JP2022066647A - 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents

難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、優れた耐加水分解性と流動性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することである。【解決手段】 本発明の目的は、少なくとも、(A)末端カルボキシル基量が1~9meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)カルボジイミド化合物と、(C)ハロゲン系難燃剤とを含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量が該末端カルボキシル基量に対して5~40当量であり、且つ該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量から該ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を減じた値が30meq/PBT・kg以上である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、によって達成された。【選択図】なし

Description

本発明は、耐加水分解性と流動性に優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、優れた機械的特性、電気的特性、耐熱性、耐候性、耐水性、耐薬品性及び耐溶剤性を有するため、エンジニアリングプラスチックとして、自動車部品、電気・電子部品等の種々の用途に広く利用されている。特にコネクタ、リレー、スイッチ等の電気・電子部品には、難燃剤を配合した難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が用いられている。
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、主鎖がエステル結合によるものであることから耐加水分解性に問題があり、高温高湿環境での使用において必ずしも十分な耐久性を持つものではない。
そこで、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐加水分解性を、材料面から改善するための検討が行われている。例えば、特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ハロゲン化ベンジルアクリレート化合物、酸化アンチモン化合物、及びカルボジイミド化合物を配合したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
特許文献1によれば、特許文献1に記載の樹脂組成物は、難燃性で耐ヒートショック性に優れ、プレッシャークッカーテスト後の引張強さ保持率(耐加水分解性)にも優れるとされている。しかし、この特許文献1に記載の樹脂組成物では、ポリブチレンテレフタレート樹脂とカルボジイミド化合物との反応による粘度増加が課題となる。
また、特許文献1の実施例によれば、可塑剤を併用することで多少の流動性改善効果は見られるものの、その効果はごくわずかであり、耐加水分解性も近年の要求の高度化に対し、十分なレベルではない。
ところで、成形時の樹脂組成物の流動性を向上させるため、ポリブチレンテレフタレート樹脂に流動性改良剤を配合することも知られている。例えば、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート樹脂にグリセリン脂肪酸エステルを配合した、流動性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されているが、この文献において、耐加水分解性をも改善する技術は見出されていない。
WO2011/058992号公報 WO2009/050859号公報
従来、カルボジイミド化合物の添加による耐加水分解性の向上には限界があり、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシ基に対してある一定以上の量を添加しても、効果の程度が頭打ちとなる量関係が存在し、それ以上の効果の改善が望めなかった。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、優れた耐加水分解性と流動性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、以下によって本発明の目的を達成した。
1. 少なくとも、(A)末端カルボキシル基量が1~9meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)カルボジイミド化合物と、(C)ハロゲン系難燃剤とを含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量が該末端カルボキシル基量1当量に対して5~40当量、且つ該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量から該ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を減じた値が30meq/PBT・kg以上である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
2. USCAR-2(5.6.2 Temperature/Humidity Cycling)Class5に準拠した冷熱サイクル試験において引張強さ保持率が90%以上である前記1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
3. ISO 11443により260℃で測定された溶融粘度が0.2kPa・s以下である前記1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
4. (D)多価水酸基含有化合物を含有する前記1~3の何れかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
本発明によれば、優れた耐加水分解性と流動性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物>
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、少なくとも、(A)末端カルボキシル基量が1~9meq/kgのポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)カルボジイミド化合物と、(C)ハロゲン系難燃剤とを含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量が該末端カルボキシル基量1当量に対して5~40当量であることを特徴とする。
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量が9meq/kg以下と少ない場合、末端カルボキシル基量に対して大過剰のカルボジイミド化合物を添加することにより、耐加水分解性の改善が頭打ちにならず、大幅に向上することを見出したものである。
<(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂>
本発明の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸(テレフタル酸又はそのエステル形成誘導体)と、炭素数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体とを、少なくとも重合成分とする熱可塑性樹脂である。そして(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量が1~9meq/kgである。
