JP2022072668A - 圧電デバイス、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】引き出し配線間のマイグレーションの発生を抑制した圧電デバイス、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】基板上に形成された振動板50と、振動板50上に第1電極60、圧電体層、第2電極の順に積層された複数の圧電アクチュエーターと、を具備し、前記基板上に第1引き出し配線93、第2引き出し配線94の順に積層され、前記第1引き出し配線93は、前記第1電極60又は前記第2電極と接続されて複数設けられており、前記第1引き出し配線93の並び方向において、前記第1引き出し配線93の幅W1は、前記第2引き出し配線94の幅W2よりも大きく、前記第1引き出し配線93のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さい。
【選択図】図5
【解決手段】基板上に形成された振動板50と、振動板50上に第1電極60、圧電体層、第2電極の順に積層された複数の圧電アクチュエーターと、を具備し、前記基板上に第1引き出し配線93、第2引き出し配線94の順に積層され、前記第1引き出し配線93は、前記第1電極60又は前記第2電極と接続されて複数設けられており、前記第1引き出し配線93の並び方向において、前記第1引き出し配線93の幅W1は、前記第2引き出し配線94の幅W2よりも大きく、前記第1引き出し配線93のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さい。
【選択図】図5
Description
本発明は、基板上に設けられた振動板、第1電極、圧電体層及び第2電極を有する圧電アクチュエーターを有する圧電デバイス、液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置に関する。
電子デバイスの一つである液体噴射ヘッドとして、インクジェット式記録ヘッドが知られている。インクジェット式記録ヘッドは、ノズルに連通する圧力室が設けられた基板と、基板の一方面側に設けられた圧電アクチュエーターとを備え、圧電アクチュエーターの駆動によって圧力室内のインクに圧力変化を生じさせてノズルからインク滴を吐出させる。
基板の一方面側に設けられた圧電アクチュエーターの電極からは、基板上に引き出し配線が引き出され、この引き出し配線に駆動回路等に接続された接続配線が接続されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、引き出し配線の間でマイグレーションが発生し、短絡などの不具合が生じる虞があるという問題がある。特に、圧電アクチュエーターの高密度化に伴い、引き出し配線も高密度に配置され、互いに隣り合う引き出し配線の間隔が狭くなることで、マイグレーションが生じ易い。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、他の電子デバイスにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、引き出し配線間のマイグレーションの発生を抑制した圧電デバイス、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、基板上に形成された振動板と、前記振動板上に第1電極、圧電体層、第2電極の順に積層された複数の圧電アクチュエーターと、を具備し、前記基板上に第1引き出し配線、第2引き出し配線の順に積層され、前記第1引き出し配線は、前記第1電極又は前記第2電極と接続されて複数設けられており、前記第1引き出し配線の並び方向において、前記第1引き出し配線の幅は、前記第2引き出し配線の幅よりも大きく、前記第1引き出し配線のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする圧電デバイスにある。
また、本発明の他の態様は、液体を噴射するノズルに連通する圧力室が形成された基板と、前記基板上に形成された振動板と、前記振動板上に第1電極、圧電体層、第2電極の順に積層された複数の圧電アクチュエーターと、を具備し、前記基板上に第1引き出し配線、第2引き出し配線の順に積層され、前記第1引き出し配線は、前記第1電極又は前記第2電極と接続されて複数設けられており、前記第1引き出し配線の並び方向において、前記第1引き出し配線の幅は、前記第2引き出し配線の幅よりも大きく、前記第1引き出し配線のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。また、Z方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1の分解斜視図である。図2は、記録ヘッド1の平面図である。図3は、図2のA-A′線断面図である。図4は、図2のB-B′線断面図である。図5は、図2のC-C′線断面図である。
図1は、本発明の実施形態1に液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1の分解斜視図である。図2は、記録ヘッド1の平面図である。図3は、図2のA-A′線断面図である。図4は、図2のB-B′線断面図である。図5は、図2のC-C′線断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)は、「基板」の一例として流路形成基板10を具備する。流路形成基板10は、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。なお、流路形成基板10は、詳しくは後述するが、(100)面優先配向した基板であっても、(110)面優先配向した基板であってもよい。
流路形成基板10には、複数の圧力室12が第1方向である+X方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、+Y方向の位置が同じ位置となるように、+X方向に沿った直線上に配置されている。+X方向で互いに隣り合う圧力室12は、隔壁によって区画されている。もちろん、圧力室12の配置は特にこれに限定されず、例えば、+X方向に並んで配置された圧力室12において、1つ置きに+Y方向にずれた位置に配置した、所謂、千鳥配置としてもよい。
また、本実施形態の圧力室12は、+Z方向に見た形状は、矩形状、平行四辺形状、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円形状とした、いわゆる、角丸長方形状や楕円形状や卵形状などのオーバル形状や、円形状、多角形状等であってもよい。この圧力室12が、「基板」に設けられた「凹部」に相当する。
流路形成基板10の+Z方向側には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。
連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。
また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15を+Z方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15を+Z方向に貫通することなく、+Z方向側の面に開口して設けられている。
