以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図1以降において、x軸方向、Y軸方向、及びz軸方向は、それぞれ、x軸に平行な方向、y軸に平行な方向、z軸に平行な方向を表す。x軸方向とy軸方向は、互いに直交する。x軸方向とz軸方向は、互いに直交する。y軸方向とz軸方向は、互いに直交する。xy平面は、x軸方向及びy軸方向に平行な仮想平面を表す。xz平面は、x軸方向及びz軸方向に平行な仮想平面を表す。yz平面は、y軸方向及びz軸方向に平行な仮想平面を表す。また、図1以降において、x軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスx軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスx軸方向とする。また、図1以降において、y軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスy軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスy軸方向とする。また、図1以降において、z軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスz軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスz軸方向とする。z軸方向は、例えば鉛直方向、又は上下方向に等しく、x軸方向及びy軸方向は、例えば水平方向又は左右方向に等しい。
(実施の形態)
<レーザ加工装置1の構成>
図1を参照して本開示の実施の形態に係るレーザ加工装置1の構成を説明する。図1は本開示の実施の形態に係るレーザ加工装置1の構成を模式的に示す図である。
レーザ加工装置1は、加工ヘッド2、光干渉計3、計測処理部4、レーザ発振器5、制御部6、第1ドライバ7、及び第2ドライバ8を有する。
光干渉計3は、OCT測定用の測定光15を出射する。光干渉計3から出射された測定光15は、測定光導入口9を介して加工ヘッド2へ入力される。測定光導入口9は、測定光偏向ユニット17上に設置されている。測定光導入口9は、加工ヘッド2上において、測定光偏向ユニット17へ測定光15を導入可能な位置に設置される。
レーザ発振器5は、レーザ加工用の加工用レーザ光11を発振する。レーザ発振器5から発振された加工用レーザ光11は、加工光導入口10を介して加工ヘッド2へ入力される。
加工ヘッド2へ入力された加工用レーザ光11は、ダイクロイックミラー12を透過した後、第1ミラー13で反射されてからレンズ14を透過して、被加工物18の表面である加工面19に集光される。
これにより、被加工物18の加工点20がレーザ加工される。この際、加工用レーザ光11が照射された加工点20が溶融することによって、被加工物18に溶融池21が形成される。
また、溶融池21から溶融金属が蒸発し、蒸発時に生じる蒸気の圧力によって、被加工物18にキーホール22が形成される。
測定光導入口9から加工ヘッド2へ入力された測定光15は、コリメートレンズ16で平行光に変換され、測定光偏向ユニット17で反射される。その後、測定光15は、ダイクロイックミラー12で反射された後、第1ミラー13で反射され、レンズ14を透過して、被加工物18の加工面19の加工点20に集光される。
そして、測定光15は、キーホール22の底面で反射され、伝播経路を遡って光干渉計3まで到達する。光干渉計3は、入力した測定光15と図示しない参照光との光干渉による光干渉信号を生成する。参照光は、光干渉計3の不図示の光源から出射される光の内、基準面である不図示の参照ミラーに照射される光である。
計測処理部4は、光干渉信号に基づき、キーホール22の深さ、すなわち加工点20の溶け込み深さを計測する。なお、溶け込み深さとは、被加工物18の溶けた部分の最頂点と、加工面19との間の距離を意味する。
加工用レーザ光11の波長(第一波長)は、測定光15の波長(第二波長)と異なる。ダイクロイックミラー12は、第一波長の光を透過し、第二波長の光を反射する特性を有する。
例えば、加工用レーザ光11としてYAGレーザ又はファイバレーザを用いた場合、加工用レーザ光11の波長は、1064nmである。また、例えば、測定光15としてOCT用光源を用いた場合、測定光15の波長は、1300nmである。
第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17は、2軸以上で回転動作させることができる可動ミラーである。第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17は、例えば、ガルバノミラーである。
第1ミラー13は、第1ドライバ7を介して制御部6に接続されている。測定光偏向ユニット17は、第2ドライバ8を介して制御部6に接続されている。
第1ドライバ7は、制御部6からの指示に基づいて、第1ミラー13を動作させる。第2ドライバ8は、制御部6からの指示に基づいて、測定光偏向ユニット17を動作させる。
制御部6は、メモリ31を有する。メモリ31は、被加工物18に対して所望の加工を行うための加工データ、及び、補正数表データを記憶する。補正数表データの詳細については後述する。
図1では、例として、第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17のそれぞれについて、y軸方向に伸びる回転軸を中心とした回転動作のみを示している。当該回転動作は、図中の四角の破線と両矢印線で表される。
なお、第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17は、それぞれ、2軸以上で回転動作できるように構成してもよい。このように構成した場合、第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17は、それぞれ、例えば、x軸方向に伸びる回転軸を中心とした回転動作を行うことも可能である。
以下では、説明を簡単にするため、第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17のそれぞれがy軸方向に伸びる回転軸を中心とした回転動作を行う場合について説明する。
測定光偏向ユニット17が原点位置にあるとき、測定光15の測定光軸23は、ダイクロイックミラー12で反射された後、加工用レーザ光11の加工光軸24と一致する。
