JP2022041904A - ハイメッシュスクリーン紗用芯鞘型複合モノフィラメントおよびその製造方法 - Google Patents

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純史 遠山
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【課題】 本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、細繊度、高強度、高モジュラスであり、印刷乳剤の接着性に優れ、節欠点がなく繊維径の均一性が良好で、目開きの均一性に優れたハイメッシュスクリーン紗が得られ、高精密印刷向けに適したハイメッシュスクリーン紗を提供できる。【解決手段】 芯成分のポリエステルと鞘成分のポリアミドが芯鞘型に複合されたモノフィラメントであって、繊維長手方向100万mに存在する平均繊維直径に対して2μm以上の節について、節の直径の合計(%)が式(1)で表され、繊度が4.0~20.0dtexであり、強度が7.0~9.0cN/dtexであることを特徴とする芯鞘型複合モノフィラメント。【数1】TIFF2022041904000009.tif36170【選択図】 なし

Description

本発明は、印刷乳剤の接着性に優れ、高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗に適した芯鞘型複合モノフィラメントおよびその製造方法に関するものである。
スクリーン紗と呼ばれるモノフィラメントを製織した紗織物は、近年、急成長を続けるエレクトロニクス分野において、プリント回路基板のスクリーン印刷用メッシュクロス用途などに使用されている。
モノフィラメントを製織した紗織物の具体的なスクリーン印刷の用途としては、Tシャツやのぼり旗、看板、自動販売機プレート、車のパネル、屋外・屋内サイン、ボールペン、各種カード類、ネームプレート、スクラッチ、点字、CD・DVD、プリント基板、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどが挙げられる。
なかでも、家電や携帯電話、パソコン向けなどの電子回路の印刷分野などにおいては、近年、印刷精度向上に対する要求が厳しくなってきていることから、メッシュがより細かく、紗張りなどにおいて伸びの少ない寸法安定性に優れたスクリーン紗が要求されてきている。すなわちスクリーン紗用モノフィラメントに対しては細繊度化、高強度、高モジュラスが求められている。
スクリーン紗用モノフィラメントは、強度や寸法安定性の観点から、ポリエステルやポリアミドが多く用いられている。特にポリエステルモノフィラメントは寸法安定性に優れ、高強度、高モジュラスであり、高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗用途に適している。一方で、ポリエステルは、スクリーン紗に印刷パターンを形成するために用いる印刷乳剤との接着性に劣るという課題があった。
この課題を解決する手段として、特許文献1、2では、芯成分にポリエステル、鞘成分にポリアミドを配した芯鞘型複合モノフィラメントが提案されている。芯成分には寸法安定性に優れたポリエステルを有し、鞘成分にはポリアミドを用いることで印刷乳剤との接着性に優れた複合モノフィラメントを得ている。
さらに印刷精度向上に対しては、紗織物の品位の要求レベルも上がっており、繊度斑、節、ヨコヒケや糸削れ等のない品質の均一なモノフィラメントが求められてきている。
モノフィラメント節品位改善技術として、特許文献3では、ポリマー内の未溶融異物に対し、パック入り口から口金吐出口までに濾過層を形成することでその排出を抑制させたり分散させたりする技術が提案されている。さらに、金属線フィルターによる濾過に加えて、略多角形状の断面を有する金属短繊維の焼結フィルターを用いてゲル状物の細分化を図ることで、節品位を改善する技術が提案されている。
溶融ポリマー濾過技術として、特許文献4では円形断面を有する金属繊維を焼結してなるフィルターと多角形断面を有する金属繊維を焼結してなるフィルターのように目的の異なる複数のフィルターを組み合わせることで濾過性能を向上させる技術が提案されている。さらに、特許文献5では、これらの各フィルターの濾過精度を既定することで、被濾過物の捕捉・細分化効率を高める技術が提案されている。
特開平1-132829号公報 特開平3-241011号公報 特開2014-231651号公報 特開平5-253418号公報 特開2015-81399号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の複合モノフィラメントでは、細繊度化により、溶融紡糸するポリマー量が減少するため、ポリマー送液配管内の滞留時間が長くなる結果、ポリマーが受ける熱量が増加し、ポリマー自体の劣化が促進されてしまう。また、ポリエステルとポリアミドの複合紡糸では、ポリアミドよりポリエステルの融点が高く、ポリアミド単独よりも高温で溶融紡糸するため、ポリアミド成分が熱劣化しやすく、節の発生が課題となる。さらには、細繊度化することで、繊維径に対して劣化したゲル化物のサイズ比が相対的に増加するため、従来問題とならなかった微小なゲル化物が節として顕在化する。その結果、細繊度のポリエステル/ポリアミド芯鞘複合モノフィラメントには、節の存在がより顕著に現れる。節は繊維直径より大径であるため、メッシュにおいては、節と隣接した部分の目開きが狭くなる。高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗においては、目開きが狭い織物であり、微小な節であっても目開きの変化率が大きいため、微小な節が数多く存在する場合、印刷精度の極度の悪化を招いていた。