さらに、連通板15には、圧力室12のY軸の端部に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。
このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このように流路形成基板10と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向側の面に設けられている。
ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、+X方向に沿って一列となるように並んで配置されたノズル列が+Y方向に離れて2列設けられている。すなわち、各列の複数のノズル21は、+Y方向の位置が同じ位置となるように配置されている。もちろん、ノズル21の配置は特にこれに限定されず、例えば、+X方向に並んで配置されたノズル21において、1つ置きに+Y方向にずれた位置に配置した、所謂、千鳥配置としてもよい。このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。なお、ノズルプレート20は、連通板15の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。このようにノズルプレート20と連通板15とを熱膨張率が略同一の材料を用いることで、熱膨張率の違いによって熱により反りが発生するのを低減することができる。
また、連通板15の-Z方向側の面には、ケース部材40が固定されている。ケース部材40は、第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の並設方向である+X方向に亘って連続して設けられおり、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、+X方向に並んで配置されている。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、詳しくは後述する保護基板30の貫通孔32に連通してフレキシブル配線基板120が挿通される接続口43が設けられている。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。このコンプライアンス部49が撓み変形することによってマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収する。
流路形成基板10の-Z方向側の面には、振動板50と第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。すなわち、流路形成基板10の-Z方向側の面には、振動板50、第1電極60、圧電体層70、第2電極80が-Z方向に向かって積層されている。
振動板50は、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を有する。なお、流路形成基板10に設けられた圧力室12等の流路は、流路形成基板10を+Z方向側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室12の-Z方向の面は、弾性膜51によって画成されている。なお、振動板50は、上述したものに限定されず、例えば、弾性膜51のみで構成されていてもよく、絶縁体膜52のみで構成されていてもよい。また、振動板50は、弾性膜51及び絶縁体膜52に加えて他の膜を有するものであってもよい。また、振動板50の材料は上述したものに限定されるものではない。
振動板50の-Z方向側には圧電アクチュエーター300が設けられている。圧電アクチュエーター300は、振動板50側から-Z方向に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。これら第1電極60、圧電体層70及び第2電極80は、成膜及びリソグラフィー法によって積層されている。この圧電アクチュエーター300が、振動板50を撓み変形させて圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段となっている。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非活性部と称する。本実施形態では、圧力室12毎に1つの活性部310が形成されている。もちろん、圧力室12毎に2以上の活性部310が設けられていてもよい。なお、流路形成基板10上に複数の圧電アクチュエーター300が設けられているとは、本実施形態では、圧電アクチュエーター300と同じ数の活性部310が設けられていることを言う。そして、一般的には、圧電アクチュエーター300、実質的には活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の圧電アクチュエーター300、実質的には複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60が個別電極を構成し、第2電極80が共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。また、第1電極60を複数の圧電アクチュエーター300の共通電極とした場合には、例えば、上述の弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方又は両方を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
第1電極60は、図2及び図3に示すように、圧力室12毎に切り分けられて圧電アクチュエーター300毎に独立する個別電極を構成する。第1電極60は、特に図示していないが、+X方向において、圧力室12の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、+X方向において、第1電極60の端部は、圧力室12に対向する領域の内側に位置している。また、図3に示すように、第1電極60のY軸において、ノズル21側の端部は、圧力室12よりも外側に配置されている。この第1電極60のY軸において圧力室12よりも外側に配置された端部に、引き出し配線である個別引き出し配線91が接続されている。
このような第1電極60としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)などに代表される導電性酸化物などが用いられる。
圧電体層70は、図2~図4に示すように、+Y方向の幅が所定の幅で、+X方向に亘って連続して設けられている。圧電体層70の+Y方向の幅は、圧力室12の長手方向である+Y方向の長さよりも長い。このため、圧力室12の+Y方向及び-Y方向の両側では、圧電体層70は、圧力室12に対向する領域の外側まで延設されている。このような圧電体層70のY軸においてノズル21とは反対側の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60のノズル21とは反対側の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧電体層70のノズル21側の端部は、第1電極60の端部よりも内側に位置しており、第1電極60のノズル21側の端部は、圧電体層70に覆われていない。そして、第1電極60の圧電体層70の外側まで延設された端部には、上述したように個別引き出し配線91が接続されている。
