以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施の形態におけるエンジン1の概略構成の一例を示す図である。本実施の形態において、エンジン1は、たとえば、コモンレール式のディーゼルエンジンを一例として説明する。しかしながら、エンジン1としては、その他の形式のディーゼルエンジンであってもよい。
エンジン1は、エンジン本体10と、排気マニホールド12と、過給機15と、排気処理システム200とを備える。
エンジン本体10は、複数の気筒(図示せず)と、コモンレール(図示せず)と、複数のインジェクタ11とを含む。本実施の形態においては、エンジン1は、直列4気筒エンジンを一例として説明するが、その他の気筒レイアウト(たとえば、V型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
複数のインジェクタ11は、複数の気筒の各々に設けられ、その各々がコモンレールに接続されている燃料噴射装置である。燃料タンクに貯留された燃料は燃料ポンプによって所定圧まで加圧されてコモンレールへ供給される。コモンレールに供給された燃料は複数のインジェクタ11の各々から所定のタイミングで気筒の内部に直接的に噴射される。複数のインジェクタ11は、ECU100からの制御信号に基づいて動作する。ECU100は、たとえば、多段噴射が実施されるように複数のインジェクタ11を制御する。多段噴射は、たとえば、パイロット噴射と、メイン噴射と、アフター噴射と、ポスト噴射とのうちの少なくともいずれか複数の噴射態様を含む。複数の噴射態様の各々の詳細については後述する。
さらに、複数のインジェクタ11の各々には圧力センサが設けられ、ECU100は、各圧力センサによって検出される燃料圧力の変化から複数のインジェクタ11からの燃料噴射量を一定の精度で推定する。ECU100は、たとえば、これらの推定結果を用いて実際の噴射量およびタイミングが要求された噴射量およびタイミングになるようにフィードバック制御を実行する。
排気マニホールド12は、エンジン本体10の複数の気筒の各々の排気ポート(図示せず)に連結される。排気マニホールド12には、排気管13の一方端が接続される。排気管13の他方端は、過給機15のタービンの排気流入口に接続される。そのため、各気筒の排気ポートから排出される排気は、排気マニホールド12において合流した後、排気管13を経由して過給機15のタービンに供給される。
過給機15は、コンプレッサとタービン(いずれも図示せず)とを含む。コンプレッサのハウジング内にはコンプレッサホイールが収納され、タービンのハウジング内にはタービンホイールが収納される。コンプレッサホイールとタービンホイールとは、連結軸によって連結され、一体的に回転する。そのため、コンプレッサホイールは、排気管13からタービンホイールに供給される排気の排気エネルギーによって回転駆動される。コンプレッサホイールの回転駆動によって図示しない吸気管から吸入される空気が圧縮され、インタークーラ等の熱交換器を経由してエンジン本体10に設けられる吸気マニホールドに供給される。吸気マニホールドに供給される空気は、エンジン本体10に形成される吸気ポートを経由して各気筒に供給される。
エンジン本体10の各気筒に供給された空気と、複数のインジェクタ11から供給された燃料とが混合されることにより混合気が生成され、生成された混合気は、気筒の燃焼室内においてピストンが上死点に向けて移動することによって圧縮される。燃焼室内での混合気の圧縮着火によって燃焼圧が生じるとピストンが押し下げられてピストンとコネクティングロッドを介して接続されるクランクシャフト(出力軸)が回転される。気筒内から排気マニホールド12に排出された排気は、過給機15を駆動させるとともに、排気処理システム200において浄化される。
本実施の形態における排気処理システム200は、排気処理装置16と、燃料添加装置14と、ECU(Electronic Control Unit)100とによって構成される。
排気処理装置16は、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)17と、PM除去フィルタ18と、第1排気温度センサ102と、第2排気温度センサ104と、第3排気温度センサ106とを含む。
燃料添加装置14は、酸化触媒17よりも排気の流路における上流側の排気管13に設けられる。PM除去フィルタ18は、酸化触媒17よりも排気の流路(排気通路)における下流側に設けられる。第1排気温度センサ102は、過給機15のタービンの排気流出口と、酸化触媒17との間の排気の流路に設けられる。第2排気温度センサ104は、酸化触媒17とPM除去フィルタ18との間の排気の流路に設けられる。第3排気温度センサ106は、PM除去フィルタ18の下流側の出口の排気の流路に設けられる。
PM除去フィルタ18は、流通する排気に含まれる粒子状物質(以下、PM(Particulate Matter)と記載する。)を捕集する。PM除去フィルタ18は、たとえば、セラミックやステンレス等によって形成される。捕集されたPMは、PM除去フィルタ18内に堆積する。
燃料添加装置14と酸化触媒17とは、PM除去フィルタ18に堆積したPMを燃焼させ、除去する(再生する)再生機構として機能する。酸化触媒17は、排気が流通する場合に、流通する排気中の窒素酸化物(NOx)および炭素酸化物(COx)などを酸化(浄化)するとともに、排気中に燃料添加装置14やインジェクタ11から添加された燃料が含まれる場合には燃料を酸化する。燃料の酸化によって生じる反応熱により酸化触媒17を通過する排気の温度が上昇する。高温の排気がPM除去フィルタ18を通過することによってPM除去フィルタ18の温度が上昇し、PM除去フィルタ18内に堆積したPMが酸化除去される(燃焼させられる)。これにより、PM除去フィルタ18が再生される。
