JP2022041866A - シール部材及びその製造方法、圧力調整機構、液体吐出ヘッド、並びに液体吐出装置 - Google Patents

シール部材及びその製造方法、圧力調整機構、液体吐出ヘッド、並びに液体吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧力調整機構でのバルブなどとして使用されるシール部材であって、高強度のベース部材を有するとともに信頼性の高いシール部材を提供する。【解決手段】環状の突起として形成された環状当接部(バルブ先端部501)を有する弾性部材(バルブ部407)と、ベース部材(レバー部503)によってシール部材を構成する。弾性部材は、環状当接部から延びる管状の被保持部505がベース部材に形成された環状溝によって保持されることによってベース部材に固定される。環状溝535の幅513よりも、環状溝535がベース部材の深さ方向に沿って被保持部505を保持している長さである保持長さ514の方を長くする。【選択図】図18

Description

本発明は、例えば圧力調整機構においてバルブとして使用可能なシール部材及びその製造方法と、このシール部材を用いた圧力調整機構、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置とに関する。
インクジェット記録装置に代表される液体吐出装置には、装置内で液体が循環するものがある。装置内で液体を循環させる場合、循環する液体の圧力を制御する圧力調整機構が設けられる。特許文献1に開示される液体吐出装置は、背圧を一定に保つようにした背圧型の圧力調整機構を備えている。背圧型の圧力調整機構は、可撓性部材で流体的にシールされた第一圧力室と、第一圧力室の下流側に設けられた第二圧力室と、第一圧力室と第二圧力室との間の流抵抗を可変にするバルブと、第一圧力室内の液体の増減に応じて変位する受圧板とを有する。バルブは、第一圧力室内に設けられるとともに、受圧板の変位に応じてその弁体が移動して第一圧力室から第二圧力室に流れる液体の流抵抗を変化させ、それにより、第一圧力室の圧力すなわち背圧を一定に保つ機能を保つように動作する。
特開2017-124620号公報
圧力調整機構において、バルブは、受圧板の変位に応じて移動するベース部材に対して弁体となる弾性部材を接合したシール部材として構成されるが、弾性部材とベース部材との間には大きな引き剥がし力が加わる。接着剤によって弾性部材をベース部材に接合した場合には十分な信頼性が得られず、二色成形によって弾性部材とベース部材とを組立成形してバルブを製造するときは、ベース部材に高強度の材料を使用しにくくなる。
本発明の目的は、例えば圧力調整機構などにおいて使用されるシール部材であって、高強度のベース部材を有して信頼性の高いシール部材及びその製造方法と、このシール部材を用いた圧力調整機構、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置とを提供することにある。
本発明のシール部材は、環状の突起として形成された環状当接部を有する弾性部材と、弾性部材が固定されるベース部材と、を有し、弾性部材は、環状当接部から延びる管状の被保持部がベース部材に形成された環状溝によって保持されることによってベース部材に固定され、環状溝の幅よりも、環状溝がベース部材の深さ方向に沿って被保持部を保持している長さである保持長さの方が長く、弾性部材は、環状当接部の外方に向かって環状当接部及び被保持部から延びる補強部を有し、補強部の少なくとも一部はベース部材に形成された溝によって保持されていることを特徴とする。
本発明のシール部材の製造方法は、本発明のシール部材を製造するシール部材の製造方法であって、金型内において弾性部材とベース部材とを射出成形により一体に組立成形することを特徴とする。
本発明の圧力調整機構は、液体を収納し、外壁の少なくとも一部が可撓性フィルムで形成された液体収納室と、液体収納室に連通する開口と、可撓性フィルムの変位に応じて変位する押圧板と、液体収納室を拡張させる方向に押圧板を付勢する第一付勢部材と、本発明のシール部材と、を有し、シール部材は、押圧板の変位に応じてシール部材の弾性部材と開口との距離が変化して開口を流れる液体に対する流抵抗が変化するように配置され、液体収納室における液体の圧力が調整されることを特徴とする。
本発明の液体吐出ヘッドは、吐出口と、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子と、記録素子を内部に備える圧力室と、を備える複数の記録素子基板と、複数の記録素子基板と連通する一対の共通流路と、一対の共通流路のうち一方の共通流路と他方の共通流路とを接続し、複数の圧力室と各々連通する複数の個別流路と、一対の共通流路における各々の上流側又は下流側に接続され、互いに異なる圧力に設定される本発明の圧力調整機構と、を有することを特徴とする。また本発明の液体吐出装置は、液体を収容する液体収容容器と、一対の本発明の液体吐出ヘッドと、一対の共通流路を含む循環経路に液体を循環させる循環機構と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、例えば圧力調整機構において使用されるシール部材であって、高強度のベース部材を有して信頼性の高いシール部材及びその製造方法と、このシール部材を用いた圧力調整機構、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置とを得ることができる。
液体吐出装置の概略構成を示す図である。 第一循環形態を説明する図である。 第二循環形態を説明する図である。 液体吐出ヘッドへの液体の流入量を説明する図である。 液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。 液体吐出ヘッドを示す分解斜視図である。 各流路部材の表面及び裏面の構成を示す図である。 各流路の接続関係を示す透視図である。 流路構成部材及び吐出モジュールを示す断面図である。 吐出モジュールを説明する図である。 記録素子基板の構成を示す図である。 第三循環形態を示す図である。 背圧型の圧力調整機構を示す図である。 図13に示す圧力調整機構の断面図である。 本発明に基づくシール部材の一例であるバルブを示す斜視図である。 押圧板の傾きを示す模式断面図である。 押圧板及びバルブの移動を示す断面図である。 圧力調整機構におけるバルブの近傍を示す断面図である。 バルブの成形を説明する断面図である。 環状当接部を示す拡大斜視図である。 樹脂導入路を設けない場合のバルブの成形を説明する断面図である。 減圧型の圧力調整機構を示す図である。 図22に示す圧力調整機構で用いられるバルブを示す図である。 キャップ部材を示す図である。
図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。本発明に基づくシール部材は、高い剛性を有する材料からなるベース部材に対して柔軟な材料からなる弾性部材を接合させたものであり、弁などにおいて必要に応じて気密状態を作り出したり流抵抗を変化させたりするためのものである。弾性部材は、例えば、液体が流通する開口の周囲の面に必要に応じて当接して気密状態を維持する機能を有する。このようなシール部材は、例えば、背圧弁機構あるいは減圧弁機構を有する圧力調整機構においてバルブとして使用されたり、逆止弁などにおいて流体の流通方向の規制に用いられたり、ガスケットとして流体の漏洩を防ぐために用いられる。さらには、特定の領域が大気にさらされないように、その領域を必要に応じて気密の覆うためにも用いられる。以下では、本発明に基づくシール部材が圧力調整機構におけるバルブとして用いられる場合を中心に説明する。最初に、本発明の理解のために、圧力調整機構が用いられる機器の一例である液体吐出装置についてまず説明を行う。もちろん、本発明に基づく圧力調整機構が適用可能な機器は、液体吐出装置に限定されるものではない。
(液体吐出装置)
液体吐出装置は、吐出口から液体を吐出するものであり、液体吐出装置の一例として、吐出口からインクなどの記録液を用紙などの記録媒体に吐出して、記録媒体上に画像などを記録するインクジェット記録装置がある。図1は、記録媒体2に液体を吐出して記録媒体2上に記録を行うインクジェット記録装置として構成された液体吐出装置2000の概略構成を示している。液体吐出装置2000は、記録媒体2を搬送する搬送部1と、記録媒体2の搬送方向と略直交して相互に並列に配置された4本の液体吐出ヘッド3とを備えており、記録媒体2を搬送しながら液体吐出ヘッド3から液体を吐出するものである。4本の液体吐出ヘッド3は、それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色の記録液すなわちインクを吐出するものである。以下において、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色をまとめてCMYKとも称する。4色の液体吐出ヘッド3を備えることにより、この液体吐出装置2000は、記録媒体2へのフルカラー記録を行うことができる。後述するように各液体吐出ヘッド3に対しては、液体吐出装置2000での供給系、すなわち液体を収容する液体収容容器であるバッファタンク1003(図2、図3参照)及びメインタンク1006(図2、図3参照)が流体的に接続されている。また、それぞれの液体吐出ヘッド3には、その液体吐出ヘッド3に対して電力及び吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続されている。
ここに示す液体吐出装置2000は、記録液などの液体を、バッファタンク1003と液体吐出ヘッド3との間で循環させる形態のものである。液体吐出装置2000での液体の循環の形態には、液体を循環させるために液体吐出ヘッド3の下流側で高圧用及び低圧用の2つの循環ポンプが動作する第一循環形態と、液体吐出ヘッド3の上流側で同様の2つの循環ポンプが動作する第二循環形態とがある。以下、第一循環形態と第二循環形態とについて説明する。
(第一循環形態)
図2は、液体吐出装置2000に適用される第一循環形態を示す模式図である。第一循環形態では、液体吐出ヘッド3が、高圧側の第一循環ポンプ1001、低圧側の第一循環ポンプ1002、及びバッファタンク1003などに流体的に接続している。なお図2では、説明を簡略化するためにCMYKの各色の記録液のうちの一色の記録液が流動する経路のみを示しているが、実際には液体吐出装置2000には、ここで示す経路が液体吐出ヘッド3ごとに設けられる。サブタンクとしてのバッファタンク1003は、メインタンク1006に接続されるとともに、タンク内部と外部とを連通する大気連通口(不図示)を有し、記録液中の気泡を外部に排出することが可能である。バッファタンク1003は、補充ポンプ1005とも接続されている。補充ポンプ1005は、記録液を吐出しての記録や吸引回復など、液体吐出ヘッド3の吐出口から記録液を吐出(排出)することによって記録液が消費された際に、消費された分の記録液をメインタンク1006からバッファタンク1003へ移送する。
液体吐出ヘッド3には、実際に吐出口が設けられる液体吐出ユニット300と、液体吐出ユニット300を循環する液体の圧力を調整する圧力制御ユニット230を備えた液体供給ユニット220とが設けられている。液体吐出ユニット300は、複数の記録素子基板10と、液体の循環経路の一部を構成する共通供給流路211及び共通回収流路212とを備えている。共通供給流路211及び共通回収流路212は、一対の共通流路を構成する。バッファタンク1003に供給された記録液は、後述するように、第二循環ポンプ1004によって、液体吐出ヘッド3の液体接続部111を介して液体供給ユニット220に供給される。