第2電極80は、図2~図4に示すように、圧電体層70の第1電極60とは反対側である-Z方向側に連続して設けられており、複数の圧電アクチュエーター300に共通する共通電極を構成する。第2電極80は、+Y方向が所定の幅となるように、+X方向に亘って連続して設けられている。また、第2電極80は、凹部71の内面、すなわち、圧電体層70の凹部71の側面上及び凹部71の底面である絶縁体膜52上にも設けられている。もちろん、第2電極80は、凹部71の内面の一部のみに設けるようにしてもよく、凹部71の内面の全面に亘って設けないようにしてもよい。
第2電極80としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物などが用いられる。また、第2電極80は、複数材料の積層であってもよい。第2電極80としては、イリジウム(Ir)とチタン(Ti)とを含むものを用いるのが好ましい。第2電極80は、本実施形態では、イリジウム(Ir)とチタン(Ti)との積層電極を使用している。
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別引き出し配線91が引き出されている。個別引き出し配線91はY軸に沿って延在しており、+X方向に複数並設されている。つまり、個別引き出し配線91の並設方向は、+X方向と一致する。なお、第1電極60は、個別引き出し配線91に亘って延設されている。もちろん、第1電極60は、個別引き出し配線91の一部のみに設けられ、個別引き出し配線91は、第1電極60から流路形成基板10上に引き出されていてもよい。本実施形態では、流路形成基板10上には、振動板50が設けられているため、個別引き出し配線91は、第1電極60上から振動板50上に引き出されている。もちろん、個別引き出し配線91は、流路形成基板10の弾性膜51上に引き出されていてもよく、流路形成基板10の直上に引き出されていてもよい。つまり、個別引き出し配線91が流路形成基板10上に引き出されているとは、流路形成基板10の直上も、流路形成基板10との間に他の部材が介在した状態、すなわち、上方も含むものである。
また、第2電極80からは、引き出し配線である共通引き出し配線92が引き出されている。共通引き出し配線92は、Y軸に沿って延在しており、X軸において圧電アクチュエーター300の列の両端部から、2列の圧電アクチュエーター300の列間の流路形成基板10上に引き出されている。本実施形態では、流路形成基板10上には、振動板50が設けられているため、共通引き出し配線92は、第2電極80上から振動板50上に引き出されている。また、共通引き出し配線92は、個別引き出し配線91と同様に、流路形成基板10の弾性膜51上に引き出されていてもよく、流路形成基板10の直上に引き出されていてもよい。つまり、共通引き出し配線92が流路形成基板10上に引き出されているとは、流路形成基板10の直上も、流路形成基板10との間に他の部材が介在した状態、すなわち、上方も含むものである。
これら個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有するフレキシブル配線基板120が接続されている。フレキシブル配線基板120は、圧電アクチュエーター300を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動回路121が実装されている。具体的には、図5に示すように、フレキシブル配線基板120は、接続配線122を有する。接続配線122が、個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92の最上層、すなわち、-Z方向側の面に接続されている。フレキシブル配線基板120の接続配線122と個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92との接続方法としては、例えば、導電性粒子を含む導電性接着剤(ACP、ACF)や、非導電性接着剤(NCP、NCF)等を用いることができる。つまり、フレキシブル配線基板120と流路形成基板10とは、導電性接着剤又は非導電性接着剤等の接着剤を介して接合されることで、接続配線122と個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92とが電気的に接続される。なお、接続配線122と個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92との接続方法は、フレキシブル配線基板120と流路形成基板10とを接着する接着剤によるものに限定されず、例えば、はんだ付けやろう付けなどのろう接や、共晶接合、溶接等であってもよい。本実施形態では、図5に示すように、流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とを非導電性接着剤からなる接着剤130によって接合することで、接続配線122と個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92とを電気的に接続した。
ここで、個別引き出し配線91は、図5に示すように、流路形成基板10側から-Z方向に向かって順次積層された第1引き出し配線93と第2引き出し配線94と第3引き出し配線95とを具備する。
第1引き出し配線93は、第1電極60の-Z方向側に積層されたものである。第1引き出し配線93は、当該第1引き出し配線93の並設方向である+X方向において第1電極60よりも大きな幅W1で設けられている。このため、第1引き出し配線93は、第1電極60のX軸の両側の端面を覆うように第1電極60上からX軸の両側の流路形成基板10上、本実施形態では、振動板50上まで延設されている。
第2引き出し配線94は、第1引き出し配線93の-Z方向側に積層されたものである。この第2引き出し配線94の+X方向の幅W2は、第1引き出し配線93の幅W1よりも小さい。つまり、第1引き出し配線93の幅W1は、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きい(W1>W2)。
このような第2引き出し配線94は、第1引き出し配線93と第3引き出し配線95との密着性を向上するためのものであり、比較的イオン化傾向が高い材料で形成されていることが好ましい。第2引き出し配線94としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiOX)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)からなる群から選択される少なくとも一つの材料で形成されていることが好ましい。本実施形態では、第2引き出し配線94として、ニッケルクロム(NiCr)を用いた。なお、ニッケルクロム(NiCr)は、柔軟性に富んでいるので、亀裂等が入りにくく、密着性に優れた材料である。もちろん、第2引き出し配線94は、単一の層であっても、複数層が積層されたものであってもよく、単一材料であっても、複数の材料が混合した複数材料であってもよい。
