以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイルまたはレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。ただし、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
図1は、本実施形態に係るレンズ装置8の断面を示す。図1は、レンズ装置8の光軸AXに直交する断面における断面透視図である。なお、図1は、鏡筒6が備える第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200を含むように切断した場合の断面透視図である。図2は、レンズ装置8の光軸AXに直交する第1の断面における断面透視図である。図2は、被写体側から鏡筒6を見た場合の断面透視図である。図3は、レンズ装置8の光軸AXに直交する第2の断面における断面透視図である。図3は、像側から鏡筒6を見た場合の断面透視図である。直交は、理想的な状態を説明するために使っている。しかしながら、設計や生産のばらつきによって直交でない状態もあり得る。このような場合には直交ではなく、交わる状態になる。
レンズ装置8は、レンズ鏡筒6と、第1レンズ群70と、第2レンズ群80と、第3レンズ群90とを備える。第1レンズ群70、第2レンズ群80、及び第3レンズ群90は、物体側から順に第1レンズ群70、第2レンズ群80、第3レンズ群90の順で設けられる。第1レンズ群70は、鏡筒6に対して固定されている。第2レンズ群80及び第3レンズ群90は、鏡筒6に対して光軸AX方向に移動可能である。第2レンズ群80は、主としてズーミングを担うレンズ群である。第3レンズ群90は、主としてフォーカシングを担うレンズ群である。
鏡筒6の構造及び機能等を説明する場合に、レンズ装置8の光軸AXに沿う方向をz軸方向と定めて説明する場合がある。z軸方向は、被写体光束がレンズ装置8に入射する方向に平行な方向である。被写体光束がレンズ装置8に向かって入射する方向をz軸マイナス方向と定め、その反対方向をz軸プラス方向と定める。つまり、z軸プラス側は物体側に対応し、z軸マイナス側は像側に対応する。また、記載が冗長になることを避けるために、z軸に平行な方向やz軸に沿う方向のことを「z軸方向」等と呼ぶ場合がある。
第2レンズ群80は、物体側から順に、レンズ81、第2レンズ82、第3レンズ83を備える。鏡筒6は、レンズ保持部材30と、第1のガイド部材100と、第2のガイド部材200と、ステッピングモータ320と、推力伝達部材300と、バネ110と、磁石210と、ヨーク220とを備える。
ステッピングモータ320は、リードスクリュー310を有する。推力伝達部材300はリードスクリュー310のネジ部と噛み合う。推力伝達部材300は、例えばリードスクリュー310と噛み合うナットである。推力伝達部材300は、ステッピングモータ320により生成されたz軸方向の推力をレンズ保持部材30に伝達する。
ステッピングモータ320の駆動力によってリードスクリュー310が回転すると、推力伝達部材300はz軸方向に沿って移動する。推力伝達部材300は、リードスクリュー310の回転方向に応じて、z軸プラス方向又はz軸マイナス方向に移動する。推力伝達部材300は、ステッピングモータ320の駆動力によって生じるz軸方向の推力を、レンズ保持部材30に伝達する。
レンズ保持部材30は、第2レンズ群80を保持する。レンズ保持部材30は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に保持される。第1のガイド部材100は、z軸に沿って設けられる。第2のガイド部材200は、z軸方向に設けられる。レンズ保持部材30は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に沿って移動可能である。なお、第1のガイド部材100は、主としてレンズ保持部材30の位置決め用のガイド軸として機能する。第2のガイド部材200は、主として第1のガイド部材100を中心とする回転止め用のガイド軸として機能する。
レンズ保持部材30は、第1レンズ保持部材10と、第2レンズ保持部材20とを備える。第1レンズ保持部材10及び第2レンズ保持部材20は、レンズ保持部材30として一体的に固定される。レンズ保持部材30は、スリーブ31と、溝32と、バネ取付部34と、収容部33とを備える。スリーブ31、溝32、バネ取付部34、及び収容部33は、第1レンズ保持部材10に設けられる。第1レンズ保持部材10は、第1レンズ81を保持する。第2レンズ保持部材20は、第2レンズ82及び第3レンズ83を保持する。レンズ保持部材30には、第1レンズ保持部材10と第2レンズ保持部材20との間に可変絞り装置85が固定される。
