JP2022025677A - 皮膜形成剤およびそれを含む皮膚用組成物 - Google Patents

皮膜形成剤およびそれを含む皮膚用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】皮膚上に耐水性に優れる皮膜を形成することができる皮膚用組成物のための皮膜形成剤を提供する。【解決手段】実施形態に係る皮膚用組成物のための皮膜形成剤は、アニオン性基の対イオンとして塩基性アミノ酸を有するアニオン変性セルロースナノファイバーを含む。実施形態に係る皮膚用組成物は、該皮膜形成剤を含む。アニオン性基としては、例えばカルボキシ基、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基等が挙げられ、塩基性アミノ酸としては、例えばリシン、ヒスチジン、アルギニン等が挙げられる。【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚用組成物のための皮膜形成剤、およびそれを含む皮膚用組成物に関する。
サンスクリーン化粧品やメイクアップ化粧品などの皮膚用組成物には、皮膚上に皮膜を形成することにより、紫外線からの防御や肌の保護、化粧効果(メイクアップ効果)などの機能を発揮させるようにしたものがある。このような皮膜を形成する皮膚用組成物では、その機能を持続させるために皮膜に耐水性が求められる。
ところで、天然に多量に存在するバイオマスの有効利用の観点から、セルロース繊維の利用が種々検討されており、ナノメートルサイズの繊維径を有するセルロースナノファイバーが着目されている。
例えば、特許文献1には、アニオン性基としてカルボキシ基を有するアニオン変性セルロースナノファイバーと疎水性固体を含有する水系の化粧品組成物が開示されており、該セルロースナノファイバーを用いることで皮膜の耐水性に優れることが記載されている。しかしながら、上記アニオン変性セルロースナノファイバーでは、皮膜の耐水性の改善効果が必ずしも十分であるとはいえない。
特開2011-057567号公報
本発明の実施形態は、皮膚上に耐水性に優れる皮膜を形成することができる皮膚用組成物のための皮膜形成剤、及びそれを含む皮膚用組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] アニオン性基の対イオンとして塩基性アミノ酸を有するアニオン変性セルロースナノファイバーを含む、皮膚用組成物のための皮膜形成剤。
[2] 前記アニオン性基が、カルボキシ基、リン酸基、硫酸基及びスルホン酸基からなる群から選択された少なくとも1種である、[1]に記載の皮膜形成剤。
[3] 前記塩基性アミノ酸が、リシン、ヒスチジン及びアルギニンからなる群から選択された少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の皮膜形成剤。
[4] 前記アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥質量あたりの前記塩基性アミノ酸の含有量が0.01~4.0mmol/gである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の皮膜形成剤。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の皮膜形成剤を含む、皮膚用組成物。
本発明の実施形態であると、皮膚に施用される皮膚用組成物として、皮膚上に耐水性に優れる皮膜を形成することができるものを提供することができる。
本実施形態に係る皮膜形成剤は、皮膚に施用することで皮膚上に皮膜を形成する皮膚用組成物に用いられる皮膜形成剤であって、塩基性アミノ酸を対イオンとして有するアニオン変性セルロースナノファイバーを含むものである。アニオン性基が塩基性アミノ酸を対イオンとして有することにより、皮膜の耐水性を向上することができる。
[アニオン変性セルロースナノファイバー]
アニオン変性セルロースナノファイバーは、セルロース分子の構成単位であるグルコースユニットがアニオン性基を有するとともに、該アニオン性基が塩基性アミノ酸を対イオンとして有するセルロースナノファイバーであり、ナノメートルレベルの繊維径を有する繊維状材料である。
アニオン性基は、セルロース分子を構成するすべてのグルコースユニットに一つ又は一つ以上結合していてもよく、あるいは、セルロース分子を構成する一部のグルコースユニットに一つ又は一つ以上結合していてもよい。
アニオン性基とは、アニオン性を示す置換基のことをいう。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基等を挙げることができ、これらのいずれか1種又は2種以上とすることができる。これらのアニオン性基は、グルコースユニットに直接結合してもよく、間接的に結合してもよい。間接的に結合する場合、グルコースユニットとアニオン性基との間には、例えば、炭素数1~4のアルキレン基が存在してもよい。アニオン性基は、塩基性アミノ酸を対イオンとする塩型(例えばカルボキシ基の場合は-COOX。ここでXはカルボン酸と塩を形成するカチオン)のものを含んでいれば、酸型(例えばカルボキシ基の場合は-COOH)のものを含んでもよく、塩基性アミノ酸以外のカチオンを対イオンとする塩型のものを含んでもよい。
