図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。以下において、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向、Z方向とする。
第1実施形態
図1は、電力変換装置1を用いて、直流電源2から出力される電力を変換し、走行用モータ3と電動オイルポンプ4とを駆動する場合の回路図である。ここで、走行用モータ3は、3相交流モータである。また、電動オイルポンプ4は、電動でトランスミッションに油を供給するポンプであり、3相交流モータを備えている。ただし、電動オイルポンプ4の出力は、走行用モータ3の出力に比べて小さく、流れる電流が小さい。
電力変換装置1は車両に搭載され、車両の走行に必要な電力の変換に用いられる。ただし、電力変換装置1を車両の走行以外の用途に用いてもよい。この場合、走行用モータ3と電動オイルポンプ4とに代えて、用途に応じた別の負荷が接続されることとなる。
電力変換装置1には、直流電源2の高電位側が接続される正極入力端子2pが設けられている。電力変換装置1には、直流電源2の低電位側が接続される負極入力端子2nが設けられている。
電力変換装置1には、モータ用インバータ部32mとポンプ用インバータ部32pとが設けられている。モータ用インバータ部32mは、走行用モータ3の各相に対応して、3つの単相モジュール61を備えている。モータ用インバータ部32mの各単相モジュール61において、高電位側のスイッチング素子のコレクタが高電位ラインと接続されている。さらに、高電位側のスイッチング素子のエミッタが低電位側のスイッチング素子のコレクタと接続されている。さらに、低電位側のスイッチング素子のエミッタが低電位ラインと接続されている。そして、各スイッチング素子のゲートが後に詳述する制御基板5と接続されている。また、高電位側のスイッチング素子のエミッタと低電位側のスイッチング素子のコレクタとが、走行用モータ3の各相の出力端子であるU相モータ端子3U、V相モータ端子3V、W相モータ端子3Wとのそれぞれに接続されている。
ポンプ用インバータ部32pは、電動オイルポンプ4の各相に対応可能な1つの多相モジュール71を備えている。多相モジュール71において、高電位側のスイッチング素子のコレクタが高電位ラインと接続されている。さらに、高電位側のスイッチング素子のエミッタが低電位側のスイッチング素子のコレクタと接続されている。さらに、低電位側のスイッチング素子のエミッタが低電位ラインと接続されている。そして、各スイッチング素子のゲートが制御基板5と接続されている。また、高電位側のスイッチング素子のエミッタと低電位側のスイッチング素子のコレクタとが、電動オイルポンプ4の各相の出力端子であるU相ポンプ端子4U、V相ポンプ端子4V、W相ポンプ端子4Wとのそれぞれに接続されている。多相モジュール71は、半導体モジュールの一例を提供する。
電力変換装置1には、モータ用平滑コンデンサ31mとポンプ用平滑コンデンサ31pとが設けられている。モータ用平滑コンデンサ31mは、モータ用インバータ部32mの入力側に設けられている。モータ用平滑コンデンサ31mは、一端が高電位ラインと接続され、他端が低電位ラインと接続されている。ポンプ用平滑コンデンサ31pは、ポンプ用インバータ部32pの入力側に設けられている。ポンプ用平滑コンデンサ31pは、一端が高電位ラインと接続され、他端が低電位ラインと接続されている。
モータ用平滑コンデンサ31mやポンプ用平滑コンデンサ31pは、バッテリ電圧の変動を平滑化する機能を備えている。モータ用平滑コンデンサ31mやポンプ用平滑コンデンサ31pと並列に放電抵抗を備える構成としてもよい。
図2において、半導体冷却器85は、3つの単相モジュール61と1つの多相モジュール71とを冷却している。単相モジュール61と多相モジュール71とは、MOSFETやIGBTなどのスイッチング素子を含んでいる。単相モジュール61は、高電位側のスイッチング素子と低電位側のスイッチング素子との合計2つのスイッチング素子を備えている。多相モジュール71は、高電位側のスイッチング素子を3つと低電位側のスイッチング素子を3つとの合計6つのスイッチング素子を備えている。
単相モジュール61と多相モジュール71とは、本体部分がともに矩形板状である。単相モジュール61と多相モジュール71とは、本体部分から突出している端子数が互いに異なるが、体格が略等しい。3つの単相モジュール61と1つの多相モジュール71とは、互いに積層して並んで配置されている。単相モジュール61と多相モジュール71との積層方向は、X方向に沿う方向である。