第1のガイド部材100は、スリーブ31が有するz軸方向に延びる貫通孔に挿入される。溝32はz軸方向に延伸する。第2のガイド部材200は、z軸方向に延びる溝32に挿入される。レンズ保持部材30は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に沿って、z軸方向に移動可能である。
一方、レンズ保持部材30のz軸方向以外の方向の運動は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200によって規制される。例えば、レンズ保持部材30のz軸周りの回転は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200によって規制される。また、レンズ保持部材30によって保持される第2レンズ群80の光軸がz軸に対して傾く方向の運動も、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200によって規制される。
バネ110は、z軸に沿う方向の収縮力が生じるようにz軸に沿って鏡筒6内に設けられる。バネ110のz軸マイナス側の一端は、レンズ保持部材30のバネ取付部34に取り付けられる。バネ110のz軸プラス側の一端は、鏡筒6内の固定された部位に取り付けられる。バネ110のz軸に沿う方向の収縮力は、バネ取付部34を介してレンズ保持部材30に伝達される。レンズ保持部材30は、バネ110の収縮力によって、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に沿ってz軸プラス方向に移動可能である。
推力伝達部材300は、第1の面301と、第2の面302とを有する。第1の面301は、推力伝達部材300のz軸プラス側の面である。第2の面302は、推力伝達部材300のz軸マイナス側の面である。
収容部33は、第1部分36と、第2部分37とを備える。推力伝達部材300、第1部分36及び第2部分37は、z軸プラス方向に、第2部分37、推力伝達部材300、第1部分36の順で設けられる。すなわち、第1部分36は、推力伝達部材300よりz軸プラス側に位置する。第2部分37は、推力伝達部材300よりz軸マイナス側に位置する。z軸方向において、推力伝達部材300は、第1部分36と第2部分37との間に設けられる。第1部分36は、推力伝達部材300の第1の面301の一部を覆う。第2部分37は、推力伝達部材300の第2の面302の一部を覆う。したがって、第1部分36及び第2部分37には、推力伝達部材300からz軸方向の推力が伝達され得る。
リードスクリューの回転によって推力伝達部材300がz軸マイナス方向に移動すると、推力伝達部材300は、第2の面302が第2部分37に接触してz軸マイナス方向の推力をレンズ保持部材30に伝達する。これにより、レンズ保持部材30は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に沿ってz軸マイナス方向に移動する。リードスクリューの回転によって推力伝達部材300がz軸プラス方向に移動すると、推力伝達部材300は、第1の面301が第1部分36に接触してz軸プラス方向の推力をレンズ保持部材30に伝達する。
一般に、互いに嵌まり合って運動する機械要素の間には、機械要素の寸法公差、温度による収縮等を考慮して、隙間を設ける必要がある。例えば、レンズ保持部材30のスリーブ31と、第1のガイド部材100との間には、隙間を設ける必要がある。同様に、レンズ保持部材30の溝32と第2のガイド部材200との間にも、隙間を設ける必要がある。鏡筒6に振動が加わった場合、上述した隙間があることによって、レンズ保持部材30に振動が生じる可能性がある。レンズ保持部材30が振動すると、レンズ装置8を通過した被写体光によって形成される像に像揺れが生じる。
レンズ装置8においては、レンズ保持部材30は、バネ110及び磁石210によってそれぞれ第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に対して互いに異なる方向にバイアスされる。これにより、機械要素の隙間に起因するレンズ保持部材30の振動が抑制される。
