本発明の上述の目的、特徴、利点をより明確に分かりやすくするために、これから図面を用いて本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。
以下の説明では、本発明を十分に理解するために多くの具体的な詳細が説明されているが、本発明は、ここでの説明と異なる他の方式で実施されてもよいので、以下に開示される具体的な実施形態によって制限されない。
本出願及び特許請求の範囲に示されるように、文脈が例外的な状況を明示的に提示しない限り、「一」、「一個」、「一種」、及び/または「該当」などの単語は、特に単数ではなく、複数を含むことができる。一般的に、用語「含む」と「備える」は、明確に識別されたステップ及び要素を単に含むことを示すが、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列を構成しない。方法または装置は、他のステップまたは要素を含むこともできる。
ここでは、本発明のスタック型燃料電池について、図面を参照して、好ましい実施形態を例示して詳細に説明する。なお、以下の説明では、燃料電池を固体高分子型燃料電池とする場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の一実施形態に記載された構造部材の材質、サイズ、形状、角度、その相対配置等は、特に特定の記載がない限り、本発明の範囲はこれらの記載に限られない。
本発明の一態様によると、単セルは、相対する第1のセパレータ及び第2のセパレータ、並びに前記第1及び第2のセパレータ間に積層された膜電極接合体を含む。単セルは、単セルの拡がる面を通り抜けるように、前記第1のセパレータ、前記第2セパレータ、及び前記膜電極接合体に設けられた複数の燃料流体用開口部、複数の冷却媒体用開口部及び複数の酸化流体用開口部を備える。そのうち、少なくとも1つの燃料流体用開口部、少なくとも1つの冷却媒体用開口部、及び少なくとも1つの酸化流体用開口部を前記単セルの中央領域に配置している。第1のガス拡散層において、少なくとも1つの燃料流体用開口部は、単セルの拡がる方向に前記第1のガス拡散層を燃料流体が流れる燃料流体端口を有し、第2のガス拡散層において、少なくとも1つの燃料流体用開口部は、前記単セルの拡がる方向に燃料流体が前記第2のガス拡散層を流れるのを防ぐシール材を有する。第2のガス拡散層において、少なくとも1つの酸化流体用開口部は、単セルの拡がる方向に前記第2のガス拡散層を酸化流体が流れる酸化流体端口を有し、前記第1のガス拡散層において、少なくとも1つの酸化流体用開口部は、前記単セルの拡がる方向に酸化流体が前記第1のガス拡散層を流れるのを防ぐシール材を有する。前記第1のガス拡散層、前記触媒付電解質膜及び前記第2のガス拡散層において、少なくとも1つの冷却媒体用開口部は、単セルの拡がる方向に冷却媒体が前記第1のガス拡散層、前記触媒付電解質膜及び前記第2のガス拡散層を流れるのを防ぐシール材を有する。
端部だけに配置された開口部と比べて、中央領域に配置された開口部は、燃料流体、冷却媒体、酸化流体の単セル内の流れをより均衡させることができる。開口部は中央領域の一部に配置できることが理解できる。本発明の文脈では、用語「中央領域」の範囲は、単セルの中心の小領域に限定されることなく広く理解されるべきである。例えば、中央領域の面積はセルの表面の80%またはそれ以上に達することができる。
本発明の一実施形態では、複数の燃料流体用開口部、複数の冷却媒体用開口部及び複数の酸化流体用開口部は、単セル全体に周期的に繰り返し又はある程度の変動周期的に繰り返され、各周期的な繰り返しは、1つ若しくは複数の同種基本単位、または複数の異種基本単位により構成される。中央領域以外のエッジ領域及び異種基本単位の境界の間において、前記単セルは、前記基本単位の周期的な繰り返しを終了させるエッジ構造を備えている。この実施の形態では、開口部は中央領域に配置されているだけでなく、中央領域以外のエッジ領域に配置されている。また、単セルは、中央領域以外のエッジ領域において、前記基本単位を終了させるエッジ構造を備えている。周期的な繰り返しがその開口部の構成または配列が異なる複数の異種基本単位を有する場合、単セルは、異種の基本単位の境界間に、基本単位の周期的な繰り返しを終了させるエッジ構造を有してもよい。簡略化された実施形態では、複数の燃料流体用開口部、複数の冷却媒体用開口部及び複数の酸化流体用開口部は、セル全体に一つの基本単位により構成され、また、単セルは、中央領域以外のエッジ領域において、基本単位を終了させるエッジ構造を有する。
以下、本発明の実施の一形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1はスタック型燃料電池を示す。図1(A)は、スタック型燃料電池の構造の外観図であり、図1(B)は、スタック型燃料電池の構造の断面図であり、図1(C)は、単セルの構造を断面図である。
図1(A)に示すように、複数の単セル8を積み重ねて得られたスタック構造体9(後述するスタック構造体)の両端は、エンドプレート101、102によって締め付けられている。また、図1(B)に示すように、エンドプレート101、102には、外部共用マニホールド51、52、53が設けられ、スタック構造体9には、内部共用マニホールド41、42、43が内設され、燃料流体、冷却媒体及び酸化流体を含む各種流体がそれぞれ供給され排出される。
単セル8は、図1(B)に示すラミネート構造を備え、1は電解質膜であり、電解質膜1を挟んで一対の電極触媒層2、3(すなわち、カソード側触媒層と、アノード側触媒層)が配置される。そして、電極触媒層2、3の外側には各々ガス拡散層4、5が配置され、各々ガス拡散層4、5のさらに外側には一対のセパレータ6、7が配置される。膜電極接合体は層1−5から構成されている。
本発明の各実施形態の燃料流体と酸化流体は、気体を例に説明する。本発明の各実施形態の電気ヒープ型燃料電池は、純水素、メタノール等の各種燃料を燃料として使用することができる。以下の例では水素を燃料として説明する。
(燃料電池のメカニズム)
スタック型燃料電池のメカニズムは以下のとおりである。アノード(燃料極と呼ばれる)には水素ガスが供給され、触媒の助けを借りて、供給された水素ガスから電子が離れ外部回路に移動する。ここで水素は水素イオン(プロトンと呼ばれる)に変わる。一方、カソード(空気極と呼ばれる)には酸素が供給される。酸素は電解質膜から通過してくるプロトンと外部回路から流入してくる電子とに反応して水が生成される。
本発明のスタック型燃料電池は、一例として、電解質膜1に固体高分子電解質を使用し、この電解質膜1にアノード側触媒層2及びカソード側触媒層3を添わせ、アノード側触媒層2にアノード側ガス拡散層4を介在させてアノード側セパレータ6を合わせるとともに、カソード側触媒層3にカソード側ガス拡散層5を介在させてカソード側セパレータ7に合わせることにより単セル8を構成し、図1(A)に示すような、この単セル8を多数スタックした固体高分子燃料電池が構成される。本発明において、単セル8の面内に穿設される開口部11、12、13の配列レイアウトを2次元ブラベ格子に沿って各種開口部が配列するパターンの繰り返しの基本単位16を用いて設計し、発電に必要最小限な開口部11、12、13の種類については最小発電体17を用いて説明を試みる。
図2(A)、図2(B)、図2(C)に示した単セル8の概念図は、図1のスタック構造体9を構成するための単セル8の一枚を表現している。図2は、2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した、本発明の単セル8の面内に穿設される開口部11、12、13の配列を示している。図2に示す開口部11、12、13のそれぞれを供給用開口部と排出用開口部として次のように区別する。燃料流体供給用開口部11A、冷却媒体供給用開口部12A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、冷却媒体排出用開口部12B、酸化流体排出用開口部13Bがある。
ここでは、図2(A)は、開口部が複数の周期的に繰り返される同じ基本単位を構成する例を示している。図2(B)は、開口部が1つの基本単位を構成する例を示している。図2(C)は、開口部が周期的に繰り返される複数の異種基本単位を構成する例を示している。図2に示す通り、基本単位16は、ベクトルA(図2の符号14)とベクトルB(図2の符号15)により描かれた2次元ブラベ格子に沿って各種開口部が配列されるパターンの繰り返し最小単位を表している。最小発電体17には、発電に必要最小限な供給用開口部11A、12A、13A及び排出用開口部11B、12B、13Bの6種類が含まれている。以下の説明では、図2(A)を例に説明する。
なお、図2(A)、図2(C)に記載の四方に展開する点線矢印が表すのは、作図の都合上、繰り返しで配列し続ける開口部11、12、13を省略した部分であるが、その繰り返し配列が無限に展開するという意味合いを含むものではない。また、図2(A)、図2(C)の単セル8の四辺に表現された波状の輪郭線は、省略部分を切り取った状態を表している。図2(A)の点線矢印で「繰り返し」を表現した意図は、その時その場に具合よく適するよう2次元展開による開口部11、12、13の配列を実現させるためである。また、図2では、各種流体の供給用開口部11A、12A、13Aの記号は×印で表示され、各種流体の排出用開口部11B、12B、13Bの記号は黒丸印で表示されている。
図2(A)における本発明の単セル8の開口部11、12、13の列の間に描かれた右下がりの破線が表すのは、各種流体それぞれに対応する供給用開口部11A、12A、13Aと排出用開口部11B、12B、13Bの間に形成される流路(燃料流体の供給排出流路31、冷却媒体の供給排出流路32、酸化流体の供給排出流路33)を表す概念上の線であるが、これらは実際の流路31、32、33と必ずしも同じとは限らない。なお、各種流体は、供給用開口部11A、12A、13Aから最も近い対応位置にある排出用開口部11B、12B、13Bへと流れるものの、たとえ最も近い対応位置に排出用開口部11B、12B、13Bが存在していたとしても、供給排出流路31、32、33が導いていない非対応の排出用開口部11B、12B、13Bに向かって流れることはない。
さて、構成概念である2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した開口部11、12、13の配列の考え方の特徴の一つは、図2(A)で示した通り、2次元展開のブラベ格子に沿って配列するパターンの基本単位16を繰り返し単位として開口部11、12、13を配列させている点にある。具体的には、ベクトルA(図2の符号14)とベクトルB(図2の符号15)を用いて描かれた斜方格子をかたどる基本単位16に囲繞された領域の内側にかかる開口部11、12、13の数としては、その4本の線分にかかっている4つの燃料流体の開口部11A、11Bは、その内側はそれぞれ2分の1なので、合わせて2つ(1/2×4=2)とカウントされる。2本の線分にかかっている2つの冷却媒体の開口部12Aは、その内側は2分の1なので、合わせると1つ(1/2×2=1)になり、線分にかからない内側にある冷却媒体の開口部12Bが1つあるので、両者を合わせると2つ(1/2×2+1=2)とカウントされる。基本単位16の4隅にある4つの酸化流体の開口部13Aは、その内側は略4分の1なので、合わせると1つ(1/4×4=1)になり、線分にかからない内側にある酸化流体の開口部13Bが1つあるので、両者を合わせると2つ(1/4×4+1=2)とカウントされる。全てをあわせると、2つの燃料流体の開口部11、2つの冷却媒体の開口部12、そして2つの酸化流体の開口部13であわせて6つの供給用開口部及び排出用開口部となる。これが斜方格子の基本単位16の構成である。ここで言う「囲繞」とは、2次元ブラベ格子の斜方格子をかたどる基本単位16の4本の線分(ベクトル)に囲まれた内側の領域にかかる開口部を含む、という意味である。なお、2次元ブラベ格子に沿って配列するパターンの基本単位16は、特に斜方格子に限定されるわけではなく、長方格子、六方格子、正方格子、面心長方格子にも適用してもよい。
当然のことながら、本発明のスタック型燃料電池を発電させるのに必要最小限な開口部11、12、13は、燃料流体供給用開口部11A、冷却媒体供給用開口部12A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、冷却媒体排出用開口部12B、酸化流体排出用開口部13Bの6種類である。これを最小発電体17として図2(A)に示している。
図2(A)によれば、最小発電体17には、各種流体の開口部11、12、13の個数としては、4分の1以上または4分の1未満の燃料流体の供給用開口部11A、4分の1以上または4分の1未満の燃料流体の排出用開口部11B、2分の1以上または2分の1未満の冷却媒体の供給用開口部12A、2分の1以上または2分の1未満の冷却媒体の排出用開口部12B、4分の1以上または4分の1未満の酸化流体の供給用開口部13A、4分の1以上または4分の1未満の酸化流体の排出用開口部13Bが含まれている。
図3に示す通り、単セル8の面内に穿設される開口部11、12、13の端口の平面形状について、燃料流体の開口部11と酸化流体の開口部13は形状的に類似している。また、図3(A)は、全方位型開口部の端口を示す図であり、図3(B)、図3(C)、図3(E)は、半方位型開口部の端口を示す図であり、図3(D)は、準方位型開口部の端口を示す図である。本明細書で言及する「端口」とは、流体の出入りが行われる開口部の外周の縁と第1の誘導流路との境界部分のことであり、図3に示すP1−5で代表した線である。単セル8を構成するある特定の機能層と接する開口部の外周の全体にシール材19で施すことで、開口部からこの機能層への供給流れ、若しくは開口部からこの機能層と隣接層間への供給流れ、またはこの機能層から開口部への排出流れ、あるいはこの機能層と隣接層間から開口部への排出流れが完全に塞がれる。一方、図3に示す通り、単セル8を構成するある特定の機能層と接する開口部の外周の一部にシール材19で施すことで、開口部からこの機能層への供給流れ、若しくは開口部からこの機能層と隣接層間への供給流れ、またはこの機能層から開口部への排出流れ、若しくはこの機能層と隣接層間から開口部への排出流れが形成される。つまり、各種流体の単セル8への出入りは、シール材19により制御されるといえよう。
前記開口部11、12、13の平面形状とシール材19が施される箇所に基づいて開口部の形状を分類することができる。図3では、5種類の開口部の端口を2本のY軸と1本のX軸を用いて、第I象限、第II象限、第III象限及び第IV象限を用いて区画した。図3に示した全ての開口部(A)〜(E)において、第I象限の回転角度は0〜90度となる。第II象限の回転角度は90〜180度となる。第III象限の回転角度は、180〜270度となる。第IV象限の回転角度は、270〜360度となる。Y1軸とY2軸との間は、シール材19が施されており、そこは流体の流れが塞がれているところであり、どの象限にも属さない。図3によると、各象限に存在する開口部の端口の発散角度(α1、β1)及び収束角度(α2、β2)は、次の通りになる。発散角度α1は、1〜180度、発散角度β1は、1〜90度、収束角度α2は、1〜180度、収束角度β2は、1〜90度である。
図3の各図について、詳細に説明する。図3(A)に示す全方位型開口部の例では、その開口部の端口P1が全ての第I象限、第II象限、第III象限、第IV象限内に配置され、各象限の全部または一部には、1箇所または1箇所以上の端口が配置される。シール材19が施される位置は、どの象限にも属さない非動作ゾーンであるY1軸とY2軸の間である。この例では、端口の数は4つである。半方位型開口部の端口は、第I象限、第II象限、第III象限、第IV象限の4象限から選んだ任意なる2象限内の全部または一部に配置される。図3(B)に示す半方位型開口部の例では、その開口部の端口P2が第I象限及び第II象限内の全部または一部に配置される。シール材19が施されるのは、どの象限にも属さない非動作ゾーンであるY1軸とY2軸の間と、第III象限及び第IV象限内の全部に配置される。この例では、端口の数は2つである。この半方位型開口部には、反転タイプの形状が存在する。図3(C)に示す別の半方位型開口部の例では、その開口部の端口P3が、第I象限及び第III象限内の全部または一部に配置される。シール材19が施されるのは、どの象限にも属さない非動作ゾーンであるY1軸とY2軸の間と、第II象限及び第IV象限内の全部に配置される。この例では、端口の数は2つである。この半方位型開口部には、反転タイプの形状が存在する。準方位型開口部の端口は、第I象限、第II象限、第III象限、第IV象限の4象限から選んだ任意なる3象限内の全部または一部に配置される。図3(D)に示す準方位型開口部の例では、その開口部の端口P4が第I象限、第III象限、第IV象限内の全部または一部に配置される。シール材19が施される位置は、どの象限にも属さない非動作ゾーンであるY1軸とY2軸の間と、第II象限の全部に配置されている。この例では、端口の数は3つである。この準方位型開口部には、反転タイプの形状が存在する。図3(E)に示す別の半方位型開口部の例では、その開口部の端口P5が、第II象限及び第III象限内の全部または一部に配置される。シール材19が施されるのは、どの象限にも属さない非動作ゾーンであるY1軸とY2軸の間と、第I象限及び第IV象限内の全部に配置される。この例では、端口の数は2つである。この半方位型開口部には、反転タイプの形状が存在する。
