JP2022038182A - 水系分散体及びその製造方法、並びにインク、印刷方法、印刷装置、及び印刷物 - Google Patents

水系分散体及びその製造方法、並びにインク、印刷方法、印刷装置、及び印刷物 Download PDF

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Abstract

【課題】高い画像濃度が得られ、加熱乾燥時における画像濃度の低下を抑制できる水系分散体の提供。【解決手段】無機顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子及び界面活性剤を含有し、前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下である水系分散体である。【選択図】なし

Description

本発明は、水系分散体及びその製造方法、並びにインク、印刷方法、及び印刷装置に関する。
近年、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。そして、商業用途や産業用途では、インク低吸収性の印刷用塗工紙(コート紙)やインク非吸収性のプラスチックフィルムが記録媒体として用いられている。そのため、このような記録媒体に対しても、インクジェット記録方法により、従来のオフセット印刷と同レベルの画質を実現することが求められている。
例えば、特許文献1から3には、顔料粒子を特定の樹脂にて被覆した水系顔料分散体が提案されている。
本発明は、高い画像濃度が得られ、加熱乾燥時における画像濃度の低下を抑制できる水系分散体を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の水系分散体は、顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子及び界面活性剤を含有し、前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下である。
本発明によると、高い画像濃度が得られ、加熱乾燥時における画像濃度の低下を抑制できる水系分散体を提供することができる。
図1は、本発明の印刷装置の一例を示す概略図である。 図2は、実施例1で得られた顔料内包化樹脂粒子を含有する水系分散体のTEM画像である。 図3は、比較例2で得られた水系分散体のTEM画像である。 図4は、比較例3で得られた水系分散体のTEM画像である。
(水系分散体)
本発明の水系分散体は、顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子及び界面活性剤を含有し、前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下であり、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
従来技術では、顔料を樹脂で内包化した顔料内包化樹脂粒子を形成することと、インクジェット記録方法に適した顔料内包化樹脂粒子の粒子径とを両立することは困難である。また、顔料内包化樹脂粒子では顔料を被覆する樹脂の親水性が高いため樹脂が顔料表面から脱離し易くなり、顔料複合樹脂粒子の安定性が低下し、加熱乾燥により顔料が凝集することによって顔料の均一分散性又は塗膜の表面粗さが悪化し、加熱乾燥前と比較して画像濃度が低下してしまう。その結果、従来の水系インクでは、近年求められている高い画像濃度を満足することができないという課題がある。
本発明においては、顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子及び界面活性剤を含有し、前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下である水系分散体を用いることによって、高い画像濃度が得られ、加熱乾燥時における画像濃度の低下を抑制できる。
<顔料内包化樹脂粒子>
顔料内包化樹脂粒子は、顔料の表面全てが樹脂で被覆された樹脂粒子であり、未内包の顔料が分散した形態、又は樹脂粒子表面に顔料の一部が露出した形態が存在しないものである。顔料内包化樹脂粒子は球形であることが好ましい。
本明細書における顔料内包化樹脂粒子とは、樹脂エマルション中の樹脂粒子内に顔料がすべて含まれている(内包されている)ことを意味する。例えば、特開2016-196621号公報、特開2002-322396号公報、特開2019-099819号公報、特開2005-120136号公報では、被覆顔料やマイクロカプセル化顔料が提案されているが、樹脂エマルション中の樹脂粒子内に顔料が内包されている形体ではなく、顔料内包化樹脂粒子とは異なるものである。
前記顔料内包化樹脂粒子は、樹脂エマルションの形態であることが取扱い性の点から好ましい。顔料が樹脂エマルション中の樹脂粒子に内包されていることで媒体中への顔料分散樹脂等の脱離を抑制することが可能となる。樹脂エマルションとは樹脂粒子が水やインク中に分散している状態を指し、樹脂粒子が固体又は液体であるかは問わない。
前記顔料内包化樹脂粒子であることの確認方法については、以下に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で確認することができる。
まず、顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈し試料液を作製する。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM株式会社製、コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察を行う。観察の結果、顔料を完全に覆うように樹脂層が存在(顔料が樹脂エマルション中の樹脂粒子に内包)した形態(例えば、図2参照)であると、本発明の顔料内包化樹脂粒子である確認できる。
前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)は200nm以上500nm以下であり、200nm以上400nm以下が好ましく、200nm以上300nm以下がより好ましい。累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であると、複数の顔料一次粒子を内包化することによって画像濃度を高くすることができる。
顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)は、例えば、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料内包化樹脂粒子の存在割合は、特に制限はなく、顔料内包化樹脂粒子と顔料を含まない樹脂粒子との比率を適宜選定することができる。前記顔料内包化樹脂粒子の存在量は、体積粒径100nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像に対して体積粒径100nm以上の粒子の全体に対する前記顔料内包化樹脂粒子が占める割合であり、その平均値は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。顔料内包化樹脂粒子の存在割合が30%以上であると、顔料内包化樹脂粒子の存在割合が多くなることによって画像濃度を高くすることができる。
前記顔料内包化樹脂粒子は顔料一次粒子を2個以上含有することが好ましい。このように、顔料内包化樹脂粒子中の顔料密度が増加することによって、画像濃度を高くすることができる。
前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比としては、顔料内包化樹脂粒子を含む視野の画像を複数枚取得し、任意に選択した顔料内包化粒子20個の長径の短径に対する比の値(長径/短径)を算出し、それらの平均値(平均アスペクト比)が1.0以上1.5以下の範囲であり、1.0以上1.2以下が好ましい。顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下であると、塗膜表面の平滑性が向上し、画像濃度が向上するという利点がある。長径/短径の算出は、粒子の端から端までの長さが最長となる軸(長軸)の長さを長径とし、長軸の中心において長軸と直交する方向の粒子の長さを短径とした。
顔料内包化樹脂粒子における顔料内包化の程度は、内包化されずに露出している顔料(顔料露出率)を定量することによって評価することができる。