これに対して、第1引き出し配線93は、第2引き出し配線94よりもイオン化傾向が小さい材料で形成されている。第1引き出し配線93は、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属を用いることが好ましい。また、第1引き出し配線93は、例えば、第2電極80の少なくとも一部と同じ材料で形成するのが好ましい。つまり、第1引き出し配線93は、第2電極80の少なくとも一部と同一層からなるが、電気的に不連続となる層を用いることができる。本実施形態では、第1引き出し配線93として、第2電極80を構成する積層電極の一部であるイリジウム(Ir)を用いた。このように、第1引き出し配線93は、第2電極80の少なくとも一部と同じ材料を用いることで、第1引き出し配線93を第2電極80と同時に成膜及びパターニングして形成することができる。したがって、第1引き出し配線93を第2電極80とは別に成膜及びパターニングする工程が不要になってコストを低減することができる。また、第1引き出し配線93と第2電極80とを同時に形成することにより、第2電極80に対する第1引き出し配線93の位置ズレを抑制することができる。また、第1引き出し配線93と第2電極80とを同時に形成することにより、第1引き出し配線93を個別にパターニングする場合に比べて、パターニングの回数を低減することができ、振動板50のオーバーエッチングの量にばらつきが生じるのを抑制することができる。
第3引き出し配線95は、第2引き出し配線94上、すなわち、-Z方向側に積層されたものである。第3引き出し配線95は、個別引き出し配線91の並設方向である+X方向において、第2引き出し配線94と同じ幅W2で設けられている。なお、第2引き出し配線94と同じ幅W2の第3引き出し配線95は、例えば、第2引き出し配線94と共にドライエッチング等によって同時にエッチングすることで形成することができる。
このような第3引き出し配線95は、第2引き出し配線94よりもイオン化傾向が小さい材料で形成されている。また、第3引き出し配線95は、導電性に優れた材料、すなわち、電気抵抗が低い材料が好ましい。このような第3引き出し配線95としては、例えば、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)を含む材料が用いられる。なお、第3引き出し配線95は、単一層であっても複数層であってもよく、単一材料であっても複数材料が混合した複数材料であってもよい。また、第3引き出し配線95としては、金(Au)を用いることが好ましい。第3引き出し配線95として金(Au)を用いることで、第3引き出し配線95の導電性の向上、すなわち、電気抵抗を小さくすることができると共に、第3引き出し配線95に柔軟性を持たせてフレキシブル配線基板120の接続配線122と良好に接続することができる。
このように、第1引き出し配線93の+X方向の幅W1を、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きくすることで、+X方向で互いに隣り合う個別引き出し配線91において、第1引き出し配線93同士の間隔を、第2引き出し配線94同士の間隔よりも狭くすることができる。つまり、+X方向で互いに隣り合う個別引き出し配線91において、電界が集中し易い個別引き出し配線91の端部は、第1引き出し配線93の端部となる。そして、第1引き出し配線93を、第2引き出し配線94よりもイオン化傾向の小さい材料で形成することで、電界が集中し易い+X方向で互いに隣り合う第1引き出し配線93間でのマイグレーションの発生を低減して、マイグレーションによって個別引き出し配線91の断線や隣り合う個別引き出し配線91の間の短絡が生じるのを抑制することができる。また、第2引き出し配線94を第1引き出し配線93上に形成することで、+X方向で互いに隣り合う第2引き出し配線94の間の第1引き出し配線93の表面及び流路形成基板10(実際には振動板50)の表面に沿った沿面距離を長くすることができる。したがって、+X方向で互いに隣り合う第2引き出し配線94の間でのマイグレーションの発生を抑制することができ、マイグレーションによって個別引き出し配線91の断線や隣り合う個別引き出し配線91の間の短絡が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とを接着剤130によって接着することで、個別引き出し配線91と接続配線122とを接続するようにした。このため、+X方向で互いに隣り合う個別引き出し配線91の間には接着剤130が充填されており、第2引き出し配線94の露出した表面は、接着剤130によって覆われている。したがって、+X方向で互いに隣り合う第2引き出し配線94の間でのマイグレーションの発生を抑制することができる。
また、第2引き出し配線94の上、すなわち、-Z方向に第3引き出し配線95を積層することで、第2引き出し配線94の-Z方向側の面を第3引き出し配線95によって覆うことができる。そして、第3引き出し配線95を、第2引き出し配線94よりもイオン化傾向の小さい材料で形成することで、イオン化傾向の高い第2引き出し配線94の露出された表面積を減少させて、第2引き出し配線94のマイグレーションの発生を抑制することができる。また、第2引き出し配線94として、第1引き出し配線93及び第3引き出し配線95よりもイオン化傾向の小さい材料を用いることで、第1引き出し配線93と第3引き出し配線95との密着性を向上することができる。したがって、個別引き出し配線91の層間剥離等を抑制することができる。
なお、共通引き出し配線92は、個別引き出し配線91と同じ材料、すなわち、第1引き出し配線93、第2引き出し配線94及び第3引き出し配線95を積層して構成することができる。このように、個別引き出し配線91と共通引き出し配線92とを同じ材料で構成することで、個別引き出し配線91と共通引き出し配線92とを同時に形成することができコストを低減することができる。また、共通引き出し配線92についても個別引き出し配線91と同様に、第1引き出し配線93の+X方向の幅は、第2引き出し配線94の幅よりも大きくすることで、個別引き出し配線91と共通引き出し配線92との間におけるマイグレーションの発生を抑制することができる。
このような圧電アクチュエーター300が形成された流路形成基板10の-Z方向側の面には、図1及び図3に示すように、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である保持部31を有する。保持部31は、+X方向に並んで配置された圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、+Y方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、+Y方向に並んで配置された2つの保持部31の間に+Z方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92の端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、個別引き出し配線91及び共通引き出し配線92とフレキシブル配線基板120とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。
また、図3に示すように、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。本実施形態では、ケース部材40は、連通板15に接合されている。また、特に図示していないが、ケース部材40と保護基板30とも接合されている。
このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40と流路形成基板10とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40と流路形成基板10とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、圧力室12の並設方向である+X方向に亘って連続して設けられており、各圧力室12とマニホールド100とを連通する供給連通路19は、+X方向に並んで配置されている。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
このような本実施形態の記録ヘッド1では、図示しない外部インク供給手段と接続した導入口44からインクを取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路121からの記録信号に従い、圧力室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加する。これにより圧電アクチュエーター300と共に振動板50が撓み変形して各圧力室12内の圧力が高まり、各ノズル21からインク滴が噴射される。
以上説明したように、本実施形態の圧電デバイスである液体噴射ヘッドの一例のインクジェット式記録ヘッド1は、基板である流路形成基板10上に形成された振動板50と、振動板50上に第1電極60、圧電体層70、第2電極80の順に積層された複数の圧電アクチュエーター300と、を具備する。また、記録ヘッド1は、流路形成基板10上に第1引き出し配線93、第2引き出し配線94の順に積層され、第1引き出し配線93は、第1電極60又は第2電極80と接続されて複数設けられており、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第1引き出し配線93の幅W1は、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きく(W1>W2)、第1引き出し配線93のイオン化傾向は、第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さい。
このように、第1引き出し配線93の+X方向の幅W1を、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きくすることで、+X方向で互いに隣り合う個別引き出し配線91において、第1引き出し配線93同士の間隔を、第2引き出し配線94同士の間隔よりも狭くすることができる。このため、+X方向で互いに隣り合う個別引き出し配線91において、電界が集中し易い個別引き出し配線91の端部は、第1引き出し配線93の端部とすることができる。そして、第1引き出し配線93を、第2引き出し配線94よりもイオン化傾向の小さい材料で形成することで、電界が集中し易い+X方向で互いに隣り合う第1引き出し配線93間でのマイグレーションの発生を低減して、マイグレーションによって個別引き出し配線91の断線や隣り合う個別引き出し配線91の間の短絡が生じるのを抑制することができる。また、第2引き出し配線94を第1引き出し配線93上に形成することで、+X方向で互いに隣り合う第2引き出し配線94の間の第1引き出し配線93の表面及び流路形成基板10(実際には振動板50)の表面に沿った沿面距離を長くすることができる。したがって、+X方向で互いに隣り合う第2引き出し配線94の間でのマイグレーションの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、基板である流路形成基板10上には、第1引き出し配線93、第2引き出し配線94、第3引き出し配線95の順に積層され、第3引き出し配線95のイオン化傾向は、第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さいことが好ましい。このように、第2引き出し配線94の上、すなわち、-Z方向に第3引き出し配線95を積層することで、第2引き出し配線94の-Z方向側の面を第3引き出し配線95によって覆うことができる。そして、第3引き出し配線95を、第2引き出し配線94よりもイオン化傾向の小さい材料で形成することで、イオン化傾向の高い第2引き出し配線94の露出された表面積を減少させて、第2引き出し配線94のマイグレーションの発生を抑制することができる。また、第2引き出し配線94として、第1引き出し配線93及び第3引き出し配線95よりもイオン化傾向の小さい材料を用いることで、第1引き出し配線93と第3引き出し配線95との密着性を向上することができる。したがって、個別引き出し配線91の層間剥離等を抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、基板である流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とが接着剤130を介して接合され、フレキシブル配線基板120の配線である接続配線122と、第2引き出し配線94とが電気的に接続されていることが好ましい。なお、接続配線122と第2引き出し配線94とが電気的に接続されているとは、接続配線122と第2引き出し配線94とが直接接続されたものも、接続配線122と第2引き出し配線94との間に他の部材、例えば、第3引き出し配線95や、導電性粒子、はんだなどが介在した状態も含む。このように、流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とを接着剤130によって接着することで、個別引き出し配線91と接続配線122とを電気的に接続することで、第2引き出し配線94の露出した表面を接着剤130によって覆うことができる。したがって、+X方向で互いに隣り合う第2引き出し配線94の間でのマイグレーションの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第1引き出し配線93は、第2電極80の少なくとも一部と同じ材料で形成されていることが好ましい。このように、第1引き出し配線93は、第2電極80の少なくとも一部と同じ材料を用いることで、第1引き出し配線93を第2電極80と同時に成膜及びパターニングして形成することができる。したがって、第1引き出し配線93を第2電極80とは別に成膜及びパターニングする工程が不要になってコストを低減することができる。また、第1引き出し配線93と第2電極80とを同時に形成することにより、第2電極80に対する第1引き出し配線93の位置ズレを抑制することができる。また、第1引き出し配線93と第2電極80とを同時に形成することにより、第1引き出し配線93を個別にパターニングする場合に比べて、パターニングの回数を低減することができ、振動板50のオーバーエッチングの量にばらつきが生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第2引き出し配線94が、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiOX)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)からなる群から選択される少なくとも一つの材料で形成されていることが好ましい。