JP2022007948A - 熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルム - Google Patents

熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】半導体素子の剥離を比較的抑制することができ、かつ、硬化後の放熱性が比較的高い熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルムを提供する。【解決手段】基材層1と、基材層上に粘着剤層2が積層されたダイシングテープ10と、ダイシングテープ10の粘着剤層上に積層された熱硬化性シート3と、を備えるダイシングダイボンドフィルム20において、熱硬化性シートは、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、導電性粒子とを含む。導電性粒子は、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含み、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルムに関する。
従来、半導体装置の製造において半導体素子を金属リードフレーム等の被着体に接着する方法(ダイボンディング法)として、熱硬化性シートを用いることが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、熱硬化性シートとして、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含むものが開示されている。
このような方法においては、例えば、半導体ウェハの一方面(回路形成面とは反対側の面)に熱硬化性シートが貼付された状態で、前記半導体ウェハ及び前記熱硬化性シートがダイシングされることにより、半導体素子が一方面に貼付された熱硬化性シートが複数得られる。
そして、半導体素子が一方面に貼付された熱硬化性シートは、他方面が金属リードフレーム等の被着体に所定温度(例えば、70℃)で仮着された後に、これよりも高い温度(例えば、200℃)で熱硬化されることにより前記被着体に接着される。すなわち、前記半導体素子は、前記熱硬化性シートを介在させた状態で前記被着体に接着される。
特開2019-21813号公報
ところで、半導体素子が一方面に貼付された熱硬化性シートを前記被着体に接着した状態において、前記半導体素子が前記熱硬化性シートから剥離することがある。上記のような剥離が生じると、前記導電性粒子を介した電気伝導及び熱伝導が不十分になるため好ましくない。
そして、上記のような剥離は、前記半導体ウェハ及び前記熱硬化性シートをダイシングしているときに、より顕著に生じるようになる(前記熱硬化シートからの前記半導体素子の飛びがより顕著に生じるようになる)。
しかしながら、前記熱硬化性シートからの前記半導体素子の剥離を抑制することについては、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
また、半導体装置においてパワー半導体素子を用いる場合、パワー半導体素子は数MVA以上もの大電力で使用されるため、大きな発熱量が生じる。
そのため、上記のような熱硬化性シートをパワー半導体素子に用いる場合には、被着体に接着後の熱硬化性シート、すなわち、硬化後の熱硬化性シートは高い放熱性を有することが好ましい。
上記のような発熱の問題は、パワー半導体素子以外の半導体素子を用いた場合でも同様に生じるものの、硬化後の熱硬化性シートの放熱性を向上させることについても、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
そこで、本発明は、半導体素子の剥離を比較的抑制することができ、かつ、硬化後の放熱性が比較的高い熱硬化性シート、及び、該熱硬化性シートを備えるダイシングダイボンドフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討したところ、熱硬化性シートを、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、導電性粒子とを含むものとした上で、前記導電性粒子を、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含むものとし、さらに、熱硬化性シートを、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下とすることにより、半導体素子の剥離が比較的抑制され、かつ、硬化後の放熱性が比較的高くなることを見出して、本発明を想到するに至った。
即ち、本発明に係る熱硬化性シートは、
熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、導電性粒子とを含む熱硬化性シートであって、
前記導電性粒子は、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含み、
100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下である。
斯かる構成によれば、前記導電性粒子が、平均粒子径D50が10μm以下の銀粒子を含んでいるので、前記熱硬化性樹脂を硬化させる程度の温度(例えば、200℃)で、前記銀粒子の外表面を焼結可能な程度まで溶融させることができる。
また、前記銀粒子の平均粒子径D50が0.01μm以上であるので、前記熱硬化性シート中に前記銀粒子が比較的分散され易くなることに加え、前記銀粒子の比表面積が過度に大きくなることにより前記銀粒子の表面が酸化され易くなることを抑制して、前記銀粒子に十分な導電性を確保することができる。
これにより、十分な導電性を有し、かつ、十分に分散させた状態で銀粒子の外表面を焼結可能な程度まで溶融させることができるので、前記銀粒子によって前記導電性粒子どうしを焼結させることができる。
また、断面における前記銀粒子の円形度が0.7以上であるので、前記銀粒子を熱硬化性シート中により十分に分散させることができる。そのため、前記熱硬化性シート中に十分に分散させた前記銀粒子によって、前記導電性粒子どうしを焼結させることができる。
上記により、硬化後において、本発明に係る熱硬化性シートは、十分な導電性を有した状態で放熱性が高いものとなる。
さらに、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下であるので、被着体(例えば、半導体ウェハ)に対する濡れ性を向上させることができ、これにより、前記被着体に対する接着性を比較的十分に確保することができる。
また、熱可塑性樹脂を含んでいるので、100℃における粘度が上記数値範囲となるように比較的容易に調整することができることに加えて、硬化後においては比較的低弾性を有するものとすることができる。
そのため、半導体素子の剥離を比較的抑制することができる。
以上により、本発明に係る熱硬化性シートは、半導体素子の剥離を比較的抑制することができ、かつ、硬化後の放熱性が比較的高いものとなる。
前記熱硬化性シートにおいては、
硬化後の前記熱硬化性シート中における前記導電性粒子の粒子充填率Pが30体積%以上であることが好ましい。
斯かる構成によれば、硬化後の前記熱硬化性シートの放熱性をより一層高くすることができる。
前記熱硬化性シートにおいては、
硬化後における熱伝導率が3W/m・K以上であることが好ましい。
斯かる構成によれば、硬化後の前記熱硬化性シートの導電性をより一層高くすることができる。
前記熱硬化性シートにおいては、
シリコンウェハに対する室温での引き剥がし力が1N/10mm以上であることが好ましい。
斯かる構成によれば、半導体素子の剥離をより一層抑制することができる。
前記熱硬化性シートにおいては、
揮発成分を含み、
前記揮発成分は、水酸基を1個以上含み、かつ、沸点が250℃以上であることが好ましい。