2つの第一循環ポンプ1001,1002は、液体吐出ヘッド3の液体接続部111から液体を引き出してバッファタンク1003へ流す役割を有する。第一循環ポンプ1001,1002としては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプを用いることが好ましい。具体的にはチューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等が挙げられるが、例えば一般的な定流量弁やリリーフ弁をポンプ出口に配して一定流量を確保する形態のポンプであっても用いることができる。また、流量センサーを循環経路内に設け、センサー出力値に基づいて本体内の制御回路からポンプの回転数を制御して一定流量を確保する形態も好ましく用いることができる。液体吐出ヘッド3の駆動時には高圧側の第一循環ポンプ1001及び低圧側の第一循環ポンプ1002によって、それぞれ、液体吐出ユニット300の共通供給流路211及び共通回収流路212内をある一定流量で記録液が流れる。このように記録液を流すことで、記録時の液体吐出ヘッド3の温度が最適の温度に維持される。この記録液の流量は、液体吐出ヘッド3内の各記録素子基板10間の温度差が記録媒体2上での記録品質に影響しない程度となる流量以上に設定することが好ましい。もっとも、過度に大きな流量を設定すると、液体吐出ユニット300内の流路の圧損の影響により、各記録素子基板10で負圧差が大きくなり過ぎて記録画像での濃度ムラが生じてしまう。このため、各記録素子基板10間の温度差と負圧差を考慮しながら流量を設定することが好ましい。
圧力制御ユニット230は、第二循環ポンプ1004と液体吐出ユニット300との間の経路に設けられており、フィルタ221を介して第二循環ポンプ1004から記録液が供給される。圧力制御ユニット230は、循環系における記録液の流量が変動した場合でも、圧力制御ユニット230よりも下流側(すなわち液体吐出ユニット3側)の圧力を予め設定した一定圧力に維持するように動作する。循環系における記録液の流量変化は、例えば記録液を記録媒体2に対して吐出して記録を行うときに、単位面積当たりの吐出量が変化することによって生ずる。圧力制御ユニット230は、それぞれ異なる制御圧が設定されている2つの圧力調整機構230H,230Lを備えている。図において文字「H」は高圧側の圧力調整機構230Hであることを示し、文字「L」は低圧側の圧力調整機構230Lであることを示している。これらの2つの圧力調整機構230H,230Lは、圧力制御ユニット230よりも下流の圧力を、所望の制御圧を中心とした一定の範囲以下の変動で制御できるものであれば、どのような機構のものであってもよい。一例としては、いわゆる減圧弁、減圧レギュレータと同様の機構のものを用いることができる。第一循環形態のように液体供給ユニット220を介して圧力制御ユニット230の上流側を第二循環ポンプ1004によって加圧するようにすることにより、バッファタンク1003の液体吐出ヘッド3に対する水頭圧の影響を抑制できる。その結果、液体吐出装置2000におけるバッファタンク1003のレイアウトの自由度を広げることができる。第二循環ポンプ1004としては、液体吐出ヘッド3の駆動時に使用される記録液の循環流量の範囲内において、一定圧以上の揚程圧を有するものであればよく、ターボ型ポンプや容積型ポンプなどを使用できる。具体的には、ダイヤフラムポンプ等が使用可能である。また第二循環ポンプ1004の代わりに、例えば圧力制御ユニット230に対してある一定の水頭差をもって配置された水頭タンクを設けることもできる。
圧力制御ユニット230内の2つ圧力調整機構のうち、相対的に高圧が設定されている圧力調整機構230Hは、液体供給ユニット220内を経由し液体接続部100を介して液体吐出ユニット300内の共通供給流路211の入口に接続されている。同様に相対的に低圧が設定されている圧力調整機構230Lは、液体供給ユニット220内を経由して液体接続部100を介して液体吐出ユニット300内の共通回収流路212の入口に接続されている。共通供給流路211及び共通回収流路212の出口は、液体接続部100、液体供給ユニット220及び液体接続部111を介して、第一循環ポンプ1001,1002にそれぞれ接続している。その結果、バッファタンク1003から第二循環ポンプ1004、高圧側の圧力調整機構230H、共通供給流路211、高圧側の第一循環ポンプ1001を経てバッファタンク1003に戻る高圧側の循環経路が形成される。また、バッファタンク1003から第二循環ポンプ1004、低圧側の圧力調整機構230L、共通回収流路211、低圧側の第一循環ポンプ1002を経てバッファタンク1003に戻る低圧側の循環経路が形成される。なお、第一循環ポンプ1001、1002と第二循環ポンプ1004と圧力制御ユニット230とは、第一循環形態において液体を循環させるための循環機構に相当する。
液体吐出ユニット300には、複数の記録素子基板10と共通供給流路211と共通回収流路と212のほかに、各記録素子基板10とそれぞれ連通する個別供給流路213及び個別回収流路214が設けられている。記録素子基板10ごとに設けられる個別供給流路213及び個別回収流路214を総称して個別流路215と称する。個別流路215は、相対的に高圧である共通供給流路211から分岐して相対的に低圧である共通回収流路212に合流するように設けられてこれらと連通している。したがって、記録液など液体の一部が共通供給流路211から記録素子基板10の内部流路を通過して共通回収流路212へと向かう流れ(図2での白抜きの矢印)が発生する。これは、共通供給流路211には高圧側の圧力調整機構230Hが、共通回収流路212には低圧側の圧力調整機構230Lがそれぞれ接続されているため、共通供給流路211と共通回収流路212の間に差圧が生じるからである。
液体吐出ユニット300では、共通供給流路211及び共通回収流路212内をそれぞれ通過するように液体を流しつつ、一部の液体が各記録素子基板10内を通過するような流れが発生する。このため、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211および共通回収流路212の流れで記録素子基板10の外部へ排出することができる。また、液体吐出ヘッド3による記録を行っている際に、記録を行っていない吐出口や圧力室においても記録液の流れを生じさせることができるので、その部位において記録液の溶媒成分の蒸発に起因して記録液の粘度が高まることを抑制することができる。また、増粘した記録液や記録液中の異物を共通回収流路212へと排出することができる。このため、上述した液体吐出ヘッド3を用いることにより、高速かつ高品位での記録を行うことが可能となる。
(第二循環形態)
図3は、液体吐出装置2000に第二循環形態を示す模式図である。前述の第一循環形態との主な相違点は、圧力制御ユニット230を構成する2つの圧力調整機構230H,230Lが、その圧力制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する機構であることである。これに伴って、第二循環ポンプ1004は圧力制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用する。高圧側及び低圧側の第一循環ポンプ1001,1002は、液体吐出ヘッド3の上流側に配置され、圧力制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている。
第二循環形態では、メインタンク1006内の記録液は、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給され、その後、高圧側と低圧側の流路に分岐する。高圧側の流路では、記録液は、第一循環ポンプ1001によってフィルタ221を介して共通供給流路211に供給される。共通供給流路211から排出された記録液は、高圧設定側の圧力調整機構230Hを経て低圧側の流路と合流し、第二循環ポンプ1004を介してバッファタンク1003に循環する。一方、低圧側の流路では、記録液は、第一循環ポンプ1002によってフィルタ221を介して共通回収流路212に供給される。共通回収流路212から排出された記録液は、低圧設定側の圧力調整機構230Lを経て高圧側の流路と合流し、第二循環ポンプ1004を介してバッファタンク1003に循環する。この第二循環形態においても、2つの圧力調整機構230H,230Lにより共通供給流路211の圧力が共通回収流路212の圧力より相対的に高くなっている。その結果、共通供給流路211から個別流路215を介して共通回収流路212に流れる記録液の流れが発生する。第一循環ポンプ1001、1002と第二循環ポンプ1004と圧力制御ユニット230とは、液体を循環させるための循環機構に相当する。
第二循環形態での圧力制御ユニット230は、循環する記録液の流量の変動があっても、圧力制御ユニット230の上流側(すなわち液体吐出ユニット3側)の圧力変動を予め設定された圧力を中心として一定範囲内に維持する。圧力制御ユニット230に設けられる圧力調整機構230H,230Lは、このように圧力を維持できる機構であればどのような機構であってもよく、一例としてはいわゆる背圧弁、背圧レギュレータと呼ばれる機構を採用したものであったよい。第二循環形態の循環流路では、第二循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して圧力制御ユニット230の下流側が減圧されている。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、液体吐出装置2000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第二循環ポンプ1004の代わりに、例えば圧力制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクを用いてもよい。
第二循環形態においても、液体吐出ユニット300の内部では第一循環形態と同様の記録液の流れ状態が得られるが、第二循環形態は、第一循環形態の場合とは異なる2つの利点を有する。第一の利点は、圧力制御ユニット230に混入するゴミや異物が液体吐出ヘッド3へ流入することを防ぐことである。圧力制御ユニット230を構成する圧力調整機構230H,230Lは弁を備えており、弁の開閉に伴って圧力制御ユニット230にゴミや異物が混入するおそれがある。第二の循環形態では圧力制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置され、フィルタ221が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている。そのため、第一循環ポンプ1001,1002及び第二循環ポンプ1004の稼動により循環経路に記録液を循環させる際に、圧力制御ユニット230に混入する異物を記録液から取り除き、液体吐出ヘッド3に異物が流入することを防ぐことができる。
