JP2022014571A - シールド掘進機の方向制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】シールド掘進機の掘進方向を制御する際、推奨力点の信頼性を向上することの可能なシールド掘進機の方向制御システムを提供する。【解決手段】シールド掘進機の実績ストローク差と実績ピッチング角度差及び実績水平力点と実績垂直力点を取得する掘進管理/線形管理装置と、後行の掘進方向区間を掘進する際の推奨力点を算出する方向制御装置を備え、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析と実績ピッチング角度差と実績垂直力点の関係を求める回帰分析とを、カッターディスクの回転方向を加味した場合と加味しない場合で実施する回帰分析部と、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析結果と、カッターディスクの回転方向を加味した場合と加味しない場合のいずれか一方の結果を選択する回帰式選択部と、得られた回帰式と設定された進行目標値によって推奨水平力点もしくは推奨垂直力点とを算出する推奨力点算出部を備える。【選択図】図7

Description

本発明は、シールド掘進機の掘進方向を制御するための、シールド掘進機の方向制御システムに関する。
従来よりシールド掘進機は、コンピュータを利用した掘進方向の自動制御化が実現されており、高い掘進制度をもって作業を進めるべく、様々なシステムが検討されている。
例えば、特許文献1では、シールド掘進機に作用するジャッキ推力の作用力点を用いて、シールド掘進機の掘進方向を制御する、シールド掘進機の方向制御システムが開示されている。
具体的には、まず、シールド掘進機の正面視で、左右端に位置するシールドジャッキの伸縮量の差をストローク差、上下端方向のシールド掘進機の傾斜角度をピッチング角として設定し、所定区間だけ掘進して停止させたシールド掘進機において、現在のストローク差及びピッチング角を計測しておく。その一方で、現場職員が、次の所定区間の掘進作業に向けて、シールド掘進機を計画線形に沿って掘進させるための進行目標値を設定する。
方向制御システムは、進行目標値、現在のストローク差及びピッチング角から算出したピッチング角度差、実績に基づく回帰分析結果等に基づいて、次の掘進作業でシールド掘進機を計画線形に沿って掘進させるために、適したジャッキ推力の作用力点として推奨する推奨力点を設定する。シールド掘進機のオペレーターは、この推奨力点を参照しつつシールド掘進機の性能や地盤状況を勘案し、最適な目標力点を決定し、これをシールド掘進機の制御装置に入力する。
すると、シールド掘進機の制御装置にシールドジャッキの自動制御機能が搭載されている場合、シールド掘進機は、運転中のシールド掘進機に作用するジャッキ推力の実力点が目標力点を追従するよう、運転を自動制御される。一方、自動制御機能が搭載されていない場合、オペレーターが決定した目標力点に作用力点が最も近いジャッキパターンを、方向制御システムまたはオペレーター自身が選択する。そして、オペレーターは選択されたジャッキパターンを用いて、運転中のシールド掘進機に作用するジャッキ推力の実力点が目標力点を追従するよう、シールド掘進機を運転する。
特開2019-82003号公報
上記のシールド掘進機は、カッタービットが設けられたカッターディスクを回転しつつ、シールドジャッキで掘進機本体を押し出すことにより地盤中を掘進するが、地盤状況や掘進方向等の様々な条件に起因して、カッターディスクを右回転した場合と左回転した場合とでは、掘進特性が異なる結果となりやすい。例えば、カッターディスクの下部近傍に当接する地盤が他に比べて硬質である場合、右回転時にはシールド掘進機が右方向に移動しやすい一方で、左回転時にはシールド掘進機が左方向に移動しやすい。
しかし、特許文献1の方向制御システムでは、推奨力点を設定するべく実績に基づく回帰分性を行うにあたり、使用する過去の蓄積データが、カッターディスクを左右いずれの方向に回転させた際のデータであるかについて考慮していない。このため、方向制御システムが参照情報として出力する推奨力点の信頼性に、課題を有していた。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、シールド掘進機に作用するジャッキ推力の作用力点を用いて、シールド掘進機の掘進方向を制御する際、作用力点として推奨する推奨力点の信頼性を向上することの可能な、シールド掘進機の方向制御システムを提供するものである。
かかる目的を達成するため、本発明のシールド掘進機の方向制御システムは、シールド掘進機に作用するジャッキ推力の作用力点を用いて、該シールド掘進機の掘進方向を制御するための、シールド掘進機の方向制御システムであって、所定の掘進方向区間を掘進するごとに、前記シールド掘進機の実績ストローク差と実績ピッチング角度差、及び前記ジャッキ推力から計算される実績水平力点と実績垂直力点を取得する掘進管理/線形管理装置と、後行の掘進方向区間を掘進する際の前記作用力点として推奨する推奨力点を算出する方向制御装置と、を備え、前記方向制御装置が、前記実績ストローク差と前記実績水平力点の関係を求める回帰分析と、前記実績ピッチング角度差と前記実績垂直力点の関係を求める回帰分析とを、前記シールド掘進機に備えたカッターディスクの掘進時における回転方向を加味した場合、及び加味しない場合の各々で実施する回帰分析部と、前記実績ストローク差と前記実績水平力点の関係を求める回帰分析結果と、前記実績ピッチング角度差と前記実績垂直力点の関係を求める回帰分析結果の各々について、前記カッターディスクの掘進時における回転方向を加味した場合と加味しない場合のいずれか一方の回帰分析結果を、選択する回帰式選択部と、選択した回帰分析結果から得た回帰式と、後行の掘進方向区間に設定されたストローク差もしくはピッチング角度差の進行目標値とに基づいて、推奨水平力点もしくは推奨垂直力点とを算出する推奨力点算出部と、を備えることを特徴とする。