バネ110は、z軸プラス方向の成分を有する力により、第1のガイド部材100に対してレンズ保持部材30をバイアスする。バネ110は、z軸プラス方向の成分を有する力をレンズ保持部材30の特定の部位に加えることによって、第1のガイド部材100の延伸方向(z軸方向)とは交差する特定の方向にレンズ保持部材30を変位させる力がレンズ保持部材30に作用する。これにより、レンズ保持部材30は第1のガイド部材100に対して一方向に押しつけられる。バネ110は、第1のバイアス部材の一例である。バネ110は弾性体の一例である。
磁石210は、第2のガイド部材200に対してレンズ保持部材30をバイアスする。磁石210は、磁力により第2のガイド部材200に対してレンズ保持部材30をバイアスする。磁石210から生じる磁力によって、第2のガイド部材200の延伸方向(z軸方向)とは交差する特定の方向にレンズ保持部材30を変位させる力がレンズ保持部材30に作用する。これにより、レンズ保持部材30は第2のガイド部材200に対して一方向に押しつけられる。
図3に示されるように、磁石210及びヨーク220は、レンズ保持部材30に固定されている。磁石210及びヨーク220は、溝32の近傍に固定されている。磁石210及びヨーク220と第2のガイド部材200とは、第2のガイド部材200の近傍に位置し、かつ、光軸を中心とする周方向において、第2のガイド部材200とは異なる位置に位置する。磁石210及びヨーク220が、磁力により第2のガイド部材200に引き付けられると、レンズ保持部材30には、z軸に直交する面において、第1のガイド部材100を中心とする回転方向の成分を持つ力が作用する。このように、z軸に直交する面においては、磁石210が発生する磁力により、レンズ保持部材30を第2のガイド部材200に対してバイアスすることができる。磁石210及びヨーク220は、第2のバイアス部材の一例である。
図2から図5を参照して、レンズ保持部材30を第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200に対してバイアスすることによる振動の抑制機構を説明する。
図4は、レンズ保持部材30にバネ110の収縮力が作用した状態を模式的に示す図である。図5は、レンズ保持部材30に磁石210の磁力が作用した状態を模式的に示す図である。図4は、バネ110、レンズ保持部材30、第1のガイド部材100、及び推力伝達部材300の概略的な位置関係を示しており、それらの部材が図4に示す形状や大きさを有することを意味していない。図5は、第2のガイド部材200及びレンズ保持部材30の溝32の概略的な位置関係を示しており、それらの部材が図5に示す形状や大きさを有することを意味していない。
上述したように、z軸方向以外のレンズ保持部材30の運動は、第1のガイド部材100及び第2のガイド部材200によって規制される。図2に示すL1及び図3に示すL2は、第1のガイド部材100と第2のガイド部材200とを結ぶ線分を延長した線を表す。
図2及び図3に示されるように、バネ取付部34は、L1及びL2のいずれの線上にも位置しない。また、推力伝達部材300及び収容部33は、L1及びL2のいずれの線上にお位置しない。図2及び図3に示されるように、説明の都合上、L1及びL2よりバネ110が設けられた側の領域を第1の領域61と呼び、L1及びL2より推力伝達部材300及び収容部33が設けられた側の領域を第2の領域62と呼ぶ。
バネ110に生じるz軸プラス方向の収縮力がバネ取付部34を介してレンズ保持部材30に作用すると、レンズ保持部材30は、L1及びL2を含むz軸に平行な面に対してわずかに傾く。例えば図4には、バネ110の収縮力Fsによってレンズ保持部材30が傾いた状態が模式的に示されている。図4には、レンズ保持部材30が傾く方向がD1で示されている。図4等に模式的に示されるように、例えばスリーブ31のz軸プラス側は、第1の領域61側が第1のガイド部材100の特定の側に寄せられて第1のガイド部材100と接触する。一方、スリーブ31のz軸マイナス側は、第2の領域62側が第1のガイド部材100の特定の側に寄せられて第1のガイド部材100と接触する。
第2のガイド部材200は、磁性体で形成される。そのため、磁石210によりヨーク220から発生する磁場で生じる磁力により、z軸に直交する面内において、溝32のうち磁石210に近い側の部位が第2のガイド部材200に引き寄せられる。例えば図5には、磁力Fmによって溝32の内面35が第2のガイド部材200に引き寄せられいる状態が示されている。このように、レンズ保持部材30は、磁石210により生じる磁力Fmによって、第2のガイド部材200に対してバイアスされる。
なお、第2のガイド部材200の比透磁率は、第1のガイド部材100の比透磁率より高くてよい。第1のガイド部材100は例えば第1のステンレス鋼で形成されてよい。第2のガイド部材200は、第1のステンレス鋼より比透磁率が高い第2のステンレス鋼で形成されてよい。
