JP2022029356A - 噴射孔プレート、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及び噴射孔プレートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定した吐出性能を得ることができる噴射孔プレート、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及び噴射孔プレートの製造方法を提供する。【解決手段】本開示の一態様に係るノズルプレート54は、インクを吐出するノズル孔100が形成されるとともに、-Z側を向く表面54aを有する。ノズルプレート54において、ノズル孔100の内周面のうちの少なくとも一部の表面エネルギーは、表面54aでの表面エネルギーよりも小さい。【選択図】図5
Description
本開示は、噴射孔プレート、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及び噴射孔プレートの製造方法に関する。
従来、記録紙等の被記録媒体にインク滴を吐出して、被記録媒体に画像や文字を記録する装置として、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタがある。インクジェットヘッドは、チャネルが形成されたヘッドチップと、ヘッドチップに接合されたノズルプレートと、を備えている。
インクジェットヘッドでは、チャネル内の容積が変化することで、チャネル内のインクがノズルプレートに形成されたノズル孔を通じて吐出される。
インクジェットヘッドでは、チャネル内の容積が変化することで、チャネル内のインクがノズルプレートに形成されたノズル孔を通じて吐出される。
ここで、例えば下記特許文献1には、ノズルプレート表面(吐出面)のうちノズル孔の周囲に、ノズル孔が開口する窪みが形成された構成が開示されている。下記特許文献1の構成では、吐出面のうち、窪みの内面を親インク性表面とし、窪みの外側を撥インク性表面としている。
この構成によれば、吐出面における親インク性表面(窪み内面)にインク膜が形成されることで、インク滴の吐出方向が安定するとされている。
この構成によれば、吐出面における親インク性表面(窪み内面)にインク膜が形成されることで、インク滴の吐出方向が安定するとされている。
しかしながら、上述した従来技術にあっては、吐出面上においてノズル孔の周囲に均一な厚さのインク膜を形成する点で未だ改善の余地があった。仮にノズル孔の周囲の一部のみにインク又はインクの固化物(以下、まとめて一部付着物という。)が付着している場合には、一部付着物によってノズル孔周囲の表面エネルギーが不均一になる。そのため、インク滴に作用する力(表面張力)のバランスが崩れるため、インク滴が一部付着物に引っ張られる。その結果、インク滴に飛翔曲がりが生じる等、吐出不良に繋がる可能性がある。
本開示は、安定した吐出性能を得ることができる噴射孔プレート、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及び噴射孔プレートの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係る噴射孔プレートは、液体を噴射する噴射孔が形成されるとともに、液体の噴射方向で下流側を向く噴射面を有する噴射孔プレートであって、前記噴射孔の内面のうちの少なくとも一部である撥液性付与部の表面エネルギーは、前記噴射面での表面エネルギーよりも小さい。
(1)本開示の一態様に係る噴射孔プレートは、液体を噴射する噴射孔が形成されるとともに、液体の噴射方向で下流側を向く噴射面を有する噴射孔プレートであって、前記噴射孔の内面のうちの少なくとも一部である撥液性付与部の表面エネルギーは、前記噴射面での表面エネルギーよりも小さい。
本態様によれば、噴射面での表面エネルギーが噴射孔の内面の表面エネルギーよりも大きくなる。これにより、液体噴射時には、噴射面に付着した液体が噴射面上に濡れ広がり易い。また、噴射停止時には、噴射孔内のうち噴射面付近に存在する液体が、噴射孔の内面と噴射面との表面エネルギーの違いによって噴射面に引っ張られる。
その結果、噴射面上に付着した液体等が噴射面上に局所的に滞留するのを抑制し、噴射面上に均一な液体膜が形成され易い。この場合、噴射面上のうちノズル孔の周囲の表面エネルギーをノズル孔の全周に亘って均一に維持し易い。そのため、噴射孔から噴射される液滴には、液体膜を通過する際、液体膜によって均一な表面張力が作用する。その結果、液滴の飛翔曲がりを抑制して、噴射性能の向上を図ることができる。
一方、噴射孔の内面の表面エネルギーが、噴射面の表面エネルギーよりも小さいことで、噴射孔内と噴射面との間での液切れ性を向上できる。これにより、噴射面に付着した液体が噴射孔内に進入するのを抑制できる。また、噴射面に親液領域を形成した場合であっても、親液領域への液体の過剰な流出を抑制できる。さらに、噴射停止時において、噴射孔内で液体が局所的に存在するのを抑制できる。そのため、噴射孔内での液体の固化を抑制し、噴射孔内に残存する液体によって適正なメニスカスが形成され易くなる。
その結果、噴射面上に付着した液体等が噴射面上に局所的に滞留するのを抑制し、噴射面上に均一な液体膜が形成され易い。この場合、噴射面上のうちノズル孔の周囲の表面エネルギーをノズル孔の全周に亘って均一に維持し易い。そのため、噴射孔から噴射される液滴には、液体膜を通過する際、液体膜によって均一な表面張力が作用する。その結果、液滴の飛翔曲がりを抑制して、噴射性能の向上を図ることができる。
一方、噴射孔の内面の表面エネルギーが、噴射面の表面エネルギーよりも小さいことで、噴射孔内と噴射面との間での液切れ性を向上できる。これにより、噴射面に付着した液体が噴射孔内に進入するのを抑制できる。また、噴射面に親液領域を形成した場合であっても、親液領域への液体の過剰な流出を抑制できる。さらに、噴射停止時において、噴射孔内で液体が局所的に存在するのを抑制できる。そのため、噴射孔内での液体の固化を抑制し、噴射孔内に残存する液体によって適正なメニスカスが形成され易くなる。
(2)上記(1)の態様の噴射孔プレートにおいて、前記噴射孔の内面の表面エネルギーは、前記噴射孔の内面のうちの少なくとも前記噴射面との境界部分を含む領域において、前記噴射面での表面エネルギーよりも小さいことが好ましい。
本態様によれば、上述した作用効果をより奏功できる。
本態様によれば、上述した作用効果をより奏功できる。
(3)上記(1)又は(2)の態様の噴射孔プレートにおいて、前記撥液性付与部には、撥液膜が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、例えば撥液性を有する噴射孔プレートの噴射面に対して親液膜を形成することで、噴射孔の内面と噴射面とで表面エネルギーの差を設ける場合に比べ、噴射孔の内面に均一、かつ適正な撥液性能を付与し易い。また、噴射孔プレート自体の表面エネルギーに関わらず、噴射孔の内面に撥液性能を付与できるので、噴射孔プレートの材料選択の自由度を向上させることができる。
本態様によれば、例えば撥液性を有する噴射孔プレートの噴射面に対して親液膜を形成することで、噴射孔の内面と噴射面とで表面エネルギーの差を設ける場合に比べ、噴射孔の内面に均一、かつ適正な撥液性能を付与し易い。また、噴射孔プレート自体の表面エネルギーに関わらず、噴射孔の内面に撥液性能を付与できるので、噴射孔プレートの材料選択の自由度を向上させることができる。
(4)上記(3)の態様の噴射孔プレートにおいて、前記撥液膜は、前記噴射孔の内面全体を被覆していることが好ましい。
本態様によれば、噴射孔の内面での表面エネルギーを全体に亘って均一にし易い。これにより、噴射孔内において表面エネルギーのバランスが崩れるのを抑制できるので、噴射性能をより確実に向上させることができる。
本態様によれば、噴射孔の内面での表面エネルギーを全体に亘って均一にし易い。これにより、噴射孔内において表面エネルギーのバランスが崩れるのを抑制できるので、噴射性能をより確実に向上させることができる。
(5)上記(3)又は(4)の態様の噴射孔プレートにおいて、前記撥液膜の厚さは、前記噴射方向の上流側に向かうに従い薄くなっていることが好ましい。
本態様によれば、噴射孔の内面のうち少なくとも噴射面との境界部分に撥液膜を確実に形成できる。これにより、例えばワイパが噴射孔の開口縁上を通過する際に撥液膜が摩耗する場合であっても、撥液膜を長期に亘って残存させることができる。すなわち、ワイパによる払拭動作に対する撥液膜の耐久性を向上させることができる。
しかも、撥液膜の形成時において、例えば基材の第1面側から撥液処理を行った際には、噴射孔の内面において噴射方向の下流側から上流側にかけて撥液膜が定着していき易い。その結果、噴射孔の内面において噴射方向の上流側での撥液膜の厚さが薄くなる。この場合、噴射孔の内面のうち噴射方向の上流側での撥液膜の厚さを薄くすることで、基材における第1面の裏面側への撥液膜の回り込みを抑制できる。
