JP2022027731A - ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びガスバリア樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びガスバリア樹脂組成物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022027731A
JP2022027731A JP2021125756A JP2021125756A JP2022027731A JP 2022027731 A JP2022027731 A JP 2022027731A JP 2021125756 A JP2021125756 A JP 2021125756A JP 2021125756 A JP2021125756 A JP 2021125756A JP 2022027731 A JP2022027731 A JP 2022027731A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin composition
gas barrier
barrier resin
ethylene
evoh
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2021125756A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7007518B1 (ja
Inventor
正和 中谷
Masakazu Nakatani
瑞子 尾下
Tamako Oshita
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Application granted granted Critical
Publication of JP7007518B1 publication Critical patent/JP7007518B1/ja
Publication of JP2022027731A publication Critical patent/JP2022027731A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Containers Having Bodies Formed In One Piece (AREA)
  • Bag Frames (AREA)
  • Wrappers (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】バイオマス由来の原料を用いていながら、化石燃料由来のものと遜色のない高いガスバリア性及び耐屈曲性、並びに十分なロングラン性を有するガスバリア樹脂組成物、このガスバリア樹脂組成物を用いた多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びこのようなガスバリア樹脂組成物の製造方法の提供。【解決手段】一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物及び熱可塑性エラストマー(C)を含み、上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物の原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であり、上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物に対する熱可塑性エラストマー(C)の質量比が5/95以上35/65以下である、ガスバリア樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びガスバリア樹脂組成物の製造方法に関する。
酸素等のガスを遮断する性能(ガスバリア性)に優れた樹脂を用いたガスバリア材は、容器、フィルム、シート、パイプ等の各種用途に幅広く使用されている。ガスバリア性に優れた樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物等が知られている。例えば特許文献1には、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素含有樹脂及びシリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種のガスバリア性樹脂層を有する多層プラスチック容器の発明が記載されている。
一方、近年、循環型社会を目指し、カーボンニュートラルなバイオマス等のバイオマス由来の原料を用いたバイオプラスチックの需要が高まっている。しかし、バイオマス由来の合成樹脂は、化石燃料由来の合成樹脂と比べて性能が劣る場合があることが知られている。例えば特許文献2には、従来のバイオマス由来のポリオレフィン等のフィルム材は密着性、加工性、耐久性等の品質が十分ではなかったとされ、このような点を改善するための、バイオマス由来の樹脂を含む特定の組成のバイオマス由来樹脂層を備える樹脂フィルムの発明が記載されている。また、特許文献3には、石油由来の樹脂をバイオマス由来の樹脂に置き換えたフィルムは耐衝撃性等が低下する場合があるとされ、このような点を改善するための、バイオマス由来のバイオマスポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンと、プロピレン系ブロック共重合体樹脂とを含有する中間層を有する積層フィルムの発明が記載されている。
特開2007-137506号公報 国際公開第2014/065380号 国際公開第2018/163835号
ガスバリア材の用途においても、バイオマス由来の原料を用いて合成されたガスバリア樹脂の製品化が期待される。しかし、上述のようにバイオマス由来の合成樹脂は、化石燃料由来の合成樹脂と比べて性能が劣る場合があることから、従来の化石燃料由来のガスバリア樹脂をバイオマス由来のガスバリア樹脂に置き換えた場合、最も重要なガスバリア性が低下することが懸念される。また、ガスバリア材が物理的ストレスを受けた際に生じうるガスバリア性の低下を抑制する性能、すなわち耐屈曲性を高めるために、熱可塑性エラストマー等をガスバリア樹脂に添加する場合がある。しかし、バイオマス由来のガスバリア樹脂を用いた場合に、熱可塑性エラストマーを添加しても耐屈曲性を向上できない懸念がある。このため、化石燃料由来の樹脂と遜色のない優れたガスバリア性及び耐屈曲性を有するバイオマス由来の樹脂の開発が望まれている。
また、ガスバリア樹脂は、溶融成形によって容器、シート等の各種形状に成形されることがある。このため、ガスバリア樹脂には、長時間に渡る溶融成形を行い続けても、欠陥等が発生し難いといったロングラン性(長時間運転特性)も重要である。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、バイオマス由来の原料を用いていながら、化石燃料由来のものと遜色のない高いガスバリア性及び耐屈曲性、並びに十分なロングラン性を有するガスバリア樹脂組成物、このガスバリア樹脂組成物を用いた多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びこのようなガスバリア樹脂組成物の製造方法を提供することである。
本発明者は、ガスバリア樹脂の一種であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物においては、バイオマス由来の原料をモノマーとして用いて合成されたものが、化石燃料由来の原料をモノマーとして用いて合成された同一構造の従来のものと遜色ない高いガスバリア性を有することを知見した。また、バイオマス由来の原料モノマーを用いて合成されたエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物と熱可塑性エラストマーとを含むガスバリア樹脂組成物においては、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物として化石燃料由来の原料モノマーを用いて合成された同一構造の従来のものを含む場合と遜色ない高い耐屈曲性が発現することを知見した。一方、ロングラン性に関しては、バイオマス由来の原料をモノマーとして用いて合成されたエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物は、化石燃料由来の原料をモノマーとして用いて合成されたものと比べて劣るという、ガスバリア性とは異なる傾向にあることもわかった。このようなことから、本発明者らは、バイオマス由来の原料と化石燃料由来の原料とが併用されたエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物を含むガスバリア樹脂組成物であれば、環境負荷を低減させながら、化石燃料由来の原料のみを用いたものと同じような高いガスバリア性及び耐屈曲性を発揮でき、かつ十分なロングラン性も兼ね備えるものとなることを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、
[1]一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物、及び熱可塑性エラストマー(C)を含み、上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物の原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であり、上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物に対する熱可塑性エラストマー(C)の質量比が5/95以上35/65以下である、ガスバリア樹脂組成物;
[2]上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と、化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)とを含む、[1]のガスバリア樹脂組成物;
[3]上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)との質量比(A/B)が1/99~99/1である、[2]のガスバリア樹脂組成物;
[4]上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A’)を含む、[1]のガスバリア樹脂組成物;
[5]上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物のバイオベース度が1%以上99%以下である、[1]~[4]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[6]バイオベース度が1%以上99%以下である、[1]~[5]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[7]硫黄化合物を硫黄原子換算で0ppmを超えて100ppm以下含む、[1]~[6]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[8]上記硫黄化合物が、ジメチルスルフィドまたはジメチルスルホキシドである、[7]のガスバリア樹脂組成物;
[9]上記原料のうちのエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来である、[1]~[8]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[10]上記原料のうちのビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来である、[1]~[9]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[11]熱可塑性エラストマー(C)が、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性熱可塑性エラストマー(c2)を含む、[1]~[10]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[12]熱可塑性エラストマー(C)が、無変性熱可塑性エラストマー(c1)を含む、[11]のガスバリア樹脂組成物;
[13]無変性熱可塑性エラストマー(c1)の変性熱可塑性エラストマー(c2)に対する質量比(c1/c2)が0/100超95/5以下である、[12]のガスバリア樹脂組成物;
[14]熱可塑性エラストマー(C)が、ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)を含む、[1]~[10]のいずれかのガスバリア樹脂組成物;
[15][1]~[14]のいずれかのガスバリア樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備える、多層構造体;
[16][15]の多層構造体を備える包装材;
[17][15]の多層構造体を備える縦製袋充填シール袋;
[18][15]の多層構造体を備えるバッグインボックス用内容器;
[19][15]の多層構造体を備える積層剥離容器であって、上記多層構造体が、上記ガスバリア樹脂組成物からなる層の一方の面に直接積層された、極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層を備える、積層剥離容器;
[20][15]の多層構造体を備える多層管;
[21][15]の多層構造体を備えるブロー成形容器;
[22]原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)のペレットと、化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)のペレットと、熱可塑性エラストマー(C)のペレットとをドライブレンドし、溶融混練する工程を備える、ガスバリア樹脂組成物の製造方法;
を提供することにより達成される。
本発明によれば、バイオマス由来の原料を用いていながら、化石燃料由来のものと遜色のない高いガスバリア性及び耐屈曲性、並びに十分なロングラン性を有するガスバリア樹脂組成物、このガスバリア樹脂組成物を用いた多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びこのようなガスバリア樹脂組成物の製造方法を提供できる。
本発明の一実施形態にかかる縦製袋充填シール袋を示す背面図である。
<ガスバリア樹脂組成物>
本発明のガスバリア樹脂組成物は、一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン-ビニルアルコール共重合体;以下、「EVOH」ともいう。)及び熱可塑性エラストマー(C)を含み、上記一種又は二種以上のEVOHの原料(原料モノマー)であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、上記原料(原料モノマー)であるエチレン及びビニルエステルの残部が化石燃料由来であり、上記一種又は二種以上のEVOHに対する熱可塑性エラストマー(C)の質量比(C/EVOH)が、5/95以上35/65以下である、ガスバリア樹脂組成物である。当該ガスバリア樹脂組成物は、バイオマス由来の原料が一部に用いられていることで、環境負荷が低い。また、当該ガスバリア樹脂組成物は、ガスバリア樹脂としてEVOHを選択して用いており、EVOHはバイオマス由来の原料を用いて合成された場合であっても、化石燃料由来の原料のみから合成された同一構造のEVOHと同等の高いガスバリア性を発揮できる。なお、同一構造のEVOHとは、重合度、各構造単位の含有比率、変性の有無、ケン化度等が同じであるEVOHをいう。また、当該ガスバリア樹脂組成物は熱可塑性エラストマー(C)を含み、化石燃料由来の原料のみから合成された同一構造のEVOH及び熱可塑性エラストマー(C)を含む樹脂組成物と同等の高い耐屈曲性を発揮できる。さらに、当該ガスバリア樹脂組成物においては、EVOHに化石燃料由来の原料も併用されていることで、ロングラン性も十分なものとなる。なお、本発明がこのような効果を奏する理由は定かではないが、バイオマス由来の原料を用いてEVOHを合成した場合、ガスバリア性及び耐屈曲性には影響を与えないもののロングラン性には影響を与える微量且つ不可避的な不純物が生成又は混入することなどが推測される。
ここで、本明細書におけるロングラン性とは、実施例に記載の方法で評価することができ、ガスバリア樹脂組成物を連続成膜した際の欠点、ストリーク及び着色の度合いによって総合的に評価できる。但し、用途等によっては、着色は特に問題にならない場合もあることなどから、例えば1時間の連続製膜した際の欠点及びストリークが少なければロングラン性は十分であると評価する。
原料として用いられたエチレン及びビニルエステルがバイオマス由来と化石燃料由来の双方を含むことは、バイオベース度の測定により確認することができる。バイオベース度とは、バイオマス由来原料の割合を表す指標であり、本明細書においては、加速器質量分析器(AMS)による放射性炭素(14C)の濃度測定により求められるバイオベース炭素含有率である。バイオベース度は、具体的にはASTM D6866-18に記載の方法に沿って測定することができる。すなわち、通常、EVOHのバイオベース度が0%超100%未満である場合、原料として用いられたエチレン及びビニルエステルがバイオマス由来と化石燃料由来の双方を含むといえる。
「バイオマス」とは、動植物に由来する有機物である資源であって、化石燃料(化石資源)を除いたものをいう。バイオマスは、植物に由来する有機物である資源であってよい。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、放射性炭素(14C)の濃度を利用して自社製品を追跡することも可能である。生物はその活動中に、大気中の放射性炭素(14C)を取り込み一定量含有するが、活動を停止すると新しい14Cの取り込みが止まり、全炭素に対する14Cの比が低下する。また、植物が炭素を固定する際に同位体選別と呼ばれる現象が生じ、植物の種毎に全炭素に対する14Cの比が異なることが知られている。全炭素に対する14Cの比は、産地、年代によっても異なることが知られており、原料とするバイオマスにより、異なる全炭素に対する14Cの比の原料を得ることができる。化石燃料由来の原料には14Cが殆ど残っていないため、例えば、バイオマス由来と化石燃料由来の原料の比を変化させることにより、特定の全炭素に対する14Cの比のEVOHを得ることが可能となり、この全炭素に対する14Cの比を調べることにより、自社製EVOH(ガスバリア樹脂組成物)の追跡が可能となる。
EVOHは幅広い用途で使用されており、高品質の製品を市場へ供給することはサプライヤーの責務である。また、ブランディングのために自社製品と他社製品を識別する方法が求められている。例えば、市販の包装容器のガスバリア層に用いられているEVOHは、熱成形により包装容器に成形されるが、熱成形時に受ける熱履歴によりエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物は溶媒に不溶なゲルを形成することがある。そのため、包装容器を回収し、使用されているEVOHを溶媒で抽出して、その分子量を測定しようとしても、分子量を正確に測定することが困難な場合が多い。そのため、成形体を分析しただけでは自社のEVOHであるか否かを判別することができない。熱成形容器以外の成形体等においても同様のことが懸念される。
EVOHは、多くの流通経路を経て、食品、医薬品、工業薬品、農薬等の包装材料として、フィルム、シート、容器等に利用されている。また、そのバリア性、保温性、耐汚染性等を活かして、自動車等車両の燃料タンク、タイヤ用チューブ材、農業用フィルム、ジオメンブレン、靴用クッション材等の用途にも使用されている。これらのEVOHが使用された材料がさらに廃棄された場合、かかる樹脂やその使用後の包装容器がどの工場、どの製造ラインから製造されたかの判別が困難である。また、使用時あるいは使用後の自社製品の品質調査や廃棄後の環境への影響や地中への分解性などの追跡も困難である。
自社製品の追跡方法の一つとして、例えば、EVOHにトレーサー物質を添加する方法が考えられる。しかしながら、トレーサーの添加はコスト上昇やEVOHの性能低下を起こす場合がある。このような背景において、放射性炭素(14C)の濃度を利用して自社製品を追跡することができることは、非常に有用な効果であると言える。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、気体の透過を抑制する機能を有する樹脂組成物である。20℃-65%RH条件下で、JIS K 7126-2(等圧法;2006年)に記載の方法に準じて測定した本発明のガスバリア樹脂組成物の酸素透過速度の上限は、100mL・20μm/(m・day・atm)が好ましく、50mL・20μm/(m・day・atm)がより好ましく、10mL・20μm/(m・day・atm)、1mL・20μm/(m・day・atm)、又は0.5mL・20μm/(m・day・atm)がさらに好ましい。
(EVOH)
本発明のガスバリア樹脂組成物に含まれる一種又は二種以上のEVOHの形態としては、以下の(I)及び(II)の形態が挙げられる。
(I)原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるEVOH(A)と、化石燃料由来であるEVOH(B)とを含む形態
(II)原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるEVOH(A’)を含む形態
一種又は二種以上のEVOHは、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるものであってよい。すなわち、EVOH(A)は、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の少なくとも一部がバイオマス由来のEVOHであってよい。EVOH(B)は、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の全てが化石燃料由来のEVOHであってよい。EVOH(A’)は、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来のEVOHであってよい。
(EVOH(A))