排気処理装置16のPM除去フィルタ18の後端には、図示しない排気管が接続され、排気管には、触媒などの排気から特定の成分を除去する追加の排気処理装置やマフラー等が接続される。そのため、過給機15のタービンから排出された排気は、排気処理装置16、各種触媒およびマフラー等を経由して車外に排出される。
エンジン1の動作処理および排気処理装置16における排気処理は、ECU100によって実行される。ECU100は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリと、ECU100の外部との情報のやり取りを行なうための入・出力ポート(いずれも図示せず)とを含む制御装置である。
ECU100の入力ポートには、各種センサ類(たとえば、第1排気温度センサ102、第2排気温度センサ104、第3排気温度センサ106、エンジン回転数センサ108、車速センサ110およびエアフローメータ112等)が接続される。
出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、複数のインジェクタ11、燃料添加装置14および警告灯114等)が接続される。
ECU100は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、ECU100には、時間の計測を行なうためのタイマー回路(図示せず)が内蔵されている。ECU100には、第1排気温度センサ102と、第2排気温度センサ104と、第3排気温度センサ106と、エンジン回転数センサ108と、車速センサ110と、エアフローメータ112と、警告灯114とが接続される。
第1排気温度センサ102は、排気処理装置16(より具体的には、酸化触媒17)に流入する排気の温度(以下、排気温度Taと記載する)を検出する。第1排気温度センサ102は、検出した排気温度Taを示す信号をECU100に送信する。
第2排気温度センサ104は、酸化触媒17から流出する(すなわち、PM除去フィルタ18に流入する)排気の温度(以下、排気温度Tbと記載する)を検出する。第2排気温度センサ104は、検出した排気温度Tbを示す信号をECU100に送信する。
第3排気温度センサ106は、排気処理装置16(より具体的には、PM除去フィルタ18)から流出する排気の温度(以下、排気温度Tcと記載する)を検出する。第3排気温度センサ106は、検出した排気温度Tcを示す信号をECU100に送信する。
なお、排気温度Ta,Tb,Tcは、酸化触媒17近傍に設置した温度センサで直接検出する以外に、エンジン1の運転状態や別の場所に設けられた温度センサから推定によって求めてもよい。
エンジン回転数センサ108は、エンジン1のクランクシャフトの回転数をエンジン回転数NEとして検出する。エンジン回転数センサ108は、検出したエンジン回転数NEを示す信号をECU100に送信する。
車速センサ110は、車両の速度(以下、車速と記載する)Vを検出する。車速センサ110は、検出した車速Vを示す信号をECU100に送信する。
エアフローメータ112は、エンジン1に吸入される空気の流量(以下、吸入空気量と記載する)Qを検出する。エアフローメータ112は、検出した吸入空気量Qを示す信号をECU100に送信する。
警告灯114は、たとえば、車両の室内のユーザが視認可能な位置に設けられ、車両のユーザに予め定められた情報を報知する。具体的には、警告灯114は、ECU100からの制御信号に応じて、乗員に対して予め定められた種類の警告を行なう表示灯を点灯可能に構成される。本実施の形態においては、警告灯114は、たとえば、酸化触媒17およびPM除去フィルタ18のうちの少なくともいずれかが劣化していることによる交換またはメンテナンスを促す表示灯(排気処理装置16のメンテナンスランプ)と、燃料添加装置14が劣化していることによる交換またはメンテナンスを促す表示灯(燃料添加装置14のメンテナンスランプ)とを含む。
以上のような構成を有するエンジン1においては、PM除去フィルタ18におけるPMの堆積量が多くなると、PM除去フィルタ18のフィルタ部分が目詰まりを起こして機能が低下する場合がある。そのため、ECU100は、PM除去フィルタ18を再生するための再生制御を実行する。
より具体的には、ECU100は、PM除去フィルタ18内のPMの堆積量を取得する。ECU100は、たとえば、エンジン1の運転条件(たとえば、エンジン回転数NEや燃料噴射量の指令値や吸入空気量等)から複数の気筒からのPMの排出量の推定値を算出する。ECU100は、算出された推定値を積算することによって堆積量を取得してもよい。なお、PMの排出量の具体的な算出方法については周知の技術を用いればよくその詳細な説明は行なわない。ECU100は、取得したPMの堆積量が再生判定値を超えると再生制御を実行する。
ECU100は、再生制御が実行されると、燃料添加装置14から燃料添加を開始する。ECU100は、たとえば、排気温度Tbを、目標温度に昇温するための指令添加量を設定し、設定された指令添加量に従って燃料添加装置14を制御する。ここで、排気の目標温度は、PM除去フィルタ18の温度をPM除去フィルタ18の再生が可能な温度まで昇温することができる排気温度として設定される。
上述のような再生制御により、排気処理装置16では、燃料添加装置14により排気に燃料が添加され、添加された燃料が酸化触媒17で反応し、その反応熱によって排気が昇温する。
図2は、再生制御の実行時における排気処理装置16における温度分布の一例を説明するための図である。図2の横軸は、排気処理装置16の部位を示し、矢印の方向に進むほど排気の下流側の部位であることが示される。図2の「DOC前」と示される部位は、第1排気温度センサ102による排気温度の検出位置を示す。図2の「DOC後」と示される部位は、第2排気温度センサ104による排気温度の検出位置を示す。図2の「フィルタ後」と示される部位は、第3排気温度センサ106による排気温度の検出位置を示す。図2のLN1は、再生制御が非実行の場合の排気処理装置16における温度分布の一例を示す。図2のLN2は、再生制御が実行される場合の排気処理装置16における温度分布の一例を示す。
