JP2022020188A - 2層構造施設 - Google Patents

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久米彦 河野
Kumehiko Kouno
隆 ▲高▼柳
Takashi Takayanagi
智夫 宮田
Tomoo Miyata
大立 朱
Dali Zhu
真 村岡
Makoto Muraoka
卓司 今井
Takuji Imai
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Abstract

【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち、多種多様な競技やイベントを開催することができ、客席を増設することなく会場面積の大小に容易に対応し得る客席配置を備えた2層構造施設を提供することである。【解決手段】本願発明の2層構造施設は、基礎床面と可動床面との2層構造からなる施設であり、可動体と昇降装置、客席を備えたものである。可動体は、支持体とこの支持体上に固定される可動床面を有するものである。昇降装置は可動体を吊上げかつ吊降ろすものであり、客席は基礎床面の中央から離れる方向に上昇していく階段状に形成される。支持体が基礎床面上に載置されると、可動床面と基礎床面の間に収容空間が形成され、この収容空間内に複数段からなる客席のうち下層段の一部が収容される。【選択図】図1

Description

本願発明は、サッカー、野球、陸上競技といった各種競技や、コンサート、展示会、物産展といった各種イベントを開催する施設に関するものであり、より具体的には、上下2層の床面をそれぞれ利用することができる2層構造施設に関するものである。
競技場は、ある特定の競技を行うため、あるいはその競技を観戦させることを目的とする施設であり、野球場やサッカー場などはその代表的な例である。ところが、競技場で行われる競技の回数(例えば試合数)は一般的に年間を通じて数十回程度であり、そのため現状では年間を通じて安定的に収益を上げることは難しい。
そこでスポーツ庁では、官民連携によるスタジアムやアリーナの整備計画策定に対して財政支援を行うこととしており、「稼げる」という視点を重視したうえでスポーツ以外のイベントも常時開催できる多機能型・複合型の施設の整備を推し進めている。また政府では、「稼げる」を重視した多機能型・複合型のスタジアムやアリーナを2025年までに全国的に整備する目標も掲げている。
野球とサッカー、そしてコンサートなどに使用することができる多目的競技場は、1年を通じて定常的に集客機会が得られることから収益面にとっては極めて好適であり、これまでにも多目的競技場に関する様々な提案が行われてきた。例えば特許文献1では、固定観覧席と移動観覧席に加え、退避観覧席を配置することとし、競技フィールドの形状を変更できるとともに、競技フィールドの広さ(面積)も可変とする多目的競技場設備について提案している。
特開平07-091091号公報
特許文献1に開示される多目的競技場設備は、退避観覧席を場内に配置するパターンと移動観覧席等の下方に収納するパターンのいずれかを選択することによって、つまり退避観覧席の有無に応じた総観覧席の増減によって、競技フィールドの面積を変更するものである。しかしながら特許文献1の技術は、競技フィールドの面積を変えることはできても、競技フィールドの状態を変更することはできない。例えばサッカー場や野球場の場合、競技フィールドは芝生や土で覆われているが、その状態を変更することができなければ、芝生や土の上にステージを組み立ててコンサート等を開催することになり、当然ながら芝生等にとっては好ましくない。
そこで、競技用フィールド(例えば、芝生のフィールド)とイベント用の床(例えば、コンクリート床)を用意し、目的に応じてこれらを交換することができる施設が考えられる。すなわち、サッカー等を実施するときは競技用フィールドを配置し、コンサート等を開催するときは競技用フィールドを移動してイベント用の床を利用するわけである。