EVOH(A)は、原料モノマーであるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるEVOHである。EVOH(A)がバイオマス由来の原料を含むことで、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度を高め、環境負荷を低減できる。
EVOH(A)は、少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン及びビニルエステルの共重合体のケン化により得られる。EVOH(A)の前駆体となるエチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は、従来の化石燃料由来のエチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化と同様の公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルを用いることができ、酢酸ビニルが好ましい。
バイオマス由来のエチレンは、例えばバイオマス原料からバイオエタノールを精製し、脱水反応を行うなど、公知の方法で製造することができる。バイオマス原料としては、廃棄物系、未利用系、資源作物系等を用いることができ、例えば、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦わら、稲わら、古紙、製紙残渣など)、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、サトウキビ、おから、油脂(菜種油、綿実油、大豆油、ココナッツ油、ヒマシ油など)、炭水化物系作物(トウモロコシ、イモ類、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、キャッサバ、サゴヤシなど)、バガス、そば、大豆、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油など)、パルプ黒液、植物油カスなどを用いることができる。
バイオエタノールを製造する方法は特に限定されず、例えば、バイオマス原料を必要に応じて前処理(加圧熱水処理、酸処理、アルカリ処理、糖化酵素を用いた糖化処理)した上で、酵母発酵させバイオエタノールを製造した後、蒸留工程及び脱水工程を経てバイオエタノールを精製することができる。バイオエタノール製造の際に、糖化処理を行う場合、糖化と発酵を段階的に行う逐次糖化発酵を用いてもよいし、糖化と発酵を同時に行う並行糖化発酵を用いてもよいが、製造効率の観点から並行糖化発酵にてバイオエタノールを製造することが好ましい。
市販のバイオマス由来のエチレンを使用してもよく、例えばBraskem S.A.製のサトウキビ由来バイオエチレン等を使用できる。
バイオマス由来のビニルエステルとしては、バイオマス由来のエチレンを用いて製造したビニルエステルが挙げられる。バイオマス由来のビニルエステルの製造方法としては、例えば一般的な工業製法であるパラジウム触媒を用いてエチレンと酢酸と酸素分子とを反応させる方法等が挙げられる。また、バイオマス由来のビニルエステルは、バイオマス由来のカルボン酸を用いて製造されたビニルエステルであってもよい。EVOH(A)のケン化度が100モル%では無い場合、バイオマス由来のアシル基が残存することとなる。
EVOH(A)のエチレン単位含有量の下限は20モル%が好ましく、23モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量が20モル%以上であると、ロングラン性が高まる傾向となる。EVOH(A)のエチレン単位含有量の上限は60モル%が好ましく、55モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量が60モル%以下であると、ガスバリア性がより良好となる傾向となる。EVOHのエチレン単位含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
EVOH(A)のケン化度の下限は90モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、99モル%がさらに好ましい。EVOH(A)のケン化度が90モル%以上であると、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるガスバリア性及びロングラン性がより良好となる傾向がある。また、EVOH(A)のケン化度の上限は100モル%であってよく、99.97モル%又は99.94モル%であってもよい。EVOHのケン化度は、H-NMR測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とを測定して算出できる。
EVOH(A)の原料として用いられるエチレン及びビニルエステルは、その少なくとも一部がバイオマス由来であり、ビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であることが好ましく、ビニルエステルの全部がバイオマス由来であってもよい。また、EVOH(A)の原料であるエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来であることも好ましく、エチレンの全部がバイオマス由来であってもよい。また、EVOH(A)の原料であるビニルエステルの少なくとも一部及びエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来であることが好ましい場合もあり、ビニルエステル及びエチレンの全てがバイオマス由来であってもよい。
EVOH(A)を構成する全ビニルアルコール単位(ビニルエステル単位のケン化物)におけるバイオマス由来のビニルアルコール単位の割合の下限は、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、25モル%又は45モル%がよりさらに好ましく、70モル%、90モル%又は99モル%であってもよく、EVOH(A)を構成する全てのビニルアルコール単位がバイオマス由来であってもよい。EVOH(A)を構成する全ビニルアルコール単位における化石燃料由来のビニルアルコール単位の割合の上限は、99モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、90モル%がさらに好ましく、75モル%又は55モル%がよりさらに好ましく、30モル%、10モル%又は1モル%であってもよく、EVOH(A)を構成する全ビニルアルコール単位中に化石燃料由来のビニルアルコール単位が含まれていなくてもよい。EVOH(A)を構成する全ビニルアルコール単位におけるバイオマス由来のビニルアルコール単位の割合が高くなると、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるバイオベース度が高まり、環境負荷を低減できる傾向となる。一方、バイオベース度及びロングラン性のバランスに優れるガスバリア樹脂組成物を提供する観点からは、バイオマス由来のビニルアルコール単位の割合は5モル%以上95モル%以下が好ましく、15モル%以上85モル%以下がより好ましく、25モル%以上75モル%以下がさらに好ましく、35モル%以上65モル%以下が特に好ましい。
EVOH(A)を構成する全エチレン単位におけるバイオマス由来のエチレン単位の割合の下限は、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、25モル%又は45モル%がよりさらに好ましく、70モル%、90モル%又は99モル%であってもよく、EVOH(A)を構成する全てのエチレン単位がバイオマス由来であってもよい。EVOH(A)を構成する全エチレン単位における化石燃料由来のエチレン単位の割合の上限は、99モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、90モル%がさらに好ましく、75モル%又は55モル%がよりさらに好ましく、30モル%、10モル%又は1モル%であってもよく、EVOH(A)を構成する全エチレン単位中に化石燃料由来のエチレン単位が含まれていなくてもよい。EVOH(A)を構成する全エチレン単位におけるバイオマス由来のエチレン単位の割合が高くなると、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるバイオベース度が高まり、環境負荷を低減できる傾向となる。一方、バイオベース度及びロングラン性のバランスに優れるガスバリア樹脂組成物を提供する観点からは、バイオマス由来のエチレン単位の割合は5モル%以上95モル%以下が好ましく、15モル%以上85モル%以下がより好ましく、25モル%以上75モル%以下がさらに好ましく、35モル%以上65モル%以下が特に好ましい。
EVOH(A)のバイオベース度の下限は、本発明のガスバリア樹脂組成物の環境負荷を低減する観点から1%が好ましく、5%がより好ましく、20%がさらに好ましく、40%が特に好ましい。さらにEVOH(A)のバイオベース度の下限は、60%であってもよく、80%又は95%であってもよい。また、EVOH(A)のバイオベース度の上限は、100%であってもよいが、ロングラン性を良好とする観点から99%が好ましく、95%がより好ましく、85%、75%又は65%がさらに好ましい場合もある。
EVOH(A)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン、ビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOH(A)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、上記他の単量体由来の単位のEVOH(A)の全構造単位に対する含有量の上限は30モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、5モル%がよりさらに好ましく、1モル%がよりさらに好ましいこともある。また、EVOH(A)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その含有量の下限は0.05モル%であってもよく、0.10モル%であってもよい。上記他の単量体は、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
EVOH(A)は、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の手法の後変性がされていてもよい。
EVOH(A)がその他単量体単位等の変性基を有する場合、EVOH(A)が下記式(I)で表される構造を持つことが好ましい。
Figure 2022027731000002
[式(I)中、Xは水素原子、メチル基又はR-OHで表される基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~9のアルキレン基又は炭素数1~9のアルキレンオキシ基を表し、上記アルキレン基及び上記アルキレンオキシ基は水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を含んでもよい。]
Xは、好ましくは水素原子又はR-OHで表される基であり、より好ましくはR-OHで表される基である。
及びRとして用いられるアルキレン基及びアルキレンオキシ基は水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を含んでもよい。R及びRは、好ましくは炭素数1~5のアルキレン基又はアルキレンオキシ基であり、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基又はアルキレンオキシ基である。
式(I)で表される構造(変性基)の具体例としては、例えば、下記の式(II)、式(III)、及び式(IV)で表される構造単位(変性基)が挙げられる。
Figure 2022027731000003
[式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表し、該アルキル基は水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を含んでもよい。]
Figure 2022027731000004
[式(III)中、Rは式(I)中のXと同義である。Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表し、該アルキル基は水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を含んでもよい。]
Figure 2022027731000005
[式(IV)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基又は水酸基を表す。また、上記アルキル基、上記シクロアルキル基が有する水素原子の一部又は全部は、水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。]
本発明において、式(I)中のRが単結合で、Xがヒドロキシメチル基(式(II)中のR、Rが水素原子)であってもよい。この変性基を有するEVOH(A)を用いることで、ガスバリア性を著しく悪化させることなく延伸性、熱成形性等の二次加工性を高められる傾向となる。EVOH(A)が上記変性基を含有する場合、その含有量の下限は0.1モル%が好ましく、0.4モル%がより好ましく、1.0モル%がさらに好ましい。一方、上記変性基の含有量の上限は、ガスバリア性を良好とする観点から20モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、8モル%がさらに好ましく、5モル%が特に好ましい。
本発明において、式(I)中のRがヒドロキシメチレン基、Xが水素原子(式(III)中のR、Rが水素原子)であってもよい。この変性基を有するEVOH(A)を用いることで、ガスバリア性を著しく悪化させることなく延伸性、熱成形性等の二次加工性を高められる傾向となる。EVOH(A)が上記変性基を含有する場合、その含有量の下限は0.1モル%が好ましく、0.4モル%がより好ましく、1.0モル%がさらに好ましい。一方、上記変性基の含有量の上限は、ガスバリア性を良好とする観点から20モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、8モル%がさらに好ましく、5モル%が特に好ましい。
本発明において、式(I)中のRがメチルメチレンオキシ基、Xが水素原子であってもよい。この変性基を有するEVOH(A)を用いることで、ガスバリア性を著しく悪化させることなく延伸性、熱成形性等の二次加工性を高められる傾向となる。また、上記メチルメチレンオキシ基は、酸素原子が主鎖の炭素原子に結合している。すなわち、式(IV)中、R、Rの一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。EVOH(A)が上記変性基を含有する場合、その含有量の下限は0.1モル%が好ましく、0.5モル%がより好ましく、1.0モル%がさらに好ましく、2.0モル%が特に好ましい。一方、上記変性基の含有量の上限は、ガスバリア性を良好とする観点から20モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。
EVOH(A)は、単独で用いても二種以上併用してもよい。
JIS K7210:1999に準拠して測定した、EVOH(A)の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)の下限は、0.1g/10分が好ましく、0.5g/10分がより好ましく、1.0g/10分がさらに好ましい。一方、EVOH(A)のMFRの上限は、30g/10分が好ましく、20g/10分がより好ましく、15g/10分がさらに好ましい。EVOH(A)の190℃、2160g荷重におけるMFRが上記範囲であると、溶融成形性が高まり、結果としてロングラン性が高まる傾向となる。
EVOH(A)の融点の下限は135℃が好ましく、150℃がより好ましく、155℃がさらに好ましい。EVOH(A)の融点が135℃以上であると、ガスバリア性に優れる傾向となる。またEVOH(A)の融点の上限は200℃が好ましく、190℃がより好ましく、185℃がさらに好ましい。EVOH(A)の融点が200℃以下であると、溶融成形性が良好となり、結果としてロングラン性が高まる傾向となる。
(EVOH(B))
EVOH(B)は、化石燃料由来のEVOHである。ここで、化石燃料由来のEVOHとは、化石燃料由来の原料を用いて合成されたEVOHを意味する。すなわち、EVOH(B)は、原料モノマーであるエチレン、ビニルエステル及び必要に応じて用いられるその他の単量体の全てが化石燃料由来であるEVOHである。換言すれば、EVOH(B)は、バイオマス由来の原料を用いずに合成されたEVOHである。本発明のガスバリア樹脂組成物がEVOH(B)を含むことで、十分なロングラン性を発揮することができる。
EVOH(B)の具体的及び好適な態様は、原料が化石燃料由来であること、つまりバイオベース度が0%であること以外は、EVOH(A)と同様である。すなわち、EVOH(B)の具体的及び好適なエチレン単位含有量、ケン化度、他の単量体由来の種類及び含有量、MFR、融点等は、EVOH(A)と同様である。
EVOH(B)は、単独で用いても二種以上併用してもよい。
EVOH(A)とEVOH(B)とを併用する上記(I)の形態において、EVOH(A)とEVOH(B)との質量比(A/B)の下限は、1/99が好ましく、5/95がより好ましく、15/85がさらに好ましく、40/60が特に好ましい。質量比(A/B)を1/99以上とすることにより、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度を高め、環境負荷を小さくすることができる。より環境負荷を低減する観点からは、上記質量比(A/B)の下限は、60/40が好ましい場合もあり、75/25が好ましい場合もある。また、質量比(A/B)の上限は99/1が好ましく、95/5がより好ましく、85/15がさらに好ましい場合もあり、60/40又は40/60がよりさらに好ましい場合もある。質量比(A/B)を99/1以下とすることでロングラン性を高めることができる。
EVOH(A)及びEVOH(B)のエチレン単位含有量、ケン化度、MFR及び融点等は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。ロングラン性等の性能を高めることなどからは、EVOH(A)及びEVOH(B)のエチレン単位含有量、ケン化度、MFR及び融点は、それぞれ同一であるか近い値であることが好ましい。EVOH(A)及びEVOH(B)のエチレン単位含有量の差は、6モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、0モル%がさらに好ましい。また、EVOH(A)及びEVOH(B)のケン化度の差は2モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましく、0モル%がさらに好ましい。また、EVOH(A)及びEVOH(B)のMFRの差は2g/10分以下が好ましく、1g/10分以下がより好ましく、0g/10分がさらに好ましい。また、EVOH(A)及びEVOH(B)の融点の差は7℃以下が好ましく、3℃以下がより好ましく、0℃がさらに好ましい。
(EVOH(A’))
EVOH(A’)は、原料モノマーであるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、上記原料モノマーであるエチレン及びビニルエステルの残部が化石燃料由来であるEVOHである。EVOH(A’)の原料がバイオマス由来の原料を含むことで、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるバイオベース度を高め、環境負荷を低減できる傾向となる。また、EVOH(A’)の原料が化石燃料由来の原料を含むことで、本発明のガスバリア樹脂組成物のロングラン性を良好なものとすることができる。
EVOH(A’)は、一部がバイオマス由来であり残部が化石燃料由来であるエチレン及びビニルエステルの共重合体のケン化により得られる。EVOH(A’)の前駆体となるエチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は、原料の一部にバイオマス由来のものが用いられること以外は、従来公知の方法により行うことができる。
EVOH(A’)の合成に用いられるバイオマス由来のエチレン及びバイオマス由来のビニルエステルの例は、EVOH(A)の合成に用いられるものとして上記したものと同様である。
EVOH(A’)のエチレン単位含有量及びケン化度の具体的及び好適な条件は、前述したEVOH(A)と同様である。
EVOH(A’)の原料として用いられるエチレン及びビニルエステルにおいては、エチレンの少なくとも一部がバイオマス由来であることが好ましく、エチレンの全部がバイオマス由来であってもよい。また、EVOH(A’)の原料であるビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であることも好ましく、ビニルエステルの全部がバイオマス由来であってもよい。
EVOH(A’)を構成する全ビニルアルコール単位(ビニルエステル単位のケン化物)におけるバイオマス由来のビニルアルコール単位の割合の下限は、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、25モル%又は45モル%がさらに好ましく、70モル%、90モル%又は99モル%であってもよく、EVOH(A’)を構成するすべてのビニルアルコール単位がバイオマス由来であってもよい。EVOH(A’)を構成する全ビニルアルコール単位における化石燃料由来のビニルアルコール単位の割合の上限は、99モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、90モル%がさらに好ましく、75モル%又は55モル%がさらに好ましく、30モル%、10モル%又は1モル%であってもよく、EVOH(A’)を構成する全ビニルアルコール単位中に化石燃料由来のビニルアルコール単位が含まれていなくてもよい。EVOH(A’)を構成する全ビニルアルコール単位におけるバイオマス由来のビニルアルコール単位の割合が高くなると、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるバイオベース度が高まり、環境負荷を低減できる傾向となる。一方、バイオベース度及びロングラン性のバランスに優れるガスバリア樹脂組成物を提供する観点からは、バイオマス由来のビニルアルコール単位の割合は5モル%以上95モル%以下が好ましく、15モル%以上85モル%以下がより好ましく、25モル%以上75モル%以下がさらに好ましく、35モル%以上65モル%以下が特に好ましい。