ポリマーの熱劣化を完全に抑制することは困難である。そのため、節の原因となるゲル化物の流出を抑制するためには、濾過フィルターを用いてゲル化物を捕捉・細分化することが有効である。一般的に、フィルターの濾過精度を向上させるためには、その目付を小さくすることが求められる。しかしながらフィルターの目付を単に小さくして濾過精度を向上させただけでは、目詰まりによって異常滞留が発生し、節発生を促進させ易い課題が残存していた。また、単にフィルターの目付を小さくすることで濾過精度を向上させると、パック圧力の上昇を伴い、生産適用が困難となる課題が残存していた。そのため、節の原因となるゲル化物流出を抑制するために、特許文献3、4、5に記載のフィルターを特許文献1、2に記載のポリエステル/ポリアミド芯鞘複合モノフィラメントの溶融紡糸パックに適用しただけでは、高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗に求められる節品位に対しては不十分であり、さらなる改善が求められていた。さらに、前述したとおり、依然として、パック圧力の上昇を伴う生産性低下の課題が残存していた。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、細繊度、高強度、高モジュラスであり、印刷乳剤の接着性に優れ、節の直径が小さく、節の数も少ないことから、目開きの均一性に優れたハイメッシュスクリーン紗が得られる芯鞘型複合モノフィラメントおよびその製造方法を提供することにある。
芯成分のポリエステルと鞘成分のポリアミドが芯鞘型に複合されたモノフィラメントであって、繊維長手方向100万mに存在する平均繊維直径に対して2μm以上の節について、節の直径の合計(%)が式(1)を満足し、繊度が4.0~20.0dtexであり、強度が5.0~9.0cN/dtexであることを特徴とする芯鞘型複合モノフィラメント。
Figure 2022041904000001
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、細繊度、高強度、高モジュラスであり、印刷乳剤の接着性に優れ、節欠点がなく繊維径の均一性が良好であるので、目開きの均一性に優れた高精密印刷向けに適したハイメッシュスクリーン紗を提供できる。
本発明の芯成分のポリエステルは、ポリエチレンレンテレフタレート(以下、PETと称する)を主成分とするポリエステルである。PETとしては、テレフタル酸を主たる酸成分としエチレングリコールを主たるグリコール成分とする、90モル%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるポリエステルを用いることができる。
ただし、10モル%未満の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであっても良い。このような共重合成分としては、例えば、酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、オクトエトキシ安息香酸のような二官能性芳香族カルボン酸、セバシン酸、シュウ酸、アジピン酸、ダイマ酸のような二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボンサン類が挙げられる。例えば、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAや、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどを挙げることができる。
本発明の鞘成分のポリアミド(以下、PAと称する)は、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドが好ましい。ポリカプロアミドはポリカプロアミドを構成するε-カプロラクタム単位を主として含み、ポリヘキサメチレンアジパミドはポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート単位を主として含むポリアミドである。「主として」とは、これらの単位がそれぞれ80モル%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは90モル%以上含有することである。
その他の成分としては、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。
また、艶消剤として二酸化チタン、滑剤としてシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、さらには難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤および着色顔料等を必要に応じてポリエステルおよびポリアミドに添加することができる。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、芯成分にポリエステル、鞘成分にポリアミドで構成される。その繊維横断面は芯成分が鞘成分により覆われ、芯成分が表面に露出しないように配置された芯鞘型複合モノフィラメントである。かかる構成とすることにより、高精度印刷用モノフィラメントとして要求される、高強度・高モジュラス、かつ優れた印刷乳剤の接着性を実現できる。ここで芯鞘型とは芯成分が鞘成分により完全に覆われていれば良く、必ずしも同心円状に配置されている必要はない。なお、断面形状については丸、扁平、三角、四角、五角などの形状があるが、スクリーン紗の目開きの均一性の観点から丸断面が好ましい。