上述したように、バネ110が第1のガイド部材100に対してレンズ保持部材30をバイアスすることによって、機械要素の隙間に起因してz軸方向に対して傾斜する方向にレンズ保持部材30が振動することを抑制することができる。更に、磁石210及びヨーク220によって生じる磁力によって、z軸に直交する面内においてレンズ保持部材30が第2のガイド部材200に対してバイアスされるので、機械要素の隙間に起因して第1のガイド部材100を中心とする回転方向にレンズ保持部材30が振動することを抑制することができる。また、レンズ保持部材30がz軸方向から傾斜することによって推力伝達部材300がリードスクリュー310のネジ部と強く噛み合うので、バックラッシュに起因してレンズ保持部材30がz軸方向に振動することをより強く抑制することができる。
次に、レンズ保持部材30をz軸プラス方向に移動する場合及びz軸マイナス方向に移動する場合の作用を、図4、図6及び図7を参照して説明する。まず、図4に示されるように、レンズ保持部材30にFsのみが作用している状態では、レンズ保持部材30は、z軸に対してわずかに傾斜した状態で第1のガイド部材100に対してバイアスされて静止し得る。
図6は、レンズ保持部材30をz軸マイナス方向に移動させる場合を模式的に示す。レンズ保持部材30をz軸マイナス方向に移動させる場合、ステッピングモータ320がリードスクリュー310を第1の向きに回転させることにより、推力伝達部材300がz軸マイナス方向に変位する。このとき、推力伝達部材300は、第2の面302が収容部33の第2部分37に接触した状態となり、z軸マイナス方向の力F1をレンズ保持部材30に加える。F1はバネ110の収縮力Fsより大きい。そのため、レンズ保持部材30は全体としてz軸マイナス方向に移動する。
図6に示されるように、バネ110によるz軸プラス方向の収縮力Fsは、レンズ保持部材30において第1の領域61側に位置するバネ取付部34に作用する。一方、z軸マイナス方向の力F1は、レンズ保持部材30において第2の領域62側に位置する収容部33(第1部分36及び第2部分37)に作用する。そのため、レンズ保持部材30は、D1の向きに傾いた状態を維持したまま、z軸マイナス方向に変位する。したがって、レンズ保持部材30がz軸マイナス方向に移動する場合のレンズ保持部材30の傾きは、レンズ保持部材30が静止している場合の傾きと実質的に変わらない。
図7は、レンズ保持部材30をz軸プラス方向に移動させる場合を模式的に示す。推力伝達部材300は、ステッピングモータ320がリードスクリュー310を第2の向きに回転させることにより、z軸プラス方向に変位する。収容部33の第1部分36と第2部分37との間のz軸方向の距離は、z軸方向の推力伝達部材300の厚みより長い。そのため、レンズ保持部材30が静止した状態で推力伝達部材300がz軸プラス方向に変位すると、図7に示されるように推力伝達部材300は収容部33内においてレンズ保持部材30に対して微小に変位する。例えば、図7に示されるように、ステッピングモータ320に1つの駆動パルスが供給された場合に、推力伝達部材300は第1部分36と第2部分37との間で微小に変位する。推力伝達部材300が第1部分36と第2部分37内で変位したことに応じて、レンズ保持部材30はバネ110の収縮力Fsによってz軸プラス方向に変位する。そのため、レンズ保持部材30は、D1の向きに傾いた状態を維持したまま、z軸プラス方向に移動する。したがって、レンズ保持部材30がz軸プラス方向に移動する場合のレンズ保持部材30の傾きは、レンズ保持部材30が静止している場合の傾きと実質的に変わらない。
以上に説明したように、バネ取付部34が第1の領域61に位置し、推力伝達部材300及び収容部33が第2の領域62に位置する。ステッピングモータ320によってz軸方向の推力が発生していない場合には、レンズ保持部材30は、バネ110の収縮力によるz軸プラス方向の成分を有する力により、第2部分37が推力伝達部材300に接した状態となってz軸方向に位置決めされる。そして、ステッピングモータ320によってz軸プラス方向の推力が発生した場合に、推力伝達部材300が第1部分36と第2部分37との間でz軸プラス方向に変位することに応じて、バネ110のz軸プラス方向の成分を有する力によってレンズ保持部材30が第1の方向に移動する。一方、ステッピングモータ320によってz軸マイナス方向の推力が発生した場合に、レンズ保持部材30は、第2部分37が推力伝達部材300に接した状態で、推力伝達部材300から伝達されるz軸マイナス方向の推力によってz軸マイナス方向に移動する。そのため、レンズ保持部材30をz軸プラス方向に移動する場合及びレンズ保持部材30をz軸マイナス方向に移動する場合のいずれの場合においても、z軸に対してレンズ保持部材30が特定の方向にバイアスされた状態を維持しつつ、レンズ保持部材30を移動させることができる。そのため、レンズ保持部材30の移動方向を切り替える場合や、レンズ保持部材30を静止状態からz軸方向に移動させようとする場合においても、レンズ保持部材30の振動を抑制することができる。これにより、機械要素の隙間に起因する像揺れを抑制することができる。