なお、図3では、3通りの開口部の形状を示したが、本発明はこれらの形状だけに限定されることはない。
(実施の形態1)
本発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
以下、図1、図4〜図13を用いて、本発明の実施の形態1におけるスタック型燃料電池について説明する。なお、本発明は、実施の形態1のみに限定されるものではない。
本発明の実施の一形態における単セル8を構成するのは、電解質膜1、電極触媒層2、3、ガス拡散層4、5及びセパレータ6、7を含む部材である。本発明の実施の形態1では、これらの構成部材と、それらに関連する要素が組み込まれたスタック型燃料電池について説明する。
内部共用マニホールド41、42、43を構成する単セル8の面内には、図4に示す全方位型開口部11、12、13が穿設されている。図7〜図11に示す通り、アノード側ガス拡散層4、カソード側ガス拡散層5、アノード側セパレータ6及びカソード側セパレータ7には、内部共用マニホールド41、42、43を構成する全方位型開口部11、12、13が穿設されている。全方位型開口部11、12、13の配列が展開された複数の単セル8をスタックした結果、内部共用マニホールド41、42、43がスタック構造体9の内側に形成される。
本発明の実施の一形態に係わる単セル8は、アノード側セパレータ6、アノード側ガス拡散層4、アノード側触媒層2、電解質膜1、カソード側触媒層3、カソード側ガス拡散層5、カソード側セパレータ7の順で合わせて7枚の機能層でラミネートされており、現在において通常使われている燃料単セルの厚みよりも薄厚で作成することが好ましい。図7〜図11を参考にし、本発明の実施の一形態によるスタック構造体9の周期の厚さ、すなわち2つの相隣単セル8の上表面(あるいは下表面)の間の距離(Th)は、その厚みがTh=0.9mm以上1.2mm以下であることが好ましく、より好ましいのはTh=0.5mm以上0.9mm以下である。更に好ましいのは、Th=0.1mm以上1.2mm以下である。この間隔は、単セル8の厚さと単セル8間の冷却媒体流路32の隙間を含む。単セル8の厚さの最大値は1.2mmを超えないことがわかる。通常、厚さが大きいほど、製造コストは抑えられるものの、セルのエネルギー密度が低くなってしまう。逆に、厚さが薄ければ、製造コストが上昇してしまうが、セルの出力密度を高めることができる。上記の範囲で適切な厚みを選択して、製造コストとセルの出力密度の間でバランスをとることができる。
本発明の実施の一形態に係わる単セル8の構成部材とそれらに関連する要素については、周知の基材を用いて形成することができる。また、慣用技術を用いて、単セル8の構成部材とそれらに関連する要素を作製することができる。本発明では、周知の基材と慣用技術については、特に限定しない。以降、各構成部材について、手短に説明する。
[電解質膜]
起電部である電解質膜1としては、一般的には、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜に大別される。フッ素系及び炭化水素系のどちらでも好ましく用いることができる。また、1種類の電解質を単独で用いても、2種類以上を複数あわせて用いてもよい。電解質膜1に求められる主な機能は、良好なプロトン伝導性、反応ガスの不透過性、電子絶縁性並びに物理的及び化学的高耐久性が挙げられる。
[触媒層]
電解質膜1の両側に配置されるアノード側触媒層2とカソード側触媒層3では、アノード及びカソードの燃料電池反応が起こる。アノード側触媒層2では、水素をプロトン及び電子に解離する反応(水素酸化反応)が促進される。カソード側触媒層3では、プロトンと電子と酸素から水を作成する反応(酸素還元反応)が促進される。触媒担持カーボンブラックと白金などの触媒粒子からなる。アノード側触媒層2及びカソード側触媒層3は、例えば、触媒としての白金または白金と他の金属からなる合金を含んでいる。
図6を参照し、電解質膜1と、前記電解質膜1の両側に配置されるアノード側触媒層2及びカソード側触媒層3とからなる触媒付電解質膜(Catalyst Coated Membrane, CCM)であるCCM膜M101と、CCMホルダーフィルムM102と、嵌合構造体M103とから、CCMシートM100を構成する。
[ガス拡散層]
アノード側ガス拡散層4は、CCMシートM100とアノード側セパレータ6の間に位置し、カソードガス拡散層5は、CCMシートM100とカソード側セパレータ7の間に位置する。ガス拡散層4、5は、化学反応に必要な水素と空気を電解質膜1の面方向に沿って効率よく導くように機能する層である。つまり、各図面に示したように、アノード側ガス拡散層4には燃料流体が拡散し、カソード側ガス拡散層5には酸化流体が拡散できるよう流路が設けられている。アノード側ガス拡散層4及びカソード側ガス拡散層5は、例えば、炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロス、カーボンペーパまたはカーボンフェルトによって形成されることが好ましい。
[セパレータ]
セパレータとは、発電体である単セル8同士を区切る金属シートであり、一対のセパレータ6、7間には発電に必要な電解質膜1、アノード側触媒層2、カソード側触媒層3、アノード側ガス拡散層4、カソード側ガス拡散層5が納められていて、アノード側セパレータ6とカソード側セパレータ7のガス拡散層4、5側に接する面それぞれには、反応ガスが流れる第1の誘導流路、第2の誘導流路及び主流路が構成されており、アノード側セパレータ6とカソード側セパレータ7の反対側の面それぞれには、冷却媒体を流すための流路が形成されている。
セパレータ6、7は、ガス遮断性、化学的安定性及び電子伝導性を有するシートによって構成されている。セパレータとしては、例えば、アルミ、銅、ステンレスなど様々な金属シート、金属箔、金属薄膜などを用いることができる。このような金属シート、金属箔、金属薄膜は耐腐食性と機械強度を持つ導電性材料からなることが好ましい。さらに、前記金属シート、金属箔、金属薄膜は、表面塗布、コーティング及び表面物理化学処理により耐腐食性、機械強度及び導電性がより高くなることがより好ましい。
また、本発明における構成部材の形態は、上述した構成に限定されることはなく、適宜変更することが可能である。
以下、図3、図4を参照しながら、本発明の実施の形態1における単セル8の面内に配列される全方位型開口部の端口の特徴と、その配列レイアウトについて説明する。
図4は、2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した、本発明の単セル8の面内に穿設される全方位型開口部11、12、13の配列を示している。図4に示す全方位型開口部11、12、13のそれぞれを各種流体の供給用開口部及び排出用開口部として次のように区別する。燃料流体供給用開口部11A、冷却媒体供給用開口部12A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、冷却媒体排出用開口部12B、酸化流体排出用開口部13Bがある。図4には、多様な開口部の形状の一案として全方位型が示されている故に、この全方位型開口部に発散角度をもたせ流出を設定することができる。図4に示した例では、全方位型開口部11、12、13の端口の配置は、第I象限及び第IV象限または第II象限及び第III象限に配置する端口を経由して流出する各種流体が、発散角度が1度以上180度以下である全方位で各種流体が流出するよう設計されている。また、前記の象限に配置する端口は、収束角度が1度以上180度以下である全方位で各種流体が流入するよう設計されている。
各種流体の流れは目に見えないため、矢印を使って流れを可視化するようにしている。第I象限、第II象限、第III象限及び第IV象限に配置する全方位型開口部の端口に向かうように描かれた矢印は、各種流体が全方位型開口部に流れ込む方向を指している。第I象限、第II象限、第III象限及び第IV象限に配置する全方位型開口部の端口から放射状に放出するように描かれた矢印は、各種流体が全方位型開口部から流れ出る方向を指している。図4では、全方位型開口部の形状は、冷却媒体の開口部12が矩形であり、燃料流体の開口部11及び酸化流体の開口部13が各々の面積の異なる六角形で形成されている(すなわち、酸化流体の開口部13の面積は、燃料流体の開口部11の面積より大きい)。なお、図3(A)に示した全方位型開口部の形状は、対称であるため、その反転タイプは存在しない。
基本単位16は、ベクトルA(図4の符号14)とベクトルB(図4の符号15)により描かれた2次元ブラベ格子に沿って開口部が配列するパターンの最小繰り返し単位を表し、ここでは、全方位型開口部の2次元の配列を展開させる繰り返し単位である(2次元展開が適用されるのは、図2、図4中、A軸とB軸からなる平面に位置する単セル8の面内である)。全方位型開口部の配列パターンとは、ベクトルA(図4の符号14)のA方向及び/またはその逆方向及びベクトルB(図4の符号15)のB方向及び/またはその逆方向に沿って、この基本単位16を繰り返しながら平行移動させて得られたパターンである。全方位型開口部の配置は、このパターンに従って周期的または準周期的に配列される。最小発電体17とは、発電に必要な全方位型開口部の種類を有する最小構成体であり、この最小構成体17には、発電に必要最小限な各種流体の供給用開口部11A、12A、13A及び各種流体の排出用開口部11B、12B、13Bの6種類が含まれている。
なお、図4に記載の四方に展開する点線矢印が表すのは、作図の都合上、繰り返しで配列し続ける全方位型開口部11、12、13を省略した部分であるが、その繰り返し配列が無限に展開するという意味合いを含むものではない。また、図4の単セル8の四辺に表現された波状の輪郭線は、省略部分を切り取った状態を表している。図4の点線矢印で「繰り返し」を表現した意図は、その時その場に具合よく適するよう2次元展開による全方位型開口部11、12、13の配列を実現させるためである。また、図4では、各種流体の供給用開口部11A、12A、13Aの記号は×印で表示され、各種流体の排出用開口部11B、12B、13Bの記号は黒丸印で表示されている。
図4に示した本発明の単セル8の全方位型開口部11、12、13の列の間に描かれた右下がりの破線が表すのは、各種流体それぞれに対応する供給用開口部11A、12A、13Aと排出用開口部11B、12B、13Bの間に形成される流路(燃料流体の供給排出流路31、冷却媒体の供給排出流路32、酸化流体の供給排出流路33)を表す概念上の線であるが、これらは実際の流路31、32、33と必ずしも同じとは限らない。なお、各種流体は、供給用開口部11A、12A、13Aから最も近い対応位置にある排出用開口部11B、12B、13Bへと流れるものの、たとえ最も近い対応位置に排出用開口部11B、12B、13Bが存在していたとしても、供給排出流路31、32、33が導いていない非対応の排出用開口部11B、12B、13Bに向かって流れることはない。
さて、本発明の実施の形態1における2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した全方位型開口部11、12、13の配列の考え方の特徴の一つは、図4で示した通り、2次元展開のブラベ格子に沿って配列するパターンの基本単位16を最小繰り返し単位として全方位型開口部11、12、13を配列させている点にある。一例として、ベクトルA(図4の符号14)とベクトルB(図4の符号15)を用いて描かれた斜方格子をかたどる基本単位16に囲繞された領域の内側にかかる全方位型開口部11、12、13の面積としては、その4本の線分かっている4つの燃料流体の開口部11A、11Bは、その内側は2分の1なので、合わせて開口部2個分(1/2×4=2)とカウントされる。うち2本の線分にかかっている4つの冷却媒体の開口部12Aにおいては、その内側は2分の1なので、合わせると開口部2個分(1/2×4=2)になり、線分にかからない内側にある冷却媒体の開口部12Bが2個あるので、両者を合わせると開口部4個分(1/2×4+2=4)とカウントされる。基本単位16の4隅にある4つの酸化流体の開口部13Aは、その内側は4分の1なので、合わせると開口部1個分(1/4×4=1)になり、線分にかからない内側にある酸化流体の開口部13Bが1つあるので、両者を合わせると開口部2個分(1/4×4+1=2)とカウントされる。4本の線分にかからない内側にある開口部12B、13Bをも含め、全てをあわせると、2個の燃料流体の開口部11、4個の冷却媒体の開口部12、そして2個の酸化流体の開口部13の全部であわせて8個の供給用開口部及び排出用開口部となる。これが斜方格子の基本単位16の構成である。ここで言う「囲繞」とは、2次元ブラベ格子の斜方格子をかたどる基本単位16の4本の線分(ベクトル)に囲まれた内側の領域にかかる全方位型開口部を含む、という意味である。なお、2次元ブラベ格子の基本単位16としては、特に斜方格子に限定されるわけではなく、長方格子、六方格子、正方格子、面心長方格子にも適用してもよい。
当然のことながら、本発明の実施の形態1におけるスタック型燃料電池を発電させるのに必要最小限な全方位型開口部11、12、13は、燃料流体供給用開口部11A、冷却媒体供給用開口部12A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、冷却媒体排出用開口部12B、酸化流体排出用開口部13Bの6種類である。これを最小発電体17として図4に示している。本発明の実施の形態1における全方位型開口部11、12、13の配列レイアウトの設計を行う上で必要になる点としては、高出力密度及び高容量であるスタック型燃料電池を得るには、単セル8のアノード側触媒層2とカソード側触媒層3の発電エリアに反応ガスを最も効果的に行き渡らせるために、更に、効率良く熱を冷却させるために、必要最小限な6種類の全方位型開口部11、12、13を設けることが好ましい。また、少なくとも、基本単位16を利用して設計される全方位型開口部11、12、13の種類とそれらの面積が、最小発電体17の全方位型開口部11、12、13の種類とそれらの面積を満たしていなければならない。全方位型開口部11、12、13の種類と面積については、基本単位16と最小発電体17はイコールでも良いし、基本単位16が最小発電体17より大きくても良いが、基本単位16が最小発電体17より小さいという関係では成り立たないということである。
図4によると、最小発電体17に囲繞される全方位型開口部11、12、13の面積は次のとおりである。1つの燃料流体の供給用開口部11Aの面積の4分の1、1つの燃料流体の排出用開口部11Bの面積の4分の1、1つの冷却媒体の供給用開口部12Aの面積の2分の1、1つの冷却媒体の排出用開口部12Bの面積の2分の1、1つの酸化流体の供給用開口部13Aの面積の4分の1、1つの酸化流体の排出用開口部13Bの4分の1である。
以下、図5を用いて全方位型開口部の端口から流入・流出する各種流体(反応ガス)の流れについて説明する。但し、本発明は、この形状(全方位型)に限定されるものではない。
