JP2021533149A - タンパク質製剤のためのトリプトファン誘導体及びl−メチオニンの使用 - Google Patents

タンパク質製剤のためのトリプトファン誘導体及びl−メチオニンの使用 Download PDF

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Abstract

本開示は、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)及び/又はL−メチオニンを使用してポリペプチドの酸化を防止する、酸化感受性の溶媒接触可能アミノ酸残基を含むポリペプチドを含む方法及び製剤を提供する。【選択図】図2Aおよび図2B

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月8日出願の米国仮出願第62/716,239号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
本開示は、ポリペプチド、N−アセチル−DL−トリプトファン、及びL−メチオニンを含む液体製剤、並びにそれらの製造及び使用のための方法に関する。
モノクローナル抗体(mAbs)を含む治療用タンパク質の生物活性は、コンフォメーション及び生化学的安定性に依存する酸化とは、特に生理学的標的への結合に関与するタンパク質の領域又はエフェクタ機能に重要な領域で酸化が発生する場合、薬物動態又は生物学的活性に悪影響を及ぼす可能性があるために、治療用タンパク質の開発における多くの分解懸念の1つである。加えて酸化は、凝集に対する治療用タンパク質の感受性を変化させ、その結果、免疫原性プロファイルに影響を及ぼす可能性がある。
生物療法における酸化リスク管理のための一般的な解決策は凍結乾燥である。しかしながら、このアプローチは、製造コストを増加させ、かつ薬物の製造及び臨床使用をより複雑にする可能性があるため、常に望ましいとは限らない。酸化しやすいアミノ酸残基の変異を介したタンパク質の再設計もまた、酸化リスクを軽減するための可能なアプローチである。但し、標的突然変異は、酸化の可能性を低下させる可能性がある一方で、その標的に対するタンパク質の結合親和性を低下させて、結果としてタンパク質の効力を低下させる可能性があるため、常に実行可能な解決策であるとは限らない。したがって、製造、保管、及び使用中の治療用タンパク質の酸化を制御するための代替的又は補完的な戦略が必要とされる。
ポリペプチド製剤の例は、国際公開第WO2010/030670号、同第WO2014/160495号、同第WO2014/160497号、及び同第WO2017/117304号に開示されている。
特許出願、特許公報、非特許文献、及びUniProtKB/Swiss−Prot/GenBank受託番号を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
上記及び他の必要性を満たすために、本明細書には、ポリペプチド(例えば、抗体などの治療用ポリペプチド)、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)、及びL−メチオニンを含む液体製剤が開示される。ここで、NAT及びL−メチオニンは、ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基(例えば、トリプトファン残基、メチオニン残基等)の酸化を低減又は防止するのに充分な量で提供される。本開示は、少なくとも部分的に、NATの添加が酸化ストレス中に2つの例示的抗体の可変領域トリプトファン残基を保護するのに有効であった一方で、NATの包含が酸化に対してFcメチオニン残基を感作したという発見に基づく。しかしながら、NATを含む製剤へのL−メチオニンの添加は、両方の例示的抗体の酸化からトリプトファン及びメチオニン残基の両方を効果的に保護することが見出された(実施例1を参照)。本開示はまた、少なくとも部分的に、両方の賦形剤がインビボで充分に許容されたという発見に基づいており(実施例1を参照)、NAT及びL−メチオニンが生物療法製剤中の抗酸化賦形剤として安全かつ効果的であり得ることを示している。
したがって、一態様では、本明細書には、ポリペプチド、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)、及びL−メチオニンを含む液体製剤であって、該NATは該ポリペプチド内の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供され、該L−メチオニンは該ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供される、液体製剤が提供される。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.01〜約25mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.05〜約1.0mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.05〜約0.3mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.05mM、約0.1mM、約0.3mM、及び約1.0mMからなる群から選択される濃度である。いくつかの実施形態では、製剤中のL−メチオニンの濃度は、約1〜約125mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のL−メチオニンの濃度は、約5〜約25mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のL−メチオニンの濃度は、約5mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は約0.3mMであり、製剤中のL−メチオニンの濃度は約5.0mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は約1.0mMであり、製剤中のL−メチオニンの濃度は約5.0mMである。
本発明のいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの1つ以上のトリプトファン残基は、抗体の可変領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基はW103を含み、ここで、残基のナンバリングはKabatナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR−H1及び/又はHVR−H3内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、W33、W36、W52a、W99、W100a、及び/又はW100bを含み、ここで、残基のナンバリングは、Kabatナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の可変領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基はM34及び/又はM82を含み、ここで、残基のナンバリングはKabatナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の定常領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基はM252及び/又はM428を含み、ここで、残基のナンバリングはEUナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である。
本発明のいくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化は、NATを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基の酸化と比較して、低減される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化は、L−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するメチオニン残基の酸化と比較して、低減される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び1つ以上のメチオニン残基の酸化は、NAT及びL−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基及び1つ以上の対応するメチオニン残基の酸化と比較して、低減される。いくつかの実施形態では、酸化は、約40%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%低減される。
本発明のいくつかの実施形態では、製剤中のポリペプチド濃度は、約1mg/mL〜約250mg/mLである。いくつかの実施形態では、製剤は、約4.5〜約7.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、及び等張化剤からなる群から選択される。
本発明のいくつかの実施形態では、製剤は、対象への投与に好適な医薬製剤である。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、皮下、静脈内、又は硝子体内投与に適している。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載されるような液体製剤を含む、製品又はキットを提供する。
いくつかの態様では、本発明はNAT及びL−メチオニンを製剤に添加することを含む、水性製剤中のポリペプチドの酸化を低減する方法を提供する。ここで、NATはポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供され、L−メチオニンはポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供される。いくつかの実施形態では、NATは、約0.01〜約25mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、NATは、約0.05〜約1mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、NATは、約0.05〜約0.3mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、NATは、約0.05mM、約0.1mM、約0.3mM、及び約1.0mMからなる群から選択される濃度になるように、製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、約1〜約125mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、約5〜約25mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、約5mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、NATは約0.3mMの濃度になるように製剤へ添加され、L−メチオニンは約5.0mMの濃度になるように製剤へ添加される。いくつかの実施形態では、NATは約1.0mMの濃度になるように製剤へ添加され、L−メチオニンは約5.0mMの濃度になるように製剤へ添加される。
本発明のいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの1つ以上のトリプトファン残基は、抗体の可変領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基はW103を含み、ここで、残基のナンバリングはKabatナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR−H1及び/又はHVR−H3内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、W33、W36、W52a、W99、W100a、及び/又はW100bを含み、ここで、残基のナンバリングは、Kabatナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の可変領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基はM34及び/又はM82を含み、ここで、残基のナンバリングはKabatナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の定常領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基はM252及び/又はM428を含み、ここで、残基のナンバリングはEUナンバリングに従う。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である。
本発明のいくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化は、NATを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基の酸化と比較して、低減される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化は、L−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するメチオニン残基の酸化と比較して、低減される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び1つ以上のメチオニン残基の酸化は、NAT及びL−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基及び1つ以上の対応するメチオニン残基の酸化と比較して、低減される。いくつかの実施形態では、酸化は、約40%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%低減される。
本発明のいくつかの実施形態では、製剤中のポリペプチド濃度は、約1mg/mL〜約250mg/mLである。いくつかの実施形態では、製剤は、約4.5〜約7.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、及び等張化剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、製剤は、対象への投与に好適な医薬製剤である。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、皮下、静脈内、又は硝子体内投与に適している。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
上記及び本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、一部、又は全てを組み合わせて、本開示の他の実施形態を形成してもよいことを理解されたい。本開示のこれらの態様及び他の態様は、当業者には明らかとなるであろう。本開示のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態によって更に説明される。
図1Aは、2,2’−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)ストレスに対する2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)の酸化レベルへの、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)濃度の影響を示す。図1Aは、Fvトリプトファン酸化レベルへのNAT濃度の影響を示す。 図1Bは、2,2’−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)ストレスに対する2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)の酸化レベルへの、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)濃度の影響を示す。図1Bは、Fcメチオニン酸化レベルへのNAT濃度の影響を示す。
図2Aは、メチオニン若しくはNATなし、5mMメチオニン、0.3mM NAT、又は5mMメチオニン及び0.3mM NATの組合せで配合された、2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)のAAPHストレス後の酸化レベルを示す。図2Aは、酸化感受性Fvトリプトファンの酸化レベルを示す。 図2Bは、メチオニン若しくはNATなし、5mMメチオニン、0.3mM NAT、又は5mMメチオニン及び0.3mM NATの組合せで配合された、2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)のAAPHストレス後の酸化レベルを示す。図2Bは、Fcメチオニンの酸化レベルを示す。
図3Aは、高UV光ストレス後の2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)の酸化レベルへの、NAT濃度の影響を示す。図3Aは、HVRトリプトファン酸化レベルへのNAT濃度の影響を示す。 図3Bは、高UV光ストレス後の2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)の酸化レベルへの、NAT濃度の影響を示す。図3Bは、Fcメチオニン酸化レベルへのNAT濃度の影響を示す。
図4Aは、メチオニン若しくはNATなし、5mMメチオニン、0.3mM NAT、又は5mMメチオニン及び0.3mM NATの組合せで配合された、2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)の高UV光ストレス後の酸化レベルを示す。図4Aは、HVRトリプトファンの酸化レベルを示す。 図4Bは、メチオニン若しくはNATなし、5mMメチオニン、0.3mM NAT、又は5mMメチオニン及び0.3mM NATの組合せで配合された、2つの例示的なIgG1抗体(mAb1及びmAb2)の高UV光ストレス後の酸化レベルを示す。図4Bは、Fcメチオニンの酸化レベルを示す。
図5は、抗酸化剤が、化学酸化リスクを軽減することを示す。
図6は、1mM NAT及び5mMメチオニンによるW52の酸化からの保護を示す。
I.定義
本開示を詳細に説明する前に、本開示は、特定の組成物又は生体系に限定されず、言うまでもなく多様であり得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組合せを任意に含むといった具合である。
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書での「約」の値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態を「含む」、態様及び実施形態「からなる」、及び態様及び実施形態「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
本明細書で使用される「及び/又は」という用語、「A及び/又はB」などの句は、A及びBの両方と、A又はBと、A(単独)と、B(単独)と、を含むことを意図する。同様に、本明細書で使用される「及び/又は」という用語、「A、B、及び/又はC」などの句は、以下の実施形態の各々を包含することを意図している:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒な更なる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は滅菌されている。
「滅菌」製剤は、無菌であるか、又は全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、又はそれらを本質的に含まない。
「安定した」製剤とは、内部のポリペプチドが保管時にその物理的安定性及び/若しくは化学的安定性並びに/又は生物学的活性を本質的に保持する製剤である。好ましくは、製剤は、保管時に、その物理的及び化学的安定性、並びにその生物学的活性を本質的に保持する。保管期間は、一般に、製剤の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。ポリペプチドの安定性を測定するための様々な分析技法が当該技術分野で利用可能であり、例えば、「Peptide and Protein Drug Delivery」第247〜301頁(Vincent Lee編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク市ニューヨーク、出版(1991年)、及びJones,A.「Adv.Drug Delivery Rev.」第10巻第29〜90頁(1993年)に概説されている。安定性は、選択された露光量及び/又は温度で選択された期間にわたって測定され得る。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィを使用して、濁度を測定することにより、かつ/又は目視検査により);ROS形成の評価(例えば、光ストレスアッセイ又は2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)ストレスアッセイを使用することにより);タンパク質の特定のアミノ酸残基の酸化(例えば、モノクローナル抗体のTrp残基及び/又はMet残基);カチオン交換クロマトグラフィ、画像キャピラリ等電点電気泳動(icIEF)、又はキャピラリゾーン電気泳動を使用した電荷不均一性の評定;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分光分析;還元されたインタクトな抗体を比較するためのSDS−PAGE分析;ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS−C)分析;タンパク質の生物学的活性又は標的結合機能(例えば、抗体の抗原結合機能)等の評価等を含む様々な異なる方法で質的及び/又は量的に評価され得る。不安定性は、凝集、脱アミド(例えば、Asn脱アミド)、酸化(例えば、Met酸化及び/又はTrp酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化差異等のうちのいずれか1つ以上を伴い得る。
ポリペプチドは、それが、色及び/若しくは透明度の目視検査時に、又は例えばUV光散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィによって測定されたときに、凝集、沈殿、断片化、及び/又は変性の兆候をほとんど又は全く示さない場合、医薬製剤中で「その物理的安定性を保持する」。
ポリペプチドは、所与の時点での化学的安定性が、ポリペプチドが以下に定義されるその生物学的活性を依然として保持していると見なされるようなものである場合、医薬製剤中で「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、ポリペプチドの化学的に改変された形態を検出及び定量することによって評定され得る。化学的改変は、例えば、トリプシンペプチドマッピング、逆相高速液体クロマトグラフィ(reverse−phase high−performance liquid chromatography:HPLC)、及び液体クロマトグラフィ質量分析(liquid chromatography−mass spectrometry:LC/MS)を用いて評価され得るポリペプチド酸化を含み得る。他のタイプの化学的改変としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィ又はicIEFによって評価され得るポリペプチドの電荷改変が挙げられる。
ポリペプチドは、所与の時点でのポリペプチドの生物学的活性が、例えば、モノクローナル抗体の抗原結合アッセイで決定される、医薬製剤が調製された時点で呈される生物学的活性の約20%以内(約10%以内等)である場合(アッセイのエラー内)、医薬製剤中で「その生物学的活性を保持する」。
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「生物学的活性」とは、標的に結合するポリペプチドの能力、例えば、抗原に結合するモノクローナル抗体の能力を指す。これは、インビトロ又はインビボで測定され得る生物学的応答を更に含み得る。係る活性は、アンタゴニスト活性又はアゴニスト活性であり得る。
「酸化感受性の」ポリペプチドは、メチオニン(Met)、システイン(Cys)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、及びチロシン(Tyr)等であるが、これらに限定されない、酸化しやすいことが見出されている1つ以上の残基(複数可)を含むポリペプチドである。例えば、モノクローナル抗体のFab部分内のトリプトファンアミノ酸又はモノクローナル抗体のFc部分内のメチオニンアミノ酸が酸化感受性であり得る。
ポリペプチドの「酸化不安定な」残基は、酸化アッセイ(例えば、AAPH誘導又は熱誘導酸化)において35%を超える酸化を有する残基である。ポリペプチド中の残基の酸化パーセントは、例えば、トリプシン消化、続いて、部位特異的Trp酸化についてのLC−MS/MS等の当該技術分野で既知の任意の方法によって決定され得る。
溶媒中の生体分子の「溶媒接触可能表面積」又は「SASA」(solvent−accessible surface area)とは、溶媒に露出する生体分子の表面積である。SASAは、測定単位(例えば、平方オングストローム)で、又は溶媒に露出する表面積の割合として表され得る。例えば、ポリペプチド中のアミノ酸残基のSASAは、80Å、又は30%であり得る。SASAは、例えば、Shrake−Rupleyアルゴリズム、LCPO法、パワーダイアグラム法、又は分子動力学シミュレーションを用いてこれを含む、当該技術分野で既知の任意の方法によって決定され得る。
目的の製剤に関する「等張」という用語は、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有する製剤を指す。等張製剤は、一般的に、約250〜350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧浸透圧計又は氷結型浸透圧計を用いて測定することができる。
本明細書で使用される場合、「緩衝液」とは、その酸−塩基コンジュゲート成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。例えば、本開示の緩衝液は、約4.5〜約8.0の範囲のpHを有し得る。酢酸ヒスチジンは、pHをこの範囲内で制御する緩衝液の例である。
「保存料」とは、例えば、内部の細菌作用を本質的に低減させ、それ故に多目的製剤の製造を容易にするために製剤に任意に含まれ得る化合物である。可能性のある保存料としては、例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの混合物)及びベンゼトニウムクロライドが挙げられる。他の型の保存料としては、芳香族アルコール、例えばフェノール、ブチル、及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールが挙げられる。一実施形態では、本明細書における保存料は、ベンジルアルコールである。
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」とは、表面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、トリトン(Triton)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、又はステアリルスルホベタイン、ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、又はステアリルサルコシン、リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、又はセチルベタイン、ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、又はイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、又はイソステアラミドプロピルジメチルアミン、メチルココイルタウリン酸ナトリウム又はメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム、並びにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、ニュージャージー州パターソン)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68等)、等が挙げられる。一実施形態では、本明細書における界面活性剤は、ポリソルベート20である。なお別の実施形態では、本明細書における界面活性剤は、ポロキサマー188である。
本明細書で使用される「薬学的に許容される」賦形剤又は担体には、当該技術分野で周知である、薬学的に許容される担体、安定剤、緩衝剤、酸、塩基、糖、保存料、界面活性剤、及び等張化剤などが含まれる(「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第22版、Pharmaceutical Press、2012年)。薬学的に許容される賦形剤の例としては、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、酢酸、及び他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、L−トリプトファン、及びメチオニン;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、若しくはリジン;単糖、二糖、及び他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、若しくはデキストリン;金属錯体、例えば、Zn−タンパク質錯体;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトール若しくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)が挙げられる。「薬学的に許容される」賦形剤又は担体は、対象に適度に投与されて、用いられる活性成分の有効用量を提供することができ、かつそれに曝露される対象に用いられる投薬量及び濃度で非毒性のものである。
