JP2022032320A - 乳蛋白質の加水分解物の製造方法 - Google Patents

乳蛋白質の加水分解物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乳蛋白質の加水分解物中の全チロシン残基の含量が低減された、乳蛋白質の加水分解物を製造する技術の提供。【解決手段】乳蛋白質を、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理して、遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物を生成する工程、該加水分解物中の遊離チロシンを結晶化する工程、及び該結晶化した遊離チロシンを該加水分解物から除去する工程を含む、乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、乳蛋白質の加水分解物の製造方法に関する。
チロシンは食品中に含まれる芳香族アミノ酸の一種で、体内において、フェニルアラニンから生成し、甲状腺ホルモンや神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの前駆体として利用されている。健常者は適切な量を摂取することが望ましいが、一部の病態者においては病態の進行を抑制するために摂取量を制限する必要があるとされている。
チロシンを含む芳香族アミノ酸を低減した蛋白質分解物の製造方法としては、蛋白質を加水分解して、少なくとも90%(重量)以上のチロシン及びフェニルアラニンを遊離させた蛋白質の加水分解液を、食塩阻止率10~70%の逆浸透膜を用いて逆浸透処理し、次いで、前記工程で得られた膜非透過画分と前記工程で得られた膜透過画分から芳香族アミノ酸を除去した膜透過画分とを混合して、低芳香族アミノ酸含量のペプチド混合物を回収する方法(特許文献1)が知られている。また、原料蛋白質に含まれるフェニルアラニンの総量に対する遊離したフェニルアラニン含量の割合が85~95%内に達するまで加水分解した後、フェニルアラニンをゲル濾過法、吸着樹脂法、活性炭吸着法等により低減する方法(特許文献2)が知られている。
特許第3418278号明細書 特許第3682994号明細書
特許文献1に記載の製造方法は、工程を簡便なものとし、また、トリプトファンやフェニルアラニンなどのチロシン以外の疎水性アミノ酸を保持し、栄養価に優れた蛋白質分解物を得るために改良する余地がある。
また、特許文献2に記載の製造方法では、ゲル濾過法、吸着樹脂法、活性炭吸着法等を使用するため、除去されるアミノ酸は、チロシンだけに限らず、チロシン以外の芳香族アミノ酸が末端に結合した低分子量のペプチドや、チロシン以外の疎水性アミノ酸も一部同時に吸着、除去される。そのため、栄養学的にアミノ酸バランスが保持されたペプチド混合物を高効率で回収するには改良の余地がある。
チロシンを含む芳香族アミノ酸が低減された医薬品や食品の製造方法としては、蛋白質に由来する成分の一部若しくはすべてを、チロシンを含まないアミノ酸混合物に置換する方法が考えられる。しかし、製造される医薬品や食品が良好な風味を呈し、また、腸管での浸透圧が高いことによる下痢を防止し、さらにコスト的にも有利なものとするためには、アミノ酸混合物を用いない製造方法が好ましい。
本発明は、乳蛋白質の加水分解物中の全チロシン残基の含量が低減された、乳蛋白質の加水分解物を製造する技術の提供を課題とする。
本発明者らは、乳蛋白質を、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理して、遊離チロシンの含量が該乳蛋白
質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物を生成し、該加水分解物中の遊離チロシンを結晶化し、及び該結晶化した遊離チロシンを該加水分解物から除去することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、乳蛋白質を、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理して、遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物を生成する工程、
該加水分解物中の遊離チロシンを結晶化する工程、及び
該結晶化した遊離チロシンを該加水分解物から除去する工程
を含む、
乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物の製造方法を提供する。
前記方法は、前記乳蛋白質がカゼインであることを好ましい態様としている。
本発明はまた、乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物を提供することができる。
前記加水分解物は、前記乳蛋白質がカゼインであることを好ましい態様としている。