斯かる構成によれば、硬化後の前記熱硬化性シートの放熱性をより一層高くすることができる。
前記熱硬化性シートにおいては、
前記揮発成分は、テルペン化合物であることが好ましい。
斯かる構成によれば、硬化後の前記熱硬化性シートの放熱性をより一層高くすることができる。
本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、
基材層と、
該基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層された熱硬化性シートと、を備え、
前記熱硬化性シートが、上記いずれかの熱硬化性シートである。
斯かる構成によれば、前記ダイシングダイボンドフィルムは、半導体素子の剥離を比較的抑制することができ、かつ、硬化後の放熱性が比較的高い熱硬化性シートを備えるものとなる。
本発明によれば、半導体素子の剥離を比較的抑制することができ、かつ、硬化後の放熱性が比較的高い熱硬化性シート、及び、該熱硬化性シートを備えるダイシングダイボンドフィルムを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムの構成を示す断面図。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
[熱硬化性シート]
本実施形態に係る熱硬化性シートは、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、導電性粒子とを含む。
本明細書において、導電性粒子とは、JIS K 0130(2008)に従って測定した電気伝導率が100μS/cm以下の粒子を意味する。
前記熱硬化性シートの100質量%(質量部)に占める前記熱硬化性樹脂の質量%は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
前記熱硬化性シートの100質量%に占める前記熱可塑性樹脂の質量%は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。
前記熱硬化性シートの100質量%に占める前記導電性粒子の質量%は、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、80質量%以上93質量%以下であることがより好ましい。
また、樹脂(熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂)100質量%に占める前記熱硬化性樹脂の質量割合は、30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、及び、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を組み合わせて用いることがより好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、脂肪族変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤としてのフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及び、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。上記フェノール樹脂の中でも、ビフェニル型フェノール樹脂を用いることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂としては、熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂も用いることができる。熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂が挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂におけるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。
熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂においては、熱硬化性官能基の種類に応じて、硬化剤が選ばれる。
熱可塑性樹脂はバインダとして機能する。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、バインダとして熱可塑性樹脂を含んでいるので、100℃における熱硬化性シートの粘度を、後述する20kPa・s以上3000kPa・s以下となるように、比較的容易に調整することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド6やポリアミド6,6等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく、かつ、耐熱性が高いために、熱硬化性シートによる接続信頼性が確保し易くなるという観点から、アクリル樹脂が好ましい。
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を質量割合で最も多いモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の成分に由来するモノマー単位を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリルニトリル等の官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマー等が挙げられる。
上記アクリル樹脂は、カルボキシル含有アクリルゴムであることが好ましい。
前記導電性粒子は、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、厚さ方向の切断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含む。
前記導電性粒子が、平均粒子径D50が10μm以下の銀粒子を含んでいることにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させる程度の温度(例えば、200℃)で、前記銀粒子の外表面を焼結可能な程度まで溶融させることができる。
また、前記銀粒子の平均粒子径D50が0.01μm以上であることにより、前記熱硬化性シート中に前記銀粒子が比較的分散され易くなることに加えて、前記銀粒子の比表面積が過度に大きくなることにより前記銀粒子の表面が酸化され易くなることを抑制して、前記銀粒子に十分な導電性を確保することができる。
これにより、十分な導電性を有し、かつ、比較的分散させた状態で前記銀粒子の外表面を焼結可能な程度まで溶融させることができるので、前記銀粒子によって前記導電性粒子どうし(前記導電性粒子が銀粒子のみである場合には、銀粒子どうし)を焼結させることができる。
また、断面における前記銀粒子の円形度が0.7以上であるので、前記銀粒子を熱硬化性シート中により十分に分散させることができる。そのため、前記熱硬化性シート中に十分に分散させた前記銀粒子によって、前記導電性粒子どうし(前記導電性粒子が銀粒子のみである場合には、銀粒子どうし)を焼結させることができる。
上記により、硬化後において、本発明に係る熱硬化性シートは、十分な導電性を有した状態で放熱性が高いものとなる。
前記銀粒子の平均粒子径D50は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、厚さ方向の切断面における前記銀粒子の円形度は、0.8以上であることが好ましい。
なお、円形度の上限値は1である。
銀粒子の平均粒子径D50は、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、マイクロトラックMT3000IIシリーズ)を用いて、体積基準にて測定することができる。