図8、図9及び図10は、鏡筒6の対比例として、バネ110の収縮力Fsをレンズ保持部材30の第2の領域62側で作用させた形態を模式的に示す。図8は、図4に対応する対比例の模式図である。
図8に示されるように、レンズ保持部材30にFsのみが作用している場合、レンズ保持部材30は、z軸に対してわずかに傾斜した状態で静止する。図8においては、レンズ保持部材30が傾く方向をD2で示す。
図9は、レンズ保持部材30をz軸プラス方向に移動させる場合を示す。推力伝達部材300は、リードスクリュー310の第2の向きに回転させることにより、z軸プラス方向に変位する。上述したように、推力伝達部材300は、収容部33内においてレンズ保持部材30に対して、図9に示されるように微小に変位する。推力伝達部材300が第1部分36と第2部分37内で変位したことに応じて、レンズ保持部材30はバネ110の収縮力Fsによってz軸プラス方向に変位する。そのため、レンズ保持部材30は、D2の向きに傾いた状態を維持したまま、z軸プラス方向に移動する。したがって、レンズ保持部材30がz軸プラス方向に移動する場合のレンズ保持部材30の傾きは、レンズ保持部材30が静止している場合の傾きと実質的に変わらない。
図10は、レンズ保持部材30をz軸マイナス方向に移動させる場合を示す。ステッピングモータ320がリードスクリュー310を第1の向きに回転させることにより、推力伝達部材300がz軸マイナス方向に変位する。このとき、推力伝達部材300は、第2の面302が収容部33の第2部分37に接触した状態で、z軸マイナス方向の力F1がレンズ保持部材30に作用する。F1はバネ110の収縮力Fsより大きい。そのため、z軸に対するレンズ保持部材30の傾きD3は、レンズ保持部材30が静止している場合における傾きD2とは逆方向の傾きとなる。したがって、レンズ保持部材30の移動方向を切り替える場合や、レンズ保持部材30を静止状態からz軸マイナス方向に移動させようとする場合に、レンズ保持部材30の傾きが変わってしまう。また、レンズ保持部材30の移動方向を切り替える場合や、レンズ保持部材30を静止状態からz軸マイナス方向に移動させようとする場合に、鏡筒6に加わる振動によって、レンズ保持部材30が振動してしまう。
以上に説明したように、z軸に直行する面において、第1のガイド部材100は、バネ110と推力伝達部材300との間に配置される。そのため、例えば図4、図6から図10等に関連して説明したように、レンズ保持部材30をz軸方向に沿って移動させる場合においても、機械要素の隙間に起因して生じるレンズ保持部材30の振動を抑制することができる。
なお、鏡筒6においては、第1のガイド部材100の近傍にバネ110が配置されている。バネ110は、鏡筒6内の固定部に対してバイアス力を付与することにより、レンズ保持部材30を第1のガイド部材100に対して傾ける引張りバネである。しかし、バネ110に代えて圧縮バネを用いる形態を採用できる。また、バネ110に代えて、磁石等の磁力によりバイアス力を付与する形態を採用できる。
鏡筒6においては、磁石210及びヨーク220が第2のガイド部材200と引き合う磁力を発生する。第2のガイド部材200を比透磁率の高い磁性体で形成する形態に代えて、鏡筒6内の他の部位に磁性体を設けることによって、磁石210及びヨーク220が第2のガイド部材200に向かう方向の磁力を発生する形態を採用できる。ヨーク220を用いない形態を採用できる。また、磁石210及びヨーク220に代えて、バネ等の弾性体を用いることにより、第2のガイド部材200に向かう方向のバイアス力をレンズ保持部材30に付与する形態を採用できる。
磁石210としては、ネオジム磁石等の永久磁石を適用できる。磁石としては、ネオジム磁石に限らず、任意の材料で形成された磁石を適用できる。なお、磁石は、電磁石を含む概念である。
鏡筒6において、レンズ保持部材30は、主として変倍を担う第2レンズ群80を保持するレンズ保持部材である。レンズ保持部材30に関連して説明したバイアス機構を、主としてフォーカシングを担うレンズ群を保持するレンズ保持部材に適用してよい。
