JP2023060957A - 水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインク - Google Patents

水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインク Download PDF

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Akira Miyakoshi
拓哉 山崎
Takuya Yamazaki
周子 八田
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Abstract

【課題】顔料含有樹脂粒子を含有する水系分散体であって、高温下での保存安定性に優れるのみならず、画像濃度に優れた画像を提供することができる水系分散体の提供。【解決手段】樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下である水系分散体。【選択図】なし

Description

本発明は、水系分散体、水系分散体の製造方法、及びインクに関する。
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また、近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。そして、商業用途や産業用途では、インク低吸収性の印刷用塗工紙(コート紙)やインク非吸収性のプラスチックメディアが記録媒体として用いられるため、これらメディアに対しても、インクジェット記録方法により、従来のオフセット印刷並の画質を実現することが求められている。
例えば、顔料粒子を特定の樹脂にて被覆した水系顔料分散体が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
本発明は、顔料含有樹脂粒子を含有する水系分散体であって、高温下での保存安定性に優れるのみならず、画像濃度に優れた画像を提供することができる水系分散体を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の水系分散体は、樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、
前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、
前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下である。
本発明によれば、顔料含有樹脂粒子を含有する水系分散体であって、高温下での保存安定性に優れるのみならず、画像濃度に優れた画像を提供することができる水系分散体を提供することができる。
図1は、印刷装置の一例を示す概略説明図である。
(水系分散体)
本発明の水系分散体は、樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、樹脂を有し無機顔料を有しない樹脂粒子を含んでもよく、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、
前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下である。
本発明の水系分散体は、従来技術の水系顔料分散体における下記の問題を本発明者らが見出したこと基づくものである。
すなわち、従来技術の水系顔料分散体では、特許文献1~4に示された技術を用いても、顔料を被覆する樹脂の親水性が高いため、樹脂が顔料表面から脱離し易いなどの問題がある。その結果、顔料含有樹脂粒子の安定性が劣るため、例えば、加熱乾燥により顔料が凝集することで顔料の均一分散性、又は塗工膜の表面粗さが悪化し、加熱乾燥前と比較して画像濃度が低下してしまうという問題がある。そのため、上述した従来技術の水系顔料分散体を用いたインクでは、近年求められる高い画像濃度を満足することができないという問題がある。
<顔料含有樹脂粒子>
前記顔料含有樹脂粒子は、無機顔料を有する樹脂粒子であり、前記樹脂粒子は、エマルション樹脂、又はエマルション樹脂粒子の形態である。
ここで、「エマルション」とは、分散質としての樹脂や樹脂粒子が、水などの分散媒に分散している状態を指し、樹脂や樹脂粒子が水系分散体中で、固体の状態であってもよく、液体の樹脂であってもよい。
前記顔料含有樹脂粒子は、球形であることが好ましい。
前記顔料含有樹脂粒子としては、顔料内包樹脂粒子であることが好ましい。
前記顔料内包樹脂粒子は、樹脂粒子中に無機顔料が内包された形態を指し、後述する「顔料露出率」により判別することができる。
樹脂粒子中に内包化されずに分散媒中に分散した無機顔料(未処理顔料)が含まれる形態や、樹脂粒子表面に顔料の一部が露出した形態が存在しないことが好ましい。
また、顔料内包樹脂粒子は、球形であることが好ましい。
前記無機顔料が樹脂粒子内に含有されることで、樹脂表面からの顔料の脱離を好適に抑制することが可能となる。
例えば、特許文献1~4では、被覆顔料やマイクロカプセル化顔料が提案されているが、樹脂エマルション内に顔料が覆われた形態ではなく、前記顔料内包樹脂粒子とは異なるものである。
[平均アスペクト比]
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0~1.5であり、1.0~1.2が好ましい。
前記平均アスペクト比が、1.0~1.5であると、保存安定性及び吐出安定性の点で有利である。
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた顔料内包化樹脂粒子の観察によって取得した画像の画像処理によって求めることができる。
具体的には、観察位置を任意に変えて顔料含有樹脂粒子を含む視野の画像を複数枚取得し、他の粒子との重なりのない顔料含有樹脂粒子を画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)を用いて二値化により抽出し、粒子解析を行う。最近似楕円の長軸/短軸をアスペクト比とし、20粒子の平均値を算出した。
[50%累積体積粒径(D50)、90%累積体積粒径(D90)]
前記顔料含有樹脂粒子の50%累積体積粒径(D50)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40nm以上150nm以下であり、60nm以上120nm以下が好ましく、70nm以上100nm以下がより好ましい。
前記顔料含有樹脂粒子の90%累積体積粒径(D90)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm以上500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。
以下では、50%累積体積粒径(D50)を「D50」といい、90%累積体積粒径(D90)を「D90」ということがある。
前記D50が40nm以上であると、前記水系分散体の液粘度が低下することで分散安定性に優れ、かつ複数の無機顔料の一次粒子を内包することで画像濃度が良好となる。また、D50が150nm以下であると、前記顔料含有樹脂粒子の沈降を抑制し、粒子としての保存安定性が良好となる。
D90が70nm以上であると、無機顔料を効率よく樹脂内に内包化することができ、D90が500nm以下であると、前記顔料含有樹脂粒子の沈降を抑制し、粒子としての保存安定性が良好となる。
[粗大粒子の合計頻度]
また、前記顔料含有樹脂粒子の分散安定性は、体積頻度分布における粒径が1μm以上50μm以下の粒子(以下、「粗大粒子」と称する。)の合計頻度(%)に大きく影響される。
1μm以上50μm以下の粒子の合計頻度としては、10.0%以下が好ましく、5.0%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。
前記50%累積体積粒径(D50)、90%累積体積粒径(D90)、及び体積頻度分布における粒径が1μm以上50μm以下の粒子は、粒子径の評価装置を用いて測定することができ、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所社製)を用いて、前記顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体のD50、D90、及び体積頻度分布における1μm以上50μm以下の合計頻度を測定することができる。
具体的には、前記装置で測定時の透過率(R:半導体レーザー光の透過率)及び透過率(B:LED光の透過率)がいずれも30%~70%となるようにサンプルをイオン交換水により希釈し、得られた溶液の一部をバッチ式セル(スペーサー:50μm)に入れ、サンプルホルダーにセットして測定を行う。
[顔料含有樹脂粒子の割合]
前記顔料含有樹脂粒子を製造する際には、樹脂と無機顔料を有する顔料含有樹脂粒子の他に、樹脂を有し無機顔料を有しない樹脂粒子も製造され得る。前記顔料含有樹脂粒子の割合(存在率)は、特に制限なく、目的に応じて前記顔料含有樹脂粒子と前記樹脂粒子との比率を適宜選択することによって、調整することができる。
前記水系分散体の透過電子顕微鏡(TEM)画像において、50nm以上の粒子径を有する粒子の個数を100%とした場合、50nm以上の前記顔料含有樹脂粒子の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30個数%以上が好ましく、50個数%以上がより好ましく、70個数%以上が更に好ましい。
前記TEM画像として、50nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を5枚以上取得して、前記顔料含有樹脂粒子の割合を求めることが好ましい。
前記顔料含有樹脂粒子の割合が、30個数%以上であると、前記水系分散体における顔料密度が増加することで、画像濃度が向上する点で有利である。
前記顔料含有樹脂粒子の割合としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができ、具体的には、下記の方法により測定することができる。
まず、顔料含有樹脂粒子を含むエマルションを、固形分濃度が0.1%となるようにイオン交換水で希釈し試料液を作製する。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製、コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40000倍で観察を行う。この観察手法により、50nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像に対して50nm以上の粒子の個数に対する顔料含有樹脂粒子の個数が占める割合(個数%)を算出し、それらの平均を求める。前記割合を粒子中の顔料内包化樹脂粒子の存在割合と定義する。
前記顔料内包樹脂粒子は、顔料の表面全てが樹脂で覆われた球形エマルションであることが好ましい。未内包の顔料が分散した形態、又は樹脂粒子表面に一部が露出した形態、が存在しないことが好ましい。顔料の内包化形態は、前記透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することができる。
前記「顔料の表面全てが樹脂で覆われた」とは、顔料内包樹脂粒子の外縁(粒子表面)から顔料までの距離、すなわち樹脂の厚み、が5nm以上であることを意味する。
前記距離としては、5nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上30nm以下がより好ましい。