EVOH(A’)を構成する全エチレン単位におけるバイオマス由来のエチレンの割合の下限は、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、25モル%又は45モル%がさらに好ましく、70モル%、90モル%又は99モル%であってもよく、EVOH(A’)を構成する全てのエチレン単位がバイオマス由来であってもよい。EVOH(A’)を構成する全エチレン単位における化石燃料由来のエチレン単位の割合の上限は、99モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、90モル%がさらに好ましく、75モル%又は55モル%がよりさらに好ましく、30モル%、10モル%又は1モル%であってもよく、EVOH(A’)を構成する全エチレン単位中に化石燃料由来のエチレン単位が含まれていなくてもよい。EVOH(A’)を構成する全エチレン単位におけるバイオマス由来のエチレン単位の割合が高くなると、本発明のガスバリア樹脂組成物におけるバイオベース度が高まり、環境負荷を低減できる傾向となる。一方、バイオベース度及びロングラン性のバランスに優れるガスバリア樹脂組成物を提供する観点からは、バイオマス由来のエチレン単位の割合は5モル%以上95モル%以下が好ましく、15モル%以上85モル%以下がより好ましく、25モル%以上75モル%以下がさらに好ましく、35モル%以上65モル%以下が特に好ましい。
EVOH(A’)のバイオベース度の下限は、本発明のガスバリア樹脂組成物の環境負荷を低減する観点から1%が好ましく、5%がより好ましく、20%がさらに好ましく、40%が特に好ましい。また、例えば特に優れたロングラン性が要求されない用途などにおいては、EVOH(A’)のバイオベース度の下限は、60%であってもよく、80%であってもよい。一方、EVOH(A’)のバイオベース度の上限は、ロングラン性を良好とする観点から99%が好ましく、95%がより好ましく、85%、75%又は65%がさらに好ましい場合もある。
EVOH(A’)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン、ビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよく、後変性されていてもよい。共重合成分や後変性の具体例としては、前述したEVOH(A)と同様である。
EVOH(A’)は、単独で用いても二種以上併用してもよい。
JIS K7210:1999に準拠して測定した、EVOH(A’)の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)及び融点の好適な態様は、前述したEVOH(A)と同様である。
本発明のガスバリア樹脂組成物を構成する全ての樹脂における一種又は二種以上のEVOHが占める割合の下限は65質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。上記全ての樹脂における一種又は二種以上のEVOHが占める割合の上限は、例えば95質量%であってよい。また、本発明のガスバリア樹脂組成物における一種又は二種以上のEVOHが占める割合の下限は、65質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物における一種又は二種以上のEVOHが占める割合の上限は、例えば95質量%であってよい。
本発明のガスバリア樹脂組成物に含まれる一種又は二種以上のEVOH全体のバイオベース度の下限は、本発明のガスバリア樹脂組成物の環境負荷を低減する観点から1%が好ましく、5%がより好ましく、20%がさらに好ましく、40%が特に好ましい。また、例えば特に優れたロングラン性が要求されない用途などにおいては、上記EVOH全体のバイオベース度の下限は、60%であってもよく、80%であってもよい。一方、上記EVOH全体のバイオベース度の上限は、ロングラン性を良好とする観点から99%が好ましく、95%がより好ましく、85%、75%、65%、55%、45%、35%又は25%がさらに好ましい場合もある。
本発明のガスバリア樹脂組成物に含まれる一種又は二種以上のEVOH全体のエチレン単位含有量、ケン化度、MFR及び融点の具体的及び好適範囲は、上述したEVOH(A)の範囲と同様である。
(熱可塑性エラストマー(C))
本発明のガスバリア樹脂組成物は熱可塑性エラストマー(C)を含む。当該ガスバリア樹脂組成物が熱可塑性エラストマー(C)を含むことで、耐屈曲性が良好となる傾向となる。なお、熱可塑性エラストマー(C)は、原料がバイオマス由来であっても、化石燃料由来であってもよい。
熱可塑性エラストマー(C)としては特に限定されず、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。これらは、一種又は二種以上を組み合わせても良い。中でも、耐屈曲性を向上させる観点から、熱可塑性エラストマー(C)は、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(以下、TPEEと称することがある)としては、分子中のハードセグメントとしてポリエステルを、ソフトセグメントとしてガラス転移温度(Tg)の低いポリエーテル又はポリエステルを備えるマルチブロックコポリマーが挙げられる。TPEEは、分子構造の違いによって以下のタイプに分けることができ、中でもポリエステル・ポリエーテル型TPEEとポリエステル・ポリエステル型TPEEが好ましい。
(1)ポリエステル・ポリエーテル型TPEE
一般には、ハードセグメントとして芳香族系結晶性ポリエステルを、ソフトセグメントとしてポリエーテルを用いた熱可塑性エラストマーである。
(2)ポリエステル・ポリエステル型TPEE
ハードセグメントとして芳香族系結晶性ポリエステルを、ソフトセグメントとして脂肪族系ポリエステルを用いた熱可塑性エラストマーである。
(3)液晶性TPEE
ハードセグメントとして剛直な液晶分子を、ソフトセグメントとして脂肪族系ポリエステルを用いた熱可塑性エラストマーである。
上記ポリエステルセグメントとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオール等のジオール成分とからなるポリエステルセグメントが挙げられる。上記ポリエーテルセグメントとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の脂肪族ポリエーテルセグメントが挙げられる。
上記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、通常、ハードセグメントとしてスチレンモノマー重合体ブロック(Hb)を、ソフトセグメントとして共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロック(Sb)を備える。このスチレン系熱可塑性エラストマーの構造としては、Hb-Sbで表されるジブロック構造、Hb-Sb-Hb若しくはSb-Hb-Sbで表されるトリブロック構造、Hb-Sb-Hb-Sbで表されるテトラブロック構造、又はHbとSbとが計5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造であってもよい。
上記スチレンモノマー重合体ブロック(Hb)に使用されるスチレン系モノマーとしては、特に限定されず、スチレン及びその誘導体等を挙げることができる。具体的には、スチレン、α―メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t-ブトキシスチレン等のスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類等のビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物等が挙げられる。中でもスチレンが好ましい。スチレン系モノマーは1種のみでも良く、2種以上であっても良い。
上記共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロック(Sb)に使用される共役ジエン化合物も、特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等を挙げることができる。中でも、ブタジエンが好ましい。共役ジエン化合物は1種のみでも良く、2種以上であっても良い。さらに、他の共単量体、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレンを共重合することもできる。また、共役ジエン化合物重合体ブロックは、部分的又は完全に水素添加されている水素添加体であっても良い。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体(SB)、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SB/IS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(SBS)並びにその水素添加体が挙げられる。中でも、スチレン-イソプレンジブロック共重合体の水素添加体(SEP)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体の水素添加体(SEB)、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の水素添加体(SEPS)、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレントリブロック共重合体の水素添加体(SEEPS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体の水素添加体(SEBS)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
上記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーには、ハードセグメントとしてポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンブロックを、ソフトセグメントとしてエチレン-プロピレン-ジエン共重合体等のゴムブロックを備える熱可塑性エラストマー等が含まれる。なお、かかる熱可塑性エラストマーには、ブレンド型とインプラント化型があるが、EVOHとの相溶性及びコストの点でインプラント化型が好ましい。
熱可塑性エラストマー(C)は、無変性熱可塑性エラストマー(c1)、変性熱可塑性エラストマー(c2)及びハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、変性熱可塑性エラストマー(c2)を含有することがより好ましい。変性熱可塑性エラストマー(c2)を含有することにより、例えば溶融混練時に一種又は二種以上のEVOHと変性熱可塑性エラストマー(c2)の反応が促され、特殊な押出条件を取らずとも、良好な相分離構造を有するガスバリア樹脂組成物を得ることができる傾向となる。熱可塑性エラストマー(C)は、無変性熱可塑性エラストマー(c1)及び変性熱可塑性エラストマー(c2)の双方を含有してもよく、変性熱可塑性エラストマー(c2)のみからなってもよく、ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)のみからなってもよい。無変性熱可塑性エラストマー(c1)は、上記熱可塑性エラストマーとして挙げた樹脂をそのまま使用できる。
本発明のガスバリア樹脂組成物が、無変性熱可塑性エラストマー(c1)を含む場合、熱可塑性エラストマー(C)における無変性熱可塑性エラストマー(c1)が占める割合の下限は30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい場合もある。熱可塑性エラストマー(C)において、無変性熱可塑性エラストマー(c1)が占める割合の上限は100質量%であっても、60質量%であってもよい。無変性熱可塑性エラストマー(c1)は、一種又は二種以上のEVOHと反応する部位を有さないため、熱可塑性エラストマー(C)における無変性熱可塑性エラストマー(c1)の占める割合が高くなると、例えばゲル等の生成を抑制できる傾向となり、結果としてロングラン性が向上する傾向となる。
変性熱可塑性エラストマー(c2)は、酸変性熱可塑性エラストマーであることが好ましい。変性熱可塑性エラストマー(c2)は、例えば、無変性熱可塑性エラストマー(c1)を不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性することにより得られる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステルなどが挙げられる。中でも無水マレイン酸により変性されていることが好ましい。このような変性熱可塑性エラストマー(c2)を使用することにより、一種又は二種以上のEVOHと熱可塑性エラストマー(C)との相溶性が高まり、ガスバリア性及び耐屈曲性等がより向上する傾向となる。
変性熱可塑性エラストマー(c2)は、変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。これらは、一種又は二種以上を組み合わせても良い。変性熱可塑性エラストマー(c2)は、無水マレイン酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、無水マレイン酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。中でも、耐屈曲性を向上させる観点から、変性熱可塑性エラストマー(c2)が、無水マレイン酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
変性熱可塑性エラストマー(c2)が酸変性熱可塑性エラストマーである場合、酸変性熱可塑性エラストマーの酸価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが、耐屈曲性及びロングラン性を高める観点から好ましい。また、熱可塑性エラストマー(C)の酸価は0.5mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であることが、耐屈曲性及びロングラン性を高める観点から好ましい。
熱可塑性エラストマー(C)において、変性熱可塑性エラストマー(c2)が占める割合の下限は5質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい場合もあり、熱可塑性エラストマー(C)は変性熱可塑性エラストマー(c2)のみから構成されていてもよい。熱可塑性エラストマー(C)において、変性熱可塑性エラストマー(c2)が占める割合の上限は100質量%であっても、60質量%であってもよい。変性熱可塑性エラストマー(c2)は一種又は二種以上のEVOHと熱可塑性エラストマー(C)との相溶性を高めるため、熱可塑性エラストマー(C)における変性熱可塑性エラストマー(c2)の占める割合が高くなると、相溶性が向上する傾向となり、結果として耐屈曲性がより向上する傾向となる。
熱可塑性エラストマー(C)が無変性熱可塑性エラストマー(c1)及び変性熱可塑性エラストマー(c2)を含む場合、変性熱可塑性エラストマー(c2)に対する無変性熱可塑性エラストマー(c1)の質量比(c1/c2)は0/100超が好ましく、20/80以上がより好ましく、40/60以上がさらに好ましく、80/20以上が特に好ましい場合もある。また、質量比(c1/c2)は95/5以下が好ましい。質量比(c1/c2)が上記範囲内であると、熱可塑性エラストマー(C)の酸価を調整しやすく、本発明のガスバリア樹脂組成物において耐屈曲性及びロングラン性に優れる組成物を製造しやすくなる傾向となる。
熱可塑性エラストマー(C)において無変性熱可塑性エラストマー(c1)及び変性熱可塑性エラストマー(c2)が占める割合の下限は、70質量%であっても、80質量%であっても、90質量%であってもよく、熱可塑性エラストマー(C)は、実質的に無変性熱可塑性エラストマー(c1)及び変性熱可塑性エラストマー(c2)のみからなってもよく、無変性熱可塑性エラストマー(c1)及び変性熱可塑性エラストマー(c2)のみからなってもよい。
熱可塑性エラストマー(C)が、ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)を含むことも好ましい。当該ハロゲン原子は、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの製造時に使用される重合触媒に由来するものであってもよく、その場合、ハロゲン原子はポリスチレン系熱可塑性エラストマーの末端に含有される。ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの末端にハロゲン原子を含有することにより、EVOHと反応し、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーのEVOH相中での分散性が向上する傾向となる。ポリスチレン系熱可塑性エラストマーに含有されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素などが挙げられ、中でも、塩素が好ましい。ポリスチレン系熱可塑性エラストマー中のハロゲン原子の含有量は、通常、0.005~3.000質量%である。ポリスチレン系熱可塑性エラストマー中のハロゲン原子は、イオンクロマトグラフを用いて分析することができる。ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)としては、ハロゲン原子を含有していれば特に限定されず、例えば、上述したポリスチレン系エラストマーとして例示した化合物にハロゲン原子を含有させた化合物を用いることができる。中でも、ハロゲン原子を含有するスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体であることがより好ましく、例えば、株式会社カネカ社製 商品名「SIBSTAR 062T」等が挙げられる。熱可塑性エラストマー(C)におけるハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)が占める割合の下限は20質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、熱可塑性エラストマー(C)は実質的にハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)のみからなってもよく、ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)のみからなってもよい。
本発明のガスバリア樹脂組成物における一種又は二種以上のEVOHに対する熱可塑性エラストマー(C)の質量比(C/EVOH)の下限は5/95であり、8/92が好ましく、12/88がより好ましい場合もあり、15/85又は25/75がさらに好ましい場合もある。質量比(C/EVOH)を上記下限以上とすることで、耐屈曲性等を高めることができる。一方、この質量比(C/EVOH)の上限は35/65であり、30/70が好まし場合もあり、25/75がより好ましい場合もあり、15/85がさらに好ましい場合もある。質量比(C/EVOH)を上記上限以下とすることで、ガスバリア性を高められる傾向となる。
(相分離構造)
本発明のガスバリア樹脂組成物において、一種又は二種以上のEVOHのマトリックス中に熱可塑性エラストマー(C)の粒子が分散していることが好ましい。すなわち、本発明のガスバリア樹脂組成物は、海島構造を有し、海相が主に一種又は二種以上のEVOHからなり、島相が主に熱可塑性エラストマー(C)からなる海島構造であることが好ましい。このように、海相が主に一種又は二種以上のEVOHからなることで、ガスバリア性を保ちつつ、柔軟性が向上する。
本発明の樹脂組成物が海島構造を有し、海相が主に一種又は二種以上のEVOHからなり、島相が主に熱可塑性エラストマー(C)からなる場合、透明性を向上させる観点から、熱可塑性エラストマー(C)からなる島相の平均粒子径は4.5μm以下が好ましく、3.5μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましく、2.5μm以下が特に好ましく、2.0μm以下が最も好ましい。熱可塑性エラストマー(C)の平均粒子径は0.1μm以上であってもよい。主に熱可塑性エラストマー(C)からなる島相の平均粒子径が上記範囲であると、ガスバリア性及び透明性を保ちつつ、耐屈曲性が向上し、さらに後述する積層剥離容器における剥離性が向上する傾向となるため好ましい。熱可塑性エラストマー(C)の平均粒子径は、混錬強度の調整、及び一種又は二種以上のEVOHと熱可塑性エラストマー(C)の組成比により調整できる。
本発明のガスバリア樹脂組成物において、一種又は二種以上のEVOHと熱可塑性エラストマー(C)との屈折率差は0.05以下が好ましく、0.04以下がより好ましく、0.03以下がさらに好ましい。該屈折率差は、0.005以上であってもよい。該屈折率差が上記範囲であると、本発明のガスバリア樹脂組成物の透明性が良好になる傾向となる。
熱可塑性エラストマー(C)は1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
本発明のガスバリア樹脂組成物を構成する全ての樹脂における一種又は二種以上のEVOH及び熱可塑性エラストマー(C)が占める割合の下限は80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、98質量%が特に好ましく、99質量%であってもよく、本発明のガスバリア樹脂組成物を構成する樹脂は、実質的に一種又は二種以上のEVOH及び熱可塑性エラストマー(C)のみから構成されていてもよく、一種又は二種以上のEVOH並びに熱可塑性エラストマー(C)のみから構成されていてもよい。
