以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
<第一実施形態>
最初に図1〜図6Bを参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
<内燃機関全体の説明>
図1は、本発明の第一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が設けられた内燃機関を概略的に示す図である。図1に示される内燃機関は火花点火式内燃機関である。内燃機関は車両に搭載される。
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。吸気弁6は吸気ポート7を開閉し、排気弁8は排気ポート9を開閉する。
図1に示したように、シリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4の内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。点火プラグ10は、点火信号に応じて火花を発生させるように構成される。また、燃料噴射弁11は、噴射信号に応じて、所定量の燃料を燃焼室5内に噴射する。本実施形態では、燃料として理論空燃比が14.6であるガソリンが用いられる。
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ポート7、吸気枝管13、サージタンク14、吸気管15等は、空気を燃焼室5に導く吸気通路を形成する。また、吸気管15内には、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。スロットル弁18は、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。
一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。排気マニホルド19は、各排気ポート9に連結される複数の枝部と、これら枝部が集合した集合部とを有する。排気マニホルド19の集合部は、触媒20を内蔵したケーシング21に連結される。ケーシング21は排気管22に連結される。排気ポート9、排気マニホルド19、ケーシング21、排気管22等は、燃焼室5における混合気の燃焼によって生じた排気ガスを排出する排気通路を形成する。
内燃機関の各種制御は電子制御ユニット(ECU)31によって実行される。ECU31には、内燃機関又は内燃機関を搭載した車両に設けられた各種センサの出力が入力され、ECU31は各種センサの出力等に基づいて内燃機関の各種アクチュエータを制御する。
ECU31は、デジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36及び出力ポート37を備える。なお、本実施形態では、一つのECU31が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
吸気管15には、吸気管15内を流れる空気の流量を検出するエアフロメータ40が配置され、エアフロメータ40の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
また、排気マニホルド19の集合部、すなわち触媒20の排気流れ方向上流側の排気通路には、排気マニホルド19内を流れる排気ガス(すなわち、内燃機関の燃焼室5から排出されて触媒20に流入する排気ガス)の空燃比を検出する上流側空燃比センサ41が配置される。上流側空燃比センサ41の出力(出力電流)は排気ガスの空燃比に比例して大きくなり、上流側空燃比センサ41は排気ガスの空燃比を連続的に(リニアに)検出することができる。上流側空燃比センサ41の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
また、排気管22内、すなわち触媒20の排気流れ方向下流側の排気通路には、排気管22内を流れる排気ガス(すなわち、触媒20から流出する排気ガス)の空燃比を検出する下流側空燃比センサ42が配置される。下流側空燃比センサ42の出力(出力電流)は排気ガスの空燃比に比例して大きくなり、下流側空燃比センサ42は排気ガスの空燃比を連続的に(リニアに)検出することができる。下流側空燃比センサ42の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
また、内燃機関を搭載した車両に設けられたアクセルペダル43には、アクセルペダル43の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ44が接続され、負荷センサ44の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。ECU31は負荷センサ44の出力に基づいて機関負荷を算出する。
また、入力ポート36には、クランクシャフトが所定角度(例えば10°)回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ45が接続され、この出力パルスが入力ポート36に入力される。ECU31はクランク角センサ45の出力に基づいて機関回転数を算出する。
一方、出力ポート37は、対応する駆動回路39を介して、内燃機関の各種アクチュエータに接続される。本実施形態では、出力ポート37は、点火プラグ10、燃料噴射弁11及びスロットル弁駆動アクチュエータ17に接続され、ECU31はこれらを制御する。具体的には、ECU31は、点火プラグ10の点火時期、燃料噴射弁の噴射時期及び噴射量、並びにスロットル弁18の開度を制御する。
なお、上述した内燃機関は、ガソリンを燃料とする無過給内燃機関であるが、内燃機関の構成は、上記構成に限定されるものではない。したがって、気筒配列、燃料の噴射態様、吸排気系の構成、動弁機構の構成、過給器の有無のような内燃機関の具体的な構成は、図1に示した構成と異なっていてもよい。例えば、燃料噴射弁11は、吸気ポート7内に燃料を噴射するように配置されてもよい。また、排気通路から吸気通路にEGRガスを還流させるための構成が設けられていてもよい。
<内燃機関の排気浄化装置>
以下、本発明の第一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置(以下、単に「排気浄化装置」という)について説明する。排気浄化装置は、空燃比制御装置、上流側空燃比センサ41、下流側空燃比センサ42及び触媒20を備える。本実施形態では、ECU31が空燃比制御装置として機能する。
空燃比制御装置は、触媒20に流入する排気ガス(以下、「流入排気ガス」という)の空燃比を制御する。具体的には、空燃比制御装置は、流入排気ガスの目標空燃比を設定すると共に、流入排気ガスの空燃比が目標空燃比に一致するように、燃焼室5に供給する燃料量を制御する。例えば、空燃比制御装置は、上流側空燃比センサ41の出力空燃比が目標空燃比に一致するように、燃焼室5に供給する燃料量をフィードバック制御する。ここで、「出力空燃比」は、空燃比センサの出力値に相当する空燃比、すなわち空燃比センサによって検出される空燃比を意味する。
なお、空燃比制御装置は、上流側空燃比センサ41を用いることなく、流入排気ガスの空燃比が目標空燃比に一致するように、燃焼室5に供給する燃料量を制御してもよい。この場合、空燃比制御装置は、燃焼室5に供給される燃料と空気との比率が目標空燃比に一致するように、エアフロメータ40によって検出された吸入空気量と目標空燃比とから算出された燃料量を燃焼室5に供給する。
触媒20は、排気通路に配置され、排気ガスを浄化する。触媒20は、酸素を吸蔵可能であり、例えば炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に浄化可能な三元触媒である。触媒20は、セラミック、金属等から成る基材(担体)と、触媒作用を有する貴金属(例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等)と、酸素吸蔵能力を有する助触媒(例えばセリア(CeO2)等)とを有する。貴金属及び助触媒は基材に担持される。
触媒20は助触媒によって排気ガスの空燃比に応じて酸素を吸蔵又は放出する。具体的には、触媒20は、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときには、排気ガス中の過剰な酸素を吸蔵する。一方、触媒20は、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには、HC及びCOを酸化させるのに不足している酸素を放出する。この結果、排気ガスの空燃比が理論空燃比から若干ずれた場合であっても、触媒20の表面上における空燃比が理論空燃比近傍に維持され、触媒20においてHC、CO及びNOxが効果的に浄化される。