半導体冷却器85は、単相モジュール61と多相モジュール71とを冷却する冷却媒体が内部を流れる冷却器である。半導体冷却器85は、冷却媒体の流路のうち、円筒状の流路をなす2本のヘッダ86を備えている。半導体冷却器85は、2本のヘッダ86と連通して扁平状の流路をなす複数の扁平チューブ87を備えている。半導体冷却器85は、扁平チューブ87が複数積層されて構成されている積層型冷却器である。
2本のヘッダ86は、一方が冷却媒体の入口をなし、他方が冷却媒体の出口をなしている。入口から入った冷却媒体は、ヘッダ86を流れた後、扁平チューブ87を流れる。冷却媒体は、扁平チューブ87を流れる過程で単相モジュール61または多相モジュール71と熱交換して単相モジュール61または多相モジュール71を冷却する。扁平チューブ87を流れた冷却媒体は、出口をなすヘッダ86から流出する。単相モジュール61と多相モジュール71とは、扁平チューブ87に挟まれて両面が冷却されることとなる。
3つの単相モジュール61同士は、互いに隣り合って設けられている。一方、多相モジュール71は、単相モジュール61よりもヘッダ86の入口および出口から離れた位置に設けられている。このため、多相モジュール71を冷却する冷却媒体は、単相モジュール61を冷却する冷却媒体よりもわずかに温度が高くなる。言い換えると、多相モジュール71は、半導体冷却器85において、単相モジュール61が配置されている部分に比べて冷却能力がわずかに低い部分に配置されている。
単相モジュール61は、複数の単相制御端子65を備えている。単相制御端子65は、例えばスイッチング素子のゲート端子やエミッタ端子である。単相制御端子65は、単相モジュール61の温度を計測するための感温ダイオードのアノード端子やカソード端子を含んでいてもよい。単相制御端子65は、単相モジュール61に流れる電流を計測するための電流計測用端子を含んでいてもよい。単相制御端子65は、上述の端子に限られず、単相モジュール61を制御するための様々な端子によって構成可能である。複数の単相制御端子65は、互いに離間して1列に並んで設けられている。単相制御端子65同士の並び方向は、Y方向に沿う方向である。
多相モジュール71は、複数の多相接続端子74を備えている。多相接続端子74は、後述する制御基板5とスイッチング素子とを接続するための端子である。多相接続端子74は、複数の多相制御端子75と複数の多相パワー端子76とを備えている。多相接続端子74は、接続端子の一例を提供する。
多相制御端子75は、例えばスイッチング素子のゲート端子やエミッタ端子である。ゲート端子とエミッタ端子とは、U相、V相、W相との各相に対応して設けられている。さらに、ゲート端子は、高電位側のスイッチング素子と低電位側のスイッチング素子とに対応して設けられている。このため、多相制御端子75は、少なくとも6つのゲート端子と3つの高電位側のエミッタ端子とを備えている。多相制御端子75は、高電位側のエミッタ端子を含んでいてもよい。多相制御端子75は、多相モジュール71の温度を計測するための感温ダイオードのアノード端子やカソード端子を含んでいてもよい。多相制御端子75は、多相モジュール71に流れる電流を計測するための電流計測用端子を含んでいてもよい。多相制御端子75は、小電流端子の一例を提供する。
多相パワー端子76は、多相正極端子77と多相負極端子78と多相出力端子79とを備えている。多相正極端子77は、直流電源2の高電位側に接続されている。多相負極端子78は、直流電源2の低電位側に接続されている。多相負極端子78は、U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとの3つの端子を備えている。U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとは、互いに隣り合って同一の直線上に設けられている。U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとが並ぶ同一直線上の間には、他の多相接続端子74が設けられていない。
