JP2022046945A - 上限臨界溶液温度を有するポリアンホライト及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリアンホライト構造中にアルカリ金属塩等の低分子塩を含有しない、または構造中の低分子塩をppmレベルまで低減した条件下においても、水溶液中で上限臨界溶液温度型(UCST)型の感熱応答性を有するイオン性ポリマー、その製造方法及び用途の提供。【解決手段】繰り返し構成単位(A)及び(B)を含むポリスチレンベースのポリマーであって、繰り返し構成単位(A)が、繰り返し構成単位(A)及び繰り返し構成単位(B)の合計に対して40モル%~60モル%であり、ポリマー中のアルカリ金属の量、アルカリ土類金属の量又はアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計量が、ポリマー量に対し100ppm以下であり、ポリマーの分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定される数平均分子量として、500ダルトン~10,000ダルトンである、上限臨界溶液温度型の感熱応答性を有する、ポリアンホライト。【選択図】なし

Description

本発明は、正浸透膜法水処理システムの駆動溶液やドラッグデリバリーシステム用のキャリア等として有用な、水中で上限臨界溶液温度(UCST)を示すポリスチレンベースのポリアンホライト及びその用途としての感熱応答性を有するポリスチレンベースのポリアンホライトを含む正浸透膜法水処理システム用の駆動溶液に関する。
特定の分子構造を持つ高分子は、種々の溶媒に対する溶解性を温度変化によって変化させることが出来る。即ち、溶液中、特定温度を境界とした加熱または冷却によって白濁(不溶化)と溶解(可溶化)を繰り返すという、可逆的な相分離挙動を示す。
これらの高分子は、温度応答性あるいは感熱性ポリマーとして分類され、特に水中で相分離挙動を示すポリマーは、安全性、汎用性、適応性の観点から広く研究されている。水中で相分離挙動を示すポリマーの多くは、下限臨界溶液温度(以下、「LCST」と略すことがある。)以上の温度では、白濁(不溶化)し、LCST以下の温度では溶解するというLCST型の温度応答挙動を示す化合物群であり、水と各種官能基との水素結合を利用したものが多い。
例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)水溶液は、約30℃~40℃付近にLCSTを有することが報告されており、これらは水とアミド部位との水素結合が加熱・冷却により可逆的に切断・再結合されることをメカニズムとしている。一方で、操作性、汎用性、エネルギー効率などの観点から、用途によっては、加熱によって相分離が発現するLCST型の相分離挙動よりも、冷却による相分離即ち上限臨界溶液温度(以下、「UCST」と略すことがある。)型の相分離挙動が有利になる場合もあるが、水中でUCST挙動を示すポリマーの報告例は少ない。
感熱応答性ポリマーの多くは、非特許文献1や非特許文献2のようにバイオメディカル分野を志向したものが殆どだが、正浸透膜法水処理システムの駆動溶液に利用する試みも古くから行われている(例えば、特許文献1)。正浸透膜法は、駆動溶液と呼ばれる、被処理水より数倍高い浸透圧を有する溶液を用いることで、半透膜を介して被処理水から自発的に水のみを引き出すことが可能となるため、近年普及している逆浸透膜法よりも省エネルギー効果が期待されている水処理システムである。
中でも、UCST型の温度応答挙動を示すポリマーを用いた駆動溶液に用いたシステムは、石油随伴水や工業廃水のような50℃以上の高温被処理水に適用可能であることから特に注目を集めているが、十分な性能を有するUCST型駆動溶液は未だ開発されておらず、実用化の障壁となっている。
UCST型のポリマーを駆動溶液に用いる場合、最低でも(1)温度応答性を有する、(2)高い浸透圧を有する、(3)加水分解性の官能基を持たないことが必要となる。
上記駆動溶液に有望と考えられるポリマーとして、例えば、非特許文献3のようなスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(VBTAC)共重合体が挙げられる。NaSSとVBTACから構成されるポリアンホライトは、骨格中に強酸性または強塩基性の官能基を有しているため、その水溶液は高浸透圧が期待され、加水分解性の官能基を持たず、水中での安定性も期待できる。
一方で、非特許文献3記載のポリアンホライトの場合、いずれもカチオン種あるいはアニオン種に少なくとも2種以上の対イオンを含有した状態で温度応答性を評価している。このような対イオンを含むポリアンホライトの場合、上記駆動溶液を用いて淡水を製造することが困難となる。
NaSSとVBTACの共重合体の水溶液を駆動溶液とした場合、UCST以下では、スルホニウムアニオンとトリメチルアンモニウムカチオンが静電相互作用によって凝集(析出)し、濃厚なポリアンホライト分散溶液(白濁溶液)を形成するが、このときにもともと骨格中に含まれていたナトリウムイオンと塩素イオンは塩を形成し、水中に遊離してしまうため、淡水を得ることができなくなってしまう。
即ち、正浸透膜法水処理における駆動溶液においては、アルカリ金属塩のような低分子塩を限りなく低減した条件下で温度応答性挙動を示し、かつ加水分解性の官能基を含まず、イオン性官能基を骨格中に有する水溶性の温度応答性ポリマーが求められていた。
また、非特許文献3にも記載の通り、静電相互作用を利用したUCST型の温度応答性ポリアンホライトは、アルカリ金属塩のような低分子塩の添加によりその温度応答挙動が変化することが知られている。水素結合や疎水相互作用と比較し、静電相互作用は非常に強い分子間力であるため、低分子塩の添加によりイオン性官能基を遮蔽しうまくコントロールする必要がある。しかしながら、静電相互作用を利用したUCST型の温度応答性ポリマーのうち、塩を含まない条件下で感熱応答挙動を示す例はほとんどなく、非常に限定的であった。
米国特許第3,386,912号明細書
Thermoresponsive polymers and their biomedical application in tissue engineering - a review(Falko Doberenz, Kui ZengMaterら、Chem. B, 2020,8, 607-628) Studies on thermoresponsive polymers: Phasebehaviour, drug delivery and biomedical applications(Arijit Gandhi, Abhijit Paulら、Asian Journal of Pharmaceutical Sciences, 10, 2, 2015, 99-107) Upper Critical Solution Temperature (UCST)Behavior of Polystyrene-Based Polyampholytes in Aqueous Solution(Shin-ichi Yusaら、 Polymers, 11, 2, 265, 2019
ポリアンホライト構造中にアルカリ金属塩のような低分子塩含有しない、または構造中の低分子塩をppmレベルまで低減した条件下においても、水溶液中で上限臨界溶液温度型(UCST)型の感熱応答性を有するイオン性ポリマー及びその製造方法が求められていた。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、アニオン性モノマー成分として4-ビニルベンゼンスルホン酸を、カチオン性モノマー成分としてビニルピリジンを主成分とするポリスチレンベースのポリアンホライト(Polyampholytes)が、特定のポリマー組成と分子量域において、構造中または溶液中のアルカリ金属塩をppmレベルまで低減した条件であっても上限臨界溶液温度(以下、「UCST」と略すことがある。)型の感熱応答性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の発明に係る。
[1] 下記繰り返し構成単位(A)及び下記繰り返し構成単位(B)を含むポリスチレンベースのポリマーであって、
前記ポリマー中の繰り返し構成単位(A)が、繰り返し構成単位(A)及び繰り返し構成単位(B)の合計に対して40モル%~60モル%であり、
前記ポリマー中のアルカリ金属の量、アルカリ土類金属の量又はアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計量が、ポリマー量に対し100ppm以下であり、
前記ポリマーの分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定される数平均分子量として、500ダルトン~10,000ダルトンである、
上限臨界溶液温度型の感熱応答性を有する、ポリアンホライト。
繰り返し構成単位(A);
一般式(1)
Figure 2022046945000001
繰り返し構成単位(B);
一般式(2)
Figure 2022046945000002
[2] 下記繰り返し構成単位(C)、下記繰り返し構成単位(D)及び下記繰り返し構成単位(E)を含むポリスチレンベースのポリマーであって、
前記ポリマー中の繰り返し構成単位(C)が、繰り返し構成単位(C)及び繰り返し構成単位(D)の合計に対して40モル%~60モル%であり、
前記繰り返し構成単位(E)が、繰り返し構成単位(C)、繰り返し構成単位(D)及び繰り返し構成単位(E)の合計に対して1モル%~30モル%であり、
前記ポリマー中のアルカリ金属の量、アルカリ土類金属の量又はアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計量が、ポリマー量に対し100ppm以下であり、
前記ポリマーの分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定される数平均分子量として、500ダルトン~10,000ダルトンである、
上限臨界溶液温度型の感熱応答性を有する新規なポリスチレンベースのポリアンホライト。
繰り返し構成単位(C);
一般式(3)
Figure 2022046945000003
繰り返し構成単位(D);
一般式(4)
Figure 2022046945000004
繰り返し構成単位(E);
一般式(5)
Figure 2022046945000005
(式(5)中、RおよびRはそれぞれ水素原子、カルボキシル基又はメチル基を示し、Yはスルホ基、カルボキシル基を示す。)
及び
一般式(6)
Figure 2022046945000006
(式(6)中、R3は水素原子、又はメチル基を示し、R4はハロゲン原子、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、ハロメチル基を示し、nは0~5の整数を示す。)
繰り返し構成単位Eは、一般式(5)、一般式(6)のいずれか及びその両方を含んでも良い。
[3] 水に対し、20重量%~70重量%となるように溶解させたとき、20重量%~70重量%のいずれかの濃度において、-5℃から95℃の温度範囲に上限臨界溶液温度(UCST)を有する、[1]又は[2]に記載のポリアンホライト。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載した上限臨界溶液温度(UCST)型の感熱応答性を有するポリスチレンベースのポリアンホライトを含む正浸透膜法水処理システム用の駆動溶液。
[5] 下記一般式(7)に示される化合物の水溶液をカチオン交換処理してスチレンスルホン酸水溶液を得、下記一般式(8)に示される化合物で中和処理したスチレンスルホン酸ビニルピリジン塩水溶液の存在下、当該スチレンスルホン酸水溶液を溶液ラジカル重合する、[1]~[4]のいずれかに記載のポリアンホライトの製造方法。
一般式(7)
Figure 2022046945000007
(式(7)中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムカチオンを示す。)
一般式(8)
Figure 2022046945000008