図5における全方位型開口部に関与する流れを表した例によれば、各々の開口部の第I象限及び第IV象限または第II象限及び第III象限に配置する端口から流出する反応ガス(燃料流体、酸化流体)の発散角度が1度以上180度以下になるよう端口形状が設計されている。また、各種反応ガスの流れは目に見えないため、図5では矢印を使って流れを可視化するようにしている。全方位型開口部の端口に向かうように描かれた矢印は、反応ガスが第1の誘導流路から端口を通って排出用全方位型開口部11B、13Bに流れ込むまでの流線を表している。全方位型開口部の端口から放射状に放出するよう描かれた矢印は、反応ガスが供給用全方位型開口部11A、13Aから端口を通って第1の誘導流路へ流れ出るまでの流線を表している。図5には、燃料流体の全方位型開口部11及び酸化流体の全方位型開口部13の左右の位置(つまり、第I象限から第IV象限まで)に存在する端口に各種反応ガスが流入・流出する様子が描写されている。図5(A)には、燃料流体の全方位型開口部11及び酸化流体の全方位型開口部13において異なる面積を有する六角形の端口形状が図示されている。図5(B)には、丸みを帯びた稜線を有する同様の端口形状が図示されている。なお、本発明による端口形状は、多角形、変形多角形、非円形、円形及びそれらの細長形状のいずれであっても、またはそれらの組み合わせであっても、実施可能である。また、本発明の端口形状としては、本発明の実施の形態1における全方位型開口部の単一構造に限定する必要はなく、後述する他の端口形状(半方位型、準方位型など)との様々な組み合わせで単セル8に形成しても構わない。
上述した通り、本発明の実施の形態1における全方位型開口部11、12、13の端口形状を変えることにより、流路設計が最適化されるため、CCMの発電量を最大化させることができる。
以下、本発明の実施の一形態における単セル8の一部を構成するCCMシートM100について詳述する。CCMとは、Catalyst Coated Membraneの略称であり、3層MEAとも呼ばれている。CCMシートM100とは、電解質膜1、アノード側触媒層2及びカソード側触媒層3から構成されたCCM膜M101と、そのCCM膜M101を保持するCCMホルダーフィルムM102と、それらに穿設した開口部11、12、13と、その他等の総称である。
図6(A)は、本発明の実施の一形態におけるCCM膜M101と、それを保持するCCMホルダーフィルムM102と、開口部11、12、13と、を含むCCMシートM100の構造を示す平面模式図である。図6(B)は、図6(A)のII−II線に沿うCCMシートM100の断面図である。
図6に示す開口部11、12、13の列の両側には、CCM膜M101が配置されている。図6が示すのは、本実施の一形態における全方位のケースであるが、後述する実施の形態2に記載の半方位及びその他変形例に記載の準方位のケースも同じである。図6(B)の断面図が示すように、CCMホルダーフィルムM102には、嵌合構造体M103が備わっており、複数のCCM膜M101を嵌合する。嵌合構造体M103の両端には、CCM膜M101を嵌め込むようにして保持する保持方式をとる。図6に示す通り、CCMホルダーフィルムM102のベースに開口部11、12、13が穿設されている。更に、開口部11、12、13の近傍には、第1の誘導流路と第2の誘導流路が形成される。CCMホルダーフィルムM102は、少なくとも開口部11、12、13の周囲に封止材を有し、燃料流体、冷却媒体、酸化流体が開口部11、12、13から単セル8の延長方向にCCM膜M101内に流入するのを阻止する。典型的には、CCMホルダーフィルムM102全体を封止材で構成することができる。CCMホルダーフィルムM102が少なくとも開口部11、12、13の周囲に封止材を有する場合、この層の封止材はシール材19と同じ材料を選択しても良いし、異なる材料を選択しても良い。図6に示す通り、CCMホルダーフィルムM102のベースに開口部11、12、13が穿設されおり、CCMホルダーフィルムM102の端部にある嵌合構造体M103により、CCM膜M101が挟まれている。これらによりCCMシートM100が構成される。アノード側では、燃料流体の供給用開口部11Aの端口より、燃料流体、水、水蒸気が供給され、両側に挟まれているCCM膜M101に流通し、触媒反応より得られた水素イオンがCCM膜M101を透過し、未反応の燃料流体、水、水蒸気が燃料流体の排出用開口部11Bの端口より排出される。カソード側では、酸化流体の供給用開口部13Aの端口より、酸化流体、水、水蒸気が供給され、酸化流体がCCM膜M101を透過した水素イオンと反応して水が形成され、反応形成された水が未反応の酸化流体、水、水蒸気と共に酸化流体の排出用開口部13Bの端口より排出される。
開口部11、12、13とCCM膜M101とを交互に挟むという設計デザインを応用すれば、細かく裁断されたCCM膜M101の一片も無駄にすることなく利用することができるので、高価なCCM膜M101の有効利用を可能とし、生産性の向上につながるメリットがある。
次に、図7〜図11、図16〜図20を参照しながらシール材19と、ガス拡散層4、5に係わる流路形成について説明する。なお、これらの図面において、図面の見やすさ及び説明の便宜を図るため、正確な縮尺にはなっておらず、肉厚の薄い部材の肉厚が大きく表示されていることに注意されたい。図面中、同様の部材は同一符号で示される。
本発明の実施の一形態において、シール材19を施す箇所は、開口部11、12、13の周辺である。シール材19が施されない開口部11、13の周辺には、反応ガスが流入・流出する箇所となる端口がある。その端口は、第1の誘導流路31M1、33M1と直結している。第1の誘導流路31M1、33M1は、細かい髭状の線で表現している。
本発明の実施の一形態において、シール材19は、単セル8内部と単セル8間に適切に作りこんで、2枚の隣り合う単セル8の間に形成される冷却媒体の供給排出流路32と各種流体の開口部11、12、13との接続部、及び、燃料流体の供給排出流路31、酸化流体の供給排出流路33と各種流体の開口部11、12、13との接続部を形成させる。これにより、シール材19は、反応ガス及び冷却媒体を単セル8に供給し、単セル8より排出する流れを誘導する機能を担う。
本発明で使用可能なシール材19としては、特に限定されないが、平坦部にスクリーン印刷によって塗布できるゴム、粘着テープ、ゴムシール、シーラント接着剤などが利用できる。シール材19は、前記供給用開口部及び排出用開口部の外周の縁に施されている。ガスシールが必要な部分については、完全に密着してガス漏れがない状態とすることが必要である。更に、化学的、熱学的な安定性と、強度耐久性の良いシーリング構造体を得ることがより好ましい。
まず、本発明の実施の形態1における単セル8のアノード側の流路及び全方位型開口部11、12、13周辺の構造について、図7を参照しながら説明する。
図7は、本発明の実施の形態1におけるCCMシートM100のアノード側の流路を説明する図であって、図7(A)は、図7(B)及び図7(C)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図7(B)は、アノード側セパレータ6を取り外したときに出現するアノード側ガス拡散層4の面視図であり、図7(C)は、図7(B)のアノード側ガス拡散層4を取り外したときに出現するCCMシートM100の面視図である。図7(A)の左上にある縦両矢印Cは、単セル8のスタック方向Cを示している。一枚の単セル8が示された図7(A)の左側には、供給排出流路31、32、33の位置関係を示している。アスタリスク「*」が付いている流路、図7(A)の例では、流路31がアクティブな流路であるが、実際に燃料電池が稼働している時には、他の流路も活動しているということは、当事者であれば理解できるだろう。図7(A)のアクティブな流路31の中に引いてある横矢印が示すのは、燃料流体が燃料流体の流路31を流れる方向である。上向きの縦矢印は、燃料流体の供給用内部共用マニホールド41Aの流れを示し、下向きの縦矢印は、燃料流体の排出用内部共用マニホールド41Bの流れを示している。
本発明の実施の形態1によれば、全方位型開口部11、12、13の周辺にあるシール材19により各種流体の流れが制御される仕組みになっている。具体的には、図7(B)のアノード側ガス拡散層4の面視図を見れば明らかなように、水素イオンをCCM膜M101に透過させるために、アノード側ガス拡散層4に冷却媒体と酸化流体が流れ込まないよう冷却媒体の供給排出用開口部12A、12Bと、酸化流体の供給排出用開口部13A、13Bの周囲に対してシール材19を施すことで塞ぎ、アノード側ガス拡散層4に燃料流体が流れ込むよう燃料流体の供給排出用開口部11A、11Bの端口にはシール材19が設けられていない。
図7(C)のCCMシートM100の面視図を見て分かるように、アノード側ガス拡散層4に面するCCMシートM100側の燃料流体の供給排出用開口部11A、11Bの周辺には、第1の誘導流路31M1A、31M1Bと第2の誘導流路31M2A、31M2Bが設けられている。該当しない冷却媒体の開口部12と酸化流体の開口部13の周辺には、シール材19が設けられている。このシール材19は、全方位型開口部12、13ごとつながっていても良いし、つながっていなくても良い。
図7(A)の立体断面図は、燃料流体の供給用開口部11Aと排出用開口部11Bのシーリング部位を示す。アノード側ガス拡散層4及びそれに隣接する第1の誘導流路31M1A、31M1Bに繋がる燃料流体の開口部11A、11Bの端口にはシール材19を施していないので、流路31への燃料流体の流れが確保される。同時に、カソード側ガス拡散層5及び酸化流体流路33と接する燃料流体開口部11A、11Bの部位、及びアノード側セパレータ6とそれに隣接するカソード側セパレータ7の間にある冷却媒体の流路32と接する燃料流体開口部11A、11Bの部位は全てシール材19によって塞がれ、燃料流体が上記の無関係な流路、すなわち流路32、33へ流れ込まないようにしている。
また、図7(A)の拡大図を見れば明らかなように、燃料流体の供給用内部共用マニホールド41Aより供給される燃料流体の流れが、燃料流体の供給用開口部11Aにて2つに分岐している。この2通りの流れのうち、上側の矢印で示す流れは、図11で後述する単セル8の一部を構成するアノード側セパレータ6に設けられた第1の誘導流路31S1A、第2の誘導流路31S2A及び主流路31S0への流れを示し、下側の矢印で示す流れは、アノード側ガス拡散層4側に面するCCMシートM100に設けられた第1の誘導流路31M1Aと第2の誘導流路31M2Aへの流れを示している。よって、アクティブな流路である燃料流体の流路31は、この2通りの流路から構成される。その一方の流路は、アノード側セパレータ6に設けられた流路であり、第1の誘導流路31S1A、第2の誘導流路31S2A及び主流路31S0からなる。他方の流路は、CCMシートM100に設けられた流路であり、第1の誘導流路31M1A及び第2の誘導流路31M2Aから構成される。同様に、上述の分岐した2通りの未反応の燃料流体の流れは、燃料流体の排出用開口部11Bで合流し、燃料流体の排出用内部共用マニホールド41Bへ排出される。
燃料流体の流れる経路31は、次の順となる。すなわち、燃料流体の供給経路は、1)燃料流体の供給用開口部11A→第1の誘導流路31S1A→第2の誘導流路31S2A→主流路31S0→アノード側ガス拡散層4、により編成されるアノード側セパレータ6側の経路と、2)燃料流体の供給用開口部11A→第1の誘導流路31M1A→第2の誘導流路31M2A→アノード側ガス拡散層4、により編成されるCCMシートM100側の経路である。供給された燃料流体の一部がアノード側ガス拡散層4に拡散し、アノード側触媒層2では水素酸化反応が起き、水素イオンがCCM膜M101を透過する。その一方で未反応の燃料流体の排出経路は、1)主流路31S0(アノード側ガス拡散層4→主流路31S0を含む)→第2の誘導流路31S2B→第1の誘導流路31S1B→燃料流体の排出用開口部11B、により編成されるアノード側セパレータ6側の経路と、2)アノード側ガス拡散層4→第2の誘導流路31M2B→第1の誘導流路31M1B→燃料流体の排出用開口部11B、により編成されるCCMシートM100側の経路である。このような供給・排出の経路のことを「供給排出流路31」と称する。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
更に、単セル8の一部を構成するアノード側セパレータ6と、それに隣接する単セル8の一部を構成するカソード側セパレータ7との間には、冷却媒体の流路32が設けられる(後述する)。
なお、図7(B)と図7(C)に示した通り、酸化流体の全方位型開口部13の周辺に施されるシール材19と、冷却媒体の全方位型開口部12の周辺に施されるシール材19とは一体化していてもよいし、シール材19の加工が容易になるようつながってなくてもよい。
また、図7(A)で明らかなように、アノード側ガス拡散層4は、そのCCMシートM100側に形成される燃料流体の供給排出流路31(第1の誘導流路31M1、第2の誘導流路31M2)に合わせるよう載置される。同時に、このアノード側ガス拡散層4は、そのアノード側セパレータ6に面する側に形成される燃料流体の供給排出流路31(第1の誘導流路31S1、第2の誘導流路31S2、主流路31S0)に合わせるよう載置させている。
更に、図7に示す全方位型開口部の配列レイアウトは、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とが、同じ一列には同種流体の供給用開口部のみまたは排出用開口部のみを設けている例であり、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とからなる列の間は、略等間隔になるように設けられている。なお、全方位型開口部の配列レイアウトは、特にこの例に限定されるわけではない。
次に、本発明の実施の形態1における単セル8のカソード側の流路及び全方位型開口部11、12、13周辺の構造について、図8を参照しながら説明する。
図8は、本発明の実施の形態1におけるCCMシートM100のカソード側の流路を説明する図であって、図8(A)は、図8(B)及び図8(C)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図8(B)は、カソード側セパレータ7を取り外した時に出現するカソード側ガス拡散層5側の面視図であり、図8(C)は、図8(B)のカソード側ガス拡散層5を取り外した時に出現するCCMシートM100側の面視図である。図8(A)の左上にある縦両矢印Cは、単セル8のスタック方向Cを示している。一枚の単セル8が示された図8(A)の左側には、供給排出流路31、32、33の位置関係を示している。アスタリスク「*」が付いている流路、図8(A)の例では流路33が、アクティブな流路であるが、実際に燃料電池が稼働している時には、他の流路も活動しているということは、当事者であれば理解できるだろう。図8(A)のアクティブな流路33の中に引いてある横矢印が示すのは、酸化流体が流路33を流れる方向である。上向きの縦矢印は、酸化流体の供給用内部共用マニホールド43Aの流れを示し、下向きの縦矢印は、酸化流体の排出用内部共用マニホールド43Bの流れを示している。
本発明の実施の形態1によれば、全方位型開口部11、12、13の周辺にあるシール材19により各種流体の流れが制御される仕組みになっている。具体的には、図8(B)のカソード側ガス拡散層5側の面視図を見れば明らかなように、CCM膜M101から透過されてきた水素イオンと酸化流体との反応を促進させるために、カソード側ガス拡散層5に燃料流体と冷却媒体が流れ込まないよう燃料流体の供給排出用開口部11A、11Bと、冷却媒体の供給排出用開口部12A、12Bに対してシール材19を施すことで塞ぎ、カソード側ガス拡散層5に酸化流体が流れ込むよう酸化流体の供給排出用開口部13A、13Bの端口にはシール材19が設けられていない。
図8(C)のCCMシートM100側の面視図を見て分かるように、カソード側ガス拡散層5に面するCCMシートM100側の酸化流体の供給排出用開口部13A、13Bの周辺には、第1の誘導流路33M1A、33M1Bと第2の誘導流路33M2A、33M2Bが設けられている。該当しない燃料流体の開口部11と冷却媒体の開口部12の周辺には、シール材19が設けられている。このシール材19は、全方位型開口部11、12ごとにつながっていても良いし、つながっていなくても良い。