また、芯成分のポリエステルは芯鞘型複合モノフィラメントの強度、モジュラスを主に担うため、添加される二酸化チタンに代表される無機粒子の添加物は0.5wt%未満であることが好ましい。一方、鞘成分のポリアミドは芯鞘型複合モノフィラメントの耐摩耗性を主として担うため、二酸化チタンに代表される無機粒子を0.1~0.5wt%程度添加させることが好ましい。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの芯成分:鞘成分の複合比は70:30~40:60とすることが好ましい。芯成分がポリエステル、鞘成分がポリアミドであり、異なるポリマーを用いているため、芯成分比率が70を超えると、複合界面での剥離が起こりやすくなる。一方、芯成分比率が40未満となると十分な強度・モジュラスが得られない。より好ましい複合比は、60:40~40:60である。ここでいう、複合比とは、繊維横断面において芯鞘型複合モノフィラメントを構成する2種のポリマー成分の横断面積比率である。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの芯成分のポリエステルの固有粘度は、0.65~1.45であることが好ましい。なお、芯鞘型複合モノフィラメントの芯成分のポリエステルの固有粘度は、実施例記載の方法により鞘成分のポリアミドを溶出させた後、残ったポリエステルを測定することで得られる。固有粘度を0.65以上とすることにより、高い強度、モジュラスを兼ね備えた芯鞘型複合モノフィラメントが得られる。さらに、芯成分がポリエステル、鞘成分がポリアミドであり、異なるポリマーを用いているため、延伸倍率を大きくすると延伸応力により複合界面での歪みが大きくなり、複合界面での剥離が起こりやすくなる。固有粘度を0.65以上とすることにより、延伸倍率を低くしても、高い強度、モジュラスを得やすく、複合界面の剥離が起きにくい点で好ましい。より好ましい固有粘度は0.70以上である。また、固有粘度の上限は溶融押出し等の成形の容易さの点から1.40以下が好ましく、さらに製造コストや工程途中の熱や剪断力によって起きる分子鎖切断による分子量低下の影響を考慮すると、より好ましくは1.15以下である。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの繊度は、4.0~20.0dtexである。かかる範囲とすることにより、高精密印刷に適したスクリーン紗が得られる。繊度が20.0dtexより大きくなると、ハイメッシュスクリーン紗が得られず、印刷精度に劣る。また、繊度の下限としては、製織性、特にスルーザー型織機における緯糸の飛送性の点で4.0dtex以上である。また、細繊度化により、繊維径に対して劣化したゲル化物のサイズ比が相対的に増加する。そのゲル化物が節として顕在化するため、節品位の観点から、好ましくは6.0~15.0dtexである。
スクリーン印刷では、一般的に印刷パターンの精度を向上させるために、紗張りテンションを高くし、スクリーン紗と被印刷物の距離を小さくする方法が採られている。紗張りの際、テンションを高くするためにはポリエステルモノフィラメント1本あたりの強力を向上させる。特に、高精密印刷用スクリーン紗としての要求は厳しく、細繊度でハイメッシュ、すなわち、織密度の高いメッシュ織物を要求している。製織過程で糸にかかる張力は必ずしもその繊度に比例するわけではなく、モノフィラメント1本当たりの強力が高いことが必要である。細くなればなるほど、強力は低下するため、より強度の高いものとする必要がある。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの強度は、5.0~9.0cN/dtexである。強度が5.0cN/dtex未満の場合、紗張り後、紗伸びなど発生し、寸法安定性が低下し、目ずれが発生しやすくなるため、紗の目開き均一性が損なわれる。また、スクリーン紗の強度も不足する。高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗の場合、強度を6.0cN/dtex以上とすることが好ましい。また、強度の上限値は、耐スカム性の点で配向や結晶化度を抑える必要があるため、9.0cN/dtex以下である。好ましくは、強度8.0cN/dtex以下である。
本発明の芯鞘複合型複合モノフィラメントの伸度は、20%以上とすることで製織時の糸切れを抑制することができ、取り扱い性にも優れ、40%以下とすることで、目的の強度が得られるため、好ましい。より好ましい伸度の範囲は25~35%である。
糸の破断とは、強度と伸度によって決定されるものであり、定応力的な変形に関しては強度、定長的な変形に関しては伸度が係わるため、例え前述の強度5.0cN/dtexを達成していたとしても、伸度が小さければ糸は脆く破断し易いものと言える。
従って、破断に対する耐性としては強度・伸度のいずれかではなく、いずれも加味したパラメーターで表現することができる。例えば引張試験の応力―歪曲線における、破断に至るまでの曲線の積分値がそれに相当するが、簡便的な指標としてタフネス(強度×伸度0.5)を用いればそれと良い相関を示す。 本発明の芯鞘型複合モノフィラメントをスクリーン紗とし、スクリーン紗として印刷に耐えうるものとするには、タフネスは30以上が好ましい。より好ましくは35以上である。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの5%伸長時の強度は、2.5~4.0cN/dtexが好ましい。紗張り後、紗伸びなどの発生を抑制し、スクリーン紗の寸法安定性の低下を防止したり、目ずれの発生を抑制し、紗の目開き均一性を図るため、5%伸長時の強度は2.5cN/dtex以上が好ましい。