第二の利点は、第二循環形態では、バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3へ供給する必要流量の最大値が、第一の循環形態の場合よりも少なくて済むことである。その理由は次の通りである。記録待機時に循環している場合の、共通供給流路211、共通回収流路212及び個別流路215内の流量の合計を流量Aとする。流量Aの値は、記録待機中に液体吐出ヘッド3の温度調整を行う場合に液体吐出ユニット300内の温度差を所望の範囲内にするために必要な最小限の流量として定義される。また液体吐出ユニット300の全ての吐出口から記録液を吐出する場合(全吐出時)の吐出流量を流量Fと定義する。流量Fは、1つの吐出口当たりの1回の記録液の吐出量と単位時間当たりの吐出回数(すなわち吐出周波数)と吐出口の数との積として定義される。図4は、第一循環形態と第二循環形態とにおける、液体吐出ヘッド3への記録液の流入量の違いを示した概略図である。図4(a)は、第一循環形態における記録待機時を示しており、図4(b)は、第一循環形態における全吐出時を示している。図4(c)から図4(f)は、第二循環流路での記録液の流入量を示しており、図4(c)及び図4(d)は流量F<流量Aの場合を示し、図4(e)及び図4(f)は流量F>流量Aの場合を示し、それぞれ、記録待機時と全吐出時の流量を示している。
定量的な送液能力を有する第一循環ポンプ1001,1002が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている第一循環形態の場合(図4(a)及び図4(b))、第一循環ポンプ1001,1002の合計設定流量は流量Aとなる。この流量Aによって、待機時の液体吐出ユニット300内の温度管理が可能となる。そして、液体吐出ヘッド3で全吐出が行われる場合、第一循環ポンプ1001,1002の合計設定流量は流量Aのままであるが、吐出によって液体吐出ユニット300に生じる負圧が記録液の流量に影響を及ぼす。そのため、液体吐出ヘッド3へ供給される最大流量は、合計設定流量の流量Aに全吐出による消費分(流量F)が加算される。よって全吐出時の、液体吐出ヘッド3への供給量の最大値は、流量Fが流量Aに加算されるため流量A+流量Fとなる(図4(b))。
ここで図2に示す第一循環形態において、複数の記録素子基板10のうち、一部の記録素子基板10が記録待機中であり、その他の記録素子基板10の全ての吐出口から記録液を吐出することを考える。図2では、記録素子基板10のうち網掛けで示されているものは全吐出中の記録素子基板10を示しており、網掛けが施されていないものは記録待機中の記録素子基板10を示している。このとき、全吐出中の記録素子基板10には、図において白抜き矢印で示すように共通供給流路211からの記録液の供給が行われるが、これに加えて図において黒塗りの矢印で示すように、共通回収流路212からも一定量の記録液の供給が行われる。一方、記録待機中の記録素子基板10では、図において白抜き矢印で示すように、共通供給流路211からの記録液の供給が継続して行われる。液体吐出ユニット300への記録液の流入量が増大するため、共通流路である共通供給流路211と共通回収流路212との間の差圧は多少変動するものの、共通流路の断面積を充分に確保することができれば、その影響は無視できる。
このように第一循環形態では、一部の記録素子基板10が記録待機中に、その他の記録素子基板10が全吐出中になった場合であっても、記録待機中の記録素子基板10にも記録液が供給される。かかる構成により、液体吐出ヘッド3への記録液の供給量も好適に制御することができる。すなわち記録待機中の記録素子基板10における個別流路215を通過する記録液の流量を、記録素子基板10における全ての吐出口13から吐出される記録液の吐出流量よりも小さくなるように共通流路の差圧を制御する。共通供給流路211と共通回収流路212との間の差圧を上記のように制御することにより、液体吐出ヘッド3の吐出口からの吐出流量の変動にもかかわらず、記録待機中の記録素子基板10に循環させる記録液の量を抑制することができる。記録待機中の記録素子基板10に循環させる記録液の量を抑制できれば、液体吐出ヘッド3からの熱の散逸を抑制することができ、循環流路内の記録液を冷却するための冷却機構なども簡略化することができる。
第一循環ポンプ1001,1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第二循環形態の場合(図4(c)から図4(f))は、記録待機時に必要な液体吐出ヘッド3への記録液供給量は、第一循環形態と同様に流量Aである。したがって第二循環形態では、流量Fよりも流量Aが多い場合(図4(c)、(d))には、全吐出時でも液体吐出ヘッド3への供給量は流量Aで十分である。その際、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、流量A-流量Fとなる(図4(d))。しかし、流量Aよりも流量Fが多い場合(図4(e)、(f))には、全吐出時には液体吐出ヘッド3への供給流量を流量Aとすると。記録液の流量が不足する。そのため第二循環形態では、流量Aよりも流量Fが多い場合には、液体吐出ヘッド3への供給量を流量Fとする必要がある。またこの状態で全吐出が行われると、液体吐出ヘッド3において流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、ほとんど0となる(図4(f))。なお、流量Aよりも流量Fが多い場合であって、吐出は行うが全吐出ではない場合には、流量Fから吐出で消費された分が引かれた流量で記録液が液体吐出ヘッド3から排出される。
第二循環形態の場合、第一循環ポンプ1001,1002の設定流量の合計値、すなわち必要供給流量の最大値は、流量Aまたは流量Fの大きい方の値となる。このため、同一構成の液体吐出ユニット300を使用する限り、第二循環形態における必要供給量の最大値(流量Aまたは流量Fの大きい方)は、第一循環形態における必要供給流量の最大値(流量A+流量F)よりも小さくなる。なお第二循環形態においても、一部の記録素子基板10が記録待機中であって残りの記録素子基板10が全吐出となった場合にも、記録待機中の記録素子基板10にも記録液が供給される。また第二循環形態でも、共通供給流路211と共通回収流路212との間の差圧を制御することにより、液体吐出ヘッド3の吐出口からの記録液の吐出流量の変動にかかわらず、記録待機中の記録素子基板10に循環させる記録液の流量を抑制できる。第二の循環形態の場合、適用可能な循環ポンプの自由度が高まり、例えば構成の簡便な低コストの循環ポンプを使用したり、本体側経路に設置される冷却器(不図示)の負荷を低減したりすることができ、記録装置本体のコストを低減できる。この利点は、AまたはFの値が比較的大きくなるページワイド型ヘッドであるほど大きくなり、ページワイド型ヘッドの中でも長手方向に長いヘッドほど有益である。
しかしながら一方で、第一循環形態の方が第二循環形態に対して有利になる点もある。第二循環形態では、記録待機時に液体吐出ユニット300内を流れる流量が最大であるため、記録しようとする画像が単位面積当たりの吐出量が少ない画像(低デューティ画像とも呼ぶ)であるほど、各吐出口に高い負圧が印加された状態となる。記録ムラが目立ちやすい低デューティ画像の記録を行うとき吐出口に高い負圧が印加されるため、記録液の主滴に随伴して吐出されるいわゆるサテライト滴が多く発生し、記録品位が低下するおそれがある。一方、第一循環形態の場合、高い負圧が吐出口に印加されるのは単位面積当たりの吐出量が多い画像(高デューティ画像ともいう)の形成時であるため、仮にサテライト滴が発生しても視認されにくく、画像への影響は小さいという利点が生ずる。これら2つの循環形態は、液体吐出ヘッド3及び記録装置本体の仕様(吐出流量F、最小循環流量A、及び液体吐出ヘッド3内の流路抵抗)に照らして、好ましく選択することができる。
(液体吐出ヘッドの構造)
次に、液体吐出ヘッド3の構造について図5を用いて説明する。図5(a)は、液体吐出ヘッド3において吐出口が形成された面の側から見た斜視図であり、図5(b)は図5(a)とは反対方向から見た斜視図である。液体吐出ヘッド3は、その長手方向に直線上に配列(インラインに配置)される例えば16個の記録素子基板10を備えたライン形の液体吐出ヘッドであり、単色の記録液での記録を行うインクジェット方式のものである。液体吐出ヘッド3は、液体吐出装置2000との間で記録液の循環を行うために設けられる上述した液体接続部111のほかに、信号入力端子91及び電力供給端子92を備えている。信号入力端子91及び電力供給端子92は、液体吐出ヘッド3の両側に配置されている。これは、記録素子基板10に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減するためである。図2及び図3に示す循環形態では、液体吐出ヘッド3に1個の液体供給ユニット220が設けられ、液体供給ユニット2220に対して1個の圧力制御ユニット230が取り付けられていた。そして圧力制御ユニット230内に2つの圧力調整機構230H,230Lが設けられていた。しかしながら以下に説明する液体吐出ヘッド3は、2つの液体供給ユニット2220を備え、液体供給ユニット220ごとに、1個の圧力調整機構を備える圧力制御ユニット2230が設けられている。2つの液体供給ユニット2220は、液体吐出ヘッド3の長手方向の両端にそれぞれ設けられている。
図6は、液体吐出ヘッド3の斜視分解図であり、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットをその機能ごとに分割して表示している。液体吐出ヘッド3では、第一流路部材50と第二流路部材60とによって流路構成部材210が構成され、流路構成部材210に複数個の吐出モジュール200が組み合わされて液体吐出ユニット300が構成されている。液体吐出ユニット300の記録媒体側の面にはカバー部材130が取り付けられる。カバー部材130は、長尺の開口131が設けられた額縁状の表面を持つ部材であり、開口131は、吐出モジュール200に含まれる記録素子基板10とその封止材を露出させるために形成されている。開口131の周囲の枠部は、液体吐出ヘッド3の吐出口が形成されている面を記録待機時にキャップするキャップ部材の当接面としての機能を有する。このため、開口131の周囲に沿って接着剤、封止材、充填材等を塗布し、液体吐出ユニット300の吐出口形成面上の凹凸や隙間を埋めることで、キャップ時に閉空間が形成されるようにすることが好ましい。
さらに液体吐出ヘッド3は、2個の液体吐出ユニット支持部81と、2個の電気配線基板90とを備えている。この液体吐出ヘッド3では、主として第二流路部材60によってヘッドの剛性が担保されている。液体吐出ユニット支持部81は、第二流路部材60の両端部に接続されており、液体吐出装置2000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド3の位置決めを行う。圧力制御ユニット2230を備える各液体供給ユニット2220は、ジョイントゴムからなる液体接続部100を挟んで液体吐出ユニット支持部81に結合し、電気配線基板90も液体吐出ユニット支持部81に結合されている。2つの液体供給ユニット2220内にはそれぞれフィルタ221(図12参照)が内蔵されている。
