JP2022138303A - 水系分散体、水系分散体の製造方法、インク、印刷方法、及び印刷装置 - Google Patents

水系分散体、水系分散体の製造方法、インク、印刷方法、及び印刷装置 Download PDF

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亮 宮越
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Abstract

【課題】 顔料と当該顔料の分散性を向上させる樹脂との複合物を含有する水系分散体を用いた場合であっても、当該水系分散体を用いて製造されたインクを静置等することで沈殿物が生じ、当該沈殿物の再分散が困難となる課題がある。また、当該インクで形成された画像を乾燥等の目的で加熱する場合において、加熱しなかった場合と比較して画像濃度が向上しない課題がある。
【解決手段】 樹脂粒子及び界面活性剤を含有する水系分散体であって、前記樹脂粒子は、顔料を樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、前記樹脂は、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含有し、前記水系分散体の50%累積体積粒径(D50)は、200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体。
【選択図】なし

Description

本発明は、水系分散体、水系分散体の製造方法、インク、印刷方法、及び印刷装置に関する。
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また、近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。
商業用途や産業用途では、インク低吸収性の印刷用塗工紙(コート紙)やインク非吸収性のプラスチックメディアが記録媒体として用いられることもあるため、これらメディアに対しても、インクジェット記録方法により、従来のオフセット印刷並の画質を実現することが求められている。
また、インクジェット記録装置に用いられるインクは、色材として顔料を用いたものが普及してきている。このようなインクは、分散した顔料を含有する分散体、水、及び有機溶剤などを混合して製造される。このような顔料を含むインク又は分散体においては、顔料の分散方法が種々検討されてきており、特許文献1~3には、顔料に対して顔料の分散性を向上させる樹脂を吸着又は被覆させることで顔料と樹脂を複合化させ、顔料を分散させる方法が開示されている。
しかしながら、顔料と当該顔料の分散性を向上させる樹脂との複合物を含有する水系分散体を用いた場合であっても、当該水系分散体を用いて製造されたインクを静置等することで沈殿物が生じ、当該沈殿物の再分散が困難となる課題がある。また、当該インクで形成された画像を乾燥等の目的で加熱する場合において、加熱しなかった場合と比較して画像濃度が向上しない課題がある。
本発明は、樹脂粒子及び界面活性剤を含有する水系分散体であって、前記樹脂粒子は、顔料を樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、前記樹脂は、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含有し、前記水系分散体の50%累積体積粒径(D50)は、200nm以上500nm以下であり、前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体に関する。
本発明によれば、水系分散体を用いて製造されたインクにおいて沈殿物が発生したとしても再分散させることが容易であり、かつ、当該インクで形成された画像を加熱する場合において、加熱しなかった場合と比較して画像濃度が向上する水系分散体を提供することができる。
図1は、記録装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<<水系分散体>>
水系分散体は、樹脂を含む樹脂粒子、及び界面活性剤を含有する。また、水系分散体は、必要に応じて、顔料分散剤、水、添加剤等を含有してもよい。
本開示において「水系分散体」とは、分散質として樹脂粒子を含み、分散媒として水を含み、かつ分散媒において最大の質量を有する成分が水である混合物を表す。
また、本開示において「樹脂粒子」とは、構成成分の少なくとも1つとして樹脂を含む粒状物である。従って、樹脂粒子は、樹脂以外の構成成分として、例えば、顔料等を有していてもよい。樹脂粒子としては、例えば、顔料及び樹脂が一体化しており且つ顔料が樹脂中に内包されている顔料内包樹脂粒子、及び顔料及び樹脂が一体化しており且つ顔料の一部が外部に露出している顔料露出樹脂粒子等の顔料含有樹脂粒子、並びに樹脂を含むが顔料を含まない顔料非含有樹脂粒子などが挙げられる。なお、本開示において「内包」とは、少なくとも観察範囲(例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで取得される画像の範囲)において、内部に位置する材料が外部に位置する材料に完全に包含されており、内部に位置する材料が露出していないことを表す。
<樹脂粒子>
樹脂粒子は、上記の通り水系分散体の分散媒中に分散して含有されており、言い換えると、樹脂エマルションの形態で含有されている。また、樹脂粒子としては、顔料及び樹脂が一体化しており且つ顔料が樹脂中に内包されている顔料内包樹脂粒子を含む。水系分散体中に顔料内包樹脂粒子を含むことで、水系分散体を用いて製造されたインクを静置等したとしても、沈殿物の発生を抑制することができ、沈殿物が発生したとしても再分散させることが容易なインクの製造に用いられる水系分散体(以下、「分散安定性に優れた水系分散体」とも称する)を提供することができ、かつ、当該水系分散体を用いて製造されたインクで形成された画像を加熱する場合において、加熱しなかった場合と比較して画像濃度が向上する水系分散体(以下、「画像濃度性に優れた水系分散体」とも称する)を提供することができる。
まず、顔料内包樹脂粒子を用いることで分散安定性及び画像濃度性に優れた水系分散体を得られる理由について説明する。
一般に、顔料を含有する樹脂粒子である顔料含有樹脂粒子において、顔料を完全に内包する顔料内包樹脂粒子を製造することが困難である課題(例えば、特許文献1~3においても顔料内包樹脂粒子は形成されない)、及び顔料を被覆する樹脂の親水性が高いために樹脂が顔料から脱離しやすく、特に顔料露出樹脂粒子を用いた場合にこの脱離がより進行しやすい課題があり、これらの結果、分散安定性に優れた水系分散体を得ることが困難であった。また、これにより、インクで形成された画像を加熱することに伴って顔料の分散性が低下して凝集し、画像表面の表面粗さが高まり、加熱しなかった場合と比較して画像濃度が向上しない課題があった。
これに対し、本開示の水系分散体は、顔料を被覆する樹脂の脱離が抑制される顔料内包樹脂粒子を含むため、顔料の分散安定性が優れる。また、顔料の分散安定性が向上することで水系分散体を用いて製造されたインクで形成された画像を加熱する場合であっても、加熱後の画像中における顔料の分散均一性が維持され、画像表面の表面粗さが小さくなるため、画像濃度性に優れる。
上記の通り、本開示の水系分散体は、顔料内包樹脂粒子を含み、顔料露出樹脂粒子を実質的に含まないことが好ましい。顔料露出樹脂粒子を実質的に含まないとは、例えば、下記の顔料露出率算出条件に基づいて測定される顔料露出率が8%以下であることを表し、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
(顔料露出率算出条件)
まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから25℃で12時間乾燥させて平均厚み2μmの塗工膜を形成する。次に、塗工膜を切り出してSEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定し、固定した塗工膜を導電性処理せずに走査型電子顕微鏡(SEM、ZEISS製Merlin)を用いて、所定の条件(加速電圧:0.75kV、反射電子検出器、倍率:20000倍)で観察することで観察像を取得する。次に、観察像を二値化することによって観察像中における顔料の面積である顔料面積を取得し(顔料及び樹脂の反射電子放出量の違いから、観察像におけるコントラストの違いにより顔料部分を見分けることが可能)、顔料面積の観察像の面積に対する割合を顔料露出率とする。なお、顔料露出率は、任意に場所を変更して観察することで取得した3つ以上の観察像から算出される顔料露出率の平均を採用することが好ましい。また、上記観察条件において、チャージアップにより観察不能なものは、顔料露出率が低い傾向にあり、顔料露出率が3%以下の場合に観測されやすい。
樹脂粒子は、顔料内包樹脂粒子を含むが、更に、顔料を含まない顔料非含有樹脂粒子を含んでもよい。このように、樹脂粒子として顔料内包樹脂粒子以外の粒子も含まれる場合、顔料内包化樹脂粒子の含有量は、目的に応じて適宜調整することができる。例えば、100nm以上の粒径を有する樹脂粒子の個数に対する100nm以上の粒径を有する顔料内包樹脂粒子の個数の割合は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。30%以上であることで水系分散体を用いて製造されたインクの画像濃度が向上する。
具体的には、100nm以上の粒径を有する樹脂粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像において100nm以上の粒径を有する樹脂粒子の個数に対する100nm以上の粒径を有する顔料内包樹脂粒子の個数の割合を求め、これら割合の平均を採用する。
より具体的には、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで上記画像を取得する。この場合、まず、顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈して試料液を作製する。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取る。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40000倍で観察を行う。
なお、本開示において、上記の樹脂粒子及び顔料内包樹脂粒子における「粒径」とは、画像中における樹脂粒子及び顔料内包樹脂粒子の形状を楕円近似させた場合の長軸の長さを表す。
顔料内包樹脂粒子は略球状であることが好ましい。具体的には、顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、1.0以上1.5以下であり、1.0以上1.4以下であることが好ましく、1.0以上1.3以下であることがより好ましく、1.0以上1.2以下であることが更に好ましく、1.0以上1.1以下であることが特に好ましい。アスペクト比が1.0以上1.5以下であることで、水系分散体を用いて製造されたインクで形成された画像を加熱する場合において、加熱しなかった場合と比較して画像濃度が向上する。これは、顔料内包樹脂粒子が略球状であることで、加熱後の画像中における顔料の分散均一性が維持され、画像表面の表面粗さが小さくなるためである。
顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで取得した画像に基づいて求めることができる。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察方法については上記と同様の方法により行う。画像は、顔料内包樹脂粒子を含む視野の画像であって観察位置が異なるものを複数枚取得する。これら画像から、粒子同士との重なりのない顔料内包樹脂粒子を画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)を用いて二値化により抽出し、抽出した顔料内包樹脂粒子の形状を楕円近似し、アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)を算出する。なお、アスペクト比は、20個の顔料内包樹脂粒子における平均値を採用する。また、長軸長さは、楕円近似された顔料内包樹脂粒子の形状において最長となる軸の長さを表し、短軸長さは、長軸の中心において長軸と直交する軸の長さを表す。
顔料内包樹脂粒子は、顔料の複数の一次粒子を樹脂が内包していることが好ましい。顔料内包樹脂粒子中における顔料の密度が増加することで、水系分散体を用いて製造されたインクの画像濃度が向上する。顔料内包樹脂粒子における顔料の内包形態については、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することで取得した画像に基づいて判断することができる。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察方法については上記と同様の方法により行う。
また、顔料内包樹脂粒子が、顔料の複数の一次粒子を樹脂が内包する形態であり、かつ、略球形であること(言い換えると、上記のアスペクト比を満たすこと)により、画像表面の表面粗さが小さくなり、水系分散体を用いて製造されたインクの画像濃度がより向上する。
樹脂粒子等を含む水系分散体の50%累積体積粒径(D50)は、200nm以上500nm以下であり、200nm以上400nm以下であることが好ましく、200nm以上300nm以下であることがより好ましい。50%累積体積粒径(D50)が200nm以上であることで、水系分散体の粘度が低下し、これにより分散安定性が向上する。また、複数の顔料の一次粒子を樹脂が内包化することで200nm以上となっているため、水系分散体を用いて製造されたインクの画像濃度が向上する。50%累積体積粒径(D50)が500nm以下であることで、樹脂粒子等の沈降が抑制され、水系分散体の保存安定性が向上する。加えて、水系分散体の50%累積体積粒径(D50)が200nm以上500nm以下であることで、本水系分散体を用いて製造されたインクを好適にインクジェット方式で吐出することができる。
なお、水系分散体の50%累積体積粒径(D50)の測定方法は、特に制限されないが、例えば、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定する方法などが挙げられる。
なお、樹脂粒子として顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体を用いて製造されたインクにより形成された画像は、上記の通り、画像を加熱する場合であっても、加熱後の画像中における顔料の分散均一性が維持され、画像表面の表面粗さが小さくなるため、画像濃度性に優れる。このインクにより形成された画像表面における表面粗さは、以下説明する水系分散体により形成された塗膜表面における表面粗さにより代替的に評価できる。具体的には、塗膜表面における表面粗さは、20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。
上記の水系分散体により形成された塗膜表面における表面粗さは、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて算出する。まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから100℃で5分間乾燥させて平均厚み2μmの塗膜を形成する。次に、塗膜を切り出して、塗膜の表面粗さを走査プローブ型顕微鏡(例えば、Bruker製DimensionIcon)を用い、所定の条件(例えば、カンチレバー:オリンパス製OMCL-AC240TS、測定モード:タッピングモード、観察範囲:2μm四方)で観察する。観察は場所を変更して3視野にて行い、これらの平均値を表面粗さとする。
樹脂粒子において、樹脂に対する顔料の質量比(顔料/樹脂)は、0.2以上0.75以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましい。質量比が0.2以上であると、顔料濃度が適切になり、水系分散体を用いて製造されたインクで形成された画像の画像濃度が向上する。質量比が0.75以下であると、樹脂粒子として顔料内包樹脂粒子が適切に含まれ、分散安定性及び画像濃度性により優れた水系分散体を提供することができる。
質量比(顔料/樹脂)は、樹脂粒子製造時における顔料及び樹脂の仕込み比率又は水系分散体からの分析により求めることができる。分散体からの分析方法としては、例えば、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用い、水系分散体の乾固膜の熱分析により算出することができる。具体的には、水系分散体の乾固膜を熱重量示差熱分析装置により、窒素ガス雰囲気化で樹脂の熱分解温度まで昇温、保持し、分解した量を樹脂の質量、残量を顔料の質量として算出することができる。また、樹脂が窒素ガス雰囲気化での熱分解では完全に分解できないような高耐熱性である場合は、加熱減量と樹脂に対する顔料比率の検量線を用いて算出することができる。具体的には、任意の比率で混合した顔料と樹脂の混合物を複数作成し、それぞれの混合物を一定の温度まで昇温、保持することで、上記検量線を作成し、未知サンプル測定結果より得られる減量率を基に樹脂に対する顔料の比率を算出することができる。
樹脂粒子の含有量は、水系分散体の全質量に対して10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。
-樹脂-
樹脂粒子の構成材料である樹脂としては、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含み、必要に応じて他の樹脂を含んでもよい。本開示において「非架橋ポリエステル樹脂」とは、実質的に架橋構造を有さないポリエステル樹脂(言い換えると、架橋剤を用いた架橋反応を行っていない樹脂)である。また、「架橋ポリエステル樹脂」とは、架橋構造を有するポリエステル樹脂であり、架橋反応可能な官能基を有するポリエステル樹脂である変性ポリエステル樹脂に由来する構造と、架橋剤に由来する構造と、を有する樹脂(言い換えると、変性ポリエステル樹脂と架橋剤が架橋反応することにより形成される樹脂)である。これらの非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂は、顔料を水系媒体中に分散させる機能と、インクとして用いた場合におけるバインダー機能と、を有することが好ましい。
樹脂に含有される非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂の質量比(非架橋ポリエステル樹脂:架橋ポリエステル樹脂)は、9:1~3:7であることが好ましく、9:1~5:5であることがより好ましい。質量比が上記範囲であることで、顔料を樹脂中に内包化させることが容易になり、分散安定性及び画像濃度性に優れた水系分散体を得ることができる。
非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂は、それぞれ独立して、アニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、少なくとも一部が塩基性化合物等により中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが好ましい。
上記アニオン性基を有する場合、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂が水系媒体中で安定して分散されるために、アニオン性基の一部又は全部が中和されていることが好ましい。アニオン性基の中和に使用可能な中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物などが挙げられる。
非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂の分子量は、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ独立して、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)2,000~15,000が好ましく、4,000~12,000がより好ましい。
非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ独立して、30℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂の軟化温度としては、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ独立して、60℃以上180℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下がより好ましい。
非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。
なお、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂は、物性の違いにより区別できる場合がある。例えば、非架橋ポリエステル樹脂のTHFに対する不溶成分量が0質量%以上0.2質量%以下であり、架橋ポリエステル樹脂のTHFに対する不溶成分量が0.2質量%超20質量%以下である場合がある。
この、THFに対する不溶成分量の測定方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、非架橋ポリエステル樹脂又は架橋ポリエステル樹脂を約1.0g(A)秤量する。これにTHF約50gを加えて20℃で24時間静置する。その後、遠心分離し、JIS規格(P3801)5種Cの定量用ろ紙を用いてろ過する。更に、ろ液の溶剤分を真空乾燥させて樹脂分のみの残査量(B)を計測する。この残査量がTHF溶解成分である。THF不溶成分(質量%)は、(A-B)/Aで求める。
--非架橋ポリエステル樹脂--