再生制御が非実行の場合には、燃料添加装置14から燃料が添加されないので、図2のLN1に示されるように、DOC後においてもフィルタ後においても温度は上昇せず、排気が排気処理装置16の下流側に流通するほど排気温度は、配管からの放熱等によって低下していくこととなる。また、このときの排気処理装置16に流入する排気温度は、気筒内の燃焼によって生じる熱量によって定まる。
一方、再生制御が実行される場合には、燃料添加装置14から要求発熱量に応じた量の燃料が供給されるため、図2のLN2に示されるように、酸化触媒17において燃料が酸化することにより生じる反応熱によって温度が上昇する。以下、酸化触媒17において生じた排気温度の上昇幅をDOC昇温代と記載する。そして、PM除去フィルタ18において酸化触媒17と同様に発生する反応熱によってさらに温度が上昇する。以下、PM除去フィルタ18において生じた排気温度の上昇をフィルタ昇温代と記載する。このように、燃料添加装置14から燃料が供給されることで排気温度がDOC昇温代とフィルタ昇温代との総和分だけ上昇した結果、目標温度であるTft(0)になり得る。なお、DOC昇温代とフィルタ昇温代との総和分が要求発熱量に基づく昇温代に相当する。
そして、上述のように目標温度にまで上昇した高温となった排気がPM除去フィルタ18に流れることによって、PM除去フィルタ18の温度が、PM除去フィルタ18の再生が可能な温度範囲内の温度まで昇温し、PM除去フィルタ18内のPMが燃焼される。ECU100は、PM除去フィルタ18の温度がPM除去フィルタ18の再生が可能な温度範囲内の温度になった状態の経過時間をカウントし、カウントした経過時間の合計が所定の再生終了時間を超えた場合に、PM除去フィルタ18の再生が完了したと判定する。
上述したような構成を有するエンジン1の排気処理装置16において、燃料添加装置14における詰まりや酸化触媒17やPM除去フィルタ18の劣化が発生すると、PM除去フィルタ18を目標温度に到達できない場合がある。
燃料添加装置14においては、噴射孔に固化した燃料や煤などのデポジットが堆積することにより詰まりが発生して劣化する場合があり、このような詰まりが発生した場合には、燃料添加装置14においては、ECU100からの添加指令に従った量の燃料を添加できない場合がある。
また、酸化触媒17やPM除去フィルタ18においては、初期状態において構成部材に均一に分布していた貴金属部分が経年使用により一箇所あるいは複数箇所に偏って凝集するなどして燃料との反応箇所が少なくなることで初期状態である場合と同等の反応熱が発生しなくなる場合がある。
そのため、PM除去フィルタ18が目標温度に到達できない場合には、燃料添加装置14における詰まりの発生により劣化したか、排気処理装置16が劣化したかを精度高く判定することが求められる。
しかしながら、排気処理装置16に流入する排気の温度や排気処理装置16から流出する排気の温度のみでは燃料添加装置14が劣化しているか排気処理装置16が劣化しているかを精度高く判定できない場合がある。
図3は、排気処理装置16が劣化している場合の再生制御の実行時における排気処理装置16における温度分布の一例を説明するための図である。図3の横軸は、図2と同様に排気処理装置16の部位を示す。図3のLN1は、図2のLN1と同様である。そのため、それらの詳細な説明は繰り返さない。図3のLN3は、排気処理装置16が劣化しており、かつ、再生制御が実行される場合の排気処理装置16における温度分布の一例を示す。なお、燃料添加装置14は劣化していないものとする。
再生制御が実行される場合には、燃料添加装置14から要求発熱量に応じた量の燃料が供給されるが、酸化触媒17およびPM除去フィルタ18がいずれも劣化状態であると、図3のLN3に示されるように、DOC昇温代およびフィルタ昇温代が小さくなる。そのため、要求発熱量に相当する昇温代に達することができず、排気温度を目標温度であるTft(0)まで上昇させることができない。
図4は、燃料添加装置14が劣化している場合の再生制御の実行時における排気処理装置16における温度分布の一例を説明するための図である。図4の横軸は、図2と同様に排気処理装置16の部位を示す。図4のLN1は、図2のLN1と同様である。そのため、それらの詳細な説明は繰り返さない。図4のLN4は、燃料添加装置14が劣化しており、かつ、再生制御が実行される場合の排気処理装置16における温度分布の一例を示す。なお、排気処理装置16は劣化していないものとする。
再生制御が実行される場合には、燃料添加装置14に対して目標温度まで上昇させる要求発熱量に対応した量の燃料が供給されるように指令される。しかしながら、燃料添加装置14の噴射孔において固化した燃料や煤等のデポジットの詰まりが生じるなどして燃料添加装置14が劣化していると、指令に従った燃料量の添加ができない。
そのため、実際添加した燃料による発熱量は、目標温度まで上昇させる要求発熱量よりも小さくなる。その結果、酸化触媒17およびPM除去フィルタ18において供給された燃料によって排気温度が上昇しても排気温度を目標温度であるTft(0)まで上昇させることができない。
このように、排気温度が上昇しない場合には、燃料添加装置14および排気処理装置16のうちの両方が劣化している場合がある。そのため、排気温度のみで燃料添加装置14の劣化と、排気処理装置16の劣化とを精度高く判定することができないため、さらなる判定精度の向上が求められる。