2つの圧力制御ユニット2230は、それぞれ異なる、相対的に高低の圧力を制御するように設定されている。すなわち後述の図12などに示すように、一方の圧力制御ユニット2230に設けられる圧力調整機構は高圧側のものであり、他方の圧力制御ユニット2230に設けられる圧力調整機構は低圧側のものである。圧力制御ユニット2230の詳細については後述する。このように液体吐出ヘッド3の両端部にそれぞれ高圧側と低圧側の圧力制御ユニット2230を設置した場合、液体吐出ヘッド3の長手方向に延在する共通供給流路211と共通回収流路212における液体の流れが互いに対向し、向流となる。このような構成では、共通供給流路211と共通回収流路212の間で熱交換が促進されて、2つの共通流路内における温度差が低減される。これによって、共通流路に沿って複数設けられる記録素子基板10の相互間での温度差が少なくなり、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点が生ずる。
次に、液体吐出ユニット300の流路構成部材210の詳細について説明する。図6に示すように、流路部材210は、第一流路部材50と第二流路部材60とを積層したものであり、液体供給ユニット2220から供給された液体を各吐出モジュール200へと分配する。また流路構成部材210は、吐出モジュール200から環流する記録液を液体供給ユニット2220へと戻すための流路部材として機能する。第二流路部材60は、内部に共通供給流路211及び共通回収流路212が形成された部材であるとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を主に担うという機能を有する。このため、第二流路部材60の材質としては、液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましく、具体的にはステンレスやチタン、アルミナなどを好ましく用いることができる。
次に、図7を用いて、第一流路部材50及び第二流路部材60の詳細を説明する。図7(a)は、第一流路部材50の、吐出モジュール200が取り付けられる側の面を示し、図7(b)は、その裏面であって、第二流路部材60と当接される側の面を示している。第一流路部材50は、各吐出モジュール200ごとに対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採用し、このようなモジュールを複数配列することにより、液体吐出ヘッド3に要求される長さに対応することができるようになる。この構成は、例えば、JIS(日本工業規格)B2サイズ及びそれ以上の寸法に対応した長さの比較的長い液体吐出ヘッドに特に好適に適用できる。図7(a)に示すように、第一流路部材50の連通口51は吐出モジュール200と流体的に連通し、図7(b)に示すように、第一流路部材50の個別連通口53は第二流路部材60の連通口61と流体的に連通する。図7(c)は、第二流路部材60の、第一流路部材50と当接される側の面を示し、図7(d)は、第二流路部材60の厚み方向中央部の断面を示し、図7(e)は、第二流路部材60の、液体供給ユニット2220と当接する側の面を示している。図7(e)に示される連通口72は、図6に示される液体接続部100を介して圧力制御ユニット2230と連通しており、記録液は一方の連通口72から第二流路部材60へと供給され、他方の連通口72から排出される。第二流路部材60の共通流路溝71は、その一方が図8に示す共通供給流路211であり、他方が共通回収流路212であり、それぞれ、液体吐出ヘッド3の長手方向に沿って一端側から他端側に液体を供給する。上述したように共通供給流路211と共通回収流路212での液体の流れる方向は、液体吐出ヘッド3の長手方向に沿って互いに反対方向である。
図8は、記録素子基板10と流路構成部材210との間での各流路の接続関係を透視図として示している。図8に示したように、流路構成部材210内には、液体吐出ヘッド3の長手方向に延びる一組の共通供給流路211及び共通回収流路212が設けられている。第二流路部材60の連通口61は、各々の第一流路部材50の個別連通口53と位置を合わせて接続されており、第二流路部材60の連通口72から共通供給流路211を介して第一流路部材50の連通口51へと連通する液体供給経路が形成されている。同様に、第二流路部材60の連通口72から共通回収流路212を介して第一流路部材50の連通口51へと連通する液体供給経路も形成されている。
図9は、図8のIX-IX線における断面を示した図である。この図に示すように、共通供給流路211は、連通口61、個別連通口53及び連通口51を介して、吐出モジュール200へ接続されている。図9では不図示であるが、別の断面においては共通回収流路212が同様の経路で吐出モジュール200へ接続されていることは、図8を参照すれば明らかである。各吐出モジュール200及び記録素子基板10には、各吐出口13(図11参照)の形成個所である圧力室に連通する流路が形成されている。供給した液体の一部または全部は、この流路によって、吐出動作を休止している吐出口13に対応する圧力室を通過して還流できるようになっている。共通供給流路211は高圧側の圧力制御ユニット2230と、共通回収流路212は低圧側の圧力制御ユニット2230と、それぞれ液体供給ユニット2220を介して接続されている。このため、これらの圧力制御ユニット2230によって生じる差圧によって、共通供給流路211から記録素子基板10の圧力室を通過して共通回収流路212へと向かう流れが発生する。
(吐出モジュール)
図10(a)は、1つの吐出モジュール200を示した斜視図であり、図10(b)は、その分解図である。吐出モジュール200では、支持部材30の上に記録素子基板10が配置されている。記録素子基板10の吐出口列方向に沿った両辺部すなわち記録素子基板10の長辺部の各々には、複数の端子16(図11参照)が配置されている。これに伴い記録素子基板10と電気的に接続されるフレキシブル配線基板40も、1つの記録素子基板10に対して2枚配置されている。これは、1つの記録素子基板10に設けられる吐出口列数が例えば20列であり、端子16から記録素子までの最大距離を短くして記録素子基板10内の配線部で生じる電圧低下や信号遅れを低減するためである。支持部材30は、記録素子基板10を支持する支持体であるとともに、記録素子基板10と流路構成部材210とを流体的に連通させる流路連通部材である。支持部材30の液体連通口31は、記録素子基板10に設けられる全吐出口列を跨るように開口している。
(記録素子基板の構造)
記録素子基板10の構成について、図11を用いて説明する。図11(a)は、記録素子基板10の吐出口13が配される面の模式図であり、図11(b)は液体供給路18及び液体回収路19が形成されている部分を示す図であり、図11(c)は図11(a)の裏面にあたる側の平面図である。ここで図11(b)は、図11(c)において記録素子基板10の裏面側に設けられている蓋部材20を除去した状態を示している。記録素子基板10の吐出口13の下方にはエネルギー発生素子が設けられており、エネルギー発生素子によって記録液にエネルギーが与えられると、記録液が吐出口13から吐出され、記録が行われる。図11(b)に示すように、記録素子基板10の裏面には、吐出口列方向に沿って、液体供給路18と液体回収路19が交互に設けられている。端子16は、記録素子基板10の吐出口列方向に沿った両辺部に配置されている。吐出口列ごとに一組の液体供給路18と液体回収路19が設けられており、蓋部材20には、支持部材30の液体連通口31と連通する開口21が設けられている。
(第三循環形態)
次に、図5から図11までを用いて説明した液体吐出装置2000における循環形態である第三循環形態について、図12を用いて説明する。図5から図11までを用いて説明した液体吐出装置2000の液体吐出ヘッド3では、共通供給流路211での記録液の流れの方向と共通回収流路212での記録液の流れの方向とが向かい合っている。図12に示す第三循環形態は、図3に示した第二循環形態を基本として、記録液の流れの方向の違いに応じて圧力制御ユニット2230の配置などを若干変更したものであり、基本的な動作としては第二循環形態と同じである。液体吐出ヘッド3は、液体吐出ヘッド3の長手方向の両端部に、それぞれ高圧側(H)と低圧側(L)の圧力制御ユニット2230を備えている。これらの圧力制御ユニット2230には、それぞれ1個の圧力調整機構が設けられている。記録液は、共通回収流路211または共通供給流路212を通過し、それぞれの圧力制御ユニット230に流入し、液体接続部111を介して第二循環ポンプ1004へと導かれる。
(背圧型の圧力調整機構)
次に、本発明の実施の一形態の圧力調整機構について説明する。図13及び図14は、実施の一形態の圧力調整機構を示している。この圧力調整機構は、背圧型のものであって、図4から図11を用いて説明した液体吐出装置2000における圧力制御ユニット2230に設けられる圧力調整機構として好ましく用いられるものである。特にこの圧力調整機構は、上述の第二循環形態及び第三循環形態に適合したものである。図13(a)及び図13(b)は、それぞれ、圧力調整機構の外観の斜視図及び正面図であり、図14(a)は、図13(a)のA-A線に沿った圧力調整機構の断面図であり、図14(b)は圧力調整機構の動作を説明する断面図である。図13では、圧力調整機構を備える圧力制御ユニット2230が液体吐出装置2000の液体供給ユニット2220に取り付けられた状態で描かれている。
圧力調整機構は、扁平な略直方体形状の筐体を有し、筐体の開口した1つの面を覆うように可撓性フィルム405が配置されている。筐体の残りの5つの面と可撓性フィルム405とによって、記録液などの液体を内部に収納することができて、かつ容積が可変の第一液体収納室401が形成されている。第一液体収納室401は、背圧型の圧力調整機構に設けられる第一圧力室に対応するものであって、その外壁の少なくとも一部が可撓性フィルム405で形成されていることになる。押圧板404は、背圧型の圧力調整機構における受圧板として機能する部材であって、可撓性フィルム405の内面側(第一液体収納室401の側)に固定されており、第一液体収納室401を拡張させる方向に可撓性フィルム405を押圧している。押圧板404と筐体との間には、第一付勢部材として負圧バネ411が介在し、負圧バネ411は、第一液体収納室401を外側に向けて拡張させる方向に、押圧板404に付勢している。すなわち、負圧バネ411が押圧板404に付勢し、付勢された押圧板404が、第一液体収納室401の容積が拡大する方向に、可撓性フィルム405を押圧している。
図14(a)において矢印Zは鉛直上向き方向を示している。第一液体収納室401の鉛直方向下方には、第一液体収納室401に液体を流入させるための流入口414が形成されている。流入口414は、この圧力調整機構が液体吐出装置2000において使用される場合においては、共通回収流路211または共通供給流路212と連通するものである。なお本実施形態における鉛直方向は、圧力調整機構の使用時(圧力調整機構を有する圧力制御ユニット2230を液体吐出装置2000に装着して、液体の圧力制御を行うとき)における鉛直方向である。
