[0018] 例えば血管内動脈瘤修復(EVAR)および経カテーテル弁置換または修復(TVR)術式を含む、主に医学的適用のための変動する多孔性の血管テキスタイルが、提供される。
[0019] 本開示の態様は、例えば、本明細書で開示される特徴の1以上を含まないような概念と比較して、テキスタイルの一部または全部にわたって変動する多孔性を有する移植可能なテキスタイルを提供する。
[0020] 血管内術式、例えば血管内動脈瘤修復および経カテーテル大動脈弁置換術式の間に、埋め込み可能なテキスタイルが、血管の罹患領域を補強するために患者内に挿入されることができる。医学的転帰は、移植されたテキスタイル中への組織の再生性内殖の速度によって影響される。可変密度の織られた移植可能なテキスタイルは、移植されたテキスタイルが移植されたグラフトの異なる領域において異なる組織内殖速度を促進することを可能にし、結果として向上した医学的転帰および回復時間の短縮をもたらす。
[0021] テキスタイルプロセスを通した血管内動脈瘤修復グラフトの近位端および遠位端における構造変化の操作、例えば織成パターン、横糸挿入の密度の減少または多孔性の増大により、テキスタイルの特徴、例えば厚さおよび縫合糸強度を維持しながら、組織内殖が、特定の領域において促進されることができる。
[0022] 一態様は、単一の織られた構造から形成された移植可能な織られたテキスタイル複合材を提供する。テキスタイルは、縦糸および/または横糸中に非吸収性(すなわち永久)および/または吸収性ヤーンの両方を含有することができる。吸収性ヤーンに対する非吸収性ヤーンの比率は、一定であることができ、またはテキスタイル内で変動することもできる。1インチ当たりのエンド数、1インチ当たりのピック数または両方が、テキスタイル内で変動し、結果としてテキスタイル全体にわたる密度における変動をもたらす。密度の変動は、結果としてテキスタイル構造にわたる可変の多孔性をもたらす。テキスタイル複合材は、さらに細孔を充填し、結果として水不透過性障壁をもたらす吸収性コーティングを含む。
[0023] 別の態様は、複数の織られた構造から形成された移植可能な織られたテキスタイルを提供する。テキスタイルは、縦糸および/または横糸中に非吸収性(すなわち永久)および/または吸収性ヤーン両方を含有することができる。吸収性ヤーンに対する非吸収性ヤーンの比率は、一定であることができ、またはテキスタイル内で変動することができる。1インチ当たりのエンド数、1インチ当たりのピック数または両方が、場合によりテキスタイル内で変動し、結果としてテキスタイル全体にわたる密度における変動をもたらす。異なる織成ならびにエンドおよびピックの任意の変動は、密度の変動をもたらし、結果としてテキスタイル構造にわたる可変の多孔性をもたらす。ある態様において、テキスタイルは、複合材テキスタイルであり、それは、さらにテキスタイルの上を覆いテキスタイルと密着する吸収性コーティングを含み、コーティングは、細孔を充填して水不透過性障壁を提供する。
[0024] テキスタイルは、平織り、綾織り、うね織り(例えば縦うね織りまたは横うね織り)、繻子織り、もじり織り、模紗織り、なし地織り、バスケット織りおよび/または杉綾織りを含む様々な織られた構造から形成されることができる。ある態様において、テキスタイルは、平織り、2×2綾織り、横うね織りまたは繻子織りから形成される。ある態様において、テキスタイルは、実質的に全体にわたって均一な織成構造を有することができ、一方で他の態様では、テキスタイルは、1以上の遷移領域によって接続されているテキスタイルの異なる領域における2以上の異なる織成構造を含む連続的な織成であることができることは、理解されるであろう。
[0025] ヤーンは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであることができ、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびコラーゲンならびに例えばPETおよびPTFEのようなより永久的な材料と織り合わせられることができるPGA、PGS、PLAおよびPCLを含む様々な吸収性材料を含む移植可能なテキスタイルに関して、適切に使用されることができる構造材料から形成されることができる。特定の現在好ましい態様において、ヤーンは、PETを含む。ある態様において、ヤーンは、実質的に丸い横断面を有する。
