図面を参照して、本発明の実施形態に係るシールドトンネルの施工管理システム及び施工管理方法について説明する。
シールドトンネルは、地山をシールド掘進機によって掘削し、掘削坑の内壁を覆うようにセグメントリングを組み立てることによって構築される。セグメントリングは、円弧状に形成された複数のセグメントピースを周方向に環状に並べて配置し隣り合うセグメントピース同士を連結することによって組み立てられる。また、セグメントリングは、軸方向に複数組み立てられ、隣り合うセグメントリング同士が連結される。
まず、図1を参照して、シールド掘進機110の構成について説明する。図1は、シールド掘進機110の構成を示す断面図である。図1に示すように、シールド掘進機110は、円筒状の前胴部111と、円筒状の後胴部112と、前胴部111と後胴部112とを屈曲可能に連結する中折れ部119と、を有する中折れ型掘進機である。
前胴部111は、円筒状の外殻113と、外殻113の前端部に配置される地山掘削用のカッタヘッド114と、カッタヘッド114の後方に離間して配置される隔壁115と、を有する。
隔壁115には、回転ドラム122が回転自在に支持されている。回転ドラム122は、連結ロッドを介してカッタヘッド114に連結されている。このため、カッタヘッド114は、回転ドラム122とともに回転する。回転ドラム122は、減速機構(不図示)を介してモータ116に連結されている。回転ドラム122がモータ116によって回転駆動され、カッタヘッド114が地山に押し付けられた状態で回転することにより、地山が掘削される。カッタヘッド114の外径は、外殻113の外径と略等しく、地山は、外殻113の外径と略等しい内径で掘削される。
以下において、シールド掘進機110が進む方向を「前方」とし、その逆方向を「後方」とする。
カッタヘッド114と隔壁115との間には、これらと外殻113及び回転ドラム122とによりチャンバ117が画成される。チャンバ117内では、カッタヘッド114による掘削で生じた掘削土砂が滞留する。シールド掘進機110は、チャンバ117内の掘削土砂を搬出するスクリューコンベヤ123を備えている。スクリューコンベヤ123は、円筒状のケースの内部に組み込まれるオーガを回転させることにより、チャンバ117内の掘削土砂を隔壁115の後方に搬出する。
カッタヘッド114には、カッタヘッド114の側面から突出し、その突出した部位によって余掘りを行うコピーカッタ(余掘り装置)127が設けられる。余掘りとは、所定の範囲において、コピーカッタ127を突出させることにより、余分に地山を掘削することをいう。
後胴部112は、円筒状の外殻124と、各種装置を支持する支持フレーム129と、セグメント組立装置であるエレクタ126と、を備える。エレクタ126は、円弧形状のセグメントピース102を把持可能であるとともに周方向に回転可能に構成される。エレクタ126は、複数のセグメントピース102を外殻124の内周面に沿って組み立てて、円筒状のセグメントリング101を構築する。エレクタ126は、セグメントピース102を組み立て済みのセグメントリング101に連結する。
中折れ部119は、前胴部111の後端部に設けられた前胴接続部191と、後胴部112の前端部に設けられた後胴接続部192と、前胴部111と後胴部112との間に設けられる複数の中折れジャッキ118と、を有する。
前胴接続部191は円環状であり、その内周面は、前胴部111の中心軸上に中心点を有する凹状の球面の一部を構成するように形成されている。後胴接続部192は円環状であり、その外周面が、後胴部112の中心軸上に中心点を有する凸状の球面の一部を構成するように形成されている。前胴接続部191には、後胴接続部192の外周面に接触することによりシールド掘進機110の内部に水が侵入することを防止するシール部が設けられる。
複数の中折れジャッキ118は、周方向に所定の間隔を空けて配置される。中折れジャッキ118は、シリンダとロッドとにより構成される油圧ジャッキである。中折れジャッキ118のロッドの端部は、自在継手を介して後胴部112の前部に固定され、中折れジャッキ118のシリンダの端部は、自在継手を介して前胴部111の後部に固定される。
このように中折れ部119が構成されているため、中折れジャッキ118を伸縮させることにより、後胴部112に対して前胴部111を任意の方向に屈曲させることができる。
後胴部112の周縁部には、複数のシールドジャッキ125が、中折れジャッキ118と干渉しないように、周方向に所定の間隔を空けて配置される。シールドジャッキ125は、シリンダ125aとロッド125bとにより構成される油圧ジャッキである。シリンダ125aは後胴部112に固定されており、ロッド125bの端部が、後胴部112の内側で組み立てられた既設のセグメントリング101に当接される。この状態でシールドジャッキ125を伸長作動させることにより、シールド掘進機110は推進力を得る。カッタヘッド114は、セグメントリング101から反力を得ることにより、地山に押し付けられる。このように、シールド掘進機110は、シールドジャッキ125が既設のセグメントリング101を押圧することにより、その反力によって前進する。
シールドトンネルTは、シールド掘進機110による掘進工程と、掘進工程において掘削された掘削坑109の内周面に沿ってセグメントリング101を組み立てる組立工程と、を有する掘進サイクルを繰り返すことにより施工される。
ところで、品質の良いシールドトンネルTを構築するためには、シールドジャッキ125による偏荷重を防止することや、シールド掘進機110と掘削坑109とのクリアランス(以下、外側クリアランスとも記す)及びシールド掘進機110とセグメントリング101とのクリアランス(以下、内側クリアランスとも記す)を確保することが重要である。しかしながら、曲線施工や蛇行修正を行うために適切な掘進方位を決定することは、熟練者の暗黙知に拠るところが大きい。つまり、経験の浅い者にとって、現在の状況から計画線に沿う掘進が行えるように適切な掘進方位を決定し、その掘進の管理を行うことは困難である。なお、掘進方位とは、シールド掘進機110の進む方位角であり、予め定められた基準方位(例えば、真北)に対して、シールド掘進機110が移動する方位の水平面内のずれ角に相当する。
そこで、本実施形態では、シミュレーションが可能な施工管理システムにより、シールドトンネルTの施工を管理する。
