JP2022058021A - 二次電池用バインダー、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、電極用組成物、電極シート及び二次電池、並びに、これら電極シート及び二次電池の製造方法 - Google Patents

二次電池用バインダー、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、電極用組成物、電極シート及び二次電池、並びに、これら電極シート及び二次電池の製造方法 Download PDF

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智則 三村
Tomonori Mimura
郁雄 木下
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Abstract

【課題】電極活物質、導電助剤等の固体粒子と混合することにより得られる組成物を用いて電極活物質層を形成すれば、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高めることができ、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも得られる二次電池のサイクル特性を十分に高めることができる、二次電池用のバインダー、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、電極用組成物、電極シート及び二次電池、並びに、これら電極シート及び二次電池の製造方法を提供する。【解決手段】第1架橋ポリマーとこの第1架橋ポリマーとは異なる第2架橋ポリマーとにより構成された相互侵入高分子網目を有し、水溶性又は水分散性を示す二次電池用バインダー、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、電極用組成物、電極シート及び二次電池、並びに、これら電極シート及び二次電池の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池用バインダー、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、電極用組成物、電極シート及び二次電池、並びに、これら電極シート及び二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等のポータブル電子機器の動力源として用いられている。最近では、二酸化炭素排出量削減という地球規模の環境課題を背景に、自動車等の輸送機器の動力電源として、また、夜間電力、自然エネルギー発電による電力等の蓄電用途としても普及してきている。
リチウムイオン二次電池の電極(正極及び負極)は電極活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)を有し、この電極活物質層は、充放電時にリチウムイオンを吸蔵ないし放出可能な電極活物質粒子を含む。また、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間では電子輸送も行われるため、電子伝導性を確保することが要求される。この電子伝導の効率化には電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性が重要である。
例えば特許文献1には、第1重合単位体と第2重合単位体との架橋結合によって形成されて相互侵入高分子網目(interpenetrating polymer network、IPN)を有する架橋高分子が記載されている。特許文献1によれば、この架橋高分子と、電極活物質及びバインダーとを含む電極合剤スラリーを用いて形成した電極合剤層中で、バインダーを均一に分布させることができ、集電体と電極物質との接着力を確保できるとされている。
また近年、リチウムイオン二次電池の更なる高容量化を実現するために、負極活物質としてケイ素系活物質を用いる検討が盛んに行われている。負極にケイ素系活物質を用いると高エネルギー密度化が可能となる。しかし、ケイ素系活物質は充電時にはリチウムイオンを多量に吸蔵して大きく膨張し、その分、放電時におけるケイ素系活物質の収縮幅も大きくなる。したがって、負極活物質としてケイ素系活物質を用いたリチウムイオン電池は充放電時の負極活物質の体積変化が大きく、充放電の繰り返しにより電池性能が低下しやすい。つまり、サイクル寿命の向上には制約がある。
このような問題に対処した技術として、例えば、特許文献2には、ヒドロキシ基またはアミン基を有する第1高分子、カルボン酸基を有する第2高分子、及び、ゴム系またはフッ素系の第3高分子の架橋結合によって形成された相互浸透型架橋ネットワークが記載されている。特許文献2によれば、この相互浸透型架橋ネットワークと負極活物質とを含む負極活物質層を有する負極をリチウム電池に適用することによって、負極活物質の体積変化が抑制されて、寿命特性を向上させることができるとされている。
リチウムイオン二次電池の電極は通常、電極形成用の組成物(スラリー)を集電体上に塗布し、乾燥して形成される。したがって、電極形成のためのスラリーは、電極活物質とバインダーとを液媒体中に分散して調製される。近年の環境問題への関心の高まりを背景に、上記特許文献1及び2にも記載されるように液媒体として水系のものが求められるようになっている。
特表第2018-526799号公報 特許第5198231号
二次電池の用途の拡大に伴い、二次電池には高エネルギー密度化及びサイクル特性の更なる向上が求められている。しかし、本発明者らが上記各特許文献に記載されたポリマーネットワークを含む従来の電極用バインダーについて検討した結果、負極活物質としてケイ素系活物質を用いて二次電池の高エネルギー密度化を図った場合に、サイクル特性を目的の高いレベルへと導くには至っていないことが明らかとなってきた。
本発明は、電極活物質、導電助剤等の固体粒子と混合することにより得られる組成物(スラリー)を用いて電極活物質層を形成すれば、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高めることができ、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも、得られる二次電池のサイクル特性を十分に高める(サイクル寿命を十分に長期化する)ことができる、二次電池用のバインダーを提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、上記二次電池用バインダーと電極活物質とを組合せた電極用組成物、上記電極用組成物を用いた電極シート及び二次電池を提供することを課題とする。さらに本発明は、上記電極シート及び二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、二次電池に用いるバインダーを構成する水溶性ないし水分散性のポリマーとして、少なくとも2種の架橋ポリマー同士を相互に侵入させた網目構造を有するものを用いることにより、上記課題を解決できることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記課題は以下の手段により解決された。
<1>
第1架橋ポリマーとこの第1架橋ポリマーとは異なる第2架橋ポリマーとにより構成された相互侵入高分子網目を有し、水溶性又は水分散性を示す二次電池用バインダー。
<2>
上記第1架橋ポリマー及び上記第2架橋ポリマーが架橋剤成分を有する、<1>に記載の二次電池用バインダー。
<3>
前記第1架橋ポリマーが、連鎖重合により形成された構造部を有する、<2>に記載の二次電池用バインダー。
<4>
上記第1架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量と上記第2架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量が、いずれも1.0質量%以下である、<2>又は<3>に記載の二次電池用バインダー。
<5>
上記第1架橋ポリマーが、水溶性ポリマー成分と架橋剤成分とを有し、上記第2架橋ポリマーが、エチレン性不飽和基を1つ有する単官能モノマー由来の成分と、架橋剤成分としてエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマー由来の成分とを有する、<2>~<4>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー。
<6>
上記第2架橋ポリマーの架橋剤成分がアミド結合を有する、<5>に記載の二次電池用バインダー。
<7>
上記第1架橋ポリマーが、下記一般式(1)又は(2)で表される構成成分の少なくとも1種を含み、上記第2架橋ポリマーが下記一般式(3)で表される構成成分を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー。
Figure 2022058021000001
式中、R~R11は水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。Aは水素原子又はアシル基を示し、Aは炭素数1~16のアルキル基を示し、Aは水素原子、アミノ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、シアノ基又はヘテロ環基を示す。Lは-O-又は-NR-を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは単結合、アルキレン基、-O-若しくはカルボニル基、又は、アルキレン基、-O-及びカルボニル基から選ばれる基を2つ以上組合せてなる2価の連結基を示す。
<8>
上記第1架橋ポリマーが上記一般式(1)で表される構成成分を有し、上記第1架橋ポリマー中の上記一般式(1)で表される構成成分の含有量が90質量%以上である、<7>に記載の二次電池用バインダー。
<9>
上記バインダー中、上記第1架橋ポリマーの含有量が21~79質量%であり、上記第2架橋ポリマーの含有量が21~79質量%である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー。
<10>
上記第2架橋ポリマーが酸性基を有し、この酸性基の少なくとも一部が多価アミンで中和された構造を有する、<1>~<9>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー。
<11>
上記第2架橋ポリマーが酸性基を有し、この酸性基の中和度が95モル%以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダー。
<12>
<1>~<11>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダーと水とを含有してなる、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液。
<13>
<1>~<11>のいずれか1つに記載の二次電池用バインダーと、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な電極活物質とを含む電極用組成物。
<14>
水を含有する、<13>に記載の電極用組成物。
<15>
<13>又は<14>に記載の電極用組成物で形成した層を有する電極シート。
<16>
正極とセパレータと負極とをこの順で有する二次電池であって、上記正極を構成する正極活物質層及び上記負極を構成する負極活物質層の少なくとも1つの層が、<13>又は<14>に記載の電極用組成物で形成した層である、二次電池。
<17>
<13>又は<14>に記載の電極用組成物を用いて電極活物質層を形成することを含む、電極シートの製造方法。
<18>
<17>に記載の製造方法により得られた電極シートを二次電池の電極に組み込むことを含む、二次電池の製造方法。
本発明の二次電池用バインダー、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液、電極用組成物、電極シートは、これらを用いて電極を作製した二次電池において、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性を十分に高めることができ、充放電時の体積変化の大きな電極活物質を用いた場合でも二次電池のサイクル寿命を十分に長期化することができる。
本発明の二次電池は、電極活物質粒子間、ないし電極活物質粒子と集電体との間の結着性が十分に高められ、電極活物質として充放電時の体積変化の大きなものを採用した場合にも十分に長いサイクル寿命を有する。
本発明の電極シートの製造方法によれば、本発明の上記電極シートを得ることができる。また、本発明の二次電池の製造方法によれば、本発明の上記二次電池を得ることができる。
図1は、本発明に係る二次電池の一実施形態について、基本的な積層構成を模式化して示す縦断面図である。
本発明において、二次電池用バインダーが「水溶性又は水分散性を示す」とは、下記式により算出される値X(質量%)が5質量%未満となる特性を示すことを意味する。X(質量%)は、3質量%未満であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましい。

X(質量%)=100×[バインダーと水との混合液(10mL、混合液中のバインダー含有量:10質量%)を、シリンジを用いて#400メッシュの金網を通過させた際に、金網を通過せずに金網上に残った残留物の質量]/[上記混合液中のバインダーの質量]