アニオン変性セルロースナノファイバーにおけるアニオン性基の含有量は特に限定されない。例えば、アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥質量あたり、0.05~3.0mmol/gでもよく、0.5~2.8mmol/gでもよく、0.6~2.5mmol/gでもよい。なお、本明細書において「乾燥質量」とは、一分間当たりの質量変化率が0.05%以下になるまで140℃で乾燥させた後の質量のことである。
アニオン性基の含有量の測定は、例えば、カルボキシ基の場合、0.5~1質量%の濃度に調製したアニオン変性セルロースナノファイバー含有スラリーを60mL調製し、0.1mol/Lの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行い、pHが約11になるまで続け、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式に従い求めることができる。リン酸基についても、同様の電気伝導度測定により測定することができる。その他のアニオン性基についても公知の方法で測定すればよい。
アニオン性基含有量(mmol/g)=V(mL)×〔0.05/アニオン変性セルロースナノファイバー質量(g)〕
アニオン性基は、塩基性アミノ酸を対イオンとして有する。例えば、アニオン変性セルロースナノファイバーにおいて、アニオン性基は塩基性アミノ酸で中和されている。塩基性アミノ酸とは、分子内に1つのアミノ基に加えて、さらに塩基性を示す残基を有するアミノ酸をいう。塩基性アミノ酸の種類は特に限定されず、例えば、リシン、ヒスチジン及びアルギニンからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。リシン水溶液の等電点は9.7、ヒスチジン水溶液の等電点は7.6、アルギニン水溶液の等電点は10.8とされている。
塩基性アミノ酸は、セルロース分子のすべてのアニオン性基と対イオンを形成してもよく、あるいは、セルロース分子の一部のアニオン性基と対イオンを形成してもよい。セルロース分子の一部のアニオン性基と対イオンを形成する場合、例えば、アニオン性基の全量に対して10モル%以上のアニオン性基が塩基性アミノ酸と対イオンを形成してもよく、アニオン性基の全量に対して25モル%以上、より好ましくは50モル%以上のアニオン性基が塩基性アミノ酸と対イオンを形成してもよい。
アニオン変性セルロースナノファイバーにおける前記対イオンとしての塩基性アミノ酸の含有量は特に限定されないが、0.01~4.0mmol/gであることが好ましい。この塩基性アミノ酸の含有量は、アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥質量あたりの塩基性アミノ酸のモル量であり、0.01mmol/g以上であることにより、皮膜の耐水性を高めることができる。塩基性アミノ酸の含有量は、0.1~3.8mmol/gであることが好ましく、より好ましくは0.2~3.5mmol/gであり、0.5~3.3mmol/gでもよい。なお、該塩基性アミノ酸の含有量は、アニオン性基の含有量以下でもよいが、例えば中和でpHを7とするためにアニオン性基の含有量よりも多くてもよい。
塩基性アミノ酸の含有量の測定は、例えば、0.5~1質量%の濃度に調製した塩形成アミノ酸中和アニオン変性セルロースナノファイバー含有スラリーを60mL調製し、0.1mol/Lの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターを用いてろ過し、得られたろ液から全自動アミノ酸分析機(JEOL社製、JLC-500/V)を用いて定量的に測定することができる。
セルロース分子の一部のアニオン性基が対イオンを有している場合、対イオンを形成していないアニオン性基は酸型であってもよく、あるいは塩基性アミノ酸以外のカチオンを対イオンとして有する塩型であってもよく、その両方であってもよい。塩基性アミノ酸以外のカチオンの塩型としては、特に限定されず、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、下記(a)~(c)の条件を満たすものを用いることが好ましい。
(a)数平均繊維径が0.6~200nmであること。
(b)セルロースI型結晶構造を有すること。
(c)平均アスペクト比が10~1000であること。
上記(a)について、数平均繊維径が200nm以下であることにより、皮膚に塗布する際の使用感を向上することができる。数平均繊維径は、より好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは30nm以下であり、10nm以下でもよい。また、数平均繊維径の下限は1nm以上でもよく、1.5nm以上でもよい。
上記(b)のセルロースI型結晶構造を有することは、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14°~17°付近と、2θ=22°~23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。セルロースI型結晶構造は天然セルロースの結晶形のことである。
