JP2023013716A - 余掘り管理システム、方法およびプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、余掘りを管理するシステム、方法およびその方法を実現するための処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
掘削機械(シールド)を使用してトンネルを掘削する場合を含め、一般に、土木工事における地山掘削では、適宜、設計通りに掘削できているかの掘削実績を評価しながら行う。掘削実績を評価するためのデータを取得する場合、人手による測定により取得することができるが、人手では測定に時間がかかり、正確に測定するためには測定箇所を増やす必要がある。また、掘削実績を評価には、取得した各測定箇所のデータを、設計データと一点ずつ比較しなければならない。
そこで、ビデオカメラ等の現形状データ取得手段により現形状データを取得し、記憶した設計形状データと比較して、設計形状データと現形状データとの一致度からなる施工状態管理情報を作成することが行われる。さらに、施工状態管理情報がわかりやすく掘削作業者にフィードバックされるよう、掘削作業者の直接観察下にある掘削場所そのものに、プロジェクタ等の投影手段で施工状態管理情報を投影させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記の従来の技術では、施工状態管理情報を掘削場所に投影して掘削作業者に伝えているが、シールドの場合、掘削場所がシールド躯体の背面にあり、かつ掘削土砂や改良剤等で覆われるため、そもそもシールドオペレータの直接観察下で掘削できないし、施工状態管理情報も掘削場所に投影できないという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、余掘りを管理するシステムであって、
先端部が回転してトンネルを掘削する掘削機械の先端部においてトンネルの径方向へ突出させて余掘りを行う突出部の突出長と、掘削機械の姿勢とに関して追跡記録された蓄積情報を取得する取得手段と、
取得された蓄積情報に基づき、該姿勢で配置した掘削機械の表示モデルと、掘削機械の余掘り軌跡とを表示させる表示制御手段と、
取得された蓄積情報に基づき、余掘りの過不足を評価する評価手段と
を含み、
表示制御手段は、表示させた表示モデルに、評価手段の評価結果を対応付けて表示させる、余掘り管理システムが提供される。
先端部が回転してトンネルを掘削する掘削機械の先端部においてトンネルの径方向へ突出させて余掘りを行う突出部の突出長と、掘削機械の姿勢とに関して追跡記録された蓄積情報を取得する取得手段と、
取得された蓄積情報に基づき、該姿勢で配置した掘削機械の表示モデルと、掘削機械の余掘り軌跡とを表示させる表示制御手段と、
取得された蓄積情報に基づき、余掘りの過不足を評価する評価手段と
を含み、
表示制御手段は、表示させた表示モデルに、評価手段の評価結果を対応付けて表示させる、余掘り管理システムが提供される。
本発明によれば、シールドオペレータが余掘りに関して簡単に評価することができるようになる。
本発明の余掘り管理システムは、シールド工法を用いてトンネルを掘削するためのシールドにおいて、トンネルの急曲線部で特に重要となる余掘りの掘削実績が、シールドオペレータの直接観察下になくとも、シールドオペレータが分かりやすく理解できるようにするシステムである。
シールドは、前方の土砂を削り、崩壊しようする掘削面を押さえながら、削り取った量とバランスする量の掘削土砂を坑外へ排出して前進するトンネル掘削機械である。シールド後方では、セグメントと呼ばれるトンネル覆工ブロックをリング状に組立てトンネル構造を完成させる。図1は、シールドの構成例を示した図である。
シールド10は、前方の土砂を削るため、その先端には、回転可能な略円形の面板に円周状または放射状に配列する複数のビットを備えたカッターヘッド11を有する。また、シールド10は、シールドジャッキ12を備え、組み立てられたセグメント13にシールドジャッキ12を押し当てて設置し、シールドジャッキ12を伸ばすことにより前進する。なお、シールドジャッキ12は、シールド10を構成する鋼製の外筒であるスキンプレート14の内周に沿って所定の間隔で複数配置されている。
シールド10は、カッターヘッド11のすぐ後部に、掘削面を押さえる土圧や水圧をかけながら掘削土砂を排出可能に塑性流動化させるための撹拌室として、チャンバー15を備える。チャンバー15内の土砂等は、スクリューコンベア16で取り出され、ベルトコンベアー17で坑外に搬出し、排出土として処分される。