多相出力端子79は、U相出力端子79UとV相出力端子79VとW相出力端子79Wとの3つの端子を備えている。U相出力端子79UとV相出力端子79VとW相出力端子79Wとの並び順は、U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとの並び順と同じである。ただし、多相出力端子79の各相と多相負極端子78の各相の並び順を異なる並び順としてもよい。U相出力端子79Uは、U相ポンプ端子4Uに接続している。V相出力端子79Vは、V相ポンプ端子4Vに接続している。W相出力端子79Wは、W相ポンプ端子4Wに接続している。多相パワー端子76は、大電流端子の一例を提供する。多相正極端子77は、正極端子の一例を提供する。
多相パワー端子76は、多相制御端子75よりも断面積の大きな太い端子である。多相パワー端子76は、多相制御端子75よりも多くの電流が流れる端子である。多相パワー端子76は、多相制御端子75よりも発熱量の多い端子である。多相パワー端子76は、多相モジュール71のうち冷却媒体の流れの上流側の部分から突出している。一方、多相制御端子75は、多相モジュール71のうち多相パワー端子76が突出している部分よりも冷却媒体の流れの下流側の部分から突出している。ここで、多相モジュール71は、冷却媒体の流れの下流側よりも上流側の方が温度の低い冷却媒体によって冷却される。このため、多相モジュール71が冷却されている時に、多相制御端子75よりも多相パワー端子76の方が冷却媒体による冷却効果を受けやすい。
複数の多相制御端子75と複数の多相パワー端子76とは、それぞれ2列に並んで設けられている。より詳細には、多相制御端子75は、前列多相制御端子75fと後列多相制御端子75bとを備えている。前列多相制御端子75fと後列多相制御端子75bとの並び方向は、Y方向に沿う方向である。後列多相制御端子75bは、前列多相制御端子75fよりも単相モジュール61に近い側にずれて配置されている。言い換えると、後列多相制御端子75bは、前列多相制御端子75fに対してX方向にずれて配置されている。また、前列多相制御端子75fと後列多相制御端子75bとは、互いにY方向に半ピッチ分ずれてオフセット配置されている。
多相パワー端子76は、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとを備えている。前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとの並び方向は、Y方向に沿う方向である。後列多相パワー端子76bは、前列多相パワー端子76fよりも単相モジュール61に近い側にずれて配置されている。言い換えると、後列多相パワー端子76bは、前列多相パワー端子76fに対してX方向にずれて配置されている。また、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとは、互いにY方向に半ピッチ分ずれてオフセット配置されている。前列多相パワー端子76fは、前列大電流端子の一例を提供する。後列多相パワー端子76bは、後列大電流端子の一例を提供する。X方向は、交差方向の一例を提供する。Y方向は、所定方向の一例を提供する。
前列多相制御端子75fと前列多相パワー端子76fとは、Y方向に沿って1列に並んで設けられている。前列多相制御端子75fと前列多相パワー端子76fは、多相接続端子74の前列をなしている。後列多相制御端子75bと後列多相パワー端子76bとは、Y方向に沿って1列に並んで設けられている。後列多相制御端子75bと後列多相パワー端子76bとは、多相接続端子74の後列をなしている。
まとめると、Y方向において、多相接続端子74を構成する後列の端子は、前列の端子同士の間に位置している。多相接続端子74は、いわゆる千鳥配置の状態である。このため、多相接続端子74を構成する後列の端子を前列の端子とX方向に重ねて配置する場合に比べて、前列の端子から後列の端子までの距離を長く確保できる。言い換えると、多相接続端子74同士の距離を長く確保することができる。また、多相モジュール71のY方向の長さを短くして、体格を小さくできる。
前列多相パワー端子76fは、多相正極端子77と多相負極端子78とによって構成されている。後列多相パワー端子76bは、多相出力端子79によって構成されている。前列多相パワー端子76fを構成する端子の数は、後列多相パワー端子76bを構成する端子の数よりも多い。
図3において、制御基板5は、配線や電子部品を備えた基板部品である。制御基板5は、矩形板状である。Z方向において単相モジュール61および多相モジュール71と重なる位置に設けられている。