前記距離(樹脂の厚み)は、前記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた顔料内包化樹脂粒子の観察手法を用いて、顔料内包樹脂粒子を10粒子以上観察し、各粒子の外縁の樹脂表層から顔料までの距離(樹脂の厚み)を任意に10カ所測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
また、前記顔料含有樹脂粒子は、前記無機顔料の一次粒子を二個以上含有することが好ましい。このように、前記顔料含有樹脂粒子中の無機顔料の密度が増加すると、画像濃度が向上する点で有利である。
二個以上の顔料一次粒子を樹脂で球形に覆うことで、加熱乾燥後における膜中の顔料分散を均一化し、膜の表面粗さを低下することができ、塗工膜の表面粗さを低くすることで、画像のODを向上することができる。
[塗工膜の表面粗さ]
前記塗工膜の表面粗さとしては、20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。前記塗工膜の表面粗さが20nm以下であると、加熱乾燥後の画像濃度低下を抑制できる点で有利である。
前記塗工膜の表面粗さは、塗工膜について走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて算出することができ、具体的には、下記の方法により算出することができる。
まず、顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75%となるようにイオン交換水を用いて調製する。次いで、塗工紙(Lumi Art Gloss 130gsm、Stora Enso社製)に0.15mmバーコーターにて水系分散体を塗工し、100℃のオーブンで5分間加熱乾燥して塗工膜を得る。この塗工膜を切り出し、以下の条件で観察を行い、表面粗さを算出する。観察は3視野行い、表面粗さの平均値を求める。
-条件-
装置:走査プローブ型顕微鏡(Bruker製、DimensionIcon)
カンチレバー:オリンパス製、OMCL-AC240TS
測定モード:タッピングモード
観察範囲:2μm四方
[質量比(無機顔料/樹脂)]
前記無機顔料と前記顔料含有樹脂粒子における樹脂との質量比(無機顔料/樹脂)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.20以上0.75以下が好ましく、0.35以上0.5以下がより好ましい。
前記質量比(無機顔料/樹脂)が、0.20以上0.75以下であると、顔料濃度が適切であり、印字画像濃度の点で有利である。
[顔料露出率]
前記顔料内包樹脂粒子における顔料内包化の程度は、内包化されずに露出している顔料(顔料露出率)を定量することによって評価することができる。
前記顔料含有樹脂粒子、及び顔料内包樹脂粒子における、顔料露出率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行うことができ、具体的には、下記の方法により測定することができる。
前記顔料含有樹脂粒子、又は顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水を用いて調製する。次いで、塗工紙(Lumi Art Gloss 130gsm、Stora Enso社製)に0.15mmバーコーターにて塗工し、25℃で一晩乾燥する。この塗工膜を切り出し、SEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定する。これを、導電性処理することなく走査型電子顕微鏡(ZEISS製、Merlin)を用いて、加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率2,000倍~20,000倍にて観察する。この観察手法により、無機顔料と、樹脂の反射電子放出量の違いから、SEM像のコントラストの違いにより露出した無機顔料を見分けることが可能である。
倍率20,000倍における塗工膜全体に対する露出した顔料が占める面積(%)を顔料露出率(%)と定義した。なお、塗工膜表面の顔料が占める面積の割合は、SEM観察像の二値化によって求められ、3視野の平均を取ることが好ましい。
この観察条件において、チャージアップにより無機顔料の観察不能なものは、顔料露出率が低い傾向にあり、前記チャージアップは、顔料露出率3%以下の際に観測されやすい。
倍率20,000倍における塗工膜全体に対する露出した無機顔料が占める面積(%)である、顔料露出率(%)としては、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。
前記無機顔料と前記顔料内包樹脂粒子における樹脂との質量比(無機顔料/樹脂)が、0.20以上0.75以下であり、かつ前記顔料露出率が、8%以下であることが好ましい。
<<樹脂>>
前記樹脂は、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂である。
前記変性ポリエステルが、末端にイソシアネート基を有することにより、多官能アミンとの反応により架橋ポリエステル樹脂を得ることができる。
前記樹脂としては、アニオン性基を有する自己乳化型樹脂であることが好ましく、カルボキシル基を有する自己乳化型樹脂であることがより好ましい。
-末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル-
前記末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルは、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとジイソシアネート化合物との反応により得られる樹脂であり、例えば、下記の製造方法により合成することができる。
無溶剤下又は有機溶剤存在下で、末端にヒドロキシル基を有したポリエステルと多官能イソシアネート化合物とを反応させて前記末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルを製造する。
前記変性ポリエステルの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)5,000~12,000が好ましい。
--多官能イソシアネート化合物--
前記多官能イソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4‘4’‘-とリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネーネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましく、脂環式ポリイソシアネート化合物がより好ましく、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
--末端にヒドロキシル基を有するポリエステル--
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、末端にヒドロキシル基と、アニオン性基を持つ自己乳化型樹脂であることが好ましい。
前記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、一部又は全部、特に好ましくは全部が塩基性化合物等により中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが好ましい。
前記アニオン性基の中和に使用可能な中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物;Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物;などが挙げられる。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルの酸価としては、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましい。
前記酸価が5mgKOH/g以上であると、分散安定性が優れ、またその影響で粒子径が均一化され、分散及び吐出性が良好となる。また、前記酸価が50mgKOH/g以下であると、親水性が適正であり、耐水性が向上し、粒子としての安定性が良好となる。
前記酸価としては、カタログ値を使用してもよいし、測定により算出してもよい。
前記酸価の測定方法は、例えば、ポリエステルをテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することで、酸価を測定することができる。また、水系分散体における樹脂中のカルボキシル基が中和されている場合は、例えば、過剰の塩酸水溶液を加えて酸性溶液にした後に、クロロホルムで樹脂を抽出する。次いでろ過、遠心分離などにより顔料を除去した後に加熱もしくは減圧乾燥することで樹脂の乾固物を得る。得られた樹脂をTHFに溶解し、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することでも、測定することができる。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルの水酸基価(OHV)としては、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がより好ましく、40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が更に好ましい。
水酸基価が上記範囲であることにより、無機顔料の内包化、及び樹脂の分散安定性が良好となる。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)2,000~15,000が好ましく、4,000~12,000がより好ましい。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルの軟化温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上180℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下がより好ましい。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリステルの分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを重縮合させて得られ、組成の一部又は全てに芳香族ユニットを有する。即ち、前記芳香族含有ポリエステルは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体とを、構成成分として有する。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルの製造方法については、従来一般的に用いられている方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、前記多価アルコールと前記多価カルボン酸の重縮合により製造する。
また、前記ポリエステルの酸価は任意の方法で調整可能であり、例えば、得られたポリエステルと多価カルボン酸、カルボン酸無水物を反応させることで酸価を付与することが可能である。
---多価アルコール成分---
前記多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、3価以上(3~8価又はそれ以上)のアルコールが挙げられる。
前記多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)のみであってもよく、2価のアルコール(ジオール)と3価以上(3~8価又はそれ以上)のアルコールとを併用してもよい。