また、第1ミラー13が原点位置にあるとき、加工用レーザ光11の加工光軸24は、第1ミラー13で反射された後、レンズ14を透過する際に、レンズ14の中心であるレンズ光軸25と一致する。
なお、以下の説明では、レンズ14の中心を透過した加工用レーザ光11及び測定光15が被加工物18の加工面19に到達した位置(照射位置と言ってもよい)を、「加工原点26」(図2参照)と称する。
第1ミラー13及び測定光偏向ユニット17のそれぞれの原点位置は、加工用レーザ光11及び測定光15がレンズ14の中心を透過する位置に等しい。
レンズ14は、加工用レーザ光11及び測定光15を加工点20に集光するためのレンズである。レンズ14は、例えば、fθレンズである。
第1ミラー13及びレンズ14は、ガルバノミラー及びfθレンズによる一般的な光学走査系を構成している。
このため、第1ミラー13をその原点位置から所定の角度だけ回転させることにより、加工用レーザ光11の加工面19への到達位置を制御することができる。
以下では、第1ミラー13をその原点位置から回転させる角度を「第1ミラー13の動作量」と称する。
なお、所望の加工点20へ加工用レーザ光11を照射させるための第1ミラー13の動作量は、加工ヘッド2を構成する各光学部材の位置関係と、レンズ14から加工面19までの距離とが決まれば、一意に設定することができる。
レンズ14から加工面19までの距離は、加工用レーザ光11による加工が最も効率的に行われるように、加工用レーザ光11が最も集光される焦点位置と、加工面19とを一致させた距離とすることが好ましい。ただし、レンズ14から加工面19までの距離は、これに限定されず、加工用途に応じて任意の距離に決定すればよい。
第1ミラー13の動作量を所定の動作スケジュールで変化させることで、加工面19上で加工点20の位置を走査することができる。
さらに、制御部6の制御によりレーザ発振器5のオンとオフの切り替えが行われることにより、加工用レーザ光11の走査可能な範囲内における、加工面19上の任意の位置を任意のパターンでレーザ加工することができる。
<色収差による影響>
次に、図2を用いて、色収差による影響について説明する。図2は第1ミラー13を原点位置から動作させた状態のレーザ加工装置1を模式的に示す図である。図2において、測定光偏向ユニット17は原点位置にあるとする。
図2に示すように、第1ミラー13で反射された加工用レーザ光11及び測定光15は、レンズ14に到達するまでは同じ光軸上を進む。しかしながら、レンズ14を透過した後では、加工用レーザ光11と測定光15の進行方向にずれが生じる。
すなわち、図2に示すように、加工用レーザ光11の光軸である加工光軸24aの位置が測定光15の光軸である測定光軸23aの位置からずれる。よって、測定光15は、加工点20の位置とは異なる位置に到達する。
これは、レンズ14の色収差が原因である。色収差とは、レンズ14を含む一般的な光学材料が、光の波長により屈折率が異なる性質を有するために発生する収差である。
色収差には、軸上色収差と、倍率色収差との二種類がある。軸上色収差は、光の波長によりレンズの焦点位置が異なる性質を指す。
一方、倍率色収差は、光の波長により焦点面における像高が異なる性質を指す。
図2に示した、レンズ14を透過した加工用レーザ光11(加工光軸24a)の進行方向と、測定光15(測定光軸23a)の進行方向とのずれは、上記の倍率色収差に起因するものである。
なお、本実施の形態のレーザ加工装置1では、上記の軸上色収差も同時に発生している。しかしながら、軸上色収差による加工用レーザ光11の進行方向と測定光15の進行方向とのずれについては、以下のように対処できる。すなわち、コリメートレンズ16と測定光導入口9との距離を調節し、コリメートレンズ16を透過した直後の測定光15を、平行光の状態から僅かに発散状態又は収束状態にすればよい。
図2では、測定光15が加工面19に到達した位置から加工原点26までの距離は、加工用レーザ光11が加工面19に到達した位置から加工原点26までの距離よりも長い。
しかしながら、レンズ14のレンズ構成や、加工用レーザ光11と測定光15との波長の大小関係により、前者の距離が後者の距離よりも短くなる場合がある。なお、一般的には、短波長の光に比べて、長波長の光は、加工原点26から遠い位置に到達する。
倍率色収差を補正する方法として、例えば、レンズ14に色消しレンズの性質を持たせる方法がある。しかしながら、レンズ14に、fθレンズとしての性質と、色消しレンズとしての性質との両方持たせようとすると、非常に高度な光学設計技術が必要となり、レンズ14の設計に多大な時間とコストを費やす。
このため、本実施の形態では、以下に説明するように、測定光偏向ユニット17を動作させることにより、低コストで倍率色収差を補正している。以下の説明では、測定光軸23の角度を変化させる偏向ユニットを「測定光偏向ユニット」と称する。本実施の形態の測定光偏向ユニット17は、測定光偏向ユニットの一例である。
<倍率色収差の補正方法>
次に、図3を用いて、倍率色収差の補正方法について説明する。図3は倍率色収差による加工用レーザ光11及び測定光15のそれぞれの到達位置のずれを補正した状態のレーザ加工装置1を模式的に示す図である。
図3では、測定光偏向ユニット17を、原点位置から所定の動作量(動作角度と言ってもよい)動作させている。これにより、図3に示すように、ダイクロイックミラー12からレンズ14に到るまでの間において、加工用レーザ光11の加工光軸24と、測定光15の測定光軸23とが同軸上に配置されなくなる。
しかしながら、加工用レーザ光11及び測定光15は、それぞれ、レンズ14を透過した後、加工面19における同じ位置、すなわち加工点20に到達している。
図3において、加工用レーザ光11の加工光軸24aは、図2に示した加工光軸24aと同じ位置を通っている。一方、図3において、測定光偏向ユニット17の動作により補正された測定光15の測定光軸23bは、図2に示した測定光軸23aとは異なる位置を通っている。
測定光偏向ユニット17の動作量(すなわち測定光偏向ユニット17をその原点位置から回転させる角度)は、第1ミラー13の動作量と1対1に対応付けられている。
第1ミラー13の動作量は、加工点20の位置によって一意に決まっているため、測定光偏向ユニット17の動作量も、加工点20の位置によって一意に決まる。
なお、以下では、測定光偏向ユニット17の動作量を「補正量」と称する。
<補正量と走査角との関係>
次に、補正量と走査角との関係について説明する。
fθレンズであるレンズ14では、レンズ14の焦点距離をfとし、レンズ14に入射する光のレンズ光軸25からの角度をθとし、レンズ14を透過した光線の像面(加工面19)における光軸(レンズ光軸25)からの距離(以下、像高という)をhとした場合、h=fθという関係が成り立つ。