シールド10は、セグメントを組み立てるためのエレクター18を備える。エレクター18は、セグメントを把持し、所定の位置まで搬送して設置する。また、シールド10は、セグメント13の背部(セグメントと掘削したトンネル壁面との間)に注入材を注入する裏込め注入装置19を備える。
錯綜した都市地下空間の開発では、三次元的な急曲線を掘削することが要求される。このため、シールドの機械構造は、急曲線に対応可能なものに進化し、図2に示すように、前後2つに分割した筒状の前胴20、後胴21をヒンジで連結した中間折れ曲がりを可能とする中折れ機構を備えたものが多くなってきている。なお、図2では、シールドにより組み立てられたセグメントリング22も示されている。
中折れ機構を有するシールドが急曲線を曲がる場合、後胴の面向きと中折れ角を操作して、シールドと計画線との偏差が小さくなる掘進方向に沿って進むように、シールドの姿勢を調整しながら曲がっていく。
急曲線をカーブするときは、例えばバスやトラック等の場合、内輪差や回転中心からのオーバーハングを許容する車幅以上の空間が必要である。シールドも、カーブするためには直線部の掘削径から拡大した同様の空間が必要となるが、その空間を自ら余分に掘削して生み出さない限り、カーブすることができないという制約がある。
シールドの前胴20に設けられたカッターヘッドの側方には、トンネルの径方向へ突出可能な突出部としてのコピーカッタ(以下、略してコピーと呼ぶ。)23が設けられている。コピー23は、シールドがカーブできる空間を作成するための装置である。
シールドが急曲線で曲がる場合、急曲線の内側の中折れジャッキを縮め、外側の中折れジャッキを伸ばすジャッキ操作を行い、への字様の屈曲姿勢でカーブしていくが、この姿勢を取り得る空間を先読みし、コピー23がその位置にあるタイミングで掘削しておかなければならない。この操作は、余掘りと呼ばれる。
余掘りした空間は空洞とはしない。空洞のままでは掘削壁の崩壊の危険があるほか、シールドが掘削壁からの反力と摩擦を適度に受けることが難しくなり、シールドの運転が困難になる。余掘りした空間は、適度な塑性流動性をもつ改良剤で掘削直後から充填する。これにより、掘削壁が保護され、かつシールドが掘削壁より地山反力と摩擦を受けることができ、好適なシールド運転が可能となる。
シールド運転中、コピー23の出入りの制御は、カッターヘッドの回転角に対応して連続的に行う。これは、煩雑な作業となるので、手動ではなく自動で行う。具体的には、余掘り運転モードをONにすることで、制御器に予め設定しておいた円周角θに対するコピー23の突出長ΔRの関係を示す式等に従い、シールドが自動で余掘り空間を掘削する。
余掘り量(コピー23の突出長)がカーブ設計上で適切に見込まれていても、設計の与条件として正確に把握できないコピー切削の実効性、掘削面とシールドとの力学的な相互作用の影響があるため、期待した通りにシールドの姿勢が変わらず、計画線との偏差が小さくならない場合がある。
このような場合、シールドオペレータは、シールドの姿勢、余掘り量等について匙加減して操作し、修正されるか否かを見ることになる。しかしながら、次々と複数の操作を行うと、現在の余掘りが結局どのように効果を発揮しているのかを見失ってしまう。そこで、リアルタイムで変化する余掘りの実効性をシールドオペレータに分かりやすく示すことができるシステムの提供が望まれていた。
従来、余掘り実績を示す方法として、シールド掘削位置Xに対応するコピー23の突出長の設定ΔRを記録しておき、X-ΔRグラフ(XとΔRとの関係を示すグラフ)で管理することが行われている。ΔRを余掘り後のシールド位置と姿勢の変化を踏まえて補正することも行われている。さらに、余掘り掘削の実効性(コピー23の突出量の設定に対する実際に切削された深さの割合)でΔRを補正することも行われている。
コピー23が実際に切削できた深さは、地山性状によってはコピー23の突出長の設定ΔRと必ずしも等しくない。この場合、コピー23での切削後に、コピー23に隣接して装備した触診棒を用いて、余掘りの出来形を確認することができる。
上記のようにして得られた情報は、シールドオペレータの監視ダッシュボードに表示される。図3は、X-ΔRグラフの一例を示した図である。図3は、シールド回転円周方向で(1)、(3)と付された2つの余掘りゾーン毎のX-ΔRグラフを含んでいる。ゾーン(2)は、プログラムで未使用の状態である。グラフの縦軸は、ΔRであり、コピー23の突出長の設定と、触診棒で測定した余掘りの出来形の2つが示されている。グラフの横軸は、余掘りを行った位置(トンネル距離程)である。