これによれば、第2引き出し配線94と第1引き出し配線93との密着性を向上することができる。また、第2引き出し配線94と第3引き出し配線95等の他の配線との密着性を向上することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第2電極80は、イリジウム及びチタンを含むことが好ましい。これによれば、第2電極80に所定の材料を用いることで、圧電体層70との界面を良好に形成することができると共に、第2電極80として優れた導電性を有し、圧電体層70に優れた圧電特性を発揮させることができる。また、第2電極80に所定の材料を用いることで、加熱処理等によって圧電体層70の特性改善を行うことができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第3引き出し配線95が金(Au)であることが好ましい。このように第3引き出し配線95として金(Au)を用いることで、第3引き出し配線95の導電性の向上、すなわち、電気抵抗を小さくすることができると共に、第3引き出し配線95に柔軟性を持たせてフレキシブル配線基板120の接続配線122と良好に接続することができる。
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図6は、本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図6に示すように、個別引き出し配線91は、第1引き出し配線93と第2引き出し配線94と第3引き出し配線95とを具備する。
第2引き出し配線94の+X方向の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3よりも小さい(W2<W3)。
このような第2引き出し配線94及び第3引き出し配線95は、成膜及びリソグラフィー法によって形成することができる。具体的には、流路形成基板10の一方面側の全面に亘って第2引き出し配線94と第3引き出し配線95とを順次積層する。次に、第3引き出し配線95を所定形状にパターニングする。その後、第2引き出し配線94をウェットエッチングする。第2引き出し配線94のウェットエッチングでは、サイドエッチングによって第2引き出し配線94の幅W2が、第3引き出し配線95の幅W3よりも幅狭になるまで行うことで形成することができる。
また、異なる2種類の金属の膜が積層された金属膜を酸からなるエッチング液でエッチングする場合、異なる金属同士の電位差により電蝕反応が生じ、電位が低い金属、つまりイオン化傾向が高い金属のサイドエッチングが進行しやすい。この電蝕反応を利用して、第2引き出し配線94をウェットエッチングすることにより、第2引き出し配線94を第3引き出し配線95よりも幅狭に形成することができる。
なお、第3引き出し配線95の+X方向の幅W3は、第1引き出し配線93の幅W1以下であることが好ましい(W3≦W1)。このように、第3引き出し配線95の幅W3を、第1引き出し配線93の幅W1以下とすることで、第2引き出し配線94がサイドエッチングされた際に、第2引き出し配線94の幅W2を第1引き出し配線93の幅W1よりも確実に小さくすることができる。つまり、第3引き出し配線95の幅W3を第1引き出し配線93の幅W1よりも大きくすると、第2引き出し配線94がサイドエッチングされても、第2引き出し配線94の幅W2が、第1引き出し配線93の幅W1よりも大きくなる虞がある。
このように第2引き出し配線94の+X方向の幅W2を、第3引き出し配線95の幅W3よりも小さくすることで、第1引き出し配線93のX軸の両側の側面には凹部が形成される。この凹部内には、流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とを接着する接着剤130が充填されている。
なお、本実施形態では、第2引き出し配線94の+X方向の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3よりも小さく(W2<W3)したが、特にこれに限定されない。例えば、第2引き出し配線94の+X方向の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3と同じ幅であってもよい。つまり、第2引き出し配線94の+X方向の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3以下であってもよい(W2≦W3)。このように第2引き出し配線94の幅W2を第3引き出し配線95の幅W3以下とすることで、第2引き出し配線94の-Z方向側の全面に亘って第3引き出し配線95と密着することができる。したがって、第2引き出し配線94と第3引き出し配線95との接触面積を確保して、密着性を向上することができる。また、第2引き出し配線94の-Z方向側の全面が第3引き出し配線95によって覆われるため、第2引き出し配線94が表面に露出する面積を減少させてマイグレーションの発生を抑制することができる。
このような実施形態2の記録ヘッド1であっても、上述した実施形態1と同様に、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第1引き出し配線93の幅W1は、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きく(W1>W2)、第1引き出し配線93のイオン化傾向は、第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さい。このため、+X方向で互いに隣り合う第1引き出し配線93間でのマイグレーションの発生を低減して、マイグレーションによって個別引き出し配線91の断線や隣り合う個別引き出し配線91の間の短絡が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第2引き出し配線94の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3以下となっている(W2≦W3)。また、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第2引き出し配線94の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3よりも小さいことが好ましい(W2<W3)。
このように、第2引き出し配線94の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3以下とすることで、第2引き出し配線94の-Z方向側の全面に亘って第3引き出し配線95と密着することができる。したがって、第2引き出し配線94と第3引き出し配線95との接触面積を確保して、密着性を向上することができる。また、第2引き出し配線94の-Z方向側の全面が第3引き出し配線95によって覆われるため、第2引き出し配線94が表面に露出する面積を減少させてマイグレーションの発生を抑制することができる。