しかしながら、触媒20の酸素吸蔵能力を超えた量の酸素が触媒20に流入すると、酸素によって触媒20の貴金属が覆われ、いわゆる酸素被毒が生じる。一方、触媒20に吸蔵された酸素が枯渇すると、HCのような還元剤によって触媒20の貴金属が覆われ、いわゆるHC被毒が生じる。酸素被毒又はHC被毒が生じると、触媒20の貴金属が不活性状態となり、触媒20の排気浄化性能が低下する。このため、従来、触媒20の排気浄化性能を高めるためには触媒20の表面の雰囲気をできるだけ理論空燃比に近付けることが望ましいと考えられていた。
しかしながら、本願の発明者らによる鋭意検討の結果、触媒20の貴金属に少量の酸素又は還元剤が吸着された状態において触媒20の排気浄化性能が更に高められることが分かってきた。図2は、触媒20の表面の空燃比と触媒20の反応性との関係を示す図である。図2に示されるように、触媒20の反応性は、触媒20の表面の空燃比が理論空燃比から僅かにリッチ側又はリーン側にずれた領域において最も高くなる。斯かる現象が生じる具体的な原理は必ずしも明確ではないが、以下のようなメカニズムによって生じるものであると考えられる。
HCは触媒20において酸化反応によって浄化される。このとき、少量の酸素が貴金属に吸着された状態では、酸素が貴金属上に存在しない状態に比べて、貴金属上でのHCと酸素との反応速度が高められる。一方、NOxは触媒20において還元反応によって浄化される。このとき、少量のHCが貴金属に吸着された状態では、HCが貴金属上に存在しない状態に比べて、貴金属上でのNOxとHCとの反応速度が高められる。したがって、触媒20の排気浄化性能を更に高めるためには、酸素被毒又はHC被毒により貴金属が不活性状態とならない範囲で、触媒20内に酸素濃度の濃淡を生じさせることが有効である。
図3は、排気ガスが触媒20に流入しているときの触媒20の状態を概略的に示す図である。図3には、排気流れ方向が矢印で示されている。触媒20は円柱形状を有し、触媒20の軸方向は排気流れ方向と等しい。
図3の例では、触媒20が酸素で飽和した後に、理論空燃比よりもリッチな排気ガスが触媒20に流入している。理論空燃比よりもリッチな排気ガスが触媒20に流入すると、排気ガス中のHC等を浄化するために、触媒20に吸蔵された酸素が放出される。このとき、触媒20に吸蔵された酸素は上流側から順に放出される。このため、図3の例では、酸素が吸蔵されたリーン領域が下流側に残され、酸素が枯渇したリッチ領域が上流側に形成される。また、リーン領域とリッチ領域との間には、局所的な酸素濃度が徐々に変化する移行領域が形成される。
図4は、図3の触媒20の軸方向に沿った酸素吸蔵状態を示す図である。図4には、触媒20の軸方向の位置がx軸として示され、その位置における触媒20の酸素吸蔵量がy軸として示される。リーン領域では、酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に達し、多量の酸素が貴金属に吸着する。一方、リッチ領域では、酸素吸蔵量がゼロに達し、多量の還元剤(例えばHC)が貴金属に吸着する。なお、最大酸素吸蔵量とは、触媒20の軸方向の特定の位置において触媒20に吸蔵可能な酸素の量を意味する。
リーン領域とリッチ領域との間の移行領域では、酸素吸蔵量がゼロと最大酸素吸蔵量との間で変化し、酸素濃度の濃淡が生じる。すなわち、移行領域内に、酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量の半分(50%)となる部位が生じ、この付近が、触媒20の局所的な排気浄化性能を高める高活性領域に相当すると考えられる。このため、本実施形態では、触媒20内に高活性領域を形成するために、以下の空燃比制御が実施される。
すなわち、空燃比制御装置は、触媒20において、酸素吸蔵量が所定値以上である第1領域と、酸素吸蔵量が所定値未満である第2領域とが触媒20の軸方向に沿って交互に形成されるように流入排気ガスの空燃比を制御する分布形成制御を実行する。このとき、空燃比制御装置は、分布形成制御によって形成される第1領域及び第2領域の総数が三以上になるように分布形成制御を実行する。このことによって、酸素濃度が変化する複数の領域を触媒20内に形成することができ、ひいては触媒20の排気浄化性能を高めることができる。なお、分布形成制御によって形成される第1領域及び第2領域の総数は四以上であってもよい。このことによって触媒20の排気浄化性能をより一層高めることができる。
例えば、第1領域及び第2領域を画定する所定値は最大酸素吸蔵量の半分である。この場合、図4に示されるように、図4の例では、リーン領域と移行領域の一部(酸素吸蔵量が50%以上の部分)とが第1領域に相当し、リッチ領域と移行領域の一部(酸素吸蔵量が50%未満の部分)とが第2領域に相当する。図4に示される状態において、流入排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り替えた場合、上流側から順に酸素が触媒20に吸蔵され、上流側の第2領域が第1領域に変化する。このとき、下流側の第1領域と上流側の第1領域との間に第2領域を残すためには、第2領域の下流側端部まで酸素が供給されないようにする必要がある。すなわち、上流側の第1領域を形成するときの触媒20の酸素変動量(酸素吸蔵量)を、図4に示される第2領域が形成されたときの触媒20の酸素変動量(酸素放出量)よりも少なくする必要がある。
このため、空燃比制御装置は、分布形成制御において、流入排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチにするリッチ空燃比制御と、流入排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーンにするリーン空燃比制御とを、各空燃比制御中の触媒20の酸素変動量が徐々に少なくなるように交互に実行する。例えば、空燃比制御装置は、分布形成制御において、各空燃比制御の実行時間が徐々に短くなるようにリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に実行する。
また、空燃比制御装置は、第1領域と第2領域との間の境界のうちの少なくとも一つが触媒20の下流側に形成され且つ境界のうちの少なくとも一つが触媒20の上流側に形成されるように分布形成制御を実行する。このことによって、触媒20の下流側及び上流側に高活性領域を形成することができ、ひいては触媒20全体の排気浄化性能を効率的に高めることができる。なお、触媒20の下流側とは触媒20の軸方向において中央よりも下流側の部分を意味し、触媒20の上流側とは触媒20の軸方向において中央よりも上流側の部分を意味する。
<タイムチャートを用いた分布形成制御の説明>
図5A及び図5Bを参照して、上述した分布形成制御の具体例について説明する。図5Aは、分布形成制御が実行されるときの流入排気ガスの目標空燃比、還元剤供給量の積算値及び酸素供給量の積算値のタイムチャートである。図5Bは、図5Aの各時刻(時刻t1〜t5)における触媒20の軸方向に沿った酸素吸蔵状態を示す図である。
図5Aの例では、時刻t0において、通常制御が実行され、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりも僅かにリーンな値に設定されている。時刻t0の後、時刻t1において、触媒20の軸方向の全ての位置において酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に達し、触媒20が酸素で飽和する。すなわち、時刻t1では、触媒20に第1領域のみが形成されており、触媒20において酸素濃度の濃淡は生じていない。
時刻t1において、分布形成制御が開始される。まず、第1領域の上流側に第2領域を形成すべく、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ設定空燃比TAFrichに設定され、リッチ空燃比制御が開始される。リッチ空燃比制御では、触媒20に還元剤が供給され、還元剤供給量の積算値が徐々に増加する。この結果、触媒20に吸蔵された酸素が上流側から順に放出され、触媒20の上流側の酸素吸蔵量がゼロになる。
リッチ空燃比制御は時刻t1から時刻t2までの所定時間だけ実行される。リッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)は、時刻t1において触媒20に吸蔵されていた酸素吸蔵量、すなわち触媒20全体に吸蔵可能な酸素の量よりも少ない。このため、図5Bに示されるように、リッチ空燃比制御の終了時の時刻t2において、第1領域の上流側に第2領域が形成される。