上述したように、第1ミラー13は、回転動作する軸を2軸有している。この2軸を仮にx軸及びy軸とし、第1ミラー13で反射された光のレンズ光軸25からのx軸成分の角度をθxとし、同じくレンズ光軸25からのy軸成分の角度をθyとする。
そして、レンズ14を透過した光線の像面におけるx方向、y方向の像高をそれぞれx、yとした場合、x=fθx、y=fθyという関係が成り立つ。
従って、加工用レーザ光11が加工面19に到達する位置を(x,y)とすると、(x,y)=(fθx,fθy)となる。
また、ミラー13へ光を入射させたときのミラー13からの反射光の出射角度は、第1ミラー13の動作量の2倍の角度量で変化する。
そのため、第1ミラー13の動作量を(φx,φy)とした場合、(2φx,2φy)=(θx,θy)の関係が成り立つ。なお、以下の説明では、第1ミラー13の動作量(φx,φy)を「走査角」と称する。
このように、本実施の形態のレーザ加工装置1では、第1ミラー13の走査角(φx,φy)が決定されると、加工用レーザ光11の加工面19における到達位置、すなわち加工点20の位置(x,y)も決定される。
上述したように、走査角は、加工点20の位置によって一意に決定され、同様に補正量も加工点20の位置によって一意に決定される。
そこで、倍率色収差による測定光15のずれを補正するためのデータ(補正数表データ)を予め算出しておき、本実施の形態のレーザ加工装置1は、被加工物18の加工時に、この補正数表データを利用することにより、加工点20の位置に対応する補正量だけ測定光偏向ユニット17を動作させる。補正数表データは、加工点20毎に走査角と補正量との対応関係を示すデータである。
<補正数表データの詳細>
以下では、図4を参照して補正量の算出の前提となる、加工面19上の加工用レーザ光11及び測定光15のそれぞれの軌跡について説明する。
図4は、測定光偏向ユニット17を動作させずに第1ミラー13のみを動作させて被加工物18の表面(加工面19)を格子状に走査した場合における、加工面19上の加工用レーザ光11及び測定光15のそれぞれの軌跡を模式的に示す図である。
図4には、加工面19をレンズ14側から見た状態が示される。図4の実線の直交格子状パターンは、加工用レーザ光11の軌跡(加工光軌跡28)を表す。図4の破線の直交格子状パターンは、測定光15の軌跡(測定光軌跡27)を表す。
これらの直交格子状パターンは、測定光偏向ユニット17を動作させずに、第1ミラー13のみを動作させて、被加工物18の表面(加工面19)を格子状に走査したときの軌跡である。
図4に示す例では、測定光偏向ユニット17が動作していないため、倍率色収差の補正が行われていない。従って、図1から図3に示す加工原点26付近では、加工用レーザ光11及び測定光15のそれぞれの軌跡は一致しているが、加工原点26から遠ざかるにつれて両者のずれが大きくなっている。
これにより、加工光軌跡28は、歪みのない直交格子状パターンを描く一方、測定光軌跡27は、歪んだ糸巻き型の軌跡を描いている。
なお、図4に示す測定光軌跡27の歪み形状は、レンズ14の光学特性によって変化し得る。
また、加工光軌跡28及び測定光軌跡27のそれぞれに対応する位置のずれ量も同様に、レンズ14の光学特性や光学設計に依存する。
一般的な例としては、焦点距離が250mmであり、加工面領域が直径200mm程度である市販のfθレンズでは、加工面領域の最外周付近において0.2mmから0.4mmのずれが生じる。
それに対して、加工用レーザ光11を加工点20に照射することで生成されるキーホール22(例えば、図1参照)の直径は、加工用レーザ光のパワーや品質にも依るが、概ね0.03mmから0.2mmと小さい。
このため、レンズ14の色収差により生じる加工用レーザ光11と測定光15との位置ずれによって、キーホール22の底面に測定光15が到達せず、正しい溶け込み深さが測定できなくなる。
なお、図4には、等間隔の4×4マスの直交格子状パターンが例示されるが、格子状パターンの形状は、これに限定されない。
例えば、直交格子状パターンのマス数を多くしてもよいし、fθレンズの倍率色収差特性に関連して、特に高い精度が必要な領域の格子の間隔を狭くしてもよい。
また、直交格子状パターンに代えて、放射状格子状パターンが設定されてもよい。ただし、本実施の形態では、補正量がx軸及びy軸の2軸で設定されるため、直交格子状パターンがより好適である。
図4に示す加工光軌跡28と測定光軌跡27とを比較すると、それぞれの直交格子状パターン上での対応する各格子点に、ずれが生じていることが分かる。すなわち、加工光軌跡28上の特定箇所の1つの加工光格子点30と、測定光軌跡27の対応する測定光格子点29との間に、ずれが生じていることが分かる。
補正数表データを作成するためには、加工光軌跡28上の特定箇所の1つの加工光格子点30と、測定光軌跡27の対応する測定光格子点29とが一致するように、補正量を算出する(格子状パターンの格子点を目標位置に設定する)必要がある。
<補正量の算出方法>
次に、加工光格子点30における補正量を算出する方法について説明する。図5は、加工光格子点30における補正量を算出するために用いられるビーム位置測定ユニット38の構成例を示す図である。
ビーム位置測定ユニット38は、レンズ14と被加工物18の間に設置されている。ビーム位置測定ユニット38は、位置測定ミラー39、2次元撮像素子40、及びビーム終端器41を備える。
位置測定ミラー39は、加工用レーザ光11のパワーを減衰させる機能を有し、加工用レーザ光11の波長の光を反射光と透過光に分け、測定光15の波長の光を反射する特性を有する。
位置測定ミラー39の加工用レーザ光11の波長の反射率は、反射した加工用レーザ光11のパワーが反射した測定光15のパワーと同程度になるように設定される。
例えば、加工用レーザ光11に一般的な加工で使用される定格出力が1kW以上のファイバレーザを選定した場合、加工用レーザ光11で出力できる最小のパワーは、100W程度である。
これに対して、測定光15としてOCT用光源を用いた場合の出力は、数10mWである。このため、100Wの加工用レーザ光11を数10mWの測定光15と同じオーダー(数10mW)の出力まで低減させるためには、位置測定ミラー39の加工用レーザ光11の波長の反射率を、0.1%以下に設定することが望ましい。
一方で、測定光15は減衰する必要がないため、位置測定ミラー39の測定光15の波長の反射率は90%以上に設定することが望ましい。