非架橋ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体と、を無溶剤下又は有機溶剤存在下において重縮合させて得られ、組成の一部又は全てに芳香族ユニットを有することが好ましい。言い換えると、非架橋ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸及び/又はその誘導体と、に由来する構成を有し、組成の一部又は全てに芳香族ユニットを有することが好ましい。
多価アルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2~36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど);炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど);炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールの炭素数2~4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)、ブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1~30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。
また、2価のジオールに加えて3価以上(3~8価またはそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内若しくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば庶糖及びメチルグルコシド;など);脂肪族多価アルコールの炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数1~30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど:平均重合度3~60)の炭素数2~4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価カルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、セバシン酸など)、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4~36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4~20のアルカンジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。なお、多価カルボン酸成分としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)も挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このほか、ポリ乳酸やポリカーボネートジオールの如き開環重合系も好適に使用しうる。
--架橋ポリエステル樹脂--
架橋ポリエステル樹脂は、架橋反応可能な官能基を有するポリエステル樹脂である変性ポリエステル樹脂と、架橋剤と、が架橋反応することにより形成される樹脂である。
変性ポリエステル樹脂としては、例えば、末端にイソシアネート基を有するものが好ましい。末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂は、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ここで、ポリエステル樹脂は、上記の非架橋ポリエステル樹脂と同様にして合成され、多価アルコールと多価カルボン酸等との重縮合物である。また、活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、及びメルカプト基などを挙げることができ、これらのうちアルコール性水酸基であることが好ましい。
架橋剤としては、変性ポリエステル樹脂の有するイソシアネート基などと反応して鎖伸長及び/又は架橋構造を形成する化合物を挙げることができ、例えば、ポリアミン類であることが好ましい。
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;上記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、又はカプロラクタムなどでブロックしたものなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリアミン類としては、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、およびこれらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。
ジアミンとしては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ-p-キシリレンジアミン、テトラフルオロ-p-フェニレンジアミンなど);脂環式ジアミン(4,4’-ジアミノ-3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミンなど)などが挙げられる。
3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
これらのアミノ基をブロックしたものとしては、上記アミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)とから得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
-顔料-
顔料としては、特に限定されないが、後述する顔料プレ分散体を得る工程(工程1)において、有機溶剤中において微分散化が容易である点から無機顔料を使用することが好ましい。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどの公知の方法によって製造されたカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)等の金属類を使用することができる。カーボンブラックの一次粒径(個数平均一次粒径)は、15nm以上100nm以下が好ましい。この範囲のカーボンブラックを使用することで顔料の微分散化が可能となり、発色性が向上し、加熱乾燥時の画像濃度の低下を抑制することが可能となる。
なお、顔料は自己分散顔料を用いてもよい。自己分散顔料とは、顔料表面に直接又は他の原子団を介して官能基を導入することにより分散安定化させた顔料を表す。
カーボンブラックの一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)により処理し、画像解析で20個の一次粒子を無作為に抽出してその粒子径を測定し、平均を算出した。なお、粒子に長径と短径がある場合は、長径を用いて算出した。
カーボンブラックのDBP(ジブチルテレフタレート)吸収量は30mL/100g以上150mL/100g以下が好ましく、この範囲とすることで、樹脂粒子の製造時において、有機溶剤中での顔料分散性を向上させることができる。カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217の方法より測定することができる。
<界面活性剤>
界面活性剤は、後述する通り、樹脂粒子の製造時において用いられ、これが残留することで水系分散体に含有される。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などのノニオン性界面活性剤;アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アニオン性界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩が分散安定性を高める点からより好ましい。アニオン性界面活性剤を用いることで、カチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を用いた場合と比較して、顔料内包樹脂粒子の粒子径を均一化することができる。
界面活性剤の含有量は、水系分散体の全質量に対して1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。1.0質量%以上であることで水系分散体の分散安定性が向上する。また、20.0質量%以下であることで、水系分散体を用いて作製されたインクにおいて、ノズル詰まりや吐出曲がり等に関する吐出性が向上する。なお、水系分散体中における界面活性剤の含有量を測定する方法としては、特に制限はないが、例えば、高速液体クロマトグラフLC-20(島津製作所製)を用いる方法が挙げられる。
<顔料分散剤>
顔料分散剤は、後述する通り、樹脂粒子の製造時において顔料の分散性を向上させるために用いられることが好ましく、これが残留することで水系分散体に含有される。顔料分散剤により、樹脂粒子の製造時において顔料の分散性が向上することで、顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、顔料内包樹脂粒子が適切に形成され、分散安定性及び画像濃度性に優れた水系分散体を提供することができる。また、水系分散体中に顔料分散剤が含まれていることで、樹脂粒子の分散性が向上し、分散安定性及び画像濃度性により優れた水系分散体を提供することができる。なお、顔料分散剤は水系分散体において溶解又は分散して含まれており、顔料と一体化していないものを表す。
顔料分散剤としては、界面活性剤、高分子分散剤など目的に応じて適宜選択することができる。顔料分散剤としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
顔料分散剤は、適宜合成したものを用いてもよいが、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ジョンクリル(ジョンソンポリマー社製)、Anti-Terra-U(BYK Chemie社製)、Disperbyk(BYK Chemie社製)、Efka(Efka CHEMICALS社製)、フローレン(共栄社化学社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ社製)、デモール(花王社製)、ホモゲノール、エマルゲン(以上、花王社製)、ソルスパース(ルーブリゾール社製)、ニッコール(日光ケミカル社製)等が挙げられる。
顔料分散剤の親疎水性としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂粒子の製造時において顔料が樹脂中に内包化されやすくなり、顔料内包樹脂粒子が適切に形成される観点から疎水性であることが好ましい。なお、顔料分散剤の親疎水性は、顔料分散剤が水に不溶性であれば疎水性であり、水に可溶性であれば親水性である。