円形度とは、面積の値及び周囲長の値を基に形状の複雑さを求める指標である。円形度は、面積をS、周囲長をLとすると、4πS/Lで表される。円形度の値が1の場合には真円形状となり、円形度の値が1より小さいほど、円から遠ざかる形状となる。
円形度は、前記熱硬化性シートを厚さ方向に切断して、その切断面のSEM画像を撮像し、粉体画像解析装置(セイシン企業社製、PITA-3)を用いて、撮像した前記SEM画像を解析することにより(具体的には、「Image J」等のような画像解析ソフトで解析することにより)得ることができる。
粉体画像解析装置による解析は、SEM画像中において、ランダムに選んだ10個の銀粒子について行い、円形度は、10個の銀粒子について得られた円形度の値を算術平均することにより求めることができる。
なお、前記熱硬化性シートに銀粒子以外の導電性粒子が含まれる場合には、反射電子像を用い、組成の違いで明暗がつくように観察することにより、銀粒子と銀粒子以外の導電性粒子とを区別することができる。
銀粒子は、銀元素及び不可避的不純物元素として含まれる他の元素(金属元素など)で構成された銀粒子であってもよいし、表面処理(例えば、シランカップリング処理)が施された銀粒子であってもよい。銀粒子の表面処理剤としては、脂肪酸系やアミン系、エポキシ系などの被覆剤が挙げられる。脂肪酸系被覆剤で表面処理された銀粒子としては、三井金属鉱業社製の、HP02、HP02A等が挙げられ、エポキシ系被覆剤で処理された銀粒子としては、三井金属鉱業社製のHP02Aの被覆剤変更品(エポキシ被覆品)等が挙げられる。
本実施形態に係る熱硬化性シートでは、エポキシ系被覆剤で表面処理された銀粒子を用いることが好ましい。上記したように、本実施形態に係る熱硬化性シートは、熱硬化性樹脂を含んでいる。そのため、銀粒子として、エポキシ系被覆剤で表面処理された銀粒子を用いた場合には、該銀粒子は熱硬化性シート中において熱硬化性樹脂と比較的高い親和性を示すようになり、熱硬化性シート中により分散され易くなる。そして、熱硬化性シート中により分散され易くなる分だけ、前記銀粒子を熱硬化性シート中により多く含有させることができるようになるため、熱硬化性シートの熱伝導性(放熱性)を向上させることができる。なお、銀粒子の表面処理剤がエポキシ系被覆剤である場合、熱硬化性シートに含まれる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。このようにすれば、前記銀粒子と前記熱硬化性樹脂との親和性をより高めることができるので、前記銀粒子を、より一層、熱硬化性シート中に分散させることができる。その結果、熱硬化性シートの熱伝導性(放熱性)をより一層向上させることができる。
前記導電性粒子は、銀粒子以外に、ニッケル粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、コア(核)となる金属粒子の表面を金または銀等の金属でメッキした粒子(以下、メッキ金属粒子ともいう)、及び、コア(核)となる樹脂粒子の表面を金属で被覆した粒子(以下、金属被覆樹脂粒子ともいう)等を含んでいてもよい。これらの導電性粒子は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わせて用いられてもよい。
メッキ金属粒子としては、例えば、ニッケル粒子又は銅粒子を核とし、その核の表面を金や銀等の貴金属でメッキした粒子を用いることができる。
金属被覆樹脂粒子としては、例えば、樹脂粒子を核とし、その核の表面を、ニッケルや金等の金属で被覆した粒子を用いることができる。
本実施形態に係る熱硬化性シートが銀粒子以外の導電性粒子を含む場合、その導電性粒子としては、メッキ金属粒子を用いることが好ましく、メッキ金属粒子としては、銅粒子を核とし、その核の表面を銀でメッキした粒子(銀被覆銅粒子)を用いることが好ましい。銀被覆銅粒子の市販品としては、三井金属産業社製の商品名1200YPやDOWAエレクトロニクス社製の商品名AOP-TCY-2(EN)等が挙げられる。
本実施形態に係る熱硬化性シートが銀粒子以外の導電性粒子を含む場合、導電性粒子の100質量%に占める銀粒子の質量%は、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
銀以外の導電性粒子の形状としては、例えば、フレーク状、針状、フィラメント状、球状、扁平状(鱗片状を含む)のものを用いることができるが、これらの中でも、比表面積が大きいことにより、前記銀粒子との接触面積を大きくできる観点から、扁平状のものを用いることが好ましい。なお、上述した、三井金属産業社製の商品名1200YPは、扁平状の導電性粒子である。
銀粒子以外の導電性粒子は、平均粒子径D50が0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.05μm以上10μm以下であることがより好ましい。
銀粒子以外の導電性粒子の平均粒子径D50も、上述した銀粒子の平均粒子径D50と同様にして測定することができる。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めたりする観点から、熱硬化触媒を含有していてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下である。
100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下であることにより、被着体(例えば、半導体ウェハ)に対する濡れ性を向上させることができ、これにより、前記被着体に対する接着性を比較的十分に確保することができる。
そのため、半導体素子の剥離を比較的抑制することができる。
特に、前記熱硬化性シートを半導体ウェハの一方面に貼付した状態でダイシングして、半導体素子が一方面に貼付された熱硬化性シートを複数得たときに、前記熱硬化性シートからの前記半導体素子の剥離を比較的抑制することができる。
100℃における粘度は、レオメータ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、回転式レオメータ HAAKE MARS)を用いて評価することができる。具体的には、昇温速度10℃/minにて、30℃から180℃まで昇温させたときに、100℃の指示値を読み取ることにより得ることができる。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、揮発成分を含んでいてもよい。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、前記熱硬化性シートに含まれる有機成分(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、揮発成分)の総質量に対して、前記揮発成分を5質量%以上50質%以下含んでいることが好ましく、10質量%以上40質量%以下含んでいることがより好ましい。
揮発成分としては、水酸基を1個以上含み、かつ、沸点が250℃以上である有機化合物を挙げることができる。該有機化合物の沸点は、350℃以下であることが好ましい。このような有機化合物としては、テルペン化合物が挙げられる。揮発成分としては、テルペン化合物の中でも、下記式(1)で表されるイソボルニルシクロヘキサノールが好ましい。なお、イソボルニルシクロヘキサノールは、沸点が308~318℃の有機化合物であり、200mL/minの窒素ガス気流下で、10℃/minの昇温条件にて、室温(23±2℃)から600℃まで昇温したときに、100℃以上から大きく重量減少し、245℃で揮発消失する(それ以上の重量減少が認められなくなる)という性質を有するとともに、25℃において1000000mPa・sもの極めて高い粘度を示すものの、60℃において1000mPa・s以下という比較的低い粘度を示すという性質を有する。なお、重量減少は、測定開始温度(室温)における重量減少率を0%とした場合の値である。