[0026] ヤーンのデニールは、10〜200デニールの範囲であることができる。ある態様において、ヤーンのデニールは、10〜50デニール、例えば少なくとも10デニール、少なくとも12デニール、少なくとも14デニール、少なくとも15デニール、少なくとも16デニール、少なくとも17デニール、少なくとも18デニール、少なくとも19デニール、少なくとも20デニール、少なくとも21デニール、少なくとも22デニール、少なくとも24デニール、約30デニール、約40デニール、50デニール未満、および前記のいずれかのあらゆる範囲または部分範囲である。
[0027] 例示的な態様に従うテキスタイルは、好ましくは1インチ当たり700エンド未満のエンド数(EPI)を有し、400未満の1インチ当たりのピック数(PPI)を有する。ある態様において、テキスタイルは、織機において600EPI未満、500EPI未満、400EPI未満、120〜320EPIおよび300PPI未満、200PPI未満、150PPI未満、80〜148PPIまたは前記のいずれかのあらゆる範囲もしくは部分範囲を有する織られたテキスタイルである。EPIおよびPPIは一般に前記の範囲内に入るが、EPIおよびPPIの具体的な数は、本明細書において特定の態様に関してより完全に記載されるように、テキスタイル内の異なる領域の間で変動し得ることは、理解されるであろう。場合により、数本の縦糸のエンドが、それぞれのエンドを補強するために束ねられて1つのものとして織られることができる。これは、結果として向上した縫合糸保持強度特徴を有するテキスタイル構造をもたらし得る。
[0028] 織った後、結果として得られたテキスタイルは、布帛上のあらゆる潤滑(lubrications)または汚れを除去するためにごしごし洗われる(scoured)ことができ、次いで例えばテキスタイルの形状を管状の構造物へと固定させるためにステンレス鋼マンドレル上で熱硬化させられることができる。一態様において、布帛は、洗浄され、次いで形状を固定し寸法安定性を維持するために約205℃(約400°F)で熱硬化させられる。
[0029] 結果として得られた裸のテキスタイルは、一般に35〜300マイクロメートルの範囲の厚さ、ある態様において110〜280マイクロメートルである厚さを有する。
[0030] 心臓弁置換または修復のような様々な医学的適用において、水不透過性の障壁を有することが望ましい可能性があることは、理解されるであろう。従って、裸のテキスタイルは、水透過性を低下させるために、織った後に生体吸収性または非生体吸収性材料でコーティングされ、それにより複合材テキスタイルを形成することができる。
[0031] 適切なコーティング材料は、様々なエラストマー、再生性材料、組織内殖促進材料、摩擦低減材料および摩擦増進材料を含む。適切な非生体吸収性コーティング材料は、ポリウレタン(PU)、シリコーン類およびエチレン酢酸ビニル(EVA)を含むが、それらに限定されない。適切な合成に由来する吸収性材料は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リジン−ポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)、アミノ酸が組み込まれたPGSおよびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。適切な天然由来の吸収性材料は、コラーゲン、フィブリン、エラスチン、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン類、プロテオグリカン類、多糖類、タンパク質、アミノ酸、細胞外マトリックス構成要素およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。ある態様において、コーティングは、スプレーコーティング、浸漬コーティングまたは積層技法により適用されることができる。
[0032] ある態様において、テキスタイルの水透過性は、500mL/分/cm2未満、400mL/分/cm2未満、375mL/分/cm2未満、350mL/分/cm2未満、325mL/分/cm2未満、300mL/分/cm2未満、275mL/分/cm2未満、250mL/分/cm2未満、225mL/分/cm2未満、200mL/分/cm2未満、150mL/分/cm2未満、100mL/分/cm2未満、75mL/分/cm2未満、50mL/分/cm2未満、30mL/分/cm2未満、20mL/分/cm2未満、10mL/分/cm2未満、5mL/分/cm2未満、3mL/分/cm2未満および/または1mL/分/cm2未満である。