本態様によれば、噴射孔の内面のうち少なくとも噴射面との境界部分に撥液膜を確実に形成できる。これにより、例えばワイパが噴射孔の開口縁上を通過する際に撥液膜が摩耗する場合であっても、撥液膜を長期に亘って残存させることができる。すなわち、ワイパによる払拭動作に対する撥液膜の耐久性を向上させることができる。
しかも、撥液膜の形成時において、例えば基材の第1面側から撥液処理を行った際には、噴射孔の内面において噴射方向の下流側から上流側にかけて撥液膜が定着していき易い。その結果、噴射孔の内面において噴射方向の上流側での撥液膜の厚さが薄くなる。この場合、噴射孔の内面のうち噴射方向の上流側での撥液膜の厚さを薄くすることで、基材における第1面の裏面側への撥液膜の回り込みを抑制できる。
(6)上記(3)から(5)の何れかの態様の噴射孔プレートにおいて、前記撥液膜と前記噴射孔の内面との間には、前記撥液膜と前記噴射孔の内面とを密着させるプライマ層が介在していることが好ましい。
本態様によれば、撥液膜と噴射孔の内面との間にプライマ層が介在することで、撥液膜の密着性を向上させることができる。その結果、撥液膜の耐久性を向上させることができる。
本態様によれば、撥液膜と噴射孔の内面との間にプライマ層が介在することで、撥液膜の密着性を向上させることができる。その結果、撥液膜の耐久性を向上させることができる。
(7)上記(6)の態様の噴射孔プレートにおいて、前記プライマ層は、前記撥液膜よりも表面エネルギーが大きくなっており、前記プライマ層は、前記噴射面上に形成されるとともに、前記噴射面上のうちの前記噴射孔の開口部を含んだ領域で露出していることが好ましい。
本態様によれば、プライマ層によって噴射面に親液性を付与できる。これにより、噴射孔プレート自体を親液領域として利用する場合に比べ、均一、かつ適正な親液性能を付与し易い。また、噴射孔プレート自体の表面エネルギーに関わらず、親液領域を形成することができるので、噴射孔プレートの材料選択の自由度を向上させることができる。
本態様によれば、プライマ層によって噴射面に親液性を付与できる。これにより、噴射孔プレート自体を親液領域として利用する場合に比べ、均一、かつ適正な親液性能を付与し易い。また、噴射孔プレート自体の表面エネルギーに関わらず、親液領域を形成することができるので、噴射孔プレートの材料選択の自由度を向上させることができる。
(8)上記(1)から(7)の何れかの態様の噴射孔プレートにおいて、前記噴射孔は、前記噴射面に沿う第1方向に間隔をあけて複数形成され、前記噴射面は、前記噴射孔の周囲をそれぞれ取り囲み、前記撥液性付与部の表面エネルギーよりも表面エネルギーが大きい親液領域と、隣り合う前記親液領域同士の間を区画し、前記親液領域よりも表面エネルギーが小さい撥液領域と、を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、噴射孔毎に親液領域を設けることで、液体噴射時において各噴射孔間での相互干渉を軽減できる。そのため、噴射性能を向上させ易い。
本態様によれば、噴射孔毎に親液領域を設けることで、液体噴射時において各噴射孔間での相互干渉を軽減できる。そのため、噴射性能を向上させ易い。
(9)上記(1)から(7)の何れかの上記態様の噴射孔プレートにおいて、前記噴射孔は、前記噴射面に沿う第1方向に間隔をあけて複数形成され、前記噴射面は、複数の前記噴射孔が開口するとともに、前記第1方向に連続的に延び、前記撥液性付与部の表面エネルギーよりも表面エネルギーが大きい親液領域と、前記噴射面に沿う方向のうち前記第1方向に交差する第2方向において、前記親液領域の両側に位置し、前記親液領域よりも表面エネルギーが小さい撥液領域と、を含んでいることが好ましい。
本態様によれば、噴射面上における液体の広がりを撥液領域で規制できる。これにより、所望の範囲で所望の厚さの液体膜を形成し易い。
しかも、第1方向で隣り合う噴射孔間に撥液領域が存在しないので、例えばワイパの幅を親液領域の幅以下に設定することで、ワイパが撥液領域を通過しないように噴射面上を払拭できる。したがって、親液領域を均一に払拭できるため、親液領域に古いインクやインクの固化物、その他塵埃等が残存するのを抑制できる。また、撥液領域の摩耗等を抑制できる。
本態様によれば、噴射面上における液体の広がりを撥液領域で規制できる。これにより、所望の範囲で所望の厚さの液体膜を形成し易い。
しかも、第1方向で隣り合う噴射孔間に撥液領域が存在しないので、例えばワイパの幅を親液領域の幅以下に設定することで、ワイパが撥液領域を通過しないように噴射面上を払拭できる。したがって、親液領域を均一に払拭できるため、親液領域に古いインクやインクの固化物、その他塵埃等が残存するのを抑制できる。また、撥液領域の摩耗等を抑制できる。
(10)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(9)の何れかの態様の噴射孔プレートを備えている。
本態様によれば、上記態様の噴射孔プレートを備えているため、長期に亘って噴射性能に優れた信頼性の高い液体噴射ヘッドを提供できる。
本態様によれば、上記態様の噴射孔プレートを備えているため、長期に亘って噴射性能に優れた信頼性の高い液体噴射ヘッドを提供できる。
(11)本開示の一態様に係る液体噴射装置は、上記(10)の態様の液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、上記態様の噴射孔プレートを備えているため、長期に亘って噴射性能に優れた信頼性の高い液体噴射装置を提供できる。
本態様によれば、上記態様の噴射孔プレートを備えているため、長期に亘って噴射性能に優れた信頼性の高い液体噴射装置を提供できる。
(12)本開示の一態様に係る噴射孔プレートの製造方法は、貫通孔を有する基材に対して撥液処理を行う第1工程と、前記基材のうち厚さ方向を向く第1面のうち、少なくとも前記貫通孔の周囲に親液処理を行う第2工程と、を備える。
本態様によれば、噴射孔の内面に対して容易に撥液性を付与した上で、噴射孔プレートの噴射面の所望の領域に親液性を付与できる。
本態様によれば、噴射孔の内面に対して容易に撥液性を付与した上で、噴射孔プレートの噴射面の所望の領域に親液性を付与できる。
(13)上記(12)態様の噴射孔プレートの製造方法において、前記第1工程は、前記基材のうち少なくとも前記貫通孔の内面上及び前記第1面上に、前記基材よりも表面エネルギーが小さい撥液膜を形成し、前記第2工程は、前記撥液膜のうち少なくとも前記貫通孔の周囲に位置する前記撥液膜を擦過して除去することが好ましい。
本態様によれば、基材の第1面において、親液性を付与する部分に形成された撥液膜を擦過処理により除去するだけで噴射孔プレートに親液性を付与できる。これにより、従来のように窪み内に親液膜を形成する場合と異なり、フォトレジストによるパターニング等を行う必要がない。その結果、製造効率の向上や、低コスト化を図ることができる。
本態様によれば、基材の第1面において、親液性を付与する部分に形成された撥液膜を擦過処理により除去するだけで噴射孔プレートに親液性を付与できる。これにより、従来のように窪み内に親液膜を形成する場合と異なり、フォトレジストによるパターニング等を行う必要がない。その結果、製造効率の向上や、低コスト化を図ることができる。
本開示の一態様によれば、安定した吐出性能を得ることができる。
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態のプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インク供給機構4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、走査機構6と、クリーニング機構7と、を備えている。
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態のプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インク供給機構4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、走査機構6と、クリーニング機構7と、を備えている。