「メッシュ」は1インチ(25.4mm)当たりの桝目の数である。例えば、#1000メッシュは、1インチ当たり1000の桝目を有するメッシュである。

本発明において、「水溶性ポリマー」とは、20℃において水に対する溶解度が5g/L以上である(水1リットルに対して5g以上溶解する)ポリマーを意味する。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において化合物、構成成分又は置換基の表示については、化合物そのもの、構成成分そのもの又は置換基そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。例えば、化合物中におけるカルボキシ基のように解離性の水素原子(水素原子が塩基の作用により解離する基)を有する基は、水素原子が解離してイオン構造を採っていてもよく、塩構造を採っていてもよい。すなわち、本発明において、「化合物又は構成成分が有するカルボキシ基」はカルボン酸イオン又はその塩を含む意味である。上記塩構造を構成する際の対イオンについては、後述の対イオンの記載を適用することができる。
塩構造の場合、その塩の種類は1種類でもよく、2種類以上混在していてもよく、化合物(ポリマー)中で塩型と遊離酸構造の基が混在していてもよく、また、塩構造の化合物と遊離酸構造化合物が混在していてもよい。
また、本発明の効果を奏する範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。更に、本発明において置換又は無置換を明記していない化合物又は構成成分については、本発明の効果を奏する範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。このことは、置換基(例えば、「アルキル基」、「メチル基」、「メチル」等のように表現される基)及び連結基(例えば、「アルキレン基」、「メチレン基」、「メチレン」等のように表現される基)についても同様である。このような任意の置換基のうち、本発明において好ましい置換基は、後記する置換基群Tから選択される置換基である。
本発明において、特定の符号又は式で示された置換基若しくは連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、ポリマーの構成成分についても同様である。
本発明において、各成分は1種含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
本発明において「非水二次電池」とは、非水電解液二次電池と全固体二次電池とを含む意味である。本発明において「非水電解液」とは、水を実質的に含まない電解液を意味する。すなわち、「非水電解液」は本発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。本発明において「非水電解液」は、水の濃度が200ppm(質量基準)以下であり、100ppm以下が好ましく20ppm以下がより好ましい。なお、非水電解液を完全に無水とすることは現実的に困難であり、通常は水が1ppm以上含まれる。「全固体二次電池」とは、電解質として液を用いず、無機固体電解質、固体状ポリマー電解質等の固体電解質を用いた二次電池を意味する。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基そのものの炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基の炭素数は含まずに数えた場合の炭素数を意味する。
本発明において、含有量又は含有割合を記載する場合に使用する「固形分」とは、後述する水及び液媒体以外の成分を意味する。
[二次電池用バインダー]
本発明の二次電池用バインダー(以降、「本発明のバインダー」とも称す。)は、第1架橋ポリマーとこの第1架橋ポリマーとは異なる第2架橋ポリマーとにより構成された相互侵入高分子網目を有し、水溶性又は水分散性を示す。すなわち、本発明のバインダーは水と混合してもハイドロゲルのようには膨潤せずに水溶性又は水分散性を示し、本発明のバインダーの水溶液又は水分散液は、二次電池、好ましくは非水二次電池、より好ましくは非水電解液二次電池を構成する部材ないし構成層の形成に好適な塗布液として用いることができる。
本発明において「相互侵入高分子網目」とは、第1架橋ポリマーの網目構造と第2架橋ポリマーの網目構造が互いに入り組んで、絡み合っている構造を意味する。
互いに異なる2種の架橋ポリマーの単なる混合物(相互侵入高分子網目を構成していない混合物)では、2種の架橋ポリマー同士の高度な均一混合は難しく、このような混合バインダーを用いた二次電池では所望の性能を発現させることが難しい。また、線状ポリマーと架橋ポリマーとにより形成されるネットワークでも所望の効果を得ることが難しい。本発明のバインダーは、架橋ポリマー同士が互いの網目構造に入り込んで絡み合った構造を採ることにより、この特異な構造に起因して優れた機械強度とともに柔軟性も発現することができ、二次電池のバインダーとして優れた結着性とサイクル特性の両立を実現することができる。
第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマーは、いずれも架橋構造を有し、化学構造は互いに異なり、かつ相互侵入高分子網目を構成する限り特に制限されない。架橋の形態として、例えば、ポリマーと架橋剤とを反応させてポリマーに架橋構造を導入したり、有機過酸化物を用いてポリマーのラジカルを発生させて、このラジカルの作用でポリマーに架橋構造を導入したり、ポリマーが有する官能基同士を反応させてポリマーに架橋構造を導入したりする形態が挙げられる。
第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマーの分子量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されない。例えば、重量平均分子量として30,000以上とすることができ、100,000以上であることがより好しい。一方、この重量平均分子量は、5,000,000以下であることが好ましく、2,000,000以下であることがより好ましい。
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリアクリル酸ナトリウム換算の重量平均分子量であり、下記測定条件1の方法により測定した値を採用する。ただし、測定する試料に応じて、適宜適切な溶離液を選定して用いることができる。
(測定条件1)
測定器:HLC-8220GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TOSOH TSKgel 5000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G4000PWXL(商品名、東ソー社製)、TOSOH TSKgel G2500PWXL(商品名、東ソー社製)をつなげる。
キャリア:200mM 硝酸ナトリウム水溶液
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.2%
検出器:RI(屈折率)検出器
測定する試料が上記測定条件1では重量平均分子量が測定できない場合は、下記測定条件2の静的光散乱により、重量平均分子量を測定する。
測定器:DLS-8000(商品名、大塚電子社製)
測定濃度:0.25、0.50、0.75、1.00mg/mL
希釈液:0.1M NaCl水溶液
レーザー波長:633nm
ピンホール:PH1=Open、PH2=Slit
測定角度:60、70、80、90、100、110、120、130度
解析法:Zimm平方根プロットより、分子量を測定した。解析に必要なdn/dcはAbbe屈折率計で実測する。
本発明において、第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマーは、ポリマーと架橋剤とを反応させてポリマーに架橋構造が導入されたものであることが好ましい。すなわち、第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマーは、いずれも架橋剤成分(架橋剤由来の構成成分)を有することが好ましい。各架橋ポリマーが架橋剤成分を有することで、本発明の二次電池用バインダーを非水電解液二次電池に用いた場合に、非水電解液への溶解を抑制したり、バインダーの力学的強度を向上させることができる。
上記架橋剤成分を導く架橋剤として、2~10,000価の架橋剤(架橋性基を2~10,000個有する架橋剤)が好ましく、2~50価の架橋剤がより好ましく、2~6価の架橋剤が更に好ましい。架橋剤が有する架橋性基は特に制限されず、架橋形成されるポリマーが有する官能基等に対して反応性の基を適宜に適用することができる。架橋性基の一例としては、例えば、エチレン性不飽和基、ホルミル基、イソシアネート基、カルボン酸ハロゲノ基(-C(=O)X(Xはハロゲン原子を示す))、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及びヒドロキシ基が挙げられる。なかでも、ポリマー中のヒドロキシ基(例えばポリビニルアルコールのヒドロキシ基)に対しては架橋性基としてホルミル基を好ましく適用でき、連鎖重合系のポリマーに対しては、分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する架橋剤を多官能モノマー由来の成分として組み込むことが好ましい。
上記架橋剤の分子量は特に制限されず、50~2,000が好ましく、150~600がより好ましい。架橋剤が重合体である場合(架橋剤が分子量分布を有する場合)、架橋剤の重量平均分子量は、300~30,000が好ましく、1,000~10,000がより好ましい。
第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマー中の架橋剤成分を構成する原子、連結基及び結合に特に制限はない。架橋剤成分は、例えば、直鎖状又は分岐を有する飽和炭化水素基、イミノ基、カルボニル基、エーテル結合、アリーレン基、3価の窒素原子及び2価のリン酸基(リン酸から2つ水素原子を除いた2価の基)から選ばれる1種又は2種以上を組合せた基を有することができる。
上記飽和炭化水素基の炭素数は1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましい。具体例として、メチレン、エチレン、プロピレン及びプロパン-2,2-ジイル、並びにメタンテトライル、エタンテトライル、プロパンテトライル、ブタンテトライル、ペンタンテトライル及び下記化学式で表される2,2-ジメチルプロパンテトライルが挙げられる。
Figure 2022058021000002
上記アリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~10がより好ましく、具体例としてフェニレン及びナフチレンが挙げられる。
第1架橋ポリマーと第2架橋ポリマーの、架橋剤成分を除いた部分のポリマー(架橋構造部以外のポリマー構造)の重合形態に特に制限はなく、連鎖重合系でも逐次重合系でもよい。どのようなポリマーを用いても、これらを、相互侵入高分子網目を形成するように架橋構造を導入することにより、これを二次電池のバインダーとして用いた場合に、上記ポリマーに相互侵入高分子網目を形成させていないものに比べて固体粒子間等の結着性とサイクル特性を所望のレベルへと高めることができる。
固体粒子間等の結着性とサイクル特性をより高める観点からは、第1架橋ポリマーが、連鎖重合により形成された構造部(エチレン性不飽和結合が連鎖重合してなる構造部)を有することも好ましい。連鎖重合により形成された構造部を有することで、架橋密度を高めることができる。
本発明において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第1架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量が1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく0.4質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更に好ましい。一方、第1架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.03質量%以上であることが更に好ましい。
また本発明において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第2架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量が1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく0.4質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更に好ましい。一方、第2架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.03質量%以上であることが更に好ましい。