ステッピングモータ320は、アクチュエータの一例である。アクチュエータとしてステッピングモータ以外の駆動装置を適用する形態を採用できる。なお、アクチュエータ以外の駆動力を用いてレンズ保持部材30を駆動する形態を採用できる。例えば、レンズ保持部材30の駆動力をズームリング等の操作部材を通じて利用者から受け取る形態を採用できる。
以上において、レンズ装置8は、レンズ交換式の撮像装置に装着される交換レンズであってよい。レンズ装置8は、レンズ非交換式の撮像装置が備えるレンズ装置であってよい。
図11は、レンズ装置8を備える無人航空機(UAV)の一例を示す。UAVは移動体の一例である。UAV1000は、UAV本体1020と、ジンバル1030と、複数の撮像装置1060と、レンズ装置8を備える撮像装置9を備えてよい。UAV1000は、推進部により推進される移動体の一例である。移動体とは、UAVの他、空中を移動する他の航空機などの飛行体、地上を移動する車両、水上を移動する船舶等を含む概念である。UAV1000は撮像装置を備えるシステムの一例である。
UAV本体1020は、複数の回転翼を備える。複数の回転翼は、推進部の一例である。UAV本体1020は、複数の回転翼の回転を制御することでUAV1000を飛行させる。UAV本体1020は、例えば、4つの回転翼を用いてUAV1000を飛行させる。回転翼の数は、4つには限定されない。また、UAV1000は、回転翼を有さない固定翼機でもよい。
撮像装置9は、所望の撮像範囲に含まれる被写体を撮像する撮像用のカメラである。ジンバル1030は、撮像装置9を回転可能に支持する。ジンバル1030は、撮像装置9を変位可能に支持する支持機構の一例である。例えば、ジンバル1030は、撮像装置9を、アクチュエータを用いてピッチ軸で回転可能に支持する。ジンバル1030は、撮像装置9を、アクチュエータを用いて更にロール軸及びヨー軸のそれぞれを中心に回転可能に支持する。ジンバル1030は、ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つを中心に撮像装置9を回転させることで、撮像装置9の姿勢を変更してよい。
複数の撮像装置1060は、UAV1000の飛行を制御するためにUAV1000の周囲を撮像するセンシング用のカメラである。2つの撮像装置1060が、UAV1000の機首である正面に設けられてよい。更に他の2つの撮像装置1060が、UAV1000の底面に設けられてよい。正面側の2つの撮像装置1060はペアとなり、いわゆるステレオカメラとして機能してよい。底面側の2つの撮像装置1060もペアとなり、ステレオカメラとして機能してよい。複数の撮像装置1060により撮像された画像に基づいて、UAV1000の周囲の3次元空間データが生成されてよい。UAV1000が備える撮像装置1060の数は4つには限定されない。UAV1000は、少なくとも1つの撮像装置1060を備えていればよい。UAV1000は、UAV1000の機首、機尾、側面、底面、及び天井面のそれぞれに少なくとも1つの撮像装置1060を備えてもよい。撮像装置1060で設定できる画角は、撮像装置9で設定できる画角より広くてよい。撮像装置1060は、単焦点レンズまたは魚眼レンズを有してもよい。
遠隔操作装置1600は、UAV1000と通信して、UAV1000を遠隔操作する。遠隔操作装置1600は、UAV1000と無線で通信してよい。遠隔操作装置1600は、UAV1000に上昇、下降、加速、減速、前進、後進、回転等のUAV1000の移動に関する各種命令を示す指示情報を送信する。指示情報は、例えば、UAV1000の高度を上昇させる指示情報を含む。指示情報は、UAV1000が位置すべき高度を示してよい。UAV1000は、遠隔操作装置1600から受信した指示情報により示される高度に位置するように移動する。指示情報は、UAV1000を上昇させる上昇命令を含んでよい。UAV1000は、上昇命令を受け付けている間、上昇する。UAV1000は、上昇命令を受け付けても、UAV1000の高度が上限高度に達している場合には、上昇を制限してよい。
図12は、スタビライザの一例を示す外観斜視図である。スタビライザ3000は、移動体の他の一例である。スタビライザ3000が備えるカメラユニット3013は、レンズ装置8と同様の構成のレンズ装置を備えてよい。スタイライザは撮像装置を備えるシステムの一例である。