図8(A)の立体断面図は、酸化流体の供給用開口部13Aと排出用開口部13Bのシーリング部位を示す。カソード側ガス拡散層5及びそれに隣接する酸化流体の第1の誘導流路33M1A、33M1Bに繋がる酸化流体の開口部13A、13Bの端口にはシール材19を施していないので、流路33への酸化流体の流れが確保される。同時に、アノード側ガス拡散層4及び燃料流体流路31と接する酸化流体の開口部13A、13Bの部位、及びアノード側セパレータ6とそれに隣接するカソード側セパレータ7間にある冷却媒体の流路32と接する酸化流体の開口部13A、13Bの部位は全てシール材19によって塞がれ、酸化流体が上記の無関係な流路、すなわち流路31、32へ流れ込まないようにしている。
また、図7(A)の拡大図で示した燃料流体の流れと同様に、図8(A)を見れば明らかなように、酸化流体の供給用内部共用マニホールド43Aより供給される酸化流体の流れが、酸化流体の供給用開口部13Aにて2つに分岐している。この2通りの流れのうち、下側の流れ(カソード側セパレータ7側)は、後述する単セル8の一部を構成するカソード側セパレータ7に設けられた第1の誘導流路33S1A、第2の誘導流路33S2A及び主流路33S0への流れを示し、上側の流れ(CCMシートM100側)は、カソード側ガス拡散層5側に面するCCMシートM100に設けられた第1の誘導流路33M1Aと第2の誘導流路33M2Aへの流れを示している。よって、アクティブな流路である酸化流体の供給流路33は、この2通りの流路からなる。その一方の流路は、カソード側セパレータ7に設けられた流路であり、第1の誘導流路33S1A、第2の誘導流路33S2A及び主流路33S0から構成される。他方の流路は、CCMシートM100に設けられた流路であり、第1の誘導流路33M1A及び第2の誘導流路33M2Aから構成される。同じく、図8(A)の拡大図を見れば明らかなように、上述の分岐した2通りの未反応の酸化流体の流れは、酸化流体の排出用開口部13Bで合流し、酸化流体の排出用内部共用マニホールド43Bへ排出される。
酸化流体の流れる経路33は、次の順となる。すなわち、酸化流体の供給経路は、1)酸化流体の供給用開口部13A→第1の誘導流路33S1A→第2の誘導流路33S2A→主流路33S0→カソード側ガス拡散層5、により編成されるカソード側セパレータ7側の経路と、2)酸化流体の供給用開口部13A→第1の誘導流路33M1A→第2の誘導流路33M2A→カソード側ガス拡散層5、により編成されるCCMシートM100側の経路である。供給された酸化流体の一部がカソード側ガス拡散層5に拡散し、カソード側触媒層3でCCM膜M101から透過してきた水素イオンと酸素還元反応を起こす。その一方で未反応の酸化流体の排出経路は、1)主流路33S0(カソード側ガス拡散層5→主流路33S0を含む)→第2の誘導流路33S2B→第1の誘導流路33S1B→酸化ガスの排出用開口部13B、により編成されるカソード側セパレータ7側の経路と、2)カソード側ガス拡散層5→第2の誘導流路33M2B→第1の誘導流路33M1B→酸化流体の排出用開口部13B、により編成されるCCMシートM100側の経路である。このような供給・排出の経路のことを「供給排出流路33」と称する。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
更に、単セル8の一部を構成するカソード側セパレータ7と、それに隣接する単セル8の一部を構成するアノード側セパレータ6との間には、冷却媒体の流路32が設けられる(後述する)。
なお、図8(B)と図8(C)に示した通り、燃料流体の全方位型開口部11の周辺に施されるシール材19と、冷却媒体の全方位型開口部12の周辺に施されるシール材19とは一体化していてもよいし、シール材19の加工が容易になるようつながってなくてもよい。
また、図8(A)で明らかなように、カソード側ガス拡散層5は、そのCCMシートM100側に形成される酸化流体の供給排出流路33(第1の誘導流路33M1、第2の誘導流路33M2)に合わせるよう載置される。同時に、このカソード側ガス拡散層5は、そのカソード側セパレータ7に面する側に形成される酸化流体の供給排出流路33(第1の誘導流路33S1、第2の誘導流路33S2、主流路33S0)に合わせるよう載置させている。
更に、図8に示す全方位型開口部の配列レイアウトは、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とが、同じ一列には同種流体の供給用開口部または排出用開口部のみを設けている例であり、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とからなる列の間は、略等間隔になるように設けられている。なお、全方位型開口部の配列レイアウトは、特にこの例に限定されるわけではない。
次に、図9、図10、図11を参照しながらセパレータに係わる流路形成について説明する。なおこれらの図面において、図面の見やすさ及び説明の便宜を図るため、正確な縮尺にはなっておらず、肉厚の薄い部材の肉厚が大きく表示されていることに注意されたい。
図9は、本発明の実施の形態1におけるアノード側セパレータ6に形成される流路を説明する図であって、図9(A)は、図9(B)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図9(B)は、燃料流体の全方位型開口部11の端口と燃料流体の流路31が形成されるアノード側セパレータ6の片面の構造を示す図である。
図10は、本発明の実施の形態1におけるカソード側セパレータ7に形成される流路を説明する図であって、図10(A)は、図10(B)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図10(B)は、酸化流体の全方位型開口部13の端口と酸化流体の流路33が形成されるカソード側セパレータ7の片面の構造を示す図である。
図11は、本発明の実施の形態1におけるアノード側セパレータ6とカソード側セパレータ7間に形成される冷却媒体の流路32を説明する図であって、図11(A)は、図11(B)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図11(B)は、冷却媒体の全方位型開口部12の端口と冷却媒体の流路32が形成されるセパレータ6、7それぞれに面する側の構造を表す面視図である。そこには、隣接するセパレータ6、7との間に冷却媒体の流路32を形成するため、第1の誘導流路32S1及び主流路32S0が設けられている。
図9(B)によると、本発明の実施の形態1におけるアノード側セパレータ6の両面のうちアノード側ガス拡散層4に対面する面には、アノードガスである燃料流体の供給排出流路31(第1の誘導流路31S1、第2の誘導流路31S2及び主流路31S0)が形成されている。図9(B)は、アノード側セパレータ6を取り外した時のセパレータ6のアノード側の面視図である。つまり、供給用内部共用マニホールド41Aから供給される燃料流体は、その供給用開口部11Aを通って、第1の誘導流路31S1A→第2の誘導流路31S2A→主流路31S0に流入し、アノード側ガス拡散層4に拡散される。一方、未反応の燃料流体を、主流路31S0→第2の誘導流路31S2B→第1の誘導流路31S1B→排出用開口部11Bに流通させる。
図9のアノード側セパレータ6の両面のうちアノード側ガス拡散層4が位置する側とは反対側の面には、冷却媒体が流通する供給用排出流路32が形成されている(図11を参照)。内部共用マニホールドから供給された冷却媒体が、冷却媒体の供給用開口部12Aを通って、第1の誘導流路32S1A→主流路32S0に流入する。この冷却媒体は発電エリアを冷却しながら、主流路32S0→第1の誘導流路32S1Bを経由し、排出用内部共用マニホールド42Bに導出される。なお、図11が示す通り、アノード側セパレータ6とカソード側セパレータ7に対面する面に形成される誘導流路には、第1の誘導流路32S1のみが形成されているが、第2の誘導流路を設けても構わない。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
また、図10(B)によると、本発明の実施の形態1におけるカソード側セパレータ7の両面のうちカソード側ガス拡散層5に対面する面には、カソードガスである酸化流体の供給排出流路33(第1の誘導流路33S1、第2の誘導流路33S2及び主流路33S0を含む)が形成されている。図10(B)は、カソード側セパレータ7を取り外した時のセパレータ7のカソード側の面視図である。つまり、供給用内部共用マニホールド43Aから供給される酸化流体は、その供給用開口部13Aを通って、第1の誘導流路33S1A→第2の誘導流路33S2A→主流路33S0に流入し、カソード側ガス拡散層5に拡散される。一方、未反応の酸化流体を主流路33S0→第2の誘導流路33S2B→第1の誘導流路33S1Bから排出用開口部13Bに流通させる。
図10のカソード側セパレータ7の両面のうちカソード側ガス拡散層5が位置する側とは反対側の面には、冷却媒体が流通する冷却媒体用の供給排出流路32が形成されている(図11を参照)。内部共用マニホールドから供給された冷却媒体が、冷却媒体の供給用開口部12Aを通って、第1の誘導流路32S1A→主流路32S0に流入する。この冷却媒体は発電エリアを冷却しながら、主流路32S0→第1の誘導流路32S1Bを経由し、排出用内部共用マニホールド42Bに導出される。なお、図11が示す通り、カソード側セパレータ7とアノード側セパレータ6に対面する面に形成される誘導流路には、第1の誘導流路32S1のみが形成されているが、第2の誘導流路を設けても構わない。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
本発明の実施の形態1によれば、供給排出流路31、32,33には、それぞれ第1の誘導流路、第2の誘導流路及び主流路を設けているが、特にこれに限定されるわけではなく、その他の様々な誘導流路、主流路を設けてもよい。
以下、本発明の実施の一形態におけるスタック型燃料電池の内部共用マニホールド41、42、43及び外部共用マニホールド51、52、53に施されるエッジ処理について、図3、図12、図13、図21を用いて詳述する。なお、本発明では、内部共用マニホールド41、42、43に施されるエッジ構造のみについて言及する。
実際には、単セル8の面内に穿設される開口部11、12、13の2次元的展開はどこまでも続くわけではなく、必ずエッジを設けて展開を終端させなくてはならない。外部BOP(Balance of Plant:発電補助システム)から注入される各種流体の、エンドプレート101、102に内設される外部共用マニホールド51、52、53と、単セル8をスタックすることにより構成されたスタック構造体9に内設される内部共用マニホールド41、42、43とへの供給、そして排出が均衡するよう、内部共用マニホールド41、42、43と外部共用マニホールド51、52、53の双方にエッジ構造を設ける必要がある。
2次元展開のブラベ格子に沿う開口部配列の周期性(繰り返し)に基づく基本単位16と、発電に必要最小限である最小発電体17については既に述べた通りである。本発明の実施の一形態では、2次元ブラベ格子の斜方格子を一例として説明したが、これに限る訳ではなく、その他のブラベ格子の対称性を適用した周期性あるいはある程度のゆらぎがある周期性を有する開口部の配列レイアウトとしても構わない。「ゆらぎ」とは、単セル8の面内にレイアウト設計される開口部11、12、13の寸法、形状及び配列位置が、完璧でなくてもよく、少々ゆらぎのある寸法、形状及び位置があっても構わないという意味である。
以降、図12、図13を用いて、本発明の実施の形態1おけるエッジ構造について説明する。
図12に示す本発明の実施の形態1におけるエッジ構造には、全方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12のA方向)と、全方位型開口部の配列パターンE001のA軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12のB方向)がある。これら2端部のエッジ構造を形成するためには、図12(A)で示した2次元ブラベ格子の規則性に基づく全方位型開口部の配列パターンE001を基本セグメント18で区切り、図12(A)、図12(B)の太線で囲んだ「エッジ処理後の全方位型開口部の配置エリアE002」を切り出すことになる。
図12(A)は、単セル8の面内に2次元展開された全方位型開口部の配列パターンE001と2つのエッジ処理後の全方位型開口部配置エリア(Assigned area)E002を示している。図12(B)が示すのは、全方位型開口部の配列パターンE001よりエッジ処理後の全方位型開口部配置エリアE002を切り出して得られた、エッジ処理済開口部配置構造E003を有する単セル8と、この単セル8をスタックして形成されたスタック構造体9の概念図である。エッジ処理後の全方位型開口部配置エリアE002内において、各種流体の供給総流量及び分布と排出総流量及び分布をそれぞれ均衡させるため、各種流体の供給用開口部11A、12A、13Aの面積(エッジ部と中間部を含む)と排出用開口部11B、12B、13Bの面積(エッジ部と中間部を含む)とをそれぞれ合わせた総面積が同等またはほぼ同等になるよう設計し、エッジ処理を行っている。
図12(A)で示した通り、B軸とA軸の2つの軸方向展開を終端させるエッジ構造は、それぞれ軸方向展開に対応する基本セグメント18の整数倍になる区切りを基準としている。基本セグメント18には、発電機能を維持するために、燃料流体、冷却媒体及び酸化流体の3種類の開口部11、12、13から構成されるという特徴、及び/または各種流体の供給用開口部と排出用開口部とで一対―の関係で構成されるという特徴がある。単セル8内を流れる各反応ガスと2枚の単セル8の間を流れる冷却媒体において、それぞれの供給と排出の均衡が保たれるよう、基本セグメント18の整数倍になる区切りを基準に全方位型開口部のB軸とA軸の2つの軸方向展開を終端さている。
以下、2×4のエッジ構造を例に挙げて説明するが、本発明のエッジ構造はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明の実施の形態1における全方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12(B)のA方向)というのは、図12(A)のエッジ処理後の全方位型開口部配置エリアE002のA方向に沿って設けられるエッジ構造のことである。図12(A)で示す通り、全方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12(B)のA方向)の区切り基準は、基本セグメントSB1、SB2、SB3の整数倍である。基本セグメントSB1及び/または基本セグメントSB2及び/または基本セグメントSB3の区切り(セグメント)を基準として、それを整数倍にし、全方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させている。図3(A)によると、全方位型開口部の端口は、全ての第I象限、第II象限、第III象限及び第IV象限内に配置されており、全方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるには、第I象限と第IV象限の間と、第II象限と第III象限の間とにあるゾーンを切り通し、図13に示すように全方位型開口部を2分割にする。図12によれば、基本セグメントSB1、SB2及びSB3の起点となる全方位型開口部は、終点となる全方位型開口部と同じ類にしており、それぞれ2分割した燃料流体開口部11、2分割した冷却媒体開口部12、2分割した酸化流体開口部13である。よって、図12(A)に示された様に、基本セグメントSB1は、2つの2分割された燃料流体開口部11、2つの2分割された冷却媒体の開口部12と、1つの酸化流体の開口部13とから構成される。基本セグメントSB2は、2つの2分割した冷却媒体の開口部12、1つの燃料流体の開口部11、1つの冷却媒体の開口部12と、1つの酸化流体の開口部13とから構成される。基本セグメントSB3は、2つの2分割した酸化流体開口部13、2つの冷却媒体の開口部12と、1つの燃料流体の開口部11とから構成される。基本セグメントSB1、SB2、SB3の長さ(B方向の長さ)は、同じでもよいが、異なっていてもよい。B方向の長さが同じケースというのは、図12の例では、燃料流体の開口部11、冷却媒体の開口部12と、酸化流体の開口部13とも同じ列にまっすぐ配列させ、基本セグメントSB1、SB2及びSB3は均等の長さをもつ。一方、燃料流体の開口部11、冷却媒体の開口部12と、酸化流体の開口部13がB方向にジグザグに配列されている場合、B方向に沿う基本セグメントSB1、SB2及びSB3の長さは、異なることになる。よって、図12(B)で示す2×4のエッジ構造では、B軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12のA方向)は2つの基本セグメントSB1と2つの基本セグメントSB3とから構成されている。
