JP2022003258A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速比を最減速側(最ロー変速比)に戻す際に、運転者に違和感や不快感を与えることを抑制可能な車両の制御装置を提供する。【解決手段】エンジンと、無段変速機と、エンジンにより駆動されるオイルポンプと、エンジンと無段変速機との間に設けられた係合機構とを備え、オイルポンプの油圧によって無段変速機の変速比を所定の変速比に変更するように構成された車両の制御装置において、車両が減速中であると判断した場合に、減速度に応じて無段変速機の変速比を最ロー変速比に制御するための所定の目標アイドル回転数を算出し(ステップS1〜S4)、エンジンの回転数が目標アイドル回転数になった後に(ステップS5)、係合機構を解放するニュートラル制御を実行し、かつ変速比を油圧によって最ロー変速比に制御する(ステップS6〜S8)。【選択図】図3

Description

この発明は、エンジンおよび無段変速機を搭載した車両の変速比を制御する装置に関し、特に、減速後に再発進する際の変速制御に関するものである。
特許文献1および特許文献2には、無段変速機を搭載した車両の制御装置が記載されている。特許文献1に記載された制御装置は、エンジンと無段変速機との間に発進クラッチを備え、駆動時には、その発進クラッチを係合し、かつ無段変速機を介して駆動輪にトルクを伝達させるように構成されている。それとは反対に、制動時には、発進クラッチを解放させ、動力伝達を制限するニュートラル制御を実行するように構成されている。また、この特許文献1に記載された制御装置では、停車時までに確実に無段変速機の変速比を最ロー変速比(最減速側)へ戻すように構成されている。具体的には、ニュートラル制御を実行する際に、エンジンによって駆動されるオイルポンプからの油量が最ロー変速比を設定する油量に満たない場合には、アイドル回転数を通常のニュートラル制御時のアイドル回転数(第1アイドル回転数)より高いアイドル回転数(第2アイドル回転数)に制御するように構成されている。
また、特許文献2には、ベルトの耐久性を悪化させることなく、無段変速機の変速比を最減速側に移行させるようにベルト戻し制御を行うように構成された制御装置が記載されている。この特許文献2に記載された制御装置は、シフトポジションセンサが前進走行用のポジション(Dポジション)で停車した際に、エンジンから車軸へ動力を伝達可能にする係合要素に対して減圧制御を開始し、その減圧制御開始後にベルト戻しの制御を実行するように構成されている。具体的には、減圧制御を行うことによりエンジンと無段変速機のプライマリシャフトとを実質的に切り離した状態にし、プライマリプーリの溝幅を増大させると共に、セカンダリプーリの溝幅を減少させるように構成されている。
特開2013−253480号公報 特開2014−126051号公報
従来、減速後の再発進時の駆動力を確保するために、無段変速機の変速比を最減速側(最ロー減速比)に戻す制御が知られている。上述の特許文献1に記載された制御装置では、ニュートラル制御の際に、エンジン駆動により吐出されるオイルポンプからの油量が最ロー変速比へ戻すための必要油量に満たない場合には、アイドル回転数を通常のニュートラル制御時より増大させて、油量を確保するように構成されている。そのため、停車時までに確実に最ロー変速比へ戻すことができる、とされている。一方、この特許文献1に記載された制御装置では、発進クラッチを解放してトルク伝達を遮断するニュートラル制御を実行中に上記のアイドル回転数を増大させている。その場合、運転者は、アクセルペダルから足を離した状態(あるいはアクセルペダルを踏み込んでいない状態)となっている。つまり、ニュートラル制御中に、アイドル回転数を増大させた場合には、アクセルペダルを操作していないのにも拘わらず、エンジン回転数が増大することになり、運転者に不快感あるいは違和感を与えるおそれがある。したがって、このように変速比を最減速側に戻す際の制御については、未だ改善の余地がある。
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、変速比を最減速側(最ロー変速比)に戻す際に、運転者に違和感や不快感を与えることを抑制可能な車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンと、前記エンジンが出力する動力を駆動輪に伝達する無段変速機と、前記エンジンにより駆動されるオイルポンプと、前記エンジンと前記無段変速機との間に設けられた係合機構とを備え、前記オイルポンプの油圧によって前記無段変速機の変速比を所定の変速比に変更するように構成された車両の制御装置において、前記車両を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記車両が減速中か否かを判断し、前記車両が減速中であると判断した場合に、前記車両の減速度に応じて前記無段変速機の変速比を最減速側の変速比である最ロー変速比に制御するための所定の目標アイドル回転数を算出し、前記エンジンの回転数が前記目標アイドル回転数になった後に、前記係合機構を解放するニュートラル制御を実行し、かつ前記無段変速機の変速比を前記油圧によって前記最ロー変速比に制御するように構成されていることを特徴とするものである。