前記顔料露出率の算出方法は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行うことができる。前記顔料露出率の具体的な算出方法は以下である。顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製する。次いで、塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に直径0.15mmのバーコーターを用いて塗工し、25℃で乾燥し、平均厚み2μmの塗膜を形成する。この塗膜を切り出し、SEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定する。これを、導電性処理することなく走査型電子顕微鏡(ZEISS社製、Merlin)を用いて、加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率2,000倍~20,000倍にて観察する。この観察手法により、カーボンブラックと、樹脂の反射電子放出量の違いから、SEM像のコントラストの違いにより露出顔料を見分けることが可能である。
20,000倍における塗膜表面の顔料が占める面積の割合(顔料露出率)は、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、0%以上3%以下が更に好ましい。なお、塗膜表面の顔料が占める面積は、SEM観察像の二値化によって求められ、任意に場所を変更して観察した3視野以上の平均を取ることが好ましい。この観察条件において、チャージアップにより観察不能なものは、顔料露出率が低い傾向にあり、顔料露出率が3%以下の場合に観測されやすい。
2個以上の顔料一次粒子を樹脂で球形に覆うことによって、加熱乾燥後における塗膜中の顔料分散の均一化と塗膜の表面粗さを低下することができ、画像の画像濃度(OD)を向上することができる。
前記塗膜の表面粗さは20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。塗膜の表面粗さを20nm以下とすることで、加熱乾燥後の画像濃度低下を抑制できる。
前記塗膜の表面粗さは、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、以下のようにして算出する。まず、顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製する。次いで、塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に0.15mmバーコーターにて塗工し、100℃のオーブンで5分間加熱乾燥し、平均厚み2μmの塗膜を形成する。この塗膜を切り出し、以下の条件で観察を行い、表面粗さを算出する。観察は3視野行い、表面粗さの平均値を求める。
[測定条件]
・装置:走査プローブ型顕微鏡(Bruker社製、DimensionIcon)
・カンチレバー:オリンパス株式会社製、OMCL-AC240TS
・測定モード:タッピングモード
・観察範囲:2μm四方
<樹脂>
前記樹脂はアニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、一部が塩基性化合物により中和されたカルボキシレート基やスルホネート基が好ましい。
アニオン性基の中和に使用可能な中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基性化合物などが挙げられる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
-ポリエステル樹脂-
前記ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを重縮合させて得られ、組成の一部あるいは全てに芳香族ユニットを有する。即ち、前記芳香族含有ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを、構成成分として有する。
-多価アルコール成分-
前記多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等);炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);前記脂環式ジオールの炭素数2~4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下、「EO」と略記する)、プロピレンオキシド(以下「PO」と略記する)、ブチレンオキシド(以下、「BO」と略記する)など〕付加物(付加モル数1~30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。
また、前記の2価のジオールに加えて3価以上(3~8価又はそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば、庶糖及びメチルグルコシドなど);前記脂肪族多価アルコールの炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数1~30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど:平均重合度3~60)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
-多価カルボン酸成分-
前記多価カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(例えば、コハク酸、アピジン酸、セバシン酸等)、アルケニルコハク酸(例えば、ドデセニルコハク酸等);炭素数4~36の脂環式ジカルボン酸[(例えば、ダイマー酸(2量化リノール酸)等];炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、炭素数4~20のアルカンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
なお、前記多価カルボン酸成分としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1~4)エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)も挙げられる。このほか、ポリ乳酸、ポリカーボネートジオール等の開環重合系も好適に使用しうる。
前記ポリエステル樹脂を単離する方法としては、例えば、顔料内包化樹脂粒子からなる分散体を加熱乾燥により乾固し、得られた乾固物をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れてポリエステル樹脂を溶解させる。次いで、遠心分離、ろ過などにより含有する顔料を除去し、次いで、THFを除去することでポリエステル樹脂を単離可能である。また、必要に応じてリサイクルGPCを活用することもできる。
前記ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が2,000以上15,000以下が好ましく、4,000以上12,000以下がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂の軟化温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上180℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下がより好ましい。
前記ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
前記ポリエステル樹脂の合成方法については、従来一般的に用いられている方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、前記多価アルコールと前記多価カルボン酸の重縮合により合成することができる。
<顔料>
顔料としては、有機顔料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、無機顔料が好ましい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー;ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7);銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
前記カーボンブラックとしては、一次粒径は15nm以上100nm以下が好ましい。一次粒径を上記の範囲とすることで発色性が向上する。
カーボンブラックのDBP吸収量は30mL/100g以上150mL/100g以下が好ましい。DBP吸収量を上記の範囲とすることで有機溶剤中での顔料分散性を向上させることができる。
また、自己分散顔料を用いてもよく、前記自己分散顔料とは、顔料表面に直接又は他の原子団を介して官能基を導入することにより分散安定化させた顔料をいう。分散安定化させる前の顔料としては、例えば、国際公開第2009/014242号パンフレットに記載されている、従来公知の様々な顔料を用いることができる。
<顔料分散剤>
水系分散体には、顔料内包化樹脂粒子の分散性を向上させる点から顔料分散剤を添加することが好ましい。
前記顔料分散剤の親疎水性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、画像濃度が向上する点から、疎水性の顔料分散剤を用いることが好ましい。なお、前記顔料分散剤の親疎水性は、前記顔料分散剤が水に不溶性であれば疎水性であり、水に可溶性であれば親水性である。