[6] 生成するポリアンホライトに繰り返し構成単位(A)~(E)を供する原料モノマーの合計モル数に対し、0.010モル%~20モル%となるように分子量調節剤(連鎖移動剤)を添加してラジカル重合を行う、[5]に記載のポリアンホライトの製造方法。
[7] チオリンゴ酸及び/又は3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(チオグリセロール)を分子量調節剤(連鎖移動剤)として用いる、[6]に記載のポリアンホライトの製造方法。
ここで、上記のポリマー量とはポリマー純分の重量を指し、例えば本明細書の実施例において乾燥ポリマーの重量に対するLi、Naなどの重量割合であることが例示される。
また、ポリマー中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の具体的な元素種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから1種または2種以上が選ばれ、2種の場合は合計の重量を意味する。
さらに、ポリアンホライトとは高分子両性電解質を意味する。
本発明のビニルピリジン単位と4-ビニルベンゼンスルホン酸を主成分とするポリスチレンベースのポリアンホライト(Polyampholytes)は、骨格中または溶液中のアルカリ金属塩が100ppm以下となる条件下においても温度応答挙動を発現する、新規な上限臨界溶液温度(UCST)型の感熱応答性ポリマーである。
その用途としてバイオメディカル分野への利用が期待できる他、加水分解性の官能基を含まず、イオン性官能基に起因する高い浸透圧を有することから、浸透圧発電や正浸透膜法水処理システム用の駆動溶液として極めて有用である。本発明のポリアンホライトはUCST型であるため、正浸透膜法水処理の中でも、例えば50℃以上での海水、石油随伴水、工業廃水の淡水化処理や食品濃縮に有用である。
実施例1で調製したポリマー水溶液の25重量%、30重量%、40重量%、50重量%における目視での曇点をプロットした相平衡図を示し、横軸はポリマー濃度(単位は重量%)、縦軸は温度(単位は℃)であり、図中に示した曲線の上側は均一相であり、下側は二相分離(不溶化)する領域である。 実施例2で調製したポリマー水溶液の25重量%、30重量%、40重量%、50重量%における目視での曇点をプロットした相平衡図を示し、横軸はポリマー濃度(単位は重量%)、縦軸は温度(単位は℃)であり、図中に示した曲線の上側は均一相であり、下側は二相分離(不溶化)する領域である。 実施例3で調製したポリマー水溶液の25重量%、30重量%、40重量%、50重量%における目視での曇点をプロットした相平衡図を示し、横軸はポリマー濃度(単位は重量%)、縦軸は温度(単位は℃)であり、図中に示した曲線の上側は均一相であり、下側は二相分離(不溶化)する領域である。 実施例4で調製したポリマー水溶液の25重量%、30重量%、40重量%、50重量%における目視での曇点をプロットした相平衡図を示し、横軸はポリマー濃度(単位は重量%)、縦軸は温度(単位は℃)であり、図中に示した曲線の上側は均一相であり、下側は二相分離(不溶化)する領域である。 実施例1における反応終了後(フィード開始から330分後)のGPC測定の溶出曲線であり、X軸(横軸)は溶出時間(単位は分)を示し、Y軸(縦軸)はRI検出器でのピーク面積(単位は全ピーク面積に対する比率(%))を示す。符号1に示すピークは、重合後のポリアンホライトに由来し、実施例に記載の「1.重合転化率とポリマー同定」おいて、ポリマー由来のピーク面積bに該当する。 実施例1における反応開始直前(フィード0時間)のモノマー混合溶液のGPC測定の溶出曲線であり、X軸(横軸)は溶出時間(単位は分)を示し、Y軸(縦軸)はRI検出器でのピーク面積(単位は全ピーク面積に対する比率(%))を示す。符号2に示すピークはスチレンスルホン酸に由来し、符号3に示すピークはビニルピリジンに由来し、いずれも実施例に記載の「1.重合転化率とポリマー同定」おいて、モノマー由来のピーク面積aに該当する。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
本発明に用いられる4-ビニルベンゼンスルホン酸(4-スチレンスルホン酸とも言う)は、本発明のポリアンホライト(Polyampholytes)を形成するために必要なアニオン性モノマーである。
4-ビニルベンゼンスルホン酸(以下「SSA」と略称することがある。)は、水中で極めて不安定であり、自然重合し易いこと(J.C.Salamone;Polymer Letters Edition,15巻、487-491頁、1971年)が知られており、固体や粉体として安定的に単離することは困難である。対応する塩を出発原料としたカチオン交換によってSSA水溶液の取得は可能であるが、長期安定性の付与は難しく、本発明のポリマーを製造する直前に調製することが望ましい。
本発明の4-ビニルベンゼンスルホン酸モノマー水溶液の調製方法は、特に限定はされないが、その一例として、強酸性陽イオン交換樹脂〔塩酸水溶液を通液し樹脂担体を酸型に再生したのち、イオン交換水を通液し洗浄したもの〕を充填したパイレックス(登録商標)製コック付きクロマトカラムに、SSA塩の水溶液を通液する、カチオン交換法によって製造できる。
上記製造法において、SSA水溶液の出発原料は、対応する塩が水溶性であれば特に限定されるものではなく、その塩は例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属類、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられる。これらの内、入手容易性及び水溶性の観点から、ナトリウム、リチウム、4級アンモニウム塩が好ましい。また、汎用性および工業的入手性の観点からは4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩がより好ましいが、リチウム塩はナトリウム塩と比較し、水への溶解度が極めて高く、イオン交換前の水溶液濃度を上げることができるため、生産性の観点からは、4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム塩が好ましい。
SSA塩水溶液の濃度としては、溶媒である水に溶解すれば特に限定されないが、1.0重量%~60重量%が好ましく、生産性の観点から、15重量%~50重量%であることがより好ましい。また、4-ビニルベンゼンスルホン酸塩は、メタ体やオルソ体などの異性体を含んでも支障はない。
上記製造方法において、製造したSSAの自然重合を抑制するために、通液後の水溶液が滞留する受器は、25℃以下に保たれることが好ましく、操作性の観点から-5℃~20℃であることが好ましい。受器内に、本発明で用いられるビニルピリジンの所定量を予め仕込んでおき、通液により留出したSSAがビニルピリジンで中和されたSSA-ビニルピリジン混合溶液を得ることもできる。この際、中和熱によるローカルヒートによって、SSA-ビニルピリジン混合溶液が自然重合しないよう、受器温度は-5℃~15℃を保ち、受器内が十分に撹拌されることが好ましい。
また、同様の観点から、製造したSSA水溶液またはSSA-ビニルピリジン混合溶液の自然重合を抑制するために、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、重合を抑制できるものであれば制限はなく、フェノール系重合防止剤、セミヒンダードフェノール系重合防止剤、ヒンダードフェノール系重合防止剤、フェノチアジン、安定ニトロキシルラジカルなどが使用できる。
フェノール系重合防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、4-sec-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、2,2’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸][オキサリルビス(アザンジイル)]ビス(エタン-2,1-ジイル)、イソシアヌル酸トリス(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、2,2-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート等が挙げられる。
これらの内、芳香族系モノマーに一般的に添加される、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-tert-ブチルカテコールがより好ましい。添加量は、SSA水溶液およびSSA-ビニルピリジン混合溶液いずれの場合においても、SSA純分に対し、1ppm~50,000ppmが好ましく、重合阻害およびポリアンホライトの物性の観点から1ppm~10,000ppmであることがより好ましい。
原料のビニルピリジンに、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-tert-ブチルカテコールのような重合禁止剤が、通常1,000ppm程度添加されていることがある。このため、SSA-ビニルピリジン混合溶液を調製後、重合禁止剤を添加する場合は、添加後の重合禁止剤量が上記添加量となるようにすればよい。また、重合禁止剤は、必ずしも溶液に溶解しなくても良いが、SSA-ビニルピリジン混合溶液とした際に、均一溶液を形成したほうが、重合抑制効果が高い。
SSA水溶液またはSSA-ビニルピリジン混合溶液は、いずれも上記した条件においても自然重合の抑制効果は不十分であることが多く、濃度や保管温度においては自然重合が進行することがある。そのためSSA水溶液またはSSA-ビニルピリジン混合溶液調整後、48時間以内に本発明のポリアンホライト製造を行うことが望ましい。SSAを含むモノマー水溶液、すなわちSSA単独の水溶液またはSSA-ビニルピリジン混合溶液の自然重合によって生成したポリマー分は、本発明のポリアンホライトの物性に影響を及ぼす可能性がある。このため、ポリアンホライト製造前のSSAを含むモノマー水溶液、すなわちSSA単独の水溶液またはSSA-ビニルピリジン混合溶液中のポリマー分は、1.0%以下とすることが好ましい。ここで1.0%以下とした際の「%」とは、各成分をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定した際、各ピークの面積比率で求められ、つまりSSAモノマーに対するGPC面積%として求められる。
本発明に用いられるビニルピリジンは、本発明のポリアンホライト(Polyampholytes)を形成するために必要なモノマーであり、上記SSAと中和し、ピリジニウムカチオンを形成することでカチオン性モノマーとなる。
ビニルピリジンは、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンのいずれの異性体でも問題ないが、入手容易性の観点から、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジンが好ましい。また、任意の置換位置をもつビニルピリジンに、1種類あるいは2種類の異性体が混合していても良い。
本発明のポリアンホライトが示す水中でのUCST型の温度応答挙動は、主としてポリマー中のアニオン性基とカチオン性基間の強い静電相互作用によると考えられる。また、本発明のポリアンホライトはポリスチレンベースであり、芳香環に由来する非静電的な相互作用(疎水相互作用)もUCST挙動の発現に寄与していると考えられる。即ち、本発明のポリアンホライトは、静電的及び非静電的な二つの相互作用によって水中で凝集(不溶化)し、加熱によって水に溶解すると考えられる。
このため、UCSTを調整するためには、(1)ポリアンホライト骨格中のアニオンユニットとカチオンユニット比率、(2)ポリアンホライト骨格への追加成分の導入率、(3)分子量及び(4)低分子塩の含有量の(1)~(4)のいずれか、またはすべての要因を制御する必要がある。
ポリアンホライト骨格中のアニオンユニットとカチオンユニット比率は、主に静電相互作用に影響する。そのため、上記した繰り返し構成単位(A)及び(B)を含むポリマーのモル比は極めて重要であり、繰り返し構成単位(A)の含有量は繰り返し構成単位(A)及び(B)の合計に対して40モル%~60モル%となることが好ましい。