顔料及び顔料分散剤の質量比(顔料:顔料分散剤)は、4.0:0.2~4.0:4.0であることが好ましく、4.0:0.5~4.0:3.0であることがより好ましい。質量比(顔料:顔料分散剤)を上記範囲にすることで、樹脂粒子の製造時において顔料の分散性がより向上し、水系分散体中における粗大粒子数が低減し、水系分散体の分散安定性が向上する。
顔料分散剤の含有量は、水系分散体の全質量に対して0.5質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましい。
<水>
水分散体は、分散媒として水を含む。また、分散媒において最大の質量を有する成分が水である。
水の含有量は、水系分散体の全質量に対して20.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、40.0質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。
<水系分散体の製造方法>
水系分散体の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、下記工程1~4を有することが好ましい。
・工程1:有機溶剤、顔料、及び顔料分散剤を混合し、50%累積体積粒径(D50)が10nm以上150nm以下である顔料プレ分散体(「混合液1」とも称する)を得る工程
・工程2:工程1で得られた顔料プレ分散体、非架橋ポリエステル樹脂、及び変性ポリエステル樹脂を混合し、顔料分散樹脂溶液(「混合液2」とも称する)を得る工程
・工程3:工程2で得られた顔料分散樹脂溶液、界面活性剤、及び水を混合した後で、架橋剤を添加し更に混合し、顔料内包樹脂粒子を含む分散液(「混合液3」とも称する)を得る工程
・工程4:工程3で得られた分散液から有機溶剤を除去し、顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程
-工程1-
工程1は、有機溶剤、顔料、顔料分散剤、及び必要に応じてその他成分を混合し、50%累積体積粒径(D50)が10nm以上150nm以下である顔料プレ分散体(混合液1)を得る工程である。また、顔料プレ分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過してもよい。
有機溶剤は、工程2において用いる非架橋ポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂を溶解することができるものであることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができ、これらの中でも酢酸エチルを用いることが好ましい。
工程1を経て得られる顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)は10nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上120nm以下であることがより好ましい。10nm以上150nm以下であることで、工程4を経て得られる水系分散体の50%累積体積粒径(D50)を200nm以上500nm以下にすることが容易になる。顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)の測定は、例えば、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)を上記範囲に調整する方法としては、例えば、顔料分散剤を有機溶剤に溶解又は懸濁させた後で顔料を添加して撹拌し、得られた混合液を分散機に投入して分散処理する方法等が挙げられる。分散機としては、例えば、アンカー翼、ディスパー翼、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、パールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アジテーターミル、ペイントシェーカー、グレンミル、コボルミル、ジェットミル等があげられる。これらの中でも、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカーが分散効率の点で好ましい。
顔料プレ分散体において、顔料及び顔料分散剤の質量比(顔料:顔料分散剤)は、4.0:0.2~4.0:4.0であることが好ましく、4.0:0.5~4.0:3.0であることがより好ましい。質量比(顔料:顔料分散剤)を上記範囲にすることで、顔料プレ分散体中の顔料の分散性が向上し、これにより工程4を経て得られる水系分散体中における粗大粒子数が低減し、水系分散体の分散安定性が向上する。
-工程2-
工程2は、工程1で得られた顔料プレ分散体、非架橋ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、及び必要に応じてその他成分(塩基性化合物、有機溶剤、添加剤等)を混合し、顔料分散樹脂溶液(混合液2)を得る工程である。
非架橋ポリエステル樹脂は、工程3において顔料を内包化して顔料内包樹脂粒子を形成する。また、変性ポリエステル樹脂は、工程3において架橋剤と架橋反応して架橋ポリエステル樹脂を形成し、当該架橋ポリエステル樹脂が顔料を内包化して顔料内包樹脂粒子を形成する。非架橋ポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂は、それぞれ、固形物を添加してもよく、固形物を有機溶剤に溶解したものを添加してもよい。
工程2における混合方法は、特に制限されず、公知の混合攪拌装置を用いることができる。例えば、工程1で挙げた分散機を用いることができ、これらの中でも、ホモミキサー又はディスパー翼を備えた高速攪拌装置が好ましい。これらは、高粘度溶液の均一攪拌に好適であり、また、非架橋ポリエステル樹脂又は変性ポリエステル樹脂の固形物を効率よく溶解させることができるためである。
工程2を経て得られる顔料分散樹脂溶液における50%累積体積粒径(D50)は、工程1を経て得られる顔料プレ分散体における50%累積体積粒径(D50)と同様であること(言い換えると、50%累積体積粒径(D50)の変化が少ないこと)が好ましい。すなわち、顔料分散樹脂溶液における50%累積体積粒径(D50)は、10nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上120nm以下であることがより好ましい。
-工程3-
工程3は、工程2で得られた顔料分散樹脂溶液、界面活性剤、及び水を混合した後で、架橋剤を添加し更に混合し、顔料内包樹脂粒子を含む分散液(混合液3)を得る工程である。
顔料分散樹脂溶液、界面活性剤、及び水の混合手順には特に制限はなく、例えば、顔料分散樹脂溶液に対して界面活性剤及び水の混合物を添加する場合、界面活性剤及び水の混合物に対して顔料分散樹脂溶液を添加する場合などが挙げられる。
工程3において添加される界面活性剤は、顔料分散樹脂溶液と水とが混合されたときに顔料の分散性が低下することを抑制するために(言い換えると、顔料の凝集を抑制するために)用いられる。また、界面活性剤は、生成した顔料内包樹脂粒子の分散性が低下することを抑制するために(言い換えると、顔料内包樹脂粒子の凝集を抑制するために)も用いられる。これにより、下記の工程4を経て製造される水系分散体において、50%累積体積粒径(D50)を200nm以上500nm以下にすること、及び顔料内包樹脂粒子のアスペクト比を1.0以上1.5以下にすることが容易になる。
水の添加量は、顔料内包樹脂粒子の安定した分散性の観点から、工程2で用いた非架橋ポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂の量に対して70質量%以上700質量%以下であることが好ましく、100質量%以上500質量%以下であることが好ましい。
界面活性剤の添加量は、分散安定性の観点から、下記の工程4を経て製造される水系分散体における界面活性剤の含有量が、水系分散体の質量に対して1.0質量%以上20.0質量%以下となる量であることが好ましい。
架橋剤の添加量は、特に制限はないが、工程2で用いた非架橋ポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂の量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
工程3における混合方法は、特に制限されず、公知の混合攪拌装置を用いることができる。例えば、工程1で挙げた分散機を用いることができ、これらの中でも、ホモミキサー又はディスパー翼を備えた高速攪拌装置が好ましい。これらは、高粘度溶液の均一攪拌に好適であり、また、分散物に付加されるエネルギーが必要以上に高くならないため生成された顔料内包樹脂粒子が粉砕されて顔料内包形態を維持できなくなることが抑制される。
-工程4-
工程4は、工程3で得られた分散液から有機溶剤を除去し、顔料内包化樹脂粒子を含む水系分散体を得る工程である。また、水系分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過することができる。また、水系分散体は、必要に応じて、限外ろ過装置により界面活性剤を除去することができる。
工程3で得られた分散液から有機溶剤を除去する方法としては特に制限はなく公知の除去装置が使用できるが、減圧下にて有機溶剤の沸点以上の温度にて加熱することが好ましく、例えば、ロータリーエバポレーターを使用することができる。減圧としては、200mmHg以下が好ましく、100mmHg以下がより好ましい。また、加熱温度としては20℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
<<インク>>
インクは、樹脂粒子、界面活性剤、水、及び有機溶剤を含有し、必要に応じてその他添加剤等を含有してもよい。インクは、例えば、水系分散体、界面活性剤、水、有機溶剤、及びその他添加剤等を混合することで製造される。
以下、インクの製造時に用いられる水系分散体以外のインク成分について説明する。
<有機溶剤>
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宣選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 2022138303000001

(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2022138303000002
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
Figure 2022138303000003
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<その他添加剤>
インクには、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
<インクの物性>
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
<<記録媒体>>