このように、イソボルニルシクロヘキサノールは、25℃において上記のごとく極めて高い粘度を示すため、室温においてシート形状を維持することができるものの、60℃では上記のごとく比較的低い粘度を示すようになるので、タック性を有するようになる。すなわち、イソボルニルシクロヘキサノールを含む熱硬化性シートは、室温においてはシート形状の維持性に優れ、60℃以上の温度においてはタック性を有するものとなる。
ここで、熱硬化性シートの一方面に貼付された半導体素子を金属リードフレーム等にマウントする際には、通常、60~80℃の温度で、熱硬化性シートを介して半導体素子を金属リードフレーム等の被着体に仮着(仮固定)させるが、イソボルニルシクロヘキサノールは上記のごとく60℃以上においてタック性を有するようになるので、本実施形態に係る熱硬化性シートが揮発成分としてイソボルニルシクロヘキサノールを含む場合、熱硬化性シートは、金属リードフレーム等の被着体への仮着性がより向上されたものとなる。すなわち、仮着した状態において、半導体素子の取り付け位置がずれたり、被着体からの熱硬化性シートの浮き上がりが抑制されるようになる。
そのため、熱硬化性シートを熱硬化させて半導体素子を被着体に接着させるときに、信頼性高く接着させることができる。
Figure 2022007948000002
本実施形態に係る熱硬化性シートは、硬化前の前記熱硬化性シート中における前記導電性粒子の粒子充填率Pが30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることがさらに好ましい。
前記粒子充填率Pは、70体積%以下であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましい。
前記粒子充填率Pが上記数値範囲を満たすことにより、硬化後の熱硬化性シートの放熱性をより一層高くすることができる。
前記粒子充填率Pは、以下の手順に従って求めることができる。

(1)硬化後の熱硬化性シートを機械研磨して断面を露出させ、この露出した断面について、イオンポリッシング装置(例えば、日本電子株式会社製、商品名:クロスセクションポリッシャSM-09010)を用いてイオンポリッシングを行う。
(2)イオンポリッシングした露出断面における任意の断面領域内のSEM画像(走査型電子顕微鏡による像)を、電界放出形走査電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジー社製、商品名SU8020)を用いて撮像し、反射電子像を画像データとして得る。撮像条件は、加速電圧を5kVとし、倍率を5000倍とすることができる。
(3)得られた画像データに対し、画像解析ソフト(例えば、ImageJ)を使用して、金属部分と樹脂部分とに2値化する自動2値化処理を行う。
(4)2値化後の画像から導電性粒子部分の合計面積と全体(導電性粒子部分+樹脂部分)の面積とを求め、導電性粒子部分の合計面積を全体の面積で除することにより、硬化後の熱硬化性シートについて、導電性粒子の粒子充填率Pを求める。

なお、導電性粒子の粒子充填率Pは、イオンポリッシングした露出断面における5箇所の断面領域について求めた充填率を算術平均することにより求めることが好ましい。
本実施形態に係る熱硬化性シートの厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、熱硬化性シートの厚さは、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。
熱硬化性シートの厚さが150μm以下であることにより、熱伝導性(放熱性)をより向上させることができる。
熱硬化性シートの厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、硬化後における熱伝導率が3W/m・K以上であることが好ましく、10W/m・K以上であることがより好ましい。
硬化後における熱伝導率が上記数値範囲を満たすことにより、硬化後の前記熱硬化性シートの導電性をより一層高くすることができる。
なお、本実施形態に係る熱硬化性シートでは、硬化後における熱伝導率の上限値は、通常、100W/m・Kである。
硬化後における熱伝導率は、本実施形態に係る熱硬化性シートを、プレッシャークッカー装置にて、0.5MPaの圧力をかけながら、200℃で1時間処理して熱硬化させ、熱硬化させた熱硬化性シートについて、下記式により算出することができる。
Figure 2022007948000003
上記式における、熱拡散率(m/s)は、TWA法(温度波熱分析法、測定装置:アイフェイズモバイル、アイフェーズ社製)により測定することができる。
また、上記式における、比熱(J/g・℃)は、DSC法により測定することができる。比熱測定は、エスアイアイナノテクノロジー社製のDSC6220を用い、昇温速度10℃/min、温度範囲20~300℃の条件で行い、得られたデータを基に、JISハンドブック(比熱容量測定方法K-7123)に記載された方法で、比熱を算出することができる。
さらに、上記式における、比重は、アルキメデス法により測定することができる。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、シリコンウェハに対する室温(23±2℃)での引き剥がし力が1N/10mm以上であることが好ましく、5N/10mm以上であることがより好ましく、10N/10mm以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係る熱硬化性シートは、シリコンウェハに対する室温(23±2℃)での引き剥がし力が20N/10mm以下であることが好ましく、15N/10mm以下であることがより好ましい。
シリコンウェハに対する引き剥がし力が上記数値範囲を満たすことにより、ダイシング中における半導体素子の剥離をより一層抑制することができる。
シリコンウェハに対する室温での引き剥がし力は、引張試験機(商品名:オートグラフAG-X、島津製作所製)を用い、室温(23±2℃)、剥離角度180°、および引張速度300mm/minの条件での剥離試験により測定することができる。
具体的には、以下のようにして測定することができる。

(1)シリコンウェハ(ベアウェハ)の一表面に熱硬化性シートを重ね合せて積層体を得る。
(2)該積層体を70℃に加温したホットプレート上に配する。なお、前記積層体は、シリコンウェハの表面がホットプレートの表面と当接するように配する。
(3)圧着ローラ(ローラ質量は2kg)を用いて、前記積層体をプレスすることにより、シリコンウェハと熱硬化性シートとを貼り合せた状態とし、ホットプレート上に2分間放置する。
(4)放置した前記積層体をホットプレートから取り出し、室温(23±2℃)にて20分間放置することにより試験体を得る。
(5)前記試験体について、上記の引張試験機を用いて、上記の条件にて剥離試験を行うことにより、シリコンウェハに対する室温でも引き剥がし力を測定する。
本実施形態に係る熱硬化性シートは、必要に応じて、1種又は2種以上の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、フィラー分散剤、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
[ダイシングダイボンドフィルム]
次に、図1を参照しながら、ダイシングダイボンドフィルム20について説明する。なお、以下の説明において、熱硬化性シートと重複する部分については、その説明は繰り返さない。
図1に示したように、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、基材層1と、基材層1上に粘着剤層2が積層されたダイシングテープ10と、ダイシングテープ10の粘着剤層2上に積層された熱硬化性シート3と、を備える。
ダイシングダイボンドフィルム20では、熱硬化性シート3上に半導体素子が貼付される。半導体素子は、ベアウェハであってもよい。