製剤化されるポリペプチドは、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(例えば、夾雑タンパク質等を含まない)。「本質的に純粋な」ポリペプチドとは、組成物の総重量に基づいて少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体)を含む組成物を意味する。「本質的に均質な」ポリペプチドとは、組成物の総重量に基づいて少なくとも約99重量%のポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体)を含む組成物を意味する。
「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で同義に使用される。ポリマーは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語は、自然に、又は介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、若しくは任意の他の操作又は修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、及び当該技術分野で既知の他の修飾もまたこの定義に含まれる。本明細書におけるこの定義に包含されるポリペプチドの例としては、例えば、レニン等の哺乳動物ポリペプチド;成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;レプチン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えば、タンパク質C;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ又はヒト尿若しくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子−アルファ及び−ベータ;腫瘍壊死因子受容体、例えば、死受容体5及びCD120;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);B細胞成熟抗原(BCMA);B−リンパ球刺激因子(BLyS);増殖誘導リガンド(APRIL);エンケファリナーゼ;RANTES(活性化時に調節され、T細胞が正常に発現及び分泌している);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、ベータ−ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA−4;インヒビン;アクチビン;血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF);血管内皮増殖因子ファミリタンパク質(例えば、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、及びP1GF);血小板由来増殖因子(PDGF)ファミリタンパク質(例えば、PDGF−A、PDGF−B、PDGF−C、PDGF−D、及びそれらの二量体);線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリ、例えば、aFGF、bFGF、FGF4、及びFGF9;上皮増殖因子(EGF);ホルモン又は増殖因子受容体、例えば、VEGF受容体(複数可)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、及びVEGFR3)、上皮増殖因子(EGF)受容体(複数可)(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、及びErbB4 受容体)、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体(複数可)(例えば、PDGFR−α及びPDGFR−β)、及び線維芽細胞増殖因子受容体(複数可);TIEリガンド(アンジオポイエチン、ANGPT1、ANGPT2)アンジオポイエチン受容体、例えば、TIE1及びTIE2;タンパク質A又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5、若しくはニューロトロフィン−6(NT−3、NT−4、NT−5、若しくはNT−6)、又は神経増殖因子、例えば、NGF−b;形質転換増殖因子(TGF)、例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含むTGF−アルファ及びTGF−ベータ;インスリン様増殖因子I及びII(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);ケモカイン、例えば、CXCL12及びCXCR4;インターフェロン、例えば、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、及びインターフェロン−ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;サイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−10;ミッドカイン;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分等;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4、及びVCAM;エフリン;Bv8;デルタ様リガンド4(DLL4);Del−1;BMP9;BMP10;ホリスタチン;肝細胞増殖因子(HGF)/分散因子(SF);Alk1;Robo4;ESM1;パールカン;EGF様ドメインマルチプル7(EGFL7);CTGF及びそのファミリのメンバー;トロンボスポンジン、例えば、トロンボスポンジン1及びトロンボスポンジン2;コラーゲン、例えば、コラーゲンIV及びコラーゲンXVIII;ニューロピリン、例えば、NRP1及びNRP2;プレイオトロフィン(PTN);プログラニュリン;プロリフェリン;Notchタンパク質、例えば、Notch1及びNotch4;セマフォリン、例えば、Sema3A、Sema3C、及びSema3F;腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣がん抗原);イムノアドヘシン;並びに上述のタンパク質のうちのいずれかの断片及び/又は変異形、並びに例えば、上述のポリペプチドのうちのいずれかを含む1つ以上のタンパク質に結合する抗体断片を含む抗体が挙げられる。
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性、三重特異性等)、及び抗体断片を包含する。
「単離された」ポリペプチド(例えば、単離された抗体)とは、その天然環境の成分から特定及び分離され、かつ/又は回収されたものである。その天然環境の夾雑成分は、ポリペプチドの研究的、診断的、又は治療的使用を妨害するであろう材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク性又は非タンパク性溶質を含み得る。単離されたポリペプチドは、組換え細胞内にインサイツでポリペプチドを含むが、これは、ポリペプチドの天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程により調製される。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖C1、C2、及びC3ドメイン(集合的に、CH)、並びに軽鎖CHL(又はCL)ドメインを含有する。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「V」と称されることがある。軽鎖の可変ドメインは「V」と称されることがある。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(hypervariable region:HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(framework region:FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ−シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ−シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに結び付いており、他方の鎖のHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、National Institute of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクタ機能を呈する。
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てられ得る。
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成はよく知られており、例えば、Abbasら、「Cellular and Mol.Immunology」第4版(W.B.Saunders,Co.、2000年)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処理は、F(ab’)断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得る。Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を持つFab’の本明細書での呼称である。F(ab’)抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthuen、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」第113巻、Rosenburg and Moore編、Springer−Verlag、ニューヨーク、第269〜315頁(1994年)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る。ダイアボディについては、例えば、以下で詳しく説明されている:欧州特許出願公開第EP404,097号;国際公開第WO1993/01161号;Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129〜134頁(2003年);及び、Hollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第6444〜6448頁(1993年)。トリアボディ及びテトラボディについては、Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129〜134頁(2003年)にもまた記載されている。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。いくつかの実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択される標的に結合する配列を更に改変して、例えば、標的に対する親和性の改善、標的に結合する配列のヒト化、細胞培養におけるその製造の改善、そのインビボの免疫原性の減少、多重特異性抗体の創出等を行うことができること、及び改変された標的に結合する配列を含む抗体も本開示のモノクローナル抗体であることを理解されたい。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler及びMilstein、「Nature」第256巻第495〜97頁(1975年);Hongoら、「Hybridoma」第14巻第3号第253〜260頁(1995年)、Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」第563〜681頁(Elsevier、ニューヨーク、1981年))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、「Nature」第352巻第624〜628頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581〜597頁(1992年);Sidhuら、「J.Mol.Biol.」第338巻第2号第299〜310頁(2004年);Leeら、「J.Mol.Biol.」第340巻第5号第1073〜1093頁(2004年);Fellouse、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第101巻第34号第12467〜12472頁(2004年);及び、Leeら、「J.Immunol.Methods」第284巻第1〜2号第119〜132頁(2004年)参照)、並びにヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部を有する動物においてヒト又はヒト様抗体を製造する技術(例えば、国際公開第WO1998/24893号;同第WO1996/34096号;同第WO1996/33735;同第WO1991/10741号;Jakobovitsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第2551頁(1993年);Jakobovitsら、「Nature」第362巻第255〜258頁(1993年);Bruggemannら、「Year in Immunol.」第7巻第33頁(1993年);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号;Marksら、「Bio/Technology」第10巻第779〜783頁(1992年);Lonbergら、「Nature」第368巻第856〜859頁(1994年);Morrison、「Nature」第368巻第812〜813頁(1994年);Fishwildら、「Nature Biotechnol.」第14巻第845〜851頁(1996年);Neuberger、「Nature Biotechnol.」第14巻第826頁(1996年);並びにLonberg及びHuszar、「Intern.Rev.Immunol.」第13巻第65〜93頁(1995年)を参照)を含む、様々な技術によって作成することができる。
本明細書のモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、一方、鎖の残りの部分が、他の種に由来する抗体又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含む「キメラ」抗体を含む(例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第81巻第6851〜6855頁(1984年))。キメラ抗体には、PRIMATTZED(登録商標)抗体が含まれ、抗体の抗原結合領域は、例えば、アカゲザルを目的の抗原で免疫することによって産生された抗体に由来する。
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾を加えて、抗体の性能を更に洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、以下を参照:例えば、Jonesら、「Nature」第321巻第522〜525頁(1986年);Riechmannら、「Nature」第332巻第323〜329頁(1988年);及び、Presta、「Curr.Op.Struct.Biol.」第2巻第593〜596頁(1992年)。また、以下も参照されたい:例えば、Vaswani及びHamilton、「Ann.Allergy,Asthma&Immunol.第1巻第105〜115頁(1998年);Harris、「Biochem.Soc.Transactions」第23巻第1035〜1038頁(1995年);Hurle及びGross、「Curr.Op.Biotech.」第5巻第428〜433頁(1994年);並びに、米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号。
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、かつ/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。ヒト抗体は、ファージ・ディスプレイ・ライブラリ等の当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom及びWinter、「J.Mol.Biol.」第227巻第381頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581頁(1991年)。Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R.Liss、第77頁(1985年);Boernerら、「J.Immunol.」第147巻第1号第86〜95頁(1991年)に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk及びvan de Winkel、「Curr.Opin.Pharmacol.」第5巻第368〜74頁(2001年)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成するヒト抗体に関する、Liら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第103巻第3557〜3562頁(2006年)もまた参照のこと。
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRの最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。以下を参照:例えば、Xuら、「Immunity」第13巻第37〜45頁(2000年)、Johnson及びWu、「Methods in Molecular Biology」第248巻第1〜25頁(Lo編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2003年)。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers−Castermanら、「Nature」第363巻第446〜448頁(1993年)、Sheriffら、「Nature Struct.Biol.」第3巻第733〜736頁(1996年)を参照されたい。いくつかの実施形態では、HVRは、相補性決定領域(CDR)である。
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている。(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年))。Chothiaは、その代わりに、構造的ループの位置を指す(Chothia及びLesk、「J.Mol.Biol.」第196巻第901〜917頁(1987年))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基が以下に記載される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabatナンバリング)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothiaナンバリング)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)、及び89−97又は89−96(L3)、並びにVHにおいて、26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)、及び93−102、94−102、又は95−102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「Kabatにあるような可変ドメイン残基ナンバリング」、「Kabatにあるようなアミノ酸位置ナンバリング」、「残基ナンバリングはKabatナンバリングに従う」という用語、及びそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列の相同領域での「標準の」Kabatナンバリング配列との整列によって決定され得る。
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン(軽鎖の残基およそ1〜107及び重鎖の残基およそ1〜113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabatら、「Sequences of Immunological Interest.」第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年))。「EUナンバリングシステム」、「EUインデックス」、「残基ナンバリングはEUナンバリングに従う」という用語、及びそれらの変形は、一般的に、免疫グロブリン重鎖定常領域の残基を指す際に使用される(例えば、前出のKabatらにて報告されているEUインデックス)。「KabatにあるようなEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、多重エピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物学的分子上の2つ若しくはそれ以上の異なるエピトープに特異的に結合することができるか、又は2つ若しくはそれ以上の異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することができる)抗原結合ドメインを含む抗体を具体的に網羅する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体(二重特異性抗体など)の抗原結合ドメインは、2つのVH/VL単位を含み、第1のVH/VL単位は、第1のエピトープに特異的に結合し、第2のVH/VL単位は、第2のエピトープに特異的に結合し、各VH/VL単位は、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。そのような多重特異性抗体としては、完全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体断片(Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、及びトリアボディなど)、共有結合的又は非共有結合的に連結されている抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。重鎖定常領域の少なくとも一部分及び/又は軽鎖定常領域の少なくとも一部分を更に含むVH/VL単位は、「ヘミマー」又は「半抗体」とも称され得る。いくつかの実施形態では、半抗体は、単一の重鎖可変領域の少なくとも一部分及び単一の軽鎖可変領域の少なくとも一部分を含む。いくつかのかかる実施形態では、2つの半抗体を含み、かつ2つの抗原に結合する二重特異性抗体は、第1の抗原又は第1のエピトープに結合するが、第2の抗原又は第2のエピトープには結合しない第1の半抗体、及び第2の抗原又は第2のエピトープに結合するが、第1の抗原又は第1のエピトープには結合しない第2の半抗体を含む。いくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、5M〜0.001pM、3M〜0.001pM、1M〜0.001pM、0.5M〜0.001pM、又は0.1M〜0.001pMの親和性で各抗原又はエピトープに結合するIgG抗体である。いくつかの実施形態では、ヘミマーは、第2のヘミマーとの分子内ジスルフィド結合が形成されることを可能にするのに充分な重鎖可変領域の一部分を含む。いくつかの実施形態では、ヘミマーは、例えば、相補的ホール変異又はノブ変異を含む第2のヘミマー又は半抗体とのヘテロ二量体化を可能にする、ノブ変異又はホール変異を含む。ノブ変異及びホール変異は、以下で更に論じられる。
「二重特異性抗体」は、1つの生物学的分子上の2つの異なるエピトープに特異的に結合することができるか、又は2つの異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合することができる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体である。二重特異性抗体はまた、本明細書において、「二重特異性」を有するもの、又は「二重特異性」であるとも称される。別途示されない限り、二重特異性抗体によって結合される抗原が二重特異性抗体名で列記される順序は無作為である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの半抗体を含み、各半抗体は、単一の重鎖可変領域及び任意に重鎖定常領域の少なくとも一部分、並びに単一の軽鎖可変領域及び任意に軽鎖定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの半抗体を含み、各半抗体は、単一の重鎖可変領域及び単一の軽鎖可変領域を含み、1つよりも多くの単一の重鎖可変領域を含まず、1つよりも多くの単一の軽鎖可変領域を含まない。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの半抗体を含み、各半抗体は、単一の重鎖可変領域及び単一の軽鎖可変領域を含み、第1の半抗体は、第1の抗原に結合し、第2の抗原には結合せず、第2の半抗体は、第2の抗原に結合し、第1の抗原には結合しない。
本明細書で使用される場合、「ノブ・イントゥ・ホール」又は「KnH」技術という用語は、2つのポリペプチドを、それらが相互作用する界面で一方のポリペプチドに隆起(ノブ)を導入し、他方のポリペプチドに空洞(ホール)を導入することによって、インビトロ又はインビボでの対合を指向する技術を指す。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合界面、CL:CH1界面、又はVH/VL界面に導入されている(例えば、米国特許出願公開第US2011/0287009号、同第US2007/0178552号、国際公開第WO96/027011号、同第WO98/050431号、及びZhuら、(1997年)「Protein Science」第6巻第781〜788頁を参照されたい)。いくつかの実施形態では、KnHにより、多重特異性抗体の製造中に2つの異なる重鎖の対合が駆動される。例えば、それらのFc領域内にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域に連結された単一可変ドメインを更に含み得るか、又は類似の若しくは異なる軽鎖可変ドメインと対合する異なる重鎖可変ドメインを更に含み得る。KnH技術を使用して、2つの異なる受容体細胞外ドメインを一緒に、又は異なる標的認識配列(例えば、アフィボディ(affibody)、ペプチボディ(peptibody)、及び他のFc融合物を含む)を含む任意の他のポリペプチド配列を対合することもできる。
本明細書で使用される「ノブ変異」という用語は、ポリペプチドが別のポリペプチドと相互作用する界面で隆起(ノブ)をポリペプチドに導入する変異を指す。いくつかの実施形態では、他方のポリペプチドは、ホール変異を有する(例えば、各々が参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第US5,731,168号、同第US5,807,706号、同第US5,821,333号、同第US7,695,936号、同第US8,216,805号を参照のこと)。
本明細書で使用される「ホール変異」という用語は、ポリペプチドが別のポリペプチドと相互作用する界面で空洞(ホール)をポリペプチドに導入する変異を指す。いくつかの実施形態では、他方のポリペプチドは、ノブ変異を有する(例えば、各々が参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第US5,731,168号、同第US5,807,706号、同第US5,821,333号、同第US7,695,936号、同第US8,216,805号を参照のこと)。
「直鎖状抗体」という表現は、Zapataら(1995年、「Protein Eng」第8巻第10号第1057〜1062頁)に記載されている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性であり得る。
II.ポリペプチド製剤及び調製
本開示の特定の態様は、ポリペプチド、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)、及びL−メチオニンを含む製剤に関するものである。ここで、NAT及びL−メチオニンは、ポリペプチドの酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中のメチオニン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、及び/又はチロシン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び1つ以上のメチオニン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載のポリペプチドのうちのいずれかに従う少なくとも1つの追加のポリペプチドを更に含む。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、水性製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、医薬製剤(例えば、ヒト対象への投与に好適)である。
いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.01mM〜約25mM(例えば、約0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、13.0、14.0、15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、又は25.0mMのうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))であるか、又はNATが製剤中で可溶性である最高濃度までである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.05〜約1mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.05〜約0.3mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.05mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.1mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約0.3mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約1.0mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のNATの濃度は、約1mMである。
いくつかの実施形態では、NATは、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、NATは、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を、活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)によって低減又は防止する。いくつかの実施形態では、活性酸素種は、一重項酸素、スーパーオキシド(O−)、アルコキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、過酸化水素(H)、三酸化二水素(H)、ヒドロトリオキシラジカル(HO・)、オゾン(O)、ヒドロキシルラジカル、及び/又はアルキルペルオキシドから選択される。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは抗体であり、NATは、抗体中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体の軽鎖定常領域及び/又は重鎖定常領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体の軽鎖可変領域(例えば、HVR−L1、HVR−L2、及び/又はHVR−L3)及び/又は重鎖可変領域(例えば、HVR−H1、HVR−H2、及び/又はHVR−H3)内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体の重鎖可変領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、重鎖可変領域のフレームワーク領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、W103(Kabatナンバリングに従う)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR−H1、HVR−H2、及び/又はHVR−H3(例えば、HVR−H1及び/又はHVR−H3)内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、W33、W36、W52、W52a、W99、W100a、W100b、及び/又はW103(Kabatナンバリングに従う)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、W33及び/又はW36、W99及び/又はW100aを含む。いくつかの実施形態では、本開示の製剤中にNATを含めることで、残基W33、W36、W52a、WW99、W100a、W110b、及び/又はW103での抗体の酸化が低減又は防止される(例えば、NATを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基(複数可)と比較して)。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR−L1、HVR−L2、及び/又はHVR−L3内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、W94、W31及び/又はW91を含む。
いくつかの実施形態では、製剤中のL−メチオニンの濃度は、約1.0mM〜約125.0mM(例えば、約1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0、100.0、105.0、110.0、115.0、120.0、又は125.0mMのうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))であるか、又はL−メチオニンが製剤中で可溶性である最高濃度までである。いくつかの実施形態では、製剤中のL−メチオニンの濃度は、約5.0〜約25.0mMである。いくつかの実施形態では、製剤中のL−メチオニンの濃度は、約5.0mMである。
いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を、活性酸素種(ROS)によって低減又は防止する。いくつかの実施形態では、活性酸素種は、一重項酸素、スーパーオキシド(O−)、アルコキシルラジカル、ペルオキシルラジカル、過酸化水素(H)、三酸化二水素(H)、ヒドロトリオキシラジカル(HO・)、オゾン(O3)、ヒドロキシルラジカル、及び/又はアルキルペルオキシドから選択される。
いくつかの実施形態では、ポリペプチド抗体であり、L−メチオニンは、抗体中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の軽鎖可変領域(例えば、HVR−L1、HVR−L2、及び/又はHVR−L3)及び/又は重鎖可変領域(例えば、HVR−H1、HVR−H2、及び/又は、及びHVR−H3)内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の重鎖可変領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、重鎖可変領域のフレームワーク領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、M82(Kabatナンバリングに従う)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のトリプトファン残基は、抗体のHVR−H1、HVR−H2、及び/又はHVR−H3(例えば、HVR−H1)内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、M34(Kabatナンバリングに従う)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体のHVR−L1、HVR−L2、及び/又はHVR−L3(例えば、HVR−L1)内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、軽鎖内、例えば部位M30、M33、M92に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、重鎖内、例えば、部位M82、M99、M57、M58、M62、M64、及び他の部位95〜102に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体の軽鎖定常領域及び/又は重鎖定常領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基は、抗体(例えば、IgG1抗体)の重鎖定常領域内に位置する。いくつかの実施形態では、1つ以上のメチオニン残基はM252、M35、及び/又はM428(EUナンバリングに従う)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の製剤中にL−メチオニンを含めることで、残基M34、M82、M252、及び/又はM428での抗体の酸化が低減又は防止される(例えば、L−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基(複数可)と比較して)。
いくつかの実施形態では、本開示の製剤中にNATを含めることで、1つ以上のメチオニン残基(例えば、位置M252及び/又はM428におけるFc領域メチオニンなどの、上記のメチオニン残基のいずれか)での抗体の酸化が増加される。いくつかの実施形態では、製剤中にL−メチオニンを含めることで、抗体中の1つ以上のメチオニン残基(例えば、位置M252、M358、及び/又はM428におけるFc領域メチオニンなどの、上記のメチオニン残基のいずれか)のNAT誘導及び/又は増幅酸化が低減又は防止される。いくつかの実施形態では、本開示の液体製剤は、本明細書に記載されるいずれかの濃度でのNAT、及び本明細書に記載されるいずれかの濃度でのL−メチオニンを含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約0.3mMの濃度のNat、及び約5.0mMの濃度のL−メチオニンを含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約1.0mMの濃度のNAT、及び約5.0mMの濃度のL−メチオニンを含む。
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される液体製剤は、ポリペプチド、NAT、及びL−メチオニン(ここで、NAT及びL−メチオニンは液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する)を含む。ここで、ポリペプチドの酸化(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び/又は1つ以上のメチオニン残基の酸化)は、約40%〜約100%低減する(例えば、NAT及び/又はL−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基及び/又は1つ以上の対応するトリプトファン残基と比較して)。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの酸化(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び/又は1つ以上のメチオニン残基の酸化)は、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかの分だけ低減される(例えば、NAT及び/又はL−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基及び/又は1つ以上の対応するメチオニン残基と比較して)。例えば、以下の実施例1に記載の方法(及びそこに引用されている参考文献)を含む、当該技術分野で公知のポリペプチド酸化を測定する任意の好適な方法を使用することができる。
ポリペプチドにおける酸化の量は、例えば、RP−HPLC、LC/MS、又はトリプシンペプチドマッピングのうちの1つ以上を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドにおける酸化は、RP−HPLC、LC/MS、又はトリプシンペプチドマッピングのうちの1つ以上、及び以下の式を使用して、ある割合として決定される。
Figure 2021533149
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される液体製剤は、ポリペプチド、NAT、及びL−メチオニン(ここで、NAT及びL−メチオニンは液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する)を含む。ここで、ポリペプチドの約40%以下〜約0%は酸化されている(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び/又は1つ以上のメチオニン残基で酸化されている)。いくつかの実施形態では、約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%以下(これらの値間の任意の範囲を含む)のポリペプチドは、酸化されている(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び/又は1つ以上のメチオニン残基で酸化されている)。
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される液体製剤は、ポリペプチド、NAT、及びL−メチオニン(ここで、NAT及びL−メチオニンは液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する)を含む。ここで、ポリペプチド中の少なくとも1つの酸化不安定なトリプトファン残基(例えば、本明細書に記載の抗体の1つ以上のトリプトファン残基及のいずれか)の酸化は、約40%〜約100%低減する(例えば、NATを欠く製剤中のポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基(複数可)と比較して)。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なトリプトファン残基(複数可)の酸化は、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかの分だけ低減される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なトリプトファン残基の各々の酸化は、約40%〜約100%(例えば、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))低減される。
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される液体製剤は、ポリペプチド、NAT、及びL−メチオニン(ここで、NAT及びL−メチオニンは液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する)を含む。ここで、ポリペプチド中の少なくとも1つの酸化不安定なトリプトファン残基の約40%以下〜約0%(例えば、本明細書に記載の抗体のトリプトファン残基のいずれか1つ以上)は、酸化されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なトリプトファン残基(複数可)の、約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかしか酸化されない。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なトリプトファン残基の各々の約40%以下〜約0%(例えば、約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%以下、又は0%のうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))しか酸化されない。
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される液体製剤は、ポリペプチド、NAT、及びL−メチオニン(ここで、NAT及びL−メチオニンは液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する)を含む。ここで、ポリペプチド中の少なくとも1つの酸化不安定なメチオニン残基(例えば、本明細書に記載の抗体の1つ以上のメチオニン残基及のいずれか)の酸化は、約40%〜約100%低減する(例えば、L−メチオニンを欠く製剤中のポリペプチドにおける、1つ以上の対応するメチオニン残基(複数可)と比較して)。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なメチオニン残基(複数可)の酸化は、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかの分だけ低減される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なメチオニン残基の各々の酸化は、約40%〜約100%(例えば、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))低減される。
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される液体製剤は、ポリペプチド、NAT、及びL−メチオニン(ここで、NAT及びL−メチオニンは液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する)を含む。ここで、ポリペプチド中の少なくとも1つの酸化不安定なメチオニン残基の約40%以下〜約0%(例えば、本明細書に記載の抗体のメチオニン残基のいずれか1つ以上)は、酸化されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なメチオニン残基の、約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかしか酸化されない。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の酸化不安定なメチオニン残基の各々の約40%以下〜約0%(例えば、約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%以下、又は0%のうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))しか酸化されない。
いくつかの実施形態では、製剤中のポリペプチド(例えば、抗体)濃度は、約1mg/mL〜約250mg/mLである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド(例えば、抗体)は、治療用ポリペプチドである。製剤中の例示のポリペプチド濃度としては、約1mg/mL〜約250mg/mL超、約1mg/mL〜約250mg/mL、約10mg/mL〜約250mg/mL、約15mg/mL〜約225mg/mL、約20mg/mL〜約200mg/mL、約25mg/mL〜約175mg/mL、約25mg/mL〜約150mg/mL、約25mg/mL〜約100mg/mL、約30mg/mL〜約100mg/mL、又は約45mg/mL〜約55mg/mLが挙げられる。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性、三重特異性等)、又は抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体配列に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1抗体配列に由来する。
いくつかの実施形態では、製剤は、水性である。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の賦形剤を更に含む。例えば、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤、及びそれらの任意の組み合わせを含む、当該技術分野で公知である任意の好適な賦形剤を、本明細書に記載の製剤中で使用することができる。例えば、本開示の製剤は、モノクローナル抗体、ポリペプチド(例えば、1つ以上のトリプトファン残基で)の酸化を防止する本明細書で提供されるNAT、ポリペプチド(例えば、1つ以上のメチオニン残基で)の酸化を防止する本明細書で提供されるL−メチオニン、及び製剤のpHを所望のレベルに維持する緩衝液を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される製剤は、約4.5〜約9.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される製剤は、約4.5〜約7.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、pHは、pH4.0〜8.5の範囲、pH4.0〜8.0の範囲、pH4.0〜7.5の範囲、pH4.0〜7.0の範囲、pH4.0〜6.5の範囲、pH4.0〜6.0の範囲、pH4.0〜5.5の範囲、pH4.0〜5.0の範囲、pH4.0〜4.5の範囲、pH4.5〜9.0の範囲、pH5.0〜9.0の範囲、pH5.5〜9.0の範囲、pH6.0〜9.0の範囲、pH6.5〜9.0の範囲、pH7.0〜9.0の範囲、pH7.5〜9.0の範囲、pH8.0〜9.0の範囲、pH8.5〜9.0の範囲、pH5.7〜6.8の範囲、pH5.8〜6.5の範囲、pH5.9〜6.5の範囲、pH6.0〜6.5の範囲、又はpH6.2〜6.5の範囲である。いくつかの実施形態では、製剤は、6.2又は約6.2のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、6.0又は約6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載のポリペプチドのうちのいずれかに従う少なくとも1つの追加のポリペプチドを更に含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される製剤は、対象への投与に好適な医薬製剤である。本明細書で使用される場合、「対象」、「患者」、又は「個体」とは、ヒト又は非ヒト動物を指すことができる。「非ヒト動物」とは、飼育動物、家畜、動物園の動物、競技用の動物、愛玩動物(犬、馬、猫、牛等)、及び研究で使用される動物といった、ヒトに分類されない任意の動物を指すことができる。研究用動物とは、線形動物、節足動物、脊椎動物、哺乳動物、カエル、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ又はフグ)、鳥類(例えば、ニワトリ)、イヌ、ネコ、及び非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル、カニクイザル、チンパンジー等)を指し得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象、患者、又は個体は、ヒトである。
製剤中のポリペプチド及び抗体は、当該技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて調製され得る。製剤中の抗体(例えば、完全長抗体、抗体断片、及び多重特異性抗体)は、当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され得、これらの非限定的な例示の方法は、以下の節でより詳細に説明される。本明細書における方法は、ペプチド系阻害剤等の他のポリペプチドを含む製剤の調製のための当業者によって適合され得る。治療用タンパク質の製造のため、概してよく理解され、一般的に使用される技術及び手順のためのものであり、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバ、2012年);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら編、2003年);「Short Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002年);「Current Protocols in Protein Science」(Horswillら、2006年);「Antibodies,A Laboratory Manual」(Harlow and Lane編、1988年);「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications」(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010年)を参照されたい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤(例えば、液体製剤)のうちのいずれかに従って、製剤は、2つ以上のポリペプチドを含む(例えば、形成(formation)は、2つ以上のポリペプチドの共製剤である)。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、2つ以上のポリペプチド、NAT、及びL−メチオニンを含む共製剤であり、ここで、NAT及びL−メチオニンは、2つ以上のポリペプチドのうちの少なくとも1つの酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、NAT及びL−メチオニンは、2つ以上のポリペプチドのうちの複数の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、NAT及びL−メチオニンは、2つ以上のポリペプチドのうち各々の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、2つ以上のポリペプチドのうちの少なくとも1つは、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である。いくつかの実施形態では、2つ以上のポリペプチドのうちの複数は、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片から独立して選択された抗体である。いくつかの実施形態では、2つ以上のポリペプチドの各々は、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片から独立して選択された抗体である。いくつかの実施形態では、製剤の1つ以上の抗体は、IgG1抗体配列に由来する。いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、水性製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、医薬製剤(例えば、ヒト対象への投与に好適)である。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、任意の経腸経路又は非経口経路を介した投与に適している。投与の「経腸経路」という用語は、胃腸管の任意の部分を介した投与を指す。経腸経路の例としては、経口、粘膜、舌下、及び直腸経路、又は胃内経路が挙げられる。投与の「非経口経路」とは、経腸経路以外の投与経路を指す。投与の非経口経路の例としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、膀胱内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、硝子体内、心臓内、気管内、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内、皮下、又は局所投与が挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、皮下、静脈内、又は硝子体内投与に適している。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、皮下又は硝子体内投与に適している。
A.抗体の調製
本明細書に提供される液体製剤中の抗体は、目的とする抗原に対して指向される。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。しかしながら、非ポリペプチド抗原に対して指向される抗体も企図される。
抗原がポリペプチドである場合、それは、膜貫通分子(例えば、受容体)又は増殖因子等のリガンドであり得る。例示の抗原としては、分子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF);CD20;ox−LDL;ox−ApoB100;レニン;成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えば、タンパク質C;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ又はヒト尿若しくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子受容体、例えば、死受容体5及びCD120;腫瘍壊死因子−アルファ及び−ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(活性化時に調節され、T細胞が正常に発現及び分泌している);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、ベータ−ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA−4;インヒビン;アクチビン;ホルモン又は増殖因子受容体;タンパク質A又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5、若しくはニューロトロフィン−6(NT−3、NT4、NT−5、若しくはNT−6)、又は神経増殖因子、例えば、NGF−β;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えば、aFGF及びbFGF;上皮増殖因子(EGF);形質転換増殖因子(TGF)、例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含むTGF−アルファ及びTGF−ベータ;インスリン様増殖因子I及びII(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、及びインターフェロン−ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1〜IL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分等;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4、及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えば、HER2、HER3、又はHER4受容体;並びに上述のポリペプチドのうちのいずれかの断片が挙げられる。
(i)抗原の調製
任意に他の分子にコンジュゲートする可溶性抗原又はその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体等の膜貫通分子の場合、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用され得る。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。かかる細胞は、天然源(例えば、がん細胞株)由来であり得るか、又は膜貫通分子を発現するように組換え技法によって形質転換された細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には明らかであろう。