本発明におけるシールド掘進機の方向制御システムによれば、推奨力点を算出するにあたり、回帰式選択部で、カッターディスクの回転方向を加味した場合もしくは加味しない場合の、いずれの回帰分析結果から得た回帰式を適用するかを、回帰式選択部で適宜選択できる。これにより、選択時に、後行の掘進方向区間を掘進する際に予定するカッターディスクの回転方向を考慮する等、回帰式の選択に多様性を持たせることができる。したがって、シールド掘進機を計画線形に沿うよう掘進させるための作用力点として推奨する推奨力点の信頼性を高め、シールド掘進機の方向制御に係る正確性を向上させることが可能となる。
また、本発明のシールド掘進機の方向制御システムは、前記回帰式選択部で、回帰分析結果から得た回帰式と、既知の水平力点に対応するストローク差もしくは既知の垂直力点に対応するピッチング角度差とに基づいて、推奨水平力点もしくは推奨垂直力点を算出し、算出した推奨水平力点もしくは推奨垂直力点が、既知の水平力点もしくは垂直力点に最も近似する回帰式を選択することを特徴とする。
本発明におけるシールド掘進機の方向制御システムによれば、既知の水平力点に対応するストローク差もしくは既知の垂直力点に対応するピッチング角度差に係るデータを準備することで、後行の掘進方向区間を掘進する際に参照する推奨力点の算出に最適な回帰式を、自動選択できる。これにより、方向制御システムにて設定する推奨力点の精度を向上しつつ、シールド掘進機の制御に係る作業を簡略化することが可能となる。
さらに、本発明のシールド掘進機の方向制御システムは、前記回帰分析部で、前記実績ストローク差と前記実績水平力点の関係を求める回帰分析と、前記実績ピッチング角度差と前記実績垂直力点の関係を求める回帰分析とを、前記シールド掘進機に備えたカッターディスクの回転方向を加味した場合、及び加味しない場合の各々で、データ数を変更して複数回実施することを特徴とする。
本発明のシールド掘進機の方向制御システムによれば、使用するデータ数を変更して回帰分析を複数回実施する。これにより、例えば、使用するデータ群が地盤特性の変化する領域をまたいで掘進した際に取得されたものである場合には、最新のデータを含む最も少ないデータ数で実施した回帰分析結果から得られる回帰式を選択し、推奨力点を算出することができる。これにより、地盤の変化に迅速に対応した推奨力点を推奨することが可能となる。
本発明によれば、シールド掘進機に作用するジャッキ推力の作用力点を用いて、シールド掘進機の掘進方向を制御する際、カッターディスクの回転方向を加味するか否かを検討したうえで推奨力点を設定できるため、作用力点として推奨する推奨力点の信頼性が高まるとともに、シールド掘進機の方向制御に係る正確性を向上させることが可能となる。
本発明の実施の形態におけるシールド掘進機及び方向制御システムを示す図である。 本発明の実施の形態における掘進予定範囲、掘進方向区間、調整事例を示す図である。 本発明の実施の形態におけるシールド制御装置の操作盤上の選択画面を示す図である。 本発明の実施の形態における水平力点おけるカッターディスクの回転方向による影響を示す図である 本発明の実施の形態におけるシールド掘進機の計画線形に対する逸脱量を示す図である。 本発明の実施の形態における方向制御装置の構成を示す図である。 本発明の実施の形態における方向制御システムを用いてシールド掘進機の掘進方向を制御する手順のフローである。 本発明の実施の形態におけるデータ取得時におけるカッターディスクの回転方向を加味した回帰分析の手順を示すフローである。 本発明の実施の形態における掘進方向区画ごとの実績データの一部を示す図である。 本発明の実施の形態における回帰分析結果(実績ストローク差と実績水平力点)を示す図である。 本発明の実施の形態における回帰分析結果(実績ピッチング角度差と実績垂直力点)を示す図である。 本発明の実施の形態における回帰分析結果の選択手順を示すフローである。 本発明の実施の形態におけるカッターディスクの回転方向を考慮して算出した推奨水平力点の精度検証結果を示すグラフである。
本発明のシールド掘進機の方向制御システムは、シールド掘進機に作用させるジャッキ推力の作用力点を用いてシールド掘進機の掘進方向を制御するにあたり、作用力点として推奨する推奨力点に、カッターディスクの回転方向を加味するか否かを検討したうえで設定できるものである。
以下に、シールド掘進機の方向制御システムを及びシールド掘進機の方向制御システムの詳細を、図1~13を参照しながら説明するが、これに先立ち、シールド掘進機10、ジャッキ推力の作用力点P、進行目標値、及び推奨力点Rについて説明する。
≪≪シールド掘進機≫≫
シールド掘進機10は、図1(a)の側面図及び図1(b)の正面図で示すように、先端面にカッターディスク25を備えた筒状の外殻体11と、外殻体11の内周面に沿って周方向に設けられる複数のシールドジャッキ14と、外殻体11の内部に装備されたコンピュータからなりシールド掘進機10の駆動制御を実行するシールド制御装置15と、を備えている。
シールドジャッキ14は、左右対称に配置され、外殻体11の内部でセグメント3を組み立て形成したトンネル12の内壁面を覆う覆工体から掘進用の反力を得る。これにより、シールド掘進機10は、カッターディスク25を回転させつつ、覆工体を構成するセグメント13を掘進反力にしてシールドジャッキ14を伸張させる動作を繰り返すことで、地盤中を順次掘進していく。また、シールド掘進機10は、これら複数のシールドジャッキ14によってシールド掘進機10に作用するジャッキ推力の作用力点Pの位置により、その掘進方向が制御される。
≪≪ジャッキ推力の作用力点P≫≫
図1(b)で示すような作用力点Pは、複数のシールドジャッキ14のうち、シールド掘進機10の掘進に寄与するべく高圧なジャッキ圧が設定されるものと、掘進に寄与しない同調圧が設定されるものとの配置(ジャッキパターン)によりおおよその位置が決定される。したがって、これらの配置を適宜組み合わせることにより、シールド掘進機10に作用するジャッキ推力の作用力点Pにおける配置位置を変化させ、シールド掘進機10を所望の掘進方向に向けて掘進させる。
上述する構造のシールド掘進機10を用いてトンネル施工を実施する際には、まず、現場職員が例えば片番(昼勤、夜勤)ごとに、図2(a)で示すような次の勤務時間内に実施する掘進予定範囲L1の掘進作業に向けて、シールド掘進機10を施工計画に基づく計画線形Lに沿って掘進させるよう、進行目標値を設定した掘進指示書を作成する。
≪≪進行目標値≫≫