図2を参照して、施工管理システム10について説明する。図2は、施工管理システム10の構成を示す機能ブロック図である。施工管理システム10は、次の掘進サイクル以降の掘進方位に関する情報が入力されると、その情報に基づいて、シールド掘進機110の軌跡、シールド掘進機110により形成される掘削坑109の形状、及び、掘削坑109内においてセグメントリング101が組み立てられてなる覆工体103の形状を予測演算するシミュレーションを行い、そのシミュレーション結果を表示装置152に表示させる。
図2に示すように、施工管理システム10は、管理サーバ13と、入力装置151と、表示装置152と、ジャイロコンパス153と、を備える。入力装置151は、マウス、キーボード、タッチパネル等であり、操作者による操作に応じた入力信号を管理サーバ13に出力する。表示装置152は、液晶パネル等によって構成される表示画面を有し、管理サーバ13から出力される表示制御信号に基づき、表示画面に所定の画像を表示させる。ジャイロコンパス153は、シールド掘進機110の基準方位(例えば、真北)からの前胴部111の中心軸のずれ角(前胴方位)を検出し、検出信号を管理サーバ13に出力する。
管理サーバ13は、制御部130としてのCPU(Central Processing Unit)、記憶部140としてのROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)、並びに入出力インタフェース(I/Oインタフェース)、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。管理サーバ13は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。管理サーバ13の記憶部140には、シールド掘進機110の通過軌跡、並びに、掘削坑109及び覆工体103の予測形状を演算するための制御プログラムが格納されている。すなわち、記憶部140は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。なお、動作回路としては、CPUに代えてまたはCPUとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
制御部130は、情報取得部131と、軌跡予測部132と、覆工体形状予測部133と、掘削坑形状予測部134と、クリアランス演算部135と、干渉判定部136と、出力部139と、を備える。
記憶部140には、シールド掘進機110の形状に関する情報(掘進機形状データ)の集まりである掘進機形状データベース141が予め記憶されている。図3は、掘進機形状データについて説明する図である。図3に示すように、記憶部140には、掘進機形状データとして、シールド掘進機110のマシン基準中心点Mcから所定位置までの距離(基準点後側後胴長さLmr1、基準点前側後胴長さLmr2、マシン基準中心点Mcからシールドジャッキ125までの径方向距離RS)、前胴長さLmf、及び、シールド掘進機110の中心軸から外周面までの径方向長さ(以下、単にシールド掘進機110の半径と記す)D/2等が記憶されている。
シールド掘進機110のマシン基準中心点Mcは、シールド掘進機110の任意の位置に設定される。本実施形態では、マシン基準中心点Mcは、後胴部112の中心軸CLr上に設定される。マシン基準中心点Mcの座標の初期値は、測量によって求められ、操作者が入力装置151を操作することにより、記憶部140に記憶される。なお、マシン基準中心点Mcは、三次元直交座標系(x,y,z)で表され、z軸は、鉛直方向に平行な軸である。
前胴長さLmfとは、後胴部112に対する前胴部111の回転中心(以下、中折れ中心点と記す)Pbから前胴部111の前端までの前胴部111の中心軸CLf方向の長さである。基準点後側後胴長さLmr1とは、マシン基準中心点Mcから後胴部112の後端までの後胴部112の中心軸CLr方向の長さである。基準点前側後胴長さLmr2とは、マシン基準中心点Mcから中折れ中心点Pbまでの後胴部112の中心軸CLr方向の長さである。
図2に示すように、記憶部140には、セグメントリング101の形状に関する情報(セグメントデータ)の集まりであるセグメントデータベース142が予め記憶されている。シールドトンネルTの直線部を形成するためのセグメントリング101と、シールドトンネルTの曲線部を形成するためのセグメントリング101とでは、その形状が異なっている。トンネル直線部を形成するためのセグメントリング101は横断面が矩形状となり、トンネル曲線部を形成するためのセグメントリング101は横断面が台形状となる。
記憶部140には、セグメントデータとして、セグメントリング101の種別(リング種別)K、並びに、リング種別Kごとのセグメント長Ls及びセグメント外径Ds、セグメントリング101の傾き角度(以下、セグメント傾き角度と記す)αsが記憶されている。なお、セグメント長Lsとは、セグメントリング101の一方の開口端面の中心点と、セグメントリング101の他方の開口端面の中心点と、を結ぶ線分の長さである。セグメント外径Dsは、セグメントリング101の外径である。セグメント傾き角度αsとは、セグメントリング101の一方の開口端面に直交する軸と、セグメントリング101の他方の開口端面に直交する軸と、のなす角度に相当する。
情報取得部131は、入力装置151が操作されることにより、シールド掘進機110の次の掘進サイクル以降の掘進方位に関する情報を取得する掘進方位情報取得部として機能する。情報取得部131は、取得した掘進方位に関する情報を記憶部140に記憶させる。
情報取得部131は、入力装置151が操作されることにより、前胴部111と後胴部112の中折れ角度に関する情報を取得する中折れ角度取得部としても機能する。情報取得部131は、取得した中折れ角度に関する情報を記憶部140に記憶させる。
情報取得部131は、入力装置151が操作されることにより、シールド掘進機110のコピーカッタ(余掘り装置)127による次の掘進サイクル以降の余掘り量及び余掘り範囲に関する情報を取得する余掘り情報取得部としても機能する。情報取得部131は、取得した余掘り量及び余掘り範囲に関する情報を記憶部140に記憶させる。
情報取得部131は、ジャイロコンパス153で検出される前胴方位に関する情報を取得する。