本発明はまた、前記加水分解物を含む、飲食品組成物を提供することができる。
本発明によれば、乳蛋白質の加水分解物中の全チロシン残基の含量が低減された、乳蛋白質の加水分解物を製造することが可能であり、当該加水分解物は、医薬品原料や病態者用の素材として好適に利用できる。
当該加水分解物は、チロシン残基以外の疎水性アミノ酸残基が保持されているため、栄養価に優れた加水分解物である。
また、当該加水分解物は、チロシン残基以外の芳香族アミノ酸残基が末端に結合した低分子量のペプチドも除去されていないため、栄養学的にアミノ酸バランスが保持されたペプチド混合物として高回収率で回収することができる。さらに、不足する必須アミノ酸を添加して補充する必要もなく、風味も良好で、下痢を惹起せず、コスト的にも有利なものである。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのないものについては重量(質量)による表示である。
本発明の一態様は、乳蛋白質を、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理して、遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物を生成する工程、該加水分解物中の遊離チロシンを結晶化する工程、及び該結晶化した遊離チロシンを該加水分解物から除去する工程を含む、乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物の製造方法である。
まず、前記加水分解物を生成する工程について説明する。
本工程で使用できる前記乳蛋白質は、哺乳動物(ヒトを除く。)から採取された乳に含まれる蛋白質であって、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理することにより、遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水
分解物が生成できれば、特に制限されない。
前記哺乳動物としては、例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマが挙げられる。前記乳は、食用に通常用いられる乳であることが好ましい。前記乳蛋白質の具体例としては、カゼイン、ホエー蛋白質が挙げられる。前記ホエー蛋白質とは、ホエー(乳清)に含まれる蛋白質である。前記カゼインとしては、α-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインが挙げられる。また、前記カゼインは、食用カゼインであってよい。また、前記カゼインは、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム等の形態であってよい。
また、前記乳蛋白質は、前記乳蛋白質を含む原料(例えば、炭水化物、蛋白質、ミネラル等を含む。)の形態であってもよい。前記原料は、常法により調製したものであってよく、市販品であってもよい。また、前記原料中の前記乳蛋白質の濃度は、最終的に得られる前記乳蛋白質の加水分解物中に、前記蛋白質由来のアミノ酸やペプチドが豊富に含まれることから、好ましくは50%以上である。
また、前記乳蛋白質は、該原料から分離された分離物、精製された精製物、又は濃縮された濃縮物であってもよく、また、このような分離物、精製物、及び濃縮物から成る群から選択される2以上の混合物であってもよい。いずれも、常法により調製したものであってよく、市販品であってもよい。
また、前記乳蛋白質1gあたりの全チロシン残基の含量は、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理することにより、遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物が生成できれば、特に制限されないが、例えば、25~60mgである。
前記乳蛋白質は水(例えば、脱イオン水)などの溶媒に溶解し、本工程における前記酵素処理に供することができる。前記酵素処理に供する溶液中の前記乳蛋白質の濃度は、前記乳蛋白質から遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物が生成する限り特に制限されないが、好ましくは2.5~20%である。
前記酵素処理に供する溶液のpHは、使用する酵素の至適pH等に従って調整することができ、例えば6.0~10.0である。pHの調整は、酸性化剤やアルカリ剤などのpH調整剤を用いた常法に従えばよく、アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
また、前記酵素処理に供する溶液の温度は、使用する酵素の至適温度等に従って設定することができる。尚、前記酵素処理中に微生物の増殖が懸念される場合には、必要に応じて、使用する酵素の至適温度よりも高温域又は低温域の温度に設定してもよいが、酵素処理の効率を維持するために、40~65℃に設定することが好ましい。