そこで、本実施の形態においては、ECU100は、以下のように動作するものとする。すなわち、ECU100は、エンジン1の運転状態と、運転状態と運転状態に対応する排気処理装置16の昇温代の目標値との予め定められた関係を用いて目標値を設定する。ECU100は、インジェクタ11を用いたポスト噴射による排気処理装置16の昇温代の第1実測値と、第1実測値を検出したときのエンジン1の運転状態に対応する昇温代の目標値との差分を用いて排気処理装置16の劣化の程度を示す第1学習値を算出する。さらに、ECU100は、燃料添加装置14を用いた燃料の添加による排気処理装置16の昇温代の第2実測値と、上述の目標値と、上述の第1学習値とを用いて燃料添加装置14の劣化の程度を示す第2学習値を算出する。
このようにすると、ポスト噴射の実施により(すなわち、燃料添加装置14を用いずに)排気処理装置16の劣化の程度を示す第1学習値を精度高く算出することができる。さらに、算出された第1学習値を用いることによって燃料添加装置14の劣化の程度を示す第2学習値を精度高く算出することができる。そのため、排気処理装置16の劣化と、燃料添加装置14の劣化とを精度高く判定することができる。
以下、インジェクタ11を用いた排気処理装置16の温度上昇について図5、図6および図7を用いて説明する。
ECU100は、インジェクタ11から燃料を噴射する噴射制御を排気処理装置の温度上昇を伴わない第1噴射制御から第1噴射制御よりも噴射時期を遅角させる第2噴射制御および第2噴射制御に加えてポスト噴射を実施する第3噴射制御を実行することによって排気処理装置16の温度上昇を可能とする。
図5は、第1噴射制御時の燃料の噴射態様の一例について説明するための図である。図5の横軸は、クランク角度を示す。図5には、TDC(Top Dead Center)を基準として設定された第1噴射制御の実行時の噴射タイミングが示される。
第1噴射制御において、パイロット噴射とメイン噴射とアフター噴射とが実施される。パイロット噴射は、メイン噴射の前に実施される少量の燃料が噴射される噴射態様であって、噴射した少量の燃料が燃焼することによって燃焼室内の温度を上昇させ、メイン噴射における燃料の着火遅れを小さくし、騒音を低減することを目的とする。
メイン噴射は、要求される出力(たとえば、アクセル開度に基づいて設定される)を発生させることが可能な量の燃料が噴射される噴射態様であって、前述のパイロット噴射や後述するアフター噴射やポスト噴射と比較して燃料の噴射量が多い噴射態様である。
アフター噴射は、メイン噴射の後に実施される少量の燃料が噴射される噴射態様であって、メイン噴射において噴射された燃料のうちの未燃部分(未燃燃料)を燃焼させて煤やスモークの発生を抑制する噴射態様である。
図5に示されるように、TDCよりも予め定められたクランク角度だけ前のクランク角度を始期として2回のパイロット噴射が所定間隔で実施される。なお、パイロット噴射の回数は、特に2回に限定されるものではない。パイロット噴射における燃料の噴射量は、ECU100によってエンジン1の運転状態に基づいて予め定められる。
2回目のパイロット噴射が実施されてから第1期間が経過した後のTDCの直前のタイミングでメイン噴射が実施される。メイン噴射が実施されてから第2期間が経過した後にアフター噴射が1回実施される。なお、メイン噴射やアフター噴射の回数は、特に1回に限定されるものではない。
図6は、第2噴射制御時の燃料の噴射態様の一例について説明するための図である。図6の横軸は、クランク角度を示す。図6には、TDCを基準として設定された第2噴射制御の実行時の噴射タイミングが示される。第2噴射制御において、パイロット噴射とメイン噴射とアフター噴射とが実施される。第2噴射制御は、上述の第1噴射制御と比較して、パイロット噴射とメイン噴射とアフター噴射との各々の噴射タイミングがそれぞれ遅角側に所定のクランク角度分だけ変更される点が異なる。
図6に示されるように、TDCの直前のクランク角度を始期として2回のパイロット噴射が所定間隔で実施される。2回のパイロット噴射の間隔は、第1噴射制御における2回のパイロット噴射の間隔と同様である。
2回目のパイロット噴射が実施されてから第1期間が経過した後のタイミングでメイン噴射が実施される。メイン噴射が実施されてから第2期間が経過した後にアフター噴射が実施される。
図7は、第3噴射制御時の燃料の噴射態様の一例について説明するための図である。図7の横軸は、クランク角度を示す。図7には、TDCを基準として設定された第3噴射制御の実行時の噴射タイミングが示される。第3噴射制御において、パイロット噴射とメイン噴射とアフター噴射とポスト噴射とが実施される。第3噴射制御は、第2噴射制御と比較して、ポスト噴射が実施される点が異なる。
ポスト噴射は、エンジン1の出力に関連しないタイミングで排気処理装置16の昇温をするための燃料を供給することを目的とする噴射態様である。第3噴射制御においてポスト噴射は、2回実施される。2回のポスト噴射の総量は、排気処理装置16を目標温度に上昇させる燃料量に相当する。なお、ポスト噴射の回数は、特に2回に限定されるものではない。また、複数サイクルあるいは複数のインジェクタ11を用いて排気処理装置16を目標温度に上昇させる燃料量をポスト噴射において噴射してもよい。
図7に示されるように、TDCの直前のクランク角度を始期として2回のパイロット噴射が所定間隔で実施される。2回目のパイロット噴射の間隔は、第1噴射制御および第2噴射制御における2回のパイロット噴射の間隔と同様である。
2回目のパイロット噴射が実施されてから第1期間が経過した後のタイミングでメイン噴射が実施される。メイン噴射が実施されてから第2期間が経過した後にアフター噴射が実施される。そして、アフター噴射が実施されてから第3期間が経過した後のクランク角度を始期として2回のポスト噴射が実施される。
第2噴射制御および第3噴射制御は、第1噴射制御と比較して排気の温度を上昇させて酸化触媒17の温度を上昇させることが可能となる。
