JP2022012138A - リナグリプチンと光安定化成分を含有する医薬製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩の光分解を抑制できる効果を持つ光安定化成分が配合された、医薬製剤を提供すること。【解決手段】リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む錠剤に、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、又は第三リン酸カルシウムから選択される1以上の光安定化成分を医薬的に許容される範囲内で添加することで、素錠の状態であっても光分解物の増加が抑制された医薬製剤が得られる。【選択図】 なし

Description

本発明は、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬品組成物に、光安定化成分を添加した医薬製剤に関する。
リナグリプチンは、選択的DPP-4阻害作用に基づく、経口投与の2型糖尿病治療剤である。リナグリプチンを含む医薬組成物の課題として、その化学構造に由来した酸化反応により、結晶セルロースやデンプングリコール酸ナトリウムなど、一般に使用される添加剤の一部と化学的安定性が不良であることが示されており、それらを除いた医薬組成物とすることで化学的安定性の課題を改善している(特許文献1)。このように、リナグリプチンを含む医薬組成物においては、課題である分解物の増加をできるだけ抑制することが極めて重要である。
さらに、有効成分であるリナグリプチンは、原薬単独では光照射後に僅かに黄変する一方で、製剤では光照射後の品質に変化がないことが示されている(非特許文献1)。製剤中には三二酸化鉄が配合されており、剤形は淡赤色のフィルムコート錠であることから、遮光剤である三二酸化鉄をフィルムコート基剤に加えることにより光安定性を確保しているものと推定される。例えば、光安定性が悪いワルファリンの錠剤に三二酸化鉄を含むコーティングを施すことで光安定性を確保する方法が報告されており(特許文献2)、酸化鉄や酸化チタンなどの遮光剤を製剤に配合することにより光安定性を確保する手法は極めて一般的なものである。
しかしながら、遮光剤は通常フィルムコーティング部分に配合されるため、コーティング工程を製造工程に新しく追加する必要があり、経済的ではない。さらには、遮光剤として使用される酸化鉄は外観の色調を黄色や赤色などへ着色させてしまうことから、患者に好まれない外観品質になる可能性が高い。
また、リナグリプチンは経口の糖尿病治療剤であり、一包化や粉砕、分割など、医療機関におけるハンドリングを考慮すると、包装開封後に起こりうる光に対する分解物の増加は、安全性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、遮光剤を使用せず、フィルムコーティング設計に依存しない、光安定性の高い医薬製剤が望まれている。
特表2009-535376 特開2005-263790
トラゼンタ錠5mg 医薬品インタビューフォーム2020年1月(改訂第15版)
本発明は、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩の光分解を抑制させる効果を持つ光安定化成分(酸化チタンや酸化鉄などの遮光剤を除く)が配合された、医薬製剤を提供することを目的とする。
本発明者らが研究した結果、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬品組成物に、遮光剤ではなく、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、又は第三リン酸カルシウムから選択される1以上の光安定化成分を医薬的に許容される範囲内で添加することで、素錠の状態であっても光分解物の増加が抑制された医薬製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者らが研究した結果、前述の手段によってなる医薬製剤は、優れた光安定性を有することと同時に、熱及び湿度における分解と高湿度保存下の崩壊遅延が起きにくい特徴を有することも見出した。
本発明の製造方法は限定されないが、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩に、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、又は第三リン酸カルシウムから選択される1以上の光安定化成分及び必要に応じて医薬上許容される添加剤を混合し、必要に応じてその一部又は全部を造粒し、さらに錠剤化することにより製造される。光安定化成分は造粒物中に加えてもよく、粉末状態で添加することもできる。なお、素錠として錠剤化した後に追加でフィルムコーティングを施すこともできる。
造粒法としては、乾式造粒法や流動層造粒法又は撹拌造粒法などの湿式造粒法を用いて製造することができる。圧縮成形の方法は特に限定されず、慣用の方法、例えば打錠機を用いて行うことができる。打錠機は、医薬品の製造に使用可能なものであれば限定されず、ロータリー式打錠機や単発打錠機などが使用できる。本発明の光安定化成分を配合することで、リナグリプチン又はその医学的に許容される塩の光安定性を向上させることができる。