本発明において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第1架橋ポリマーが、水溶性ポリマー成分と架橋剤成分とを有することが好ましい。一方、第2架橋ポリマーは、エチレン性不飽和基を1つ有する単官能モノマー由来の成分(単官能モノマー成分)とエチレン性不飽和基を2つ以上(好ましくは2~6個)有する多官能モノマー由来の成分(多官能モノマー成分)とを有することが好ましい。エチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマー成分は、第2架橋ポリマーの架橋剤成分を構成する。すなわち、第2架橋ポリマーはその架橋構造も含めて、連鎖重合反応により形成されたものとすることができる。なかでも、第1架橋ポリマーが、水溶性ポリマー成分と架橋剤成分とを有し、かつ、第2架橋ポリマーが、上記単官能モノマー成分と上記多官能モノマー成分とを有することがより好ましい。
第2架橋ポリマーが上記単官能モノマー成分と上記多官能モノマー成分とを有する形態において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第2架橋ポリマーの架橋剤成分である上記多官能モノマー成分はアミド結合を有することが好ましい。この場合、上記多官能モノマー成分中のアミド結合の個数は特に制限されず、1~10が好ましく、2~6がより好ましい。なお、架橋剤成分中のアミド結合の個数は、架橋剤の価数(架橋性基の数)と同じであることが好ましい。
本発明において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第1架橋ポリマーが、下記一般式(1)又は(2)で表される構成成分の少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合において、一般式(1)又は(2)で表される構成成分は、第1架橋ポリマーにおける水溶性ポリマー成分として含まれる。すなわち、第1架橋ポリマーは、一般式(1)又は(2)で表される構成成分の少なくとも1種を含む水溶性ポリマー成分と架橋剤成分とを有する形態であることが好ましい。
第2架橋ポリマーは下記一般式(3)で表される構成成分を含むことが好ましい。この場合において、一般式(3)で表される構成成分は、第2架橋ポリマーにおける上記単官能モノマー成分として含まれる。すなわち、第2架橋ポリマーは、一般式(3)で表される構成成分を含む上記単官能モノマー成分と上記多官能モノマー成分とを有する形態であることが好ましい。
本発明において、第1架橋ポリマーが、下記一般式(1)又は(2)で表される構成成分の少なくとも1種を含み、かつ、第2架橋ポリマーが下記一般式(3)で表される構成成分を含むことがより好ましい。また本発明において、第2架橋ポリマーが下記一般式(3)で表される構成成分を1~3種含むことが好ましく、1種又は2種含むことがより好ましく、2種含むことがさらに好ましい。
Figure 2022058021000003
式中、R~R11は水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。Aは水素原子又はアシル基を示し、Aは炭素数1~16のアルキル基を示し、Aは水素原子、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基、-S(=O)(-OH))、リン酸基(-OP(=O)(-OH))、ホスホン酸基(-P(=O)(-OH))、シアノ基又はヘテロ環基を示す。Lは、-O-又は-NR-を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは単結合、アルキレン基、アリーレン基、-O-若しくはカルボニル基、又は、アルキレン基、アリーレン基、-O-及びカルボニル基から選ばれる基を2つ以上組合せてなる2価の連結基を示す。ただし、通常、L及びLは「-O-O-」構造を採らない。
~R11として採り得るハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
~R11は水素原子又はアルキル基を示すことが好ましい。
~R11として採り得るアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~7がより好ましく、1~4がより好ましく、1が更に好ましい。具体例として、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
として採り得るアシル基(R-C(=O)-)において、Rは、アルキル基、アルケニル基、フェニル基又はピラゾール基を示し、アルキル基を示すことが好ましい。
として採り得るアルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、具体例として、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル、ペンチル、シクロヘキシル、1-エチルペンチル及びペンタデシルが挙げられる。このアルキル基は置換基を有してもよく、この置換基として、例えば後述の置換基群Tの置換基が挙げられ、ハロゲン原子を好ましい置換基として挙げることができる。このハロゲン原子はフッ素原子がより好ましい。
として採り得るアルケニル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~20がより好ましく、具体例として、ビニル、アリル、オレイルが挙げられる。
で示される炭素数1~16のアルキル基は、その炭素数が1~12が好ましく、1~10がより好ましい。Aで示される炭素数1~16のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、t-ブチル、シクロペンチル及び1-エチルペンチルが挙げられる。このアルキル基は置換基を有してもよく、この置換基として例えば後述の置換基群Tの置換基が挙げられ、アリール基及びアルコキシカルボニル基を好ましい置換基として挙げることができる。アリール基としてはフェニルが好ましく、アルコキシカルボニル基としてはエトキシカルボニルが好ましい。
は水素原子であることが好ましい。また、一般式(3)において、-L-A構造の末端がヒドロキシ基若しくはカルボキシ基を形成していることも好ましい。つまり、-L-A構造において、LのうちA側に位置する構造部が、-O-又は-COO-であり、かつAが水素原子でることも好ましい。また、Lが単結合の場合、-L-L-A構造がヒドロキシ基又は置換又は無置換のアミノ基であることも好ましい。
として採り得るヘテロ環基としては、後述の置換基群Tで挙げたヘテロ環基が好ましい。
は-O-を示すことが好ましい。つまり、一般式(3)で表される構成成分は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するモノマー由来の成分であることが好ましい。
として採り得るアルキレン基の形態は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。アルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、2-エチルヘキサン-1,6-ジイル、1-メチルエチレン及び1,1-ジメチルエチレンが挙げられる。
として採り得るアリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~10がより好ましく、具体例としてフェニレン及びナフチレンが挙げられる。
が採り得る、「アルキレン基、アリーレン基、-O-及びカルボニル基から選ばれる基を組合せてなる2価の連結基」としては、例えば、-[アルキレン基-O]-、-[アルキレン基-アリーレン基]-、-[アルキレン基-アリーレン基-アルキレン基-O]-、-[アルキレン基-O-アルキレン基]-、-[アルキレン基-O]-アルキレン基-、-[アルキレン基-O-カルボニル基-アルキレン基-カルボニル基-O]-が挙げられる。mは、平均繰り返し数を意味し、1~1,000が好ましく、1~50がより好ましく、1~20が更に好ましい。また、「アルキレン基、アリーレン基、-O-及びカルボニル基から選ばれる基を組合せてなる2価の連結基」がアルキレン基と有する場合、このアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8がさらに好ましい。
- 置換基群T -
本発明において、好ましい置換基としては、下記置換基群Tから選ばれる置換基が挙げられる。
また、本発明において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基群Tを参照するものであり、各々の基、例えば、アルキル基、が記載されているのみの場合は、この置換基群Tの対応する基が好ましく適用される。
さらに、本明細書において、アルキル基を環状(シクロ)アルキル基と区別して記載している場合、アルキル基は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基を包含する意味で用いる。一方、アルキル基を環状アルキル基と区別して記載していない場合、及び、特段の断りがない場合、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基及びシクロアルキル基を包含する意味で用いる。このことは、環状構造を採り得る基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニルオキシ基等)、環状構造を採り得る基を含む化合物についても同様である。基が環状骨格を形成しうる場合、環状骨格を形成する基の原子数の下限は、この構造を採り得る基について下記に具体的に記載した原子数の下限にかかわらず、3以上であり、5以上が好ましい。
下記置換基群Tの説明においては、例えば、アルキル基とシクロアルキル基のように、直鎖又は分岐構造の基と環状構造の基とを明確にするため、これらを分けて記載していることもある。
置換基群Tとしては、下記の基が挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ペンチル、ヘプチル、1-エチルペンチル、ベンジル、2-エトキシエチル、1-カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2~20であるアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2~20であるアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数が3~20であるシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数が6~26であるアリール基、例えば、フェニル、1-ナフチル、4-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、3-メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数が2~20であるヘテロ環基で、より好ましくは、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子の少なくとも1種を環構成原子として有する5又は6員のヘテロ環基である。ヘテロ環基は芳香族ヘテロ環基及び脂肪族ヘテロ環基を含む。例えば、テトラヒドロピラン環基、テトラヒドロフラン環基、2-ピリジル、4-ピリジル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、2-チアゾリル、2-オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1~20であるアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6~26であるアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、3-メチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に-O-基が結合した基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数が2~20であるアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数が6~26であるアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、3-メチルフェノキシカルボニル、4-メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数が0~20であるアミノ基であり、アルキル基及びアリール基から選択される基で置換されたアミノ基を含む。例えば、アミノ(-NH)、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数が0~20であるスルファモイル基であり、アルキル基及びアリール基から選択される基で置換されたスルファモイル基を含む。例えば、スルファモイル(-SONH)、N,N-ジメチルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基及びヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数が1~20であるアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基及びヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数が1~20であるアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数が1~20であるカルバモイル基であり、アルキル基及びアリール基から選択される基で置換されたカルバモイル基を含む。