記録媒体としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、低浸透性基材(低吸収性基材)に対して特に好適に用いることができる。
低浸透性基材とは、水透過性、吸収性、又は吸着性が低い表面を有する基材を意味し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。低浸透性基材としては、商業印刷に用いられるコート紙や、古紙パルプを中層、裏層に配合して表面にコーティングを施した板紙のような記録媒体等が挙げられる。
なお、記録媒体としては、1つの印刷単位ごとに印刷可能なカット紙、記録媒体の搬送方向に複数の印刷単位を印刷可能な連帳紙やロール紙等を用いることができる。
<低浸透性基材>
低浸透性基材としては、例えば、支持体と、支持体の少なくとも一方の面側に設けられた表面層と、を有し、更に必要に応じてその他の層を有するコート紙などの記録媒体が挙げられる。
支持体と表面層を有する記録媒体においては、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の記録媒体への転移量は、2mL/m以上35mL/m以下が好ましく、2mL/m以上10mL/m以下がより好ましい。
接触時間100msでのインク及び純水の転移量が少なすぎると、ビーディングが発生しやすくなることがあり、多すぎると、画像形成後のインクドット径が所望の径よりも小さくなりすぎることがある。
動的走査吸液計にて測定した接触時間400msにおける純水の記録媒体への転移量は、3mL/m以上40mL/m以下が好ましく、3mL/m以上10mL/m以下がより好ましい。
接触時間400msでの転移量が少ないと、乾燥性が不十分となり、多すぎると、乾燥後の画像部の光沢が低くなりやすくなることがある。接触時間100ms及び400msにおける純水の記録媒体への転移量は、いずれも記録媒体の表面層を有する側の面において測定することができる。
ここで、動的走査吸収液計(dynamic scanning absorptometer;DSA,紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88頁~92頁、空閑重則)は、極めて短時間における吸液量を正確に測定できる装置である。動的走査吸液計は、吸液の速度をキャピラリー中のメニスカスの移動から直読する、試料を円盤状とし、この上で吸液ヘッドをらせん状に走査する、予め設定したパターンに従って走査速度を自動的に変化させ、1枚の試料で必要な点の数だけ測定を行う、という方法によって測定を自動化したものである。
紙試料への液体供給ヘッドはテフロン(登録商標)管を介してキャピラリーに接続され、キャピラリー中のメニスカスの位置は光学センサで自動的に読み取られる。具体的には、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水又はインクの転移量を測定することができる。
接触時間100ms及び接触時間400msにおける転移量としては、それぞれの接触時間の近隣の接触時間における転移量の測定値から補間により求めることができる。
-支持体-
支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材繊維主体の紙、木材繊維及び合成繊維を主体とした不織布のようなシート状物質などが挙げられる。
支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~300μmが好ましい。 また、支持体の坪量は、45g/m~290g/mが好ましい。
-表面層-
表面層は、顔料、バインダー(結着剤)を含有し、更に必要に応じて、界面活性剤、その他の成分を含有する。
顔料としては、無機顔料、もしくは無機顔料と有機顔料を併用したものを用いることができる。無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、非晶質シリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クロライトなどが挙げられる。無機顔料の添加量は、バインダー100質量部に対し50質量部以上が好ましい。
有機顔料としては、例えば、スチレン-アクリル共重合体粒子、スチレン-ブタジエン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の水溶性ディスパージョンがある。有機顔料の添加量は、表面層の全顔料100質量部に対し2質量部~20質量部が好ましい。
バインダーとしては、水性樹脂を使用することが好ましい。水性樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを好適に用いることができる。水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルとポリウレタンなどが挙げられる。
表面層に必要に応じて含有される界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性活性剤、非イオン活性剤のいずれも使用することができる。
表面層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、支持体上に表面層を構成する液を含浸又は塗布する方法により行うことができる。表面層を構成する液の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固形分で、0.5g/m~20g/mが好ましく、1g/m~15g/mがより好ましい。
<<記録装置、記録方法>>
図1を参照して、記録方法および記録装置について説明する。図1は、記録装置の一例を示す概略図である。
図1に示す記録装置1は、記録媒体10にインクを付与することで記録媒体10に画像を形成する装置である。記録装置1は、給紙手段11と、インクを付与する手段12と、加熱手段13と、巻取り手段15と、を備える。
<給紙手段、給紙工程>
給紙手段11は、インクを付与する手段12がインクを付与する位置に記録媒体10を給紙する手段である。なお、記録方法の一工程としての給紙工程は、給紙手段により好適に実施することができる。
給紙される記録媒体10としては、連続紙が用いられることが好ましい。連続紙とは、画像形成の際の搬送方向に連続し、搬送方向におけるプリント単位(1ページ)の長さよりも長い記録媒体である。連続紙の長さは、給紙手段11から巻取り手段15に至るまでの搬送経路の長さより長いことが好ましい。連続紙としては、例えば、ロール状に丸められたロール紙を用いることができる。図1に示す例では、ロール状に丸められた記録媒体10が給紙手段11にセットされている。そして、給紙手段11から給紙された記録媒体10を、巻取り手段15を用いて巻き取ることで、記録媒体10が搬送方向(図1の矢印16、及び矢印17で示す方向)に搬送される。なお、記録媒体10としては、連続紙に限らずカット紙を記録媒体として用いてもよい。カット紙とは、画像形成の際の搬送方向におけるプリント単位(1ページ)ごとに独立した記録媒体である。
<インクを付与する手段、インクを付与する工程>
インクを付与する手段12は、給紙手段11から矢印16の方向に給紙された記録媒体10に対してインクを付与して画像を形成する手段である。インクを付与する手段12としては、シングルパス方式のインクジェットラインヘッドで構成されたヘッドユニットが好ましい。インクジェット記録方式で付与する手段の場合、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各インクに対応する4つの吐出ヘッドを有していることが好ましい。また、オレンジ(O)、グリーン(G)などの特色インク、光沢性の付与や他の処理を行う後処理液を吐出する吐出ヘッドを有していてもよい。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いてインクを付与する手段が挙げられる。なお、記録方法の一工程としてのインクを付与する工程は、インクを付与する手段により好適に実施することができる。
吐出させるインクの液滴の大きさとしては、例えば、2pL以上40pL以下が好ましく、その吐出噴射の速さとしては、5m/s以上20m/s以下が好ましく、その駆動周波数としては、1kHz以上が好ましく、その解像度としては、300dpi以上が好ましい。
なお、上記の吐出ヘッドは、それぞれ、インクを収容するインク収容体(インク収容容器の一例)からインクが供給される。インク収容容器としては、インクを収容できればよく、例えば、樹脂等でケーシングされたカートリッジや、ボトル等が挙げられる。カートリッジにおいては、内袋がポリエチレン等の樹脂製のアルミパウチにインクが収容されている形態であってもよい。
<加熱手段、加熱工程>
加熱手段13は、インクを付与する手段12から記録媒体10に付与されたインクを加熱する手段である。加熱手段13としては、記録媒体10のインクを付与されていない面に接触して加熱を行うヒートドラムであることが好ましい。ヒートドラムの温度は、印刷速度やインクの乾燥性にもよるが、100℃以上130℃以下であることが好ましい。ヒートドラムによる加熱に組み合わせ可能な他の加熱手段としては、例えば、温風加熱、赤外線照射、紫外線照射等の手段、これらを組み合わせた手段が挙げられる。なお、記録方法の一工程としての加熱工程は、加熱手段により好適に実施することができる。
<巻取り手段、巻取り工程>
巻取り手段15は、給紙手段11と対向する位置に配置されており、給紙手段11から給紙され、印刷層を形成された記録媒体10を巻き取る手段である。給紙手段11と巻取り手段15の回転速度をそれぞれ調整することで、記録媒体10に働く張力を調整することができる。なお、記録媒体の種類によっては、給紙手段および巻取り手段を省略することができる。なお、記録方法の一工程としての巻取り工程は、巻取り手段により好適に実施することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<非架橋ポリエステル樹脂の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱電対を有する500mLの四つ口フラスコに、ジオールとしてビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(富士フィルムワコーケミカル社製:4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール))275質量部と、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物79質量部(日本乳化剤社製:BA-P2グリコール)と、ジカルボン酸としてイソフタル酸ジメチル140質量部と、アジピン酸26質量部と、を投入して混合した。次に、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシドを添加し、窒素ガス気流下にて4時間で200℃まで昇温させ、更に、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、5mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させてポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂は、酸価(AV)が0.5mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が47℃、重量平均分子量(Mw)が5,000であった。
