JP2021195416A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】環境への影響が懸念される原材料の使用量を削減しながら、ベルトパッドの耐熱老化性及び耐亀裂成長性を改善する。【解決手段】ベルト端部とカーカスプライとの間に配されるベルトパッドを備える空気入りタイヤにおいて、上記ベルトパッドが、ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及びヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物のいずれか一方又は双方0.1〜5質量部とを含むゴム組成物を用いて作製されている。【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤのショルダー部には、ベルト端部とカーカスプライとの間に、タイヤ周方向に延在するベルトパッドと称されるゴム部材が配されることがある。かかるベルトパッドは、金属材を含むベルトやカーカスプライとの隣接部材である上にベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ走行中に繰り返し負荷を受けるため、老化後にも高い剛性を維持するべく耐熱老化性が要求されるとともに、ベルトやカーカスプライとの接着破壊を抑制するべく耐亀裂成長性が要求される。また、ゴム組成物の耐熱老化性や耐亀裂成長性を改良するために、例えば加硫促進剤や有機酸金属塩に関しても環境への影響が少ない原材料を使用することが望まれる。
特許文献1には、ベルトパッドに用いるゴム組成物として、フェノール類化合物又はフェノール系樹脂とそのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を配合するとともに、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを配合することにより、耐熱老化性を向上させることが開示されている。
なお、特許文献2には、金属材とともに複合体を形成するゴム組成物に加硫促進剤としてN,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(DBBS)を配合することが開示されている。
また、特許文献3には、タイヤコード被覆用ゴム組成物にヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物や1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを配合することが開示されている。
特開2009−248771号公報 特開2008−308632号公報 特開2003−082586号公報
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、環境への影響が懸念される原材料の使用量を削減しながら、ベルトパッドの耐熱老化性及び耐亀裂成長性を改善することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、ベルト端部とカーカスプライとの間に配されるベルトパッドを備える空気入りタイヤであって、前記ベルトパッドは、ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及びヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物のいずれか一方又は双方0.1〜5質量部とを含むゴム組成物を用いて作製されたものである。
前記ゴム組成物は、有機酸コバルトを含まないか、又は有機酸コバルトの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して3質量部以下でもよい。
本発明の実施形態によれば、加硫促進剤として環境への影響が少ないN,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを使用しつつ、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンやヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物と組み合わせることにより、ベルトパッドの耐熱老化性と耐亀裂成長性を顕著に改善することができる。そのため、環境への影響が懸念される有機酸コバルトを必ずしも含まなくても、良好な耐熱老化性と耐亀裂成長性をベルトパッドに持たせることができる。
一実施形態を示すタイヤの要部拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤ10の要部拡大断面図である。空気入りタイヤ10は、左右一対のビード部(不図示)及びサイドウォール部12と、左右のサイドウォール部12の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部12間に設けられたトレッド部14とを備え、左右一対のビード部間にまたがって延びる少なくとも1枚のカーカスプライ16を備える空気入りラジアルタイヤである。
カーカスプライ16は、トレッド部14からサイドウォール部12をへて、両端がビード部にて係止されており、上記各部を補強するものであり、この例ではスチールコードがラジアル、即ち放射状に配列されてなる。
トレッド部14におけるカーカスプライ16の外周側にはトレッドゴム18との間にベルト20が設けられている。ベルト20は、スチールコードをタイヤ周方向に対して傾斜配列してなる2枚以上のベルトプライからなり、この例では4枚のベルトプライが積層されている。
トレッド部14とサイドウォール部12との間のショルダー部22には、ベルト20とカーカスプライ16との間に、タイヤ周方向に延在するベルトパッド24が配されている。ベルトパッド24は、ベルト20の端部とカーカスプライ16との隙間を充填する断面略三角形状の帯状のゴム部材であり、タイヤ断面両側のタイヤ周方向の全周に沿って配されている。ベルトパッド24はタイヤ外表面に露出していないゴム部材であり、より詳細には、ベルトパッド24のタイヤ幅方向外側の面はタイヤ外表面をなすゴム層26で覆われており、これによりベルトパッド24はタイヤ内部に埋設されている。