この発明によれば、減速後の再発進に備えて、無段変速機の変速比を最ロー変速比に制御する場合、減速度に応じて目標アイドル回転数を算出し、エンジン回転数がその目標アイドル回転数になった後に、係合機構を解放するニュートラル制御を実行し、かつ最ロー変速比への変速制御を行うように構成されている。そのため、前掲の特許文献1の制御装置のように、ニュートラル制御中に、アイドル回転数が増大することがない。したがって、ニュートラル制御を実行中にアイドル回転数が増大することを要因として、運転者に違和感や不快感を与えることを回避もしくは抑制できる。
この発明の実施形態で対象とする車両の構成の一例を示す図である。 この発明の実施形態における油圧制御回路を説明するための模式図である。 この発明の実施形態における制御の一例を説明するためのフローチャートである。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
図1に、この発明の実施形態で対象とする車両Veの一例を示してある。この図1に示す車両Veは、変速機構として無段変速機(CVT)を搭載した車両であって、図1に示す例では、走行用の駆動力源として用いられるエンジン1により発生させられた動力は、トルクコンバータ2、前後進切換装置3、ベルト式の無段変速機4、減速歯車装置5、差動歯車装置6などを介して、左右の駆動輪7へ伝達される。
トルクコンバータ2は、エンジン1のクランク軸8に連結されたポンプ翼車9、および、トルクコンバータ2の出力側部材に相当するタービン軸10を介して前後進切換装置3に連結されたタービン翼車11を備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、ポンプ翼車9およびタービン翼車11の間にはロックアップクラッチ12が設けられており、このロックアップクラッチ12が完全係合させられることによって、ポンプ翼車9およびタービン翼車11は一体回転させられる。ポンプ翼車9には、無段変速機4を変速制御したり、無段変速機4におけるベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチ12のトルク容量を制御したり、前後進切換装置3における動力伝達経路を切り換えたり、車両Veの動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりするための作動油圧を、エンジン1により回転駆動されることにより発生させる機械式のオイルポンプ13が連結されている。
前後進切換装置3は、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車機構14とを主体として構成されている。トルクコンバータ2のタービン軸10は、遊星歯車機構14のサンギヤ14sに一体的に連結されている。また、無段変速機4の入力軸は、遊星歯車機構14のキャリア14cに一体的に連結されている。一方、キャリア14cとサンギヤ14sとは、前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、遊星歯車機構14のリングギヤ14rは、後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング15に選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、断続装置に相当するものであり、いずれも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
このように構成された前後進切換装置3では、前進用クラッチC1が係合されるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置3は一体回転されることによりタービン軸10が入力軸16に直結され、前進用の動力伝達経路が成立し、前進方向の駆動力が無段変速機4側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合されるとともに前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置3は後進用の動力伝達経路が成立し、入力軸16はタービン軸10に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機4側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1がともに解放されると、前後進切換装置3は動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。