顔料分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子分散剤などが挙げられる。
顔料分散剤としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
顔料分散剤としては市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、ジョンクリル(ジョンソンポリマー社製)、Anti-Terra-U(BYK Chemie社製)、Disperbyk(BYK Chemie社製)、Efka(Efka CHEMICALS社製)、フローレン(共栄社化学株式会社製)、ディスパロン(楠本化成株式会社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ株式会社製)、デモール(花王株式会社製)、ホモゲノール、エマルゲン(以上、花王株式会社製)、ソルスパース(ルーブリゾール社製)、ニッコール(日光ケミカル株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等のアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等のノニオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムべタインなどが挙げられる。これらの中でも、アニオン界面活性剤が好ましく、分散安定性を高める点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
前記界面活性剤の含有量は、水系分散体の全量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
界面活性剤の含有量が上記の範囲であると、分散安定性が良好となる。界面活性剤の含有量が20質量%以上である水系分散体を用いたインクは、ノズル詰まりや吐出曲がり等により、吐出安定性が悪化する。
前記水系分散体中の界面活性剤の含有量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速液体クロマトグラフ(LC-20、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、酸化防止剤、紫外線防止剤などが挙げられる。
(顔料内包化樹脂粒子の製造方法)
本発明の顔料内包化樹脂粒子の製造方法は、有機溶剤、及び顔料を混合して、顔料プレ分散体を調製する工程(以下、「顔料プレ分散体調製工程」と称する)と、得られた顔料プレ分散体と樹脂を混合して、顔料分散樹脂溶液を調製する工程(以下、「顔料分散樹脂溶液調製工程」と称する)と、得られた顔料分散樹脂溶液と界面活性剤含有液とを混合して、顔料内包化樹脂粒子分散液を調製する工程(以下、「顔料内包化樹脂粒子分散液調製工程」と称する)と、得られた顔料内包化樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する工程(以下、「有機溶剤除去工程」と称する)と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
<顔料プレ分散体調製工程>
顔料プレ分散体調製工程は、有機溶剤及び顔料を混合して、顔料プレ分散体を調製する工程である。
顔料としては、上記水系分散体における顔料と同じものを用いることができる。
前記有機溶剤としては、次の顔料分散樹脂溶液調製工程における樹脂を溶解できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。これらの中でも、酢酸エチルが好ましい。
顔料プレ分散体調製工程で用いられる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散機などが挙げられる。
前記顔料プレ分散体における顔料の累積体積粒径50%(D50)は、顔料内包化樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる点から、10nm以上150nm以下が好ましく、20nm以上120nm以下がより好ましい。
前記顔料の累積体積粒径50%(D50)は、例えば、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料プレ分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
顔料プレ分散体調製工程においては、顔料分散剤を用いることが好ましい。顔料分散剤としては、上記水系分散体における顔料分散剤と同じものを用いることができ、疎水性の顔料分散剤が特に好ましい。
前記顔料プレ分散体における顔料と顔料分散剤の比率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、顔料プレ分散体の分散性を高める点から、顔料と顔料分散剤の比率は4:0.2~4:4が好ましく、4:0.5~4:3がより好ましい。
前記顔料プレ分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過することが好ましい。
前記顔料プレ分散体の製造方法としては、必要に応じて顔料分散剤を有機溶剤中に溶解あるいは懸濁させ、樹脂及び顔料を投入し撹拌した後、一般に用いられる公知の分散機を用いて製造することができる。
前記分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンカー翼、ディスパー翼、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、パールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アジテーターミル、ペイントシェーカー、グレンミル、コボルミル、ジェットミルなどが挙げられる。これらの中でも、分散効率の点から、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカーが好ましい。
<顔料分散樹脂溶液調製工程>
顔料分散樹脂溶液調製工程は、得られた顔料プレ分散体と樹脂を混合して、顔料分散樹脂溶液を調製する工程である。
顔料分散樹脂溶液は、上記顔料プレ分散体調製工程で得られた顔料プレ分散体と、樹脂、及び必要に応じて塩基性化合物、有機溶剤、添加剤とを混合し、撹拌することで得られる。
樹脂としては、上記水系分散体における樹脂と同じものを用いることができる。
顔料分散樹脂溶液調製工程において使用される混合撹拌装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記顔料プレ分散体調製工程にて記載した装置が挙げられる。これらの中でも、ホモミキサー又はディスパー翼を備えた高速撹拌装置が高粘度溶液の均一撹拌及び樹脂粉体を効率よく溶解させる点から好ましく用いられる。
前記顔料分散樹脂溶液の調製手順については、特に制限はなく、顔料プレ分散体調製工程で得られた顔料プレ分散体に樹脂を加えてもよいし、樹脂を有機溶剤に可溶化した後に加えてもよい。
前記顔料分散樹脂溶液における顔料の累積体積粒径50%(D50)は、上述した顔料プレ分散体調製工程で得られる顔料プレ分散体中の顔料と同様の累積体積粒径50%(D50)であることが好ましく、顔料プレ分散体調製工程と顔料分散樹脂溶液調製工程で変化が生じないことがより好ましい。
前記樹脂は、顔料内包化樹脂粒子分散液調製工程にて顔料を内包化するのに用いられ、ノニオン性やアニオン性、カチオン性の親水性基を有することが好ましく、アニオン性の親水基を有することがより好ましい。
前記樹脂がアニオン性の樹脂である場合、前記樹脂が水性媒体中でエマルションを形成し、水性媒体中での分散安定性を保つためにアニオン性基の一部ないしは全部を塩基性化合物で中和することが好ましい。
前記樹脂に対する前記顔料の比率は、0.2以上0.75以下が好ましく、0.3以上0.6以下がより好ましい。前記樹脂に対する顔料の比率が0.2以上であると、顔料濃度が適切であり、印刷物の画像濃度が高くなる。また、前記樹脂に対する顔料の比率が0.75以下であると、顔料の大部分を樹脂で内包化することができ、加熱乾燥後の塗膜の表面粗さを抑制することで画像濃度が良好となる。樹脂に対する顔料比率は、仕込み比率もしくは得られた分散体から算出できる。
水系分散体からの算出方法は、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて水系分散体の乾固膜の熱分析により算出することができる。具体的には、水系分散体の乾固膜を熱重量示差熱分析装置により、窒素ガス雰囲気化で樹脂の熱分解温度まで昇温、保持し、分解した重量を樹脂、残差の重量を顔料として算出することができる。また、窒素ガス雰囲気化での熱分解では完全に樹脂を分解できないような高耐熱性の樹脂は、加熱減量と樹脂に対する顔料比率の検量線を用いて算出することができる。具体的には、任意の比率で混合した顔料と樹脂の混合物を複数作成し、それぞれの混合物を一定の温度まで昇温、保持することで、上記検量線を作成し、未知サンプル測定結果より得られる減量率を基に樹脂に対する顔料の比率を算出することができる。