ベース樹脂である(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBT樹脂ともいう)としては、ブチレンテレフタレートに由来する繰り返し単位からなるホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)、又はブチレンテレフタレートに由来する繰り返し単位を主成分として、共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位を、後述の割合で有するコポリエステル(ブチレンテレフタレート共重合体又はポリブチレンテレフタレートコポリエステル)等が挙げられる。
コポリエステル(ブチレンテレフタレート共重合体又は変性PBT樹脂)における上記共重合可能なモノマー(以下、単に共重合性モノマーと称する場合がある)としては、テレフタル酸を除くジカルボン酸成分、1,4-ブタンジオールを除くジオール、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等が挙げられる。共重合性モノマーは、1種で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ジカルボン酸(又はジカルボン酸成分又はジカルボン酸類)としては、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等のC4~40ジカルボン酸、好ましくはC4~14ジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸成分(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等のC8~12ジカルボン酸)、テレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸成分(例えば、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸等のC8~16ジカルボン酸)、又はこれらの反応性誘導体(例えば、低級アルキルエステル(ジメチルフタル酸、ジメチルイソフタル酸(DMI)等のフタル酸又はイソフタル酸のC1~4アルキルエステル等)、酸クロライド、酸無水物等のエステル形成可能な誘導体)等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
ジオール(又はジオール成分又はジオール類)には、例えば1,4 -ブタンジオールを除く脂肪族アルカンジオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオール等)、オクタンジオール(1,3-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール等)、デカンジオール等の低級アルカンジオール、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2~12アルカンジオール、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2~10アルカンジオール等);(ポリ)オキシアルキレングリコール(例えば、複数のオキシC2~4アルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)等]、脂環族ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等)、芳香族ジオール[例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール等のジヒドキシC6~14アレーン;ビフェノール(4,4’-ジヒドキシビフェニル等);ビスフェノール類;キシリレングリコール等]、及びこれらの反応性誘導体(例えば、アルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等のエステル形成性誘導体等)等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等のポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
ビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン等のビス(ヒドロキシアリール)C1~6アルカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C4~10シクロアルカン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、及びこれらのアルキレンオキサイド付加体が例示できる。アルキレンオキサイド付加体としては、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールF)のC2~3アルキレンオキサイド付加体、例えば、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールA(EBPA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ジプロポキシ化ビスフェノールA等が挙げられる。
アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のC2~3アルキレンオキサイド)の付加モル数は、各ヒドロキシ基に対して1~10モル、好ましくは1~5モル程度である。
オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε-カプロラクトン等)等のC3~12ラクトン等が含まれる。
これらの共重合性モノマーのうち、好ましくはジオール類[C2~6アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレングリコール等)、繰り返し数が2~4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシC2~4アルキレングリコール(ジエチレングリコール等)、ビスフェノール類(ビスフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加体等)]、ジカルボン酸類[C6~12脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)、カルボキシル基がアレーン環の非対称位置に置換した非対称芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール等]等が挙げられる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)及び/又は共重合体(ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)が好ましい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合性モノマーの割合(変性量)が、通常、45モル%以下(例えば、0モル%以上45モル%以下程度)、好ましくは35モル%以下(例えば、0モル%以上35モル%以下程度)、さらに好ましくは30モル%以下(例えば、0モル%以上30モル%以下程度)のコポリエステルであってもよい。
なお、共重合体において、共重合性モノマーの割合は、例えば、0.01モル%以上30モル%以下程度の範囲から選択でき、通常、1モル%以上30モル%以下程度、好ましくは3モル%以上25モル%以下程度、さらに好ましくは5モル%以上20モル%以下程度である。
また、ホモポリエステル(ポリブチレンテレフタレート)と共重合体(コポリエステル)とを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.1モル%以上30モル%以下(好ましくは1モル%以上25モル%以下程度、さらに好ましくは5モル%以上25モル%以下程度)となる範囲であり、通常、前者/後者=99/1~1/99(質量比)、好ましくは95/5~5/95(質量比)、さらに好ましくは90/10~10/90(質量比)程度の範囲から選択できる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は1~9meq/kgである。より好ましい末端カルボキシル基量は2~8meq/kgであり、更に好ましい末端カルボキシル基量は3~6meq/kgである。