本発明の実施の形態1における全方位型開口部の配列パターンE001のA軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12(B)のB方向)というのは、図12(A)のエッジ処理後の全方位型開口部配置エリアE002のB方向に沿って設けられるエッジ構造のことである。図12(A)で示す通り、全方位型開口部のパターンE001のA軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12(B)のB方向)の区切り基準は、基本セグメントSA1、SA2、SA3の整数倍である。基本セグメントSA1及び/または基本セグメントSA2及び/または基本セグメントSA3の区切り(セグメント)を基準として、それを整数倍にし、全方位型開口部のパターンE001のA軸の2方向展開を終端させている。図3(A)によると、全方位型開口部の端口は、全ての第I象限、第II象限、第III象限及び第IV象限内に配置されており、全方位型開口部のA軸の2方向展開を終端させるには、第I象限と第II象限の間と、第III象限と第IV象限の間とにあるゾーンの中間を切り通し、図13に示すように全方位型開口部を2分割にする。図12によれば、基本セグメントSA1、SA2及びSA3の起点となる全方位型開口部は、終点となる全方位型開口部と同じ類にしており、それぞれ2分割した燃料流体開口部11、2分割した冷却媒体開口部12、2分割した酸化流体開口部13である。よって、図12(A)に示された様に、基本セグメントSA1は、1つの2分割した燃料流体の供給用開口部11Aと、1つの2分割した燃料流体の排出用開口部11Bから構成される。基本セグメントSA2は、1つの2分割した冷却媒体の供給用開口部12Aと、1つの2分割した冷却媒体の排出用開口部12Bから構成される。基本セグメントSA3は、1つの2分割した酸化流体の供給用開口部13Aと、1つの2分割した酸化流体の排出用開口部13Bから構成される。図12(A)に示された例では、燃料流体の開口部11と、冷却媒体の開口部12と、酸化流体の開口部13は、同じB列に配列されているので、基本セグメントSA1、SA2、SA3の長さはB列間の距離となり同じである。基本セグメントSA1、SA2、SA3の長さ(A方向の長さ)は同じでもよいが、異なっていてもよい。燃料流体の開口部11、冷却媒体の開口部12と、酸化流体の開口部13がA方向にジグザグに配列されている場合、基本セグメントSA1、SA2、SA3の長さは異なることになる。
よって、図12(B)で示す2×4のエッジ構造では、A軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図12のB方向)は4つの基本セグメントSA1、4つの基本セグメントSA2及び4つの基本セグメントSA3とから構成されている。
以上の様にして、図12(A)、(B)に示す、2×4で区切った基本セグメントによるエッジ構造が形成される。同様に、図2(B)を参照して、基本単位が1つしかない単セル8においても、エッジ処理が行われている。図2(C)のように、周期的に繰り返される複数の異種基本単位の単セル8においても、異種基本単位の境界間でエッジ処理が行われている。
従って、本発明の実施の形態1における全方位型開口部11、12、13が配列された単セル8の面内においては、各種流体の供給用内部共用マニホールド41A、42A、43Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、各種流体の排出用内部共用マニホールド41B、42B、43Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とを均衡させている。
以下の表1は、図12(B)のエッジ処理済開口部配置構造E003に含まれる全方位型開口部の数を示している。
上記の表1に示すように、図12(B)のエッジ処理済開口部配置構造E003に含まれる、同種類の供給用開口部の数(面積)の合計と排出用開口部の数(面積)の合計とが、同じになっていることが分かる。
図12(B)を見れば分かる通り、太線で囲ったエッジ処理済開口部配置構造E003を有する全方位型開口部の配列レイアウトが示す例では、すなわち2×4の基本セグメントで区切ったエッジ構造には、その4隅にある全方位型開口部(この例では、全て酸化流体供給用開口部13Aである)は、中間部にある全形の全方位型開口部(この例では、酸化流体供給用開口部13B)の面積を1とすれば、その4分の1である。供給排出の均衡(総合的に1対1の関係が確立しているか)がとれていることが、各全方位型開口部の数(面積)を数え合わせることで確認できる。
その結果、図12(A)の2次元展開の全方位型開口部の配列パターンE001から、エッジ処理後の全方位型開口部配置エリアE002を切り出すことで、供給排出のバランス関係が成立したエッジ処理済開口部配置構造E003を有する、全方位型開口部11、12、13を配列させた単セル8が出来上がる。図12では、ブラベ格子の規則性を応用した全方位型開口部配列の2次元展開パターンE001の上を「エッジ処理後の全方位型開口部の配置エリアE002」として太線で囲み、その部分を切り出している。本発明における実施の形態1では、「エッジ処理後の全方位型開口部の配置エリアE002」に基づいて単セル8の面内に全方位型開口部11、12、13を配列させている。
本発明の特徴の一つであるエッジ構造を形成するのに利用される全方位型開口部11、12、13の形状の特殊な例について、図13を参照しながら具体的に説明する。図13は、実施の形態1におけるエッジ構造を有する酸化流体の全方位型開口部13の面内形状を表す図であって、図13(A)は、全形としての全方位型開口部の形状、図13(B)は、全形を2分割した全方位型開口部の形状2つ、図13(C)は、全形を4分割した全方位型開口部の形状を表す図である。
エッジ処理を実施し、2次元展開を終端させるというのは、具体的には、図13(B)の全方位型開口部に示した通り、全方位型開口部の全面積の半分にした形状を、スタック構造体9のエッジ部分(縁部)に配置させることである。図13(B)に示すような、面積を半分にした全方位型開口部をエッジ部分に配置した場合(例えば、酸化流体供給用開口部13A)、エッジ部以外の位置である中間部に全形の酸化流体の排出用開口部13Bを設け、対面側のエッジ部に面積が半分の酸化流体の供給用開口部13Aを設けることにより、全体の供給と排出の均衡がとれ、エッジ構造が成立する。本発明でエッジ構造を形成するというのは、図13(A)に図示した全形としての全方位型開口部の面積が1だとすれば、図13(B)、図13(C)に図示する1未満(2分の1または4分の1)の全方位型開口部をエッジ部(縁部と角部)に設けることである。結果として、2×4のエッジ構造が形成される。簡単に言えば、全方位型開口部からの流れは、全方位のパノラマ(360度)であるので、全方位型開口部を2分割すれば、エッジ部(縁部)の全方位型開口部として利用できる構成になっている、ということである。また、全方位型開口部を4分割にすれば、エッジ部(角部)の全方位型開口部として利用できる構成になっている、ということである。
なお、図13(B)に示す2分割の全方位型開口部には、2タイプが示されている。それぞれのタイプには反転タイプが存在するので、2分割された全方位型開口部には、合計4種類ある。図13(C)の4分割の全方位型開口部には、合計4種類ある。以上のような様々な向きの全方位型開口部を配置可能な位置に適宜に設置させることにより、エッジ構造が首尾よく形成される。図13の例では、酸化流体の開口部13のみ描写したが、燃料流体の開口部11と冷却媒体の開口部12の形状についても、同様コンセプトにてエッジ構造を形成することができる。
図13(A)、図13(B)、図13(C)に示した通り、本発明の実施の形態1における全方位型開口部に係わるエッジ構造の特徴は、単セル8の縁部に沿って設けられる全方位型開口部の寸法、形状及び面積(2分の1以上または2分の1未満)、角部に位置する全方位型開口部の寸法、形状及び面積(4分の1以上または4分の1未満)、それら以外の位置にある全方位型開口部、すなわち、中間部に位置する全方位型開口部の寸法、形状及び面積(1以上または1未満)がそれぞれ異なっている点にある。括弧書きの中に示した値は、全形の全方位型開口部の面積を1とした時の数値である。
以上、単セル8の面内のエッジ構造について、全方位型開口部の観点で説明した。次に、全方位型開口部に連通する内部共用マニホールドに係わるエッジ構造について述べる。内部共用マニホールドは、本発明の単セル8をスタックしたスタック構造体9の内側に形成される。よって、1枚の単セル8の面内で、各種流体の全方位型開口部11、12、13の供給排出の均衡がとれていれば、たとえ内部共用マニホールドの形状及びサイズに対して変形が加えられたとしても、総合的には、内部共用マニホールドの供給排出の均衡も取れているということになる。
つまり、内部共用マニホールドの断面形状及び断面積と、全方位型開口部の面内形状及び面積とは、基本的に同じである。単セル8の面内に設けられる全方位型開口部の面内形状及び面積と同様に、内部共用マニホールドの断面形状及び断面積は、その角部と縁部(エッジ部分)と中間部(エッジ以外の部分)とでそれぞれ異なっている。比較してみると、中間部にある全形の内部共用マニホールド断面積を1とした場合、縁部の内部共用マニホールド断面積は、中間部の内部共用マニホールド断面積より小さく、略2分の1である。角部の内部共用マニホールド断面積は、中間部の内部共用マニホールド断面積より小さく、略4分の1である。上述したような構造は、内部共用マニホールドと外部共用マニホールドの双方に適用される。
そのため、本発明の実施の形態1における単セル8の面内においては、燃料流体の供給用内部共用マニホールド41Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、燃料流体の排出用内部共用マニホールド41Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とは均衡している。また、冷却媒体の供給用内部共用マニホールド42Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、冷却媒体の排出用内部共用マニホールド42Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とは均衡している。更に、酸化流体の供給用内部共用マニホールド43Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、酸化流体の排出用内部共用マニホールド43Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とは均衡している。
本発明の実施の形態1における全方位型開口部のケースでは、2次元ブラベ格子に沿う配列の展開を終端させることは、上述したようなエッジ構造を設けることにより実現できる。
上述したように、本発明の実施の形態1に係わるエッジ構造はあくまで一例であり、本明細書に記載された内容に限定されるわけではないことは言うまでもない。
その効果は、全方位型開口部11、12、13が配列された単セル8に供給排出される各種流体の有効利用と均一化された供給と排出である。
エッジ構造を施さなければ、端部近傍にある各種流体の供給と排出のバランスが崩れ、局部反応が強まり、触媒層に大きなダメージを与え、破損につながり、また、耐久性も著しく低下するだろう。
(実施の形態2)
次に、図1〜図3、図14〜図21を用いて、本発明の実施の形態2におけるスタック型燃料電池について説明する。なお、本発明は、実施の形態2のみに限定されるものではない。
本発明の実施の形態2においては、図1〜図3、図14〜図21に示す通り、単セル8の面内に半方位型開口部を配列させたレイアウトで実施されている点が主に異なり、他の構造やメカニズムについては、図1〜図13に示す実施の形態1とほぼ同一である。なお、本発明の実施の形態1の図1〜図13の内容と重複する部分には、同一の符号を付して、その説明は一部省略する。
以下、図3、図14を参照しながら、本発明の実施の形態2における単セル8の面内に配列される半方位型開口部の端口の特徴と、その配列レイアウトについて説明する。
図14は、2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した、本発明の単セル8の面内に穿設される半方位型開口部11、12、13の配列を示している。図14に示す半方位型開口部11、12、13のそれぞれを各種流体の供給用開口部及び排出用開口部として次のように区別する。燃料流体供給用開口部11A、冷却媒体供給用開口部12A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、冷却媒体排出用開口部12B、酸化流体排出用開口部13Bがある。図14には、多様な開口部の形状の一案として半方位型が示されている故に、この半方位型開口部に発散角度をもたせ流出を設定することができる。図14に示した例では、半方位型開口部11、12、13の端口の配置は、第I象限及び第II象限、または第III象限及び第IV象限に配置する端口を経由して流出する各種流体が、発散角度が1度以上90度以下である半方位で流出するよう設計されている。また、前記の象限に配置する端口を経由して流入する各種流体は、収束角度が1度以上90度以下である半方位で流入するよう設計されている。
各種流体の流れは目に見えないため、矢印を使って流れを可視化するようにしている。第I象限及び第II象限に配置する半方位型開口部の端口または第III象限及び第IV象限に配置する半方位型開口部の端口に向かうように描かれた矢印は、各種流体が半方位型開口部に流れ込む方向を指している。第I象限及び第II象限に配置する半方位型開口部の端口または第III象限及び第IV象限に配置する半方位型開口部の端口から扇状に放出するように描かれた矢印は、各種流体が半方位型開口部から流れ出る方向を指している。図14では、半方位型開口部の形状は、冷却媒体の開口部12が矩形であり、燃料流体の開口部11及び酸化流体の開口部13が各々の面積の異なる台形で形成されている(すなわち、酸化流体開口部13の面積は、燃料流体の開口部11の面積より大きい)。
図3(B)に示した反応ガスの半方位型開口部の形状は、上下非対称であることからも、それぞれ反転タイプが存在する。この特性を利用して、図14で示した例では、供給用開口部として上向き端口(正の台形)を有する半方位型開口部を用い、排出用開口部としてその下向き端口(反転の台形)を有する半方位型開口部を用いる。これにより、供給用開口部の端口は、第I象限及び第II象限に位置し、対応する排出用開口部の端口が、第III象限及び第IV象限に位置するので、端口からの反応ガスの流れが、供給と排出の流路方向に首尾よくお互いを向いておりマッチングしている。なお、図14で示した例に限らず、同様に、排出用開口部の端口は、第I象限及び第II象限に位置し、対応する供給用開口部の端口が、第III象限及び第IV象限に位置することもでき、端口からの反応ガスの流れが、供給と排出の流路方向に首尾よくお互いを向いておりマッチングしている。また、図3(C)に示した反応ガスの半方位型開口部の形状は、非対称の形状であることからも、反転タイプが存在する。更に、図3(E)に示した反応ガスの半方位型開口部の形状は、非対称の形状であることからも、反転タイプが存在する。
基本単位16は、ベクトルA(図14の符号14)とベクトルB(図14の符号15)により描かれた2次元ブラベ格子に従って開口部が配列するパターンの繰り返し配列の最小単位を表し、ここでは、半方位型開口部の2次元の配列を展開させる繰り返し最小単位である(2次元展開が適用されるのは、図2、図14中、A軸とB軸からなる平面に位置する単セル8の面内である)。半方位型開口部の配列パターンとは、ベクトルA(図14の符号14)のA方向またはその逆方向及び/またはベクトルB(図14の符号15)のB方向及び/またその逆方向に沿って、この基本単位16を繰り返しながら平行移動させたパターンである。半方位型開口部の配置は、このパターンに従って周期的または準周期的に配列される。最小発電体17とは、発電に必要な半方位型開口部の種類を有する最小構成体であり、この最小発電体17には、発電に最小限必要な各種流体の供給用開口部11A、12A、13A及び各種流体の排出用開口部11B、12B、13Bの6種類が含まれている。