尚、本態様は、上記のようにして前記酵素処理に供する溶液を準備後、前記酵素処理の前に滅菌工程を含んでもよい。滅菌方法としては、例えば、加熱滅菌法が挙げられる。具体例としては、65~140℃で2秒間~30分間の加熱による滅菌が挙げられる。
また、本態様は、前記滅菌後、前記酵素処理の前に溶液のpHを、例えば6.0~10.0に調整するなどのpH調整工程を含んでもよい。pHの調整は、酸性化剤やアルカリ剤などのpH調整剤を用いた常法に従えばよく、アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
前記乳蛋白質は、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理される。いずれの酵素も、前記乳蛋白質から遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50
重量%以上である加水分解物が生成する限り特に制限されないが、好ましくは食品衛生上無害なものである。また、市販品であってもよい。
前記エキソペプチダーゼ活性を有する酵素は、エキソペプチダーゼ活性のみを有する酵素であってもよいし、エキソペプチダーゼ活性及びエンドペプチダーゼ活性を有する酵素であってもよい。
尚、エンドペプチダーゼ活性を有する酵素は、通常、エンドペプチダーゼ活性のみを有する酵素である。
エキソペプチダーゼ活性及びエンドペプチダーゼ活性を有する酵素としては、例えば、パンクレアチン(例えば、パンクレアチン×4.0滅菌品(天野エンザイム社製))、プロテアーゼAアマノ(天野エンザイム社製)、プロテアックス(天野エンザイム社製)、プロテアーゼMアマノ(天野エンザイム社製)、フレーバーザイム(ノボザイムズ社製)、スミチームLP-50(新日本化学社製)、スミチームAP(新日本化学社製)が挙げられる。
エキソペプチダーゼ活性のみを有する酵素としては、スミチームFLAP(新日本化学製)、FD-H(森永乳業製)が挙げられる。尚、FD-Hは、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)LHE-511由来の酵素である(J. Dairy Sci., Vol.
75, No. 1, 1992)。
エンドペプチダーゼ活性を有する酵素(エンドペプチダーゼ活性のみを有する酵素)としては、プロテアーゼNアマノ(天野エンザイム社製)、パパインW-40(天野エンザイム社製)、ニュートラーゼ(ノボザイムズ社製)、PTN6.0S(ノボザイムズ社製)、ビオプラーゼSP-20(ナガセケムテックス社製)が挙げられる。
前記酵素処理に供する溶液に添加する各酵素の終濃度は、前記乳蛋白質から遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物が生成する限り特に制限されない。例えば、各酵素の活性(例えば、単位としてユニットで表される活性)に基づき、前記酵素処理の際のpHや温度、処理時間を加味して、予備的に前記乳蛋白質に対して種々の条件で酵素処理をし、前記乳蛋白質から遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物が生成するような終濃度を適宜設定することができる。このとき、例えば、酵素の終濃度を小さめに設定した場合でも、処理時間を長めに設定することで所望の加水分解物を得ることができる。
前記酵素処理に供する溶液は、酵素処理開始の時点で、前記エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素を含んでもよいが、酵素処理開始の時点ではエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素のみを含み、一定時間の酵素処理後にエキソペプチダーゼ活性を有する酵素を添加するという段階的な酵素処理を行うこともできる。
前記酵素処理の時間は、前記乳蛋白質から遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物が生成する限り特に制限されないが、酵素処理開始の時点から、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上であり、一方で、好ましくは20時間以下である。尚、前述したように前記酵素処理中に微生物の増殖が懸念される場合には、8時間以上20時間以下とするのが好ましい。
前記酵素処理により、遊離チロシンの含量が前記乳蛋白質中の全チロシン残基に対して
50%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは94%以上である加水分解物が生成する。遊離チロシンの濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により経時的に測定できる。そのため、遊離チロシンの含量が前記乳蛋白質中の全チロシン残基に対していかほどであるかを算出することができる。前記HPLCとしては、例えば、Inertosil PREP-ODSカラム(GLサイエンス社製。6.5×250mm)を装着したHPLC(島津製作所社製)が挙げられる。