(酸化防止剤)
本発明のガスバリア樹脂組成物は、該ガスバリア樹脂組成物の酸化劣化等を改善するため、さらに酸化防止剤を含有しても良い。当該ガスバリア樹脂組成物が酸化防止剤をさらに含む場合、当該ガスバリア樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備える多層構造体を備える多層管(パイプ)等、長期的に使用する用途において、経年劣化等に起因する成形体のクラックの発生を抑制できる傾向となる。
酸化防止剤は、酸化防止能を有する化合物である。酸化防止剤の融点は必ずしも限定されるものではないが、170℃以下であることが好ましい。酸化防止剤の融点が170℃以下である場合、溶融混合により当該ガスバリア樹脂組成物を製造する際に、押出機内で溶融し易くなる。このため、酸化防止剤が当該ガスバリア樹脂組成物中に局在化して高濃度部分が着色することを抑制できる。
酸化防止剤の分子量は300以上であることが好ましい。酸化防止剤の分子量が300以上である場合、本発明のガスバリア樹脂組成物から各種成形体を得た際に、表面に酸化防止剤がブリードアウトして成形体の外観が不良となることを抑制でき、また、当該ガスバリア樹脂組成物の熱安定性も高まる傾向となる。上記分子量は400以上がより好ましく、500以上が特に好ましい。一方、酸化防止剤の分子量の上限は特に限定されないが、分散性の観点から、8000以下が好ましく、6000以下がより好ましく、4000以下がさらに好ましく、2000以下が特に好ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール基を有する化合物が好適に用いられる。ヒンダードフェノール基を有する化合物は、それ自身が熱安定性に優れる一方で、酸化劣化の原因である酸素ラジカルを捕捉する能力があり、酸化防止剤として樹脂組成物に配合した場合、酸化劣化を防止する効果に優れるものである。
ヒンダードフェノール基を有する化合物としては、通常市販されているものを用いることができ、例えば、以下の製品が挙げられる。
(1)BASF社製「IRGANOX 1010」:融点110-125℃、分子量1178、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
(2)BASF社製「IRGANOX 1076」:融点50-55℃、分子量531、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(3)BASF社製「IRGANOX 1098」:融点156-161℃、分子量637、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕
(4)BASF社製「IRGANOX 245」:融点76-79℃、分子量587、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(5)BASF社製「IRGANOX 259」:融点104-108℃、分子量639、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(6)住友化学工業株式会社製「Sumilizer MDP-s」:融点約128℃、分子量341、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)
(7)住友化学工業株式会社製「Sumilizer GM」:融点約128℃、分子量395、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート
(8)住友化学工業株式会社製「Sumilizer GA-80」:融点約110℃、分子量741、3,9-ビス〔2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン
酸化防止剤として、ヒンダードアミン基を有する化合物も好適に用いられる。ヒンダードアミン基を有する化合物は、酸化防止剤としてガスバリア樹脂組成物に配合した場合、一種又は二種以上のEVOHの熱劣化を防止するのみにとどまらず、一種又は二種以上のEVOHの熱分解により生成するアルデヒドを捕捉する効果もあり、分解ガスの発生を低減することで成形時のボイドあるいは気泡の発生を抑制することができる。また、アルデヒドを捕捉する事により、本発明のガスバリア樹脂組成物を食品包装容器として用いた際に、アルデヒドによる臭気が内容物の味覚を損ねる点も改善される。
ヒンダードアミン基を有する化合物として好ましいものは、ピペリジン誘導体であり、特に4位に置換基を有する2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体が好ましい。その4位の置換基としては、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基が挙げられる。
また、ヒンダードアミン基のN位にはアルキル基が置換していてもよいが、水素原子が結合しているものを用いる方が熱安定効果に優れ好ましい。
ヒンダードアミン基を有する化合物としては、通常市販されているものを用いることができ、例えば、以下の製品を挙げることができる。
(9)BASF社製「TINUVIN 770」:融点81-85℃、分子量481、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
(10)BASF社製「TINUVIN 765」:液状化合物、分子量509、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及び1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(混合物)
(11)BASF社製「TINUVIN 622LD」:融点55-70℃、分子量3100-4000、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物
(12)BASF社製「CHIMASSORB 119FL」:融点130-140℃、分子量2000以上、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物
(13)BASF社製「CHIMASSORB 944LD」:融点100-135℃、分子量2000-3100、ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペジリル)イミノ〕〕
(14)BASF社製「TINUVIN 144」:融点146-150℃、分子量685、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート
(15)BASF社製「UVINUL 4050H」:融点157℃、分子量450、N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス{N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ホルムアミド}
(16)BASF社製「UVINUL 5050H」:融点104-112℃、分子量約3500、下記構造式を有する化合物
Figure 2022027731000006
これらのヒンダードフェノール基又はヒンダードアミン基を有する化合物は単独で使用しても、また、2種以上を併用してもよい。
本発明のガスバリア樹脂組成物における酸化防止剤の含有量の下限は0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限は5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。酸化防止剤の含有量が上記範囲であると、酸化防止剤が良好に分散し、本発明のガスバリア樹脂組成物から成形体を得た場合に外観に優れる傾向となる。
(ハロゲン捕捉剤)
本発明のガスバリア樹脂組成物がハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)を含む場合、ロングラン性を向上させる観点から、本発明のガスバリア樹脂組成物はハロゲン捕捉剤を含むことが好ましい。ハロゲン捕捉剤は、ハロゲン捕捉能を有するものであればよく、例えば、交換性イオンを有する層状無機化合物;酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物;酸化亜鉛;炭酸リチウムなどが挙げられる。中でも、ハロゲン捕捉剤が交換性イオンを有する層状無機化合物であることが好ましい。層状無機化合物中の層間に存在するイオンがハロゲンイオンと交換されることにより、当該ハロゲンイオンが層状無機化合物に取り込まれる。上記層状無機化合物として、例えば、粘土鉱物;層状ポリ珪酸;層状珪酸塩;層状複水酸化物;層状リン酸塩;チタン・ニオブ酸塩、六ニオブ酸塩及びモリブデン酸塩等の層状遷移金属酸素酸塩;層状マンガン酸化物;層状コバルト酸化物等を挙げることができ、中でも粘土鉱物が好ましい。
上記粘土鉱物として、例えば、ハイドロタルサイト、ゼオライト、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト及びスチーブンサイトが挙げられる。粘土鉱物は、合成粘土であっても天然粘土であってもよい。中でも、上記粘土鉱物として、ハイドロタルサイト及びゼオライトが好ましく、前者がより好ましい。ハイドロタルサイトとして、下記の一般式(I)で示されるものなど、ゼオライトとして下記式(II)で示されるものなどがそれぞれ挙げられる。
Mg1-aAl(OH)(COa/2・xHO (I)
NaO・Al・2SiO・yHO (II)
(式(I)及び(II)中、xは0~5の数、aは0<a≦0.5を満たす数、yは0~6の数を示す。)
本発明のガスバリア樹脂組成物がハロゲン捕捉剤を含む場合、急速な架橋(ゲル化)を抑制し、ロングラン性を高める観点から、その含有量の下限は0.01質量%が好ましく、0.025質量%がより好ましい。一方、ハロゲン捕捉剤に由来する凝集物の発生を抑制する観点から、ハロゲン捕捉剤の含有量の上限は1質量%が好ましく、0.8質量%がより好ましい。
本発明のガスバリア樹脂組成物において、ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)に含有されるハロゲン原子の含有量に対するハロゲン捕捉剤の含有量の質量比[ハロゲン捕捉剤/ハロゲン原子]は0.10以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましく、0.25以上が特に好ましい。また、質量比[ハロゲン捕捉剤/ハロゲン原子]は1.010以下が好ましく、0.702以下がより好ましく、0.501以下がさらに好ましく、0.40以下が特に好ましい。質量比[ハロゲン捕捉剤/ハロゲン原子]が上記範囲内であることで、長時間製造時の架橋の進行及びハロゲン捕捉剤の凝集をより抑制でき、余分なハロゲン捕捉剤の使用が抑えられるためコスト低減が可能となる。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、硫黄化合物を硫黄原子換算で0ppm超100ppm以下含んでいることが、自社製品を追跡する観点からより好ましい。また、硫黄原子換算で100ppm以下の硫黄化合物は、ガスバリア樹脂組成物の性能に実質的に影響を与えないことを発明者らは知見しており、硫黄化合物はトレーサー物質として好適である。硫黄化合物の含有量の上限は50ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましく、3ppmがよりさらに好ましく、0.3ppmが特に好ましい。硫黄化合物の含有量の下限は、0.0001ppmであっても、0.001ppmであっても、0.01ppmであっても、0.05ppmであっても、0.1ppmであってもよい。バイオマス由来の原料を用いた場合、バイオマス原料に含まれる有機系硫黄化合物を含むEVOHが得られることがある。一方、化石燃料由来のEVOHは、ナフサのクラッキング時に脱硫していることから、バイオマス由来のEVOHに比して硫黄化合物が少なくなる。そのため、このようなバイオマス由来のEVOHを用いた場合、硫黄化合物の含有量を比較することでバイオマス由来のEVOHの追跡がより容易となる。特に、本発明のガスバリア樹脂組成物が、硫黄化合物として、有機系硫黄化合物、中でもジメチルスルフィドまたはジメチルスルホキシドを含むとき、さらに追跡が容易となる。また、自社製品を追跡する観点などからは、EVOHの製造の際に、原料となるバイオマス由来のエチレン及びバイオマス由来のビニルエステル、並びに得られるEVOHに対して、硫黄化合物の含有量が検出限界値以下となるような過剰な精製を行わないことが好ましい場合がある。
(その他成分)
本発明のガスバリア樹脂組成物はカルボン酸をさらに含有することが好ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物がカルボン酸を含有すると、溶融成形性や高温下での着色耐性を改善できる。特に、ガスバリア樹脂組成物のpH緩衝能力が高まり、酸性物質や塩基性物質に対する着色耐性を改善できる場合がある点から、カルボン酸のpKaが3.5~5.5の範囲にあることがより好ましい。
本発明のガスバリア樹脂組成物がカルボン酸を含有する場合、その含有量の下限はカルボン酸根換算で30ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。一方、カルボン酸の含有量の上限は1000ppmが好ましく、600ppmがより好ましい。カルボン酸の含有量が30ppm以上であると、高温による着色耐性が良好になる傾向となる。一方、カルボン酸の含有量が1000ppm以下であると、溶融成形性が良好となる傾向となる。カルボン酸の含有量は、樹脂組成物10gを純水50mlで95℃にて8時間抽出して得られる抽出液を滴定することで算出する。ここで、樹脂組成物中のカルボン酸の含有量として、上記抽出液中に存在するカルボン酸塩の含有量は考慮しない。また、カルボン酸はカルボン酸イオンとして存在していてもよい。
カルボン酸としては、1価カルボン酸及び多価カルボン酸が挙げられ、これらは1種又は複数種からなっていてもよい。カルボン酸として1価カルボン酸と多価カルボン酸との両方を含む場合、ガスバリア樹脂組成物の溶融成形性や高温下での着色耐性をより改善できる場合がある。また、多価カルボン酸は、3個以上のカルボキシ基を有してもよい。この場合、本発明のガスバリア樹脂組成物の着色耐性をさらに向上できる場合がある。
1価カルボン酸とは、分子内に1つのカルボキシ基を有する化合物である。1価のカルボン酸のpKaが3.5~5.5の範囲にあることが好ましい。このような1価カルボン酸としては、例えばギ酸(pKa=3.77)、酢酸(pKa=4.76)、プロピオン酸(pKa=4.85)、酪酸(pKa=4.82)、カプロン酸(pKa=4.88)、カプリン酸(pKa=4.90)、乳酸(pKa=3.86)、アクリル酸(pKa=4.25)、メタクリル酸(pKa=4.65)、安息香酸(pKa=4.20)、2-ナフトエ酸(pKa=4.17)が挙げられる。これらのカルボン酸は、pKaが3.5~5.5の範囲にある限り、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子といった置換基を有してもよい。中でも、安全性が高く、取扱いが容易であることから酢酸が好ましい。
多価カルボン酸とは、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物である。この場合、少なくとも1つのカルボキシ基のpKaが3.5~5.5の範囲にあることが好ましい。このような多価カルボン酸として、例えばシュウ酸(pKa2=4.27)、コハク酸(pKa1=4.20)、フマル酸(pKa2=4.44)、リンゴ酸(pKa2=5.13)、グルタル酸(pKa1=4.30、pKa2=5.40)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=4.71)、フタル酸(pKa2=5.41)、イソフタル酸(pKa2=4.46)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、クエン酸(pKa2=4.75)、酒石酸(pKa2=4.40)、グルタミン酸(pKa2=4.07)、アスパラギン酸(pKa=3.90)が挙げられる。
本発明のガスバリア樹脂組成物はリン酸化合物をさらに含有することが好ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物がリン酸化合物を含有する場合、その含有量の下限はリン酸根換算で1ppmが好ましく、3ppmがより好ましい。一方、上記含有量の上限はリン酸根換算で200ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。この範囲でリン酸化合物を含有すると、本発明のガスバリア樹脂組成物の熱安定性を改善できる場合がある。特に、長時間に亘って溶融成形を行う際のゲル状ブツの発生や着色を抑制できる場合がある。リン酸化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形であってもよい。リン酸塩のカチオン種として、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。リン酸化合物として、具体的には、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、ホウ素化合物をさらに含有することが好ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物がホウ素化合物を含有する場合、その含有量の下限はホウ素原子換算で5ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。一方、上記含有量の上限はホウ素原子換算で5000ppmが好ましく、1000ppmがより好ましい。この範囲でホウ素化合物を含有すると、本発明のガスバリア樹脂組成物の溶融成形時の熱安定性を向上でき、ゲル状ブツの発生を抑制できる場合がある。また、得られる成形体の機械物性を向上できる場合もある。これらの効果は、EVOHとホウ素化合物との間にキレート相互作用が発生することに起因すると推測される。ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素が挙げられる。具体的には、ホウ酸としては、例えばオルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、四ホウ酸が挙げられ、ホウ酸エステルとしては、例えばホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチルが挙げられ、ホウ酸塩としては、例えば上記ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂が挙げられる。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、金属イオンをさらに含有することが好ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物が金属イオンを含有すると、多層の成形体、すなわち多層構造体としたときの層間接着性が優れたものとなる。層間接着性が向上する理由は定かでないが、ガスバリア樹脂組成物からなる層と隣接する層中に、EVOHのヒドロキシ基と反応し得る官能基を有する分子が含まれる場合には、金属イオンによって両者の結合生成反応が加速されると考えられる。また、金属イオンと上記したカルボン酸との含有比率を制御すると、本発明のガスバリア樹脂組成物の溶融成形性や着色耐性も改善できる。
本発明のガスバリア樹脂組成物が金属イオンを含有する場合、その含有量の下限は1ppmが好ましく、100ppmがより好ましく、150ppmがさらに好ましい。一方、金属イオンの含有量の上限は1000ppmが好ましく、400ppmがより好ましく、350ppmがさらに好ましい。金属イオンの含有量が1ppm以上であると、得られる多層構造体の層間接着性が良好となる傾向となる。一方、金属イオンの含有量が1000ppm以下であると、着色耐性が良好となる傾向となる。
金属イオンとしては、一価金属イオン、二価金属イオン、その他遷移金属イオンが挙げられ、これらは1種又は複数種からなっていてもよい。中でも一価金属イオン及び二価金属イオンが好ましい。
一価金属イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましく、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムのイオンが挙げられ、工業的な入手容易性の点からはナトリウム又はカリウムのイオンが好ましい。また、アルカリ金属イオンを与えるアルカリ金属塩としては、例えば脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び金属錯体が挙げられる。中でも、脂肪族カルボン酸塩及びリン酸塩が入手容易である点から好ましく、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムが好ましい。
金属イオンとして二価金属イオンを含むことが好ましい場合もある。金属イオンが二価金属イオンを含むと、例えばトリムを回収して再利用した際のEVOHの熱劣化が抑制され、得られる成形体のゲル及びブツの発生が抑制される場合がある。二価金属イオンとしては、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及び亜鉛のイオンが挙げられるが、工業的な入手容易性の点からはマグネシウム、カルシウム又は亜鉛のイオンが好ましい。また、二価金属イオンを与える二価金属塩としては、例えばカルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩及び金属錯体が挙げられカルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、炭素数1~30のカルボン酸が好ましく、具体的には、酢酸、ステアリン酸、ラウリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、オクチル酸、セバシン酸、リシノール酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられ、中でも、酢酸及びステアリン酸が好ましい。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、例えば、ブロッキング防止剤、加工助剤、EVOH及び熱可塑性エラストマー(C)以外の樹脂、安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、界面活性剤、乾燥剤、酸素吸収剤、架橋剤、各種繊維などの補強剤などのその他成分を含有してもよい。