制御基板5は、単相スルーホール155を備えている。単相スルーホール155は、単相制御端子65と制御基板5に設けられた配線とを電気的に接続するための部分である。単相制御端子65は、単相スルーホール155にはんだ付けなどによって接続されている。単相スルーホール155は、単相制御端子65に対応して制御基板5上に複数設けられている。
制御基板5は、多相スルーホール54を備えている。多相スルーホール54は、制御スルーホール55とパワースルーホール56とを備えている。制御スルーホール55は、多相制御端子75と制御基板5に設けられた配線とを電気的に接続するための部分である。多相制御端子75は、制御スルーホール55にはんだ付けなどによって接続されている。制御スルーホール55は、多相制御端子75に対応して制御基板5上に複数設けられている。制御スルーホール55は、前列制御スルーホール55fと後列制御スルーホール55bとを備えている。前列制御スルーホール55fには、前列多相制御端子75fが接続されている。後列制御スルーホール55bには、後列多相制御端子75bが接続されている。
パワースルーホール56は、多相パワー端子76と制御基板5に設けられた配線とを電気的に接続するための部分である。多相パワー端子76は、パワースルーホール56にはんだ付けなどによって接続されている。パワースルーホール56は、多相パワー端子76に対応して制御基板5上に複数設けられている。パワースルーホール56は、前列パワースルーホール56fと後列パワースルーホール56bとを備えている。前列パワースルーホール56fには、前列多相パワー端子76fが接続されている。後列パワースルーホール56bには、後列多相パワー端子76bが接続されている。
パワースルーホール56は、正極スルーホール57と負極スルーホール58と出力スルーホール59とを備えている。正極スルーホール57は、多相正極端子77に対応して設けられている。負極スルーホール58は、多相負極端子78に対応して設けられている。負極スルーホール58は、U相負極端子78Uに対応しているU相負極スルーホール58Uを備えている。負極スルーホール58は、V相負極端子78Vに対応しているV相負極スルーホール58Vを備えている。負極スルーホール58は、W相負極端子78Wに対応しているW相負極スルーホール58Wを備えている。正極スルーホール57と負極スルーホール58とは、前列パワースルーホール56fを構成している。
出力スルーホール59は、多相出力端子79に対応して設けられている。出力スルーホール59は、U相出力端子79Uに対応しているU相出力スルーホール59Uを備えている。出力スルーホール59は、V相出力端子79Vに対応しているV相出力スルーホール59Vを備えている。出力スルーホール59は、W相出力端子79Wに対応しているW相出力スルーホール59Wを備えている。出力スルーホール59は、後列パワースルーホール56bを構成している。
前列制御スルーホール55fと後列制御スルーホール55bとは、前列多相制御端子75fと後列多相制御端子75bと同様の位置関係となる。言い換えると、前列制御スルーホール55fと後列制御スルーホール55bとは、互いにY方向に半ピッチ分ずれてオフセット配置されている。
前列パワースルーホール56fと後列パワースルーホール56bとは、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bと同様の位置関係となる。言い換えると、前列パワースルーホール56fと後列パワースルーホール56bとは、互いにY方向に半ピッチ分ずれてオフセット配置されている。前列パワースルーホール56fは、前列スルーホールの一例を提供する。後列パワースルーホール56bは、後列スルーホールの一例を提供する。
前列制御スルーホール55fと前列パワースルーホール56fとは、Y方向に沿って1列に並んで設けられている。後列制御スルーホール55bと後列パワースルーホール56bとは、Y方向に沿って1列に並んで設けられている。
まとめると、Y方向において、多相スルーホール54を構成する後列のスルーホールは、前列のスルーホール同士の間に位置している。多相スルーホール54は、いわゆる千鳥配置の状態である。このため、多相スルーホール54を構成する後列のスルーホールを前列のスルーホールとX方向に重ねて配置する場合に比べて、前列のスルーホールから後列のスルーホールまでの距離を長く確保できる。言い換えると、多相スルーホール54同士の距離を長く確保することができる。