次に、前記加水分解物中の遊離チロシンを結晶化する工程について説明する。
本工程では、前記加水分解物中の遊離チロシンを結晶化することができれば、その方法は特に制限されないが、前記加水分解物中の遊離チロシンは溶解度が小さいため、好ましくは、前記加水分解物を冷却して前記加水分解物中の遊離チロシンを結晶化する方法が挙げられる。
前記冷却の方法は常法に従えばよく、例えば、プレートクーラーや、冷蔵庫、低温室に前記加水分解物を設置することなどが挙げられる。必要に応じて攪拌をしてもよい。
前記冷却時の温度は、遊離チロシンがより多く結晶化することから、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下であり、一方で、凍結を防ぐことから、例えば0℃以上である。
前記冷却時間は、遊離チロシンがより多く結晶化することから、好ましくは30分間以上、より好ましくは2時間以上であり、一方で、、上限は特に制限されないが、例えば、24時間以下である。
本態様は、前記加水分解物を生成する工程後、前記結晶化工程前に、酵素の失活及び/又は除去により前記酵素処理を停止する工程を含んでもよい。
前記失活方法としては、例えば、加熱処理方法が挙げられる。使用した酵素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができるが、具体例としては、80~130℃で2秒間~30分間の加熱処理が挙げられる。
前記除去方法としては、例えば、限外濾過(ウルトラフィルトレーション)膜等を用いた方法が挙げられる。いずれも常法に従うことができる。
また、前記加水分解物中の遊離チロシンを効率よく結晶化することができるため、本態様は、前記加水分解物を生成する工程後、前記結晶化工程前に、前記加水分解物を濃縮する工程を含んでもよい。尚、本態様が前記酵素処理を停止する工程を含む場合には、該工程の後に当該濃縮工程を含んでもよい。
前記加水分解物を濃縮する方法としては、例えば、濃縮機や逆浸透膜を用いた濃縮方法が挙げられる。いずれも常法に従うことができる。例えば、固形分が10%以上、60%以下となるまで前記加水分解物を濃縮することが挙げられる。
次に、前記結晶化した遊離チロシンを前記加水分解物から除去する工程について説明する。
前記結晶化した遊離チロシンを前記加水分解物から除去する方法としては、例えば、硅藻土濾過、精密濾過(マイクロフィルトレーション)、限外濾過、遠心分離が挙げられる。いずれも常法に従うことができる。
また、遊離チロシンを前記加水分解物からより高度に除去する方法としては、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーのほか、活性炭若しくは吸着樹脂による吸着方法を単独又は組み合わせた方法が挙げられる。いずれも常法に従うことができる。
前記ゲル濾過クロマトグラフィーにおけるゲル濾過剤としては、例えば、排除限界分子量5000以下、好ましくは2000以下のものが挙げられる。また、チロシンを吸着する性質を有する疎水性側鎖として、例えば、カルボキシル基、ブチル基、フェニル基、疎水性部位を有するものが挙げられる。前記ゲル濾過剤としては、例えば、セファデックス
G-10(ファルマシア社製)、セルロファインGCL-25(生化学工業社製)が挙げられる。
前記活性炭としては、例えば、ホクエツZN(味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
前記吸着樹脂としては、例えば、多孔性合成吸着剤が挙げられる。前記多孔性合成吸着剤としては、例えば、KS-35(北越炭素工業社製)、ダイヤイオンHP(三菱化学社製)、アンバーライトXAD(ローム・アンド・ハース社製)が挙げられる。
本工程により前記加水分解物から除去された前記結晶化した遊離チロシンは、その純度が高く、好ましくは90%以上であり、高純度チロシンとして多くの用途に利用することができる。
以上の工程により、前記乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下、好ましくは19mg以下、より好ましくは11mg以下である、乳蛋白質の加水分解物が得られる。
前期乳蛋白質の加水分解物の分子量は、前記乳蛋白質から遊離チロシンが生成し、該遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物が生成する限り特に制限されないが、効率的にチロシンを遊離させる観点から、ある程度、蛋白質を低分子化する必要があるため、平均分子量200~2000が好ましく、平均分子量200~400がより好ましい。当該平均分子量は、例えば、次のようにして算出することができる。