図4は、記憶部140に記憶される掘進指示データベース143(図2参照)の一例を示す図である。図4に示すように、掘進指示データベース143は、シールド掘進機110によって掘進を行う作業者に対する掘進指示の情報の集まりである。次の掘進サイクル以降の掘進指示の情報には、リング種別K、後胴方位θr、余掘り量P、余掘り範囲R及び中折れ角度θλが含まれる。これらの情報は、シミュレーションを行うための各種情報の目標値でもあり、管理サーバ13の操作者が入力装置151を操作することによって設定される。
図4に示す表の「リングNo.」とは、掘進サイクルごとに組み立てられるセグメントリング101を識別するための番号である。図4に示す表では、実際に組み立てが完了しているセグメントリング101のうち、最前部に位置するセグメントリング101のリングNo.を「n−1」とした場合(nは例えば、1よりも大きい自然数)について示している。リングNo.は、1掘進サイクルごとに1ずつ増加する。このため、リングNo.は、掘進サイクルを識別するための番号でもある。各種情報(リング種別K、後胴方位θr、余掘り量P、余掘り範囲R、中折れ角度θλ)は、リングNo.に対応して設定され、リングNo.を下付き添え字で付している。
図3に示すように、後胴方位θrとは、後胴部112の方位角であり、予め定められた基準方位(例えば、真北)に対する後胴部112の中心軸CLrの水平面内のずれ角に相当する。実際の作業において、後胴方位θrは、1掘進工程の間に徐々に変化し、1掘進工程が終了したときに目標値に達するようにシールドジャッキ125が調整される。
このため、本実施形態に係る情報取得部131は、次の掘進サイクルの掘進方位に関する情報として、次の掘進サイクルにおける掘進工程が終了した後であってさらに次の掘進サイクルが開始する前の後胴方位θr(シールド掘進機110の方位角)の目標値を取得する。つまり、管理サーバ13の操作者は、シールド掘進機110が計画線に沿って掘進工程及び組立工程を行えるように、入力装置151を操作して、掘進工程終了直後の後胴方位θrの目標値を、掘進サイクルごとに入力すればよい。掘進方位に関する情報として後胴方位θrの目標値が採用されるため、掘進方位に関する情報としてシールドジャッキ125のストローク量が採用される場合に比べて、管理サーバ13への設定作業を容易に行うことができる。
なお、後述する前胴方位θfとは、前胴部111の方位角であり、予め定められた基準方位(例えば、真北)に対する前胴部111の中心軸CLfの水平面内のずれ角に相当する。
中折れ角度θλは、後胴部112に対する前胴部111の水平面内での傾き角度である。すなわち、中折れ角度θλは、後胴部112の中心軸CLrと前胴部111の中心軸CLfの水平面内でのなす角に相当する。実際の作業において、中折れ角度θλは、1掘進工程の間に徐々に変化し、1掘進工程が終了したときに目標値に達するように中折れジャッキ118が調整される。このため、本実施形態に係る情報取得部131は、次の掘進サイクルにおける掘進工程が終了した後であってさらに次の掘進サイクルが開始する前の中折れ角度θλの目標値を取得する。つまり、管理サーバ13の操作者は、入力装置151を操作して、掘進工程終了直後の中折れ角度θλの目標値を、掘進サイクルごとに入力すればよい。
図5及び図6を参照して、余掘り量P及び余掘り範囲Rについて説明する。図5は、前胴部111の側面模式図であり、カッタヘッド114及びコピーカッタ127の位置関係について示す。図5に示すように、余掘り量Pは、コピーカッタ127の突出量である。つまり、余掘り量Pは、カッタヘッド114の外周面からコピーカッタ127の先端(余掘り点Ct)までの径方向長さである。図6は、掘削坑109の正面模式図であり、余掘り量P及び余掘り範囲Rについて示す。なお、図6は、管理サーバ13によるシミュレーションに用いられる余掘り範囲Rの設定例の一例を示しており、実際の掘削坑109の断面形状を示すものではない。図6に示すように、余掘り範囲Rは、コピーカッタ127を突出させる周方向の範囲である。操作者は、掘進サイクルごとに、余掘り開始角度と余掘り終了角度を入力することにより、余掘り範囲Rを設定する。
軌跡予測部132は、シールド掘進機110の形状に関する情報と、次の掘進サイクル以降の掘進方位に関する情報と、中折れ角度に関する情報と、に基づいて、シールド掘進機110の軌跡を予測する。
シールド掘進機110の軌跡の予測方法の一例について説明する。なお、説明の便宜上、シールド掘進機110が水平方向に移動する場合について説明する。図3に示すように、シールド掘進機110の軌跡には、前胴部111の外周部の所定位置(P1)の軌跡、中折れ部119の外周部の所定位置(P2)の軌跡、及び、後胴部112の外周部の所定位置(P3)の軌跡が含まれる。
軌跡予測部132は、後胴部112の外周部の所定位置(P3)の軌跡を予測するための基準となるマシン基準中心点Mcの座標と、中折れ部119の外周部の所定位置(P2)の軌跡を予測するための基準となる中折れ中心点Pbの座標と、前胴部111の外周部の所定位置(P1)の軌跡を予測するための基準となる先端中心点Pfの座標と、を掘進サイクルごとに演算する。
所定の掘進サイクルが終了した後のマシン基準中心点Mcの座標Mc(i)=(xmc(i),ymc(i))は、1サイクル前のマシン基準中心点Mcの座標Mc(i−1)=(xmc(i−1),ymc(i−1))をセグメント長Lsだけ、所定の掘進サイクルが終了した後の後胴方位θr(i)と1サイクル前の後胴方位θr(i−1)の平均値に相当する方位に移動させた位置に相当し、式(1)により求められる。なお、iは、掘進サイクルの番号(リングNo.と同義)を表す自然数であり、Mc(0)=(xmc(0),ymc(0))は測量で得られるマシン基準中心点Mcの座標である。また、後胴方位θr(i)の初期値θr(0)は測量により得られる。なお、後胴方位θr(0)は、ジャイロコンパス153で検出される前胴方位θf(0)と、中折れ角度θλ(0)から求めるようにしてもよい。ジャイロコンパス153で検出される方位を利用することで、シールド掘進機110の操作者にとって、掘進方位をリアルタイムに且つ、把握しやすいパラメータでシールド掘進機110の状態を認識可能となる。
所定の掘進サイクルが終了した後の中折れ中心点Pbの座標Pb(i)=(xpb(i),ypb(i))は、式(1)で求められたマシン基準中心点Mcの座標Mc(i)を基準点前側後胴長さLmr2だけ後胴方位θr(i)に移動させた位置に相当し、式(2)により求められる。