進行目標値は、掘進予定範囲L1を複数の掘進方向区間L2に区分けし、この区分けされた掘進方向区間L2ごと設定される、ストローク差とピッチング角度差の目標値である。ストローク差は、図1(b)で示すようなシールド掘進機10において、左右端に位置するシールドジャッキの伸縮量の差であり、ピッチング角度差は、掘進進方向区間L2を1区画分掘進した前後のピッチング角(上下端方向のシールド掘進機の傾斜角度)の差である。
なお、進行目標値が設定される掘進方向区間L2の設定距離はいずれでもよく、また、掘進方向区間L2で掘進予定範囲L1を区分けする際の区間数も、なんら限定されるものではない。例えば、図2(a)では、掘進方向区間L2をセグメント13の1リング分の幅に対応させ、掘進予定範囲L1を掘進方向区間L2にして5区画分、つまり5リング分に区分けした事例を示している。
したがって、図2(a)では、進行目標値が、セグメント13の1リング分の幅に相当する距離ごとに設定されることとなる。シールド掘進機10のオペレーターは、この進行目標値を満足するようシールド掘進機10の掘進方向を方向制御システム100を用いて制御することにより、地盤中を計画線形Lに沿って掘進させる。
≪≪推奨力点R≫≫
シールド掘進機10が計画線形Lに沿って掘進するよう制御するにあたっては、シールド掘進機10に作用するジャッキ推力の作用力点Pとして推奨する推奨力点Rを、方向制御システム100を用いて算出する。推奨力点Rは、図3で示すように、推奨水平力点Rhと推奨垂直力点Rvを合成したものであり、シールド掘進機10のオペレーターは、この推奨力点Rを参照しつつ、シールド掘進機10の性能や地盤状況もしくは過去の経験等を勘案したうえで、シールド掘進機10に作用させるジャッキ推力の目標力点Gを決定する。
ここで、推奨水平力点Rhは、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析結果として出力される回帰式の説明変数に、ストローク差の実目標値(ストローク差の現在値と進行目標値との差)を入力した際の、目的変数として算出される。
なお、実績ストローク差と実績水平力点は、掘進方向区間L2の1区画分(セグメント13の1リング分)を掘進した後の、ストローク差と水平力点である。そして、水平力点は、シールド掘進機10に作用した複数のシールドジャッキ14各々の、ジャッキ推力の合力に基づいて算出したシールド掘進機の軸線Oを通る水平方向線上の作用点である。
また、推奨垂直力点Rvは、実績ピッチング角度差と実績垂直力点の関係を求める回帰分析結果として出力される回帰式の説明変数として、ピッチング角度差の実目標値(ピッチング角度差の現在値と進行目標値との差)を入力した際の、目的変数として算出される。
なお、実績ピッチング角度差と実績垂直力点は、掘進方向区間L2の1区画分(セグメント13の1リング分)を掘進した後の、ピッチング角度差と垂直力点である。そして、垂直力点は、シールド掘進機10に作用した複数のシールドジャッキ14各々の、ジャッキ推力の合力に基づいて算出した、シールド掘進機10の軸線Oを通る水平方向線と直交する垂直方向線上の作用点である。
上記のとおり、推奨力点Rは、シールド掘進機10で地盤を掘進方向区間L2の1区画分だけ掘進するごとに取得した実績ストローク差、実績ピッチング角度差、実績水平力点、実績垂直力点を利用して算出する。しかし、これらには、データ取得時におけるカッターディスク25の回転方向が加味されていない。
≪≪カッターディスクの回転方向≫≫
カッターディスク25を回転させつつ、地盤中を掘進するシールド掘進機10は、カッターディスク25を左回転する場合と左回転する場合とで、シールドジャッキ14のストローク差及びピッチング角を同様に設定していても、シールド掘進機10に作用するジャッキ推力の実力点Eの位置が異なるなど、掘進特性が異なる場合が多い。これは、カッターディスク25と接する地山が一様ではない場合に顕著であり、その事例として、図4(a)に、カッターディスク25の回転方向によって、実力点(水平力点)位置が変動する様子を示す。
図4(a)は、シールド掘進機10で地盤を1リング分の幅に相当する距離だけ掘進するごとに取得した、カッターディスク25の回転方向とジャッキ推力の実力点(水平力点)に係る情報を、プロットしたものである。
ここでは、セグメント13にして100リング目から500リング目に相当する、大きな曲線部が存在しない、おおよそ直線状に掘進した領域の実力点(水平力点)をプロットしている。したがって、カッターディスク25と接する地盤性状が一様であれば、ストローク差を設ける必要がなく、また実力点(水平力点)も0の近傍を変動することが一般的である。
しかし、この領域の地盤は、カッターディスク25の下方及び上方に接する部分が硬質地盤であり、中間に接する部分が軟質地盤であった。このため、1リング分を掘進するごとに算出した実力点(水平力点)を見ると、300~-300の広い範囲に分散し、特に、カッターディスク25が右回転の場合には0~300の範囲に、また左回転の場合には0~-300の範囲に偏在している様子がわかる。
このように、実力点(水平力点)は、カッターディスク25が接する地盤状況によって回転方向の影響を受けやすく、ストローク差が同じもしくは近似していても、その位置が大きく異なる場合がある。このようなカッターディスク25の回転方向による影響は、図示していないが、実力点(垂直力点)についても同様のことがいえる。
そこで、シールド掘進機10の方向制御システム100は、シールド掘進機10の掘進方向を制御する際、カッターディスク25の回転方向を加味するか否かを検討したうえで推奨力点Rを設定できることの可能な機能を備えることとした。以下に、シールド掘進機10の掘進方向を制御する方向制御システム100について説明する。
≪≪シールド掘進機の方向制御システム≫≫
方向制御システム100は、図1(a)で示すように、掘進管理/線形管理装置20と、これに接続される方向制御装置30とを備えている。
掘進管理/線形管理装置20は、シールド掘進機10に装備された計測機器から得た掘進作業中の各種データの収集・計算・記録・蓄積を行うとともに、シールド掘進機10の稼働状況の監視するものである。また、シールド掘進機10の位置・姿勢、及び図5(a)(b)で示すような、施工計画に基づく計画線形Lに対する水平方向の逸脱量Dh及び垂直方向の逸脱量Dp等を把握し、シールド掘進機10の線形管理を行う。