アニオン変性セルロースナノファイバーの結晶化度は、特に限定されないが、X線回折装置を用いてSegal法で算出した結晶化度が、例えば60%以上95%以下であることが好ましい。結晶化度は、より好ましくは70%以上である。結晶化度の上限は特に限定されないが、例えば、92%以下でもよく、90%以下でもよい。
上記(c)について、平均アスペクト比が10以上であることにより、耐水性の向上効果を高めることができ、また1000以下であることにより、乾燥後の皮膜のつっぱり感を低減することができる。平均アスペクト比は、より好ましくは50以上であり、更に好ましくは100以上であり、200以上でもよい。平均アスペクト比は、より好ましくは700以下であり、500以下でもよく、400以下でもよい。ここで、平均アスペクト比は、アニオン変性セルロースナノファイバーの数平均繊維径(nm)に対する数平均繊維長(nm)の比(数平均繊維長/数平均繊維径)である。
本実施形態に係るアニオン変性セルロースナノファイバーの製造方法は特に限定されない。例えば、公知の方法に従いアニオン性基を有するセルロースナノファイバーを製造した後、該セルロースナノファイバーに塩基性アミノ酸を反応させること、つまり、該セルロースナノファイバーを塩基性アミノ酸で中和処理をすることにより、塩基性アミノ酸を対イオンとして有するアニオン変性セルロースナノファイバーを得ることができる。その際、例えば、アニオン性基を有するセルロースナノファイバーの水分散液と塩基性アミノ酸とを、pHが7になるまで混合してもよい。あるいはまた、公知の方法に従いセルロース原料にアニオン性基を導入した後、得られたアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基を塩基性アミノ酸で中和処理し、次いで微細化(解繊)処理を行うことにより、塩基性アミノ酸を対イオンとして有するアニオン変性セルロースナノファイバーを得ることができる。
一実施形態において、アニオン性基としてカルボキシ基を有するアニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、セルロース分子中のグルコースユニットの水酸基を酸化してなる酸化セルロースナノファイバーや、セルロース分子中のグルコースユニットの水酸基をカルボキシメチル化してなるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーが挙げられる。
酸化セルロースナノファイバーとしては、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてカルボキシ基に変性されたものが挙げられる。酸化セルロースナノファイバーは、木材パルプなどの天然セルロースをN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化させ、微細化処理することにより得られる。N-オキシル化合物としては、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物が用いられ、例えばピペリジンニトロキシオキシラジカルであり、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4-アセトアミド-TEMPOが好ましい。なお、酸化セルロースナノファイバーは、カルボキシ基とともに、アルデヒド基又はケトン基を有していてもよい。
上記酸化セルロースナノファイバーの製造方法において、微細化処理前にカルボキシ基を塩基性アミノ酸で中和処理してもよく、微細化処理後に中和処理してもよい。微細化処理は、例えば、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー等を用いて、アニオン変性セルロース繊維の分散液を処理することにより行うことができ、アニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を得ることができる。
[皮膜形成剤]
皮膜形成剤は、上記アニオン変性セルロースナノファイバーを含むものであり、上記アニオン変性セルロースナノファイバー単独でもよいが、当該皮膜形成剤が配合される皮膚用組成物の用途に応じた各種添加剤を含有してもよい。
また、皮膜形成剤は、上記アニオン変性セルロースナノファイバーを、水などの溶媒に分散させたものであってもよい。すなわち、皮膜形成剤は、好ましくは、アニオン変性セルロースナノファイバーを水に分散させてなる水分散液であり、水とともにアルコールなどの親水性溶媒を含む分散液でもよい。皮膜形成剤がこのような分散液である場合、アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度は特に限定されず、例えば0.01~10質量%でもよく、0.1~8質量%でもよく、1~5質量%でもよい。
[皮膚用組成物]
本実施形態に係る皮膚用組成物は、上記皮膜形成剤を含むものである。皮膚用組成物は、皮膚に施用することで皮膚上に皮膜を形成する組成物であり、上記アニオン変性セルロースナノファイバーとともに水を含むことが好ましい。
皮膚用組成物における上記アニオン変性セルロースナノファイバーの含有量は、特に限定されず、例えば0.01~10質量%でもよく、0.05~5質量%でもよく、0.1~3質量%でもよい。皮膚用組成物における水の含有量も特に限定されず、例えば20~99.95質量%でもよく、30~99.9質量%でもよく、50~99質量%でもよい。