ベルトパッド24には、ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及びヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物のいずれか一方又は双方0.1〜5質量部とを含むゴム組成物が用いられている。
該ゴム組成物において、ゴム成分としてのジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、スチレンイソプレンブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ジエン系ゴムは、破壊特性に優れることから、天然ゴムを含むことが好ましく、天然ゴム単独でもよく、天然ゴムとともに他のジエン系ゴムを含んでもよい。他のジエン系ゴムとしては、IR、BR及びSBRからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
上記ジエン系ゴム100質量部は、天然ゴムを50質量部以上含むことが好ましく、より好ましくは天然ゴムを70質量部以上含むことであり、更に好ましくは天然ゴムを80質量部以上含むことであり、天然ゴム100質量部でもよい。
該ゴム組成物において、加硫剤としての硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、オイル処理硫黄などが挙げられる。硫黄の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量部であり、4〜6質量部でもよい。
該ゴム組成物には、加硫促進剤としてN,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(DBBS)(別名:2−[(ジベンジルアミノ)チオ]ベンゾチアゾール)を用いる。N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドは、下記式(1)で表される化合物であり、環境への影響が懸念されるN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)に対して、加硫反応時に発生する2級アミンの環境への影響が少なく、加硫後のゴム物性も劣らない。また、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドは加硫速度が比較的遅く硫黄の分散が良好なため、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)などの他の加硫促進剤よりも金属材に隣接するゴム部材としての物性が良好である。
Figure 2021195416
N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部であり、更に好ましくは0.8〜3質量部である。
加硫促進剤としては、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド単独であることが好ましいが、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどの他の加硫促進剤を併用してもよい。なお、上記N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドは、できるだけ含有しないことが好ましく、含有する場合でも、ジエン系ゴム100質量部に対して0.5質量部以下、更には0.3質量部以下であることが好ましい。
該ゴム組成物には、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及びヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物のいずれか一方又は双方が配合される。1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンは下記式(2)で表されるチオカルバモイル化合物であり、ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物は下記式(3)で表されるチオサルフェート塩である。
Figure 2021195416
これらの化合物は−S−S−(CH−S−S−結合を形成すると考えられる。この結合は、ポリスルフィド結合よりも熱的に安定であるため耐熱性を改善する効果があり、上記のように加硫促進剤としてのN,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドと組み合わせることと相俟って、老化後にも高い剛性を維持し、耐亀裂成長性を顕著に改善することができる。そのため、有機酸コバルトを必ずしも含まなくとも、ベルトパッドとしての良好な耐熱老化性と耐亀裂成長性を得ることができる。
1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及び/又はヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物の配合量(いずれか一方のみ配合の場合はその配合量、双方配合の場合は両者の配合量の合計)は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜4質量部であり、更に好ましくは0.5〜4質量部であり、1〜3質量部でもよい。
該ゴム組成物には、有機酸コバルトを含まないか、又は有機酸コバルトを含む場合でもその含有量はジエン系ゴム100質量部に対して3質量部以下であることが好ましい。有機酸コバルトは耐熱老化性や耐亀裂成長性の観点からはゴム組成物に配合することが好ましいが、環境への影響からは使用量を削減することが好ましい。本実施形態では、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドと、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及び/又はヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物との組み合わせにより、耐熱老化性と耐亀裂成長性を顕著に改善することができるため、有機酸コバルトの使用量を削減しても従来品と同等以上の耐熱老化性及び耐亀裂成長性を得ることができる。