図3は、ゾーン(1)、(3)のコピー23の突出長の設定がほぼ一定であるのに対し、余掘りの出来形は、Xにより大小変化している状況を示している。このようなグラフからコピー23の突出長の設定の実効性を評価し、コピー23の突出長の設定をより好適なものへ修正することができる。
しかしながら、図3に示すグラフでは、シールドの躯体外面のどのあたりで余掘り過不足が生じているかを直感的に読み取ることができない。今後に修正が必要な余掘りがシールド躯体外面のどのあたりとなるのか、現在の余掘り空間で可能なシールド姿勢はどこまでか、これらを即座に読み取ることが難しいものとなっている。
シールドに急曲線への対応が求められる以前では、刻々と位置と姿勢が変わるシールドの状況に応じた余掘り掘削の実効性を評価する必要はそれほどなかった。これを実現するには、それなりの資源と手間が必要であり、シールドオペレータの分かりやすさを追求したものは特に考えられてこなかった。
本発明は、余掘りに関して、シールドオペレータの分かりやすさを追求した、評価システムを提供する。はじめに、図4を参照して、本システムとしての余掘り管理システムが適用されるシールド総合管理システムについて説明する。シールド総合管理システム30は、シールド掘進に関する総合データベースとしての蓄積と基本的な統計分析、リスク判定等の機能を提供する基盤システムである。シールド総合管理システム30は、機能拡張のためのアプリケーション31を実装することができる。余掘り管理システム32は、アプリケーションの1つとして、シールド総合管理システム30に実装することができる。なお、これは一例であるので、余掘り管理システムの機能の一部または全部の実装方法はこれに限定されるものではない。
シールド総合管理システム30は、シールドおよび関連プラント33と操作系統IF34、基本操作盤35および詳細操作盤36を介して接続される。シールド総合管理システム30は、掘進計画線の情報を保持し、シールドおよび関連プラント33に取り付けられた各種センサ等からコピー23のストロークや角度の情報、シールドの姿勢や位置の情報、中折れ角の情報等を取得する。また、シールド総合管理システム30は、地山変位等の環境情報を計測する各種環境計測装置37が接続され、各種環境計測装置37から地山変位等の環境情報を取得する。
余掘り管理システム32は、取得した情報を用い、コピー23の余掘り軌跡や余掘りの過不足等の計算を行う。そして、余掘り管理システム32は、図3に示した時系列変化とともに、余掘りの過不足の位置や程度を、シールドの表示モデルの外皮部分にマッピングして表示する。このように、シールドを表示モデルとして表示し、余掘りの過不足の位置や程度をマッピングすることで、シールドオペレータが今後に修正が必要な余掘りがシールドの躯体外面のどのあたりとなるのか、現在の余掘り空間で可能なシールド姿勢はどこまでか、これらを即座に読み取ることができるようになる。
図5は、シールド総合管理システム30のハードウェア構成の一例を示した図である。シールド総合管理システム30は、一般的なコンピュータにより構成することができる。このため、シールド総合管理システム30は、一般的なコンピュータと同様のハードウェア構成を採用することができる。シールド総合管理システム30は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)40、ROM(Read Only Memory)41、RAM(Random Access Memory)42、HDD(Hard Disk Drive)43、外部機器I/F44、入出力I/F45、表示装置46、入力装置47を備える。
CPU40は、システム全体を制御し、各種のアプリケーションを実行する。ROM41は、システムの起動時のOS(Operating System)の読み込みや周辺機器に対する入出力制御を行うBIOS(Basic Input/Output System)や、HDD43等のシステム内部の回路等の制御を行うファームウェアを格納する。RAM42は、メインメモリとして用いられ、CPU40に対して作業領域を提供する。HDD43は、CPU40が実行する各種のアプリケーションやOS、各種の設定情報、各種のデータ等を記憶する。ここでは、HDD43を使用しているが、これに限定されるものではなく、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置であってもよい。