[0033] テキスタイル上への融合したコーティングの組み込みは、テキスタイルの細孔を一時的に封鎖して低水透過性テキスタイルを提供することができる。体の中に移植された場合、コーティングされたテキスタイルは、体の天然細胞の内殖まで、手術部位において一時的な液体不透過性障壁を提供する。1以上の付近の天然組織の再生速度と調和するポリマー分解速度を有する1種類以上の生体材料を選択することによって、複合材は、様々な組織の内殖を時間空間的に選択的に促進する区域を有するように調整されることができる。この分解速度は、フィブリンのような天然材料のように1週間ほどの短さであることができ、ポリカプロラクトン(PCL)のような合成材料のように1〜2年ほどの長さであることもできる。PGSは、その分解速度がグリセロール:セバシン酸の化学量論を変えることによって調整されることができるため、特に有用である。
[0034] 融合した生体材料の分解速度の他に、生体材料の機械的特性も、組織の内殖および再生に影響を及ぼす。同様に、分解速度に対して、様々な細胞型は、それらがその上およびその中へと成長するであろう支持体の剛性に関する好みを有する。従って、生体材料の選択は、様々な組織の内殖を選択的に促進するように調整されることができる。支持体の剛性も、幹細胞の分化に影響を及ぼす可能性があり、従って、天然組織中の多能性または前駆細胞は、一度それらが支持体に遭遇すると、所望の分化経路へと駆動され得る。また、PGSは、その機械的特性がグリセロール:セバシン酸の化学量論を変化させることにより調整され得るため、この適用において好ましい可能性がある。
[0035] 加えて、テキスタイルの細孔の寸法、細孔の形状および繊維のテクスチャーは、全て細胞浸潤に影響を及ぼす。様々な細胞型は、特定の細孔の大きさ、形状、縦横比および/または整列に関する選好を有する。これは、優先的に、時間空間的に、特定の細胞型の内殖を誘導および促進し、前駆細胞の成熟組織への分化を選択的に駆動し、そして再生の間に内在性組織環境を模倣するテキスタイル設計パラメーターが選択されることを可能にする。
[0036] 例示的な態様において、グラフトが周囲の天然組織に適切に固着して(seal to)グラフトの移動および手術後の漏出を回避するために、天然組織は、構造物内で成長する。細胞浸潤は、小さすぎる(例えば5マイクロメートル以下の)細孔では起こり得ない。大きすぎる(例えば1ミリメートル以上の)細孔は、細胞浸潤を経験し得るが、細孔内部は、排出された細胞外マトリックス(ECM)が完全に埋めるには大きすぎ、従って組織−グラフト界面は、漏れやすく、接着が不十分である。細胞型は、特定の大きさの範囲および形状の細孔において最も最適に移動し、生存可能なままであり、増殖し、分化し、ECMを排出し、そして成熟組織を生成することが知られている。類似の細胞挙動は、孔、繊維および表面のテクスチャー、パターンおよび整列で生じる。例えば、骨芽細胞による骨再生は、150〜350マイクロメートルの孔径で最もよく起こり、一方で軟骨細胞による軟骨再生は、50〜250マイクロメートルの孔径で最もよく起こる。細胞レベルを超えて、組織レベルでのグラフト係留を考慮する場合、整形外科用インプラントおよび周囲の骨組織の間の固定は、インプラントが骨組織内殖のための適切な多孔性、孔径および表面の粗さ、例えば600マイクロメートルの孔径および65%の多孔性を有するように設計される場合に最短の持続時間の下で最高に達成される。末梢軸索に関して、再生は、200〜750マイクロメートルの長い細孔において最もよく起こり、一方で軸索の内殖および外植(outgrowth)は、わずか20〜70マイクロメートルの細孔を必要とするだけである。内皮細胞および周皮細胞による血管再生は、ガイドされた整列している構造的合図(aligning structural cue)、60マイクロメートル未満の小さい孔径および50マイクロメートル未満の小さい細孔間距離で最もよく起こる。内皮細胞の大きさに対する孔径のより高い比率は、より成功した細胞移動および侵入をもたらす。心血管平滑筋細胞は、40〜150マイクロメートルの孔径を有する足場上で最も良く培養される。従って、例示的な態様は、例えば布帛内の多孔性を変動させ、天然細胞が浸潤することができる開放空間を作り出す等の異なる特徴を有する操作されたテキスタイルを提供するために用いられることができる。