皮膚用組成物は、その用途に応じた各種配合剤を含んでもよい。該配合剤としては、例えば、油性成分、無機粉体や有機粉体などの粉体、界面活性剤、アルコール類、増粘剤、保湿剤、防腐剤、保存安定剤、無機塩類、pH調整剤、顔料や染料などの着色剤、香料、消臭剤、ビタミン剤、生薬類などが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上併せて用いられる。
上記油性成分を含有する場合、皮膚用組成物は、油滴が水に分散する水中油滴(O/W型)エマルションでもよく、水滴が油に分散する油中水滴(W/O型)エマルションでもよい。油性成分としては、例えば、メチルポリシロキサン、環状ポリシロキサンなどのシリコーンオイル、アボカド油、アーモンド油などの植物油脂、魚油、牛脂などの動物油脂、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ミネラルオイルなどの炭化水素、アラキドン酸、イソステアリン酸などの高級脂肪酸、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール、酢酸ラノリン、乳酸セチル、トリミリスチン酸グリセリンなどのエステル油等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記粉体としては、例えば、平均粒子径が1mm未満のものが用いられ、粉体の形状としては、球状、板状、針状等のいずれでもよい。粉体としては、水や油性成分に溶解しない各種無機粉体、有機粉体を用いることができ、撥水化処理などの表面処理したものを用いてもよい。無機粉体としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、マイカ、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、ベントナイトなどが挙げられる。有機粉体としては、例えば、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダーなどが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上併せて用いることができる。
上記界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤が挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上併せて用いることができる。
上記アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコールなどの一価アルコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上併せて用いることができる。
上記増粘剤としては、アラアビアガム、トラガカントガム、グアガム、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、コラーゲン、アルブミン、ゼラチンなどの水溶性高分子などが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上併せて用いることができる。
皮膚用組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、上記アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体に、任意成分としての上記各種配合剤を適宜に混合し、分散させることにより調製することができる。上記混合・分散処理には、例えば、真空乳化装置、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、湿式粉砕機、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
皮膚用組成物の用途としては、皮膚に施用される各種用途が挙げられ、化粧品、外用医薬品、医薬部外品などに用いることができる。好ましくは、ファンデーション、口紅、リップグロス、頬紅、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、アイシャドー等のメイクアップ化粧料や、サンスクリーン剤等の化粧料のような化粧品の用途が挙げられる。
一実施形態として、皮膚用組成物をサンスクリーン剤に用いる場合、上記アニオン変性セルロースナノファイバーの水分散体に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機粉体を紫外線散乱剤として、その他の添加剤とともに混合し、分散させることにより、サンスクリーン剤(日焼け止め化粧品)としての皮膚用組成物を調製してもよい。サンスクリーン剤の形態としては、例えばクリーム、ローション、ジェル、スプレーなど、特に限定されない。
以下に実施例について比較例と合わせて詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[セルロースナノファイバーの調製]
(製造例1)