末端カルボキシル基量をこの範囲とするためには、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端基が少ない高分子量のポリマーを使用しても良いし、IV=0.1~0.8dl/g程度の溶融重合品を固相重合により高分子化して使用しても良い。固相重合を用いる場合、処理温度が高いと末端カルボキシル基が増加するため低温で長時間処理することが望ましいが温度が低すぎると重合速度が低く、生産性が悪いため、通常減圧下もしくは不活性ガス雰囲気で例えば120~220℃、好ましくは140~200℃、更に好ましくは150~190℃程度で調整できる。
また、バッチ重合を用いる場合、重合後の樹脂排出時間が長いと熱分解によりカルボキシル基末端が増加するため、初期に排出された末端カルボキシル基が少ないものを使用しても良い。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、0.6dL/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.7dL/g以上であってもよい。また、上記固有粘度は1.3dL/g以下であることが好ましく、1.2dL/g以下であることがより好ましい。異なる固有粘度を有する(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドすることによって、例えば固有粘度1.5dL/gと0.5dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドすることによって、0.6~1.3dL/g以下の固有粘度を実現してもよい。
なお、固有粘度(IV)は、o-クロロフェノール中、温度35℃の条件で測定できる。このような範囲の固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂を使用すると、十分な耐加水分解性の付与と溶融粘度の低減とを効率よく実現しやすい。
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、市販品を使用してもよく、テレフタル酸又はその反応性誘導体と1,4-ブタンジオールと必要により共重合可能なモノマーとを、慣用の方法、例えばエステル交換、直接エステル化法等により共重合(重縮合)することにより製造したものを使用してもよい。
<(B)カルボジイミド化合物>
本発明で用いられる(B)カルボジイミド化合物とは、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物である。カルボジイミド化合物としては、主鎖が脂肪族の脂肪族カルボジイミド化合物、主鎖が脂環族の脂環族カルボジイミド化合物、主鎖が芳香族の芳香族カルボジイミド化合物のいずれも使用できるが、耐加水分解性の点で芳香族カルボジイミド化合物の使用が好ましい。
脂肪族カルボジイミド化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ-tert-ブチルカルボジイミド、1-エチル-3-tert-ブチルカルボジイミド、1-(2-ブチル)-3-エチルカルボジイミド、1,3-ジ-(2-ブチル)カルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等が挙げられる。脂環族カルボジイミド化合物としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等が挙げられる。
芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジエチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジtert-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N-(2,6-ジイソプロピル-4-フェノキシフェニル)-N-tert-ブチルカルボジイミド、N,N-ビス[3-イソシアナト-2,4,6-トリス(1-メチルエチル)フェニルアミノ]カルボジイミド、N-シクロヘキシル-N-(4-(ジメチルアミノ)ナフチル)カルボジイミド、ジ-o-トリルカルボジイミド、ジ-p-トリルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,4,6-トリメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,4,6-トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ-2,4,6-トリイソブチルフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミドのモノ又はジカルボジイミド化合物及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)及びポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等が挙げられる。上記のカルボジイミド化合物は、2種以上併用することもできる。
これらの中でも特にジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)及びポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)が好適に使用される。
また、(B)カルボジイミド化合物としては、数平均分子量が2000以上のものを使用することが好ましい。数平均分子量が2000以上の(B)カルボジイミド化合物を使用することで、長期間にわたって難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐加水分解性を向上させることが可能である。さらに、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融混練時や成形時における滞留時間が長い場合であっても、ガスや臭気の発生が低減でき得る点で有利である。
難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の(B)カルボジイミド化合物の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を1当量とした場合、カルボジイミド官能基量が5~40当量が好ましい。
さらに好ましい配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を1当量とした場合、カルボジイミド官能基量が6~35当量であり、最も好ましくは10~30当量である。この範囲であれば成形加工時の流動性や、成形加工後の機械的特性に優れた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られる。
そして(B)カルボジイミド化合物の官能基量から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を減じた量は、30meq/PBT・kg以上であり、40meq/PBT・kg以上であることがより好ましく、50meq/PBT・kg以上であることがさらに好ましい。なお、この値はPBT1kgを基準とした各官能基量から算出したものである。
なお、カルボジイミド官能基量とは、樹脂組成中のカルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量を意味し、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド化合物が有するカルボジイミド官能基の量を意味する。
<(C)ハロゲン系難燃剤>
本発明の(C)ハロゲン系難燃剤としては、ベンゼン環の水素原子の1つ以上がハロゲン原子で置換された構造を含む臭素系芳香族難燃剤であることが好ましい。具体的には臭素化アクリレート系重合体、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、臭素化フタルイミド、臭素化ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、臭素化アクリレート系重合体及び/又は臭素化エポキシ化合物であることがより好ましい。