なお、図14に記載の四方に展開する点線矢印が表すのは、作図の都合上、繰り返しで配列し続ける半方位型開口部11、12、13を省略した部分であるが、その繰り返し配列が無限に展開するという意味合いを含むものではない。また、図14の単セル8の四辺に表現された波状の輪郭線は、省略部分を切り取った状態を表している。図14の点線矢印で「繰り返し」を表現した意図は、その時その場に具合よく適するよう2次元展開による半方位型開口部11、12、13の配列を実現させるためである。また、図14では、各種流体の供給用開口部11A、12A、13Aの記号は×印で表示され、各種流体の排出用開口部11B、12B、13Bの記号は黒丸印で表示されている。
図14に示した本発明の単セル8の半方位型開口部11、12、13の列の間に描かれた右下がりの破線が表すのは、各種流体それぞれに対応する供給用開口部11A、12A、13Aと排出用開口部11B、12B、13Bの間に形成される流路(燃料流体の供給排出流路31、冷却媒体の供給排出流路32、酸化流体の供給排出流路33)を表す概念上の線であるが、これらは実際の流路31、32、33と必ずしも同じとは限らない。なお、各種流体は、供給用開口部11A、12A、13Aから最も近い対応位置にある排出用開口部11B、12B、13Bへと流れるものの、たとえ最も近い対応位置に排出用開口部11B、12B、13Bが存在していたとしても、供給排出流路31、32、33が導いていない非対応の排出用開口部11B、12B、13Bに向かって流れることはない。
さて、本発明の実施の形態2における2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した半方位型開口部11、12、13の配列の考え方の特徴の一つは、図14で示した通り、2次元展開のブラベ格子に沿って基本単位16を最小繰り返し単位として半方位型開口部11、12、13を配列させている点にある。一例として、ベクトルA(図14の符号14)とベクトルB(図14の符号15)を用いて描かれた斜方格子をかたどる基本単位16に囲繞された領域の内側にかかる半方位型開口部11、12、13の面積としては、その4本の線分かっている4つの燃料流体の開口部11A、11Bは、その内側は略2分の1なので、合わせて開口部2個分(1/2×4=2)とカウントされる。うち2本の線分にかかっている2つの冷却媒体の開口部12Aにおいては、その内側は2分の1なので、合わせると開口部1個分(1/2×2=1)になり、線分にかからない内側にある冷却媒体の開口部12Bが1個あるので、両者を合わせると開口部2個分(1/2×2+1=2)とカウントされる。基本単位16の4隅にある4つの酸化流体の開口部13Aは、その内側は略4分の1なので、合わせると開口部1個分(1/4×4=1)になり、線分にかからない内側にある酸化ガスの開口部13Bが1つあるので、両者を合わせると開口部2個分(1/4×4+1=2)とカウントされる。線分にかからない内側にある開口部12B、13Bをも含め、全てをあわせると、2個の燃料流体の開口部11、2個の冷却媒体の開口部12、そして2個の酸化ガスの開口部13の全部であわせて6個の供給用開口部及び排出用開口部となる。これが斜方格子の基本単位16の構成である。ここで言う「囲繞」とは、2次元ブラベ格子の斜方格子をかたどる基本単位16の4本の線分(ベクトル)に囲まれた内側の領域にかかる半方位型開口部を含む、という意味である。なお、2次元ブラベ格子の基本単位16としては、特に斜方格子に限定されるわけではなく、長方格子、六方格子、正方格子、面心長方格子を含む単位を適用してもよい。
当然のことながら、本発明の実施の形態2におけるスタック型燃料電池を発電させるのに必要最小限な半方位型開口部11、12、13は、燃料流体供給用開口部11A、冷却媒体供給用開口部12A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、冷却媒体排出用開口部12B、酸化流体排出用開口部13Bの6種類である。これを最小発電体17として図14に示している。本発明の実施の形態2における半方位型開口部11、12、13の配列レイアウトの設計を行う上で必要になる点としては、高出力密度及び高容量であるスタック型燃料電池を得るには、単セル8のアノード側触媒層2とカソード側触媒層3の発電エリアに反応ガスを最も効果的に行き渡らせるために、更に、効率良く熱を冷却させるために、必要最小限な6種類の半方位型開口部11、12、13を設けることが好ましい。また、少なくとも、基本単位16を用いて設計される半方位型開口部11、12、13の6種類とそれらの面積が、最小発電体17の半方位型開口部11、12、13の6種類とそれらの面積を満たしていなければならない。半方位型開口部11、12、13の6種類とそれらの面積については、基本単位16と最小発電体17はイコールでも良いし、基本単位16は最小発電体17より大きくても良いが、基本単位16は最小発電体17より小さいという関係では成り立たないということである。
図14によると、最小発電体17に囲繞される半方位型開口部11、12、13の面積は次のとおりである。1つの燃料流体の供給用開口部11Aの面積の略4分の1、1つの燃料流体の排出用開口部11Bの面積の略4分の1、1つの冷却媒体の供給用開口部12Aの面積の2分の1、1つの冷却媒体の供給排出用開口部12Bの面積の2分の1、1つの酸化流体の供給用開口部13Aの面積の略4分の1、1つの酸化流体の排出用開口部13Bの略4分の1である。
以下、図15を用いて半方位型開口部の端口から流入・流出する各種流体(反応ガス)の流れについて説明する。但し、本発明は、この形状(半方位型)に限定されるものではない。
図15における半方位型開口部に関与する流れを表した例によれば、各々の開口部の第I象限及び第II象限に配置する端口から流出する反応ガス(燃料流体、酸化流体)の発散角度が1度以上90度以下になるよう端口形状が設計されている。また、各種反応ガスの流れは目に見えないため、図15では矢印を使って流れを可視化するようにしている。半方位型開口部の端口に向かうように描かれた矢印は、反応ガスが第1の誘導流路から端口を通って排出用半方位型開口部11B、13Bに流れ込むまでの流線を表している。半方位型開口部の端口から扇状に放出するよう描かれた矢印は、反応ガスが供給用半方位型開口部11A、13Aから端口を通って第1の誘導流路へ流れ出るまでの流線を表している。図15には、燃料流体の半方位型開口部11及び酸化流体の半方位型開口部13の左右の位置(つまり、第I象限から第IV象限まで)に存在する端口に各種反応ガスが流入・流出する様子が描写されている。図15(A)には、燃料流体の半方位型開口部11及び酸化流体の半方位型開口部13において異なる面積を有する台形の端口形状が図示されている。図15(B)には、丸みを帯びた稜線を有する同様の端口形状が図示されている。なお、本発明による端口形状は、多角形、変形多角形、非円形、円形及びそれらの細長形状のいずれであっても、またはそれらの組み合わせであっても、実施可能である。また、本発明の端口形状としては、本実施の形態2における半方位型開口部の単一構造に限定する必要はなく、実施の形態1で述べた全方位型開口部の端口形状と、後述するその他変形例の端口形状(準方位型)との様々な組み合わせで単セル8に形成させても構わない。
上述した通り、本発明の実施の形態2における半方位型開口部11、12、13の端口形状を変えることにより、流路設計が最適化されるため、CCMの発電量を最大化させることができる。
次に、図16、17を参照しながらシール材19と、ガス拡散層4、5に係わる流路形成について説明する。なお、これらの図面において、図面の見やすさ及び説明の便宜を図るため、正確な縮尺にはなっておらず、肉厚の薄い部材の肉厚が大きく表示されていることに注意されたい。図面中、同様の部材は同一符号で示される。
まず、本発明の実施の形態2における単セル8のアノード側の流路及び半方位型開口部11、12、13周辺の構造について、図16を参照しながら説明する。なお、図16は、実施の形態1で説明した図7とほぼ同じであり、重複する部分には、同一の符号を付している。
図16は、本発明の実施の形態2におけるCCMシートM100のアノード側の流路を説明する図であって、図16(A)は、図16(B)及び図16(C)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図16(B)は、アノード側セパレータ6を取り外したときに出現するアノード側ガス拡散層4の面視図であり、図16(C)は、図16(B)のアノード側ガス拡散層4を取り外したときに出現するCCMシートM100の面視図である。図16(A)の左上にある縦両矢印Cは、単セル8のスタック方向Cを示している。一枚の単セル8が示された図16(A)の左側には、供給排出流路31、32、33の位置関係を示している。アスタリスク「*」が付いている流路、図16(A)の例では流路31が、アクティブな流路であるが、実際に電池が稼働している時には、他の流路も活動していることが理解できる。図16(A)のアクティブな流路31の中に引いてある横矢印が示すのは、燃料流体が流路31を流れる方向である。上向きの縦矢印は、燃料流体の供給用内部共用マニホールド41Aの流れを示し、下向きの縦矢印は、燃料流体の排出用内部共用マニホールド41Bの流れを示している。
本発明の実施の形態2によれば、半方位型開口部11、12、13の周辺にあるシール材19により各種流体の流れが制御される仕組みになっている。具体的には、図16(B)のアノード側ガス拡散層4の面視図を見れば明らかなように、水素イオンをCCM膜M101に透過させるために、アノード側ガス拡散層4に冷却媒体と酸化流体が流れ込まないよう冷却媒体の供給排出用開口部12A、12Bと、酸化流体の供給排出用開口部13A、13Bに対してシール材19を施すことで塞ぎ、アノード側ガス拡散層4に燃料流体が流れ込むよう燃料流体の供給排出用開口部11A、11Bにはシール材19が設けられていない。
図16(C)のCCMシートM100の面視図を見て分かるように、アノード側ガス拡散層4に面するCCMシートM100側の燃料流体の供給排出用開口部11A、11Bの周辺には、第1の誘導流路31M1A、Bと第2の誘導流路31M2A、Bが設けられている。該当しない冷却媒体の開口部12と酸化流体の開口部13の周辺には、シール材19が設けられている。このシール材19は、半方位型開口部12、13ごとつながっていても良いし、つながっていなくても良い。
図16(A)の立体断面図は、燃料流体の供給用開口部11Aと排出用開口部11Bのシーリング部位を示す。アノード側ガス拡散層4及びそれに隣接する第1の誘導流路31M1A、31M1Bに繋がる燃料流体の開口部11A、11Bの端口にはシール材19を施していないので、流路31への燃料流体の流れが確保される。同時に、カソード側ガス拡散層5及び酸化流体流路33と接する燃料流体開口部11A、11Bの部位、並びにアノード側セパレータ6とそれに隣接するカソード側セパレータ7の間にある冷却媒体の流路32と接する燃料流体開口部11A、11Bの部位は全てシール材19によって塞がれ、燃料流体が上記の無関係な流路、すなわち流路32、33へ流れ込まないようにしている。
また、図16(A)の拡大図を見れば明らかなように、燃料流体の供給用内部共用マニホールド41Aより供給される燃料流体の流れが、燃料流体の供給用開口部11Aにて2つに分岐している。この2通りの流れのうち、上側の矢印で示す流れは、図20で後述する単セル8の一部を構成するアノード側セパレータ6に設けられた第1の誘導流路31S1A、第2の誘導流路31S2A及び主流路31S0への流れを示し、下側の矢印で示す流れは、アノード側ガス拡散層4側に面するCCMシートM100に設けられた第1の誘導流路31M1A及び第2の誘導流路31M2Aへの流れを示している。よって、アクティブな流路である燃料流体の流路31は、この2通りの流路から構成される。その一方の流路は、アノード側セパレータ6に設けられた流路であり、第1の誘導流路31S1A、第2の誘導流路31S2A及び主流路31S0からなる。他方の流路は、CCMシートM100に設けられた流路であり、第1の誘導流路31M1Aと第2の誘導流路31M2Aから構成される。同様に、上述の分岐した2通りの未反応の燃料流体の流れは、燃料流体の排出用開口部11Bで合流し、燃料流体の排出用内部共用マニホールド41Bへ排出される。
燃料流体の流れる経路31は、次の順となる。すなわち、燃料流体の供給経路は、1)燃料流体の供給用開口部11A→第1の誘導流路31S1A→第2の誘導流路31S2A→主流路31S0→アノード側ガス拡散層4、により編成されるアノード側セパレータ6側の経路と、2)燃料流体の供給用開口部11A→第1の誘導流路31M1A→第2の誘導流路31M2A→アノード側ガス拡散層4、により編成されるCCMシートM100側の経路である。供給された燃料流体の一部がアノード側ガス拡散層4に拡散し、アノード側触媒層2では水素酸化反応が起き、水素イオンがCCM膜M101を透過する。その一方で未反応の燃料流体の排出経路は、1)主流路31S0(アノード側ガス拡散層4→主流路31S0を含む)→第2の誘導流路31S2B→第1の誘導流路31S1B→燃料流体の排出用開口部11B、により編成されるアノード側セパレータ6側の経路と、2)アノード側ガス拡散層4→第2の誘導流路31M2B→第1の誘導流路31M1B→燃料流体の排出用開口部11B、により編成されるCCMシートM100側の経路である。このような供給・排出の経路のことを「供給排出流路31」と称する。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
更に、単セル8の一部を構成するアノード側セパレータ6と、それに隣接する単セル8の一部を構成するカソード側セパレータ7との間には、冷却媒体の流路32が設けられる(後述する)。
なお、図16(B)と図16(C)に示した通り、酸化流体の半方位型開口部13の周辺に施されるシール材19と、冷却媒体の半方位型開口部12の周辺に施されるシール材19とは一体化していてもよいし、シール材19の加工が容易になるようつながってなくてもよい。
また、図16(A)で明らかなように、アノード側ガス拡散層4は、そのCCMシートM100側に形成される燃料流体の供給排出流路31(第1の誘導流路31M1、第2の誘導流路31M2)に合わせるよう載置される。同時に、このアノード側ガス拡散層4は、そのアノード側セパレータ6に面する側に形成される燃料流体の供給排出流路31(第1の誘導流路31S1、第2の誘導流路31S2、主流路31S0)に合わせるよう載置させている。
更に、図16に示す半方位型開口部の配列レイアウトは、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とが、同じ一列には同種流体の供給用開口部のみまたは排出用開口部のみを設けている例であり、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とからなる列の間は、略等間隔になるように設けられている。なお、半方位型開口部の配列レイアウトは、特にこの例に限定されるわけではない。
次に、本発明の実施の形態2における単セル8のカソード側の流路及び半方位型開口部11、12、13周辺の構造について、図17を参照しながら説明する。なお、図17は、実施の形態1で説明した図8とほぼ同じであり、重複する部分には、同一の符号を付している。
図17は、本発明の実施の形態2におけるCCMシートM100のカソード側の流路を説明する図であって、図17(A)は、図17(B)及び図17(C)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図17(B)は、カソード側セパレータ7を取り外した時に出現するカソード側ガス拡散層5側の面視図であり、図17(C)は、図17(B)のカソード側ガス拡散層5を取り外した時に出現するCCMシートM100側の面視図である。図17(A)の左上にある縦両矢印Cは、単セル8のスタック方向Cを示している。一枚の単セル8が示された図17(A)の左側には、供給排出流路31、32、33の位置関係を示している。アスタリスク「*」が付いている流路、図17(A)の例では流路33が、アクティブな流路であるが、実際に燃料電池が稼働している時には、他の流路も活動しているということは、当事者であれば理解できるだろう。図17(A)のアクティブな流路33の中に引いてある横矢印が示すのは、酸化流体が流路33を流れる方向である。上向きの縦矢印は、酸化流体の供給用内部共用マニホールド43Aの流れを示し、下向きの縦矢印は、酸化流体の排出用内部共用マニホールド43Bの流れを示している。