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20に貼付されたベアウェハは、ブレードダイシング、DBG(Dicing Before Grinding)、または、SDBG(Stealth Dicing Before Grinding)等により複数のベアチップへと割断される。そして、前記のごとき割断時に、ベアウェハと共に、熱硬化性シート3も割断される。熱硬化性シート3は、個片化された複数のベアチップのサイズに相当する大きさに割断される。これにより、複数の熱硬化性シート3付ベアチップを得ることができる。
ダイシングダイボンドフィルム20の熱硬化性シート3は、前記したように、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、導電性粒子とを含む熱硬化性シートであって、前記導電性粒子は、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含み、粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下である熱硬化性シートである。
基材層1は、粘着剤層2と、粘着剤層2上に積層された熱硬化性シート3とを支持する。基材層1は樹脂を含む。樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体等のエチレンをモノマー成分とする共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体);セルロース系樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。
基材層1は、前記した樹脂を1種含むものであってもよいし、前記した樹脂を2種以上含むものであってもよい。
基材層1の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマー(例えば、プラスチックフィルム)が挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後に、その基材層1を熱収縮させることにより、粘着剤層2と熱硬化性シート3との接着面積を低下させて、半導体チップ(半導体素子)の回収の容易化を図ることができる。
基材層1の表面には、隣接する層との密着性、保持性等を高めるために、一般的な表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的または物理的処理、下塗剤によるコーティング処理等が挙げられる。
基材層1の厚さは、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、10μm以上500μm以下であることがより好ましく、20μm以上300μm以下であることがさらに好ましく、30μm以上200μm以下であること特に好ましい。
基材層1の厚さは、上記した熱硬化性シート3の厚さと同様にダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて求めることができる。
基材層1は、各種添加剤を含んでいてもよい。各種添加剤としては、例えば、着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤等が挙げられる。
粘着剤層2の形成に用いる粘着剤としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤を用いることができる。前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶媒による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1~30、特に、炭素数4~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等を用いることができる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等を用いることができる。
なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくとも一方を意味し、本発明の(メタ)は全て前記した内容と同様の内容を意味する。
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40質量%以下が好ましい。
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、必要に応じて、多官能性モノマー等も共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30質量%以下が好ましい。
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合することにより得ることができる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等のいずれの方法で行ってもよい。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さい方が好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、30万以上であることが好ましく、40万~300万程度であることがより好ましい。
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるために、外部架橋剤を適宜添加することができる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等の架橋剤を添加して反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランス及び粘着剤としての使用用途を考慮して、適宜決定される。一般的には、外部架橋剤は、前記ベースポリマー100質量部に対して、5質量部程度以下配合することが好ましく、0.1~5質量部配合することがより好ましい。
粘着剤は、前記成分の他に、必要に応じて、各種公知の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
粘着剤層2は放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させて、その粘着力を容易に低下させることができる。すなわち、粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成することにより、ダイシング前においては、粘着剤層2放射線を照射せずに熱硬化性シート3を粘着剤層2に十分に接着させておき、ダイシング後においては、粘着剤層2に放射線を照射して粘着剤層2の粘着力を低下させることにより、半導体チップ(半導体素子)を容易にピックアップ(回収)することができる。
放射線硬化型粘着剤は、炭素-炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ、粘着性を示すものであれば、特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。
前記放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記放射線硬化性のオリゴマー成分としては、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等の種々のオリゴマーが挙げられ、その分子量が100~30000程度の範囲のものが好適である。前記放射線硬化性のモノマー成分や前記放射線硬化性のオリゴマー成分の配合量は、放射線照射後に、粘着剤層2の粘着力を好適に低下できる量とすることが好ましい。一般的には、前記放射線硬化性のモノマー成分や前記放射線硬化性のオリゴマー成分の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、例えば、5~500質量部であることが好ましく、40~150質量部であることがより好ましい。