[0037] 図1において示されるように、布帛構造物の密度を変動させることは、前記のテキスタイル中の材料の量を減少または増加させることができ、それは、今度は、テキスタイルの特定の領域において多孔性を開放して組織が成長することができるヤーンの間のより大きい空間を可能にする能力を提供する。
[0038] 一態様において、密度は、ピックの挿入における漸進的な減少(すなわちぼかし技法)によって変化し、それにより細孔の大きさを漸進的に増大させる。その後、テキスタイルは、図3において示されているように、再生性材料、好ましくはPGSでコーティングされて、水不透過性複合材を形成する。多孔性は、吸収性生体材料、例えばポリグリコール酸(PGA)または再生性材料、例えばPGSヤーンを永久的な材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)との組み合わせで指定された領域中に導入することにより、経時的に制御されることができる。吸収性材料および非吸収性材料の両方を使用する態様では、吸収性材料は、時間が経てば体により吸収され、それは、材料が以前にあった場所に開口部を作りだす。ある態様において、特定の領域における再生性ヤーンの使用は、体に材料を吸収することを促すだけでなく内皮症を促進することによって天然組織を成長させることも促し得る。
[0039] 一態様において、複数の吸収性材料が、非吸収性材料と組み合わせて使用されることができ、例えば、テキスタイル形成の間に第1の吸収性材料のヤーンを予め決定された様式で非吸収性ヤーンの間に散在するように織り、その後、複合材テキスタイルの形成において、裸のテキスタイルを第2の吸収性材料でコーティングすることができる。例えば、移植後、吸収性コーティング材料、例えばPGSコーティングは、数週間以内に体によって吸収されることができ、手術後の最初の回復の間にインプラントの大きい領域にわたる内殖を可能にし、一方でよりゆっくりと吸収される異なる吸収性材料、例えばPGAのヤーンは、テキスタイル内でゆっくりと増大する多孔性の領域を提供し、1〜2年以上の継続した組織内殖を可能にすることができる。残っている非吸収性材料は、最終的に、組織成長のための永久的な足場を提供する。
[0040] 例示的な態様において、グラフトの指定された領域内で多孔性が変動するだけでなく、生体吸収性材料も、グラフトの近位領域および遠位領域内に導入される。グラフト全体が、炎症を最小限にするために再生性材料でさらにコーティングされることができる。再生性コーティングは、この複合材が一時的に水不透過性の特徴を有することも可能にする。例えば、複合材は、4〜6週間、または必要に応じてより長い間もしくはより短い間、組織再生のための十分な時間を可能にするために、水不透過性のままであることができる。複合材は、足場の役目を果たし、指定された生体吸収性領域において細胞がグラフト上で、およびグラフトを通って増殖するための構造を提供する。多孔性の継続的な増大は、影響を受ける領域への栄養素および成長因子の流れも増強し得る。
[0041] 一態様において、複合材グラフトは、図6において示されるように、同じ織成構造内で密度が変動する技法を使用し、さらに吸収性および/または再生性繊維をより大きな多孔性の領域中に導入して別のレベルの細胞増殖統合を構造物中に加える。ステントグラフト内の生体材料が分解し始める際、天然細胞は、グラフトを通って統合し、組織壁に付着し、結果として血管系内でのより少ない固着の失敗および移動の可能性をもたらす。
[0042] 図5は、第1構造の中央領域を有する織られた管状複合材グラフトの態様を描写する。図5の例では、第1構造は、平織り構造である。織られたグラフトは、第2構造によって形成された遠位端領域を含む。図5の例では、遠位端領域は、もじり織り、模紗織りまたは偏向横糸構造であることができる。ヤーン密度は、遠位端領域内で変動する。図5の例では、ヤーン密度は、中央領域から離れる方向において減少する。遠位領域と同様に、近位端領域は、第3構造によって形成される。図5の例では、近位端領域は、もじり織り、模紗織りまたは偏向横糸構造であることができる。ヤーン密度は、近位端領域内で変動する。図5の例では、ヤーン密度は、中央領域から離れる方向において減少する。第2および第3構造は、同じであることも異なることもできる。