次いで、時刻t2において、第2領域の上流側に第1領域を形成すべく、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリーンなリーン設定空燃比TAFleanに設定され、リーン空燃比制御が開始される。リーン空燃比制御では、触媒20に酸素が供給され、酸素供給量の積算値が徐々に増加する。この結果、上流側から順に触媒20に酸素が吸蔵され、触媒20の上流側の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量になる。
リーン空燃比制御は時刻t2から時刻t3までの所定時間だけ実行される。時刻t2から時刻t3までの時間は時刻t1から時刻t2までの時間よりも短い。この結果、時刻t2から時刻t3までのリーン空燃比制御中の酸素変動量(酸素吸蔵量)は時刻t1から時刻t2までのリッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)よりも少なくなる。このため、図5Bに示されるように、時刻t3において、第2領域の上流側に第1領域が形成される。
次いで、上流側の第1領域の上流側に第2領域を形成すべく、リッチ空燃比制御が時刻t3から時刻t4までの所定時間だけ実行される。時刻t3から時刻t4までの時間は時刻t2から時刻t3までの時間よりも短い。この結果、時刻t3から時刻t4までのリッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)は時刻t2から時刻t3までのリーン空燃比制御中の酸素変動量(酸素吸蔵量)よりも少なくなる。このため、図5Bに示されるように、時刻t4において、上流側の第1領域の上流側に第2領域が形成される。
次いで、上流側の第2領域の上流側に第1領域を形成すべく、リーン空燃比制御が時刻t4から時刻t5までの所定時間だけ実行される。時刻t4から時刻t5までの時間は時刻t3から時刻t4までの時間よりも短い。この結果、時刻t4から時刻t5までのリーン空燃比制御中の酸素変動量(酸素吸蔵量)は時刻t3から時刻t4までのリッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)よりも少なくなる。このため、図5Bに示されるように、時刻t5において、上流側の第2領域の上流側に第1領域が形成される。時刻t5において分布形成制御が終了し、通常制御が再び開始される。
図5の例では、分布形成制御によって形成される第1領域及び第2領域の総数は五、すなわち分布形成制御によって形成される高活性領域の数は四である。また、第1領域と第2領域との間の二つの境界が触媒20の下流側に形成され、第1領域と第2領域との間の二つの境界が触媒20の上流側に形成される。
なお、図5の例では、触媒20が酸素で飽和しているときに分布形成制御が開始されているが、触媒20の酸素が枯渇しているとき、すなわち触媒20に第2領域のみが形成されているときに分布形成制御が開始されてもよい。この場合、分布形成制御において、最初に、第2領域の上流側に第1領域を形成すべく、リーン空燃比制御が実行される。
<分布形成制御>
以下、図6A及び図6Bのフローチャートを用いて、上述した分布形成制御について説明する。図6A及び図6Bは、第一実施形態における分布形成制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU31によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
最初に、ステップS101において、空燃比制御装置は、分布形成フラグFdが1であるか否かを判定する。分布形成フラグFdは、分布形成制御が開始されるときに1に設定され、分布形成制御が終了するときにゼロに設定されるフラグである。なお、分布形成フラグFdの初期値はゼロである。
ステップS101において分布形成フラグFdがゼロであると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。ステップS102では、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上であるか否かを判定する。リーン判定空燃比AFleanは、触媒20が酸素で飽和したときに下流側空燃比センサ42によって検出される空燃比である。リーン判定空燃比AFleanは、予め定められ、理論空燃比よりも僅かにリーンな空燃比(例えば14.65)に設定される。
ステップS102において下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFleanよりもリッチであると判定された場合、すなわち触媒20が酸素で飽和していないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。ステップS103では、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下であるか否かを判定する。リッチ判定空燃比AFleanは、触媒20の酸素が枯渇したときに下流側空燃比センサ42によって検出される空燃比である。リッチ判定空燃比AFleanは、予め定められ、理論空燃比よりも僅かにリッチな空燃比(例えば14.55)に設定される。ステップS103において下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichよりもリーンであると判定された場合、すなわち触媒20の酸素が枯渇していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS102において下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上であると判定された場合、すなわち触媒20が酸素で飽和していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS106に進む。ステップS106では、空燃比制御装置は、分布形成制御を開始し、流入排気ガスの目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrichに設定する。すなわち、空燃比制御装置はリッチ空燃比制御を実行する。リッチ設定空燃比TAFrichは、予め定められ、理論空燃比よりもリッチな空燃比(例えば12.6〜14.4)に設定される。
次いで、ステップS105において、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countを1に設定する。実行回数Countは、分布形成制御中に実行された空燃比制御(リッチ空燃比制御及びリーン空燃比制御)の実行回数を示す。ステップS105の後、本制御ルーチンは終了する。
また、ステップS103において下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下であると判定された場合、すなわち触媒20の酸素が枯渇していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に進む。ステップS104では、空燃比制御装置は、分布形成制御を開始し、流入排気ガスの目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFleanに設定する。すなわち、空燃比制御装置はリーン空燃比制御を実行する。リーン設定空燃比TAFleanは、予め定められ、理論空燃比よりもリーンな空燃比(例えば14.8〜16.6)に設定される。
次いで、ステップS105において、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countを1に設定し、ステップS105の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS101において分布形成フラグFdが1であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS107に進む。ステップS107では、空燃比制御装置は微小時間Δtを加算することによって積算時間ETを更新する。積算時間ETは現在の空燃比制御(リッチ空燃比制御又はリーン空燃比制御)の実行時間を示す。また、微小時間Δtは本制御ルーチンの実行間隔に相当する。