また、第2引き出し配線94の幅W2を、第3引き出し配線95の幅W3より小さくすることで、個別引き出し配線91のX軸の両側の側面に凹部が形成される。そして、流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とを接着する接着剤130がこの凹部内に入り込み、流路形成基板10とフレキシブル配線基板120との接着力を向上して、個別引き出し配線91と接続配線122との密着性を向上することができる。
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7は、本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7に示すように、個別引き出し配線91は、第1引き出し配線93と第2引き出し配線94と第3引き出し配線95とを具備する。
第2引き出し配線94の+X方向の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3よりも大きい(W2>W3)。つまり、第1引き出し配線93の幅W1>第2引き出し配線94の幅W2>第3引き出し配線95の幅W3の関係が成り立つ。
このような第2引き出し配線94の幅W2よりも小さい幅W3を有する第3引き出し配線95は、例えば、ドライエッチング等によって形成することができる。
このような実施形態3の記録ヘッド1であっても、上述した実施形態1と同様に、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第1引き出し配線93の幅W1は、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きく(W1>W2)、第1引き出し配線93のイオン化傾向は、第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さい。このため、+X方向で互いに隣り合う第1引き出し配線93間でのマイグレーションの発生を低減して、マイグレーションによって個別引き出し配線91の断線や隣り合う個別引き出し配線91の間の短絡が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第2引き出し配線94の幅W2は、第3引き出し配線95の幅W3よりも大きい(W2>W3)。
このように、第2引き出し配線94の幅W2を、第3引き出し配線95の幅W3よりも大きくすることで、第2引き出し配線94の流路形成基板10とフレキシブル配線基板120とを接着する接着剤130に接する表面積を大きくすることができる。ここで、第3引き出し配線95よりもイオン化傾向の小さい第2引き出し配線94の方が、接着剤130との密着性が高い。したがって、第2引き出し配線94の接着剤130と接する表面積を増やすことで、個別引き出し配線91と接着剤130との密着性を向上して、個別引き出し配線91と接続配線122との密着性を向上することができる。また、第2引き出し配線の幅W2を、第3引き出し配線95の幅W3よりも大きくすることで、個別引き出し配線91のX軸の両側の側面には、凹部が形成されない。このため、凹部への接着剤130の充填不良による気泡やゴミ等の異物の入り込みを抑制することができる。したがって、凹部内の気泡に水分が入り込むことによるマイグレーションの促進を抑制することができると共に、凹部内の異物による個別引き出し配線91間での短絡等を抑制することができる。
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図8は、本発明の実施形態4に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図8に示すように、個別引き出し配線91は、第1引き出し配線93と第2引き出し配線94と第3引き出し配線95とを具備する。
第1引き出し配線93には、+X方向の中央部に+Z方向に貫通する貫通孔96が設けられている。貫通孔96は、第1引き出し配線93の延設方向である+Y方向に連続して設けられていてもよく、また、+Y方向に所定の間隔で複数設けられていてもよい。ちなみに、貫通孔96が、第1引き出し配線93の延設方向に亘って連続して設けられることで、第1引き出し配線93がX軸に沿って2つに分断されていても、第1電極60と第2引き出し配線94によって導通するため、特に問題はない。
第2引き出し配線94は、第1引き出し配線93の-Z方向側の面上から貫通孔96内まで延設されている。つまり、第2引き出し配線94は、貫通孔96の+Z方向の底面、貫通孔96のX軸の両側の側面の内面に亘って連続して設けられている。
このような実施形態4の記録ヘッド1であっても、上述した実施形態1と同様に、第1引き出し配線93の並び方向である+X方向において、第1引き出し配線93の幅W1は、第2引き出し配線94の幅W2よりも大きく(W1>W2)、第1引き出し配線93のイオン化傾向は、第2引き出し配線94のイオン化傾向よりも小さい。このため、+X方向で互いに隣り合う第1引き出し配線93間でのマイグレーションの発生を低減して、マイグレーションによって個別引き出し配線91の断線や隣り合う個別引き出し配線91の間の短絡が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第1引き出し配線93に貫通孔96が設けられている。このように第1引き出し配線93に貫通孔96を設けることで、第2引き出し配線94と第1引き出し配線93との接触面積を増大させることができ、密着力を向上することができる。また、第1引き出し配線93と第2引き出し配線94との接触面を、XY平面に沿った面と、YZ平面に沿った面とにして、アンカー効果によって第1引き出し配線93と第2引き出し配線94との密着力を向上することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター300の個別電極とし、第2電極80を複数の圧電アクチュエーター300の共通電極としたが、特にこれに限定されず、第1電極60を複数の圧電アクチュエーター300の共通電極とし、第2電極80を各圧電アクチュエーター300の個別電極としてもよい。
また、上述した各実施形態では、第3引き出し配線95を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、少なくとも第1引き出し配線93と第2引き出し配線94とを有するものであればよい。
また、これら各実施形態の記録ヘッド1は、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。図9は、一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図9に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、記録ヘッド1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、キャリッジ3に搭載されている。この記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5の軸方向に移動自在に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
このようなインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1に対して記録シートSを+X方向に搬送し、キャリッジ3を記録シートSに対してY方向に往復移動させながら、記録ヘッド1からインク滴を吐出させることで記録シートSの略全面に亘ってインク滴の着弾、所謂、印刷が実行される。