また、放射線硬化型粘着剤としては、上記した添加型の放射線硬化型粘着剤の他に、ベースポリマーとして、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または、前記オリゴマー成分等の含有量が比較的少ない。そのため、前記内在型の放射線硬化側粘着剤を用いた場合には、経時的に前記オリゴマー成分等が粘着剤層2中を移動することが抑制される。その結果、粘着剤層2を比較的安定した層構造を有するものとすることができる。
前記炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素-炭素二重結合を有し、かつ、粘着性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。このようなベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、上記したアクリル系ポリマーが挙げられる。
前記アクリル系ポリマーへの炭素-炭素二重結合の導入法は特に制限されず、種々の方法を採用することができるものの、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖に導入する方法を採用すると、分子設計が容易となる。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合させた後、この官能基と反応し得る官能基及び炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線硬化性を維持した状態で、縮合反応または付加反応させる方法が挙げられる。
これら官能基の組み合わせの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組み合わせの中でも、反応追跡の容易さの点から、ヒドロキシ基とイソシアネート基との組み合わせが好適である。また、これら官能基の組み合わせは、前記炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組み合わせであれば、いずれの官能基がアクリル系ポリマー側または前記炭素-炭素二重結合を有する化合物側にあってもよいが、上記の好ましい組み合わせの場合、アクリル系ポリマーがヒドロキシ基を有し、前記炭素-炭素二重結合を有する化合物がイソシアネート基を有することが好適である。この場合、炭素-炭素結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、上記したヒドロキシ基含有モノマーや2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素-炭素二重結合を有するベースポリマー(特に、アクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分や前記放射線硬化性のオリゴマー成分を配合することもできる。前記放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常、ベースポリマー100質量部に対して30質量部以下の範囲で含まれており、1~10質量部以下の範囲で含まれていることが好ましい。
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテ系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、例えば、0.05~20質量部である。
また、放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60-196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が生じる場合には、放射線硬化型の粘着剤層2の表面について何らかの方法で酸素(空気)を遮断することが望ましい。例えば、前記粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
粘着剤層2の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止と、熱硬化性シート3の固定保持性とを両立させる点から、1~50μmであることが好ましく、2~30μmであることがより好ましく、5~25μmであることがさらに好ましい。
なお、本発明に係る熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルムは、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルムは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る熱硬化性シート及びダイシングダイボンドフィルムは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
ハイブリッドミキサー(株式会社キーエンス製、商品名:HM-500)を用いて、以下の表1の実施例1の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を3分間撹拌して、ワニスを調製した。このワニスを離型処理フィルム(三菱ケミカル株式会社製、商品名:MRA38、厚さ38μm)の一方面に塗布した後に、温度100℃で2分間乾燥させて、厚さ30μmの熱硬化性シートを得た。
なお、以下の表1に示した各材料としては、以下のものを用いた。

・フェノール樹脂
明和化成社製のMEHC-7851S(ビフェニル型フェノール樹脂、フェノール当量209g/eq)
・固体エポキシ樹脂
新日鉄住金化学社製のKI-3000-4(クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq)
・液状エポキシ樹脂
DIC社製のEXA-4816(脂肪族変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能型)、エポキシ当量403g/eq)
・銀(Ag)被覆銅(Cu)粒子
三井金属鉱業製の1200YP(扁平銅粒子に銀粒子を10質量%コートしたもの、平均粒子径3.5μm、不定形)
・銀(Ag)粒子
三井金属鉱業社製のHP02A(脂肪酸系被覆剤で表面処理された銀粒子)
・揮発材(イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH))
日本テルペン化学製のMTPH
・アクリル樹脂溶液
ナガセケミテック社製のテイサンレジンSG-70L(溶剤としてMEK及びトルエンを含有、固形分12.5%、ガラス転移温度-13℃、質量平均分子量90万、酸価5mg/KOH、カルボキシル基含有アクリル共重合体)
・カップリング剤
信越化学工業社製のKBE-846(ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
・触媒
北興化学工業社製のTPP-K(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)
・溶剤
メチルエチルケトン(MEK)

また、導電性粒子(銀被覆銅粒子及び銀粒子)の100質量部に占める銀被覆銅粒子及び銀粒子の質量割合、熱硬化性シートの100質量部に占めるエポキシ樹脂(固体及び液状)の質量割合、熱硬化性シートの100質量部に占めるフェノール樹脂の質量割合、熱硬化性シートの100質量部に占めるアクリル樹脂の質量割合、及び、有機成分(フェノール樹脂、エポキシ樹脂(固体及び液状)、アクリル樹脂溶液、イソボルニルシクロヘキサノール)の100質量部に占めるイソボルニルシクロヘキサノールの質量割合について、以下の表2に示した。
[実施例2]
銀粒子を三井金属鉱業社製のHP02Aの被覆剤変更品(エポキシ被覆品)とし、触媒としてのTPP-Kを含ませず、以下の表1の実施例2の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る熱硬化性シートを得た。