2次元撮像素子40は、加工用レーザ光11と測定光15の位置を測定する機能を有する。2次元撮像素子40は、加工用レーザ光11と測定光15の波長に対して感度を有しているものであれば良く、CCD(charge-coupled device)、CMOS(Complementary Metal Oxide-Semiconductor)、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)などの素子を有した市販の産業用カメラや2次元ビームプロファイラ等を用いることができる。
ビーム終端器41は、位置測定ミラー39を透過した加工用レーザ光11を終端する機能を有する。
レンズ14を通過した加工用レーザ光11と測定光15は、位置測定ミラー39で反射する加工用レーザ光11a及び測定光15aと、位置測定ミラー39を透過する加工用レーザ光11bとに分けられる。
位置測定ミラー39を透過した加工用レーザ光11bは、ビーム終端器41で終端される。
一方で、位置測定ミラー39で反射された加工用レーザ光11aと測定光15aは、2次元撮像素子40に入力される。2次元撮像素子40は、入力した加工用レーザ光11aと測定光15aの位置を測定する。
レンズ14から2次元撮像素子40までの区間には、光を透過させるための光学素子は配置されず、位置測定ミラー39で反射された光のみが伝達される。
また、レンズ14から2次元撮像素子40までの加工用レーザ光11及び測定光15のそれぞれの光路長は、ビーム位置測定ユニット38が設置されていない場合におけるレンズ14から加工点20までの光路長と一致する。
このため、2次元撮像素子40で測定される加工用レーザ光11の位置を基準とした測定光15の相対的な位置関係は、ビーム位置測定ユニット38が設置されていない場合の加工点20における加工用レーザ光11と測定光15の位置の関係と一致する。
図6は、加工光格子点30における補正量を算出する方法を説明するためのフローチャートである。
ステップS1において、補正量を求める加工光格子点30にビーム位置測定ユニット38を設置する。このとき、2次元撮像素子40は、レンズ14から2次元撮像素子40までの光路長が、ビーム位置測定ユニット38が設置されていない場合のレンズ14から加工点20までの光路長と一致するような位置に設置される。
ステップS2において、補正量を求める加工光格子点30に加工用レーザ光11が到達するよう第1ミラー13の走査角を設定する。
ステップS3において、加工用レーザ光11を照射して、ビーム位置測定ユニット38を用いて、加工用レーザ光11が2次元撮像素子40に到達した到達位置を求める。
このとき、加工用レーザ光11を照射する際の出力は、レーザ発振器5の定格の出力の10%以上の出力になるように設定することが望ましい。特にレーザ発振器5がファイバレーザの場合は、定格の出力の10%未満に設定した場合はレーザの発振状態が不安定になる場合があり、加工用レーザ光11が2次元撮像素子40に到達した到達位置を正確に測定できなくなるためである。
ステップS4において、測定光15を照射して、ビーム位置測定ユニット38を用いて、測定光15が2次元撮像素子40に到達した到達位置を求める。
ステップS5において、ステップS3で求めた加工用レーザ光11の到達位置が、測定光15の到達位置と一致するように、ビーム位置測定ユニット38の2次元撮像素子40の測定結果を参照しながら、測定光偏向ユニット17の補正量を算出する。補正量は例えば制御部6が算出する。
以上に説明した方法により、加工光格子点30における補正量を算出することができる。補正量を算出することで、2次元撮像素子40に入力する加工用レーザ光11の出力を測定光15の出力に近づけることができるため、同一の2次元撮像素子40を使うことができる。
一般的に、出力が大きく異なるレーザ光の位置を2次元撮像素子40で測定する場合、出力に応じた異なる2次元撮像素子40を使用する必要がある。
一方、上記の補正量の算出方法によれば、加工用レーザ光11と測定光15の到達位置を測定する際に2次元撮像素子40を取り換える必要がなく、2次元撮像素子40の設置誤差をなくすことができる。このため、加工用レーザ光11と測定光15の到達位置を精度よく求めることができる。
また、レンズ14から2次元撮像素子40に至るまでの光路は、光学部品を透過する光路を含まず、光が反射される光路のみ含むため、屈折や硝材色収差の影響を受けない。このため、加工用レーザ光11と測定光15の到達位置を精度よく求めることができる。
なお、図5に示すビーム位置測定ユニット38には、1つの位置測定ミラー39が用いられるが、位置測定ミラー39の数は、1つに限定されず、2つ以上でもよい。
図7は、2つの位置測定ミラー39a、39bを備えたビーム位置測定ユニット38の構成例を示す図である。
2つの位置測定ミラー39a、39bは、互いにx軸方向に離れて平行に配列される。
加工用レーザ光11と測定光15は、位置測定ミラー39aで反射された加工用レーザ光11a及び測定光15aと、位置測定ミラー39aを透過する加工用レーザ光11cとに分けられる。
加工用レーザ光11aは、位置測定ミラー39bで反射された加工用レーザ光11bと、位置測定ミラー39bを透過する加工用レーザ光11dとに分けられる。加工用レーザ光11bは、2次元撮像素子40に入力される。
測定光15aは、位置測定ミラー39bで反射された測定光15bとして、2次元撮像素子40に入力される。
この時、位置測定ミラー39aから2次元撮像素子40に至るまでの光路は、光学部品を透過する光路を含まず、光が反射される光路のみ含む。
また、2次元撮像素子40は、レンズ14から2次元撮像素子40までの光路長が、ビーム位置測定ユニット38が設置されていない場合のレンズ14から加工点20までの光路長と一致するような位置に設置される。
位置測定ミラー39aを透過した加工用レーザ光11cは、ビーム終端器41aで終端される。
位置測定ミラー39bを透過した加工用レーザ光11dは、ビーム終端器41bで終端される。
このように、複数の位置測定ミラー39a、39bを組み合わせることによって、2次元撮像素子40に到達する加工用レーザ光11と測定光15のパワーを同程度に調整することが可能となる。
なお、図5及び図7に示すビーム位置測定ユニット38は、加工用レーザ光11と測定光15を反射させる光学素子として位置測定ミラー39を有するが、位置測定ミラー39に全反射ミラーを組み合わせてもよい。全反射ミラーを組み合わせた場合でも、レンズ14から2次元撮像素子40に至るまでの光路は、光学部品を透過する光路を含まず、光が反射される光路のみ含む。