臭素化アクリレート系重合体としては、下記一般式(I)で表されるものが挙げられる。
Figure 2022066647000001
式中のXは少なくとも1つ以上が臭素である。Xの数は、一構成単位中1~5であるが、難燃化の効果から3~5であることが好ましい。平均重合度mは10~2000であり、好ましくは15~1000の範囲である。平均重合度が低いものは、熱安定性が悪化し、2000を超えると、これを添加した難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形加工性を悪化させる。また、上記臭素化アクリレート系重合体は1種又は2種以上混合使用してもよい。
一般式(I)で表される臭素化アクリレート系重合体は臭素を含有するベンジルアクリレートを単独で重合することによって得られるが、類似構造のベンジルメタクリレート等を共重合させてもよい。臭素含有ベンジルアクリレートとしては、ペンタブロモベンジルアクリレート、テトラブロモベンジルアクリレート、トリブロモベンジルアクリレート、又はその混合物が挙げられる。
中でも、ペンタブロモベンジルアクリレートが好ましい。また、共重合可能な成分であるベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
さらにはビニル系モノマーとの共重合も可能であり、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類、スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。
また、架橋性のビニル系モノマー、キシリレンジアクリレート、キシリレンジメタクリレート、テトラブロムキシリレンジアクリレート、テトラブロムキシリレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼンも使用できる。これらはベンジルアクリレートやベンジルメタクリレートに対し等モル量以下、好ましくは0.5倍モル量以下が使用される。
上記の臭素化アクリレート系重合体の製造法の一例を示すと、臭素化アクリルのモノマーを溶液重合あるいは、塊状重合にて所定の重合度に反応させる方法が挙げられる。溶液重合の場合、溶媒としてクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物を用いないことが好ましい。
また、溶液重合の際の溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテルや、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル及びジオキサンなどの非プロトン性溶媒が好ましい。ただし、本発明においては後述の通り、樹脂組成物としてプロトン性化合物を含む場合があるため、重合溶媒としてプロトン性化合物を含むものを用いることもできる。
上記の臭素化アクリレート系重合体は、残留ポリアクリル酸ナトリウム等の反応副生成物を除去するために、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液にて洗浄されることが好ましい。アルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液はアルカリ(土類)金属塩を水に投入することで容易に得られるが、塩化物イオン、リン酸イオン等を含まないアルカリ(土類)金属である水酸化物(例えば水酸化カルシウム)が最適である。
アルカリ(土類)金属塩として、例えば水酸化カルシウムを用いる場合、水酸化カルシウムは一般に20℃において100gの水中に0.126g程度可溶であり、水溶液濃度は溶解度までであれば特に規定はない。また、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液による洗浄の手法も特に限定されず、臭素化アクリレート系重合体を適当な時間、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液に浸漬させる等の手法で良い。
上記、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液による洗浄処理を終えた臭素化アクリレート系重合体は、一般的に温水抽出分中の乾固分が100ppm以下のものとなり、このような臭素化アクリレート系重合体を用いる場合、その成形品表面に異物を発生させることが殆どなくなる。
臭素化エポキシ化合物としては、エポキシ化合物として1分子中にエポキシ基を1つ以上含有する芳香族エポキシ化合物(ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物など)を用い、数平均分子量が1000以上20000以下であるものを好ましく用いることができる。難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形性の観点からは、数平均分子量は2000以上15000以下であることがより好ましく、3000以上10000以下であることがさらに好ましい。
上記のエポキシ化合物のエポキシ当量は30,000g/当量(g/eq)以上であることが好ましく、32,000g/eq以上であることがより好ましく、34,000g/eq以上であることがさらに好ましく、36,000g/eq以上であることがよりさらに好ましく、36,500g/eq以上であることが特に好ましい。
エポキシ当量をこの範囲にすることにより、本発明における難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形時に、当該組成物が押出機や成形機のスクリューに付着することを抑制できる。これによりスクリュー付着物の成形品への混入を低減できるため、得られる成形品の外観を良好なものとすることができる。
また、上記の臭素化エポキシ化合物として、末端をブロモフェノール(トリブロモフェノール等)などで封止したものを使用すれば、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性の低下を抑制できるため好ましい。
臭素化ポリカーボネートとしては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4-t-ブチルフェニル基や2,4,6-トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6-トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化ポリカーボネートにおける、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2~30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても溶融粘度が高くなり、成形性が悪化する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3~15、特に3~10であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネートの分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1,000~20,000、中でも2,000~10,000であることが好ましい。
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネートは、例えば、臭素化ビスフェノールAとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
臭素化ポリスチレンは、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。なお、臭素化ベンゼンが結合するビニル基の水素原子はメチル基で置換されていてもよい。