所定の掘進サイクルが終了した後の先端中心点Pfの座標Pf(i)=(xpf(i),ypf(i))は、式(2)で求められた中折れ中心点Pbの座標Pb(i)を前胴長さLmfだけ前胴方位θf(i)に移動させた位置に相当し、式(3)により求められる。なお、前胴方位θf(i)は、式(4)により求められる。
軌跡予測部132は、前胴部111の外周部の所定位置の軌跡として、例えば、前胴部111の外周部の前端部P1の軌跡を演算する。前端部P1は円形状であり、軌跡予測部132は、前端部P1を周方向に分割する複数の位置の座標を掘進サイクルごとに演算する。前端部P1の位置を表す座標は、式(3)で求められた先端中心点Pfの座標Pf(i)と、シールド掘進機110の半径(D/2)と、前胴方位θf(i)と、に基づいて求められる。
軌跡予測部132は、後胴部112の外周部の所定位置の軌跡として、例えば、後胴部112の外周部の後端部P3の軌跡を演算する。後端部P3は円形状であり、軌跡予測部132は、後端部P3を周方向に分割する複数の位置の座標を掘進サイクルごとに演算する。後端部P3の位置を表す座標は、式(1)で求められたマシン基準中心点Mcの座標Mc(i)と、シールド掘進機110の半径(D/2)と、後胴方位θr(i)と、基準点後側後胴長さLmr1と、に基づいて求められる。
軌跡予測部132は、中折れ部119の外周部の所定位置の軌跡として、例えば、中折れ中心点Pbを中心とする半径(D/2)の横断面内の円(以下、中折れ外周部と記す)P2の軌跡を演算する。中折れ外周部P2は、後胴方位θrと前胴方位θfを等分する方位、すなわち後胴方位θrと前胴方位θfの中間の方位に直交する面内の円である。軌跡予測部132は、中折れ外周部P2を周方向に分割する複数の位置の座標を掘進サイクルごとに演算する。したがって、中折れ外周部P2の位置を表す座標は、式(2)で求められた中折れ中心点Pbの座標Pb(i)と、シールド掘進機110の半径(D/2)と、後胴方位θr(i)と前胴方位θf(i)を2分する方位に基づいて求められる。
覆工体形状予測部133は、次の掘進サイクル以降に組み立てられるセグメントリング101の形状に関する情報に基づいて、セグメントリング101が組み立てられることにより形成される覆工体103の形状を予測する。
覆工体形状予測部133は、例えば、セグメントリング101の前側の開口端面の中心点(以下、セグメント中心点と記す)Psの座標Ps(i)を掘進サイクルごとに演算する。所定の掘進サイクルで設置されるセグメントリング101のセグメント中心点Psの座標Ps(i)は、1サイクル前のセグメント中心点Psの座標Ps(i−1)をセグメント長Lsだけ、セグメント方位θs(i)に移動させた位置に相当する。なお、セグメント方位θs(i)は、1サイクル前のセグメント方位θs(i−1)にセグメント傾き角度αsを加算した角度に相当する。また、iは、掘進サイクルの番号を表す自然数であり、Ps(0)は測量で得られるセグメント中心点Psの座標である。
覆工体形状予測部133は、掘進サイクルごとに演算されたセグメント中心点Psの座標Ps(i)と、セグメント外径Dsと、に基づいて、セグメントリング101が積層されてなる覆工体103の形状を演算する。
掘削坑形状予測部134は、シールド掘進機110の形状に関する情報と、次の掘進サイクル以降の掘進方位に関する情報と、次の掘進サイクル以降の余掘り量及び余掘り範囲に関する情報と、中折れ角度に関する情報と、に基づいて、掘削坑109の形状を予測する。
具体的には、掘削坑109の形状は、軌跡予測部132で中折れ角度θλを加味して演算された先端中心点Pfの座標Pr(i)と、後胴方位θr(i)と、カッタヘッド114の半径(D/2)、余掘り量(コピーカッタ127の突出量)P及び余掘り範囲Rに基づいて予測演算される。掘削坑形状予測部134は、コピーカッタ127が突出していない状態では、カッタヘッド114の半径(D/2)にオーバーカット量Ocを加えた値を半径とする円の軌跡を掘削坑109の予測形状として演算し、記憶部140に記憶させる。オーバーカット量Ocとは、カッタヘッド114によって掘削される余掘り量である。つまり、オーバーカット量Ocとは、カッタヘッド114により掘削される掘削坑109の半径と、カッタヘッド114の半径との差に相当する。オーバーカット量Ocは、実績値や設計値に基づいて定められ、予め記憶部140に記憶されている。オーバーカット量Ocは、入力装置151を操作することにより任意の数値に変更することができる。
図5に示すように、掘削坑形状予測部134は、先端中心点Pfの座標Pf(i)と、前胴部111の先端からコピーカッタ127までの軸方向長さLcと、に基づいて、前胴部111の中心軸CLf上のコピーカッタ127の中心座標Cc(i)を演算する。なお、前胴部111の先端からコピーカッタ127までの軸方向長さLcは、シールド掘進機110の形状データの一つであり、予め記憶部140に記憶されている。
掘削坑形状予測部134は、コピーカッタ127の中心座標Cc(i)からの径方向距離Lを演算する。径方向距離Lは、余掘り範囲R内では、前胴部111の半径(D/2)に余掘り量Pを加算した値である。余掘り量Pは、前胴部111の外周面から余掘り点Ct、すなわちコピーカッタ127の先端点までの距離に相当する。径方向距離Lは、余掘り範囲R外では、前胴部111の半径(D/2)にオーバーカット量Ocを加算した値である。図6に示すように、掘削坑形状予測部134は、コピーカッタ127の中心座標Cc(i)と、前胴方位θf(i)と、径方向距離Lと、に基づいて、掘削坑109の内周面を表す座標を演算する。この座標は、例えば、周方向に1度ずつ演算される。
クリアランス演算部135は、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡と、覆工体形状予測部133により予測された覆工体103の形状と、に基づいて、後胴部112の後端部P3及びセグメント先端部Q1(図3参照)のそれぞれの横断面内におけるシールド掘進機110と覆工体103の外周面との内側クリアランスCiを演算する。クリアランス演算部135は、掘進サイクルごとに内側クリアランスCiを演算し、演算結果を記憶部140に記憶させる。