なお、図5及び図7に示す位置測定ミラー39の形状は、平板形状に限定されず、位置測定ミラー39は、加工用レーザ光11と測定光15の反射面が平坦なものであればよい。
なお、図5及び図7に示すビーム位置測定ユニット38は、ビーム終端器41を有するが、安全上の問題がなければビーム終端器41を設置しない構成にしても良い。
なお、図5には説明の便宜上、被加工物18を例示しているが、上述した補正量の算出時には被加工物18を利用しないため、被加工物18の図示を省略しても構わない。
なお、ビーム位置測定ユニット38に入射する加工用レーザ光11と測定光15の光軸の角度は、加工光格子点30の位置によって異なる。このため、ビーム位置測定ユニット38は、2次元画像素子40に加工用レーザ光11と測定光15を入力させるために、位置測定ミラー39の角度を調整する機構や、2次元撮像素子40の位置を調整する機構をさらに備えても良い。
なお、ビーム位置測定ユニット38は、レーザ加工装置1の機能として、レーザ加工装置1に組み込まれているものでもよいし、レーザ加工装置1以外の別ユニットでもよい。
ビーム位置測定ユニット38がレーザ加工装置1に組み込まれている場合、制御部6に2次元撮像素子40を接続し、2次元撮像素子40の測定結果に基づいて、制御部6が測定光偏向ユニット17を制御し、制御部6が測定光偏向ユニット17の補正量を算出するように構成しても良い。
なお、上述した補正量の算出方法は、加工ヘッド2においてビーム品質に優れたレーザ(例えば、シングルモードのファイバレーザなど)を用いる場合に好適である。
シングルモードのファイバレーザでは、加工用レーザ光11の加工点20でのビーム径が50μm以下になり、高い補正量の精度(10μm以下)が要求されるが、補正量の算出方法では、シングルモードに要求される補正量の算出が可能だからである。
<補正数表データの作成方法>
次に、図8を参照して補正数表データの作成方法について説明する。図8は、補正数表データの作成方法を示すフローチャートである。
ステップS11において、制御部6は、仮の被加工物18(例えば、金属の平板)の加工面19に対して、レーザ加工を行う範囲である格子状パターン(例えば、図4に示した加工光軌跡28)を設定する。仮の被加工物18は、補正数表データを取得するために利用される被加工物である。
また、制御部6は、格子状パターンに含まれる複数の加工光格子点のうち、1つの加工光格子点を選定する。
ステップS12において、制御部6は、ビーム位置測定ユニット38を用いて、図6に示す一連の処理を実行することによって、補正量を算出する。
ステップS13において、制御部6は、ステップS12で算出した補正量と、補正量を算出したときの走査角とを対応付けて、補正数表データとしてメモリ31に保存する。
その後、制御部6は、ステップS14の処理を実行する。ステップS14において、制御部6は、ステップS11で設定された格子状パターンに含まれる複数の加工光格子点の全てについて、補正数表データの保存が完了したか否かの判定を行う。
ステップS14において、制御部6は、全ての加工光格子点において補正数表データの保存が完了していない場合(ステップS14:NO)、ステップS15の処理を実行する。
ステップS15において、制御部6は、新たな加工光格子点(すなわち補正数表データの保存が行われていない加工光格子点)を1つ選定して、その後、ステップS12以降の処理を繰り返す。
ステップS14において、制御部6は、全ての加工光格子点において補正数表データの保存が完了した場合(ステップS14:YES)、一連の処理を終了する。この一連の処理によって補正数表データが得られる。
なお、ステップS11で設定される格子状パターンが図4に示した4×4の格子状パターンである場合、16個の加工光格子点における補正数表データのみ作成される。加工光格子点を16個以上含む格子状パターンを設定することにより、より多くの補正数表データを作成することが好ましい。
ただし、多くの補正数表データを作成したとしても、第1ミラー13の走査角は、機構上の動作範囲内であれば、どのような値でも設定することができるため、走査角が補正数表データと一致しない場合が生じうる。この場合、補正数表データを補間して補正量を求める必要がある。補正数表データを補間して補正量を求める方法については、後述する。
<加工データ>
次に、被加工物18の加工に用いられる加工データについて説明する。
fθレンズ及びガルバノミラーを有する従来のレーザ加工装置では、制御部が、時系列に設定された複数の加工データを用いて、レーザ発振器及びガルバノミラーを制御していた。そして、被加工物の表面の各加工点に対して時系列順に加工が行われていた。複数の加工データは、例えば、レーザ発振器への出力指示値と、走査角及び加工速度のデータ項目とが、加工点毎にセットになったデータである。
本実施の形態では、レーザ加工装置1が用いる加工データのデータ項目に、レーザ発振器5への出力指示値(レーザ出力データともいう)、加工点20の位置(加工点位置ともいう)、及び走査角が加えられ、さらに、上記の補正量が加えられる。
以下の説明では、補正量がデータ項目として加えられた加工データを「補正済み加工データ」と称する。
図9を参照して、補正済み加工データの一例について説明する。図9は、補正済み加工データに含まれるデータ項目の一例を示す図である。
補正済み加工データは、データ項目として、データ番号k、レーザ出力データLk、加工点位置xk、加工点位置yk、走査角φxk、走査角φyk、補正量ψxk、及び補正量ψykを含む。
データ番号kは、加工データの順番を示す。kは1以上の整数を表す。なお、データ番号k以外の各データ項目に付された添え字kは、データ番号k番目に対応するデータ項目を表す。
レーザ出力データLkは、レーザ発振器5への出力指示値を示す。
加工点位置xkは、x軸方向の加工点20の位置を示す。
加工点位置ykは、y軸方向の加工点20の位置を示す。
走査角φxkは、x軸方向の走査を担う第1ミラー13の走査角を示す。
走査角φykは、y軸方向の走査を担う第1ミラー13の走査角を示す。
補正量ψxkは、x軸方向の測定光15の位置の補正を担う測定光偏向ユニット17の補正量を示す。
補正量ψykは、y軸方向の測定光15の位置の補正を担う測定光偏向ユニット17の補正量を示す。
補正済み加工データにおける走査角は、第1指示値の一例である。補正済み加工データにおける補正量は、第2指示値の一例である。
次に、図10を参照して、加工データの作成方法について説明する。図10は、加工データの作成方法を説明するためのフローチャートである。