本発明により、素錠の状態でも、優れた光安定性を有することを特徴とする、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬製剤が得られる。さらに、同時に熱及び湿度における分解、高湿度保存下の崩壊遅延が起きにくい医薬製剤が得られる。
本発明おいて、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩の光安定化成分としては、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、又は第三リン酸カルシウムのうち1以上が選択できる。
本発明の医薬製剤には、本発明の効果に影響を与えない範囲内であれば、医薬上許容される添加剤を配合してもよい。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤などが挙げられる。これらはそれぞれ1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
例えば賦形剤としては、D-マンニトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコール類、精製白糖、乳糖、ショ糖、マルトース、トレハロースなどの糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等のデンプン類、粉末セルロース、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、無水リン酸水素カルシウム、第三リン酸カルシウム等の無機塩類が挙げられるが、糖アルコール類又は無機塩類が好ましく、特にD-マンニトール及び第三リン酸カルシウムが好ましい。なお、これらは賦形剤以外の機能を有していてもよく、例えば光安定化成分としての機能を有していてもよい。
結合剤としては、コポリビドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アルファー化デンプン、デキストリン等が挙げられるが、特にポリビニルアルコールが好ましい。なお、これらは結合剤以外の機能を有していてもよく、例えば光安定化成分としての機能を有していてもよい。
崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム等が挙げられるが、特にデンプングリコール酸ナトリウムが好ましい。なお、これらは崩壊剤以外の機能を有していてもよく、例えば光安定化成分としての機能を有していてもよい。
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なお、これらは流動化剤以外の機能を有していてもよく、例えば光安定化成分としての機能を有していてもよい。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化油、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられるが、特にフマル酸ステアリルナトリウムが好ましい。なお、これらは滑沢剤以外の機能を有していてもよく、例えば光安定化成分としての機能を有していてもよい。
本発明においては、素錠である医薬製剤を、120万lux・hrの条件で光照射した際に、総類縁物質の増加量が1.2% 以下である。
本発明に係る光安定化成分の添加量は、リナプリブチン又はその医薬的に許容される塩1質量部に対し、0.18~26.2質量部であることが好ましい。なお、光安定化成分が賦形剤としての機能も有する場合には、26質量部以上加えるのが好ましく、結合剤としての機能も有する場合は1質量部以上、崩壊剤としての機能も有する場合は3質量部以上、流動化剤としての機能も有する場合は0.1質量部以上、滑沢剤としての機能も有する場合は0.5質量部以上、それぞれ添加することが好ましい。
本発明においては、素錠である医薬製剤にフィルムコーティングを施すことができる。フィルムコーティングの基剤は医薬上許容されるものであればよく、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂、アミノアルキルメタクリレートコポリマー等のアクリル系樹脂等を使用することができる。また、必要に応じて各種可塑剤、着色剤、凝集防止剤、光沢化剤等も加えることができる。
本発明におけるリナグリプチン又はその医薬的に許容される塩は、リナグリプチンフリー体であることが好ましい。
以下に実施例等を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら限定されるものではない。
製造例1
リナグリプチンとD-マンニトール、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン造粒物、コポリビドン及びステアリン酸マグネシウムを含む配合を標準的な配合とし、その一部を光安定化成分に置き換えた配合例1から4の製剤を製造した。製造スケール2500錠相当量にて各添加剤を秤量し、リナグリプチンと滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム若しくはフマル酸ステアリルナトリウム)を除く、他の全ての添加剤を混合器で混合した。その後、滑沢剤を添加し、再度混合した。最終混合品につき、ロータリー打錠機(菊水製作所製)を用いて、1錠あたり180mg、φ8mmの錠剤に圧縮成形し、医薬品組成物である5mg製剤(素錠)を得た。
Figure 2022012138000001
製造例2