前記2価のアルコール(ジオール)としては、例えば、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど);炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);前記脂環式ジオールの炭素数2~4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)、ブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1~30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記3価以上(3~8価又はそれ以上)のアルコールとしては、例えば、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば庶糖及びメチルグルコシド;など);前記脂肪族多価アルコールの炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数1~30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど:平均重合度3~60)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
---多価カルボン酸成分---
前記多価カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、3価以上(3~8価又はそれ以上)のカルボン酸が挙げられる。
前記多価アルコール成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)のみであってもよく、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)と3価以上(3~8価又はそれ以上)のカルボン酸とを併用してもよい。
前記2価のカルボン酸(ジカルボン酸)としては、例えば、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、セバシン酸など)、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4~36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4~20のアルカンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
なお、前記多価カルボン酸成分としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)も挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
この他、ポリ乳酸やポリカーボネートジオールなどの開環重合系も好適に使用することができる。
-多官能アミン-
前記多官能アミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。
前記多官能アミンとしては、水溶性の多官能アミンが好ましく、水溶性の多官能アミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
ここで、「水溶性」を有する多官能アミンとは、水に対してあらゆる比率で混和することを意味する。
<<無機顔料>>
前記無機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー;ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類;銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属類;などが挙げられる。
これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
前記カーボンブラックの一次粒径(個数平均一次粒径)としては、15nm以上100nm以下が好ましく、この範囲とすることで発色性が向上する。
前記カーボンブラックの一次粒径(個数平均一次粒径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができ、具体的には、下記の方法により測定することができる。
前記カーボンブラックの分散液を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)により処理し、画像解析で20個の一次粒子を無作為に抽出してその粒子径を測定し、平均を算出する。なお、粒子に長径と短径がある場合は、長径を用いて算出する。
前記カーボンブラックのDBP(ジブチルテレフタレート)吸収量としては、30mL/100g以上150mL/100g以下が好ましく、この範囲とすることで有機溶剤中での顔料分散性を向上させることができる。
前記カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217の方法より測定することができる。
また、自己分散顔料を用いてもよく、前記自己分散顔料とは、顔料表面に直接又は他の原子団を介して官能基を導入することにより分散安定化させた顔料をいう。分散安定化させる前の顔料としては、例えば、国際公開第2009/014242号パンフレットに列挙されているような、従来公知の様々な顔料を用いることができる。
<水>
水系分散体における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水系分散体の乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の成分を選択することができ、例えば、顔料分散剤、有機溶剤、添加剤などが挙げられる。
有機溶剤、添加剤などについては、後述するインクにおいて記載する事項を適宜選択することができる。
<<顔料分散剤>>
顔料プレ分散体には、無機顔料の分散性を向上させる点から顔料分散剤を添加することが好ましい。
前記顔料分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の界面活性剤、高分子分散剤などを選択することができ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルとの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートなどが挙げられる。
ここで、「高分子」又は「高分子量」とは、重量平均分子量が1,000以上であり、分子量分布を有する化合物を指す。
前記顔料分散剤の親疎水性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、疎水性の分散剤とすることで、顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、画像濃度が向上することから好ましい。前記顔料分散剤の親疎水性は、前記顔料分散剤が水に不溶性であれば疎水性であり、水に可溶性であれば親水性である。
顔料分散剤としては、例えば、ジョンクリル(ジョンソンポリマー社製)、Anti-Terra-U(BYK Chemie社製)、Disperbyk(BYK Chemie社製)、Efka(Efka CHEMICALS社製)、フローレン(共栄社化学社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ社製)、デモール(花王社製)、ホモゲノール、エマルゲン(以上、花王社製)、ソルスパース(ルーブリゾール社製)、ニッコール(日光ケミカル社製)などが挙げられる。
<水系分散体の製造方法>
本発明の水系分散体の製造方法は、顔料プレ分散体調製工程(工程1)と、顔料分散樹脂溶液調製工程(工程2)と、樹脂粒子調製工程(工程3)と、顔料含有樹脂粒子調製工程(工程4)と、水系分散体調製工程(工程5)とをこの順で含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の水系分散体を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記水系分散体の製造方法により好適に製造することができる。本発明の前記水系分散体の製造方法により、前記顔料含有樹脂粒子が、顔料内包樹脂粒子である水系分散体を好適に製造することができる。
本発明の前記水系分散体の製造方法における各成分については、本発明の水系分散体において説明した事項を適宜選択することができる。
次に、前記工程1~工程5の各工程について詳細に説明する。
(工程1:顔料プレ分散体調製工程)
前記顔料プレ分散体調製工程は、有機溶剤と無機顔料とを混合し、前記無機顔料の50%累積体積粒径(D50)が30nm以上120nm以下である顔料プレ分散体を得る工程である。
前記顔料プレ分散体は、有機溶剤と無機顔料と、必要に応じて顔料分散剤、その他の成分を用いて無機顔料を分散し、無機顔料の粒径を調整して得られる。工程1において使用される装置としては、特に制限はないが、分散には分散機を用いるとよい。
前記有機溶媒としては、水と混和性のある有機溶剤を用いることが好ましく、工程2における末端にヒドロキシル基を有するポリエステルを溶解可能な有機溶媒がより好ましい。
前記有機溶剤としては、特に制限はないが、ポリエステルを溶解できることが好ましく、エーテル系、ケトン系、アルコール系、ハロゲン系、アミン系の有機溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、水と任意の比率にて溶解可能な有機溶剤が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール等のアルコール系有機溶剤;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系有機溶剤;アセトン等のケトン系有機溶剤;ピリジン、N-メチルピロリドン、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド等のアミン系有機溶剤;その他としてアセトニトリル;などが挙げられる。
前記顔料プレ分散体における無機顔料の粒径としては、特に制限はないが、前記顔料含有樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる点から、D50が30nm以上120nm以下が好ましく、40nm以上100nm以下がより好ましい。
前記無機顔料の粒子径は、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料プレ分散体における無機顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記顔料プレ分散体における無機顔料と顔料分散剤の比率は、特に制限はないが、顔料プレ分散体の分散性を高める点から、無機顔料と顔料分散剤の比率(無機顔料/顔料分散剤)が4/4~4/0.2が好ましく、4/3~4/0.5がより好ましい。
前記顔料プレ分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子を除去することが好ましい。
前記顔料プレ分散体の調製方法としては、必要に応じて顔料分散剤を有機溶剤中に溶解乃至懸濁させ、無機顔料を投入して攪拌した後、一般に用いられる公知の分散機を用いて製造することができる。
公知の分散機としては、例えば、アンカー翼、ディスパー翼、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、パールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アジテーターミル、ペイントシェーカー、グレンミル、コボルミル、ジェットミルなどが挙げられる。