図8は、複数の噴射態様にそれぞれ対応する酸化触媒17の昇温代を説明するための図である。図8の縦軸は、酸化触媒17の温度を示す。図8に示すように、第2噴射制御が実行される場合には、第1噴射制御が実行される場合と比較して、噴射時期の遅角によって気筒内の排気の熱量が増加するため、気筒内からの排熱が増加するとともに、一部の未燃燃料が酸化触媒17において酸化してその反応熱が発生する。これにより、酸化触媒17の温度(触媒床温)は、第1噴射制御が実行される場合よりも増加する。さらに、第3噴射制御が実行される場合には、第2噴射制御が実行される場合と比較して、ポスト噴射が実行されるので、噴射時期の遅角による気筒内の排気の熱量の増加に加えて、酸化触媒17に供給される未燃燃料量が増加することによって大きな反応熱が発生する。これにより、酸化触媒17の触媒床温は、第2噴射制御が実行される場合よりも増加する。
このようなポスト噴射は、多用するとエンジンオイルが希釈される可能性があるため、回数等が制限されるものの、燃料添加装置14と同様に排気温度の上昇が可能となるとともに排気処理装置16に供給される燃料量を精度高く推定することができる。そのため、ポスト噴射の実行により、排気処理装置16の温度変化を実測し、実測値と目標値との差分を用いて第1学習値を用いて排気処理装置16が劣化状態であるか否かを精度高く判定することができる。また、燃料添加装置14による燃料添加による排気処理装置16の温度変化を実測し、実測値と第1学習値と目標値とを用いて第2学習値を算出することにより、燃料添加装置14が劣化状態であるか否かを精度高く判定することができる。
以下に、図9を参照して、本実施の形態おけるECU100で実行される制御処理について説明する。図9は、ECU100で実行される制御処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU100は、学習条件が成立するか否かを判定する。学習条件は、たとえば、インジェクタ11の噴射量のフィードバック制御が完了しているという第1条件と、車速Vが予め定められた車速で所定期間以上維持されているという第2条件と、各種センサが正常値を示しているという第3条件とを含む。ECU100は、たとえば、インジェクタ11における実燃料噴射量と指令噴射量との差がしきい値以下となるときにインジェクタ11のフィードバック制御が完了していると判定し、完了フラグをオン状態に設定する。ECU100は、たとえば、完了フラグがオン状態である場合に第1条件が成立していると判定する。さらに、ECU100は、車速センサ110によって検出された車速Vが予め定められた車速を含む所定の範囲内となる状態が所定期間以上維持されている場合に、第2条件が成立していると判定する。さらに、ECU100は、各種センサの出力値が正常時に出力される範囲内の値である場合に、第3条件が成立していると判定する。ECU100は、たとえば、第1条件と、第2条件と、第3条件とがいずれも成立していると判定される場合に学習条件が成立していると判定する。学習条件が成立していると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
S102にて、ECU100は、酸化触媒17における昇温代(以下、DOC昇温代と記載する)の目標値と、PM除去フィルタ18における昇温代(以下、フィルタ昇温代と記載する)の目標値とを設定する。ECU100は、たとえば、エンジン1の運転状態と、運転状態と目標値との予め定められた関係とを用いてDOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値とを設定する。
より具体的には、ECU100は、ポスト噴射量と、排気温度Taと、排気処理装置16を通過するガス量と、DOC昇温代との関係を示すマップを用いてDOC昇温代の目標値を設定する。マップは、たとえば、排気温度Taと、ガス量と、DOC昇温代の目標値との関係を示すマップがポスト噴射量毎に設定される。なお、ポスト噴射における燃料噴射量についてエンジン1の運転状態によって定まる。
ECU100は、たとえば、ポスト噴射量に基づいて適切なマップを選択し、排気温度Taとガス量と選択したマップとからDOC昇温代の目標値を設定する。DOC昇温代の目標値を設定するためのマップは、実験等によって適合され、ECU100のメモリに予め記憶される。
ECU100は、たとえば、吸入空気量Qの履歴情報を用いて排気処理装置16におけるガス量を推定する。ECU100は、たとえば、排気処理装置16を通過したガスに含まれる空気が吸気通路を流通した現在よりも前の時点の吸入空気量に基づいて現在のガス量を推定する。
さらに、ECU100は、ポスト噴射量と、排気温度Taと,排気処理装置16を通過するガス量と、フィルタ昇温代との関係を示すマップを用いてフィルタ昇温代の目標値を設定する。マップは、上述のDOC昇温代の目標値を設定するマップと同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。ECU100は、たとえば、ポスト噴射量に基づいて適切なマップを選択し、排気温度Taとガス量を選択と選択したマップとからフィルタ昇温代の目標値を設定する。フィルタ昇温代の目標値を設定するためのマップは、実験等によって適合され、ECU100のメモリに記憶される。
S104にて、ECU100は、ポスト噴射を含む第3噴射制御を実行する。第3噴射制御については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
S106にて、ECU100は、DOC劣化量を算出する。具体的には、ECU100は、DOC昇温代の目標値からDOC昇温代の実測値を減算した値をDOC劣化量として算出する。ECU100は、たとえば、排気温度Tbから排気温度Taを減算した値をDOC昇温代の実測値として算出してもよいし、あるいは、排気温度Taから酸化触媒17において燃料を供給しない場合における排気温度の低下分を減算した値を排気温度Tbから減算して第1昇温代の実測値を算出してもよい。