(ii)ある特定の抗体に基づく方法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注入により動物に産生される。二官能性剤又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRN=C=NR(式中、R及びRが異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシン阻害剤にコンジュゲートさせることが有用であり得る。
動物は、タンパク質又はコンジュゲート(ウサギ又はマウスの場合、それぞれ100μg又は5μg)を、例えばフロイントの完全アジュバント3容量と組み合わせて、抗原、免疫原性コンジュゲート又は誘導体に対して免疫化され、溶液を複数の部位で皮内注射することにより、免疫化される。1ヶ月後、動物は、複数の部位での皮下注入によって完全フロイントアジュバント中のペプチド又はコンジュゲートの最初の量の1/5〜1/10で追加免疫される。7〜14日後、動物を採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価が水平状態になるまで動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質にコンジュゲートしたもの及び/又は異なる架橋試薬によりコンジュゲートしたもので追加免疫する。コンジュゲートを、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン等の凝集剤も免疫応答を増強するために好適に使用される。
目的のモノクローナル抗体は、ヒト−ヒトハイブリドーマについて、先ずKohlerら「Nature」第256巻第495頁(1975年)に記載され、更に例えば、Hongoら「Hybridoma」第14巻第3号第253〜260頁(1995年)、Harlowら「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」第563〜681頁(Elsevier、ニューヨーク、1981年)、及びNi、「Xiandai Mianyixue」第26巻第4号第265〜268頁(2006年)に記載される、ハイブリドーマ法を用いて作成することができる。更なる方法には、例えば、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の製造について、例えば、米国特許第7,189,826号に記載されている方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)については、Vollmers及びBrandlein、「Histology and Histopathology」第20巻第3号第927〜937頁(2005年)、並びにVollmers及びBrandlein、「Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology」第27巻第3号第185〜91頁(2005年)に記載されている。
他の様々なハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第US2006/258841号;同第US2006/183887号(完全ヒト抗体)、同第US2006/059575号;同第US2005/287149号;同第US2005/100546号;同第US2005/026229号;及び米国特許第7,078,492号及び同第7,153,507号を参照されたい。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルが以下に記載される。一実施形態では、マウス又は他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターは、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することになる抗体を産生するか、又はそれを産生することができるリンパ球を誘発するように免疫化される。抗体は、目的とするポリペプチド又はその断片、及びアジュバント、例えば、モノホスホリル脂質A(MPL)/トレハロースジコリノミコラート(TDM)(Ribi Immunochem.Research,Inc.、モンタナ州ハミルトン)の複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注入によって、動物中で育成される。目的とするポリペプチド(例えば、抗原)又はその断片は、組換え方法等の当該技術分野で周知の方法を使用して調製され得、これらの方法のうちのいくつかは、本明細書に更に記載される。免疫化動物由来の血清が抗抗原抗体についてアッセイされ、追加免疫が任意に施される。抗抗原抗体を産生する動物由来のリンパ球が単離される。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。
その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」第59〜103頁(Academic Press、1986年)を参照されたい。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示す骨髄腫細胞が使用され得る。例示的な骨髄腫細胞には、米国カリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所細胞分布センターから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍に由来するものなどのマウス骨髄腫株、及びSP−2又は X63−Ag8−653細胞は、米国カリフォルニア州ロックビルのAmerican Type Culture Collectionから入手できる。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても説明されている(Kozbor、「J.Immunol.」第133巻第3001頁(1984年);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」第51〜63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987年))。
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、好適な培養培地、例えば、融合していない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する1つ以上の物質を含有する培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含むことになり、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。好ましくは、例えば、Evenら、「Trends in Biotechnology」第24巻第3号第105〜108頁(2006年)に記載されるウシ胎仔血清などの動物由来の血清の使用を低減するために、無血清ハイブリドーマ細胞培養法が使用される。
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドについては、Franek、「Trends in Monoclonal Antibody Research」第111〜122頁(2005年)に記載されている。具体的には、標準の培養培地は、ある特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、又はタンパク質加水分解物画分で富化され、アポトーシスが3〜6つのアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって著しく抑制され得る。これらのペプチドは、ミリモル濃度又はそれより高い濃度で存在する。
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、本明細書に記載の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay:RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme−linked immunoadsorbent assay:ELISA)によって決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定され得る。例えば、Munsonら、「Anal.Biochem.」第107巻第220頁(1980年)を参照されたい。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準の方法によって成長し得る。例えば、Goding(上記参照)を参照されたい。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D−MEM培地又はRPMI−1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィ等によって、培養培地、腹水、又は血清から好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からタンパク質を単離するための1つの手順は、米国特許出願公開第US2005/176122号及び米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスで離液性塩等の最小限の塩を使用することを含み、好ましくは、溶出プロセスで少量の有機溶媒を使用することも含む。
(iii)ある特定のライブラリスクリーニング方法
本明細書に記載の製剤及び組成物中の抗体は、コンビナトリアルライブラリを使用して、所望の活性又は活性(複数)を有する抗体についてスクリーニングすることによって作製され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体に関してかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で公知である。かかる方法は、概して、Hoogenboomら、「Methods in Molecular Biology」第178巻第1〜37頁(O’Brienら編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2001年)に記載されている。例えば、目的とする抗体を生成する1つの方法は、Leeら、「J.Mol.Biol.」(2004年)第340巻第5号第1073〜93頁に記載されているファージ抗体ライブラリの使用による方法である。
原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合された抗体可変領域(Fv)の様々な断片を提示するファージを含有するファージライブラリをスクリーニングすることによって選択される。かかるファージライブラリは、所望の抗原に対する親和性クロマトグラフィによってパニングされる。所望の抗原に結合することができるFv断片を発現するクローンは、その抗原に吸着し、それ故にライブラリ中の非結合クローンから分離される。その後、結合クローンは、抗原から溶出され、更なる抗原吸着/溶出サイクルによって更に濃縮され得る。これらの抗体のうちのいずれも、目的とするファージクローンを選択するのに好適な抗原スクリーニング手順を設計し、続いて、目的とするファージクローン由来のFv配列、及びKabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、NIH Publication第91〜3242号、メリーランド州ベセスダ(1991年)第1〜3巻に記載された好適な定常領域(Fc)配列を用いて全長抗体クローンを構築することによって、得ることができる。
いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合ドメインは、約110個のアミノ酸を有する2つの可変(V)領域から形成され、各々が軽(VL)鎖及び重(VH)鎖由来であり、両方が3つの超可変ループ(HVR)又は相補性決定領域(CDR)を提示する。可変ドメインは、Winterら、「Ann.Rev.Immunol.」第12巻第433〜455頁(1994年)に記載されるように、短いフレキシブルペプチドを介してVHとVLとが共有結合した一本鎖Fv(scFv)断片として、又はそれらが各々定常ドメインに融合し、非共有結合的に相互作用するFab断片としてのいずれかで、ファージ上に機能的にディスプレイすることができる。本明細書で使用される場合、scFvをコードするファージクローン及びFabをコードするファージクローンは、集合的に「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と称される。
VH及びVL遺伝子のレパートリは、Winterら、「Ann.Rev.Immunol.」第12巻第433〜455頁(1994年)に記載されるように、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリにおいてランダムに組換えることができ、次いでこれらを抗原結合クローンについて検索することができる。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を与える。あるいは、Griffithsら、「EMBO J」第12巻第725〜734頁(1993年)に記載されるように、ナイーブレパートリをクローニングすれば、いかなる免疫化も行うことなく、広範囲の非自己抗原及びまた自己抗原に対する単一のヒト抗体供給源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom及びWinter、「J.Mol.Biol.」第227巻第381〜388頁(1992年)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を遂行することによって、合成的に作製することができる。
いくつかの実施形態では、マイナーなコートタンパク質pIIIへの融合によって抗体断片をディスプレイするために、線維状ファージが使用される。抗体断片は、例えばMarksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581〜597頁(1991年)によって記載されているような、VH及びVLドメインが柔軟なポリペプチドスペーサによって同一のポリペプチド鎖上に連結されている一本鎖Fv断片として、又は例えば、Hoogenboomら、「Nucl.Acids Res.」第19巻第4133〜4137頁(1991年)によって記載されているように、一方の鎖がpIIIに融合され、かつ野生型コートタンパク質の一部を置換することによってファージ表面にディスプレイされるFabコートタンパク質構造のアセンブリが存在する細菌宿主細胞ペリプラズム中に他方の鎖が分泌される、Fab断片として、ディスプレイされ得る。
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から収集される免疫細胞から得られる。抗抗原クローンに好意的にバイアスされたライブラリが所望される場合、対象は、抗原で免疫化されて抗体応答を生じさせ、脾臓細胞及び/又は循環B細胞、他の末梢血リンパ球(peripheral blood lymphocyte:PBL)が、ライブラリ構築のために回収される。一実施形態では、抗抗原クローンに好意的にバイアスされたヒト抗体遺伝子断片ライブラリは、抗原免疫化により抗原に対するヒト抗体を産生するB細胞が生じるように、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを持つ(かつ機能的内因性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスに抗抗原抗体応答を生じさせることによって得られる。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの生成については、以下に記載されている。
抗抗原反応性細胞集団の更なる富化は、抗原特異的膜結合抗体を発現するB細胞の単離に好適なスクリーニング手順を使用することによって、例えば、抗原親和性クロマトグラフィ、又は細胞の蛍光色素標識抗原への吸着、続いて、フロー活性化細胞選別(flow−activated cell sorting:FACS)を使用した細胞分離によって得られ得る。
あるいは、免疫化されていないドナー由来の脾臓細胞及び/又はB細胞又は他のPBLの使用により、可能な抗体レパートリのより良好な表示が提供され、抗原が抗原性ではない任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を使用した抗体ライブラリの構築も可能になる。インビトロ抗体遺伝子構築を組み込むライブラリの場合、幹細胞が対象から収集されて、再配置されていない抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を提供する。目的とする免疫細胞は、様々な動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、オオカミ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、及びトリ種等から得ることができる。
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを含む)をコードする核酸は、目的とする細胞から回収され、増幅される。再構成されたVH及びVL遺伝子ライブラリの場合、所望のDNAは、リンパ球からゲノムDNA又はmRNAを単離し、続いて、Orlandiら、「Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)」第86巻第3833〜3837頁(1989年)に記載されているように、再配列されたVH及びVL遺伝子の5’末端及び3’末端に一致するプライマを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られ、それにより、発現のための多様なV遺伝子レパートリが作製される。V遺伝子は、Orlandiら(1989年)及びWardら、「Nature」第341巻第544〜546頁(1989年)に記載されるように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端のバックプライマ、及びJ−セグメント内にあるフォワードプライマを用いて、cDNA及びゲノムDNAから増幅され得る。しかしながら、cDNAから増幅するためには、バックプライマは、Jonesら、「Biotechnol.」第9巻第88〜89頁(1991年)に記載されているようにリーダエクソンに基づいていてもよく、そしてSastryら、「Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)」第86巻第5728〜5732頁(1989年)に記載されているように、定常領域内のフォワードプライマであってもよい。相補性を最大限に生かすために、Orlandiら(1989年)又はSastryら(1989年)に記載されるように、縮重がプライマに組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、ライブラリの多様性は、例えばMarksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581〜597頁(1991年)の方法に記載されているように、又はOrumら、「Nucleic Acids Res.」第21巻第4491〜4498頁(1993年)の方法に記載されているように、免疫細胞核酸試料中に存在する全ての利用可能なVH及びVL配列を増幅するために、各V遺伝子ファミリを標的とするPCRプライマを用いることによって最大化される。増幅されたDNAの発現ベクタへのクローニングの場合、希少制限部位が、Orlandiら(1989年)に記載されるように、一方の端におけるタグとして、又は、Clacksonら、「Nature」第352巻第624〜628頁(1991年)に記載されるように、タグ付けされたプライマでの更なるPCR増幅によってPCRプライマ内に導入され得る。
合成的に再配列されたV遺伝子のレパートリは、インビトロでV遺伝子セグメントから誘導され得る。ヒトVH遺伝子セグメントの大部分はクローン化され、配列決定され(Tomlinsonら、「J.Mol.Biol.第227巻第776〜798頁(1992年)にて報告)、マッピングされている(松田ら、「Nature Genet.」第3巻第88〜94頁(1993年)にて報告)。これらのクローンセグメント(H1及びH2ループの全ての主要な立体配座を含む)は、Hoogenboom及びWinter、「J.Mol.Biol.」第227巻第381〜388頁(1992年)に記載されているように、多様な配列及び長さのH3ループをコードするPCRプライマを用いて、多様なVH遺伝子レパートリを生成するために使用することができる。VHレパートリはまた、Barbasら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第89巻第4457〜4461頁(1992年)に記載されているように、単一の長さである長いH3ループ内に焦点を合わせた全ての配列多様性を用いて作製することもできる。ヒトVκ及びVλセグメントはクローン化及び配列決定されており(Williams及びWinter、「Eur.J.Immunol.」第23巻第1456〜1461頁(1993年)にて報告)、合成軽鎖レパートリの作成に使用することができる。合成V遺伝子レパートリは、VH及びVLフォールドの範囲、並びにL3及びH3の長さに基づいて、かなりの構造的多様性を有する抗体をコードする。V遺伝子コードDNAの増幅後、生殖系列V遺伝子セグメントが、Hoogenboom及びWinter、「J.Mol.Biol.」第227巻第381〜388頁(1992年)の方法に従ってインビトロで再配列され得る。
抗体断片のレパートリは、いくつかの方法でVH遺伝子レパートリとVL遺伝子レパートリを一緒に組み合わせることによって構築され得る。各レパートリは、異なるベクタで作製され得、これらのベクタは、例えば、Hogrefeら、「Gene」第128巻第119〜126頁(1993年)に記載されるように、インビトロで組換えられ得るか、又はコンビナトリアル感染、例えば、Waterhouseら、「Nucl.Acids Res.」第21巻第2265〜2266頁(1993年)に記載のloxP系によりインビボで組み換えられ得る。インビボ組換えアプローチは、Fab断片の二本鎖性質を利用して、大腸菌形質転換効率によって課せられるライブラリサイズの制限を打開する。ナイーブVH及びVLレパートリは、別個に、一方がファージミドに、他方がファージベクタにクローニングされる。その後、これらの2つのライブラリは、ファージミド含有細菌のファージ感染によって組み合わせられ、これにより、各細胞が異なる組み合わせを含むようになり、ライブラリサイズが存在する細胞の数(約1012個のクローン)のみによって制限されるようになる。両ベクタは、インビボ組換えシグナルを含み、VH遺伝子及びVL遺伝子が単一レプリコンに組換えられ、ファージビリオンに共パッケージングされるようになる。これらの巨大なライブラリは、良好な親和性(約10−8MのK −1)を有する多数の多様な抗体を提供する。
あるいは、レパートリは、例えば、Barbasら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第88巻第7978〜7982頁(1991年)に記載されているように、同じベクタ中に連続的にクローニングされてもよく、又はPCRによって一緒に組み立てられ、次いで、例えば、Clacksonら、「Nature」第352巻第624〜628頁(1991年)に記載されているようにクローニングされてもよい。PCRアセンブリを使用して、VH及びVL DNAを、可動性ペプチドスペーサをコードするDNAと連結させて、一本鎖Fv(scFv)レパートリを形成することもできる。なお別の技法では、Embletonら、「Nucl.Acids Res.」第20巻第3831〜3837頁(1992年)に記載されるように、PCRによってリンパ球内のVH及びVL遺伝子組み合わせ、その後、連結された遺伝子のレパートリをクローニングするために、「細胞内PCRアセンブリ」が使用される。
ナイーブライブラリ(天然又は合成のいずれか)によって産生された抗体は、中程度の親和性(約10〜10−1のK −1)を有するものであり得るが、親和性成熟は、Winterら(1994)(上記参照)に記載されるように、二次ライブラリを構築し、かつそれから再選択することによってインビトロで模倣され得る。例えば、突然変異は、Hawkinsら、「J.Mol.Biol.」第226巻第889〜896頁(1992年)の方法又はGramら、「Proc.Natl.Acad.Sci USA」第89巻第3576〜3580頁(1992年)の方法において、エラー・プローン・ポリメラーゼ(Leungら、「Technique」第1第11〜15頁(1989年)にて報告)を用いることによって、インビトロでランダムに導入することができる。更に、親和性成熟は、例えば、目的とするCDRに及ぶランダム配列を持つプライマを用いたPCRを使用して、選択された個別のFvクローンにおいて1つ以上のCDRをランダムに変異させ、かつより高い親和性クローンについてスクリーニングすることによって行われ得る。国際公開第WO9607754号(1996年3月14日公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域における変異誘発を誘導して、軽鎖遺伝子のライブラリを作製するための方法について記載している。別の有効なアプローチは、Marksら、「Biotechnol.」第10巻第779〜783頁(1992年)に記載されるように、免疫化されていないドナーから得られた天然に存在するVドメインバリアントのレパートリを用いてファージディスプレイによって選択されたVH又はVLドメインを組換え、いくつかの鎖リシャッフリングラウンドでより高い親和性についてスクリーニングすることである。この技法により、約10−9M以下の親和性を有する抗体及び抗体断片の産生が可能になる。
ライブラリのスクリーニングは、当該技術分野で既知の様々な技法によって達成され得る。例えば、抗原は、吸着プレートに付着した宿主細胞で発現された吸着プレートのウェルを被覆するために使用され得るか、又は細胞選別で使用され得るか、又はストレプトアビジン被覆ビーズで捕捉するためにビオチンにコンジュゲートされ得るか、又はファージディスプレイライブラリをパニングするための任意の他の方法で使用され得る。
ファージライブラリ試料は、吸着剤を用いてファージ粒子の少なくとも一部分への結合に好適な条件下で固定化抗原と接触する。通常、pH、イオン強度、温度等を含む条件は、生理学的条件を模倣するように選択される。固相に結合したファージを洗浄し、次いで、例えばBarbasら「Proc.Natl.Acad.Sci USA」第88巻第7978〜7982頁(1991年)に記載されているように酸によって、又は例えばMarksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581〜597頁(1991年)に記載されているようにアルカリによって、又は例えばClacksonら、「Nature」第352巻第624〜628頁(1991年)の抗原競合法と同様の手順での抗原競合によって、溶出させる。ファージは、単一の選択ラウンドで20〜1,000倍濃縮され得る。更に、濃縮されたファージは、細菌培養物中で成長することができ、更なる選択ラウンドに供され得る。
選択の効率は、洗浄中の解離速度、及び単一ファージ上の複数の抗体断片が抗原と同時に会合することができるか等の多くの要因に依存する。高速解離速度(及び弱い結合親和性)を有する抗体は、短時間洗浄、多価ファージディスプレイ、及び固相中の抗原の高コーティング密度の使用によって保持され得る。高密度は、多価相互作用によりファージを安定化するのみならず、解離したファージの再結合も好む。遅い解離速度(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bassら、「Proteins」第8巻第309〜314頁(1990年)及び国際公開第WO92/09690号に記載されるような長時間の洗浄及び一価ファージディスプレイの使用、並びにMarksら、「Biotechnol.」第10巻第779〜783頁(1992年)に記載されるような抗原の低コーティング密度の使用によって促進することができる。
わずかに異なる親和性しか有しなくとも、抗原に対して異なる親和性を有するファージ抗体間での選択が可能である。しかしながら、選択された抗体のランダム変異(例えば、いくつかの親和性成熟技法で行われる)により、大半が抗原に結合し、数個のみより高い親和性を有する多くの変異体が生み出される可能性がある。抗原を制限することにより、希少高親和性ファージが競合排除され得る。全てのより高い親和性の変異体を保持するために、ファージは、抗原に対して一定の標的モル親和性よりも低いモル濃度のビオチン化抗原ではなく、過剰ビオチン化抗原とインキュベートされ得る。その後、高親和性結合ファージがストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズによって捕捉され得る。かかる「平衡捕捉」により、わずか2倍高い親和性しか有しない変異体クローンのより低い親和性を有するかなりの過剰なファージからの単離を許容する感受性で、抗体がそれらの結合親和性に従って選択されることが可能になる。固相に結合しているファージの洗浄に使用される条件は、解離速度に基づいて区別するように操作される場合もある。
抗抗原クローンは、活性に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、本開示は、抗原を自然に発現する生細胞に結合するか、又は浮遊抗原若しくは他の細胞構造に付着した抗原に結合する抗抗原抗体を提供する。そのような抗抗原抗体に対応するFvクローンは、以下:(1)上述のように抗抗原クローンをファージライブラリから単離し、任意に、ファージクローンの単離集団を、その集団を好適な細菌宿主で成長させることによって増幅すること、(2)それぞれ、遮断及び非遮断活性が所望される抗原及び第2のタンパク質を選択すること、(3)抗抗原ファージクローンを固定化抗原に吸着させること、(4)過剰な第2のタンパク質を使用して、第2のタンパク質の結合決定基と重複するか、又はそれと共有される抗原結合決定基を認識するいずれの望ましくないクローンも溶出すること、及び(5)工程(4)後に吸着したまま留まっているクローンを溶出することによって選択され得る。任意に、本明細書に記載の選択手技を1回以上繰り返すことによって、所望の遮断特性/非遮断特性を有するクローンが更に濃縮され得る。