<顔料内包化樹脂粒子分散液調製工程>
顔料内包化樹脂粒子分散液調製工程は、得られた顔料分散樹脂溶液と界面活性剤含有液とを混合して、顔料内包化樹脂粒子分散液を調製する工程である。
顔料内包化樹脂粒子分散液調製工程において使用される混合撹拌装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上記顔料プレ分散体調製工程にて記述した装置などが挙げられる。これらの中でも、ホモミキサーもしくはディスパー翼を備えた高速撹拌装置が高粘度溶液における均一撹拌の点で好ましく、分散にかかるエネルギーが高いほど、生成した顔料内包化樹脂粒子の粒子径を小さくすることが可能であるが、高すぎる場合には生成した顔料内包化樹脂粒子が破砕されることで内包化状態を維持できないことがある。
前記顔料分散樹脂溶液と界面活性剤含有液との混合手順に特に制限はなく、顔料分散樹脂溶液中に界面活性剤含有液を加えても、界面活性剤含有液に顔料分散樹脂溶液を加えてもよい。
界面活性剤としては、上記水系分散体における界面活性剤と同じものを用いることができる。
前記界面活性剤含有液の含有量は、顔料内包化樹脂粒子の分散安定性の観点から、上記顔料分散樹脂溶液調製工程で用いた樹脂100質量部に対して70質量部以上700質量部以下が好ましく、100質量部以上500質量部以下がより好ましい。
前記界面活性剤は、分散安定性の観点から、水系分散体に対して、1.0質量%以上20質量%以下の添加量となるように溶媒に添加し、前記顔料分散樹脂溶液に加えることが好ましい。
<有機溶剤除去工程>
有機溶剤除去工程は、得られた顔料内包化樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する工程である。顔料内包化樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去することによって、本発明の水系分散体が得られる。
有機溶剤を除去する方法としては、特に制限はなく、公知の除去装置を使用することができるが、減圧下にて有機溶剤の沸点以上の温度にて加熱することが好ましく、例えば、ロータリーエバポレーターなどが挙げられる。
減圧下としては、200mmHg以下が好ましく、100mmHg以下がより好ましい。また、加熱温度としては20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
得られた水系分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過することができる。更に必要に応じて、限外ろ過装置により界面活性剤を除去することも可能である。
(インク)
本発明のインクは、水、顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子、界面活性剤、及び有機溶剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
<顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子>
顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子は、本発明の水系分散体における顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子と同様である。
前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下である。
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物などが挙げられる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<水>
水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度は20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 2022038182000001
(ただし、前記一般式(S-1)中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社製)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社製)などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)のいずれかで表されるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2022038182000002
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
[一般式(F-2)]
2n+-CHCH(OH)CH-O-(CHCHO)-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はC2P+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。
この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N、及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<その他の成分>
その他の成分としては、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
-消泡剤-
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
-防錆剤-
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
-pH調整剤-
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
ではない。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有してもよい。
前記有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、及び防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は、特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布してもよいし、インク像が形成された領域のみに塗布してもよい。
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムを好適に使用することができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
<記録物>
本発明の記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有してもよい。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えば、ロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1を参照して説明する。図1は液体を吐出する装置である印刷装置の概略説明図である。
印刷装置1は、搬入部10と、前処理部50と、印刷部20と、乾燥部30と、搬出部40とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入されるシート材Pに対し、前処理部50でシート材Pに処理液を塗布したのち、印刷部20で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部30でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部40に排出する。
搬入部10は、複数のシート材Pが積載される搬入トレイ11と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12と、シート材Pを印刷部20へ送り込むレジストローラ対13とを備えている。
給送装置12には、ローラやコロを用いた装置や、エアー吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置12により搬入トレイ11から送り出されたシート材Pは、その先端がレジストローラ対13に到達した後、レジストローラ対13が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部20へ送り出される。