S108にて、ECU100は、フィルタ劣化量を算出する。具体的には、ECU100は、フィルタ昇温代の目標値からフィルタ昇温代の実測値を減算した値をフィルタ劣化量として算出する。ECU100は、たとえば、排気温度Tcから排気温度Tbを減算した値をフィルタ昇温代の実測値として取得する。
S110にて、ECU100は、第1学習値を算出する。ECU100は、たとえば、DOC劣化量とフィルタ劣化量とを用いて第1学習値を算出する。ECU100は、たとえば、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値との総和に対するDOC劣化量とフィルタ劣化量との総和の割合を第1学習値として算出する。なお、ECU100は、たとえば、DOC昇温代の目標値に対するDOC劣化量の割合と、フィルタ昇温代の目標値に対するフィルタ劣化量との割合とのうちのいずれか大きい方の値を第1学習値として算出してもよい。第1学習値は、たとえば、百分率で示されてもよい。
S112にて、ECU100は、排気温度が一定の状態であるか否かを判定する。ECU100は、たとえば、第3噴射制御を実行してから所定期間が経過したときに排気温度が一定の状態であると判定してもよいし、あるいは、排気温度TbまたはTcの時間変化量の大きさがしきい値以下である場合に排気温度が一定の状態であると判定してもよいし、排気温度TaとTcとの差がしきい値以下である場合に排気温度が一定の状態であると判定してもよい。排気温度が一定の状態であると判定される場合(S112にてYES)、処理はS114に移される。なお、排気温度が一定の状態でないと判定される場合(S112にてNO)、処理はS112に戻される。
S114にて、ECU100は、燃料添加装置14を用いた燃料添加を実行する。ECU100は、たとえば、ポスト噴射によって供給された燃料量に相当する量の燃料が添加されるように燃料添加装置14を制御する。ECU100は、たとえば、ポスト噴射によって供給された燃料量を推定し、推定された燃料量の燃料が添加されるように燃料添加装置14に対して燃料の添加指令を出力してもよい。
S116にて、ECU100は、第2学習値を算出する。ECU100は、たとえば、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値との総和を算出する。ECU100は、算出した総和からDOC昇温代の実測値とフィルタ昇温代の実測値と第1学習値に相当する温度低下分(すなわち、DOC劣化量と、フィルタ劣化量との総和)とを減算して温度の不足分を算出する。ECU100は、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値との総和に対する不足分の割合を第2学習値として算出する。第2学習値は、たとえば、百分率で示されてもよい。
S118にて、ECU100は、第1学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定する。しきい値Th(0)は、予め定められた値であって、実験等によって適合される。第1学習値がしきい値Th(0)以上であると判定される場合(S118にてYES)、処理はS120に移される。
S120にて、ECU100は、排気処理装置16のメンテナンスランプが点灯するように警告灯114を制御する。なお、第1学習値がしきい値Th(0)よりも小さい場合(S118にてNO)、処理はS122に移される。
S122にて、ECU100は、第2学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定する。第2学習値がしきい値Th(0)以上であると判定される場合(S122にてYES)、処理はS124に移される。
S124にて、ECU100は、燃料添加装置14のメンテナンスランプが点灯するように警告灯114を制御する。なお、学習条件が成立しない場合や(S100にてNO)、第2学習値がしきい値Th(0)よりも小さいと判定される場合(S122にてNO)、この処理は終了される。
以上のような構造およびフローチャートに基づくECU100の動作について図10-図14を用いて説明する。
たとえば、インジェクタ11のフィードバック制御が完了しており、車速Vが所定の範囲内で維持された定常走行状態であって、かつ、各種センサの出力値が正常範囲内である場合には(S100にてYES)、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値とが設定される(S102)。そして、第3噴射制御が実行されることによって(S104)、ポスト噴射による排気処理装置16の昇温が行なわれる。
図10は、ポスト噴射が実施される場合のECU100の動作の一例を説明するための図である。図10の横軸は、排気処理装置16の部位を示す。図10のLN5(破線)は、酸化触媒17およびPM除去フィルタ18が劣化していない初期状態(新品状態)である場合に排気温度を目標温度Tft(0)まで上昇させる量の燃料がポスト噴射により供給されたときの排気処理装置16における温度分布の一例を示す。図10のLN5(太実線)は、ポスト噴射後の排気処理装置16における実際の温度分布の一例を示す。図10のLN6(細実線)は、排気処理装置16への燃料供給が行なわれない場合の排気処理装置16における温度分布の一例を示す。
このとき、第1排気温度センサ102、第2排気温度センサ104および第3排気温度センサ106によってDOC前の排気温度Taと、DOC後の排気温度Tbと、フィルタ後の排気温度Tcとが検出される。これにより、図10のLN6における、DOC前の位置の高さに相当する値と、DOC後の位置の高さに相当する値と、フィルタ後の位置の高さに相当する値とがECU100により取得される。これらの取得された値からDOC昇温代の実測値と、フィルタ昇温代の実測値とが算出される。