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向(第1方向)は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向(第2方向)は走査機構6の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本明細書において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インク供給機構4は、インクが収容されたインクタンク15と、インクタンク15とインクジェットヘッド5とを接続するインク配管16と、を備えている。インクタンク15には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク15に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。なお、インクとしては、溶剤に水を使用した水性インクを用いることも可能である。
インク供給機構4は、インクが収容されたインクタンク15と、インクタンク15とインクジェットヘッド5とを接続するインク配管16と、を備えている。インクタンク15には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク15に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。なお、インクとしては、溶剤に水を使用した水性インクを用いることも可能である。
走査機構6は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。具体的に、インクジェットヘッド5は、キャリッジ23に搭載された状態で、印字領域Sとクリーニング領域Cとの間を移動する。印字領域Sとは、被記録媒体P(搬送機構2)に対して上方の領域である。インクジェットヘッド5は、被記録媒体Pへの印字動作の際に印字領域SをY方向に往復移動する。
クリーニング領域Cとは、印字領域Sに対して+Y側であって、クリーニング機構7に対して上方の領域である。インクジェットヘッド5は、メンテナンス時や駆動停止時等にクリーニング領域Cまで移動する。なお、クリーニング機構7については後述する。
クリーニング領域Cとは、印字領域Sに対して+Y側であって、クリーニング機構7に対して上方の領域である。インクジェットヘッド5は、メンテナンス時や駆動停止時等にクリーニング領域Cまで移動する。なお、クリーニング機構7については後述する。
<インクジェットヘッド5>
図2は、インクジェットヘッド5の斜視図である。以下の説明では一のインクジェットヘッド5を例にしてインクジェットヘッド5の詳細について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ23(図1参照)に固定されるベースフレーム31と、ベースフレーム31に固定されたヘッドチップ32と、インク供給機構4(インク配管16)及びヘッドチップ32間を接続するインク供給部33と、ヘッドチップ32に駆動電圧を印加する制御部34と、を備えている。
図2は、インクジェットヘッド5の斜視図である。以下の説明では一のインクジェットヘッド5を例にしてインクジェットヘッド5の詳細について説明する。
図2に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ23(図1参照)に固定されるベースフレーム31と、ベースフレーム31に固定されたヘッドチップ32と、インク供給機構4(インク配管16)及びヘッドチップ32間を接続するインク供給部33と、ヘッドチップ32に駆動電圧を印加する制御部34と、を備えている。
<ヘッドチップ32>
図3は、ヘッドチップ32の斜視図である。図4は、ヘッドチップ32の分解斜視図である。
図3、図4に示すヘッドチップ32は、後述する吐出チャネル55における延在方向(Z方向)の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのものである。具体的に、ヘッドチップ32は、アクチュエータプレート51と、カバープレート52と、支持プレート53と、ノズルプレート(噴射孔プレート)54と、を備えている。
図3は、ヘッドチップ32の斜視図である。図4は、ヘッドチップ32の分解斜視図である。
図3、図4に示すヘッドチップ32は、後述する吐出チャネル55における延在方向(Z方向)の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのものである。具体的に、ヘッドチップ32は、アクチュエータプレート51と、カバープレート52と、支持プレート53と、ノズルプレート(噴射孔プレート)54と、を備えている。
アクチュエータプレート51には、複数のチャネル55,56がX方向に間隔をあけて並設されている。上述した複数のチャネル55,56は、インクが充填される吐出チャネル55、及びインクが充填されない非吐出チャネル56(図4参照)である。吐出チャネル55及び非吐出チャネル56は、X方向に交互に並んで配置されている。なお、チャネル55内面には、図示しない駆動電極が形成されている。
カバープレート52は、アクチュエータプレート51の上端部(+Z側端部)を露出させた状態で、アクチュエータプレート51に対して+Y側から接合されている。カバープレート52には、共通インク室61と、複数のスリット62と、が形成されている。共通インク室61には、上述したインク供給部33を通じてインクが流入する。スリット62は、共通インク室61のうち、吐出チャネル55とY方向で対向する位置に形成されている。スリット62は、共通インク室61内と各吐出チャネル55内とを各別に連通している。一方、非吐出チャネル56は、共通インク室61内には連通していない。
支持プレート53は、アクチュエータプレート51及びカバープレート52を支持するともに、ノズルプレート54を支持している。支持プレート53には、Z方向に貫通するとともにX方向に沿って延びる嵌合孔53aが形成されている。アクチュエータプレート51及びカバープレート52は、嵌合孔53a内に嵌め込まれた状態で支持プレート53に支持されている。
<ノズルプレート54>
図5は、図6のV-V線に沿う断面図である。
図4、図5に示すように、ノズルプレート54は、アクチュエータプレート51、カバープレート52及び支持プレート53のそれぞれの下面(-Z側端面)に亘って、例えば接着剤等により固定されている。図5に示すように、ノズルプレート54は、プレート本体71と、第1撥液膜72と、第2撥液膜73と、を備えている。
図5は、図6のV-V線に沿う断面図である。
図4、図5に示すように、ノズルプレート54は、アクチュエータプレート51、カバープレート52及び支持プレート53のそれぞれの下面(-Z側端面)に亘って、例えば接着剤等により固定されている。図5に示すように、ノズルプレート54は、プレート本体71と、第1撥液膜72と、第2撥液膜73と、を備えている。
プレート本体71は、Z方向を厚さ方向とする板状に形成されている。プレート本体71の厚さは、例えば20~100μm程度とされている。第1実施形態において、プレート本体71は、樹脂材料(ポリイミド等)や金属材料(SUSやNi-Pd等)、ガラス、シリコン等による単層構造、又は積層構造とされている。なお、以下の説明では、プレート本体71の下面(-Z側端面)を表面71aとし、プレート本体71の上面(+Z側端面)を裏面71bとする。
プレート本体71には、プレート本体71をZ方向に貫通するノズル孔(噴射孔)100が形成されている。ノズル孔100は、Z方向から見た平面視で円形状に形成されるとともに、上方から下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状に形成されている。ノズル孔100の内径は、Z方向の全体に亘って一様であってもよい。また、ノズル孔100の平面視外形は適宜変更が可能である。
図4に示すように、ノズル孔100は、X方向に間隔をあけて複数形成されている。各ノズル孔100は、X方向に直線状に配列されることで、ノズル列101を構成している。各ノズル孔100は、プレート本体71のうち吐出チャネル55にZ方向で対向する位置に各別に形成されている。すなわち、各ノズル孔100は、隣り合う吐出チャネル55同士の間隔と同ピッチでX方向に間隔をあけて形成されている。これにより、上述した吐出チャネル55は、ノズル孔100を通して外部に連通している。一方、非吐出チャネル56は、ノズルプレート54により閉塞されている。なお、ノズル孔100の数やレイアウト等は、適宜変更が可能である。
図6は、ノズルプレート54の底面図である。
図5、図6に示すように、第1撥液膜72は、プレート本体71の表面71a上において、ノズル列101に対してY方向の両側に位置する部分にそれぞれ形成されている。具体的に、第1撥液膜72は、X方向に沿って延びる帯状に形成されている。第1撥液膜72には、フッ素含有シランカップリング剤や有機フッ素化合物等、プレート本体71よりも表面エネルギーが小さい材料が好適に用いられている。なお、本明細書において、「表面エネルギー」は、撥液性能や親液性能、表面粗さ等、インクの伝わりに影響を及ぼすエネルギーである。この場合、表面エネルギーが小さい方が撥液性能に優れ、表面エネルギーの大きい方が親液性能に優れているということができる。