[0043] 吸収性ヤーンは、変動する、または一定の密度で図5の管状テキスタイルの縦糸または横糸中に挿入されることができる。例えば、中央および遠位領域の境界で、吸収性ヤーンが、横糸中に挿入され、10ピック当たり1回非吸収性ヤーンを置き換えることができる。挿入の比率は、例えばテキスタイルの縁で3ピック当たり1回非吸収性ヤーンを置き換える非吸収性ヤーンをもたらすように、領域にわたって変動させられることができる。挿入の比率は、領域の長さにわたって一定に保たれることができ、線形に増大もしくは減少させられることができ、または非線形に増大もしくは減少させられることができる。ある態様において、挿入の比率は、遠位および近位の縁の近くで増大させられる。
[0044] 標的化された細胞増殖を促進するための別の態様は、図4において示されるように、少なくとも2種類の異なる織成構造を使用することによって表面のトポグラフィーを変化させることによる。一態様において、グラフトの中心は、平織りのようなより平坦なトポグラフィーを示すことができ、ここでは、単一の層の織られた構造中にそれほど多くの山および谷は作り出されない。逆に、内殖のための標的とされる領域は、ポケットを有する可変/変動性表面を使用することができ、それは、一度コーティングされると再生性材料で満たされるであろう。ある技法は、図8において示されるように、偏向横糸織成構造の形成を含む。コーティング後、この織成の谷は、コーティングの間に形成されるための特定の領域において再生性材料のプールを提供する。これらのプールは、転じて細胞成長および組織壁へのグラフトの付着を促進するための部位を提供する。
[0045] プールの標的サイズは、組織機能単位の大きさと一致し得る。機能単位は、組織がなおその機能および特性を保持していることができる最小スケールとして定義される。あるいは、プールの標的サイズは、特定の細胞型の内殖に最適であるサイズと一致する。あるいは、プールの標的サイズは、図7において示されるように、定められた量の栄養素、抗酸化剤、酸素、化学走化性物質、成長因子、あらゆる生理活性小分子もしくは大分子、および/またはあらゆる不活性成分を含有および/または放出するように設計される。
[0046] 一態様において、複合材グラフトは、少なくとも2種類の織成構造を組み合わせ、横糸挿入によって近位および遠位領域中に吸収性生体材料を導入することによって形成されることができる。ある態様において、横糸挿入は、図6において示されるように、特定の領域における細胞増殖を促進するために、ある領域にわたって不均一である。吸収性材料は、内殖を促進するために、テキスタイル全体にわたって変動する頻度で挿入されることができる。あるいは、または加えて、1インチ当たりのエンド数および/または1インチ当たりのピック数は、近位および遠位領域におけるグラフトの様々な領域の密度を変化させて孔径を増大させるために変動させられることができ、それは、図9において示されているように、異なる織成構造の領域を有することによって成し遂げられることができる。
[0047] 別の態様は、2つの異なる織成構造プロファイルの間で線形成形を使用することができ、それは、グラフトの本体および表面の内殖の間により強い結合を作り出すことができる。線形成形が、図10において示されている。図10は、織られた管状複合材の移植可能なテキスタイルの例である。図10の例では、テキスタイルは、第1構造の中央領域を含む。図10の例では、第1構造は、20デニールの縦糸および20デニールの横糸から形成されたダブルクロス(double cloth)平織り構造である。中央領域は、約250ミリメートルの長さを有する。テキスタイルは、平織りおよび縦表(warp faced)綾織りが交互になった構造を有する遠位および近位端領域も含む。その構造は、20デニールの縦糸および20デニールの横糸から形成される。織成の変動は、テキスタイルの表面プロファイルを増大させ、移植後の組織内殖の増大を促進し得る。遠位および近位端領域は、それぞれ約80ミリメートルの長さである。中央領域ならびに遠位および近位の縁領域の間の境界は、さらに、グラフトの本体および組織内殖の間の結合強度を増大させるために、線形形状を有し得る。
[0048] 例示的な態様において、低プロファイルテキスタイル構造(例えば約60ミクロン以下の厚さを有する裸のテキスタイル)をコーティングする場合、テキスタイルと共に伸長し、その低い水透過性特徴を維持するエラストマーポリマーが、使用されることができる。エラストマーコーティングは、その完全性を維持する一方で、体の内部運動および脈動に反応して独特の幾何学的形状に適合する。