また、ポリアンホライト骨格へ第3成分の導入すること、すなわち、上記した繰り返し構成単位(C)及び(D)を含むポリマーに、繰り返し構成単位(E)を導入することにより静電相互作用と疎水相互作用を調整することができる。例えば、繰り返し構成単位(E)を構成するためのモノマー単位としてスチレンを導入すると〔繰り返し構成単位(E)一般式(6)中、R、Rは水素原子となる〕、主に疎水相互作用を強くなり、UCSTが上昇する傾向になる。
繰り返し構成単位(E)は繰り返し構成単位(C)、(D)及び(E)の合計に対して1.0モル%~50モル%とすることが好ましいが、用途によっては転移温度が高くなり過ぎることや浸透圧が低くなることがあるため、1.0~30モル%が好ましい。また、繰り返し構成単位(E)は一般式(5)、一般式(6)のいずれか及びその両方を含んでも良い。繰り返し構成単位(E)の種類および導入率によって、本発明のポリアンホライトの物性は変化するため、用途に応じて細かく調整すればよい。
繰り返し構成単位(E)中、上記一般式(5)を構成するためのモノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、ビニル安息香酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられ、工業的入手性の観点から、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸が好ましく、工業的入手性の観点からメタクリル酸、マレイン酸がより好ましい。
繰り返し構成単位(E)中、上記一般式(6)を構成するためのモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、フロロスチレン、トリフロロスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、シアノスチレン、アミノスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられるが、工業的入手性および共重合性の観点から、スチレンが最も好ましい。
本発明のポリスチレンベースのポリアンホライトの分子量に関しては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量が500ダルトン(ダルトンを「Da」と略すことがある。)~10,000ダルトン、さらに1000ダルトン~7,000ダルトン、特に2000ダルトン~6,000ダルトンであることが好ましい。数平均分子量が500ダルトン以下の場合、ポリアンホライトは濃度と構成単位によっては低温でも水に溶解することがあり、一方、数平均分子量が10,000ダルトンを超えると、ポリアンホライトは水に溶解しないことがある。用途にもよるが、相分離温度(UCST)の観点から、数平均分子量は500ダルトン~5,000ダルトンがより好ましい。低分子量域での可溶化は、各構成単位のイオン性官能基と水との水素結合が顕著に発現するためであり、高分子量域での不溶化は、ポリアンホライト主鎖の静電相互作用および疎水相互作用が多点で発生し、100℃以下の加熱ではこれらの相互作用を弱めることができなくなるためだと考えられる。
また、分子量分布は狭いほど熱応答性や相分離性が優れるため、重量平均分子量を数平均分子量で除した値は小さいほど良く、1.0~3.0の範囲であれば支障はないが、1.0~2.0がより好ましく、極めて鋭敏な温度応答挙動が要求される用途においては、1.0~1.5がさらに好ましい。
ポリアンホライト骨格中の低分子塩の量は、静電相互作用に影響する。前記した非特許文献3(Upper Critical Solution Temperature (UCST)Behavior of Polystyrene-Based Polyampholytes in Aqueous Solution(Shin-ichi Yusaら、 Polymers, 11, 2, 265, 2019)にあるような、ポリスチレンベースのポリアンホライトは、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩のような低分子塩を添加することで、アニオン性官能基とカチオン性官能基をそれぞれ遮蔽し、静電相互作用を弱めることができる。
しかしながら、本発明のポリアンホライトはアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を低減した条件下で感熱応答性を発現するように設計されているため、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩のような低分子塩が共存すると遮蔽効果によりUCSTが著しく低下し、低温でも可溶となることがある。そのため、アルカリ金属塩の量は少ないほうが好ましく、ポリアンホライト純分(重量換算)に対するアルカリ金属の量、アルカリ土類金属塩の量又はこれらの合計量として、最大でも100ppmであることが好ましく、さらに50ppm以下、特に20ppm以下であることが好ましい。
低分子塩の量と種類は、主にSSAを合成するための出発原料である4-ビニルスルホン酸塩に由来するが、用いる重合開始剤や分子量調節剤、各種モノマーなどによっても変化する。低分子塩の形態としては、特に限定はされないが、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物などである。但し、低分子塩は、ポリアンホライト水溶液中で電離し、ポリアンホライト骨格のアニオンユニット又はカチオンユニットとの塩を形成していることがあり、必ずしも低分子塩で存在しているとは限らない。
本実施形態におけるポリアンホライトの製造方法は、特に限定はされない。
例えば、一般的なラジカル重合方法として、上記のイオン交換法にてカチオン交換したSSA(すなわちカチオン交換後のSSAはアニオン性モノマーとなる。)水溶液を、氷冷下、ビニルピリジン(すなわちビニルピリジンは、SSAと中和されることでカチオン性モノマーとなる。)で中和し、必要に応じてスチレンやメタクリル酸などのモノマーを溶解したモノマー溶液と、重合開始剤、連鎖移動剤を反応容器に供給しながら重合する逐次添加法や、モノマー溶液、重合開始剤及び連鎖移動剤を反応容器に一括で仕込んで重合する一括重合法などが挙げられる。なお、連鎖移動剤を「分子量調節剤」と称することがあり、逐次添加法を「フィード重合」と略称することがある。これらの中でも、分子量制御、重合熱の除去性の観点から逐次添加法が好ましい。また重合法としては、一般的なラジカル重合の他、リビングラジカル重合法が適用できる。
溶媒としては、上記モノマー混合物を均一に溶解できるものであれば特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のセロソルブ類、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどの他、これらの混合溶媒が挙げられる。逐次添加法においては、これらの溶媒を用いてモノマー溶液や、後述する開始剤溶液及び分子量調節剤(連鎖移動剤)溶液を調製することができる。
上記ラジカル重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などのパーオキサイド系化合物、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルメタン)、4,4’-ジアゼンジイルビス(4-シアノペンタン酸)・α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)重縮合物などのアゾ化合物等があげられる。
これらの中でも、溶解性、分子量制御性の観点から、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等の水溶性アゾ開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマーに対し、通常、0.010モル%~15モル%であり、目的物の純度や物性を考慮すると、0.010モル%~10モル%がより好ましい。逐次添加法においては、任意の溶媒に溶解させた開始剤溶液を調製し、重合制御の観点からモノマー溶液とは分けてフィードすることが好ましい。
上記のように、モノマー中のアルカリ金属(低分子塩)が、著しく低減された状態で製造を行う場合、塩を含む重合開始剤を使用すると、添加量によってはポリアンホライト中にアルカリ金属塩が残ることがある(例えば、過硫酸カリウムのようなパーオキサイド系化合物)。しかしながら、添加する絶対量が少なく、そもそも精製が不要であるか、後述する各種精製による除去は極めて容易である。ポリアンホライトを製造するうえで、重合禁止剤として過硫酸カリウムのようなパーオキサイド系化合物をポリマー純分に対して100ppm以上使用する場合には、過酸化水素などを用いれば良い。
上記分子量調節剤(連鎖移動剤)は、特に限定されるものではないが、例えば、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3-メルカプト安息香酸、4-メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5-メルカプトテトラゾール酢酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、メルカプトエタノール、1 ,2-ジメチルメルカプトエタン、2-メルカプトエチルアミン塩酸塩、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプト-1-イミダゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、システイン、N-アシルシステイン、グルタチオン、N-ブチルアミノエタンチオール、N,N-ジエチルアミノエタンチオールなどのメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’-ジチオジプロピオン酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、4,4’-ジチオジブタン酸、2,2’-ジチオビス安息香酸などのジスルフィド類、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素、ベンジルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、3-((((1-カルボキシエチル)チオ)カーボノチオイル)チオ)プロパン酸、シアノメチル(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール)カルボジチオエートなどのチオカルボニルチオ化合物、α-ヨードベンジルシアニド、1-ヨードエチルベンゼン、エチル2-ヨード-2-フェニルアセテート、2-ヨード-2-フェニル酢酸、2-ヨードプロパン酸、2-ヨード酢酸などの沃化アルキル化合物、ジフェニルエチレン、p-クロロジフェニルエチレン、p-シアノジフェニルエチレン、α-メチルスチレンダイマー、有機テルル化合物、イオウなどが挙げられる。
これらの中で、チオカルボニルチオ化合物や沃化アルキル化合物を用いたリビングラジカル重合が分子量制御性の面で好ましいが、工業的入手性や生産性の観点から一般的な溶液ラジカル重合を行う場合は、メルカプタン類が好ましい。特に、本発明の反応系における分子量制御の観点からチオリンゴ酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオールがより好ましく、本系においてチオリンゴ酸は、より高い分子量調節能を示すため、比較的少ない添加量で有効であり、ポリアンホライトに対する連鎖移動剤の添加量を減らしたい場合には、さらに好ましい。分子量調節剤(連鎖移動剤)の添加量は、全モノマーに対し、通常、0.010モル%~25モル%であり、目的物の純度や物性を考慮すると、0.010モル%~20モル%がより好ましい。逐次添加法にて重合を行う場合、分子量調節剤は、モノマー溶液に添加しても良いし、開始剤溶液に添加しても良いし、任意の溶媒に溶解させて単独でフィードしても良い。