次いで、ステップS108において、空燃比制御装置は、積算時間ETが所定時間Tref(Count)以上であるか否かを判定する。所定時間Tref(Count)は実行回数Count毎に予め定められる。所定時間Tref(Count)は、実行回数Countの値が大きいほど短くされる。例えば、実行回数Countが2のときの所定時間Tref(2)は、実行回数Countが1のときの所定時間Tref(1)よりも短い。
ステップS108において積算時間ETが所定時間Tref(Count)未満であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。この場合、現在の空燃比制御が継続される。
一方、ステップS108において積算時間ETが所定時間Tref(Count)以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS109に進む。ステップS109では、空燃比制御装置は、実行回数Countが所定回数N以上であるか否かを判定する。所定回数Nは予め定められ、分布形成制御によって形成される第1領域及び第2領域の総数は、所定回数Nに1を加算した値となる。所定回数Nは、二以上、好ましくは三以上、より好ましくは四以上に設定される。
ステップS109において実行回数Countが所定回数N未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS110に進む。ステップS110では、空燃比制御装置は、現在の目標空燃比TAFがリッチ設定空燃比TAFrichであるか否かを判定する。すなわち、空燃比制御装置は、現在の空燃比制御がリッチ空燃比制御であるか否かを判定する。
ステップS110において現在の目標空燃比TAFがリッチ設定空燃比TAFrichであると判定された場合、すなわち現在の空燃比制御がリッチ空燃比制御であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS111に進む。ステップS111では、空燃比制御装置は目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFleanに設定する。すなわち、空燃比制御装置は、目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrichからリーン設定空燃比TAFleanに切り替え、リーン空燃比制御を実行する。
次いで、ステップS112において、空燃比制御装置は1を加算することによって実行回数Countを更新する。ステップS112の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS110において現在の目標空燃比TAFがリーン設定空燃比TAFleanであると判定された場合、すなわち現在の空燃比制御がリーン空燃比制御であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS113に進む。ステップS113では、空燃比制御装置は目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrichに設定する。すなわち、空燃比制御装置は、目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFleanからリッチ設定空燃比TAFrichに切り替え、リッチ空燃比制御を実行する。
次いで、ステップS112において、空燃比制御装置は1を加算することによって実行回数Countを更新する。ステップS112の後、本制御ルーチンは終了する。
その後、ステップS109において実行回数Countが所定回数N以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS114に進む。ステップS114では、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countをゼロにリセットする。
次いで、ステップS115において、空燃比制御装置は通常制御を開始する。通常制御では、例えば、流入排気ガスの目標空燃比TAFが理論空燃比よりも僅かにリーンな値に設定される。なお、通常制御において、流入排気ガスの目標空燃比TAFは、理論空燃比よりも僅かにリッチな値、理論空燃比、内燃機関の運転状態に応じた値等に設定されてもよい。ステップS115の後、本制御ルーチンは終了する。
<第二実施形態>
第二実施形態における排気浄化装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態における排気浄化装置と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
上述したように、空燃比制御装置は、分布形成制御において、各空燃比制御中の触媒20の酸素変動量が徐々に少なくなるようにリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に実行する。これに関して、第二実施形態では、空燃比制御中の目標空燃比を徐々に理論空燃比に近付けることによって空燃比制御中の触媒20の酸素変動量を徐々に少なくする。すなわち、空燃比制御装置は、各空燃比制御における流入排気ガスの目標空燃比と理論空燃比との差が徐々に小さくなるようにリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に実行する。
<タイムチャートを用いた分布形成制御の説明>
図7を参照して、第二実施形態における分布形成制御の具体例について説明する。図7は、分布形成制御が実行されるときの流入排気ガスの目標空燃比、還元剤供給量の積算値及び酸素供給量の積算値のタイムチャートである。図5Aと同様に、図7の各時刻(時刻t1〜t5)における触媒20の軸方向に沿った酸素吸蔵状態が図5Bに示される。
図5Aの例と同様に、触媒20に第1領域のみが形成されている時刻t1において、分布形成制御が開始される。まず、第1領域の上流側に第2領域を形成すべく、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリッチな第1リッチ設定空燃比TAFrich1に設定され、リッチ空燃比制御が開始される。
リッチ空燃比制御は時刻t1から時刻t2までの所定時間だけ実行される。リッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)は、時刻t1において触媒20に吸蔵されていた酸素吸蔵量、すなわち触媒20全体に吸蔵可能な酸素の量よりも少ない。このため、図5Bに示されるように、リッチ空燃比制御の終了時の時刻t2において、第1領域の上流側に第2領域が形成される。
次いで、時刻t2において、第2領域の上流側に第1領域を形成すべく、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリーンな第1リーン設定空燃比TAFlean1に設定され、リーン空燃比制御が開始される。リーン空燃比制御は時刻t2から時刻t3までの所定時間だけ実行される。時刻t2から時刻t3までの時間は時刻t1から時刻t2までの時間と等しい。また、第1リーン設定空燃比TAFlean1と理論空燃比との差は第1リッチ設定空燃比TAFrich1と理論空燃比との差よりも小さい。この結果、時刻t2から時刻t3までのリーン空燃比制御中の酸素変動量(酸素吸蔵量)は時刻t1から時刻t2までのリッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)よりも少なくなる。このため、図5Bに示されるように、時刻t3において、第2領域の上流側に第1領域が形成される。
次いで、上流側の第1領域の上流側に第2領域を形成すべく、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリッチな第2リッチ設定空燃比TAFrich2に設定され、リッチ空燃比制御が実行される。リッチ空燃比制御は時刻t3から時刻t4までの所定時間だけ実行される。時刻t3から時刻t4までの時間は時刻t2から時刻t3までの時間と等しい。また、第2リッチ設定空燃比TAFrich2と理論空燃比との差は第1リーン設定空燃比TAFlean1と理論空燃比との差よりも小さい。この結果、時刻t3から時刻t4までのリッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)は時刻t2から時刻t3までのリーン空燃比制御中の酸素変動量(酸素吸蔵量)よりも少なくなる。このため、図5Bに示されるように、時刻t4において、上流側の第1領域の上流側に第2領域が形成される。