制御基板5は、正極部47と負極部48とを備えている。正極部47と負極部48とは、単相スルーホール155および多相スルーホール54よりも制御基板5の外周縁の近くに位置している。正極部47は、直流電源2の高電位側に接続されている。負極部48は、直流電源2の低電位側に接続されている。
制御基板5は、正極配線42と負極配線43とを備えている。正極配線42は、正極部47と正極スルーホール57とを接続している配線である。負極配線43は、負極部48と負極スルーホール58とを接続している配線である。負極配線43は、負極部48とU相負極スルーホール58Uとを接続しているU相負極配線を備えている。負極配線43は、負極部48とV相負極スルーホール58Vとを接続しているV相負極配線を備えている。負極配線43は、負極部48とW相負極スルーホール58Wとを接続しているW相負極配線を備えている。
制御基板5は、シャント抵抗44を備えている。シャント抵抗44は、負極配線43を流れる電流の大きさを計測するための部品であり、負極配線43上に設けられている。シャント抵抗44は、U相負極配線上に設けられているU相シャント抵抗を備えている。シャント抵抗44は、V相負極配線上に設けられているV相シャント抵抗を備えている。シャント抵抗44は、W相負極配線上に設けられているW相シャント抵抗を備えている。これにより、電動オイルポンプ4を駆動する際にU相、V相、W相の各相に対応して流れる電流を個別に計測することができる。
正極配線42と負極配線43とは、X方向に沿って延びている部分を備えている。正極配線42は、負極配線43に隣り合って設けられている。電動オイルポンプ4を駆動する場合、正極配線42から負極配線43に電流が流れる。この時、正極配線42を流れる電流の向きと負極配線43を流れる電流の向きとは、互いに逆向きとなる。このため、正極配線42を流れる電流によって発生する磁束と、負極配線43を流れる電流によって発生する磁束とは互いに逆向きとなる。したがって、正極配線42と負極配線43とのX方向に沿って隣り合って設けられている部分では、通電によって発生する磁束が互いに打ち消し合うこととなる。よって、正極配線42と負極配線43とを含む電流経路におけるインダクタンスを低減できる。
図4において、単相モジュール61は、制御基板5に向かって突出して延びている単相制御端子65を備えている。単相モジュール61は、単相制御端子65とは反対側に向かって突出して延びている単相パワー端子66を備えている。単相制御端子65と単相パワー端子66とは、突出方向がZ方向に沿う方向、かつ、互いに反対向きである。Z方向を上下方向に対応させた場合、単相制御端子65の突出方向は上方向であり、単相パワー端子66の突出方向は下方向である。
単相パワー端子66は、直流電源2の高電位側に接続する単相正極端子を備えている。単相パワー端子66は、直流電源2の低電位側に接続する単相負極端子を備えている。単相パワー端子66は、走行用モータ3の出力端子に接続する単相出力端子を備えている。まとめると、単相パワー端子66は、単相正極端子と単相負極端子と単相出力端子との3つの端子を備えている。単相パワー端子66は、単相制御端子65よりも断面積の大きな太い端子である。単相パワー端子66は、単相制御端子65よりも多くの電流が流れる端子である。単相パワー端子66は、単相制御端子65よりも発熱量の多い端子である。
図5において、多相モジュール71は、素子部72と樹脂部73とを備えている。素子部72は、半導体素子を有している。樹脂部73は、素子部72を封止している。素子部72は、樹脂部73の略中心に位置している。樹脂部73は、X方向に沿う方向を法線方向とする平板形状である。
多相接続端子74は、樹脂部73の内側に位置している素子部72から樹脂部73の外側に突出して設けられている。この多相接続端子74によって、制御基板5と素子部72とが接続される。U相出力端子79Uは、素子部72から端子の先端部分まで屈曲することなく真っすぐZ方向に沿って延びている。V相出力端子79VとW相出力端子79Wとについても、U相出力端子79Uと同様の端子形状である。
一方、多相正極端子77は、素子部72から端子の先端部分までの間に屈曲部を備えている。この屈曲部により、多相正極端子77がX方向に折れ曲がっている。屈曲部は、多相正極端子77のうち、樹脂部73で封止されていない部分に設けられている。3つの端子を備える多相負極端子78についても、多相正極端子77と同様の端子形状である。