より好ましくは10%伸長時の強度3.0cN/dtex以上とするのがよい。5%伸長時の強度の上限値は、耐スカム性の点で配向や結晶化度を抑える必要があるため、4.0cN/dtex以下が好ましい。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの10%伸長時の強度は、4.0~6.5cN/dtexが好ましい。紗張り後、紗伸びなどの発生を抑制し、スクリーン紗の寸法安定性の低下を防止したり、目ずれの発生を抑制し、紗の目開き均一性を図るため、10%伸長時の強度は4.0cN/dtex以上が好ましい。より好ましくは10%伸長時の強度4.5cN/dtex以上とするのがよい。10%伸長時の強度の上限値は、耐スカム性の点で配向や結晶化度を抑える必要があるため、6.5cN/dtex以下が好ましい
ハイメッシュスクリーン紗は、目開きの間隔が短い織物であるため、節の直径を小さくし、節の数も少なくすることが必要である。従来は、繊維径×1.1倍のスリットガイドにモノフィラメントを通し、断糸した回数を節の数と見なしていたが、更に高度な繊維径の均一性を得るために鋭意検討した結果、本発明の節の直径および節の個数が特定範囲内のとき、生機にしたときの目開きのバラツキが小さくなり、印刷精度に優れたスクリーン紗が得られることを見出した。すなわち、本発明のスクリーン紗用芯鞘型複合モノフィラメントは、該モノフィラメントの繊維長手方向100万mに存在する平均繊維直径+2μm以上の箇所、すなわち節について、節の直径の合計(%)が下式(1)を満たす。
Figure 2022041904000002
式(1)は、平均繊維直径X’における節の直径Xの増加率を示しており、大きな節が存在するとき式(1)の値は増加する。また、式(1)は、繊維長手方向100万mに存在する節の直径Xの増加率を足し合わせており、節が多いとき式(1)の値は増加する。すなわち、節の径が小さく、節の数も少ないことが重要である。本発明の複合ポリエステルモノフィラメントは、式(1)左辺が30000以下であると、モノフィラメントの均一性が良好となり、生機にしたときに目開きの均一性に優れたハイメッシュスクリーン紗を得ることができる。好ましくは式(1)左辺は20000以下、より好ましくは10000以下である。
次いで、本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの好ましい製造方法について説明する。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、芯成分にポリエステル、鞘成分にポリアミドを配する。かかる構成とすることにより、高精密印刷用モノフィラメントとして要求される、高強度、高モジュラス、優れた印刷乳剤の接着性を実現できる。
芯成分のポリエステルの固有粘度は、0.70~1.50であることが好ましい。固有粘度を0.70以上とすることにより、高い強度、モジュラスを兼ね備えた芯鞘型複合モノフィラメントが得られる。より好ましい固有粘度は0.80以上である。また、固有粘度の上限は溶融押出し等の成形の容易さの点から1.50以下が好ましく、さらに製造コストや工程途中の熱や剪断力によって起きる分子鎖切断による分子量低下の影響を考慮すると、より好ましくは1.20以下である。
鞘成分のポリアミドの相対粘度は、2.0~3.3であることが好ましい。かかる範囲とすることでスクリーン紗に要求される強度、タフネスが得られ、また安定した製糸性が得られるため好ましい。より好ましい相対粘度は2.4~3.0である。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、芯成分であるポリエステルと鞘成分であるポリアミドをそれぞれ溶融して、複合紡糸機を用いて、所定の複合紡糸パックに送り、パック内で両ポリマーを濾過した後、紡糸口金で芯鞘型に貼り合わせて複合紡糸することで得られる。紡糸口金から吐出された糸条を一旦未延伸糸として巻き取り、その後延伸を行う2工程法、紡糸口金から吐出された糸条を一旦巻き取ることなく引き続き延伸を行う直接紡糸延伸法などいずれの製法によっても製造することができる。
本発明の芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法においては、それぞれ溶融したポリマーにおいて、溶融紡糸パック内に設置した円形断面を有する金属短繊維が焼結されてなる不織布フィルター層(以下、ゲル捕捉フィルター)と多角形断面を有する金属短繊維が焼結されてなるフィルター層(以下、ゲル細分化フィルター)を設置した溶融紡糸パック内で濾過するのが好ましい。金属短繊維の断面が異なる2種類のフィルター層によって、溶融ポリマー中に発生したゲル状物の捕捉と細分化が可能となり、節の直径と個数(式(1))を減らすことができ、モノフィラメントの均一性が良好となる。
製造方法の特徴の第一は、溶融ポリマーにおいて、溶融紡糸パック内に設置したゲル細分化フィルターを通過させることで、ポリマーの熱劣化によって発生するゲル状物を紡出前に裁断・細分化することにある。
ゲル細分化フィルターの濾過精度は、40μm以下である。かかる範囲とすることで、節の直径と個数(式(1))を満たし、モノフィラメントの均一性が良好となる。濾過精度が粗く40μmを超える場合、細分化されずに通過するゲル状物のサイズが大きくなり、またその量が増加するため、節の直径と個数(式(1))を満たさず、モノフィラメントの均一性を得ることができない。なお、濾過精度40μmとは40μm以上のゲル状物(異物)を98%以上除去する性能を有するということである。さらに好ましくは、30μm以下である。また、好ましい濾過精度の上限は、フィルターでの目詰まりによって異常滞留が発生することで、ゲル状物を裁断、細分化する、ゲル状物の細分化効果が不十分となることを考慮すると5μm以上であり、さらに、パック圧力の観点から7μm以上である。