前処理部50は、液体と反応して滲みを抑制するための処理液を収容する処理液収容器51と、シート材Pに塗布する処理液塗布手段としての先塗り処理回転体を有する。先塗処理回転体は、処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げる汲み上げローラに付着した処理液を受け取るとともに搬送されるシート材の表面に処理液を塗布する塗布ローラ52と、塗布ローラとの圧接によりシート材を挟持するローラ53とを有する。
塗布ローラ52によりシート材Pの下面に処理液が塗布された後、シート材Pは、上下を反転し、搬入部10を構成するレジストローラ対13に搬送される。
印刷部20は、シート材Pを搬送するシート搬送装置21を備えている。シート搬送装置21は、シート材Pを担持して搬送するベルトと、ベルト表面に吸引力を生じさせる吸引装置などを有している。
また、印刷部20は、シート搬送装置21のベルトに担持されて搬送されるシート材Pの処理液付着面に向けて液体を吐出して付与する液体吐出部22を備えている。
液体吐出部22は、液体付与手段である吐出ユニット23(23A~23F)を備えている。例えば、吐出ユニット23Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット23Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット23Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット23Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、吐出ユニット23F,23Fは、YMCKのいずれか、或いは、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出に使用する。さらに、表面コート液などの処理液を吐出する吐出ユニットを設けることもできる。
吐出ユニット23は、例えば、複数のノズルを配列したノズル列を有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)で構成されるフルライン型ヘッドである。
液体吐出部22の各吐出ユニット23は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラムに担持されたシート材Pが液体吐出部22との対向領域を通過するときに、吐出ユニット23から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
液体吐出部22によって液体が付与されたシート材Pは、乾燥部30の吸引搬送機構部31に渡される。
乾燥部30は、シート材Pを吸引した状態で搬送する(吸引搬送する)搬送手段である吸引搬送機構部31と、吸引搬送機構部31で搬送されるシート材P上の液体を乾燥させる乾燥機構部32とを備えている。
印刷部20で液体が付与されたシート材Pは、吸引搬送機構部31で搬送されながら乾燥機構部32によって乾燥され、搬出部40へ受け渡される。
搬出部40は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ41を備えている。乾燥部30から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ41上に順次積み重ねられて保持される。
なお、前処理部50は、シート材Pの片面に処理液を塗布する構成としたが、これに限られず、処理液収容器51の搬送方向下流側にシート材Pの裏面に処理液を塗布する別の処理液収容器を設けてもよいし、処理液収容器51を通過したシート材Pの表裏を反転し再度処理液収容器51を通過させてシート材Pの裏面に処理液を塗布するようにしてもよい。
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。更に、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。以下において、実施例における各種物性の測定方法を示す。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)の測定>
・装置:GPC(東ソー株式会社製)
・検出器:RI
・測定温度:40℃
・移動相:テトラヒドロフラン
・流量:0.45mL/min.
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量、及び分子量分布である。なお、カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
(ポリエステル樹脂の合成例1)
-ポリエステル樹脂αの合成-
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱電対を装備した1Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコール280質量部、ジカルボン酸としてテレフタル酸611質量部、及びコハク酸109質量部を混合した。
次に、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシド添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温した。
次に、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、5mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させてポリエス
(顔料プレ分散体Aの調製例)
以下の処方の材料を混合し、110mLのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1,000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体Aを作製した。
得られた顔料プレ分散体AのELSZ-1000における累積50%体積粒径(D50)は112nmであった。
[顔料プレ分散体処方]
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン株式会社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g):15.0質量部
・顔料分散剤(アジスパーPB821、味の素ファインテクノ株式会社製、疎水性):3.8質量部
・酢酸エチル:41.2質量部
(顔料プレ分散体Bの調製例)
以下の処方の材料を混合し、110mLのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1,000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体Bを作製した。
得られた顔料プレ分散体BのELSZ-1000における累積50%体積粒径(D50)は113nmであった。
[顔料プレ分散体処方]
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン株式会社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g):15.0質量部
・顔料分散剤(BYKJET-9151、BYK Chemie社製、親水性):3.8質量部
・酢酸エチル:41.2質量部
(顔料プレ分散体Cの調製例)
以下の処方の材料を混合し、110mLのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1,000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体Cを作製した。
得られた顔料プレ分散体CのELSZ-1000における累積50%体積粒径(D50)は159nmであった。
[顔料プレ分散体処方]
・カーボンブラック(旭#15、旭カーボン株式会社製、一次粒径:122nm、DBP吸収量:41mL/100g):15.0質量部
・顔料分散剤(アジスパー PB821、味の素ファインテクノ株式会社製、疎水性):3.8質量部
・酢酸エチル:41.2質量部
(実施例1)
<水系分散体(1)の調製>
上記顔料プレ分散体A 26.7gと、上記ポリエステル樹脂α13.4gと、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(東京化成株式会社製)0.27gと、酢酸エチル5.19gとを容器に入れ、T.K.ロボミックス(プライミクス株式会社製)にて3,000rpmで1分間撹拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。
次に、イオン交換水39.6g、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06g、及び酢酸エチル3.7gを混合して作製した水層に上記で作製した顔料分散樹脂溶液29.6gを加え、T.K.ロボミックス(プライミクス株式会社製)にて5,000rpmで10分間撹拌した。