本発明の実施の形態2によれば、半方位型開口部11、12、13の周辺にあるシール材19により各種流体の流れが制御される仕組みになっている。具体的には、図17(B)のカソード側ガス拡散層5側の面視図を見れば明らかなように、CCM膜M101から透過されてきた水素イオンと酸化流体との反応を促進させるために、カソード側ガス拡散層5に燃料流体と冷却媒体が流れ込まないよう燃料流体の供給排出用開口部11A、11Bと、冷却媒体の供給排出用開口部12A、12Bに対してシール材19を施すことで塞ぎ、カソード側ガス拡散層5に酸化流体が流れ込むよう酸化流体の供給排出用開口部13A、13Bの端口にはシール材19が設けられていない。
図17(C)のCCMシートM100側の面視図を見て分かるように、カソード側ガス拡散層5に面するCCMシートM100側の酸化流体の供給排出用開口部13A、13Bの周辺には、第1の誘導流路33M1A、33M1Bと第2の誘導流路33M2A、33M2Bが設けられている。該当しない燃料流体の開口部11と冷却媒体の開口部12の周辺には、シール材19が設けられている。このシール材19は、半方位型開口部11、12ごとにつながっていても良いし、つながっていなくても良い。
図17(A)の立体断面図は、酸化流体の供給用開口部13Aと排出用開口部13Bのシーリング部位を示す。カソード側ガス拡散層5及びそれに隣接する酸化流体の第1の誘導流路33M1A、33M1Bに繋がる酸化流体の開口部13A、13Bの端口にはシール材19を施していないので、流路33への酸化流体の流れが確保される。同時に、アノード側ガス拡散層4及び燃料流体流路31と接する酸化流体の開口部13A、13Bの部位、並びにアノード側セパレータ6とそれに隣接するカソード側セパレータ7間にある冷却媒体の流路32と接する酸化流体の開口部13A、13Bの部位は全てシール材19によって塞がれ、酸化流体が上記の無関係な流路、すなわち流路31、32へ流れ込まないようにしている。
また、図16(A)の拡大図で示した燃料流体の流れと同様に、図17(A)を見れば明らかなように、酸化流体の供給用内部共用マニホールド43Aより供給される酸化流体の流れが、酸化流体の供給用開口部13Aにて2つに分岐している。この2通りの流れのうち、下側の流れ(カソード側セパレータ7側)は、後述する単セル8の一部を構成するカソード側セパレータ7に設けられた第1の誘導流路33S1A、第2の誘導流路33S2A及び主流路33S0への流れを示し、上側の流れ(CCMシートM100側)は、カソード側ガス拡散層5側に面するCCMシートM100に設けられた第1の誘導流路33M1Aと第2の誘導流路33M2Aへの流れを示している。よって、アクティブな流路である酸化流体の供給流路33は、この2通りの流路からなる。その一方の流路は、カソード側セパレータ7に設けられた流路であり、第1の誘導流路33S1A、第2の誘導流路33S2A及び主流路33S0から構成される。他方の流路は、CCMシートM100に設けられた流路であり、第1の誘導流路33M1A及び第2の誘導流路33M2Aから構成される。同じく、図17(A)の拡大図を見れば明らかなように、上述の分岐した2通りの未反応の酸化流体の流れは、酸化流体の排出用開口部13Bで合流し、酸化流体の排出用内部共用マニホールド43Bへ排出される。
酸化流体の流れる経路33は、次の順となる。すなわち、酸化流体の供給経路は、1)酸化流体の供給用開口部13A→第1の誘導流路33S1A→第2の誘導流路33S2A→主流路33S0→カソード側ガス拡散層5、により編成されるカソード側セパレータ7側の経路と、2)酸化流体の供給用開口部13A→第1の誘導流路33M1A→第2の誘導流路33M2A→カソード側ガス拡散層5、により編成されるCCMシートM100側の経路である。供給された酸化流体の一部がカソード側ガス拡散層5に拡散し、カソード側触媒層3でCCM膜M101から透過してきた水素イオンと酸素還元反応を起こす。その一方で未反応の酸化流体の排出経路は、1)主流路33S0(カソード側ガス拡散層5→主流路33S0を含む)→第2の誘導流路33S2B→第1の誘導流路33S1B→酸化流体の排出用開口部13B、により編成されるカソード側セパレータ7側の経路と、2)カソード側ガス拡散層5→第2の誘導流路33M2B→第1の誘導流路33M1B→酸化流体の排出用開口部13B、により編成されるCCMシートM100側の経路である。このような供給・排出の経路のことを「供給排出流路33」と称する。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
更に、単セル8の一部を構成するカソード側セパレータ7と、それに隣接する単セル8の一部を構成するアノード側セパレータ6の間とには、冷却媒体の流路32が設けられる(後述する)。
なお、図17(B)と図17(C)に示した通り、燃料流体の半方位型開口部11の周辺に施されるシール材19と、冷却媒体の半方位型開口部12の周辺に施されるシール材19とは一体化していてもよいし、シール材19の加工が容易になるようつながってなくてもよい。
また、図17(A)で明らかなように、カソード側ガス拡散層5は、そのCCMシートM100側に形成される酸化流体の供給排出流路33(第1の誘導流路33M1、第2の誘導流路33M2)に合わせるよう載置される。同時に、このカソード側ガス拡散層5は、そのカソード側セパレータ7に面する側に形成される酸化流体の供給排出流路33(第1の誘導流路33S1、第2の誘導流路33S2、主流路33S0)に合わせるよう載置させている。
更に、図17に示す半方位型開口部の配列レイアウトは、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とが、同じ一列には同種流体の供給用開口部または排出用開口部のみを設けている例であり、各種流体の供給用開口部と排出用開口部とからなる列の間は、略等間隔になるように設けられている。なお、半方位型開口部の配列レイアウトは、特にこの例に限定されるわけではない。
次に、図18、図19、図20を参照しながらセパレータに係わる流路形成について説明する。なおこれらの図面において、図面の見やすさ及び説明の便宜を図るため、正確な縮尺にはなっておらず、肉厚の薄い部材の肉厚が大きく表示されていることに注意されたい。
図18は、本発明の実施の形態2におけるアノード側セパレータ6に形成される流路を説明する図であって、図18(A)は、図18(B)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図18(B)は、燃料流体の半方位型開口部11の端口と燃料流体の流路31が形成されるアノード側セパレータ6の片面の構造を示す図である。なお、図18は、実施の形態1で説明した図9とほぼ同じであり、重複する部分には、同一の符号を付している。
図19は、本発明の実施の形態2におけるカソード側セパレータ7に形成される流路を説明する図であって、図19(A)は、図19(B)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図19(B)は、酸化流体の半方位型開口部13の端口と酸化流体の流路33が形成されるカソード側セパレータ7の片面の構造を示す図である。なお、図19は、実施の形態1で説明した図10とほぼ同じであり、重複する部分には、同一の符号を付している。
図20は、本発明の実施の形態2におけるアノード側セパレータ6とカソード側セパレータ7との間を流れる冷却媒体の流路32を説明する図であって、図20(A)は、図20(B)のII−II線に沿う単セル8の立体断面図であり、図20(B)は、冷却媒体の半方位型開口部12の端口と冷却媒体の流路32が形成されるセパレータ6、7それぞれに面する側の構造を表す面視図である。そこには、隣接するセパレータ6、7との間に冷却媒体の流路32を形成するために、第1の誘導流路32S1及び主流路32S0が設けられている。なお、図20は、実施の形態1で説明した図11とほぼ同じであり、重複する部分には、同一の符号を付している。
図18(B)によると、本発明の実施の形態2におけるアノード側セパレータ6の両面のうちアノード側ガス拡散層4に対面する面には、アノードガスである燃料流体の供給排出流路31(第1の誘導流路31S1、第2の誘導流路31S2及び主流路31S0)が形成されている。図18(B)は、アノード側セパレータ6を取り外した時のセパレータ6のアノード側の面視図である。つまり、供給用内部共用マニホールド41Aから供給される燃料流体は、その供給用開口部11Aを通って、第1の誘導流路31S1A→第2の誘導流路31S2A→主流路31S0に流入し、アノード側ガス拡散層4に拡散される。一方、未反応の燃料流体を、主流路31S0→第2の誘導流路31S2B→第1の誘導流路31S1B→排出用開口部11Bに流通させる。
図18のアノード側セパレータ6の両面のうちアノード側ガス拡散層4が位置する側とは反対側の面には、冷却媒体が流通する供給用排出流路32が形成されている(図20を参照)。内部共用マニホールドから供給された冷却媒体が、冷却媒体の供給用開口部12Aを通って、第1の誘導流路32S1A→主流路32S0に流入する。この冷却媒体は発電エリアを冷却しながら、主流路32S0→第1の誘導流路32S1Bを経由し、排出用の内部共用マニホールド42Bに導出される。なお、図20が示す通り、アノード側セパレータ6とカソード側セパレータ7に対面する面に形成される誘導流路には、第1の誘導流路32S1のみが形成されているが、第2の誘導流路を設けても構わない。
また、図19(B)によると、本発明の実施の形態2におけるカソード側セパレータ7の両面のうちカソード側ガス拡散層5に対面する面には、カソードガスである酸化流体の供給排出流路33(第1の誘導流路33S1、第2の誘導流路33S2及び主流路33S0を含む)が形成されている。図19(B)は、カソード側セパレータ7を取り外した時のセパレータ7のカソード側の面視図である。つまり、供給用内部共用マニホールド43Aから供給される酸化流体は、その供給用開口部13Aを通って、第1の誘導流路33S1A→第2の誘導流路33S2A→主流路33S0に流入し、カソード側ガス拡散層5に拡散される。一方、未反応の酸化流体を主流路33S0→第2の誘導流路33S2B→第1の誘導流路33S1Bから排出用開口部13Bに流通させる。
図19のカソード側セパレータ7の両面のうちカソード側ガス拡散層5が位置する側とは反対側の面には、冷却媒体が流通する冷却媒体用の供給排出流路32が形成されている(図20を参照)。内部共用マニホールドから供給された冷却媒体が、冷却媒体の供給用開口部12Aを通って、第1の誘導流路32S1A→主流路32S0に流入する。この冷却媒体は発電エリアを冷却しながら、主流路32S0→第1の誘導流路32S1Bを経由し、排出用内部共用マニホールド42Bに導出される。なお、図20が示す通り、カソード側セパレータ7とアノード側セパレータ6に対面する面に形成される誘導流路には、第1の誘導流路32S1のみが形成されているが、第2の誘導流路を設けても構わない。なお、誘導流路は、上述した数々の誘導流路に限定されないものとする。例えば、第3の誘導流路が編成されても良い。
本発明の実施の形態2によれば、供給排出流路31、32,33には、それぞれ第1の誘導流路、第2の誘導流路及び主流路を設けているが、特にこれに限定されるわけではなく、その他の様々な誘導流路、主流路を設けてもよい。
以降、図13、図21を用いて、本発明の実施の形態2おけるエッジ構造について説明する。なお、図21は、実施の形態1のエッジ構造で説明した図12とほぼ同じであり、重複する部分には、同一の符号を付している。
図21に示す本発明の実施の形態2におけるエッジ構造には、半方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21のA方向)と、半方位型開口部の配列パターンE001のA軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21のB方向)がある。これら2端部のエッジ構造を形成するためには、図21(A)で示した2次元ブラベ格子の規則性に基づく半方位型開口部の配列パターンE001を基本セグメント18で区切り、図21(A)、図21(B)の太線で囲んだ「エッジ処理後の半方位型開口部の配置エリアE002」を切り出すことになる。
図21(A)は、単セル8の面内に2次元展開された半方位型開口部の配列パターンE001とエッジ処理後の半方位型開口部配置エリア(Assigned area)E002を示している。図21(B)が示すのは、半方位型開口部の配列パターンE001からエッジ処理後の半方位型開口部配置エリアE002を切り出して得られた、エッジ処理済開口部配置構造E003を有する単セル8と、この単セル8をスタックして形成されたスタック構造体9の概念図である。エッジ処理後の半方位型開口部配置エリア内E002において、各種流体の供給総流量及び分布と排出総流量及び分布をそれぞれ均衡させるため、各種流体の供給用開口部11A、12A、13Aの面積(エッジ部と中間部を含む)と排出用開口部11B、12B、13Bの面積(エッジ部と中間部を含む)とをそれぞれ合わせた総面積が同等またはほぼ同等になるように設計し、エッジ処理を行っている。
図21(A)で示した通り、B軸とA軸の2つの軸方向展開を終端させるエッジ構造は、それぞれ軸方向展開に対応する基本セグメント18の整数倍になる区切りを基準としている。基本セグメント18には、発電機能を維持するために、燃料流体、冷却媒体及び酸化流体の3種類の開口部11、12、13から構成されているという特徴、及び/または各種流体の供給用開口部と排出用開口部とで一対―の関係で構成されるという特徴がある。単セル8内を流れる各反応ガスと2枚の単セル8の間を流れる冷却媒体において、それぞれの供給と排出の均衡が保たれるよう、基本セグメント18の整数倍になる区切りを基準に半方位型開口部のB軸とA軸の2つの軸方向展開を終端させている。
以下、2×3のエッジ構造を例に挙げて説明するが、本発明のエッジ構造はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明の実施の形態2における半方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21(B)のA方向)というのは、図21(A)のエッジ処理後の半方位型開口部配置エリアE002のA方向に沿って設けられるエッジ構造のことである。図21(A)で示す通り、半方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21(B)のA方向)の区切り基準は、基本セグメントSB1及びSB2の整数倍である。基本セグメントSB1及び/または基本セグメントSB2の区切り(セグメント)を基準として、それを整数倍にし、半方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させている。図3(B)によると、半方位型開口部の端口は、すべての象限に端口を持つ全方位型開口部の端口配置とは異なり、第I象限及び第II象限内または第III象限及び第IV象限内に配置されている。全方位型開口部の端口配置と流れは、B方向に沿って上向きと下向きが共存する特徴を持ち、エッジ構造を形成するには、全方位型開口部自体を上下2分割で区切っている。一方、半方位型開口部の端口の特徴は、そこへの出入りする流れが放射状の流線ではなく、半方位型開口部の上半分または下半分のいずれかに扇状に広がっている点にある。つまり、半方位型開口部の端口を出入りする流れは、上半分または下半分のいずれかに集合する。この半方位型開口部の端口配置及び流れは、B方向に沿って上向きまたは下向きのみとなっており、上向きと下向きが共存する全方位型開口部の端口配置及び流れとは異なり、半方位型開口部の配列パターンE001のB軸の2方向展開を終端させるには、半方位型開口部自体を2分割にする必要はなく、隣り合う2つの半方位型開口部の間に区切りを入れるようにすればよい。さらに、発電機能を維持する燃料流体と酸化流体の流れを形成させるために、基本セグメントSB1及び基本セグメントSB2のそれぞれは、上向き端口を有する燃料流体の半方位開口部11と下向き端口を有する酸化流体の半方位開口部13とで一対―の対面関係をもたせ、上向き端口を有する酸化流体の半方位開口部13と下向き端口を有する燃料流体の半方位開口部11とで一対―の対面関係を有する。