外部機器I/F44は、基本操作盤35および詳細操作盤36や、各種環境計測装置37等の外部機器と本システムとを接続し、外部機器との通信を制御する。表示装置46は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の情報を表示するための装置である。入力装置47は、キーボードやマウス等の情報の入力、アプリケーション等の選択、アプリケーション実行の指示等を行う装置である。入出力I/F45は、表示装置46への情報の出力および入力装置47からの情報の入力を制御する。この例では、表示装置46と入力装置47が別個の装置として説明したが、これに限られるものではなく、表示装置46と入力装置47の両方の機能を備えたタッチパネルを採用してもよい。
シールド総合管理システム30は、その他の回路等を備えていてもよく、例えばインターネット等のネットワークと接続し、ネットワーク上の通信機器との通信を制御する通信I/Fや、Bluetooth(登録商標)等により近距離無線通信を可能にする近距離無線通信回路等を備えていてもよい。
図6は、余掘り管理システム32の機能構成の一例を示した機能ブロック図である。余掘り管理システム32の各機能は、シールド総合管理システム30が備えるアプリケーションをCPU40が実行することにより実現される。なお、余掘り管理システム32の各機能の一部または全部は、回路等のハードウェアで構成されていてもよい。
余掘り管理システム32は、機能部として、シールドおよび関連プラント33、各種環境計測装置37等からシールド総合管理システム30が取得し、記録した情報の中から所定の情報を取得するための取得部50と、表示装置46への情報の表示を制御する表示制御部51と、余掘りの過不足を評価する評価部52とを備える。
取得部50は、シールド総合管理システム30が記録した情報の中から、所定の情報として、コピー23の突出長の設定、余掘り出来形と、シールドの位置と、シールドの姿勢とに関して追跡記録された蓄積情報を取得する。シールドの姿勢に関する情報は、シールド後胴の面向き、中折れ角等であり、シールドの姿勢を決めるための情報である。
表示制御部51は、取得部50により取得された蓄積情報に基づき、当該姿勢で配置したシールドの表示モデルとコピー23の余掘り軌跡とを表示させる。表示モデルは、CAD(Computer Aided Design)等で作成された三次元モデルである。コピー23の余掘り軌跡は、コピー23が掘削しながら移動してきた跡を、曲線等で表したものである。
シールドおよび関連プラント33や各種環境計測装置37は、シールドによる掘削中、必要なデータを取得し、シールド総合管理システム30へ送信し、同一のタイムスタンプを付して蓄積する。必要なデータは、コピー23の突出長の設定、シールドの位置、シールドの姿勢に関する情報としての後胴の面向き、中折れ角等である。
取得部50は、シールドが所定の距離掘削する毎に追跡記録された蓄積情報を読み出して取得し、表示制御部51は、コピー23の余掘り軌跡の表示を更新する。所定の距離掘削する毎とは、例えば1つのセグメントリングを構築できる分だけ掘進する毎である。なお、これは一例であるので、所定の距離はこの距離に限定されるものではない。
評価部52は、取得部50により取得された蓄積情報に基づき、余掘りの過不足を評価する。具体的には、評価部52は、表示制御部51が表示させた表示モデルと余掘り軌跡において、オーバーラップして表示された部分につき、余掘り軌跡を表す線に対し、表示モデルがはみ出した量を計算し、そのはみ出した量とその部分で余掘りのために突出させたコピー23の突出長とを比較し、余掘りの過不足を評価する。
余掘りの過不足の評価は、余掘りが適正か、余掘り過多か、余掘り不足かを判定することにより行うことができる。適正か否かは、実余掘り量が許容値以内か否かにより判断することができる。実余掘り量は、コピー23のストロークの計測、もしくは触診棒の地山への押し当てによる計測により求めることができる。
余掘りが適正である場合、程よいバランスで線形を維持できる。一方、余掘りが過多である場合、地盤反力が小さく、余掘りが不足する場合、地盤反力が大きく、いずれも線形を逸脱し、期待通りに姿勢が変わらずカーブしなくなる。このような余掘り過多、余掘り不足は、単に適正範囲の上限を超えるか、下限を下回るかのみで判断してもよいが、さらに範囲を設け、どの程度過多か、もしくは不足しているかを評価してもよい。
表示制御部51は、表示させた表示モデルおよび余掘り軌跡に、評価部52の評価結果を対応付けて(マッピングして)表示させる。評価部52は、少なくとも余掘り適正、余掘り過多、余掘り不足の3つのレベルで評価することができることから、表示制御部51は、3つのレベルでの評価結果を、表示モデル等にマッピング表示させることができる。