ステップS21において、制御部6は、参照するデータ番号kをゼロに設定する。データ番号kは、メモリ31内の加工データが保存されている領域に付されている。
ステップS22において、制御部6は、メモリ31内のデータ番号kの領域に、レーザ出力データLk、加工点位置xk、及び加工点位置ykを設定する。
これらの値は、所望のレーザ加工を実現するために、レーザ加工装置1のユーザが、図示しない操作部(例えばキーボード、マウス、タッチパネル等)を用いて設定される。
ステップS23において、制御部6は、ステップS22で設定された加工点位置xk、及び加工点位置ykに基づいて、第1ミラー13の走査角φxk,φykを算出し、算出した走査角φxk,φykをメモリ31内のデータ番号kの領域に保存する。
レンズ14の焦点距離がfであるとき、加工点位置と走査角との間には(xk,yk)=(2f・φxk,2f・φyk)の関係性があるため、走査角は、加工点位置に基づき自動的に決定される。
なお、加工点位置と走査角の関係式や対応数表等が、予めユーザによって設定されていてもよい。その場合、加工点位置と走査角関係式や対応数表等を用いて、第1ミラー13の走査角φxk,φykを決定してもよい。
ステップS24において、制御部6は、全てのデータ番号kについて加工データの設定が完了したか否かを判定する。
ステップS24において、制御部6は、全てのデータ番号kについて加工データの設定が完了していない場合(ステップS24:NO)、ステップS25の処理を実行する。
ステップS25において、制御部6は、参照するデータ番号kを1つ増加させて、その後、ステップS22以降の処理を繰り返す。
ステップS24において、制御部6は、全てのデータ番号kについて加工データの設定が完了した場合(ステップS24:YES)、一連の処理を終了する。
以上の処理によって、全てのデータ番号kについて、加工データが設定される。
<補正量の設定方法>
次に、図10のフローにより設定された加工データに対して、加工点位置毎の補正量を設定する方法について説明する。
まず、図11を用いて、加工点位置の補正数表データの構成について説明する。図11は、加工点位置の補正数表データの構成を模式的に表した加工点位置の補正数表34を示す図である。
図11には、加工面19における加工光格子点毎に設定された補正済み加工データが、複数のデータ点32として模式的に示される。
図11に示すデータ点32は、上述したとおり、加工面19上の位置(すなわち、加工点位置)、走査角、及び補正量を含む。
図11に示す補正データ点33は、加工面19上の加工原点26に対応する点である。
以下の説明では、加工点位置の補正数表34の各データ点32の位置を、便宜上、走査角(φx,φy)で表す。
走査角φxに対応する方向のデータ番号をiとし、走査角φyに対応する方向のデータ番号をjとする。
各データ点32は、補正数表用走査角(Φxi,Φyj)と、補正数表用補正量(Ψxij,Ψyij)との組である(Φxi,Φyj,Ψxij,Ψyij)を保持している。
補正数表用走査角(Φxi,Φyj)は、走査角(φx,φy)の要素を有する。
次に、図12を用いて、補正量の設定方法の流れについて説明する。図12は、補正量の設定方法を示すフローチャートである。
ステップS31において、制御部6は、参照するデータ番号kをゼロに設定する。
ステップS32において、制御部6は、メモリ31内のデータ番号kの領域に保存されている走査角(φxk,φyk)と、加工点位置の補正数表34内の全ての補正数表用走査角(Φxi,Φyj)とを比較する。これにより、制御部6は、φxk=Φxiかつφyk=Φyjとなるデータ番号i,jが存在するか否かを判定する。
すなわち、ステップS32では、加工点位置の補正数表34内に、ユーザが設定した走査角と全く同じ走査角を含むデータ項目が存在するか否の判定が行われている。
ステップS32において、制御部6は、φxk=Φxiかつφyk=Φyjとなるデータ番号i,jが存在する場合(ステップS32:YES)、ステップS33の処理を実行する。
ステップS32において、制御部6は、φxk=Φxiかつφyk=Φyjとなるデータ番号i,jが存在しない場合(ステップS32:NO)、ステップS34の処理を実行する。
ステップS33において、制御部6は、φxk=Φxiかつφyk=Φyjとなるデータ番号i,jを用いて、補正量を(ψxk,ψyk)=(Ψxij,Ψyij)と設定する。
すなわち、本ステップS33では、ユーザが設定した走査角と全く同じ走査角を含むデータ項目が存在するため、該当する補正数表用補正量をそのまま補正量として設定している。
ステップS34において、制御部6は、加工点位置の補正数表34内においてユーザが設定した走査角(φxk,φyk)を囲む最近接の4点のデータを用いて補間処理を行い、補正量(ψxk,ψyk)を設定する。ステップS34の詳細については後述する。
ステップS35において、制御部6は、ステップS33又はステップS34において設定した補正量(ψxk,ψyk)を、メモリ31内の加工データのデータ番号kの領域に設定(保存)する。
ステップS36において、制御部6は、メモリ31内に保存されている加工データの全てについて、補正量の設定が完了したか否かを判定する。
ステップS36において、制御部6は、加工データの全てについて補正量の設定が完了していない場合(ステップS36:NO)、ステップS37の処理を実行する。
ステップS37において、制御部6は、参照するデータ番号kを1つ増加させ、その後、ステップS32以降の処理を繰り返す。
ステップS37において、制御部6は、加工データの全てについて補正量の設定が完了した場合(ステップS36:YES)、一連の処理を終了する。
以上の処理によって、図10のフローにより設定された加工データにおいて、全てのデータ番号kについて補正量が設定される。すなわち、補正済み加工データが生成される。
<補間処理の詳細>
次に、図12に示したステップS34(補間処理)について詳細に説明する。ステップS34の補間処理は、ユーザが設定した走査角(φxk,φyk)が、データ点32内の補正数表用走査角(Φxi,Φyj)のいずれにも一致していない場合に行われる。
図13は、ユーザが加工データとして設定した走査角Xが図11に示した加工点位置の補正数表34のいずれかのデータ点32の補正数表用走査角と一致しなかった場合における、走査角Xとその周囲の補正データ点の関係を示す図である。
走査角X(φxk,φyk,ψxk,ψyk)に対応する点は、補正データ点A~Dの4点で作られる格子内に位置している。