ハイブリドーマ由来モノクローナル抗体又はファージディスプレイFvクローンをコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、ハイブリドーマ又はファージDNA鋳型から目的とする重鎖及び軽鎖コード領域を特異的に増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマを使用することによって)容易に単離及び配列決定される。単離されると、DNAが発現ベクタ中に置かれ、その後、それが、宿主細胞、例えば、別様には免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスタ卵巣(Chinese hamster ovary:CHO)細胞、又は骨髄腫細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞における所望のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する総説としては、Skerraら、「Curr.Opinion in Immunol.」第5巻第256頁(1993年)及びPluckthun、「Immunol.Revs」第130巻第151頁(1992年)が挙げられる。
FvクローンをコードするDNAは、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列がKabatら(上記参照)から得られ得る)と組み合わせられて、完全長又は部分長重鎖及び/又は軽鎖をコードするクローンを形成することができる。IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE定常領域等の任意のアイソタイプの定常領域をこの目的のために使用することができ、かかる定常領域を任意のヒト又は動物種から得ることができることが理解される。ある動物(ヒト等)種の可変ドメインDNAから誘導され、その後、別の動物種の定常領域DNAに融合して、「ハイブリッド」完全長重鎖及び/又は軽鎖のコード配列(複数可)を形成するFvクローンは、本明細書で使用される「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。いくつかの実施形態では、ヒト可変DNAから誘導されたFvクローンは、ヒト定常領域DNAに融合して、完全長又は部分長ヒト重鎖及び/又は軽鎖のコード配列(複数可)を形成する。
ハイブリドーマに由来する抗抗原抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローンに由来する相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによっても修飾され得る(例えば、Morrisonら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第81巻第6851〜6855頁(1984年)の方法の通り)。ハイブリドーマ又はFvクローン由来の抗体又は断片をコードするDNAは、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって更に修飾され得る。この様式で、Fvクローン又はハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。
(iv)ヒト化及びヒト抗体
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が当該技術分野で既知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、本質的に、Winter及び同僚(Jonesら、「Nature」第321巻第522〜525頁(1986年)、Riechmannら、「Nature」第332巻第323〜327頁(1988年)、Verhoeyenら、「Science」第239巻第1534〜1536頁(1988年))の方法に従って、げっ歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって行われる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、実質的にインタクトなヒト可変ドメインより少ない部分が、非ヒト種からの対応する配列により置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基そして場合により一部のFR残基が、げっ歯類抗体中の類似部位からの残基で置換されているヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製に使用されるヒト可変ドメイン(重鎖及び軽鎖の両方)の選択は、抗原性を低減するのに非常に重要である。いわゆる「最良適合」法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変−ドメイン配列の全ライブラリに対してスクリーニングする。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として認められる(Simsら、「J.Immunol.」第151巻第2296頁(1993年)、Chothiaら、「J.Mol.Biol.」第196巻第901頁(1987年))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定の下位群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用されてもよい(Carterら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第89巻第4285頁(1992年)、Prestaら、「J.Immunol.」第151巻第2623頁(1993年))。
抗体は、抗原に対する高親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されることが更に重要である。この目標を達成するために、本方法の一実施形態によれば、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用した親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析過程によって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、市販されており、当業者に周知である。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図解及び表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示されたものを調べることにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際の可能性のある残基の役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このような方法で、標的抗原(複数可)に対する親和性の増大等の所望の抗体特性が達成されるように、FR残基がレシピエント配列及び移入配列から選択され、組み合わせられ得る。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接かつ最も実質的に関与する。
本明細書に記載の製剤及び組成物中のヒト抗体は、上述のように、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列(複数可)を既知のヒト定常ドメイン配列(複数可)と組み合わせることによって構築され得る。あるいは、ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が、例えば、Kozbor、「J.Immunol.」第133巻第3001頁(1984年)、Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」第51〜63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987年)、及びBoernerら、「J.Immunol.」第147巻第86頁(1991年)によって説明されている。
内因性免疫グロブリン産生の不在下で免疫化時にヒト抗体の全レパートリを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合型欠失により、内因性抗体産生の完全な阻害がもたらされることが説明されている。かかる生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移行により、抗原チャレンジ時のヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovitsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第2551頁(1993);Jakobovitsら、「Nature」第362巻第255〜258頁(1993年);Bruggermannら、「Year in Immuno.」第7巻第33頁(1993年);及び、Duchosalら、「Nature」第355巻第258頁(1992年)を参照されたい。
遺伝子シャッフリングを使用して、非ヒト抗体、例えば、げっ歯類抗体からヒト抗体を得ることもでき、このヒト抗体は、出発非ヒト抗体と同様の親和性及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、本明細書に記載のファージディスプレイ技法によって得られた非ヒト抗体断片の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のいずれかが、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリで置き換えられ、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラ集団を作り出す。抗原の選択により、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFv又はFabの単離がもたらされ、このヒト鎖は、一次ファージディスプレイクローンにおける対応する非ヒト鎖の除去時に破壊された抗原結合部位を回復させ、すなわち、このエピトープは、ヒト鎖パートナーの選択を決定(インプリント)する。残りの非ヒト鎖を置き換えるためにこのプロセスが繰り返されると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開の国際出願PCT/WO93/06213号を参照のこと)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技法は、非ヒト起源のFR又はCDR残基を有しない完全なヒト抗体を提供する。
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段又は組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体断片に関する概説については、Hudsonら(2003年)「Nat.Med.」第9巻第129〜134頁を参照されたい。
抗体断片を産生するために様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimotoら、「Journal of Biochemical and Biophysical Methods」第24巻第107〜117頁(1992年)及びBrennanら、「Science」第229巻第81頁(1985年)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生することができる。Fab、Fv、及びScFv抗体断片は全て、大腸菌で発現され、大腸菌から分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的にカップリングされて、F(ab’)断片を形成することができる(Carterら、「Bio/Technology」第10巻第163〜167頁(1992年))。別のアプローチに従って、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)断片は、米国特許第5,869,046号に記載される。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。いくつかの実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第WO93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、それ故に、それらは、インビボでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかでのエフェクタタンパク質の融合をもたらすことができる。上記の「Antibody Engineering」(Borrebaeck編)を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように、「直鎖状抗体」でもあり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性又は二重特異性であり得る。
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。かかる分子が通常2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみに結合する一方で、三重特異性抗体等の更なる特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製され得る(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)。
二重特異性抗体の作製方法が、当該技術分野で既知である。全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づくものである(Millsteinら、「Nature」第305巻第537〜539頁(1983年))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子を有する混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常親和性クロマトグラフィ工程によって行われるこの正しい分子の精製は、幾分厄介であり、生成物収率は低い。同様の手順が、国際公開第WO93/08829号、及びTrauneckerら、「EMBO J.」第10巻第3655〜3659頁(1991年)に開示されている。
異なるアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。これらの融合のうちの少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合物、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別個の発現ベクタに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これにより、構築時に使用される不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供する実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する際に優れた柔軟性が提供される。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合に、又はそれらの比率が特に重要でない場合に、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクタに挿入することが可能である。
このアプローチの一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から成る。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在により容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造が望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは、国際公開第WO94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の生成の更なる詳細については、例えば、Sureshら、「Methods in Enzymology」第121巻第210頁(1986年)を参照されたい。
国際公開第WO96/27011号に記載の別のアプローチに従って、抗体分子の対間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように操作され得る。1つの界面は、抗体定常ドメインのCHドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一又は同様の大きさの補償「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)で置き換えることによって第2の抗体分子の界面上に作製される。これにより、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物と比べてヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。
二重特異性抗体は、架橋又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方がアビジンにカップリングし、他方がビオチンにカップリングし得る。かかる抗体は、例えば、望ましくない細胞を免疫系細胞の標的とするために(米国特許第4,676,980号)、かつHIV感染を治療するために(国際公開第WO91/00360号、同第WO92/200373号、及び欧州特許第EP03089号)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製することができる。好適な架橋剤が当該技術分野で周知であり、いくつかの架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も本文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennanら、「Science」第229巻第81頁(1985年)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されてF(ab’)断片を生成する手技について記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在の存在下で還元されて、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。その後、生成されたFab’断片は、チオニトロ安息香酸塩(TNB)誘導体に変換される。その後、Fab’−TNB誘導体のうちの一方が、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’−チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
近年の進歩により、化学的にカップリングされて二重特異性抗体を形成することができるFab’−SH断片の大腸菌からの直接回収が容易になった。Shalabyら、「J.Exp.Med.」第175巻第217〜225頁(1992年)に、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)分子の産生を記載している。各Fab’断片は、大腸菌から別個に分泌され、インビトロでの指向性化学カップリングに供されて、二重特異性抗体を形成する。
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養から直接作製及び単離するための様々な技法も記載されている。例えば、ロイシンジッパを使用して二重特異性抗体が産生された。Kostelnyら、「J.Immunol.」第148巻第5号第1547〜1553頁(1992年)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に結合させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第6444〜6448頁(1993年)により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供している。それらの断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカによって軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、ある断片のVドメイン及びVドメインが別の断片の相補的Vドメイン及びVドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用することによって二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。Gruberら、「J.Immunol」第152巻第5368頁(1994年)を参照されたい。
2を超える結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuftら、「J.Immunol.」第147巻第60頁(1991年)。
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照のこと)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部からなる。
(viii)抗体バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。本抗体のアミノ酸配列バリアントは、本抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾としては、例えば、本抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入、及び/又はその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。対象の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
(ix)抗体誘導体
本開示の製剤及び組成物中の抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含むように更に修飾され得る。いくつかの実施形態では、本抗体の誘導体化に好適なこれらの部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。このポリマーは、任意の分子量を有していてもよく、分岐していてもよく、又は分岐していなくてもよい。本抗体に結合したポリマーの数は異なってもよく、1つより多くのポリマーが結合している場合、それらは、同じ分子又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるか等を含むが、これらに限定されない、考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
(x)ベクタ、宿主細胞、及び組換え方法
抗体は、組換え方法を使用して産生され得る。抗抗原抗体の組換え産生について、本抗体をコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクタに挿入される。本抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して(例えば、本抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定され得る。多くのベクタが利用可能である。ベクタ成分には、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカ遺伝子、エンハンサエレメント、プロモータ、及び転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
(a)シグナル配列成分
本明細書に記載の製剤及び組成物中の抗体は、直接のみならず、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換え的に産生され得、これは、好ましくは、成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドである。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識及びプロセシング(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識もプロセシングもしない原核宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダの群から選択される原核シグナル配列によって置換される。酵母分泌のために、ネイティブシグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダ、因子リーダ(サッカロマイセス及びクルイベロマイセスα因子リーダを含む)、又は酸ホスファターゼリーダ、C.albicansグルコアミラーゼリーダ、又は国際公開第WO90/13646号に記載されたシグナルによって置換されてもよい。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列、並びにウイルス分泌リーダ、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
(b)複製起点
発現ベクタもクローニングベクタもいずれも、ベクタが1つ以上の選択された宿主細胞内で複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクタにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは無関係にベクタの複製を可能にするものであり、これらとしては、複製起点又は自己複製配列が挙げられる。かかる配列は、様々な細菌、酵母、及びウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点が大半のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド由来の複製起点が酵母に好適であり、様々なウイルス複製起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、又はBPV)が哺乳動物細胞におけるクローニングベクタに有用である。一般に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクタに必要ではない(SV40起点は、典型的には、初期プロモータを含むという理由だけで使用され得る)。
(c)選択遺伝子成分
発現ベクタ及びクローニングベクタは、選択遺伝子、別名、選択可能なマーカを含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質若しくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、若しくはテトラサイクリンへの耐性を与えるか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、又は(c)複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給するタンパク質、例えば、BacilliについてD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子での形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与え、それ故に選択レジメンで生き残るタンパク質を産生する。かかる優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に好適な選択可能なマーカの別の例は、DHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−I及び−II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等の抗体コード核酸を取り込むための細胞成分の特定を可能にするものである。
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸とともに増幅される。内因性DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)が使用され得る。
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GS阻害剤であるL−メチオニンスルホキシミン(Msx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸とともに増幅される。GS選択/増幅系が、上述のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用され得る。
あるいは、目的とする抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及び別の選択可能なマーカ、例えば、アミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)で形質転換又は共形質転換された宿主細胞(具体的には、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、又はG418等の選択可能なマーカ用の選択剤を含有する培地中での細胞成長によって選択され得る。例えば、米国特許第4,965,199号を参照されたい。