ここで、エンジン1の運転状態からDOC後の位置における図10のLN5の高さに相当する値と図10のLN7の高さに相当する値との差分に相当する値がDOC昇温代の目標値として設定されることになる。さらに、エンジン1の運転状態からフィルタ後の位置における図10のLN5の高さに相当する値から、DOC後の位置における図10のLN7の高さに相当する値とDOC昇温代の目標値とを減算した値がフィルタ昇温代の目標値として設定されることになる。
図11は、DOC劣化量とフィルタ劣化量とを説明するための図である。図11の縦軸は、触媒床温を示す。図11の左側には、酸化触媒17のDOC昇温代の目標値と実測値とが示される。図11の右側には、PM除去フィルタ18のフィルタ昇温代の目標値と実測値とが示される。
図11に示すように、DOC昇温代の目標値からDOC昇温代の実測値が減算されることによってDOC劣化量が算出される(S106)。さらに、フィルタ昇温代の目標値からフィルタ昇温代の実測値が減算されることによってフィルタ劣化量が算出される(S108)。そして、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値との総和に対するDOC劣化量とフィルタ劣化量との総和の割合が第1学習値として算出される(S110)。
その後に、排気温度が一定の状態になると(S112にてYES)、燃料添加装置14による燃料添加が実施される(S114)。このとき、ポスト噴射により供給された燃料量に相当する量の燃料が供給されるように燃料添加装置14が制御される。
図12は、燃料添加装置14による燃料添加が実施される場合のECU100の動作を説明するための図である。図12の横軸は、排気処理装置16の部位を示す。図12のLN5とLN7は、図10のLN5とLN7と同様である。そのため、それらの詳細な説明は繰り返さない。図12のLN8(太実線)は、燃料添加装置14による燃料添加後の排気処理装置16における実際の温度分布の一例を示す。
このとき、第1排気温度センサ102、第2排気温度センサ104および第3排気温度センサ106によってDOC前の排気温度Taと、DOC後の排気温度Tbと、フィルタ後の排気温度Tcとが検出される。これにより、図12のLN8における、DOC前の位置の高さに相当する値と、DOC後の位置の高さに相当する値と、フィルタ後の位置の高さに相当する値とがECU100により取得される。これらの取得された値からDOC昇温代の実測値と、フィルタ昇温代の実測値とが算出される。
ここで、DOC後の位置において、図12のLN5の高さに相当する値と図12のLN7の高さに相当する値との差分によりDOC昇温代の目標値が示される。そして、DOC昇温代の目標値から、実際のDOC昇温代の実測値とDOC劣化量とを減算した値が酸化触媒17における燃料添加装置14の劣化により不足した不足部分に相当する。同様に、フィルタ後の位置において、図12のLN5の高さに相当する値と図12のLN7の高さに相当する値との差分からDOC昇温代の目標値を減算した値がフィルタ昇温代の目標値として示される。そして、フィルタ昇温代の目標値から、実際のフィルタ昇温代の実測値と、フィルタ劣化量とを減算した値がPM除去フィルタにおける燃料添加装置14の劣化により不足した不足部分に相当する。
図13は、第2学習値の算出方法を説明するための図である。図12の縦軸は、温度を示す。図13の左側には、酸化触媒17のDOC昇温代の目標値と実測値とDOC劣化量とが示される。図13の右側には、PM除去フィルタ18のフィルタ昇温代の目標値と実測値とフィルタ劣化量とが示される。
図13に示すように、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値との総和からDOC昇温代の実測値と、DOC劣化量と、フィルタ昇温代の実測値と、フィルタ劣化量とが減算された値(図13の一点鎖線の枠に相当する値)が不足部分として算出される。そして、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値との総和に対する不足部分の割合が第2学習値として算出される(S116)。
第1学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かが判定され(S118)、第1学習値がしきい値Th(0)以上でない場合には(S118にてNO)、第2学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かが判定される(S122)。
図14は、走行距離に応じた第1学習値と第2学習値との変化の一例を示す図である。図14の縦軸は、学習値を示す。図14の横軸は、走行距離を示す。図14のLN9は、第1学習値の変化の一例を示す。図14のLN10は、第2学習値の変化の一例を示す。
図14に示すように、第1学習値および第2学習値は、走行距離が長くなるほど増加していく。たとえば、第1学習値の方が第2学習値よりも所定期間における増加量が大きい場合には、走行距離L(0)において第1学習値が第2学習値よりも先にしきい値Th(0)に到達する。第1学習値がしきい値Th(0)以上になると(S118にてYES)、排気処理装置16のメンテナンスランプが点灯する(S120)。
その後、排気処理装置16が交換されるなどした後に車両の走行が継続される場合において、走行距離L(1)において第2学習値がしきい値Th(0)以上になると(S122にてYES)、燃料添加装置14のメンテナンスランプが点灯する(S124)。
以上のようにして、本実施の形態に係る排気処理システムによると、ポスト噴射の実施により(すなわち、燃料添加装置14を用いずに)排気処理装置16の劣化の程度を示す第1学習値を精度高く算出することができる。さらに、算出された第1学習値を用いることによって燃料添加装置14の劣化の程度を示す第2学習値を精度高く算出することができる。特に、排気処理装置16として酸化触媒17とPM除去フィルタ18とを含む場合においてもDOC劣化量とフィルタ劣化量とを用いて第1学習値を精度高く算出することができる。したがって、排気処理装置16の劣化と、燃料添加装置14の劣化とを精度高く判定する排気処理システムを提供することができる。