エンジン1は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている。このエンジン1の吸気配管17には、スロットルアクチュエータ18を用いてエンジン1の吸入空気量を電気的に制御する為の電子スロットル弁19が設けられている。
無段変速機4は、入力軸16に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリであるプライマリプーリ20、および、出力軸21に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリであるセカンダリプーリ22と、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ22の間に巻き掛けられた伝動ベルト(以下、単にベルトとも記す)23とを備えており、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ22と伝動ベルト23との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
プライマリプーリ20は、入力軸16に固定された固定シーブ20aと、入力軸16に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動シーブ20bと、それらの間のV溝幅を変更するためのプライマリプーリ20における入力側推力であるプライマリ推力Win(=プライマリ圧Pin×受圧面積)を付与するプライマリ側油圧シリンダ20cとを備えて構成されている。また、セカンダリプーリ22は、出力軸21に固定された固定シーブ22aと、出力軸21に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動シーブ22bと、それらの間のV溝幅を変更するためのセカンダリプーリ22における出力側推力であるセカンダリ推力Wout(=セカンダリ圧Pout×受圧面積)を付与するセカンダリ側油圧シリンダ22cとを備えて構成されている。
そして、プライマリ側油圧シリンダ20cへの油圧であるプライマリ圧Pinおよびセカンダリ側油圧シリンダ22cへの油圧であるセカンダリ圧Poutが油圧制御回路24によって各々独立に調圧制御されることにより、プライマリ推力Winおよびセカンダリ推力Woutが制御される。これにより、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ22のV溝幅が変化して伝動ベルト23の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられると共に、伝動ベルト23が滑りを生じないようにプライマリプーリ20およびセカンダリプーリ22と伝動ベルト23との間の摩擦力(ベルト挟圧力)が制御される。このように、プライマリ推力Winおよびセカンダリ推力Woutが各々制御されることで伝動ベルト23の滑りが防止されつつ実際の変速比γである実変速比γactが目標変速比γtarとされる。なお、入力軸回転速度Ninは入力軸16の回転速度であり、出力軸回転速度Noutは出力軸21の回転速度である。また、図1から把握できるように、入力軸回転速度Ninはプライマリプーリ20の回転速度と同一であり、出力軸回転速度Noutはセカンダリプーリ22の回転速度と同一である。
無段変速機4では、例えばプライマリ圧Pinが高められると、プライマリプーリ20のV溝幅が狭くされて変速比γが小さくされる(すなわち無段変速機4がアップシフトされる)。また、プライマリ圧Pinが低められると、プライマリプーリ20のV溝幅が広くされて変速比γが大きくされる(すなわち無段変速機4がダウンシフトされる)。したがって、プライマリプーリ20のV溝幅が最小とされるところで、無段変速機4の変速比γとして最小変速比γmin(最高速側変速比、最Hi)が形成される。また、プライマリプーリ20のV溝幅が最大とされるところで、無段変速機4の変速比γとして最大変速比γmax(最低速側変速比、最Low)が形成される。