重合温度は通常のラジカル重合と同様、10℃~100℃であり、より好ましくは40℃~90℃で、重合転化率の観点から、さらに好ましくは60℃~90℃である。
重合時間は、2時間~30時間が好ましく、さらに好ましくは2時間~10時間である。逐次添加法にて重合する場合、モノマー混合物と重合開始剤、分子量調節剤の連続添加を行う時間は、通常1時間~4時間である。この際、自然重合を抑制する観点から、モノマー混合溶液は不活性ガス雰囲気下、-5℃~15℃で冷却しながらフィードすることが好ましい。
得られたポリアンホライトは、その分子量分布や未反応のモノマー、低分子成分などによって温度応答挙動が影響をうけることがあるため、必要に応じては、分別沈殿、透析、精密濾過などの一般的なポリマー精製操作を実施しても良い。上記低分子成分とは、モノマーや重合開始剤由来のアルカリ金属およびその塩、重合開始剤や連鎖移動剤が、不均化や再結合した化合物、ポリアンホライトのメインピークよりも小さな重合体(例えば2量体や3量体など)の一つあるいは二つ以上の成分を示す。特に本発明のポリマーに関しては、冷却によって水溶液から相分離する特性を生かし、ポリマーの加熱溶解と冷却分離を繰返すことによって、より分子量が小さく相分離温度が低い成分を除去する、反復精製を行うことも可能である。
上記反復精製操作においては、各成分の除去率や精製による回収率は、対イオンや低分子成分の含有量に依存する。例えば、構成するイオン性官能基に対し、当量以上の塩化ナトリウム含むポリアンホライトの場合、ポリアンホライトに対する多量のアルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウムなどの遮蔽効果により、相分離自体に時間を要したり、希薄相への溶出が増えることによる回収率が著しく低くなったりする。なお、上記のポリアンホライトとしては、例えばNaSSとVBTACの共重合体やNaSSと2VP塩酸塩の共重合体などが該当する。本発明においては、ポリアンホライト自体のアルカリ金属塩が著しく低減されているため、そもそもの精製自体が不要であるし、反復精製による精製自体も容易である。
上記した先行技術文献にも記載の通り、駆動溶液としてUCST型ポリマーの水溶液を用いる正浸透膜水処理システムでは、高浸透圧を有する高濃度ポリマー水溶液が必要である 。加えて、UCST型ポリマー水溶液が相分離した際の低分子塩の遊離を避けるため、アルカリ金属塩を100ppm以下に低減した条件下でUCST型の相分離挙動を示す必要がある。UCST型ポリマーの浸透圧にもよるため、一概には言えないが、一般的に溶液の浸透圧は、溶質の濃度に依存し、高濃度になるほど高浸透圧となることから、高濃度ではUCSTが低く、低濃度ではUCSTが高いほうが本用途における理想的な相転移挙動となる。
従って、ポリマー濃度が20重量%~70重量%のいずれかの濃度において、-5℃から95℃の温度範囲にUCSTを有することが好ましく、UCSTは20~95℃となることが好ましいが、更に好ましくは、ポリマー濃度ポリマー濃度40重量%におけるUCSTをT1、ポリマー濃度30重量%におけるUCSTをT2とした場合、T1は-5℃~60℃、T2は20℃~95℃かつT1<T2となることが好ましい。上記ポリマー濃度に関し、20重量%以下にUCSTを有する場合、浸透圧的に不利であることがあり、70重量%以上では粘度が著しく高くなるため、取り扱い上課題がある。
なお、駆動溶液以外の用途に本発明のポリアンホライトを適用する場合、その用途に応じて任意の濃度におけるUCSTを調整すればよく、また、そのUCSTは溶媒である水が液体から相変化しない温度であれば特に限定されず、例えば常圧において-5℃~95℃となるようにすればよい。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
1.重合転化率の測定とポリマーの同定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定にて実施した。
共重合体を下記溶離液に溶解して0.1wt%溶液を調製し、HLC-8320(東ソー株式会社製)を用いて以下の条件でGPC測定を行った。モノマー由来のピーク面積(a)と重合物由来のピーク面積(b)から、下式により重合物の転化率を算出した。
重合物の転化率(面積%)=100×[1-{a/(a+b)}]
カラム=TSKガードカラムAW-H/TSK AW-6000/TSK AW-3000/TSK AW-2500
溶離液=硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液
流速・注入量・カラム温度=0.6ml/min、注入量=10μl、カラム温度=40℃
検出器=UV検出器(波長230nm)またはRI検出器
検量線=標準ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(Mp3,500~1500,000)創和科学製)及び標準ポリエチレングリコール(Mp400~40,000、シグマ・アルドリッチジャパン合同会社製)を用いて、ピークトップ分子量と溶出時間から作成した。
転化率算出および分子量算出における検出器および検量線の選択は、目的のポリマーの想定分子量に基づいて選択した。本発明のポリマーは、分子量が比較的小さいオリゴマーであるため、検出器としてはRI検出器(検量線用の標準物質には上記標準ポリエチレングリコール)を常用し、UV検出器(この場合検量線は標準ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)は、参考データをして用いた。
2.モノマー水溶液の純度測定
核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した。
重水(99.0重量%)約0.7mLに、試料、内部標準物質(ジメチルスルホン)を溶解して、NMR測定用サンプルを調製し、AV-400M(Bruker製)を用い、以下の条件でNMR測定を実施した。
核種=1H(プロトン)
積算回数=16
純度算出は下記式を基に実施した。
純度(wt%)=(Sa/Sb)×(Nb/Na)×(Wb/Wa)×(Ma/Mb)×100
Sa:任意の目的物ピークの積分値
Sb:任意の内部標準物質の積分値
Na:Saで選択した任意の目的物ピークの水素数(プロトン数)
Nb:Sbで選択した任意の内部標準物質ピークの水素数(プロトン数)
Wa:内部標準の採取量(g)
Wb:試料の採取量(g)
Ma:目的物の分子量
Mb:内部標準物質の分子量
3.低分子塩の定量(ナトリウムまたはリチウムの定量)
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置 OPTIMA 8300(パーキンエルマー製)を用いて、ナトリウムまたはリチウムを定量した。(以下、ICP-AESと略称する)。対象サンプルを硫酸及び硝酸にて湿式分解後し、分解後のサンプルを加熱乾固させた。乾燥サンプルに硝酸を添加して加熱溶解し、所定の量を定容後、内標標準としてスカンジウムを1ppm添加し定量した。
4.固形分濃度の算出
空重量を測定した20mlスクリュー管瓶に、均一溶液または均一に分散させた測定溶液を約1.5g仕込み、棚段真空乾燥機(80℃、減圧度2kPa)にて3時間加熱乾燥し、サンプルを濃縮乾固させた。その後、濃縮乾固したサンプル重量を測定し、下記式を基に固形分濃度を算出した。
固形分濃度(wt%)=(Wc)/(Wd)×100
Wc:乾燥前重量(g)
Wd:乾燥後重量(g)
<使用試薬>
実施例に記載の化合物は下記を使用したが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
NaSS:パラスチレンスルホン酸ナトリウム(純度89%、東ソー・ファインケム株式会社製)
LiSS:パラスチレンスルホン酸リチウム(純度86%、東ソー・ファインケム株式会社製)
4VP:4-ビニルピリジン(純度98%、東京化成工業株式会社製)
2VP:2-ビニルピリジン(純度98%、東京化成工業株式会社製)
MAA:メタクリル酸(純度99%、富士フイルム和光純薬株式会社製)
St:スチレン(純度99%、富士フイルム和光純薬株式会社製)
V-50:2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(純度97%、富士フイルム和光純薬株式会社製)
TGL:3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(純度97%、富士フイルム和光純薬株式会社製)
TMA:メルカプトこはく酸(純度98%、東京化成工業株式会社製)
MPS:3-メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム(純度85%、東京化成工業株式会社製)
HCl:塩酸(純度35%、富士フイルム和光純薬株式会社製)
IR120B :強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR120B(オルガノ株式会社製)
VBTAC:塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム(純度99%、シグマアルドリッチ社製)
TBC:4-tert-ブチルカテコール(純度98%、富士フイルム和光純薬株式会社製)
合成例1 ポリアンホライト製造用のモノマー溶液の調製(NaSSを出発原料とした例)
モノマー溶液の調製は、スチレンスルホン酸ナトリウムまたはスチレンスルホン酸リチウムの水溶液をイオン交換することでスチレンスルホン酸モノマー水溶液(以下、スチレンスルホン酸をSSAと表記)を取得し、得られた水溶液に各種モノマーを添加することで調製した。下記にその一例を示す。
パイレックス(登録商標)製コック付きクロマトカラム(内径=55mm)に、イオン交換水で膨潤させた強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR120Bを、350ml充填した。この時のカラム充填長は20cmであった。充填したカラムに対し、2mol/Lの塩酸水溶液(3000ml)を1時間かけて通液し、陽イオン交換樹脂を酸型へ再生した。その後、酸型に再生した陽イオン交換樹脂に対し、イオン交換水(3000ml)を1時間かけて通液した。
500mlビーカーに、NaSS(80.0g、347.70mmol、純度89.2%)、イオン交換水(320.00g)を仕込み、室温にて溶解させた。得られたNaSS水溶液(400.00g)を上記のようにカラム充填した陽イオン交換樹脂(酸型再生済)に充填後、30分かけて通液した。通液開始直後のSSAを含まない初留(94.10g)はカットし、SSAの留出が開始した段階で主留に切り替えた。NaSS水溶液を通液した後、カラム内に残存した目的物を押し出すために、イオン交換水(420.00g)を通液した。通液した主留は、氷浴で5℃~10℃に冷却した1000ml三角フラスコが受器となるようにし、受器内には2VP(36.60g、342.20mmol)を仕込み、イオン交換後の留出液であるSSA水溶液と攪拌混合させることで、SSAと2VPの淡黄色均一混合溶液(763.90g)を得た。得られたSSA-2VP混合溶液の純度は、SSA8.30重量%、2VP4.70重量%であり、モル比に換算すると、SSA:2VP=50.2:49.8(モル比)であり、GPCにおいてポリマーピークは検出されなかった。また、Naイオンは3ppmであった。取得したモノマー溶液は、1000ml広口ポリ容器に充填し、空気雰囲気下で密栓後、5℃で保管した。
合成例2 ポリアンホライト製造用のモノマー溶液の調製(LiSSを出発原料とした例)
パイレックス(登録商標)製コック付きクロマトカラム(内径=55mm)に、イオン交換水で膨潤させた強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)IR120Bを、350ml充填した。この時のカラム充填長は20cmであった。充填したカラムに対し、2mol/Lの塩酸水溶液(3000ml)を1時間かけて通液し、陽イオン交換樹脂を酸型へ再生した。その後、酸型に再生した陽イオン交換樹脂に対し、イオン交換水(3000ml)を1時間かけて通液した。