次いで、上流側の第2領域の上流側に第1領域を形成すべく、流入排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリーンな第2リーン設定空燃比TAFlean2に設定され、リーン空燃比制御が実行される。リーン空燃比制御は時刻t4から時刻t5までの所定時間だけ実行される。時刻t4から時刻t5までの時間は時刻t3から時刻t4までの時間と等しい。また、第2リーン設定空燃比TAFlean2と理論空燃比との差は第2リッチ設定空燃比TAFrich2と理論空燃比との差よりも小さい。この結果、時刻t4から時刻t5までのリーン空燃比制御中の酸素変動量(酸素吸蔵量)は時刻t3から時刻t4までのリッチ空燃比制御中の酸素変動量(酸素放出量)よりも少なくなる。このため、図5Bに示されるように、時刻t5において、上流側の第2領域の上流側に第1領域が形成される。時刻t5において分布形成制御が終了し、通常制御が再び開始される。
<分布形成制御>
図8A及び図8Bは、第二実施形態における分布形成制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU31によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
ステップS201〜S206は、図6AのステップS101〜S106と同様に実行される。このとき、空燃比制御装置は、ステップS206において目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrich(1)に設定し、ステップS204において目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFlean(1)に設定する。リッチ設定空燃比TAFrich(1)は、実行回数Countが1のときのリッチ設定空燃比であり、予め定められる。リーン設定空燃比TAFlean(1)は、実行回数Countが1のときのリーン設定空燃比であり、予め定められる。
ステップS201において分布形成フラグFdが1であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS207に進む。ステップS207では、図6BのステップS107と同様に、空燃比制御装置は微小時間Δtを加算することによって積算時間ETを更新する。
次いで、ステップS208において、空燃比制御装置は積算時間ETが所定時間Tref以上であるか否かを判定する。所定時間Trefは予め定められる。ステップS208において積算時間ETが所定時間Tref未満であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。この場合、現在の空燃比制御が継続される。
一方、ステップS208において積算時間ETが所定時間Tref以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS209に進む。ステップS209では、図6BのステップS109と同様に、空燃比制御装置は、実行回数Countが所定回数N以上であるか否かを判定する。
ステップS209において実行回数Countが所定回数N未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS210に進む。ステップS210では、空燃比制御装置は1を加算することによって実行回数Countを更新する。
次いで、ステップS211において、空燃比制御装置は、現在の目標空燃比TAFがリッチ設定空燃比TAFrichであるか否かを判定する。ステップS211において現在の目標空燃比TAFがリッチ設定空燃比TAFrichであると判定された場合、すなわち現在の空燃比制御がリッチ空燃比制御であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS212に進む。
ステップS212では、空燃比制御装置は目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFlean(Count)に設定する。すなわち、空燃比制御装置は、目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrich(Count−1)からリーン設定空燃比TAFlean(Count)に切り替え、リーン空燃比制御を実行する。リーン設定空燃比TAFlean(Count)は実行回数Count毎に予め定められる。リーン設定空燃比TAFlean(Count)のリーン度合は、実行回数Countの値が大きいほど小さくされる。なお、リーン度合とは、理論空燃比よりもリーンな空燃比と理論空燃比との差を意味する。ステップS212の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS211において現在の目標空燃比TAFがリーン設定空燃比TAFleanであると判定された場合、すなわち現在の空燃比制御がリーン空燃比制御であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS213に進む。ステップS213では、空燃比制御装置は目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrich(Count)に設定する。すなわち、空燃比制御装置は、目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFlean(Count−1)からリッチ設定空燃比TAFrich(Count)に切り替え、リッチ空燃比制御を実行する。リッチ設定空燃比TAFrich(Count)は実行回数Count毎に予め定められる。リッチ設定空燃比TAFrich(Count)のリッチ度合は、実行回数Countの値が大きいほど小さくされる。なお、リッチ度合とは、理論空燃比よりもリッチな空燃比と理論空燃比との差を意味する。ステップS213の後、本制御ルーチンは終了する。
また、ステップS209において実行回数Countが所定回数N以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS214に進む。ステップS214では、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countをゼロにリセットする。
次いで、ステップS215において、図6BのステップS115と同様に、空燃比制御装置は通常制御を開始する。ステップS215の後、本制御ルーチンは終了する。
<第三実施形態>
第三実施形態における排気浄化装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態における排気浄化装置と同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
上述したように、空燃比制御装置は、分布形成制御において、リッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に繰り返し実行する。リッチ空燃比制御では、流入排気ガスの目標空燃比がリッチ設定空燃比に設定され、リーン空燃比制御では、流入排気ガスの目標空燃比がリーン設定空燃比に設定される。
このとき、リッチ設定空燃比のリッチ度合及びリーン設定空燃比のリーン度合を大きくすることによって、触媒20内に複数の高活性領域を迅速に形成して触媒20の排気浄化性能を迅速に高めることができる。しかしながら、リッチ設定空燃比のリッチ度合及びリーン設定空燃比のリーン度合を大きくした場合、分布形成制御中の排気エミッションが悪化するおそれがある。また、触媒20の劣化が進行するほど、触媒20の排気浄化性能が低下し、分布形成制御中の排気エミッションの悪化が顕著になる。
そこで、第三実施形態では、空燃比制御装置は、触媒20の劣化度合を算出し、触媒20の劣化度合に基づいてリッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比を設定する。このことによって、分布形成制御中の排気エミッションの悪化を抑制しつつ、分布形成制御によって触媒20の排気浄化性能を迅速に高めることができる。
また、上述したように、空燃比制御装置は、各空燃比制御中の触媒20の酸素変動量が徐々に少なくなるようにリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に実行する。リッチ空燃比制御中の触媒20の酸素変動量(酸素放出量)は、リッチ空燃比制御中の触媒20への還元剤供給量が多いほど多くなる。一方、リーン空燃比制御中の触媒20の酸素変動量(酸素吸蔵量)は、リーン空燃比制御中の触媒20への酸素供給量が多いほど多くなる。また、触媒20への還元剤供給量及び酸素供給量は内燃機関の運転状態に応じて変動する。