酵母での使用に好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら、「Nature」第282巻第39頁(1979年))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株に対する選択マーカ、例えば、ATCC番号44076又はPEP4−1を提供する(Jones、「Genetics」、第85巻第12頁(1977年))。その後、酵母宿主細胞ゲノム中でのtrp1病変の存在により、トリプトファンの不在下での成長による形質転換の検出に有効な環境が提供される。同様に、Leu2が欠損した酵母株(ATCC20,622又は38,626)は、Leu2遺伝子を持つ既知のプラスミドによって補完される。
加えて、1.6μmの環状プラスミドpKD1由来のベクタが、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。あるいは、組換え仔牛キモシンの大規模産生のための発現系としてK.lactisが報告された。Van den Berg、「Bio/Technology」第8巻第135頁(1990年)。Kluyveromycesの工業用株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定した多コピー発現ベクタも開示されている。Fleerら、「Bio/Technology」第9巻第968〜975頁(1991年)。
(d)プロモータ成分
発現ベクタ及びクローニングベクタは、一般に、宿主生物によって認識され、かつ抗体をコードする核酸に作動可能に連結されるプロモータを含有する。原核宿主との使用に好適なプロモータとしては、phoAプロモータ、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモータ系、アルカリ性ホスファターゼプロモータ、トリプトファン(trp)プロモータ系、並びにハイブリッドプロモータ、例えば、tacプロモータが挙げられる。しかしながら、他の既知の細菌プロモータも好適である。細菌系で使用するためのプロモータは、抗体をコードするDNAに作動可能に連結されるシャイン・ダルガノ(Shine−Dalgarno:S.D.)配列も含有する。
真核生物のプロモータ配列は既知である。実質的に全ての真核遺伝子が、転写が始まる部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大半の真核遺伝子の3’末端は、ポリA尾部のコード配列の3’末端への付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列である。これらの配列の全てが真核発現ベクタに好適に挿入される。
酵母宿主との使用に好適なプロモータ配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の解糖酵素のプロモータ、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、及びグルコキナーゼが挙げられる。
成長条件によって制御された転写の更なる利点を有する誘導性プロモータである他の酵母プロモータは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、並びにマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素のプロモータ領域である。酵母発現での使用に好適なベクタ及びプロモータは、欧州特許第73,657号に更に記載されている。酵母エンハンサも酵母プロモータとともに有利に使用される。
哺乳動物宿主細胞中のベクタからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから、又は異種哺乳動物プロモータ、例えば、アクチンプロモータ若しくは免疫グロブリンプロモータから、熱ショックプロモータから得られるプロモータによって制御され得るが、但し、かかるプロモータが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
SV40ウイルスの初期プロモータ及び後期プロモータは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモータは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。ウシ乳頭腫ウイルスをベクタとして用いて哺乳動物宿主におけるDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変化形は米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモータの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現に関して、Reyesら、「Nature」第297巻第598〜601頁(1982年)も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復がプロモータとして使用され得る。
(e)エンハンサエレメント成分
より高次の真核生物による抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサ配列をベクタに挿入することによって増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、及びインスリン)由来の多くのエンハンサ配列が現在知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサが使用されるであろう。例としては、複製起点の後半側のSV40エンハンサ(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモータエンハンサ、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサ、及びアデノウイルスエンハンサが挙げられる。真核プロモータの活性化のための増強要素に関しては、Yaniv、「Nature」第297巻第17〜18頁(1982年)も参照されたい。エンハンサは、抗体コード配列の5’位又は3’位でベクタにスプライスされ得るが、好ましくは、プロモータから5’部位に位置する。
(f)転写終結成分
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクタは、転写終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。かかる配列は、一般に、真核又はウイルスDNA又はcDNAの5’非翻訳領域、時折、3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第WO94/11026号及びそれに開示される発現ベクタを参照されたい。
(g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクタ中でのDNAのクローニング又は発現に好適な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又はより高次の真核生物細胞である。この目的のための好適な原核生物としては、グラム陰性又はグラム陽性生物などの真核細菌、例えば:Escherichia、例えば大腸菌、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えばSalmonella typhimurium、Serratia、例えばSerratia marcescans、ShigellaなどのEnterobacteriaceae、並びにB subtilis及びB licheniformisなどのBacilli(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266,710に開示されたB.licheniformis 41P)、P.aeruginosaなどのPseudomonas、及びStreptomycesなどが挙げられる。好ましい大腸菌クローニング宿主の1つは、大腸菌294(ATCC31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31,537)、大腸菌W3110(ATCC27,325)のような他の株も適している。これらの例は、限定するものではなく、例証するものである。
全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体断片は、特に、治療用抗体がそれ自体が腫瘍細胞破壊に有効性を示す細胞傷害剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされている場合のように、グリコシル化及びFcエフェクタ機能を必要としない場合には、細菌中で製造することができる。全長抗体は、より優れた血中半減期を有する。大腸菌での産生がより迅速であり、より費用効率が高い。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(translation initiation region:TIR)及びシグナル配列を説明している、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照のこと。また、大腸菌における抗体断片の発現を記載する、Charlton、「Methods in Molecular Biology」第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、ニュージャージー州トトワ、2003年)第245〜254頁も参照されたい。発現後、本抗体は、可溶性画分中の大腸菌細胞ペーストから単離され得、例えば、アイソタイプに応じてタンパク質A又はGカラムにより精製され得る。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に行われ得る。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母等の真核微生物が、抗体コードベクタに好適なクローニング又は発現宿主である。より下位の真核宿主微生物の中でSaccharomyces cerevisiae又は一般的なパン酵母が最も一般的に使用されている。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotolerans、及びK.marxianusなど、yarrowia(欧州特許第EP402,226号)、Pichia pastoris(欧州特許第EP183,070号)、Candida、Trichoderma reesia(欧州特許第EP244,234号)、Neurospora crassa、Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces、並びに糸状真菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、及びAspergillus宿主、例えば、A.nidulans及びA.nigerなどのいくつかの他の属、種、及び菌株が本明細書において一般的に利用可能であり、有用である。治療用タンパク質の産生のための酵母及び糸状菌の使用を議論するレビューについては、例えば、Gerngross、「Nat.Biotech.」第22巻第1409〜1414頁(2004年)を参照のこと。
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、結果として部分的又は完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらすある特定の真菌及び酵母株が選択され得る。例えば、Liら、「Nat.Biotech.」第24巻第210〜215頁(2006年)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化について説明)、及びGerngrossら(上記)を参照されたい。
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株及びバリアント、並びに宿主、例えば、Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ミバエ)、及びBombyx mori由来の対応する許容昆虫宿主細胞が特定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、Autographa californica NPVのL−1バリアント、及びBombyx mori NPVのBm−5株が公的に入手可能であり、かかるウイルスは、本開示にかかる本明細書のウイルスとして、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る。
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Leninaceae)、ムラサキウマゴヤシ(M.truncatula)、及びタバコの植物細胞培養物も宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術)を参照。
脊椎動物細胞が宿主として使用され得、培養下での脊椎動物細胞の繁殖(組織培養)が日常的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、以下のものが挙げられる:SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胎児腎臓株(浮遊培養での増殖のためにサブクローン化された293又は293細胞、Grahamら、「J Gen Virol.」第36巻第59頁(1977年));ベビーハムスタ腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TTM4、Mather、「Biol.Reprod.」第23巻第243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2);犬の腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、「Annals N.Y.Acad.Sci.」第383巻第44〜68頁(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及び、ヒト肝がん株(HepG2)。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFRCHO細胞(Urlaubら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第77巻:第4216頁(1980年))を含むチャイニーズハムスタ卵巣(CHO)細胞、並びにNS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki及びWu、「Methods in Molecular Biology」第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、ニュージャージー州トトワ)第255〜268頁(2003年)を参照されたい。
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現ベクタ又はクローニングベクタで形質転換され、プロモータの誘導、形質転換対の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なものとして修飾された従来の栄養素培地中で培養される。
(h)宿主細胞の培養
抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。市販の培地、例えば、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に好適である。また、Hamら、「Meth.Enz.」第58巻第44頁(1979年)、Barnesら、「Anal.Biochem.」第102巻第255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、若しくは同第5,122,469号、国際公開第WO90/03430号、同第WO87/00195号、又は米国特許再発行第30,985号に記載のいずれの培地も、宿主細胞の培地として使用することができる。これらの培地のいずれにも、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量要素(マイクロモルの範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物と定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源が補充され得る。任意の他の必要な補充物も当業者に既知の適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞で既に使用したものであり、当業者に明らかであろう。
(xi)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、本抗体は、細胞内で産生され得るか、ペリプラズム空間で産生され得るか、又は培地に直接分泌され得る。本抗体が細胞内で産生される場合、第1の工程として、微粒子残屑(宿主細胞又は溶解断片のいずれか)が、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carterら、「Bio/Technology」第10巻第163〜167頁(1992年)には、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される抗体を分離する方法が記載している。要するに、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分かけて解凍する。細胞片は遠心分離によって除去され得る。本抗体が培地に分泌される場合、かかる発現系由来の上清が、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して最初に濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が前述の工程のいずれかに含まれてもよく、外来性混入物の増殖を防止するために、抗生物質が含まれてもよい。
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィを使用して精製され得、親和性クロマトグラフィが典型的に好ましい精製工程のうちの1つである。タンパク質Aの親和性リガンドとしての好適性は、本抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。タンパク質Aは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmarkら、「J.Immunol.Meth.」第62巻第1〜13頁(1983年))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(Gussら、「EMBO J.」第5巻第15671575頁(1986年))。タンパク質Lは、カッパ軽鎖に基づいて抗体を精製するために使用され得る(Nilsonら、「J.Immunol.Meth.」第164巻第1号第33〜40頁、1993年)。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスにより、アガロースで達成され得るよりも速い流速及び短いプロセシング時間が可能になる。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィ、ヘパリン上でのクロマトグラフィ、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)上でのSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も、回収される抗体に応じて利用可能である。
一般に、研究、試験、及び臨床で使用するための抗体を調製するための様々な方法論が当該技術分野で充分に確立されており、上述の方法論と一致しており、かつ/又は当業者によって目的とする特定の抗体に適切であると見なされる。
B.生物学的に活性な抗体の選択
上述のように産生された抗体は、治療的観点から有益な特性を有する抗体を選択するために、1つ以上の「生物学的活性」アッセイに供され得る。抗体は、それが産生される抗原に結合するその能力についてスクリーニングされ得る。例えば、抗DR5抗体(例えば、ドロジツマブ)の場合、抗体の抗原結合特性は、死受容体5(DR5)に結合する能力を検出するアッセイで評価され得る。
別の実施形態では、抗体の親和性は、例えば、飽和結合、ELISA、及び/又は競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定され得る。
本抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイにも供され得る。かかるアッセイが当該技術分野で既知であり、本抗体の標的抗原及び意図される使用に依存する。
目的とする抗原上の特定のエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、通例のクロスブロッキングアッセイ、例えば、「Antibodies,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlow及びDavid Lane編(1988年)に記載の日常的な交差遮断アッセイが行われ得る。あるいは、エピトープマッピング、例えば、Champeら、「J.Biol.Chem.」第270巻第1388〜1394頁(1995年)に記載されているように、抗体が目的のエピトープに結合するかどうかを決定するために実施することができる。
III.製剤の調製方法
本開示の特定の態様は、本明細書に記載の液体製剤のいずれかを調製する方法に関する。液体製剤は、所望の純度を有するポリペプチドをNAT及びL−メチオニンと混合することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、製剤化されるポリペプチドは、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的とする製剤は、水性製剤である。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、治療用タンパク質である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。更なる実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、又は抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体は、F(ab’)等の抗体断片であり、この場合、完全長抗体では起こり得ない問題(抗体のFabへのクリッピング等)に対処しなければならない場合がある。製剤中に存在するポリペプチドの治療有効量は、例えば、所望の用量体積及び投与様式(複数可)を考慮することによって決定される。製剤中の例示のポリペプチド濃度としては、約1mg/mL〜約250mg/mL超、約1mg/mL〜約250mg/mL、約10mg/mL〜約250mg/mL、約15mg/mL〜約225mg/mL、約20mg/mL〜約200mg/mL、約25mg/mL〜約175mg/mL、約25mg/mL〜約150mg/mL、約25mg/mL〜約100mg/mL、約30mg/mL〜約100mg/mL、又は約45mg/mL〜約55mg/mLが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、タンパク質中のメチオニン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、及び/又はチロシンから選択されるアミノ酸のうちの1つ以上は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファンは、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニンは、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン及び1つ以上のメチオニンは、酸化感受性である。
いくつかの実施形態では、液体製剤は、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、及び/又は等張化剤などの1つ以上の賦形剤を更に含む。本開示の液体製剤は、pH緩衝溶液中で調製される。本開示の緩衝液は、約4.0〜約9.0の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、pHは、pH4.0〜8.5の範囲、pH4.0〜8.0の範囲、pH4.0〜7.5の範囲、pH4.0〜7.0の範囲、pH4.0〜6.5の範囲、pH4.0〜6.0の範囲、pH4.0〜5.5の範囲、pH4.0〜5.0の範囲、pH4.0〜4.5の範囲、pH4.5〜9.0の範囲、pH5.0〜9.0の範囲、pH5.5〜9.0の範囲、pH6.0〜9.0の範囲、pH6.5〜9.0の範囲、pH7.0〜9.0の範囲、pH7.5〜9.0の範囲、pH8.0〜9.0の範囲、pH8.5〜9.0の範囲、pH5.7〜6.8の範囲、pH5.8〜6.5の範囲、pH5.9〜6.5の範囲、pH6.0〜6.5の範囲、又はpH6.2〜6.5の範囲である。本発明のいくつかの実施形態では、液体製剤は、6.2又は約6.2のpHを有する。本発明のいくつかの実施形態では、液体製剤は、6.0又は約6.0のpHを有する。本発明のいくつかの実施形態では、液体製剤は、5.8又は約5.8のpHを有する。本発明のいくつかの実施形態では、液体製剤は、5.5又は約5.5のpHを有する。pHをこの範囲内で制御する緩衝液の例としては、有機及び無機酸並びにそれらの塩が挙げられる。例えば、酢酸塩(例えば、酢酸ヒスチジン、酢酸アルギニン、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ヒスチジン、コハク酸アルギニン、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、及びそれらの組合せ。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液及び製剤の所望の等張性に応じて、約1mM〜約600mMであり得る。いくつかの実施形態では、製剤は、ヒスチジン緩衝液(例えば、約5mM〜100mMの濃度)を含む。ヒスチジン緩衝液の例としては、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジン、コハク酸ヒスチジン等が挙げられる。いくつかの実施形態では、約10mM〜約35mM、約10mM〜約30mM、約10mM〜約25mM、約10mM〜約20mM、約10mM〜約15mM、約15mM〜約35mM、約20mM〜約35mM、約20mM〜約30mM、又は約20mM〜約25mMの製剤中のヒスチジン。更なる実施形態では、製剤中のアルギニンは、約50mM〜約500mM(例えば、約100mM、約150mM、又は約200mM)である。
本開示の液体製剤は、二糖(例えば、トレハロース又はスクロース)などの糖を更に含み得る。本明細書で使用される「糖」とは、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖等を含む、一般組成物(CHO)n及びその誘導体を含む。本明細書の糖類の例として、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース等が挙げられる。いくつかの実施形態では、製剤は、スクロースを含む。
界面活性剤は、任意に、液体製剤に添加される。例示の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80等)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188等)が挙げられる。添加される界面活性剤の量は、それが製剤化抗体の凝集を低減させ、かつ/又は製剤中の微粒子の形成を最小限に抑え、かつ/又は吸着を低減させるような量である。例えば、界面活性剤は、約0.001重量/体積%〜約1.0重量/体積%超の量で製剤中に存在し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.001重量/体積%〜約1.0重量/体積%、約0.001重量/体積%〜約0.5重量/体積%、約0.005重量/体積%〜約0.2重量/体積%、約0.01重量/体積%〜約0.1重量/体積%、約0.02重量/体積%〜約0.06重量/体積%、又は約0.03重量/体積%〜約0.05重量/体積%の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、0.04重量/体積%又は約0.04重量/体積%の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、0.02重量/体積%又は約0.02重量/体積%の量で製剤中に存在する。一実施形態では、製剤は、界面活性剤を含まない。
一実施形態では、製剤は、上で定義された薬剤(例えば、抗体、緩衝液、糖、及び/又は界面活性剤)を含み、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、及びベンゼトニウムCl等の1つ以上の保存料を本質的に含まない。別の実施形態では、保存料が製剤中に含まれてもよく、具体的には、製剤は、複数回投与量製剤である。保存料の濃度は、約0.1%〜約2%、好ましくは、約0.5%〜約1%の範囲であり得る。1つ以上の他の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版(Osol,A.編(1980年))に記載のものが製剤中に含まれ得るが、但し、それらが製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。本明細書に記載の例示的な薬学的に許容される賦形剤は、更に、間質性薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)を含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
製剤は、金属イオンキレート剤を更に含み得る。金属イオンキレート剤は、当業者に周知であり、これらとしては、アミノポリカルボキシレート、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(ベータ−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、EDDS(ジコハク酸エチレンジアミン)、PDTA(1,3−プロピレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、ADA(ベータ−アラニン二酢酸)、MGCA(メチルグリシン二酢酸)等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。更に、本明細書のいくつかの実施形態は、ホスホネート/ホスホン酸キレート剤を含む。