図5、図6に示すように、第1撥液膜72は、プレート本体71の表面71a上において、ノズル列101に対してY方向の両側に位置する部分にそれぞれ形成されている。具体的に、第1撥液膜72は、X方向に沿って延びる帯状に形成されている。第1撥液膜72には、フッ素含有シランカップリング剤や有機フッ素化合物等、プレート本体71よりも表面エネルギーが小さい材料が好適に用いられている。なお、本明細書において、「表面エネルギー」は、撥液性能や親液性能、表面粗さ等、インクの伝わりに影響を及ぼすエネルギーである。この場合、表面エネルギーが小さい方が撥液性能に優れ、表面エネルギーの大きい方が親液性能に優れているということができる。
ここで、ノズルプレート54のうち、外部(下方)に露出している面を表面54aとする。この場合、ノズルプレート54のうち、第1撥液膜72が形成されている部分は、第1撥液膜72の表面がノズルプレート54の表面54aを構成する。ノズルプレート54のうち、第1撥液膜72が形成されていない部分は、プレート本体71の表面71a自体がノズルプレート54の表面54aを構成する。
第1実施形態では、ノズルプレート54の表面54aのうち、各第1撥液膜72の間に位置する部分は、プレート本体71の表面71aが露出した親液領域110を構成している。上述したノズル孔100は、親液領域110上で開口している。
一方、ノズルプレート54の表面54aのうち、第1撥液膜72が形成された部分は、親液領域110に比べて表面エネルギーが小さい撥液領域111を構成している。図示の例において、各撥液領域111のY方向の幅は、親液領域110のY方向の幅よりも狭くなっている。但し、撥液領域111の幅の方が親液領域110よりも広くてもよい。また、各第1撥液膜72(撥液領域111)は、ノズル列101に対してX方向の外側において、それぞれ接続されていてもよい。すなわち、撥液領域111は、ノズル列101の周囲を取り囲んでいてもよい。また、撥液領域111は、ノズル列101を構成する各ノズル孔100のうち、複数のノズル孔100毎に区画してもよい。すなわち、ノズル列101を構成する全てのノズル孔100が一の親液領域110上で開口している必要はない。
図5に示すように、第2撥液膜73は、ノズル孔100の内周面全体に亘って形成されている。第2撥液膜73は、上方から下方に向かうに従い漸次厚くなっている。第2撥液膜73の最小厚さは、例えば第1撥液膜72の最小厚さ以下になっている。但し、第2撥液膜73の最小厚さは、撥液性が発揮できる程度の厚さ(例えば数nm程度)を確保していれば、適宜変更が可能である。なお、ノズル孔100の内周面のうち、第2撥液膜73が形成された部分(第1実施形態では内周面全体)は、撥液性付与部を構成している。また、第2撥液膜73は、第1撥液膜72と同様の材料により、第1撥液膜72と同一工程で一括形成される(後述する)。
このように、第1実施形態のノズルプレート54は、ノズル孔100の内周面に第2撥液膜73が形成されていることで、ノズル孔100の内周面での表面エネルギーが、ノズルプレート54の親液領域110での表面エネルギーよりも小さくなっている。第1実施形態では、ノズル孔100の内周面全体に第2撥液膜73が形成されていることで、ノズル孔100の内周面全体に撥液性が付与されている。また、ノズル孔100の内周面での表面エネルギーは、撥液領域111での表面エネルギーと同等になっている。但し、ノズル孔100の内周面での表面エネルギーと、撥液領域111での表面エネルギーと、を異ならせてもよい。
図3に示すように、ノズルプレート54の表面54aは、インクジェットヘッド5がクリーニング領域Cに配置された状態で、クリーニング機構7によってクリーニングされる。クリーニング機構7は、ワイパ120を備えている。ワイパ120は、インクジェットヘッド5がクリーニング領域Cに配置された状態で、各インクジェットヘッド5の下方に個別に設けられている。
ワイパ120は、例えば弾性変形可能な材料(ゴムや樹脂材料)により板状に形成されている。ワイパ120におけるY方向の幅は、親液領域110の幅以下に設定されていることが好ましい。ワイパ120は、X方向に移動可能に構成されている。ワイパ120は、インクジェットヘッド5がクリーニング領域Cに配置された状態で、ノズルプレート54の表面54aのうち主に親液領域110上に摺接することで、親液領域110に付着したインク等を払拭する。第1実施形態において、ワイパ120は、インクジェットヘッド5に対して-X側を上流側とし、下流側である+X側に移動する。但し、ワイパ120の幅は、親液領域110よりも広くてもよい。また、本開示では、ワイパ120が+X側から-X側に移動してもよく、Y方向に移動してもよい。
<ノズルプレート54の製造方法>
次に、上述したノズルプレート54の製造方法について説明する。図7、図8は、図5に対応する断面図であって、ノズルプレート54の製造方法を説明するための工程図である。以下の説明では、プレート本体(基材)71に樹脂材料(ポリイミド)を採用した場合を例にして説明する。
第1実施形態のノズルプレート54の製造方法は、例えばノズル孔形成工程と、撥液膜形成工程(第1工程)と、撥液膜除去工程(第2工程)と、を含んでいる。
次に、上述したノズルプレート54の製造方法について説明する。図7、図8は、図5に対応する断面図であって、ノズルプレート54の製造方法を説明するための工程図である。以下の説明では、プレート本体(基材)71に樹脂材料(ポリイミド)を採用した場合を例にして説明する。
第1実施形態のノズルプレート54の製造方法は、例えばノズル孔形成工程と、撥液膜形成工程(第1工程)と、撥液膜除去工程(第2工程)と、を含んでいる。
図7に示すように、ノズル孔形成工程では、プレート本体71に対してノズル孔(貫通孔)100を形成する。具体的には、プレート本体71の裏面71bからレーザー加工やエッチング等を行う。これにより、テーパ状のノズル孔100が形成される。なお、プレート本体71がシリコンの場合には、エッチング等によりノズル孔100を形成することができる。プレート本体71がSUSの場合には、レーザー加工やプレス加工等によってノズル孔100を形成することができる。プレート本体71がNi-Pdの場合には、電鋳によるプレート本体71の成形と同時にノズル孔100を形成することができる。
続いて、図8に示すように、撥液膜形成工程では、ノズル孔100が形成されたプレート本体71に対して撥液膜72,73の途中膜151を形成する。途中膜151とは、撥液膜形成工程で形成される撥液膜が上述した撥液膜72,73として形成される前の状態であって、プレート本体71の表面(第1面)71a及びノズル孔100の内周面に亘って形成される。具体的に、撥液膜形成工程では、まずプレート本体71の裏面71b全体にマスク150(例えば、テープ等)をする。続いて、プレート本体71の表面71aに、撥液膜72,73の液体材料を、各種塗布方法(例えばスプレーコートやディップコート、スピンコート等)を用いて塗布する。すると、プレート本体71の表面71aに塗布された液体材料は、表面71a上を濡れ広がるとともに、ノズル孔100内にも進入する。これにより、プレート本体71の表面71a及びノズル孔100の内周面に亘って撥液膜72,73の途中膜151が形成される。第1実施形態では、表面71aから液体材料を塗布するため、ノズル孔100に形成された途中膜151の厚さは、表面71a側から裏面71b側に向かうに従い漸次薄くなる。液体材料の塗布後は、加温やエネルギー線(例えば、紫外線等)照射等によって途中膜151を硬化させる。その後、プレート本体71の裏面71bに設けられたマスク150を除去する。
なお、撥液膜72,73に固体材料(例えば、フッ素化合物等)を用いる場合には、物理蒸着(スパッタリング等)や化学蒸着(プラズマCVD等)の各種成膜方法を用いて途中膜151を形成してもよい。また、撥液膜72,73にめっき材料(フッ素化合物含有の複合Niめっき液や、Pdめっき液等)を用いる場合には、プレート本体71の材料に応じて電解めっきや無電解めっきを行うことで途中膜151を形成してもよい。
次に、撥液膜除去工程では、プレート本体71に形成された途中膜151のうち、プレート本体71の表面71aに形成された途中膜151の一部を除去する。第1実施形態の撥液膜除去工程では、擦過処理によって途中膜151の一部を削り落とす。撥液膜除去工程で用いる擦過物には、プレート本体71の材料よりも軟質な材料を選択することが好ましい。このような材料としては、クリーンチーフやワイパーブレード等に採用されるEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)等が挙げられる。但し、擦過物としては、プレート本体71の表面71aを擦過した際に、表面71aを傷付けない程度の硬度や表面粗さを有する材料であれば、プレート本体71の材料等に応じて適宜変更が可能である。