このため、第三実施形態では、空燃比制御装置は、リッチ空燃比制御中の触媒20への還元剤供給量を算出し、触媒20への還元剤供給量が所定量に達したときにリッチ空燃比制御を終了させる。このことによって、第1領域の上流側に第2領域を形成するときに第1領域の下流側端部まで還元剤が供給されることを抑制することができ、第1領域と第2領域との間の高活性領域をより確実に形成することができる。また、空燃比制御装置は、リーン空燃比制御中の触媒20への酸素供給量を算出し、触媒20への酸素供給量が所定量に達したときにリーン空燃比制御を終了させる。このことによって、第2領域の上流側に第1領域を形成するときに第2領域の下流側端部まで酸素が供給されることを抑制することができ、第2領域と第1領域との間の高活性領域をより確実に形成することができる。
<空燃比設定処理>
図9は、第三実施形態における空燃比設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、例えば、内燃機関を搭載した車両のイグニッションスイッチがオンにされる度に一度実行される。
最初に、ステップS301において、空燃比制御装置は触媒20の劣化度合を算出する。例えば、空燃比制御装置は、公知の手法によって触媒20全体に吸蔵可能な酸素の量を算出し、この量に基づいて触媒20の劣化度合を算出する。この場合、触媒20全体に吸蔵可能な酸素の量が少ないほど、触媒20の劣化度合が大きくされる。なお、触媒20の経年劣化を考慮して、空燃比制御装置は積算吸入空気量等に基づいて触媒20の劣化度合を算出してもよい。
次いで、ステップS302において、空燃比制御装置は、例えばマップを用いて、触媒20の劣化度合に基づいてリッチ設定空燃比TAFrich及びリーン設定空燃比TAFleanを設定する。マップでは、触媒20の劣化度合が大きいほど、すなわち触媒20が劣化しているほど、リッチ設定空燃比TAFrichのリッチ度合及びリーン設定空燃比TAFleanのリーン度合が小さくされる。ステップS302の後、本制御ルーチンは終了する。
<分布形成制御>
図10A〜図10Cは、第三実施形態における分布形成制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU31によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
ステップS401〜S406は、図6AのステップS101〜S106と同様に実行される。このとき、ステップS404におけるリーン設定空燃比TAFlean及びステップS406におけるリッチ設定空燃比TAFrichとして、図9の制御ルーチンによって設定された値が用いられる。
ステップS401において分布形成フラグFdが1であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS407に進む。ステップS407では、空燃比制御装置は、現在の目標空燃比TAFがリッチ設定空燃比TAFrichであるか否かを判定する。すなわち、空燃比制御装置は、現在の空燃比制御がリッチ空燃比制御であるか否かを判定する。
ステップS407において現在の目標空燃比TAFがリッチ設定空燃比TAFrichであると判定された場合、すなわち現在の空燃比制御がリッチ空燃比制御であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS408に進む。ステップS408では、空燃比制御装置はリッチ空燃比制御中の触媒20への還元剤供給量RFAを算出する。
触媒20に流入する還元剤の量は流入排気ガスの空燃比及び排気流量に応じて変化する。また、排気流量は、エアフロメータ40によって検出される吸入空気量と、燃料噴射弁11の燃料噴射量とに基づいて算出可能である。このため、例えば、空燃比制御装置は、上流側空燃比センサ41の出力空燃比、吸入空気量及び燃料噴射量に基づいて、単位時間当たりに触媒20に流入する還元剤の量を算出し、この量を積算することによって触媒20への還元剤供給量RFAを算出する。なお、流入排気ガスの空燃比は吸入空気量及び燃料噴射量から算出されてもよい。すなわち、空燃比制御装置は、吸入空気量及び燃料噴射量に基づいて、単位時間当たりに触媒20に流入する還元剤の量を算出してもよい。
次いで、ステップS409において、空燃比制御装置は、還元剤供給量RFAが所定量X(Count)以上であるか否かを判定する。所定量X(Count)は実行回数Count毎に予め定められる。所定量X(Count)は、実行回数Countの値が大きいほど少なくされる。例えば、実行回数Countが2のときの所定量X(2)は、実行回数Countが1のときの所定量X(1)よりも少ない。
ステップS409において還元剤供給量RFAが所定量X(Count)未満であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS409において還元剤供給量RFAが所定量X(Count)以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS410に進む。ステップS410では、図6BのステップS109と同様に、空燃比制御装置は、実行回数Countが所定回数N以上であるか否かを判定する。
ステップS410において実行回数Countが所定回数N未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS411に進む。ステップS411では、空燃比制御装置は目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFleanに設定する。すなわち、空燃比制御装置は、目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrichからリーン設定空燃比TAFleanに切り替え、リーン空燃比制御を実行する。このとき、リーン設定空燃比TAFleanとして、図9の制御ルーチンによって設定された値が用いられる。
次いで、ステップS412において、空燃比制御装置は1を加算することによって実行回数Countを更新する。ステップS412の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS410において実行回数Countが所定回数N以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS413に進む。ステップS413では、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countをゼロにリセットする。
次いで、ステップS414において、図6BのステップS115と同様に、空燃比制御装置は通常制御を開始する。ステップS414の後、本制御ルーチンは終了する。
また、ステップS407において現在の目標空燃比TAFがリーン設定空燃比TAFleanであると判定された場合、すなわち現在の空燃比制御がリーン空燃比制御であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS415に進む。ステップS415では、空燃比制御装置はリーン空燃比制御中の触媒20への酸素供給量OFAを算出する。
触媒20に流入する酸素の量は流入排気ガスの空燃比及び排気流量に応じて変化する。このため、例えば、空燃比制御装置は、上流側空燃比センサ41の出力空燃比、吸入空気量及び燃料噴射量に基づいて、単位時間当たりに触媒20に流入する酸素の量を算出し、この量を積算することによって触媒20への酸素供給量OFAを算出する。なお、空燃比制御装置は、吸入空気量及び燃料噴射量に基づいて、単位時間当たりに触媒20に流入する酸素の量を算出してもよい。
次いで、ステップS416において、空燃比制御装置は、酸素供給量OFAが所定量Y(Count)以上であるか否かを判定する。所定量Y(Count)は実行回数Count毎に予め定められる。所定量Y(Count)は、実行回数Countの値が大きいほど少なくされる。例えば、実行回数Countが2のときの所定量Y(2)は、実行回数Countが1のときの所定量Y(1)よりも少ない。
ステップS416において酸素供給量OFAが所定量Y(Count)未満であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS416において酸素供給量OFAが所定量Y(Count)以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS417に進む。ステップS417では、図6BのステップS109と同様に、空燃比制御装置は、実行回数Countが所定回数N以上であるか否かを判定する。