これらの中でも、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカーが分散効率の点で好ましく用いられる。
(工程2:顔料分散樹脂溶液調製工程)
前記顔料分散樹脂溶液調製工程は、工程1で得られた前記顔料プレ分散体と末端にヒドロキシル基を有するポリエステル(以下、工程2において単に「樹脂」と称することがある)とを混合して得られた溶液に、多官能イソシアネート化合物を添加し、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルを含む顔料分散樹脂溶液を得る工程である。
前記顔料プレ分散体と末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとを混合して得られた溶液は、工程1で得られた顔料プレ分散体と末端にヒドロキシル基を有するポリエステル、及び必要に応じて、塩基性化合物、有機溶剤、添加剤などのその他の成分とを混合し、攪拌することで得られる。
工程2において使用される混合攪拌装置としては、特に制限はないが、工程1にて記述した装置が挙げられる。
これらの中でも、アンカー翼もしくはディスパー翼を備えた高速攪拌装置が高粘度溶液の均一攪拌、及び樹脂粉体を効率よく溶解させる点で好ましく用いられる。
前記溶液の調製手順としては、特に制限はなく、工程1で得られた顔料プレ分散体に樹脂固形物を加えてもよいし、樹脂固形物を有機溶剤に可溶化した後に加えてもよい。
前記溶液における無機顔料の粒径としては、前記工程1で得られる顔料プレ分散体中の無機顔料と同様の粒子径が好ましく、工程1と工程2で変化を生じないことがより好ましい。
前記溶液における水の含有量としては、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。前記含有量が20質量%より多いと、顔料の分散安定性が悪化することで凝集体が発生し、工程3にて得られる顔料内包化樹脂粒子が粗大化する可能性がある。
前記末端にヒドロキシル基を有するポリエステルは、多官能イソシアネート化合物の添加後に顔料を含有させるのに用いられ、自己乳化型の樹脂であることが好ましい。
自己乳化型樹脂とは、樹脂溶液と水との攪拌混合攪拌により乳化状態を形成可能な樹脂のことであり、自己乳化型樹脂としては、ノニオン性やアニオン性、カチオン性の親水性基を有することが好ましく、アニオン性であることがより好ましい。
前記樹脂がアニオン性の自己乳化型樹脂である場合、前記樹脂が水性媒体中でエマルションを形成し、水性媒体中での分散安定性を保つためにアニオン性基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和することが好ましい。
前記樹脂に対する前記無機顔料の質量比(無機顔料/樹脂)としては、0.2以上0.75以下が好ましく、0.3以上0.6以下がより好ましい。
前記質量比が0.2以上であると、顔料濃度が適切であり、印字画像濃度が優れる。また、前記質量比が0.75以下であると、顔料の大部分を樹脂で内包化することができ、加熱乾燥後の塗工膜の表面粗さを抑制することで画像濃度が良好となる。
前記樹脂に対する前記無機顔料の質量比は、仕込み比率、又は得られた水系分散体から算出できる。
前記水系分散体から、前記樹脂に対する前記無機顔料の質量比を算出する方法としては、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて水系分散体の乾固膜の熱分析により行うことができる。
具体的には、水系分散体の乾固膜を熱重量示差熱分析装置により、窒素ガス雰囲気下で樹脂の熱分解温度まで昇温、保持し、分解した重量を樹脂、残差の重量を無機顔料として算出することができる。
また、窒素ガス雰囲気下での熱分解では完全に樹脂を分解できないような高耐熱性の樹脂である場合には、加熱減量と樹脂に対する顔料比率の検量線を用いて算出することができる。具体的には、任意の比率で混合した無機顔料と樹脂の混合物を複数作成し、それぞれの混合物を一定の温度まで昇温、保持することで、上記検量線を作成し、未知サンプル測定結果より得られる減量率を基に樹脂に対する無機顔料の比率を算出することができる。
前記溶液における樹脂(R:Resin)と有機溶剤(S:Solvent)の質量比率(R/S)としては、1.2以上3.0以下が好ましく、1.4以上2.0以下がより好ましい。
前記有機溶剤に対する樹脂の比率が1.2以上であると、多官能イソシアネート化合物添加後の樹脂の乳化速度が速くなり、顔料含有樹脂粒子の小粒径化を可能とする。また、前記有機溶剤に対する樹脂の比率が3.0以下であると、反応系内の高粘度化を抑制し、攪拌効率が良好になることで粗大粒子の生成を抑制できる。
前記顔料分散樹脂溶液は、工程2で得られた前記溶液と多官能イソシアネート化合物との混合により得られる。
ここで使用される混合攪拌装置としては、特に制限はないが、工程1にて記述した装置が挙げられる。
これらの中でも、アンカー翼もしくはディスパー翼を備えた高速攪拌装置が高粘度溶液の均一攪拌ならびに樹脂粉体を効率よく溶解させる点で好ましく用いられる。
前記顔料分散樹脂溶液と多官能イソシアネート化合物との混合手順としては、特に制限はないが、多官能イソシアネート化合物を前記溶液中に加えることが好ましい。
前記多官能イソシアネート化合物の前記溶液への添加量は、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルのヒドロキシル基に対してイソシアネート基の当量数(NCO/OH)が1.5以上2.5以下であることが好ましく、1.8以上2.2以下であることがより好ましい。
NCO/OHが1.5以上であると、ポリエステル末端にイソシアネート基が残存することで工程4における架橋反応が効率よく進行し、顔料含有樹脂粒子の耐熱性を向上させる。また、NCO/OHが2.5以下であると、未反応のイソシアネート化合物の残存を抑制し、工程4における粗大粒子の生成を抑制できる。
また、多官能イソシアネート化合物添加する際の反応温度は20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
なお、反応の進行に関してはNCO滴定法(JIS K 6806)により管理することができる。
(工程3:樹脂粒子調製工程)
前記樹脂粒子調製工程は、前記顔料分散樹脂溶液と水とを混合して、前記無機顔料を含有する樹脂粒子を含む分散液を得る工程である。
前記樹脂粒子を含む分散液は、工程2で得られた顔料分散樹脂溶液と水との混合により得られる。
工程3において使用される混合攪拌装置には特に制限はないが、工程1にて記述した装置が挙げられる。
これらの中でも、アンカー翼もしくはディスパー翼を備えた高速攪拌装置が高粘度溶液における均一攪拌の点で好ましく、分散にかかるエネルギーが高い場合には、生成した無機顔料を含有する樹脂粒子が破砕されることで内包化形態を維持できないことがある。
前記顔料分散樹脂溶液と水との混合手順としては、特に制限はないが、顔料分散樹脂溶液中に水を加えることが好ましい。
また、水の添加速度としては、樹脂100質量部に対して10質量部/min以上1000質量部/min以下が好ましく、30質量部/min以上500質量部/min以下がより好ましい。前記水の添加速度が10質量部/min以上1000質量部/min以下であると、系内の顔料凝集を抑制することで無機顔料を含有する樹脂粒子の粗大化を抑制できる。
前記水の添加量は、無機顔料を含有する樹脂粒子の分散安定性の観点から、末端にヒドロキシル基を有するポリエステル100質量部に対して、70質量部以上700質量部以下であることが好ましく、100質量部以上500質量部以下であることが好ましい。
また、工程3における反応温度としては、20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
(工程4:顔料含有樹脂粒子調製工程)
前記顔料含有樹脂粒子調製工程は、前記樹脂粒子を含む分散液に多官能アミンを添加し、架橋ポリエステル樹脂により無機顔料を含有した顔料含有樹脂粒子を含む分散液を得る工程である。
前記架橋ポリエステル樹脂は、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂である。
前記顔料含有樹脂粒子を含む分散液は、工程3で得られた無機顔料を含有する樹脂粒子を含む分散液と多官能アミンとの混合により得られる。
工程4において使用される混合攪拌装置には特に制限はないが、工程1にて記述した装置が挙げられる。
これらの中でも、アンカー翼もしくはディスパー翼を備えた高速攪拌装置が高粘度溶液における均一攪拌の点で好ましく、分散にかかるエネルギーが高い場合には生成した顔料含有樹脂粒子が破砕されることで内包化形態を維持できないことがある。
前記無機顔料を含有する樹脂粒子を含む分散液と多官能アミンとの混合手順としては、特に制限はないが、樹脂粒子を含む分散液中に多官能アミンを加えることが好ましい。また、多官能アミンは水溶性であることが好ましく、水で希釈して添加することがより好ましい。
前記多官能アミンの添加量としては、特に制限はないが、工程2で算出したNCO%に対して等量のアミン濃度となるように調整することが好ましい。アミン濃度が等量より低い場合、又は高い場合、ポリエステルの架橋度合いが低下することでエマルションの高温下での安定性が低下する。
また、工程4における反応温度は20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
(工程5:水系分散体調製工程)
前記水系分散体調製工程は、前記顔料含有樹脂粒子を含む分散液から前記有機溶剤を除去して顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程である。
工程5にて得られる水系分散体は、工程4で得られた顔料含有樹脂粒子を含む分散液から有機溶剤を一部乃至全てを除去することで得られる。
工程4で得られた分散液から有機溶剤を除去する方法としては、特に制限はなく公知の除去装置が使用でき、例えば、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にて有機溶剤の沸点以上の温度にて加熱することで除去する方法、限外ろ過装置を用いて有機溶剤を水に置換する方法などが挙げられる。
前記顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などでろ過することにより粗大粒子を除去することができる。
<インク>
本発明のインクは、樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、樹脂を有し無機顔料を有しない樹脂粒子を含んでもよく、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有するポリエステル樹脂であり、
前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下である。
前記インクにおける前記顔料含有樹脂粒子、樹脂、無機顔料については、前記水系分散において説明した前記顔料含有樹脂粒子、樹脂、無機顔料などの事項を適宜選択することができる。
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 2023060957000001
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2023060957000002
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
図1に本発明のインクを用いた印刷装置の実施形態を示す。