また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエン及び酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4-ブロモスチレン)、ポリ(2-ブロモスチレン)、ポリ(3-ブロモスチレン)、ポリ(2,4-ジブロモスチレン)、ポリ(2,6-ジブロモスチレン)、ポリ(2,5-ジブロモスチレン)、ポリ(3,5-ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6-トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5-トリブロモスチレン)、ポリ(4-ブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,4-ジブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,5-ジブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,4,6-トリブロモ-α-メチルスチレン)及びポリ(2,4,5-トリブロモ-α-メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6-トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)及び平均2~3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
臭素化フタルイミドとしては、例えばN,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルフォン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、N,N’-エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)が好ましい。
本発明に用いられる(C)ハロゲン系難燃剤は、当該難燃剤自体である上記の化合物以外に、不純物として、重合時の溶媒やハロゲン系難燃剤の分解物に由来するハロゲン化芳香族化合物を含有しうるが、そのような不純物である、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。
難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、例えば、ハロゲン系難燃剤を粉砕した試料を、ヘッドスペース中で加熱処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフにより測定し、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量から求めることができる。
また、本発明において上記の(C)ハロゲン系難燃剤を含む難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、前述の不純物である、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が、0.5ppm未満であることが好ましく、0.3ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。
難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が上記範囲であることにより、当該難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いたインサート成形品において、金属端子の腐蝕を抑制することができる。このような難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、例えば、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を粉砕した試料を、ヘッドスペース中で加熱処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフにより測定し、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量から求めることができる。
本発明に用いられる(C)ハロゲン系難燃剤は、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法(180℃、1時間加熱)により測定されるプロトン性化合物を、10~1000ppm含有することが好ましい。
本発明においてプロトン性化合物とは、プロトン(水素イオン)供与性を有する化合物のことをいう。このプロトン性化合物は、(C)ハロゲン系難燃剤の重合溶媒に由来するものが一例として挙げられ、中でもアルコキシアルコールが好ましく、C~C20アルコキシC~C20アルコール及び/又はC~C20ジアルコキシC~C20アルコールがより好ましい。
~C20アルコキシC~C20アルコールとしては、メトキシC~C20アルコールや、C~C20アルコキシエタノールがさらに好ましく、メトキシエタノールが特に好ましい。C~C20ジアルコキシC~C20アルコールとしては、3,3-ジエトキシプロパノールが好ましい。
また本発明においてプロトン性化合物としては、(C)ハロゲン系難燃剤の原料に由来するものも挙げられる。なお、本発明においてプロトン性化合物としては、(C)ハロゲン系難燃剤の原料に由来するものよりも、重合溶媒に由来するものの方が好ましい。
本発明において(C)ハロゲン系難燃剤に含有されるプロトン性化合物の量は、上述の通り(C)ハロゲン系難燃剤中、10~1000ppmであることが好ましいが、100~800ppmであることがより好ましく、300~500ppmであることがさらに好ましい。
(C)ハロゲン系難燃剤に含有されるプロトン性化合物の量が10ppm未満であると、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性の改善効果が得にくくなる。また、(C)ハロゲン系難燃剤に含有されるプロトン性化合物の量が1000ppmを超えると、コンパウンド時にガスの発生量が増加し、ペレット化の際にストランド切れが発生しやすくなる。
また、本発明の(C)ハロゲン系難燃剤中のトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンからなる群から選択される有機溶媒の含有量の合計は50ppm以下であることが好ましい。当該有機溶媒の含有量の合計は40ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましく、20ppm以下であることがよりさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましく、8ppm以下であることが最も好ましい。
(C)ハロゲン系難燃剤中の上記有機溶媒の含有量をこの範囲にすることにより、本発明において難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形する際に、押出機や成形機のスクリューへの付着物の発生を低減することができ、その混入による成形品の外観の悪化を抑制することができる。
本発明における難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、難燃助剤としてアンチモン化合物を含むことが好ましい。難燃助剤としてのアンチモン化合物の代表的なものとしては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、(ピロ)アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。さらに、燃焼した樹脂が滴下することによる延焼を防ぐ目的で、ポリテトラフルオロエチレン等の滴下防止剤をあわせて使用することも好ましい。
上記の(C)ハロゲン系難燃剤の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に対する添加量の範囲は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して(C)ハロゲン系難燃剤3~50質量部の範囲であり、10~40質量部の範囲が好ましい。