ステップS417において実行回数Countが所定回数N未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS418に進む。ステップS418では、空燃比制御装置は目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrichに設定する。すなわち、空燃比制御装置は、目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFleanからリッチ設定空燃比TAFrichに切り替え、リッチ空燃比制御を実行する。このとき、リッチ設定空燃比TAFrichとして、図9の制御ルーチンによって設定された値が用いられる。
次いで、ステップS419において、空燃比制御装置は1を加算することによって実行回数Countを更新する。ステップS419の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS417において実行回数Countが所定回数N以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS420に進む。ステップS420では、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countをゼロにリセットする。
次いで、ステップS421において、図6BのステップS115と同様に、空燃比制御装置は通常制御を開始する。ステップS421の後、本制御ルーチンは終了する。
なお、第三実施形態において、図9の制御ルーチンが省略され、図10AのステップS404及び図10BのステップS411におけるリーン設定空燃比TAFleanと、図10AのステップS406及び図10CのステップS418におけるリッチ設定空燃比TAFrichとして、予め定められた値が用いられてもよい。
<第四実施形態>
第四実施形態における排気浄化装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態における排気浄化装置と同様である。このため、以下、本発明の第四実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
上述したように、触媒20は、触媒作用を有する貴金属を有し、貴金属は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)を含む。貴金属として用いられるPt、Pd及びRhは、それぞれ、酸化雰囲気及び還元雰囲気において熱劣化に対する耐性が異なる。斯かる現象が生じる具体的な原理は必ずしも明確ではないが、以下のようなメカニズムによって生じるものであると考えられる。
Pt及びRhは、酸化されたときに高温時における蒸気圧が高くなる特性を有する。言い換えれば、Pt及びRhは、還元雰囲気よりも酸化雰囲気において所定温度における蒸気圧が高くなる特性を有する。このため、還元雰囲気よりも酸化雰囲気において、Pt及びRhの蒸散が生じやすく、触媒20の熱劣化が促進される。
一方、Pdは、酸化されたときに高温時における蒸気圧が低くなる特性を有する。言い換えれば、Pdは、還元雰囲気よりも酸化雰囲気において所定温度における蒸気圧が低くなる特性を有する。このため、酸化雰囲気よりも還元雰囲気において、Pdの蒸散が生じやすく、触媒20の熱劣化が促進される。
したがって、酸素吸蔵量が所定値以上である第1領域では、酸素吸蔵量が所定値未満である第2領域に比べて、Pt及びRhの蒸散による触媒20の熱劣化が促進される。一方、第2領域では、第1領域に比べて、Pdの蒸散による触媒20の熱劣化が促進される。このため、分布形成制御が繰り返し実行されるときに常に触媒20内の同一の位置に第1領域及び第2領域が形成されると、特定の貴金属に起因する触媒20の熱劣化が局所的に進行するおそれがある。
例えば、第1領域が繰り返し形成される位置では、Pt及びRhの蒸散が促進され、PtによるHC及びCOの酸化反応並びにRhによるNOxの還元反応が抑制され、触媒20の排気浄化性能が低下する。一方、第2領域が繰り返し形成される位置では、Pdの蒸散が促進され、PdによるHC及びCOの酸化反応が抑制され、触媒20の排気浄化性能が低下する。
そこで、第四実施形態では、空燃比制御装置は、分布形成制御を繰り返し実行する場合に、分布形成制御によって触媒20に形成される第1領域及び第2領域の位置が入れ替わるように流入排気ガスの空燃比を制御する。言い換えれば、空燃比制御装置は、分布形成制御を繰り返し実行する場合に、分布形成制御によって触媒20に形成される第1領域及び第2領域の分布が反転するように流入排気ガスの空燃比を制御する。このことによって、触媒20の熱劣化が局所的に進行することを抑制することができ、ひいては触媒20の排気浄化性能が低下することを抑制することができる。
上述したように、空燃比制御装置は、分布形成制御においてリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に実行する。例えば、空燃比制御装置は、第1領域及び第2領域の位置を入れ替えるときには、連続する分布形成制御におけるリッチ空燃比制御及びリーン空燃比制御の順序を逆にする。
図11は、第四実施形態において分布形成制御が繰り返し実行された場合に触媒20に形成される第1領域及び第2領域の分布の一例を示す図である。一回目、三回目及び五回目の分布形成制御では、触媒20の酸素が飽和している状態から最初にリッチ空燃比制御が実行される。一方、二回目及び四回目の分布形成制御では、触媒20の酸素が枯渇している状態から最初にリーン空燃比制御が実行される。
この結果、一回目、三回目及び五回目の分布形成制御後の触媒20では、触媒20の最も下流側に第1領域が形成され、触媒20の軸方向に沿って第1領域と第2領域とが交互に形成されている。一方、二回目及び四回目の分布形成制御後の触媒20では、触媒20の最も下流側に第2領域が形成され、触媒20の軸方向に沿って第2領域と第1領域とが交互に形成されている。すなわち、分布形成制御が実行される度に、触媒20における第1領域及び第2領域の分布が反転している。
<分布形成制御>
図12は、第四実施形態における分布形成制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU31によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
ステップS501〜ステップS503は、図6AのステップS101〜S103と同様に実行される。ステップS502において下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上であると判定された場合、すなわち触媒20が酸素で飽和していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS508に進む。
ステップS508では、空燃比制御装置は、リッチフラグFrがゼロであるか否かを判定する。リッチフラグFrは、分布形成制御において最初にリッチ空燃比制御が実行されたときに1に設定され、分布形成制御において最初にリーン空燃比制御が実行されたときにゼロに設定されるフラグである。なお、リッチフラグFrの初期値はゼロである。
ステップS508においてリッチフラグFrが1であると判定された場合、すなわち前回の分布形成制御において最初にリッチ空燃比制御が実行された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS508においてリッチフラグFrがゼロであると判定された場合、本制御ルーチンはステップS509に進む。ステップS509では、図6AのステップS106と同様に、空燃比制御装置は、分布形成制御を開始し、流入排気ガスの目標空燃比TAFをリッチ設定空燃比TAFrichに設定する。すなわち、空燃比制御装置はリッチ空燃比制御を実行する。
次いで、ステップS510において、空燃比制御装置は、リッチフラグFrを1に設定し、リーンフラグFlをゼロに設定する。次いで、ステップS507において、図6AのステップS105と同様に、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countを1に設定する。ステップS507の後、本制御ルーチンは終了する。