表示制御部51は、余掘り適正、余掘り過多、余掘り不足を、例えば色で区別して表示させることができる。具体的には、表示モデルの余掘り適正である部分を白色、余掘り過多の部分を赤色、余掘り不足の部分を青色で表示させることができる。これにより、シールドのトンネル軸方向のどの部分が余掘り過多か、余掘り不足かを表示させることができる。
表示モデルがCADにより作成したCADモデルである場合、任意の方向からの表示が可能であり、また、任意の位置で切断した断面の表示も可能である。このため、任意の位置で切断した断面に、評価部52の評価結果をマッピング表示し、トンネル断面の周方向のどの部分が余掘り過多か、余掘り不足かを表示させることができる。
図7は、表示制御部51により表示装置46に表示させた余掘り実績表示の一例を示した図である。図7に示す画面は、切羽位置や掘削区間の表示に加え、右上に、余掘りの各レベルを色分けし、表示モデルである三次元モデル60と余掘り軌跡61とを表示している。また、下側に、三次元モデル60の任意の位置として、位置A~Cの3箇所で切断した断面図を各レベルの色分けとともに表示している。
右上に示した三次元モデル60は、急曲線部を掘進する中折れ機構を備えたシールドの三次元モデルである。この図では、シールドが右側に向けて掘進していて、カッターヘッドを有する前胴60aと後胴60bとの間に中折れ機構60cが設けられている。シールドの後胴60bは、シールドのカーブにより前胴60aの余掘り軌跡61を示す破線からカーブの内側にはみ出し、後胴60bの内側部分が余掘り不足となっている。その反対に、後胴60bの外側部分は、余掘り過多となっている。
下側に示した切断線A-Aで切断した断面が後胴60bの断面で、切断線B-Bで切断した断面が中折れ機構60cを有する部分の断面で、切断線C-Cで切断した断面が前胴60aの断面である。切断線C-Cで切断した前胴60aの断面は、余掘り軌跡61にほぼ一致しているため、余掘り適正の範囲内に入っている。しかしながら、後胴60bの断面は、余掘り軌跡61からはみ出しているため、はみ出した部分が余掘り不足となっている。
このように余掘りの過不足の評価結果を色分けして表示させることで、それを見たシールドオペレータは、どの位置が余掘り過不足になっているかを容易に理解することができる。また、余掘りの過不足の程度を色分けし、コンター図(等値線図)として表示させることで、シールドオペレータは、その程度も容易に理解することができる。
図8は、余掘りの過不足の評価結果を表示させる別の例を示した図である。余掘りの過不足は、図7に示したようにシールドの表示モデルの外皮部分に色分けし、その位置を示すことで、シールドオペレータが一目で過不足の位置や程度を把握することができる。シールドは、一定方向に回転しながら前進する。このため、前進するシールドの前面の外周上で、中折れジャッキのジャッキ操作により出入りするコピー23の軌跡は、螺旋を描くことになる。図7に示した例では、1の領域が余掘り適正であるにも関わらず、その周囲の領域が余掘り過多であった場合、当該1の領域を含めて余掘り過多とし、色分けして表示している。
そこで、より細かく評価結果を反映させるため、図8に示すように、螺旋を描くコピー23の軌跡62に合わせて離散化してタイル状に表示させる。余掘りの過不足に対応して各タイル63を色分けして表示させることで、より細かく過不足の位置や程度を表すことができる。図8中、余掘りの外周面が地山掘削面64である。
シールド総合管理システム30は、コピー23の円周角θ位置と突出長の設定ΔR、シールド位置と姿勢に関する情報を、タイムスタンプを付けて追跡記録しているため、コピー23が、どの時刻に、どの位置にあり、どの程度突出しているか、そのとき、シールド10がどの位置にあり、どのような姿勢であるかが分かる。このため、同一のタイムスタンプが付いたこれらの情報を1組のデータセットとし、このデータセットを用いることで、コピー23の軌跡62を離散化してタイル状とした場合の各タイル63の余掘りの過不足を評価し、色分けして表示させることができる。
コピー23の軌跡は、一定の距離で区切って離散化することができるが、一定の時間で区切って離散化してもよい。
図9を参照して、トンネルの急曲線部における施工手順について説明する。トンネルの急曲線部に至るまでは、直線部もしくは緩やかな曲線部をシールドによりトンネルを掘削している。ステップ100では、計画線(設計)を参照し、ステップ101では、掘削線(実績)を確認する。掘削線は、シールドによりトンネルを掘削し、シールド上の任意の点が移動した軌跡を示す線である。