スタビライザ3000は、カメラユニット3013、ジンバル3020、及び持ち手部3003を備える。ジンバル3020は、カメラユニット3013を回転可能に支持する。ジンバル3020は、パン軸3009、ロール軸3010、及びチルト軸3011を有する。ジンバル3020は、パン軸3009、ロール軸3010、及びチルト軸3011を中心に、カメラユニット3013を回転可能に支持する。ジンバル3020は、支持機構の一例である。
カメラユニット3013は、撮像装置の一例である。カメラユニット3013は、メモリを挿入するためのスロット3014を有する。ジンバル3020は、ホルダ3007を介して持ち手部3003に固定される。
持ち手部3003は、ジンバル3020、カメラユニット3013を操作するための各種ボタンを有する。持ち手部3003は、シャッターボタン3004、録画ボタン3005、及び操作ボタン3006を含む。シャッターボタン3004が押下されることで、カメラユニット3013により静止画を記録することができる。録画ボタン3005が押下されることで、カメラユニット3013により動画を記録することができる。
デバイスホルダ3001が持ち手部3003に固定されている。デバイスホルダ3001は、スマートフォンなどのモバイルデバイス3002を保持する。モバイルデバイス3002は、WiFiなどの無線ネットワークを介してスタビライザ3000と通信可能に接続される。これにより、カメラユニット3013により撮像された画像をモバイルデバイス3002の画面に表示させることができる。
スタビライザ3000においても、カメラユニット3013が上記の実施形態に係るレンズ系を備えてよい。
一般に、UAVやスタビライザ等の機器においては、機器の重量を低減するために、鏡筒を小型化することが望まれている。そのため、レンズ系も小型化することが望まれている。レンズ系を小型化することにより、レンズの敏感度が高まる。レンズの敏感度が高まると、微小なレンズ位置変化が、撮像画像や動画に大きな影響を与える。そのため、レンズの位置精度を向上させる必要がある。
上述したように、鏡筒内のレンズ保持部材が光軸方向以外の方向に振動することで、撮影画像や動画が揺れる像揺れ現象が生じる。例えば鏡筒内でレンズ保持枠を光軸方向に移動させる場合に、ガイド部材とレンズ保持部材との接触が不安定になり、ガタの中で可動レンズ枠が移動することが一つの原因である。また、レンズ保持枠を移動していない場合でも、撮像装置の姿勢を変えることでガイド部材との間のガタによってレンズ保持部材が変位してしまう。特にUAVは回転翼等の推進機構により飛行するため、その推進機構を駆動させるための振動が常に鏡筒に加わり続ける。つまり、特にUAV用の鏡筒においては、上記のようにレンズ保持部材を移動する場合や撮像装置の姿勢を変える場合以外に、UAVが静止している場合にも常に鏡筒に振動が加わり、レンズ保持部材が振動してしまう。
これに対し、上述した特許文献1に記載の構成によれば、ガイド軸のガタしか抑制できず、ガイド軸を回転中心とした可動レンズ枠の振動を抑えることができない。特許文献2に記載の構成によれば、ガイドピンとレンズ保持部材との間の摺動負荷を低減するために潤滑剤を塗布することによって磁力による摩擦力が減少する。そのため、レンズ保持部材が光軸方向に動き易くなり、光軸方向の振動によって像揺れが発生し易くなる。特許文献3に記載の構成によれば、レンズ保持枠を2つのガイド軸に対して特定方向に片寄せしているだけなので、2つのガイド軸を結ぶ線分を回転中心としてレンズ保持枠が振動するので、像揺れが発生し易い。UAVやスタビライザ等の機器用の鏡筒は、機器自体の姿勢とジンバルによる鏡筒の向きとの組み合わせによって、任意の姿勢になる場合が多い。特にUAVにおいては鏡筒に加わる回転翼の振動も多方向の成分を持つ。したがって、上記の特許文献に記載の構成における課題は、UAVやスタビライザ等の機器用の鏡筒において特に顕著となる。これに対し、上述した鏡筒6によれば、レンズ保持部材の振動をより抑制することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
第1のバイアス部材は、光軸に沿う第1の方向の成分を有する力により、第1のガイド部材に対してレンズ保持部材をバイアスするように構成されてよい。レンズ保持部材は、推力伝達部材から推力が伝達される第1部分及び第2部分を有してよい。推力伝達部材、第1部分及び第2部分は、第1の方向に沿って、第2部分、推力伝達部材、第1部分の順で設けられてよい。第1部分と第2部分との間の距離は、光軸に沿う方向の推力伝達部材の厚みより長くてよい。アクチュエータによって光軸に沿う方向の推力が発生していない場合に、レンズ保持部材は、第1の方向の成分を有する力により第2部分が推力伝達部材に接した状態となって光軸に沿う方向に位置決めされてよい。