例えば、N,N-ジメチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数が1~20であるアシルアミノ基であり、アシルアミノ基におけるアシル基としては、上記アシル基が好ましく挙げられる。例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6~26であるアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数が6~42であるアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に-S-基が結合した基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数が6~22であるアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数が1~20であるアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、亜リン酸基(好ましくは炭素数が0~20である亜リン酸基、例えば、-OP(=O)(-OH)(R))、次亜リン酸基(好ましくは炭素数が0~20である次亜リン酸基、例えば、-OP(=O)(R)、ホスホリル基(好ましくは炭素数が0~20であるホスホリル基、例えば、-P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数が0~20であるホスフィニル基、例えば、-P(R)、スルホ基(スルホン酸基)、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)が挙げられる。Rは、水素原子又は置換基(好ましくは置換基群Tから選択される基)である。
また、これらの置換基群Tで挙げた各基は、上記置換基群Tで挙げた各基を更に置換基として有していてもよい。
以下、一般式(1)で表される構成成分の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2022058021000004
以下、一般式(2)で表される構成成分の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2022058021000005
以下、一般式(3)で表される構成成分の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記D-10~D-13における( )内に示されたアルキレンオキシ基は繰り返し単位であることを意味し、その繰り返し数は上記mと同義である。
Figure 2022058021000006
以下、上述の架橋剤成分を導く架橋剤の具体例を示す。第1架橋ポリマーの合成に下記一般式(4)で表される架橋剤を用いることが好ましく、第2架橋ポリマーの合成に一般式(5)で表される架橋剤を用いることが好ましい。なかでも、第1架橋ポリマーがポリビニルアルコール構造を有する場合に、一般式(4)は第1架橋ポリマーの形成に用いる架橋剤として好適である。また、一般式(5)で表される架橋剤は、連鎖重合系の第2架橋ポリマーの形成における多官能モノマーとして好適である。
Figure 2022058021000007
一般式(4)中、Lは単結合又は連結基を示す。この連結基の具体例として、例えば、アルキレン基若しくはアリーレン基又はこれらの組合せが挙げられる。上記アルキレン基としては、例えば、上述のLとして採り得るアルキレン基が挙げられる。上記アリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~10がより好ましく、具体例としてフェニレン及びナフチレンが挙げられる。
一般式(5)中、R12~R14は上述のRと同義であり、好ましい範囲も同じである。lは2~6の整数である。LLは2~6価の連結基を示す。LLを構成する原子、連結基及び結合は、上述の第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマー中の架橋剤成分を構成する原子、連結基及び結合を適宜採用することができる。LLは直鎖状又は分岐を有する飽和炭化水素基、2価のリン酸基、-O-若しくは3価の窒素原子又はこれらの組合せが好ましい。
は単結合、-O-若しくは-NR-又はこれらの組合せてなる2価の連結基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。
ただし、通常、LL及びLは同時に「-O-」を示さない。
以下、架橋剤が導入された架橋構造を、ポリマー主鎖構造部分を併せて具体的に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記に示すように、第1架橋ポリマーがポリビニルアルコール構造を有し、一般式(4)で表される架橋剤によって下記K-1~K-4の少なくともいずれかの架橋構造を有することが好ましい。また、第2架橋ポリマーが、エチレン性不飽和基を1つ有する単官能モノマーと、一般式(5)で表される架橋剤(多官能モノマー)との共重合体であり、この架橋剤によって下記C-1~C-11の少なくともいずれかの架橋構造を有することが好ましい。
Figure 2022058021000008
Figure 2022058021000009
本発明において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第1架橋ポリマーが一般式(1)で表される構成成分を有する形態において、第1架橋ポリマー中の上記一般式(1)で表される構成成分の含有量は85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。また同様の点から、第1架橋ポリマー中の上記一般式(1)で表される構成成分の含有量は99.99質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以下であることがより好ましい。
なお、第1架橋ポリマーは、本発明の効果を奏する範囲内で、一般式(1)又は(2)で表される構成成分以外で、かつ架橋剤成分以外の構成成分(第3構成成分)を含んでもよい。第1架橋ポリマー中、第3構成成分の含有量は、例えば、10質量%以下とすることができる。
第2架橋ポリマーが一般式(3)で表される構成成分を有する形態において、第2架橋ポリマー中の上記一般式(3)で表される構成成分の含有量は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。一方、99.99質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以下であることがより好ましい。
なお、第2架橋ポリマーは、本発明の効果を奏する範囲内で、一般式(3)で表される構成成分以外で、かつ架橋剤成分以外の構成成分(第3構成成分)を含んでもよい。第2架橋ポリマー中、第3構成成分の含有量は、例えば、10質量%以下とすることができる。
本発明において、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、二次電池用バインダー中、第1架橋ポリマーの含有量が15~85質量%であることが好ましく、21~79質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、35~65質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。また二次電池用バインダー中、第2架橋ポリマーの含有量が15~85質量%であることが好ましく、21~79質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、35~65質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。
第2架橋ポリマーが酸性基(例えばカルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基)を有する形態では、この酸性基の一部が中和された構造(塩構造)を有してもよく、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、酸性基の一部が多価アミンで中和された構造を有する(多価アミン由来のカチオン(対イオン)を有する)ことが好ましい。
多価アミンとしては、エチレンジアミン、ヒスチジン等の低分子多価アミン、ポリエチレンイミン等のポリマー構成単位中にアミノ基を有する高分子多価アミンを好ましく用いることができ、高分子多価アミンがより好ましい。なお、多価アミンの分子中に存在する複数のアミンは、各々独立に、1級アミン、2級アミン及び3級アミンのいずれであってもよい。高分子多価アミンの重量平均分子量は1000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましい。
以下、多価アミンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。( )は、繰り返し単位であることを意味する。
Figure 2022058021000010
塩構造の形成のために、金属のカチオンと多価アミン由来のカチオンとを対イオンとして併用することも好ましい。金属のカチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン又はカリウムイオン等の周期律表第1族に属する金属のカチオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオン等の周期律表第2族に属する金属のカチオン、亜鉛イオン等を挙げることができる。周期律表第1族に属する金属のカチオンと多価アミン由来のカチオンとを併用することがより好ましく、ナトリウムイオンと多価アミン由来のカチオンとを併用することがさらに好ましい。
第2架橋ポリマーが塩構造を有する形態において、中和度(中和する前の第2架橋ポリマーの酸性基全量(100モル%)中、中和反応により塩構造となった酸性基の割合(モル%))は、10~100モル%であることが好ましく、30~95モル%であることがより好ましく、50~90モル%であることが更に好ましい。第2架橋ポリマーが塩構造を有する形態において、塩構造の形成のために用いる対イオンに占める多価アミン由来のカチオンの割合は、1~50モル%が好ましく、5~20モル%がより好ましい。
第2架橋ポリマーの中和は、例えば、後述のようにして相互侵入高分子網目を調製した後、二次電池用バインダーに中和剤を適用することにより行うことができる。
上記多価アミン以外の中和剤として、例えば、周期律表第1族に属する金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩周期律表第2族に属する金属の水酸化物、炭酸塩等の無機塩基、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基等が挙げられる。中和剤は1種単独、又は2種以上組合せて使用することができる。
一方、固体粒子間等の結着性及び二次電池のサイクル特性向上の点から、第2架橋ポリマーが実質的に塩構造を有しない形態も好ましい。「実質的に塩構造を有しない」とは、中和度が3モル%以下であることを意味し、1モル%以下であることが好ましく、0モル%であってもよい。
上記二次電池用バインダーが有する相互侵入高分子網目は、例えば、以下のようにして調製することができる。
第1架橋ポリマーを構成する成分を導く原料化合物を目的に応じて組み合わせ、必要により触媒、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で、連鎖重合、重付加、重縮合及び架橋反応を適宜に行い第1架橋ポリマーを合成する。この第1架橋ポリマーの存在下で、第1架橋ポリマーと同様にして第2架橋ポリマーを調製する。このようにして、第1架橋ポリマーと第2架橋ポリマーとにより相互侵入高分子網目を形成することができる。また、第2架橋ポリマーの存在下で第1架橋ポリマーを調製することによっても相互侵入高分子網目を形成することができる。
連鎖重合、重付加、重縮合及び架橋反応の方法及び条件は、特に限定されず、通常の方法及び条件を、目的に応じて適宜に適用することができる。
なお、二次電池用バインダーの「水溶性又は水分散性」は、例えば、第1架橋ポリマー及び第2架橋ポリマーの構成成分の種類及びその含有量によって制御することができる。
本発明の二次電池用バインダーは、第1架橋ポリマーと第1架橋ポリマーとは異なる第2架橋ポリマーのほかに、他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーは、相互侵入高分子網目を形成する架橋ポリマーとして含まれていてもよい。
[二次電池用バインダー水溶液又は水分散液]