さらにゲル細分化フィルターの厚みを2mm以上とすることで、濾過流路が長くなり、十分なゲル状物の細分化効果が得られ、節の直径と個数(式(1))を満たし、モノフィラメントの均一性が良好となる。厚み2mm未満の場合、濾過流路が短くなり、十分なゲル状物の細分化効果が得られず、節の直径と個数(式(1))を満たさず、モノフィラメントの均一性を得ることができない。また、厚くすればゲル状物の細分化効果は向上するもののパック圧力も上昇するため、好ましい厚みの上限は、パック圧力の観点から3mm以下である。
ゲル細分化フィルターを構成する金属短繊維の断面形態は多角形状である。多角形断面を有する金属短繊維を用いることによって金属繊維相互の絡み合いが発生し濾過性や分散性が向上する。多角形断面の金属短繊維を積層して焼結することで形成される空隙部によりゲル状物を細かく分散させることができ、さらに鋭角な断面形状とすることによりポリマーの熱劣化によって発生するゲル状物を裁断、細分化する、ゲル状物の細分化効果が得られる。
ゲル状物の細分化効果は、単に円形断面の金属短繊維が焼結されてなるフィルター層のみでは得られない。円形断面の金属短繊維が焼結されてなるフィルターの目付を細かくするだけでは十分に実現されず、目詰まりによってさらなるパック圧の上昇を招くのみである。金属短繊維の断面形態を多角形状とすることで、濾過精度の低い(目付の粗い)フィルターであっても、十分なゲル状物の細分化効果を発揮することができ、節の直径と個数(式(1))を満たし、モノフィラメントの均一性が良好となる。
この多角形断面を有する金属短繊維は、びびり振動切削法によって作ることができる。更に金属短繊維のアスペクト比を10~100とすることによって金属短繊維相互の絡みつきがより強固となる。アスペクト比は、(金属短繊維の長さ)/(金属短繊維の直径)で算出される値である。具体例としてはステンレス繊維で長さ1.0~3.0mm、換算直径30~60μmのものが挙げられる。
製造方法の特徴の第二は、芯成分および鞘成分、それぞれの溶融ポリマーにおいて、溶融紡糸パック内に設置したゲル捕捉フィルターを通過させることで、ポリマーの熱劣化によって発生するゲル状物を十分に捕捉することである。
ゲル捕捉フィルターの濾過精度は、10μm以下である。かかる範囲とすることで、節の直径と個数(式(1))を満たし、モノフィラメントの均一性が良好となる。濾過精度が10μmを超える場合、捕捉されずに通過するゲル状物のサイズが大きくなり、またその量が増加するため、節の直径と個数(式(1))を満たさず、モノフィラメントの均一性を得ることができない。さらに好ましくは、7μm以下である。また、好ましい濾過精度の上限は、フィルターでの目詰まりによって異常滞留が発生し、ゲル状物の捕捉効果が不十分となることを考慮すると5μm以上であり。また、パック圧力の観点からも5μm以上である。なお、ゲル状物の細分化効果に主目的をおいた前記ゲル細分化フィルターよりも濾過精度の小さいフィルターとすることがより好ましい。
さらにゲル捕捉フィルターの厚みを1mm以上とすることで、濾過流路が長くなり、十分なゲル状物の捕捉効果が得られ、節の直径と個数(式(1))を満たし、モノフィラメントの均一性が良好となる。厚み1mm未満の場合、濾過流路が短くなり、十分なゲルの捕捉効果が得られず、節の直径と個数(式(1))を満たさず、モノフィラメントの均一性得ることができない。また、厚くすればゲル状物の補捉効果が向上するものの、パック圧力も上昇するため、好ましい厚みの上限は、パック圧力の観点から1.4mm以下である。
前記金属短繊維の断面形状が異なる2種類のフィルター層は、それぞれ、ゲル状物の「捕捉」と「細分化」の別々の効果を発揮するため、フィルター層の順番は効果に大きく影響するものでは無いが、より好ましくは、ゲル捕捉フィルターを上流に設置するとよい。ゲル捕捉フィルターを上流側に設置することにより、大きなサイズのゲル状物を濾過精度の高いゲル捕捉フィルターによって確実に捕捉し、ゲル捕捉フィルターにて捕捉仕切れなかったゲル状物を、下流に設置したゲル細分化フィルターにて裁断し細分化せしめることによって、より効率的にゲル状物の捕捉・細分化を進行させることができるためである。ただし、節抑制の効果は、ゲル捕捉フィルターを上流に設置した場合に優れるものの、ゲル捕捉フィルターを下流とする場合に比べて、パック圧力上昇を伴い製糸性を損なうことがある。その場合、フィルター形状を波型形状に加工し、通常の平断面フィルター対比、濾過面積を増加させたフィルターを用いることが好ましく、フィルターの異物保持容量が増加し、パックの圧力上昇を低減させることで生産適用が可能になる。
ポリエステルとポリアミドとの複合紡糸では、ポリアミドよりポリエステルの融点が高く、ポリアミド単独よりも高温で溶融紡糸することになるため、ポリアミド成分が熱劣化しやすい。高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗用モノフィラメントの高い要求に対して、従来のような濾過精度を向上させるために、目付の高い濾過フィルターのみを使用する一般的な手法では、パック圧力上昇、溶融ポリマーの異常滞留など生産難易度が極端に増し、生産性低下を招いていた。そのため、本発明者らは、品質面と生産性両面から鋭利検討した結果、上述したとおり、ゲル化物の細分化と補足と目的の異なる濾過フィルターを用い、それぞれの濾過フィルターの厚み(濾過流路長)を規定することで、濾過精度向上と生産性の両立を実現した。