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向であるY方向に往復移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向であるX方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、超音波デバイス、モーター、圧力センサー、焦電素子、強誘電体素子などの圧電デバイスにも適用することができる。また、これらの圧電デバイスを利用した完成体、たとえば、上記液体等噴射ヘッドを利用した液体等噴射装置、上記超音波デバイスを利用した超音波センサー、上記モーターを駆動源として利用したロボット、上記焦電素子を利用したIRセンサー、強誘電体素子を利用した強誘電体メモリーなども、圧電デバイスに含まれる。
1…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…搬送ローラー、10…流路形成基板、12…圧力室、15…連通板、16…ノズル連通路、17…第1マニホールド部、18…第2マニホールド部、19…供給連通路、20…ノズルプレート、20a…液体噴射面、21…ノズル、30…保護基板、31…保持部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…凹部、42…第3マニホールド部、43…接続口、44…導入口、45…コンプライアンス基板、46…封止膜、47…固定基板、48…開口部、49…コンプライアンス部、50…振動板、51…弾性膜、52…絶縁体膜、60…第1電極、70…圧電体層、71…凹部、80…第2電極、91…個別引き出し配線、92…共通引き出し配線、93…第1引き出し配線、94…第2引き出し配線、95…第3引き出し配線、96…貫通孔、100…マニホールド、120…フレキシブル配線基板、121…駆動回路、122…接続配線、130…接着剤、300…圧電アクチュエーター、310…活性部、I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)
Claims (13)
- 基板上に形成された振動板と、前記振動板上に第1電極、圧電体層、第2電極の順に積層された複数の圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記基板上に第1引き出し配線、第2引き出し配線の順に積層され、
前記第1引き出し配線は、前記第1電極又は前記第2電極と接続されて複数設けられており、
前記第1引き出し配線の並び方向において、前記第1引き出し配線の幅は、前記第2引き出し配線の幅よりも大きく、
前記第1引き出し配線のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする圧電デバイス。 - 前記基板上には、前記第1引き出し配線、前記第2引き出し配線、第3引き出し配線の順に積層され、
前記第3引き出し配線のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。 - 前記基板とフレキシブル配線基板とが接着剤を介して接合され、
前記フレキシブル配線基板の配線と、前記第2引き出し配線とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電デバイス。 - 前記第1引き出し配線の前記並び方向において、前記第2引き出し配線の幅は、前記第3引き出し配線の幅以下であることを特徴とする請求項2記載の圧電デバイス。
- 前記第1引き出し配線の前記並び方向において、前記第2引き出し配線の幅は、前記第3引き出し配線の幅よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の圧電デバイス。
- 前記第1引き出し配線の前記並び方向において、前記第2引き出し配線の幅は、前記第3引き出し配線の幅よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の圧電デバイス。
- 前記第1引き出し配線は、前記第2電極の少なくとも一部と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の圧電デバイス。
- 前記第1引き出し配線に貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の圧電デバイス。
- 前記第2引き出し配線が、ニッケル、クロム、ニッケルクロム、チタン、酸化チタン、タングステン、チタンタングステンからなる群から選択される少なくとも一つの材料で形成されていることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の圧電デバイス。
- 前記第2電極は、イリジウム及びチタンを含むことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の圧電デバイス。
- 前記第3引き出し配線が金であることを特徴とする請求項2記載の圧電デバイス。
- 液体を噴射するノズルに連通する圧力室が形成された基板と、
前記基板上に形成された振動板と、前記振動板上に第1電極、圧電体層、第2電極の順に積層された複数の圧電アクチュエーターと、を具備し、
前記基板上に第1引き出し配線、第2引き出し配線の順に積層され、
前記第1引き出し配線は、前記第1電極又は前記第2電極と接続されて複数設けられており、
前記第1引き出し配線の並び方向において、前記第1引き出し配線の幅は、前記第2引き出し配線の幅よりも大きく、
前記第1引き出し配線のイオン化傾向は、前記第2引き出し配線のイオン化傾向よりも小さいことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項12記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
Priority Applications (1)
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JP2020182233A JP2022072668A (ja) | 2020-10-30 | 2020-10-30 | 圧電デバイス、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 |
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JP2020182233A Pending JP2022072668A (ja) | 2020-10-30 | 2020-10-30 | 圧電デバイス、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 |
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- 2020-10-30 JP JP2020182233A patent/JP2022072668A/ja active Pending
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