シールド掘進機10に装備された計測機器として、シールド掘進機10に自動測量機能が備えられている場合には、図1(a)で示すように、少なくともレーザー発振機16、光波距離計17、及びレーザーターゲット18が装備されている。また、自動測量機能が備えられていない場合は、水平方向はジャイロとストローク計により、垂直方向は水レベル計とピッチング計により、シールド掘進機10の位置の演算を実施する。
方向制御装置30は、図6で示すように、入力装置31、出力装置32、中央演算処理装置33、ファイル装置34、及びメインメモリ35とを備えている。入力装置31は、例えばキーボード、スキャナー、スイッチ等であり、出力装置32は、ディスプレイやプリンター等が挙げられる。中央演算処理装置33は、CPU、GPU、ROM、RAM及びハードウェアインタフェース等を有するコンピュータである。
また、ファイル装置34は、半導体メモリ又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置であり、詳細は後述するが、少なくともデータファイル341、回帰分析情報ファイル342、推奨力点設定用ファイル343等が格納されている。メインメモリ35は、中央演算処理装置33によって実行可能なプログラムやデータを一時的に格納するものであり、少なくも、実目標値算出部351、回帰分析部352、回転情報取得部353、回帰式選択部354、推奨力点算出部355が備えられている。
実目標値算出部351は、シールド掘進機10で地盤を掘進方向区間L2の1区画分だけ掘進するごとに取得した実績ストローク差及び実績ピッチング角度差の最新値(シールド掘進機10のストローク差と実績ピッチング角度差の現在値)と、掘進指示書に規定されている進行目標値に基づいて実目標値を算出する。
また、回帰分析部352、回転情報取得部353、回帰式選択部354及び推奨力点算出部355は、実目標値算出部351で算出した実目標値を満足するよう次の掘進方向区間L2をシールド掘進機10で掘進する際に推奨する、推奨力点Rを算出する。詳細は後述する。
そして、上述する構成の方向制御装置30は、図1(a)で示すように、多重伝送装置親局21及び多重伝送装置子局22を介して、シールド掘進機10の内部に装備されているシールド制御装置15と接続されている。したがって、方向制御装置30の推奨力点算出部355にて算出された推奨力点Rは、多重伝送装置親局21を介してシールド制御装置15に入力されると、図3で示すように、シールド制御装置15の操作盤上の選択画面151に表示することができる。
≪≪方向制御システム100を用いたシールド掘進機10の方向制御方法≫≫
このような方向制御システム100を用いてシールド掘進機10の掘進方向を制御し、計画線形Lに沿って掘進させるための、シールド掘進機10の方向制御方法を、図6の方向制御装置30の構成図、及び図7、図8、図12に示すフローに従って、方向制御装置30の詳細とともに以下に説明する。
本実施の形態では、図2(a)で示すように、掘進予定範囲L1を、セグメント13の1リング分の幅に対応する掘進方向区間L2の5区画に区分けした場合を事例に挙げる。つまり、現場職員が勤務時間内に実施する掘進予定範囲L1には、1リング分の幅に相当する距離ごとに進行目標値が5か所に設定されているものとする。したがって、この事例では、推奨力点Rを、1リング分の幅に相当する距離を掘進するごとに算出する。
なお、推奨力点Rを算出する際には、その前に、先行の掘進方向区間L2に設定された進行目標値に対するシールド掘進機10の追従性(進行目標値を満足しているか否か)を確認するとよい。そして、追従性に課題ありと判断した場合には、次の掘進方向区間L2の進行目標値を調整し、調整した進行目標値を用いて推奨力点Rを算出するとよい。こうすると、先行の掘進で生じた可能性のあるシールド掘進機10の掘進方向における計画線形Lに対するズレを、後行の掘進方向区間L2の掘進で相殺することが可能となる。
このような、進行目標値に対する追従性の確認及び進行目標値を調整する方法は、いずれの手段を採用してもよいが、例えば、特願2019-165405号に開示されている、シールド掘進機の掘進方向調整方法を用いると良い。
<Step1:掘進後の実績データの取得>
シールド掘進機10により地盤を掘進方向区間L2の1区間分を掘進したのち、掘進作業を一時停止して、前述の計測機器を用いてシールド掘進機10の位置を計測する。また、計測結果に基づいて、シールド掘進機10のストローク差及やピッチング角及びピンチング角度差の現在値を算出するとともに、シールド掘進機10に作用したシールドジャッキ14のジャッキ推力から、水平力点及び垂直力点を算出する。
さらに、1区間分を掘進した際のカッターディスク25の回転方向(右方向もしくは左方向)を検出し、これを上記の計測結果及び算出結果と併せて、掘進方向区間L2の区間番号もしくはセグメント13のリング番号とともに、掘進管理/線形管理装置20に記録する。また、掘進管理/線形管理装置20から方向制御装置30に送信し、ファイル装置34のデータファイル341に格納する。
このようなストローク差及びピッチング角度差、これらに対応する水平力点及び垂直力点、及びデータ取得時のカッターディスク25の回転方向情報は、掘進方向区間L2の1区間分を掘進するごとに算出される。したがって、これらを蓄積して実績データ(実績ストローク差、実績ピッチング角度差、実績水平力点、実績垂直力点、実績回転方向)として、ファイル装置34のデータファイル341に格納する。
<Step2:実目標値の算出>
掘進方向区間L2の1区間分を掘進したところで、中央演算処理装置33がメインメモリ35に格納されている実目標値算出部351の指令を受け、ストローク差について、ファイル装置34のデータファイル341に格納されている現在値(実績ストローク差の最新値)と、掘進指示書で設定された次の掘進方向区間L2を掘進するための進行目標値(ストローク差の目標値)との差から、ストローク差の実目標値を算出する。