その結果、本発明の芯鞘型複合モノフィラメントは、細繊度・高強度・高モジュラスであり、優れた印刷乳剤の接着性を持ち、節の直径が小さく、節の数が少ない、モノフィラメントの均一性に非常に優れており、スクリーン紗としたときに節欠点などの問題がなく、目開きが均一で優れた紗品位となり、高精密印刷用ハイメッシュスクリーン紗に好適に用いることができる。
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例の測定値は、次の方法で測定した。
(1)繊度
糸条を500mかせ取り、かせの質量(g)に20を乗じた値を繊度とした。
(2)平均繊維直径
下式を用いて算出した。
Figure 2022041904000003
(3)節の直径と個数(式(1)合計(%))
(A)クリールにパッケージを24個仕掛ける。
(B)750m/分の速度で糸を解舒し、光学式の外形測定器(sensoptic社製 PSD-200)に通す。
(C)糸長2.66m間隔で繊維直径を測定する。測定は20分間行う。なお、平均繊維直径に対して2μm以上増加した測定値1つにつき、1つの節とみなす。
(D)測定終了後、クリールに仕掛けたパッケージ24個を別のパッケージ24個と入れ替える。
(E)(B)~(D)を合計3回繰り返し、測定結果から、平均繊維直径に対して2μm以上の節について、その直径をXとして、下式(1)で合計(%)を算出する。なお上記の測定の場合、合計の測定長は108万mになるので、100万mあたりとなるように換算する。式(1)が小さいほど、節品位は良好である。
Figure 2022041904000004
(4)ポリエステルの固有粘度
定義式のηr(PET)は、25℃の温度の純度98%以上のo-クロロフェノール(以下、OCPと略記する。)10mL中に試料を0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いてポリエステルの相対粘度ηr(PET)を下式により求め、固有粘度を算出した。
ηr(PET)=ηPET/η=(tPET×dPET)/(t×d
固有粘度=0.0242ηr(PET)+0.2634
ここで、ηPET:ポリエステル溶液の粘度、η:OCPの粘度、tPET:ポリエステル溶液の落下時間(秒)、dPET:ポリエステル溶液の密度(g/cm)、t:OCPの落下時間(秒)、d:OCPの密度(g/cm)。
(5)芯鞘型複合モノフィラメントの芯成分のポリエステルの固有粘度
以下の方法で鞘成分のポリアミドを溶出し、残ったポリエステル成分を上記(4)の方法で測定した。
(a)25℃の温度の15%塩酸500mLに試料を入れ、完全に浸漬させる。
(b)浸漬中は1時間おきに試料を5分間攪拌する。
(c)3時間浸漬後、試料を取り出し、水1Lに投入する。
(d)炭酸ナトリウムを攪拌しながら加え、pH試験紙でpHを確認し、中和(pH6~8)になるまで、炭酸ナトリウムの追加、攪拌を繰り返す。
(e)中和が確認できた後、流水で十分に水洗し、試料は自然乾燥させる。
(6)ポリアミドの相対粘度
定義式のηr(PA)は、25℃の温度の98%濃硫酸100mL中に試料を1.0g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いてポリアミドの相対粘度ηr(PA)を下式により求めた。
ηr(PA)=ηPA/η=(tPA×dPA)/(t×d
ここで、ηPA:ポリアミド溶液の粘度、η:濃硫酸の粘度、tPA:ポリアミド溶液の落下時間(秒)、dPA:ポリアミド溶液の密度(g/cm)、t:濃硫酸の落下時間(秒)、d:濃硫酸の密度(g/cm)。
(7)強度(cN/dtex)、伸度(%)、5%および10%伸長時の強度(モジュラス)(cN/dtex)、タフネス
JIS L1013(2010)に従い、オリエンテック製テンシロンUCT-100を用いて測定した。
(8)スクリーン紗の欠点数(紗品位)
経糸、緯糸共に本発明の各実施例および各比較例の芯鞘型複合モノフィラメントを用いて、スルーザー型織機により織機の回転数200回転/分として#400(経密度:400本/2.54cm、緯密度:400本/2.54cm)または#300(経密度:300本/2.54cm、緯密度:300本/2.54cm)、織幅1.8mのスクリーン紗を
製織した。なお芯鞘型複合モノフィラメントの繊度が13dtex以下の場合は#400、13dtexより大きい場合は#300とした。その後、得られたスクリーン紗を検反機にセットし、目視にてスクリーン紗の欠点数(目開き異常部分の個数)をカウントした。目開きの異常部分が存在する場合、メッシュ開口が拡がり織物上に黒いスジとして現れるため、織物の黒いスジが確認された部分を欠点数としてカウントし、織物1mあたりの欠点数が0.010個以下の場合をA、0.030個以下の場合をB、0.050個以下の場合をC、0.050個を超える場合をDとし、判定A、Bを合格とした。
(9)スクリーン紗の界面剥離評価(紗品位)
(8)で得られたスクリーン紗を透過顕微鏡にて界面剥離を確認した。経糸および緯糸をそれぞれ30本ずつの範囲を確認し、界面剥離がない場合をAとした。また、軽微な界面剥離の場合には、繊維内部の芯鞘界面部分に黒い筋状の欠点が見られ、1箇所以上ある場合をBとし、軽微な剥離は、スクリーン紗の性能にはほとんど影響しないことから合格とした。鞘部が完全に剥離した欠点が1箇所でもある場合はCとし、不合格とした。 (実施例1)
芯成分として固有粘度0.80のPETと鞘成分として相対粘度2.6のナイロン6とを、エクストルーダーを用いてそれぞれ295℃、275℃の温度で溶融後、ポリマー温度280℃で、複合比が芯成分:鞘成分=50:50となるように芯成分の単吐出孔当たりの吐出量は1.87g/分、鞘成分は1.45g/分でポンプ計量を行い、芯鞘型となるよう公知の複合口金に流入させた。