まとめると、後列多相パワー端子76bは、Z方向に沿って真っすぐに設けられている。一方、前列多相パワー端子76fは、樹脂部73で封止されていない部分でX方向に屈曲して設けられている。これにより、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとが互いにX方向にオフセット配置されることとなる。
多相モジュール71は、6つの素子部72を備えており、6in1パッケージ構造をなしている。一方、単相モジュール61は、2つの素子部72を備えており、2in1パッケージ構造をなしている。ただし、多相モジュール71と単相モジュール61とが備える素子部72の数は、上述の例に限られない。
多相パワー端子76間には直流電源2の電圧に相当する高電圧が印加される。このため、隣接する多相パワー端子76間の距離を少しでも長く確保して、多相パワー端子76間の絶縁性を保つことは、非常に重要である。
上述した実施形態によると、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとは、制御基板5に多相接続端子74が接続されている状態において互いにオフセット配置されている。言い換えると、前列大電流端子と後列大電流端子とは、制御基板5に接続端子が接続されている状態において互いにオフセット配置されている。このため、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとを1つの同一直線上に交互に配置した場合に比べて、前列多相パワー端子76fと後列多相パワー端子76bとの間の距離を長く確保することができる。したがって、多相パワー端子76における絶縁性を確保しやすい。あるいは、多相パワー端子76における適切な端子間距離を確保した上で、複数の多相パワー端子76をコンパクトに配置することができる。よって、多相モジュール71を小型化できる。以上により、小型な電力変換装置1を提供できる。
多相パワー端子76と多相制御端子75とは、樹脂部73の同じ面から突出している。言い換えると、大電流端子と小電流端子とは、樹脂部73の同じ面から突出している。このため、同一の制御基板5に対して多相パワー端子76と多相制御端子75との両方の端子を接続させることができる。したがって、多相パワー端子76と多相制御端子75とを互いに別方向に突出させる場合に比べ、製造性を高めやすい。また、制御基板5に電流検出用のシャント抵抗44を備えることで、多相パワー端子76に流れる電流の大きさを計測できる。このため、ホール型の電流センサを用いて多相パワー端子76に流れる電流の大きさを計測する場合に比べて、低コストな構成で電流を計測できる。
隣り合う多相パワー端子76同士の間には、多相制御端子75が設けられていない。言い換えると、隣り合う大電流端子同士の間には、小電流端子が設けられていない。このため、隣り合う多相パワー端子76同士の間に、他の多相接続端子74が設けられている場合に比べて、複数の多相パワー端子76を1か所に集めやすい。したがって、正極配線42と負極配線43とを近接させて設け、配線をシンプルな構成としやすい。
U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとは、前列多相パワー端子76fを構成している。言い換えると、U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとは、前列大電流端子を構成している。このため、多相負極端子78を前列と後列とのそれぞれに分けて配置している場合に比べて、負極配線43をシンプルな構成としやすい。
多相正極端子77とU相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとは、前列多相パワー端子76fを構成している。さらに、多相正極端子77は、U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとのいずれかの端子に隣り合って設けられている。言い換えると、正極端子は、前列大電流端子を構成し、かつ、U相負極端子78UとV相負極端子78VとW相負極端子78Wとのいずれかの端子に隣り合って設けられている。このため、正極配線42と負極配線43とを隣り合って設けやすい。したがって、正極配線42と負極配線43とを含む電流経路を短くしやすい。さらに、正極配線42を流れる電流によって発生する磁束と、負極配線43を流れる電流によって発生する磁束とを打ち消し合わせやすい。よって、電力変換を行う際の電流経路でのインダクタンスを小さくして、ノイズの影響を抑制しやすい。言い換えると、電力変換装置1を安定して駆動しやすい。