撥液膜除去工程では、プレート本体71の表面71aのうちノズル列101を含む部分に対して擦過物をX方向に往復移動させる。すると、プレート本体71の表面71a上のうち、ノズル列101を含む部分の途中膜151が除去される。これにより、図5に示すように、ノズルプレート54の表面54a上において、途中膜151が除去された部分が、プレート本体71の表面71aが露出した親液領域110となる。
一方、撥液膜除去工程において、ノズルプレート54の表面54aのうち親液領域110の外側に位置する部分、及びノズル孔100の内周面には、途中膜151が残存する。よって、プレート本体71の表面71a上に残存した途中膜151は、親液領域110の外側でプレート本体71の表面71aを被覆する第1撥液膜72となる。また、ノズル孔100の内周面に残存した途中膜151は、ノズル孔100の内周面を被覆する第2撥液膜73となる。
以上により、ノズルプレート54が完成する。なお、撥液膜除去工程は、擦過処理以外に、レーザーやサンドブラスト等により行うことも可能である。
以上により、ノズルプレート54が完成する。なお、撥液膜除去工程は、擦過処理以外に、レーザーやサンドブラスト等により行うことも可能である。
[プリンタの動作方法]
<吐出動作時>
次に、上述したプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに情報を記録する方法について説明する。以下の説明では、吐出直前の状態において、ノズル孔100内のインクはノズル孔100の下端開口縁でメニスカスを保っているものとする(図5参照)。具体的に、ノズル孔100内のインクは、ノズル孔100内での第2撥液膜73の表面エネルギーや吐出チャネル55内の圧力(負圧)等の作用により、上方に窪む凹面状のメニスカスを形成している。
<吐出動作時>
次に、上述したプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに情報を記録する方法について説明する。以下の説明では、吐出直前の状態において、ノズル孔100内のインクはノズル孔100の下端開口縁でメニスカスを保っているものとする(図5参照)。具体的に、ノズル孔100内のインクは、ノズル孔100内での第2撥液膜73の表面エネルギーや吐出チャネル55内の圧力(負圧)等の作用により、上方に窪む凹面状のメニスカスを形成している。
図1に示すように、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pが搬送機構2,3のローラ11,12間に挟み込まれながら+X側に搬送される。また、これと同時に走査機構6によってインクジェットヘッド5が印字領域S上をY方向に往復移動する。
この間に、各インクジェットヘッド5において、ヘッドチップ32の駆動電極に駆動電圧を印加する。これにより、アクチュエータプレート51に厚みすべり変形を生じさせ、吐出チャネル55内に充填されたインクに圧力波を発生させる。この圧力波により、吐出チャネル55の内圧が高まり、インク滴がノズル孔100を通して吐出される。そして、ノズル孔100から吐出されたインク滴が被記録媒体P上に着弾することで、各種情報が被記録媒体P上に記録される。
この間に、各インクジェットヘッド5において、ヘッドチップ32の駆動電極に駆動電圧を印加する。これにより、アクチュエータプレート51に厚みすべり変形を生じさせ、吐出チャネル55内に充填されたインクに圧力波を発生させる。この圧力波により、吐出チャネル55の内圧が高まり、インク滴がノズル孔100を通して吐出される。そして、ノズル孔100から吐出されたインク滴が被記録媒体P上に着弾することで、各種情報が被記録媒体P上に記録される。
ところで、プリンタ1の吐出性能を向上させるには、インク滴がノズル孔100から吐出される際に、インク滴に影響する、又はインク滴に影響を及ぼすノズル孔100周囲の表面エネルギーが均一であることが好ましい。すなわち、ノズルプレートの表面のうち、ノズル孔の周囲に一部付着物が付着していると、一部付着物によってノズル孔100周囲の表面エネルギーが不均一になる。そのため、インク滴に作用する力(表面張力)のバランスが崩れるため、インク滴が一部付着物に引っ張られる。その結果、インク滴に飛翔曲がりが生じる等、吐出不良に繋がる可能性がある。なお、本明細書において、インク滴とは、インクのうち、吐出動作によってメニスカスから被記録媒体Pに向けて膨出した部分、及びメニスカスから離脱した部分を含む。
ここで、プリンタ1では、ノズルプレート54の表面54aのうちノズル孔100が開口する部分が親液領域110になっている。そのため、図5に示すように、親液領域110には、全域に亘って均一な厚さのインク膜160が形成される。ノズルプレート54の表面54aにおいて、ノズル孔100周囲の表面エネルギーが均一になり易い。インク膜160は、例えばインク滴の吐出時等にノズルプレート54の周囲に飛散したインクが親液領域110に付着した後、親液領域110上に濡れ広がることで形成される。なお、インク膜160は、インクジェットヘッド5に供給されるインクの一部が親液領域110上に濡れ広がって形成されていればよい。この場合、インク膜160は、吐出動作の前にノズル孔100からインクを滲み出させることで形成してもよい。
しかも、プリンタ1では、ノズル孔100の内周面上に第2撥液膜73が形成されている。したがって、インク膜160とノズル孔100内に保持されたインクとは、ノズル孔100の下端開口縁(境界部分)とノズルプレート54の表面54aとの間で分離している。そして、ノズル孔100内には、第2撥液膜73の作用によって適正なメニスカスが形成される。
このような状態でインクを吐出すると、ノズル孔100から吐出されるインク滴は、インク膜160を通過した後に被記録媒体Pに向けて飛翔する。インク滴がインク膜160を通過する際、インク滴には均一な力(表面張力)が作用する。その結果、インク滴の飛翔曲がりを抑制して、吐出性能の向上を図ることができる。なお、インク膜160は、ノズル孔周囲の表面エネルギーが均一になるように形成されていればよい。そのため、インク膜160の粘度(固化等による粘度の変動を含む)や厚さ等の各種条件は、ノズル孔100の全周に亘って一様であれば適宜変更が可能である。
<払拭動作時(吐出停止時)>
インクジェットヘッド5のメンテナンス時等には、インクジェットヘッド5をクリーニング領域Cまで移動させ、ノズルプレート54の払拭動作を行う。具体的には、図3に示すように、クリーニング領域Cに配置されたインクジェットヘッド5に対し、ノズルプレート54の表面54a(親液領域110上)にワイパ120を摺接させる。すると、ワイパ120は、-X側から+X側に移動する過程で、親液領域110上に付着したインク等を払拭する。
インクジェットヘッド5のメンテナンス時等には、インクジェットヘッド5をクリーニング領域Cまで移動させ、ノズルプレート54の払拭動作を行う。具体的には、図3に示すように、クリーニング領域Cに配置されたインクジェットヘッド5に対し、ノズルプレート54の表面54a(親液領域110上)にワイパ120を摺接させる。すると、ワイパ120は、-X側から+X側に移動する過程で、親液領域110上に付着したインク等を払拭する。
ところで、ワイパ120による払拭動作後であっても、ノズルプレート54の表面54a(特に親液領域110上)にインクが残存する可能性がある。親液領域110に残ったインクは、親液領域110の表面エネルギーによって、親液領域110に濡れ広がる。そのため、払拭動作後(吐出停止時)においても、ノズル孔100の周囲にインクが局所的に残存することを抑制できる。また、吐出停止時において、ノズル孔100内に存在するインクのうち、下端開口部周辺に存在するインクは、ノズル孔100の内周面と親液領域110との間の表面エネルギーの作用によって親液領域110に引っ張られる。そのため、ノズル孔100内に存在するインクの一部が親液領域110上に濡れ広がるとともに、ノズルプレート54の表面54a上に残存したインクがノズル孔100内に進入するのを抑制できる。これにより、親液領域110上には全域に亘って均一な厚さのインク膜160が形成される。その結果、払拭動作後の吐出再開時であっても、ノズルプレート54の表面54a上でインクの固化やインクが局所的に存在するのを抑制できる。