[実施例3]
触媒としてのTPP-Kを含ませず、以下の表1の実施例3の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る熱硬化性シートを得た。
[実施例4]
銀粒子を三井金属鉱業社製のHP02とし、触媒としてのTPP-Kを含ませず、以下の表1の実施例4の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る熱硬化性シートを得た。
[実施例5]
銀粒子をDOWAエレクトロニクス社製のAG-2-8F(脂肪酸系被覆剤で表面処理された銀粒子)とし、銀(Ag)被覆銅(Cu)粒子をDOWAエレクトロニクス社製のAOP-TCY-2(EN)とし、以下の表1の実施例5の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る熱硬化性シートを得た。
[比較例1]
銀粒子を三井金属鉱業社製のSPH02J(凝集ナノAg粒子、不定形、凝集体の平均粒子径1.8μm)とし、触媒としてのTPP-Kを含ませず、以下の表1の比較例1の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る熱硬化性シートを得た。
[比較例2]
銀粒子を三井金属鉱業社製のSPH02Jとし、以下の表1の比較例2の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る熱硬化性シートを得た。
[比較例3]
銀粒子を三井金属鉱業社製のSPH02Jとし、揮発材(イソボルニルシクロヘキサノール)を含ませずに、以下の表1の比較例3の項に示した質量割合で各材料を含む混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る熱硬化性シートを得た。
Figure 2022007948000004
<銀(Ag)粒子の平均粒子径D50
配合前に、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、マイクロトラックMT3000IIシリーズ)を用いて測定した。
各例に係る熱硬化シートに含ませた銀粒子の平均粒子径D50を測定した結果を、以下の表2に示した。
<銀(Ag)粒子の円形度>
各例に係る熱硬化性シートを厚さ方向に切断して、その切断面のSEM画像を撮像し、粉体画像解析装置(セイシン企業社製、PITA-3)を用いて、撮像した前記SEM画像を解析することにより得た。
粉体画像解析装置による解析は、前記SEM画像中において、ランダムに選んだ10個の銀粒子について、行い、円形度は、10個の銀粒子について得られた円形度の値を算術平均することにより求めた。
なお、各例に係る熱硬化性シートにおいて、銀粒子と銀(Ag)被覆銅(Cu)粒子とは、反射電子像を用い、組成の違いで明暗がつくように観察することにより区別した。
各例に係る熱硬化性シートについて、銀粒子の円形度を求めた結果を、以下の表2に示した。
<導電性粒子の充填率>
以下の手順にしたがって、各例に係る熱硬化性シートについて粒子充填率Pを求めた。

(1)硬化後の熱硬化性シートを機械研磨して断面を露出させ、この露出した断面について、イオンポリッシング装置(日本電子株式会社製、商品名:クロスセクションポリッシャSM-09010)を用いてイオンポリッシングを行う。
(2)イオンポリッシングした露出断面における任意の断面領域内のSEM画像(走査型電子顕微鏡による像)を、電界放出形走査電子顕微鏡SU8020(日立ハイテクノロジー社製)を用いて撮像し、反射電子像を画像データとして得る。撮像条件は、加速電圧を5kVとし、倍率を5000倍とする。
(3)得られた画像データに対し、画像解析ソフトImageJを使用して、金属部分と樹脂部分とに2値化する自動2値化処理を行う。
(4)2値化後の画像から金属部分の合計面積と全体(金属部分+樹脂部分)の面積とを求め、金属部分の合計面積を全体の面積で除することにより、硬化後の熱硬化性シートについて、導電性粒子の粒子充填率Pを求める。

なお、導電性粒子の粒子充填率Pは、イオンポリッシングした露出断面における5箇所の断面領域について求めた粒子充填率を算術平均することにより求めた。
各例に係る熱硬化性シートについて、導電性粒子の粒子充填率Pを求めた結果を、以下の表2に示した。
<熱硬化性シートの100℃における粘度>
各例に係る熱硬化性シートの100℃における粘度は、レオメータ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、回転式レオメータ HAAKE MARS)を用いて評価した。具体的には、昇温速度10℃/minにて、30℃から180℃まで昇温させたときに、100℃の指示値を読み取ることにより行った。
各例に係る熱硬化性シートについて、100℃における粘度を求めた結果を、以下の表2に示した。
<熱硬化性シートの熱伝導率>
各例に係る熱硬化性シートを、プレッシャークッカー装置にて、0.5MPaの圧力をかけながら、200℃で1時間処理して熱硬化させた。熱硬化させた各例に係る熱硬化性シートについて、下記式により熱伝導率を算出した。
Figure 2022007948000005
熱拡散率α(m/s)は、TWA法(温度波熱分析法、測定装置:アイフェイズモバイル、アイフェーズ社製)により測定した。
比熱C(J/g・℃)は、DSC法により測定した。比熱測定は、エスアイアイナノテクノロジー社製のDSC6220を用い、昇温速度10℃/min、温度範囲20~300℃の条件下で行い、得られたデータを基に、JISハンドブック(比熱容量測定方法K-7123)に記載された方法で比熱を算出した。
比重は、アルキメデス法により測定した。
各例に係る硬化後の熱硬化性シートについて、熱伝導率を算出した結果を以下の表2に示した。
<シリコンウェハに対する引き剥がし力>
各例に係る熱硬化性シートについて、シリコンウェハに対する粘着力を測定した。シリコンウェハに対する引き剥がし力は、室温(23±2℃)にて測定した。シリコンウェハに対する引き剥がし力は、引張試験機(商品名:オートグラフAG-X、島津製作所製)を用い、室温(23±2℃)、剥離角度180°、および引張速度300mm/minの条件での剥離試験により測定した。
具体的には、以下のようにして測定した。

(1)シリコンウェハ(ベアウェハ)の一表面に熱硬化性シートを重ね合せて積層体を得る。
(2)該積層体を70℃に加温したホットプレート上に配する。なお、前記積層体は、シリコンウェハの表面がホットプレートの表面と当接するように配する。
(3)圧着ローラ(ローラ質量は2kg)を用いて、前記積層体をプレスすることにより、シリコンウェハと熱硬化性シートとを貼り合せた状態とし、ホットプレート上に2分間放置する。
(4)放置した前記積層体をホットプレートから取り出し、室温(23±2℃)にて20分間放置することにより試験体を得る。
(5)前記試験体について、上記の引張試験機を用いて、上記の条件にて剥離試験を行うことにより、シリコンウェハに対する室温でも引き剥がし力を測定する。

各例に係る熱硬化性シートについて、シリコンウェハに対する引き剥がし力を測定した結果を、以下の表2に示した。
<ダイシング中の剥離性>
ダイシング中の剥離性の評価は、ダイシングテープの粘着剤層上に熱硬化性シートが積層されたダイシングダイボンドフィルムと、ベアウェハとを用いて行った。
詳しくは、以下の手順にしたがって行った。

(1)押圧手段(圧着ロール)を用いて、前記熱硬化性シート上に、厚さ100μm、直径8インチ(200mm)のSiベアウェハを押圧しながら貼着させる。