最後に、酢酸エチルを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形分量を30質量%に調整することで、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(1)を得た。図2に、実施例1で得られた顔料内包化樹脂粒子を含有する水系分散体(1)のTEM画像を示した。図2から、水系分散体(1)では、球形の樹脂粒子中に顔料が内包化された形体であることがわかる。
<インク1の調製>
上記で得られた水系分散体(1)を用い、下記処方のインクを調製し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク1を調製した。
「インク処方」
・上記水系分散体(1):固形分として10.75質量%
・プロピレングリコール:40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計:100質量%)
(実施例2)
<水系分散体(2)の調製>
実施例1において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06gを1.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(2)を得た。
<インク2の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク2を調製した。
(実施例3)
<水系分散体(3)の調製>
実施例1において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06gを12.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(3)を得た。
<インク3の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク3を調製した。
(実施例4)
<水系分散体(4)の調製>
実施例1において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06gを24.6gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(4)を得た。
<インク4の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク4を調製した。
(実施例5)
<水系分散体(5)の調製>
実施例1において、顔料プレ分散体A 26.7gを18.7gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(5)を得た。
<インク5の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク5を調製した。
(実施例6)
<水系分散体(6)の調製>
実施例1において、顔料プレ分散体A 26.7gを10.7gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(6)を得た。
<インク6の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(6)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク6を調製した。
(実施例7)
<水系分散体(7)の調製>
実施例1において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06gを0.84gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(7)を得た。
<インク7の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(7)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク7を調製した。
(実施例8)
<水系分散体(8)の調製>
実施例1において、顔料プレ分散体A 26.7gを40.0gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(8)を得た。
<インク8の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(8)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク8を調製した。
(比較例1)
<水系分散体(9)の調製>
実施例1において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(9)を得た。
<インク9の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク9を調製した。
(比較例2)
<水系分散体(10)の調製>
実施例1において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06gを37.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(10)を得た。図3に比較例2で得られた水系分散体(10)のTEM画像を示した。図3から、水系分散体(10)では、非球形の樹脂粒子中に顔料が内包化された形体であることがわかる。
<インク10の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(10)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク10を調製した。
(比較例3)
<水系分散体(11)の調製>
実施例1において、顔料プレ分散体Aを顔料プレ分散体Bに代えた以外は、実施例1と同様にして、水系分散体(11)を得た。図4に、比較例3で得られた水系分散体(11)のTEM画像を示した。図4から、水系分散体(11)では、樹脂粒子中に顔料が内包化されていない形体であることがわかる。
<インク11の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(11)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク11を調製した。
(比較例4)
<水系分散体(12)の調製>
実施例1において、顔料プレ分散体Aを顔料プレ分散体Cに代えた以外は、実施例1と同様にして、顔料一次粒子を2個以上含有した顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体(12)を得た。
<インク12の調製>
実施例1において、水系分散体(1)の代わりに上記で得られた水系分散体(12)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インク12を調製した。
(比較例5)
顔料内包化樹脂粒子の代わりに、以下の樹脂単独エマルションと水系顔料分散体を作製し、インク13を調製した。
<ポリエステル単独樹脂エマルションの調製>
上記ポリエステル樹脂α13.4gと、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(東京化成株式会社製)0.27gと、酢酸エチル5.19gとを容器に入れ、T.K.ロボミックス(プライミクス株式会社製)にて3,000rpmで1分間撹拌することで樹脂溶液を得た。次いで、イオン交換水39.6g、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06g、酢酸エチル3.7gを混合して作成した水層に上記で作製した顔料分散樹脂溶液29.6gを加え、T.K.ロボミックスにて5,000rpmで10分間撹拌した。
最後に、酢酸エチルを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形分量を30質量%に調整し、累積50%体積粒径(D50)257nmのポリエステル単独樹脂エマルションを得た。
(顔料分散剤の製造例)
1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)62.0質量部を700mLのジクロロメタンに溶解し、ピリジン(東京化成工業株式会社製)20.7質量部を加え撹拌した。この溶液に、100mLのジクロロメタンに2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業株式会社製)を溶解させた溶液を2時間かけて滴下した後、室温で6時間撹拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機層を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で98/2)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物を得た。