アンチモン化合物を含有させる場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1~30質量部の範囲が好ましい。(C)ハロゲン系難燃剤の添加量が過少であると十分な難燃性を付与することができず、過大であると成形品としての物性を悪化させることがある。
<(D)多価水酸基含有化合物>
本発明においては、(D)多価水酸基含有化合物を添加することも好ましい。
(D)多価水酸基含有化合物は、一分子中に水酸基を2個以上有する化合物である。また、(D)多価水酸基含有化合物は、水酸基価が200~1000であることが好ましい。
(D)多価水酸基含有化合物を使用することにより、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の特性を高いレベルで保持しつつポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融時の流動性を効率よく向上できる。
ここで、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性としては、ISO11443に準拠し、炉体温度260℃、キャピラリーφ1mm×20mmL、剪断速度1000sec-1にて測定した溶融粘度が、0.2kPa・s以下であることが好ましく、0.19kPa・s以下であることがより好ましく、0.18kPa・s以下(例えば0.17kPa・s以下)であることがさらに好ましい。
(D)多価水酸基含有化合物は、従来公知の方法で製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
(D)多価水酸基含有化合物の水酸基価は100以上であることが好ましい。また、より好ましい水酸基価は200以上であり、さらに好ましい水酸基価は250以上である。上記水酸基価が100以上であれば、上記流動性向上の効果がより高まる傾向にあることに加え、耐加水分解性をも向上させる効果が得られる。
一方、上記水酸基価が大きすぎる場合、(A)ポリブチレンテレフタレートとの反応が過剰に進むことで、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量が低下し、機械特性や耐熱性、耐薬品性といった優れた特性を損なうおそれがある。好ましい水酸基価は1000以下であり、500以下であることがより好ましい。
難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の、(D)多価水酸基含有化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましい。より好ましくは0.1質量部以上4質量部以下である。さらに好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
本発明の(D)多価水酸基含有化合物として、グリセリン脂肪酸エステル又はジグリセリンに酸化アルキレンを付加重合して得られるエーテルを使用することが好ましい。以下、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリンに酸化アルキレンを付加重合して得られるエーテルを説明する。
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン及び/又はその脱水縮合物と脂肪酸とから構成されるエステルである。グリセリン脂肪酸エステルの中でも、炭素数12以上の脂肪酸を用いて得られるものが好ましい。
炭素数が12以上の脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等が挙げられる。好ましくは炭素数12以上32以下の脂肪酸であり、特に好ましくは炭素数12以上22以下の脂肪酸である。
具体的には、ラウリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸又はベヘニン酸が特に好ましい。炭素数12以上の脂肪酸を用いることで、樹脂の耐熱性を十分に維持できる傾向にあるため好ましい。炭素数が32以下であれば、上記流動性改善の効果が高いため好ましい。
好ましいグリセリン脂肪酸エステルを例示すると、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンステアリン酸部分エステル、テトラグリセリンステアリン酸部分エステル、デカグリセリンラウリン酸部分エステル、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート等が挙げられる。
ジグリセリンに酸化アルキレンを付加重合して得られるエーテルとは、例えば、ジグリセリンに酸化プロピレンを付加重合して得られるポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルや、ジグリセリンに酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンジグリセリルエーテルが挙げられる。本発明においては、これらのエーテルの中でも、特に、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテルの使用が好ましい。
<その他の成分>
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、他の樹脂や強化用充填材、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、滑剤、可塑剤、結晶核剤等の従来公知の添加剤を含有させることができる。本発明においては、他の成分として、エステル交換反応触媒、エステル交換反応停止剤を含有させることが好ましい場合がある。
上記組成物が、エステル交換反応触媒を含有すると、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(D)多価水酸基含有化合物との間の反応が促進される。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(D)多価水酸基含有化合物との間の反応が遅く、所望の流動性に到達するまでに時間がかかる場合には、エステル交換反応触媒を用いることで、迅速に所望の流動性を実現できる。
エステル交換反応触媒は、特に限定されず、例えば、金属化合物をエステル交換触媒として使用することができる。中でもチタン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物が好適に使用される。
チタン化合物の具体例としては、酸化チタン等の無機チタン化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が代表的なものとして挙げられる。スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズオキサイド、ヘキサエチルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等が挙げられる。アンチモン化合物としては三酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中でも特に、テトラブチルチタネート、トリブチルスズアセテート、三酸化アンチモンの使用が好ましい。
また、エステル交換反応が進みすぎることにより、樹脂組成物を成形してなる成形体の物性が低下するおそれがある。エステル交換反応後にエステル交換反応停止剤を添加することで、物性低下等の問題を生じさせずに所望の流動性に調節することができる。
エステル交換反応停止剤としては、リン化合物が好ましく使用できる。リン化合物の種類や量は特に限定されず、本発明の組成物に含まれる化合物の種類等の条件に応じて適宜調整することができる。