しかしながら、競技用フィールドとイベント用の床を交互利用する施設(以下、単に「交互利用施設」という。)は、客席の配置に関する問題を指摘することができる。通常のサッカー場はその幅が100m近くあるなど一般的に競技用フィールドは広く、これに対してコンサートのステージはそれほど広くない。一方、観客席はフィールドやステージにできるだけ接近するように設けられる。つまり、交互利用施設の場合、広い競技用フィールドのための客席配置と、狭小のステージのための客席配置に対応しなければならない。広い競技用フィールドの客席配置のままコンサートを開催すると、客席からステージまで相当に離れてしまうからである。したがって、競技用フィールドのための客席配置を基本とし、コンサートを開催するときは客席を増設することになるが、これでは開催準備に多大な時間とコストがかかり、集客機会が増えたとしても「稼げる」施設にはなり得ない。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち、多種多様な競技やイベントを開催することができ、客席を増設することなく会場面積の大小に容易に対応し得る客席配置を備えた2層構造施設を提供することである。
本願発明は、上下2層の基礎床面と可動床面を利用し、階段状の客席の一部を可動床面の下方に収容する、という点に着目して開発されたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
本願発明の2層構造施設は、上下に移動しない基礎床面と昇降可能な可動床面との2層構造からなる施設であり、可動体と昇降装置、客席を備えたものである。このうち可動体は、支持体とこの支持体上に固定される可動床面を有するものである。また昇降装置は、可動体を吊上げかつ吊降ろすものであり、客席は、基礎床面の中央から離れる方向に上昇していく階段状に形成される。支持体が基礎床面上に載置されると、可動床面と基礎床面の間に収容空間が形成され、この収容空間内に複数段からなる客席のうち下層段の一部が収容される。
本願発明の2層構造施設は、可動床面の縁部から中央側に寄った位置に支持体が設けられたものとすることもできる。この場合、収容空間は可動床面の下方であって支持体の外側に形成される。
本願発明の2層構造施設は、可動床面の上方に所定の空間が設けられるような「計画高さ」まで吊上げた可動体を、その計画高さで維持するものとすることもできる。
本願発明の2層構造施設は、昇降装置が可動体の上方に配置される天井体と、天井体から垂下する複数の吊ロープ、天井体に固定される巻上手段を有するものとすることもできる。なお巻上手段は、吊ロープの下端に連結された可動体を、吊上げかつ吊降ろすことができる手段である。
本願発明の2層構造施設は、可動体が複数の「分割可動体(可動床面を複数に平面分割した構造体)」によって形成されたものとすることもできる。なお分割可動体には、それぞれ収容空間が設けられる。この場合の昇降装置は、分割可動体ごとに吊上げかつ吊降ろすことができる。
本願発明の2層構造施設は、客席ブロック(2以上の列の客席を組み合わせた客席の集合体)が形成されたものとすることもできる。この客席ブロックは、客席ブロック単位で(客席ブロックごとに)基礎床面上を平面移動可能である。なお客席ブロックは、複数段からなる客席のうち下層段の一部によって形成することもできる。
本願発明の2層構造施設には、次のような効果がある。
(1)サッカーや野球、陸上競技といった各種競技を実施することも、コンサートや展示会、物産展といった各種イベントを開催することもでき、その結果、施設の利用稼働率を高くすることができる。
(2)はじめから、可動床面よりも狭小の基礎床面に適した客席配置としていることから、コンサート等を開催するために客席を増設する必要がなく、従来に比して開催準備にかかる時間とコストを低減することができる。
(3)所定の空間(例えば、フットサルの実施が可能な程度の空間)が設けられるまで可動床面を吊上げ、さらにその状態を維持することによって、上層の可動床面ではフットサル等を行うとともに、下層の基礎床面ではコンサート等のイベントを開催するなど、同一の施設で2種類の各種競技や各種イベントを実施することができる。
(a)は可動体が基礎床面上に載置された状態の2層構造施設を模式的に示す平面図、(b)は可動体が基礎床面上に載置された状態の2層構造施設を模式的に示す断面図。 (a)は可動体が上方に吊上げられた状態の2層構造施設を模式的に示す平面図、(b)は可動体が上方に吊上げられた状態の2層構造施設を模式的に示す断面図。 可動床面を模式的に示す断面図。 (a)は複数の梁を1方向に配置した可動体を下側から見た平面図、(b)は複数の梁を直交する2方向に配置した可動体を下側から見た平面図。 可動体の収容空間内に客席の一部が収容された状態を模式的に示す断面図。 昇降装置の例を模式的に示す断面図。 天井体が可動床面上方の所定位置に配置された状態を模式的に示す上方から見た平面図。 (a)上段梁材から下段梁材をやや吊降ろした状態を模式的に示す梁軸方向の部分断面図、(b)は上段梁材から下段梁材をやや吊降ろした状態を模式的に示す梁軸直角方向の部分断面図。 2分割された分割可動体のうち一方の分割可動体のみを吊上げた状態を模式的に示す断面図。 ステージの周辺に移動した客席ブロックを模式的に示す平面図。 下層段の一部によって形成されたブロック客席を模式的に示す断面図。 (a)は2層構造施設を可動床面使用状態としたときのステップ図、(b)は2層構造施設を基礎床面使用状態としたときのステップ図。