リナグリプチンとD-マンニトール、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン造粒物、コポリビドン及びステアリン酸マグネシウムを含む配合を標準的な配合とし、その一部を光安定化成分に置き換えるか、光安定化成分を追加した配合例5から9の製剤を製造した。製造スケール100錠相当量にて各添加剤を秤量し、リナグリプチンと滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)を除く、他の全ての添加剤を混合器で混合した。その後、滑沢剤を添加した後、再度混合した。最終混合品につき、ロータリー打錠機(菊水製作所製)を用いて、1錠あたり180mg、φ8mmの錠剤に圧縮成形し、医薬品組成物である5mg製剤(素錠)を得た。
Figure 2022012138000002
製造例3
比較対象として、トラゼンタ錠(登録商標)(以下、先発製剤とする)のフィルムコーティング部を剥離し、先発製剤5mg(素錠)を得た。
<製剤の光安定性>
製造例1、2及び3で製した製剤につき、光照射試験(D65ランプ,総照射量120万lux・hr)を実施し、開始時及び光照射後のリナグリプチンの類縁物質量を、HPLCを用いて測定した(n=2)。類縁物質量はリナグリプチン及びその類縁物質由来の総ピーク面積に対する面積百分率%として算出し、算出した各類縁物質の総量を総類縁物質量%として評価した。
Figure 2022012138000003
表3に示すように、配合例1から9の製剤における総類縁物質量の増加量は1.2%以下であり、総類縁物質量の顕著な増加は認められなかった。さらに、先発製剤5mg(素錠)よりも低い値を示した。以上より、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム及び第三リン酸カルシウムはリナグリプチンの光安定性向上に寄与する光安定化成分であることが示された。
<加温又は加湿保存時の安定性>
上記で選ばれた9種類の光安定化成分とリナグリプチンを混合した場合の加温又は加湿保存時の安定性について、リナグリプチン単独の場合も含めて検討した。表4に示す被験試料1から9を調製し、それぞれリナグリプチンとして5mg相当量を遮光ガラス瓶に入れ、40℃75%RH開放条件下及び、60℃気密条件下で1箇月保存した。なお、被検試料4、5、6、7及び8は原薬1質量部に対し添加剤1質量部で添加、その他は同1質量部に対し同5質量部で添加し、混合したものを被検試料とした。配合開始時及び1箇月保存後のリナグリプチンの類縁物質量を、HPLCを用いて測定した。類縁物質量はリナグリプチン及びその類縁物質由来の総ピーク面積に対する面積百分率%として算出し、算出した各類縁物質の総量を総類縁物質量%として評価した。
Figure 2022012138000004
Figure 2022012138000005
表5に示すように、デンプングリコール酸ナトリウム及びフマル酸ステアリルナトリウムは加温又は加湿保存条件で若干の分解が認められたものの、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム及び第三リン酸カルシウムはリナグリプチン単独と同様の総類縁物質量であり、光安定化成分を配合することでリナグリプチンの化学的安定性が、加温又は加湿保存条件においても非常に高くなることが判明した。
<高湿度下の崩壊性>
前述の製造例1、2及び3で製した製剤につき、高湿度条件である25℃90%RH開放における保存時の崩壊時間の推移を評価した(n=3)。開始時及び1週間保存後の製剤につき、崩壊時間(秒)を評価し、それらの差を崩壊遅延時間(秒)とした。
Figure 2022012138000006
表6に示すように、先発製剤5mg(素錠)は4分を超える崩壊遅延が起こるのに対して、配合例1から9の製剤においては1分を超える崩壊遅延は認められなかった。従って、光安定化成分である結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、又は第三リン酸カルシウムはリナグリプチンを含む素錠の崩壊遅延を抑制する効果も有することが判明した。
本発明によれば、素錠の状態であっても、優れた光安定性を有することを特徴とする、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬製剤が製造できる。さらに、同時に熱及び湿度における分解、高湿度保存下の崩壊遅延が起きにくい、リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬製剤が製造できる。

Claims (4)

  1. リナグリプチン又はその医薬的に許容される塩を含む錠剤に、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、又は第三リン酸カルシウムから選択される1以上の光安定化成分を添加した、120万Lux・hrの光照射後における総類縁物質の増加量が1.2%以下である素錠。
  2. 光安定化成分がいずれか一つである請求項1に記載の素錠。
  3. 光安定化成分の添加量がリナプリブチン又はその医薬的に許容される塩1質量部に対し、0.18~26.2質量部である請求項1又は2に記載の素錠。
  4. さらにフィルムコーティングを施した請求項1から3のいずれかに記載の素錠。
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