500mlビーカーに、LiSS(75.0g、340.8mmol、純度86.4%)、イオン交換水(112.5g)を仕込み、室温にて溶解させた。得られたLiSS水溶液(187.5g)を上記のようにカラム充填した陽イオン交換樹脂(酸型再生済)に充填後、30分かけて通液した。通液開始直後のSSAを含まない初留(94.1g)はカットし、SSAの留出が開始した段階で主留に切り替えた。NaSS水溶液を通液した後、カラム内に残存した目的物を押し出すために、イオン交換水(420.0g)を通液した。通液した主留は、氷浴で5℃~10℃に冷却した1000ml三角フラスコが受器となるようにし、受器内には2VP(36.6g、341.2mmol)を仕込み、イオン交換後の留出液であるSSA水溶液と攪拌混合させることで、SSAと2VPの淡黄色均一混合溶液(316.1g)を得た。得られたSSA-2VP混合溶液の純度は、SSA19.8重量%、2VP11.4重量%であり、モル比に換算すると、SSA:2VP=49.8:50.2(モル比)であった。また、Liイオンは2ppmであった。取得したモノマー溶液は、500ml広口ポリ容器に充填し、空気雰囲気下で密栓後、5℃で保管した。
実施例1 SSA-2VP共重合体
<フィード用モノマー溶液の調製>
氷冷下、5~10℃で冷却した1000mlナシ型フラスコに、LiSSを出発原料に合成例2の手法にて事前調製したSSA-2VP混合水溶液(130.0g、SSA:19.7重量%、純分重量25.6g、139.0mmol、2VP:11.3重量%、純分重量14.7g、139.7mmol)を仕込んだ。モノマーモル比は[SSA]/[2VP]=49.9/50.1であった。該溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用のモノマー溶液を調製した。
<フィード用開始剤溶液>
100mlナス型フラスコに、V-50(4.4g、15.7mmol)、TMA(2.2g、14.4mmol)、イオン交換水(45.4g)を仕込み、溶解させ均一溶液とした後、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用の開始剤水溶液を調製した。
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型500mlセパラブルフラスコに、TMA(0.25g、1.6mmol)、イオン交換水(7.5g)を仕込んで溶解し、均一溶液とした。この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、窒素雰囲気下85℃で加熱した。この反応器に、別途調製したフィード用モノマー溶液を5℃~10℃で氷浴しながら180分、別途調製したフィード用開始剤水溶液を室温でホールドしたまま210分かけて連続2点フィードし、窒素雰囲気下85℃で重合を行った。210分後、90℃に昇温し、2時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において、淡黄色の半透明溶液であった。
反応終了後の重合転化率は、SSA、2VP共に100%、数平均分子量は3,700、重量平均分子量は4,800であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーの一部をエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は6ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いているため、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後95℃で加熱することで当該ポリマーの30重量%水溶液を取得した。該濃度においては、95℃では透明溶液ではあったが、冷却すると65℃にて白濁した(目視での観測)。また、乾燥ポリマーとイオン交換水を用いて濃度を調整し、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%の4点におけるポリマー水溶液の溶解温度〔ポリマー溶液を95℃にて均一溶液とし、95℃から冷却して目視観測によって白濁(曇点)が観測された温度〕を調べた結果、図1のようになった。以上の結果より、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。
実施例2 SSA-2VP共重合体
フィード用モノマー溶液〔SSA-2VP混合水溶液(130.0g、SSA:18.9重量%、純分重量24.6g、133.4mmol、2VP:10.8重量%、純分重量14.0g、133.5mmol、モノマーモル比[SSA]/[2VP]=50.0/50.0)、開始剤溶液〔V-50(8.3g、29.7mmol)、TMA(4.6g、30.0mmol)、イオン交換水(46.0g)〕、初期仕込〔TMA(0.92g、6.0mmol)、イオン交換水(7.5g)〕とする以外は同様の手法を用いて、共重合体を合成した。
反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において、淡黄色の半透明溶液であり、反応終了後の重合転化率は、SSA、2VP共に100%、数平均分子量は2,700、重量平均分子量は3,200であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は2ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いており、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後95℃で加熱することで当該ポリマーの30.0重量%水溶液を取得した。該濃度においては、95℃では透明溶液ではあったが、冷却すると35℃にて白濁した(目視での観測)。また、乾燥ポリマーとイオン交換水を用いて濃度を調整し、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%の4点におけるポリマー水溶液の溶解温度〔ポリマー溶液を95℃にて均一溶液とし、95℃から冷却して目視観測によって白濁(曇点)が観測された温度〕を調べた結果、図2のようになった。以上の結果より、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。
実施例1と実施例2では、モノマー構成単位はほぼ同じだが、分子量のみが異なる。これらの結果より、構成単位が同じでも、同濃度で比較した場合、分子量が小さいほどUCSTが小さくなることが分かる。このことから、温度応答挙動に対するポリマーの分子量の影響があることが分かる。
実施例3 SSA-4VP共重合体
実施例1の2VPを4VPに変更する以外は同様の手法を用いて共重合体を合成した。なお、フィードに使用したモノマー溶液は、SSA-4VP混合水溶液(130.0g、SSA:19.7重量%、純分重量25.6g、139.0mmol、4VP:11.3重量%、純分重量14.7g、139.7mmol)であり、モノマーモル比は[SSA]/[4VP]=49.9/50.1であった。
反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において淡黄色の半透明溶液であり、重合転化率は、SSA、2VP共に100%、数平均分子量は3,500、重量平均分子量は4,900であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は8ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いており、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後95℃で加熱することで当該ポリマーの30.0重量%水溶液を取得した。該濃度においては、95℃では透明溶液ではあったが、冷却すると60℃にて白濁した(目視での観測)。また、乾燥ポリマーとイオン交換水を用いて濃度を調整し、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%の4点におけるポリマー水溶液の溶解温度〔ポリマー溶液を95℃にて均一溶液とし、95℃から冷却して目視観測によって白濁(曇点)が観測された温度〕を調べた結果、図3のようになった。以上の結果より、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。
実施例4 SSA-2VP-St共重合体
<フィード用モノマー溶液の調製>
氷冷下、5~10℃で冷却した1000mlナシ型フラスコに、LiSSを出発原料に合成例2の手法にて取得したSSA水溶液(150.0g、SSA:25.4重量%、純分重量38.1g、206.8mmol)、2-プロパノール(100.2g)、St(5.3g、50.4mmol)を攪拌溶解し、均一溶液を得た。この溶液に対し、2VP(27.4g、260.7mmol)を15分かけて滴下し、SSA-2VP-St混合溶液を取得した。モノマーモル比は[SSA]/[2VP]/[St]=40.0/50.0/10.0であった。該溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用のモノマー溶液を調製した。
<フィード用開始剤溶液>
100mlナス型フラスコに、V-50(7.0g、24.9mmol)、TMA(3.5g、22.7mmol)、イオン交換水(45.0g)を仕込み、溶解させ均一溶液とした後、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用の開始剤水溶液を調製した。
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型500mlセパラブルフラスコに、TMA(0.39g、2.53mmol)、イオン交換水(7.5g)、2-プロパノール(7.5g)を仕込んで溶解し、均一溶液とした。この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、窒素雰囲気下85℃で加熱した。この反応器に、別途調製したフィード用モノマー溶液を5℃~10℃で氷浴しながら360分、別途調製したフィード用開始剤水溶液を室温でホールドしたまま390分かけて連続2点フィードし、窒素雰囲気下85℃で重合を行った。390分後、90℃に昇温し、6時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において、黄白色の不均一溶液(分散液)であった。
反応終了後の重合転化率は、SSA、2VP、Stいずれも100%、数平均分子量は3,600、重量平均分子量は5,100であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は5ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いており、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後95℃で加熱することで当該ポリマーの30.0重量%水溶液を取得した。該濃度においては、95℃では透明溶液ではあったが、冷却すると75℃にて白濁した(目視での観測)。また、乾燥ポリマーとイオン交換水を用いて濃度を調整し、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%の4点におけるポリマー水溶液の溶解温度〔ポリマー溶液を95℃にて均一溶液とし、95℃から冷却して目視観測によって白濁(曇点)が観測された温度〕を調べた結果、図4のようになった。以上の結果より、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。
実施例1と実施例4を比較すると、重量平均分子量はほぼ同じであっても、実施例4のほうが同一濃度で比較した場合のUCSTが高いことが分かる。これは、第3成分であるスチレンが加わった上でのの共重合により、ポリアンホライトの疎水相互作用が強まったためと考えられる。
実施例5 SSA-2VP-MAA共重合体
<フィード用モノマー溶液の調製>