印刷装置1は、搬入部10と、前処理部50と、印刷部20と、乾燥部30と、搬出部40とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入されるシート材Pに対し、前処理部50でシート材Pに処理液を塗布した後、印刷部20で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部30でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部40に排出する。
搬入部10は、複数のシート材Pが積載される搬入トレイ11と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12と、シート材Pを印刷部20へ送り込むレジストローラ対13とを備えている。
給送装置12には、ローラやコロを用いた装置や、エアー吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置12により搬入トレイ11から送り出されたシート材Pは、その先端がレジストローラ対13に到達した後、レジストローラ対13が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部20へ送り出される。
前処理部50は、液体と反応して滲みを抑制するための処理液を収容する処理液収容器51と、シート材Pに塗布する処理液塗布手段としての先塗り処理回転体を有する。先塗処理回転体は、処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げる汲み上げローラに付着した処理液を受け取るとともに搬送されるシート材の表面に処理液を塗布する塗布ローラ52と、塗布ローラとの圧接によりシート材を挟持するローラ53とを有する。
塗布ローラ52によりシート材Pの下面に処理液が塗布された後、シート材Pは、上下を反転し、搬入部10を構成するレジストローラ対13に搬送される。
印刷部20は、シート材Pを搬送するシート搬送装置21を備えている。シート搬送装置21は、シート材Pを担持して搬送するベルトと、ベルト表面に吸引力を生じさせる吸引装置などを有している。
また、印刷部20は、シート搬送装置21のベルトに担持されて搬送されるシート材Pの処理液付着面に向けて液体を吐出して付与する液体吐出部22を備えている。
液体吐出部22は、液体付与手段である吐出ユニット23(23A~23F)を備えている。例えば、吐出ユニット23Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット23Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット23Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット23Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、吐出ユニット23F、23Fは、YMCKのいずれか、或いは、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出に使用する。さらに、表面コート液などの処理液を吐出する吐出ユニットを設けることもできる。
吐出ユニット23は、例えば、複数のノズルを配列したノズル列を有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)で構成されるフルライン型ヘッドである。
液体吐出部22の各吐出ユニット23は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラムに担持されたシート材Pが液体吐出部22との対向領域を通過するときに、吐出ユニット23から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
液体吐出部22によって液体が付与されたシート材Pは、乾燥部30の吸引搬送機構部31に渡される。
乾燥部30は、シート材Pを吸引した状態で搬送する(吸引搬送する)搬送手段である吸引搬送機構部31と、吸引搬送機構部31で搬送されるシート材P上の液体を乾燥させる乾燥機構部32とを備えている。
印刷部20で液体が付与されたシート材Pは、吸引搬送機構部31で搬送されながら乾燥機構部32によって乾燥され、搬出部40へ受け渡される。
搬出部40は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ41を備えている。乾燥部30から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ41上に順次積み重ねられて保持される。
なお、前処理部50は、シート材Pの片面に処理液を塗布する構成としたが、これに限られず、処理液収容器51の搬送方向下流側にシート材Pの裏面に処理液を塗布する別の処理液収容器を設けてもよいし、処理液収容器51を通過したシート材Pの表裏を反転し再度処理液収容器51を通過させてシート材Pの裏面に処理液を塗布するようにしてもよい。
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、以降の説明において「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表し、「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。
まず、インクを構成する原料の合成例、顔料プレ分散体の作製例、水系分散体及びインクの作製例を以下に示す。水系分散体及びインクの物性の評価方法については後述する。
[製造例]
<ポリエステルの合成>
下記の手順により、末端にヒドロキシル基を有し、自己乳化樹脂であるポリエステルα、及びポリエステルβを合成した。
(ポリエステルαの合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した500mLの四つ口フラスコに、ジオールとしてビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(富士フィルムワコーケミカル社製、4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール))275部、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物79部(日本乳化剤社製、BA-P2グリコール)、並びにジカルボン酸としてイソフタル酸ジメチル140部、及びアジピン酸26部を混合した。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシド添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、5mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させてポリエステルを得た。
上記で得られたポリエステル160部を窒素気流下、180℃にて溶融し、次いで無水トリメリット酸6部を加えて40分間攪拌することで、樹脂の酸価調整を行い、酸価(AV)20mgKOH/g、水酸基価(OHV)50mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)51℃、重量平均分子量(Mw)5,100の[ポリエステルα]を得た。
(ポリエステルβの合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を装備した500mLの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコール146部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(富士フィルムワコーケミカル社製:4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール))54.6部、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物250.7部(日本乳化剤社製:BA-P2グリコール)、並びにトリオールとしてトリメチロールプロパン6.4部、及びジカルボン酸としてテレフタル酸ジメチル193.7部を混合した。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシド添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、5mmHg~30mmHgの減圧下、4時間反応させてポリエステルを得た。
得られた樹脂は、酸価(AV)0.4mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)80℃、重量平均分子量(Mw)25,000であった。
上記で得られたポリエステル150部を窒素気流下、180℃にて溶融し、次いで無水トリメリット酸4.2部を加えて40分間攪拌することで、樹脂の酸価調整を行い、酸価(AV)20mgKOH/g、水酸基価(OHV)12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)81℃、重量平均分子量(Mw)26,000の[ポリエステルβ]を得た。
<顔料プレ分散体の調製>
(顔料プレ分散体Aの調製)
以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで、無機顔料であるカーボンブラックを有する[顔料プレ分散体A]を作製した。この[顔料プレ分散体A]の粒子径測定システム(大塚電子社製、ELSZ-1000)における体積基準の累積50%粒子径(D50)は、90nmであった。
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g):15.0部
・顔料分散剤(Solsperse J200、ルーブリゾール社製、疎水性、濁点:3.1g):3.8部
・テトラヒドロフラン:41.2部
以下では、実施例及び比較例として水系分散体1~7、及びこの水系分散体を使用したインク1~7の調製例を示す。
水系分散体の特性及びインクの特性の評価結果を表1に示す。
[実施例1]
(水系分散体1の調製)
スリーワンモーター、アンカー翼、及び熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、顔料(P:Pigment)とポリエステル(R:Resin)の質量比(P/R)が0.5となるように、[顔料プレ分散体A]60gと[ポリエステルα]30gとを加えて室温で混合攪拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。次いで、ポリエステルとテトラヒドロフラン(S:Solvent)の比率(R/S)が1.8となるように、減圧下テトラヒドロフランを除去した後、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して1.1当量のトリエチルアミン1.1gを加えて0.5時間混合攪拌した。NCO/OH=2.0となるように4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート7.0g、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間攪拌した。反応液をサンプリングし、ジブチルアミンを添加することでイソシアネート基をウレア基に変換した後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を測定した結果、重量平均分子量(Mw)5,400であった。この顔料分散樹脂溶液を40℃にした後、350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水71gを15mL/minの速度で滴下し、20分間攪拌した。次いで、多官能アミンとしてのジエチレントリアミン0.59gを加え、室温にて1時間加熱撹拌した。最後に減圧下にてテトラヒドロフランを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整することで、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合を有する架橋ポリエステル樹脂と、無機顔料の一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子と、を含む[水系分散体1]を得た。