補正データ点Aの値は(Φxi,Φyj,Ψxij,Ψyij)である。補正データ点Bの値は(Φxi+1,Φyj,Ψxi+1j,Ψyi+1j)である。補正データ点Cの値は(Φxi,Φyj+1,Ψxij+1,Ψyij+1)である。補正データ点Dの値は(Φxi+1,Φyj+1,Ψxi+1j+1,Ψyi+1j+1)である。
Φxi≦φxk≦Φxi+1(等号は同時には成立せず)、Φyj≦φyk≦Φyj+1(等号は同時には成立せず)の関係が成立している。
このときの補正量(ψxk,ψyk)は、走査角X(φxk,φyk)の値と補正データ点A、B、C、Dの値とを用いて、以下の式(1)及び式(2)により算出される。
ψxk=(E×Ψxij+F×Ψxi+1j+G×Ψxij+1+H×Ψxi+1j+1)/J・・・(1)
ψyk=(E×Ψyij+F×Ψyi+1j+G×Ψyij+1+H×Ψyi+1j+1)/J・・・(2)
なお、式(1)及び(2)におけるE、F、G、H、Jは、下記の式(3)~(7)により算出される。
E=(φxk-Φxi)×(φyk-Φyj)・・・(3)
F=(Φxi+1-φxk)×(φyk-Φyj)・・・(4)
G=(φxk-Φxi)×(Φyj+1-φyk)・・・(5)
H=(Φxi+1-φxk)×(Φyj+1-φyk)・・・(6)
J=(Φxi+1-Φxi)×(Φyj+1-Φyj)・・・(7)
上述した補間処理により、ユーザが設定した走査角に基づいて補正量を算出することができる。なお、上述した補間処理では、一例として線形補間法を用いたが、補間処理には、線形補間法に代えて、その他の公知の二次元補間手法(スプライン補間、二次曲面近似など)を用いてもよい。
また、予め加工点位置の補正数表34上の補正数表用補正量(Ψxij,Ψyij)から、走査角に対する補正量についての高次の近似曲面を算出しておき、走査角に対応する補正量を算出するようにしてもよい。「補正数表34上の補正数表用補正量(Ψxij,Ψyij)」は、図11に示す補正数表34の全てのデータ点32を表す。近似曲面の算出方法の具体例としては、最小二乗法によるフィッティングを例示できる。例えば、3次元データセット(xi,yi,zi)(i=1...n)に対して、ある曲面の方程式z=f(aj,x,y)(j=0...m-1)を近似曲面として求めることができる。ajは係数を表す。「3次元データセット(xi,yi,zi)」のx,yに走査角を代入し、zに補正量(x座標とy座標のどちらか)を代入することによって、補正量Ψxijに対する走査角(Φxi,Φyj)の近似曲面と、補正量Ψyijに対する走査角(Φxi,Φyj)の近似曲面とを算出できる。このように、任意の走査角に基づき補正量を求める関係式を導出できる。
<レーザ加工方法>
次に、図14を用いて、本開示の実施の形態に係るレーザ加工装置1によるレーザ加工方法について説明する。図14は、本開示の実施の形態に係るレーザ加工装置1によるレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。
ステップS41において、制御部6は、参照するデータ番号kをゼロに設定する。
ステップS42において、制御部6は、データ番号kに対応する補正済み加工データ(レーザ出力データLk、走査角φxk,φyk、及び補正量ψxk,ψyk)を、メモリ31から読み出す。
ステップS43において、制御部6は、走査角(φxk,φyk)に基づいて第1ミラー13を動作させ、補正量(ψxk,ψyk)に基づいて測定光偏向ユニット17を動作させる。
具体的には、制御部6は、第1ドライバ7に対して走査角(φxk,φyk)を通知する。これにより、第1ドライバ7は、走査角(φxk,φyk)に基づいて第1ミラー13を動作させる。
また、制御部6は、第2ドライバ8に対して、補正量(ψxk,ψyk)を通知する。これにより、第2ドライバ8は、補正量(ψxk,ψyk)に基づいて測定光偏向ユニット17を動作させる。
ステップS44において、制御部6は、レーザ出力データLkに基づいて、レーザ発振器5から加工用レーザ光11を発振させる。
具体的には、制御部6は、レーザ出力値を示すレーザ出力データLkをレーザ発振器5へ送信する。これにより、レーザ発振器5は、レーザ出力データLkに基づいて、加工用レーザ光11を発振する。
ステップS45において、制御部6は、メモリ31内に保存されている全てのデータ番号kに対応するレーザ加工が終了したか否かを判定する。
ステップS45において、制御部6は、全てのデータ番号kに対応するレーザ加工が終了していない場合(ステップS45:NO)、ステップS46の処理を実行する。
ステップS46において、制御部6は、参照するデータ番号kを1つ増加させ、その後、ステップS42以降の処理を繰り返す。
ステップS45において、制御部6は、全てのデータ番号kに対応するレーザ加工が終了した場合(ステップS45:YES)、一連の処理を終了する。
以上の処理によって、全てのデータ番号kについてレーザ加工が実行される。
<キーホール深さ計測方法>
次に、図15を参照して、上述したレーザ加工方法の実行時におけるキーホール22の深さの計測方法の流れについて説明する。図15は、キーホール22の深さの計測方法を説明するためのフローチャートである。
ステップS51において、制御部6は、図14に示したレーザ加工方法を開始する前に、未加工の被加工物18の加工面19の位置データを取得する。
位置データとは、未加工状態の加工面19の高さ(換言すれば、図1などに示すz軸方向における加工面19の位置)を示すデータである。また、制御部6は、計測処理部4に対してキーホール22の深さの計測を開始する指令を出力する。
図14に示すレーザ加工に関する一連の処理が開始されると、ステップS52において、計測処理部4は、光干渉計3に対して、測定光15を出射させるための指令を出力する。
そして、光干渉計3は、キーホール22の底面で反射して戻って来た測定光15と、参照光との光路差に応じた光干渉信号を生成する。
ステップS53において、計測処理部4は、未加工の被加工物18の加工面19の位置データと、光干渉計3で生成された光干渉信号とを用いて、キーホール22の深さ(すなわち、溶け込み深さ)を算出する。そして、制御部6は、算出されたキーホール22の深さを示すデータをメモリ31に保存する。
ステップS54において、制御部6は、キーホール22の深さの計測を終了させるか否かを判定する。
例えば、制御部6は、レーザ加工に関する一連の処理が終了していない場合、キーホール22の深さの計測を継続させ、レーザ加工に関する一連の処理が終了した場合、キーホール22の深さの計測を終了させる。