氷冷下、5~10℃で冷却した1000mlナシ型フラスコに、LiSSを出発原料に合成例2の手法にて事前調製したSSA-2VP混合水溶液(150.0g、SSA:18.9重量%、純分重量28.4g、153.9mmol、2VP:10.8重量%、純分重量16.2g、154.1mmol)、MAA(6.7g、77.1mmol)を仕込んだ。モノマーモル比は[SSA]/[2VP]/[MAA]=40.0/40.0/20.0であった。該溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用のモノマー溶液を調製した。
<フィード用開始剤溶液>
100mlナス型フラスコに、V-50(5.2g、18.5mmol)、TMA(2.6g、16.8mmol)、イオン交換水(45.0g)を仕込み、溶解させ均一溶液とした後、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用の開始剤水溶液を調製した。
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型500mlセパラブルフラスコに、TMA(0.29g、1.87mmol)、イオン交換水(7.5g)を仕込んで溶解し、均一溶液とした。この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、窒素雰囲気下85℃で加熱した。この反応器に、別途調製したフィード用モノマー溶液を5℃~10℃で氷浴しながら360分、別途調製したフィード用開始剤水溶液を室温でホールドしたまま390分かけて連続2点フィードし、窒素雰囲気下85℃で重合を行った。390分後、90℃に昇温し、6時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において、黄白色の不均一溶液(分散液)であった。
反応終了後の重合転化率は、SSA、2VPはそれぞれ100%、MAAは98.0%であり、数平均分子量は3,200、重量平均分子量は4,300であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は6ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いており、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後80℃で加熱することで当該ポリマーの30重量%水溶液を取得した。該濃度においては、80℃では透明溶液ではあったが、冷却すると70℃にて白濁(目視での観測)したことから、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。
実施例6 SSA-2VP-MA共重合体
<フィード用モノマー溶液の調製>
氷冷下、5~10℃で冷却した1000mlナシ型フラスコに、LiSSを出発原料に合成例2の手法にて取得したSSA水溶液(150.0g、SSA:25.4重量%、純分重量38.1g、206.7mmol)、MA(4.8g、40.8mmol)を攪拌溶解し、均一溶液を得た。この溶液に対し、2VP(17.3g、164.8mmol)を15分かけて滴下し、SSA-2VP-MA混合水溶液を取得した。モノマーモル比は[SSA]/[2VP]/[MA]=50.0/40.0/10.0であった。該溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用のモノマー溶液を調製した。
<フィード用開始剤溶液>
100mlナス型フラスコに、V-50(4.8g、17.1mmol)、TMA(2.4g、15.6mmol)、イオン交換水(45.0g)を仕込み、溶解させ均一溶液とした後、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用の開始剤水溶液を調製した。
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型500mlセパラブルフラスコに、TMA(0.27g、1.73mmol)、イオン交換水(7.5g)を仕込んで溶解し、均一溶液とした。この溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気した後、窒素雰囲気下85℃で加熱した。この反応器に、別途調製したフィード用モノマー溶液を5℃~10℃で氷浴しながら360分、別途調製したフィード用開始剤水溶液を室温でホールドしたまま390分かけて連続2点フィードし、窒素雰囲気下85℃で重合を行った。390分後、90℃に昇温し、6時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において、黄白色の不均一溶液(分散液)であった。
反応終了後の重合転化率は、SSA、2VPはそれぞれ100%、MAは95.9%であり、数平均分子量は5,100、重量平均分子量は7,000であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は6ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いており、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後80℃で加熱することで当該ポリマーの30重量%水溶液を取得した。該濃度においては、80℃では透明溶液ではあったが、冷却すると25℃にて白濁(目視での観測)したことから、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。
実施例7 SSA-2VP共重合体 重合禁止剤TBCの添加
実施例1のモノマー溶液に関し、フィード時の自然重合抑制を目的に重合禁止剤であるTBC(0.10g、0.59mmol)添加する以外は同様の手法を用いて共重合体を合成した。
反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において淡黄色の半透明溶液であり、重合転化率は、SSA、2VP共に100%、数平均分子量は3,700、重量平均分子量は4,800であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Li分は8ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはLiSSを用いており、Na分は含まれないと考えられるため、Na分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後80℃で加熱することで当該ポリマーの30重量%水溶液を取得した。該濃度においては、80℃では透明溶液ではあったが、冷却すると60℃にて白濁(目視での観測)したことから、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。また、フィードするモノマー溶液に重合禁止剤を添加しても共重合性及び温度応答挙動には影響がないことが確認された。
実施例8 SSA-2VP共重合体 連鎖移動剤と出発原料の変更
<フィード用モノマー溶液の調製>
氷冷下、5~10℃で冷却した1000mlナシ型フラスコに、NaSSを出発原料に合成例1の要領で事前調製したSSA-2VP混合水溶液(400.0g、SSA:8.3重量%、純分重量33.2g、180.2mmol、2VP:4.7重量%、純分重量18.8g、178.8mmol)、連鎖移動剤TGL(8.3g、74.4mmol)を仕込んだ。モノマーモル比は[SSA]/[2VP]=50.2/49.8であった。該溶液をアスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用のモノマー溶液を調製した。
<フィード用開始剤溶液>
100mlナス型フラスコに、V-50(2.9g、10.2mmol)、イオン交換水(25.5g)を仕込み、溶解させ均一溶液とした後、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返し十分に脱気することで、フィード用の開始剤水溶液を調製した。
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型500mlセパラブルフラスコにイオン交換水(7.5g)を仕込んだ後、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気し、窒素雰囲気下85℃で加熱した。この反応器に、別途調製したフィード用モノマー溶液を5℃~10℃で氷浴しながら180分、別途調製したフィード用開始剤水溶液を室温でホールドしたまま210分かけて連続2点フィードし、窒素雰囲気下85℃で重合を行った。210分後、90℃に昇温し、2時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において、淡黄色の半透明溶液であった。
反応終了後の重合転化率は、SSA、2VP共に100%、数平均分子量は3,000、重量平均分子量は3,800であった。当該ポリマーは、GPC測定に使用したGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であった。
<温度応答性の確認>
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。乾燥固体は、乾燥前と同様にGPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に可溶であり、GPC測定の結果も濃縮乾固前後で一致していたため、本操作による当該ポリマーの変質が無いことを確認した。また、乾燥ポリマーをICP-AESにて分析すると、Na分は6ppmであることが分かった。SSAの出発原料にはNaSSを用いており、Li分は含まれないと考えられるため、Li分は<1ppmとした。
20mlスクリュー管瓶に、乾燥ポリマー(2.0g)、イオン交換水(4.7g)を仕込み、密栓後80℃で加熱することで当該ポリマーの30.0重量%水溶液を取得した。該濃度においては、80℃では透明溶液ではあったが、冷却すると20℃にて白濁したことから、当該ポリマーは、UCST型の温度応答挙動を示すことが明らかである。本例のポリマーと実施例2で合成した共重合体は、モノマー組成と重量平均分子量はほぼ同じだが、本例のポリマーのUCSTのほうが低い結果となった。これは連鎖移動剤末端の水溶性に起因すると考えられる。
実施例9 SSA-2VP共重合体の精製
本発明のポリアンホライトは、水溶液中、UCST以下では、ポリアンホライト構造中のスルホニウムアニオンとピリジニウムカチオンが静電相互作用で凝集した濃厚なポリアンホライト水溶液相(濃厚相)と、重合開始剤や連鎖移動剤に由来する低分子成分やアルカリ金属塩を含む水溶液(希薄相)に相分離する。この現象を利用した反復精製を実施した。
実施例1にて得られた反応液176.4g(固形分濃度:24.4重量%、純分換算:43.0g)を、85℃のままガラス製500ml四つ口フラスコに移液した。反応液は85℃において薄く濁った淡黄色不均一溶液だったが、25℃まで放冷する過程で、徐々に白濁が強くなり、25℃では淡黄白色の不均一溶液(分散液)となった。このまま25℃にて12時間静置すると、不均一溶液は淡黄色透明溶液の上層(以下、希薄相と定義する)と黄色透明均一溶液の下層(以下、濃厚相と定義する)の2相に分離した。その後、希薄相を抜出し、抜き出した重量と同重量のイオン交換水を濃厚相へ添加し、加熱攪拌(85℃)、相分離(25℃)、希薄相の抜出操作を合計で4回繰り返すことで反復精製を実施した。4回洗浄操作を実施し、4回洗浄後の濃厚相(61.0g、固形分濃度:58.0重量%、純分換算:35.4g)を取得した。4回洗浄後の濃厚相は、黄色半透明の粘稠溶液であり、GPC測定の結果、数平均分子量は3,900、重量平均分子量は4,900であることが分かった。洗浄(精製)操作における回収率は、82.3重量%(精製後純分:35.4gを精製前純分:251.0gで除した値)であり、ICP-AESでの分析からポリマー中のLi分は1ppm以下であることが判明した。4回洗浄後の濃厚相(以下、精製品とする)の温度応答挙動を確認すべく、ポリマー濃度60重量%水溶液〔精製品の一部を濃縮乾固させた後、水を添加し濃度調整したもの〕を95℃に加熱したところ、黄色透明の均一溶液となった。これを冷却すると、35℃にて白濁した。