(インク1の調製)
上記で得られた[水系分散体1]を用い、下記処方のインクを調製し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、[インク1]を調製した。
「インク1処方」
・水系分散体1(固形分として): 10.75%
・プロピレングリコール(粘度7.5mPa・sに調整): 約40%
・シリコーン系界面活性剤: 1.0%
(日信化学工業製、シルフェイスSAG503A)
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤: 0.1%
(日信化学工業製、サーフィノールAD01)
・水: 残量
(合計:100%)
[実施例2]
(水系分散体2の調製)
水系分散体1の調製において、多官能アミンとしてのジエチレントリアミン0.59gに代えてイソホロンジアミン1.21gを用いたこと以外は、水系分散体1の調製と同様にして、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合を有する架橋ポリエステル樹脂と、無機顔料の一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子と、を含む[水系分散体2]を得た。
(インク2の調製)
インク1の調製において、[水系分散体1]に代えて[水系分散体2]を用いたこと以外は、インク1の調製と同様にして[インク2]を調製した。
[比較例1]
(水系分散体3の調製)
スリーワンモーター、アンカー翼、及び熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、顔料(P:Pigment)とポリエステル(R:Resin)の質量比(P/R)が0.5となるように、[顔料プレ分散体A]60gと[ポリエステルα]30gとを加えて40℃で混合攪拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。次いで、ポリエステルとテトラヒドロフラン(S:Solvent)の比率(R/S)が1.8となるように、減圧下テトラヒドロフランを除去した後、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して1.1当量のトリエチルアミン1.1gを加えて0.5時間混合攪拌した。350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水64gを15mL/minの速度で滴下し、多官能アミンを添加することなく、20分間攪拌することでエマルションを作製した。最後に減圧下にてテトラヒドロフランを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整することで、無機顔料の一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子を含む[水系分散体3]を得た。
(インク3の調製)
インク1の調製において、[水系分散体1]に代えて[水系分散体3]を用いたこと以外は、インク1の調製と同様にして[インク3]を調製した。
[比較例2]
(水系分散体4の調製)
スリーワンモーター、アンカー翼、及び熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、顔料(P:Pigment)とポリエステル(R:Resin)の質量比(P/R)が0.5となるように、[顔料プレ分散体A]60gと[ポリエステルβ]30gとを加えて室温で混合攪拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。次いで、ポリエステルとテトラヒドロフラン(S:Solvent)の比率(R/S)が1.8となるように、減圧下テトラヒドロフランを除去した後、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して1.1当量のトリエチルアミン1.1gを加えて0.5時間混合攪拌した。NCO/OH=2.0となるように4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1.7g、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間攪拌した。反応液をサンプリングし、ジブチルアミンを添加することでイソシアネート基をウレア基に変換した後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を測定した結果、重量平均分子量(Mw)26,500であった。この顔料分散樹脂溶液を40℃にした後、350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水61gを15mL/minの速度で滴下し、20分間攪拌した。次いで、多官能アミンとしてのジエチレントリアミン0.5gを加え、室温にて1時間加熱撹拌した。最後に減圧下にてテトラヒドロフランを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整することで、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合を有する架橋ポリエステル樹脂と、無機顔料の一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子と、を含む[水系分散体4]を得た。
(インク4の調製)
インク1の調製において、[水系分散体1]に代えて[水系分散体4]を用いたこと以外は、インク1の調製と同様にして[インク4]を調製した。
[比較例3]
(水系分散体5の調製)
水系分散体1の調製において、多官能アミンとしてのジエチレントリアミン0.59gに代えて単官能アミンとしてのジブチルアミン3.47gを用いたこと以外は、水系分散体1の調製と同様にして、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合を有する架橋ポリエステル樹脂と、無機顔料の一次粒子を二個以上含有した顔料内包樹脂粒子と、を含む[水系分散体5]を得た。
(インク5の調製)
インク1の調製において、[水系分散体1]に代えて[水系分散体5]を用いたこと以外は、インク1の調製と同様にして[インク5]を調製した。
[比較例4]
(水系分散体6の調製)
スリーワンモーター、アンカー翼、及び熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、顔料(P:Pigment)とポリエステル(R:Resin)の質量比(P/R)が0.5となるように、未処理顔料としてカーボンブラック(SBX45、旭カーボン社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g)15gと[ポリエステルα]30g、テトラヒドロフラン45gとを加えて室温で混合攪拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。次いで、ポリエステルとテトラヒドロフラン(S:Solvent)の比率(R/S)が1.8となるように、減圧下テトラヒドロフランを除去した後、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して1.1当量のトリエチルアミン1.1gを加えて0.5時間混合攪拌した。NCO/OH=2.0となるように4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート7.0g、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間攪拌した。反応液をサンプリングし、ジブチルアミンを添加することでイソシアネート基をウレア基に変換した後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を測定した結果、重量平均分子量(Mw)5,400であった。この顔料分散樹脂溶液を40℃にした後、350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水71gを15mL/minの速度で滴下し、20分間攪拌した。次いで、多官能アミンとしてのジエチレントリアミン0.59gを加え、室温にて1時間加熱撹拌した。最後に減圧下にてテトラヒドロフランを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整することで、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合を有する架橋ポリエステル樹脂を含む[水系分散体6]を得た。
(インク6の調製)
インク1の調製において、[水系分散体1]に代えて[水系分散体6]を用いたこと以外は、インク1の調製と同様にして[インク6]を調製した。
[インク6]は、インクジェットでは吐出不可能であった。
[比較例5]
顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を作製する代わりに、下記のようにして[ポリエステル単独樹脂エマルション]と[水系分散体7]を作製し、[インク7]を調製した。
(ポリエステル単独樹脂エマルションの調製)
スリーワンモーター、アンカー翼、及び熱電対を備え付けた0.3Lのセパラブルフラスコに、[ポリエステルα]50gとテトラヒドロフラン38gを加え、40℃で混合攪拌することで樹脂溶液を得た。次いで、ポリエステルの有する酸価を中和すべく、カルボキシル基に対して1.1当量のトリエチルアミン1.93gを加えて0.5時間混合攪拌した。NCO/OH=2.0となるように4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート7.0g、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間攪拌した。反応液をサンプリングし、GPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)5,400の末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルを得た。この樹脂溶液を40℃にした後、350rpmの速度で攪拌しながらイオン交換水148gを15mL/minの速度で滴下し、20分間攪拌した。次いで、多官能アミンとしてのジエチレントリアミン0.98gを加え、室温にて1時間加熱撹拌した。最後に減圧下にてテトラヒドロフランを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30%に調整し、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合を有する架橋ポリエステルを有する樹脂を含む[ポリエステル単独樹脂エマルション]を得た。[ポリエステル単独樹脂エマルション]の粒子径測定システム(大塚電子社製、ELSZ-1000)における体積基準の累積50%粒子径(D50)は70nmであった。
(水系分散体7の調製)
