピッキングを開始するときにもタブレット102をタッチ操作するようにして、自収納庫で医薬品のピッキングを開始した時間と、当該自収納庫より1つ前の順番の他収納庫で医薬品のピッキングが終了した時間との差分時間を算出するようにしてもよい。この場合、自収納庫についての取り出し時間はピッキング開始時間を示し、他収納庫についての取り出し時間はピッキング終了時間を示す。このようにすれば、自収納庫において医薬品をピッキングしているときの作業時間が差分時間の中に含まれないようにすることができる。
また、上記実施形態では、1つの収納庫から医薬品のピッキングを行ったときに、タブレット102をタッチ操作することによって、ピッキングが終了したことを示す情報を入力する例について説明したが、この例に限定されない。例えば、収納庫から取り出した医薬品に付されているバーコードをリーダで読み取ることによって、ピッキングが終了したことを示す情報を入力するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、ピッキング指示情報をタブレット102に表示する例について説明したが、この例に限定されない。例えば、特許文献1に記載された方法と同様に、ピッキングすべき位置の収納庫に設置されたランプを点灯させるようにしてもよい。この場合、ピッキングが終了したことを示す情報の入力は、例えば、収納庫から取り出した医薬品に付されているバーコードをリーダで読み取ることによって行うようにしてもよいし、各収納庫の位置に設置した取り出しボタンを押下することによって行うようにしてもよい。
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。