本願発明の2層構造施設の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
本願発明の2層構造施設は、「基礎床面」と「可動床面」の2層構造からなることをひとつの特徴としている。なお、基礎床面が上下に移動しないいわば固定された床面であるのに対して、可動床面は上下に移動する(つまり、昇降可能な)床面である。
図1は、可動体200が基礎床面300上に載置された状態(以下、「可動床面使用状態」という。)の2層構造施設100を模式的に示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。この図に示すように本願発明の2層構造施設100は、可動体200と基礎床面300、客席400、そしてこの図では示されていない昇降装置を含んで構成される。基礎床面300の上方に配置される可動体200は、その表面に可動床面が形成され、昇降装置によって上下に移動する。また客席400は、基礎床面300の中央から離れる方向に上昇していくように傾斜した階段状(いわゆるスタンド形式)の構造であり、可動床面や基礎床面300を取り囲むように複数の列によって形成される。
図2は、可動体200が上方に吊上げられた状態(以下、「基礎床面使用状態」という。)の2層構造施設100を模式的に示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。この図に示す基礎床面使用状態は、昇降装置によって基礎床面300が吊上げられ、基礎床面300の上方に大きな空間が形成されており、したがって基礎床面300の利用が可能となる。一方、図1に示す可動床面使用状態は、基礎床面300の上方に大きな空間が形成されていないものの、可動体200の上方に大きな空間が形成されており、この場合は可動床面(可動体200のの表面)の利用に適している。ここで図1(b)を見ると、可動床面の方が基礎床面300よりも広い面積を有していることが分かる。そのため、可動床面を利用するときはサッカーや野球、ラグビーといった比較的広大な空間で行われる競技を行うことができ、基礎床面300を利用するときはバスケットボールやバレーボール、卓球といった比較的狭小な空間で行われる競技、あるいはコンサートや展示会、物産展といったイベントを実施するとよい。
以下、本願発明の2層構造施設100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
(可動体)
図3は、可動体200を模式的に示す断面図である。この図に示すように可動体200は、可動床面210と支持体220を有しており、可動床面210が支持体220の上部に固定されることによって形成される。この可動床面210は、競技を実施する面積を備えた盤状のものであり、その表面は用途に応じて芝生(図3)や土で覆うとよい。また支持体220は、可動床面210を基礎床面300からいわば持ち上げた位置で支持する部材であり、相当の強度を有する梁材(例えば、I形鋼やH形鋼)などを利用することができる。支持体220は、可動床面210の面積(つまり重量)に応じて、図4(a)に示すように複数(図では3本)の梁を1方向(図では左右方向)にのみ配置することもできるし、図4(b)に示すように複数(図では3本+5本)の梁を直交する2方向(図では左右方向と上下方向)に配置することもできる。もちろん支持体220(梁)の本数も、適宜設計することができる。なお図4は、可動体200を下側から見た平面図である。
図3に示す可動体200は、可動床面210の縁部(外周)から中央側に寄った位置に支持体220が設けられており、これにより可動床面210の下方であって支持体220の外側には相当の空間(以下、「収容空間230」という。)が形成される。そして図5に示すように可動床面使用状態(図1)においては、複数段からなる客席400のうち下層段の一部(図では下から4段分)をこの収容空間230に収容することができる。なお図4(b)に示す例では、可動床面210の下方であって支持体220の外側に収容空間230が形成されるが、図4(a)に示す例では、支持体220の外側に加え支持体220(梁)と支持体220の間も客席400を収容する収容空間230として利用することができる。