同様に、ピッチング角度差について、ファイル装置34のデータファイル341に格納されているピッチング角度差の現在値(実績ピッチング角度差の最新値)と、掘進指示書で設定された次の掘進方向区間L2を掘進するための進行目標値(ピッチング角度差の目標値)を参照し、ピッチング角度差の実目標値を算出する。こうして算出したストローク差の実目標値及びピッチング角度差の実目標値は、ファイル装置34の推奨力点設定用ファイル343に格納する。
<Step3:カッターディスクの回転方向の選択>
シールド掘進機10のオペレーターは、次の掘進方向区間L2を掘進するにあたって、掘進方向やシールド掘進機10の性能、地盤状況等を勘案しつつ選択した、カッターディスク25の回転方向(右回転もしくは左回転)を回転方向選択情報として、例えばシールド制御装置15の操作盤上の選択画面151に入力する。すると、選択した回転方向選択情報は、シールド制御装置15から入力装置31を介して方向制御システム100の方向制御装置30に入力される。
<Step4:推奨力点Rの算出>
上記のとおり、回転方向選択情報が入力されると、方向制御装置30は、次の掘進方向区間L2を掘進する際に推奨する推奨力点Rを算出するために用いる回帰分析情報を、ファイル装置34に格納された回帰分析情報ファイル342から取得し、推奨力点Rの算出を行う。
推奨力点Rを算出するための回帰分析情報は、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析結果として出力される回帰式と、実績ピッチング角度差と実績垂直力点の関係を求める回帰分析結果として出力される回帰式を、それぞれ複数種類含んでいる。これらの回帰式は、後述する<Step4-2>を実施する前にあらかじめ算出しておけばよく、例えば、<Step1>を実施したあと、セグメント13の組立て作業等の合間に実施しておくと良い。
<STEP4-1:実績データ取得時のカッターディスクの回転方向を加味した回帰分析>
図7及び図8のフロー図で示すように、中央演算処理装置33がメインメモリ35に格納されている回帰分析部352の指令を受け、ファイル装置34に格納されているデータファイル341に記録された実績データを取得する。
すると、実績データのうち、カッターディスク25の右回転時に取得した、実績ストローク差とこれに対応する実績水平力点を、回帰分析に必要なデータ数だけ抽出する。抽出するデータは、実績データのうち最新のデータから順に過去に遡って抽出するが、その数量はいずれでもよく、例えば30個程度抽出する。なお、データ数が回帰分析に必要な数量に満たない場合は、最低必要数に到達するまでシールド掘進機10による掘進を進めるとともに実績データを蓄積していく。
抽出した30個程度の実績データは、カッターディスク25の右回転時に取得したもののみとするため、図9で示すデータファイル341に記録されているように、必ずしも連続したデータとはならない。これら右回転時のみの実績データを利用して、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析を行うことにより、図10(b)で示すような、カッターディスク25が右回転時の実績データを用いた回帰式を取得する。
同様の手順で、図10(c)で示すような、カッターディスク25が左回転時の実績データを用いた回帰式と、図10(a)で示すような、右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式を取得する。これらは、推奨水平力点Rhを算出可能な回帰式となる。
実績ピッチング角度差と実績垂直力点の関係を求める回帰分析も同様に、右回転時のみの実績データ、左回転時のみの実績データ、右回転時と左回転時の両者を含むの実績データを利用して、それぞれ回帰分析を行う。これにより、推奨垂直力点Rvを算出可能な回帰式として、図11(a)~(c)で示すように、カッターディスク25が右回転及び左回転の両者を含む場合、右回転時、左回転時の実績データをそれぞれ用いた回帰式を取得する。これらは、推奨垂直力点Rvを算出可能な回帰式となる。
上記のとおり、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析を、実績データ取得時のカッターディスクの回転方向を加味した場合(右回転のみもしくは左回転のみで解析)、及び加味しない場合(右回転及び左回転を含めて解析)で行う。そしてその結果を、推奨水平力点Rhを算出可能な回帰式として、回帰分析情報ファイル342に格納する。実績ピッチング角度差と実績垂直力点の関係を求める回帰分析も同様に行って、その結果を、推奨垂直力点Rvを算出可能な回帰式として回帰分析情報ファイル342に格納する。
したがって、回帰分析情報ファイル342には少なくとも回帰分析情報として、推奨水平力点Rhを算出可能な回帰式が3種類、推奨垂直力点Rvを算出可能な回帰式が3種類の、合計6種類の回帰式が格納される。なお、回帰式は複数の実績データを用いた回帰分析の結果であるから、トンネル施工の開始直後からシールド掘進機10の掘進による実績データが所定量蓄積するまでの間は、回帰分析情報ファイル342に回帰式は格納されない状態となる。
<Step4-2:次の掘進方向区間L2を掘進する際の回転方向を考慮した回帰式の選択>
図12のフローで示すように、回帰分析情報ファイル342に回帰式が格納されている場合、中央演算処理装置33がメインメモリ35に格納されている回転情報取得部353の指令を受け、入力された回転方向選択情報に応じた回帰式を、ファイル装置34の回帰分析情報ファイル342から比較検討用に複数抽出し、回帰式選択部354に供給する。
比較検討用に抽出する回帰式は、<Step3>で回転方向選択情報として右回転が入力された場合に、右回転時の実績データを用いた回帰式と右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式の2つの回帰式を抽出する。一方、<Step3>で左回転が入力された場合には、左回転時の実績データを用いた回帰式と、右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式の2つの回帰式を抽出する。
こうして比較検討用に回帰式が抽出されたところで、中央演算処理装置33がメインメモリ35に格納されている回帰式選択部354の指令を受け、推奨水平力点Rhの算出に用いる回帰式として最適な回帰式、及び推奨水平力点Rvの算出に用いる回帰式として最適な回帰式を、それぞれ1つ選択し、ファイル装置34の推奨力点設定用ファイル343に格納する。