次に、得られたポリエステル樹脂160質量部を窒素気流下、180℃にて溶融し、無水トリメリット酸6質量部を加えて40分攪拌することで、ポリエステル樹脂の酸価調整をおこない、酸価(AV)20mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)51℃、重量平均分子量(Mw)5,100のポリエステル樹脂を得て、これを非架橋ポリエステル樹脂とした。
なお、重量平均分子量(Mw)は、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定した。カラムは排除限界6万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
・装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃
・移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
<変性ポリエステル樹脂の合成例>
冷却管、撹拌機、及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(富士フィルムワコーケミカル社製:4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール))682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(日本乳化剤社製:BA-P2グリコール)81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧230℃で8時間反応させ、さらに5~30mmHgの減圧下で5時間反応させ、酸価(AV)0.5mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)55℃、重量平均分子量(Mw)9,500の変性ポリエステル樹脂中間体を得た。次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、変性ポリエステル樹脂中間体411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を入れ、100℃で5時間反応させ、固形分濃度が50質量%の変性ポリエステル樹脂の溶解液を得た。
<顔料プレ分散体の作製例(工程1)>
-顔料プレ分散体Aの作製-
以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体Aを作製した。この顔料プレ分散体Aの50%累積体積粒径(D50)をゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ112nmであった。
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g):15.0質量部
・顔料分散剤(アジスパー PB821、味の素ファインテクノ社製、疎水性):3.8質量部
・酢酸エチル:41.2質量部
なお、50%累積体積粒径(D50)の測定方法は次の通りであった。まず、測定サンプルの固形分濃度が0.01質量%となるように、イオン交換水又は必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。次に、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用い、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行った。
-顔料プレ分散体Bの作製-
以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することで顔料プレ分散体Bを作製した。この顔料プレ分散体Bの50%累積体積粒径(D50)をゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ113nmであった。
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン社製、一次粒径:22nm、DBP吸収量:55mL/100g):15.0質量部
・顔料分散剤(BYKJET-9151、BYK-Chemie社製、親水性):3.8質量部
・酢酸エチル:41.2質量部
<水系分散体の作製例(工程2~4)、インクの調整例>
-実施例1:水系分散体1の作製-
顔料プレ分散体Aを26.7g、非架橋ポリエステル樹脂12.1g、変性ポリエステル樹脂の溶解液(固形分濃度:50質量%)2.7g、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(東京化成社製)0.27g、及び酢酸エチル5.19gを容器に入れ、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)にて3000rpmで1分攪拌することで顔料分散樹脂溶液を得た。
次に、イオン交換水39.6g、アニオン性界面活性剤であるドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業社製)7.06g、及び酢酸エチル3.7gを混合して作成した水層に対し、顔料分散樹脂溶液29.6gを加え、T.K.ロボミックスにて5000rpmで10分間攪拌した。その後、イソホロンジアミン(東京化成社製)を0.06g加え、T.K.ロボミックスにて5000rpmで5分間攪拌することで分散液を得た。
次に、分散液から酢酸エチルを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。更に、イオン交換水により固形量を30%に調整し、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体1を得た。
-インク1の調整-
上記で得られた水系分散体1を用いて下記処方を混合し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク1を調整した。
・水系分散体1:10.75質量%(固形分量)
・プロピレングリコール:約40.0質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量に適宜調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量が100質量%となる量)
次に、得られた水系分散体1及びインク1に関し、以下の各種物性を測定又は評価した。結果を表1に示した。
[50%累積体積粒径(D50)]
水系分散体の50%累積体積粒径(D50)は次のようにして測定した。まず、測定サンプルの固形分濃度が0.01質量%となるように、イオン交換水又は必要に応じて有機溶剤により希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。次に、ゼータ電位・粒子計測システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用い、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定を行った。
[顔料露出率]
水系分散体における顔料露出率は、塗工膜表面における顔料露出量を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより算出した。具体的には、まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから25℃で12時間乾燥させて平均厚み2μmの塗工膜を形成した。次に、塗工膜を切り出してSEM観察用スタブにカーボンテープを用いて固定し、固定した塗工膜を導電性処理せずに走査型電子顕微鏡(SEM、ZEISS製Merlin)を用いて、所定の条件(加速電圧:0.75kV、反射電子検出器、倍率:20000倍)で観察することで観察像を取得した。次に、観察像を二値化することによって観察像中における顔料の面積である顔料面積を取得し(顔料及び樹脂の反射電子放出量の違いから、観察像におけるコントラストの違いにより顔料部分を見分けることが可能)、顔料面積の観察像の面積に対する割合を顔料露出率とした。なお、顔料露出率は、任意に場所を変更して観察することで取得した3つ以上の観察像から算出される顔料露出率の平均を採用した。次に、下記評価基準に基づいて、顔料露出率を評価した。
(評価基準)
A+:顔料露出率が0%以上3%以下
A:顔料露出率が3%より大きく5%以下
B:顔料露出率が5%より大きく8以下
C:顔料露出率が8%より大きい
[顔料内包樹脂粒子の割合]
水系分散体における顔料内包樹脂粒子の割合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより算出した。具体的には、まず、水系分散体を、固形分濃度が0.1質量%となるようにイオン交換水で希釈して試料液を作製した。次いで、親水化処理を行ったコロジオン膜貼付メッシュ(日新EM社製コロジオン膜貼付メッシュ Cu150メッシュ)上に、試料液を、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。次いで、10倍に希釈したEMステイナーを、マイクロピペットを用いて1μL載せ、すぐに三角形に切ったろ紙で試料液を吸い取った。減圧乾燥の後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM-2100F)にて、加速電圧200kV、倍率40000倍で観察を行った。100nm以上の粒径を有する樹脂粒子を3つ以上含む視野の画像を、任意に場所を変更して5枚以上取得し、各画像において100nm以上の粒径を有する樹脂粒子の個数に対する100nm以上の粒径を有する顔料内包樹脂粒子の個数の割合を求め、これら割合の平均を算出して顔料内包樹脂粒子の割合として採用した。次に、下記評価基準に基づいて、顔料内包樹脂粒子の割合を評価した。
(評価基準)
A+:顔料内包樹脂粒子の割合が50%以下
A:顔料内包樹脂粒子の割合が30%以上50%未満
B:顔料内包樹脂粒子の割合が10%以上30%未満
C:顔料内包樹脂粒子の割合が10%未満
[アスペクト比]