有機酸コバルトの配合量は、より好ましくはジエン系ゴム100質量部に対して2質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以下であり、0.5質量部以下でもよい。一実施形態において、有機酸コバルトの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して0.2〜1質量部としてもよい。なお、金属コバルト換算での含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以下であり、更に好ましくは0.1質量部以下であり、0.05質量部以下でもよい。一実施形態において、金属コバルト換算での含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して0.02〜0.1質量部でもよい。
有機酸コバルトとしては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、オレイン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、ホウ酸コバルト、マレイン酸コバルトなどが挙げられ、これらの中でも加工性の点からナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトが特に好ましい。
該ゴム組成物には、メチレン受容体としてのフェノール類化合物及び/又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂と、そのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン及び/又はメラミン誘導体とが配合されることが好ましい。これらを用いてゴムを硬化させることにより、ベルトやカーカスプライに対する接着性を向上することができる。
上記フェノール類化合物としては、フェノール、レゾルシンまたはこれらのアルキル誘導体が挙げられる。アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールといったメチル基誘導体の他、ノニルフェノール、オクチルフェノールといった比較的長鎖のアルキル基による誘導体が含まれる。フェノール類化合物は、アセチル基等のアシル基を置換基に含むものであってもよい。
上記フェノール系樹脂には、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂(即ち、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)、クレゾール樹脂(即ち、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂)等の他、複数のフェノール類化合物からなるホルムアルデヒド樹脂が含まれる。これらは未硬化の樹脂であって、液状又は熱流動性を有するものが用いられる。
これらの中でも、メチレン受容体としては、レゾルシン及び/又はレゾルシン系樹脂が好ましい。レゾルシン系樹脂としては、レゾルシン及びそのアルキル誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドで縮合してなるものが挙げられ、アルキルフェノールなどの他のモノマー成分を併用したものでもよい。具体的には、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシンとアルキルフェノールとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
フェノール類化合物及び/又はフェノール系樹脂の配合量は、特に限定されないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。
上記メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、メチロールメラミンの部分エーテル化物、メラミンとホルムアルデヒドとメタノールの縮合物等が用いられ、その中でもヘキサメトキシメチルメラミンが特に好ましい。
ヘキサメチレンテトラミン及び/又はメラミン誘導体の配合量は、フェノール類化合物及び/又はフェノール系樹脂に対して充分な反応、硬化を行わせるだけの量であり、具体的には、フェノール類化合物及び/又はフェノール系樹脂の配合量の0.5〜2倍質量部であることが好ましい。
該ゴム組成物には、補強性充填剤としてカーボンブラック及び/又はシリカを配合することができる。カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)のものが挙げられ、いずれか一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。より好ましくはHAF級のものである。シリカとしては、例えば湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが挙げられる。
補強性充填剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム100質量部に対して20〜100質量部でもよく、20〜80質量部でもよく、30〜60質量部でもよい。また、カーボンブラックの配合量は、特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対し、20〜70質量部でもよく、30〜60質量部でもよい。また、耐亀裂成長性を向上するべく、シリカを比較的少量使用することも好ましい態様であるといえ、その場合のシリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜10質量部である。
該ゴム組成物には、上記成分の他に、酸化亜鉛、老化防止剤、軟化剤、ステアリン酸、ワックス、加工助剤など、この種のゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を任意に配合することができる。
該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンやヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物とともに、硫黄及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄及び加硫促進剤を添加混合することによりゴム組成物を調製することができる。