≪≪最適な回帰式の選択方法≫≫
推奨水平力点Rh及び推奨水平力点Rvの算出に最適な回帰式を選択する方法は、いずれを採用してもよいが、以下にその一例を説明する。
<Step3>で入力された回転方向選択情報が右回転であれば、推奨水平力点Rhの算出に用いる回帰式として、図10(b)で示す右回転時の実績データを用いた回帰式と、図10(a)で示す右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式が比較検討用として抽出されている。
そこで、シールド掘進機10で地盤を掘進した際の実績データの中から右回転時の実績ストローク差を任意に選出し、これを説明変数として右回転時の実績データを用いた回帰式に入力、目的変数として、図10(d)で示したように推奨水平力点を算出する。また、算出した推奨水平力点と、回帰式に入力した実績ストローク差に対応する実績水平力点との差(距離差分)を算出する。このような算出を、複数の実績データを用いて実施して、距離差分の平均値を算出する。
同様に、シールド掘進機10で地盤を掘進した際の実績データの中から右回転時及び左回転時の実績ストローク差を任意に選出し、これを説明変数として右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式に入力し、目的変数として推奨水平力点を算出する。そして、推奨水平力点と、回帰式に入力した実績ストローク差に対応する実績水平力点との差(距離差分)を算出し、距離差分の平均値を算出する。
そして、この2つの回帰式のうち、距離差分の平均値が小さい方の回帰式を、推奨水平力点Rhの算出に最適な回帰式として選択する。図10(d)を見ると、距離差分の平均値は、右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式の場合に20.3、右回転時の実績データを用いた回帰式の場合に13.9となっている。したがって、推奨水平力点Rhの算出に最適な回帰式として、右回転時の実績データを用いた回帰式を採用する。
なお、平均値が同値の場合には、右回転時の実績データを用いた回帰式、つまりデータ取得時の回転方向を加味した回帰式を採用する。また、本実施の形態では、距離差分の平均値を用いて比較検討を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、最頻値、中央値等の距離差分の代表値を算出し、比較検討を行ってもよい。
同様の手順を用いて、推奨垂直力点Rvの算出に最適な回帰式を選択する。<Step3>で入力された回転方向選択情報が右回転であれば、比較検討用の回帰式として、図11(b)で示すような、右回転時の実績データを用いた回帰式と、図11(a)で示すような、右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式が抽出されている。
そこで、右回転時の実績データを用いた回帰式と、右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式の各々で、推奨垂直力点を算出するとともに、回帰式に入力した実績ピッチング角度差に対応する実績垂直力点との差(距離差分)を算出する。このような算出を、複数の実績データを用いて実施し、距離差分の平均値を算出する。なお、回帰式に説明変数として入力する実績データは、シールド掘進機10で地盤を掘進した際の実績データの中から任意に選出した、右回転時の実績ピッチング角度差、及び右回転時及び左回転時を含む実績ピッチング角度差のデータである。
図11(d)を見ると、距離差分の平均値は、右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式の場合に8.7、右回転時の実績データを用いた回帰式の場合に5.9となっている。したがって、推奨垂直力点Rvの算出に最適な回帰式として、右回転時の実績データを用いた回帰式を採用する。
こうすると、次の掘進方向区間L2を掘進する際に予定したカッターディスク25の回転方向に対応した最適な回帰式を、シールド掘進機10で地盤を掘進した際のデータ(既知の水平力点に対応するストローク差もしくは既知の垂直力点に対応するピッチング角度差)を準備するのみで、自動選択できる。これにより、推奨力点の精度を向上しつつ、シールド掘進機10の制御に係る作業を簡略化することが可能となる。
なお、本実施の形態では、推奨水平力点Rh及び推奨垂直力点Rvともに、右回転時の実績データを用いた回帰式が選択されたが、これに限定されるものではない。推奨水平力点Rh及び推奨垂直力点Rvの一方については右回転時の実績データを用いた回帰式、他方については右回転及び左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式が、それぞれ選択されることとしてもよい。
また、<Step4-1>で実施した回帰分析では、実績データのうち最新のデータから順に過去に遡って、例えば30個抽出し、これらを用いて回帰分析を実施したが、このデータ数を変更して回帰分析を複数回実施してもよい。
例えば、データ数を10個、20個、30個の場合に変更して回帰分析を行うと、回帰分析情報ファイル342には、回帰分析情報として、推奨水平力点Rhを算出可能な回帰式が、カッターディスク25が右回転時の場合で3種類、左回転時の場合で3種類、右回転及び左回転の含む場合の3種類で、合計9種類格納される。同様に、推奨垂直力点Rvを算出可能な回帰式も9種類格納されることとなる。
こうすると、地盤性状に対応した回帰式を取得することができる。例えば、回帰分析に用いる実績データ群が、地盤特性の変化する領域をまたいで掘進した際に取得された場合に、最新のデータを含む最も少ないデータ数で実施した回帰分析結果から得た回帰式を選択する。これにより、地盤の変化に対応した回帰式を取得することができる。
≪≪推奨力点Rの算出≫≫
こののち、中央演算処理装置33がメインメモリ35に格納されている推奨力点算出部355の指令を受け、ファイル装置34の推奨力点設定用ファイル343に格納された、推奨水平力点Rhの算出に最適な回帰式及び推奨垂直力点Rvの算出に最適な回帰式に、同じく推奨力点設定用ファイル343に格納された実目標値(ストローク差及びピッチング角度差)を説明変数として入力する。これにより目的変数として算出された推奨水平力点Rh及び推奨垂直力点Rvを合成し、推奨力点Rを算出する。