第一液体収納室401の鉛直方向上方には、第一液体収納室401と連通して第一液体収納室401の一部を形成する、バルブ室402が配置されている。バルブ室402には、第一液体収納室401の内部の外部に流出させるための流出口410が開口として形成されている。流出口410の先には、第一液体収納室401とは異なる第二液体収納室403が設けられており、流出口410は第一液体収納室401と第二液体収納室403の間に形成されている。この圧力調整機構を液体吐出装置2000に設けた場合、第二液体収納室403は、液体接続部111(図13参照)を介して、第二循環ポンプ1004と接続される。第一液体収納室401は、圧力調整機構が設けられる圧力制御ユニット2230において、液体吐出ヘッド3が接続される側である、液体の流れの上流側に設けられており、第二液体収納室403は、第一液体収納室401から見て流れの下流側に位置する。結局、共通回収流路211または共通供給流路212から流入口414を介して第一液体収納室401に流入した液体は、第一液体収納室401内のバルブ室402へと流入し、さらに流出口410を介して第二液体収納室403に流入する。液体は、その後、液体接続部111を介して第二循環ポンプ1004へと導かれる。
図14(a)に示すように流出口410は、第一液体収納室401の外壁が可撓性フィルム405で形成された部分より、鉛直方向上方の位置に形成されることが好ましい。第一液体収納室401より流れの下流側に配置されるバルブ室402及び流出口410を、このように鉛直方向上方に形成すると、第一液体収納室401内に液体を充填する際に、第一液体収納室401内のエア(空気)を排出しやすくなる。液体を充填する際に十分にエアを排出しておけば、例えば圧力調整機構の使用時に第一液体収納室401の内部のエアの量が変化して第一液体収納室401の水頭圧が変化することを抑制することができる。またこのように構成することにより、圧力調整機構の使用中に第一液体収納室401内から排出されたエアが第二循環ポンプ1004へ流入することによってポンプ圧力が変化してしまうことを抑制できる。さらにこの構成では、第一液体収納室401内にエアが流入してきた場合に、エアは、第一液体収納室401における可撓性フィルム405で形成された部分には滞留しにくく、バルブ室402に滞留するか、もしくは流出口410から排出されやすくなる。一般に、可撓性フィルム405のような薄肉の部材は気体透過性が高く、可撓性フィルム405で形成された部分にエアが残存すると、気体の透過によって残存エアの容積が増大しやすい。残存エアの容積が増大すると、第一液体収納室401の水頭圧の変化や、第二循環ポンプ1004へ流入することによってポンプ圧力が変化してしまうおそれがある。そのため、可撓性フィルム405で形成された部分よりも鉛直方向の上方に流出口410を設け、可撓性フィルム405で形成された外壁の内側付近に残存エアが滞留しにくくすることが好ましい。
次に、バルブ室402に配置されるバルブ406について説明する。バルブ406は、本発明に基づくシール部材によって構成されるものである。図15(a)及び図15(b)は、それぞれバルブ406を異なる角度から見てバルブ406を拡大して示している。バルブ406は、レバー部503として後で説明するようにレバー形状に形成されており、圧力調整機構が有する軸受け(不図示)に嵌合した軸408を中心として回動可能である。バルブ406の一端部には、バルブ406の弁体として作用するバルブ部407が設けられている。バルブ部407と流出口410との間で可変のギャップ413(図14(b)参照)を形成することで、バルブ室402から開口である流出口410を介して第二液体収納室403に流れる液体に可変の流抵抗を与えることができる。バルブ部407と流出口410との間の距離であるギャップ413の大きさがバルブ開度となり、ギャップ413が大きいとバルブ開度が高く、流抵抗が小さいということになる。また、バルブ室402には、第二付勢部材としてバルブバネ412が配置されている。バルブバネ412は、バルブ部407と流出口410間のギャップ413を小さくする方向に、すなわちバルブ部407によって流出口410を閉じる方向に、バルブ部407を付勢している。
一方、バルブ406の軸408を挟んでバルブ部407と反対側に位置する他端部には、可撓性フィルム405及び第一液体収納室401内の押圧板404の動きをバルブ406へ伝達するための、押圧板接触部409が形成されている。第一液体収納室401の容積に応じて可撓性フィルム405及び押圧板404が移動したすなわち変位した際に、押圧板404の一部と押圧板接触部409が接触することで、押圧板404の動きに連動してバルブ406が回動するように動く。図14(b)は、バルブ406のバルブ部407と流出口410との間のギャップ413が大きくなる方向、すなわち流出口410でのバルブ開度が高くなる方向にバルブ406が回動する様子を矢印で示している。
第一液体収納室401の容積を大きくする方向に押圧板404が動くと、押圧板404に当接している押圧板接触部409が、軸408を中心として回動するように動く。この動きにより、バルブ部407が流出口410から遠ざかって流出口410との間のギャップ413は大きくなり、流出口410のバルブ開度が高くなる。すなわち第一液体収納室401を拡張する方向に押圧板404が変位したときに、弾性部材であるバルブ部407が流出口410から遠ざかり、流出口410を介して流出する液体に対する流抵抗が小さくなる。反対に第一液体収納室401の容積を小さくする方向に押圧板404が動くと、押圧板404に当接している押圧板接触部409が、バルブ406の軸408を中心として回動するように動く。この動きにより、バルブ部407と流出口410との間のギャップ413は小さくなり、流出口410のバルブ開度が低くなり、流抵抗が大きくなる。このように、可撓性フィルム405及び押圧板404が動くことによって、バルブ406が動き、バルブ部407と流出口410との間のギャップ413、すなわち流出口410でのバルブ開度が変化する。
このように流出口410でのバルブ開度、流出口410における液体に対する流抵抗は、バルブ406の動きによって変化する。バルブ406は、押圧板接触部409において押圧板404と当接して移動する。バルブ406は、軸408と軸408に嵌合する軸受けとによってその動きの範囲(可動範囲)が制限されており、これらによって制限された動きである回動動作を行うことになる。すなわち、第一液体収納室401の拡張に連動してバルブ開度が高くなるようにバルブ406は動くが、この動きの範囲は、あらかじめ設定された範囲に制限されている。したがって、可撓性フィルム405や押圧板404の影響があっても、流出口410のバルブ開度であるバルブ部407と流出口410との間のギャップ413は、所望の値をとることができる。
これに対し、液体収納室(圧力室)が可撓性フィルム405と押圧板404とによって形成され、バルブが可撓性フィルム405及び押圧板404と一体で形成されており、バルブの可動範囲が押圧板404以外では制限されていない場合を考える。この場合、バルブの動きは、可撓性フィルム405自体の剛性の影響や、可撓性フィルム405に形成されている折れ目やシワなどの影響を受けやすい。例えば、可撓性フィルム405のシワの影響で、押圧板404が傾いた状態で動き、流出口410のバルブ開度が所望の値とならない場合がある。これに対して本実施形態では、押圧板404以外の部材によってバルブ406が可動範囲が制限されているので、可撓性フィルム405や押圧板404の状態に関わらず、流出口410でのバルブ開度は所定の値をとることが可能である。このため本実施形態では、可撓性フィルム405がバルブ406による液体の圧力の制御に影響を及ぼすことが低減され、安定した圧力制御を行うことができる。
図15に示すように、バルブ406に設けられる押圧板接触部409の形状は、球体の少なくとも一部である形状であることが好ましい。図15は半球形状の押圧板接触部409を示している。図16は押圧板404の傾きの一例を示す図であり、図16(a)は傾きのない状態を示し、図16(b)は、図16(a)の状態から押圧板404が傾くように動いた状態を示している。押圧板接触部409の形状を、球体の少なくとも一部である形状とすることにより、図16(b)に示すように押圧板404が傾いた状態で変位しても、押圧板404と押圧板接触部409とが球面上の1点で接触する。このため、バルブ406の荷重点は一定となり、バルブ406が安定した動作をすることができる。
次に、圧力調整機構における、第一液体収納室401内の圧力すなわち背圧が安定化されることについて説明する。第一液体収納室401内の圧力は、以下に示す関係式により決定される。
(F1+P1・S1)L1=(F2-(P2-P1)S2)L2 …(1)
(P1-P2)=R・Q …(2)
ここで、各パラメータが示す値は以下のとおりである:
P1:第一液体収納室401内の圧力(ゲージ圧)、
P2:第二液体収納室403内圧力(ゲージ圧)、
F1:負圧バネ411のバネ力、
F2:バルブバネ412のバネ力、
S1:押圧板404の受圧面積、
S2:バルブ部407の受圧面積、
L1:レバー部503の腕長さ1(軸408から押圧板接触部409までの長さ)、
L2:レバー部503の腕長さ2(軸408からバルブ部407までの長さ)、
R:バルブ部407と流出口410との間ギャップ413の流抵抗、
Q:液体の流量。
ここでは、簡略化のため、バルブ室402の圧力は第一液体収納室401内の圧力と等しいものとする。バルブ部407と流出口410との間のギャップ413の流抵抗Rは、ギャップ413の大きさによって変化する。ギャップ413が大きい、すなわちバルブ407と流出口410との間の距離が大きいほど、流抵抗Rは小さくなる。式(1)はバルブ406における力の釣り合いを表し、式(2)は、流抵抗と流量との積が圧力差に等しいことを表している。上記の式(1)及び式(2)が同時に成立するようにギャップ413の大きさが決定されることで、圧力P1、すなわち圧力調整機構の背圧が導出される。
例えば、圧力調整機構を備える液体吐出装置2000において圧力調整機構に流入する液体の流量Qが増加した場合は、次の通りとなる。圧力調整機構の下流側に配置された第二循環ポンプ1004の流量に応じた圧力特性と、第二液体収納室403から第二循環ポンプ1004に至るまでの経路の流抵抗の増加によって、第二液体収納室403の圧力P2は増加する。この圧力P2は、第二循環ポンプ1004での吸い込み側の圧力であるので、圧力P2が正圧に近付く。圧力P2が増加すると、式(1)にしたがって、圧力P1が瞬時的に低下する。このとき、流量Qと圧力P2とが増加し、一方で圧力P1が低下しているので、式(2)より、流抵抗Rが低下するようにバルブ406が変位する。流抵抗Rの低下であるからバルブ部407と流出口410との間のギャップ413が大きくなる必要があり、ギャップ413が増加する方向にバルブ406は回動して変位する。この変位に伴ってバルブバネ12はバネ長さが縮小する方向に変位するので、バネ力F2が増加する。その一方で、押圧板404側の負荷バネ411は、そのバネ長さが増加する方向に変位するので、バネ力F1は減少する。このとき、押圧板404は、第一液体収納室401の容積を増大する方向に変位する。その結果、式(1)から瞬時的に圧力P1が増加する。圧力P1が増加すると、上述とは逆の作用により圧力P2が瞬時的に減少する。このような現象が短い期間に繰り返されることにより、流量Qに応じて流抵抗Rが変化しつつ式(1)及び式(2)が同時に成立しなければならないことから、背圧である圧力P1がある一定範囲内の圧力に維持される。