使用可能なリン化合物としては、特に限定されず、ホスフィン系、ホスフィナイト系、ホスホナイト系、ホスファイト系、ホスフィナスアミド系、ホスホナスジアミド系、ホスホラストリアミド系、ホスホラミダイト系、ホスホロジアミダイト系、ホスフィンオキサイド系、ホスフィネート系、ホスホネート系、ホスフェイト系、ホスフィニックアミド系、ホスホノジアミデート系、ホスホラミド系、ホスホラミデート系、ホスホロジアミデート系、ホスフィンイミド系、ホスフィンサルファイド系のリン化合物を例示できる。また、リン化合物には、金属と塩を形成したものも含まれる。
<耐加水分解特性>
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品は、USCAR-2(5.6.2 Temperature/Humidity Cycling)Class5に準拠した冷熱サイクル試験において、引張強さ保持率が90%以上であり、かつISO 11443により260℃で測定された溶融粘度が0.2kPa・s以下であることを特徴とする。
USCAR-2は、北米自動車規格で定める試験条件であり、そのClass5とは、1サイクルが-40℃(0.5時間)→80~90℃、80~100%RH(4時間)→175℃(1.5時間)である環境試験条件を40サイクル繰り返すものである。
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、そのClass5の温度環境でも十分に使用することができるレベルであることを示している。
なお、引張強さ保持率は、ISO527-1、2に準拠し、試験前後の引張強さを測定して算出することができる。
<難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法>
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製法は特に限定されるものではなく、一般に樹脂組成物の調製法として公知の設備と方法を用いることができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。
また、押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。ここで押出機中での樹脂温度は、240~350℃となるように押出機シリンダー温度を設定することが好ましい。さらに好ましくは270~330℃である。
240℃より低い場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物及び/又は(D)多価水酸基含有化合物との反応が不十分になり、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐加水分解性が不足したり、溶融物の粘度が高いことで十分に混練されず、均一な特性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られないおそれがある。一方、350℃を超える場合は(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の分解が生じやすくなり、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の機械物性や耐加水分解性が不足するおそれがある。
なお、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する際には、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(D)多価水酸基含有化合物とを先に溶融混練した後に、(B)カルボジイミド化合物と(C)ハロゲン系難燃剤やエステル交換反応停止剤を添加することもできる。この場合、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の溶融粘度が低減された状態で(B)カルボジイミド化合物が添加されるため、均一な溶融混練を効率よく行うことができる。
(B)カルボジイミド化合物等を後で添加する方法としては、サイドフィード口から添加しても良いし、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(D)多価水酸基含有化合物とを溶融混練してペレット化した後、これと(B)カルボジイミド化合物と(C)ハロゲン系難燃剤やエステル交換反応停止剤を再溶融混練して製造しても良い。
反対に(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物を先に溶融混練した後に、(D)多価水酸基含有化合物等を添加すると、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)カルボジイミド化合物との反応により、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の粘度が増加しているため、(D)多価水酸基含有化合物との十分な溶融混練が阻害され、さらには剪断による発熱が大きくなり、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の熱分解に繋がるおそれがある。
同様に強化用充填材を添加する場合も、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(D)多価水酸基含有化合物とを先に溶融混練した後に、強化用充填材を添加すれば、あらかじめ(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の粘度が低減されていることで、剪断による強化用充填剤の折損が抑えられ、機械物性を損なわずに済むため、強化用充填剤を使用する場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(D)多価水酸基含有化合物とを先に溶融混練する方法が特に好ましい。
さらに、(B)カルボジイミド化合物と強化用充填材では、強化用充填材を先に添加すれば(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と強化用充填材の表面処理剤との反応が阻害されないことにより、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と強化用充填剤との界面密着がより強固となるため、機械物性を高めやすい点で好ましい。
また、(B)カルボジイミド化合物は、樹脂をマトリックスとするマスターバッチとして配合することも可能であり、マスターバッチを使用することが実際の取り扱いの面から容易なことも多い。ポリブチレンテレフタレート樹脂によるマスターバッチが好適に用いられるが、他の樹脂によりマスターバッチとして調製されたものを使用しても構わない。ポリブチレンテレフタレート樹脂によるマスターバッチの場合、所定の配合量の範囲内になるように調整すればよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。評価は、特に断りの無い限り23℃55RH%の雰囲気下で行った。
表1、2に記載の化合物は下記の通りである。
<材料>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)
A-1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度=1.14dL/g、末端カルボキシル基量=4meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
A-2:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度=1.14dL/g、末端カルボキシル基量=9meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
A-3:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度=0.95dL/g、末端カルボキシル基量=9meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
A-4:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度=1.13dL/g、末端カルボキシル基量=12meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