高速液体クロマトグラフィーにより分子量分布を測定する(宇井信生ら編、「タンパク質・ペプチドの高速液体クロマトグラフィー」、化学増刊第102号、第241頁、株式会社化学同人、1984年)。
具体的には、ポリハイドロキシエチル・アスパルタミド・カラム[Poly Hydroxyethyl Aspartamide Column:ポリ・エル・シー(PolyLC社製)。直径4.6mm及び長さ220mm]を用い、20mM塩化ナトリウム、50mMギ酸により溶出速度0.5mL/minで溶出する。検出はUV検出器(島津製作所社製)を用い、データ解析はGPC分析システム(島津製作所社製)を使用する。
〔各分子量範囲の割合(%)〕=〔分子量分布における各分子量範囲の面積/分子量分布における加水分解物の全面積(全エリア)〕
平均分子量(Da:ダルトン)は、以下の数平均分子量の概念により求めるものである。数平均分子量(Number Average of Molecular Weight)は、例えば文献(社団法人高分子学会編、「高分子科学の基礎」、第116~119頁、株式会社東京化学同人、1978年)に記載されているとおり、高分子化合物の分子量の平均値を次のとおり異なる指標に基づき示すものである。すなわち、タンパク質加水分解物等の高分子化合物は不均一な物質であり、かつ分子量に分布があるため、タンパク質加水分解物の分子量は、物理化学的に取り扱うためには、平均分子量で示す必要があり、数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、分子の個数についての平均であり、ペプチド鎖iの分子量がMiであり、その分子数をNiとすると、次の数式により定義される。
Figure 2022032320000001
本態様は、前記結晶化した遊離チロシンを前記加水分解物から除去する工程後、乾燥して粉末にする工程を含んでもよい。乾燥して粉末にする方法としては、例えば、噴霧乾燥法などが挙げられる。
本発明の他の一態様は、乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物である。
その詳細は、前記態様についての記載を援用する。
上記のようにして製造された乳蛋白質の加水分解物は、飲食品組成物の素材として用いることができる。すなわち、本発明の他の一態様は、乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物を含む、飲食品組成物である。
前記飲食品組成物は、上記のようにして製造された乳蛋白質の加水分解物を含有する限り特に制限されない。飲食品組成物としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、飲食品であってもよく、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、発酵乳、育児用ミルク、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、グミ、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品);栄養補助食品等が挙げられる。
本発明の飲食品組成物は、上記のようにして製造された乳蛋白質の加水分解物を通常の飲食品の原料に添加することにより製造することができ、上記のようにして製造された乳蛋白質の加水分解物を添加すること以外は、通常の飲食品と同様にして製造することができる。上記のようにして製造された乳蛋白質の加水分解物の添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で行ってもよい。また、搾乳された母乳や調製乳に添加する態様も挙げられ、添加後の乳を乳幼児に摂取させることも想定される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[試験例1]
本試験は、乳蛋白質の加水分解物中の全チロシン残基の含量を低減できる条件を検討するために実施した。
食用カゼイン[Alacid 720。フォンテラ社製。食用カゼイン含量:88%、全チロシン
残基の含量:51mg/g食用カゼイン]を乳蛋白質として使用した。食用カゼイン10kgを10%濃度で脱イオン水に分散し、10%水酸化ナトリウム溶液でpH7.0に調整して溶解した。得られた溶解液を80℃で10分間の加熱殺菌をし、50℃に保持し、10%水酸化ナトリウム溶液でpH9.0に調整し、パンクレアチン×4.0滅菌品(天野エンザイム社製)300g及びFD-H(森永乳業製)150gを添加した。Inertosil PREP-ODSカラム(GLサイエンス社製。6.5×250mm)を装着したHPLC(島津製作所社製)により、前記食用カゼインの加水分解物中の遊離チロシン濃度を経時的に測定しながら加水分解反応を行い、遊離チロシンの含量が前記食用カゼイン中の全チロシン残基に対して一定の%となった時点で、90℃、10分間の加熱処理を行うことで酵素を失活させた。得られた加水分解物を固形分12%に濃縮し、10℃で4時間保持し、得られた濃縮物を珪藻土シリカ300SA(中央シリカ製)により沈殿物を除去し、噴霧乾燥し、粉末状の前記食用カゼインの加水分解物を得た。