該ゴム組成物は、各種空気入りタイヤのベルトパッドとして用いることができ、好ましくはトラックやバス、ライトトラックなどの重荷重用空気入りタイヤのベルトパッドとして好適に使用され、常法に従い未加硫タイヤを作製し、例えば140〜180℃で加硫成型することにより空気入りタイヤを製造することができる。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、常法に従いベルトパッド用ゴム組成物を調製した。詳細には、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=150℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=110℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分は以下の通りである。
・天然ゴム:RSS#3
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト300(HAF−LS)」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・老化防止剤:フレキシス社製「サントフレックス6PPD」
・ステアリン酸コバルト:JXTGエネルギー(株)製「ステアリン酸コバルト」(Co含有率9.5質量%)
・メラミン誘導体:ヘキサメトキシメチルメラミン、三井サイテック(株)製「サイレッツ963L」
・レゾルシン系樹脂:レゾルシン−アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、住友化学工業(株)製「スミカノール620」
・KA9188:1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、ランクセス社製「Vulcrene KA9188」
・HTS:ヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物、イーストマン社製「Duralink HTS」
・不溶性硫黄:フレキシス社製「クリステックスHS OT−20」(80質量%が硫黄分)
・DCBS:N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDZ−G」
・TBBS:N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製「サンセラーNS−G」
・DBBS:N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド。
得られた各ゴム組成物について、耐熱老化性と耐亀裂成長性を評価した。評価方法は以下のとおりである。
[耐熱老化性]
各ゴム組成物を150℃×30分で加硫させて試験片を作製し、該試験片につき、未老化のものと、90℃のギヤーオーブン中で96時間老化させたものを用い、JIS K6251に準拠した引張試験を行って(3号形ダンベル使用)、抗張積(破断伸び×破断応力)を算出した。老化後の算出値を未老化の算出値に対する百分率で求め、抗張積保持率とした。比較例1の抗張率保持率の値を100として各例の抗張率保持率を指数で表示した。数値が大きいほど耐熱老化性に優れることを意味する。
[耐亀裂成長性]
各ゴム組成物を150℃×30分で加硫させて試験サンプルを作製し、90℃のギヤーオーブン中で24時間老化させたものを用い、JIS K6260に準拠し、屈曲き裂成長試験をおこなった。亀裂成長が2mmになるまでの回数を求め、比較例1の値を100とした指数で、各例の値を示した。指数が大きいほど、き裂成長速度が遅く、耐疲労性に優れる。
Figure 2021195416
結果は表1に示す通りである。加硫促進剤としてDCBSを用いた比較例1に対し、KA9188を添加した比較例2では耐熱老化性と耐亀裂成長性は向上したものの、特に耐亀裂成長性の点で改善幅は十分に大きいとはいえなかった。そのため、比較例2からステアリン酸コバルトを除いた比較例4では、コントロールとしての比較例1に対して耐熱老化性と耐亀裂成長性が大幅に低下していた。また、比較例1に対し、単に加硫促進剤をDCBSからDBBSに置換した比較例3では、耐熱老化性と耐亀裂成長性の改善効果が小さかった。
これに対し、加硫促進剤DBBSとともにKA9188を配合した実施例1〜3,7〜8では、コントロールである比較例1に対して耐熱老化性と耐亀裂成長性が顕著に改善されていた。そのため、実施例4〜6に示すように、ステアリン酸コバルトの使用量を削減し、またステアリン酸コバルトを配合しなかった場合でも、コントロールである比較例1に対して同等以上の性能を持ち、良好な耐熱老化性と耐亀裂成長性が得られた。
加硫促進剤DBBSとともにHTSを配合した実施例9についても、コントロールである比較例1に対して、耐熱老化性と耐亀裂成長性に顕著な改善効果がみられた。実施例1と実施例9との対比との対比より、加硫促進剤DBBSと組み合わせる化合物としては、HTSよりもKA9188の方が耐熱老化性と耐亀裂成長性の改善効果が高かった。
10…空気入りタイヤ、16…カーカスプライ、20…ベルト、24…ベルトパッド

Claims (2)

  1. ベルト端部とカーカスプライとの間に配されるベルトパッドを備える空気入りタイヤであって、
    前記ベルトパッドは、ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄1〜10質量部と、N,N−ジベンジルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド0.1〜5質量部と、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及びヘキサメチレンビスチオサルフェート2ナトリウム塩2水和物のいずれか一方又は双方0.1〜5質量部とを含むゴム組成物を用いて作製された、空気入りタイヤ。
  2. 前記ゴム組成物は、有機酸コバルトを含まないか、又は有機酸コバルトの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して3質量部以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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