一方で、回帰分析を実施できる程度の実績データが蓄積されておらず、ファイル装置34の回帰分析情報ファイル342に回帰式が格納されていない場合には、他の現場で実施されたトンネル施工のうち、施工条件(地盤条件、土被り、水圧等)やシールド掘進機10の仕様(シールドジャッキの本数等)が似通っているデータを参照する。これらのデータを参照して、<Step2>で算出した実目標値(ストローク差及びピッチング角度差)に対応する推奨水平力点Rh及び推奨垂直力点Rvを推定し、推奨力点Rを算出すると良い。
こうして算出された推奨水平力点Rh及び推奨垂直力点Rvと推奨力点Rのうち、少なくとも推奨力点Rは、推奨力点設定用ファイル343に格納されるとともに、多重伝送装置親局21を介してシールド制御装置15に入力され、シールド掘進機10の操作盤上の選択画面151に表示される。
<Step5>
図7のフロー図に戻って、シールド掘進機10のオペレーターは、図3で示すような、シールド制御装置15の操作盤上の選択画面151に表示された推奨力点Rを参照しつつ、シールド掘進機10の性能や地盤状況、過去の経験等を勘案し、ジャッキ推力の目標力点Gを決定する。これをシールド制御装置15に入力すると、シールド制御装置15にシールドジャッキ14の自動制御機能が搭載されている場合には、シールド掘進機10の掘進作業を再開するのみで、運転中のシールド掘進機10に作用するジャッキ推力の実力点Eが、目標力点Gを追従するよう自動制御される。
また、シールドジャッキの自動制御機能が搭載されていない場合、方向制御システム100に格納されているジャッキパターンテーブル(図示せず)の中から、オペレーターが決定した目標力点Gに作用力点Pが最も近いジャッキパターンをシールド掘進機10のオペレーターが選択する。そして、オペレーターは、選択したジャッキパターンを用いて、運転中のシールド掘進機10に作用するジャッキ推力の実力点Eが目標力点Gを追従するよう、シールド掘進機10を運転する。
上記の手順によるシールド掘進機10の掘進方向の制御は、図2(a)で示すような、掘進方向区間L2を1区画分(1リング分の幅に相当する距離)を掘進するごとに繰り返されることとなる。
本発明のシールド掘進機の方向制御システム100によれば、次の掘進方向区間L2を掘進する際に参照する推奨力点Rを算出するにあたり、回帰式選択部354で、カッターディスク25の回転方向を加味した場合(右回転時もしくは左回転時)もしくは加味しない場合(右回転時及び左回転時を含む)の、いずれの回帰分析結果から得た回帰式を適用するかを適宜選択する。これにより、選択時に、次の掘進方向区間L2で予定するカッターディスク25の回転方向を考慮する等、回帰式の選択に多様性を持たせることができる。したがって、シールド掘進機10を計画線形に沿うよう掘進させるための作用力点Pとして推奨する推奨力点Rの信頼性が高まるとともに、シールド掘進機10の方向制御に係る信頼性を向上させることが可能となる。
≪推奨力点Rの精度検証≫
上記の方向制御システム100を用いて算出した推奨力点Rについて、推奨水平力点を用いて精度検証を行った結果を図13(a)(b)に示す。また、図4(b)に比較例を示す。
図13(a)は、前述した図4(a)と同様に、シールド掘進機10で地盤を1リング分の幅に相当する距離だけ掘進するごとに取得した、カッターディスク25の回転方向とジャッキ推力の実力点(水平力点)に係る情報を、プロットしたものである。そして、図13(a)で示したセグメント13にして100リング目から500リング目に相当する領域は、図4(a)で示した掘削領域に隣接して、ほぼ平行に掘進されている。したがって、両者はともに、ほぼ同様の性状を有する地盤を同様の線形(ほぼ直線状)で掘進した結果、取得した実力点(水平力点)である。
このため、図13(a)においても図4(a)と同様に、セグメント13にして100リング目から500リング目に相当する領域は、大きな曲線部が存在しないおおよそ直線状に掘進した区間であるにもかかわらず、実力点(水平力点)が、300~-300の広い範囲に分散し、カッターディスク25が右回転の場合に0~300の範囲に、また左回転の場合の0~-300の範囲に偏在している。
そこで、図13(a)でプロットした実力点(水平力点)及びこれに対応する実績ストローク差を利用して、<Step4-1>で実施した回帰分析を実施する。そして、推奨水平力点Rhの算出に用いる回帰式として、カッターディスク25が右回転時の実績データを用いた回帰式と、左回転の両者を含む実績データを用いた回帰式を取得した。
そのうえで、図13(a)でプロットしたセグメント13にして100リング目から500リング目の、1リングごとの実力点(水平力点)のうち、掘削時のカッターディスク25の回転方向が右回転であった場合の実力点(水平力点)に対応するストローク差を、カッターディスク25が右回転時の実績データを用いた回帰式に、説明変数として入力した。同様に、左回転であった場合の実力点(水平力点)に対応するストローク差を、カッターディスク25が左回転時の実績データを用いた回帰式に、説明変数として入力した。これらの結果、目的変数として算出される推奨力点(推奨水平力点)を図13(b)にプロットした。
また、図4(a)でプロットした実力点(水平力点)及びこれに対応する実績ストローク差を利用して、<Step4-1>で実施した回帰分析を実施する。このとき、推奨水平力点Rhの算出に用いる回帰式として、カッターディスク25が右回転時及び左回転時の実績データを含む回帰式(従来より実施されている推奨水平力点の算定方法と同様)を取得した。
そのうえで、図4(a)でプロットしたセグメント13にして100リング目から500リング目の、1リングごとの実力点(水平力点)に対応するストローク差を、カッターディスク25が右回転時及び左回転時の実績データを含む回帰式に、説明変数として入力し、目的変数として算出される推奨力点(推奨水平力点)を図4(b)にプロットした。
比較例である図4(b)を見ると、データ取得時のカッターディスク25の回転方向が加味されていない推奨力点の分布状況は、カッターディスク25が右回転時の実力点(水平力点)の分布状況及び左回転時の実力点(水平力点)の分布状況のいずれにも合致しない様子がわかる。