水系分散体における顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、上記の[顔料内包樹脂粒子の割合]における説明と同様の方法により透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像を取得することにより算出した。画像は、顔料内包樹脂粒子を含む視野の画像であって観察位置が異なるものを複数枚取得した。これら画像から、粒子同士との重なりのない顔料内包樹脂粒子を画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)を用いて二値化により抽出し、抽出した顔料内包樹脂粒子の形状を楕円近似し、アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)を算出した。なお、アスペクト比は、20個の顔料内包樹脂粒子における平均値を採用した。また、水系分散体中に顔料内包樹脂粒子が観察されないものに関しては表1中で「-」と表示した。
[表面粗さ]
水系分散体により形成される塗膜表面における表面粗さは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて算出した。まず、水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、調整液を塗工紙(ルミアートグロス130、STORA ENSO社製)に対して0.15mmバーコーターを用いて塗工してから100℃で5分間乾燥させて平均厚み2μmの塗膜を形成した。次に、塗膜を切り出して、塗膜の表面粗さを走査プローブ型顕微鏡(例えば、Bruker製DimensionIcon)を用い、所定の条件(例えば、カンチレバー:オリンパス製OMCL-AC240TS、測定モード:タッピングモード、観察範囲:2μm四方)で観察した。観察は場所を変更して3視野にて行い、これらの平均値を表面粗さとした。
[再分散性]
インクを30mLのガラス製のスクリュー管に入れ、密閉した状態で60℃にて二週間静置した。静置後のサンプルを室温まで冷却した後で瓶を振とうし、沈殿物の再分散性を目視により観察し下記評価基準に基づいて評価した。なお、振とうはVORTEX Genius 3(IKA社製)にてダイヤルの値を4とし、10秒間振動させることにより行った。
(評価基準)
A:沈殿物なし又は沈殿物が存在するが再分散可能
B:再分散困難な沈殿物が存在
[画像濃度(OD25、OD100)、画像濃度の差(ΔOD)]
調整したインクを用いてベタ画像を印刷し、室温(25℃)にて1日、および100℃のオーブンにて5分間加熱乾燥させた画像をそれぞれ作製した。次に、25℃にて乾燥して作製した画像の画像濃度(OD25)及び100℃にて乾燥して作製した画像の画像濃度(OD100)を測定し、更に、OD25とOD100の差であるΔOD(OD25-OD100)を算出した。
具体的には、まず、インクジェットプリンター(リコー製IPSiO GXe5500)の外装を外し、背面マルチ手差しフィーダーを取り付け、ヘッドを含めたインク供給経路に洗浄液として純水を通液することで洗浄し、洗浄液が着色しなくなるまで十分に通液して洗浄液を装置から抜ききって評価用印刷装置とした。その後、調製したインクを、インクカートリッジに充填し評価用インクカートリッジとした。充填動作を行わせ、全ノズルに評価インクが充填されて異常画像が出ないことを確認し、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。このモードで記録媒体(ルミアートグロス130)へのインク付着量が20g/mとなるようにヘッドの駆動電圧を変更することで吐出量を調整してベタ画像を印刷した。更に、得られたベタ画像を室温(25℃)にて1日、および100℃のオーブンにて5分間加熱乾燥させた画像をそれぞれ作製した。
次に、乾燥後の印刷物の下に白色の普通紙を置いた状態で、分光測色濃度計X-Rite939を用いて全濃度を測色し、Kの値を画像濃度とし、OD25及びOD100を求め、更に、ΔOD(OD25-OD100)を算出した。次に、下記評価基準に基づいて、画像濃度の差(ΔOD)を評価した。
(評価基準)
A:ΔOD(OD25-OD100)が0未満
B:ΔOD(OD25-OD100)が0
C:ΔOD(OD25-OD100)が0より大きい
-:印刷時に多数のノズル詰まりが生じてベタ画像の印刷が困難であり評価不能
-実施例2:水系分散体2の作製-
実施例1の水系分散体1の作製において、非架橋ポリエステル樹脂の量を9.4g、変性ポリエステル樹脂の溶解液(固形分濃度:50質量%)の量を8.0g、イソホロンジアミンの量を0.18gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体2を得た。
-インク2の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体2を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク2を得た。
-実施例3:水系分散体3の作製-
実施例1の水系分散体1の作製において、非架橋ポリエステル樹脂の量を6.7g、変性ポリエステル樹脂の溶解液(固形分濃度:50質量%)の量を13.4g、イソホロンジアミンの量を0.29gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体3を得た。
-インク3の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体3を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク3を得た。
-実施例4:水系分散体4の作製-
実施例1の水系分散体1の作製において、非架橋ポリエステル樹脂の量を4.0g、変性ポリエステル樹脂の溶解液(固形分濃度:50質量%)の量を18.8g、イソホロンジアミンの量を0.41gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体4を得た。
-インク4の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体4を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク4を得た。
-実施例5:水系分散体5の作製-
実施例2の水系分散体2の作製において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液の量を12.2gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体5を得た。
-インク5の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体5を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク5を得た。
-実施例6:水系分散体6の作製-
実施例2の水系分散体2の作製において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液の量を1.2gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体6を得た。
-インク6の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体6を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク6を得た。
-比較例1:水系分散体7の作製-
実施例2の水系分散体2の作製において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体7を得た。
-インク7の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体7を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク7を得た。
-比較例2:水系分散体8の作製-
実施例2の水系分散体2の作製において、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液の量を37.2gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体8を得た。
-インク8の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体8を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク8を得た。
-比較例3:水系分散体9の作製-
実施例1の水系分散体1の作製において、非架橋ポリエステル樹脂の量を13.4gに変更したこと、変性ポリエステル樹脂の溶解液(固形分濃度:50質量%)及びイソホロンジアミンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、非架橋ポリエステル樹脂を含む樹脂中に顔料一次粒子を二個以上内包した顔料内包樹脂粒子を含む水系分散体9を得た。
-インク9の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体9を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク2を得た。
-比較例4:水系分散体10の作製-
実施例1の水系分散体1の作製において、非架橋ポリエステル樹脂を添加せず、変性ポリエステル樹脂の溶解液(固形分濃度:50質量%)の量を26.8g、イソホロンジアミンの量を0.59gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、水系分散体10を得た。
-インク10の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体10を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク10を得た。
-比較例5:水系分散体11の作製-
実施例2の水系分散体2の作製において、顔料プレ分散体Aの代わりに顔料プレ分散体Bを用いたこと以外は実施例2と同様にして、水系分散体11を得た。
-インク11の調整-
インク1の調整において、水系分散体1の代わりに水系分散体11を用いたこと以外はインク1の調整と同様にしてインク11を得た。
-比較例6:水系分散体12の作製-
以下の通り、まず顔料分散剤を合成し、次に顔料分散剤及び顔料を含有する水系分散体12を作製した。