[0049] ある態様において、エラストマー繊維は、脈動挙動を増強するために織られたテキスタイル中に統合されることもできる。ある態様において、エラストマー繊維は、ポリウレタン(PU)、バイクリル(ポリガラクチン910)またはポリカプロラクトン(PCL)を含み得る。エラストマー繊維は、テキスタイルの縦糸または横糸中に統合されることができる。
[0050] ある態様において、コーティングは、細胞増殖促進材料、例えばPGS/栄養素/アミノ酸/クエン酸付加物ポリマーで構成されることができ、それは、細胞増殖、生存率、分化、治癒およびそれらの組み合わせを増強するように配合される。
[0051] 一態様において、織られたグラフトは、哺乳類の体の中に移植されるように設計された織られた管状布帛として形成される。特に、グラフトは、ヒト患者中に移植されるように設計される。一態様において、グラフトは、連続的に織られた管状要素である。
[0052] 下記でさらに論じられるように、グラフトは、布帛がグラフトの長さの少なくとも一部に沿ってヤーン密度の勾配を有するように形成される。一態様において、グラフト中の縦糸の1インチ当たりのエンド数は、グラフトの長さに沿って変動する。このようにして、グラフトの多孔性および柔軟性のような特徴は、組織の内殖を促進するために、グラフトの長さに沿ってカスタマイズされることができる。グラフトは、いくつかの天然または合成繊維のいずれから形成されることもできる。
[0053] 1より多くのタイプのヤーンが、縦糸または横糸として使用されることができる。横糸は、縦糸と異なることができる。加えて、1より多くのタイプの横糸が、使用されることができる。ある態様において、縦糸および横糸は、再生性ヤーンおよび非再生性ヤーンの組み合わせを含む。一態様において、縦糸および横糸は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを含み、ここで、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)ヤーンが、予め決定された様式で散在する。ヤーンは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであることができる。一態様において、ポリエステル繊維は、1/40/27/12ZのPETマルチフィラメント繊維を含む。
[0054] 一態様において、グラフトは、平らな織られた管状テキスタイルとして形成された継ぎ目のない管腔である。織成は、平織り、バスケット織りおよび綾織りを含むがそれらに限定されない様々な織成のいずれかであることができる。ある態様において、グラフトは、平らにされた管状構造を形成する平坦なダブルクロス織りから形成される。織成パターンの特徴は、グラフトに関する適用に応じて変動し得る。しかし、一態様において、グラフトは、壁が流体に対して実質的に不透過性であるように、グラフトが入口および出口を有し、その長さに沿って実質的に流体密である管腔を形成するように形成される。例えば、血管適用で使用される場合、グラフトの壁は、グラフトがグラフトの軸に沿った血液の流れを可能にする導管を形成する一方でグラフトの側壁を通る血液漏出を妨げるように、実質的に血液に対して不透過性である。
[0055] 流体密なテキスタイルを提供するために、布帛は、各面に関しておおよそ100〜200の1インチ当たりのピック数(“PPI”)でおおよそ150〜350の1インチ当たりのエンド数(“EPI”)を含む。平らな織られたチューブは、2つの面を含むため、グラフトに関する総エンド数は、おおよそ200〜400PPIでおおよそ300〜700エンドである。より具体的には、布帛は、各面に関して125〜175PPIでおおよそ200〜300EPIを含むことができる。本例では、布帛は、各面に関しておおよそ150PPIでおおよそ225〜275EPIを含む。
[0056] ある態様において、グラフトは、平織りダブルクロステキスタイルを製造するように設計された織機上で織られる。織機は、ジャカード織機、円形織機またはドビー織機を含むがそれらに限定されない様々なタイプのいずれであることもできる。一態様において、グラフトは、ドビー織機上で製造される。織機は、縦糸を制御する複数のヘドルを制御するための複数のハーネスを含む。