一方、図13(b)を見ると、右回転時の実績データを用いた回帰式による推奨力点(右回転時)は0~300の範囲近傍に分布し、また左回転の実績データを用いた回帰式による推奨力点(左回転時)は0~-300の範囲近傍に分布している様子が見て取れる。したがって、カッターディスク25の回転方向を加味した回帰分析結果から得た回帰式を用いた場合には、推奨力点(右回転時及び左回転時が)と実績データである実力点(水平力点)との距離差分は小さく収まっているものと推定できる。
本発明のシールド掘進機の方向制御システム100は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本実施の形態では、掘進方向区間L2の1区画分(セグメント13にして1リング分の幅に相当する距離)を掘進するごとにシールド掘進機10を停止して実績データを取得したが、必ずしもこれに限定するものではない。
例えば、図2(b)で示すように、掘進方向区間L2の途中段階で、シールド掘進機10の進行目標値に対する追従性を確認するための検証地点を複数設定してもよい。この場合には、検証地点を通過するごとに、実績データを取得することができる。
したがって、図8で示すような<Step4-1>で実施した、実績ストローク差と実績水平力点の関係を求める回帰分析では、実績水平力点として平均水平力点を採用すると良い。平均水平力点は、掘進方向区間L2の1区間を掘進するまでの間に、複数の検証地点で取得した実績水平力点の平均値である。同様に、実績ピッチング角度差と実績垂直力点H1の関係を求める回帰分析では、実績垂直力点として平均垂直力点を採用すると良い。平均垂直力点は、掘進方向区間L2の1区間を掘進するまでの間に、複数の検証地点で取得した実績垂直力点の平均値である。
また、検証地点で追従性に課題ありと判断された場合には、追従性を高めるべく現行の進行目標値を調整し、調整した進行目標値を用いて推奨力点Rを算出する。そして、推奨力点Rを利用して掘進方向を修正することとなるが、このとき、カッターディスク25の回転方向を変更する場合もあり得る。
このように、掘進方向区間L2の1区間の途中で回転方向を変更した場合には、平均水平力点(実績水平力点の平均値)及び平均垂直力点(実績垂直力点の平均値)をそれぞれ、各回転方向で掘進した実施距離に応じて比例配分して算出するとよい。
なお、掘進方向区間L2の途中で設定した検証地点で、進行目標値に対する追従性を確認する方法や、追従性に課題ありと判断された場合の進行目標値の調整方法は、いずれでもよいが、例えば、特願2019-165405号に開示したシールド掘進機の掘進方向調整方法を採用すると良い。
10 シールド掘進機
11 外殻体
12 トンネル
13 セグメント
14 シールドジャッキ
15 シールド制御装置
151 選択画面
16 レーザー発振機
17 光波距離計
18 レーザーターゲット
20 掘進管理/線形管理装置
21 多重伝送装置親局
22 多重伝送装置子局
25 カッターディスク
30 方向制御装置
31 入力装置
32 出力装置
33 中央演算処理装置
34 ファイル装置
341 データファイル
342 回帰分析情報ファイル
343 推奨力点設定用ファイル
35 メインメモリ
351 実目標値算出部
352 回帰分析部
353 回転情報取得部
354 回帰式選択部
355 推奨力点算出部
100 方向制御システム
P 作用力点
R 推奨力点
G 目標力点
E 実力点
L 計画線形
L1 掘進予定範囲
L2 掘進方向区間

Claims (3)

  1. シールド掘進機に作用するジャッキ推力の作用力点を用いて、該シールド掘進機の掘進方向を制御するための、シールド掘進機の方向制御システムであって、
    所定の掘進方向区間を掘進するごとに、前記シールド掘進機の実績ストローク差と実績ピッチング角度差、及び前記ジャッキ推力から計算される実績水平力点と実績垂直力点を取得する掘進管理/線形管理装置と、
    後行の掘進方向区間を掘進する際の前記作用力点として推奨する推奨力点を算出する方向制御装置と、を備え、
    前記方向制御装置が、
    前記実績ストローク差と前記実績水平力点の関係を求める回帰分析と、前記実績ピッチング角度差と前記実績垂直力点の関係を求める回帰分析とを、前記シールド掘進機に備えたカッターディスクの掘進時における回転方向を加味した場合、及び加味しない場合の各々で実施する回帰分析部と、
    前記実績ストローク差と前記実績水平力点の関係を求める回帰分析結果と、前記実績ピッチング角度差と前記実績垂直力点の関係を求める回帰分析結果の各々について、前記カッターディスクの掘進時における回転方向を加味した場合と加味しない場合のいずれか一方の回帰分析結果を、選択する回帰式選択部と、
    選択した回帰分析結果から得た回帰式と、後行の掘進方向区間に設定されたストローク差もしくはピッチング角度差の進行目標値とに基づいて、推奨水平力点もしくは推奨垂直力点とを算出する推奨力点算出部と、
    を備えることを特徴とするシールド掘進機の方向制御システム。
  2. 請求項1に記載のシールド掘進機の方向制御システムにおいて、
    前記回帰式選択部で、回帰分析結果から得た回帰式と、既知の水平力点に対応するストローク差もしくは既知の垂直力点に対応するピッチング角度差とに基づいて、推奨水平力点もしくは推奨垂直力点を算出し、
    算出した推奨水平力点もしくは推奨垂直力点が、既知の水平力点もしくは垂直力点に最も近似する回帰分析結果を選択することを特徴とするシールド掘進機の方向制御システム。
  3. 請求項1または2に記載のシールド掘進機の方向制御システムにおいて、
    前記回帰分析部で、前記実績ストローク差と前記実績水平力点の関係を求める回帰分析と、前記実績ピッチング角度差と前記実績垂直力点の関係を求める回帰分析とを、前記シールド掘進機に備えたカッターディスクの回転方向を加味した場合、及び加味しない場合の各々で、データ数を変更して複数回実施することを特徴とするシールド掘進機の方向制御システム。
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