ステップS54において、制御部6は、キーホール22の深さの計測を終了させない場合(ステップS54:NO)、ステップS52以降の処理を繰り返す。
ステップS54において、制御部6は、キーホール22の深さの計測を終了させる場合(ステップS54:YES)、ステップS55の処理を実行する。
ステップS55において、制御部6は、レーザ加工に関する一連の処理が終了した後に、計測処理部4に対してキーホール22の深さの計測終了の指令を出す。
なお、前述したキーホール22の深さの計測開始の指令と、キーホール22の深さの計測終了の指令は、制御部6が出力する代わりに、図示しない指令出力手段から出力されるものでもよい。その場合、指令出力装置を、キーボードなどの操作部経由でユーザが操作することで、これらの指令の出力が行われる。
<効果>
以上に説明したように、本実施の形態のビーム位置測定ユニット38は、レンズ14を透過した加工用レーザ光11及び測定光15を反射する位置測定ミラー39と、位置測定ミラー39で反射した加工用レーザ光11及び測定光15の位置を測定する2次元撮像素子40を備える。
また、位置測定ミラー39は、加工用レーザ光11が2次元撮像素子40に入力可能なパワーになる加工用レーザ光11の波長の反射率に設定される。
また、2次元撮像素子40は、レンズ14から2次元撮像素子40の光路長がレンズ14から加工点20の光路長に一致する位置に設置される。
また、レーザ加工装置1は、加工面19上の目標位置を設定し、目標位置に加工用レーザ光11が到達する第1指示値(測定光偏向ユニット17の走査角)を設定する。
さらに、レーザ加工装置1は、ビーム位置測定ユニット38によって測定した加工用レーザ光11及び測定光15の位置に基づいて、第2指示値(測定光偏向ユニット17の補正量)を求めるように構成されている。
この構成により、レンズ14の倍率色収差によって生じる、レンズ14を透過後の加工面19における加工用レーザ光11及び測定光15のそれぞれの到達位置のずれを補正することができる。
これにより、光干渉計3によるキーホール22の深さの計測を好適に実施することができる。すなわち、キーホール22の深さを正確に計測することができる。
図16は、測定光偏向ユニット17を動作させたことによる、倍率色収差の影響を補正した状態の、加工面19における加工用レーザ光11と測定光15の軌跡を例示した図である。
図16によれば、加工用レーザ光11の軌跡である加工光軌跡28が、測定光15の軌跡である測定光軌跡27と一致していることが分かる。
また、加工光軌跡28上の特定箇所の1つの加工光格子点30と、測定光軌跡27の対応する測定光格子点29とが一致していることが分かる。
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、本実施の形態の変形例について説明する。
[第1変形例]
上記の実施の形態では、測定光15の光軸方向を変化させるための測定光偏向ユニットとして、ガルバノミラーである測定光偏向ユニット17を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
レーザ加工装置1に用いる測定光偏向ユニットは、例えば、測定光導入口9とダイクロイックミラー12との間に設置され、制御部6の制御によって、測定光15の光軸方向を変化させることができる構成であればよい。
このように構成される測定光偏向ユニットの一例を図17に示す。図17は、本開示の第1変形例に係るレーザ加工装置1の構成を模式的に示す図である。
図17に示すレーザ加工装置1は、図1等に示した測定光偏向ユニット17の代わりに第2ミラー35を有し、さらに移動ステージ36及びステージドライバ37を有する。
なお、図17に示すレーザ加工装置1は、図1等に示したコリメートレンズ16を有していない。
第2ミラー35は、測定光導入口9とダイクロイックミラー12との間に固定された放物面ミラーである。
なお、第2ミラー35は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等であってもよい。
移動ステージ36は、測定光導入口9に設けられている。ステージドライバ37は、制御部6と電気的に接続されており、制御部6からの指示に基づいて、移動ステージ36を動作させる。これにより、移動ステージ36は、図中のy軸方向及びz軸方向に移動する。すなわち、移動ステージ36の移動方向は、測定光軸23に垂直な2軸方向である。
測定光導入口9における測定光15の出射端は、第2ミラー35の焦点と一致するように配置されている。これにより、測定光15は、第2ミラー35で反射された後に平行光となってダイクロイックミラー12へ向かう。
移動ステージ36の移動により、第2ミラー35からダイクロイックミラー12へ向かう測定光軸23の角度は、変化する。すなわち、測定光偏向ユニットは、移動ステージ36と第2ミラー35で構成されている。これにより、ガルバノミラーである測定光偏向ユニット17を用いた場合と同様の効果が得られる。
[第2変形例]
図18は、本開示の第2変形例に係るレーザ加工装置1の構成を模式的に示す図である。図18に示すレーザ加工装置1は、図17に示した第2ミラー35の代わりに、図1等に示したコリメートレンズ16を有する。さらに移動ステージ36及びステージドライバ37を有する。なお、図18に示すレーザ加工装置1は、図1等に示した測定光偏向ユニット17を有していない。
第1変形例に係るレーザ加工装置1では、第2ミラー35によって測定光軸23の角度を変化させていたのに対し、第2変形例に係るレーザ加工装置1では、コリメートレンズ16によって測定光軸23の角度を変化させている。
移動ステージ36は、測定光導入口9に設けられている。ステージドライバ37は、制御部6と電気的に接続されており、制御部6からの指示に基づいて、移動ステージ36を動作させる。これにより、移動ステージ36は、y軸方向及びx軸方向に移動する。すなわち、移動ステージ36の移動方向は、測定光軸23に垂直な2軸方向である。
測定光導入口9における測定光15の出射端は、コリメートレンズ16の焦点と一致するように配置されている。これにより、測定光15は、コリメートレンズ16を透過した後に平行光となってダイクロイックミラー12へ向かう。
移動ステージ36の移動により、コリメートレンズ16からダイクロイックミラー12へ向かう測定光軸23の角度は、変化する。すなわち、測定光偏向ユニットは移動ステージ36とコリメートレンズ16で構成されている。これにより、測定光偏向ユニットとしてガルバノミラーである測定光偏向ユニット17を用いた場合と同様の効果が得られる。