上述したようにノズル孔100内のインクが親液領域110に濡れ広がる結果、払拭動作後におけるノズル孔100内のインクは、吐出動作時よりも減少する。しかし、第1実施形態ではノズル孔100の内周面に形成された第2撥液膜73の作用により、ノズル孔100の内周面の一部のみにインクが残存することを抑制できる。この場合、ノズル孔100内には、吐出動作時よりも+Z側に後退した状態でメニスカスが形成される。
このように、第1実施形態のノズルプレート54は、ノズル孔100の内周面のうちの少なくとも一部の表面エネルギーが、ノズルプレート54の親液領域110での表面エネルギーよりも小さい構成とした。
この構成によれば、親液領域110の表面エネルギーがノズル孔100の内周面の表面エネルギーよりも大きくなる。これにより、インク吐出時には、ノズルプレート54の表面54aに付着したインクが親液領域110に濡れ広がる。また、吐出停止時には、ノズル孔100内のうち表面54a付近に存在するインクが、ノズル孔100の内周面と親液領域110との表面エネルギーの違いによって親液領域110に引っ張られる。
その結果、ノズルプレート54の表面54a上でのインクの固化やインクが局所的に残存することを抑制し、親液領域110に均一なインク膜160が形成され易い。これにより、吐出性能を良好に維持できる。
一方、ノズル孔100の内周面の表面エネルギーが、親液領域110の表面エネルギーよりも小さいことで、ノズル孔100内と親液領域110との間での液切れ性を向上できる。これにより、親液領域110に付着したインクがノズル孔100内に進入するのを抑制できる。また、ノズルプレート54の表面54aに親液領域110を形成した場合であっても、親液領域110へのインクの過剰な流出を抑制できる。さらに、吐出停止時において、ノズル孔100内でインクが局所的に存在するのを抑制できる。そのため、ノズル孔100内でのインクの固化を抑制し、ノズル孔100内に残存するインクによって適正なメニスカスが形成され易くなる。
この構成によれば、親液領域110の表面エネルギーがノズル孔100の内周面の表面エネルギーよりも大きくなる。これにより、インク吐出時には、ノズルプレート54の表面54aに付着したインクが親液領域110に濡れ広がる。また、吐出停止時には、ノズル孔100内のうち表面54a付近に存在するインクが、ノズル孔100の内周面と親液領域110との表面エネルギーの違いによって親液領域110に引っ張られる。
その結果、ノズルプレート54の表面54a上でのインクの固化やインクが局所的に残存することを抑制し、親液領域110に均一なインク膜160が形成され易い。これにより、吐出性能を良好に維持できる。
一方、ノズル孔100の内周面の表面エネルギーが、親液領域110の表面エネルギーよりも小さいことで、ノズル孔100内と親液領域110との間での液切れ性を向上できる。これにより、親液領域110に付着したインクがノズル孔100内に進入するのを抑制できる。また、ノズルプレート54の表面54aに親液領域110を形成した場合であっても、親液領域110へのインクの過剰な流出を抑制できる。さらに、吐出停止時において、ノズル孔100内でインクが局所的に存在するのを抑制できる。そのため、ノズル孔100内でのインクの固化を抑制し、ノズル孔100内に残存するインクによって適正なメニスカスが形成され易くなる。
第1実施形態のノズルプレート54は、ノズル孔100の内周面での表面エネルギーは、ノズル孔100の下端開口縁を含む領域において親液領域110での表面エネルギーよりも小さくなっている。
この構成によれば、上述した作用効果をより奏功できる。
この構成によれば、上述した作用効果をより奏功できる。
第1実施形態のノズルプレート54は、ノズル孔100の内周面に第2撥液膜73を形成することで、ノズル孔100の内周面に撥液性を付与する構成とした。
この構成によれば、例えば撥液性を有するプレート本体の表面に対して親液膜を形成することで、ノズル孔100の内周面と親液領域110とで表面エネルギーの差を設ける場合に比べ、ノズル孔100の内周面に均一、かつ適正な撥液性能を付与し易い。また、プレート本体71自体の表面エネルギーに関わらず、ノズル孔100の内周面に撥液性能を付与できるので、プレート本体71の材料選択の自由度を向上させることができる。
この構成によれば、例えば撥液性を有するプレート本体の表面に対して親液膜を形成することで、ノズル孔100の内周面と親液領域110とで表面エネルギーの差を設ける場合に比べ、ノズル孔100の内周面に均一、かつ適正な撥液性能を付与し易い。また、プレート本体71自体の表面エネルギーに関わらず、ノズル孔100の内周面に撥液性能を付与できるので、プレート本体71の材料選択の自由度を向上させることができる。
第1実施形態のノズルプレート54は、第2撥液膜73がノズル孔100の内周面全体を被覆している構成とした。
この構成によれば、ノズル孔100の内周面での表面エネルギーを全体に亘って均一にし易い。これにより、ノズル孔100内において表面エネルギーのバランスが崩れるのを抑制できるので、吐出性能をより確実に向上させることができる。
この構成によれば、ノズル孔100の内周面での表面エネルギーを全体に亘って均一にし易い。これにより、ノズル孔100内において表面エネルギーのバランスが崩れるのを抑制できるので、吐出性能をより確実に向上させることができる。
第1実施形態のノズルプレート54は、第2撥液膜73の厚さがインクの吐出方向における下流側(-Z側)から上流側(+Z側)に向かうに従い薄くなっている構成とした。
この構成によれば、ノズル孔100の内周面のうち少なくとも親液領域110との境界部分(下端開口縁)に第2撥液膜73を確実に形成できる。これにより、例えばワイパ120がノズル孔100の下端開口縁上を通過する際に第2撥液膜73が摩耗する場合であっても、第2撥液膜73を長期に亘って残存させることができる。すなわち、ワイパ120による払拭動作に対する第2撥液膜73の耐久性を向上させることができる。
しかも、撥液膜72,73の形成時において、例えばプレート本体71の表面71a側から撥液処理を行った際には、ノズル孔100の内周面において吐出方向の下流側から上流側にかけて撥液膜が定着していき易い。その結果、ノズル孔100の内周面において吐出方向の上流側での第2撥液膜73の厚さが薄くなる。この場合、ノズル孔100の内周面のうち吐出方向の上流側での第2撥液膜73の厚さを薄くすることで、プレート本体71の裏面71b側への撥液膜の回り込みを抑制できる。
この構成によれば、ノズル孔100の内周面のうち少なくとも親液領域110との境界部分(下端開口縁)に第2撥液膜73を確実に形成できる。これにより、例えばワイパ120がノズル孔100の下端開口縁上を通過する際に第2撥液膜73が摩耗する場合であっても、第2撥液膜73を長期に亘って残存させることができる。すなわち、ワイパ120による払拭動作に対する第2撥液膜73の耐久性を向上させることができる。
しかも、撥液膜72,73の形成時において、例えばプレート本体71の表面71a側から撥液処理を行った際には、ノズル孔100の内周面において吐出方向の下流側から上流側にかけて撥液膜が定着していき易い。その結果、ノズル孔100の内周面において吐出方向の上流側での第2撥液膜73の厚さが薄くなる。この場合、ノズル孔100の内周面のうち吐出方向の上流側での第2撥液膜73の厚さを薄くすることで、プレート本体71の裏面71b側への撥液膜の回り込みを抑制できる。
第1実施形態のノズルプレート54の表面54aは、ノズル列101に沿ってX方向に延びる親液領域110と、親液領域110に対してY方向の両側に位置する撥液領域111と、を含んでいる構成とした。
この構成によれば、ノズルプレート54の表面54a上におけるインクの広がりを撥液領域111で規制できる。これにより、所望の範囲で所望の厚さのインク膜160を形成し易い。
しかも、隣り合うノズル孔100間に撥液領域が存在しないので、例えばワイパ120により表面54aをX方向に沿って払拭する際、ワイパ120が撥液領域111を通過しない。したがって、親液領域110を均一に払拭できるため、従来のように窪み内に親液膜を形成する場合と異なり、古いインクやインクの固化物、その他塵埃等が親液領域110に残存するのを抑制できる。また、第1撥液膜72の摩耗等を抑制できる。
この構成によれば、ノズルプレート54の表面54a上におけるインクの広がりを撥液領域111で規制できる。これにより、所望の範囲で所望の厚さのインク膜160を形成し易い。
しかも、隣り合うノズル孔100間に撥液領域が存在しないので、例えばワイパ120により表面54aをX方向に沿って払拭する際、ワイパ120が撥液領域111を通過しない。したがって、親液領域110を均一に払拭できるため、従来のように窪み内に親液膜を形成する場合と異なり、古いインクやインクの固化物、その他塵埃等が親液領域110に残存するのを抑制できる。また、第1撥液膜72の摩耗等を抑制できる。