さらに、DOC昇温代の目標値と、フィルタ昇温代の目標値とを、ポスト噴射による燃料の供給量と、排気処理装置16に流入する排気温度と、排気処理装置16を通過する気体の流量との関係を示すマップを用いることによって、エンジン1の運転状態に対応する昇温代の目標値を適切に設定することができる。
さらに、第1学習値を用いて排気処理装置16が劣化状態である否かを精度高く判定することができるとともに第2学習値を用いて燃料添加装置14が劣化状態であるか否かを精度高く判定することができる。さらに、判定結果に基づく情報をユーザに報知することによりユーザに排気処理装置16または燃料添加装置14の劣化状態を認識させることができる。そのため、正常な部品を誤って交換されることを抑制することができる。
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態では、DOC劣化量とフィルタ劣化量とを用いて第1学習値を算出し、算出された第1学習値がしきい値Th(0)以上である場合に、排気処理装置16のメンテナンスランプを点灯するものとして説明したが、DOC昇温代の目標値に対するDOC劣化量の割合と、フィルタ昇温代の目標値に対するフィルタ劣化量との割合とをそれぞれ学習値として算出し、それぞれの学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定し、いずれかの学習値がしきい値Th(0)以上である場合に、排気処理装置16のメンテナンスランプを点灯させるようにしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、DOC昇温代の目標値とフィルタ昇温代の目標値の総和に対するDOC劣化量とフィルタ劣化量との総和の割合を第1学習値として算出するものとして説明したが、DOC劣化量およびフィルタ劣化量の総和を第1学習値として算出してもよい。この場合、燃料添加装置14を用いた燃料添加による上述の不足部分が第2学習値として算出される。
さらに上述の実施の形態では、第1学習値がしきい値Th(0)以上である場合に排気処理装置16のメンテナンスランプを点灯させ、第1学習値がしきい値Th(0)よりも小さく、かつ、第2学習値がしきい値Th(0)以上である場合に燃料添加装置14のメンテナンスランプを点灯させるものとして説明したが、第1学習値の分だけ、あるいは、第2学習値の分だけ、燃料添加装置14から添加される燃料量を増量補正するようにしてもよい。このようにすると、酸化触媒17およびPM除去フィルタ18の温度を再生可能な温度範囲になるように昇温させることができるため、PM除去フィルタ18の再生を適切に実施することができる。なお、増量補正は、昇温代が目標値になるように実測値との差分をフィードバックして行なわれてもよいし、予め定められた量あるいは予め定められた係数を乗算した分だけ増加するようにして行なわれてもよい。
さらに上述の実施の形態では、第1学習値がしきい値Th(0)以上である場合に排気処理装置16のメンテナンスランプを点灯させ、第2学習値がしきい値Th(0)以上である場合に燃料添加装置14のメンテナンスランプを点灯させるものとして説明したが、上述したように燃料量を増量補正する場合には、第1学習値の積算値および第2学習値の積算値を算出し、いずれかの積算値がしきい値を超える場合にしきい値を超えた積算値に対応する機器のメンテナンスランプが点灯されるようにしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、第1学習値がしきい値Th(0)以上でない場合に第2学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定するものとして説明したが、第2学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定し、第2学習値がしきい値Th(0)以上でない場合に第1学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定してもよい。
さらに上述の実施の形態では、第1学習値がしきい値Th(0)以上でない場合に第2学習値がしきい値Th(0)以上であるか否かを判定するものとして説明したが、第1学習値のしきい値と第2学習値のしきい値とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
さらに上述の実施の形態では、燃料添加装置14は、排気管13に設けられるものとして説明したが、少なくとも排気処理装置16よりも上流側であればよく、たとえば、過給機15のタービンよりも下流の排気管の位置に設けられてもよい。
さらに上述の実施の形態では、図15に示すように、昇温代の目標値を算出するためのマップとして、排気処理装置16に流入する排気温度と通過ガス流量と目標値との関係を示すマップをポスト噴射量毎に設定するものとして説明したが、たとえば、排気処理装置16に流入する排気温度と通過ガス流量とポスト噴射量と目標値との関係を示す3次元マップが用いられてもよいし、数式あるいは関数等を用いて設定するものであってもよい。
さらに上述の実施の形態では、排気処理装置である酸化触媒17のDOC劣化量と、排気処理装置であるPM除去フィルタ18のフィルタ劣化量とを用いて第1学習値を算出するものとして説明したが、DOC劣化量と、フィルタ劣化量とのうちのいずれか一方を用いて第1学習値を算出してもよい。すなわち、劣化量の算出対象を酸化触媒17としてもよいし、PM除去フィルタ18としてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。