図7は、シールド掘進機110の後端部P3におけるシールド掘進機110及び覆工体103の横断面を模式的に示す図であり、内側の円は覆工体103の外周面を表し、外側の円はシールド掘進機110の内周面を表している。なお、図7に示す横断面は、シールド掘進機110の後端面に沿う横断面である。
クリアランス演算部135は、横断面内において、セグメントリング101を周方向に等分割(本実施形態では8等分割)する位置(以下、分割点Pdと記す)の座標を演算する。クリアランス演算部135は、横断面内において、セグメントリング101の中心点と分割点Pdとを通る直線と、シールド掘進機110の内周との交差点Pcの座標を演算する。クリアランス演算部135は、分割点Pdと交差点Pcとの間の直線距離を内側クリアランスCiとして演算する。
なお、覆工体103の先端部であるセグメント先端部Q1における内側クリアランスCiの演算方法は、シールド掘進機110の後端部P3における内側クリアランスCiの演算方法と同様である。セグメント先端部Q1における内側クリアランスCiを演算する場合は、覆工体103の先端面に沿う横断面において、シールド掘進機110と覆工体103の外周面との内側クリアランスCiを演算する。
干渉判定部136は、クリアランス演算部135で演算された内側クリアランスCiに基づいて、シールド掘進機110と覆工体103の外周面とが干渉する可能性があるか否かを判定する内側干渉判定部として機能する。具体的には、干渉判定部136は、内側クリアランスCiが予め定めた閾値Ci0以下であるか否かを判定する。内側クリアランスCiが閾値Ci0以下である場合、干渉判定部136は、シールド掘進機110と覆工体103との干渉の可能性があると判定する。内側クリアランスCiが閾値Ci0よりも大きい場合、干渉判定部136は、シールド掘進機110と覆工体103との干渉の可能性がないと判定する。なお、閾値Ci0は、シールド掘進機110と覆工体103との干渉の可能性があるか否かを判定するために用いられるものであり、任意の数値が設定される。
図8は、表示装置152に表示される表示画像の一例を示す図であり、後端部P3における横断面内でのシールド掘進機110と覆工体103との内側クリアランスCiに関する情報を表形式で表示する例について示す。図8に示すように、出力部139は、セグメントリング101ごとの分割点Pdに対応する内側クリアランスCiを表形式で、表示装置152の表示画面に表示させる。図示する表示画像では、干渉判定部136により、シールド掘進機110と覆工体103が干渉する可能性があると判定された位置に対応するセルに他のセルとは異なる色が付されてる。例えば、リングNo.37の右下の部位、及びリングNo.38の右下の部位における内側クリアランスCiを表示するセルは、赤色で表示され、その他のセルは白色で表示されている。これにより、シールド掘進機110とセグメントリング101とが干渉する可能性の高い位置の確認が容易になる。出力部139は、同様に、セグメント先端部Q1におけるシールド掘進機110とセグメントリング101との間の内側クリアランスCiに関する情報(内側クリアランスCi及び干渉判定結果)を表示装置152に表示可能に構成される。
図9は、表示装置152に表示される表示画像の一例を示す図であり、後端部P3における横断面内でのシールド掘進機110とセグメントリング101との内側クリアランスCiに関する情報を三次元表示形式で表示する例について示す。図9に示すように、出力部139は、覆工体形状予測部133で予測された覆工体103の形状の三次元画像に、内側クリアランスCi及び干渉判定結果を重ね合わせた画像を表示装置152に表示させることもできる。出力部139は、例えば、図示するように、内側クリアランスCiと、内側クリアランスCiの大きさに応じて設定される色と、を覆工体103の形状を表す三次元画像に重ねた画像を表示装置152に表示させる。なお、干渉の可能性の高い部位は他の部位よりも目立つ色に設定することが好ましい。
このように、クリアランス演算部135、干渉判定部136及び出力部139は、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡と、覆工体形状予測部133により予測された覆工体103の形状と、に基づいて、シールド掘進機110と覆工体103の外周面とのクリアランスに関する情報を出力する内側クリアランス出力部として機能する。内側クリアランス出力部は、シールド掘進機110と覆工体103の外周面とのクリアランスに関する情報として、内側クリアランスCiの演算結果、及び、干渉判定部136による判定結果を表す画像の情報を表示装置152に出力する。これにより、操作者は、シールド掘進機110と覆工体103との間のクリアランスの状況、及びシールド掘進機110と覆工体103との干渉の可能性を容易に把握することができる。
クリアランス演算部135は、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡と、掘削坑形状予測部134により予測された掘削坑109の形状と、に基づいて、前胴部111の前端部P1、中折れ外周部P2及び後胴部112の後端部P3のそれぞれの横断面内におけるシールド掘進機110と掘削坑109の内周面との外側クリアランスCoを演算する。クリアランス演算部135は、掘進サイクルごとに外側クリアランスCoを演算し、演算結果を記憶部140に記憶させる。
図10は、前端部P1、中折れ外周部P2または後端部P3におけるシールド掘進機110及び掘削坑109の横断面を模式的に示す図であり、内側の円はシールド掘進機110の外周面を表し、外側の円(実線)は掘削坑形状予測部134により予測される掘削坑109の内周面を表している。なお、実際の作業では、コピーカッタ127は、カッタヘッド144の回転とともに徐々に突出量が増減する。このため、実際の掘削坑109の内径は、図中破線で示すようにコピーカッタ127の突出量が増加するにしたがって徐々に大きくなり、余掘り範囲Rで余掘り量Pとなる。また、コピーカッタ127は、余掘り範囲Rを過ぎると突出量が徐々に減少するため、実際の掘削坑109の内径は、図中破線で示すようにコピーカッタ127の突出量が減少するにしたがって徐々に小さくなる。