また、ステップS503において下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下であると判定された場合、すなわち触媒20の酸素が枯渇していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS504に進む。ステップS504では、空燃比制御装置は、リーンフラグFlがゼロであるか否かを判定する。リーンフラグFlは、分布形成制御において最初にリーン空燃比制御が実行されたときに1に設定され、分布形成制御において最初にリッチ空燃比制御が実行されたときにゼロに設定されるフラグである。なお、リーンフラグFlの初期値はゼロである。
ステップS504においてリーンフラグFlが1であると判定された場合、すなわち前回の分布形成制御において最初にリーン空燃比制御が実行された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS508においてリーンフラグFlがゼロであると判定された場合、本制御ルーチンはステップS505に進む。ステップS505では、図6AのステップS104と同様に、空燃比制御装置は、分布形成制御を開始し、流入排気ガスの目標空燃比TAFをリーン設定空燃比TAFleanに設定する。すなわち、空燃比制御装置はリーン空燃比制御を実行する。
次いで、ステップS506において、空燃比制御装置は、リッチフラグFrをゼロに設定し、リーンフラグFlを1に設定する。次いで、ステップS507において、図6AのステップS105と同様に、空燃比制御装置は分布形成フラグFd及び実行回数Countを1に設定する。ステップS507の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS501において分布形成フラグFdが1であると判定された場合、第一実施形態と同様に、図6BのステップS107〜ステップS115が実行され、触媒20に第1領域及び第2領域が形成される。
なお、ステップS508においてリッチフラグFrが1であると判定された場合に、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下になるように、流入排気ガスの目標空燃比TAFを理論空燃比よりもリッチな空燃比(例えばリッチ設定空燃比TAFrich)に設定してもよい。また、ステップS504においてリーンフラグFlが1であると判定された場合に、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ42の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上になるように、流入排気ガスの目標空燃比TAFを理論空燃比よりもリーンな空燃比(例えばリーン設定空燃比TAFlean)に設定してもよい。
また、本制御ルーチンによれば、分布形成制御が実行される度に、触媒20において第1領域の位置と第2領域の位置とが入れ替えられる。しかしながら、分布形成制御が複数回実行される毎に、触媒20において第1領域の位置と第2領域の位置とが入れ替えられてもよい。
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、触媒20の下流側の排気通路に下流側触媒が配置され、下流側触媒において第1領域と第2領域とが交互に形成されるように分布形成制御が実行されてもよい。
また、空燃比制御装置は、触媒20に形成された第1領域及び第2領域の総数が二であり且つ下流側の領域の軸方向の長さが所定値(例えば触媒20の軸方向の長さの1/10〜1/2)以下であるときに分布形成制御を開始してもよい。すなわち、空燃比制御装置は、通常制御において触媒20の酸素が枯渇する前又は触媒20が酸素で飽和する前に分布形成制御を開始してもよい。例えば、空燃比制御装置は、図5Bのt2のような酸素吸蔵状態において分布形成制御を開始してもよい。この場合、空燃比制御装置は通常制御中の触媒20への酸素供給量及び還元剤供給量に基づいて触媒20の酸素吸蔵状態を推定する。
また、空燃比制御装置は、所定条件が満たされたときに、燃料噴射弁11による燃料噴射を停止する燃料カット制御を実行する。通常、燃料カット制御が実行されると、多量の酸素が触媒20に供給され、触媒20が酸素で飽和する。すなわち、燃料カット制御の実行後には、触媒20に第1領域のみが形成される。このため、空燃比制御装置は燃料カット制御の終了時に分布形成制御を開始してもよい。
また、空燃比制御装置は、図13又は図14に示されるような酸素濃度の濃淡が形成されるように分布形成制御を実行してもよい。図13及び図14は、分布形成制御後の触媒20の軸方向に沿った酸素吸蔵状態の一例を示す図である。分布形成制御におけるリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御との間の触媒20の酸素変動量の差を小さくすることによって、図13又は図14に示される状態を形成することができる。
図13の状態が形成される場合には、空燃比制御装置は、第1領域の上流側に第2領域を形成するときに、第1領域の軸方向の一箇所において触媒20の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に達するようにリッチ空燃比制御を実行する。また、空燃比制御装置は、第2領域の上流側に第1領域を形成するときに、第2領域の軸方向の一箇所において触媒20の酸素吸蔵量がゼロに達するようにリーン空燃比制御を実行する。
図14の状態が形成される場合には、空燃比制御装置は、第1領域の上流側に第2領域を形成するときに、第1領域における触媒20の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量未満になるようにリッチ空燃比制御を実行する。また、空燃比制御装置は、第2領域の上流側に第1領域を形成するときに、第2領域における触媒20の酸素吸蔵量がゼロよりも多くなるようにリーン空燃比制御を実行する。したがって、図14の例では、図13の例に比べて、分布形成制御におけるリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御との間の触媒20の酸素変動量の差が更に小さくされる。なお、図14のような例において、触媒20の酸素吸蔵量の振幅の中心が最大酸素吸蔵量の半分(50%)以外の値となるようにリッチ空燃比制御及びリーン空燃比制御が実行されてもよい。
また、上述した実施形態は、任意に組み合わせて実施可能である。例えば、図10A〜図10Cの制御ルーチンが実行される場合に、図10AのステップS404及びS406の代わりに図8AのステップS204及びS206が実行され、図10BのステップS411及びS412の代わりに図8BのステップS210及びS212が実行され、図10CのステップS418及びS419の代わりに図8BのステップS210及びステップS213が実行されてもよい。
また、図6A及び図6Bの制御ルーチンが実行される場合に、図6AのステップS104及び図6BのステップS111におけるリーン設定空燃比TAFleanと、図6AのステップS106及び図6BのステップS113におけるリッチ設定空燃比TAFrichとして、図9の制御ルーチンによって設定された値が用いられてもよい。同様に、図12及び図6Bの制御ルーチンが実行される場合に、図12のステップS505及び図6BのステップS111におけるリーン設定空燃比TAFleanと、図12のステップS509及び図6BのステップS113におけるリッチ設定空燃比TAFrichとして、図9の制御ルーチンによって設定された値が用いられてもよい。同様に、図8A及び図8Bの制御ルーチンが実行される場合に、図8AのステップS204におけるリーン設定空燃比TAFlean(1)と、図8AのステップS206におけるリッチ設定空燃比TAFrich(1)として、図9の制御ルーチンによって設定された値が用いられてもよい。
また、図8A及び図8Bの制御ルーチンが実行される場合に、図8BのステップS208の代わりに図6BのステップS108が実行されてもよい。すなわち、空燃比制御装置は、分布形成制御において、各空燃比制御における流入排気ガスの目標空燃比と理論空燃比との差が徐々に小さくなり且つ各空燃比制御の実行時間が徐々に短くなるようにリッチ空燃比制御とリーン空燃比制御とを交互に実行してもよい。
また、図8A及び図8Bの制御ルーチンが実行される場合に、ステップS204の前後に図12のステップS504及びS506が実行され、ステップS206の前後に図12のステップS508及びS510が実行されてもよい。また、図10A〜図10Cの制御ルーチンが実行される場合に、ステップS404の前後に図12のステップS504及びS506が実行され、ステップS406の前後に図12のステップS508及びS510が実行されてもよい。