第1実施形態のインクジェットヘッド5及びプリンタ1は、上述したノズルプレート54を備えているため、長期に亘って吐出性能に優れた信頼性の高いインクジェットヘッド5及びプリンタ1を提供できる。
第1実施形態のノズルプレート54の製造方法は、撥液膜形成工程においてノズル孔100が形成されたプレート本体71に対して撥液膜72,73の途中膜151を形成した後、撥液膜除去工程においてプレート本体71の表面71a上のうち少なくともノズル孔100の周囲の途中膜151を除去する。これにより、ノズル孔100の内周面に対して容易に撥液性を付与した上で、ノズルプレート54の表面54aの所望の領域に親液性を付与できる。
第1実施形態のノズルプレート54の製造方法は、撥液膜除去工程において撥液膜形成工程で形成した途中膜151の一部を擦過処理により除去する構成とした。
この構成によれば、ノズルプレート54の表面54aにおいて、親液性を付与する部分に形成された途中膜151を擦過処理により除去するだけでノズルプレート54に親液性を付与できる。これにより、従来のように窪み内に親液膜を形成する場合と異なり、フォトレジストによるパターニング等を行う必要がない。その結果、製造効率の向上や、低コスト化を図ることができる。
この構成によれば、ノズルプレート54の表面54aにおいて、親液性を付与する部分に形成された途中膜151を擦過処理により除去するだけでノズルプレート54に親液性を付与できる。これにより、従来のように窪み内に親液膜を形成する場合と異なり、フォトレジストによるパターニング等を行う必要がない。その結果、製造効率の向上や、低コスト化を図ることができる。
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態におけるノズルプレート200の断面図である。第2実施形態では、プレート本体71がプライマ層201により被覆されている点で上述した実施形態と相違している。
図10に示すノズルプレート200において、プライマ層201は、プレート本体71の表面71a全域、及びノズル孔100の内周面全域に亘って形成されている。したがって、第2実施形態の親液領域110は、プライマ層201が外部に露出することによって形成されている。すなわち、プライマ層201は、プレート本体71の表面71aのうちノズル孔100の開口部を含んだ領域にも形成されている。但し、プライマ層201は、少なくとも撥液膜72,73とプレート本体71との間に介在していればよい。すなわち、第2実施形態においても、プレート本体71の表面71aを親液領域110にしてもよい。
図10は、第2実施形態におけるノズルプレート200の断面図である。第2実施形態では、プレート本体71がプライマ層201により被覆されている点で上述した実施形態と相違している。
図10に示すノズルプレート200において、プライマ層201は、プレート本体71の表面71a全域、及びノズル孔100の内周面全域に亘って形成されている。したがって、第2実施形態の親液領域110は、プライマ層201が外部に露出することによって形成されている。すなわち、プライマ層201は、プレート本体71の表面71aのうちノズル孔100の開口部を含んだ領域にも形成されている。但し、プライマ層201は、少なくとも撥液膜72,73とプレート本体71との間に介在していればよい。すなわち、第2実施形態においても、プレート本体71の表面71aを親液領域110にしてもよい。
プライマ層201は、撥液膜72,73とプレート本体71との密着性を確保するための下地としての機能を有する。プライマ層201は、プレート本体71との密着性(共有結合等の化学結合力)が撥液膜72,73とプレート本体71との密着性よりも高く、表面エネルギーがプレート本体71よりも大きい材料であることが好ましい。このような材料としては、シリコン化合物(シランカップリング剤等)や、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、DLC(Diamond-like Carbon)等を用いることができる。なお、プライマ層201は、撥液膜形成工程と同様に、プライマ層201の液体材料を塗布した後、硬化させることで形成できる(ウェットプロセス)。また、プライマ層201に固体材料を用いる場合には、物理蒸着(スパッタリング等)や化学蒸着(プラズマCVD等)の各種成膜方法(ドライプロセス)を用いてプライマ層201を形成してもよい。
第2実施形態のノズルプレート200では、撥液膜72,73とプレート本体71との間にプライマ層201が介在することで、撥液膜72,73の密着性を向上させることができる。その結果、撥液膜72,73の耐久性を向上させることができる。
第2実施形態のノズルプレート200では、親液領域110がプライマ層201により形成されている構成とした。
この構成によれば、プライマ層201を親液領域110に利用することで、プレート本体71の表面71aを親液領域として利用する場合に比べ、均一、かつ適正な親液性能を付与し易い。また、プレート本体71自体の表面エネルギーに関わらず、親液領域110を形成することができるので、プレート本体71の材料選択の自由度を向上させることができる。
この構成によれば、プライマ層201を親液領域110に利用することで、プレート本体71の表面71aを親液領域として利用する場合に比べ、均一、かつ適正な親液性能を付与し易い。また、プレート本体71自体の表面エネルギーに関わらず、親液領域110を形成することができるので、プレート本体71の材料選択の自由度を向上させることができる。
(変形例)
上述した実施形態では、プレート本体71の表面71aに第1撥液膜72及びプライマ層201を形成した場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、図11に示すノズルプレート200のように、少なくとも第2撥液膜73を有していれば、ノズルプレート200の表面200a全域が親液領域110であってもよい。
この場合には、ワイパ120がノズルプレート200の表面200a上を摺接する際に撥液膜を通過することがないため、ワイパ120の移動方向を任意の方向に設定することが可能である。
上述した実施形態では、プレート本体71の表面71aに第1撥液膜72及びプライマ層201を形成した場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、図11に示すノズルプレート200のように、少なくとも第2撥液膜73を有していれば、ノズルプレート200の表面200a全域が親液領域110であってもよい。
この場合には、ワイパ120がノズルプレート200の表面200a上を摺接する際に撥液膜を通過することがないため、ワイパ120の移動方向を任意の方向に設定することが可能である。
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るノズルプレート300の底面図である。図13は、図13のXIII-XIII線に沿う断面図である。第3実施形態では、ノズルプレート300の表面300aのうち、各ノズル孔100の周囲のみに親液領域110が独立して形成されている点で、上述した実施形態と相違している。
図12、図13に示すノズルプレート300において、親液領域110は、ノズルプレート300の表面300aで各ノズル孔100の周囲を各別に取り囲んでいる。すなわち、親液領域110は、各ノズル孔100のそれぞれに対して個別に設けられている。なお、第3実施形態の親液領域110は、ノズルプレート300の表面300aのうちプライマ層201が露出している部分である。
図12は、第3実施形態に係るノズルプレート300の底面図である。図13は、図13のXIII-XIII線に沿う断面図である。第3実施形態では、ノズルプレート300の表面300aのうち、各ノズル孔100の周囲のみに親液領域110が独立して形成されている点で、上述した実施形態と相違している。
図12、図13に示すノズルプレート300において、親液領域110は、ノズルプレート300の表面300aで各ノズル孔100の周囲を各別に取り囲んでいる。すなわち、親液領域110は、各ノズル孔100のそれぞれに対して個別に設けられている。なお、第3実施形態の親液領域110は、ノズルプレート300の表面300aのうちプライマ層201が露出している部分である。
一方、撥液領域111は、ノズルプレート300の表面300aにおける親液領域110以外の部分である。すなわち、撥液領域111は、隣り合う親液領域110の間を区画している。第3実施形態のノズルプレート300は、第1実施形態と同様に、撥液膜72,73の途中膜151を形成後、撥液膜除去工程において、ノズル孔100の周囲の途中膜151を擦過処理により除去することで形成できる。したがって、従来のようにプレート本体自体に窪みを形成する場合に比べて、製造効率の低下を抑制できる。