液体吐出装置2000において、圧力調整機構の第一液体収納室401は、流入口414を介して、液体回収流路212及び吐出モジュール300と連通している。ここで背圧である圧力P1がある一定範囲内の圧力に維持されることで、液体吐出に関わる吐出モジュール300の圧力がある一定範囲内に維持される。このように圧力P1が一定範囲内に維持されることにおいては、バルブ部407と流出口410との間のギャップ413が大きく関わっている。例えば、バルブ部407が流出口410に対して相対的に著しく傾いた位置関係となってしまう場合を想定する。そのような場合、式(1),(2)の両方を成立させる流抵抗Rを与えるような大きさのギャップ413を形成できなくなるため、圧力P1を一定の範囲内に維持することができなくなる。
以上説明したバルブ406は、軸408を中心にして一端側に弁体として機能するバルブ部407が設けられ他端側に押圧板接触部409が設けられているが、本発明に基づくシール部材であるバルブ406は、このような構成のものに限定されるものではない。例えば、一端部が軸となって回動変位するバルブであってもよいし、さらには、回動ではなく直線変位によってバルブ部407と流出口410との間のギャップ413の大きさを変化させる形態のバルブであってもよい。なお、流出口410におけるバルブ開度とは、流出口410における流抵抗を考慮した液体の流れやすさを示すものである。流出口410におけるギャップ413が大きくなれば、バルブ開度は高くなる。また、流出口410そのものの開口面積が大きくなることでも、バルブ開度は高くなる。また、バルブによって流出口410が閉まっている状態(バルブ開度が0%)から、バルブが動いて流出口410の少なくとも一部が開いた状態になるときも、バルブ開度は高くなる。
圧力調整機構は、可撓性フィルム405の変位方向に対してバルブ406の動きの方向、特に弁体であるバルブ部407の移動の方向が異なるものであることが好ましい。可撓性フィルム405の変位方向とバルブ部407の動きの方向が同じである場合、押圧板404以外の部材によるバルブ406の可動範囲の制限が、可撓性フィルム405及び押圧板404の動きに直接的な影響を与えやすい。このため、可撓性フィルム405や押圧板404が所望の動きをしにくくなることがある。これに対して可撓性フィルム405の変位の方向とバルブ部407の動きの方向が異なっていると、押圧板404以外の部材によるバルブ406の可動範囲の制限の影響が、可撓性フィルム405や押圧板404の動きに対して直接的には及びにくくなる。このため、可撓性フィルム405や押圧板404が所望の動きをしやすくなる。
また、圧力調整機構は、可撓性フィルム405及び押圧板404が直線的に変位し、これに連動するバルブ406の動きが回動である構成であることが好ましい。バルブ406の動きが回動であると、回動の軸を固定するなどして、押圧板404以外の部材によってバルブ406の可動範囲を制限することが容易である。特に、第一液体収納室401の鉛直方向上方に流出口410がある構成の場合、バルブ406の動きが回動であることがより好ましい。バルブ406の動きが回動であると、バルブ開度が高くなる際、バルブ部407と流出口410との間のギャップ413において、鉛直方向でより上方においてギャップ幅が大きく広くなる。鉛直方向でより上方においてギャップ幅が広いと、バルブ室402において鉛直方向上方の位置に溜まりやすいエアを、ギャップ413を介して流出口410から流出させやすくなる。
以上の説明においては、流出口410におけるバルブ開度に関し、バルブ部407と流出口410とが対向する方向でのギャップ413の大きさによる流抵抗の変化を用いて説明を行ってきたが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、流出口410そのものの開口面積を変化させるようにバルブ部407が変位することで、流抵抗の変化が起こるように構成してもよい。いずれにても本発明に基づくシール部材であるバルブ406は、押圧板404以外の部材によって可動範囲が制限されていることにより、可撓性フィルム405がバルブ406による液体の圧力の制御に影響を与えにくいものとなっている。
次に、押圧板404及びバルブ406の移動に関して、図14で説明した例とは異なる例を、図17を用いて説明する。図17(a)は、この場合における圧力調整機構を示す断面図である。図17に示す例では、押圧板404は、第一液体収納室401の容積を増加させる方向に、回動して動く。図17(a)では、付勢部材である負圧バネ411の中心に位置する軸が軸(i)として示され、第一液体収納室401における可動部を構成する可撓性フィルム405及び押圧板404の鉛直方向の中心を通る軸が軸(ii)として示されている。軸(i)及び軸(ii)は、いずれも、鉛直方向に直交する軸であるが、軸(i)の方が軸(ii)よりも鉛直方向上方に配置している。押圧板404の鉛直方向の下端には、押圧板突起422が設けられている。また、第一液体収納室401の内部において押圧板突起422に対向する位置には、押圧板規制部421が設けられている。押圧板規制部421は、第一液体収納室401の可動部が変位する際に、押圧板404の押圧板突起422が押圧板規制部421に当接することで、押圧板突起422が負圧バネ411の長さ方向(延在方向)へ変位することを規制するものである。
このように構成することで、図17(b)に示すように、第一液体収納室401の容積が大きくなるときに、第一液体収納室401の可動部は、矢印で示す方向に回動変位するように動く。すなわち、第一液体収納室401内の圧力と負圧バネ411のバネ力との釣り合いの関係から、第一液体収納室401の可動部は、押圧板突起422が押圧板規制部421に当接した状態から、押圧板突起422を回動中心とした回動変位をする。この構成では、バルブ406を開放する際の第一液体収納室401の可撓性フィルム405及び押圧板404の状態は、押圧板突起422が押圧板規制部421に当接した状態に規制される。このため、バルブ406を開放する際に負圧バネ411が押圧板404を押圧する力も一定とすることができる。負圧バネ411の押圧力は、上述したように第一液体収納室401の圧力を決定するパラメータであるため、負圧バネ411の押圧力が一定となることで、第一液体収納室401の圧力も一定とすることができる。押圧板突起422が押圧板規制部421に当接した状態に規制されるから、バルブ406を開放する際に、可動部である可撓性フィルム405及び押圧板404の変形状態が一定となる。すなわち、これらの可動部における受圧面積が一定となる。可動部の受圧面積は、上述したように第一液体収納室401の圧力を決定するパラメータであるため、可動部の受圧面積が一定となることで、第一液体収納室401の圧力も一定とすることができる。
(シール部材としてのバルブの構成)
次に、バルブ406におけるバルブ部407とレバー部503について詳細に説明する。図18は、バルブ406の要部を拡大して示す図であって、図13(a)のB-B線での断面を示している。上述したようにバルブ406は本発明に基づくシール部材の一例であり、バルブ部407はシール部材での弾性部材に該当し、レバー部503はシール部材でのベース部材に該当する。バルブ406はレバー形状のものであり、バルブ406においてバルブ部407を除いた部分がレバー部503となる。バルブ部407はレバー部503に固定されている。図15及び図18に示すように、バルブ部407の一部であるバルブ先端部501は、流出口410の外周を囲むように環状の突起形状を有し、流出口410の周辺のギャップ形成面502との間でキャップ413を形成して可変の流抵抗を与える。流出口を流れる流量を非常に小さくするときは、流抵抗を極めて大きくする必要がありギャップ413を微小な隙間にしなければならない。しかし、ギャップ113を形成するバルブ先端部501及びギャップ形成面502に傾き、うねり、凹凸などがあると、両者が互いが当接したとしても隙間が残り、それ以上、ギャップ113を小さくすることが困難である。そのため本実施形態では、バルブ先端部501を柔軟な材料である弾性部材によって構成し、ギャップ形成面502の表面形状にバルブ先端部501をならわせるようにしている。これにより、ギャップ形成面502の表面の傾きやうねり、凹凸などを吸収することが可能になって、きわめて小さなギャップ513を形成することができる。環状の突起形状を有するバルブ先端部501は環状当接部の一例である。弾性部材であるバルブ部407の一部分であるバルブ先端部501を環状に設ける理由については後述する。
レバー部503には、図14(b)に示すように、押圧板接触部409が受ける押圧板404からの押し圧、バルブ部407が受ける第二液体収容室403内の減圧圧力、バルブバネ412のバネ荷重が加わる。これらの力によってレバー部503は、軸408を回転中心とした曲げモーメントを受ける。レバー部503が変形すると、ギャップ413の大きさと押圧板404の位置との関係が、本来のものからずれてしまう。レバー部503の変形に伴って押圧板404の位置が変化することで、押圧板404による受圧面積と負圧バネ411の荷重とが変化し、第一液体収納室401の圧力も変わってしまう。長期にわたって第一液体収納室401の圧力変化を小さくするためには、軸408も含めてバルブ406のレバー部503には高い剛性が求められる。特に、加温された液体の圧力調整に圧力調整機構が用いられる場合には、温度上昇により剛性が低下し、変形が大きくなるため、レバー部503は耐熱性の高い材料で構成されることが好ましい。例えば液体吐出装置に設けられる圧力調整機構の場合、その装置内の昇温や記録液の温度調節、記録素子基板における発熱などのために、30℃以上にまで温度が上昇した液体が圧力調整機構に流入する可能性が高い。温度が上昇した液体が流入することでレバー部503の剛性が低下し、レバー部503のたわみや変形が大きくなると、圧力調整機構によって維持されるべき背圧が変動し、その結果、液体として記録液を吐出したときの記録品位の低下が起こるおそれがある。
次に弾性部材であるバルブ部407のレバー部503への固定について説明する。ここで説明する圧力調整機構は背圧型であるので、第二液体収納室403は、そこに接続されるポンプ(図12に示す第三循環形態で使用される場合であれば第二循環ポンプ1004)によって減圧にされる。第二液体収納室403が減圧にされると、バルブ先端部501を含む領域であって流出口410に対向するバルブ460の先端の領域において、ギャップ413を狭くする方向の力が加わる。一方、レバー部503には、押圧板404からギャップ413を広くする方向の力が加わる。そのため、バルブ部407には、第二液体収納室403側からの減圧圧力によりレバー部503から引き剥がされる方向の力が加わる。一例として、減圧圧力としてバルブ部507に加わる最小圧力は-5kPa以下(ここでは負圧であるので、加わる圧力の絶対値としては5kPa以上)である。バルブ406の大きさに比べてギャップ413が十分に小さいとすれば、ギャップ413を狭くする方向の力が加わるのは、流出口410に向かい合う領域とその周辺に限られる。そこで、流出口410の縁に沿った位置でギャップ形成面502に当接できるようにバルブ先端部501を環状に形成すれば、減圧圧力を受圧する面積を環状となったバルブ先端部501のみと小さく抑えることが可能になる。減圧圧力を受圧する面積を狭くなると、バルブ部407に加わるレバー部503からの引き剥がし力も小さくなるので、高剛性材料からなるレバー部503から弾性部材であるバルブ407が引き剥がされるおそれが少なくなる。したがって、バルブ先端部501は、環状当接部として形成されることが好ましい。