図2は、油圧制御回路24における無段変速機4の駆動を行う部分を示した図である。油圧制御回路24においては、オイルポンプ13から吐出されたオイルが油路25に供給される。この油路25は、無段変速機4のプライマリプーリ20にオイルを供給してプライマリプーリ20に油圧を作用させるとともに、無段変速機4のセカンダリプーリ22にオイルを供給してセカンダリプーリ22に対し油圧を作用させるためのものである。
油圧制御回路24には、オイルポンプ13のオイル吐出圧を無段変速機4の油圧駆動等に用いられる油圧であるライン圧に調圧するプライマリレギュレータバルブ26が設けられている。さらに、油圧制御回路24には、ライン圧を元にしてプライマリプーリ20に作用する油圧(プライマリ圧Pin)を調圧するプライマリプーリコントロールバルブ27と、同じくライン圧を元にしてセカンダリプーリ22に作用する油圧(セカンダリ圧Pout)を調圧するセカンダリプーリコントロールバルブ28とが設けられている。プライマリプーリコントロールバルブ27はリニアソレノイドバルブ29により油圧を利用して駆動制御され、セカンダリプーリコントロールバルブ28はリニアソレノイドバルブ30により油圧を利用して駆動制御される。
セカンダリプーリ22に作用する油圧の調整に関しては、リニアソレノイドバルブ30の駆動制御を通じて、上記油圧の作用に基づきセカンダリプーリ22の軸線方向に生じるセカンダリ推力Woutが、伝動ベルト23とプライマリプーリ20およびセカンダリプーリ22との間にベルト滑りを生じさせることのない値(必要セカンダリ推力)となるように行われる。また、プライマリプーリ20に作用する油圧の調整に関しては、リニアソレノイドバルブ29の駆動制御を通じて、上記油圧の作用に基づきプライマリプーリ20の軸線方向に生じるプライマリ推力Winが目標変速比γtarを実現可能な値となるように行われる。例えば、変速比γをLow側に変更しようとする際にはプライマリ推力Winが小となるようプライマリプーリ20に作用する油圧が小とされ、変速比γをHi側に変更しようとする際にはプライマリ推力Winが大となるようプライマリプーリ20に作用する油圧が大とされる。
また、図1に示すように、エンジン1や無段変速機4などを制御するためのECU(電子制御装置)31が設けられている。そのECU31は、この発明の実施形態における「コントローラ」に相当し、例えばマイクロコンピュータを主体にして構成され、入力されたデータなどの予め記憶させられているデータ等を使用して演算を行い、その演算結果を基に制御指令信号を出力するように構成されている。その入力されるデータは、例えばエンジン回転数、入力軸回転数(タービン回転数)、出力軸回転数、加減速度、運転者のアクセルペダルの操作量であるアクセル開度ACC、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に出力されるブレーキ信号Br、シフトポジション(操作位置)を表す信号、各プーリ20,22への供給油圧である油圧信号などである。
また、出力する制御指令信号は、例えばエンジン1や無段変速機4を制御するための制御指令信号などである。具体的には、エンジン1の出力制御指令信号として、スロットルアクチュエータを駆動して電子スロットル弁の開閉を制御するためのスロットル信号や、燃料噴射装置から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や、点火装置によるエンジン1の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、油圧制御指令信号としては、プライマリ圧Pinを調圧するリニアソレノイドバルブ29を駆動するための指示圧(プライマリ指示圧)や、セカンダリ圧Poutを調圧するリニアソレノイドバルブ30を駆動するための指示圧(セカンダリ指示圧)などが、油圧制御回路24へ出力される。さらに、ECU31は、無段変速機4の変速制御を実施する際に、セカンダリプーリ22にてベルト滑りが発生しないように必要な推力を満たす油圧制御を実施し、かつ目標変速比γtarを実現可能なプライマリ推力Winおよびセカンダリ推力Woutの目標推力とするよう油圧を制御する。
このように構成された車両Veは、減速後に再発進するような場合には、比較的大きな駆動力を要する。そのため、再発進する際には、無段変速機4の変速比を最ロー変速比(最減速側)に戻す制御が実行される。特に、急減速後の再発進時には、無段変速機の変速比が最ロー変速比まで戻っていないことがある。また減速中は、前掲の特許文献1に記載された制御のように発進クラッチなどの原動機と駆動輪との間の係合機構を解放するニュートラル制御を行い、エンジン回転数をアイドル回転数に制御して燃費の向上を図ることが知られている。その一方で、ニュートラル制御に併せて、変速比を最ロー変速比に戻すための油量を確保するためにアイドル回転数を増大させると、ニュートラル制御を実行しているにも拘わらず、エンジン回転数が増大することになり、運転者に対して違和感や不快感を与えることがある。そこで、この発明の実施形態では、無段変速機4の変速比を最ロー変速比に戻す際の違和感や不快感を抑制しつつ変速制御を実行するように構成されている。