ブロッキング防止剤としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、タングステン及びモリブデンなどから選ばれる元素の酸化物、窒化物、酸化窒化物等が挙げられ、これらの中でも入手容易性から酸化ケイ素が望ましい。本発明のガスバリア樹脂組成物がブロッキング防止剤を含むことで、耐ブロッキング性を高めることができる。
加工助剤としては、アルケマ社製Kynar(登録商標)、3M社製ダイナマー(登録商標)などのフッ素系加工助剤が挙げられる。本発明のガスバリア樹脂組成物が加工助剤を含むことで、ダイリップへの目やに付着を防止できる傾向となる。
EVOH及び熱可塑性エラストマー(C)以外の樹脂としては、例えば各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン等)、各種ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド等)、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート及び変性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。
溶融安定性等を改善するための安定剤としては、ハイドロタルサイト化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)等が挙げられる。本発明のガスバリア樹脂組成物が安定剤を含む場合、その含有量は0.001~1質量%が好ましい。
紫外線吸収剤としては、エチレン-2-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等が挙げられる。
滑剤としては、エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等が挙げられる。
充填剤としては、グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
乾燥剤としては、リン酸塩(上記リン酸塩を除く)、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、砂糖、シリカゲル、ベントナイト、モレキュラーシーブ、高吸水性樹脂等が挙げられる。
本発明のガスバリア樹脂組成物の含水量は、成形加工時のボイドの発生を防ぐ観点から、一種又は二種以上のEVOHの合計100質量部に対して、3.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましく、0.3質量部以下が特に好ましい。
本発明のガスバリア樹脂組成物は、EVOH(A)又はEVOH(A’)に起因する、バイオマス由来の不純物を含有する場合がある。様々な不純物を含有する可能性があるが、少なくとも鉄及びニッケル等の金属が多く含まれる場合が多い傾向にある。
(ガスバリア樹脂組成物のバイオベース度)
本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度の下限は、環境負荷を低減する観点から1%が好ましく、5%がより好ましく、20%がさらに好ましく、40%が特に好ましい。また、例えば特に優れたロングラン性が要求されない用途などにおいては、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度の下限は、60%であってもよく、80%であってもよい。一方、本発明のガスバリア樹脂組成物のバイオベース度の上限は、ロングラン性を良好とする観点から99%が好ましく、95%がより好ましく、85%、75%、65%、55%、45%、35%又は25%がさらに好ましい場合もある。なお、このガスバリア樹脂組成物のバイオベース度とは、EVOH及び熱可塑性エラストマー(C)以外の任意成分に含まれる他の樹脂等も考慮して測定される値をいう。
<ガスバリア樹脂組成物の製造方法>
本発明のガスバリア樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えばEVOH(A)とEVOH(B)とを含むガスバリア樹脂組成物の場合、
(1)EVOH(A)のペレットと、EVOH(B)のペレットと、熱可塑性エラストマー(C)のペレットと、必要に応じて上述したその他成分とを混合(ドライブレンド)し、混合されたペレットを溶融混練する方法、
(2)EVOH(A)のペレット及び/又はEVOH(B)のペレットに必要に応じて上述したその他成分等が含まれる溶液に浸漬させた後、EVOH(A)のペレットとEVOH(B)のペレットと熱可塑性エラストマー(C)のペレットとをドライブレンドし、これらを溶融混練する方法、
(3)EVOH(A)のペレットとEVOH(B)のペレットと熱可塑性エラストマー(C)のペレットとをドライブレンドし、これらを溶融混練する際に、押出機の途中で必要に応じて上述したその他成分を含む水溶液を液添する方法、
(4)EVOH(A)の溶融樹脂とEVOH(B)の溶融樹脂と熱可塑性エラストマー(C)の溶融樹脂とを溶融状態でブレンドする方法(その他成分は、必要に応じてEVOH(A)及び/又はEVOH(B)に予め含ませておいても、押出機内で液添してもよい)
等が挙げられる。
上記(1)~(4)等の製造方法によれば、用途、性能等に応じて、EVOH(A)とEVOH(B)との混合比率を調整することで環境負荷の低減効果とロングラン性とのバランスを考慮しつつ、高いガスバリア性を有するガスバリア樹脂組成物を製造することができる。これら中でも、(1)EVOH(A)のペレットとEVOH(B)のペレットと熱可塑性エラストマー(C)のペレットとをドライブレンドして溶融混練する工程を含むことが好ましい。ペレット同士の混合やペレットと他の成分との混合には、例えばリボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサー等を用いることができる。
また、EVOH(A’)を含むガスバリア樹脂組成物の場合、公知の方法でEVOH(A’)を合成し、得られたEVOH(A’)に対して公知の方法で熱可塑性エラストマー(C)を混合し、必要に応じて公知の方法でその他の成分を混合することにより製造することができる。
<成形体>
本発明のガスバリア樹脂組成物を含む成形体は、本発明の好適な一実施態様である。本発明のガスバリア樹脂組成物は、単層構造の成形体とすることもできるし、他の各種基材等と共に2種以上の多層構造の成形体、すなわち多層構造体とすることもできる。成形方法としては、例えば押出成形、熱成形、異形成形、中空成形、回転成形、射出成形が挙げられる。本発明のガスバリア樹脂組成物を用いた成形体の用途は多岐に亘り、例えばフィルム、シート、容器、ボトル、タンク、パイプ、ホース等が挙げられる。
具体的な成形方法として、例えばフィルム、シート、パイプ、ホースは押出成形により、容器形状は射出成形により、ボトルやタンク等の中空容器は中空成形や回転成形により成形できる。中空成形としては、押出成形によりパリソンを成形し、これをブローして成形を行う押出中空成形と、射出成形によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う射出中空成形が挙げられる。フレキシブル包装材や容器の製造には、押出成形によって多層フィルム等の包装材を成形する方法、押出成形によって成形した多層シートを熱成形して容器状の包装材にする方法が好適に用いられる。
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備える多層構造体である。当該多層構造体は、通常、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層と他の層とを積層して得られる。当該多層構造体の層数の下限としては、2であってよいが、3が好ましい。また、当該多層構造体の層数の上限としては、例えば1000であってよく、100であってもよく、20又は10であってもよい。
当該多層構造体の層構成としては、本発明のガスバリア樹脂組成物以外の樹脂又は紙基材からなる層をx層、本発明のガスバリア樹脂組成物層をy層、接着性樹脂層をz層とすると、例えばx/y、x/y/x、x/z/y、x/z/y/z/x、x/y/x/y/x、x/z/y/z/x/z/y/z/x等が挙げられる。複数のx層、y層、z層を設ける場合は、その種類は同じでも異なってもよい。また、成形時に発生するトリム等のスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層に混合してもよい。多層構造体の各層の厚さ構成は、成形性及びコスト等の観点から、全層厚さに対するy層の厚さ比が通常2~20%である。当該多層構造体は、上記x層、y層及びz層以外の他の層を有していてもよい。
上記x層に使用される樹脂としては、加工性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン等)、各種ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド等)、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート及び変性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂層は無延伸のものであってもよく、一軸又は二軸に延伸又は圧延されていてもよい。中でも、ポリオレフィンは耐湿性、機械的特性、経済性、ヒートシール性の点で、また、ポリアミドやポリエステルは機械的特性、耐熱性の点で好ましい。
また、上記x層に使用される紙基材としては、適用する紙容器の用途に応じて、種々の賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有する任意の紙を使用することができ、例えば、主強度材であり、強サイズ性の晒又は未晒の紙、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、又はミルク原紙等の各種の紙を使用することができる。上記x層としての紙基材層は、これらの紙を複数層重ねてラミネートしたものであってもよい。紙基材層は、坪量80~600g/m、好ましくは坪量100~450g/mであり、厚さ110~860μm、好ましくは140~640μmの範囲である。紙基材層の厚さが上記範囲より薄いと、容器としての強度が不足し、また、紙基材層の厚さが上記範囲より厚いと、剛性が高くなりすぎて、加工が困難になり得る。なお、紙基材層には、例えば、文字、図形、記号、その他の所望の絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
上記z層に使用される接着性樹脂は各層間を接着できればよく、例えばポリウレタン系又はポリエステル系の一液型又は二液型硬化性接着剤、カルボン酸変性ポリオレフィンが好適である。ここで、カルボン酸変性ポリオレフィンとは、不飽和カルボン酸又はその無水物(無水マレイン酸等)を共重合成分として含むポリオレフィン系共重合体;又は不飽和カルボン酸又はその無水物をポリオレフィンにグラフトさせて得られるグラフト共重合体を意味する。
多層構造体を得る方法としては、例えば共押出成形、共押出中空成形、共射出成形、押出ラミネート、共押出ラミネート、ドライラミネート、溶液コート等が挙げられる。なお、このような方法で得られた多層構造体に対して、さらに真空圧空深絞成形、ブロー成形、プレス成形等の方法により、再加熱後に二次加工成形を行い、目的とする成形体構造にしてよい。また、多層構造体に対して、ロール延伸法、パンタグラフ延伸法、インフレーション延伸法等の方法により、EVOHの融点以下の範囲で再加熱後に一軸又は二軸延伸して、延伸された多層構造体を得ることもできる。
本発明のガスバリア樹脂組成物又は多層構造体を用いた成形体としては、容器(袋、カップ、チューブ、トレー、ボトル、紙カートン、ブロー成形容器等)、燃料容器、パイプ、繊維、飲食品用包装材、容器用パッキング材、医療用輸液バッグ材、タイヤ用チューブ材、靴用クッション材、バッグインボックス用内袋材、有機液体貯蔵用タンク材、有機液体輸送用パイプ材、暖房用温水パイプ材(床暖房用温水パイプ材等)、包装材(化粧品用包装材、デンタルケア用包装材、医薬品用包装材等)、包材用子部品(キャップ、バッグインボックスのコック部分など)、農薬ボトル、農業用フィルム(温室用フィルム、土壌燻蒸用フィルム)、穀物保管用袋、ジオメンブレン、真空断熱板外袋、壁紙又は化粧板、水素、酸素等のガスタンク、縦製袋充填シール袋、積層剥離容器、多層管等を挙げることができる。中でも、包装材、縦製袋充填シール袋、バッグインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管(パイプ、チューブ)、及びブロー成形容器が、本発明の効果を好適に発揮できる観点から好ましい。
<包装材>
本発明の包装材は、本発明の多層構造体を備える包装材である。本発明の包装材は、本発明の多層構造体からなる包装材であってもよい。当該包装材は、例えば食品、飲料物、農薬や医薬等の薬品、医療器材、機械部品、精密材料等の産業資材、衣料などを包装するために使用される。当該包装材は、用途に応じて種々の形態、例えば縦製袋充填シール袋、真空包装袋、スパウト付パウチ、ラミネートチューブ容器、容器用蓋材等に形成される。特に、当該包装材は、ガスバリア性に優れるEVOHを含む層を有し、また、耐屈曲性等に優れるため、フレキシブルな包装材として有用である。フレキシブルな包装材としては、例えば縦製袋充填シール袋が挙げられる。
<縦製袋充填シール袋>
本発明の縦製袋充填シール袋は、本発明の多層構造体を備える縦製袋充填シール袋である。縦製袋充填シール袋は、例えば、液体、粘稠体、粉体、固形バラ物、又は、これらを組み合わせた食品や飲料物などを包装するために用いられることが多い。本発明の多層構造体を備える縦製袋充填シール袋は、耐屈曲性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にそのガスバリア性が維持される。
縦製袋充填シール袋(Vertical form fill seal pouch)の一形態を図1に示す。図1の縦製袋充填シール袋1は、シール袋1の上端部11、下端部12及び胴体部15の三方でフィルム材10がシールされている。図示したシール袋1では、胴体部15は、背面20を二つに分割するように上端部11から下端部12へと伸びる背面中央部に配置されている。上端部11、下端部12及び胴体部15において、フィルム材10はその内面同士が接触する状態でシールされている。すなわち、胴体部15におけるシールの形態はいわゆる合掌貼りである。図1には示されていないシール袋1の前面(背面の反対側にある背面と同形状の面)は、背面20とは異なり、シールされた部分により分割されておらず、通常は内容物や商品を表示する面として用いられる。なお、シールされる胴体部15は、側端部21、22のいずれかに配置されることもあり、この場合は背面もシールされた部分により分割されることがない。図示したシール袋1は、背面20の幅の2倍(前面の幅と背面の幅の合計)に胴体部15でのシールに要する幅を加えた幅を有する1枚のフィルム材10が縦型製袋充填機に供給されて製造された袋である。上端部11、下端部12及び胴体部15は、いずれも分岐がない直線状のシール部として形成されている。以上のように、縦製袋充填シール袋は、その一形態において、袋の前面及び背面の上辺に相当する上端部、下辺に相当する下端部、上端部から下端部に至るまでこれらの端部に垂直に伸びる胴体部の3つの部位において、1枚のフィルム材がシールされて製袋されている。フィルム材10が、本発明の多層構造体を含む。
<バッグインボックス用内容器>
本発明のバッグインボックス用内容器は、本発明の多層構造体を備える。当該バッグインボックス用内容器としては、例えば、液体注入口が他の樹脂組成物から成形され、容器本体が上記多層構造体で形成されたものを挙げることができる。当該バッグインボックス用内容器は、例えば、本発明の多層構造体のフィルムやシートをヒートシールし、さらに液体注入口をヒートシールすることにより作成することができる。ヒートシールする方法は、通常のヒートシール条件を適宜選択することができる。
バッグインボックスは、例えば、ダンボール箱の内部に、液体注入口を設けたフレキシブルなプラスチックの内容器(バッグインボックス用内容器)を収納したものである。バッグインボックス用内容器は、通常、輸送時等に繰り返しの屈曲に晒される。バッグインボックス用内容器成形時には、屈曲箇所や密封栓の周囲の厚みを増すなどの加工を施してもよい。本発明のバッグインボックス用内容器によれば、優れた耐屈曲性を有する本発明の多層構造体を備えるため、優れた耐久性を発揮することができる。
<積層剥離容器>
本発明の積層剥離容器(デラミネーション容器)は、本発明の多層構造体を備える。当該積層剥離容器に備わる多層構造体は、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の一方の面に直接積層された、極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層をさらに有する。すなわち、当該積層剥離容器は、当該ガスバリア樹脂組成物からなる層の一方の面に上記ポリオレフィンを主成分とする層が直接積層された層構造を有する。このような構成であると、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層と、極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層との剥離性が良好となり、積層剥離容器として好適に用いることができる。ここで、「主成分とする」とは、50質量%超であることを意味し、極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層における極性官能基を有さないポリオレフィンが占める割合は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に極性官能基を有さないポリオレフィンのみから構成される層であることが好ましい。
上記ポリオレフィンを主成分とする層は、極性官能基を有さないポリオレフィンのみから実質的になる層であってよい。極性官能基を有さないポリオレフィンとは、オレフィンの単独重合体又は共重合体であって、極性官能基を有さないものである。オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、ポリプロピレン(PP)、プロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン等のオレフィンの単独重合体又は共重合体が好適に使用される。中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体からなる群から選択される少なくとも1種がより好適に使用される。
本発明の積層剥離容器における多層構造体は、本発明の樹脂組成物からなる層の他方が、接着層を介して熱可塑性樹脂を主成分とする層と接着されてなることが好適な実施態様である。熱可塑性樹脂を主成分とする層における熱可塑性樹脂が占める割合は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に熱可塑性樹脂のみから構成される層であることが好ましい。このような構成とすることで、本発明の多層構造体、ひいては積層剥離容器の柔軟性及び強度を高めることができる。熱可塑性樹脂を主成分とする層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンが好ましく、このポリオレフィンは、上記極性官能基を有さないポリオレフィンと同じものであってもよく、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性ポリオレフィン等であってもよい。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステルなどが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
接着層を構成する接着性樹脂としては、本発明の多層構造体における接着層の説明として例示したものなどが挙げられる。
本発明の積層剥離容器(多層構造体)の層構成としては、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層をy、他の熱可塑性樹脂を主成分とする層をx、接着性樹脂を主成分とする層(接着層)をz、極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層をχで表す場合、
χ/y
χ/y/z/x
χ/y/z/x/z/y
χ/y/z/x/z/x
χ/y/z/x/z/y/z/x
χ/y/z/x/z/x/z/x
等の構造が挙げられる。
本発明の積層剥離容器の製造方法としては、共押出ブロー成形法等が挙げられる。
本発明の積層剥離容器を構成する本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の厚みは0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。当該ガスバリア樹脂組成物からなる層の厚みを0.5μm以上とすることで、ガスバリア性が良好となる傾向となる。また、当該ガスバリア樹脂組成物からなる層の厚みは1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。当該ガスバリア樹脂組成物からなる層の厚みを1000μm以下とすることで、柔軟性を高め、剥離性がより良好になる傾向となる。
本発明の積層剥離容器を構成する極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層の厚みは25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。上記ポリオレフィンを主成分とする層の厚みを25μm以上とすることで、強度を高めることができる。また、上記ポリオレフィンを主成分とする層の厚みは5000μm以下が好ましく、2000μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。上記ポリオレフィンを主成分とする層の厚みを5000μm以下とすることで、柔軟性を高め、剥離性がより良好になる。