結果を表1に示す。表1から明らかなとおり、遊離チロシンの含量が前記食用カゼイン中の全チロシン残基に対して50%以上となるまで加水分解を行うと、珪藻土シリカ300SAによる濾過後における、前記食用カゼインの加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が、前記食用カゼイン1gあたりの全チロシン残基の含量と比較して、大きく低減できた。また、その他の各アミノ酸の含量については、前記食用カゼインが含む当該各アミノ酸の含量と比較して、大きな違いはなかった。
Figure 2022032320000002
[実施例1]
カゼインカルシウム[Tatua 400。タツア社製。蛋白質含量:93%、全チロシン残基
の含量:54mg/gカゼインカルシウム]を乳蛋白質として使用した。カゼインカルシウム10kgを12%濃度で脱イオン水に溶解し、121℃で1分間の加熱殺菌をし、55℃に保持し、10%水酸化ナトリウム溶液でpH8.5に調整し、パンクレアチン×4.0滅菌品(天野エンザイム社製)300g及びFD-H(森永乳業社製)100gを添加し、11時間の加水分解を行った。当該加水分解により、遊離チロシンの含量が前記カゼインカルシウム中の全チロシン残基に対して81%となった。その後、得られた加水分解物を90℃、15分間の加熱処理を行うことで酵素を失活させ、濃縮機にて固形分20%となるまで濃縮し、5℃で6時間保持した。次いで、得られた濃縮物を精密濾過膜により濾過を行い、透過液を回収後、得られた透過液を噴霧乾燥し、8.3kgの粉末状の前記カゼインカルシウムの加水分解物を得た。得られた前記カゼインカルシウムの加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量は14mgであった。
[実施例2]
カゼインナトリウム[Tatua 100。タツア社製。蛋白質含量:93%、全チロシン残基
の含量:54mg/gカゼインナトリウム]を乳蛋白質として使用した。カゼインナトリウム10kgを10%濃度で脱イオン水に溶解し、90℃で6分間の加熱殺菌をし、52℃に保持し、10%水酸化カリウム溶液でpH8.0に調整し、パンクレアチン×4.0
滅菌品(天野エンザイム社製)400g、プロテアックス(天野エンザイム社製)100g及びFD-H(森永乳業社製)150gを添加し、17時間の加水分解を行った。当該加水分解により、遊離チロシンの含量が前記カゼインナトリウム中の全チロシン残基に対して93%となった。その後、得られた加水分解物を95℃、10分間の加熱処理を行うことで酵素を失活させ、濃縮機にて固形分20%となるまで濃縮し、3℃で10時間保持した。次いで、得られた濃縮物を珪藻土により濾過を行い、透過液を回収後、得られた透過液を噴霧乾燥し、8.2kgの粉末状の前記カゼインナトリウムの加水分解物を得た。得られた前記カゼインナトリウムの加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量は5mgであった。
[製造例1]
クエン酸でpHを3.6に調整し、砂糖110g、乳酸カルシウム2g、乳化剤1g、大豆多糖類10gを含む0.8Lの精製水に、実施例2で得られた粉末状の前記カゼインナトリウムの加水分解物40gを80℃で溶解後、冷却して酸性飲料を得た。
本発明は、チロシンの摂取量の制限が必要な対象に対する栄養補給を目的とした飲食品などに応用することが可能である。

Claims (5)

  1. 乳蛋白質を、エキソペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素及びエンドペプチダーゼ活性を有する1種以上の酵素で処理して、遊離チロシンの含量が該乳蛋白質中の全チロシン残基に対して50重量%以上である加水分解物を生成する工程、
    該加水分解物中の遊離チロシンを結晶化する工程、及び
    該結晶化した遊離チロシンを該加水分解物から除去する工程
    を含む、
    乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物の製造方法。
  2. 前記乳蛋白質がカゼインである、請求項1に記載の方法。
  3. 乳蛋白質の加水分解物1gあたりの全チロシン残基の含量が35mg以下である、乳蛋白質の加水分解物。
  4. 前記乳蛋白質がカゼインである、請求項3に記載の加水分解物。
  5. 請求項3又は4に記載の加水分解物を含む、飲食品組成物。
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