外側クリアランスCoの演算方法は、前端部P1、中折れ外周部P2及び後端部P3において、それぞれ同様である。クリアランス演算部135は、横断面内において、シールド掘進機110を周方向に等分割(本実施形態では4等分割)する位置(以下、分割点Paと記す)の座標を演算する。クリアランス演算部135は、横断面内において、シールド掘進機110の中心点と分割点Paとを通る直線と、掘削坑109の内周との交差点Ppの座標を演算する。クリアランス演算部135は、分割点Paと交差点Ppとの間の直線距離を外側クリアランスCoとして演算する。
干渉判定部136は、クリアランス演算部135で演算された外側クリアランスCoに基づいて、シールド掘進機110と掘削坑109の内周面とが干渉する可能性があるか否かを判定する外側干渉判定部として機能する。具体的には、干渉判定部136は、外側クリアランスCoが予め定めた閾値Co0以下であるか否かを判定する。外側クリアランスCoが閾値Co0以下である場合、干渉判定部136は、シールド掘進機110と掘削坑109との干渉の可能性があると判定する。外側クリアランスCoが閾値Co0よりも大きい場合、干渉判定部136は、シールド掘進機110と掘削坑109との干渉の可能性がないと判定する。なお、閾値Co0は、シールド掘進機110と掘削坑109との干渉の可能性があるか否かを判定するために用いられるものであり、任意の数値が設定される。
図11は、表示装置152に表示される表示画像の一例を示す図であり、シールド掘進機110と掘削坑109との外側クリアランスCoに関する情報を二次元表示形式で表示する例について示す。図11(a)は、図10のXIa−XIa線の断面における掘削坑109の内周面と各軌跡TP1,TP2,TP3について表示された画像を示す図であり、図11(b)は、図10のXIb−XIb線の断面における掘削坑109の内周面と各軌跡TP1,TP2,TP3について表示された画像を示す図である。図11(c)は、図10のXIc−XIc線の断面における掘削坑109の内周面と各軌跡TP1,TP2,TP3について表示された画像を示す図であり、図11(d)は、図10のXId−XId線の断面における掘削坑109の内周面と各軌跡TP1,TP2,TP3について表示された画像を示す図である。
図11に示すように、出力部139は、シールド掘進機110の前端部P1の軌跡TP1、中折れ外周部P2の軌跡TP2及び後端部P3の軌跡TP3と、掘削坑109の内周面の形状を重ねた画像を表示装置152に表示させる。各軌跡TP1〜TP3は、クリアランス演算部135で演算された分割点Paの座標と、その座標をリングNo.の番号順(掘進サイクルの順)に結ぶ線によって表される。また、掘削坑109の内周面の形状は、クリアランス演算部135で演算された交差点Ppの座標をリングNo.の番号順(掘進サイクルの順)に結ぶ線によって表される。さらに、出力部139は、クリアランス演算部135で演算された外側クリアランスCoが上記分割点Paの座標の近くに表示されるように、表示装置152を制御する。
このように、表示装置152に表示されるシールド掘進機110の軌跡には、前胴部111の外周部の軌跡、中折れ部119の外周部の軌跡、及び、後胴部112の外周部の軌跡が含まれる。したがって、操作者は、シールド掘進機110と掘削坑109との間のクリアランスの状況を容易に把握することができる。
また、シールド掘進機110と掘削坑109との間のクリアランスの状況を容易に把握することができるので、余掘り量P及び余掘り範囲Rが適切であったか否かの確認を容易に行うことができる。余掘り量P及び余掘り範囲Rが不適切であったと判断した場合、余掘り量P及び余掘り範囲Rを修正してから、シミュレーションをやり直す。これにより、操作者は、余掘り量P及び余掘り範囲Rを修正した後のシールド掘進機110と掘削坑109と間のクリアランスの状況を直ちに把握することができ、再度、余掘り量P及び余掘り範囲Rが適切であったか否かを確認することができる。したがって、本実施形態によれば、掘削坑109の適切な余掘り量P及び余掘り範囲Rを容易に決定することができる。さらに、余掘り量P及び余掘り範囲Rの条件を変えた複数のシミュレーション結果を出力し、比較検討することもできる。
図12は、表示装置152に表示される表示画像の一例を示す図であり、後端部P3における横断面内でのシールド掘進機110と掘削坑109との外側クリアランスCoに関する情報を表形式で表示する例について示す。図12に示すように、出力部139は、掘進サイクルごとの分割点Paに対応する外側クリアランスCoを表形式で、表示装置152の表示画面に表示させる。図示する表示画像では、干渉判定部136により、シールド掘進機110と掘削坑109とが干渉する可能性があると判定された位置に対応するセルに他のセルとは異なる色が付されている。例えば、リングNo.72を組み立てる掘進サイクルにおける左の部位、及びリングNo.73を組み立てる掘進サイクルにおける左の部位における外側クリアランスCoを表示するセルは、赤色で表示され、その他のセルは白色で表示されている。これにより、シールド掘進機110と掘削坑109とが干渉する可能性の高い位置の確認が容易になる。出力部139は、同様に、前端部P1及び中折れ外周部P2におけるシールド掘進機110と掘削坑109との間の外側クリアランスCoに関する情報(外側クリアランスCo及び干渉判定結果)を表示装置152に表示可能に構成される。
このように、クリアランス演算部135、干渉判定部136及び出力部139は、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡と、掘削坑形状予測部134により予測された掘削坑109の形状と、に基づいて、シールド掘進機110と掘削坑109の内周面とのクリアランスに関する情報を出力する外側クリアランス出力部として機能する。外側クリアランス出力部は、シールド掘進機110と掘削坑109の内周面とのクリアランスに関する情報として、外側クリアランスCoの演算結果、及び、干渉判定部136による判定結果を表す画像の情報を表示装置152に出力する。これにより、操作者は、シールド掘進機110と掘削坑109との間のクリアランスの状況、及びシールド掘進機110と掘削坑109との干渉の可能性を容易に把握することができる。