等張化剤は、組成物中の液体の浸透圧を調整又は維持するために存在する。タンパク質及び抗体等の大きい荷電生体分子とともに使用される場合、張性剤は、それらがアミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより、分子間及び分子内相互作用の可能性を低減させ得るため、「安定剤」としての役割も果たし得る。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1重量%〜25重量%、又はより好ましくは、1重量%〜5重量%の量で存在し得る。好ましい等張化剤としては、多価糖アルコール、好ましくは、三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。
本明細書に記載の製剤は、必要に応じて、治療される特定の適応症のための1つよりも多くのポリペプチド若しくは小分子薬物、好ましくは、他のポリペプチドに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含み得る。例えば、抗体が抗DR5(例えば、ドロジツマブ)である場合、それは、別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗腫瘍剤)と組み合わせられ得る。
いくつかの実施形態では、製剤は、インビボ投与のためのものである。いくつかの実施形態では、製剤は、滅菌である。製剤は、滅菌濾過膜を通す濾過によって滅菌にされ得る。本明細書における治療製剤は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿刺可能なストッパを有する静脈注射用溶液袋又はバイアル内に置かれる。投与経路は、好適な様式での長期間にわたる単回又は複数回ボーラス又は注入、例えば、皮下注射若しくは注入、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内、関節内、又は硝子体内経路、局所投与、吸入、又は持続放出若しくは徐放手段等の既知の認められている方法に従うものである。
本開示の液体製剤は、保管時に安定し得る。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドは、約0〜約5℃(例えば、約1、2、3、又は4℃のうちのいずれか)での少なくとも約12ヶ月間(例えば、少なくとも約15、18、21、24、27、30、33、36ヶ月間、又はそれ以上のうちのいずれか)の保管時に安定している。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドの物理的安定性、化学的安定性、又は生物学的活性が評価又は測定される。当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、安定性及び生物学的活性を評価することができる。いくつかの実施形態では、安定性は、保管後の液体製剤中のポリペプチドの酸化によって測定される。安定性は、製剤化前後、並びに保管後の製剤中の抗体の物理的安定性、化学的安定性、及び/又は生物学的活性を評価することによって試験され得る。物性及び/又は安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィを使用して、濁度を測定することにより、かつ/又は目視検査により);カチオン交換クロマトグラフィ、又はキャピラリゾーン電気泳動を使用した電荷不均一性の評定;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分光分析;還元されたインタクトな抗体を比較するためのSDS−PAGE分析;ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS−C)分析;タンパク質の生物学的活性又は抗体の抗原結合機能等の評価等を含む様々な異なる方法で質的及び/又は量的に評価され得る。不安定性は、凝集、脱アミド(例えば、Asn脱アミド)、酸化(例えば、Trp酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化差異等を生じ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質における酸化は、RP−HPLC、LC/MS、又はトリプシンペプチドマッピングのうちの1つ以上を使用して決定される。いくつかの実施形態では、抗体における酸化は、RP−HPLC、LC/MS、又はトリプシンペプチドマッピングのうちの1つ以上、及び以下の式を使用して、ある割合として決定される。
Figure 2021533149
本明細書ではまた、液体製剤の製造方法、又は液体製剤中のポリペプチドの酸化を防止する方法も提供され、該方法は、液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する量のNAT及びL−メチオニンを添加することを含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、抗体を含む。ポリペプチドの酸化を低減又は防止するNAT及びL−メチオニンの量は、本明細書に開示される量のいずれかであり得る。
IV.酸化を低減する方法
本開示のある特定の態様は、液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減又は防止する量のNAT及びL−メチオニンを添加することを含む、液体製剤中のポリペプチド(例えば、本明細書に記載のポリペプチドのいずれか)の酸化を低減する方法に関する。いくつかの実施形態では、Nat及びL−メチオニンを含む液体製剤は、本明細書に記載の液体製剤のいずれかである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中のメチオニン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、及び/又はチロシン残基の1つ以上は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基及び1つ以上のメチオニン残基は、酸化感受性である。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載のポリペプチドのうちのいずれかに従う少なくとも1つの追加のポリペプチドを更に含む。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、製剤は、水性製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、医薬製剤(例えば、ヒト対象への投与に好適)である。
例えば、本開示の製剤は、モノクローナル抗体(例えば、抗体中の1つ以上のトリプトファン残基及び1つ以上のメチオニン残基で)の酸化を防止する、本明細書に提供されるようなモノクローナル抗体、NAT、及びL−メチオニンと、製剤のpHを所望のレベルに維持する緩衝液と、を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約4.5〜約7.0のpHを有する。
いくつかの実施形態では、製剤に添加されるNATの量は、本明細書で提供されるNATの濃度のいずれかである。いくつかの実施形態では、製剤に添加されるNATの量は、約0.3mMである。いくつかの実施形態では、製剤に添加されるNATの量は、約1.0mMである。いくつかの実施形態では、NATは、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基(例えば、本明細書に記載される抗体の1つ以上のトリプトファン残基のいずれか)の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの酸化(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化)は、約40%〜約100%、例えば40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかの分だけ低減される(例えば、NATを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基と比較して)。いくつかの実施形態では、約40%以下〜0%、例えば約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%のいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む)のポリペプチドしか酸化されない(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基で酸化されている)。いくつかの実施形態では、NATは、活性酸素種(ROS)によるポリペプチドの酸化を防止する。
いくつかの実施形態では、製剤に添加されるL−メチオニンの量は、本明細書で提供されるL−メチオニンの濃度のいずれかである。いくつかの実施形態では、製剤に添加されるL−メチオニンの量は、約5.0mMである。いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基(例えば、本明細書に記載される抗体の1つ以上のメチオニン残基のいずれか)の酸化を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの酸化(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化)は、約40%〜約100%、例えば40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値間の任意の範囲を含む)のいずれかの分だけ低減される(例えば、L−メチオニンを欠く液体製剤中のポリペプチドにおける1つ以上の対応するメチオニン残基と比較して)。いくつかの実施形態では、約40%以下〜0%、例えば約40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%のいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む)のポリペプチドしか酸化されない(例えば、ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基で酸化されている)。いくつかの実施形態では、L−メチオニンは、活性酸素種(ROS)によるポリペプチドの酸化を防止する。
いくつかの実施形態では、製剤中のポリペプチド(例えば、抗体)濃度は、本明細書に記載のポリペプチド濃度(例えば、約1mg/mL〜約250mg/mL)のいずれかである。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性、三重特異性等)、又は抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体配列に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1抗体配列に由来する。いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の賦形剤を更に含む。例えば、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、等張化剤、及びそれらの任意の組合せを含む、当該技術分野で公知である任意の好適な賦形剤を、本明細書に記載の製剤中で使用することができる。いくつかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載のpHのほぼいずれかのpH(例えば、約4.5〜約7.0)を有する。
V.製剤の投与
本開示のある特定の態様は、本明細書に記載の製剤のいずれかの対象への投与に関する。いくつかの実施形態では、本開示の液体製剤は、対象への投与に適した薬品の調製に使用することができる(例えば、対象のがんを治療又は予防するため)。液体製剤は、ボーラスとしての静脈内投与、又はある期間にわたる連続注入による投与、筋肉内、腹腔内、脳室内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、吸入、又は硝子体内経路による投与などの既知の方法に従って、ポリペプチド(例えば、抗体)での治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することができる。いくつかの実施形態では、液体製剤は、静脈内、硝子体内、又は皮下投与によって対象へ投与される。いくつかの実施形態では、液体製剤は、硝子体内投与によって対象へ投与される。いくつかの実施形態では、液体製剤は、皮下投与によって対象へ投与される。
ポリペプチドの適切な投薬量(「治療有効量」)は、例えば、治療される状態、状態の重症度及び経過、ポリペプチドが予防目的又は治療目的のために投与されるか、以前の療法、患者の病歴及びポリペプチドへの応答、使用されるポリペプチドの種類、並びに主治医の裁量に依存する。ポリペプチドは、一度に又は一連の治療にわたって患者に好適に投与され、診断時から任意の時点で患者に投与され得る。ポリペプチドは、単一治療として、又は問題になっている状態の治療に有用な他の薬物若しくは療法とともに投与され得る。本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、治療的処置及び予防的手段又は予防手段の両方を指す。治療を必要とする者としては、障害を既に有する者、並びに障害が予防されるべき者が挙げられる。本明細書で使用される場合、「障害」とは、対象を問題になっている障害にかかりやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害又は疾患を含むが、これらに限定されない、治療から利益を享受するであろう任意の状態である。
薬理学的な意味で、本開示との関連で、ポリペプチド(例えば、抗体)の「治療有効量」とは、抗体が有効である治療のための障害の予防又は治療に有効な量を指す。いくつかの実施形態では、投与されるポリペプチドの治療有効量は、1回以上の投与によるかにかかわらず、約0.1〜約50mg/患者体重kg(例えば、約0.3〜約20mg/患者体重kg、又は約0.3〜約15mg/患者体重kg)の範囲であろう。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの治療有効量は、1日用量として、又は複数回の1日用量として投与される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの治療有効量は、週1回又は月1回等の1日1回よりも低い頻度で投与される。例えば、ポリペプチドは、1週間以上毎(例えば、1、2、3、若しくは4週間毎、若しくはそれ以上、又は1、2、3、4、5、若しくは6ヶ月毎、若しくはそれ以上)に約100〜約400mg(例えば、約100、150、200、250、300、350、又は400mgのうちのいずれか(これらの値間の任意の範囲を含む))の用量で投与され得るか、又は1週間以上毎(例えば、1、2、3、若しくは4週間毎、若しくはそれ以上、又は1、2、3、4、5、若しくは6ヶ月毎、もしくそれ以上)に約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、15.0、若しくは20.0mg/kgの用量で投与される。用量は、注入物等の、単回用量として、又は複数回用量(例えば、2、3、4回、又はそれ以上の用量)として投与され得る。この療法の進展は、従来の技法によって容易に監視される。
VI.製品及びキット
本開示のある特定の態様は、本開示の液体製剤のいずれかを保持する容器を含む、製品又はキットに関する。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。例示の容器には、2〜20ccの単回使用ガラスバイアルがある。あるいは、複数回投与量製剤の場合、容器は、2〜100ccのガラスバイアルであり得る。容器は、製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用に関する指示を示し得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、及び使用に関する指示を有する添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの実施形態では、製品又はキットは、液体製剤の使用に関する説明書を備える添付文書を更に含む。添付文書とは、かかる治療剤製品の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、及び/又はその使用に関する警告を含む、治療薬の商用のパッケージに通例含まれる説明書を指し得る。
種々の目的、例えば、液体製剤中のポリペプチドの酸化を低減するため、又はポリペプチドの酸化を低減するための液体製剤をスクリーニングするために有用なキットもまた、提供される。本開示のキット内に供給される指示は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キット内に含まれる紙シート)上の文書による指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気又は光学記憶ディスク上で配信される指示)も許容される。
本明細書は、当業者が本開示を実践することを可能にするのに充分なものであると見なされる。本明細書に示されて説明される修正に加えて、本開示の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、それらは添付の特許請求の範囲内のものである。
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されることになる。しかしながら、それらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態が例証のみを目的とするものであり、それを考慮に入れた様々な修正又は変更が当業者に提案されており、本明細書の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
実施例1:酸化からのNAT保護の評価
以下の研究は、生物療法薬の製剤成分としてのN−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)及び/又はL−メチオニンの抗酸化効果及び安全性を評価するために実施した。2,2’−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)、メチオニン及びトリプトファン残基の両方を酸化する能力を有する活性酸素種を生成するアゾ化合物(Jiら(2009年)「J.Pharm.Sci.」第98巻第12号第4485〜4500頁)、並びに光曝露を、それらが製造及び/又は長期保存(Grewalら(2014年)「Mol.Pharm.」第11巻第4号第1259−1272頁)中に抗体が曝露される可能性がある一般的な酸化経路を示すため、以下の研究の酸化モデルとして選択した。
材料及び方法
材料
MAb1及びmAb2は、酸化感受性のトリプトファン及びメチオニン残基を持つIgG1モノクローナル抗体である(Dionら、原稿準備中)。mAbを、タンパク質A親和性クロマトグラフィ及びイオン交換クロマトグラフィを含む一連のクロマトグラフィ工程によって精製し、特に明記しない限り、界面活性剤又は他の賦形剤を含まないpH5.5の低イオン強度酢酸ナトリウム緩衝液中に処方した。
L−メチオニン及びN−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)は味の素ノースアメリカ社(ノースカロライナ州ローリー)から購入した。2,2’−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)はCalbiochem(カリフォルニア州ラホヤ)から購入した。トリプシン(質量分析グレード)はPromega(ウィスコンシン州マディソン)から購入した。高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)グレードのアセトニトリル及び水は、Fisher Scientific(ニュージャージー州フェアローン)から購入した。緩衝液調製に使用した水は、Milli−Q精製システム(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)から得た。
NAT抗酸化効果の評価
酸化感受性残基の特定及びモニタリング
抗体をAAPHストレスに供した、続いてペプチドマッピングを行って、酸化に感受性なCDR及びFc残基を特定した(Dionら、原稿準備中)。Kabatナンバリングを使用して可変断片(Fv)残基を特定したが、EU命名法(Edelmanら(1969年)「Proc Natl Acad Sci USA」第63巻第1号第78〜85頁)を使用してFc残基を特定した。残基が対照と比較して5%を超えて酸化された場合、感受性であると見なされ、実験の過程を通してモニタされた。ペプチドのマッピング及び分析の情報は、Dionら(原稿準備中)に報告された。手短に言えば、試料は変性され、還元され、カルボキシルメチル化され、そしてトリプシン消化に供された。ペプチドを、Thermo Q Exactive Plus高分解能質量分析計に連結したWaters Acquity H−Class UHPLC上の水/アセトニトリル/ギ酸勾配を用いて、Acquity UPLCペプチドCSH C 18カラム上で分離した。データはThermo Scientific PepFinder(商標)及びXcalibur(商標)ソフトウェアを用いて処理した。天然及び酸化ペプチドの最も豊富な電荷状態を用いて、モノ同位体m/zの抽出イオンクロマトグラム上で積分を行った。酸化パーセントは、酸化ペプチドのピーク面積を、天然及び酸化ペプチドの合計ピーク面積で割ることによって計算した。主要なトリプトファン分解産物(+16及び+32、加えて、高度に酸化された部位では+4、+20、及び+48)を合計し、トリプトファン酸化を算出した。メチオニンスルホキシド(M+16)のみを使用してメチオニン酸化を算出したが、メチオニンスルホン(M+32)はこれらの条件下では観察されなかった。2つのソフトウェアパッケージが異なる回答を提示した場合、Xcalibur(商標)データは、データを手動で確認した後に報告した。
AAPH化学酸化ストレスモデル
抗体を、1mg/mLの最終濃度まで、20mM酢酸ナトリウム、pH5.5、2ccのガラスバイアル中で調製した。NATを、20mM酢酸ナトリウム、pH5.5におけるの3mM NATのストック溶液から0.05mM及び0.3mMの最終濃度まで添加した。L−メチオニンを、特定の試料について、20mM酢酸ナトリウム、pH5.5中において、50mMストック溶液から5mMの最終濃度まで添加した。11mMのストック溶液由来のAAPHを、1mMの最終濃度まで添加した。当量の水を、対照試料のためAAPHの代わりにタンパク質アリコートへ添加した。AAPH又は水の添加後、試料を40℃で16時間インキュベートした。対照試料も直ちに−70℃で凍結した。遊離ラジカル発生反応を、L−メチオニン対AAPHが20:1の比のL−メチオニンでクエンチし、次いで、各試料を、PD−10カラム(GEヘルスケア)を用いて製剤緩衝液(20mM酢酸ナトリウム、100mMスクロース、pH5.5)中に緩衝液交換し、LC−MSペプチドマッピングによる分析のための調製において、Amicon Ultra Centrifugal Filters(EMD Millipore)を用いて最終濃度10mg/mLまで濃縮した。
露光ストレスモデル
光安定性試験は、ガラスバイアル中10mg/mLの試料を、Atlas SunTest CPS+Xenon Light box(イリノイ州シカゴ)中において、合計300キロルクス時間の可視光及び50 W・h/mの近UV(320〜400nm)光に曝露することによって実施した。NATを、上記のストック溶液から0.05、0.1、0.3、0.5、又は1.0mMの最終濃度まで添加した。対照試料をアルミホイルで包み、実験用バイアルに沿って配置した。曝露後、LC−MSペプチドマッピングによる分析に備えて、試料を−70℃で保存した。
NAT及びL−メチオニンの安全性評価
インシリコ変異原性及び発がん性予測
NATの変異原性と発がん性の可能性は、Derek Nexus(プログラムバージョン2.0.2.201111291322;Lhasa Limited(リーズ、英国))及びLeadscope(登録商標)(Model Applierバージョン1.5.0;Leadscope Inc.(オハイオ州コロンバス))のインシリコモデリングツールを用いて評価した。
インビトロ受容体結合及び機能評価
NATの活性は、結合、細胞及び核受容体機能、並びに組織バイオアッセイで評価した。ニューロキニン−1(NK−1)受容体への結合を、受容体を内在的に発現するU373MGヒト星状細胞腫細胞(Eistetterら(1992年)、「Functional characterization of Neurokinin−1 receptors on human U373MG astrocytoma cells.」、「Glia」第6巻第2号第89〜95頁;Heuilletら(1993年)「J.Neurochem」第60巻第3号第868〜876頁)において評価し、参照アゴニスト[Sar、Met(O11]−SP、又は参照アンタゴニストL733,060と比較した。NAT又は参照化合物を、室温でU373MG細胞とインキュベートした。全濃度を2回アッセイした。
NK−1受容体を介して作用する物質Pは、ヒト及び非臨床種の両方において血管緊張を調節することが示されている(Coge及びRegoli、(1994年)「{Neuropeptides」第26巻第6号385〜390頁;Shirahaseら、(2000年)「Br.J.Pharmacol」第129巻第5号第937〜942頁)。NK−1受容体におけるNATの特異的活性の可能性を評価するため、インタクトな内皮を有するウサギ肺動脈の輪を、酸素添加(95%O/5%CO)し予め加温した(37℃)生理食塩水(mM):NaCl 118.0、KCl 4.7、MgSO 1.2、CaCl 2.5、KHPO 1.2、NaHCO 25、及びグルコース11.0(pH7.4)を満たした20mLのオルガンバス中に懸濁した。プロプラノロール(1μM)、ピリラミン(1μM)、アトロピン(1μM)、及びメチセルジド(1μM)は、それぞれ、β−アドレナリン、ヒスタミンH1、ムスカリン、及び5−HT2受容体をブロックするために、実験を通して存在した。組織を等尺性張力記録のため力変換器に接続し、2gの静止張力まで伸長し、次いで60分間平衡させ、その間に繰り返し洗浄し、張力を再調節した。実験は、8つのオルガンバスを有する半自動単離臓器システムを用いて、多チャンネルデータ収集により行った。測定したパラメータは、各化合物の濃度によって誘起される張力の最大変化量であった。
アゴニスト活性を評価するために組織をノルエピネフリン(0.1μM)で収縮させ、反応性を確認するために参照アゴニスト[Sar、Met(O11]−SP(0.001μM)の亜最大濃度に曝露し、対照的な緩和を得た後、洗浄した。その後、組織をノルエピネフリンで45分毎に収縮させ、高濃度のNAT又は参照アゴニストに曝露させ、次いで洗浄した。各化合物濃度は、安定した反応が得られるまで、又は最大15分間、組織と接触させた。アゴニスト様反応(緩和)が得られた場合、この反応におけるNK1受容体の関与を確認するために、30分前に追加した参照アンタゴニストspantide II(1μM)の存在下において、最高濃度の化合物を再度試験した。
アンタゴニスト活性を評価するために、組織をノルエピネフリン(0.1μM)で収縮させ、参照アゴニスト[Sar、Met(O11]−SP(0.001μM)の亜最大濃度に曝露して、対照的な緩和を得た後、洗浄した。このシーケンスを、[Sar、Met(O11]−SPへの曝露の30分前に各々追加した、高濃度のNAT又は参照アンタゴニストであるspantide IIの存在下において、45分毎に繰り返した。
NAT/L−メチオニン製剤のインビボ忍容性
動物で実施される全ての手順は、動物福祉法、実験動物の管理及び使用に関するガイド(the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)、並びに実験動物福祉局(the Office of Laboratory Animal Welfare)に準拠している。プロトコルは該当する動物実験委員会によって承認された。
単回投与ウサギ硝子体内忍容性試験
網膜障害の治療を目的とした製品を支持する急性忍容性を評価するために、オスのニュージーランドホワイト(New Zealand White:NZW)ウサギに、等張性ビヒクル製剤(n=2)、又は5mM NAT及び25mM L−メチオニンを含むビヒクル製剤(n=3)のいずれかの単回投与を、両側からの硝子体内注射(50uL/眼)で行った。
試験日1日目に、動物へビヒクル溶液を投与した。毒性の評価は、臨床観察、眼圧(intraocular pressure:IOP)測定、及び眼科検査に基づいて行った。8日目の剖検では、目及び視神経を採取し、ヘマトキシリン及びエオシン(hematoxylin and eosin:H&E)染色のために処理し、米国獣医病理学会(ACVP認定獣医病理学者)が顕微鏡的に分析した。
反復投与によるウサギ硝子体内毒物学試験
網膜障害の治療を目的とした製品の支持における優良試験所基準(Good Laboratory Practice:GLP)毒性試験を、オス及びメスNZWウサギを対象に実施した。動物(n=5/性別)に、ビヒクル製剤(pH5.5で1mM NAT、5mM L−メチオニンを含有する等張溶液)を、隔週1回(1日目、15日目、29日目、及び43日目)の両側硝子体内注射(50uL/眼)によって投与した。毒性の評価は、臨床観察、体重測定、眼科検診、眼圧測定、眼内写真、及び臨床病理学に基づいて行った。45日目の剖検では、組織の包括的なセットを収集し、H&E染色のために処理し、ACVP認定の獣医病理学者が顕微鏡的に分析した。
反復投与によるカニクイザル毒物学試験−硝子体内投与