レバー部503に対するバルブ部407の接合の手段として、接着剤を用いることも考えられる。しかしながら接着剤を用いる場合には、高剛性材料でありベース部材であるレバー部503と柔軟な材料からなり弾性部材であるバルブ部407との接着に適した接着剤の選択が難しい上に、接着剤に含まれる成分の溶出の恐れもある。例えば接着剤を用いてレバー部503にバルブ部407を接合した圧力調整機構を液体吐出装置に適用した場合、接着剤成分が記録液などに溶出して記録液中に異物が発生し、吐出口の詰まりなどを引き起こす恐れが生じる。
本実施形態では、接着剤を用いることなくバルブ部407をレバー部503に固定するために、バルブ部407をレバー部503に形成された環状溝によって保持する構成を採用している。図18に示すようにバルブ部407は、環状に形成されたバルブ先端部501のほかに、バルブ先端部501からレバー部503の深さ方向に延びる管状の被保持部505を有している。被保持部505は、その両側面が、レバー部503に形成された環状溝535の1対の側面504によって挟持されるようにして固定されている。図18では環状溝535の内部には既に被保持部505が存在するので環状溝535は単独で示されていないが、図19(b)には、バルブ部407が固定される前のレバー部503が示され、環状溝535も示されている。バルブ先端部501と被保持部505とは一体に形成されており、バルブ部407は、柔軟な材料からなる弾性部材として、全体として円筒形状を有する。バルブ部407においてレバー部503から突出している部分がバルブ先端部501であり、レバー部503の内部に埋もれている管状の部分が被保持部505ということになる。このようにレバー部503とバルブ部407とを備えるバルブ406は、例えば二色成形の手法によって製造することができる。二色成形の手法を用いる場合には、まず、一次成形によってレバー部503を形成した後に、二次成形により、ベース部材であるレバー部503に形成されている環状溝535の内部に高圧で樹脂を射出充填することによりバルブ部407が成形される。その結果、バルブ部407は、レバー部503の環状溝535の1対の側面504に挟まれた状態で、これらの側面504に密着し固定される。挟持されるように固定されている領域においてバルブ部407はベース部材であるレバー部503に直接接している。
レバー部503からのバルブ部407の脱落を防ぐために、本実施形態では、環状溝の幅513よりも、環状溝535がレバー部503の深さ方向に沿って被保持部505を保持する長さ、すなわち保持長さ514を長くする。具体的には、保持長さ514を環状溝の幅513の2倍以上とすることが好ましい。環状溝535の幅は、環状溝535の向かい合う1対の側面504の相互間の間隔であり、後述するように環状溝535がテーパー形状となっているときは、環状溝535の上端側での幅である。本実施形態では、環状当接部としてバルブ先端部501を形成する減圧圧力の受圧面積を小さくしているが、さらに環状溝535の幅513と保持長さ514の関係を定めることにより、レバー部503に対するバルブ部407の固定の信頼性をさらに高めている。またこのバルブ406では、弾性部材であるバルブ部407を構成する材料と相溶性が低い材料であっても、ベース部材であるレバー部503に使用することができて、バルブ部407及びレバー部503の材料選択性を広げることができる。
二色成形法を含め射出成形によってバルブ406を製造する場合、成形後に金型を開くことを考えると、レバー部503において環状溝535の1対の側面504の間隔は、レバー部503の深さ方向に向かうにつれて狭くする必要がある。すなわちレバー部503の環状溝535の断面形状としてテーパー状である必要がある。しかしながら、レバー部503からのバルブ部407の脱落を防ぐという観点から、向かい合う1対の側面504がなす角度(すなわちテーパー角)は20°以下とすることが好ましい。なお。1対の側面504がなす角度とは、環状溝535に沿う点を通ってその点における環状溝535の幅方向に延びる直線を含みレバー部503の深さ方向に平行な平面によるレバー部503の断面において、1対の側面504がなす角のことである。また、バルブ部407を構成する樹脂材料の成形収縮率と比較してレバー部(ベース部材)503を構成する樹脂材料を成形収縮率が小さい材料にすることによって、射出成形後の収縮によりバルブ部407が環状溝535の内側の側面504を締め付ける力を強くでき、固定強度をより高くすることができる。
レバー部503に対するバルブ部407の固定強度をさらに高めるために、図15に示すようにバルブ部407において環状のバルブ先端部501及び被保持部505から外方に延びる補強部506を設けてもよい。レバー部503は、その環状部535の1対の側面504がバルブ部407の被保持部505を保持するのと同様に、レバー部503に形成されている溝によって補強部506の少なくとも一部をも保持する。補強部506を設けることにより、バルブ部407を保持するためにレバー部503とバルブ部407とが直接接している面積が大きくなるので、レバー部503に対するバルブ部407の固定強度がさらに高くなる。必要に応じ、バルブ部407を中心にして放射状に延びるように複数の補強部506を設けてもよい。
このようにバルブ406では、弾性部材であるバルブ部407に対して柔軟な弾性材料が求められ、ベース部材であるレバー部503には剛性の高い材料が求められ、このように異なる性能の材料を用いることから、組み立て必要となる。バルブ406の組み立てでは、ギャップ413と押圧板404との位置の関係が変わらないように、バルブ先端部501とレバー部503の特に軸408と押圧板接触部409とを精度よく組み立てることが重要である。加えて、バルブ部407をレバー部503に固定する際に、バルブ先端部501にうねりや変形が発生しないようにする必要がある。このような要求を満たすために、バルブ部407とレバー部503とをいずれも射出成形可能な材料によって構成し、射出成形の一手法である二色成形により金型内で一体に組立成形することで、高い精度でバルブ406を成形し組み立てることが可能になる。以下、図19~図21を用いて二色成形により弾性部材であるバルブ部407とベース部材であるレバー部503とを成形し組み立てる方法について説明する。図19(a)は、図15のC-C線断面におけるバルブ部407付近の拡大図であって、成形と組み立てとが完了した状態を示している。図19(b)は、一次成形完了時のレバー部503の断面図であり、図19(c)は二次成形での樹脂充填の途中状態を示した断面図である。
二色成形によってバルブ406を形成するときは、まず、一次成形によりレバー部503のみを成形する。一次成形により、レバー部503には環状溝535が形成される。一次成形が完了すると、一次成形に用いた固定側金型519と可動側金型518とが図19(b)において破線で示した金型合わせ面で開く。その際、レバー部503は、可動側金型518に付着した状態にある。その後、二次成形を行うために、可動側金型518がレバー部503とともに二次成形用の固定側金型520の前に移動し、金型が閉じられる。その結果、二次成形用の固定側金型520が、既に成形されているレバー部503に当接する。その後、その後、図19(c)に示すように、二次成形ゲート510から、レバー部503と固定側金型520とによって形成された空間に、二次成形用の樹脂が射出充填される。固定側金型520には、図19(a)に示すように、バルブ先端部501に対応する位置において、ゲート方向に延びる樹脂導入路508が設けられている。ゲート510から金型内に入った樹脂は、図19(a)において矢印で示すように、樹脂導入口509から樹脂導入路508を通ってなだらかにバルブ先端部501に充填される。図20は、バルブ406におけるバルブ部407が設けられる部分、すなわち環状当接部が形成される部分の拡大図であるが、二次成形で用いるゲート510の位置や、成形後の樹脂導入路508を示している。樹脂導入路508が設けられていない場合、図21に示すようにバルブ先端部511が細く切り立っているため樹脂導入口509からの樹脂がバルブ先端部501に対応する位置に充填されにくくなり、ガスが残りやすくなる。ガス残りがあると、環状当接部であるバルブ先端部501に凹みが発生する。このような凹みがあると、バルブ先端部501とギャップ形成面502とが隙間なく当接しない可能性が生じ、背圧型の圧力調整機構として十分に機能しなくなるおそれがある。したがって、樹脂導入路508を設けることが好ましい。樹脂導入路508に充填された樹脂は成形後にも残存するから、樹脂導入路508の樹脂が上述した補強部506として用いられるようにしてもよい。樹脂導入路508がバルブ先端部501に接続する位置は、バルブ先端部501の先端に近ければ近い方がよく、環状の突起であるバルブ先端部501の突起先端部であることが好ましい。また、突起先端部によって張られる平面αに対して樹脂導入路508が延びる方向がなす角512は、平面αと突起先端部でのバルブ先端部501の外面とがなす角511(図18参照)より小さいことが好ましく、30°以下であることがより好ましい。
本実施形態ではレバー部503に環状溝535を形成して環状溝535の両方の側面504によってバルブ部407を保持しているが、レバー部503においてこの環状溝535の底部521にはガス抜き用の貫通孔522が設けられている。弾性部材であるバルブ部407を射出成形する際に樹脂の最終充填部にはガスが残りやすく、ガス残りがあると、バルブ部407のレバー部503の脱落や、温度変化による残存ガスの膨張に起因したバルブ部407の変形などのおそれが生じる。貫通孔522を設けることにより、最終充填部のガスを可動側金型518に逃がすことができるため。ガス残りを低減することができる。二色成形によらずにバルブ部407とレバー部503とを個別に成形し組み立てる場合であっても、貫通孔522があれば、組み立て時にバルブ部407とレバー部503との間の空間に残るエアを逃がすことができ、エアの膨張に伴う不良を予防できる。
このようにしてレバー部503とバルブ部407とを射出成形により組立成形することによって、レバー部503にするバルブ先端部501の位置の精度は金型によって決まることになるので、バルブ406を精度よく組立てることが可能になる。バルブ部407を成形するための樹脂材料として、例えば、熱可塑性エラストマであるスチレン系エラストマが挙げられる。高い剛性が要求されるベース部材であるレバー部503を成形するための樹脂材料としては、変性ポリフェニレンエーテルが好ましく、それにポリスチレンやポリオレフィン、フィラーなどが添加されたものであってもよい。バルブ406を形成する方法として二色成形による組立て方法は一例であり、成形したレバー部503を金型に挿入しバルブ部407を成形するインサート成形により組み立ててもよい。別の組立方法として、バルブ部407とレバー部503を個別に成形し、バルブ部407の被保持部505に熱を加えて軟化させ、レバー部503に予め形成されている環状溝535に被保持部505を挿入する方法もある。以上説明した材料や組立方法は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
(減圧型の圧力調整機構)