第3実施形態のノズルプレート300は、ノズル孔100毎に親液領域110を設けることで、インク吐出時において各ノズル孔100間での相互干渉を軽減できる。そのため、吐出性能を向上させ易い。
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、噴射孔プレート及び液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、噴射孔プレートや液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、噴射孔プレート及び液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、噴射孔プレートや液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
上述した実施形態では、エッジシュートのヘッドチップについて説明したが、これに限られない。例えば、吐出チャネルにおける延在方向の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのヘッドチップに本開示を適用してもよい。
また、インクに加わる圧力の方向と、インクの吐出方向と、を同一方向とした、いわゆるルーフシュートタイプのヘッドチップに本開示を適用してもよい。
また、インクに加わる圧力の方向と、インクの吐出方向と、を同一方向とした、いわゆるルーフシュートタイプのヘッドチップに本開示を適用してもよい。
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、プレート本体よりも表面エネルギーの小さい撥液膜を用いてノズルプレートに親液領域と撥液領域を形成する場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、プレート本体よりも表面エネルギーの大きい親液膜を用いてノズルプレートに親液領域と撥液領域を形成してもよい。この場合、ノズルプレートのうち、撥液領域を構成する部分(例えば、ノズル孔100の内周面等)では、プレート本体が露出することになる。
上述した実施形態では、プレート本体よりも表面エネルギーの小さい撥液膜を用いてノズルプレートに親液領域と撥液領域を形成する場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、プレート本体よりも表面エネルギーの大きい親液膜を用いてノズルプレートに親液領域と撥液領域を形成してもよい。この場合、ノズルプレートのうち、撥液領域を構成する部分(例えば、ノズル孔100の内周面等)では、プレート本体が露出することになる。
上述した実施形態では、ノズル孔100の内周面全域に第2撥液膜73が形成された構成について説明したが、この構成に限られない。第2撥液膜73は、ノズル孔100の内周面の少なくとも一部(撥液性付与部)に形成されていればよい。この場合、第2撥液膜73は、少なくともノズル孔100の下端開口縁を含む部分に形成されていることが好ましい。
上述した実施形態では、プレート本体に対して撥液膜を積層することで親液領域と撥液領域を形成する構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、プレート本体に対して表面処理(改質や加工)を施すことで、親液領域と撥液領域を形成してもよい。
上述した実施形態では、プレート本体に対して撥液膜を積層することで親液領域と撥液領域を形成する構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、プレート本体に対して表面処理(改質や加工)を施すことで、親液領域と撥液領域を形成してもよい。
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
1…インクジェットプリンタ(液体噴射記録装置)
5…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
54…ノズルプレート(噴射孔プレート)
54a…表面(噴射面)
71…プレート本体(基材)
71a…表面(第1面)
73…第2撥液膜(撥液膜)
100…ノズル孔(噴射孔、貫通孔)
110…親液領域
111…撥液領域
200…ノズルプレート(噴射孔プレート)
200a…表面(噴射面)
201…プライマ層
300…ノズルプレート(噴射孔プレート)
300a…表面(噴射面)
5…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
54…ノズルプレート(噴射孔プレート)
54a…表面(噴射面)
71…プレート本体(基材)
71a…表面(第1面)
73…第2撥液膜(撥液膜)
100…ノズル孔(噴射孔、貫通孔)
110…親液領域
111…撥液領域
200…ノズルプレート(噴射孔プレート)
200a…表面(噴射面)
201…プライマ層
300…ノズルプレート(噴射孔プレート)
300a…表面(噴射面)
Claims (13)
- 液体を噴射する噴射孔が形成されるとともに、液体の噴射方向で下流側を向く噴射面を有する噴射孔プレートであって、
前記噴射孔の内面のうちの少なくとも一部である撥液性付与部の表面エネルギーは、前記噴射面での表面エネルギーよりも小さい噴射孔プレート。 - 前記噴射孔の内面の表面エネルギーは、前記噴射孔の内面のうちの少なくとも前記噴射面との境界部分を含む領域において、前記噴射面での表面エネルギーよりも小さい請求項1に記載の噴射孔プレート。
- 前記撥液性付与部には、撥液膜が形成されている請求項1又は請求項2に記載の噴射孔プレート。
- 前記撥液膜は、前記噴射孔の内面全体を被覆している請求項3に記載の噴射孔プレート。
- 前記撥液膜の厚さは、前記噴射方向の上流側に向かうに従い薄くなっている請求項3又は請求項4に記載の噴射孔プレート。
- 前記撥液膜と前記噴射孔の内面との間には、前記撥液膜と前記噴射孔の内面とを密着させるプライマ層が介在している請求項3から請求項5の何れか1項に記載の噴射孔プレート。
- 前記プライマ層は、前記撥液膜よりも表面エネルギーが大きくなっており、
前記プライマ層は、前記噴射面上に形成されるとともに、前記噴射面上のうちの前記噴射孔の開口部を含んだ領域で露出している請求項6に記載の噴射孔プレート。 - 前記噴射孔は、前記噴射面に沿う第1方向に間隔をあけて複数形成され、
前記噴射面は、
前記噴射孔の周囲をそれぞれ取り囲み、前記撥液性付与部の表面エネルギーよりも表面エネルギーが大きい親液領域と、
隣り合う前記親液領域同士の間を区画し、前記親液領域よりも表面エネルギーが小さい撥液領域と、を含んでいる請求項1から請求項7の何れか1項に記載の噴射孔プレート。 - 前記噴射孔は、前記噴射面に沿う第1方向に間隔をあけて複数形成され、
前記噴射面は、
複数の前記噴射孔が開口するとともに、前記第1方向に連続的に延び、前記撥液性付与部の表面エネルギーよりも表面エネルギーが大きい親液領域と、
前記噴射面に沿う方向のうち前記第1方向に交差する第2方向において、前記親液領域の両側に位置し、前記親液領域よりも表面エネルギーが小さい撥液領域と、を含んでいる請求項1から請求項7の何れか1項に記載の噴射孔プレート。 - 請求項1から請求項9の何れか1項に記載の噴射孔プレートを備えている液体噴射ヘッド。
- 請求項10に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
- 貫通孔を有する基材に対して撥液処理を行う第1工程と、
前記基材のうち厚さ方向を向く第1面のうち、少なくとも前記貫通孔の周囲に親液処理を行う第2工程と、を備える噴射孔プレートの製造方法。 - 前記第1工程は、前記基材のうち少なくとも前記貫通孔の内面上及び前記第1面上に、前記基材よりも表面エネルギーが小さい撥液膜を形成し、
前記第2工程は、前記撥液膜のうち少なくとも前記貫通孔の周囲に位置する前記撥液膜を擦過して除去する請求項12に記載の噴射孔プレートの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020132663A JP2022029356A (ja) | 2020-08-04 | 2020-08-04 | 噴射孔プレート、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及び噴射孔プレートの製造方法 |
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- 2020-08-04 JP JP2020132663A patent/JP2022029356A/ja active Pending
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