[0057] ドビー織機を使用する場合、各ハーネスは、第1位置および第2位置、例えば上昇位置および下降位置の間の複数のヘドルを制御する。ハーネスの数は、グラフトの大きさおよび形状に依存して変動し得る。本例では、織機は、20本のハーネスを利用する。
[0058] ハーネスから、縦糸は、複数のスロットまたは窪みを有するリードを通過する。リードは、真っ直ぐなリードまたは先細りのリードであることができる。一態様において、リードは、第1の幅から第1の幅よりも狭い第2の幅までリードが先細になるように、先細りのリードである。具体的には、リードは、リードの上端で最も広く、リードの下端で最も狭い。特に、真っ直ぐなリードの窪みは、各窪みが実質的に同じ幅であるように、リードの幅にわたって間隔をあけられる。先細りのリードの窪みは、窪みがリードの上部で最も広く、下部で最も狭くなるように、リードの上部からリードの下部へと先細りする。あるいは、リードは、窪みおよびリードが下部で最も広く、上部で最も狭くなるように、反転させられることができる。
[0059] リードの位置は、織られた布帛の1インチ当たりのエンド数を変動させるためにリードを選択的に上または下に動かすように操作可能である制御装置によって制御される。具体的には、リードを上方に動かすことは、縦糸を内側に引っ張るかまたは圧搾し、縦糸の数が一定のままである場合、布帛の1インチ当たりのエンド数を増大させる。同様に、リードを下方に動かすことは、縦糸を外側に引っ張り、縦糸の数が一定のままである場合、布帛の1インチ当たりのエンド数を減少させる。あるいは、真っ直ぐなリードを使用する場合、1インチ当たりの縦糸のエンド数は、縦糸の数が布帛の長さに沿って増大および/または減少するにつれて変動し得る。制御装置は、以下の変動する要素:グラフトの形状、所望の密度ならびに落した縦糸の数およびタイミングを含むがそれらに限定されない多数のの変動する要素に応じてリードの動きのタイミングおよび速度を制御することができる。
[0060] 織機は、横糸を縦糸上に織るための1以上のシャトルも含む。単一の管腔グラフトが形成される場合、単一のシャトルが、使用されることができる。複数の管腔グラフトが形成される場合、下記でさらに論じられるように、複数のシャトルが使用されることができる。
[0061] 縦糸を横切るシャトルの各通過は、ピックを含む。ダブルクロステキスタイルを織って管状構造を形成する場合、シャトルの往復の通過は、管状布帛の周囲を取り囲む単一の連続的な糸を形成する2つのピックラインを完成させる。シャトルが前方に移動する際に、それは、布帛の表面においてピックラインを織る。シャトルが戻る際に、それは、布帛の裏面においてピックラインを織る。シャトルの前方への通過および戻り通過それぞれの後に縦糸を上下させることによって、シャトルからの横糸は、破断または継ぎ目なしに表面から裏面へと連続的に織る。
[0062] シャトルが横糸を織った後、織機は、布帛を打つ(beat)ために織前(fell)に向かってリードを動かす。織られる布帛の前縁は、布帛が仕上げられるにつれて布帛が巻き取りロール上に連続的に巻き取られるように巻き取りロールに取り付けられる。巻き取りロールは、縦糸が布帛を織るために適切な張力下にあるように、縦糸における張力を維持する。例えば、巻き取りロールは、織成プロセスが続くにつれて規則的に回転させられることができる。巻き取りロールが回転するにつれて、織られた材料は、巻取りロール上に巻き取られ、それによって縦糸に張力が加えられる。
[0063] 上記で論じられたように、布帛を織るために、制御装置は、ハーネス、リードおよびシャトル(単数または複数)の作動を制御して、グラフトを形成する布帛を織る。
[0064] 例えば、変動する密度のダブルクロス織りを形成するために、ヤーンを織成から落すためのパターンは、織られる布帛の長さに沿った所望の密度に応じて変動し得る。特に、落したヤーンの位置は、落したヤーンが全て織成から実質的に同時に除去されるように制御されることができる。あるいは、落したヤーンは、徐々に除去されることができる。
[0065] 例えば、落したヤーンは、群で除去されることができる。落したヤーンの総数は、2以上の落したヤーンの群に分割されることができる。織られた布帛の長さに沿った特定の点において、落したヤーンの第1群は、落したヤーンの第1群が横糸と共に織られないように制御されることができる。