本発明の積層剥離容器を構成する多層構造体の全体の厚みは150μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。多層構造体の全体の厚みを150μm以上とすることで、強度が十分になり破損し難くなる。また、多層構造体の全体の厚みは10000μm以下が好ましく、8000μm以下がより好ましく、6000μm以下がさらに好ましい。多層構造体の全体の厚みを10000μm以下とすることで、柔軟性を高めることができる。
本発明の積層剥離容器において、当該ガスバリア樹脂組成物からなる層と極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層との間におけるデラミ面積は80cm以上が好ましく、150cm以上がより好ましく、200cm以上がさらに好ましく、220cm以上が特に好ましい。デラミ面積を80cm以上とすることで、剥離がより十分なものとなる。また、デラミ面積は300cm以下が好ましく、280cm以下がより好ましく、260cm以下がさらに好ましい。デラミ面積を300cm以下とすることで、剥離性が高くなりすぎるのを抑え、生産性を高めることができる。ここで、デラミ面積は、多層構造体を300mm(幅)×350mm(長さ)に切り出し、中心部における当該ガスバリア樹脂組成物からなる層と極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層との層間に剥離口を作製して、上記剥離口にチューブを50mm差し込み圧力0.2MPaのエアーを吹き込んで剥離させた際の剥離部分の質量から面積換算することで求めることができる。
本発明の積層剥離容器は、当該ガスバリア樹脂組成物からなる層と極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層との間における標準剥離強度が1g/30mm以上が好ましく、3g/30mm以上がより好ましく、5g/30mmがさらに好ましい。標準剥離強度を1g/30mm以上とすることで、剥離性が高くなりすぎるのを抑え、生産性を高めることができる。また、上記標準剥離強度は12g/30mm以下が好ましく、11g/30mm以下がより好ましく、9.5g/30mm以下がさらに好ましく、9.0g/30mm以下が特に好ましい。標準剥離強度を12g/30mm以下とすることで、十分な剥離性を発揮することができる。
本発明の積層剥離容器は、前述のように当該ガスバリア樹脂組成物からなる層と極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層との剥離性が良好であるとともに、耐屈曲性等も良好である。本発明の積層剥離容器は、内容物の香り、色などの劣化を防止することのできる食品用の積層剥離容器として好適に用いることができる。なお、口頭部の剥離を抑制する観点から、本発明の積層剥離容器は、口頭部が他の部分と比べて厚みを有していることが好ましい。例えば、口頭部の厚みは、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。この口頭部の厚みの上限は例えば3mmであってよく、2mm又は1mmであってもよい。
<多層管>
本発明の多層管は、本発明の多層構造体を備える。当該多層管は、本発明の多層構造体からなる多層管であってもよい。当該多層管は、多層構造体を備える筒状の成形体を意味し、例えば、パイプ、チューブ等と称されるものであってもよい。当該多層管は、環境負荷が小さく、溶融成形時のロングラン性が比較的良好であるため生産性が良好である。当該多層管は、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層に酸化防止剤を含むことが、クラック発生等を抑制する観点から好ましい。また、当該多層管は、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層に含まれる熱可塑性エラストマー(C)として、変性熱可塑性エラストマー(c2)を含むことが耐屈曲性の観点から好ましい。
当該多層管の層構造は、上述した本発明の多層構造体と同様の層構造の例を挙げることができる。例えば、当該多層管の層構造は、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層をE、接着層をAd、他の熱可塑性樹脂から得られる層をTで表わす場合、T/E/T、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等の構造が挙げられる。これらの各層は単層であっても多層であってもよい。接着層及び他の熱可塑性樹脂から得られる層に用いられる樹脂の具体例としては、本発明の多層構造体におけるこれらの層に用いられる樹脂と同様のものが挙げられる。また、当該パイプの製造方法も特に限定されず、本発明のガスバリア樹脂組成物を溶融成形する方法として例示した各種成形方法を採用することができる。
当該多層管の用途は特に限定されず、例えば温水循環用パイプ、断熱多層パイプ、燃料用パイプ、ガス用パイプ、自動車部品用の多層管、フィラーパイプ、エアコン用ホース等として使用することができる。
本発明の多層管が温水循環用パイプとして用いられる場合には、上記ガスバリア樹脂組成物からなる層を最外層とするT/Ad/Eの3層構成が一般的に採用される。これは、既存の架橋ポリオレフィンなど単層パイプの製造ラインに、本発明のガスバリア樹脂組成物と接着性樹脂の共押出コーティング設備を付加する事により、容易に多層パイプの製造ラインに転用でき、実際に多くのパイプメーカーがこの構成を採用しているためである。
本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の両側にポリオレフィン層などを設けて、該ガスバリア樹脂組成物層を中間層として使用することは、該ガスバリア樹脂組成物層の傷付き防止などに有効である。しかしながら、当該多層管を床暖房パイプなどの温水循環用パイプとして用いる場合には、通常床下に埋設されるため、物理的な衝撃による本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の傷付きなどのリスクは比較的小さいため、むしろガスバリア性の観点から、該ガスバリア樹脂組成物層を最外層に配することが望ましい。EVOHのガスバリア性は大きな湿度依存性を示し、高湿度条件下ではバリア性が低下する事から、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層を最外層に配することにより、主として一種又は二種以上のEVOH及び熱可塑性エラストマー(C)から構成される本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層が水と接触するパイプ内表面より最も遠い場所に位置することとなり、多層管のバリア性能面からは最も有利な層構成となる。一方で、一般的にEVOH層を最外層に配する場合、空気と直接接触するため、酸化劣化の影響を受けやすい。このような環境下において、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層が酸化防止剤を含有し、最外層に配されることにより、良好なバリア性を有しつつ酸化劣化によるクラックの発生を低減した多層管を提供するという効果がより有効に発揮される。
また、本発明の多層管が地域冷暖房などの断熱多層パイプに用いられる場合には、上記ガスバリア樹脂組成物からなる層を熱可塑性樹脂層より内側に配するT/Ad/Eの3層構成(以下、積層体1と略称することがある)、もしくは該ガスバリア樹脂組成物層の傷付き防止の観点からT/Ad/E/Ad/Tの5層構成(以下、積層体2と略称することがある)を有することが好ましい。
地域冷暖房などの断熱多層パイプの構成は特に限定されないが、例えば、内側から、内管、内管の周りを覆う断熱発泡体層、そして外層として本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層を有する上記積層体1又は2の順で配置されることが好ましい。
内管に使われるパイプの種類(素材)、形状及び大きさは、ガスや液体などの熱媒体を輸送できるものであれば特に限定はなく、熱媒体の種類や、配管材の用途及び使用形態等に応じて適宜選択することができる。具体的には、鋼、ステンレス、アルミニウム等の金属、ポリオレフィン(ポリエチレン、架橋ポリエチレン(PEX)、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンなど)、及び本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層を有する上記積層体1又は2などが挙げられ、これらの中でも架橋ポリエチレン(PEX)が好適に用いられる。
断熱発泡体層を構成する断熱発泡体には、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム、ポリイソシアヌレートフォームを用いることができ、断熱性能向上の観点から、ポリウレタンフォームが好適に用いられる。
断熱発泡体の発泡剤としてはフロンガス、各種代替フロン、水、塩化炭化水素、炭化水素、二酸化炭素等が用いられるが、発泡効果、環境への影響の観点から炭化水素、具体的にはn-ペンタン、シクロペンタンが好適に用いられる。
断熱多層パイプの製造方法としては、例えば、熱媒体を輸送する内管を、パイプ状の外層の中に入れて内管をスペーサーで固定し二重管とした後、内管と外層の間隙部に各種発泡体原液を注入し、発泡及び固化させる方法が挙げられる。上記スペーサーの素材は特に限定されないが、スペーサーによる内管及び外層への傷を減らすため、ポリエチレン又はポリウレタンであることが好ましい。
本発明の多層管は、ガスバリア樹脂組成物から形成される層に熱可塑性エラストマー(C)が含まれるため、柔軟性が高く、燃料用パイプに好適に用いることができる。
燃料用パイプに用いられる場合には、最内側層は導電性であるように形成される。そのために、最内側層の熱可塑性樹脂に、それ自体は知られている導電性添加物、例えば、カーボンブラック又はグラファイト繊維が混合される。
<多層管の製造方法>
以下、多層管の製造方法について説明するが、この製造方法の一部又は全部は他の成形体(多層構造体)の製造方法にも適用することができる。多層管は、上述のように架橋ポリオレフィンなどの単層パイプの上に本発明のガスバリア樹脂組成物と接着性樹脂を共押出コーティングすることにより製造することができる。単層パイプ上に本発明のガスバリア樹脂組成物と接着性樹脂の共押出コーティングを実施する際は、単純に単層パイプ上に本発明のガスバリア樹脂組成物と接着性樹脂の溶融したフィルムをコートしても良いが、単層パイプとコート層の間の接着力が不十分な場合があり、長期間の使用中にコート層が剥離してガスバリア性を失う可能性がある。その対策としては、コート前にコートするパイプの表面をフレーム処理及び/又はコロナ放電処理することが有効である。
多層管を製造するためのその他の多層成形方法としては、樹脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、この押出機内で溶融された樹脂の流れを重ねあわせた層状態で同時押出成形する、いわゆる共押出成形により実施する方法が挙げられる。また、ドライラミネーションなどの多層成形方法も採用され得る。
多層管の製造方法は、成形直後に10~70℃の水で冷却を行う工程を含むとよい。すなわち、溶融成形後、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層が固化する前に10~70℃の水で冷却することにより、該ガスバリア樹脂組成物層を固化させることが望ましい。冷却水の温度が低すぎると、続く二次加工工程において多層管を屈曲させる場合に、屈曲部の本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層に歪みによるクラックが生じやすい。歪みによるクラックが生じやすくなる原因の詳細は明らかでないが、成形物中の残留応力が影響しているものと推測される。この観点から、冷却水の温度は15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。一方、冷却水の温度が高すぎても、二次加工の際に屈曲部の本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層に歪みによるクラックを生じやすい。この原因の詳細も十分に解明されていないが、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の結晶化度が大きくなりすぎるためと推定される。この観点より冷却水の温度は60℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。
上記の方法で得られた多層管を二次加工することにより、各種成形体を得ることができる。二次加工法としては、特に限定されず、公知の二次加工法を適宜用いることができるが、例えば、多層パイプを80~160℃に加熱した後所望の形に変形させた状態で、1分~2時間固定することにより加工する方法が挙げられる。
<ブロー成形容器>
本発明のブロー成形容器は、本発明の多層構造体を備える。本発明のブロー成形容器は、本発明の多層構造体からなるブロー成形容器であってよい。すなわち、本発明の多層構造体の一実施形態は、ブロー成形容器であってよい。本発明のブロー成形容器は環境負荷が低く、バリア性、外観及び生産性も良好である。本発明のブロー成形容器は、ガスバリア性、耐油性等が要求される各種容器に使用できる。
本発明のガスバリア樹脂組成物以外の樹脂からなる層をx層、本発明のガスバリア樹脂組成物層をy層、接着性樹脂層をz層、回収層をR層とすると、本発明のブロー成形容器は、例えば、容器内部表面から容器外部表面に向かって、(内)x/z/y/z/R/x(外)、(内)x/z/y/z/x(外)、(内)x/R/z/y/z/R/x(外)、(内)R/z/y/z/R(外)等の層構造のものを採用することができる。なお、本発明のガスバリア樹脂組成物以外の樹脂からなる層(x層)の代わりに回収層(R層)を備える構成でもよく、x、y、z、R層がそれぞれ複数用いられている配置の場合、それぞれの層を構成する樹脂は同一でも異なっていてもよい。
本発明のブロー成形容器は、本発明のガスバリア樹脂組成物を用いてブロー成形する工程を有する製造方法により製造することが好ましい。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形、シートブロー成形、フリーブロー成形等の公知の方法により行うことができる。
具体的には、例えば当該ガスバリア樹脂組成物から形成される層を形成するガスバリア樹脂組成物ペレット、及び必要に応じて他の各層を形成する各樹脂を用い、ブロー成形機にて100℃~400℃の温度でブロー成形し、金型内温度10℃~30℃で10秒間~30分間冷却する。これにより、ブロー成形された中空容器を成形できる。ブロー成形の際の加熱温度は、150℃以上であってよく、180℃又は200℃以上であってよい。また、この加熱温度は、当該ガスバリア樹脂組成物の融点以上であってよい。一方、この加熱温度の上限は350℃であってよく、300℃又は250℃であってよい。本発明のブロー成形容器は、燃料容器や各種ボトル等の種々の用途で利用される。
<燃料容器>
本発明のブロー成形容器は、燃料容器として使用できる。当該燃料容器はフィルター、残量計、バッフルプレート等を備えていてもよい。当該燃料容器は、本発明のブロー成形容器を備えることで、環境負荷が低く、バリア性、外観及び生産性も良好であり、燃料容器として好適に用いられる。ここで、燃料容器とは、自動車、オートバイ、船舶、航空機、発電機、工業用若しくは農業用機器等に搭載された燃料容器、又はこれら燃料容器に燃料を補給するための携帯用燃料容器、さらには、燃料を保管するための容器を意味する。また、燃料としては、ガソリン、特にメタノール、エタノール又はMTBE等をブレンドした含酸素ガソリン等が代表例として挙げられるが、その他、重油、軽油、灯油等も含まれるものとする。これらうち、当該燃料容器は、含酸素ガソリン用燃料容器として特に好適に用いられる。
<ボトル容器>
本発明のブロー成形容器は、ボトル容器として使用できる。当該ボトル容器は、カバーフィルム、キャップ等、本発明のブロー成形容器以外の構成をさらに備えていてもよい。当該ボトル容器の成形方法は例えば、ダイレクトブロー成形及びインジェクションブロー成形が挙げられる。ボトル状に成形した本発明のブロー成形容器は、環境負荷が低く、バリア性、外観及び生産性も良好であるため、食品、化粧品などのボトル容器に好適に用いられる。
<農業用フィルム>
本発明のガスバリア樹脂組成物は、農業用フィルムの成形材料として用いることもできる。当該農業用フィルムは、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層を有する。当該農業用フィルムは、単層フィルムであってもよく、他の層を有する多層フィルムであってもよい。すなわち、当該農業用フィルムは、本発明の多層構造体を備える農業用フィルムであってよい。当該農業用フィルムが多層フィルムである場合、全層数の下限は例えば2であり、3であってよく、4であってよい。この層数の上限は例えば10であってよく、5であってもよい。上記他の層としては、多層構造体におけるx層及びz層として例示した層などが挙げられる。
当該農業用フィルムの平均厚さは特に限定されず、下限は例えば1μm、5μm又は10μmであってよい。一方、この平均厚さの上限は例えば3mm、1mm、300μm又は100μmであってもよい。また、当該農業用フィルムにおける本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の平均厚さの下限としては、例えば0.1μmであってよく、1μmが好ましい。一方、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層の平均厚さの上限としては、例えば500μmであってよく、300μmが好ましい。
当該農業用フィルムは、例えばラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ、サイレージフィルム、ビニルハウス用フィルム、マルチフィルム等、農業の分野で用いられる各種フィルムに用いることができる。以下、各用途について説明する。
<ラージサイロフィルム>
ラージサイロフィルムとは、穀物を包んで保存するためのフィルムである。ラージサイロフィルムで穀物を包んで保存することで、穀物を湿気、カビ、虫等から守ることができる。ラージサイロフィルムの一辺の長さは、例えば1m以上であり、2m、3m、5m又は10m以上であってもよい。また、ラージサイロフィルムは袋状等に加工されていてもよい。
<土壌燻蒸用フィルム>
土壌燻蒸用フィルムは、畑等において土壌燻蒸を行うとき、土壌燻蒸剤の蒸散防止のためなどに用いられるフィルムである。
<穀物保存バッグ>
穀物保存バッグは、穀物を湿気、カビ、虫等から守るために、穀物を保存するバッグであり、ヘルメティックバッグ(Hermetic bag)等とも称される。当該穀物保存バッグは、本発明のガスバリア樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するフィルムをバッグ状、袋状、その他容器状に成形したものである。当該穀物保存バッグが例えば方形の袋状である場合、その一辺の長さは例えば0.5~2mである。
<サイレージフィルム>
サイレージフィルムとは、サイレージの製造・包装等に用いられるフィルムである。牧草などを嫌気性条件下で発酵させて得られるサイレージは、家畜の飼料等に用いられる。サイレージフィルムを用いるサイロの形態は特に限定されず、バンカーサイロ、地下型(もしくは半地下型)サイロ、バッグサイロ、チューブサイロ、スタックサイロ、ラップサイロなどの種々の形態が挙げられる。
例えばラップサイロを作成する場合には、まず牧草を所望の容量(たとえば0.1~50m、好ましくは1~30m)に成形する。例えば円筒状のロールベールサイロの場合、その大きさは通常直径0.5~3m、好ましくは1~2m、高さは通常0.5~3m、好ましくは1~2mである。ついで、通常のラップ巻きつけ機を使用してサイレージフィルムを成形した牧草に巻きつけ、牧草を密封する。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[評価方法]
(1)EVOHのエチレン単位含有量及びケン化度
合成して得られたEVOHペレット並びに実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットについて、内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)-dに溶解し、500MHzの1H-NMR(日本電子株式会社製「JMTC-400/54/SS」)を用いて80℃で測定し、エチレン単位含有量及びケン化度を測定した。
上記測定のスペクトル中の各ピークは、以下のように帰属される。
0.6~1.9ppm:エチレン単位のメチレンプロトン(4H)、ビニルアルコール単位のメチレンプロトン(2H)、酢酸ビニル単位のメチレンプロトン(2H)
1.9~2.0ppm:酢酸ビニル単位のメチルプロトン(3H)
3.1~4.2ppm:ビニルアルコール単位のメチンプロトン(1H)
(2)カルボン酸の定量
合成して得られたEVOHペレット又は実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレット20gとイオン交換水100mLとを共栓付き200mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で6時間攪拌抽出した。得られた抽出液にフェノールフタレインを指示薬としてN/50のNaOHで中和滴定し、カルボン酸のカルボン酸根換算の含有量を定量した。なお、リン化合物が含まれる態様においては、後述の評価方法で測定されるリン化合物の含有量を加味して、カルボン酸量を算出した。
(3)金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の定量