ステップ102では、計画線と掘削線との差を偏差とし、その偏差を評価する。偏差が拡大している場合、偏差を小さくするように修正する修正線を準備する。修正線は、計画線からずれたシールドを、どのように前進させて計画線上の軌道に戻すかを示す線である。急曲線部に対してシールドを前進させるためには、コピー23を突出させ、シールドが必要な姿勢を取り得る空間を余掘りする必要がある。急曲線部のカーブの大きさを表すR(円の半径)によって余掘り量が異なることから、ステップ103では、計画線で定めたRに従い、余掘り目標を準備する。余掘り目標は、余掘り量の設定値である。
ステップ104では、余掘り目標を、シールドを制御する制御器にロードする。すなわち、余掘り量の設定値を制御器へ送信し、制御器に設定する。ステップ105で、余掘りモードをONにし、掘削を開始する。ステップ106では、制御器にロードされた余掘り目標に従い、コピー23を自動制御して掘進を開始する。
コピー23が自動で出入りしながら、シールドが掘進する間、ステップ107、108で、コピー23の突出長と、シールドの姿勢に関する情報とを一定の時間間隔で同時に計測しながら、これらの情報を記録する。このとき、シールドの位置情報も記録する。
シールドの掘進は、所定距離移動したところで一旦終了することができ、例えば1つのセグメントリングの施工が完了したところで一旦終了することができる。ステップ109では、シールドの掘進を一旦終了する。
ここからが余掘り管理システムによる処理となるが、ステップ110では、シールド軌跡と姿勢を図示する。すなわち、取得部50が、記録されたコピー23の円周角θ位置と突出長の設定ΔR、シールド位置と姿勢に関する情報を取得する。そして、表示制御部51が、位置および姿勢に関する情報に基づき、図6に示したようなシールドの表示モデルと余掘り軌跡とを表示させる。この段階では、表示モデルは色分けされていない状態である。
ステップ111では、評価部52が、突出長に関する情報に基づき、余掘りの過不足を評価する。評価部52は、表示モデルが余掘り軌跡を示す線からはみ出した量を、突出長の設定ΔRと比較し、余掘りが適正か、余掘りが過多か、余掘りが不足しているかを評価する。ステップ112では、表示制御部51が、評価部52の評価結果を、既に表示された表示モデルおよび余掘り軌跡に反映させる。具体的には、評価結果を色分けして表示モデルにマッピング表示させる。
ステップ113では、シールドオペレータが、表示装置にマッピング表示された表示モデルを確認し、修正が必要か否かを判断する。修正が必要と判断した場合、ステップ103へ戻り、余掘り目標を再設定する。一方、修正が不要と判断した場合、ステップ105へ戻り、次の掘削を開始する。この処理は、急曲線部の掘削が終了するまで実施される。トンネルの直線部や緩やかな曲線部では、余掘りが不要な場合も多いため、この処理を実施しなくてもよい。この処理を実施するか否かは、計画線上でシールドの現在位置を確認し、急曲線部に入るか否かにより判断することができる。
以上に説明してきたように、余掘りの過不足を簡単に評価することができ、それを色分けする等して表示させることで、シールドオペレータが余掘りの現状と履歴が掘進中において直感的に把握することができる。これにより、運転オペレータが適正に修正して施工を行うことができるので、急曲線部の施工品質を向上させることができる。
これまで本発明の余掘り管理システム、方法およびプログラムについて図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
10…シールド
11…カッターヘッド
12…シールドジャッキ
13…セグメント
14…スキンプレート
15…チャンバー
16…スクリューコンベア
17…ベルトコンベアー
18…エレクター
19…裏込め注入装置
20、21…胴体
22…セグメントリング
23…コピー
30…シールド総合管理システム
31…アプリケーション
32…余掘り管理システム
33…シールドおよび関連プラント
34…操作系統I/F
35…基本操作盤
36…詳細操作盤
37…各種環境計測装置
40…CPU
41…ROM
42…RAM
43…HDD
44…接続I/F
45…入出力I/F
46…表示装置
47…入力装置
50…取得部
51…表示制御部
52…評価部
60…三次元モデル
60a…前胴
60b…後胴
60c…中折れ機構
61…余掘り軌跡
62…軌跡
63…タイル
64…地山掘削面