[0066] 落したヤーンの全てが織成パターンから落された後、織成は、ベースヤーンを織り続けることができる。結果は、少なくとも2つのセクション:ベースヤーンおよび落したヤーンが布帛において織られる第1セクション;ならびにベースヤーンが落したヤーンなしで織られる第2セクションを有する平らな織られた管状テキスタイルである。このようにして、落したヤーンは、第1セクションにおいて横糸と織り合わせられるが、第2セクションにおいて織成パターンの外側にある。
[0067] 落したヤーンは、どのようにしてヤーンが上記のような織成から落されたのかと類似の方法で織成中に足し戻されることができる。言い換えれば、落したヤーンを織成中に足し戻すためのプロセスは、落したヤーンを落すために用いられるプロセスを逆にすることによって進み得る。加えて、落したヤーンが織成中に足し戻される一方で、制御装置は、所望される場合、縦糸が引っ張られる窪みの幅を増大させるようにリードを制御することができる。一態様において、落したヤーンおよびリードは、グラフトが上記のプロセスの逆に織られるように制御されることができる。このようにして、織成プロセスは、低から高へ、次いで高から低への密度勾配を有するグラフトを形成する。このプロセスは、縦糸の長さに関して繰り返されて一連のグラフトを生成し、ここで、織成は、最初に最も密度が高い部分を織ってヤーンを落すことと最初に最も密度が低い部分を織ってヤーンを加えることを交互に行う。
[0068] 布帛が第1セクションと同程度に密であるようにヤーンが足し戻された後、織成は、グラフトに望まれる均一に滑らかな壁面を提供するために最適に均一ではない可能性がある。しかし、ヤーンが足し戻された後布帛を大体均一な密度で織り続けることによって、織成プロセスは、一般にグラフトに望まれる均一に滑らかな壁面を提供する均一に織られた布帛に収まる(settles)。従って、第1グラフトの終了および次のグラフトの開始の間で、移行セクションは、ヤーンがウェブ中に足し戻された織られたセクションの長さよりもさらに延びる。
前記のように、例示的な態様では、多孔性は、織成構造を変更することによって、エンドを除去する、および/もしくはピックを除去することによって、ならびに/または吸収性生体材料、例えばポリグリコール酸(PGA)もしくは再生性材料、例えばポリ(グリセロールセバケート)(PGS)ヤーンを例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような永久材料との組み合わせで指定された領域に導入することによって操作される。
[0069] 例示的な態様において、多孔性がグラフトの指定された領域内で変化するだけでなく、生体吸収性材料も、グラフト内に導入される。例示的な態様において、炎症を最小限にして特定の領域における組織再生のタイミングを促進する一方で水不透過性の超低プロファイル複合材を作り出すために、グラフト全体が、生体吸収性材料でコーティングされる。
[0070] 明細書で記載される材料および技法によって製造されるテキスタイルは、主に血管内適用、例えば真っ直ぐな、または二股の織られた移植可能グラフト;血管内動脈瘤修復(EVAR)および経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)術式における使用に関して記載されているが、ヘルニア修復、泌尿器科、失禁および豊胸術;コーティングされた編組された縫合糸およびテザーを(全て例として)含む様々な他の適用において用いられることもできる。
[0071] 本発明は、1以上の態様への参照により記載されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされることができ、均等物がその要素の代わりに用いられることができることは、当業者には理解されるであろう。加えて、多くの改変が、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、その本質的な範囲から逸脱することなくなされることができる。従って、本発明は、本発明を実施するために意図される最高の方式として開示された特定の態様に限定されず、本発明は、添付された特許請求の範囲内に入る全ての態様を含むであろうことが、意図されている。加えて、詳細な記載において同定された全ての数値は、あたかも正確な値および近似値が両方とも明示的に同定されているかのように解釈されるものとする。