本発明の二次電池用バインダー水溶液又は水分散液(以降、「本発明のバインダー水溶液又は水分散液」とも称す。)は、二次電池、好ましくは非水二次電池、より好ましくは非水電解液二次電池を構成する部材ないし構成層の形成材料として好適なバインダー水溶液又は水分散液である。典型的には、本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、二次電池の電極における電極活物質層の形成に好適に用いることができる。具体的には、本発明のバインダー水溶液又は水分散液を電極活物質(正極活物質又は負極活物質を包含する意味で使用し、これらを合わせて、単に「活物質」とも称す。)と混合して非水二次電池の電極(正極及び/又は負極)活物質層の形成に用いることができる。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、上述の二次電池用バインダーと、水とを含有する。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液が含有する二次電池用バインダーは、例えば、本発明のバインダー水溶液又は水分散液と固体粒子(電極活物質、導電助剤等)とを混合した組成物で形成した層中において、これらの固体粒子同士を結着させる結着剤(バインダー)として機能する。また、集電体と固体粒子とを結着させる結着剤としても機能し得る。二次電池用バインダーの固体粒子に対する吸着は、物理的吸着だけでなく、化学的吸着(化学結合形成による吸着、電子の授受による吸着等)も含む。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、上記二次電池用バインダーを1種単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。ただし、上記二次電池用バインダーを1種含有していることが好ましい。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、上記二次電池用バインダー以外に、電池用のバインダーとして常用されるその他のポリマーを含有していてもよい。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液に含有される全てのポリマーに占める上記二次電池用バインダーの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。また、100質量%とすることもできる。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液中の水の含有量は、特に制限されず、例えば、10質量%以上とすることができ、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%、特に好ましくは50質量%以上含有する。本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、水を60質量%以上含有してもよく、70質量%以上含有してもよく、80質量%以上含有してもよい。一方、本発明のバインダー水溶液又は水分散液中の水の含有量は、99.5質量%以下であることが実際的である。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、水以外の液媒体を含有していてもよい。水以外の液媒体としては、例えば、水と混合したときに相分離せずに混じり合う有機溶媒(以下、水溶性有機溶媒と称す。)が挙げられ、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン等が好ましく挙げられる。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液中、上記二次電池用バインダーの含有量は目的に応じて適宜に設定すればよい。例えば、バインダー水溶液又は水分散液中の二次電池用バインダーの含有量を0.5~50質量%とすることができ、好ましくは4~30質量%、より好ましくは5~20質量%とすることができる。
本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、上記二次電池用バインダー、水、水以外の液媒体の他にも、目的に応じて他の成分を含有することができる。他の成分としては、例えば、多価アルコール(ヒドロキシ基を2つ以上有するアルコール)が挙げられる。ただし、水溶液又は水分散液中に後述する周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有する場合には、この水溶液又は水分散液は、本発明の電極用組成物である。
また、本発明のバインダー水溶液又は水分散液は、上記二次電池用バインダーの合成液を希釈する等により調製することもできる。そのため、本発明のバインダー水溶液又は水分散液中には、上記の二次電池用バインダーの合成に使用した化合物又はその反応後の副生成物が含まれていてもよい。
[電極用組成物]
本発明の電極用組成物は、本発明の二次電池用バインダーと、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質とを含有する。必要に応じてさらに導電助剤、他の添加剤を含むことができる。活物質は正極活物質でもよく、負極活物質でもよい。電極用組成物が正極活物質を含む場合、電極用組成物を、二次電池の正極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。また、電極用組成物が負極活物質を含む場合、電極用組成物を負極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。上記二次電池用バインダーは正極又は負極どちらの電極用組成物にも適用できるが、負極に用いることが好ましく、特にケイ素原子含有活物質を有する負極の電極用組成物に用いることが好ましい。
上記活物質、導電助剤、他の添加剤としては、特に限定されるものではなく、二次電池に常用されるものから目的に応じて適宜選択して用いればよい。
上述の二次電池用バインダーの、本発明の電極用組成物中の含有量は、全固形分量に対して、0.5~30質量%が好ましく、1.0~20質量%がより好ましく、1.5~15質量%が更に好ましく、2.5~10質量%が特に好ましい。
(正極活物質)
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、有機物、硫黄等のLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物等でもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はB等の元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量100モルに対して0~30モルが好ましい。遷移金属元素Mに対するLiのモル比(Li/M)が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類並びにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO及びLiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の平均粒径(球換算平均粒子径)は特に制限されない。例えば、0.1~50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、粉砕機又は分級機を用い常法により調製すればよい。後述の負極活物質の所定の粒子径への調整方法も適用することができる。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液又は有機溶剤等にて洗浄した後使用してもよい。
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質の、本発明の電極用組成物中における含有量は、特に限定されず、全固形分量に対して、10~99質量%が好ましく、30~98質量%がより好ましく、50~97質量が更に好ましく、55~95質量%が特に好ましい。
(負極活物質)
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを吸蔵及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、ケイ素系材料(ケイ素原子を含有する材料を意味する。)、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料またはケイ素系材料が信頼性の点から好ましく用いられる。
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ等のカーボンブラック、黒鉛(鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等の天然黒鉛、気相成長黒鉛、繊維状黒鉛等の人造黒鉛、膨張黒鉛等)、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な酸化物であれば特に制限されず、非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく挙げられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°~40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及び上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族~15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBiの1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、GeO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Sb、Bi、Bi、GeS、PbS、PbS、Sb及びSbが好ましく挙げられる。
金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、LiSnOが挙げられる。
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはTiNb(チタン酸ニオブ酸化物[NTO])、LiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制され、リチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質は、充放電による膨張収縮が大きく、上述のように通常であれば固体粒子の結着性が低下する。しかし、本発明では、二次電池用バインダーが有する相互侵入高分子網目が柔軟な構造であることにより、高い結着性を達成できると考えられる。このような活物質として、ケイ素原子若しくはスズ原子を有する負極活物質、Al及びIn等の各金属が挙げられ、より高い電池容量を可能とするケイ素原子を有する負極活物質(ケイ素原子含有活物質)が好ましく、ケイ素原子の含有量が全構成原子の40モル%以上であるケイ素原子含有活物質がより好ましい。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(例えば、ケイ素原子含有活物質を含有するSi負極、スズ原子を有する活物質を含有するSn負極)は、炭素質材料のみからなる負極(黒鉛、カーボンブラック等)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量(エネルギー密度)を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。このように、ケイ素原子若しくはスズ原子を有する負極活物質は、高容量活物質とも称される。
ケイ素原子含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅若しくはランタンを含む合金(例えば、LaSi、VSi)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi/Si)、他にも、SnSiO、SnSiS等のケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ原子を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO、SnS、SnS、更には上記ケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOも包含される。
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒子径は、0.1~60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、粉砕機又は分級機を用い常法により調製することができる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等が好適に用いられる。粉砕時には水又はメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては、特に限定はなく、篩、風力分級機等を所望により用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その中でケイ素原子含有活物質と炭素質材料の組み合わせが好ましく、SiOx(0<x≦1)と黒鉛の組み合わせが特に好ましい。SiOx(0<x≦1)と黒鉛とを組み合わせる場合、黒鉛に対するSiOxの質量比率(SiOx/黒鉛)は2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。黒鉛に対するSiOxの質量比率の下限値に特に制限はないが、0.05以上が実際的である。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質の、本発明の電極用組成物中における含有量は、特に限定されず、全固形分量に対して、10~99質量%であることが好ましく、30~98質量%がより好ましく、50~97質量が更に好ましく、55~95質量%が特に好ましい。