図5に示すように、収容空間230内に収容される客席400の一部(以下、便宜上「収容客席」という。)は、基礎床面300の中央寄りであって、可動床面210と平面的に重なるように配置されている。すなわち収容客席は、可動床面210を利用する際には支障となるが、可動床面210より狭小な基礎床面300を利用するときはステージ等に最も接近した有益な客席400となる。そこで、可動床面使用状態(図1)では収容客席を収容空間230内に収め、一方、基礎床面使用状態(図2)では収容客席を表に出して利用するわけである。これにより基礎床面使用状態としたときに新たに客席400(つまり、収容客席)を増設する必要がなく、従来技術に比してコンサート等の開催準備にかかる時間とコストを低減することができる。
(昇降装置)
昇降装置は、可動体200を吊上げかつ吊降ろす装置であり、可動体200を昇降させることができればウィンチやホイスト式クレーンなど従来用いられている種々の技術を利用することができる。ここでは一例として、図6に示す昇降装置(以下、便宜上「天井昇降装置500」という。)について説明する。天井昇降装置500は、図6に示すように天井体510と複数の吊ロープ520、そしてこの図では示されていない巻上手段を含んで構成される。
天井体510は、可動体200の上方に配置され、しかも平面視で可動床面210全体を覆うように配置される。例えば、天井体510を面状(盤状)の構造として可動床面210全体を覆うこともできるし、図7に示すように天井体510を梁状構造とし、複数(図7では6本)の梁状の天井体510を平行配置することによって可動床面210全体を覆うこともできる。なお、図6に示す天井体510は梁材を利用した構造であり、より詳しくはアーチ材が梁材をワイヤーロープで支持する(吊る)構造としている。
また天井体510の梁材は、図8に示すように上方に配置される上段梁材511と、下方に配置される下段梁材512の上下2段梁構造とすることもできる。図8は、上段梁材511から下段梁材512をやや吊降ろした状態を模式的に示す図であり、(a)は梁材511を梁軸方向の鉛直断面で切断した部分断面図、(b)は梁軸直角方向の鉛直断面で切断した断面図である。この場合、図8に示すように上段梁材511は上下方向の移動が拘束され(つまり上下移動しない)、一方の下段梁材512が上下に移動する構造とされる。以下、図8を参照しながら上段梁材511と下段梁材512からなる構造とその動作について詳しく説明する。
図8に示すように、上段梁材511にはウィンチ等の巻上手段530が固定されており、また上段梁材511には複数(図では7個)の滑車(以下、便宜上「上部滑車531」という。)が取り付けられ、同様に下段梁材512にも複数(図では7個)の滑車(以下、便宜上「下部滑車532」という。)が取り付けられている。そして巻上手段530からのワイヤーロープが、上部滑車531と下部滑車532に交互に巻き回されて、その一端(図では左端)が上段梁材511に固定されている。これにより、上部滑車531は定滑車として機能し、一方の下部滑車532は巻上手段530のワイヤーロープの伸縮(巻き取り/送り出し)に伴って昇降する動滑車として機能する。また下段梁材512には、垂下するように複数(図では8本)の吊ロープ520が取り付けられている。
上段梁材511と下段梁材512は、断面寸法よりも軸寸法が卓越した長尺部材であり、H型鋼や山形鋼、鋼管といった長尺鋼材を利用した構成とすることもできるし、図8(b)に示すように2本の溝形鋼を組み合わせた構成とすることもできる。図8(b)の構成とする場合、2本の溝形鋼(上段梁材511)の間に上部滑車531を配置し、同様に2本の溝形鋼(下段梁材512)の間に下部滑車532を配置するとよい。なお上部滑車531と下部滑車532は、梁軸直角方向の水平軸周りに回転可能となるように取り付けられる。
既述したとおり、上段梁材511は上下方向の移動が拘束される(つまり上下移動しない)ように固定されており、一方の下段梁材512は、巻上手段530からのワイヤーロープによって支持されて(吊られて)いる。そのため、巻上手段530のワイヤーロープを送出す(巻き出す)と動滑車として機能する下部滑車532が降下し、これに伴って下部滑車532が固定されている下段梁材512も降下する。これに対して、巻上手段530のワイヤーロープを巻き取ると下部滑車532が上昇し、これに伴って下段梁材512も上昇する。