図3は、その制御の一例を示すフローチャートであり、先ず、ブレーキONされているか否かを判断する(ステップS1)。これは、上述したように減速中に無段変速機4の変速比を最減速側に戻す際の制御であるから、その前提として車両Veが減速中であるか否かを判断する。なお、ブレーキがONされているか否かは、ECU31に入力されるブレーキ信号Brによって判断する。
このステップS1で肯定的に判断された場合、すなわちブレーキONされている場合には、平均減速度を算出する(ステップS2)。また併せて減速を開始した車速を記録あるいは検出する。これは、後述する目標アイドル回転数を算出するためのステップであって、平均減速度は、例えば加減速センサの値などを用いて算出する。
ついで、減速中の車両Veが急減速であるか否かを判断する(ステップS3)。上述したように、減速度が大きい急減速の場合には、伝動ベルト23が最ローまで戻ってない可能性が高い。したがって、このステップS3では、ステップS2で算出した平均減速度が予め定められた閾値より大きいか否かを判断する。なお、減速開始の車速が高い場合にも、伝動ベルト23が最ローまで戻っていない可能性が高い。したがって、このステップS3では、平均減速度の他、減速開始の車速が所定車速より高い場合にもステップS4へ進んでもよい。
したがって、このステップS3で否定的に判断された場合、すなわち平均減速度が閾値以下である場合には、これ以降の制御を実行することなく図3のルーチンを一旦終了する。それとは反対に、このステップS3で肯定的に判断された場合、すなわち平均減速度が閾値より大きいと判断された場合には、目標アイドル回転数を算出する(ステップS4))。減速中は、通常、コースト走行(惰性走行)の状態であって、燃費の向上を図るために、フューエルカットを行い、エンジン回転数を所定のアイドル回転数に制御する。一方、エンジン回転数を、燃費を重視するためのアイドル回転数に制御すると、無段変速機4の変速比を最ロー変速比へ戻す際の要求圧を発生させることができないことがある。すなわち、オイルポンプ13からの吐出量が不足することがある。
そのため、アイドル回転数を所定の回転数より高くする。言い換えれば、急減速時は、予め定められたアイドル回転数を更新する。その更新する際のアイドル回転数は、平均減速度(および減速開始車速)をパラメータとした予め定めたマップ等から算出する。そのマップは、例えば平均減速度(あるいは減速開始の車速)が大きいほど、アイドル回転数が高く設定される。あるいは減速開始の車速が低い場合であっても、平均減速度が高い場合にも現在の変速比と最ロー変速比との乖離が大きいと想定されるため、アイドル回転数は高く設定される。また、併せて、周囲の交通状況等から比較的早く再加速することが想定される場合には、所定の補正係数を掛けるなどして算出してもよい。
また、フューエルカットからフューエルカット復帰までの急減速中の変速比制御(コーストダウンシフト時)は、プライマリ回転数がアイドル回転数を下回らないように下限値を設定する。これは、ニュートラル制御を実施する際に、エンジン回転数が高くなることを要因として運転者に対して違和感や不快感を与えることを回避するための制御であって、すなわちエンジン回転数を予め増大させておく。
さらに、このステップS4では、併せて、ステップS2で算出した平均減速度(および減速開始の車速)に基づいて、差圧印可時間を算出する。すなわち、最ロー変速比を設定するための要求圧を算出する。
ついで、フューエルカット(F/C)から復帰したか否かを判断する(ステップS5)。つまり、減速して低車速になり、フューエルカットから復帰したか否かを判断する。言い換えれば、エンジン回転数がアイドル回転数まで低下したか否かを判断する。したがって、このステップS5で肯定的に判断された場合、すなわちフューエルカットから復帰した場合には、車両Veの停止前N制御(ニュートラル制御)を実施する(ステップS6)。具体的には、前進用クラッチC1を解放して動力の伝達を遮断する。
そして、その前進用クラッチC1が解放されたか否かを判断する(ステップS7)。このステップS7で肯定的に判断された場合、すなわち前進用クラッチC1が解放された場合には、差圧印可処理を行う(ステップS8)。つまり、最ロー変速比を設定するために、プライマリシーブ圧をほぼ「0」に(ドレイン)し、セカンダリシーブ圧を印可してベルト戻りを実行する。