次に、得られた化合物42.1質量部を80mLの乾燥メチルエチルケトンに溶解し、撹拌しながら60℃の加熱を行った。この溶液に、20mLの乾燥メチルエチルケトンにカレンズMOI(昭和電工株式会社製)24.0質量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下した後、70℃で12時間撹拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で99/1)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、モノマーを得た。
次に、アクリル酸(東京化成工業株式会社製)2.30質量部、前記モノマー8.54質量部、及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成工業株式会社製)0.31質量部を100mLのメチルエチルケトンに溶解し、窒素ガス気流下、75℃の温度条件で5時間撹拌を行った。その後、室温まで冷却した反応溶液を、ヘキサンを用いて再沈殿を5回繰り返し、共重合体の精製を行った。精製処理後は共重合体をろ別し、減圧乾燥することによって、顔料分散剤を得た。
<水系顔料分散体の調製>
3.8質量部の上記顔料分散剤を、pHが8.0となるように30.0質量部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。更にイオン交換水を加え、水溶液の全量を45.0質量部とした。
次に、以下の処方の材料を混合し、110mLのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1,000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmの酢酸セルロースメンブレンフィルターでろ過することで水系顔料分散体を作製した。この水系顔料分散体のELSZ-1000における累積50%体積粒径(D50)は120nmであった。
[水系顔料分散体の処方]
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン株式会社製):15.0質量部
・前記顔料分散剤水溶液:45.0質量部
<インク13の調製>
上記で得られたポリエステル単独樹脂エマルション及び水系顔料分散体を用い、下記処方のインクを調製し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク13を調整した。
「インク処方」
・ポリエステル単独樹脂エマルション:固形分として5.375質量%
・水系顔料分散体:固形分として5.375質量%
・プロピレングリコール:40質量%(粘度7.5mPa・sに調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計:100質量%)
次に、作製した各水系分散体及び各インクについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1から表4に示した。
<樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)>
樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)は、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
具体的には、測定サンプルの固形分濃度が0.01質量%となるように、サンプルをイオン交換水又は必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行った。
<顔料露出率>
塗膜表面の顔料露出率を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察することにより算出した。
具体的には、まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製する。次いで、塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に直径0.15mmのバーコーターを用いて塗工し、25℃で一晩乾燥し、平均厚み2μmの塗膜を形成した。
この塗膜を切り出し、SEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定した。これを、導電性処理することなく走査型電子顕微鏡(ZEISS社製、Merlin)を用いて、加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率2,000倍~20,000倍にて観察した。この観察手法により、カーボンブラックと、樹脂の反射電子放出量の違いから、露出顔料を見分けることが可能であり、倍率20,000倍における塗膜全体に対する顔料が占める面積を顔料露出率と定義し、顔料露出率を以下のように分類した。なお、塗膜表面の顔料が占める面積の割合は、SEM観察像の二値化によって求め、任意に場所を変更して観察した3視野の平均を取り、顔料露出率を求め、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:0%以上3%以下
○:3%より大きく5%以下
△:5%より大きく8%以下
×:8%より大きい
<塗膜の表面粗さ>
塗膜の表面粗さは走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、以下のようにして算出した。まず、水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製した。次いで、塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に直径0.15mmのバーコーターを用いて塗工し、100℃のオーブンで5分間加熱乾燥した。この塗膜を切り出し、以下の条件で観察を行い、表面粗さを算出した。観察は任意に場所を変更して観察した3視野の平均をとり、表面粗さの平均値を求めた。
[測定条件]
・装置:走査プローブ型顕微鏡(Bruker社製、DimensionIcon)
・カンチレバー:オリンパス株式会社製OMCL-AC240TS
・測定モード:タッピングモード
・観察範囲:2μm四方
<顔料内包化樹脂粒子の存在割合>
まず、得られた各水系分散体を、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈して、試料液を作製した。
次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM株式会社製、コロジオン膜貼付メッシュ、Cu150メッシュ)上に、前記試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40,000倍で観察を行った。この観察手法により、体積粒径100nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像に対して体積粒径100nm以上の全粒子数に対する顔料内包化樹脂粒子の個数が占める割合を算出し、それらの平均値を求めた。得られた割合を顔料内包化樹脂粒子の存在割合と定義し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:50%以上
〇:30%以上50%未満
△:10%以上30%未満
×:0%以上10%未満
<樹脂粒子のアスペクト比>
アスペクト比は、上記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた顔料内包化樹脂粒子の観察手法に従って観察した20個の顔料内包化樹脂粒子の長辺と短辺を測定し、平均値を求め、長辺の平均値/短辺の平均値から、アスペクト比を算出した。
<画像形成>
インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO GXe5500)の外装を外し、背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、印字ヘッドを含めたインク供給経路に純水を通液することで洗浄し、洗浄液が着色しなくなるまで十分に通液して洗浄液を装置から抜ききって評価用印字装置とした。
また、調製したインクを、インクカートリッジに充填し評価用インクカートリッジとした。
充填動作を行わせ、全ノズルに評価インクが充填され異常画像が出ないことを確認し、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。
このモードでベタ画像の記録媒体上へのインク付着量が20g/mとなるようにヘッドの駆動電圧を変更することで吐出量を調整した。
<画像濃度>
上記画像出力方法にてベタ画像を印刷し、室温(25℃)にて1日間、及び100℃のオーブンにて5分間加熱乾燥した画像をそれぞれ作製した。
印刷画像の下に、白色の普通紙を置いた状態で、分光測色濃度計(X-Rite939、X-Rite社製)を用いて全濃度を測色し、ブラック(K)の値を画像濃度とした。