1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業社製)62.0部を700mLのジクロロメタンに溶解し、ピリジン(東京化成工業社製)20.7部を更に加え、攪拌をした。この溶液に、100mLのジクロロメタンに2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業社製)50.0部を溶解させた溶液を2時間かけて滴下した後、室温で6時間攪拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機層を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で98/2)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物を得た。
次に、得られた化合物42.1部を80mLの乾燥メチルエチルケトンに溶解し、攪拌しながら60℃の加熱を行った。この溶液に、20mLの乾燥メチルエチルケトンにカレンズMOI(昭和電工社製)24.0部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下した後、70℃で12時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で99/1)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、モノマーを得た。
次に、アクリル酸(東京化成工業社製)2.30部、前記モノマー8.54g、及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成工業社製)0.31部を100mLのメチルエチルケトンに溶解し、窒素ガス気流下、75℃の温度条件で5時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却した反応溶液をヘキサンを用いて再沈殿を5回繰り返し、共重合体の精製を行った。精製処理後は、共重合体をろ別し、減圧乾燥することで顔料分散剤を得た。
得られた顔料分散剤3.8部を、pHが8.0となるように30.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらに、イオン交換水を加え、水溶液の全量を45.0部とした。次に、カーボンブラック(SBX45、旭カーボン社製)15.0部を混合し、110mLのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1,000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmの酢酸セルロースメンブレンフィルターでろ過することで、[水系分散体7]を作製した。この[水系分散体7]の粒子径測定システム(大塚電子社製、ELSZ-1000)における体積基準の累積50%粒子径(D50)は120nmであった。
(インク7の調製)
上記で得られた[ポリエステル単独樹脂エマルション]及び[水系分散体7]を用い、下記処方のインクを調製し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、[インク7]を調製した。
「インク7処方」
・ポリエステル単独樹脂エマルション(固形分として): 5.375%
・水系分散体7(固形分として): 5.375%
・プロピレングリコール(粘度7.5mPa・sに調整): 約40%
・シリコーン系界面活性剤: 1.0%
(日信化学工業製、シルフェイスSAG503A)
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤: 0.1%
(日信化学工業製、サーフィノールAD01)
・水: 残量
(合計:100%)
[評価]
下記の手順により、実施例1~2、及び比較例1~5の水系分散体、及びインクについて評価を行った。結果を表1に示した。
[水系分散体についての評価]
<分子量>
装置:GPC(東ソー株式会社製)、検出器:RI、測定温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/分間
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、夫々、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量、及び分子量分布である。なお、カラムとしては、排除限界が6万のカラム、2万のカラム、及び1万のカラムを直列に繋いだものを使用した。
<累積体積粒径(D50、D90)>
顔料プレ分散体のD50は、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
具体的には、測定サンプルの固形分濃度が0.01質量%となるように、サンプルをイオン交換水又は必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行った。
また、顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体のD50、及びD90は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所社製)を用いて測定した。
具体的には、前記装置で測定時の透過率(R:半導体レーザー光の透過率)及び透過率(B:LED光の透過率)がいずれも30%~70%となるようにサンプルをイオン交換水により希釈し、得られた溶液の一部をバッチ式セル(スペーサー:50μm)に入れ、サンプルホルダーにセットして測定を行った。
<粗大粒子の存在割合>
顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体の粗大粒子数の測定は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、堀場製作所社製)を用いて測定した。
具体的には、上記装置で測定時の透過率(R:半導体レーザー光の透過率)及び透過率(B:LED光の透過率)がいずれも30%~70%となるようにサンプルをイオン交換水により希釈し、得られた溶液の一部をバッチ式セル(スペーサー:50μm)に入れ、サンプルホルダーにセットして測定を行った。測定結果より、体積頻度分布における粒径が1μm以上50μm以下の合計頻度(%)を粗大粒子の存在割合とした。
<顔料露出率>
顔料露出率は、塗工膜表面の顔料露出量を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察することにより算出した。
具体的には、まず、水系分散体、又はインクを、固形分濃度が10.75%となるようにイオン交換水を用いて調製した。次いで、塗工紙(Lumi Art Gloss 130gsm、Stora Enso社製)に0.15mmバーコーターにて塗工し、25℃で一晩乾燥した。この塗工膜を切り出し、SEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定した。これを、導電性処理することなく走査型電子顕微鏡(ZEISS製、Merlin)を用いて、加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率2,000倍~20,000倍にて観察した。この観察手法により、カーボンブラックと、樹脂の反射電子放出量の違いから、露出顔料を見分けることが可能であり、倍率20,000倍における塗工膜全体に対する露出した顔料が占める面積(%)を顔料露出率(%)と定義した。なお、塗工膜表面の顔料が占める面積の割合は、SEM観察像の二値化によって求め、3視野の平均を取った。
<表面粗さ>
表面粗さは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、以下のようにして算出した。
まず、顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75%となるようにイオン交換水を用いて調製した。次いで、塗工紙(Lumi Art Gloss 130gsm、Stora Enso社製)に0.15mmバーコーターにて水系分散体を塗工し、100℃のオーブンで5分間加熱乾燥して塗工膜を得た。この塗工膜を切り出し、以下の条件で観察を行い、表面粗さを算出した。観察は3視野行い、表面粗さの平均値を求めた。
-条件-
装置:走査プローブ型顕微鏡(Bruker製、DimensionIcon)
カンチレバー:オリンパス製、OMCL-AC240TS
測定モード:タッピングモード
観察範囲:2μm四方
<顔料含有樹脂粒子の割合>
顔料含有樹脂粒子の存在割合は以下のようにして観察した。
まず、顔料含有樹脂粒子を含むエマルションを、固形分濃度が0.1%となるようにイオン交換水で希釈し試料液を作製した。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製、コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製、JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40000倍で観察を行った。この観察手法により、50nm以上の粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像に対して50nm以上の粒子の個数に対する顔料含有樹脂粒子の個数が占める割合(個数%)を算出し、それらの平均を求めた。前記割合を粒子中の顔料含有樹脂粒子の存在割合と定義した。
<平均アスペクト比>
平均アスペクト比は、上記透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた顔料含有樹脂粒子の観察によって取得した画像の画像処理によって求めた。
具体的には、観察位置を任意に変えて顔料含有樹脂粒子を含む視野の画像を複数枚取得し、他の粒子との重なりのない顔料含有樹脂粒子を画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)を用いて二値化により抽出し、粒子解析を行った。最近似楕円の長軸/短軸をアスペクト比とし、20粒子の平均値を算出した。
<水系分散体の高温下での保存安定性>
各水系分散体をガラス製のスクリュー管に入れ、固形分濃度が10.75%となるようにイオン交換水を用いて調製した。70℃にて二週間静置し、スクリュー管の底に存在する沈殿物を下記の基準にて評価した。沈殿物の確認は、スクリュー管を振動することなくゆっくりと逆さにして、一時間静置後に底部を目視にて観察した。また、再分散性の確認はVORTEX Genius 3(IKA社製)にてダイヤルの値を4とし、10秒間振動することにより行った。
-評価基準-
〇;沈殿物なし
△:粒状の沈殿物が若干確認できるが再分散可能である
×:再分散不可能な沈殿物が存在する
[インクについての評価]
<画像出力方法>
インクジェットプリンター(リコー製、IPSiO GXe5500)の外装を外し、背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、印字ヘッドを含めたインク供給経路に純水を通液することで洗浄し、洗浄液が着色しなくなるまで十分に通液して洗浄液を装置から抜ききって評価用印字装置とした。
また、調製した各インクを、インクカートリッジに充填し、評価用インクカートリッジとした。充填動作を行わせ、全ノズルに評価インクが充填され異常画像が出ないことを確認し、プリンタ添付のドライバで「光沢紙きれいモード」を選択後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。このモードでベタ画像の記録媒体上へのインク付着量が20g/mとなるようにヘッドの駆動電圧を変更することで吐出量を調整した。