ついで、ステップS8で実行した差圧印可処理が終了したか否か、あるいは、再加速を検知したか否かを判断する(ステップS9)。この差圧印可処理が終了したか否かの判断は、例えば差圧印可の処理が所定時間経過したか否かによって判断する。最ロー変速比に戻っていると推定できるためである。そして、このステップS9で肯定的に判断された場合、すなわち差圧印可処理が終了したと判断された場合には、ステップS10へ進み、差圧印可処理を終了する。また、この差圧印可処理を実行中にアクセル操作されることにより再加速を検知した場合にも同様にステップS10へ進み、差圧印可処理を終了する。
ステップS10では、差圧印可処理を終了し、従来の制御に戻す。したがって、ステップS4で更新したアイドル回転数を通常時の所定のアイドル回転数に戻す。更新した状態の場合には、クリープ力が通常より大きくなるためである。また併せて、その他、補正した値などをリセットする。
なお、上述のステップS1で否定的に判断された場合、すなわちブレーキONされていない場合には、前回のルーチンで算出した平均減速度をクリアし(ステップS11)、リターンする。また、ステップS3で所定の減速度でない(急減速していない)ことにより否定的に判断された場合、ステップS5でフューエルカットから復帰していないことにより否定的に判断された場合、ステップS7で前進用クラッチC1が解放されていないことにより否定的に判断された場合、あるいは、ステップS9で差圧印可処理が終了していない、かつ再加速を検知していないことにより否定的に判断された場合には、いずれの場合にもこれ以降の制御を実行することなくリターンする。
このように、この発明の実施形態では、ブレーキONされて減速する際には、ベルト戻しを実行する前に、減速度や減速開始の車速に応じて予めアイドル回転数を増大させるように構成されている。すなわちアイドル回転数を補正(更新)するように構成されている。また、そのアイドル回転数が更新された後に、前進用クラッチC1を解放するニュートラル制御を実行し、かつ油圧制御によって無段変速機4の変速比を最減速側(最ロー変速比)に向けて制御するように構成されている。すなわち、この発明の実施形態では、急減速時に、予め目標アイドル回転数を通常時のアイドル回転数より高く設定し、その目標アイドル回転数になった後にニュートラル制御を実行するとともに変速制御を行うように構成されている。そのため、ニュートラル制御中に、アイドル回転数が増大することがない。したがって、ニュートラル制御を実行中にアイドル回転数が増大することを要因として、運転者に違和感や不快感を与えることを回避もしくは抑制できる。
また、急減速中にアイドル回転数を更新して、ニュートラル制御ならびに変速制御を行うように構成されているため、ベルト戻しを比較的早期に完了することができる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上述した実施形態に限定されないのであって、この発明の目的の範囲で適宜に変更して実施してよい。上述した制御例では、急減速時から再発進する際の制御について説明したものの、この制御は、通常の減速時の場合に適用されてもよい。
1 エンジン
4 無段変速機
7 駆動輪
13 オイルポンプ
20 プライマリプーリ
22 セカンダリプーリ
23 伝動ベルト
24 油圧制御回路
25 油路
26 プライマリレギュレータバルブ
27 プライマリプーリコントロールバルブ
28 セカンダリプーリコントロールバルブ
29,30 リニアソレノイドバルブ
31 ECU
C1 前進用クラッチ
Ve 車両

Claims (1)

  1. エンジンと、前記エンジンが出力する動力を駆動輪に伝達する無段変速機と、前記エンジンにより駆動されるオイルポンプと、前記エンジンと前記無段変速機との間に設けられた係合機構とを備え、前記オイルポンプの油圧によって前記無段変速機の変速比を所定の変速比に変更するように構成された車両の制御装置において、
    前記車両を制御するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記車両が減速中か否かを判断し、
    前記車両が減速中であると判断した場合に、前記車両の減速度に応じて前記無段変速機の変速比を最減速側の変速比である最ロー変速比に制御するための所定の目標アイドル回転数を算出し、
    前記エンジンの回転数が前記目標アイドル回転数になった後に、前記係合機構を解放するニュートラル制御を実行し、かつ前記無段変速機の変速比を前記油圧によって前記最ロー変速比に制御するように構成されている
    ことを特徴とする車両の制御装置。
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