反復精製により、アルカリ金属や低分子化合物、オリゴマー等が除去され、数平均分子量および重量平均分子量は僅かに上昇し、分子量分布(重量平均分子量を数平均分子量で除した値)も小さくなったことが分かる(精製前:1.29、精製後:1.26)。また、UCSTは上昇するが、温度応答特性自体は消失していない。以上の結果より、SSA-2VP共重合体は、温度応答性を保有したまま、収率良く精製可能であることが分かる。
比較例1 NaSS-2VP塩酸塩 共重合体の合成1
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型1000mlセパラブルフラスコ(反応器)にイオン交換水(60.0g)を仕込み、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気し、窒素雰囲気下85℃で加熱した。別の1Lガラス製ナシ型フラスコにNaSS(133.0g、560.0mmol)、2VP(60.0g、559.3mmol)、35%塩酸(58.2g、558.7mmol)、連鎖移動剤TGL(8.6g、77.1mmol)、イオン交換水(760.0g)を仕込み、攪拌溶解後、十分に脱気を行い、モノマー溶液を得た。この時にモノマー溶液のモル比は、[NaSS]/[2VP塩酸塩]=50/50であった。さらに、別な100mlナスフラスコに開始剤V-50(8.5g、 30.4mmol)、イオン交換水(46.9g)を仕込んで溶解し、十分な脱気を実施して開始剤溶液とした。反応器にモノマー溶液(氷浴5~10℃)と開始剤溶液(室温)を2点同時にフィードしながら85℃で重合を行った。モノマー溶液は180分、開始剤溶液は210分かけてフィードを実施し、210分後に反応温度を90℃に昇温し2時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において黄色の透明均一溶液であり、重合転化率は、NaSS、2VP共に100%、数平均分子量は5,100、重量平均分子量は11,600であった。
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。30.0重量%のポリマー水溶液となるように、20mlスクリュー管瓶に、乾燥固体(3.0g)、イオン交換水(7.0g)を仕込み、85℃で加熱し淡黄色均一水溶液を得た。85℃においては淡黄色均一水溶液であったが、この溶液を冷却していくと20℃にて淡黄白色の不均一溶液(分散液)となった。ポリマー骨格中に含まれる塩(この場合NaCl)は、組成の理論値から16.8重量%(NaClの分子量58.44をNaSSと2VP塩酸塩の合計分子量347.79で除して100をかけた値)であり、Na分としては、6.6重量%(Naの分子量22.99をNaSSと2VP塩酸塩の合計分子量347.79で除して100をかけた値)である。なお、SSAの出発原料にはNaSSを用いており、Li分は含まれないと考えられるため、Li分は<1ppmとした。この塩を含む状態での該ポリマー水溶液のUCSTは20℃であることが分かる。上記30.0重量%のポリマー水溶液を、5℃にて12時間静置すると、淡黄色透明溶液の上層(以下、希薄相と定義する)と黄色透明均一溶液の下層(以下、濃厚相と定義する)の2相に分離した。この希薄相の一部を濃縮乾固し、乾燥ポリマーのICP-AESを測定すると、Na分を1.41重量%(14,100ppm)含むことが判明した。
以上の結果より、NaSSとビニルピリジン塩酸塩の共重合体は、骨格中に塩を含む条件において、UCST型の相分離挙動を示すが、相分離時の希薄相には多量の塩を含むため、正浸透膜法水処理システム用の駆動溶液として使用した場合には、淡水を得られないことは明らかである。
比較例2 NaSS-2VP塩酸塩 共重合体の精製1
比較例1にて得られたポリアンホライトに対し、実施例9の同様の手法を用いた、溶液相分離による反復精製を実施した。即ち、ポリアンホライトが静電相互作用で凝集し濃厚なポリマー水溶液相を形成した際に、塩化ナトリウムが希薄相に遊離する現象を利用し、該ポリマー中の塩化ナトリウムを除去することができるかを確認した。
比較例1にて得られた反応液1000.0g(固形分濃度:25.1重量%、純分換算:251.0g)を、85℃のままガラス製2000ml四つ口フラスコに移液し、イオン交換水(1000.0g)を添加することで反応液を希釈し、85℃で加熱しながら30分間攪拌した。この時、反応液は淡黄色の均一水溶液であった。攪拌後、25℃まで放冷する過程で、希釈した反応液は70℃で淡黄白色の不均一溶液(分散液)となった。25℃にて12時間静置すると、不均一溶液は淡黄色透明溶液の上層(以下、希薄相と定義する)と黄色透明均一溶液の下層(以下、濃厚相と定義する)の2相に分離した。その後、希薄相を抜出し、抜き出した重量と同重量のイオン交換水を濃厚相へ添加し、加熱攪拌、相分離、希薄相の抜出という一連の操作を合計で4回繰り返すことで反復精製を実施した。4回洗浄操作を実施し、4回洗浄後の濃厚相(145.6g、固形分濃度:55.5重量%、純分換算:80.8g)を取得した。4回洗浄後の濃厚相は、黄白濁粘稠溶液であり、GPC測定の結果、数平均分子量は5,900、重量平均分子量は12,900であることが分かった。洗浄(精製)操作における回収率は、32.2重量%(精製後純分:80.8gを精製前純分:251.0gで除した値)であり、ICP-AESでの分析からポリマー中のNa分は142ppmであることが判明した。4回洗浄後の濃厚相(以下、精製品とする)の温度応答挙動を確認すべく、ポリマー濃度60重量%水溶液〔精製品の一部を濃縮乾固させた後、水を添加し濃度調整したもの〕を95℃に加熱したが、均一溶液とはならず黄白濁の懸濁液となった。このことから、塩を142ppmまで低減した状態での該ポリマー水溶液のUCSTは95℃以上であり、低分子塩(Na分)の除去効果も不十分かつ回収率の著しく低いことが分かった。
比較例1と比較例2は同分子量のポリマーであるが、精製品(比較例2)のUCSTが増加したのは、塩の低減により遮蔽効果が著しく低下し、ポリマー主鎖の静電相互作用が強く発現したためと考えられる。塩を低減した状態でポリマー間の凝集力を緩和し、95℃以下にUCSTを発現させるには、分子量を低減する必要があると考えられる。また、実施例9と比較し、回収率が著しく低くなったのは、冷却相分離時の希薄相に、塩化ナトリウムをはじめとする多量の低分子塩が存在しているためである。即ち、多量の低分子塩によりポリアンホライトのイオン性官能基が遮蔽され、可溶化しやすくなったことで、希薄相にポリアンホライト自体が遊離してしまったと推定される。
比較例3 NaSS-2VP塩酸塩 共重合体の合成と精製2
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型1000mlセパラブルフラスコ(反応器)にイオン交換水(65.0g)を仕込み、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気し、窒素雰囲気下85℃で加熱した。別の1Lガラス製ナシ型フラスコにNaSS(85.9g、361.7mmol)、2VP(38.8g、361.7mmol)、35%塩酸(37.7g、361.4mmol)、連鎖移動剤TGL(16.0g、143.5mmol)、イオン交換水(720.0g)を仕込み、攪拌溶解後、十分に脱気を行い、モノマー溶液を得た。この時にモノマー溶液のモル比は、[NaSS]/[2VP塩酸塩]=50/50であった。さらに、別な100mlナスフラスコに開始剤V-50(12.4g、44.2mmol)、イオン交換水(50.0g)を仕込んで溶解し、十分な脱気を実施して開始剤溶液とした。反応器にモノマー溶液(氷浴5~10℃)と開始剤溶液(室温)を2点同時にフィードしながら85℃で重合を行った。モノマー溶液は180分、開始剤溶液は210分かけてフィードを実施し、210分後に反応温度を90℃に昇温し2時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、90℃において黄色の透明均一溶液であり、重合転化率は、NaSS、2VP共に100%、数平均分子量は1,100、重量平均分子量は2,000であった。なお、ポリマー骨格中に含まれる塩(この場合NaCl)は、組成の理論値から16.8重量%(NaClの分子量58.44をNaSSと2VP塩酸塩の合計分子量347.79で除して100をかけた値)であり、Na分としては、6.6重量%(Naの分子量22.99をNaSSと2VP塩酸塩の合計分子量347.79で除して100をかけた値)である。SSAの出発原料にはNaSSを用いており、Li分は含まれないと考えられるため、Li分は<1ppmとした。
<精製>
比較例2と同様、相分離を用いた反復精製を試みた。得られた反応液800.0gを、85℃のままガラス製2000ml四つ口フラスコに移液し、イオン交換水(800.0g)を添加することで反応液を希釈し、85℃で加熱しながら30分間攪拌した。この時、反応液は淡黄色の均一水溶液であった。希釈した反応液を、5℃まで冷却したが、系は終始均一溶液であり、濁りや相分離は確認されなかった。確認のため、固形分濃度30重量%に希釈した反応液、100ml規格瓶に希釈前の反応液(固形分濃度25重量%)、固形分濃度5重量%に希釈した反応液をそれぞれ50mlずつ仕込み、密栓後、冷凍庫内(-5℃)にて24時間静置した。静置前の外観は、いずれも黄色の均一溶液であった。24時間静置後の外観を確認したが、いずれも黄色均一溶液のままで外観に変化はなく、濁りや相分離は確認されなかった。
比較例3の結果より、重量平均分子量2,000のNaSSと2VP塩酸塩の共重合体水溶液は、UCSTを持たない均一溶液であることが判明した。これは、分子量が小さくなったことで、ポリアンホライト中のイオン性官能基に対するNaClによる遮蔽効果顕著となり、スルホニウムアニオンとピリジニウムカチオンの静電相互作用による凝集効果を上回ったためと考えられる。合成した共重合体からNaClを取り除くことが可能であれば、20~70重量%においてUCSTを示す可能性があるが、分子量が小さすぎるため塩を取り除くこと自体が困難であることが分かる。
比較例1~3の結果より、モノマー組成中にNaClを含んだ状態で共重合後、反復精製を行う手法は、得られる共重合体中の低分子塩の低減効果が不十分であること、また低分子量のポリアンホライトへの適用は困難であることは明らかである。
比較例4 SSA-2VP 共重合体の合成
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型1000mlセパラブルフラスコ(反応器)に、NaSS水溶液をイオン交換し、2VPで中和したSSA-2VP水溶液〔400.0g、SSA(濃度4.2重量%、純分重量16.9g、91.6mmol)、2VP(濃度2.4重量%、9.6g、91.3mmol)〕、V-50(1.0g、3.6mmol)を全て一括で仕込み、攪拌溶解後、十分に脱気を行った。この時のモノマー溶液のモル比は、[SSA]/[2VP]=50.0/50.0であった。反応器を85℃に加熱し重合を開始した。重合開始後、30分で反応系が白濁しはじめ、1時間経過後には容器側面と容器底部、攪拌翼に白色粘稠な凝集物が固着し攪拌が困難となった。この反応系を95℃まで加熱し、30分間静置したが、凝集物の溶解は見られず、反応系は白濁した上澄みと白色粘稠凝集物の混合物となった。GPCによる凝集物の分子量測定を試みたが、GPC溶離液(硫酸ナトリウム水溶液(0.2mol/L)/アセトニトリル=65/35(体積比)溶液)に不溶であり、白濁溶液となったため、反応溶液の測定は困難であった。また、白濁した反応系上澄みの分析を実施すべく、サンプリングした上澄み用液も上記GPC溶離液に不溶であり分析は困難であった。そこで、可溶分のみのGPC測定を実施すべく、採取した上澄みをGPC溶離液に分散させ、0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、反応液の部分溶解サンプルを取得した。GPC測定の結果、数平均分子量は33,000、重量平均分子量は71,000であった。凝集物の分子量測定は上記の通り困難であったが、分析できた可溶分(上澄み)以上の分子量であることが推定される。採取した上澄みの一部を濃縮乾固し、20mlスクリュー管瓶内にて得られた乾燥固体(3.0g)と、30重量%となるようにイオン交換水(7.0g)を添加し、95℃で加熱したが、均一溶液とはならず、白濁した不均一溶液となった。また、乾燥ポリマー濃度を60重量%とした水溶液を調整し、95℃で加熱したが、均一溶液とはならず白濁した不均一溶液となった。この乾燥固体のICP-AESを測定すると、Na分は4ppmであり、SSAの出発原料にはNaSSを用いていることから、Li分は<1ppmとした。