1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業社製)62.0質量部を700mlのジクロロメタンに溶解し、ピリジン(東京化成工業社製)20.7質量部を加え攪拌をした。この溶液に、100mlのジクロロメタンに2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業社製)を溶解させた溶液を2時間かけて滴下した後、室温で6時間攪拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機層を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で98/2)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物を得た。次に、得られた上記化合物42.1質量部を80mlの乾燥メチルエチルケトンに溶解し、攪拌しながら60℃の加熱を行った。この溶液に、20mlの乾燥メチルエチルケトンにカレンズMOI(昭和電工社製)24.0質量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下した後、70℃で12時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてジクロロメタン/メタノール(体積比で99/1)混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、モノマーを得た。次にアクリル酸(東京化成工業社製)2.30質量部、上記モノマー8.54g及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成工業社製)0.31質量部を100mlのメチルエチルケトンに溶解し、窒素ガス気流下、75℃の温度条件で5時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却した反応溶液においてヘキサンを用いて再沈殿を5回繰り返し、共重合体の精製を行った。精製処理後は共重合体をろ別し、減圧乾燥することで顔料分散剤を得た。
次に、得られた顔料分散剤3.8質量部を、pHが8.0となるように30.0質量部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。更に、イオン交換水を加え、全量が45.0質量部の顔料分散剤水溶液を得た。次に、以下の処方の材料を混合し、110mlのガラス製スクリュー菅瓶に投入後、直径2.0mmのジルコニアボール(ニッカトー社製、YTZボール)170質量部を投入し、シェーカー(IKA社製、Vibrax VXR basic)に瓶を固定し、1000rpmで24時間分散させた。その後、メディアと分散液をろ別し、平均孔径5.0μmの酢酸セルロースメンブレンフィルターでろ過することで水系分散体12を作製した。
・カーボンブラック(SBX45、旭カーボン株式会社製):15.0質量部
・顔料分散剤水溶液:45.0質量部
-インク12の調整-
上記で得られた水系分散体12を用いて下記処方を混合し、25℃における粘度を7.5mPa・sに調整した後、平均孔径10μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク12を調整した。なお、下記処方における「ポリエステル単独樹脂エマルション」については後述する。
・ポリエステル単独樹脂エマルション:5.375質量%(固形分量)
・水系分散体12:5.375質量%(固形分量)
・プロピレングリコール:約40.0質量%(インク粘度が7.5mPa・sになる量に適宜調整)
・シリコーン系界面活性剤(日信化学工業製シルフェイスSAG503A):1.0質量%
・脂肪族ジアルコール系界面活性剤(日信化学工業製サーフィノールAD01):0.1質量%
・水:残量(合計量が100質量%となる量)
なお、上記のポリエステル単独樹脂エマルションについては次にようにして作製した。まず、ポリエステル樹脂α13.4g、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(東京化成株式会社製)0.27g、及び酢酸エチル5.19gを容器に入れ、T.K.ロボミックス(プライミクス株式会社製)にて3000rpmで1分間撹拌することで樹脂溶液を得た。次いで、イオン交換水39.6g、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業株式会社製)7.06g、酢酸エチル3.7gを混合して作成した水層に作製した樹脂溶液29.6gを加え、T.K.ロボミックスにて5000rpmで10分間撹拌した。最後に、酢酸エチルを除去し、目開き67μmのナイロン製の網を用いてろ過精製した。イオン交換水により固形量を30質量%に調整し、50%累積体積粒径(D50)が257nmのポリエステル単独樹脂エマルションを得た。
次に、得られた水系分散体2~12及びインク2~12に関し、水系分散体1及びインク1と同様にして、各種物性を測定又は評価した。結果を表1に示した。なお、表1に示す「質量比(顔料/ポリエステル)」とは、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂の合計質量に対する顔料の質量の比を表す。また、「ポリエステル質量比(非架橋:架橋)」とは、樹脂に含有される非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂の質量比(非架橋ポリエステル樹脂:架橋ポリエステル樹脂)を表す。
Figure 2022138303000004
実施例1~6によると、いずれも、再分散性及び画像濃度の差(ΔOD)の評価が優れていた。
一方で、比較例1は、再分散性の評価が実施例1~6に比べて劣っていた。また、比較例1は、インクジェットプリンターを用いた印刷時に、多数のノズル詰まりを発生させたため、ベタ画像の印刷が困難であり、画像濃度に関する測定及び評価を行えなかった。
また、比較例2は、100℃にて乾燥して作製した画像の表面平滑性が低く、これにより画像濃度の差(ΔOD)の評価が実施例1~6に比べて劣っていた。
また、比較例3は、再分散性の評価が実施例1~6に比べて劣っていた。
また、比較例4は、再分散性の評価が実施例1~6に比べて劣っていた。また、比較例4は、インクジェットプリンターを用いた印刷時に、多数のノズル詰まりを発生させたため、ベタ画像の印刷が困難であり、画像濃度に関する測定及び評価を行えなかった。
また、比較例5は、100℃にて乾燥して作製した画像の表面平滑性が低く、これにより画像濃度の差(ΔOD)の評価が実施例1~6に比べて劣っていた。
また、比較例6は、100℃にて乾燥して作製した画像の表面平滑性が低く、これにより画像濃度の差(ΔOD)の評価が実施例1~6に比べて劣っていた。
1 記録装置
10 記録媒体
11 給紙手段
12 インクを付与する手段
13 加熱手段
15 巻取り手段
16 記録媒体の搬送方向
17 記録媒体の搬送方向
特開2016-196621号公報 特開2002-322396号公報 特開2019-99819号公報

Claims (15)

  1. 樹脂粒子及び界面活性剤を含有する水系分散体であって、
    前記樹脂粒子は、顔料を樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、
    前記樹脂は、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含有し、
    前記水系分散体の50%累積体積粒径(D50)は、200nm以上500nm以下であり、
    前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、1.0以上1.5以下であることを特徴とする水系分散体。
  2. 前記樹脂に含有される前記非架橋ポリエステル樹脂及び前記架橋ポリエステル樹脂の質量比(前記非架橋ポリエステル樹脂:前記架橋ポリエステル樹脂)は、9:1~5:5である請求項1に記載の水系分散体。
  3. 前記架橋ポリエステル樹脂は、変性ポリエステル樹脂に由来する構造を有する請求項1又は2に記載の水系分散体。
  4. 前記架橋ポリエステル樹脂は、末端にイソシアネート基を有する前記変性ポリエステル樹脂に由来する構造及びポリアミン類に由来する構造を有する請求項3に記載の水系分散体。
  5. 前記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤である請求項1から4のいずれか一項に記載の水系分散体。
  6. 前記界面活性剤の含有量は、前記水系分散体の質量に対して1.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の水系分散体。
  7. 下記の顔料露出率算出条件に基づいて測定される顔料露出率が8%以下である請求項1から6のいずれか一項に記載の水系分散体。
    (顔料露出率算出条件)
    前記水系分散体を固形分濃度が10.75質量%となるようにイオン交換水で調製した調整液を作成し、前記調整液を塗工紙に塗工してから25℃で乾燥させて平均厚み2μmの塗工膜を形成し、前記塗工膜を導電性処理せずに走査型電子顕微鏡(加速電圧0.75kV、反射電子検出器、倍率20000倍)を用いて観察することで観察像を取得し、前記観察像を二値化することによって前記観察像中における前記顔料の面積である顔料面積を取得し、前記顔料面積の前記観察像の面積に対する割合を顔料露出率とする。
  8. 前記顔料内包樹脂粒子は、前記顔料の複数の一次粒子を前記樹脂中に内包している請求項1から7のいずれか一項に記載の水系分散体。
  9. 100nm以上の粒径を有する前記樹脂粒子の個数に対する100nm以上の粒径を有する前記顔料内包樹脂粒子の個数の割合は、30%以上である請求項1から8のいずれか一項に記載の水系分散体。
  10. 前記顔料は、カーボンブラックである請求項1から9のいずれか一項に記載の水系分散体。
  11. 樹脂粒子及び界面活性剤を含有する水系分散体の製造方法であって、
    有機溶剤及び顔料を混合して混合液1を調整する工程1と、
    前記混合液1、非架橋ポリエステル樹脂、及び変性ポリエステル樹脂を混合して混合液2を調整する工程2と、
    前記混合液2、前記界面活性剤、及び水を混合した後で、架橋剤を添加し更に混合して混合液3を調整する工程3と、
    前記混合液3から前記有機溶剤を除去する工程4と、を有し、
    前記樹脂粒子は、前記顔料を樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、
    前記樹脂は、前記非架橋ポリエステル樹脂と、前記変性ポリエステル樹脂及び前記架橋剤が架橋反応して形成された架橋ポリエステル樹脂と、を含有し、
    前記混合液1の50%累積体積粒径(D50)は、10nm以上150nm以下であることを特徴とする水系分散体の製造方法。
  12. 前記工程1は、更に、疎水性の顔料分散剤を混合して前記混合液1を調整する請求項11に記載の水系分散体の製造方法。
  13. 樹脂粒子、界面活性剤、水、及び有機溶剤を含有するインクであって、
    前記樹脂粒子は、顔料を樹脂中に内包した顔料内包樹脂粒子を含み、
    前記樹脂は、非架橋ポリエステル樹脂及び架橋ポリエステル樹脂を含有し、
    前記インクの50%累積体積粒径(D50)は、200nm以上500nm以下であり、
    前記顔料内包樹脂粒子のアスペクト比は、1.0以上1.5以下であることを特徴とするインク。
  14. 請求項13に記載のインクを付与するインク付与工程を有する印刷方法。
  15. 請求項13に記載のインクを収容しているインク収容容器と、前記インクを付与するインク付与手段と、を有する印刷装置。
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