<画像濃度>
上記画像出力方法にてベタ画像を印刷し、室温(25℃)にて1日間乾燥させた後、100℃のオーブンにて5分間加熱乾燥させた画像をそれぞれ作製した。
印字画像の下に、白色の普通紙を置いた状態で、分光測色濃度計X-Rite939を用いて全濃度を測色し、Kの値を画像濃度とした。
また、25℃乾燥により得られた画像濃度(OD25)と100℃乾燥により得られた画像濃度(OD100)との差ΔOD(=OD25-OD100)を算出し、このΔODに関して以下の評価基準にて評価した。
[評価基準]
〇:ΔODが、0未満である
△:ΔODが、0である
×:ΔODが、0より大きい
Figure 2023060957000003
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、
前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、
前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体である。
<2> 前記顔料含有樹脂粒子が、顔料内包樹脂粒子である前記<1>に記載の水系分散体である。
<3> 前記無機顔料と前記顔料内包樹脂粒子における樹脂との質量比(無機顔料/樹脂)が、0.20以上0.75以下であり、
以下の条件にて算出される顔料露出率が、8%以下である前記<2>に記載の水系分散体である。
(顔料露出率算出条件)
前記顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるように調製する。次いで、前記水系分散体を塗工紙に塗工し、25℃で乾燥して得られた膜を導電性処理せずに走査型電子顕微鏡(加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率20,000倍)にて観察する。観察像の二値化によって顔料面積を算出し、塗工膜表面の顔料が占める割合を顔料露出率とする。
<4> 前記変性ポリエステルが、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとジイソシアネート化合物との反応により得られる前記<1>から<3>のいずれかに記載の水系分散体である。
<5> 前記多官能アミンが、水溶性である前記<1>から<4>のいずれかに記載の水系分散体である。
<6> 前記無機顔料が、カーボンブラックである前記<1>から<5>のいずれかに記載の水系分散体である。
<7> 前記水系分散体の透過電子顕微鏡(TEM)画像において、50nm以上の粒子径を有する粒子の個数を100%とした場合、50nm以上の前記顔料含有樹脂粒子の割合が30個数%以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載の水系分散体である。
<8> 前記変性ポリエステルが、カルボキシル基を有する自己乳化型樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載の水系分散体である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の水系分散体の製造方法であって、
有機溶剤と無機顔料とを混合し、前記無機顔料の50%累積体積粒径(D50)が30nm以上120nm以下である顔料プレ分散体を得る工程と、
前記顔料プレ分散体と末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとを混合して得られた溶液に、多官能イソシアネート化合物を添加し、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルを含む顔料分散樹脂溶液を得る工程と、
前記顔料分散樹脂溶液と水とを混合して、前記無機顔料を含有する樹脂粒子を含む分散液を得る工程と、
前記樹脂粒子を含む分散液に多官能アミンを添加し、架橋ポリエステル樹脂により無機顔料を含有した顔料含有樹脂粒子を含む分散液を得る工程と、
前記顔料含有樹脂粒子を含む分散液から前記有機溶剤を除去して顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程と、
を含むことを特徴とする水系分散体の製造方法である。
<10> 樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、
前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、
前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下であることを特徴とするインクである。
<11> 前記顔料含有樹脂粒子が、顔料内包樹脂粒子である前記<10>に記載のインクである。
<12> 前記無機顔料と前記顔料内包樹脂粒子における樹脂との質量比(無機顔料/樹脂)が、0.20以上0.75以下であり、
以下の条件にて算出される顔料露出率が、8%以下である前記<11>に記載のインクである。
(顔料露出率算出条件)
前記顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるように調製する。次いで、前記水系分散体を塗工紙に塗工し、25℃で乾燥して得られた膜を導電性処理せずに走査型電子顕微鏡(加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率20,000倍)にて観察する。観察像の二値化によって顔料面積を算出し、塗工膜表面の顔料が占める割合を顔料露出率とする。
<13> 前記変性ポリエステルが、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとジイソシアネート化合物との反応により得られる前記<10>から<12>のいずれかに記載のインクである。
<14> 前記多官能アミンが、水溶性である前記<10>から<13>のいずれかに記載のインクである。
<15> 前記無機顔料が、カーボンブラックである前記<10>から<14>のいずれかに記載のインクである。
<16> 前記水系分散体の透過電子顕微鏡(TEM)画像において、50nm以上の粒子径を有する粒子の個数を100%とした場合、50nm以上の前記顔料含有樹脂粒子の割合が30個数%以上である前記<10>から<15>のいずれかに記載のインクである。
<17> 前記変性ポリエステルが、カルボキシル基を有する自己乳化型樹脂である前記<10>から<16>のいずれかに記載のインクである。
前記<1>から<8>のいずれかに記載の水系分散体は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
前記<9>に記載の水系分散体の製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、顔料含有樹脂粒子を含有する水系分散体であって、高温下での保存安定性に優れるのみならず、画像濃度に優れた画像を提供することができる水系分散体の製造方法を提供することができる。
前記<10>から<17>のいずれかに記載のインクは、従来における前記諸問題を解決し、顔料含有樹脂粒子を含有するインクであって、高温下での保存安定性に優れるのみならず、画像濃度に優れた画像を提供することができるインクを提供することができる。
特開2016-196621号公報 特開2002-322396号公報 特開2019-099819号公報 特開2005-120136号公報

Claims (10)

  1. 樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、
    前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、
    前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
    前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体。
  2. 前記顔料含有樹脂粒子が、顔料内包樹脂粒子である請求項1に記載の水系分散体。
  3. 前記無機顔料と前記顔料内包樹脂粒子における樹脂との質量比(無機顔料/樹脂)が、0.20以上0.75以下であり、
    以下の条件にて算出される顔料露出率が、8%以下である請求項2に記載の水系分散体。
    (顔料露出率算出条件)
    前記顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が10.75質量%となるように調製する。次いで、前記水系分散体を塗工紙に塗工し、25℃で乾燥して得られた膜を導電性処理せずに走査型電子顕微鏡(加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率20,000倍)にて観察する。観察像の二値化によって顔料面積を算出し、塗工膜表面の顔料が占める割合を顔料露出率とする。
  4. 前記変性ポリエステルが、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとジイソシアネート化合物との反応により得られる請求項1から3のいずれかに記載の水系分散体。
  5. 前記多官能アミンが、水溶性である請求項1から4のいずれかに記載の水系分散体。
  6. 前記無機顔料が、カーボンブラックである請求項1から5のいずれかに記載の水系分散体。
  7. 前記水系分散体の透過電子顕微鏡(TEM)画像において、50nm以上の粒子径を有する粒子の個数を100%とした場合、50nm以上の前記顔料含有樹脂粒子の割合が30個数%以上である請求項1から6のいずれかに記載の水系分散体。
  8. 前記変性ポリエステルが、カルボキシル基を有する自己乳化型樹脂である請求項1から7のいずれかに記載の水系分散体。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の水系分散体の製造方法であって、
    有機溶剤と無機顔料とを混合し、前記無機顔料の50%累積体積粒径(D50)が30nm以上120nm以下である顔料プレ分散体を得る工程と、
    前記顔料プレ分散体と末端にヒドロキシル基を有するポリエステルとを混合して得られた溶液に、多官能イソシアネート化合物を添加し、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルを含む顔料分散樹脂溶液を得る工程と、
    前記顔料分散樹脂溶液と水とを混合して、前記無機顔料を含有する樹脂粒子を含む分散液を得る工程と、
    前記樹脂粒子を含む分散液に多官能アミンを添加し、架橋ポリエステル樹脂により無機顔料を含有した顔料含有樹脂粒子を含む分散液を得る工程と、
    前記顔料含有樹脂粒子を含む分散液から前記有機溶剤を除去して顔料含有樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程と、
    を含むことを特徴とする水系分散体の製造方法。
  10. 樹脂と無機顔料とを有する顔料含有樹脂粒子、及び水を含み、
    前記樹脂が、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステルと多官能アミンとの反応によって得られるウレア結合と架橋構造とを有する架橋ポリエステル樹脂であり、
    前記顔料含有樹脂粒子のレーザー回折により得られる50%累積体積粒径(D50)が、40nm以上150nm以下であり、
    前記顔料含有樹脂粒子の平均アスペクト比が、1.0以上1.5以下であることを特徴とするインク。
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