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
本発明において、負極活物質層を電池の充電により形成する場合、上記負極活物質に代えて、二次電池内に発生する周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンを用いることができる。このイオンを電子と結合させて金属として析出させることで、負極活物質層を形成できる。
(活物質の被覆)
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、更に具体的には、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、Li、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiO、SiO、TiO、ZrO、Al、B等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
(導電助剤)
本発明の電極用組成物は、導電助剤を含有することもでき、特に負極活物質としてのケイ素原子含有活物質は導電助剤と併用されることが好ましい。
導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類、ニードルコークス等の無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブ等の炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレン等の炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケル等の金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体等の導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
導電助剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
導電助剤の、本発明の電極用組成物中の含有量は、全固形分量に対して、0.5~60質量%が好ましく、1.0~50質量%がより好ましく、1.5~40質量%が更に好ましく、2.5~35質量%が特に好ましい。
導電助剤の形状は、特に制限されないが、粒子状が好ましい。導電助剤のメジアン径D50は、特に限定されず、例えば、0.01~50μmが好ましく、0.02~10.0μmが好ましい。
(他の添加剤)
本発明の電極用組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
上記活物質、導電助剤、他の添加剤に関し、例えば、国際公開2019/203334号、特開2015-46389号公報等を参照することができる。
(溶媒)
本発明の電極用組成物は、水を含有することが好ましく、水以外の液媒体を含有していてもよい。水以外の液媒体としては、例えば、水と混合したときに相分離せずに混じり合う有機溶媒(以下、水溶性有機溶媒と称す。)が挙げられ、具体例として、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
本発明の電極用組成物中における溶媒の含有量は、例えば10~90質量%に調整することができ、20~80質量%とすることが好ましく、30~70質量%とすることがより好ましい。
[電極シート]
本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて形成された層(電極活物質層、すなわち、負極活物質層又は正極活物質層)を有する。本発明の電極シートは、電極活物質層を有する電極シートであればよく、電極活物質層が、集電体等の基材上に形成されているシートでも、基材を有さず、電極活物質層(負極活物質層又は正極活物質層)だけで形成されているシートであってもよい。この電極シートは、通常、集電体上に電極活物質層を積層した構成のシートである。本発明の電極シートは、他の層として、例えば、剥離シート等の保護層、コート層を有してもよい。
本発明の電極シートは、二次電池の負極活物質層又は正極活物質層を構成する材料として好適に用いることができる。
[電極シートの製造方法]
本発明の電極シートは、本発明の電極用組成物を用いて電極活物質層を形成することにより得ることができる。例えば、本発明の電極用組成物を用いて製膜することにより、本発明の電極シートを製造することができる。具体的には、集電体等を基材として、その上(他の層を介していてもよい)に本発明の電極用組成物を塗布して塗膜を形成し、これを乾燥して、基材上に活物質層(塗布乾燥層)を有する電極シートを得ることができる。
また、本発明の二次電池は、上記電極シートの製造方法により得られた電極シートを二次電池の電極に組み込むことにより得ることができる。
[二次電池]
本発明の二次電池は、充放電により電解質を介して正負極間をイオンが通過し、正負極においてエネルギーを貯蔵、放出するデバイス全般を意味する。すなわち、本発明において二次電池という場合、電池とキャパシタ(例えば、リチウムイオンキャパシタ)の両方を包含する意味である。エネルギー貯蔵量の観点から、本発明の二次電池は電池用途に用いること(キャパシタでないこと)が好ましい。
本発明の二次電池について、非水電解液二次電池の形態を例にして説明するが、本発明の二次電池は非水電解液二次電池に限定されるものではなく、全固体二次電池を含む二次電池全般を広く包含するものである。
本発明の好ましい一実施形態である非水電解液二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配されたセパレータとを含む構成を有する。正極は、正極集電体と、この正極集電体に接する正極活物質層とを有し、負極は、負極集電体と、この負極集電体に接する負極活物質層とを有する。本発明の非水電解液二次電池は、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、本発明の電極用組成物を用いて形成されている。本発明の非水電解液二次電池は、正極と負極との間に非水電解液を満たすことにより、充放電により二次電池として機能する。
図1は、一般的な非水電解液二次電池10の積層構造を、電池として作動させる際の作動電極も含めて、模式化して示す断面図である。非水電解液二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、セパレータ3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する積層構造を有している。負極活物質層と正極活物質層との間は非水電解液(図示せず)で満たされ、かつセパレータ3で分断されている。セパレータ3は空孔を有し、通常の電池の使用状態では電解液及びイオンをこの空孔により透過しながら正負極間を絶縁する正負極分離膜として機能する。このような構造により、例えばリチウムイオン二次電池であれば、充電時には外部回路を通って負極側に電子(e)が供給され、同時に電解液を介して正極からリチウムイオン(Li)が移動してきて負極に蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が電解液を介して正極側に戻され、作動部位6には電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
本発明において、負極集電体1と負極活物質層2とを合わせて負極と称し、正極活物質層4と正極集電体5とを合わせて正極と称している。
上記非水電解液二次電池に用いる各材料、非水電解液、部材等は、本発明の二次電池用バインダーないし電極用組成物を用いて特定の層を形成すること以外は特に制限されない。これらの材料、部材等は、通常の非水電解液二次電池に用いられるものを適宜に適用することができる。また、非水電解液二次電池の作製方法についても、本発明の二次電池用バインダーないし電極用組成物を用いて特定の層を形成すること以外は、電極シートの製造を介する通常の方法を適宜に採用することができる。例えば、特開2016-201308号公報、特開2005-108835号公報、特開2012-185938号公報等を適宜に参照することができる。
非水電解液の好ましい形態について、より詳しく説明する。
(電解質)
非水電解液に用いる電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属イオンの塩が好ましい。使用する金属イオンの塩は非水電解液の使用目的により適宜選択される。例えば、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、二次電池等に使用される場合には、出力の観点からリチウム塩が好ましい。本発明の非水電解液をリチウムイオン二次電池用非水電解液として用いる場合には、金属イオンの塩としてリチウム塩を選択すればよい。リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池用非水電解液の電解質に通常用いられるリチウム塩が好ましく、例えば、以下のリチウム塩が挙げられる。
(L-1)無機リチウム塩:LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩、LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩、LiAlCl等の無機塩化物塩等
(L-2)含フッ素有機リチウム塩:LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩、LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩、Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のパーフルオロアルキルフッ化リン酸塩等
(L-3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等
これらのなかで、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、Li(Rf1SO)、LiN(Rf1SO、LiN(FSO、及びLiN(Rf1SO)(Rf2SO)が好ましく、LiPF、LiBF、LiN(Rf1SO、LiN(FSOおよびLiN(Rf1SO)(Rf2SO)等のリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、Rf1、Rf2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、非水電解液に用いる電解質は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
非水電解液における電解質(好ましくは周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン若しくはその金属塩)の塩濃度は非水電解液の使用目的により適宜選択されるが、一般的には非水電解液の全質量中10~50質量%であり、さらに好ましくは15~30質量%である。モル濃度としては0.5~1.5Mが好ましい。なお、イオンの濃度として評価するときには、その好適に適用される金属との塩換算で算定すればよい。
(非水溶媒)
非水電解液は、非水溶媒を含有する。
非水溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、なかでも炭素数が2~10の非プロトン性有機溶媒がより好ましい。
このような非水溶媒としては、鎖状若しくは環状のカーボネート化合物、ラクトン化合物、鎖状若しくは環状のエーテル化合物、エステル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、オキサゾリジノン化合物、ニトロ化合物、鎖状または環状のスルホン若しくはスルホキシド化合物、リン酸エステルが挙げられる。
なお、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合またはカーボネート結合を有する化合物が好ましい。これらの化合物は置換基を有していてもよく、例えば上述の置換基群Tから選ばれる置換基が挙げられる。
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、フッ化エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、N-メチルオキサゾリジノン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、リン酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシドリン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等の高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)とジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等の低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。このような組み合わせの混合溶媒とすることで、電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上する。