出力部139は、シミュレーション結果を表す情報(シミュレーションに用いた掘進指示データベース143の各種情報を含む)を無線/有線通信により、作業者が操作する端末に送信する。また、出力部139は、シミュレーション結果を表す情報(シミュレーションに用いた掘進指示データベース143の各種情報を含む)を印刷装置(不図示)によって紙媒体に印刷させる。管理サーバ13の操作者は、シミュレーション結果に問題がない場合、そのシミュレーション結果を表す情報(シミュレーションに用いた掘進指示データベース143の各種情報を含む)を作業者に提供する。作業者は、シミュレーション結果及び掘進指示データベース143の各種情報に基づいて、掘進工程及び組立工程を行うことができる。
次に、本実施形態に係る施工管理システム10を用いた施工管理方法について説明する。図13は、施工管理方法の手順の一例について示すフローチャートである。施工管理方法は、設定工程S100と、シミュレーション工程S110と、シミュレーション結果確認工程S120と、掘進工程S130と、組立工程S140と、測量判断工程S150と、測量工程S160と、再設定判断工程S170と、再設定工程S180と、を備える。
設定工程S100において、管理サーバ13の操作者は、入力装置151を操作することにより、測量で得られた各種情報の現在値を設定する。測量で得られた各種情報の現在値には、既設の覆工体103の最前部に位置するセグメントリング101のリングNo.、リング種別K、及び、セグメント方位θs、並びに、シールド掘進機110のマシン基準中心点Mcの座標、後胴方位θr及び中折れ角度θλが含まれる。設定工程S100において、操作者は、入力装置151を操作することにより、各種情報の次の掘進サイクル以降の目標値を設定する。各種情報の目標値には、リングNo.に対応するリング種別K、後胴方位θr、中折れ角度θλ、余掘り範囲R及び余掘り量Pが含まれる。
設定工程S100が完了すると、シミュレーション工程S110に進む。シミュレーション工程S110において、操作者は、入力装置151を操作することにより、施工管理システム10によって、シールド掘進機110の軌跡、覆工体103及び掘削坑109の形状を予測させるシミュレーションを実行する。シミュレーションが完了すると、シミュレーション結果確認工程S120に進む。
シミュレーション結果確認工程S120において、操作者は、表示装置152の表示画面に表示されるシミュレーションの結果を確認する。シミュレーションの結果には、掘進指示データベース143に格納されている各種情報、並びに、内側クリアランスCi及び外側クリアランスCoに関する情報が含まれる。
シミュレーション結果確認工程S120において、操作者は、シミュレーション結果に問題があるか否かを判断する。工程S120において、シミュレーション結果に問題がないと判断した場合は、掘進工程S130に進む。工程S120において、シミュレーション結果に問題があると判断した場合は、設定工程S100に戻る。
掘進工程S130において、作業者は、シミュレーション工程S110で得られたシミュレーション結果及び掘進指示データベース143の各種情報に基づき、シールド掘進機110により掘進を行う。
作業者は、シールドジャッキ125を伸長させるとともに、カッタヘッド114を回転駆動させることにより、シールド掘進機110を掘進させる。シールドジャッキ125の伸長作業では、現在の後胴方位θr(i−1)が目標とする後胴方位θr(i)に変化するように、シールドジャッキ125のストロークが調整される。
現在の後胴方位θr(i−1)から次の掘進サイクルを終了したときの目標とする後胴方位θr(i)に変化するために必要なシールドジャッキ125の伸長量について説明する。例えば、シールド掘進機110が水平方向に掘進する場合、水平面上に位置する左側のシールドジャッキ125の伸長量LJL及び右側のシールドジャッキ125の伸長量LJRは、式(5),(6)によって表される。
また、作業者は、中折れ角度θλを変化させる必要がある場合、シールド掘進機110の掘進とともに、中折れジャッキ118を伸縮させる。中折れジャッキ118の伸縮作業では、現在の中折れ角度θλ(i−1)が目標とする中折れ角度θλ(i)に変化するように、中折れジャッキ118のストロークが調整される。
掘進工程S130が終了すると、組立工程S140に進む。組立工程S140において、作業者は、エレクタ126を操作して、新たなセグメントリング101を組み立てる。新たなセグメントリング101の組み立てが完了すると、測量判断工程S150に進む。測量判断工程S150では、所定期間が経過したか否か、あるいは、所定数の掘進サイクルが終了したか否かを判断する。測量判断工程S150において、所定期間が経過した場合、あるいは、所定数の掘進サイクルが終了した場合には、測量が必要と判断し、所定期間が経過していない場合、あるいは、所定数の掘進サイクルが終了していない場合には、、測量は不要と判断する。測量が必要と判断した場合は、測量工程S160へ進んで測量を行う。測量が不要と判断した場合は、掘進工程S130に戻る。すなわち、次の掘進サイクルでの作業に進む。
測量工程S160において、作業者が測量を行うことにより、後胴方位θr、マシン基準中心点Mcの座標等を取得する。測量工程S160において測量が完了すると、再設定判断工程S170へ進む。再設定判断工程S170において、操作者は、施工管理システム10によるシミュレーションを再度実行するための設定を行うか否かを判断する。工程S170において、測量工程S160で得られた所定情報に対する測量結果と、シミュレーション工程S110で得られた所定情報に対するシミュレーション結果との差が、所定の値よりも大きく、再設定が必要と判断される場合には、再設定工程S180へ進む。工程S170において、測量工程S160で得られた所定情報に対する測量結果と、所定情報に対するシミュレーション結果との差が所定の値よりも小さく、再設定が不要と判断される場合には、掘進工程S130に戻る。すなわち、次の掘進サイクルでの作業に進む。なお、所定情報に対する測量結果には、例えば、後胴方位θrの計測値、及びジャイロコンパス153で検出された前胴方位θfの計測値が含まれる。