A-5:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度=0.84dL/g、末端カルボキシル基量=15meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
(B)カルボジイミド化合物
B-1:スタバクゾールP100 カルボジイミド当量3625meq/kg(ランクセス株式会社製芳香族カルボジイミド化合物)
(C)ハロゲン系難燃剤
C-1:臭素化アクリレート系重合体(溶媒にエチレングリコールモノメチルエーテルを使用して重合したポリペンタブロモベンジルアクリレート(難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物含有量8ppm、プロトン性化合物としてメトキシエタノール20ppm含有))
C-2:臭素化エポキシ化合物(エポキシ当量36800g/eq、有機溶媒量5ppm、重量平均分子量約18000の臭素化エポキシ化合物)
C-3:臭素化ポリカーボネート(帝人株式会社製、ファイヤーガード7500)
C-4:臭素化ポリスチレン(フォロ社製、パイロチェック68PB)
C-5:臭素化フタルイミド(アルベマール日本社製、エチレンビステトラブロモフタルイミド、SAYTEX BT-93W)
(D)多価水酸基含有化合物
D-1:ヒドロキシステアリン酸グリセリル(水酸基価480、理研ビタミン株式会社製、リケマールHC100)
なお(D)多価水酸基含有化合物の水酸基価については、日本油化学会2.3.6.2-1996 ヒドロキシル価(ピリジン-無水酢酸法)により測定した。
(その他)
難燃助剤:三酸化アンチモン(日本精鉱株式会社製、PATOX-M)
滴下防止剤:ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子株式会社製、フルオンCD-076)
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤(BASF社製、イルガノックス1010)
滑剤:ジグリセロールテトラベヘネート(理研ビタミン株式会社製、リケマールB74)
アルカリ化合物:酢酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)
<実施例1~10、比較例1~7>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)カルボジイミド化合物、(C)ハロゲン系難燃剤、(D)多価水酸基含有化合物、及びその他の成分を、表1、2に示す配合組成で秤量後ドライブレンドし、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX-30)にて、シリンダー温度を300℃、スクリュー回転数を130rpm、押出量を12kg/hとして、溶融混練を行い、吐出されたストランド状の溶融樹脂を冷却し、ペレタイザーによりカッティングすることにより、樹脂組成物のペレット状サンプルを得た。次いで、このペレットを用いて以下の各種評価を行った。
[カルボジイミド官能基量と末端カルボキシル基量との当量比]
末端カルボキシル基量は、得られたペレットの粉砕試料をベンジルアルコール中215℃で10分間溶解後、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液にて滴定することにより求めた。この末端カルボキシル基量に対する測定結果と、混合するカルボジイミド官能基量の当量比を表1、2に示す。
カルボジイミド官能基量と末端カルボキシル基量との当量比=
カルボジイミド官能基量/末端カルボキシル基量
[カルボジイミド官能基量から末端カルボキシル基量を減じた値]
カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量からポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を減じた値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂1kg当たりに混合するカルボジイミド官能基量からポリブチレンテレフタレート樹脂1kgに含まれる末端カルボキシル基量を減じた値として、次式により求めた。値を表1、2に示す。
カルボジイミド官能基量から末端カルボキシル基を減じた値=
ポリブチレンテレフタレート樹脂1kg当たりに混合するカルボジイミド官能基量-ポリブチレンテレフタレート樹脂1kgに含まれる末端カルボキシル基量(meq/PBT・kg)
[難燃性]
得られたペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、シリンダ温度250℃、金型温度70℃にて射出成形し、UL94に準拠し、125mm×13mm×厚さ1/32インチの短冊状試験片を作製して燃焼性を評価した。結果を表1、2に示す。
[流動性(溶融粘度)]
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、ISO11443に準拠し、キャピログラフ1B(東洋精機製作所社製)を用いて、炉体温度260℃、キャピラリーφ1mm×20mmL、剪断速度1000sec-1にて測定した。単位はkPa・sである。結果を表1、2に示す。
[耐加水分解性(引張強さ保持率)]
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、樹脂温度260℃、金型温度80℃、射出時間15秒、冷却時間15秒で、ISO3167引張試験片を射出成形し、その試験片をUSCAR-2(5.6.2 Temperature/Humidity Cycling)Class5に準拠し、1サイクルが-40℃(0.5時間)→85℃、85%RH(4時間)→175℃(1.5時間)である環境試験条件を40サイクル繰返し、冷熱サイクル試験する前後で、ISO527-1,2に準拠し引張強さを測定した。なお、引張強さ保持率は、下式に基づいて算出、これを耐加水分解性の指標とした。結果を表1、2に示す。
引張強さ保持率(単位:%)=(処理後の引張強さ/処理前の引張強さ)×100
Figure 2022066647000002
Figure 2022066647000003
実施例の結果と比較例の結果とから、本発明によれば、優れた耐加水分解性と流動性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られることが確認された。

Claims (4)

  1. 少なくとも、(A)末端カルボキシル基量が1~9meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)カルボジイミド化合物と、(C)ハロゲン系難燃剤とを含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量が該末端カルボキシル基量1当量に対して5~40当量、且つ該カルボジイミド化合物のカルボジイミド官能基量から該ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を減じた値が30meq/PBT・kg以上である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. USCAR-2(5.6.2 Temperature/Humidity Cycling)Class5に準拠した冷熱サイクル試験において引張強さ保持率が90%以上である請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. ISO 11443により260℃で測定された溶融粘度が0.2kPa・s以下である請求項1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. (D)多価水酸基含有化合物を含有する請求項1~3の何れかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
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