網膜障害の治療を目的とした製品を支持するGLP毒性試験を、オス及びメスのカニクイザル(Macaca fascicularis)を対象に実施した。動物(n=5/性別)に、ビヒクル製剤(pH5.5で1mM NAT、5mM L−メチオニンを含有する等張溶液)を、10週の期間にわたって隔週1回(1日目、15日目、29日目、43日目、57日目、及び71日目)の両側硝子体内注射(50uL/眼)によって投与した。毒性の評価は、臨床観察、身体検査、心電図、眼科検査、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(optical computed tomography:OCT)、眼内写真、蛍光眼底血管撮影、網膜電図検査、及び臨床病理学に基づいて行った。72又は99日目の剖検では、組織の包括的なセットを収集し、H&E染色のために処理し、ACVP認定の獣医病理学者が顕微鏡的に分析した。
反復投与によるカニクイザル試験−皮下投与
代謝疾患の治療を目的とした製品を支持するGLP毒性試験を、オス及びメスのカニクイザル(Macaca fascicularis)を対象に実施した。動物(n=8/性別)に、ビヒクル製剤(pH5.8で0.3mM NAT、5mM L−メチオニンを含有する等張溶液)を、4週間にわたって隔週1回(1日目、8日目、15日目、22日目、及び29日目)で皮下(0.1mL/kg)投与した。毒性の評価は、臨床観察、身体検査、神経学的及び眼科的検査、臨床病理学的検査、及び尿検査に基づいて行った。32又は99日目の剖検では、組織の包括的なセットを収集し、H&E染色のために処理し、ACVP認定の獣医病理学者が顕微鏡的に分析した。
結果
AAPH遊離ラジカル化学酸化ストレス
AAPHストレス試験は、溶液中の遊離ラジカルへの曝露時における、感受性の高いトリプトファン及びメチオニン残基に対するNATの抗酸化特性を決定するために実施した。以前に報告されたように(Dionら、原稿準備中)、mAb1のペプチドマッピングは、2つの感受性なCDRトリプトファン残基、W52a及びW100b、並びにFvメチオニンHC M82を示した。mAb2については、各々が複数の感受性残基を含む2つのペプチドが特定された(CDR H1 W33/M34/W36及びCDR H3 W99/W100a、並びにFv W103)。複数の感受性残基を有するこれらの2つのペプチドについて、各ペプチドの合計酸化値を本明細書に示す。FcRn受容体と相互作用するFcメチオニン残基252及び428もまた、過去の文献(Bertolotti−Ciarletら、2009年)と一致して、両方の分子において酸化ストレスに感受性であることが見出された。抗酸化効力に対するNAT濃度の効果を決定するために、製剤中のNAT濃度を0mM〜0.3mMの間で変化させ、製剤化されたmAbをAAPHストレスに曝した(図1)。NATなしでは、感受性トリプトファン残基を有するFvペプチドの酸化レベルは、AAPHストレス時に11%(mAb1のW100b)、60%(mAb1のW52a)、及び87%(mAb2のW99/W100a/W103)増加した。これらの初期開始値により、NATの影響を試験するための広範な酸化感受性が得られた。トリプトファン残基の安定化に必要なNATの最小濃度は、残基の初期AAPH感受性と相関した(図1A)。mAb1 W100bの酸化は0.05mM NATの添加により5%に低下したが、mAb1 W52aは、酸化を5%に低下させるために0.3mM NATの添加を必要とした。対照的に、mAb2のW99/W100a/W103の酸化は、0.05mM、0.1mM、及び0.3mMのNATの添加で、それぞれ、77%、62%、及び8%に低下しただけであった。mAb2上のW33/M34/W36を含むペプチドはNAT濃度の増加とともに概して同様に減少したが、そのペプチド中の個々のトリプトファン及びメチオニン残基に対する相対的効果は、明確には決定できなかった。mAb1中のより感受性の低いM82残基はNATの非存在下で最小限に酸化され(3%)、NATの包含は、小さな効果を示した(0.3mM NATで1%酸化までのわずかな減少)。
Fcメチオニン酸化におけるNAT濃度の影響もまた評価した(図1B)。NATなしでは、両mAbのM252及びM428の酸化レベルは、AAPH曝露後に11%〜16%の間であった。NATによる酸化から大きく保護されたCDR残基とは対照的に、Fcメチオニン残基の酸化は、NATの添加により悪化した。試験した最高レベル(0.3mM NAT)では、Fcメチオニン残基の酸化は、NATなしの対応する条件と比較して6%〜12%増加した。
NATはCDR及びFvトリプトファン残基を酸化(0.3mM NATで10%未満の酸化)から保護した(図1A)が、Fcメチオニン残基の酸化を増悪させた(図1B)ので、NATと共製剤化したL−メチオニンを含む実験群を抗酸化効果試験に含めた。L−メチオニン単独(5mM)はAAPH感受性トリプトファン残基に混合効果を及ぼし、mAb1のわずかな改善及びmAb2酸化レベルの無影響又はわずかな悪化を示した(図2A)。Fcメチオニン酸化レベルはL−メチオニン単独の添加で両分子とも2%以下に減少した(図2B)。0.3mM NATと5mM L−メチオニンとの組合せは、AAPH誘導酸化をCDRトリプトファン残基では5%未満まで、Fcメチオニン残基では2%未満まで効果的に減少させ、抗酸化剤賦形剤の組合せは試験した条件下で酸化レベルを制御するための最も効果的なアプローチとなった(図2A〜図2B)。
露光ストレス:高強度UV
タンパク質(10mg/mL)を、高強度UV成分(300キロルクス時間の可視光及び50W・h/mの近UV(320〜400nm)光を6時間照射)を伴う光ストレスに種々のNAT濃度(0〜1mM NAT)で曝露して、光酸化に対する抗酸化剤としてのNATの有効性を決定した(図3A〜図3B)。NATが感光性であるという報告に基づき、AAPH試験と比較して、より広いNAT濃度範囲が含まれた(Chinら、(2008年)「J.Am.Chem.Soc.」第130巻第22号第6912〜6913頁)。試験した条件下では、mAb1及びmAb2中のCDR及びFv残基の大部分は、酸化レベルが1%以下であった。2つのペプチドのみが、試験した光条件(mAb1 W52a(3%)及びmAb2のW99/W100a/W103(6%))に感受性を示した(図3A)。これらの部位の酸化は、0.1mM以上のNATの添加による影響が最小限(mAb1 W52aでは1%未満の変化、mAb2のW99/W100a/W103では1〜2%の増加)であった。抗酸化剤を含まない条件下において光酸化に非感受性であると決定された残基は、試験条件下でNATを製剤に添加した場合、光に非感受性なままであった。
Fv残基とは対照的に、Fcメチオニン残基は、UV光ストレス及びNATの添加に感受性であった(図3B)。例えば、Fcメチオニン残基M252の酸化は、mAb1中においてNATなしで8%から1mM NATの存在下で19%へ、mAb2では16%から31%へと増加した。これらの結果から、AAPHストレスの場合と同様に、UV光ストレス条件下では、NATがFcメチオニン残基の酸化レベルを上昇させることが示唆された。
NATによるFcメチオニンの感作がL−メチオニンの添加により減少するかどうかを決定するために、UV光条件下におけるNAT及びL−メチオニンの個別及び組合せでの影響を評価した。5mM L−メチオニンの添加は、単独で、又は0.3mM NATとの組合せで、この酸化モデルにおいてCDR及びFv残基に有益な影響を与えなかった(図4A)。UV光誘発性Fcメチオニン酸化は、5mM L−メチオニンによって改善された(図4B)が、その効果はAAPHモデルほど有意ではなかった。L−メチオニン(5mM)とNAT(0.3mM)との組合せは、この強いUV光酸化モデルにおいて、賦形剤なしの条件又はL−メチオニン単独のいずれかと比較して、光酸化からのCDRトリプトファン又はFcメチオニンのわずかな保護をもたらした。
NAT及びL−メチオニンの安全性評価
NAT及びメチオニンが非経口製剤のためのFDA不活性成分リストに存在し、急性設定での危険性の同定なしに安全に使用されていることを考慮して、皮下又は硝子体内投与を意図した製剤でのそれらの使用を支持するために、簡略化した安全性リスク評価を実施した。NATとL−メチオニンとの組合せのインビボ忍容性試験を、両方の新しい投与経路に対して行った。加えて、NATがNK−1受容体のアンタゴニストとして作用する可能性を文献報告が示唆したので、インシリコ毒性評価及びNK−1受容体結合のインビトロ評価をNATに対し行った。
NATのインシリコ評価
Derekとは経験的/規則に基づくシステムであり、試験化合物(すなわち、NAT)の構造的特徴を、そのデータベース中の毒性作用の原因と考えられる分子の部分(トキソコフォア)と比較することによって予測を導き出す。NATの構造をDerek Nexusデータベースに送信すると、「報告なし」という結果が返った。
Leadscope(登録商標)は、遺伝毒性を予測するために事前に訓練されたモデルを含む定量的構造活性相関(quantitative structure−activity relationship:QSAR)システムであり、該システムは、米国FDAとの共同研究により開発され、高い感度及び負の予測性を示している(Sutterら(2013年)「Reg.Tox.Pharm.」第67巻第1号第39〜52頁)。Leadscope(登録商標)は、合計40のモデルで陽性結果の可能性を評価した。これらのうち、2つのモデルのみが陽性と予測され,残りの38モデルは陰性と予測された(すなわち、毒性の予測なし)。遺伝毒性カテゴリでは、「他の細胞における姉妹染色分体交換(sister chromatid exchange:SCE)」モデルが陽性であり、予測陽性確率は0.829であった。対照的に、他の2つのSCEモデル(SCEインビトロ及びSCEインビトロCHO)は両方とも陰性であった。げっ歯類発がん性カテゴリでは、「発がん性マウスオス」モデルが0.622の陽性予測確率で陽性と予測された。0.4〜0.6の予測確率は、Leadscope(登録商標)ツールでは限界予測と見なされる。このモデルの2回目の解析では陰性の予測値が得られ、マウスの発がん性(オス及びメス合算)に関する全体的な予測値は陰性であった。
インビトロ受容体結合及び機能評価
NK−1受容体への参照化合物(Sar、Met(O11)−SP及びL733,060)のアゴニスト及びアンタゴニスト結合に対するIC50は、それぞれ、4.2−10M及び4.7−10Mであった。対照的に、NK−1受容体へのNATのアゴニスト又はアンタゴニスト結合のいずれかに対するIC50値は計算できず、このアッセイで用いた条件下におけるNATの活性の欠如を示した。
インビボ忍容性評価−ウサギ及びカニクイザルの毒物学試験
最大5mMのNAT及び最大25mMのL−メチオニンを含むビヒクル製剤は、最長6週間の単回及び反復投与の両方によるウサギの硝子体内投与で良好な忍容性を示した。0.3mM NAT及び1mM L−メチオニンを含むビヒクル製剤の投与は、最長7週間の隔週の硝子体内投与によって、及び同様に、最長4週間の皮下投与の毎週投与によって、カニクイザルにおいて良好な忍容性を示した。いずれの種においても、ビヒクルに関連した臨床観察体重、又は身体検査、神経学的検査若しくは眼科学的検査、眼圧、OCT、眼内写真、蛍光眼底血管撮影、網膜電図検査、血液学的検査、血液凝固及び臨床化学的パラメータ、尿検査、又は肉眼的若しくは顕微鏡的病理学的検査における変化は認められなかった。
まとめると、本明細書で提供される試験は、AAPH分解によって生成されるROSからCDRトリプトファン残基をNATが保護するのに効果的である一方で、Fcメチオニン残基を化学的及び光誘導酸化に感作させた可能性があることを実証した。NATへのL−メチオニンの添加は、化学的に誘発された酸化からトリプトファン及びメチオニン残基の両方を効果的に保護し、かつ光酸化レベルは、試験された条件では抗酸化剤を使用しない製剤で見られるレベルと同等又はそれ以下であった。これらの研究は、NATとL−メチオニンとの組合せが、生物治療用製造及び貯蔵の間に一般的に起こる酸化ストレスのタイプから保護することができることを実証した。重要なことに、安全性評価によって、両賦形剤とも忍容性が良好であることが確認された。したがって、本明細書に示した証拠は、NAT及びL−メチオニンが生物治療製剤中の抗酸化剤賦形剤として安全かつ効果的であり得、トリプトファン及び/又はメチオニン酸化の管理のための製剤開発における重要な新規の選択肢を提供することを示唆した。
実施例2.抗酸化剤はAAPHストレス試験で酸化を低減させる
二重特異性抗体である抗体Mab3を使用して、NAT+メチオニンの抗酸化能を評価した。Mab3を、1mg/mLにて1mM AAPHと、16時間40℃で、1mM NAT及び5mMメチオニンとともに又はこれらなしに、混合した。次いで、Mab3の酸化を上記のように質量分析によって測定し、効力についてはELISAによって測定した。結果を表1に示す。
Figure 2021533149
溶液へのNAT+メチオニンの添加は、Mab3の酸化を劇的に減少させた。
実施例3.抗酸化剤の添加は化学酸化リスクを軽減する
IgG1抗体であるMab4を、100mg/mLで、20mMヒスチジンHCl、50mM塩化ナトリウム、200mMスクロース、0.04%ポロキサマー188中に製剤化した。次いで、抗体製剤を、AAPHの存在下において、0、5、10mM、又は10mM AAPH+1mM NAT+5mMメチオニンで、40℃にて24時間インキュベートした。次いで、試料を上記の通りにMSによって評価した。
結果を図5に示す。Fc M272のおよそ15%の酸化が5 mM AAPHで観察された。これは10%のtrp酸化に相当する。1mM NAT+5mMメチオニンの添加は、酸化をTrpで約50%、Fcメチオニン272で約80%低減させた。メチオニンCDRの変化はいずれのレベルでも観察されなかった。NAT+メチオニンの添加は、ELISAで測定した通り、Ag4と結合するMab4の特異活性の低減を改善した。
Figure 2021533149
実施例4.光酸化リスク軽減のためのNAT/メチオニンの添加
NAT/メチオニンが光酸化を低減できるかどうかを決定するために試験を行った。IgG1とは異なるアイソタイプを有するIgG抗体であるMab5を、150mg/mLの濃度で、200mMのアルギニンコハク酸、pH5.5中において、NAT及びメチオニンなしで、0.3mM NAT+5mMのメチオニン又は0.3mM NAT+10mMのメチオニンにより製剤化した。試料を300,000ルクス時間曝露させてリスクを評価した。結果を表3に示す。
Figure 2021533149
NAT/metは周辺光関連酸化からMab5を保護した。
実施例5.NAT/metの添加により酸化及び力価保護が得られる
抗体医薬品は、保存期間の終了時におよそ7〜8%のMet251の酸化を示すことがあり、典型的には、5℃で2年以上の酸化を示すことがある。これを模倣するために、抗体を、Met251の約15%の酸化をもたらす5mM AAPHで処理した。試料を、NAT/met有り又は無しで5mM AAPHによって処理し、その後W104及びM 251の酸化を分析した。抗体の効力もまた測定した。表4に示すように、抗体プールへの0.3mM NAT+5mMメチオニンの添加は、W104及びM251の酸化を低減させ、AAPHストレス後の抗体の効力の低下を低減させた。
Figure 2021533149
加えて、クローンのプールは、上記のように周辺光ストレスを受けた。表5に示すように、クローンのプールは上記と同じ色の変化を経る。
Figure 2021533149
実施例6.NAT/メチオニンは化学酸化リスクを軽減する
AAPHストレス試験を使用して、NAT及び/又はメチオニンによる酸化保護を評価した。二重特異性抗体であるMab6を、1mg/mLで、20mM酢酸ヒスチジン中、1mM AAPHにより、16時間40℃で、NAT及び/又はメチオニンの存在下又は非存在下においてインキュベートした。試料を上記の通り酸化について分析した。表Xに示すように、0.1〜0.5mMのNAT濃度により酸化保護が得られ、メチオニン単独でもAAPHからいくらかの保護が得られる。
Figure 2021533149
実施例7.NAT/メチオニンは化学的に誘導される酸化から保護する。
二重特異性抗体である抗体Mab7を、位置W52の化学的に誘導された酸化について、1mg/mLの分子を、20mM酢酸ヒスチジン中にて、1mM AAPHとともに16時間40℃で、NAT及びメチオニンの存在下又は非存在下においてインキュベートすることによって評価した。試料を酸化のペプチドマップにより分析した。図6に示すように、NAT+メチオニンの組合せは、化学的に誘導される酸化からW52を保護した。

Claims (67)

  1. ポリペプチド、N−アセチル−DL−トリプトファン(NAT)、及びL−メチオニンを含む液体製剤であって、前記NATは前記ポリペプチド内の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供され、前記L−メチオニンは前記ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供される、液体製剤。
  2. 前記製剤中のNATの濃度が、約0.01〜約25mMである、請求項1に記載の液体製剤。
  3. 前記製剤中のNATの濃度が、約0.05〜約1.0mMである、請求項1又は2に記載の液体製剤。
  4. 前記製剤中のNATの濃度が、約0.05〜約0.3mMである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体製剤。
  5. 前記製剤中のNATの前記濃度が、約0.05mM、約0.1mM、約0.3mM、及び約1.0mMからなる群から選択される濃度である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体製剤。
  6. 前記製剤中のL−メチオニンの濃度が、約1〜約125mMである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体製剤。
  7. 前記製剤中のL−メチオニンの濃度が、約5〜約25mMである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体製剤。
  8. 前記製剤中のL−メチオニンの濃度が、約5mMである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体製剤。
  9. 前記製剤中のNATの濃度が約0.3mMであり、前記製剤中のL−メチオニンの濃度が約5.0mMである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体製剤。
  10. 前記製剤中のNATの濃度が約1.0mMであり、前記製剤中のL−メチオニンの濃度が約5.0mMである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体製剤。
  11. 前記ポリペプチドが、抗体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の液体製剤。
  12. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、前記抗体の可変領域内に位置する、請求項11に記載の液体製剤。
  13. 前記1つ以上のトリプトファン残基がW103を含み、残基のナンバリングがKabatナンバリングに従う、請求項11又は12に記載の液体製剤。
  14. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、前記抗体のHVR内に位置する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の液体製剤。
  15. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、前記抗体のHVR−H1及び/又はHVR−H3内に位置する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の液体製剤。
  16. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、W33、W36、W52a、W99、W100a、及び/又はW100bを含み、残基のナンバリングが、Kabatナンバリングに従う、請求項11〜15のいずれか一項に記載の液体製剤。
  17. 前記1つ以上のメチオニン残基が、前記抗体の可変領域内に位置する、請求項11〜16のいずれか一項に記載の液体製剤。
  18. 前記1つ以上のメチオニン残基がM34及び/又はM82を含み、残基のナンバリングがKabatナンバリングに従う、請求項11〜17のいずれか一項に記載の液体製剤。
  19. 前記1つ以上のメチオニン残基が、前記抗体の定常領域内に位置する、請求項11〜18のいずれか一項に記載の液体製剤。
  20. 前記1つ以上のメチオニン残基がM252及び/又はM428を含み、残基のナンバリングがEUナンバリングに従う、請求項11〜19のいずれか一項に記載の液体製剤。
  21. 前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、請求項11〜20のいずれか一項に記載の液体製剤。
  22. 前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である、請求項11〜21のいずれか一項に記載の液体製剤。
  23. 前記ポリペプチド中の前記1つ以上のトリプトファン残基の前記酸化が、NATを欠く液体製剤中の前記ポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基の前記酸化と比較して、低減される、請求項1〜22のいずれか一項に記載の液体製剤。
  24. 前記ポリペプチド中の前記1つ以上のメチオニン残基の前記酸化が、L−メチオニンを欠く液体製剤中の前記ポリペプチドにおける1つ以上の対応するメチオニン残基の前記酸化と比較して、低減される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の液体製剤。
  25. 前記ポリペプチド中の前記1つ以上のトリプトファン残基及び前記1つ以上のメチオニン残基の前記酸化が、NAT及びL−メチオニンを欠く液体製剤中の前記ポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基及び1つ以上の対応するメチオニン残基の前記酸化と比較して、低減される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の液体製剤。
  26. 前記酸化が、約40%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%低減される、請求項23〜25のいずれか一項に記載の液体製剤。
  27. 前記製剤中の前記ポリペプチド濃度が、約1mg/mL〜約250mg/mLである、請求項1〜26のいずれか一項に記載の液体製剤。
  28. 前記製剤が、約4.5〜約7.0のpHを有する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の液体製剤。
  29. 前記製剤が、1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載の液体製剤。
  30. 前記1つ以上の賦形剤が、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、及び等張化剤からなる群から選択される、請求項29に記載の液体製剤。
  31. 前記製剤が、対象への投与に好適な医薬製剤である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の液体製剤。
  32. 前記医薬製剤が、皮下、静脈内、又は硝子体内投与に適している、請求項31に記載の液体製剤。
  33. 前記対象が、ヒトである、請求項31又は32に記載の液体製剤。
  34. 請求項1〜33のいずれか一項に記載の液体製剤を含む、製品又はキット。
  35. NAT及びL−メチオニンを前記製剤に添加することを含む、水性製剤中のポリペプチドの酸化を低減する方法であって、前記NATは前記ポリペプチド中の1つ以上のトリプトファン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供され、前記L−メチオニンは前記ポリペプチド中の1つ以上のメチオニン残基の酸化を防ぐのに充分な量で提供される、方法。
  36. 前記NATが、約0.01〜約25mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35に記載の方法。
  37. 前記NATが、約0.05〜約1mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35又は36に記載の方法。
  38. 前記NATが、約0.05〜約0.3mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜37のいずれか一項に記載の方法。
  39. 前記NATが、約0.05mM、約0.1mM、約0.3mM、及び約1.0mMからなる群から選択される濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
  40. 前記L−メチオニンが、約1〜約125mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜39のいずれか一項に記載の方法。
  41. 前記L−メチオニンが、約5〜約25mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜40のいずれか一項に記載の方法。
  42. 前記L−メチオニンが、約5mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜41のいずれか一項に記載の方法。
  43. 前記NATが約0.3mMの濃度になるように前記製剤へ添加され、前記L−メチオニンが約5.0mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜42のいずれか一項に記載の方法。
  44. 前記NATが約1.0mMの濃度になるように前記製剤へ添加され、前記L−メチオニンが約5.0mMの濃度になるように前記製剤へ添加される、請求項35〜42のいずれか一項に記載の方法。
  45. 前記ポリペプチドが、抗体である、請求項35〜44のいずれか一項に記載の方法。
  46. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、前記抗体の可変領域内に位置する、請求項45に記載の方法。
  47. 前記1つ以上のトリプトファン残基がW103を含み、残基のナンバリングがKabatナンバリングに従う、請求項45又は46に記載の方法。
  48. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、前記抗体のHVR内に位置する、請求項45〜47のいずれか一項に記載の方法。
  49. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、前記抗体のHVR−H1及び/又はHVR−H3内に位置する、請求項45〜48のいずれか一項に記載の方法。
  50. 前記1つ以上のトリプトファン残基が、W33、W36、W52a、W99、W100a、及び/又はW100bを含み、残基のナンバリングが、Kabatナンバリングに従う、請求項45〜49のいずれか一項に記載の方法。
  51. 前記1つ以上のメチオニン残基が、前記抗体の可変領域内に位置する、請求項45〜50のいずれか一項に記載の方法。
  52. 前記1つ以上のメチオニン残基がM34及び/又はM82を含み、残基のナンバリングがKabatナンバリングに従う、請求項45〜51のいずれか一項に記載の方法。
  53. 前記1つ以上のメチオニン残基が、前記抗体の定常領域内に位置する、請求項45〜52のいずれか一項に記載の方法。
  54. 前記1つ以上のメチオニン残基がM252及び/又はM428を含み、残基のナンバリングがEUナンバリングに従う、請求項45〜53のいずれか一項に記載の方法。
  55. 前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、請求項45〜54のいずれか一項に記載の方法。
  56. 前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である、請求項45〜55のいずれか一項に記載の方法。
  57. 前記ポリペプチド中の前記1つ以上のトリプトファン残基の前記酸化が、NATを欠く液体製剤中の前記ポリペプチドにおける1つ以上の対応するトリプトファン残基の前記酸化と比較して、低減される、請求項35〜56のいずれか一項に記載の方法。
  58. 前記ポリペプチド中の前記1つ以上のメチオニン残基の前記酸化が、L−メチオニンを欠く液体製剤中の前記ポリペプチドにおける1つ以上の対応するメチオニン残基の前記酸化と比較して、低減される、請求項35〜57のいずれか一項に記載の方法。
  59. 前記ポリペプチド中の前記1つ以上のトリプトファン残基及び前記1つ以上のメチオニン残基の前記酸化が、NAT及びL−メチオニンを欠く液体製剤中の前記ポリペプチドにおける、1つ以上の対応するトリプトファン残基及び1つ以上の対応するメチオニン残基の前記酸化と比較して、低減される、請求項35〜58のいずれか一項に記載の方法。
  60. 前記酸化が、約40%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%低減される、請求項57〜59のいずれか一項に記載の方法。
  61. 前記製剤中の前記ポリペプチド濃度が、約1mg/mL〜約250mg/mLである、請求項35〜60のいずれか一項に記載の方法。
  62. 前記製剤が、約4.5〜約7.0のpHを有する、請求項35〜61のいずれか一項に記載の方法。
  63. 前記製剤が、1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項35〜62のいずれか一項に記載の方法。
  64. 前記1つ以上の賦形剤が、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、及び等張化剤からなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
  65. 前記製剤が、対象への投与に好適な医薬製剤である、請求項35〜64のいずれか一項に記載の方法。
  66. 前記医薬製剤が、皮下、静脈内、又は硝子体内投与に適している、請求項65に記載の方法。
  67. 前記対象が、ヒトである、請求項65又は66に記載の方法。
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