合成して得られたEVOHペレット又は実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。30分後蓋をし、湿式分解装置(アクタック社の「MWS-2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することで分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社の「OPTIMA4300DV」)により元素分析を行い、EVOHペレット又はガスバリア樹脂組成物ペレットに含まれる、金属イオンの金属原子換算量、リン化合物のリン原子換算量及びホウ素化合物のホウ素原子換算量を求めた。
(4)バイオベース度
合成して得られたEVOHペレット並びに実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットについて、ASTM D6866-18に記載の方法に従い、加速器質量分析器(AMS)により放射性炭素(14C)の濃度を測定し、放射性炭素年代測定の原理に基づいて、バイオベース度を算出した。
(5)ロングラン性評価
(5-1)単層フィルム製膜欠点評価
単軸押出装置(株式会社東洋精機製作所の「D2020」;D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.0、スクリュー:フルフライト)を用い、実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットから平均厚み20μmの単層フィルムを作製した。このときの各条件は以下に示す通りである。
(単軸押出装置条件)
押出温度:210℃
スクリュー回転数:40rpm
ダイス幅:30cm
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:3.1m/分
上記条件で連続運転して単層フィルムを作製し、運転開始1時間後及び5時間後に作製された各フィルムについて、フィルム長17cm当たりの欠点数をカウントした。上記欠点数のカウントは、フィルム欠点検査装置(フロンティアシステム社の「AI-10」)を用いて行った。なお、このフィルム欠点検査装置における検出カメラは、そのレンズ位置がフィルム面より195mmの距離となるように設置した。製膜欠点は、欠点数が50個未満の場合を「良好(A)」、50個以上200個未満の場合を「やや良好(B)」、200個以上の場合を「不良(C)」として判断した。
(5-2)単層フィルム外観性の評価
運転開始1時間後及び5時間後に作製されたフィルムについて、目視にて外観性(ストリーク)を下記評価基準により評価した。また、フィルム100mを紙管に巻き取ったロールを作製し、ロールの端部の黄変による外観性(着色)を目視で下記評価基準により評価した。
(ストリークの評価基準)
良好(A):ストリークは認められなかった
やや良好(B):ストリークが確認された
不良(C):多数のストリークが確認された
(ロール端部の着色の評価基準)
良好(A):無色
やや良好(B):黄変
不良(C):著しく黄変
(6)酸素透過度
実施例及び比較例で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用いて、下記条件で厚み20μmの単層フィルムを製膜し、20℃/65%RHの条件下で調湿した後、酸素透過度測定装置(ModernControlの「OX-Tran2/20」)を使用し、20℃/65%RHの条件下で酸素透過度を測定した。なお、本測定はJIS K 7126-2(等圧法;2006年)に準拠して実施した。
(単層フィルムの作製)
単軸押出装置(株式会社東洋精機製作所の「D2020」、D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=3.0、スクリュー:フルフライト)を用い、上記ガスバリア樹脂組成物ペレットから厚み20μmの単層フィルムを作製した。押出条件は以下に示すとおりである。
押出温度:210℃
ダイス幅:30cm
引取りロール温度:80℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール速度:3.1m/分
(7)耐屈曲性評価
上記(6)で得られた20μmの単層フィルムについて、ASTM F392-74に準じて、テスター産業株式会社製「BE1006恒温槽付ゲルボフレックステスター」を使用し、5℃の環境下、屈曲を100回繰り返した。屈曲後の単層フィルムをろ紙上に置き、フィルム上にインクを塗布した後、ろ紙上に通過したインクの点の数を測定し、かかるインクの点の数を、屈曲後のフィルムのピンホール数とした。測定は各3サンプルについて行い、その平均値を求め下記評価基準により評価した。屈曲後のピンホール数が少ない程、耐屈曲性に優れる。
(耐屈曲性の評価基準)
良好(A):ピンホールの平均値が5未満
やや良好(B):ピンホールの平均値が15未満
不良(C):ピンホールの平均値が15以上
[酢酸ビニル合成触媒の調製]
上海海源化工科技有限公司製シリカ球体担体HSV-I(球体直径5mm、比表面積160m2/g、吸水率0.75g/g)23g(吸水量19.7g)に、56質量%テトラクロロパラジウム酸ナトリウム水溶液1.5g及び17質量%テトラクロロ金酸四水和物水溶液1.5gを含む担体吸水量相当の水溶液を含浸させた後、メタケイ酸ナトリウム9水和物2.5gを含む水溶液40mLに浸漬し、20時間静置した。続いて、52質量%ヒドラジン水和物水溶液3.3mLを添加し、室温で4時間静置した後、水中に塩化物イオンが無くなるまで水洗し、110℃で4時間乾燥した。得られたパラジウム/金/担体組成物を1.7質量%酢酸水溶液60mLに浸漬し、一晩静置した。次いで、一晩水洗し、110℃で4時間乾燥した。その後、2gの酢酸カリウムの担体吸水量相当水溶液に含浸し、110℃で4時間乾燥することで酢酸ビニル合成触媒を得た。
[酢酸ビニルの合成]
<VAM1の合成例>
上記酢酸ビニル合成触媒3mLをガラスビーズ75mLで希釈してSUS316L製反応管(内径22mm、長さ480mm)に充填し、温度150℃、圧力0.6MPaGでエチレン/酸素/水/酢酸/窒素=47.3/6.1/5.6/26.3/14.7(mol%)の割合に混合したガスを流量20NL/時で流通させ、反応を行い、酢酸ビニル(VAM1)を合成した。エチレンには、バイオマス由来のエチレン(Braskem S.A.製、サトウキビ由来のバイオエチレン)を用い、このエチレンが充填されたガスボンベ(エチレン純度96.44%、内容積29.502L、内圧1.8234MPa)を使用した。また、酢酸には、バイオマス由来の酢酸(Godavari Biorefineries Ltd.製、サトウキビ由来のバイオ酢酸)を用い、220℃で気化させてから蒸気で反応系に導入した。
<VAM2~VAM4の合成>
原料のエチレン及び酢酸を表1に記載の通り、バイオマス由来及び/又は化石燃料由来のものに変更した以外は、VAM1と同様の方法でVAM2~VAM4の各酢酸ビニルを合成した。
なお、酢酸ビニルの合成に用いた原料としては、下記の原料を使用した。
・バイオマス由来のエチレン :Braskem S.A.製、サトウキビ由来のバイオエチレン
・化石燃料由来のエチレン:エア・リキード工業ガス株式会社製、化石燃料由来のエチレン
・バイオマス由来の酢酸 :Godavari Biorefineries Ltd.製、サトウキビ由来のバイオ酢酸
・化石燃料由来の酢酸 :富士フィルム和光純薬株式会社製、化石燃料由来の酢酸
Figure 2022027731000007
[EVOHの合成]
<EVOH(A1)ペレットの作製>
(エチレン-酢酸ビニル共重合体の重合)
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、VAM1を105kg、及びメタノール(以下、MeOHと称することもある)を45.7kg仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が2.87MPaとなるようにエチレンを昇圧して導入した。エチレンには、バイオマス由来のエチレン(Braskem S.A.製、サトウキビ由来のバイオエチレン)を用いた。反応槽内の温度を60℃に調整した後、開始剤として34.7gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社の「V-65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を2.87MPaに、重合温度を60℃に維持した。3時間後にVAcの重合率が45%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下で未反応のVAcを除去した後、エチレン-酢酸ビニル共重合体にMeOHを添加して20質量%MeOH溶液とした。
(ケン化及び洗浄)
得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体ジャケットの20質量%MeOH溶液250kgを、攪拌機、窒素導入口、還流冷却器及び溶液添加口を備えた500L反応槽に入れ、かかる溶液に窒素を吹き込みながら60℃に昇温し、水酸化ナトリウム4kgを濃度2規定のMeOH溶液として添加した。水酸化ナトリウムの添加終了後、系内温度を60℃に保ちながら2時間攪拌してケン化反応を進行させた。2時間経過した後に、再度、同様の方法で水酸化ナトリウムを4kg添加し、2時間加熱攪拌を継続した。その後、酢酸を14kg添加してケン化反応を停止し、イオン交換水50kgを添加した。加熱攪拌しながら反応槽外にMeOHと水を留出させ反応液を濃縮した。3時間経過した後、更にイオン交換水50kgを添加し、EVOHを析出させた。デカンテーションにより析出したEVOHを収集し、ミキサーで粉砕した。得られたEVOH粉末を1g/Lの酢酸水溶液(浴比20:イオン交換水200Lに対し粉末10kgの割合)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行った。これを60℃で16時間乾燥させることでEVOHの粗乾燥物を25kg得た。
(EVOH含水ペレットの製造)
得られたEVOHの粗乾燥物25kgを、ジャケット、攪拌機及び還流冷却器を備えた100L攪拌槽に入れ、さらに水20kg及びMeOH20gを加え、70℃に昇温して溶解させた。この溶解液を径3mmのガラス管を通して5℃に冷却した重量比で水/MeOH=90/10の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることでEVOHの含水ペレットを得た。このEVOHの含水ペレットを濃度1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液で洗浄してから脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行い、ケン化反応時の触媒残渣とストランド析出時に使用したMeOHが除去された、EVOHの含水ペレットを得た。得られたEVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社のハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、110質量%であった。
(EVOH(A1)ペレットの製造)
得られたEVOHの含水ペレットを酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸及びホウ酸が含まれる水溶液(浴比20)に投入し、定期的に攪拌しながら4時間浸漬させた。なお、各成分の濃度は、得られたEVOH(A1)ペレットにおける各成分の含有量が表2に記載の通りとなるように調整した。浸漬後に脱液し、空気下で80℃、3時間、及び空気下で130℃、7.5時間乾燥することにより、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸及びホウ酸を含むEVOH(A1)ペレットを得た。
<EVOH(A2)~EVOH(A9)、EVOH(B1)~EVOH(B4)の各ペレットの作製>
原料(原料モノマー)のエチレン及び酢酸ビニルの種類並びにリン酸化合物及びホウ素化合物の含有量を表2に記載の通り変更した以外は、EVOH(A1)ペレットと同様の方法で、EVOH(A2)ペレット~EVOH(A9)ペレット及びEVOH(B1)~EVOH(B4)ペレットを作製した。化石燃料由来のエチレンには、エア・リキード工業ガス株式会社製のエチレンを用いた。
EVOH(A1)ペレット~EVOH(A9)ペレット及びEVOH(B1)~EVOH(B4)ペレットのそれぞれについて、上記評価方法(1)~(4)に記載の方法に従い、エチレン単位含有量及びケン化度、カルボン酸の定量、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の定量、並びにバイオベース度の測定を行った。結果を表2に示す。
ペレット(A1)~ペレット(A9)及びペレット(B1)~ペレット(B4)について、下記記載の方法に従って硫黄化合物の測定を行った。結果(硫黄化合物の硫黄原子換算の含有量及び種類)を表2に示す。
<硫黄化合物含有量の測定>
硫黄化合物の定量は三菱アナリテック製微量窒素硫黄分析装(TS-2100H型)を用いて行い、測定条件は以下の通りとした。
ヒーター温度:Inlet 900℃,Outlet 900℃
ガス流量:Ar,O各300ml/min
[分析システム NSX-2100]
測定モード:TS
パラメータ:SD-210
測定時間(タイマー):540秒(9分)
PMT感度:高濃度
硫黄化合物の同定は、ガスクロマトグラフィー(GC)と、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を用いて行った。GCの検出器としては、微量の硫黄化合物、リン化合物に対して高い感度を示すFPD(炎光光度検出器)を用いて行い、硫黄化合物が検出された保持時間で観測された質量成分を解析することで、同定を行った。
Figure 2022027731000008
[熱可塑性エラストマー(C)]
実施例及び比較例で用いた変性熱可塑性エラストマー(C)は以下の通りである。
[無変性熱可塑性エラストマー(c1)]
C-3:タフテック(登録商標)H1041(旭化成株式会社製、スチレン系エラストマー樹脂)
C-7:タフマー(登録商標)P0280(三井化学株式会社製、エチレン-プロピレン共重合体)
[変性熱可塑性エラストマー(c2)]
C-1:モディック(登録商標)GQ131(三菱ケミカル株式会社製、不飽和カルボン酸変性ポリエステル系エラストマー樹脂)
C-2:モディック(登録商標)GQ430(三菱ケミカル株式会社製、不飽和カルボン酸変性ポリエステル系エラストマー樹脂)
C-4:タフテック(登録商標)M1911(旭化成株式会社製、不飽和カルボン酸変性スチレン系エラストマー樹脂)
C-5:タフマー(登録商標)MH7020(三井化学株式会社製、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン共重合体)
C-6:タフマー(登録商標)MP0610(三井化学株式会社製、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体)
[ハロゲン原子を含有するスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)]
C-8:シブスター(登録商標)062T-FD(株式会社カネカ社製、SIBS;スチレン-イソブチレン-スチレントリブロックコポリマー)
[実施例]
<実施例1>
EVOH(A1)ペレット9質量部、EVOH(B1)ペレット81質量部及び熱可塑性エラストマー(C-5)のペレット10質量部をドライブレンドした後、二軸押出機(株式会社東洋精機製作所の「2D25W」、25mmφ,ダイ温度220℃,スクリュー回転数100rpm)を用い、窒素雰囲気下で押出しペレット化を行い、実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットを得た。
得られた実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットについて、上記評価方法(1)~(7)に記載の方法に従って、エチレン単位含有量及びケン化度、カルボン酸の定量、金属イオン、リン酸化合物及びホウ素化合物の定量、バイオベース度、ロングラン性、酸素透過度並びに耐屈曲性の測定又は評価を行った。結果を表4に示す。
<実施例2~26、比較例1~6>
用いたEVOHの種類及び含有量、熱可塑性エラストマー(C)の種類及び含有量、並びに添加剤の種類、銘柄及び含有量を、表3に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~26及び比較例1~6の各ガスバリア樹脂組成物ペレットを作製し、評価した。結果を表4に示す。なお、実施例14では、添加剤として酸化防止剤であるBASFジャパン株式会社製のIrganox1098を用いた。また、実施例19では、添加剤としてハロゲン捕捉剤である協和化学工業株式会社製のZHT-4Aを用いた。各種ペレットをドライブレンドする際に、上記添加剤もドライブレンドして、ガスバリア樹脂組成物ペレットを得た。
Figure 2022027731000009
Figure 2022027731000010
[実施例27]
実施例13で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用い、上記評価方法(6)に記載の方法で単層フィルムを製膜し、以下の評価条件にて加熱処理時間を変えた複数のサンプルを測定することで、引張強伸度の経時変化を評価した。破断伸度が加熱処理を行っていないサンプルの1/4になる時間(耐酸化劣化時間)を求め、耐酸化劣化性の指標とした。評価の結果耐酸化劣化時間は65時間であった。
評価条件:
所定の時間、140℃に設定した熱風乾燥機内で処理した後、取り出した。その後、20℃の水中に5日間浸漬し、表面水を拭き取って、20℃-65%RHの室内に2週間静置してから、以下の条件で引張強伸度測定を行った。
測定条件
サンプル幅15mm
チャック間隔30mm
引張スピード50mm/分
測定雰囲気20℃-65%RH
[実施例28]
ガスバリア樹脂組成物ペレットとして、実施例14で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用いた以外は実施例27と同様の方法で単層フィルムを製膜し、評価した。評価の結果、耐酸化劣化時間は280時間であった。
上記評価において、破断伸度が1/4以下になると酸化劣化によるクラックの発生に起因するEVOH層のガスバリア性の悪化が顕著になることから、破断伸度が1/4になる時間を、EVOHの高温での酸化劣化による寿命の指標の一つとして考えることができる。破断伸度が1/4になる時間はアレニウス型の温度依存性を示し、80℃において破断伸度が1/4になる時間(寿命)を100年以上にしようとすると、140℃において破断伸度が1/4になる時間を210時間以上にする必要がある。
高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(登録商標)HD HE421」、密度0.956g/cc、MFRが0.14g/10分)を1台目の押出機に、実施例14で得られた各ガスバリア樹脂組成物ペレットを2台目の押出機に、接着性樹脂として三井化学株式会社製「アドマー(登録商標)NF408E」を3台目の押出機に入れ、3種3層の円形ダイを用いて、外径20mmの多層パイプを押出成形し、直後に40℃に調整した冷却水槽を通して冷却して固化させた。多層パイプは問題なく成形でき、その層構成はガスバリア樹脂組成物層が最外層であり、ガスバリア樹脂組成物層/接着性樹脂層/高密度ポリエチレン層=100μm/100μm/2000μmであった。これらの結果から、実施例14に記載のガスバリア樹脂組成物は、長期間使用が想定されるパイプ等の用途に好適に使用できることがわかる。
[実施例29]
実施例1で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用い、以下の条件で製膜し、トリムをカットし500mm幅、総厚み25.5μmのサイレージフィルムを作製した。
・装置:7種7層ブローンフィルム製膜機(ブランプトン社製)
・層構成及び各層の厚み:
外層1/外層2/接着性樹脂層1/ガスバリア樹脂組成物層/接着性樹脂層2/外層3/外層4
・外層1、4:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、TUFLIN HS-7028 NT7(MFR1.0g/10分))97質量%、ポリイソブテン(Soltex社製、PB32)3質量%の溶融混練物 各6μm
・外層2、3:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製TUFLIN HS-7028 NT7(MFR1.0g/10分))90質量%、ポリイソブテン(Soltex社製、PB32)10質量%の溶融混練物 各4μm
・接着性樹脂層1、2:無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、アドマーNF498) 各2.0μm
・ガスバリア樹脂組成物層:1.5μm
[製膜条件]
押出機
・押出機1:45mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層1
・押出機2:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層2
・押出機3:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層3
・押出機4:45mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層4
・押出機5:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・接着性樹脂層1
・押出機6:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・接着性樹脂層2
・押出機7:30mmφ単軸押出機(L/D=20)・・・ガスバリア樹脂組成物層
設定温度及び回転数:
・押出機1、4:C1/C2/C3/A=180℃/190℃/205℃/205℃、27rpm
・押出機2、3:C1/C2/C3/A=180℃/190℃/205℃/205℃、69rpm