針葉樹クラフトパルプ2.0gに水150mL、臭化ナトリウム0.25g、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)0.025gを加え、十分撹拌させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が12mmol/gとなるように加え、反応を開始した。さらに反応中のpHが10~11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、120分間反応させた。反応後、0.1N塩酸を加えてpH=2.0とし、脱水を行った。これに純水を加えてセルロース繊維濃度を2質量%に希釈し、中和工程として、リシン(Lys)を添加してpH=7.0に調製した。その後、微細化処理工程としてマイクロフルイタイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことでアニオン変性セルロースナノファイバーA1を得た。
(製造例2)
中和工程において、リシンの代わりにアルギニン(Arg)を用いた以外は、製造例1と同様の製法でアニオン変性セルロースナノファイバーA2を得た。
(製造例3)
中和工程において、リシンの代わりにヒスチジン(His)を用いた以外は、製造例1と同様の製法でアニオン変性セルロースナノファイバーA3を得た。
(製造例4)
中和工程において、酸化セルロースのカルボキシ基量に対し、50モル%量になるようリシン(Lys)を加えた後、10質量%水酸化ナトリウムで残りのカルボキシ基を中和した以外は製造例1と同様の製法でアニオン変性セルロースナノファイバーA4を得た。得られたアニオン変性セルロースナノファイバーは、アニオン性基の対イオンとして、リシンとナトリウムを、リシン/ナトリウム=50/50(モル比)で有する。
(製造例5)
中和工程において、酸化セルロースのカルボキシ基量に対し、25モル%量になるようリシン(Lys)を加えた後、10質量%水酸化ナトリウムで残りのカルボキシ基を中和した以外は製造例1と同様の製法でアニオン変性セルロースナノファイバーA5を得た。得られたアニオン変性セルロースナノファイバーは、アニオン性基の対イオンとして、リシンとナトリウムを、リシン/ナトリウム=25/75(モル比)で有する。
(製造例6)
微細化処理工程において、マイクロフルイタイザーによる処理を150MPaで20パス行った以外は、製造例1と同様の操作でアニオン変性セルロースナノファイバーA6を得た。
(製造例7)
微細化処理工程において、マイクロフルイタイザーによる処理を95MPaで1パス行った以外は、製造例1と同様の操作でアニオン変性セルロースナノファイバーA7を得た。
(製造例8)
中和工程において、リシンの代わりに10質量%水酸化ナトリウムを用いた以外は、製造例1と同様の製法でアニオン変性セルロースナノファイバーA8を得た。
(製造例9)
第一工業製薬(株)製のカルボキシメチルセルロース(セロゲンWS-A)10.0gに水490.0gを投入し、スターラーで撹拌し溶解させることで、セルロースA9を得た。
(製造例10)
針葉樹クラフトパルプ50.0gを水950.0gに分散させ、家庭用ミキサーで粉砕後、石臼式磨砕機で解繊し、更に水を加えて固形分濃度が2質量%の水分散液とした。得られた2質量%水分散液にマイクロフルイタイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことでセルロースナノファイバーA10を得た。
(評価)
製造例1~8および10により得られたセルロースナノファイバーA1~8,10について結晶化度、数平均繊維径、平均アスペクト比、アニオン性基の含有量、塩基性アミノ酸の含有量を測定した。アニオン性基および塩基性アミノ酸の各含有量の測定方法は上述したとおりであり、結晶化度、数平均繊維径及び平均アスペクト比の測定方法は以下のとおりである。結果を下記表1に示す。
(1)結晶化度(%)
セルロース繊維のX線回折強度をX線回折法にて測定し、その測定結果からSegal法を用いて下記式(1)より算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6―I18.5)/I22.6〕×100 …(1)
式(1)中、I22.6は、X線回折における格子面(200)面(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。また、サンプルのX線回折強度の測定は、株式会社リガク製の「RINT2200」を用いて以下の条件にて実施した。
X線源:Cu/Kα―radiation
管電圧:40Kv
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5~35°
X線のスキャンスピード:10°/min
(2)数平均繊維径および平均アスペクト比
原子間力顕微鏡(AFM)による画像観察において無作為に選択した50本のアニオン変性セルロースナノファイバーについて繊維径及び繊維長をそれぞれ相加平均して数平均繊維径(nm)及び数平均繊維長(nm)を算出した。数平均繊維径に対する数平均繊維長比(数平均繊維長/数平均繊維径)を算出して平均アスペクト比を求めた。
Figure 2022025677000001
[皮膚用組成物の調製]
(実施例1)