(2)フルオートダイシングソー(DISCO社製、FULLY AUTOMATIC DICING SAW、DFD6361)を用い、スピンドル回転数:45000rpm(min-1)、送り速度:30mm/s、ピッチ:5mmという条件で、前記熱硬化性シート及び前記Siベアウェハについてブレードダイシングを行って、ベアチップが積層された複数の熱硬化性シートを得る。このとき、ベアチップが実用上問題となるレベルで熱硬化性シートから剥離しているものが認められない場合には、ダイシング中の剥離性を〇とし、ベアチップが実用上問題となるレベルで剥離しているもの(チップ飛びが生じているもの)が一つでも認められれば、ダイシング中の剥離性を×とする。
なお、前記粘着剤層、ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムは、以下のようにして作製した。
(粘着剤層の作製)
アクリルポリマーの合成
冷却管、窒素導入管、温度計、及び、撹拌装置を備えた反応容器内に、モノマー濃度が約55質量%となるように、下記原料を入れ、窒素気流下で60℃にて10時間重合反応を行った。これにより、アクリルポリマー中間体を合成した。
・2-エチルヘキシルアクリレート(2HEA):100質量部
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):20質量部
・重合開始剤:適量
・重合溶媒:トルエン
合成したアクリルポリマー中間体100質量部と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)1.4質量部とを、ジブチル錫ジラウリレート(0.1質量部)の存在下において、空気気流中で50℃にて60時間付加反応を行って、アクリルポリマーを合成した。
粘着剤層の作製
(1)下記の原料を含む溶液を得て、該溶液に適宜トルエンを加えることによって、粘度が500mPa・sの粘着剤溶液を調製する。
・合成したアクリルポリマー:100質量部
・ポリイソシアネート化合物
(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」):1.1質量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」):3質量部
(2)剥離シートとして、PET系フィルムを用意する。その剥離シートの片面に、アプリケータを使用して上記のごとく調製した粘着剤溶液を塗布する。なお、剥離シート(PET系フィルム)の上記片面には、離型処理としてシリコーン処理が施されている。塗布後、120℃で2分間加熱することにより乾燥処理を施し、厚さ30μmの粘着剤層を前記剥離シート上に作製する。
(ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムの作製)
ダイシングテープの作製
ラミネータを使用して、剥離シート上に作製した粘着剤層の露出面に、厚さ80μmのポリエチレンフィルムからなる支持基材を室温にて貼り合せて、ダイシングテープを作製した。
なお、ダイシングテープの粘着剤層のうち、直径8インチのSiベアウェハの貼り付け予定部分に紫外線を強度300mJ/cmで照射して、前記貼り付け予定部分を紫外線硬化させた。
ダイシングダイボンドフィルムの作製
紫外線硬化させた後の前記ダイシングテープの粘着剤層上に、剥離シートの積層側と反対側の面が当接するように、熱硬化性シートを配し、速度0.8mm/minでラミネータに通し、前記ダイシングテープに前記熱硬化性シートを貼り合せた後、前記剥離シートを取り除くことによって、前記ダイシングテープに前記熱硬化性シートが積層されたダイシングダイボンドフィルムを作製した。
各例に係る熱硬化性シートについて、ダイシング中の剥離性を評価した結果を以下の表2に示した。
Figure 2022007948000006
表2より、各実施例に係る熱硬化性シートは、いずれも、導電性粒子として、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含んでおり、さらに、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下の範囲であることが分かった。
そして、各実施例に係る熱硬化性シートは、いずれも、硬化後における熱硬化性シートの熱伝導率が3W/m・K以上であり、実用上、十分な放熱性を示しているとともに、シリコンウェハに対する引き剥がし力が1.0N/10mm以上と比較的高い値となっており、ダイシング中の剥離性の評価は〇であった。
これに対し、比較例1及び2に係る熱硬化性シートは、銀粒子として、断面における円形度が0.7未満である銀粒子を含んでおり、100℃における粘度が3000kPa・sを上回っていることが分かった。
そして、比較例1及び2に係る熱硬化性シートは、硬化後における熱伝導率が3W/m・K以上であり、実用上、十分な放熱性を示していたものの、シリコンウェハに対する引き剥がし力の値が1.0N/10mmを下回っており、ダイシング中の剥離性の評価は×であった。
また、比較例3に係る熱硬化性シートは、銀粒子として、断面における円形度が0.7未満である銀粒子を含んでおり、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下の範囲であることが分かった。
そして、比較例3に係る熱硬化性シートは、シリコンウェハに対する引き剥がし力が7.63N/10mmと比較的高い値となっており、ダイシング中の剥離性の評価が〇であったものの、熱伝導率の値は1.5W/m・Kであり、実用上、十分な放熱性を示すものではなかった。
この結果から、熱硬化性シートを、導電性粒子として、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含み、かつ、100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下の範囲となるものとすることにより、ダイシング中における半導体素子の剥離を比較的抑制でき、かつ、硬化後の放熱性が比較的高いものとすることができることが分かった。
1 基材層
2 粘着剤層
3 熱硬化性シート
10 ダイシングテープ
20 ダイシングダイボンドフィルム

Claims (7)

  1. 熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、導電性粒子とを含む熱硬化性シートであって、
    前記導電性粒子は、平均粒子径D50が0.01μm以上10μm以下、かつ、断面における円形度が0.7以上である銀粒子を含み、
    100℃における粘度が20kPa・s以上3000kPa・s以下である
    熱硬化性シート。
  2. 硬化後の前記熱硬化性シート中における前記導電性粒子の粒子充填率Pが30体積%以上である
    請求項1に記載の熱硬化性シート。
  3. 硬化後における熱伝導率が3W/m・K以上である
    請求項1または2に記載の熱硬化性シート。
  4. シリコンウェハに対する室温での引き剥がし力が1N/10mm以上である
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱硬化性シート。
  5. 揮発成分を含み、
    前記揮発成分は、水酸基を1個以上含み、かつ、沸点が250℃以上である
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱硬化性シート。
  6. 前記揮発成分は、テルペン化合物である
    請求項5に記載の熱硬化性シート。
  7. 基材層と、
    該基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
    前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層された熱硬化性シートと、を備え、
    前記熱硬化性シートが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱硬化性シートである
    ダイシングダイボンドフィルム。
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