再設定工程S180では、操作者は、入力装置151を操作することにより、測量工程S160で得られた各種情報の現在値を設定し、シミュレーション工程S110に戻る。ここで、測量工程S160で得られる情報が蓄積されてくると、所定情報に対する測量結果とシミュレーション結果との差の傾向を掴むことができるようになる。このため、測量工程S160で得られた所定情報に対する測量結果と、シミュレーション工程S110で得られた所定情報に対するシミュレーション結果と、の差に基づき、掘進工程S130及び組立工程S140を行うことが好ましい。つまり、所定情報(例えば、後胴方位θr、前胴方位θf)に対する測量結果とシミュレーション結果との差が、次の掘進サイクルが終了した後において、今までの差よりも小さくなるように、シールドジャッキ125の伸長量を調整する。これにより、より計画線に沿った掘進作業を行うことができる。
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
本実施形態では、クリアランス演算部135、干渉判定部136及び出力部139が、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡と、掘削坑形状予測部134により予測された掘削坑109の形状と、に基づいて、シールド掘進機110と掘削坑109の内周面とのクリアランスに関する情報を表示装置152に出力する外側クリアランス出力部として機能する。したがって、操作者は、表示装置152に表示される画像により、掘削坑109の予測形状と、シールド掘進機110の通過軌跡と、を対比することができ、シールド掘進機110と掘削坑109との間のクリアランスの状況を容易に把握することができる。その結果、掘進計画の変更を迅速に行うことができ、トンネル施工工程の効率化を図ることができる。
このように、本実施形態では、シミュレーションを行うことにより、容易に掘進の管理が可能な施工管理システム10及び施工管理方法を提供することができる。
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
<変形例1>
上記実施形態では、情報取得部131が、次の掘進サイクルの掘進方位に関する情報として、次の掘進サイクルが終了した後のシールド掘進機110の方位角の目標値(後胴方位θr(i))を取得する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。次の掘進サイクルでシールド掘進機110が移動する方位角を取得するようにしてもよい。つまり、上記実施形態では、後胴方位θrの目標値を、リングNo.ごとに設定していた。これに対して、本変形例では、所定の掘進サイクル終了後の後胴方位θr(i)と、所定の掘進サイクル開始前(所定の掘進サイクルの1サイクル前の掘進サイクル終了後)の後胴方位θr(i−1)との平均値をリングNo.ごとに設定してもよい。
<変形例2>
上記実施形態では、情報取得部131が、次の掘進サイクルの掘進方位に関する情報として後胴方位θrの目標値を取得する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。情報取得部131は、次の掘進サイクルの掘進方位に関する情報として、後胴方位θrの目標値に代えて、前胴方位θfの目標値を取得するようにしてもよい。つまり、情報取得部131は、掘進方位に関する情報として、前胴方位θfの目標値及び後胴方位θrの目標値のいずれを取得してもよい。管理サーバ13は、取得した前胴方位θfの目標値及び後胴方位θrの目標値のいずれかを基準として各種演算を行うことができる。また、情報取得部131は、後胴方位θrの目標値に代えて、次の掘進サイクルの掘進方位に関する情報として、シールドジャッキ125のストローク量の目標値を取得するようにしてもよい。
<変形例3>
管理サーバ13が、表示装置152の表示画面に表示させる表示画像は、上記実施形態に限定されない。例えば、制御部130は、掘進サイクルごとのシールドジャッキ125の左右のストローク差ΔSを演算し、ストローク差ΔSに関する情報を表示装置152に表示させるようにしてもよい。
ストローク差ΔSは、シールド掘進機110の左側に設置されるシールドジャッキ125のストロークと、シールド掘進機110の右側に設置されるシールドジャッキ125のストロークとの差である。
図14を参照して、シールドジャッキ125の左右のストローク差の演算方法について説明する。制御部130は、後胴方位θr(i)、セグメント方位θs(i)及びマシン基準中心点Mcからシールドジャッキ125までの径方向距離RSに基づいて、ストローク差ΔSを演算する。
ストローク差ΔSは、式(7)により求められる。なお、方位差φ(i)は、式(8)により求められる。
制御部130は、セグメントリング101を押し始める状態でのストローク差ΔS、及び、シールドジャッキ125を伸長させ、セグメントリング101を押し終わった状態でのストローク差ΔSを表示装置152に表示させる。これにより、作業者は、シミュレーション結果の一つとしてのストローク差ΔSを確認することにより、シールドジャッキ125の伸長量の調整を容易に行うことができる。
<変形例4>
内側クリアランス出力部は、シールド掘進機110と覆工体103の外周面とクリアランスに関する情報として、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡の三次元画像と、覆工体形状予測部133により予測された覆工体103の形状の三次元画像と、を重ね合わせた画像の情報を表示装置152に出力するようにしてもよい。さらに、外側クリアランス出力部が、シールド掘進機110と掘削坑109の内周面とクリアランスに関する情報として、軌跡予測部132により予測されたシールド掘進機110の軌跡の三次元画像と、掘削坑形状予測部134により予測された掘削坑109の形状の三次元画像と、を重ね合わせた画像の情報を表示装置152に出力するようにしてもよい。
<変形例5>
上記実施形態では、シールド掘進機110が中折れ型掘進機である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。中折れ部119が存在しないシールド掘進機110に本発明を適用することもできる。中折れ部119を装備していないシールド掘進機110の場合は、前胴部111と後胴部112とに分割されていない前胴部と後胴部が一体の胴部を有する。この場合、後胴方位θrと前胴方位θfに区別はなく、胴部の方位が掘進方位となる。このため、上述した各種演算で用いられる中折れ角度θλは0となる。すなわち、上記前胴方位θfは、後胴方位θrと等しくなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。