また、25℃乾燥により得られる画像濃度と100℃乾燥にて得られた画像濃度の差(ΔOD=「25℃乾燥により得られた画像のOD」-「100℃乾燥により得られた画像のOD」)を算出し、以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:ΔODが0%未満
△:ΔODが0%
×:ΔODが0%より大きい
Figure 2022038182000003
Figure 2022038182000004
Figure 2022038182000005
*表3中の比較例1~4における「-」は測定不能であることを意味する。
Figure 2022038182000006
表1~表4の結果から、実施例1~8は、いずれも高い画像濃度が得られ、加熱乾燥時における画像濃度の低下を抑制できることがわかった。
これに対して、比較例1は、インクジェット評価にてノズル詰まりを多数発生したため、ベタ画像の印刷が困難であった(画像濃度の測定不能)。
また、比較例2は、インクジェット評価にてノズル詰まり及び吐出曲がりを多数発生したため、ベタ画像の印刷が困難であった(画像濃度の測定不能)。
また、比較例3は、100℃乾燥後の塗膜の表面平滑性が低く、100℃乾燥後に高い画像濃度を得ることができなかった。
また、比較例4は、インクジェット評価にてノズル詰まりを多数発生したため、ベタ画像の印刷が困難であった(画像濃度の測定不能)。
また、比較例5は、100℃乾燥後の塗膜の表面平滑性が低く、100℃乾燥後に高い画像濃度を得ることができなかった。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子、及び界面活性剤を含有し、
前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、
前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体である。
<2> 前記界面活性剤の含有量が1質量%以上20質量%以下である、前記<1>に記載の水系分散体である。
<3> 前記界面活性剤がアニオン界面活性剤である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の水系分散体である。
<4> 前記顔料が無機顔料であり、前記無機顔料がカーボンブラックである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の水系分散体である。
<5> 前記顔料内包化樹脂粒子がポリエステル樹脂を含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載の水系分散体である。
<6> 前記顔料内包化樹脂粒子における顔料と樹脂の質量比(顔料/樹脂)が0.2以上0.75以下である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の水系分散体である。
<7> 前記水系分散体を用いて形成した平均厚み2μmの塗膜の表面における顔料露出率が8%以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の水系分散体である。
<8> 前記水系分散体を用いて形成した平均厚み2μmの塗膜の表面粗さが20nm以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の水系分散体である。
<9> 体積粒径が100nm以上の粒子の全数に対する、前記顔料内包化樹脂粒子の存在割合が30%以上である、前記<1>から<8>のいずれかに記載の水系分散体である。
<10> 有機溶剤及び顔料を混合して、顔料プレ分散体を調製する工程と、
得られた顔料プレ分散体と樹脂を混合して、顔料分散樹脂溶液を調製する工程と、
得られた顔料分散樹脂溶液と界面活性剤含有液とを混合して、顔料内包化樹脂粒子分散液を調製する工程と、
得られた顔料内包化樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する工程と、
を含むことを特徴とする水系分散体の製造方法である。
<11> 前記顔料プレ分散体における顔料の累積体積粒径50%(D50)が10nm以上150nm以下である、前記<10>に記載の水系分散体の製造方法である。
<12> 前記顔料プレ分散体を調製する工程において、疎水性の顔料分散剤を添加する、前記<10>から<11>のいずれかに記載の水系分散体の製造方法である。
<13> 水、顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子、界面活性剤、及び有機溶剤を含有し、
前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、
前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下であることを特徴とするインクである。
<14> 前記<13>に記載のインクを付与するインク付与工程を含むことを特徴とする印刷方法である。
<15> 前記<13>に記載のインクを収容するインク収容部と、
前記インクを付与するインク付与手段と、
を有することを特徴とする印刷装置である。
前記<1>から<9>のいずれかに記載の水系分散体、前記<10>から<12>のいずれかに記載の水系分散体の製造方法、前記<13>に記載のインク、前記<14>に記載の印刷方法、及び前記<15>に記載の印刷装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
特開2016-196621号公報 特開2002-322396号公報 特開2019-099819号公報

Claims (15)

  1. 顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子、及び界面活性剤を含有し、
    前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、
    前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体。
  2. 前記界面活性剤の含有量が1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の水系分散体。
  3. 前記界面活性剤がアニオン界面活性剤である、請求項1から2のいずれかに記載の水系分散体。
  4. 前記顔料が無機顔料であり、前記無機顔料がカーボンブラックである、請求項1から3のいずれかに記載の水系分散体。
  5. 前記顔料内包化樹脂粒子がポリエステル樹脂を含む、請求項1から4のいずれかに記載の水系分散体。
  6. 前記顔料内包化樹脂粒子における顔料と樹脂の質量比(顔料/樹脂)が0.2以上0.75以下である、請求項1から5のいずれかに記載の水系分散体。
  7. 前記水系分散体を用いて形成した平均厚み2μmの塗膜の表面における顔料露出率が8%以下である、請求項1から6のいずれかに記載の水系分散体。
  8. 前記水系分散体を用いて形成した平均厚み2μmの塗膜の表面粗さが20nm以下である、請求項1から7のいずれかに記載の水系分散体。
  9. 体積粒径が100nm以上の粒子の全数に対する、前記顔料内包化樹脂粒子の存在割合が30%以上である、請求項1から8のいずれかに記載の水系分散体。
  10. 有機溶剤及び顔料を混合して、顔料プレ分散体を調製する工程と、
    得られた顔料プレ分散体と樹脂を混合して、顔料分散樹脂溶液を調製する工程と、
    得られた顔料分散樹脂溶液と界面活性剤含有液とを混合して、顔料内包化樹脂粒子分散液を調製する工程と、
    得られた顔料内包化樹脂粒子分散液から有機溶剤を除去する工程と、
    を含むことを特徴とする水系分散体の製造方法。
  11. 前記顔料プレ分散体における顔料の累積体積粒径50%(D50)が10nm以上150nm以下である、請求項10に記載の水系分散体の製造方法。
  12. 前記顔料プレ分散体を調製する工程において、疎水性の顔料分散剤を添加する、請求項10から11のいずれかに記載の水系分散体の製造方法。
  13. 水、顔料を包含した顔料内包化樹脂粒子、界面活性剤、及び有機溶剤を含有し、
    前記顔料内包化樹脂粒子の累積50%体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であり、
    前記顔料内包化樹脂粒子のアスペクト比が1.0以上1.5以下であることを特徴とするインク。
  14. 請求項13に記載のインクを付与するインク付与工程を含むことを特徴とする印刷方法。
  15. 請求項13に記載のインクを収容するインク収容部と、
    前記インクを付与するインク付与手段と、
    を有することを特徴とする印刷装置。

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