なお、本発明に用いられる非水溶媒は、これらに限定されるものではない。
本発明の二次電池は、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカード等の電子機器に搭載することができる。また、民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機等)等に搭載することができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<本発明の二次電池用バインダー含有液の調製>
(二次電池用バインダー含有液B1の調製)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、完全けん化ポリビニルアルコール(重量平均分子量15,000、富士フイルム和光純薬社製) 49.9質量部、イオン交換水 903質量部、アクリル酸 49.9質量部、及びN,N-メチレンビスアクリルアミド 0.1質量部、グルタルアルデヒド25%水溶液 0.4質量部(グルタルアルデヒドとして0.1質量部)を加え、室温で3時間攪拌した。次いで、窒素雰囲気下で内温が76℃になるまで加熱し、VA-057(商品名、水溶性アゾ重合開始剤、富士フイルム和光純薬社製) 0.30質量部を加え、得られた溶液を76℃で4時間攪拌した。攪拌後、室温まで冷却し、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B1を得た。
(二次電池用バインダー含有液B2の調製)
二次電池用バインダー液B1の調製において、室温まで冷却した後に、48%水酸化ナトリウム水溶液を中和度80%になるように加えて30分間攪拌したこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B2を得た。
(二次電池用バインダー含有液B3の調製)
攪拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、アクリル酸 6.3質量部、イオン交換水 177質量部、N,N-メチレンビスアクリルアミド 0.076質量部、及びVA-057 0.18質量部を加えた。次いで、窒素雰囲気下で内温が75℃になるまで加熱し、75℃で4時間攪拌して、第1架橋ポリマーを得た。次いで、上記セパラブルフラスコに、2-ヒドロキシエチルアクリレート 25質量部、VA-057 0.45質量部、N,N-メチレンビスアクリルアミド 0.034質量部を加え、得られた溶液を75℃で5時間攪拌することにより、第1架橋ポリマーとの間で相互侵入高分子網目を形成した第2架橋ポリマーを得た。攪拌後、室温まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液を5.7質量部加えて30分間攪拌することにより、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B3を得た。
(二次電池用バインダー含有液B4及びB5の調製)
後記表1に記載の構成成分を導く原料化合物等を表1に記載の使用量(質量%)で用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B4及びB5を得た。
(二次電池用バインダー含有液B6の調製)
完全けん化ポリビニルアルコールに代えて、部分けん化ポリビニルアルコール(重量平均分子量15,000、けん化度88質量%)を用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B6を得た。
(二次電池用バインダー含有液B7及びB8の調製)
後記表1に記載の構成成分を導く原料化合物等を表1に記載の使用量(質量%)で用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B2と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B7及びB8を得た。
(二次電池用バインダー含有液B9の調製)
攪拌装置、温度計を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、イオン交換水 240質量部を加え、撹拌しながら完全けん化ポリビニルアルコール 60質量部(重量平均分子量15,000、富士フイルム和光純薬社製)を加え、80℃に加熱し、6時間撹拌した。ポリビニルアルコールが溶解したことを確認した後、室温まで冷却した。冷却後、ブチルアルデヒド 1.7質量部、リン酸 0.38質量部を加え、室温で8時間攪拌することで、ブチラール化ポリビニルアルコールを得た。
完全けん化ポリビニルアルコールの代わりに、得られたブチラール化ポリビニルアルコールを用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B9を得た。
(二次電池用バインダー含有液B10及びB11の調製)
後記表1に記載の構成成分を導く原料化合物等を表1に記載の使用量(質量%)で用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B2と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B10及びB11を得た。
二次電池用バインダー含有液B10の調製に用いた「A-1」は、ポリエチレンイミン(富士フイルム和光純薬社製)である。
(二次電池用バインダー含有液B12及びB13の調製)
後記表1に記載の構成成分を導く原料化合物等を表1に記載の使用量(質量%)で用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B12及びB13を得た。
<比較例の二次電池用バインダー含有液の調製>
(二次電池用バインダー液B21の調製)
完全けん化ポリビニルアルコール(重量平均分子量15,000、富士フイルム和光純薬社製) 40質量部、ポリアクリル酸(重量平均分子量250,000) 40質量部をイオン交換水 720質量部に溶解させ、相互侵入高分子網目を形成していない二次電池用バインダー含有液B21を得た。
(二次電池用バインダー液B22の調製)
後記表1に記載の構成成分を導く原料化合物等を表1に記載の使用量(質量%)で用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、相互侵入高分子網目を有する二次電池用バインダー含有液B22を得た。
得られた二次電池用バインダー含有液B22はゲル状であり、本発明で規定する水溶性ないし水分散性を示さなかった。
(二次電池用バインダー含有液B23の調製)
攪拌装置を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、完全けん化ポリビニルアルコール(重量平均分子量15,000、富士フイルム和光純薬社製)99.9質量部、イオン交換水 722質量部、グルタルアルデヒド25%水溶液 0.4質量部を加え、リン酸 0.5質量部を加え、80℃で3時間攪拌し、相互侵入高分子網目を形成していない二次電池用バインダー含有液B23を得た。
(二次電池用バインダー含有液B24の調製)
後記表1に記載の構成成分を導く原料化合物等を表1に記載の使用量(質量%)で用いたこと以外は、二次電池用バインダー含有液B1と同様にして、2種のポリマーのうち一方が鎖状で他方が架橋ポリマーである二次電池用バインダー含有液B24を得た。
<電極用組成物の調製>
60mLの軟膏容器(馬野化学社製)に、炭素コーティングされたSiO粉末 2.1g(平均一次粒子径:5μm、大阪チタニウム社製)、天然黒鉛 5.0g(平均一次粒子径:20μm、日立化成工業社製)、アセチレンブラック(商品名:デンカブラック(粉状)、デンカ社製)0.50g、二次電池用バインダー含有液B1(固形分10質量%)4.0g、及び水8.6gを加えて、自公転式ミキサー(製品名泡取り練太郎、型式ARE-310、シンキー社製)を用いて回転速度2000rpmで30分混合攪拌した。電極用組成物B1を調製した。
電極用組成物B1の調製において、二次電池用バインダー含有液B1に代えて二次電池用バインダー含有液B2~B13、B21~B24を用いたこと以外は電極用組成物B1と同様にして、電極用組成物B2~B13、B21~B24を調製した。
<電極シートの作製>
電極用組成物B1を、ドクターブレードを用いて銅集電体上に厚さ75μmとなるように塗布した。その後、空気中にて80℃で一次乾燥し、次いで真空下にて150℃で12時間乾燥することにより電極シートB1を作製した。
電極シートB1の作製において、二次電池用バインダー含有液B1に代えて二次電池用バインダー含有液B2~B13、B21~B24を用いたこと以外は電極用組成物B1と同様にして、電極シートB2~B13、B21~B24を作製した。
<二次電池(2032型コイン電池)の作製>
電極用組成物B1を、ドクターブレードを用いて銅集電体上に厚さ75μmとなるように塗布した。その後、空気中にて80℃で一次乾燥した後、ロールプレス機にて電極活物質層の体積密度が1.5g/cmになるようにプレスした。プレス後、真空下にて150℃で12時間乾燥して電極シートを得た。
以下の工程は、アルゴンで満たしたグローブボックス中で行った。
上記で作製した電極シートを直径13.0mmの円板状に切り出し、負極として用いた。リチウム箔(厚み50μm、14.5mmφ)、ポリプロピレン製セパレータ(厚み25μm、16.0mmφ)、の順番に重ね、下記電解液Aを200μLセパレータにしみこませた。セパレータの上にさらに下記電解液Aを200μL加えて、負極を電極活物質層面がセパレータに接するように重ねた。その後、2032型コインケースをかしめることで、二次電池(2032型コイン電池)B1を作製した。このコイン電池は、リチウム箔、セパレータ、負極活物質層、銅箔がこの順に積層されてなる。
(電解液A)
エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1(体積比)の混合溶媒を溶媒とするLiPFの1M電解液とビニレンカーボネートとを、98/2(質量比)で混合した液
二次電池B1の作製において、電極用組成物B1に代えて電極用組成物B2~B13、B21~B24を用いたこと以外は二次電池B1と同様にして、二次電池B2~B13、B21~B24を作製した。
[試験例1]結着性試験
電極シートB1から、10mm×100mmの試験片を5枚切り出した。
マンドレル試験機(BEVS1603(商品名)、BEVS Industrial社製円筒曲げテスター)に試験片をセットして、各試験片を、銅箔(銅集電体)側を内側として屈曲させた(180℃曲げた)。この試験は最初に直径32mmのマンドレル棒を使用し、次いで、マンドレル棒の直径を順次に小さくして同様に試験した。電極活物質層に最初にクラックが生じた、又は、電極活物質層と銅箔との間に最初に剥がれが生じた際のマンドレル棒の直径の算術平均値(クラック又は剥がれが最初に観察されたマンドレル棒の直径の合計/5)を下記評価基準にあてはめ評価した。電極シートB2~B13、B21~B24に対しても同様にして試験を行った。
上記算術平均値が小さい程、結着性に優れることを示す。「4」以上が本試験の合格レベルである。結果を表1に示す。

- 結着性の評価ランク -
6: 16mm未満
5: 16mm以上、20mm未満
4: 20mm以上、32mm未満
3: 32mm
2: 電極シートの乾燥工程では割れが発生しなかったが、試験片を切り出す際に電極活物質層に割れが発生したため、試験を行わなかった。
1: 電極シートの乾燥工程で割れが発生したため、試験を行わなかった。
[試験例2]サイクル特性試験
二次電池B1~B13、B21~B24に対して、ABE1024-5V 0.1A-4充放電試験装置(商品名、エレクトロフィールド社製)を用いて、充放電試験を行い、サイクル特性を評価した。
以下の条件1で充放電を行い、二次電池B1~B13、B21~B24を初期化した。
(条件1)
充電 定電流定電圧 0.1C 0.02V 15時間 終止
放電 定電流 0.1C 1.5V 終止
初期化後の二次電池B1~B13、B21~B24に対して、下記条件2の充電及び放電を1サイクルとして、20サイクル充放電を行った。
(条件2)
充電 定電流定電圧 0.5C 0.02V 3時間 終止
放電 定電流 0.5C 1.5V 終止
下記式から放電容量維持率を算出し、下記評価ランクにあてはめ評価した。放電容量維持率が大きいほど、サイクル特性に優れる(サイクル寿命が長い)ことを示す。「3」以上が本試験の合格レベルである。結果を表1に示す。

放電容量維持率(%)=100×[20サイクル後の負極の放電容量]÷[初期化後(条件2の充放電前)の負極の放電容量]

-放電容量維持率の評価ランク-
6: 89%以上
5: 85%以上、89%未満
4: 78%以上、85%未満
3: 70%以上、78%未満
2: 50%以上、70%未満
1: 50%未満、又は、試験中に電極が割れてしまい評価できなかった。
Figure 2022058021000011
<表の注>
バインダーNo.:二次電池用バインダー含有液のNo.