よって、図21(A)に示された様に、基本セグメントSB1は、1つの上向き端口を有する燃料流体開口部11、1つの冷却媒体の開口部12と、1つの下向き端口を有する酸化流体の開口部13とから構成される。基本セグメントSB2は、1つの上向き端口を有する酸化流体開口部13、1つの冷却媒体の開口部12と、1つの下向き端口を有する燃料流体の開口部11とから構成される。基本セグメントSB1及びSB2の長さ(B方向の長さ)は、同じでもよいが、異なっていてもよい。B方向の長さが同じケースというのは、図21の例では、燃料流体の開口部11、冷却媒体の開口部12、及び酸化流体の開口部13とも同じ列にまっすぐ配列させ、基本セグメントSB1及びSB2の長さが均等となる。一方、燃料流体の開口部11、冷却媒体の開口部12、及び酸化流体の開口部13がB方向にジグザグに配列されている場合、A方向に沿う基本セグメントSB1及びSB2の長さは、異なることになる。よって、図21(B)で示す2×3のエッジ構造では、B軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21のA方向)は2つの基本セグメントSB1と2つの基本セグメントSB2とから構成されている。
本発明の実施の形態2における半方位型開口部の配列パターンE001のA軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21(B)のB方向)というのは、図21(A)のエッジ処理後の半方位型開口部配置エリアE002のB方向に沿って設けられるエッジ構造のことである。図21(A)で示す通り、半方位型開口部の配列パターンE001のA軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21(B)のB方向)の区切り基準は、基本セグメントSA1、SA2、SA3の整数倍である。基本セグメントSA1及び/または基本セグメントSA2及び/または基本セグメントSA3の区切り(セグメント)を基準として、それを整数倍にし、半方位型開口部の配列パターンE001のA軸の2方向展開を終端させている。図3(B)によると、半方位型開口部の端口は、第I象限及び第II象限内または第III象限及び第IV象限内に配置されており、半方位型開口部のA軸の2方向展開を終端させるには、第I象限と第II象限の間と、第III象限と第IV象限の間とにあるゾーンの中間を切り通し、半方位型開口部を2分割にする。図21によれば、発電機能を維持する燃料流体と酸化流体の流れを形成させるために、基本セグメントSA1、SA2及びSA3は、それぞれの供給用半方位型開口部の端口と排出用半方位型開口部の端口とで一対―の対面関係を有する。よって、図21(A)に示された様に、基本セグメントSA1は、1つの2分割した燃料流体の供給用開口部11Aと、1つの2分割した燃料流体の排出用開口部11Bから構成される。基本セグメントSA2は、1つの2分割した冷却媒体の供給用開口部12Aと、1つの2分割した冷却媒体の排出用開口部12Bから構成される。基本セグメントSA3は、1つの2分割した酸化流体の供給用開口部13Aと、1つの2分割した酸化流体の排出用開口部13Bから構成される。図21(A)に示された例では、燃料流体の開口部11と、冷却媒体の開口部12と、酸化流体の開口部13は、同じB列に配列しているので、基本セグメントSA1、SA2、SA3の長さはB列間の距離となり同じである。基本セグメントSA1、SA2、SA3の長さ(A方向の長さ)は同じでもよいが、異なっていてもよい。燃料流体の開口部11と酸化流体の開口部13がA方向にジグザグに配列されている場合、基本セグメントSA1、SA2、SA3の長さは異なることになる。
よって、図21(B)で示す2×3のエッジ構造では、A軸の2方向展開を終端させるエッジ構造(図21のB方向)は3つの基本セグメントSA1、SA2及びSA3から構成されている。
以上の様にして、図21(A)、図21(B)に示す、2×3で区切った基本セグメントによるエッジ構造が形成される。
従って、本発明の実施の形態2における半方位型開口部11、12、13が配列された単セル8の面内においては、各種流体の半方位型開口部からなる供給用内部共用マニホールド41A、42A、43Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、各種流体の半方位型開口部からなる排出用内部共用マニホールド41B、42B、43Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とを均衡させている。
以下の表2は、図21(B)のエッジ処理済開口部配置構造E003に含まれる半方位型開口部の数を示している。
上記の表2に示すように、図21(B)のエッジ処理済開口部配置構造E003に含まれる同種類の供給用開口部の数(面積)の合計と排出用開口部の数(面積)の合計とが、同じになっていることが分かる。
図21(B)を見れば分かる通り、太線で囲ったエッジ処理済開口部配置構造E003が示す例では、すなわち、2×3の基本セグメントで区切ったエッジ構造には、その2隅にある半方位型開口部(この例では、燃料流体供給用開口部11A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、酸化流体排出用開口部13Bである)は、中間部にある全形の半方位型開口部(この例では、燃料流体供給用開口部11A、酸化流体供給用開口部13A、燃料流体排出用開口部11B、酸化流体排出用開口部13Bである)の面積を1とすれば、その2分の1である。供給排出の均衡(総合的に1対1の関係が確立しているか)がとれていることが、各半方位型開口部の数(面積)を数え合わせることで確認できる。
その結果、図21(A)の2次元展開の半方位型開口部の配列パターンE001から、エッジ処理後の半方位型開口部配置エリアE002を切り出すことで、供給排出のバランス関係が成立したエッジ処理済開口部配置構造E003を有する、半方位型開口部11、12、13を配列させた単セル8が出来上がる。
図21では、ブラベ格子の規則性を応用した半方位型開口部配列の2次元展開パターンE001の上を「エッジ処理後の半方位型開口部の配置エリアE002」として太線で囲み、その部分を切り出している。本発明における実施の形態2では、「エッジ処理後の半方位型開口部の配置エリアE002」に基づいて単セル8の面内に半方位型開口部11、12、13を配列させている。
以上、単セル8の面内のエッジ構造について、半方位型開口部の観点で説明した。次に、半方位型開口部に連通する内部共用マニホールドに係わるエッジ構造について述べる。
内部共用マニホールドは、本発明の単セル8をスタックしたスタック構造体9の内側に形成される。よって、1枚の単セル8の面内で、各種流体の半方位型開口部11、12、13の供給排出の均衡がとれていれば、たとえ内部共用マニホールドの形状及びサイズに対して変形が加えられたとしても、総合的には、内部共用マニホールドの供給排出の均衡も取れているということになる。
つまり、内部共用マニホールドの断面形状及び断面積と、半方位型開口部の面内形状及び面積とは、基本的に同じである。単セル8の面内に設けられる半方位型開口部の面内形状及び面積と同様に、内部共用マニホールドの断面形状及び断面積は、その角部と縁部(エッジ部分)と中間部(エッジ以外の部分)とでそれぞれ異なっている。つまり、エッジ構造を有する内部共用マニホールドについては、中間部に位置する全形の内部共用マニホールド断面積を1とすれば、図21のB方向に沿うエッジ部分(縁部と角部)に位置する内部共用マニホールドの断面積は、中間部にある全形状の内部共用マニホールドの断面積の略2分の1になるよう形成されている。一方、図21のA方向に沿うエッジ部分の縁部に位置する内部共用マニホールドの断面積は、中間部にある全形状の内部共用マニホールドの断面積と同じように形成されている。上述したような構造は、内部共用マニホールドと外部共用マニホールドの双方に適用される。
そのため、本発明の実施の形態2における単セル8の面内においては、燃料流体の供給用内部共用マニホールド41Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、燃料流体の排出用内部共用マニホールド41Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とは均衡している。また、冷却媒体の供給用内部共用マニホールド42Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、冷却媒体の排出用内部共用マニホールド42Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とは均衡している。更に、酸化流体の供給用内部共用マニホールド43Aの配置及び断面積(供給流れ分布及び流量)と、酸化流体の排出用内部共用マニホールド43Bの配置及び断面積(排出流れ分布及び流量)とは均衡している。
本発明の実施の形態2における半方位型開口部のケースでは、2次元ブラベ格子の展開を終端させることは、上述したようなエッジ構造を設けることにより実現できる。
上述したように、本発明の実施の形態2に係わるエッジ構造はあくまで一例であり、本明細書に記載された内容に限定されるわけではないことは言うまでもない。
(その他変形例)
次に、図3を用いて、本発明のその他変形例を適用させたスタック型燃料電池について説明する。
その他変形例においては、図3(D)に示す準方位型開口部を用いた配列レイアウトで実施されている点が主に異なり、他の構造やメカニズムについては、図1〜図13で示した実施の形態1と、図1〜図3、図14〜図21で示した実施の形態2と基本的に同じである。
本発明の特徴の一つである開口部の形状について、図3(B)、(C)、(E)に示した半方位型開口部と同様、図3(D)に示した準方位型開口部は、非対称の形状であることからも、それぞれ反転タイプが存在する。なお、図3(A)に示した全方位型開口部は、対称の形状であるため、反転タイプは存在しないが、対称の形状ではない場合は、反転タイプが存在する。
本発明におけるその他変形例によれば、2次元展開のブラベ格子の規則性を応用した本発明の単セル8の面内に準方位型開口部11、12、13を配列させることができる。図3(D)に示された準方位型開口部の端口の配置は、第I象限、第III象限及び第IV象限に配置する端口を経由して流出する各種流体が、発散角度1度以上90度以下及び1度以上180度以下である準方位で流出するよう設計されている。また、前記の象限に配置する端口を経由して流入する各種流体が、収束角度1度以上90度以下及び1度以上180度以下である準方位で流入するよう設計されている。
また、既述の実施の形態1では、全方位型開口部を用いた配列レイアウトで実施することを詳細に説明し、既述の実施の形態2では、半方位型開口部を用いた配列レイアウトで実施することを詳細に説明し、その他変形例では、準方位型開口部を用いた配列レイアウトで実施することを簡潔に述べたが、本発明はこれら開口部形状の単一構造による配列レイアウトに限定されるものではく、全方位型開口部、半方位型開口部または準方位型開口部を適切に組み合わせて実施するのでもよい。
なお、本発明の実施の形態1における全方位型開口部に備わっている端口形状の一例は、図3(A)に示した通りである。本発明の実施の形態2における半方位型開口部に備わっている端口形状の一例は、図3(B)、(C)、(E)に示した通りである。本発明のその他変形例における準方位型開口部に備わっている端口形状の一例は、図3(D)に示した通りである。因みに、本発明の端口形状としては、全方位型、半方位型または準方位型のいずれかの単一構造に限定する必要はなく、様々な組み合わせで単セル8に展開させても構わない。
また、図5の全方位型開口部に備わっている端口の平面形状は、図3(A)に示した六角形以外にも、多角形、変形多角形、非円形、円形及びそれらの細長形状のいずれでも組み合わせでも良い。同様に、図15の半方位型開口部に備わっている端口の平面形状についても、図3(B)、(C)、(E)に示した台形、平行四辺形、五角形以外にも、多角形、変形多角形、非円形、円形及びそれらの細長形状のいずれでも組み合わせでも良い。同様に、準方位型開口部に備わっている端口の平面形状についても、図3(D)に示した変形五角形以外にも、多角形、変形多角形、非円形、円形及びそれらの細長形状のいずれでも組み合わせでも良い。
その他変形例においては、準方位型開口部を含む様々な形状の開口部の特徴を鑑みつつ、それらを多様に組み合わせて単セル8に配列させ、それらの特性及び組み合わせることによってもたらされる新たな特性に応じて流路設計を実施することができる。また、様々な開口部の形状に応じてエッジ処理を行うことにより、各種流体の供給及び排出の均衡を保つことができる。
設計仕様に応じて、様々な形状の開口部を適切に選択すれば、流れ方位、発散角度、収束角度を自由自在に選べるため、反応の効率を高める流路設計を実現することができる。
(発明の効果)
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
本発明によれば、セパレータでは、流路部と金属部が一体となるように形成されているので、部品点数が減少するとともに、単セルをスタックして燃料電池を製造する際に、その組み付けが容易になるとともに、確実となる。
本発明によれば、耐久性を発揮するとともに、安価であり、しかも容易に製造することができる燃料電池の単セルを提供することができる。製造コスト削減などの見地から好ましいということは言うまでもない。
本発明の実施の一形態によれば、冷却媒体による燃料電池の冷却効率を向上させることが可能となる。また、流路全体にわたって、反応ガスが均一に分散されるという効果が得られる。
前記単セルの面内方向に2次元展開を実現できる様々な形状の開口部、内部共用マニホールド及び外部共用マニホールドにより、燃料電池の高パワー密度を達成できる。また、大量廉価材料の採用により、量産適用性によるコスト削減、組み立て点数を削減させることにより安価で製造することができる効果が得られることを期待できる。このように構成された燃料電池によれば、各機能層の表面に、2次元的に分散させて配置された様々な形状の開口部を備えているので、ほぼ全面に、濃度が等しい反応ガスを供給することができるという効果が得られる。
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本発明の一実施形態では、全方位型開口部の二次元拡張を終了させるエッジ構造については、各流体が前記全方位型開口部の端口から放射状に流入、流出する特性を利用して、各種流体の排出用または供給用開口部の1つを中心に置く場合に、それらの排出用または供給用開口部の1つを四分割して角部に配置するか、あるいはそれらの排出用または供給用開口部の1つを二分割して縁に配置していて、半方位型開口部の二次元拡張を終了させるエッジ構造については、各流体が前記半方位型開口部の端口から扇形で流入、流出する特性を利用して、各種流体の排出用または供給用開口部の1つを中心に置く場合に、それらの排出用または供給用開口部の1つを二分割して角部に配置するか、それらの排出用または供給用開口部の1つを二分割して縁に配置するか、あるいは排出用または供給用開口部の1つを他の縁部に直接配置する。
本発明の一実施形態では、前記第1のガス拡散層の角部または縁部における燃料流体排出用開口部は、前記燃料流体が単セルの拡がる方向に流れる燃料流体端口を有し、前記第2のガス拡散層の角部又は縁部における燃料流体排出用開口部は、前記単セルの拡がる方向に酸化流体が流れるのを阻止するシール材を有していて、前記第2のガス拡散層の角部または縁部における酸化流体排出用開口部は、前記酸化流体が単セルの拡がる方向に流れる酸化流体端口を有し、前記第1のガス拡散層の角部又は縁部における酸化流体排出用開口部は、前記単セルの拡がる方向に燃料流体が流れるのを阻止するシール材を有していて、前記第1のガス拡散層、前記触媒付電解質膜及び前記第2のガス拡散層の角部又は縁部における冷却媒体排出用開口部は、前記単セルの拡がる方向に冷却媒体が流れるのを阻止するシール材を有する。