・押出機5、6:C1/C2/C3/A=190℃/225℃/215℃/220℃、26rpm
・押出機7:C1/C2/C3/A=180℃/210℃/215℃/220℃、19rpm
・ダイ:150mm、設定温度220℃
・延伸比率(Blow up rate):3.09
<ラッピング試験>
得られたサイレージフィルムとリモコンラップマシーンWM1600R(株式会社タカキタ社製)とを用いて、φ120cm×120cmの大きさに成型した牧草のラッピングを行った。得られたサイレージフィルムは牧草を良好にラッピングでき、サイレージフィルムとして適していることを確認した。
[実施例30]
実施例1で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂を、押出機5、6に接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂を、押出機7にガスバリア樹脂組成物層を構成する樹脂をそれぞれ押出し、ダイ:75mm、延伸比率:1.5とした以外は、実施例29のサイレージフィルムの製造条件と同様にして、トリムをカットし900mm幅、総厚み230μmの穀物保存バッグ用フィルムを作製した。得られたフィルムから、400mm×700mmのバッグを作り、穀物保存バッグとした。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/ガスバリア樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
・外層A、D:LLDPE;SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製) 押出機1、3:各50μm、押出機2、4:各47μm 合計:各97μm
・接着性樹脂層B、C:アドマー(登録商標)NF498A(三井化学株式会社製) 各12μm
・ガスバリア樹脂組成物層:12μm
<発芽力試験>
得られた穀物保存バッグに、50kgのコーンを詰めて屋外に180日間保存した。保存後、コーンの発芽力を評価した。保存後のコーンの発芽力は保存前のコーンと同程度であった。
[実施例31]
[積層剥離容器の作製]
実施例17で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットを用い、本体部及び口頭部を有する積層剥離容器((内面側)内面層(LLDPE)/接着層(変性ポリオレフィンとLLDPEのブレンド)/最外層(ガスバリア樹脂組成物層)/外層(LLDPE)(外面側))を以下に示す条件でブロー成形により作製した。
(容器形状)
本体部:φ47mm、高さ110mm
口頭部:φ30mm、高さ16mm
(層構成)
外層:無変性ポリプロピレン(ノーブレン(登録商標)FSX16E9、住友化学株式会社製)
内層:外層側から順に最外層/接着層/内面層の三層構成
最外層:実施例17で得たガスバリア樹脂組成物
接着層:変性ポリオレフィン(モディック(登録商標)L522、三菱ケミカル株式会社製)とLLDPE(ハーモレックス(登録商標)F325N、日本ポリエチレン株式会社製)の1:1ブレンド
内面層:LLDPE(ハーモレックス(登録商標)F325N、日本ポリエチレン株式会社製)
(ブロー成形条件)
上記層構成になるよう各溶融した樹脂を共押出することにより、溶融状態の積層パリソンを作製した。積層パリソン作製時にリップ幅を調整して口頭部の厚みが厚くなるように調整を行った。かかる積層パリソンをブロー成形金型にセットし、ブロー成形法によって所望の容器形状に成形した。ブロー成形の際、口頭部の厚みが本体部の厚みより十分厚くなるように調整を行った。共押出の条件は、口頭部を除く外層と内層の厚さがどちらも70~130μmの範囲内であり且つ外層/内層の厚さの比が0.8~1.3となるように調節した。ブロー成形の条件は、ブロー圧:0.4MPa、金型温度:25℃、ブロー時間:15秒とした。
[口頭部の厚み測定]
得られた積層剥離容器の口頭部をミクロトームで切り出すことで切片を作製し、かかる切片をスライドガラスにのせて、光学顕微鏡にて口頭部の厚みを測定した。口頭部の厚みは0.5mmであった。
[口頭部の耐剥離性]
得られた積層剥離容器の本体部の外層に空気導入孔を形成し、この空気導入孔から外層と内層との間に空気を注入することによって予備剥離を行った。空気は、圧力0.3MPaで1.0秒注入した。予備剥離を行った後、空気導入孔を閉鎖した状態で、容器を30kgの力で潰して、外層と内層との間の空気に圧力をかけたときに、口頭部における外層と内層との界面から空気が漏れるかどうか確認した。結果、口頭部海面からの空気漏れが確認されなかった。なお、得られた積層剥離容器は、ガスバリア樹脂組成物層とLLDPE層とが直接積層されているため、ガスバリア樹脂組成物層とLLDPE層との界面において、本体部では、適度な剥離性を有する容器となった。
[実施例32]
リップ幅を調整せずに積層パリソンを作製し、ブロー成形時にも口頭部と本体部の厚みの調整を行わずに成形した以外は実施例31と同様の方法で積層剥離容器を作製し、評価を行った。口頭部の厚みは0.3mmであり、口頭部の剥離性試験では空気の漏れが確認された。
実施例31のように口頭部に厚みを持たせた容器では、口頭部の剥離が容易に抑制できたが、実施例32のように口頭部の厚みが不十分な容器では、口頭部の剥離の抑制が不十分であった。
表3、4に示されるように、実施例1~26の各ガスバリア樹脂組成物は、バイオマス由来の原料を一部に用いていながら、化石燃料由来のみのもの(比較例3のガスバリア樹脂組成物)と遜色のない高いガスバリア性及び耐屈曲性を有していた。また、実施例1~26の各ガスバリア樹脂組成物は、運転開始1時間後に作製されたフィルムについての製膜欠点及びストリークの評価がA又はBであり、十分なロングラン性を有するものであった。
また、実施例及び比較例の結果から、EVOHを用いたガスバリア樹脂組成物において、ガスバリア性及び耐屈曲性はバイオベース度に依存しないのに対し、ロングラン性はバイオベース度が低くなるにつれて高まる傾向にあるという、特異的な性質があることが確認できた。例えば、バイオベース度が65%以下の実施例1~3、5~26の各ガスバリア樹脂組成物は、運転開始1時間後及び5時間後に作製されたフィルムについての製膜欠点、ストリーク及びロール端部着色の評価がA又はBであり、高いロングラン性を有するものとなった。
さらに、実施例27及び実施例28により耐酸化劣化性、実施例29によりサイレージフィルム、実施例30により穀物保存バッグ、実施例31及び実施例32により積層剥離容器の評価を行ったが、いずれの結果についても優れた実用特性が示唆された。
(トレーサビリティ性の評価)
実施例1で得られたガスバリア樹脂組成物ペレットの硫黄化合物含有量の測定、及びその同定を、EVOH(A)及びEVOH(B)ペレットを測定した手法と同様の方法で行った結果、硫黄化合物の含有量は硫黄原子換算で0.1ppmであり、硫黄化合物はジメチルスルフィドであった。実施例1の酸素透過度の評価で得られた単層フィルムを用いて、追跡可能性(トレーサビリティ性)の評価を行った。具体的には得られた単層フィルムの一部を切り出し、トレーサビリティ用試料とした。切り出した単層フィルムのバイオベース度を上記評価方法(4)に記載の方法に従って測定したところ9%であり、実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットで得られた値と一致し、トレーサビリティ性があることが確認された。また、切り出した単層フィルムの硫黄化合物含有量の測定、及びその同定を上記した方法と同様の方法で行った。単層フィルムに含まれる硫黄化合物は硫黄原子換算で0.1ppmであり、硫黄化合物はジメチルスルフィドであり、実施例1のガスバリア樹脂組成物ペレットで得られた値と一致し、トレーサビリティ性があることが確認された。
1 縦製袋充填シール袋
10 フィルム材
11 上端部
12 下端部
15 胴体部
20 背面
21、22 側端部

Claims (22)

  1. 一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物、及び熱可塑性エラストマー(C)を含み、
    上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物の原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であり、
    上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物に対する熱可塑性エラストマー(C)の質量比が5/95以上35/65以下である、ガスバリア樹脂組成物。
  2. 上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、
    原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と、化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)とを含む、請求項1に記載のガスバリア樹脂組成物。
  3. 上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)と上記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)との質量比(A/B)が1/99~99/1である、請求項2に記載のガスバリア樹脂組成物。
  4. 上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、
    原料であるエチレン及びビニルエステルの一部がバイオマス由来であり、残部が化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A’)を含む、請求項1に記載のガスバリア樹脂組成物。
  5. 上記一種又は二種以上のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物のバイオベース度が1%以上99%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  6. バイオベース度が1%以上99%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  7. 硫黄化合物を硫黄原子換算で0ppmを超えて100ppm以下含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  8. 上記硫黄化合物が、ジメチルスルフィドまたはジメチルスルホキシドである、請求項7に記載のガスバリア樹脂組成物。
  9. 上記原料のうちのエチレンの少なくとも一部がバイオマス由来である、請求項1~8のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  10. 上記原料のうちのビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来である、請求項1~9のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  11. 熱可塑性エラストマー(C)が、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された変性熱可塑性エラストマー(c2)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  12. 熱可塑性エラストマー(C)が、無変性熱可塑性エラストマー(c1)を含む、請求項11に記載のガスバリア樹脂組成物。
  13. 無変性熱可塑性エラストマー(c1)の変性熱可塑性エラストマー(c2)に対する質量比(c1/c2)が0/100超95/5以下である、請求項12に記載のガスバリア樹脂組成物。
  14. 熱可塑性エラストマー(C)が、ハロゲン原子を含有するポリスチレン系熱可塑性エラストマー(c3)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載のガスバリア樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備える、多層構造体。
  16. 請求項15に記載の多層構造体を備える包装材。
  17. 請求項15に記載の多層構造体を備える縦製袋充填シール袋。
  18. 請求項15に記載の多層構造体を備えるバッグインボックス用内容器。
  19. 請求項15に記載の多層構造体を備える積層剥離容器であって、
    上記多層構造体が、上記ガスバリア樹脂組成物からなる層の一方の面に直接積層された、極性官能基を有さないポリオレフィンを主成分とする層を備える、積層剥離容器。
  20. 請求項15に記載の多層構造体を備える多層管。
  21. 請求項15に記載の多層構造体を備えるブロー成形容器。
  22. 原料であるエチレン及びビニルエステルの少なくとも一部がバイオマス由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(A)のペレットと、化石燃料由来であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物(B)のペレットと、熱可塑性エラストマー(C)のペレットとをドライブレンドし、溶融混練する工程を備える、ガスバリア樹脂組成物の製造方法。
JP2021125756A 2020-07-31 2021-07-30 ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びガスバリア樹脂組成物の製造方法 Active JP7007518B1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020130017 2020-07-31
JP2020130017 2020-07-31

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP7007518B1 JP7007518B1 (ja) 2022-01-24
JP2022027731A true JP2022027731A (ja) 2022-02-14

Family

ID=80265087

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021125756A Active JP7007518B1 (ja) 2020-07-31 2021-07-30 ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びガスバリア樹脂組成物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7007518B1 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012108374A1 (ja) * 2011-02-10 2012-08-16 株式会社クラレ 植物栽培用培地
JP2018104647A (ja) * 2016-12-28 2018-07-05 日本合成化学工業株式会社 エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットおよびその製造方法
JP2019182947A (ja) * 2018-04-04 2019-10-24 株式会社クラレ 樹脂組成物及びその用途
WO2019202405A1 (en) * 2018-04-16 2019-10-24 Braskem, S.A. Bio-based eva compositions and articles and methods thereof
WO2020071513A1 (ja) * 2018-10-04 2020-04-09 株式会社クラレ 多層構造体及びそれを用いた包装材

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012108374A1 (ja) * 2011-02-10 2012-08-16 株式会社クラレ 植物栽培用培地
JP2018104647A (ja) * 2016-12-28 2018-07-05 日本合成化学工業株式会社 エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物ペレットおよびその製造方法
JP2019182947A (ja) * 2018-04-04 2019-10-24 株式会社クラレ 樹脂組成物及びその用途
WO2019202405A1 (en) * 2018-04-16 2019-10-24 Braskem, S.A. Bio-based eva compositions and articles and methods thereof
WO2020071513A1 (ja) * 2018-10-04 2020-04-09 株式会社クラレ 多層構造体及びそれを用いた包装材

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
SCHMID MARKUS, HAMMANN FELICIA, WINKLER HENNING: "Technofunctional Properties of Films Made From Ethylene Vinyl Acetate/Whey Protein Isolate Compounds", PACKAGING TECHNOLOGY AND SCIENCE, vol. 27, no. 7, JPN6021035309, 24 October 2013 (2013-10-24), GB, pages 521 - 533, XP055895902, ISSN: 0004667678, DOI: 10.1002/pts.2051 *
斎藤祥治: "砂糖の多目的利用について〜発酵で得られる中間化学原料への利用〜", 砂糖類情報, JPN6021029786, 6 March 2010 (2010-03-06), JP, pages 1 - 9, ISSN: 0004667677 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP7007518B1 (ja) 2022-01-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2021166276A1 (ja) 樹脂組成物、成形体、積層体、熱成形容器、ブロー成形容器、フィルム、農業用フィルム、植物培地及びパイプ
JP3851218B2 (ja) 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア材
US11766851B2 (en) Packaging laminate
JPWO2008032743A1 (ja) 酸素吸収性樹脂組成物
JP4304147B2 (ja) 酸素吸収性樹脂組成物
JP2008201432A (ja) レトルト用包装材および包装体
WO2022004701A1 (ja) ガスバリア樹脂組成物、ガスバリア樹脂組成物の製造方法、及び成形体
JP2008213840A (ja) 酸素吸収性包装材および包装体
JP4509963B2 (ja) 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造方法
JP7007518B1 (ja) ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、縦製袋充填シール袋、バックインボックス用内容器、積層剥離容器、多層管、ブロー成形容器及びガスバリア樹脂組成物の製造方法
JP7019856B2 (ja) 成形体、フィルムまたはシート、熱収縮フィルムまたはシート、包装材、産業用フィルムまたはシート、熱成形容器、カップ状容器、トレイ状容器、ブロー成形容器、燃料容器、ボトル容器、チューブ、多層パイプおよび紙容器
JP5600586B2 (ja) 燃料容器
JP2006335809A (ja) 酸素吸収性樹脂組成物、成形体および酸素吸収法
JP5087392B2 (ja) 酸素吸収性樹脂組成物とそれを用いた成形品および積層体
WO2022004691A1 (ja) ガスバリア樹脂組成物、成形体、フィルムまたはシート、包装材、産業用フィルムまたはシート、熱成形容器、カップ状容器、トレイ状容器、ブロー成形容器、燃料容器、ボトル容器、チューブ、多層パイプ及び紙容器
JP7008860B1 (ja) ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、パイプ、温水循環用パイプ、断熱多層パイプ、及び燃料用パイプ
JP7007517B1 (ja) ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、包装材、及びガスバリア樹脂組成物の製造方法
JPH07308996A (ja) 燃料容器および燃料移送パイプ
JP7007516B1 (ja) ガスバリア樹脂組成物、単層フィルム、多層フィルム、蒸着フィルム及び多層構造体
JP7065234B2 (ja) ガスバリア樹脂組成物、多層構造体、及びガスバリア樹脂組成物の製造方法
JP7008859B1 (ja) 単層フィルム、蒸着フィルム、多層フィルム及びヒートシール用フィルム
JP7065237B2 (ja) ガスバリア樹脂組成物、多層シート、包装材及び容器
WO2023054506A1 (ja) 樹脂組成物、成形体、多層構造体、熱成形容器、ブロー成形容器及び蒸着フィルム
JP2023104870A (ja) 樹脂組成物、成形体、積層体、パイプ、温水循環用パイプ、断熱多層パイプ、及び燃料用パイプ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211117

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20211117

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211221

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220106

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7007518

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150