吊ロープ520の下端には可動体200が連結されていることから、下段梁材512の昇降に伴って可動体200も昇降する。すなわち巻上手段530は、いわば下段梁材512を介して可動体200を吊上げるとともに吊降ろすことができるわけである。なお吊ロープ520の下端に可動体200を連結するにあたっては、従来用いられる種々の手法を採用することができる。例えば、可動床面210の所定位置(吊ロープ520の配置に対応する位置)に可動床面210を貫通する小孔(以下、「貫通小孔」という。)を設け、この貫通小孔を利用して可動体200を連結することができる。つまり、吊ロープ520を貫通小孔に挿通し、さらに吊ロープ520が貫通小孔から抜け出さないようにその下端に抜け防止具(支圧板など)を固定することによって、吊ロープ520の下端に可動床面210を連結するわけである。
可動体200は、分割することなく全体を一体として形成することもできるし、可動床面210を複数に平面分割した構造体(以下、「分割可動体200P」という。)によって形成することもできる。特に可動床面210の面積が広大でその重量が相当に大きいときは、複数(2以上)の分割可動体200Pによって可動体200を形成するとよい。なお図9に示すように、それぞれの分割可動体200Pにはやはり収容空間230が形成される。
全体を一体として可動体200を形成する場合は可動体200を一度に昇降(吊上げ/吊降し)する必要があるが、分割可動体200Pによって可動体200を形成する場合、例えば分割可動体200Pごとに巻上手段530を設けるなど、分割可動体200Pごとに独立して昇降(吊上げ/吊降し)可能な構成にするとよい。図9では、2分割された分割可動体200Pによって形成される可動体200を示しており、2つの天井昇降装置500(図8)を設けることによって分割可動体200Pごとに(つまり片面ずつ)昇降する構成とされ、一方(図では左側)の分割可動体200Pのみを吊上げた状態を示している。もちろん分割可動体200Pの数は、可動床面210の面積等に応じて適宜設計することができる。
(客席)
既述したとおり客席400は、図1(b)や図2(b)に示すように可動床面210や基礎床面300の中央から離れるほど(つまり、外側に向かうほど)上昇していくように傾斜しており、複数段の席(シート)からなる階段状(いわゆるスタンド形式)の構造である。また客席400は、可動床面210や基礎床面300を取り囲むように配置され、複数段のシートによって構成される「列」が横に向かって多数並べられる。
客席400は、移動しないように固定式とすることもできるし、基礎床面300上を平面移動する移動式とすることもできる。例えば図10では、比較的狭小なステージSTが設置されているが、本来の客席400の配置ではステージから遠く離れているため、一部をステージST周辺に移動している。
移動式の客席400は、1列ごとに移動できる構造とすることもできるが、この場合は移動や配置等の手間が増えるという難点もある。そこで、ある程度の列を組み合わせた(連結した)いわばブロック(塊)状の客席400(以下、「客席ブロック400B」という。)ごとに移動する構造にするとよい。例えば図10では、図に示す1つの四角形の中に10列のシートが含まれており、40列(4×10)の客席ブロック400Bと、20列(2×10)の客席ブロック400Bが形成されている。そして、図の下側に配置された客席ブロック400Bのうち2つの客席ブロック400B(20列型)がステージSTの両脇(図では左右側)まで移動しており、1つの客席ブロック400B(40列型)がステージSTの正面(図では下側)まで移動している。
また客席ブロック400Bは、全段のシートによって形成することもできるし、図11に示すように複数段からなるシートのうち下層段の一部のシートによって形成することもできる。特に、可動体200の収容空間230内に収容される客席400(つまり、収容客席)を客席ブロック400Bとすることもできる。図11では、13段のシートと3つの通路によって1列の客席400が形成されており、そのうち収容客席となる下層の3段のシートと1つの通路によって客席ブロック400Bが形成されている。すなわち図10の例では、120席(3段×40列)のシートを有する客席ブロック400Bと、60席(3段×20列)のシートを有する客席ブロック400Bが形成されているわけである。
(使用例)
図12は、本願発明の2層構造施設100を使用する一例を示すステップ図であり、(a)は2層構造施設100を「可動床面使用状態」としたときのステップ図、(b)は2層構造施設100を「基礎床面使用状態」としたときのステップ図である。