半導体冷却器85は、多相モジュール71と単相モジュール61とを積層した状態で冷却する積層型冷却器である。このため、1つの半導体冷却器85で多相モジュール71と単相モジュール61とを同時に冷却することができる。したがって、多相モジュール71と単相モジュール61とを別々の冷却器で冷却する場合に比べて、電力変換装置1を小型化しやすい。
また、多相モジュール71の多相接続端子74は、オフセット配置されており、単相モジュール61の単相制御端子65は、オフセット配置されていない。言い換えると、端子の数が多く端子間距離が短くなりやすい多相接続端子74のみをオフセット配置している。このため、全ての端子をオフセット配置する場合に比べて、オフセット配置する端子の本数を少なくして、製造性を高めやすい。
多相モジュール71の体格は、単相モジュール61の体格に略等しい。このため、半導体冷却器85において、単相モジュール61と多相モジュール71とを区別なく冷却できる。したがって、半導体冷却器85において、単相モジュール61を冷却するための構造と多相モジュール71を冷却するための構造とを分けて備える必要がない。あるいは、単相モジュール61と多相モジュール71との両方のモジュールに対応する目的で、より体格の大きなモジュールに合わせて半導体冷却器85を設計する必要がない。
後列多相パワー端子76bは、Z方向に沿う直線形状であり、前列多相パワー端子76fは、樹脂部73で封止されていない部分でX方向に屈曲した形状である。このため、全ての端子が同一の直線上に並んで配置されているモジュールに対して、後工程で端子を屈曲させることで多相接続端子74をオフセット配置させることができる。したがって、前列多相パワー端子76fの屈曲部を樹脂部73に封止されている内側に備えている場合に比べて、樹脂部73による封止を精度よく行いやすい。また、前列多相パワー端子76fをX方向に屈曲させる量などを後から修正しやすい。よって、多相モジュール71の製造性を高めやすい。
多相接続端子74全体がオフセット配置されている構成を説明したが、多相接続端子74の配置は、上述の例に限られない。例えば、多相パワー端子76のみをオフセット配置し、多相制御端子75をオフセット配置せずに1つの同一直線上に配置する構成としてもよい。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、前列多相パワー端子276fと後列多相パワー端子276bとは、樹脂部73の外側に突出している部分全体が互いにオフセット配置されている。
図6において、多相モジュール71は、多相パワー端子276を備えている。多相パワー端子276は、前列多相パワー端子276fと後列多相パワー端子276bとを備えている。多相パワー端子276は、多相制御端子75よりも流れる電流の大きな端子である。多相パワー端子276は、大電流端子の一例を提供する。前列多相パワー端子276fは、前列大電流端子の一例を提供する。後列多相パワー端子276bは、後列大電流端子の一例を提供する。
後列多相パワー端子276bは、Z方向に沿って真っすぐに設けられている。一方、前列多相パワー端子276fは、樹脂部73で封止されている部分でX方向に屈曲して設けられている。これにより、前列多相パワー端子276fと後列多相パワー端子276bとは、外側に突出している部分全体が互いにX方向にオフセット配置されることとなる。言い換えると、前列多相パワー端子276fと後列多相パワー端子276bとの全体にわたって、端子間の空間距離が長く確保されている。ここで、端子間の空間距離とは、樹脂部73の外側に突出している部分同士の距離である。
上述した実施形態によると、前列多相パワー端子276fと後列多相パワー端子276bとは、樹脂部73の外側に突出している部分全体が互いにオフセット配置されている。言い換えると、前列大電流端子と後列大電流端子とは、樹脂部73の外側に突出している部分全体が互いにオフセット配置されている。このため、前列多相パワー端子276fと後列多相パワー端子276bとにおいて、端子間の空間距離を確保することで、端子間の絶縁を安定して確保することができる。
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。