以上、本発明に基づくシール部材を、背圧型の圧力調整機構において背圧制御のために圧力損失調整を行うバルブに用いる場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。本発明に基づくシール部材は、減圧型の圧力調整機構や、さらには逆止弁などの各種の弁、封止を行うためのガスケットなどにも用いることできる。以下、本発明に基づくシール部材を減圧型の圧力調整機構においてバルブとして用いる場合を説明する。図22(a)は、減圧型の圧力調整機構を示す外観斜視図であり、図22(b)は図22(a)のD-D線での断面図である。ここで説明する減圧型の圧力調整機構は、例えば、図2に示した第一循環形態での圧力制御ユニット230において使用可能なものである。
減圧型の圧力調整機構も上述した背圧型の圧力調整機構と同様に、第一液体収納室401、第二液体収納室403、押圧板404、可撓性フィルム405、バルブ406、負圧バネ411、バルブバネ412などを備えている。押圧板404は、可撓性フィルム405によって固定されるとともに負圧バネ411により付勢され、第一液体収納室401内の液体の量の増減に応じて変位する。シール部材であるバルブ406は、バルブバネ412によって、第二液体収納室403から第一液体収納室401に連通する開口430を閉塞する方向に付勢されている。減圧型であるので、流れの下流側の圧力に応じて流れの量が制御される必要があり、液体の流れは、第二液体収納室403から第一液体収納室401に向かう方向となる。第一液体収納室401内が収縮すると押圧板404がバルブバネ412の付勢力に抗してバルブ406を押圧することで、第二液体収納室403と第一液体収納室401との間の開口430からバルブ406が遠ざかって開口430での流抵抗が小さくなる。言い換えればこの圧力調整機構では、第一液体収納室401を拡張する方向に押圧板404が変位したときに弾性部材516が開口430に近付き、この開口430を介して流出する液体に対する流抵抗が大きくなる。この圧力調整機構は、第一液体収納室401の圧力が高くなれば第一液体収納室401が拡張し、開口430を介して第一液体収納室401に流れ込む液体に対する流抵抗が大きくなるので、第一液体収納室401内の液体の圧力を一定とするように動作する。
図23(a)は、図22に示した減圧型の圧力調整機構に用いられるバルブ406の外観斜視図であり、図23(b)は図23(a)のE-E線での断面図である。バルブ406は、全体として、E-E線を中心軸とする回転体の形状に構成されており、押圧板接触部530を含むベース部材515と補強部506を備えた弾性部材516とからなっている。ベース部材515は略円柱形状であり、その一端から、バルブ406の中心軸に沿って棒状の押圧板接触部530が延びている。押圧板接触部530は、押圧板404に当接して押圧板404の変位に応じてバルブ406も移動するように設けられている。略円筒形の弾性部材516がベース部材515に対して同軸となるように接合し固定されている。弾性部材516の一端部が押圧板接触部530を取り囲むようにベース部材515から環状の突起部として突出しており、環状当接部であるバルブ先端部501となっている。弾性部材516の残りの部分は、被保持部505としてベース部材515に形成された環状溝に埋め込まれた形態となっており、環状溝の1対の側面504によって挟持されるように保持されている。ここでも、環状溝がベース部材515の深さ方向に沿って被保持部505を保持する長さである保持長さの方が、環状溝の幅よりも長くなっており、ベース部材515に対する被保持部505の密着性が高まっている。また、弾性部材516に補強部506が設けられており、ベース部材515が補強部506も保持することによって、固定強度が高まり、ベース部材515からの弾性部材516の脱落のおそれをより低くしている。また、弾性部材516を構成する材料と相溶性が低い材料であってもベース部材515に使用することができて、ベース部材515の材料選択性を広げることができる。ベース部材515に対して強度の高い材料を使用することにより、長期にわたって高い信頼性を有する減圧型の圧力調整機構を構成できる。また、部品の小型化が可能になるので圧力調整機構も小型化でき、ひいては圧力調整機構を備える液体吐出装置などの小型化も可能になる。
(キャップ部材)
次に、本発明に基づくシール部材の別の応用について説明する。本発明に基づくシール部材は、液体吐出装置において非使用時や待機時に液体吐出ヘッドを覆って吐出口からの記録液の蒸発を抑制するキャップ部材としても使用することができる。図24(a)は本発明に基づくシール部材によって構成されたキャップ部材の斜視図であり、図24(b)は図24(a)のF-F線での断面図である。液体吐出ヘッドにおいて吐出口が形成されている面に、環状に設けられた弾性部材516を当接させることにより、キャップ部材は液体吐出ヘッドを覆い、吐出口からの記録液の蒸発を抑制する。また、環状の弾性部材516によって囲まれた空間の内部をポンプによって減圧することにより、液体吐出ヘッドから記録液を吸引し、吐出口付近に存在する異物などを除去することも可能である。弾性部材516は、上述したようにしてベース部材515に固定されている。またキャップ部材では、弾性部材516に補強部517が設けられており、ベース部材515が補強部517の少なくとも一部も保持することによって、ベース部材515からの弾性部材516の脱落のおそれをより低くしている。このキャップ部材でも、ベース部材515からの弾性部材516の脱落を防ぎつつ、ベース部材515に対して剛性の高い材料を選択でき、その結果、キャップ部材の信頼性を高くすることができる。
406 バルブ
407 バルブ部
410 流出口
413 ギャップ
501 バルブ先端部
503 ベース部材
504 側面
505 被保持部
513 環状溝の幅
514 保持長さ
535 環状溝

Claims (16)

  1. 環状の突起として形成された環状当接部を有する弾性部材と、
    前記弾性部材が固定されるベース部材と、
    を有し、
    前記弾性部材は、前記環状当接部から延びる管状の被保持部が前記ベース部材に形成された環状溝によって保持されることによって前記ベース部材に固定され、前記環状溝の幅よりも、前記環状溝が前記ベース部材の深さ方向に沿って前記被保持部を保持している長さである保持長さの方が長く、
    前記弾性部材は、前記環状当接部の外方に向かって前記環状当接部及び前記被保持部から延びる補強部を有し、前記補強部の少なくとも一部は前記ベース部材に形成された溝によって保持されていることを特徴とする、シール部材。
  2. 前記環状溝の1対の側面と前記弾性部材の前記被保持部とが直接接する、請求項1に記載のシール部材。
  3. 前記ベース部材及び前記弾性部材はいずれも樹脂材料からなり、前記ベース部材を構成する樹脂材料の成形収縮率の方が前記弾性部材を構成する樹脂材料の成形収縮率よりも小さい、請求項1または2に記載のシール部材。
  4. 前記保持長さは前記環状溝の幅の2倍以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシール部材。
  5. 前記環状溝に沿う点を通って当該点における前記環状溝の幅方向に延びる直線を含み前記ベース部材の前記深さ方向に平行な平面による、前記ベース部材の断面において、前記環状溝の1対の側面がなす角度は20°以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール部材。
  6. 前記ベース部材において、前記環状溝の底部に前記ベース部材を貫通する貫通孔が設けられている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシール部材。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシール部材を製造するシール部材の製造方法であって、
    金型内において前記弾性部材と前記ベース部材とを射出成形により一体に組立成形することを特徴とする、シール部材の製造方法。
  8. 前記弾性部材の成形に用いる前記金型に、ゲートから前記環状当接部に樹脂を流入させる樹脂導入口と、前記樹脂導入口から前記環状当接部の突起先端部につながる樹脂導入路とが設けられている、請求項7に記載のシール部材の製造方法。
  9. 前記突起先端部によって張られる平面に対して前記樹脂導入路が延びる方向がなす角は、前記平面と前記突起先端部での前記環状当接部の外面とがなす角よりも小さい、請求項8に記載のシール部材の製造方法。
  10. 前記平面に対して前記樹脂導入路が延びる方向がなす角は、30°以下である、請求項9に記載のシール部材の製造方法。
  11. 液体を収納し、外壁の少なくとも一部が可撓性フィルムで形成された液体収納室と、
    前記液体収納室に連通する開口と、
    前記可撓性フィルムの変位に応じて変位する押圧板と、
    前記液体収納室を拡張させる方向に前記押圧板を付勢する第一付勢部材と、
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシール部材と、
    を有し、
    前記シール部材は、前記押圧板の変位に応じて前記シール部材の前記弾性部材と前記開口との距離が変化して前記開口を流れる液体に対する流抵抗が変化するように配置され、前記液体収納室における液体の圧力が調整されることを特徴とする、圧力調整機構。
  12. 前記弾性部材によって前記開口を閉じる方向に前記シール部材を付勢する第二付勢部材をさらに備え、
    前記液体収納室を拡張する方向に前記押圧板が変位したときに前記弾性部材が前記開口から遠ざかって前記液体収納室から前記開口を介して流出する液体に対する流抵抗が小さくなる、背圧型の圧力調整機構である、請求項11に記載の圧力調整機構
  13. 前記シール部材において、前記ベース部材はレバー形状に形成されるとともに軸を有して前記軸を中心として回動可能であり、前記軸から見て前記ベース部材の一端に前記弾性部材が設けられて他端において前記押圧板と当接し、
    前記軸を中心とする回動によって前記弾性部材と前記開口との距離が変化する、請求項12に記載の圧力調整機構。
  14. 前記弾性部材によって前記開口を閉じる方向に前記シール部材を付勢する第二付勢部材をさらに備え、
    前記液体収納室を拡張する方向に前記押圧板が変位したときに前記弾性部材が前記開口に近付いて前記液体収納室に前記開口を介して流入する液体に対する流抵抗が大きくなる、減圧型の圧力調整機構である、請求項11に記載の圧力調整機構
  15. 吐出口と、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子と、前記記録素子を内部に備える圧力室と、を備える複数の記録素子基板と、
    前記複数の記録素子基板と連通する一対の共通流路と、
    前記一対の共通流路のうち一方の共通流路と他方の共通流路とを接続し、複数の前記圧力室と各々連通する複数の個別流路と、
    前記一対の共通流路における各々の上流側又は下流側に接続され、互いに異なる圧力に設定される一対の請求項11乃至14のいずれか1項に記載の圧力調整機構と、
    を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
  16. 液体を収容する液体収容容器と、
    請求項15に記載の液体吐出ヘッドと、
    前記一対の共通流路を含む循環経路に液体を循環させる循環機構と、
    を有することを特徴とする液体吐出装置。
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