シートNo.:電極シートNo.
電池No.:二次電池No.
「-」:該当する成分を用いなかったことを意味する。
バインダーNo.B21、23及び24では、便宜上、非架橋ポリマーも第1架橋ポリマー又は第2架橋ポリマーの列に記載している。
「水溶性/水分散性」:下記式により算出される値X(質量%)を、下記基準にあてはめた。

X(質量%)=100×[バインダーと水との混合液(10mL、混合液中のバインダー含有量:10質量%)を、シリンジを用いて#400メッシュの金網を通過させた際に金網を通過せずに金網上に残った残留物の質量]/[上記混合液中のバインダーの質量]

A:2質量%未満
B:2質量%以上3質量%未満
C:3質量%以上5質量%未満
D:5質量%以上
M1-1:第1架橋ポリマーの構成成分
Figure 2022058021000012
M1-2:第1架橋ポリマーの構成成分
Figure 2022058021000013
L1:第1架橋ポリマーに含まれる架橋構造
Figure 2022058021000014
M2-1:第2架橋ポリマーの構成成分
Figure 2022058021000015
M2-2:第2架橋ポリマーの構成成分
Figure 2022058021000016
L2:第2架橋ポリマーに含まれる架橋構造
Figure 2022058021000017
中和剤のA-1:
Figure 2022058021000018
上記表1の結果から以下のことがわかる。
二次電池用バインダー含有液No.B21は、架橋構造を有しないポリマーを2種含有する。二次電池用バインダー含有液No.B21を用いて作製した電極シートNo.B21は結着性が劣り、また、二次電池用バインダー含有液No.B21を用いて作製した二次電池No.B21はサイクル特性が劣っていた。
二次電池用バインダー含有液No.B22に含まれるバインダーは、2種の架橋ポリマーにより構成された相互侵入高分子網目を有するが水溶性又は水分散性を示さない。二次電池用バインダー含有液No.B22を用いて作製した電極シートNo.B22は結着性が劣り、また、二次電池用バインダー含有液No.B22を用いて作製した二次電池No.B22はサイクル特性が劣っていた。
二次電池用バインダー含有液No.B23には、架橋ポリマーが1種しか含まれない。二次電池用バインダー含有液No.B23を用いて作製した電極シートNo.B23は結着性が劣り、また、二次電池用バインダー含有液No.B23を用いて作製した二次電池No.B23はサイクル特性が劣っていた。
二次電池用バインダー含有液No.B24には、架橋構造を有しないポリマー及び架橋ポリマーが含まれる。二次電池用バインダー含有液No.B24を用いて作製した電極シートNo.B24は結着性が劣り、また、二次電池用バインダー含有液No.B24を用いて作製した二次電池No.B24はサイクル特性が劣っていた。
二次電池用バインダー含有液No.B1~B13は、本発明で規定する二次電池用バインダーを含有する。二次電池用バインダー含有液No.B1~B13を用いて作製した電極シートNo.B1~B13は、電極活物質粒子間の結着性及び電極活物質粒子と集電体との間の結着性が十分に高められ、また二次電池用バインダー含有液No.B1~B13を用いて作製した二次電池No.B1~B13はサイクル特性に優れることがわかる。
10 非水電解液二次電池
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 セパレータ
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位(電球)

Claims (18)

  1. 第1架橋ポリマーと当該第1架橋ポリマーとは異なる第2架橋ポリマーとにより構成された相互侵入高分子網目を有し、水溶性又は水分散性を示す二次電池用バインダー。
  2. 前記第1架橋ポリマー及び前記第2架橋ポリマーが架橋剤成分を有する、請求項1に記載の二次電池用バインダー。
  3. 前記第1架橋ポリマーが、連鎖重合により形成された構造部を有する、請求項2に記載の二次電池用バインダー。
  4. 前記第1架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量と前記第2架橋ポリマー中の架橋剤成分の含有量が、いずれも1.0質量%以下である、請求項2又は3に記載の二次電池用バインダー。
  5. 前記第1架橋ポリマーが、水溶性ポリマー成分と架橋剤成分とを有し、前記第2架橋ポリマーが、エチレン性不飽和基を1つ有する単官能モノマー由来の成分と、架橋剤成分としてエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマー由来の成分とを有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー。
  6. 前記第2架橋ポリマーの架橋剤成分がアミド結合を有する、請求項5に記載の二次電池用バインダー。
  7. 前記第1架橋ポリマーが、下記一般式(1)又は(2)で表される構成成分の少なくとも1種を含み、前記第2架橋ポリマーが下記一般式(3)で表される構成成分を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー。
    Figure 2022058021000019
    式中、R~R11は水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。Aは水素原子又はアシル基を示し、Aは炭素数1~16のアルキル基を示し、Aは水素原子、アミノ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、シアノ基又はヘテロ環基を示す。Lは-O-又は-NR-を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは単結合、アルキレン基、アリーレン基、-O-若しくはカルボニル基、又は、アルキレン基、アリーレン基、-O-及びカルボニル基から選ばれる基を2つ以上組合せてなる2価の連結基を示す。
  8. 前記第1架橋ポリマーが前記一般式(1)で表される構成成分を有し、前記第1架橋ポリマー中の前記一般式(1)で表される構成成分の含有量が90質量%以上である、請求項7に記載の二次電池用バインダー。
  9. 前記バインダー中、前記第1架橋ポリマーの含有量が21~79質量%であり、前記第2架橋ポリマーの含有量が21~79質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー。
  10. 前記第2架橋ポリマーが酸性基を有し、当該酸性基の少なくとも一部が多価アミンで中和された構造を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー。
  11. 前記第2架橋ポリマーが酸性基を有し、当該酸性基の中和度が95モル%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池用バインダーと水とを含有してなる、二次電池用バインダーの水溶液又は水分散液。
  13. 請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池用バインダーと、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な電極活物質とを含む電極用組成物。
  14. 水を含有する、請求項13に記載の電極用組成物。
  15. 請求項13又は14に記載の電極用組成物で形成した層を有する電極シート。
  16. 正極とセパレータと負極とをこの順で有する二次電池であって、前記正極を構成する正極活物質層及び前記負極を構成する負極活物質層の少なくとも1つの層が、請求項13又は14に記載の電極用組成物で形成した層である、二次電池。
  17. 請求項13又は14に記載の電極用組成物を用いて電極活物質層を形成することを含む、電極シートの製造方法。
  18. 請求項17に記載の製造方法により得られた電極シートを二次電池の電極に組み込むことを含む、二次電池の製造方法。
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