溶融ポリマーにおいて、溶融紡糸パック内に設置した多角形断面を有する金属短繊維が焼結されてなるゲル細分化フィルター(濾過精度40μm、厚み2mm)層を通過させることでポリマーの熱劣化によって発生するゲル状物を細分化し、また、前記ゲル細分化フィルターで細分化仕切れなかったゲル状物をその下流に設置した円形断面を有する金属短繊維が焼結されてなるゲル捕捉フィルター(濾過精度10μm、厚み1.4mm)層を通過させることで、ゲル状物を十分に捕捉せしめた。
紡糸口金から吐出された芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを紡糸口金直下の雰囲気温度が290℃となるよう、加熱体により積極的に加熱保温し、その後、糸条冷却送風装置により冷却し、油剤付与装置により仕上げ剤を付与した後、700m/分の速度で引き取り、一旦巻き取ることなく4.8倍にて延伸し、150℃にて熱セットを行い、最後に2.0%にリラックス処理にて巻き取ることで、繊度が10.0dtex、強度が7.1cN/dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得た。
この芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表1のとおりであり、高強度、高モジュラスであり、優れた節品位を有していた。また、該芯鞘型複合モノフィラメントを用いたスクリーン紗の欠点数は、0.005個/mと非常に良好であった。界面剥離評価でも剥離は見られず、良好な結果であった。
(実施例2-4)
ポリマー吐出量を変えて繊度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして13.0dtex、17.8dtex、6.0dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表1のとおりであり、実施例2、3の節品位は実施例1より優れ、また、スクリーン紗の欠点数もぞれぞれ0.003個/m、0.002個/mと実施例1より優れる結果であった。実施例4の節品位は実施例1に一歩譲る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.014個/mと実施例1には劣るが、十分に実用可能なレベルであった。実施例2-4のいずれも、界面剥離評価で剥離は見られず、良好な結果であった。
(実施例5)
ポリマー吐出量を芯成分が1.70g/分、鞘成分が1.32g/分、延伸倍率を4.3倍とし、0.5%のリラックス処理とした以外は、実施例1と同様にして、強度が6.0cN/dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表1のとおりであり、節品位は実施例1と同等であり、また、スクリーン紗の欠点数も0.005個/mと非常に良好であった。界面剥離評価でも剥離は見られず、良好な結果であった。
(実施例6)
芯成分のPETの固有粘度を1.00と変更し、ポリマー吐出量を芯成分が2.07g/分、鞘成分が1.06g/分、延伸倍率を5.2倍とした以外は、実施例1と同様にして、強度が8.1cN/dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表1のとおりであり、節品位は実施例1に一歩譲る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.013個/mと実施例1には劣るが、十分に実用可能なレベルであった。界面剥離評価でも剥離は見られず、良好な結果であった。
(実施例7)
ポリマー吐出量を芯成分が1.99g/分、鞘成分が1.04g/分とし、複合比が芯成分:鞘成分=60:40となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表1のとおりであり、強度が6.6cN/dtexと実施例1よりは低めとなった。実施例1よりも鞘成分の吐出量が少ないため、節品位は実施例1に一歩譲る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.011個/mと実施例1には劣るが、十分に実用可能なレベルであった。界面剥離評価では軽微な界面剥離があり、実施例1には劣るが、十分に実用可能なレベルであった。
(実施例8)
芯成分として固有粘度0.70のPETを用い、延伸倍率を5.1倍に変更した以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表1のとおりであり、強度が6.7cN/dtexと実施例1よりは低めとなった。節品位は実施例1より優れ、また、スクリーン紗の欠点数も0.004個/mと実施例1より優れる結果であった。界面剥離評価では軽微な界面剥離があり、実施例1には劣るが、十分に実用可能なレベルであった。
Figure 2022041904000005
(実施例9、10)
ゲル捕捉フィルター濾過精度と厚みを変更した以外は実施例1と同様にして、繊度が10.0dtex、強度が7.1cN/dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた複合モノフィラメントの物性は表2のとおりであり、実施例9、10の節品位は実施例1より優れ、また、スクリーン紗の欠点数も共に0.003個/mと実施例1より優れる結果であった。界面剥離評価でも剥離は見られず、良好な結果であった。
(比較例1、2)