以上の結果より、数平均分子量33,000以上のSSA-2VP共重合体は、粘稠な凝集塊が生成し、合成自体が困難であることは明らかである。また、該ポリマーは、95℃においても白濁溶液となり、UCSTを有さないことが明らかである。これは、分子量が増大したことで、静電相互作用による凝集が多点で発生し、熱による静電相互作用の緩和(=UCST型相分離の発現)が起こらなくなったためと推測される。
比較例5 SSA-VBTAC 共重合体の合成と精製
<共重合>
3方コック、窒素導入管を取り付けたジムロート冷却器、ガラス製4枚羽攪拌翼を取り付けた円筒型1000mlセパラブルフラスコ(反応器)にイオン交換水(55.0g)を仕込み、アスピレーター減圧と窒素導入を繰り返すことで十分に脱気し、窒素雰囲気下85℃で加熱した。別の1Lガラス製ナシ型フラスコにNaSS(59.2g、256.8mmol)、VBTAC(55.0g、257.2mmol)、連鎖移動剤チオグリセロール(1.5g、13.8mmol)、イオン交換水(551.3g)を仕込み、攪拌溶解後、十分に脱気を行い、モノマー溶液を得た。この時にモノマー溶液のモル比は、[NaSS]/[VBTAC]=50/50であった。さらに、別な100mlナスフラスコに開始剤V-50(6.8g、 24.3mmol)、イオン交換水(45.0g)を仕込んで溶解し、十分な脱気を実施して開始剤溶液とした。反応器にモノマー溶液と開始剤溶液を2点同時にフィードしながら70℃で重合を行った。モノマー溶液は180分、開始剤溶液は210分かけてフィードを実施し、フィード終了後2時間熟成を行った。反応終了後の当該ポリマー溶液は、70℃において黄色の透明均一溶液であり、重合転化率は、NaSS、VBTAC共に100%、数平均分子量は1,000、重量平均分子量は2,300であった。
当該ポリマーをエバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、淡黄色の乾燥固体を取得した。30.0重量%のポリマー水溶液となるように、20mlスクリュー管瓶に、乾燥固体(3.0g)、イオン交換水(7.0g)を仕込み、85℃で加熱し淡黄色均一水溶液を得た。85℃においては淡黄色均一水溶液であったが、この溶液を冷却していくと20℃にて淡黄白色の不均一溶液(分散液)となった。ポリマー骨格中に含まれる塩(この場合NaCl)は、組成の理論値から14.0重量%(NaClの分子量58.44をNaSSとVBTACの合計分子量417.92で除して100をかけた値)であり、Na分としては、5.5重量%(Naの分子量22.99をNaSSとVBTACの合計分子量417.92で除して100をかけた値)である。塩を含む状態での該ポリマー水溶液のUCSTは18℃であることが分かる。
上記30.0重量%のポリマー水溶液を、5℃にて12時間静置すると、淡黄色透明溶液の上層(希薄相)と黄色透明均一溶液の下層(濃厚相)の2相に分離した。この希薄相の一部を濃縮乾固し、乾燥ポリマーのICP-AESを測定すると、Na分を3.01重量%(30,100ppm)含むことが判明した。また、濃厚相は、相分離前と比較して著しく増粘し、5℃においては白濁していた。この濃厚相を一部取り出し、エバポレーターにて濃縮乾固させ(60℃/0.2kPa)、白色の乾燥固体(濃厚相乾燥品とする)を取得した。この濃厚相乾燥品の30重量%のポリマー水溶液を得るべく、20mlスクリュー管瓶に、濃厚相乾燥品(3.0g)、イオン交換水(7.0g)を仕込み、95℃まで加熱したが、均一溶液とはならず、白濁した不均一溶液(分散液)が得られた。同様に、濃厚相乾燥品のポリマー濃度を60重量%としたポリマー水溶液を95℃まで加熱したが、均一溶液とはならず、白濁した不均一溶液(分散液)が得られた。
以上の結果より、NaSSとVBTACの共重合体は、骨格中に塩を含む条件において、UCST型の相分離挙動を示すが、相分離時の希薄相には多量の塩を含むことが判明した。また、濃厚相乾燥品は一度相分離を実施して塩が低減されているが、塩の低減によりUCSTが著しく上昇したことが分かる。これは、比較例2と同様に塩の低減により遮蔽効果が低下し、ポリマー主鎖の静電相互作用が強く発現したためと考えられる。また、VBTACに含まれるトリメチルアンモニウムカチオンは、比較例2のピリジニウムカチオンよりもスルホニウムアニオンと強固な静電相互作用を形成するため、塩低減時のUCSTの上昇が大きいと考えられる。即ち、NaSSとVBTACの共重合体は、正浸透膜法水処理システム用の駆動溶液として使用した場合には、淡水を得られない上、UCSTが高くなりすぎて適用が困難であることは明らかである。
比較例6 SSA-2VP モノマー溶液の温度応答性
20mlスクリュー管瓶に、LiSS水溶液をイオン交換し、2VPで中和したSSA-2VP水溶液〔10.0g、SSA(濃度19.7重量%、純分重量1.97g、10.69mmol)、2VP(濃度11.3重量%、1.13g、10.74mmol)、総モノマー濃度31.0重量%〕を仕込んだ。この時のモノマー溶液のモル比は[SSA]/[2VP]=49.9/50.1、Li分は8ppmであった。密栓後、冷凍庫内(-5℃)にて24時間静置した。静置前の外観は、いずれも淡黄色の均一溶液であった。24時間静置後の外観を確認したが、淡黄色均一溶液のままで外観に変化はなく、濁りや相分離は確認されなかった。また、24時間静置後のGPC分析を実施したが、ポリマーピーク(溶出時間<10分)は検出されず、静置による重合物の生成はないことを確認した。
以上の結果より、31.0重量%濃度のモノマー溶液(数平均分子量289.4:SSAと2VPの分子量の合計)は-5℃においても濁りや相分離は見られず、UCSTを有さないことが明らかである。
比較例4、比較例6の結果より、SSAと2VPの共重合系において、UCSTが-5℃~95℃に発現する数平均分子量は、289~33,000であることは明らかである。
実施例1~9を表1に、比較例1~6の結果を表2に纏めた。
Figure 2022046945000009
Figure 2022046945000010
本発明の新規なポリスチレンベースのポリアンホライトは、アルカリ金属塩を含まない条件下でも上限臨界溶液温度(UCST)型の温度応答挙動を示すポリマーであり、ドラッグデリバリーシステム、遺伝子治療、バイオセパレーション、バイオイメージング、カテーテル、人工筋肉、熱光学光スイッチ、触媒、分散剤、正浸透圧発電や正浸透膜法水処理システムの駆動溶液など広範な用途への利用が期待できる。
1 溶出時間9分~13分の間のピーク
2 溶出時間15分~18分の間のピーク
3 溶出時間20分~23分の間のピーク

Claims (7)

  1. 下記繰り返し構成単位(A)及び下記繰り返し構成単位(B)を含むポリスチレンベースのポリマーであって、
    前記ポリマー中の繰り返し構成単位(A)が、繰り返し構成単位(A)及び繰り返し構成単位(B)の合計に対して40モル%~60モル%であり、
    前記ポリマー中のアルカリ金属の量、アルカリ土類金属の量又はアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計量が、ポリマー量に対し100ppm以下であり、
    前記ポリマーの分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定される数平均分子量として、500ダルトン~10,000ダルトンである、
    上限臨界溶液温度型の感熱応答性を有する、ポリアンホライト。
    繰り返し構成単位(A);
    一般式(1)
    Figure 2022046945000011
    繰り返し構成単位(B);
    一般式(2)
    Figure 2022046945000012
  2. 下記繰り返し構成単位(C)、下記繰り返し構成単位(D)及び下記繰り返し構成単位(E)を含むポリスチレンベースのポリマーであって、
    前記ポリマー中の繰り返し構成単位(C)が、繰り返し構成単位(C)及び繰り返し構成単位(D)の合計に対して40モル%~60モル%であり、
    前記繰り返し構成単位(E)が、繰り返し構成単位(C)、繰り返し構成単位(D)及び繰り返し構成単位(E)の合計に対して1モル%~30モル%であり、
    前記ポリマー中のアルカリ金属の量、アルカリ土類金属の量又はアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計量が、ポリマー量に対し100ppm以下であり、
    前記ポリマーの分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定される数平均分子量として、500ダルトン~10,000ダルトンである、
    上限臨界溶液温度型の感熱応答性を有する新規なポリスチレンベースのポリアンホライト。
    繰り返し構成単位(C);
    一般式(3)
    Figure 2022046945000013
    繰り返し構成単位(D);
    一般式(4)
    Figure 2022046945000014
    繰り返し構成単位(E);
    一般式(5)
    Figure 2022046945000015
    (式(5)中、RおよびRはそれぞれ水素原子、カルボキシル基又はメチル基を示し、Yはスルホ基、カルボキシル基を示す。)
    及び
    一般式(6)
    Figure 2022046945000016
    (式(6)中、R3は水素原子、又はメチル基を示し、R4はハロゲン原子、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、ハロメチル基を示し、nは0~5の整数を示す。)
    繰り返し構成単位Eは、一般式(5)、一般式(6)のいずれか及びその両方を含んでも良い。
  3. 水に対し、20重量%~70重量%となるように溶解させたとき、20重量%~70重量%のいずれかの濃度において、-5℃から95℃の温度範囲に上限臨界溶液温度(UCST)を有する、請求項1又は請求項2に記載のポリアンホライト。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載した上限臨界溶液温度(UCST)型の感熱応答性を有するポリスチレンベースのポリアンホライトを含む正浸透膜法水処理システム用の駆動溶液。
  5. 下記一般式(7)に示される化合物の水溶液をカチオン交換処理してスチレンスルホン酸水溶液を得、下記一般式(8)に示される化合物で中和処理したスチレンスルホン酸ビニルピリジン塩水溶液の存在下、当該スチレンスルホン酸水溶液を溶液ラジカル重合する、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のポリアンホライトの製造方法。
    一般式(7)
    Figure 2022046945000017
    (式(7)中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムカチオンを示す。)
    一般式(8)
    Figure 2022046945000018
  6. 生成するポリアンホライトに繰り返し構成単位(A)~(E)を供する原料モノマーの合計モル数に対し、0.010モル%~20モル%となるように分子量調節剤(連鎖移動剤)を添加してラジカル重合を行う、請求項5に記載のポリアンホライトの製造方法。
  7. チオリンゴ酸及び/又は3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(チオグリセロール)を分子量調節剤(連鎖移動剤)として用いる、請求項6に記載のポリアンホライトの製造方法。
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