図12(a)では、支持体220が基礎床面300に接地するまで可動体200が吊降ろされ、2層構造施設100が可動床面使用状態とされている。なお、天井昇降装置500(図6)を用いる場合は、吊ロープ520と可動体200の連結を解除するとともに、巻上手段530によってこの吊ロープ520を巻き取ることによって2層構造施設100を可動床面使用状態とする。
一方、図12(b)では、天井昇降装置500が可動体200を所定の高さまで吊上げることによって、2層構造施設100を基礎床面使用状態としている。またこの図では、天井昇降装置500(下段梁材512)と可動床面210の上面との間に相当の空間(以下、「有効空間」という。)が設けられている。すなわち、有効空間が設けられる高さ(以下、「計画高さ」という。)をあらかじめ定めておき、可動床面210の上面がこの計画高さとなるまで可動体200を吊上げ、さらに天井昇降装置500がこの状態(つまり、有効空間が確保された状態)を維持している。これにより、有効空間を利用して可動床面210上でも各種競技(例えば、フットサル)や子供の遊戯などを行うことができるとともに、下層の基礎床面ではコンサート等のイベントを開催するなど、同一の施設で2種類の各種競技や各種イベントを実施することができるわけである。
本願発明の2層構造施設は、サッカー競技場や野球場、陸上競技場といった種々のスポーツ競技施設や、コンサートや展示会、物産展といった種々のイベントを行う興行施設など、様々な施設で利用することができる。
100 本願発明の2層構造施設
200 (2層構造施設の)可動体
200P (2層構造施設の)分割可動体
210 (可動体の)可動床面
220 (可動体の)支持体
230 (可動体の)収容空間
300 (2層構造施設の)基礎床面
400 (2層構造施設の)客席
400B (2層構造施設の)客席ブロック
500 (2層構造施設の)天井昇降装置
510 (天井昇降装置の)天井体
511 (天井体の)上段梁材
512 (天井体の)下段梁材
520 (天井昇降装置の)吊ロープ
530 (天井昇降装置の)巻上手段
531 (巻上手段の)上部滑車
532 (巻上手段の)下部滑車
ST ステージ

Claims (7)

  1. 上下に移動しない基礎床面と、昇降可能な可動床面と、の2層構造からなり、
    支持体と、該支持体上に固定される前記可動床面と、を有する可動体と、
    前記可動体を吊上げかつ吊降ろす昇降装置と、
    前記基礎床面の中央から離れる方向に上昇していく階段状の客席と、を備え、
    前記支持体が前記基礎床面上に載置されると、前記可動床面と該基礎床面の間に収容空間が形成され、
    前記収容空間内に、複数段からなる前記客席のうち下層段の一部が収容される、
    ことを特徴とする2層構造施設。
  2. 前記支持体が前記可動床面の縁部から中央側に寄った位置に設けられることによって、前記収容空間が該可動床面の下方であって該支持体の外側に形成される、
    ことを特徴とする請求項1記載の2層構造施設。
  3. 前記昇降装置は、前記可動床面の上方に所定の空間が設けられる計画高さまで吊上げた前記可動体を、該計画高さで維持する、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の2層構造施設。
  4. 前記昇降装置は、前記可動体の上方に配置される天井体と、該天井体から垂下する複数の吊ロープと、該天井体に固定される巻上手段と、を有し、
    前記巻上手段は、前記吊ロープの下端に連結された前記可動体を、吊上げかつ吊下ろし可能である、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の2層構造施設。
  5. 前記可動体が、前記可動床面を複数に平面分割した複数の分割可動体によって形成され、
    前記昇降装置は、前記分割可動体ごとに吊上げかつ吊下ろし可能であり、
    それぞれの前記分割可動体に前記収容空間が設けられる、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の2層構造施設。
  6. 前記客席が複数列で配置されるとともに、2以上の列の該客席を組み合わせた客席ブロックが形成され、
    前記客席ブロックは、前記基礎床面上を平面移動可能である、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の2層構造施設。
  7. 前記客席ブロックは、複数段からなる前記客席のうち下層段の一部によって形成される、
    ことを特徴とする請求項6記載の2層構造施設。
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