ゲル捕捉フィルター濾過精度と厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表2のとおりであり、比較例1は濾過が粗くなったことで、捕捉されずに通過するゲル状物のサイズが大きくなり、またその量が増加し、節品位は実施例1対比劣位な結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.032個/mと実施例1に劣る結果となった。比較例2は濾過流路が短くなったことで、補捉されずに通過するゲル状物の量が増加し、節品位は実施例1に劣る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.036個/mと実施例1に劣る結果となった。一方で界面剥離評価では剥離は見られず、良好な結果であった。
(比較例3)
ゲル捕捉フィルターを用いず、ゲル細分化フィルターのみとした以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表2のとおりであり、捕捉されずに通過するゲル状物のサイズが大きくなり、またその量が増加し、節品位は実施例1対比大幅に劣る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.240個/mと実施例1よりも極めて劣位であった。さらに界面剥離評価では、節欠点を起点とする鞘の剥離が見られた。
Figure 2022041904000006
(実施例11、12)
ゲル細分化フィルターの濾過精度と厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた複合ポリエステルモノフィラメントの物性は表3のとおりであり、実施例11、12の節品位は実施例1対比優れる結果であった。また、スクリーン紗の欠点数もそれぞれ0.004個/m、0.003個/mと実施例1より優れる結果であった。界面剥離評価でも剥離は見られず、良好な結果であった。
(実施例13)
ゲル捕捉フィルターを上流側、ゲル細分化フィルターを下流側と、順番を逆転したこと以外は、実施例1と同様にして芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表3のとおりであり、節品位は実施例1対比優れる結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.003個/mと実施例1より優れる結果であった。界面剥離評価でも剥離は見られず、良好な結果であった。
(比較例4,5)
ゲル細分化フィルター濾過精度や厚みを変更した以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られたポリエステルモノフィラメントの物性は表3のとおりであり、比較例4,5の節品位は実施例1対比劣位なものであった。また、スクリーン紗の欠点数もそれぞれ0.031個/m、0.033個/mと実施例1に劣る結果となった。一方で界面剥離評価では剥離は見られず、良好な結果であった。
(比較例6)
ゲル細分化フィルターの焼結した金属短繊維の多角形断面を円形断面に変更した以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表3のとおりであり、円形断面であるためにゲルの細分化が不十分となり、ゲル状物のサイズが大きくなり、またその量が増加し、節品位は実施例1対比大幅に劣る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.229個/mと実施例1よりも極めて劣位であった。さらに界面剥離評価では、節欠点を起点とする鞘の剥離が見られた。
(比較例7)
ゲル細分化フィルターを用いず、ゲル捕捉フィルターのみとした以外は、実施例1と同様にして、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。得られた芯鞘型複合モノフィラメントの物性は表3のとおりであり、ゲルの細分化の効果がないために、ゲル状物のサイズが大きくなり、またその量が増加し、節品位は実施例1対比大幅に劣る結果であった。また、スクリーン紗の欠点数も0.277個/mと実施例1よりも極めて劣位であった。さらに界面剥離評価では、節欠点を起点とする鞘の剥離が見られた。
Figure 2022041904000007

Claims (3)

  1. 芯成分のポリエステルと鞘成分のポリアミドが芯鞘型に複合されたモノフィラメントであって、繊維長手方向100万mに存在する平均繊維直径に対して2μm以上の節について、節の直径の合計(%)が式(1)を満足し、繊度が4.0~20.0dtexであり、強度が5.0~9.0cN/dtexであることを特徴とする芯鞘型複合モノフィラメント。
    Figure 2022041904000008
  2. 芯成分と鞘成分の横断面積比率が70:30~40:60であることを特徴とする請求項1記載の芯鞘型複合モノフィラメント
  3. 芯成分にポリエステル、鞘成分にポリアミドを配する芯鞘型複合モノフィラメントの溶融紡糸方法において、それぞれの溶融ポリマーを、下記A,Bの異なる2種類のフィルター層で濾過して、紡糸口金から紡出する請求項1または2記載の芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法。
    A.円形断面を有する金属短繊維が焼結されてなるフィルター層であって、濾過精度が10μm以下、かつその厚みが1mm以上の不織布フィルター
    B.多角形断面を有する金属短繊維が焼結されてなるフィルター層であって、濾過精度が40μm以下、かつその厚み2mm以上のフィルター
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