製造例1により得られたアニオン変性セルロースナノファイバーA1(2質量%水分散液)を5.0g量り取り、水195.0mLを加え、プライミクス社製のホモミキサーMARKII2.5型により8,000rpmで10分間撹拌した後、脱気することにより、セルロース繊維濃度が0.05質量%の希釈液(皮膚用組成物)を調製した。
(実施例2~10)
製造例1~7により得られたアニオン変性セルロースナノファイバーA1~A7を用いて、下記表2及び表3に示すセルロース繊維濃度になるようにした以外は、実施例1と同様の操作で希釈液を調製した。
(比較例1~3)
製造例8~10により得られたセルロース又はセルロースナノファイバーA8~A10を用いて、セルロース濃度が0.1質量%になるようにした以外は実施例1と同様の操作で希釈液を調製した。
(評価)
実施例1~10及び比較例1~3の希釈液について皮膜の耐水性と使用感を評価した。各評価の方法は以下のとおりである。結果を表2及び表3に示す。
(耐水性評価)
希釈液を3mL取り、Beaulax社製肌模型No.64(#バイオカラー50)にバーコーターでWet膜厚が0.1mmになるよう塗布し乾燥させた。その後、20℃の水浴に浸漬し、流速1.5m/sの水を塗布面に1時間当てた後、トルイジンブルーでセルロースを染色し、目視で着色面積を観察することにより、セルロースの残存量を確認し、以下の基準で評価した。
〇:ほとんど残っている。
△:半分程度残っている。
×:ほとんど残っていない。
(使用感評価)
希釈液を上腕部に塗布し乾燥させた後の感触を、塗布時と乾燥後それぞれについて以下の基準で官能評価した。使用感の結果は、社内のモニター3名の平均値で示した。
・塗布時
〇:伸びが良くべたつかない
△:伸びが悪い又はべたつく
×:伸びが悪くべたつく
・乾燥後
〇:つっぱらない
△:少しつっぱる
×:つっぱる
Figure 2022025677000002
Figure 2022025677000003
表2,3に示すように、実施例1~10に係る塩基性アミノ酸をアニオン性基の対イオンとして有するアニオン変性セルロースナノファイバーA1~A7を用いて調製した皮膜は、比較例1~3に比べて耐水性が高く、特にセルロース繊維濃度が0.05質量%以上、アニオン性基であるカルボキシ基の25モル%以上が塩基性アミノ酸で中和された場合において優れた耐水性を有していた。塩基性アミノ酸を対イオンとして用いることで、塩基性アミノ酸同士の強い水素結合により耐水性が向上したためであると推察される。実施例1~10であると塗布時の使用感にも優れていた。
実施例2と実施例9との対比より、アニオン変性セルロースナノファイバーの平均アスペクト比が50以上、より好ましくは100以上であることにより、耐水性の向上効果に優れることが分かる。また、実施例2と実施例10との対比より、平均アスペクト比が500以下、より好ましくは400以下であることにより、乾燥後の使用感の向上効果に優れることが分かる。
一方、比較例1~3は塩基性アミノ酸を用いて中和した場合よりも水素結合数が少ないためか、強固なネットワーク構造を形成できず、耐水性が低かった。また、比較例2はセルロース分子であるため、セルロース繊維よりも曵糸性があり使用時にべたつく感覚があるため、塗布時の使用感が低下した。また、比較例3は未変性のセルロースナノファイバーであるため、上記耐水性の低さに加え、塗布時の伸びが悪く、乾燥後は剛直な膜となったため使用感が低下した。
以上のように、本実施形態に係る塩基性アミノ酸で中和したアニオン変性セルロースナノファイバーは、耐水性の皮膜形成剤として用いることができる。特に安全性にも優れることから、これらの性能が求められる化粧品、医薬品、医薬部外品などの分野に好適に用いることができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (5)

  1. アニオン性基の対イオンとして塩基性アミノ酸を有するアニオン変性セルロースナノファイバーを含む、皮膚用組成物のための皮膜形成剤。
  2. 前記アニオン性基が、カルボキシ基、リン酸基、硫酸基及びスルホン酸基からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載の皮膜形成剤。
  3. 前記塩基性アミノ酸が、リシン、ヒスチジン及びアルギニンからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の皮膜形成剤。
  4. 前記アニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥質量あたりの前記塩基性アミノ酸の含有量が0.01~4.0mmol/gである、請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膜形成剤。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膜形成剤を含む、皮膚用組成物。

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WO2024154766A1 (ja) * 2023-01-19 2024-07-25 株式会社マツモト交商 水系化粧料

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