11…カッターヘッド
12…シールドジャッキ
13…セグメント
14…スキンプレート
15…チャンバー
16…スクリューコンベア
17…ベルトコンベアー
18…エレクター
19…裏込め注入装置
20、21…胴体
22…セグメントリング
23…コピー
30…シールド総合管理システム
31…アプリケーション
32…余掘り管理システム
33…シールドおよび関連プラント
34…操作系統I/F
35…基本操作盤
36…詳細操作盤
37…各種環境計測装置
40…CPU
41…ROM
42…RAM
43…HDD
44…接続I/F
45…入出力I/F
46…表示装置
47…入力装置
50…取得部
51…表示制御部
52…評価部
60…三次元モデル
60a…前胴
60b…後胴
60c…中折れ機構
61…余掘り軌跡
62…軌跡
63…タイル
64…地山掘削面
Claims (9)
- 余掘りを管理するシステムであって、
先端部が回転してトンネルを掘削する掘削機械の前記先端部において前記トンネルの径方向へ突出させて余掘りを行う突出部の突出長と、前記掘削機械の姿勢とに関して追跡記録された蓄積情報とを取得する取得手段と、
取得された前記蓄積情報に基づき、前記姿勢で配置した前記掘削機械の表示モデルと、前記突出部の余掘り軌跡とを表示させる表示制御手段と、
取得された前記蓄積情報に基づき、前記余掘りの過不足を評価する評価手段と
を含み、
前記表示制御手段は、表示させた前記表示モデルに前記評価手段の評価結果を対応付けて表示させる、余掘り管理システム。 - 前記評価手段は、前記表示モデルが前記余掘り軌跡からはみ出した量を前記突出長と比較し、比較結果に応じて、前記余掘りが適正もしくは過多または不足のいずれであるかを評価する、請求項1に記載の余掘り管理システム。
- 前記表示制御手段は、前記評価結果に応じて色分けして表示させる、請求項1または2に記載の余掘り管理システム。
- 前記取得手段は、前記掘削機械が一定の距離掘進する毎に前記蓄積情報を取得し、
前記表示制御手段は、前記表示モデルの姿勢および余掘り軌跡を更新する、請求項1~3のいずれか1項に記載の余掘り管理システム。 - 前記表示制御手段は、前記表示モデルを所定の位置で切断した断面図に前記評価結果を対応付けて表示させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の余掘り管理システム。
- 前記表示制御手段は、前記蓄積情報から得られる前記突出部の軌跡を離散化し、離散化した部分を矩形で表示させ、離散化した各部分についての前記評価手段の評価結果を前記各矩形に対応付けて表示させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の余掘り管理システム。
- 前記姿勢に関して追跡記録された前記蓄積情報は、前記掘削機械のセグメントリングにシールドジャッキを介して接する胴体が有する面の向き、前記掘削機械が中折れ機構を有する場合の中折れ角である、請求項1~6のいずれか1項に記載の余掘り管理システム。
- 余掘り管理システムにより実行される方法であって、
先端部が回転してトンネルを掘削する掘削機械の前記先端部において前記トンネルの径方向へ突出させて余掘りを行う突出部の突出長と、前記掘削機械の姿勢とに関して追跡記録された蓄積情報とを取得するステップと、
取得した前記蓄積情報に基づき、前記姿勢で配置した前記掘削機械の表示モデルと、前記突出部の余掘り軌跡とを表示させるステップと、
取得した前記蓄積情報に基づき、前記余掘りの過不足を評価するステップと、
表示させた前記表示モデルに前記評価するステップにおける評価結果を対応付けて表示させるステップと
を含む、方法。 - 請求項8に記載の方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021118090A JP2023013716A (ja) | 2021-07-16 | 2021-07-16 | 余掘り管理システム、方法およびプログラム |
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Family Applications (1)
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- 2021-07-16 JP JP2021118090A patent/JP2023013716A/ja active Pending
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